説明

ポリフェノール組成物の製造方法

【課題】植物抽出物からポリフェノール組成物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】次の工程(1)〜(4):
(1)ポリフェノール類を含有する植物抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程、
(2)前記合成吸着剤に10〜60質量%の有機溶媒水溶液を接触させて、非重合体カテキン類を溶出させる工程、
(3)前記合成吸着剤に20〜100質量%の有機溶媒水溶液を接触させて、ポリフェノール組成物を含む画分を溶出させる工程、
(4)前記ポリフェノール組成物を含む画分から有機溶媒を除去する工程
を含む、ポリフェノール組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出物からポリフェノール組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好の多様化、健康ブームにより、多種多様の健康食品が上市され需要が拡大している。例えば、ポリフェノール類は抗酸化力を有することが知られており、抗動脈硬化、抗アレルギー、血流増強等の効果が期待されるため、健康食品の重要な成分として認識されている。
【0003】
このようなポリフェノール類は、例えば、茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後、合成吸着剤に有機溶媒水溶液を接触させて非重合体カテキン類を溶出させ、次いで非重合体カテキン類を含む溶出液を活性炭と接触させ、そして溶出液を濃縮することで、非重合体カテキン類を主成分として含有するものとして製造されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−79609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記製造方法においては、単蒸留により溶出液から有機溶媒の除去を試みると、蒸留中にボトム液が粘稠になり、場合によって蒸留釜の内壁にポリフェノール類の粘稠物が析出するなど蒸留操作の安定性が損なわれることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、植物抽出物からポリフェノール組成物を分画する方法について種々検討したところ、ポリフェノール類を含有する植物抽出物を合成吸着剤に吸着させた後、合成吸着剤に10〜60質量%の有機溶媒水溶液を接触させて非重合体カテキン類を含む画分を溶出させ、更に合成吸着剤に20〜100質量%の有機溶媒水溶を接触させてポリフェノール組成物を含む画分を溶出させ、そしてポリフェノール組成物を含む画分から、精留により有機溶媒を除去することで、分散性が良好なポリフェノール組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の工程(1)〜(4):
(1)ポリフェノール類を含有する植物抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程、
(2)上記合成吸着剤に10〜60質量%の有機溶媒水溶液を接触させて、非重合体カテキン類を含む画分を溶出させる工程、
(3)上記合成吸着剤に20〜100質量%の有機溶媒水溶液を接触させて、ポリフェノール組成物を含む画分を溶出させる工程、
(4)上記ポリフェノール組成物を含む画分から、精留により有機溶媒を除去する工程
を含む、ポリフェノール組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物抽出物からポリフェノール組成物を安定に効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリフェノール組成物の製造方法は、上記のとおり、工程(1)、(2)、(3)及び(4)を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳細に説明する。
【0010】
[工程(1)]
本発明に係る工程(1)は、ポリフェノール類を含有する植物抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程である。
本工程で使用する植物抽出物としては、ポリフェノール類を含有するものであれば特に限定されないが、例えば、カメリアシネンシス(Camellia sinensis)から得られる抽出物が例示される。ここで、本明細書において「ポリフェノール類」は非重合体カテキン類を主成分とするものである。一方、「ポリフェノール組成物」は酒石酸鉄法により測定されるポリフェノールを含有するものであり、例えば、フラボノール類、フラバノール類、プロアントシアニジン類及びそれらの重合体、並びにそれらの配糖体が包含される。フラバノール類としては、例えば、非重合体カテキン類の重合体が例示され、フラボノール類としては、例えば、フラボノールアグリコン、フラボノール配糖体が例示される。また、「ルチン」とは、フラボノール配糖体の一種であり、ケルセチンの3位の酸素原子にβ−ルチノース(6−O−α−L−ラムノシル−D−β−グルコース)が結合したものである。更に、「カメリアシネンシス」とは、ツバキ科ツバキ属のチャノキのことである。その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。
