ポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜
【課題】 ポリフッ化ビニリデン樹脂製分離膜と同レベルの分離膜機能および耐久性を有し、しかも接着性を向上させたポリフッ化ビニリデン系分離膜を提供する。
【解決手段】 基材層と多孔質分離機能層とからなる分離膜において、多孔質分離機能層が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂(ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等)5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成されるものである。
【解決手段】 基材層と多孔質分離機能層とからなる分離膜において、多孔質分離機能層が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂(ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等)5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成されるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水(炊事、洗濯、風呂、トイレ、その他の生活環境から生ずる生活廃水)や生産工場、レストラン、水産加工工場、食品加工場などから生ずる廃水の浄化に特に適した分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水や廃水の浄化に平膜状や中空糸膜状の分離膜が使われるようになってきている。
【0003】
そのような分離膜として、いろいろな種類、形態のものがあるが、界面活性剤を含むポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を、織布や不織布のような多孔質基材の表面に塗布したり、多孔質基材に含浸した後、ポリフッ化ビニリデン樹脂を凝固させ、多孔質基材の表面に多孔質ポリフッ化ビニリデン樹脂層を形成してなる、いわゆる精密ろ過膜と称される平膜が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
この分離膜において、多孔質ポリフッ化ビニリデン樹脂層は分離機能層として作用するが、そのような平膜においては、他の形態の分離膜、たとえば中空糸膜にくらべて単体体積あたりの有効膜面積を大きくとることが困難であるため、ろ過対象に応じた細孔径を保ちつつ透水量を多くすることが要求されている。しかるに、透水量を大きくしようとして空隙率を高くすると、細孔径が大きくなりすぎたり、表面に亀裂が入ったりして阻止率が低下する。一方、阻止率を上げようとして細孔を小さくすると、今度は透水性が低下してしまう。すなわち、阻止率の向上と透水性の向上とは相反する関係にあり、両者のバランスよく整えることはなかなか難しい。
【0005】
加えて、下廃水用分離膜においては、使用中に砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が膜面に激しく衝突したりするので、そのような衝撃にも十分に耐える強度を備えていることが要求される。この強度は主として多孔質基材層が担っているが、従来の分離膜では、著しい衝撃が加わるような環境下で使用すると、ろ過操作中に多孔質ポリフッ化ビニリデン樹脂の接着部から分離膜が剥がれてしまうこともある。
【0006】
さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は一般的に非常に接着しにくい樹脂であるので、分離膜の端部を支持基材枠に接着させて分離膜エレメントを製造させる際にはホットメルト接着剤が一般に使用されているが、それでも接着強度は十分でなく、さらに高めることが要求されている。特に、多孔質層を基材の上に形成する膜製造工程において、多孔質基材の密度が低く、製膜原液の粘度が低い場合では、基材の裏まで製膜原液が達してしまい、接着面の多孔質基材をポリフッ化ビニリデン系樹脂が覆われた分離膜の場合や、また、多孔質基材をポリフッ化ビニリデン系樹脂の製膜原液に浸漬したり、または、両面塗布して多孔質層を形成したりして、分離膜の表面がポリフッ化ビニリデン系樹脂層で覆われた分離膜の場合では、分離膜表面のポリフッ化ビニリデン系樹脂にホットメルト接着剤を十分に絡ませることが困難であって所望の接着強度が得られないという問題がある。仮に接着できた場合でも、多孔質層は支持基材に比べ著しく強度が低い事から、膜ろ過運転中に、被処理水に含まれる砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が激しく衝突することによって支持基材と分離膜との接着が剥がれ易く、接合部からのリークが生じるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2には、ポリスルホン並みの製膜性とポリフッ化ビニリデン並みの疎水性とを備えた多孔質膜を提供するために、ポリスルホンに少量のポリフッ化ビニリデンをブレンドした樹脂組成物からポリスルホン系多孔質膜を製造する方法が提案されている。しかし、この多孔質膜は、膜を構成する樹脂の主成分がポリスルホンであるため、ポリフッ化ビニリデンに比べ耐化学薬品性に劣るという問題があり、長期にわたって実用的に使用することが難しいという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3には、分離膜と支持基材枠との物理的接合方法として、重ね合わせた各樹脂材料の接合部に対して局部加熱や超音波又は高周波に照射を行い、各樹脂部材の界面を溶融させて溶着させる方法が提案されている。この物理的接合方法で採用している局部加熱や超音波又は高周波の照射は、その加熱や照射により生じる熱や振動によって膜シートやフィルタへの損傷が拡大し易いという不利益があり、その上、溶着による斑が生じるため、接合部からリークが起こる可能性が高いという問題点もある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−135939号公報
【特許文献2】特開平7−118438号公報
【特許文献3】特開平7−24271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の技術の上述した問題点を解決し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂製分離膜と同レベルの分離膜機能および耐久性を有し、しかも接着性を向上させることができるポリフッ化ビニリデン系分離膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、次の(1)〜(8)に述べる構成からなる。
(1) 基材層と多孔質分離機能層とからなる分離膜において、多孔質分離機能層が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成されることを特徴とするポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(2) 他の有機樹脂が、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂から選ばれた少なくとも一種である上記(1)に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(3) 分離膜が、多孔質分離機能層を構成する樹脂の一部が基材層中に入り込み、多孔質分離機能層と基材層とが複合化した層が存在する平膜である上記(1)又は(2)に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【0012】
(4) 平均粒径が0.9μmの微粒子の排除率が少なくとも90%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(5) 基材層を構成する多孔質基材の密度が0.7g/cm3以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(6) 基材層を構成する多孔質基材が不織布または織編物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の平膜状の分離膜と流路材と透過液の集液部材とを有している膜分離エレメント。
(8) 上記(7)記載の膜分離エレメントの複数個をハウジングに収容した膜分離モジュール。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜は、当該多孔質分離膜の一部および全部に、多孔質分離機能層を構成する樹脂が入り込んで基材との複合層を形成している平膜状の分離膜であっても、当該多孔質分離膜をホットメルト接着剤でエレメントの支持板に接着したときの接着強度を十分に高めることができ、例えば、5N/25mm以上150N/25mm以下の接着強度とすることができる。また、膜面に、被処理水に含まれる砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が激しく衝突しても、十分に耐えることができる接着強度が得られるので、接着部での剥がれを大幅に抑制することができる。したがって、分離膜の耐久性が向上され、長期運転を図ることが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る分離膜は、基材層と多孔質分離機能層とからなるポリフッ化ビニリデン系多孔質膜である。ここで、基材層と多孔質分離機能層とは、当該多孔質分離膜の一部および全部が、多孔質分離機能層を構成する樹脂の一部が基材層中に入り込み、多孔質分離機能層と基材層とが複合化した層を形成していて、当該多孔質膜をホットメルト接着剤でエレメントの支持板に接着したときの接着強度が少なくとも5N/25mm以上150N/25mm以下であることが好ましい。このような接着強度であれば分離膜の剥がれを十分に抑制することができる。
【0015】
多孔質分離機能層は、分離膜における分離機能を負担する層であり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成される。このようにポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂を主成分とするので、溶液による製膜が容易であり、物理的耐久性や耐薬品性にも優れた分離膜とすることができる。
【0016】
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーまたはフッ化ビニリデン共重合体である。複数種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有していてもかまわない。フッ化ビニリデン共重合体として、フッ化ビニリデンに、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレンおよび三フッ化塩化エチレンからなる群から選ばれた1種類以上を共重合させてなる共重合体が挙げられる。
【0017】
また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、分離膜への加工性を考慮すると、5万〜100万、さらに10万〜75万の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲より大きくなると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物溶液の粘度が高くなりすぎ、またこの範囲より小さくなると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の粘度が低くなりすぎ、いずれも分離膜を形成することが困難になる。分離機能層を構成するポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂の量が少なすぎると耐化学薬品性が低下してしまう欠点があり、また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が100重量%に近いと接着強度を高めることが困難である。したがって主成分であるポリフッ化ビニリデン系樹脂の割合はブレンド樹脂の51重量%〜95重量%とする。
【0018】
また、分離機能層を構成するブレンド樹脂において、副成分の有機樹脂の量が多すぎると耐久性が低下したりすることから、副成分の有機樹脂の量はブレンド樹脂の5重量%〜49重量%とすることが必要である。
【0019】
かかる、副成分の有機樹脂は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂以外の有機樹脂であり、たとえば、ポリアクリロニトリル系樹脂(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などのポリアクリロニトリルとその他の樹脂の共重合体)、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを例示することができる。なかでも、溶媒と馴染みがよく、ブレンドすることによる耐久性や接着性の向上の効果のために有利であることから、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂から選ばれた少なくとも一種類の樹脂が好ましい。その中でも原液粘度による製膜性の点からみてポリスルホン系樹脂が特に好ましい。
【0020】
そして、多孔質分離機能層が基材層の上に形成された分離膜において、基材層は、多孔質分離機能層を支持して分離膜に強度を与える機能をもつ。基材層を構成する材質としては、有機基材、無機基材等、特に限定されないが、軽量化しやすい点から、有機基材が好ましい。有機基材としては、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維からなる織編物や不織布があげられる。なかでも、密度の制御が比較的容易な不織布が特に好ましい。
