説明

ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維の紫外線耐性外面シェル布帛を含んでなる熱的性能被服

本発明は、5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と、20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維とを含んでなる外面シェル布帛を有する耐炎性被服に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、参照によってその開示を本明細書に援用する2005年12月16日に出願された米国仮特許出願第60/751,139号明細書の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリピリドビスイミダゾール繊維とポリベンゾビスオキサゾール繊維との混合物、およびそれから作られた布帛および物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリピリドビスイミダゾールポリマーは、硬質棒状ポリマーである。そのポリマー組成物の1つがPIPDと称され、M5(登録商標)繊維を作るのに使用されるポリマーとして知られている、このポリマーから作られた繊維は、切断抵抗性および耐炎性の双方の防護服において有用であることが知られている。例えば特許文献1および特許文献2を参照されたい。例えばポリピリドビスイミダゾールなどのポリマー鎖間に強力な水素結合を有する強固な棒状ポリマーから作られた繊維については、シッケマ(Sikkema)らに付与された特許文献3に記載されている。ポリピリドビスイミダゾールの例としては、ポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)が挙げられ、それはポリリン酸中のテトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸との縮重合によって調製できる。シッケマ(Sikkema)では、繊維、フィルム、テープなどの一次元または二次元物体を作るにあたり、ポリピリドビスイミダゾールが、25℃においてメタンスルホン酸中0.25g/dlのポリマー濃度で測定した際に、少なくとも約3.5、好ましくは少なくとも約5、およびより詳しくは約10以上の相対粘度(「Vrel」または「ηrel」)に相当する高分子量を有することが望ましいと記載されている。シッケマ(Sikkema)はまた、約12を超える相対粘度を有するポリ[ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)]で良好な繊維紡績結果が得られ、50を超える相対粘度(約15.6dl/gを超える固有粘度に相当する)が達成できることも開示する。
【0004】
防刃、スパイク抵抗性または防弾抵抗性繊維におけるポリベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維およびポリビスイミダゾールの使用が報告されている。一般には、特許文献4、特許文献2、特許文献5、および特許文献6を参照されたい。
【0005】
特許文献7は、防護服中でのポリベンゾイミダゾール(PBI)およびPBO繊維の使用を開示する。特許文献8は、布帛中でのポリベンゾイミダゾールおよびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維およびフィラメントの使用を開示する。いくつかの特許および特許出願は、アラミド繊維とPBO繊維との配合物を報告する。特許文献9、特許文献10、および特許文献11、および特許文献12、特許文献13、および特許文献14を参照されたい。さらにポリベンゾイミダゾール繊維は、目下、市販の布帛中でアラミドと混合されている。しかし前述のポリベンゾイミダゾールはポリビベンゾイミダゾールポリマーであり、硬質棒状ポリマーではない。したがって繊維は硬質棒状ポリマーと比べて低強度を有する。
【0006】
【特許文献1】国際公開第199902169号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005002376号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,674,969号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0003727号明細書
【特許文献5】国際公開第2004018754号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/001373号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0228812号明細書
【特許文献8】国際公開第2004023909号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0065146号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0228821号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0203690号明細書
【特許文献12】米国特許第5,233,821号明細書