本工程においては、植物抽出物として茶抽出物が好適に使用され、中でも不発酵茶から得られる茶抽出物が好ましい。
不発酵茶としては、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶から製茶された、茎茶、棒茶、芽茶、番茶、碾茶、釜入り茶等の緑茶が例示される。半発酵茶としては、総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等が例示される。発酵茶としては、紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等が例示される。ここで、本明細書において「不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、緑茶、烏龍茶、紅茶」とは、飲用に供される茶抽出物ではなく、該茶抽出物を得るための茶原料をいう。
【0011】
植物の抽出方法としては、攪拌抽出、ドリップ抽出等の従来の方法を採用することができる。また、抽出時の水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。更に、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。このようにして得られた抽出液は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本工程に使用できる。植物抽出物の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体の状態が挙げられる。
【0012】
本工程に使用する植物抽出物としては、植物から抽出した抽出液を使用する代わりに、植物抽出物の濃縮物を水又は有機溶媒に溶解又は希釈して用いても、植物からの抽出液と植物抽出物の濃縮物とを併用してもよい。
ここで、植物抽出物の濃縮物とは、植物から熱水又は有機溶媒水溶液により抽出された抽出物を濃縮したものをいう。例えば、茶抽出物の濃縮物は、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。植物抽出物の濃縮物として、市販品を使用してもよく、例えば、三井農林社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」等の緑茶抽出物の濃縮物が例示される。
植物抽出物として茶抽出物を使用する場合、茶抽出物としては、ポリフェノール組成物の生産性の観点から、固形分中の非重合体カテキン類の含有量が10〜60質量%、特に20〜50質量%であるものが好ましい。
【0013】
本工程に使用する合成吸着剤としては、アンバーライトXAD4、XAD16HP、XAD1180、XAD2000、(供給元:米国ローム&ハース社)、ダイヤイオンHP20、HP21(三菱化学社製)、セパビーズSP850、SP825、SP700、SP70(三菱化学社製)、VPOC1062(Bayer社製)等のスチレン系;セパビーズSP205、SP206、SP207(三菱化学社製)等の芳香環に臭素原子を導入して吸着能を高めた置換スチレン系;ダイヤイオンHP1MG、HP2MG(三菱化学社製)等のメタクリル系;アンバーライトXAD761(ロームアンドハース社製)等のフェノール系;アンバーライトXAD7HP(ロームアンドハース社製)等のアクリル系;TOYOPEARL、HW-40C(東ソー社製)等のポリビニル系;SEPHADEX、LH−20(ファルマシア社製)等のデキストラン系が例示される。中でも、その母体が、スチレン系(特にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体)、メタクリル系、アクリル系、ポリビニル系であるものが好ましく、特にスチレン系であるものがポリフェノール類と夾雑物との分離性の点から好ましい。
【0014】
合成吸着剤の使用量は、植物抽出物の非重合体カテキン類の全質量と、合成吸着剤の容量との比が3〜60g/L、特に10〜50g/Lであることが、夾雑物の除去効率及びポリフェノール組成物の回収率の向上の観点から好ましい。
【0015】
植物抽出物を合成吸着剤に吸着させる方法としては、植物抽出物を合成吸着剤に添加し撹拌して吸着させた後、ろ過操作により合成吸着剤を回収するバッチ方法、又は合成吸着剤を充填したカラムに植物抽出物を通液して吸着させるカラム方法を採用することができるが、生産性の点からカラムによる連続処理方法が好ましい。
【0016】
本工程においては、かかる吸着処理前に、合成吸着剤中の不純物の除去、植物抽出物の吸着能の向上の観点から、合成吸着剤を洗浄してもよい。洗浄方法としては、例えば、次の方法が例示される。先ず、空間速度(SV)=0.5〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数(BV)=2〜10[v/v]の条件でエタノール水溶液(例えば、エタノール濃度40〜50質量%)を合成吸着剤が充填されたカラムに通液して合成吸着剤中の不純物を除去する。次いで、SV=0.5〜10[h-1]、BV=1〜60[v/v]の条件で水をカラムに通液してカラム内のエタノールを水に置換する。
【0017】