【0021】
基材層の厚みは、薄すぎると分離膜としての強度を保ちにくくなり、また、極端に厚いと透水性が低下するので、0.01mm〜1mmの範囲が好ましい。最も好ましくは0.05mm〜0.5mmで範囲である。
【0022】
また、基材の密度は、0.7g/cm3以下、好ましくは0.6g/cm3以下である。この密度の範囲は後述する製造工程において、製膜原液を受け入れ、基材と多孔質層との複合層を形成するのに適している。しかしながら、極端に低密度になると分離膜としての強度が低下するので、0.3g/cm3以上であるのが好ましい。ここでいう密度とは、見かけ密度であり、基材の面積、厚さと重量から、次式により求める事ができる。
【数1】
【0023】
一方、多孔質分離機能層の厚みは、薄すぎるとひび割れなどの欠陥が生じ、ろ過性能が落ちる場合があり、厚すぎると透水量が低下することがあるので、通常0.001〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.2mmの範囲で選定することが好ましい。
【0024】
さらに、多孔質分離機能層が基材層の上に形成された分離膜において、多孔質分離機能層を構成するポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の一部が基材層中に入り込み複合層が形成されていることが好ましい。基材層にポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂が入り込むことで、いわゆるアンカー効果によって多孔質分離機能層が基材層に堅固に定着され、多孔質分離機能層が基材層から剥がれるのを防止できるようになる。多孔質分離機能層は、基材層に対して、片面に偏って存在しても構わないし、また、両面に存在しても構わない。多孔質分離機能層は、基材層に対して、対称構造であっても、非対称構造であっても構わない。また、多孔質分離機能層が基材層に対して両面に存在している場合には、両側の多孔質分離機能層が、基材層を介して連続的であっても構わないし、不連続であっても構わない。
【0025】
次に、本発明の分離膜の製造方法について説明する。本発明の分離膜は、たとえば、ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂及び開孔剤などを含む製膜原液を、非溶媒を含む凝固液中で凝固させ多孔質分離機能層を形成することにより製造することができる。
【0026】
このとき、基材の表面に製膜原液を塗布して多孔質分離機能層を形成してもよく、基材を製膜原液に浸漬して多孔質分離機能層を形成してもよい。基材に製膜原液を塗布する場合には、基材の片面に塗布しても構わないし、両面に塗布しても構わない。基材とは別に多孔質分離機能層のみを形成してもよい。
【0027】
そして、製膜原液を凝固させるにあたっては、基材上に形成された多孔質分離機能層のみを凝固液に接触させたり、多孔質分離機能層を基材ごと凝固液に浸漬すればよい。多孔質分離機能層のみを凝固液に接触するためには、例えば基材上に形成された多孔質分離機能層が下側に来るようにして凝固浴表面と接触させる方法や、ガラス板、金属板などの平滑な板の上に基材を接触させて、凝固浴が基材側に回り込まないように貼り付け、多孔質分離機能層を有する基材を板ごと凝固浴に浸漬する方法などがある。後者の方法では、基材を板に貼り付けてから製膜原液の被膜を形成しても構わないし、基材に原液の被膜を形成してから板に貼り付けても構わない。
【0028】
そして、製膜原液には、前記したポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂の他に、必要に応じて開孔剤やそれらを溶解する溶媒等を添加してもよい。
【0029】
製膜原液に多孔質形成を促進する作用を持つ開孔剤を加える場合、その開孔剤は、凝固液によって抽出可能なものであればよく、凝固液への溶解性の高いものが好ましい。たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニールアルコール、ポリビニールブチラール、ポルアクリル酸などの水溶液高分子やグリセリンを用いることもできる。
【0030】
また、本発明において、開孔剤としては、ポリオキシアルキレン構造又は、脂肪酸エステル構造又は水酸基を含有している界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の使用により、目的とする細孔構造を得ることが容易になる。
【0031】
ポリオキシアルキレン構造としては、
【化1】
などを挙げることができるが、特に親水性の観点から、次式で示されるポリオキシエチレンが好ましい。
【化2】
【0032】
脂肪酸エステル構造としては、長鎖脂肪族基を有する脂肪酸が挙げられる。長鎖脂肪族基としては、直鎖状、分岐状いずれでも良いが、脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸などが挙げられる。また、油脂由来の脂肪酸エステル、例えば牛脂、パーム油、ヤシ油等も挙げられる。
【0033】
水酸基を有する界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖などを挙げることができる。
【0034】
本発明において開孔剤として用いる界面活性剤は、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造、水酸基のうち2つ以上を含むものが好ましい。
【0035】
中でも、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造及び水酸基の全てを含有している界面活性剤が特に好ましく用いられ、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとして、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールを挙げることができる。これらの界面活性剤は特に無機微粒子の分散性をよくするだけでなく、多孔質層に残存し乾燥させても透水性、阻止性が低下しないという特徴を併せ持つので好ましい。
【0036】
また、製膜原液中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、他の有機樹脂及び開孔剤などを溶解させるための溶媒を用いる場合、その溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、メチルエチルケトンなどを用いる事ができる。中でもポリフッ化ビニリデン系樹脂に対する溶解性の高いNMP、DMAc、DMF、DMSOを好ましく用いることができる。
【0037】
製膜原液には、その他、非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂や他の有機樹脂を溶解しないものであり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び他の有機樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。なかでも廃水処理の容易さや価格の点から水、メタノールが好ましい。これらの混合であってもよい。
【0038】
製膜原液の組成において、ポリフッ化ビニリデン系と他の有機樹脂からなるブレンド樹脂は5重量%〜30重量%、開孔剤は0.1重量%〜15重量%、溶媒は45重量%〜94.8重量%、非溶媒は0.1重量%〜10重量%範囲内であることが好ましい。中でも、ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂は、極端に少ないと多孔質層の強度が低くなり、多すぎると透水性が低下することがあるので、8重量%〜20重量%の範囲がより好ましい。開孔剤は、少なすぎると透水性が低下し、多すぎると多孔質層の強度が低下することがある。また、極端に多いとポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂中に過剰に残存して使用中に溶出し、透過水の水質が悪化したり、透水性変動をしたりすることがある。したがって、より好ましい範囲は、0.5重量%〜10重量%である。さらに、溶媒は少なすぎると原液がゲル化しやすくなり、多すぎると多孔質層の強度が低下することので、より好ましくは60重量%〜90重量%の範囲である。また、非溶媒は、あまり多いと原液のゲル化が起こりやすくなり、極端に少ないと細孔やマクロボイドの大きさの制御が難しくなる。したがって、より好ましくは0.5重量%〜5重量%である。
【0039】
一方、凝固浴としては、非溶媒、または非溶媒と溶媒とを含む混合溶液を用いることができる。製膜原液にも非溶媒を用いる場合、凝固浴における非溶媒は、凝固浴の少なくとも80重量%とするのが好ましい。少なすぎるとポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂の凝固速度が遅くなり細孔径が大きくなったりする。より好ましくは、85重量%〜100重量%の範囲である。一方、製膜原液に非溶媒を用いない場合、製膜原液にも非溶媒を用いる場合よりも、凝固浴における非溶媒の含有量を少なくすることが好ましいが、少なくとも60重量%とするのが好ましい。非溶媒が多いと、ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂の凝固速度が速くなって多孔質層の表面は緻密となり透水性が低下することがある。より好ましくは60重量%〜99重量%の範囲がよい。凝固浴中の非溶媒の含有量を調整することにより、多孔質層表面の孔径やマクロボイドの大きさを制御することができる。なお、凝固浴の温度は、あまり高いと凝固速度が速すぎるようになり、逆に、あまり低いと凝固速度が遅すぎるようになるので、通常、15℃〜80℃の範囲で選定するのが好ましい。より好ましくは20℃〜60℃の範囲である。
【0040】
また、本発明の分離膜は、ナノろ過膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜とのいずれであってもよく、分離対称物質の大きさに応じて適当な一種以上の膜を選択、組み合わせればよいが、下廃水処理用としては特に限外ろ過膜、精密ろ過膜が好ましい。そして、平均粒径0.088μmの微粒子の阻止率が90%以上であることがさらに好ましい。この阻止率を満足しないときは、下廃水処理にあたって、菌体や汚泥などがリークしたり菌体や汚泥による目詰まりが起こったり、ろ過差圧の上昇が起こったり、寿命が極端に短くなったりする。
【0041】
ここで、阻止率は、逆浸透膜透過水にセラダイン社製ポリスチレンラテックス微粒子(公称粒径0.088μm、標準偏差0.0062μm)を10ppmの濃度になるように分散させた原水を、温度25℃、圧力10kPaの条件下で分離膜を透過させ、原水と透過水についてそれぞれ求めた波長202nmの紫外線の吸光度から、次式によって求める。
【0042】
【数2】
【0043】
また、本発明において、そして、分離膜とABS樹脂のエレメント支持板をホットメルト型接着剤を用いて、熱プレス法にて接着を行うことを特徴とする平膜への接着方法であり、ホットメルト型接着剤の発言し得るアンカー効果を最大限に引き出し、接着剤は分離膜の奥深くまで浸透させ分離膜の支持基材でも固定するものである。
【0044】
そして、多孔質分離機能層は、基材層に対して、片面に偏って存在しても構わないし、また、両面に存在しても構わない。多孔質分離機能層は、基材層に対して、対称構造であっても、非対称構造であっても構わない。また、多孔質分離機能層が基材層に対して両面に存在している場合には、両側の多孔質分離機能層が、基材層を介して連続的であっても構わないし、不連続であっても構わない。
【0045】
また、本発明において分離膜とABS樹脂のエレメント支持板とを接着する場合は、電子天秤の計量皿(株式会社タニタ製/TLC−500)の上に、ABS樹脂製のエレメント支持板を置き、その上にホットメルト接着材を乗せ、その上から分離膜を置き、分離膜の上から熱プレスやアイロン等により165℃の熱を加え0.13MPaの圧力で20秒間押さえつけ接着させることが好ましい。ここで、ホットメルト接着材の形状はホットメルト接着ガンを用いた場合はガット形状でもよくペレット形状でもよく、ホットメルト接着ガンを使用しない場合はシート状でもよく、またはフィルムであってもよい。
【0046】
なお、ホットメルト接着剤の付着量が少ないと均一に接着できなくリークすることから、分離膜とエレメント支持板との接着面に、幅10mm、厚さ0.15mmの線状に接着剤を付着することが好ましい。
【0047】
かかるホットメルト接着剤としては、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましい。なかでも、エレメント支持板の構成材として一般的に使用されるABS樹脂、および、分離膜の基材層として一般的に使用されるポリエステル繊維に対し馴染のよいポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0048】
そして、分離膜とエレメント支持板の接着強度は、JIS K6854 180度剥離試験に準じて、“テンシロン”(TENSILON/UTM-4L TOYO MEASURING INSTRUMENTS CO., LTD)を用いて測定する。エレメント支持板にホットメルト接着剤で分離膜を張り合わせた幅25mmの分離膜サンプルとし、剥離速度200mm/minの速度で剥離強度の測定を行なう。
【0049】
そして、本発明の分離膜を膜ろ過に使用するに際しては、分離膜が平膜状の場合、分離膜(または分離膜および流路材)と、透過液の集液部材とを有しているエレメントとすることや、このエレメントを複数個ハウジングに収容してモジュールとすることが好ましい。また、分離膜が中空糸状の場合は、その複数本の中空糸膜を一方向に引き揃えて、原液流入口および透過液流出口を有するハウジングに収容するとともに、少なくとも一方の端部を端面が開口状態となるようにケースに固定し、モジュールとすることが好ましい。エレメントやモジュールには、原液を分離膜に供給する手段と、分離膜を透過した透過液を集液する集液手段とを設けることで、液体処理装置として下廃水の処理等に好ましく用いることができる。