【特許文献13】米国特許第6,624,096号明細書
【特許文献14】米国特許第6,914,022号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱防護服および難燃防護服は、救命のためおよび火災その他の熱イベントにより引き起こされる傷害を減少させるために、消防士、救命救急士、軍隊構成員、およびレース要員によって使用されている。ポリベンゾビスオキサゾール繊維は高強度および優れた耐火性特性を有しながら、このような繊維から作られた布帛および被服は紫外線(UV)光による損傷を高度に被りやすく、それは繊維強度の著しい損失をもたらして必然的に布帛および被服の耐久性を損なう。ポリピリドビスイミダゾール繊維を布帛および被服に組み込んで、この繊維の優れた耐炎性特性および高強度を活用することが望ましい。したがって優れた防火特性を提供しながらUV光耐性であり、したがって被服の外面シェル布帛としてより耐久性のある、ポリベンゾビスオキサゾールおよびポリピリドビスイミダゾール繊維の双方を含有する布帛に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維、および5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を含んでなる耐炎性被服に関する。いくつかの実施態様では、ポリピリドビスイミダゾール繊維は25dl/gを超える固有粘度を有する。別の実施態様では、ポリピリドビスイミダゾール繊維は28dl/gを超える固有粘度を有する。
【0009】
いくつかの実施態様では、被服は70〜90重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維、および10〜30重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を含んでなる。なおも別の実施態様では、被服は5〜25重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維、および75〜95重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を含んでなる。
【0010】
特定の実施態様では、ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維はステープルファイバーとして存在する。別の実施態様では、ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維は連続フィラメントとして存在する。
【0011】
1つの有用なポリピリドビスイミダゾールは、ポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である。
【0012】
ポリベンゾビスオキサゾール繊維としては、式のポリマーから作られるものが挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
特定の実施態様では、本発明は、
a)内側熱ライニング、
b)液体バリア、および
c)外面シェル布帛
を順番に含んでなり、外面シェル布帛が
20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を含んでなる、耐炎性被服に関する。
【0015】
20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維
を含んでなる外面シェル布帛を被服に組み込むことで、内側熱ライニング、液体バリア、および外面シェル布帛を有する耐炎性被服の製造方法もまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、本明細書の一部を構成する次の例示的で好ましい実施態様の詳細な説明を参照して、より容易に理解し得る。特許請求の範囲は、ここで述べられるおよび/または示される特定の装置、方法、条件またはパラメーターに限定されるものではなく、ここで使用される用語法は、特定の実施態様をあくまでも一例として述べるためのものであり、特許請求される発明を限定することは意図されないものと理解される。また添付の特許請求の範囲を含めて明細書中の用法で、文脈で特に断りのない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形を含み、特定数値への言及は少なくともその特定値を含む。一定範囲の値が表現される場合、別の実施態様は、1つの特定値からおよび/またはその他の特定値までを含む。同様に先行する「約」の使用によって値が近似として表現される場合、特定の値は別の実施態様を形成するものと理解される。全ての範囲は包括的で組み合わせ可能である。
一実施態様では、本発明は、20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維、および5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を含んでなる外面シェル布帛を有する耐炎性被服に関する。本発明はまた、内側熱ライニング、液体バリア、および外面シェル布帛を順番に含んでなり、外面シェル布帛が20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維、および5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を含んでなる、耐炎性被服にも関する。
