説明

ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびそれからなる成形品

【課題】セルフタップ強度に優れ、且つ衝撃強度、熱伝導率に均衡して優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、(B)平均粒子径が20〜40μmである酸化マグネシウム40〜250重量部、(C)繊維状充填材75〜250重量部を配合してなるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物であり、(C)繊維状充填材は、平均繊維径9〜15μmの繊維状充填剤であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンサルファイド樹脂、酸化マグネシウム及び繊維状充填材を含有する樹脂組成物に関し、セルフタップ強度、衝撃強度及び熱伝導率に優れていることから、特に光学記憶装置の部品に適した樹脂組成物に関する。更に詳細には、レーザー光を利用して書き込み及び読み出しを行うCD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAMなどに代表される光学記憶装置に使用される各種部品に適した樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンサルファイド樹脂は高耐熱性のスーパーエンジニアリングプラスチックに属し、機械的強度、剛性、難燃性、耐薬品性、電気特性および寸法安定性などを有していることから、射出成形用を中心として、各種電気・電子部品、家電部品、自動車部品および機械部品などの用途に幅広く使用されている。かかる用途の一つとして電気・電子部品である光ピックアップが挙げられる。特にCD−R、CD−RW、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAMなどに代表される書き込みを行う該用途では、記録メディアの高容量化に伴ないレーザーの出力が高くなることにより生じる発熱等に起因してレーザーの寿命が短くなる問題や、装置内部が高温となるため、従来の樹脂では、装置内部の熱を放出する事ができず、樹脂部品への蓄熱による寸法変化による画像のゆがみ、書き込み不良などの問題により、樹脂化が思うように進んでいないのが実状である。
【0003】
また、金属代替によってねじによる部品取り付け時のセルフタップ強度が要求されている。また、該用途ではユーザーの製品試験項目内に落下衝撃試験が必須であり、衝撃強度も要求されている。
【0004】
例えば、特許文献1〜2のようにポリフェニレンサルファイド樹脂に酸化マグネシウムを配合することにより、低臭気性、増粘作用の抑制および熱安定性効果(特許文献1参照)、低塩素イオン性および機械的物性効果(特許文献2参照)が記載されているが、特許文献1〜2記載の酸化マグネシウムは平均粒子径2.0μm以下である平均粒子径の小さな酸化マグネシウムを使用することを特徴としており、成形品としたときのセルフタップ強度および熱伝導率向上効果が不十分であった。
【特許文献1】特開2004−277520号公報(第2〜3頁、実施例)
【特許文献2】特開2003−096298号公報(第2〜3頁、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明は、セルフタップ強度に優れ、且つ衝撃強度、熱伝導率に均衡して優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、(B)平均粒子径が20〜40μmである酸化マグネシウム40〜250重量部、(C)繊維状充填材75〜250重量部からなるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物が、成形品としたときのセルフタップ強度に優れ、且つ衝撃強度、熱伝導率に均衡して優れることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、(B)平均粒子径が20〜40μmである酸化マグネシウム40〜250重量部、(C)繊維状充填材75〜250重量部を配合してなるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物、
(2)(C)繊維状充填材が、平均繊維径9〜15μmの繊維状充填剤であることを特徴とする(1)記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物、
(3)(C)繊維状充填材が、ガラス繊維であることを特徴とする(1)または(2)記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物、
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出成形してなる成形品、
(5)成形品が光学記憶装置部品である(4)記載の成形品、
(6)セルフタップ強度が8cN・m以上である(4)または(5)記載の成形品、
(7)衝撃強度が5KJ/m以上であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれか記載の成形品、および
(8)熱伝導率が0.5W/m・K以上であることを特徴とする(4)〜(7)のいずれか記載の成形品、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セルフタップ強度に優れ、且つ衝撃強度及び熱伝導率等に均衡して優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を得る事が可能である。また、かかる特性を併せ持つ事から、光学記録装置部品、特に光ピックアップスライドベース用材料として適するポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用する(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位
【0010】
【化1】

