説明

ポリフェノール含有製品

ポリフェノール、ならびに、随意的にステロールおよび/またはスタノールエステルを含む、長期保存可能な製品、特に飲料について開示する。混合後であって加熱処理の前に、製品のpHを少なくとも0.2引き下げることによって、製品を加熱処理する間のポリフェノールの損失を防止する。最終的な飲料のpHは約4.6〜約6.8でなければならない。好ましい製品は、飲料1g当たり少なくとも0.2〜5μgのカカオ・ポリフェノールを含む、低脂肪カカオ飲料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール、ならびに、随意的にステロールおよび/またはスタノールエステルを含む製品、特に飲料、およびそれらの製造方法に関する。本発明の方法によって調製された製品は、一定量のポリフェノールを有する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノール化合物は、植物材料に由来する生物活性物質である。それらは、植物材料がもたらす官能および栄養品質と密接に関係している。多くの植物ポリフェノールが抗酸化活性を有する。紅茶、赤ワイン、およびカカオ中に存在するポリフェノールを消費することにより、顕著な健康効果が得られる。
【0003】
レディ・トゥ・イートまたはレディ・トゥ・ドリンク製品製造のための標準的な無菌処理技術は、フラバン−3−オールおよびプロアントシアニジンなどのポリフェノールの損失につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、最終製品の調製および長期保存可能な製品の製造に必要とされる加熱処理の間に、ポリフェノールを損失するのではなく残存させる、レディ・トゥ・イートまたはレディ・トゥ・ドリンク製品、特に、乳飲料の調製が非常に望ましいであろう。飲料の殺菌に必要とされる時間、加熱調理することによって乳タンパク質の変性を生じうることから、中性もしくは中性に近いpHでの乳飲料の加熱処理は、特に懸念される事項である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
製品1g当たり少なくとも約0.2μgのポリフェノールを含む、加熱処理されたレディ・トゥ・イートまたはレディ・トゥ・ドリンク製品を調製する。ポリフェノールの量は、約0.2〜約5μgが好ましい。製品は、少なくとも約5重量%の水分含量を有する。製品が飲料の場合、水分含量は約50%〜約80%である。最終製品のpHは、約4.8〜約6.8であり、約6.2〜約6.8が好ましい。ポリフェノールは、例えばカテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、および/またはアフゼレキンなどの可食性のフラバン−3−オール、および/または、例えばプロシアニジン、プロデルフィニジン、および/またはプロペラルゴニジンなどの可食性のプロアントシアニジンである。
【0006】
好ましい製品としては、(±)−カテキン、(±)−エピカテキン、および/または、それらのプロシアニジン・オリゴマーなどのカカオ・ポリフェノールを含む、乳系、大豆系、および乳清系のカカオ飲料が挙げられる。カカオ飲料には、ある程度脱脂されたカカオ粉末、十分に脱脂されたカカオ粉末、チョコレート・リカー、カカオ抽出液、および/または乾燥カカオ抽出物を含む、1種類以上の高CPカカオ材料が用いられる。
【0007】
ある程度脱脂されたカカオ粉末は、脱脂されたカカオ粉末1g当たり少なくとも約25mg、好ましくは約25〜35mgのカカオ・ポリフェノールを含む。チョコレート・リカーは、脱脂されたリカー1g当たり約12mg、好ましくは約13〜17mgのカカオ・ポリフェノールを含む。カカオ抽出物は、乾燥抽出物1g当たり少なくとも約200mg、好ましくは約350〜500mgのカカオ・ポリフェノールを含む。
【0008】
pHはクエン酸などの可食性の酸または水酸化ナトリウムなどの可食性の塩基で調整する。
【0009】
ポリフェノールを含む、レディ・トゥ・イートまたはレディ・トゥ・ドリンク製品の改善された調製方法では、混合後であって加熱処理前の製品のpHを少なくとも0.2、好ましくは0.4引き下げる工程を有してなる。典型的には、加熱処理前のpHは約7.5未満であり、約4.6〜約6.8であることが好ましい。
【0010】
1種類以上のプロシアニジンを含むレディ・トゥ・ドリンクのカカオ飲料の調製方法は、
前記飲料に前記プロシアニジンを加え、
可食性の酸を用いて前記飲料のpHを少なくとも0.2降下させて約4.6〜約6.8にし、
前記pH調整飲料を加熱処理し、
前記加熱処理された飲料を包装する、
各工程を有してなる。加熱処理は、約62.78℃〜約137.8℃(約145°F〜約280°F)で約1秒〜約15秒間、行なわれる。
【0011】
飲料1g当たり少なくとも約0.2μgのカカオ・ポリフェノールを含むカカオ飲料の調製方法は、
高せん断下で、水および1種類以上のカカオ材料を含む乾燥カカオ混合物をスラリー化し、
甘味料、1種類以上の増粘剤、1種類以上の安定剤、およびビタミン−ミネラル混合剤から実質的になる乾燥混合物を乳汁に混合し、
前記カカオ・スラリーを前記乳汁混合物に加え、
液体香味料(liquid flavorant)を加える、
各工程を有してなる。可食性の酸または可食性の塩基を用いてpHを約6.8〜約7.5、好ましくは約6.8〜約7.2、さらに好ましくは約6.9〜約7から、約4.6〜約6.8、好ましくは約6.2〜約6.8に調整する。スラリーを約1秒〜約15秒間、約71.67℃〜約137.8℃(約161°F〜約280°F)で加熱処理する。包装前に、随意的に、スラリーを冷却および/または均質化する。典型的には、飲料は、約50%の水分含量を有する。カカオ材料は、未発酵および/または十分に発酵されていないカカオ豆から調製されることが好ましい。カカオ抽出物は、脱脂された、未発酵または十分に発酵されていないカカオ豆を溶媒抽出し、前記溶媒を除去することにより調製する。飲料はまた、アルカリ化されたカカオ粉末、乳化剤(例えば、レシチン)、甘味料(例えば、砂糖)、1種類以上の増粘剤、1種類以上の安定剤、ビタミン−ミネラル混合剤、および/または1種類以上の香味料を含む。少なくとも約50重量%の水分含量を有するポリフェノール含有製品を加熱処理する間の(−)−エピカテキンおよび(+)−カテキンの損失は、加熱処理の前に、製品のpHを少なくとも0.2降下させて、典型的には約4.6〜約6.8にすることにより最小限に抑えられる。加熱処理後、飲料中に存在するカカオ・ポリフェノールは、(+)−エピカテキン、(−)−エピカテキン、(+)−カテキン、(−)−カテキン、およびそれらのプロシアニジン2量体および3量体を含む。