【0017】
ここでの目的では、「繊維」という用語は、長さと、その長さに垂直なその断面積を横切る幅との比率が高い、比較的可撓性で巨視的に均質な本体と定義される。繊維断面はあらゆる形状であることができるが、典型的に丸い。ここで「フィラメント」または「連続フィラメント」という用語は、「繊維」という用語と同義的に使用される。
【0018】
ここでの用法では、「ステープルファイバー」という用語は、所望の長さに切断されたまたはけん切された繊維、またはフィラメントと比べると、長さとその長さに垂直なその断面積を横切る幅との低い比率を有して天然に存在するか、または自然に有する繊維を指す。長さは約0.1インチから数フィートで変動できる。いくつかの実施態様では、長さは0.1インチ〜約8インチである。人造ステープルファイバーは、綿、羊毛、または梳毛糸紡績機上での加工に適した長さに切断される。
【0019】
ステープルファイバーは、(a)実質的に均一の長さ、(b)可変またはランダムの長さ、または(c)実質的に均一の長さを有するステープルファイバーのサブセットおよび別のサブセット中の異なる長さを有するステープルファイバーを有することができ、共に混合されたサブセット中のステープルファイバーは実質的に均一の分布を形成する。
【0020】
いくつかの実施態様では、適切なステープルファイバーは1〜30cmの長さを有する。短ステープル工程によって作られるステープルファイバーは、1〜6cmの繊維長をもたらす。
【0021】
ステープルファイバーは、あらゆる工程によって作成できる。ステープルファイバーは、連続繊維をけん切して、クリンプとして機能する変形セクションがあるステープルファイバーをもたらして形成できる。ステープルファイバーは、ロータリーカッターまたはギロチン断裁機を使用して連続の直線繊維から切断して直線(すなわちクリンプしていない)ステープルファイバーをもたらすことでができ、またはさらに1cmあたり8個のクリンプを超えないクリンプ(または反復する屈曲)頻度でステープルファイバーの長さに沿って、のこ歯形状のクリンプを有するクリンプした連続繊維から切断できる。
【0022】
けん切されたステープルファイバーは、破断ゾーン調節によって制御される平均切断長を有する、繊維のランダム可変質量を作り出す所定の距離である、1つまたはそれ以上の破断ゾーンを有するけん切操作中に、連続フィラメントのトウまたは束を破断して作成できる。
【0023】
本発明のステープルファイバーは、当該技術分野でよく知られている伝統的な長短ステープルリング精紡工程を使用して糸に転換できる。短ステープルでは、3/4インチ〜2−1/4インチ(すなわち1.9〜5.7cm)の綿系紡績繊維長が典型的に使用される。長ステープルでは6−1/2インチ(すなわち16.5cm)までの梳毛糸または紡毛系紡績繊維が典型的に使用される。しかし糸はまた、空気ジェット紡績、オープンエンド紡績、およびステープルファイバーを使用可能な糸に転換する多くのその他のタイプの紡績を使用して紡績してもよいので、リング精紡に限定することは意図されない。
【0024】
けん切されたステープルファイバーは、典型的に長さ7インチ(すなわち17.8cm)以下の長さを有し、ステープル工程をトップする伝統的なけん切されたトウを使用して作成できる。例えば国際公開第0077283号パンフレットで述べられる工程を通じて、約20インチ(すなわち51cm)までの最大長を有するステープルファイバーが可能である。糸は、空気ジェットによるフィラメントの絡み合いを使用して、1デシテックスあたり3〜7グラムの範囲内である引張り強さを有する紡績糸への繊維統合によって作成できる。これらの糸は第2の撚りを有してもよく、すなわちそれらを形成後に撚って糸により大きな引張り強さを与えてもよく、その場合、引張り強さは1デニールあたり10〜18グラム(すなわち1dtexあたり9〜17グラム)の範囲であることができる。けん切工程は繊維にある程度のクリンプを与えるので、けん切されたステープルファイバーは常態ではクリンプを必要としない。
【0025】
連続フィラメントという用語は、比較的小さな直径を有して、その長さがステープルファイバーに用いられるものよりも長い、可撓性繊維を指す。連続フィラメント繊維および連続フィラメントのマルチフィラメントは、当業者によく知られている工程によって作成できる。
【0026】
本発明の布帛は、ニットまたは織布または不織構造をはじめとするが、これに限定されるものではない、多数の形態をとることができる。このような布帛形態については、当業者によく知られている。
【0027】
「不織」布帛とは、一方向性(マトリックス樹脂内に含有される場合)、フェルト、繊維バットなどをはじめとする、繊維の網目状組織を意味する。
【0028】
「織」布とは、平織、千鳥綾織、斜子織、朱子織、綾織などのあらゆる布帛の織り方を使用して織られた布帛を意味する。平織および綾織が、業界で使用される最も一般的な織り方と考えられる。
【0029】
本発明はポリピリドビスイミダゾール繊維を利用する。この繊維は高強度の硬質棒状ポリマーである。ポリピリドビスイミダゾール繊維は、少なくとも20dl/gまたは少なくとも25dl/gまたは少なくとも28dl/gの固有粘度を有する。このような繊維としては、PIPD繊維(M5(登録商標)繊維およびポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレンから作られた繊維としても知られている)が挙げられる。PIPD繊維は、次の構造に基づく。