【0011】
を70モル%以上、好ましくは90モル%以上を含む重合体である。上記繰り返し単位が70モル%以上とすることで、耐熱性に優れる樹脂組成物を得ることができるので好ましい。また、ポリフェニレンサルファイド樹脂は、好ましくはその繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能である。
【0012】
【化2】

【0013】
かかるポリフェニレンサルファイド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0014】
本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンサルファイド樹脂を、酸水溶液などによる洗浄(酸洗浄)、有機溶媒あるいは熱水による処理、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理を施した上で使用すること、およびこれらの処理を複数回繰り返したり、異なる処理を組み合わせたりすることももちろん可能であるが、なかでも少なくとも酸洗浄することは本発明の効果をより顕著に発揮する上で特に有効である。
【0015】
ポリフェニレンサルファイド樹脂を酸洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリフェニレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はポリフェニレンサルファイド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。また、ポリフェニレンサルファイド樹脂の酸洗浄に用いる酸または酸水溶液について、pHは2.5〜5.5であることが好ましく、使用量は乾燥したポリフェニレンサルファイド樹脂1kgに対して2〜100kgであることが好ましく、4〜50kgであることがより好ましく、5〜15kgであることがさらに好ましい。洗浄温度に特に制限はなく、通常室温で行うことが可能であり、加熱する場合には50〜90℃で行うことが可能である。洗浄時間は通常30分以上であることが好ましく、45分以上であることがさらに好ましい。上限についても特に制限はないが、洗浄効率の点から90分程度であることが好ましい。例えば、酢酸を用いる場合、室温に保持したpH4の水溶液中にポリフェニレンサルファイド樹脂粉末を浸漬し、45〜90分間撹拌することが好ましい。酸処理を施されたポリフェニレンサルファイド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜100℃であることが好ましく、60〜95℃であることがさらに好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸洗浄によるポリフェニレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
【0016】
ポリフェニレンサルファイド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリフェニレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリフェニレンサルファイド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリフェニレンサルファイド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0017】
ポリフェニレンサルファイド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリフェニレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリフェニレンサルファイド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリフェニレンサルファイド樹脂と水との割合は、水が多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリフェニレンサルファイド樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0018】
ポリフェニレンサルファイド樹脂をアルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥ポリフェニレンサルファイド樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥ポリフェニレンサルファイド樹脂単位重量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用重量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥ポリフェニレンサルファイド1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行っても良い。
【0019】
ポリフェニレンサルファイド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、通常150〜280℃の範囲が選択され、好ましくは200〜270℃であり、処理時間としては、通常0.5〜100時間の範囲が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることによって目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0020】
ポリフェニレンサルファイド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0021】
本発明で使用する(B)酸化マグネシウムは、本発明で規定するセルフタップ強度を向上させる上で、平均粒子径が20μm〜40μmであることが必要であり、、更に好ましくは25μm〜35μmである。
【0022】