【0012】
カカオ飲料は、B6およびB12などの心臓によいビタミン、例えばビタミンEおよびCなどの抗酸化剤、および/またはカルシウムなどのミネラルを含むことが好ましい。好ましい実施の形態では、製品は植物ステロールおよび/またはスタノールエステルを含む。ステロールおよび/またはスタノールエステルの量は、製品1g当たり約0.1〜約30μgである。最大の効果を得るため、飲料は飽和脂肪およびコレステロールの低い食物の一環として用いられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】製品の熱処理法を示す概略図。最終的な殺菌および包装工程の前に、典型的な材料を合わせ、混合し、pHを規格化する。S1〜S5は、製造工程の間にカカオ・ポリフェノール(CP)の総量を測定する、サンプル採取場所である。
【図2】典型的な高CP乳飲料の無菌処理を説明する概略図。高CPカカオ粉末、乾燥高CPカカオ抽出物、およびアルカリ化したカカオ粉末の初期スラリー化を、高せん断下、約60℃(180°F)で行ない、カカオを水和させ、カカオ粉末を含むすべての乾燥材料を完全に分散させる。クエン酸を加えることにより、混合物を、好ましくは6.5以下にpH調整する。未処理の完全バッチのpH調整を、熱処理前に行なうことに注意することが重要である。次に、飲料を殺菌し、包装する。
【図3】高CPカカオ粉末の順相HPLC/FLDトレース。
【図4】高CPカカオ抽出物の順相HPLC/FLDトレース。
【図5】加熱調理した高CPカカオ抽出物の順相HPLC/FLDトレース。
【図6】UHT加熱処理前後の高CPカカオ飲料のHPLC/FLDトレース。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、「食品」は、身体の任意の器官において、成長を維持し、生命過程を修復し、エネルギーを供給するのに用いられる、タンパク質、炭水化物、および/または脂肪を含む物質である。食品は、ミネラル、ビタミン、および調味料などの補充物質も含んでいて差し支えない(Merriam-Webster Collegiate Dictionary, 10th Edition, 1993)。「食品」という用語は、ヒトまたは動物の消費に適合させた飲料を含む。「食品添加剤」は、米国食品医薬品局の連邦規制基準(CFR)第21編、170.3(e)(1)に規定されており、直接的および非直接的な添加剤を含む。
【0015】
本明細書では、「栄養補助食品」は、食物を補完することを意図し、次の食物成分を1種類以上有する、または含む、製品(タバコ以外)である:ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物、アミノ酸、一日の総摂取量を増加することにより食事を補完するためにヒトが使用する食品成分、またはこれらの成分の濃縮物、代謝物、抽出物、または混合物(Merriam-Webster Collegiate Dictionary, 10th Edition, 1993)。その用語が、食品表示に使用される場合、「補完(supplement)」は、栄養素が米国の1日当たり推奨栄養所要量(the U.S. Recommended Daily Allowance)の50%を超える量で加えられていることを意味する(“Understanding Normal and Clinical Nutrition”, 3rd Edition, Editors Whitney, Catalado and Rolfesの525頁参照)。
【0016】
本発明は、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、および/またはアフゼレキンなどのフラバン−3−オール、および、プロシアニジン、プロデルフィニジン、およびプロペラルゴジンなどのプロアントシアニジンを含み、好ましい実施の形態では、これらをステロールエステルおよび/またはスタノールエステルと組み合わせて用いる、水分含有製品、特に飲料に関する。
【0017】
ステロール/スタノールエステル以外の高脂血症治療薬を、ステロールエステルおよび/またはスタノールエステルと組み合わせて、本発明に使用して差し支えない。例として、低カロリーまたはノンカロリーの脂肪が挙げられる。
【0018】
製品に、L−アルギニン、例えばカルシウム、カリウム、およびマグネシウムなどのミネラル、B、C、およびEなどのビタミン、カロチノイド、一価または多価不飽和脂肪酸(例えばω−3脂肪酸)を含めてもよい。カカオ・プロシアニジンと同様の抗酸化特性を有する、カカオ以外に由来するポリフェノールもまた、単独で、またはカカオ・プロシアニジンと組み合わせて使用して差し支えない。これらには、ナッツ、ナッツの粉末、およびナッツの皮が含まれる。
【0019】
本明細書では、「カカオ・ポリフェノール」という用語は、カカオ豆、カカオニブ、ならびに、ある程度または十分に脱脂されたカカオ粉末、チョコレート・リカー、およびカカオ抽出液または乾燥カカオ抽出物など、カカオ豆またはカカオニブから調製されたカカオ材料中に存在する、ポリフェノール化合物のことをいう。
【0020】
「プロシアニジン」という用語は、天然に存在する、または合成された、カテキンおよび/またはエピカテキンのオリゴマーのことをいう。しかしながら、本明細書における「カカオ・プロシアニジン」への言及には、(±)−カテキンおよび(±)−エピカテキンの単量体も含まれるものと理解されたい。(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、およびそれらの各々のエピマーである(−)−カテキンおよび(+)−エピカテキンは、次に示す構造を有する:
【化1】

【0021】
プロシアニジン・オリゴマーは、2〜約18のモノマー単位を有していて差し支えない。オリゴマーとしては、例えば、2量体、3量体、4量体、5量体、6量体、7量体、8量体、9量体、10量体などが挙げられる。天然オリゴマーでは、単量体は、(4→6)および/または(4→8)のフラバン内結合を介して結合する。(4→8)の結合のみを有するオリゴマーは直線状である。少なくとも1つの(4→6)結合が存在すると、分岐差オリゴマーを生じる。(4→8)プロシアニジンの合成は、参照することによりその開示が本明細書に援用される、米国特許第6,420,572号明細書を参照のこと。該明細書は、C−4活性化基(例えば、ヒドロキシエトキシなどの末端ヒドロキシ基を有するC2-C6アルコキシ基)を有する、ヒドロキシ保護化フェノール単量体を、第2の保護化フェノール単量体とカップリングさせて、保護化2量体を形成し、これを次に脱保護するか、あるいは随意的に他の保護化された活性化フェノール単量体とカップリングさせることについて開示している。