合成吸着剤に吸着させる際、植物抽出物中の非重合体カテキン類の濃度は、0.1〜15質量%、更に0.2〜10質量%、特に0.5〜5質量%であることが、合成吸着剤への吸着効率の点から好ましい。植物抽出物の濃度を上記範囲内に調整するために、植物抽出物を水で希釈しても、濃縮してもよい。水としては、例えば、水道水、精製水、イオン交換水が例示される。
【0018】
植物抽出物の通液条件は、植物抽出物の吸着能の向上の点から、好ましは、SV=0.5〜10[h-1]、特にSV=0.5〜3[h-1]であり、かつBV=0.5〜10[v/v]、特にBV=0.5〜5[v/v]である。
【0019】
植物抽出物の通液後においては、合成吸着剤を水で少なくとも1回洗浄することが好ましい。合成吸着剤の洗浄に使用する水としては、上記と同様のものが例示される。洗浄水にはアルコール等の水溶性有機溶媒を混合してもよく、有機溶媒濃度は5質量%未満、更に2質量%未満、特に1質量%未満であることが好ましい。
【0020】
この洗浄工程の通液条件は、好ましくは、SV=0.5〜10[h-1]であり、かつBV=0.5〜3[L/L]、特にBV=0.5〜2[L/L]である。これにより、合成吸着剤に付着した夾雑物を効率よく除去することができる。
【0021】
[工程(2)]
本発明に係る工程(2)は、合成吸着剤に10〜60質量%の有機溶媒水溶液を接触させて、非重合体カテキン類を含む画分を溶出させる工程である。これにより、植物抽出物中の非重合体カテキン類を低減させることが可能になる。
本工程で使用する有機溶媒としては、水溶液有機溶媒が好ましく、例えば、アセトン等のケトン、メタノール、エタノール等のアルコール、酢酸エチル等のエステルが例示される。中でも、飲食品への使用の観点から、アルコール、特にエタノールが好ましい。また、水としては、上記と同様に、水道水、精製水、イオン交換水が例示される。
本工程で使用する有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度は10〜60質量%であるが、非重合体カテキン類の溶出効率及びポリフェノール組成物の回収率の向上の観点から、20〜50質量%、特に25〜40質量%未満であることが好ましい。
【0022】
本工程の通液条件は、好ましくは、SV=0.5〜10[h-1]、特にSV=0.5〜3[h-1]であり、かつBV=0.5〜10[v/v]、特にBV=1.0〜5[v/v]である。これにより、非重合体カテキン類をより一層効率よく溶出させることができる。
【0023】
[工程(3)]
本発明に係る工程(3)は、合成吸着剤に20〜100質量%の有機溶媒水溶を接触させて、ポリフェノール組成物を含む画分を溶出させる工程である。これにより、植物抽出物からポリフェノール組成物を効率よく分画することが可能になる。
本工程で使用する有機溶媒水溶液としては、工程(2)の有機溶媒水溶液よりも疎水性の高いものが好ましく、例えば、工程(2)の有機溶媒水溶液よりも有機溶媒濃度の高い水溶液、あるいは工程(2)の有機溶媒よりも炭素数の多い有機溶媒を含む水溶液が好適に使用される。有機溶媒としては、上記と同様の水溶液有機溶媒が好ましく、特にアルコールが好ましい。また、水としては、上記と同様のものを使用することができる。
本工程で使用する有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度は20〜100質量%であるが、ポリフェノール組成物の回収率の向上の点から、30〜80質量%、特に40〜60質量%であることが好ましい。
本工程の通液条件は、好ましくは、SV=0.5〜10[h-1]、特にSV=0.5〜3[h-1]であり、かつBV=0.5〜10[v/v]、特にBV=1.0〜5[v/v]である。これにより、ポリフェノール組成物をより一層効率よく溶出させることができる。
【0024】
[工程(4)]
本発明に係る工程(4)は、工程(3)で得られたポリフェノール組成物を含む画分から、精留により有機溶媒を除去する工程である。これにより、植物抽出物からポリフェノール組成物を得ることができる。なお、本工程により除去される有機溶媒には、水が含まれていてもよい。
「精留」とは、蒸留において留分の一部を還流させ、その還流液と蒸気とを精留塔内で向流接触させる蒸留操作であり、実質的に還流を行わない「単蒸留」とは区別される。精留を実施するには、所定の理論段数を有する精留塔と、留分の一部を所定の割合(還流比)で還流できる還流分配器を備えていることが必要である。
本工程においては、前工程で得られたポリフェノール組成物を含む画分中の有機溶媒水溶液の有機溶媒濃度が30質量%を超えるとき、当該画分に加水して上記有機溶媒濃度を30質量%以下に調整することが好ましい。上記画分への加水は、有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度が5〜30質量%、更に10〜25質量%、特に15〜20質量%となるように行うことが好ましい。これにより、ボトム液が粘稠になり難く、ポリフェノール組成物を含む画分から有機溶媒を安定に除去することができる。なお、加水時期は、精留時にポリフェノール組成物を含む画分が加水された状態であれば特に限定されるものではない。
【0025】
本工程の精留は、バッチ式でも、連続式でもよく、必要に応じて加圧又は減圧下で行うことができる。また、精留条件は有機溶媒の種類により適宜設定することが可能であるが、ボトム液の粘稠化防止の観点から、理論段数が5〜100段、更に10〜80段、特20〜65段である精留塔を用い、かつ還流比が2〜100、更に10〜80、特に20〜60の条件で行うことが好ましい。