【0030】
【化2】

【0031】
ポリピリドビスイミダゾール繊維は、そのポリベンゾイミダゾール繊維がポリビベンゾイミダゾールである、よく知られている市販されるPBI繊維またはポリベンゾイミダゾール繊維と区別できる。ポリビベンゾイミダゾール繊維は硬質棒状ポリマーでなく、ポリピリドビスイミダゾールと比べると低繊維強度および低引張弾性率を有する。
【0032】
PIPD繊維には、約310GPa(2100グラム/デニール)の平均弾性率、および約5.8GPa(39.6グラム/デニール)までの平均引張り強さを有する可能性があることが報告されている。これらの繊維については、ブルー(Brew)ら、Composites Science and Technology、1999年、59、1109頁;バン・デル・ジャック(Van der Jagt)およびボイカース(Beukers)、Polymer、1999年、40、1035頁;シッケマ(Sikkema)、Polymer、1998年、39、5981頁;クロップ(Klop)およびラマーズ(Lammers)、Polymer、1998年、39、5987頁;ハーゲマン(Hageman)ら、Polymer、1999年、40、1313頁で述べられている。
【0033】
硬質棒状ポリピリドイミダゾールポリマーを作る一方法は、シッケマ(Sikkema)らに付与された米国特許第5,674,969号明細書で詳細に開示される。ポリピリドイミダゾールポリマーは、乾燥成分とポリリン酸(PPA)溶液とのミックスを反応させて作成してもよい。乾燥成分は、ピリドビスイミダゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでなってもよい。本発明の布帛で使用される硬質棒状繊維を作るのに使用されるポリピリドビスイミダゾールポリマーは、少なくとも25、好ましくは少なくとも100個の繰り返し単位を有するべきである。
【0034】
本発明の目的では、ポリピリドイミダゾールポリマーの相対分子量は、ポリマー生成物をメタンスルホン酸などの適切な溶剤で0.05g/dlのポリマー濃度に希釈して、30℃で1つまたはそれ以上の希釈溶液粘度値を測定して、適切に特性決定される。本発明のポリピリドイミダゾールポリマーの分子量の進展は、1つまたはそれ以上の希釈溶液粘度測定によって、適切にモニターされ、またそれと相関性がある。したがって相対粘度(「Vrel」または「ηrel」または「nrel」および固有粘度(「Vinh」または「ηinh」または「ninh」)の希釈溶液測定が、典型的にポリマー分子量をモニタリングするために使用される。希釈ポリマー溶液の相対粘度および固有粘度は、次の表現で記述される。
inh=ln(Vrel)/C
式中、lnは自然対数関数であり、Cはポリマー溶液の濃度である。Vrelはポリマー溶液粘度と、ポリマーを含まない溶剤粘度との単位のない比率であるので、Vinhは濃度の逆数の単位で典型的にグラムあたりデシリットル(「dl/g」)として表現される。したがって本発明の特定の態様ではポリピリドイミダゾールポリマーが生成され、それはメタンスルホン酸中のポリマー濃度0.05g/dlで、30℃において少なくとも約20dl/gの固有粘度を有するポリマー溶液を提供するとして特徴づけられる。ここで開示される本発明から得られるより高分子量のポリマーは、粘稠なポリマー溶液を生じるので、妥当な時間内に固有粘度を測定するためには、メタンスルホン酸中で約0.05g/dlのポリマー濃度が有用である。
【0035】
本発明で有用な例示的なピリドビスイミダゾール形成モノマーとしては、2,3,5,6−テトラアミノピリジンと、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、またはそのあらゆる組み合わせをはじめとする多様な酸とが挙げられる。好ましくはピリドビスイミダゾール形成モノマーとしては、2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が挙げられる。特定の実施態様では、ピリドイミダゾール形成モノマーがリン酸化されていることが好ましい。好ましくはリン酸化ピリドイミダゾール形成モノマーは、ポリリン酸および金属触媒存在下で重合される。
【0036】
金属粉末を用いて、最終ポリマーの分子量を高めるのを助けることができる。金属粉末としては、典型的に鉄粉末、スズ粉末、バナジウム粉末、クロム粉末、およびそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。
【0037】
ピリドビスイミダゾール形成モノマーおよび金属粉末は混合され、次に混合物をポリリン酸と反応させてポリピリドイミダゾール溶液を形成する。所望ならば追加的ポリリン酸がポリマー溶液に添加できる。ポリマー溶液は、典型的にダイまたは吐糸管を通して押出しまたは紡績されて、フィラメントが調製または紡績される。
【0038】
ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)については、その開示を参照によって本明細書に援用する国際公開第93/20400号パンフレットで述べられる。ポリベンゾビスオキサゾールは、好ましくは構造の繰り返し単位からできている。