【0022】
カカオ・ポリフェノール誘導体もまた、本発明に有用であろう。これらとして、没食子酸化カテキン(gallated catechin)および/またはエピカテキン単量体およびオリゴマー、グリコシル化単量体およびオリゴマー、およびそれらの混合物;硫酸化、グルクロン酸化、およびメチル化の形態などのプロシアニジン単量体およびオリゴマーの代謝産物;結腸マイクロフロラの代謝または哺乳類体内の代謝によって生じたプロシアニジンの酵素切断生成物が挙げられる。誘導体は、天然起源由来であるか、または合成的に調製して構わない。
【0023】
合成オリゴマーもまた、本発明に有用である。2000年12月5日にW. Tueckmantelらに発行された米国特許第6,156,912号明細書、および2002年11月5日にA. Kozikowskiらに発行された米国特許第6,476,241号明細書を参照のこと。
【0024】
「標準平均品質のカカオ豆」という用語は、パルプ材料から分離し、乾燥させたカカオ豆のことをいう。それらは比較的カビが生えず、内部侵入(infestation)されていない。このような豆は市販されており、高CPカカオ固形物および粉末、高CPチョコレート・リカー、および高CPカカオ抽出物を調製するための原料を形成する。この用語は、任意の、遺伝子操作された、または産生された豆を含む。
【0025】
「未加工の、収穫されたばかりのカカオ豆」という用語は、パルプから分離する以外の処理に供されていない、カカオ果実(cocoa pod)から収穫されたばかりの豆(種子とも称される)のことをいう。テオブロマ(Theobroma)、ヘラニア(Herrania)、またはそれらの種内および種間の交配物の任意の種に由来するカカオ豆を用いて、カカオ材料、すなわち、本発明に用いられるカカオ粉末、チョコレート・リカー、およびカカオ抽出物を調製して差し支えない。275以下の発酵係数を有する、未発酵および/または十分に発酵されていないカカオ豆から調製されることが好ましい。「発酵係数」は、業界で認められている評価方式を使用して決定される。発酵度合いの評価では、カカオ豆は、一般に、標準規格により定義された品質を判断するための標準切断試験に供される。スレート色のカカオ豆、紫色のカカオ豆、スレート色と紫色のカカオ豆の混合物、紫色と褐色のカカオ豆の混合物、あるいはスレート色、紫色、および褐色のカカオ豆の混合物を使用することができる。カカオ豆は、発酵豆よりも高いカカオ・ポリフェノール含量を有することから、スレート色および/または紫色のカカオ豆であることがさらに好ましい。
【0026】
カカオ成分
本明細書では、「カカオ粉末」とは、殻つきの(shelled)カカオ豆を直接圧搾(例えばスクリュー圧搾)することによって、カカオバターと、ある程度脱脂されたカカオ固形物に分けるか、あるいは、焙煎したカカオ豆を粉砕してチョコレート・リカーにし、該チョコレート・リカーを圧搾してカカオバターと、ある程度脱脂されたカカオ固形物とを回収することにより調製された、ある程度または十分に脱脂されたカカオ粉末(例えば、ケーキまたは固形物)のことをいう。
【0027】
本明細書では、「高CPカカオ材料」という用語は、カカオ材料の調製の間にフラバン−3−オールおよびプロシアニジンが保存されているカカオ材料、および/または、未発酵または十分に発酵されていないカカオ豆から調製されたカカオ材料のことをいう。高CPカカオ粉末は、脱脂された粉末1g当たり、少なくとも約25mg、好ましくは25〜50mg、最も好ましくは25〜35mgのカカオ・ポリフェノールを含む。高CPチョコレート・リカーは、脱脂されたリカー1g当たり、少なくとも約10mg、好ましくは約12〜約25mg、最も好ましくは約13〜約17mgのカカオ・ポリフェノールを含む。高CPカカオ抽出物は、乾燥抽出物1g当たり、少なくとも200mg、好ましくは250〜500mg、さらに好ましくは約350〜約500mgのカカオ・ポリフェノールを含む。
【0028】
高カカオ・ポリフェノール含量を有するカカオ固形物をカカオ豆から直接調製する方法は、参照することによりその開示を本明細書に援用する、2000年1月18日にKirk S. Kealeyらに発行された米国特許第6,015,913号明細書に開示されている。該明細書の方法では、カカオ豆を一時の間、カカオニブを焙煎せずにカカオの殻を緩めるのに十分な豆の内部温度で加熱される(例えば、約100℃〜約110℃に赤外線加熱する)。豆の内部温度(IBT)を決定する方法は、前記米国特許第6,015,913号明細書に記載されている。カカオの殻からカカオニブを選り分ける。カカオニブを圧搾して、カカオバターと、ある程度脱脂されたカカオ固形物に分ける。カカオ固形物は、カカオニブから得られたカカオ・プロシアニジンを含む、カカオ・ポリフェノールを含む。比較的大量の、より高次のプロシアニジン・オリゴマーが、伝統的な焙煎方法で調製したよりも多く、本カカオ固形物中に存在し、よって、産生されたことになる。カカオ粉末およびカカオ抽出物中のカカオ・プロシアニジンの総量は、下記のように決定される。
【0029】
焙煎された、未発酵の、十分に発酵していない、または標準平均品質のカカオ豆から、カカオ固形物またはチョコレート・リカーを調製する方法は、参照することによりその開示を本明細書に援用する、2001年11月6日にKirk S. Kealeyらに発行された米国特許第6,312,753号明細書に開示されている。275以下の発酵係数を有するカカオ豆またはカカオニブを用いる。豆を赤外線加熱器に通し、殻(果皮)を分離するように選り分け、約95℃〜約150℃の豆の内部温度にまで焙煎し、粗いチョコレート・リカーになるまで粉砕し、そこからカカオバターと、ある程度脱脂されたカカオ固形物に、圧搾する。
【0030】