更に、精留による有機溶媒の留出率は、10〜90質量%、特に30〜60質量%とすることが好ましい。ここで、「留出率」とは、精留前の有機溶媒の全質量に対する留出した有機溶媒の質量の割合をいう。
本工程の精留を上記条件にて行うことで、精留後のボトム液中のポリフェノール組成物濃度を1質量%以下(好ましくは0.5質量%以下)、かつボトム液中の有機溶媒水溶液の有機溶媒濃度を0.5質量%以下(好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下)とすることができる。なお、ボトム液中のポリフェノール組成物濃度及び有機溶媒水溶液の有機溶媒濃度は、0質量%であってもよい。
また、精留塔の塔頂温度は有機溶媒の沸点に対して0.5〜3℃、特に1〜2.5℃高いことが好ましく、また精留塔の塔底温度は有機溶媒の沸点に対して5〜20℃、特に8〜15℃高いことが好ましい。
【0026】
このようにして、植物抽出液から、本発明のポリフェノール組成物を得ることができる。ポリフェノール組成物の形態としては、例えば、水分散液、粉体が例示される。粉体の形態が望ましい場合は、噴霧乾燥や凍結乾燥等の方法により粉体化することができる。
本発明の製造方法により得られたポリフェノール組成物は、次の成分(A)及び(B)を特定の比率で含有することができる。ここで、成分(A)は、高速液体クロマトグラフィーにより測定される、加水分解後の当該ポリフェノール組成物の固形分中のフラボノールアグリコンの総量であり、また成分(B)は、酒石酸鉄法により測定される、当該ポリフェノール組成物の固形分中のポリフェノールの総量である。ここで、「固形分」とは、ポリフェノール組成物を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分をいう。なお、成分(A)及び(B)は、後掲の実施例に記載の方法により定量することができる。
風味や水への溶解性の観点から、成分(A)は0.7〜50質量%であることが好ましく、また成分(B)は5〜95質量%、特に10〜90質量%であることが好ましい。更に、上記(A)及び(B)の質量比[(B)/(A)]は0.5〜18であることが好ましい。
また、ポリフェノール組成物は(C)ルチンを含有してもよく、成分(C)はポリフェノール組成物の固形分中に0.4〜30質量%含有することが好ましい。
【実施例】
【0027】
1.非重合体カテキン類及びカフェインの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラディエント法により分析した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0028】
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0.0 97 3
5.0 97 3
37.0 80 20
43.0 80 20
43.5 0 100
48.5 0 100
49.0 97 3
60.0 97 3
【0029】
2.ルチンの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式Waters2695、WATERS製)を用い、カラム(Shimpach VP ODS、150×4.6mmI.D.)を装着し、カラム温度40℃でグラディエント法により分析した。移動相C液はリン酸を0.05質量%含有する蒸留水溶液、D液はメタノール溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は368nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0030】
時間(分) C液濃度(体積%) D液濃度(体積%)
0.0 95 5
20.0 80 20
40.0 30 70
41.0 0 100
46.0 0 100
47.0 95 5
60.0 95 5
【0031】
3.フラボノールアグリコン(ミリセチン、ケルセチン及びケンフェロール)の測定
(1)試料の加水分解
試料溶液5mLにメルカプトエタノール200μL、2N塩酸500μLを添加した。その後、ドライブロックバス(アズワン株式会社製)にて120℃で40分間加熱し、冷却した。
【0032】
(2)分析
加水分解後の試料溶液中に存在しているミリセチン、ケルセチン及びケンフェロールを、高速液体クロマトグラフィーにより定量した。なお、定量はグラディエント法により行ったが、その分析方法は上記「ルチンの測定」と同じである。
【0033】
(3)フラボノールアグリコンの総量
上記分析により定量されたミリセチン量、ケルセチン量及びケンフェロール量の総和として求めた。
【0034】
4.ポリフェノールの測定
(1)試薬の調製
1)酒石酸鉄試薬の調製
500mLメスフラスコに硫酸第一鉄七水塩0.50gと(+)酒石酸ナトリウム・カリウム四水和物2.50gを採取し、イオン交換水でメスアップした。
【0035】
2)リン酸バッファーの調製
2000mLメスフラスコにリン酸水素二ナトリウム・二水和物20.00gとリン酸二水素カリウム2.90gを採取し、イオン交換水でメスアップした。この溶液のpHが7.5〜7.6になるように調整した。pH7.6を超える場合、リン酸二水素カリウム・二水和物0.9g/100mL水溶液を添加し、pH7.5未満の場合、リン酸二水素カリウム1.2g/100mL水溶液を添加し調整した。