【0050】
エレメントの形態は特に限定されないが、下廃水処理用途に好適に用いることができるエレメントの形態の一例を、図1、2を用いて説明する。
【0051】
図1、2に示すエレメントは、剛性を有する支持板1の両面に、流路材2と平膜状の分離膜3とをこの順序で配してなる。この形態のエレメントは、膜面積を大きくすることが困難なので、透水量を大きくするために、支持板1の両面に分離膜3を配している。支持板1は、両面に凸部4と凹部5とを有している。分離膜3は、液体中の不純物をろ過する。流路材2は、分離膜3でろ過された透過水を効率よく支持板1に流すためものである。支持板1に流れた透過水は、支持板1の凹部を通って外部に取り出される。
【0052】
支持板1は、板状体の両面に複数の凹凸を有した構造であれば特に限定されるものではないが、透過水取出口までの距離、流路抵抗を均一化して被処理水が膜面に対して均等に流れるように、凹部は一定間隔で並列配置された複数個の溝を形成するように設けることが好ましい。このとき、各凹部5の幅は、透過水量を高く保ちつつ厳しい曝気条件下での流路材2、分離膜3の落ち込みを防止するために、1〜20mmの範囲内、さらに1.5〜5mmの範囲内とするのが好ましい。凹部5の深さは、エレメントとしての厚みを抑えつつ透過水流路を確保するために1〜10mm程度の範囲内で選択するのが好ましい。さらに、支持板の強度を保ちつつ、透過水流路を十分に確保し透過水が流動する際の流動抵抗を抑えるために、凹部による支持板の空隙率は15〜85%の範囲内であることが好ましい。これは、中実の直方体の支持板を100%としたときに凹部によって形成される空隙の容積比率を示すもので、空隙率が15%を下回ると流動抵抗が大きくなり透過水を効率よく取水できず、85%を上回ると支持板の強度が著しく低下する。
【0053】
また、支持板1の材質としては、ASTM試験法のD638における引張り強さが15MPa程度以上の剛性を持つ材質が好ましい。ステンレスなどの金属類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの樹脂、繊維強化樹脂(FRP)などの複合材料、その他の材質などを好ましく使用することができる。
【0054】
また、本発明のエレメントにおいては、図1に示すように支持板1の周縁部に枠体6を設置することも好ましい。この場合、分離膜3は支持板1と枠体6の間に嵌挿してもよく、また、枠体6の外部表面に接着させてもよい。ここで、「接着」とは、接触させた状態で着けることをいい、別途樹脂など用いて接着しても、分離膜そのものを溶着しても、さらにはその他種々の方法で接着してもいい。樹脂の押出成形などの安価な製法で製作された支持板1の周縁部に、射出成形、押出成形などで製作した枠体6を嵌めこむようにすることで、コストを削減できる。支持板1を嵌めこみやすくするため、枠体6は、断面がコ型状になるように形成することが好ましい。
【0055】
上述のように構成されたエレメントにおいては、分離膜3によってろ過された透過水が、流路材2、支持板1の凹部5へと流動し、最終的に透過水取出口7からエレメント外部へと排出される。
【0056】
続いて、上記エレメントを複数枚ハウジングに収容したモジュールおよびその使用方法を図1〜3に基づいて説明する。図3は、複数枚のエレメント9が、互いに平行に、かつ、分離膜3の膜面間に空間ができるようにハウジング内に収納された分離膜モジュール10を示している。この分離膜モジュール10は、被処理水槽11に貯えた有機性廃水などの被処理水に浸漬するようにして使用される。分離膜モジュール10の内部には鉛直方向に装填された複数枚のエレメント9と、その下方にブロア13からの気体を分離膜の膜面に供給する散気装置12とを設け、また、分離膜モジュール10よりも下流側には透過水を吸引するポンプ14を設けている。
【0057】
このように構成された下廃水処理装置において、廃水などの被処理水は、ポンプ14の吸引力により分離膜3を通過する。この際、被処理水中に含まれる微生物粒子、無機物粒子などの懸濁物質がろ過される。そして、分離膜3を通過した透過水は、流路材2によって形成されている透過水流路を経て、支持板1の凹部5から枠体6内に形成された集水部8を通り、透過水取出口7を通って被処理水槽11の外部に取り出される。一方、ろ過と並行して散気装置12が気泡を発生し、その気泡のエアリフト作用によって生じる、エレメント9の膜面に平行な上昇流が、膜面に堆積したろ過物を離脱させる。
【0058】
もちろん、被処理液としては、下廃水に限られるのではなく、水処理分野であれば浄水処理、上水処理、廃水処理、工業用水製造などで利用でき、河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、廃水などを被処理水とすることができる。
【実施例】
【0059】
実施例、比較例における分離膜の透水量と阻止率は、次のように測定した。
分離膜の透水量の測定は、分離膜を直径50mmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダーにセットし、逆浸透膜透過水を25℃で、水頭高さ1mで5分間予備透過させた後、続けて透過させて透過水を5分間採取して求めた。
【0060】
阻止率は、ラテックス粒子(セラダイン社製ポリスチレンラテックス微粒子、公称粒径0.088μm、標準偏差0.0062μm)を用いて濃度の検量線を求めた。すなわち、微粒子阻止率測定用のホルダー(UHP−43K、アドバンテック東洋(株)製)に分離膜(直径43mm)をセットし、ラテックス粒子濃度約10ppmに調製した原水を入れ、評価圧力10kPaの窒素圧で、原水を攪拌しながら、25cc予備透過をした後、25ccの透過水を採取して、原水と透過水のラテックス粒子濃度を分光光度計(日立製作所製、U−3200)で波長202nmの紫外線の吸光度で測定して、その濃度比から次の式により阻止率を求めた。
【0061】
【数3】
【0062】
分離膜とABS樹脂製のエレメント支持板の接着は、電子天秤(TLC-500 株式会社タニタ製)の上にエレメント支持板を乗せ、その上に幅10mm、長さ50mm、厚さ150μmのホットメルト接着剤のフィルムを置き、さらにその上に分離膜を乗せ、分離膜の上から165℃に熱したアイロンで0.13MPaの加重を20秒間かけて接着させ、接着後、膜サンプルの幅25mmになるようカットして接着強度測定用の膜サンプルを作製した。
【0063】
また、分離膜の接着試験は“テンシロン”(TENSILON/UTM-4L TOYO MEASURING INSTRUMENTS CO., LTD)を用いて、JIS K6854 180度剥離試験に準じて、剥離速度200mm/min、分離膜のサンプル幅は25mmの条件で剥離試験を行い、接着強度を求めた。
【0064】
<実施例1>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF/呉羽化学工業株式会社製、KF#850)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS/テイジンアモコ エンジニアリング プラスチック株式会社製、P−3500)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0065】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
ポリスルホン(PS) : 1.7重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0066】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに90℃の熱水に2分間浸漬して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0067】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.1%と高い値であった。また、透水量は40.2×10−9m3/m2・s・Paであった。
分離膜とABS樹脂製のエレメント支持板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、90.8N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、それら結果を表1に示す。
【0068】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面(多孔質分離機能層の表面)には、図4に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造(原液が抜けた状態)は図16に示す通り走査型電子顕微鏡観察によっても、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態が観察された。
【0069】
<実施例2>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0070】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :11.9重量%
ポリスルホン(PS) : 5.1重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0071】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0072】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.8%と高い値であった。また、透水量は40.9×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、71.2N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0073】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図5に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0074】
<実施例3>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0075】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :8.67重量%
ポリスルホン(PS) :8.33重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0076】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0077】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.0%と高い値であった。また、透水量は43.1×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、34.7N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0078】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図6に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0079】
<実施例4>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0080】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
ポリスルホン(PS) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0081】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0082】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、97.1%と高い値であった。また、透水量は34.3×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、85.1N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0083】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図7に示す通り走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0084】
<実施例5>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0085】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :11.9重量%
ポリスルホン(PS) : 5.1重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0086】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0087】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.2%と高い値であった。また、透水量は36.2×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、60.8N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0088】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図8に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察されなかった。