例えばカカオ飲料などの本明細書の製品に、カカオ抽出物を含めて、製品のカカオ・ポリフェノール含量を増加させることが好ましい。カカオ豆からのカカオ抽出物の調製は、参照することによりその開示が本明細書に援用される、1996年9月10日にLeo J. Romanczyk, Jr.らに発行された、米国特許第5,554,645号明細書に開示されている。該明細書に記載の方法では、パルプを含むカカオ豆を凍結乾燥し、その凍結乾燥された塊を脱パルプ化(depulped)し、該凍結乾燥されたカカオ豆の殻を剥き(dehulled)、粉砕し、得られたカカオ塊を脱脂し、次に、例えばメタノール水、アセトン水、または酢酸エチルで溶媒抽出する。抽出物は、上述の米国特許第6,015,913号および同第6,312,753号の各明細書に記載の方法によって調製された高CPカカオ固形物から調製することも可能である。特定のオリゴマーを豊富にしたカカオ抽出物、ならびに脱カフェイン化および脱テオブロミン化したカカオ抽出物の調製方法は、参照することによりその開示を本明細書に援用する、2003年9月30日にJohn F. Hammerstoneらに発行された、米国特許第6,627,232号明細書に記載されている。4量体以上の分子量を有するカカオ・プロシアニジン・オリゴマーは、非焙煎のカカオ豆から調製された高CPカカオ固形物を酢酸エチルで抽出し、抽出された固形物を、再び、最大で50%までの水と共に、アセトン、エタノールまたはそれらの混合液で抽出した場合に得られる。酢酸エチル抽出物は、単量体、2量体、および3量体が豊富になる。
【0031】
飲料の風味および色を改善する目的で、アルカリ化されたカカオ粉末を加える。カカオのアルカリ化についての米国食品医薬品局の同定基準(FDA Standards of Identity)は、焙煎されたカカオニブの重量に基づいて、最大で3%の無水炭酸カリウムまたはそのアルカリ性等価物の使用を認めている。
【0032】
ステロールおよび/またはスタノールエステル
フィトステロールは、水に不溶性の植物ステロールであり、コレステロールに似た分子量および構造を有している。40種類を超える植物ステロールが同定されているが、β−シトステロール、カンプエステロールおよびスチグマステロールが最も豊富である。有用なステロールの他の例として、ブラシカステロール、デスモステロール、カリノステロール(chalinosterol)、ポリフェラステロール(poriferasterol)、およびクリオナステロール(clionasterol)が挙げられる。
【0033】
スタノールは、環内のすべての炭素−炭素結合が飽和された、ステロールの飽和誘導体である。スタノールは、典型的には28または29個の炭素原子を有し、β−シトスタノール、クリオナスタノール、22,23−ジヒドロ−ブラシカスタノール、およびカンプエステノールが挙げられる。スタノールは、天然には少量しか発見されていないが、当業者に既知の幾つかの方法のいずれかによりステロールを水素化することにより、ステロールから簡単に調製して差し支えない。出発物質のステロールが植物材料から調製される場合、それには幾つかの異なるステロールの混合物が含まれるであろう。したがって、水素化後に得られるスタノールもまた、異なるスタノールの混合物であろう。
【0034】
ステロールおよびスタノールのエステル化された形態は、本発明での使用に好ましい形態である。エステル化によって、ステロール/スタノールは脂肪および油にさらに溶けやすくなる。例えば、ステロールを、菜種油、キャノーラ油などの脂肪酸エステルでエステル化して差し支えない。適切な脂肪酸として、典型的には14〜24個の炭素原子を有する、飽和または不飽和脂肪酸が挙げられる。エステル化されたステロールの例としては、酢酸シトステロール、オレイン酸シトステロール、およびオレイン酸スチグマステロールが挙げられる。スタノールエステルは、当技術分野で知られる方法で調製されて差し支えなく、例えば、参照することによりこれらの開示を本明細書に援用する、2001年1月16日にMiettenenらに発行され、Raisio Benecol Ltd.社に譲渡された、米国特許第6,174,560号明細書、2000年2月29日にvan Amerongenらに発行され、Lipton社に譲渡された、米国特許第6,031,118号明細書、1999年9月28日にMiettenenらに発行され、Raisio Benecol, Ltd.社に譲渡された、米国特許第5,958,913号明細書、1999年4月6日にHiggins, IIIらに発行され、McNeil PPC, Inc.社に譲渡された、米国特許第5,892,068号明細書、および1996年3月26日にMiettenenらに発行され、Raisio Benecol, Ltd.社に譲渡された、米国特許第5,502,045号明細書を参照のこと。前記米国特許第5,502,045号明細書には、ナトリウム・エチラートなどのエステル交換触媒を使用した、遊離スタノールとC2 〜C22脂肪酸(例えば、菜種油)のメチルエステル混合物とのエステル交換について記載されている。該明細書に開示されるようなエステル交換方法もまた、ステロールのエステル化に使用することができる。別の実施の形態では、先に引用した米国特許第5,958,913号明細書に記載されるようなC2 〜C22脂肪酸エステルで、少なくとも1つのスタノールをエステル化することにより、有用なスタノールエステルを調製する。
【0035】
本発明に特に有用なのは、菜種油のステロールエステル、ひまわり油のステロールエステル、およびそれらの混合物である。これらのステロールエステル混合物を、約30℃〜50℃で融解させる。しかしながら、混合物全体の液化を確実にするため、エステルは、典型的には約60℃〜80℃で加熱される。液体または液化された(すなわち、融解された)ステロール/スタノールエステルおよび乳化剤を、乳汁の添加前または後にカカオ・スラリーと混合する。
【0036】
乳化剤
レシチン、モノまたはジグリセリド、リン脂質、モノグリセリドと酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、または酒石酸のエステル、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールエステル、ショ糖エステル、プロピレン・グリコール、またはポリグリセロール・ポリレゾルシン(polyglycerol polyresorcinoleate)などの乳化剤を、ステロールおよび/またはスタノールエステルにあらかじめ混合するか、あるいは、別個に、ステロールおよび/またはスタノールエステルと共に、カカオに加えることが好ましい。乳化剤は、約0.05%〜約5%の量で用いられ、約0.05%〜約1%が好ましく、約0.05%〜約0.25%がさらに好ましい。乳化剤は、懸濁液のレオロジーにおける重要な役割を担い、食品製造、特に、菓子およびチョコレート製造に幅広く用いられ、固形物の懸濁液のレオロジーを高める(すなわち、粘度および/または降伏値を引き下げる)ことがよく知られている。