なお、ここで、酸化マグネシウムの平均粒子径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100(島津製作所社製)を用いて各粒子径区間における粒子量(%)をプロットし、その累積した分布曲線より、D50(平均粒径)を求めた値である。
【0023】
本発明では平均粒子径20μm〜40μm、更に好ましくは25μm〜35μmの範囲内である酸化マグネシウムを使用することにより、コンパウンドした際のポリフェニレンサルファイド樹脂に対する酸化マグネシウムの比表面積が小さくなるため、ポリフェニレンサルファイド樹脂との接触界面が少なくなり、ポリフェニレンサルファイド樹脂に対し、酸化マグネシウムのような反応基を持たない物質でもセルフタップ強度を向上させることを可能としていると考えられる。酸化マグネシウムの平均粒子径が20μm未満のものでは、ポリフェニレンサルファイド樹脂中の酸化マグネシウムの分散は良くなるが、ポリフェニレンサルファイド樹脂に対し、酸化マグネシウムのような反応基を持たない物質では、コンパウンドした際のポリフェニレンサルファイド樹脂に対する酸化マグネシウムは比表面積が大きくなるため、ポリフェニレンサルファイド樹脂との接触界面が多くなり、セルフタップ強度は低下してしまう。また、平均粒子径が40μmを越えるものでは、異物効果となってしまい、タッピング時の破壊起点となってしまう。
【0024】
本発明で使用する酸化マグネシウムの配合量は、ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、40〜250重量部であり、好ましくは60〜200重量部、更に好ましくは70〜150重量部である。酸化マグネシウムの配合量が少なすぎると本発明に規定のセルフタップ強度や熱伝導率が低下し、多すぎると成形品の衝撃強度が大きく低下する。
【0025】
本発明で使用する(C)繊維状充填剤としては、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、石コウ繊維、金属繊維などが用いられ、中でも衝撃強度の効果をより向上させるためには、ガラス繊維を用いることが好ましい。また、ガラス繊維などの繊維状充填剤の平均繊維径は9〜15μmが好ましい。平均繊維径が9μm以上の繊維状充填剤を使用することでアスペクト比が適当な範囲とすることができるので繊維配向の異方性を制御することができ、寸法安定性を向上させることができるので好ましい。また、平均繊維径が15μm以下の繊維状充填剤を使用することで、樹脂組成物を成形品としたときの強度、剛性を向上させることができるので好ましい。
【0026】
また、これらの繊維状充填剤は2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得ることができるので好ましい。特に、繊維状充填剤としてガラス繊維、炭素繊維を使用する場合には、これらのカップリング剤による予備処理が好適に用いられる。
【0027】
本発明で用いられる繊維状充填材の配合量は、ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し、75〜250重量部であり、好ましくは100〜250重量部、更に好ましくは120〜200重量%である。繊維状充填材の配合量が少なすぎると強度、剛性、耐衝撃性が低くなってしまい、多すぎると成形時の流動性が低下する上に熱伝導率が低下してしまう。
【0028】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲において、シラン化合物を配合することが可能である。かかるシラン化合物としては、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられ、中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物等が好ましい。特に好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。かかるシラン化合物の含有量は、より優れた低バリ性および高靭性を得る点から、ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲が好ましく選択され、0.2〜1.5重量部の範囲がさらに好ましく選択される。シラン化合物をこの範囲で添加することで、シラン化合物添加による低バリ性および高靭性の向上効果が十分に発現させることができ、組成物のガス発生量を増加させることもないので好ましい。
【0029】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、有機リン化合物などの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物などの酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0030】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタールおよびポリイミドなどが挙げられる。
【0031】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲において、非繊維状充填材を配合することも可能である。かかる非繊維状充填材の具体例としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
【0032】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0033】
このようにして得られる本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
【0034】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品は、セルフタップ強度に優れたものが得られ、セルフタップ強度が8cN・m以上の成形品を得ることができる。さらに、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品は、14cN・m程度の優れたセルフタップ強度のものも得られる。