【0089】
<実施例6>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0090】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :8.67重量%
ポリスルホン(PS) :8.33重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0091】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0092】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.0%と高い値であった。また、透水量は38.0×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、35.1N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0093】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図9に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0094】
<実施例7>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリアクリロニトリル(PAN)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0095】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
ポリアクリロニトリル(PAN) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0096】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0097】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.6%と高い値であった。また、透水量は34.4×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、33.6N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0098】
<実施例8>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0099】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0100】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0101】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.7%と高い値であった。また、透水量は40.1×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、42.1N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0102】
<実施例9>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0103】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0104】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0105】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.2%と高い値であった。また、透水量は40.6×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、40.3N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0106】
<比較例1>
副成分樹脂であるポリスルホン樹脂を用いず、ポリフッ化ビニリデン樹脂のみで、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0107】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :17.0重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0108】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.2%であった。また、透水量は42.3×10−9m3/m2・s・Paであった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、3.8N/25mmと、低い接着強度であった。なお、結果を表1に示す。
【0109】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図10に示す通り膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0110】
<比較例2>
実施例1においての主成分樹脂であるポリフッ化ビニリデン樹脂を用いず、副成分樹脂であるポリスルホン樹脂のみで、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0111】
ポリスルホン(PS) :17.0重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0112】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、83.1%と低い値であった。また、透水量は8.1×10−9m3/m2・s・Paであり、透水量が低かった。
さらに、分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、97.4N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0113】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図11に示す通り細孔数が少なく不均一な膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0114】
<比較例3>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0115】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) : 1.9重量%
ポリスルホン(PS) :15.3重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0116】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、74.2%と低い値であった。また、透水量は12.6×10−9m3/m2・s・Paと、透水量が低かった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、88.7N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0117】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図12に示す通り細孔数が少なく不均一な膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0118】
<比較例4>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0119】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) : 5.1重量%
ポリスルホン(PS) :11.9重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0120】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、72.1%と低い値であった。また、透水量は17.3×10−9m3/m2・s・Paと低かった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、73.9N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0121】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図13に示す通り細孔数が少なく不均一な膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0122】
<比較例5>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0123】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :17.0重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0124】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.2%であった。また、透水量は22.3×10−9m3/m2・s・Paと、低かった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、4.6N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0125】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図14に示す通り細孔数が少ない膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0126】
<比較例6>
実施例1においての主成分樹脂であるポリフッ化ビニリデン樹脂を用いず、副成分樹脂であるポリスルホン樹脂のみで、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0127】
ポリスルホン(PS) :17.0重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0128】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、72.3%と低い値であった。また、透水量は20.2×10−9m3/m2・s・Paでとなった。すなわち、透水量が低下した。
さらに、分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、98.0N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0129】
さらに、分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図15に示す通り膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0130】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る分離膜を用いたエレメントの概略展開斜視図である。
【図2】本発明に係る分離膜を用いたエレメント(図1のエレメント)のA−A断面での概略横断図面である。
【図3】本発明に係る分離膜モジュールを用いた液体処理方法の概略フロー図である。
【図4】実施例1による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例3による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例4による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例5による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例6による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例1による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例2による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例3による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例4による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例5による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】比較例6による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】実施例1による分離膜の裏側構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0132】
1:支持板
2:流路材
3:分離膜
4:凸部
5:凹部(溝)
6:枠体
7:ろ過液取出口
8:集液部
9:エレメント
10:分離膜モジュール
11:廃処理水槽
12:散気装置
13:ブロア
14:ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水(炊事、洗濯、風呂、トイレ、その他の生活環境から生ずる生活廃水)や生産工場、レストラン、水産加工工場、食品加工場などから生ずる廃水の浄化に特に適した分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水や廃水の浄化に平膜状や中空糸膜状の分離膜が使われるようになってきている。
【0003】
そのような分離膜として、いろいろな種類、形態のものがあるが、界面活性剤を含むポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を、織布や不織布のような多孔質基材の表面に塗布したり、多孔質基材に含浸した後、ポリフッ化ビニリデン樹脂を凝固させ、多孔質基材の表面に多孔質ポリフッ化ビニリデン樹脂層を形成してなる、いわゆる精密ろ過膜と称される平膜が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
この分離膜において、多孔質ポリフッ化ビニリデン樹脂層は分離機能層として作用するが、そのような平膜においては、他の形態の分離膜、たとえば中空糸膜にくらべて単体体積あたりの有効膜面積を大きくとることが困難であるため、ろ過対象に応じた細孔径を保ちつつ透水量を多くすることが要求されている。しかるに、透水量を大きくしようとして空隙率を高くすると、細孔径が大きくなりすぎたり、表面に亀裂が入ったりして阻止率が低下する。一方、阻止率を上げようとして細孔を小さくすると、今度は透水性が低下してしまう。すなわち、阻止率の向上と透水性の向上とは相反する関係にあり、両者のバランスよく整えることはなかなか難しい。
【0005】
加えて、下廃水用分離膜においては、使用中に砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が膜面に激しく衝突したりするので、そのような衝撃にも十分に耐える強度を備えていることが要求される。この強度は主として多孔質基材層が担っているが、従来の分離膜では、著しい衝撃が加わるような環境下で使用すると、ろ過操作中に多孔質ポリフッ化ビニリデン樹脂の接着部から分離膜が剥がれてしまうこともある。
【0006】
さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は一般的に非常に接着しにくい樹脂であるので、分離膜の端部を支持基材枠に接着させて分離膜エレメントを製造させる際にはホットメルト接着剤が一般に使用されているが、それでも接着強度は十分でなく、さらに高めることが要求されている。特に、多孔質層を基材の上に形成する膜製造工程において、多孔質基材の密度が低く、製膜原液の粘度が低い場合では、基材の裏まで製膜原液が達してしまい、接着面の多孔質基材をポリフッ化ビニリデン系樹脂が覆われた分離膜の場合や、また、多孔質基材をポリフッ化ビニリデン系樹脂の製膜原液に浸漬したり、または、両面塗布して多孔質層を形成したりして、分離膜の表面がポリフッ化ビニリデン系樹脂層で覆われた分離膜の場合では、分離膜表面のポリフッ化ビニリデン系樹脂にホットメルト接着剤を十分に絡ませることが困難であって所望の接着強度が得られないという問題がある。仮に接着できた場合でも、多孔質層は支持基材に比べ著しく強度が低い事から、膜ろ過運転中に、被処理水に含まれる砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が激しく衝突することによって支持基材と分離膜との接着が剥がれ易く、接合部からのリークが生じるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2には、ポリスルホン並みの製膜性とポリフッ化ビニリデン並みの疎水性とを備えた多孔質膜を提供するために、ポリスルホンに少量のポリフッ化ビニリデンをブレンドした樹脂組成物からポリスルホン系多孔質膜を製造する方法が提案されている。しかし、この多孔質膜は、膜を構成する樹脂の主成分がポリスルホンであるため、ポリフッ化ビニリデンに比べ耐化学薬品性に劣るという問題があり、長期にわたって実用的に使用することが難しいという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3には、分離膜と支持基材枠との物理的接合方法として、重ね合わせた各樹脂材料の接合部に対して局部加熱や超音波又は高周波に照射を行い、各樹脂部材の界面を溶融させて溶着させる方法が提案されている。この物理的接合方法で採用している局部加熱や超音波又は高周波の照射は、その加熱や照射により生じる熱や振動によって膜シートやフィルタへの損傷が拡大し易いという不利益があり、その上、溶着による斑が生じるため、接合部からリークが起こる可能性が高いという問題点もある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−135939号公報
【特許文献2】特開平7−118438号公報
【特許文献3】特開平7−24271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の技術の上述した問題点を解決し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂製分離膜と同レベルの分離膜機能および耐久性を有し、しかも接着性を向上させることができるポリフッ化ビニリデン系分離膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、次の(1)〜(8)に述べる構成からなる。
(1) 基材層と多孔質分離機能層とからなる分離膜において、多孔質分離機能層が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成されることを特徴とするポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(2) 他の有機樹脂が、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂から選ばれた少なくとも一種である上記(1)に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(3) 分離膜が、多孔質分離機能層を構成する樹脂の一部が基材層中に入り込み、多孔質分離機能層と基材層とが複合化した層が存在する平膜である上記(1)又は(2)に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【0012】
(4) 平均粒径が0.9μmの微粒子の排除率が少なくとも90%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(5) 基材層を構成する多孔質基材の密度が0.7g/cm3以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(6) 基材層を構成する多孔質基材が不織布または織編物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の平膜状の分離膜と流路材と透過液の集液部材とを有している膜分離エレメント。
(8) 上記(7)記載の膜分離エレメントの複数個をハウジングに収容した膜分離モジュール。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜は、当該多孔質分離膜の一部および全部に、多孔質分離機能層を構成する樹脂が入り込んで基材との複合層を形成している平膜状の分離膜であっても、当該多孔質分離膜をホットメルト接着剤でエレメントの支持板に接着したときの接着強度を十分に高めることができ、例えば、5N/25mm以上150N/25mm以下の接着強度とすることができる。また、膜面に、被処理水に含まれる砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が激しく衝突しても、十分に耐えることができる接着強度が得られるので、接着部での剥がれを大幅に抑制することができる。したがって、分離膜の耐久性が向上され、長期運転を図ることが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る分離膜は、基材層と多孔質分離機能層とからなるポリフッ化ビニリデン系多孔質膜である。ここで、基材層と多孔質分離機能層とは、当該多孔質分離膜の一部および全部が、多孔質分離機能層を構成する樹脂の一部が基材層中に入り込み、多孔質分離機能層と基材層とが複合化した層を形成していて、当該多孔質膜をホットメルト接着剤でエレメントの支持板に接着したときの接着強度が少なくとも5N/25mm以上150N/25mm以下であることが好ましい。このような接着強度であれば分離膜の剥がれを十分に抑制することができる。
【0015】
多孔質分離機能層は、分離膜における分離機能を負担する層であり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成される。このようにポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂を主成分とするので、溶液による製膜が容易であり、物理的耐久性や耐薬品性にも優れた分離膜とすることができる。
【0016】
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーまたはフッ化ビニリデン共重合体である。複数種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有していてもかまわない。フッ化ビニリデン共重合体として、フッ化ビニリデンに、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレンおよび三フッ化塩化エチレンからなる群から選ばれた1種類以上を共重合させてなる共重合体が挙げられる。
【0017】
また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、分離膜への加工性を考慮すると、5万〜100万、さらに10万〜75万の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲より大きくなると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物溶液の粘度が高くなりすぎ、またこの範囲より小さくなると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の粘度が低くなりすぎ、いずれも分離膜を形成することが困難になる。分離機能層を構成するポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂の量が少なすぎると耐化学薬品性が低下してしまう欠点があり、また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が100重量%に近いと接着強度を高めることが困難である。したがって主成分であるポリフッ化ビニリデン系樹脂の割合はブレンド樹脂の51重量%〜95重量%とする。
【0018】
また、分離機能層を構成するブレンド樹脂において、副成分の有機樹脂の量が多すぎると耐久性が低下したりすることから、副成分の有機樹脂の量はブレンド樹脂の5重量%〜49重量%とすることが必要である。
【0019】
かかる、副成分の有機樹脂は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂以外の有機樹脂であり、たとえば、ポリアクリロニトリル系樹脂(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などのポリアクリロニトリルとその他の樹脂の共重合体)、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを例示することができる。なかでも、溶媒と馴染みがよく、ブレンドすることによる耐久性や接着性の向上の効果のために有利であることから、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂から選ばれた少なくとも一種類の樹脂が好ましい。その中でも原液粘度による製膜性の点からみてポリスルホン系樹脂が特に好ましい。
【0020】
そして、多孔質分離機能層が基材層の上に形成された分離膜において、基材層は、多孔質分離機能層を支持して分離膜に強度を与える機能をもつ。基材層を構成する材質としては、有機基材、無機基材等、特に限定されないが、軽量化しやすい点から、有機基材が好ましい。有機基材としては、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維からなる織編物や不織布があげられる。なかでも、密度の制御が比較的容易な不織布が特に好ましい。
【0021】
基材層の厚みは、薄すぎると分離膜としての強度を保ちにくくなり、また、極端に厚いと透水性が低下するので、0.01mm〜1mmの範囲が好ましい。最も好ましくは0.05mm〜0.5mmで範囲である。
【0022】
また、基材の密度は、0.7g/cm3以下、好ましくは0.6g/cm3以下である。この密度の範囲は後述する製造工程において、製膜原液を受け入れ、基材と多孔質層との複合層を形成するのに適している。しかしながら、極端に低密度になると分離膜としての強度が低下するので、0.3g/cm3以上であるのが好ましい。ここでいう密度とは、見かけ密度であり、基材の面積、厚さと重量から、次式により求める事ができる。
【数1】
【0023】
一方、多孔質分離機能層の厚みは、薄すぎるとひび割れなどの欠陥が生じ、ろ過性能が落ちる場合があり、厚すぎると透水量が低下することがあるので、通常0.001〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.2mmの範囲で選定することが好ましい。
【0024】