【0039】
【化3】

【0040】
ビス−アゾールの主鎖中に示される基が好ましいパラ−フェニレン基であるが、その基は、ポリマー調製を妨げないあらゆる二価の有機基によって置換されていても、または置換されていなくてもよい。例えばその基は、トリレン、ビフェニレン、ビス−フェニレンエーテルなどの炭素原子12個までの脂肪族であってもよい。
【0041】
本発明の繊維を作るために使用されるポリベンゾビスオキサゾールは、少なくとも25個、好ましくは少なくとも100個の繰り返し単位を有するべきである。ポリマーの調製およびこれらのポリマーの紡績については、前述の国際公開第93/20400号パンフレットで開示される。
【0042】
本発明の特に有用ないくつかの実施態様の例示として、耐炎性被服は、消防士または軍隊要員のためのジャンプスーツなどのために、外面シェル布帛である本質的に1つの層を有することができる。このようなスーツは典型的に消防服で使用され、森林火災を消火する領域にパラシュート降下するために使用できる。
【0043】
本発明のその他の実施態様では、耐炎性被服は、参照によって援用する米国特許第5,468,537号明細書で開示されるような一般構造を有する多層衣類である。このような衣類は、一般に3層または3つのタイプの布帛構造体を有し、各層または布帛構造体は異なる機能を果たす。消防士のために、火炎防護を提供して火炎からの一次防御の役割を果たす外面シェル布帛がある。外面シェルに隣接して水分バリアがあり、それは典型的に液体バリアであるが、水蒸気がバリアを通過できるように選択できる。繊維状不織布または織布メタ−アラミドスクリム布帛上のゴアテックス(Gore−Tex)(登録商標)PTFE膜またはネオプレン(Neoprene)(登録商標)膜のラミネートが、このような構造体で典型的に使用される水分バリアである。水分バリアに隣接して熱ライナーがあり、これは一般に内面布帛に付着する耐熱性の繊維バットを含む。水分バリアは熱ライナーが湿らないようにして、熱ライナーは、着用者が対処する火災または熱の脅威からの熱ストレスから着用者を防護する。
【0044】
本発明の衣類の外面シェル布帛は、2つの繊維の100重量部を基準にして、60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維および5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を有する。この組成範囲は双方の繊維の特性の最良の組み合わせを提供すると考えられる。いくつかの好ましい実施態様では、本発明の衣類の外面シェル布帛の組成範囲は、2つの繊維の100重量部を基準にして、70〜90重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維および10〜30重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を有する。
【0045】
本発明の被服は、改善された外面布帛を有する。ポリベンゾビスオキサゾール糸は、ベースポリマーの化学構造のために典型的にUV光への曝露にあまり良く耐えない。他方ポリピリドビスイミダゾール繊維は、UV光への曝露に非常に耐性である。例えばザイロン(Zylon)(登録商標)PBO繊維のサンプルは、キセノメーター(Xenometer)を通じたわずか60時間のUV光曝露後に試験すると、同様にUVに曝露したM5(登録商標)PIPD繊維の約2%未満の強度損失に対して、約15%の強度損失を有した。キセノメーター(Xenometer)を通じた360時間のUV光への長い曝露時間がPBOの39%の損失をもたらしたのに対し、PIPD繊維は同一曝露に対して7%未満の損失を有した。
【0046】
外面布帛中で過剰なポリピリドビスイミダゾール繊維をポリベンゾビスオキサゾール繊維と共に使用して、2つの繊維が布帛中に均一に分布する場合、組み合わせは、得られた難燃性布帛が、ポリパラフェニレンテレフタルアミドとポリビベンゾイミダゾール繊維の組み合わせから作られた先行技術の外面布帛よりも高い強度を有するのみならず、ポリベンゾビスオキサゾール繊維だけから作られた衣類を著しく弱め、そして分解する可能性もあるUV光への曝露後に、衣類が確実に一体化を保つことを確実にする。
【0047】
本発明の好ましい実施態様では、外面シェル布帛は織布である。繊維は繊維の均質混合物のステープルファイバー糸を使用して、外面シェル布帛中に組み込むことができる。「均質混合物」とは、配合物中の様々なステープルファイバーが比較的均一な繊維混合物を形成することを意味する。所望ならば、この比較的均一なステープルファイバー混合物中で、その他のステープルファイバーを組み合わせることができる。配合は、いくつかの連続フィラメントボビンをクリールして同時に2つ以上のタイプのフィラメントを切断し、切断ステープルファイバーの配合物を形成する工程、または異なるステープルファイバーのベールを開けて、次に様々な繊維を開綿機、配合機、および梳綿機内で開綿および配合することを伴う工程、または梳綿機内で繊維混合物の篠綿を形成するような、様々なステープルファイバーの篠綿を形成して、次にそれをさらに処理して混合物を形成する工程をはじめとする、技術分野で知られているいくつものやり方によって達成できる。配合物全体を通じて様々なタイプの異なる繊維が比較的均一に分布しさえすれば、均質な繊維配合物を作るその他の工程も可能である。糸が配合物から形成されるならば、糸はまた比較的均一なステープルファイバー混合物を有する。一般に最も好ましい実施態様では、ステープルファイバーの開口不良に起因する、繊維の結び目またはスラブおよびその他の重大な欠点が最終布帛品質を損なう量で存在しないように、個々のステープルファイバーは、繊維工程で有用な布帛を作るのに標準的な程度に開口または分離する。