【0035】
ここで、セルフタップ強度とは、成形品の穴にタッピングネジを挿入し、ネジバカトルク(成形品内部が破損し、ねじが空転した際の最大トルク)であり、以下の方法で測定をする。
【0036】
ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物をシリンダー温度:320℃、金型温度:130℃で光学部品用スライドベース成形品(内径1.2mm径のネジ穴を2箇所備えた30mm×30mm×3mm厚の平板状の外周に高さ5mm×厚み1mmのたて壁付きの成形品)を成形し、傘型トルクドライバーで(中村製作所社製”カノン空転式トルクドライバー”1.5LTDK)により、タッピングネジ(BIT SPH1.0×3.0荒先)を成形品の穴に挿入し、ネジバカトルク(成形品内部が破損し、ねじが空転した際の最大トルク)をセルフタップ強度とした。
【0037】
また、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品は、衝撃強度が優れたものが得られ、衝撃強度が5KJ/m以上の成形品を得ることができる。さらに、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品は、8KJ/m程度のすぐれた衝撃強度のものも得られる。
【0038】
ここで衝撃強度とは、シャルピー衝撃強度(ノッチ付き)であり、シリンダー温度330℃、金型温度145℃で射出成形した成形品をISO 179に従って測定した値である。
【0039】
また、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品は、熱伝導率が優れたものが得られ、熱伝導率が0.5W/m・K以上の成形品を得ることができる。さらに、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形品は、1.5W/m・K程度のすぐれた熱伝導率のものも得られる。
【0040】
ここで、熱伝導率とは、シリンダー温度:330℃、金型温度:145℃の条件で、50mm×50mm×厚さ3mmの角形成形品(フィルムゲート)を成形し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いてレーザーフラッシュ法定数測定装置(リガク社製LF/TCM-FA8510B)により熱伝導率を測定した値である。
【0041】
また本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、優れたセルフタップ強度を有するとともに、衝撃強度及び熱伝導率にも均衡して優れており、CD、DVD、レーザーディスク(登録商標)、光磁気ディスクの光ピックアップ部品用途に特に好適に用いられる。
【0042】
その他本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0044】
[使用原材料]
PPS:攪拌機付きオートクレーブに47%水硫化ナトリウム水溶液2.98kg(25モル)、48%水酸化ナトリウム2.17kg(26モル)ならびにN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す。)5kgを仕込み、徐々に205℃まで昇温し、水2.7kgを含む抽出水2.8リットルを除去した。残留混合物に1,4−ジクロロベンゼン3.75kg(25.5モル)ならびにNMP2.5kgを加えて、270℃で1時間加熱した。これを濾過し、pH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、密閉されたオートクレーブ中で192℃で約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、ポリマーを120℃で24時間減圧乾燥してMFR6000(g/10min)のPPS−1を得た。なお、MFRは、315.5℃、5分滞留、荷重5000g(オリフィス直径2.095mm、長さ8.00mm)の条件下でメルトインデクサーを用いて測定した。またポリフェニレンサルファイド樹脂の加熱減量は、0.5重量%であった。なお、加熱減量は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を1gをアルミカップに入れ、150℃の雰囲気で1時間予備乾燥した後、重量を測定し、371℃の空気中で1時間処理し、再度重量を測定した。371℃の処理による重量の減量を処理前の重量で徐してパーセント表示して加熱減量とした。
【0045】
酸化マグネシウム−1(以下、酸マグ−1と略す):タテホ化学工業社製、高熱伝導性酸化マグネシウム“Cool Filler CF2−100A”、平均粒子径30μm
酸化マグネシウム−2(以下、酸マグ−2と略す):協和化学工業社製、ミクロマグ“3−150”、平均粒子径0.8μm
【0046】
黒鉛:中越黒鉛社製、グラファイト(CFW)“CFW50A”、平均粒子径50μm
アルミナ:住友化学工業社製、“AL−32B”、平均粒子径2μm
炭酸カルシウム(以下、炭カルと略す):同和カルファイン社製、重質炭酸カルシウム“KSS−1000”、平均粒子径5μm
【0047】
ガラス繊維(以下、GFと略す):日本電気硝子社製、ガラスチョップドストランド“ECS 03 T−747H”、平均繊維径10.5μm
【0048】
炭素繊維(以下、CFと略す):東レ社製、チョップドトレカ“TS−12”、平均繊維径10μm
【0049】
なお、平均粒径の測定は、フィラー約0.05gを水50ccにいれて撹拌し、さらにスポイトで、予め100ccに“マイペット”(花王社製)2,3滴いれた界面活性剤希薄溶液を数滴(泡が立たない程度)いれ、超音波洗浄機で分散させた後、島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100を用いて各粒子径区間における粒子量(%)をプロットし、その累積した分布曲線より、D50(平均粒径)を求めた。