さらに、多孔質分離機能層が基材層の上に形成された分離膜において、多孔質分離機能層を構成するポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物の一部が基材層中に入り込み複合層が形成されていることが好ましい。基材層にポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂が入り込むことで、いわゆるアンカー効果によって多孔質分離機能層が基材層に堅固に定着され、多孔質分離機能層が基材層から剥がれるのを防止できるようになる。多孔質分離機能層は、基材層に対して、片面に偏って存在しても構わないし、また、両面に存在しても構わない。多孔質分離機能層は、基材層に対して、対称構造であっても、非対称構造であっても構わない。また、多孔質分離機能層が基材層に対して両面に存在している場合には、両側の多孔質分離機能層が、基材層を介して連続的であっても構わないし、不連続であっても構わない。
【0025】
次に、本発明の分離膜の製造方法について説明する。本発明の分離膜は、たとえば、ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂及び開孔剤などを含む製膜原液を、非溶媒を含む凝固液中で凝固させ多孔質分離機能層を形成することにより製造することができる。
【0026】
このとき、基材の表面に製膜原液を塗布して多孔質分離機能層を形成してもよく、基材を製膜原液に浸漬して多孔質分離機能層を形成してもよい。基材に製膜原液を塗布する場合には、基材の片面に塗布しても構わないし、両面に塗布しても構わない。基材とは別に多孔質分離機能層のみを形成してもよい。
【0027】
そして、製膜原液を凝固させるにあたっては、基材上に形成された多孔質分離機能層のみを凝固液に接触させたり、多孔質分離機能層を基材ごと凝固液に浸漬すればよい。多孔質分離機能層のみを凝固液に接触するためには、例えば基材上に形成された多孔質分離機能層が下側に来るようにして凝固浴表面と接触させる方法や、ガラス板、金属板などの平滑な板の上に基材を接触させて、凝固浴が基材側に回り込まないように貼り付け、多孔質分離機能層を有する基材を板ごと凝固浴に浸漬する方法などがある。後者の方法では、基材を板に貼り付けてから製膜原液の被膜を形成しても構わないし、基材に原液の被膜を形成してから板に貼り付けても構わない。
【0028】
そして、製膜原液には、前記したポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂の他に、必要に応じて開孔剤やそれらを溶解する溶媒等を添加してもよい。
【0029】
製膜原液に多孔質形成を促進する作用を持つ開孔剤を加える場合、その開孔剤は、凝固液によって抽出可能なものであればよく、凝固液への溶解性の高いものが好ましい。たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニールアルコール、ポリビニールブチラール、ポルアクリル酸などの水溶液高分子やグリセリンを用いることもできる。
【0030】
また、本発明において、開孔剤としては、ポリオキシアルキレン構造又は、脂肪酸エステル構造又は水酸基を含有している界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の使用により、目的とする細孔構造を得ることが容易になる。
【0031】
ポリオキシアルキレン構造としては、
【化1】
などを挙げることができるが、特に親水性の観点から、次式で示されるポリオキシエチレンが好ましい。
【化2】
【0032】
脂肪酸エステル構造としては、長鎖脂肪族基を有する脂肪酸が挙げられる。長鎖脂肪族基としては、直鎖状、分岐状いずれでも良いが、脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸などが挙げられる。また、油脂由来の脂肪酸エステル、例えば牛脂、パーム油、ヤシ油等も挙げられる。
【0033】
水酸基を有する界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖などを挙げることができる。
【0034】
本発明において開孔剤として用いる界面活性剤は、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造、水酸基のうち2つ以上を含むものが好ましい。
【0035】
中でも、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造及び水酸基の全てを含有している界面活性剤が特に好ましく用いられ、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとして、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールを挙げることができる。これらの界面活性剤は特に無機微粒子の分散性をよくするだけでなく、多孔質層に残存し乾燥させても透水性、阻止性が低下しないという特徴を併せ持つので好ましい。
【0036】
また、製膜原液中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、他の有機樹脂及び開孔剤などを溶解させるための溶媒を用いる場合、その溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、メチルエチルケトンなどを用いる事ができる。中でもポリフッ化ビニリデン系樹脂に対する溶解性の高いNMP、DMAc、DMF、DMSOを好ましく用いることができる。
【0037】
製膜原液には、その他、非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂や他の有機樹脂を溶解しないものであり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び他の有機樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。なかでも廃水処理の容易さや価格の点から水、メタノールが好ましい。これらの混合であってもよい。
【0038】
製膜原液の組成において、ポリフッ化ビニリデン系と他の有機樹脂からなるブレンド樹脂は5重量%〜30重量%、開孔剤は0.1重量%〜15重量%、溶媒は45重量%〜94.8重量%、非溶媒は0.1重量%〜10重量%範囲内であることが好ましい。中でも、ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂は、極端に少ないと多孔質層の強度が低くなり、多すぎると透水性が低下することがあるので、8重量%〜20重量%の範囲がより好ましい。開孔剤は、少なすぎると透水性が低下し、多すぎると多孔質層の強度が低下することがある。また、極端に多いとポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂中に過剰に残存して使用中に溶出し、透過水の水質が悪化したり、透水性変動をしたりすることがある。したがって、より好ましい範囲は、0.5重量%〜10重量%である。さらに、溶媒は少なすぎると原液がゲル化しやすくなり、多すぎると多孔質層の強度が低下することので、より好ましくは60重量%〜90重量%の範囲である。また、非溶媒は、あまり多いと原液のゲル化が起こりやすくなり、極端に少ないと細孔やマクロボイドの大きさの制御が難しくなる。したがって、より好ましくは0.5重量%〜5重量%である。
【0039】
一方、凝固浴としては、非溶媒、または非溶媒と溶媒とを含む混合溶液を用いることができる。製膜原液にも非溶媒を用いる場合、凝固浴における非溶媒は、凝固浴の少なくとも80重量%とするのが好ましい。少なすぎるとポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂の凝固速度が遅くなり細孔径が大きくなったりする。より好ましくは、85重量%〜100重量%の範囲である。一方、製膜原液に非溶媒を用いない場合、製膜原液にも非溶媒を用いる場合よりも、凝固浴における非溶媒の含有量を少なくすることが好ましいが、少なくとも60重量%とするのが好ましい。非溶媒が多いと、ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂の凝固速度が速くなって多孔質層の表面は緻密となり透水性が低下することがある。より好ましくは60重量%〜99重量%の範囲がよい。凝固浴中の非溶媒の含有量を調整することにより、多孔質層表面の孔径やマクロボイドの大きさを制御することができる。なお、凝固浴の温度は、あまり高いと凝固速度が速すぎるようになり、逆に、あまり低いと凝固速度が遅すぎるようになるので、通常、15℃〜80℃の範囲で選定するのが好ましい。より好ましくは20℃〜60℃の範囲である。
【0040】
また、本発明の分離膜は、ナノろ過膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜とのいずれであってもよく、分離対称物質の大きさに応じて適当な一種以上の膜を選択、組み合わせればよいが、下廃水処理用としては特に限外ろ過膜、精密ろ過膜が好ましい。そして、平均粒径0.088μmの微粒子の阻止率が90%以上であることがさらに好ましい。この阻止率を満足しないときは、下廃水処理にあたって、菌体や汚泥などがリークしたり菌体や汚泥による目詰まりが起こったり、ろ過差圧の上昇が起こったり、寿命が極端に短くなったりする。
【0041】
ここで、阻止率は、逆浸透膜透過水にセラダイン社製ポリスチレンラテックス微粒子(公称粒径0.088μm、標準偏差0.0062μm)を10ppmの濃度になるように分散させた原水を、温度25℃、圧力10kPaの条件下で分離膜を透過させ、原水と透過水についてそれぞれ求めた波長202nmの紫外線の吸光度から、次式によって求める。
【0042】
【数2】
【0043】
また、本発明において、そして、分離膜とABS樹脂のエレメント支持板をホットメルト型接着剤を用いて、熱プレス法にて接着を行うことを特徴とする平膜への接着方法であり、ホットメルト型接着剤の発言し得るアンカー効果を最大限に引き出し、接着剤は分離膜の奥深くまで浸透させ分離膜の支持基材でも固定するものである。
【0044】
そして、多孔質分離機能層は、基材層に対して、片面に偏って存在しても構わないし、また、両面に存在しても構わない。多孔質分離機能層は、基材層に対して、対称構造であっても、非対称構造であっても構わない。また、多孔質分離機能層が基材層に対して両面に存在している場合には、両側の多孔質分離機能層が、基材層を介して連続的であっても構わないし、不連続であっても構わない。
【0045】
また、本発明において分離膜とABS樹脂のエレメント支持板とを接着する場合は、電子天秤の計量皿(株式会社タニタ製/TLC−500)の上に、ABS樹脂製のエレメント支持板を置き、その上にホットメルト接着材を乗せ、その上から分離膜を置き、分離膜の上から熱プレスやアイロン等により165℃の熱を加え0.13MPaの圧力で20秒間押さえつけ接着させることが好ましい。ここで、ホットメルト接着材の形状はホットメルト接着ガンを用いた場合はガット形状でもよくペレット形状でもよく、ホットメルト接着ガンを使用しない場合はシート状でもよく、またはフィルムであってもよい。
【0046】
なお、ホットメルト接着剤の付着量が少ないと均一に接着できなくリークすることから、分離膜とエレメント支持板との接着面に、幅10mm、厚さ0.15mmの線状に接着剤を付着することが好ましい。
【0047】
かかるホットメルト接着剤としては、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましい。なかでも、エレメント支持板の構成材として一般的に使用されるABS樹脂、および、分離膜の基材層として一般的に使用されるポリエステル繊維に対し馴染のよいポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0048】
そして、分離膜とエレメント支持板の接着強度は、JIS K6854 180度剥離試験に準じて、“テンシロン”(TENSILON/UTM-4L TOYO MEASURING INSTRUMENTS CO., LTD)を用いて測定する。エレメント支持板にホットメルト接着剤で分離膜を張り合わせた幅25mmの分離膜サンプルとし、剥離速度200mm/minの速度で剥離強度の測定を行なう。
【0049】
そして、本発明の分離膜を膜ろ過に使用するに際しては、分離膜が平膜状の場合、分離膜(または分離膜および流路材)と、透過液の集液部材とを有しているエレメントとすることや、このエレメントを複数個ハウジングに収容してモジュールとすることが好ましい。また、分離膜が中空糸状の場合は、その複数本の中空糸膜を一方向に引き揃えて、原液流入口および透過液流出口を有するハウジングに収容するとともに、少なくとも一方の端部を端面が開口状態となるようにケースに固定し、モジュールとすることが好ましい。エレメントやモジュールには、原液を分離膜に供給する手段と、分離膜を透過した透過液を集液する集液手段とを設けることで、液体処理装置として下廃水の処理等に好ましく用いることができる。
【0050】
エレメントの形態は特に限定されないが、下廃水処理用途に好適に用いることができるエレメントの形態の一例を、図1、2を用いて説明する。
【0051】
図1、2に示すエレメントは、剛性を有する支持板1の両面に、流路材2と平膜状の分離膜3とをこの順序で配してなる。この形態のエレメントは、膜面積を大きくすることが困難なので、透水量を大きくするために、支持板1の両面に分離膜3を配している。支持板1は、両面に凸部4と凹部5とを有している。分離膜3は、液体中の不純物をろ過する。流路材2は、分離膜3でろ過された透過水を効率よく支持板1に流すためものである。支持板1に流れた透過水は、支持板1の凹部を通って外部に取り出される。
【0052】