【0037】
清澄レシチン(clarified lecithins)、流動レシチン(fluidized lecithins)、化合レシチン(compounded lecithins)、水酸化レシチン、脱油レシチン(deoiled lecithins)、および分画化レシチン(fractionated lecithins)を含む、例えば大豆油、綿実油、コーン油、紅花油、および菜種油などの植物油に由来するレシチンが、本発明にとって有用である。大豆レシチンは、本発明の用途に好ましい乳化剤である。それは、最も古くから、最も幅広く用いられている乳化剤の1つである。それは、最終製品に基づいて、約5重量%までの量で用いることができ、約0.05重量%〜約0.3重量%が好ましく、約0.1重量%〜約0.3重量%がさらに好ましい。クエン酸の50%水溶液(w/w)を用いてpHを下方調整するか、あるいは水酸化ナトリウムの50%水溶液(w/w)を用いてpHを上方調整してもよい。
【0038】
甘味料
本発明には、栄養素を含む糖質甘味料および/または砂糖代替甘味料が用いられる。適切な甘味料には典型的には食品に利用されるものが含まれ、限定はしないが、ショ糖(例えば、籐またはビート)、D−グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、グルコース・シロップ固形物、コーンシロップ固形物、転化糖、ハチミツ、メープルシュガー、ブラウンシュガー、糖蜜などが挙げられる。適切な砂糖代替甘味料を用いて、栄養素を含む糖質甘味料を一部置き換えてもよい。「砂糖代替甘味料」という用語は、高力価甘味料、糖アルコール(ポリオール)、および充填剤(bulking agent)、またはそれらの組合せを含む。高力価甘味料としては、アスパルテーム、チクロ、サッカリン、アセスルファム、ネオヘスペリジン・ジヒドロカルコン、スクラロース、アリテーム、ステビア甘味料、グリチルリチン、タウマチンなど、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい高力価甘味料には、アスパルテーム、チクロ、サッカリン、およびアセスルファム−Kが挙げられる。糖アルコールの例としては、当技術分野で一般に用いられる任意のものであって差し支えなく、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトールなどが挙げられる。本発明の食品に充填剤を含めてもよく、典型的には高力価甘味料と組み合わせて用いられる。本明細書に定義される「充填剤」という用語は、当技術分野で一般に用いられる任意のものであって差し支えなく、ポリデキストロース、セルロースおよびその誘導体、マルトデキストリン、アラビアガムなどが挙げられる。
【0039】
その他の材料
微量のその他の水溶性または水分散性材料もまた、飲料に含めて差し支えなく、例えば、最大で約35%、好ましくは約0.01〜約5%の増粘剤、最大で__%、好ましくは約0.2〜約3%の安定剤、最大で約1.0%、好ましくは約0.01〜約0.35%のビタミンおよび/またはミネラル、最大で約1%までの調味料、および最大で約0.5%までの塩が挙げられる。
【0040】
安定剤
タンパク質の安定剤として、リン酸が用いられる。それらは、熱および酸の衝撃に起因する粒化(graining)から、例えばミルク中のタンパク質などのタンパク質を保護する。無菌処理に用いられるような激しい熱的条件下では、乳タンパク質は中性のpHでより安定化する。
【0041】
タンパク質を安定化する別の方法は、加熱前処理の工程である。タンパク質を含む液体を約71.11〜82.22℃(160〜180°F)に予備加熱し、殺菌処理の間の熱衝撃に対する安定性を高める。前処理の工程は、乳清タンパク質の折り畳みを開かせ、部分的に変性させることによって、無菌処理の間の粒化の可能性を低減する。
【0042】
カラギーナンなどのガムは、乳飲料中にカカオ固形物を懸濁する目的で、ppm濃度で用いられることが多い。微結晶性セルロースもまたカカオ飲料に用いられ、口当たりを形成する。それは、カラギーナンと相乗的に作用して、カカオ粉末を懸濁させる。
【0043】
本明細書では、「香料添加剤」とは、食品および飲料に用いられ、所望の味および/または芳香を与える、風味化合物または組成物のことをいう。本明細書での用途に適切な、典型的な香料添加剤としては、バニリン、チョコレート、例えばブルーベリー、ラズベリー、イチゴ、およびバナナなどの果実、スパイス、および天然に発現された柑橘系またはスパイス系オイルなどが挙げられる。
【0044】
加熱処理
製品は、約63℃(145°F)、約30分の加熱を要するタンク内(vat)低温殺菌法、約89℃(191°F)、約1.0秒の加熱を要する高温短時間殺菌法(HTST法)、または約138℃(280°F)、約2秒の加熱を要する超高温殺菌法(UHT法)によって加熱処理されて構わない。
【0045】
pH調整
ほとんどの製品では、pHを、少なくとも約0.2、好ましくは約0.4、最も好ましくは約0.6降下させる。加熱処理前の製品のpHは、約6.8〜約7.5でなければならず、約6.8〜約7.3が好ましく、約6.9〜約7.2が最も好ましい。pHを7.2〜6.5に調整する場合、CPの損失は最大で30%軽減される。pHを6.8〜6.2に調整する場合、ポリフェノールの保持率は約16%改善される。熱処理前の全体的な損失はわずか約20%である。熱処理後、全体的な損失は約35%に上昇する。
【0046】
カカオ・ポリフェノールの保存に加え、pH調整が風味を改善し、および/または、典型的にはポリフェノールに関連する苦味および渋みの軽減する方法を提供する。
【0047】
試験方法
CP損失の割合は、最初のCP量から最終的なCP量を減じ、100を乗じることにより算出される。
【0048】
総カカオ・プロシアニジン含量の決定
粉末、カカオ抽出物、および飲料中のカカオ・ポリフェノールの含量全体を、蛍光検出による、シリカを使用した順相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定する。この手法の詳細は、AdamsonらのJ. Ag. Food Chem. 47 (10) 4184−4188 (1999)に記載されている。プロシアニジンの抽出前に、カカオ固形物をヘキサンで脱脂した。ヘキサンを除去し、固形物をアセトンで抽出した。全部で32〜35gのカカオ飲料を100mlの容量フラスコに定量的に移した。これに0.5mlの氷酢酸を加え、アセトンで溶液の容量を100mlに合わせた。この溶液は、アセトン:水:酢酸70:29.5:0.5(v/v/v)で構成される、他のサンプルすべてに用いた抽出溶媒に匹敵した。飲料サンプルについては、分析前に脱脂しなかった。抽出溶媒の水分画を構成するのに飲料の水分を用いた。カカオ・プロシアニジンの定量は、高度に精製したカカオ・ポリフェノール抽出物を用いて行った。次に、サンプルを、Adamsonらの論文に記載される方法を用いて比較し、カテキン、エピカテキン、およびプロシアニジン・オリゴマーの量を正確に決定した。