【0048】
代案としては、本発明のいくつかの織布は、ポリピリドビスイミダゾール繊維ステープル糸の個々の末端をポリベンゾビスオキサゾール繊維ステープル糸の個々の末端と共に製織して作成できる。これは2本の異なるステープル糸を共に撚り合わせる、または1タイプのステープルファイバーの部分を縦糸に、別のタイプのステープルファイバーを横糸に製織するなどのいくつものやり方で達成できる。
【0049】
代案としては、本発明のいくつかの織布は、異なるフィラメントの混合物であるマルチフィラメント連続糸から作ることができ、または異なるステープル糸について上述したように、異なるマルチフィラメント糸の個々の末端から製織される。
【0050】
本発明はまた、20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維および5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維を含んでなる外面シェル布帛を被服に組み込むことで、内側熱ライニング、液体バリア、および外面シェル布帛を有する耐炎性被服の製造方法に関し、ポリピリドビスイミダゾール繊維は20dl/gを超える固有粘度を有する。いくつかの好ましい実施態様では、ポリピリドビスイミダゾール繊維は、ポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)を含んでなる。
【0051】
次の実施例によって本発明を例示するが、制限することは意図されない。
【実施例】
【0052】
実施例1
ポリベンゾビスオキサゾールステープルファイバー、ポリピリドビスイミダゾール、および帯電防止繊維の均質混合物のリング精紡糸の縦糸および横糸の双方を有する、耐熱性および耐久性のある布帛を調製する。ポリベンゾビスオキサゾールステープルファイバーは東洋紡から入手でき、登録商標ザイロン(Zylon)(登録商標)の下に知られている。ポリピリドビスイミダゾールステープルファイバーはPIPDポリマーからできており、登録商標M5(登録商標)繊維の下にマジェラン・システムズ・インターナショナル(Magellan Systems International)によって市販される。帯電防止ステープルファイバーはナイロンシースおよび炭素コアを有して、インビスタ(Invista)から入手できP−140ナイロン繊維として知られている。
【0053】
60重量%のポリピリドビスイミダゾール繊維、358%のポリベンゾビスオキサゾール、および2重量%の帯電防止繊維のピッカー配合物シルバー(picker blend sliver)を調製して、従来の綿系機器で処理し、次にリング精紡機を使用して、4.0の撚り係数と約21テックス(28番手)の糸繊度を有する紡績ステープル糸に紡ぐ。次に2本の単糸を撚り合わせ機上で撚り合わせて双糸を作る。同様の工程および同一の撚りおよび配合比率を使用して、横糸として使用するための24テックス(24番手)糸を作る。前と同じように、これらの単糸の2本を撚り合わせて双糸を形成する。
【0054】
次にポリベンゾビスオキサゾール/ポリピリドビスイミダゾール/帯電防止混紡糸を縦糸および横糸として使用して有梭織機上で織布し、2×1綾織、および1cmあたり26末端×17ピック(1インチあたり72末端×52ピック)の構造、および約215g/m(6.5oz/yd)の基本重量を有する生機布帛を作る。次に生機綾織布帛を熱水中で精錬し、低張力下で乾燥させる。次に塩基性染料を使用して精錬した布帛をジェット染色する。完成布帛は約231g/m(7oz/yd)の基本重量を有する。
次に水分バリアおよび熱ライナーもまた含む3層複合材布帛のための外面シェル布帛として、完成布帛を使用する。水分バリアは不織布MPD−I/PPD−T繊維基材(2.7oz/yd)があるゴアテックス(Goretex)(0.5〜0.8oz/yd)であり、熱ライナーは3.2oz/ydMPD−Iステープルファイバースクリムにキルト縫いされた3枚のスパンレース1.5oz/ydシートである。次に複合材布帛から消防士出動服などの防護服を作る。
【0055】
実施例2
代案としては、布帛をパターンに従った布帛形状に切断して付形物を縫い合わせ、産業で防護服として使用するための防護カバーオールを形成し、実施例1の完成布帛を衣類をはじめとする防護物品に作る。同様に、布帛を布帛形状に切断して付形物を縫い合わせ、防護シャツおよび防護ズボンを含んでなる防護服の組み合わせを形成する。所望ならば布帛を切断して縫い合わせ、フード、スリーブ、およびエプロンなどのその他の防護服構成要素を形成する。
【0056】
高比率のポリベンゾビスオキサゾール繊維から作られた被服に比べて、本発明の被服は改善された紫外線(UV)抵抗性を有することが期待される。
【0057】
ここで開示される全ての特許および刊行物は、その全体を参照によって援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を含んでなる外面シェル布帛を有する耐炎性被服。