【0036】
(2)装置及び器具
1)分光光度計(U−2010;日立製作所製)
2)石英製セル(10mm×10mm)
3)25mL、100mL、200mL、500mL、2000mLのメスフラスコ
4)1mL、5mL、10mL、20mL、30mLのホールピペット
5)1mL、3mL、5mLのマイクロピペット
【0037】
(3)分析条件
1)測定波長:540nm
2)温度 :20℃±2℃
【0038】
(4)操作:
1)検量線作成
i)没食子酸エチル約0.5gを使用前に2〜3時間乾燥させた。
ii)200mLメスフラスコに乾燥した没食子酸エチル0.2gを採取し、イオン交換水でメスアップした。(100mg/100mL標準液)
iii)100mLメスフラスコに、ii)の標準液を用い、5mg/100mL、10mg/100mL、20mg/100mL、30mg/100mLの各標準液を調整した。
iv)25mLメスフラスコに、iii)の標準液をそれぞれ5mL採取し、酒石酸鉄試薬5mLを加えリン酸バッファーでメスアップした。また、ブランクとして標準液を加えないものを調製した。
v)分光光度計にて吸光度を測定し検量線を作成した。
なお、検量線については下記を目安にし、逸脱した時は再調整した。
R2 :0.9995〜1.0000
検量線傾き:34.5±0.4
切片 :0.3以下
【0039】
2)試料測定
i)イオン交換水にて分光光度計をゼロ補正した。
ii)25mLメスフラスコに試料を所定量採取し、酒石酸鉄試薬5mLを加えリン酸バッファーでメスアップした後、吸光度を測定した。なお、吸光度の測定は、発色後40分以内とした。
【0040】
実施例1〜2及び比較例1〜2
緑茶葉(大葉種)を熱水で抽出した後、噴霧乾燥により緑茶抽出物を得た。緑茶抽出物は、非重合体カテキン類濃度30質量%であった。
次いで、緑茶抽出物の非重合体カテキン類濃度が1質量%になるようにイオン交換水で希釈した。次いで、緑茶抽出物の希釈液800gをカラム(内径50mm×高さ180mm、容積353.3mL)に充填した合成吸着剤(SP−70、三菱化学(株)製)200mLに吸着させた。
次いで、イオン交換水300mL、30質量%エタノール水溶液400mLを順次合成吸着剤に通液して非重合体カテキン類を含む画分を溶出させた。次いで、合成吸着剤に50質量%エタノール水溶液を400mL通液してポリフェノール組成物を含む画分(ポリフェノール組成物濃度0.1〜0.2質量%)を溶出させた。なお、本分画操作はすべて、通液速度SV=0.8〜1.2[h-1]になるように流量調整して行った。
次いで、表1に示す条件にて、ポリフェノール組成物を含む画分からエタノールを除去した後、凍結乾燥してポリフェノール組成物を得た。なお、実施例2のポリフェノール組成物を含む画分は、実施例1のポリフェノール組成物を含む画分に加水し、当該画分中の有機溶媒水溶液の有機溶媒濃度を調整した。また、精留の場合、理論段数は54段、還流比は50に設定した。エタノール除去後において、ボトム液の分散状態を観察するとともに、ボトム液中のポリフェノール組成物濃度及び有機溶媒濃度を測定した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1から明らかなように、工程(3)で得られたポリフェノール組成物を含む画分中の有機溶媒水溶液から、精留により有機溶媒を除去することで、ボトム液が粘稠になり難くなり、その結果ポリフェノール組成物を安定に効率よく得ることができる。特に、精留前の工程(3)で得られたポリフェノール組成物を含む画分の有機溶媒水溶液の有機溶媒濃度が30質量%を超えるとき、該画分に加水し該画分中の有機溶媒水溶液の有機溶媒濃度を30質量%以下に低下させることで、より一層効率よく安定にポリフェノール組成物を得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1)〜(4):
(1)ポリフェノール類を含有する植物抽出物を合成吸着剤に吸着させる工程、
(2)前記合成吸着剤に10〜60質量%の有機溶媒水溶液を接触させて、非重合体カテキン類を含む画分を溶出させる工程、
(3)前記合成吸着剤に20〜100質量%の有機溶媒水溶液を接触させて、ポリフェノール組成物を含む画分を溶出させる工程、
(4)前記ポリフェノール組成物を含む画分から、精留により有機溶媒を除去する工程
を含む、ポリフェノール組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(4)において、前記工程(3)で得られたポリフェノール組成物を含む画分中の有機溶媒水溶液の有機溶媒濃度が30質量%を超えるとき、前記画分に加水して前記有機溶媒濃度を30質量%以下に調整する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(4)において、理論段数5〜100段の精留塔を用いて還流比2〜100の条件で精留を行う、請求項1又は2記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−268761(P2010−268761A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125153(P2009−125153)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】