【0049】
次の手順を用いて高CP製品を調製し、試験した。
【0050】
試料の調製
実施例1では、飲料を凍結乾燥し、アセトン/水/酢酸の混合液(CH2COCH3:H20:HOAc,79.5:20:0.51)で2回抽出し、50℃で15分間、超音波処理し、35000rpmで6分間、遠心分離した。減圧下または真空下で、回収した上清から溶媒を回収し、凍結乾燥した。得られた物質を位相HPLC分析に使用した。全部で32〜35gのカカオ飲料を、定量的に100mlの容量フラスコに移した。これに0.5mlの氷酢酸を加え、アセトンで溶液の容量を100mlに合わせた。
【0051】
実施例3および4では、水分含量の高い製品の分析にさらに良く適合させることを目的として、カカオ飲料からのサンプル調製に変更を加えた。サンプル調製は、32〜35gの飲料を採取し、100mlの容量フラスコに定量的に移し、0.5mlの氷酢酸を加え、さらにアセトンを加える、各工程で構成された。この手法は、アセトン/水/酢酸−70:29.5:0.5(v/v/v)からなる、他のカカオサンプルに使用した抽出溶媒に相当する溶液を与える。飲料サンプルは、分析前に脱脂しなかった。抽出溶媒の水分画を構成するのに飲料の水分を用いた。
【0052】
順相クロマトグラフィー−HPLC/MS分析(Adamsonらの方法)
実施例1では、公開されているAdamsonらの順相HPLC法(J. Agric. Food Chem., 1999, 47 pp. 4184-4186)を使用した。条件は次の通りである:
固定相:Hypersil ODS 100×4.6mm,粒径5μm
移動相A:0.170酢酸/水
移動相B:0.170酢酸/メタノール
流量:1.0ml/分
勾配:

【0053】
使用したカラムは250×4.6mm、i.d.,5μmのDevelosilジオール(フェノメネクス(Phenomenex)社(米国カリフォルニア州所在)製)であった。二成分移動相は、(A)CH3CN:HOAc(98:2,v/v)および(B)CH3OH:H2O:HOAc(95:3:2)で構成された。1.0mlの流量を用いて、30℃における次の直線勾配によって分離した:0〜35分,0〜40%B;35〜45分,40%B均一溶媒;45〜46分,40〜0%B,0%Bで4分間保持。溶離液を、蛍光検出を用いて励起波長276nmおよび放出波長316nmでモニタした。
【0054】
次の実施例は特定の好ましい実施の形態の例示を目的とするものであり、本発明を限定することは意図していない。
【実施例】
【0055】
実施例1:カカオ豆からの高CPカカオ固形物の調製
約7〜8重量%の初期水分含量を有する市販のカカオ豆を、スカルパレーター(scalperator)中で予備洗浄した。スカルペレーターから取り出した予備洗浄した豆を、空気流動床密度分離機(air fluidized bed density separator)中でさらに洗浄した。洗浄したカカオ豆を、約1,701kg/時間の速度で赤外線加熱装置を通過させた。装置の振動床における豆の深さは約2〜3粒であった。装置の表面温度は約165℃に設定され、それによって、1〜1.5分の時間で約135℃の豆の内部温度(IBT)を実現した。この処理は、殻を迅速に乾燥させ、カカオニブから分離させる。装置にかける前に振動ふるいによって分離された粉砕片を、選別工程の前に、製品流れ(product stream)に再導入した。微粉化後に得られた豆は、約3.9重量%の水分含量を有しているはずである。該豆は約135℃のIBTで現れ、約3分間で約90℃の温度まで急冷して、さらなる水分損失を最小限に抑えた。次に、豆を選り分け、豆に亀裂を入れて殻を緩め、より軽い殻をカカオニブから分離すると同時に、殻廃棄流れ(shell reject stream)と共に失われるニブの量を最小限に抑えた。得られたカカオニブを、2つのスクリュー圧搾を用いて圧搾し、カカオ固形物からバターを抽出する。
【0056】
上記方法に基づいて、未発酵カカオ豆(発酵係数233)から生成したカカオ固形物のサンプルは、上記参照方法に従って分析した場合、典型的には脱脂カカオ粉末1g当り、約50〜約75mgの総カカオ・プロシアニジン含量を有し、約60〜約75mgが好ましく、約75〜約80mgがさらに好ましい。図3は、高CPカカオ粉末の順相HPLCトレースを示す。
【0057】
実施例2:カカオ抽出物の調製
実施例1で得られたカカオ固形物を室温で0.5〜2.5時間、水性有機溶媒と接触させた。カカオ抽出物Aでは、溶媒は約75%エタノール/25%水(v/v)であった。カカオ抽出物Bでは、溶媒は約80%アセトン/20%水(v/v)であった。ミセルをカカオ残渣から分離し、蒸発によって濃縮させた。次に、濃縮した抽出物を噴霧乾燥した。カカオ抽出物のHPLC/FLD特性を示す。図4は、加熱前のトレースを示すものである。図5は加熱後に脱イオン水中で一晩還流した後のエタノール抽出物のトレースを示す。
【0058】
実施例3:ステロールエステルを含む高CPカカオ飲料の調製
乳汁、高CPカカオ粉末、高CPカカオ抽出物、アルカリ化されたカカオ粉末、レシチン、菜種油のステロールエステル、グラニュー糖、セルロースとカラギーナンガムの混合物、クエン酸/リン酸安定剤混合物、ビタミン−ミネラルの予混合物、ならびにチョコレートおよびバニラ香味料から低脂肪カカオ飲料を調製した。1%乳汁を使用した。配合を表1に示す。
【表1】

【0059】
カカオ材料を、82.22℃(180°F)において、水中でスラリー化した。残る乾燥材料を1%の乳汁と混合し、カカオ・スラリーに加えた。クエン酸を用いてpHを6.5〜6.8に調整した。カカオ飲料を、137.8℃(280°F)で6.5秒間処理し、包装した。
【0060】
図6Aおよび6Bは、超高温熱処理の前後の典型的な飲料のトレースを示している。
【0061】
実施例4:ステロールエステルを含まない高CPカカオ飲料の調製
高CPカカオ抽出物は使用せずに、高CPカカオ固形物および高CPチョコレート・リカーから2種類の飲料を調製した。使用した材料を下記表2に記載する。