支持板1は、板状体の両面に複数の凹凸を有した構造であれば特に限定されるものではないが、透過水取出口までの距離、流路抵抗を均一化して被処理水が膜面に対して均等に流れるように、凹部は一定間隔で並列配置された複数個の溝を形成するように設けることが好ましい。このとき、各凹部5の幅は、透過水量を高く保ちつつ厳しい曝気条件下での流路材2、分離膜3の落ち込みを防止するために、1〜20mmの範囲内、さらに1.5〜5mmの範囲内とするのが好ましい。凹部5の深さは、エレメントとしての厚みを抑えつつ透過水流路を確保するために1〜10mm程度の範囲内で選択するのが好ましい。さらに、支持板の強度を保ちつつ、透過水流路を十分に確保し透過水が流動する際の流動抵抗を抑えるために、凹部による支持板の空隙率は15〜85%の範囲内であることが好ましい。これは、中実の直方体の支持板を100%としたときに凹部によって形成される空隙の容積比率を示すもので、空隙率が15%を下回ると流動抵抗が大きくなり透過水を効率よく取水できず、85%を上回ると支持板の強度が著しく低下する。
【0053】
また、支持板1の材質としては、ASTM試験法のD638における引張り強さが15MPa程度以上の剛性を持つ材質が好ましい。ステンレスなどの金属類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの樹脂、繊維強化樹脂(FRP)などの複合材料、その他の材質などを好ましく使用することができる。
【0054】
また、本発明のエレメントにおいては、図1に示すように支持板1の周縁部に枠体6を設置することも好ましい。この場合、分離膜3は支持板1と枠体6の間に嵌挿してもよく、また、枠体6の外部表面に接着させてもよい。ここで、「接着」とは、接触させた状態で着けることをいい、別途樹脂など用いて接着しても、分離膜そのものを溶着しても、さらにはその他種々の方法で接着してもいい。樹脂の押出成形などの安価な製法で製作された支持板1の周縁部に、射出成形、押出成形などで製作した枠体6を嵌めこむようにすることで、コストを削減できる。支持板1を嵌めこみやすくするため、枠体6は、断面がコ型状になるように形成することが好ましい。
【0055】
上述のように構成されたエレメントにおいては、分離膜3によってろ過された透過水が、流路材2、支持板1の凹部5へと流動し、最終的に透過水取出口7からエレメント外部へと排出される。
【0056】
続いて、上記エレメントを複数枚ハウジングに収容したモジュールおよびその使用方法を図1〜3に基づいて説明する。図3は、複数枚のエレメント9が、互いに平行に、かつ、分離膜3の膜面間に空間ができるようにハウジング内に収納された分離膜モジュール10を示している。この分離膜モジュール10は、被処理水槽11に貯えた有機性廃水などの被処理水に浸漬するようにして使用される。分離膜モジュール10の内部には鉛直方向に装填された複数枚のエレメント9と、その下方にブロア13からの気体を分離膜の膜面に供給する散気装置12とを設け、また、分離膜モジュール10よりも下流側には透過水を吸引するポンプ14を設けている。
【0057】
このように構成された下廃水処理装置において、廃水などの被処理水は、ポンプ14の吸引力により分離膜3を通過する。この際、被処理水中に含まれる微生物粒子、無機物粒子などの懸濁物質がろ過される。そして、分離膜3を通過した透過水は、流路材2によって形成されている透過水流路を経て、支持板1の凹部5から枠体6内に形成された集水部8を通り、透過水取出口7を通って被処理水槽11の外部に取り出される。一方、ろ過と並行して散気装置12が気泡を発生し、その気泡のエアリフト作用によって生じる、エレメント9の膜面に平行な上昇流が、膜面に堆積したろ過物を離脱させる。
【0058】
もちろん、被処理液としては、下廃水に限られるのではなく、水処理分野であれば浄水処理、上水処理、廃水処理、工業用水製造などで利用でき、河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、廃水などを被処理水とすることができる。
【実施例】
【0059】
実施例、比較例における分離膜の透水量と阻止率は、次のように測定した。
分離膜の透水量の測定は、分離膜を直径50mmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダーにセットし、逆浸透膜透過水を25℃で、水頭高さ1mで5分間予備透過させた後、続けて透過させて透過水を5分間採取して求めた。
【0060】
阻止率は、ラテックス粒子(セラダイン社製ポリスチレンラテックス微粒子、公称粒径0.088μm、標準偏差0.0062μm)を用いて濃度の検量線を求めた。すなわち、微粒子阻止率測定用のホルダー(UHP−43K、アドバンテック東洋(株)製)に分離膜(直径43mm)をセットし、ラテックス粒子濃度約10ppmに調製した原水を入れ、評価圧力10kPaの窒素圧で、原水を攪拌しながら、25cc予備透過をした後、25ccの透過水を採取して、原水と透過水のラテックス粒子濃度を分光光度計(日立製作所製、U−3200)で波長202nmの紫外線の吸光度で測定して、その濃度比から次の式により阻止率を求めた。
【0061】
【数3】
【0062】
分離膜とABS樹脂製のエレメント支持板の接着は、電子天秤(TLC-500 株式会社タニタ製)の上にエレメント支持板を乗せ、その上に幅10mm、長さ50mm、厚さ150μmのホットメルト接着剤のフィルムを置き、さらにその上に分離膜を乗せ、分離膜の上から165℃に熱したアイロンで0.13MPaの加重を20秒間かけて接着させ、接着後、膜サンプルの幅25mmになるようカットして接着強度測定用の膜サンプルを作製した。
【0063】
また、分離膜の接着試験は“テンシロン”(TENSILON/UTM-4L TOYO MEASURING INSTRUMENTS CO., LTD)を用いて、JIS K6854 180度剥離試験に準じて、剥離速度200mm/min、分離膜のサンプル幅は25mmの条件で剥離試験を行い、接着強度を求めた。
【0064】
<実施例1>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF/呉羽化学工業株式会社製、KF#850)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS/テイジンアモコ エンジニアリング プラスチック株式会社製、P−3500)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0065】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
ポリスルホン(PS) : 1.7重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0066】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに90℃の熱水に2分間浸漬して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0067】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.1%と高い値であった。また、透水量は40.2×10−9m3/m2・s・Paであった。
分離膜とABS樹脂製のエレメント支持板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、90.8N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、それら結果を表1に示す。
【0068】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面(多孔質分離機能層の表面)には、図4に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造(原液が抜けた状態)は図16に示す通り走査型電子顕微鏡観察によっても、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態が観察された。
【0069】
<実施例2>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0070】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :11.9重量%
ポリスルホン(PS) : 5.1重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0071】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0072】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.8%と高い値であった。また、透水量は40.9×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、71.2N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0073】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図5に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0074】
<実施例3>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0075】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :8.67重量%
ポリスルホン(PS) :8.33重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0076】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0077】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.0%と高い値であった。また、透水量は43.1×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、34.7N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0078】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図6に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0079】
<実施例4>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0080】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
ポリスルホン(PS) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0081】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0082】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、97.1%と高い値であった。また、透水量は34.3×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、85.1N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0083】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図7に示す通り走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0084】
<実施例5>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0085】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :11.9重量%
ポリスルホン(PS) : 5.1重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0086】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0087】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.2%と高い値であった。また、透水量は36.2×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、60.8N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0088】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図8に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察されなかった。
【0089】
<実施例6>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0090】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :8.67重量%
ポリスルホン(PS) :8.33重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0091】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0092】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.0%と高い値であった。また、透水量は38.0×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、35.1N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0093】