【請求項2】
ポリピリドビスイミダゾール繊維が25dl/gを超える固有粘度を有する請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項3】
ポリピリドビスイミダゾール繊維が28dl/gを超える固有粘度を有する請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項4】
70〜90重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
10〜30重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を含んでなる請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項5】
ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維がステープルファイバーとして存在する請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項6】
ポリピリドビスイミダゾールがポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である、請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項7】
ポリベンゾビスオキサゾールポリマーが、

【化1】

の単位を含んでなる請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項8】
a)60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
b)5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を含んでなる請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項9】
ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維が連続フィラメントとして存在する請求項1に記載の耐炎性被服。
【請求項10】
a)内側熱ライニング、
b)液体バリア、および
c)外面シェル布帛
を順番に含んでなり、外面シェル布帛が
20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を含んでなる耐炎性被服。
【請求項11】
ポリピリドビスイミダゾール繊維が25dl/gを超える固有粘度を有する請求項10に記載の耐炎性被服。
【請求項12】
ポリピリドビスイミダゾール繊維が28dl/gを超える固有粘度を有する請求項10に記載の耐炎性被服。
【請求項13】
外面シェル布帛が、
70〜90重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
10〜30重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を含んでなる請求項10に記載の耐炎性被服。
【請求項14】
ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維がステープルファイバーとして存在する請求項10に記載の耐炎性被服。
【請求項15】
ポリピリドビスイミダゾールがポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である請求項10に記載の耐炎性被服。
【請求項16】
ポリベンゾビスオキサゾールポリマーが、式
【化2】

の単位を含んでなる請求項10に記載の耐炎性被服 。
【請求項17】
ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維が連続フィラメントとして存在する請求項10に記載の耐炎性被服。
【請求項18】
ポリピリドビスイミダゾールおよびポリベンゾビスオキサゾール繊維が連続フィラメントとして存在する請求項10に記載の耐炎性被服。
【請求項19】
20dl/gを超える固有粘度を有する60〜95重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
5〜40重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を含んでなる外面シェル布帛を被服に組み込むことで、内側熱ライニング、液体バリア、および外面シェル布帛を有する耐炎性被服の製造方法。
【請求項20】
70〜90重量部のポリピリドビスイミダゾール繊維と、
10〜30重量部のポリベンゾビスオキサゾール繊維と
を有する請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2009−520132(P2009−520132A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545956(P2008−545956)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/062008
【国際公開番号】WO2007/073540
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】