【表2】

【0062】
驚くべきことに、本飲料は、それらが含む高濃度のカカオ・ポリフェノールが与えると予想されるよりも苦味および渋みが少なかった。
【0063】
実施例5:作業変数の影響
カカオ・ポリフェノール(CP)の損失における作業変数の影響について研究した。カカオ粉末のCP含量は、脱脂粉末1g当たり61.4mgであった。抽出物のCP含量は、抽出物1g当たり384.99mgであった。抽出物は、実施例2に記載するように未発酵のカカオ豆から調製した、乾燥水性エタノール抽出物であった。損失の割合を処理後および前のCP濃度に基づいて算出した。結果を表3にまとめる。
【表3】

【0064】
結果は、pH7.2では49.3%のCP損失を生じるのに対し、pH6.5では損失がわずか30.7%だったことを示す。飲料4および5(両方とも同一配合に基づく)では、6.8から6.2にpHを降下させることにより、CPの損失が50.6%から34.5%に引き下げられた。図6Aおよび6Bは、超高温熱処理の前後の飲料の典型的な順相HPLCトレースである。
【0065】
当業者にとって自明であろうが、その他のバリエーションおよび変更については、これらの発明の目的および教示の範囲内にある。本発明は、添付の特許請求の範囲に規定されている以外に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約5重量%の水分含量、および約4.8〜約6.8のpHを有する、加熱処理された、レディ・トゥ・イートまたはレディ・トゥ・ドリンク製品であって、
前記製品が、該製品1g当たり、少なくとも約0.2μgのポリフェノールを含み、
前記ポリフェノールが、可食性のフラバン−3−オールおよび/または可食性のプロアントシアニジンである、
ことを特徴とする製品。
【請求項2】
約50重量%〜約80重量%の水分含量および約6.8〜約7.2のpHを有する飲料であって、
約0.2〜約5μgのポリフェノールを含み、
前記フラバン−3−オールが、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、および/またはアフゼレキンであり、
前記プロアントシアニジンが、プロシアニジン、プロデルフィニジン、および/またはプロペラルゴニジンである、
ことを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項3】
約80重量%よりも高い水分含量および約6.9〜約7.0のpHを有し、
約0.2〜約5μgのポリフェノールを含み、
前記フラバン−3−オールが、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、および/またはアフゼレキンであり、
前記プロアントシアニジンが、プロシアニジン、プロデルフィニジン、および/またはプロペラルゴニジンである、
ことを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項4】
約6.8〜約7.2のpHを有する、乳飲料、大豆飲料、または乳清飲料であることを特徴とする請求項2記載の製品。
【請求項5】
約6.9〜約7.0のpHを有する、乳飲料、大豆飲料、または乳清飲料であることを特徴とする請求項2または3記載の製品。
【請求項6】
前記飲料1g当たり、約0.6〜約2.0mgのカカオ・ポリフェノールを含む、乳系カカオ飲料であり、
前記ポリフェノールが、(±)−カテキン、(±)−エピカテキン、および/またはそれらのプロシアニジン・オリゴマーである、
ことを特徴とする請求項4または5記載の製品。
【請求項7】
前記飲料1g当たり、約0.6〜約2.0mgのカカオ・ポリフェノールを含む、スキムミルク系カカオ飲料であることを特徴とする請求項6記載の製品。
【請求項8】
(i)可食性の酸、または可食性の塩基と、
(ii)ある程度脱脂されたカカオ粉末、十分に脱脂されたカカオ粉末、チョコレート・リカー、カカオ抽出液、乾燥カカオ抽出物、およびそれらの混合物からなる群より選択される、高カカオ・ポリフェノール含量を有する1種類以上のカカオ材料と、
を含むことを特徴とする請求項6記載の製品。
【請求項9】
前記ある程度脱脂された、または十分に脱脂されたカカオ粉末が、前記脱脂されたカカオ粉末1g当たり、少なくとも25mgのカカオ・ポリフェノールを含み、
前記チョコレート・リカーが、脱脂されたリカー1g当たり、少なくとも約10mgのカカオ・ポリフェノールを含み、
前記カカオ抽出物が、乾燥抽出物1g当たり、少なくとも約200mgのカカオ・ポリフェノールを含む、
ことを特徴とする請求項8記載の製品。
【請求項10】
前記カカオ粉末が、約20〜50mgのカカオ・ポリフェノールを含み、
前記チョコレート・リカーが、約12〜約25mgのカカオ・ポリフェノールを含み、
前記カカオ抽出物が、約250〜約500mgのカカオ・ポリフェノールを含む、
ことを特徴とする請求項9記載の製品。
【請求項11】
前記カカオ粉末が、約25〜35mgのカカオ・ポリフェノールを含み、
前記チョコレート・リカーが、約13〜約17mgのカカオ・ポリフェノールを含み、
前記カカオ抽出物が、約350〜約500mgのカカオ・ポリフェノールを含む、
ことを特徴とする請求項10記載の製品。
【請求項12】
アルカリ化されたカカオ粉末、乳化剤、甘味料、1種類以上の増粘剤、1種類以上の安定剤、1種類以上の香味料、および/またはビタミン−ミネラル混合物をさらに含むことを特徴とする請求項8記載の製品。
【請求項13】
前記可食性の酸がクエン酸であり、
前記可食性の塩基が水酸化ナトリウムであり、
前記増粘剤が、微結晶性セルロース、カラギーナン、およびカルボキシメチルセルロースの混合物であり、
前記安定剤が、クエン酸塩およびリン酸塩の混合物であり、
前記香味料が、チョコレート、バニラ風味のチョコレート、ラズベリー、ブルーベリー、イチゴ、バナナ、コーヒー、またはモカである、
ことを特徴とする請求項12記載の製品。
【請求項14】
ポリフェノールを含むレディ・トゥ・イートまたはレディ・トゥ・ドリンク製品を調製する無菌方法であって、
混合後であり、無菌処理前に、前記製品のpHを約0.2降下させる工程を有してなる方法。
【請求項15】
前記製品が乳飲料、大豆飲料、または乳清飲料であり、
前記ポリフェノールが、可食性フラバン−3−オール、可食性プロアントシアニジン、またはそれらの混合物であり、
前記飲料のpHを、約4.8〜約6.8まで、約0.4降下させる、
ことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記フラバン−3−オールが、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、および/またはアフゼレキンであり、
前記プロアントシアニジンが、プロシアニジン、プロデルフィニジン、および/またはプロペラルゴニジンであり、
前記pHを約0.6降下させる、
ことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記製品が低脂肪カカオ飲料であり、
前記フラバン−3−オールが、(±)−カテキンおよび(±)−エピカテキンであり、前記プロアントシアニジンがプロシアニジンであり、
前記飲料のpHが約6.8〜約7.2である、
ことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項18】
1種類以上のプロシアニジンを含む、約4.8〜約6.8のpHを有する飲料の調製方法であって、
(a)約6.8〜約7.5のpHを有する飲料にプロシアニジンを加え、
(b)可食性の酸を加えて、前記飲料のpHを少なくとも約0.2降下させ、
(c)前記酸性化した飲料を加熱処理し、
(d)前記加熱処理した飲料をレディ・トゥ・ドリンク飲料として包装する、
各工程を有してなる方法。
【請求項19】
クエン酸を用いて、前記pHを約0.4降下させることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記pHを約0.6降下させ、
前記加熱処理を、約62.78℃〜137.8℃(145°F〜280°F)の温度で約1秒〜約30分間行う、
ことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記加熱処理が、約71.67℃〜137.8℃(161°F〜280°F)の温度で約1秒〜約15秒間行われ、
前記包装された飲料のpHが約6.2〜約6.8である、
ことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
飲料1g当たり、少なくとも約0.2mgのカカオ・ポリフェノールを含むカカオ飲料の調製方法であって、
(a)高せん断下で、水と、
(i)脱脂されたカカオ粉末1g当たり少なくとも約25mgのカカオ・ポリフェノールを有する、ある程度脱脂されたカカオ粉末、
(ii)抽出物1g当たり少なくとも約200mgのカカオ・ポリフェノール含量を有する乾燥カカオ抽出物、
(iii)アルカリ化されたカカオ粉末、
からなる群より選択される1種類以上のカカオ材料を含む乾燥カカオ混合物と、
をスラリー化し、
(b)甘味料、1種類以上の増粘剤、1種類以上の安定剤、およびビタミン−ミネラル混合剤から実質的になる乾燥混合物を乳汁に混合し、
(c)工程(a)で得られたカカオ・スラリーを、工程(b)で得られた乳汁混合物に加え、
(d)液体香味料を加え、
(e)可食性の酸または可食性の塩基を、工程(d)で得られた混合物に加えてpHを少なくとも0.2降下させ、
(f)工程(e)で得られたスラリーを、約71.67℃〜137.8℃で約1秒〜約15秒間、加熱処理し、
(g)随意的に、工程(f)で得られたスラリーを冷却および/または均質化し、
(h)工程(f)または工程(g)で得られたスラリーを、レディ・トゥ・ドリンクのカカオ飲料として包装する、
各工程を有してなる、方法。
【請求項23】
前記飲料が、前記加熱処理前に、少なくとも約50重量%の水分含量および約6.8〜約7.5のpHを有することを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記飲料が、約80重量%よりも高い水分含量を有し、前記pHが約6.8〜約7.5であることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記加熱処理前のpHが、約6.9〜約7.0であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記増粘剤がガムであり、
前記安定剤がクエン酸塩/リン酸塩混合物であり、
前記香味料が、チョコレート、バニラ、ブルーベリー、ラズベリー、イチゴ、バナナ、および/またはモカであり、
前記可食性の酸がクエン酸であり、
前記可食性の塩基が水酸化ナトリウムである、
ことを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項27】
前記カカオ材料が、未発酵の、および/または十分に発酵されていないカカオ豆から調製されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項28】
前記カカオ抽出物が、脱脂され、凍結乾燥された、未発酵の、または十分に発酵されていないカカオ豆を溶媒抽出し、前記溶媒を除去する工程によって調製されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項29】
少なくとも約5重量%の水分含量を有するポリフェノール含有製品を加熱処理する間、(−)−エピカテキンおよび(+)−カテキンの損失を最小限に抑える方法であって、
前記加熱処理前に前記製品のpHを少なくとも約0.2降下させる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項30】
前記製品が、乳飲料、大豆飲料、または乳清飲料であり、
前記ポリフェノールがカカオ・ポリフェノールであり、
前記pHを少なくとも約0.4降下させる、
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記pHを少なくとも約0.6降下させ、
前記加熱処理後、前記カカオ・ポリフェノールが、(+)−エピカテキン、(−)−エピカテキン、(+)−カテキン、(−)−カテキン、および、それらのプロシアニジン2量体および3量体である、
ことを特徴とする請求項30記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−542206(P2009−542206A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518075(P2009−518075)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025494
【国際公開番号】WO2007/002883
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】