【0050】
[樹脂ペレット調整方法]
上記各原材料を表1、表2に示す割合で予めドライブレンドし、シリンダー温度280℃(ホッパー下側)〜310℃(吐出口側)に設定したスクリュー型2軸押出機(日本製鋼所社製TEX−44)を用いて溶融混練、ペレタイズしてペレット状樹脂組成物を作製した。
【0051】
このペレットを用い、以降に示す各手段によりセルフタップ強度、衝撃強度及び熱伝導率の測定を行った。なお、いずれの測定時にも共通し、成形前にはペレットを130℃に温調した熱風乾燥機中にて3時間予備乾燥を行った。
【0052】
[セルフタップ強度の測定]
何れの材料も評価用試験片は、東芝機械社製IS100FI−5A型射出成形機にて、シリンダー温度:320℃、金型温度:130℃で光学部品用スライドベース成形品(内径1.2mm径のネジ穴を2箇所備えた30mm×30mm×3mm厚の平板状の外周に高さ5mm×厚み1mmのたて壁付きの成形品)を成形し、傘型トルクドライバーで(中村製作所社製”カノン空転式トルクドライバー”1.5LTDK)により、タッピングネジ(BIT SPH1.0×3.0荒先)を成形品の穴に挿入し、ネジバカトルク(成形品内部が破損し、ねじが空転した際の最大トルク)を評価した。
【0053】
[衝撃強度の測定]
シャルピー衝撃強度(ノッチ付き):ISO 179に従って測定した。
【0054】
何れの材料も評価用試験片は、日本製鋼所社製J55AD型射出成形機にて、シリンダー温度:330℃、金型温度:145℃の設定条件で射出成形することにより作成した。
【0055】
[熱伝導率の測定]
何れの材料も評価用試験片は、日本製鋼所社製J55AD型射出成形機にて、シリンダー温度:330℃、金型温度:145℃の条件で、50mm×50mm×厚さ3mmの角形成形品(フィルムゲート)を成形し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いてレーザーフラッシュ法定数測定装置(リガク社製LF/TCM-FA8510B)により熱伝導率を測定した。
【0056】
[実施例1〜10]
表1に実施例を示す。実施例1〜10の場合の樹脂組成物は、セルフタップ強度及び衝撃強度が高く、しかも、熱伝導率も良好であった。
【0057】
【表1】

【0058】
[比較例1]
実施例5記載の配合量で酸マグ−1を酸マグ−2に変えることにより、タップ強度が大幅に低下する傾向にあった。
【0059】
[比較例2]
フィラーをGFとの組み合わせで、酸マグ−1を黒鉛に変えることにより、熱伝導率は向上する傾向にあったが、セルフタップ強度及び衝撃強度が大幅に低下する傾向にあった。
【0060】
[比較例3]
フィラーをGFとの組み合わせで、酸マグ−1をアルミナに変えることにより、セルフタップ強度及び衝撃強度が低下する傾向にあった。
【0061】
[比較例4]
フィラーをGFとの組み合わせで、酸マグ−1を炭カルに変えることにより、セルフタップ強度が低下する傾向にあり、しかも、熱伝導率が大幅に低下する傾向にあった。
【0062】
[比較例5]
フィラーを黒鉛とCFの組み合わせにすることにより、熱伝導率は大幅に向上する傾向にあったが、セルフタップ強度及び衝撃強度が大幅に低下する傾向にあった。
【0063】
[比較例6]
ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物中の酸マグ−1の配合量を請求項1記載の規定量より多く配合することにより、タップ強度及び熱伝導率は大幅に向上する傾向にあったが、衝撃強度が大幅に低下する傾向にあった。
【0064】
[比較例7]
ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物中の酸マグ−1の配合量を請求項1記載の規定量より少なく配合することにより、衝撃強度は大幅に向上する傾向にあったが、熱伝導率が大幅に低下する傾向にあった。
【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、レーザー光を利用して書き込み及び読み出しを行うCD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAMなどに代表される光学記録装置に使用される、光ピックアップスライドベース等の各種部品として展開が期待出来るが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、(B)平均粒子径が20〜40μmである酸化マグネシウム40〜250重量部、(C)繊維状充填材75〜250重量部を配合してなるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項2】
(C)繊維状充填材が、平均繊維径9〜15μmの繊維状充填剤であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項3】
(C)繊維状充填材が、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1または2記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【請求項5】
成形品が光学記憶装置部品である請求項4記載の成形品。
【請求項6】
セルフタップ強度が8cN・m以上である請求項4または5記載の成形品。
【請求項7】
衝撃強度が5KJ/m以上であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の成形品。
【請求項8】
熱伝導率が0.5W/m・K以上であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の成形品。

【公開番号】特開2007−262217(P2007−262217A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88358(P2006−88358)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】