さらに、ブレンド樹脂により製膜した分離膜の表面には、図9に示す通り、走査型電子顕微鏡観察によっても、ブレンドしていないポリフッ化ビニリデン樹脂と同レベルの表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0094】
<実施例7>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリアクリロニトリル(PAN)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0095】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
ポリアクリロニトリル(PAN) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0096】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0097】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.6%と高い値であった。また、透水量は34.4×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、33.6N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0098】
<実施例8>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0099】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0100】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0101】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.7%と高い値であった。また、透水量は40.1×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、42.1N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0102】
<実施例9>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
【0103】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.3重量%
アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂) : 1.7重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0104】
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、密度0.48g/cm3、厚み220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬してN,N−ジメチルホルムアミドおよびモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を得た。
【0105】
次に、上記分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、98.2%と高い値であった。また、透水量は40.6×10−9m3/m2・s・Paであった。
次に、上記分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、40.3N/25mmと所望水準を満足するものであった。なお、結果を表1に示す。
【0106】
<比較例1>
副成分樹脂であるポリスルホン樹脂を用いず、ポリフッ化ビニリデン樹脂のみで、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0107】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :17.0重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0108】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.2%であった。また、透水量は42.3×10−9m3/m2・s・Paであった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、3.8N/25mmと、低い接着強度であった。なお、結果を表1に示す。
【0109】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図10に示す通り膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0110】
<比較例2>
実施例1においての主成分樹脂であるポリフッ化ビニリデン樹脂を用いず、副成分樹脂であるポリスルホン樹脂のみで、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0111】
ポリスルホン(PS) :17.0重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0112】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、83.1%と低い値であった。また、透水量は8.1×10−9m3/m2・s・Paであり、透水量が低かった。
さらに、分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、97.4N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0113】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図11に示す通り細孔数が少なく不均一な膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0114】
<比較例3>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0115】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) : 1.9重量%
ポリスルホン(PS) :15.3重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0116】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、74.2%と低い値であった。また、透水量は12.6×10−9m3/m2・s・Paと、透水量が低かった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、88.7N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0117】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図12に示す通り細孔数が少なく不均一な膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0118】
<比較例4>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0119】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) : 5.1重量%
ポリスルホン(PS) :11.9重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0120】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、72.1%と低い値であった。また、透水量は17.3×10−9m3/m2・s・Paと低かった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、73.9N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0121】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図13に示す通り細孔数が少なく不均一な膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0122】
<比較例5>
ポリフッ化ビニリデン系ブレンド樹脂における主成分樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、副成分樹脂としてポリスルホン(PS)、開孔剤としてポリエチレングリコール(PEG20,000)、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用い、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0123】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :17.0重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0124】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、99.2%であった。また、透水量は22.3×10−9m3/m2・s・Paと、低かった。
分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、4.6N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0125】
さらに、上記の分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図14に示す通り細孔数が少ない膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0126】
<比較例6>
実施例1においての主成分樹脂であるポリフッ化ビニリデン樹脂を用いず、副成分樹脂であるポリスルホン樹脂のみで、次の組成を有する原液で製膜した以外は実施例1と同様にして得られた分離膜を評価した。
【0127】
ポリスルホン(PS) :17.0重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
H2O : 3.0重量%
【0128】
得られた分離膜について、平均粒径0.088μmラテックス微粒子の阻止率を測定したところ、72.3%と低い値であった。また、透水量は20.2×10−9m3/m2・s・Paでとなった。すなわち、透水量が低下した。
さらに、分離膜とエレメント支持板であるABS板にホットメルト接着剤で張り付け、接着強度の剥離試験を行ったところ、98.0N/25mmであった。なお、結果を表1に示す。
【0129】
さらに、分離膜の表面構造は、走査型電子顕微鏡観察によって図15に示す通り膜表面構造が観察された。また、裏面構造は実施例1(図16)の場合と同様、ポリフッ化ビニリデン樹脂が基材層を覆った状態であった。
【0130】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る分離膜を用いたエレメントの概略展開斜視図である。
【図2】本発明に係る分離膜を用いたエレメント(図1のエレメント)のA−A断面での概略横断図面である。
【図3】本発明に係る分離膜モジュールを用いた液体処理方法の概略フロー図である。
【図4】実施例1による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例3による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例4による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例5による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例6による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例1による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例2による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例3による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例4による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例5による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】比較例6による分離膜の表面構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】実施例1による分離膜の裏側構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0132】
1:支持板
2:流路材
3:分離膜
4:凸部
5:凹部(溝)
6:枠体
7:ろ過液取出口
8:集液部
9:エレメント
10:分離膜モジュール
11:廃処理水槽
12:散気装置
13:ブロア
14:ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と多孔質分離機能層とからなる分離膜において、多孔質分離機能層が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成されることを特徴とするポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項2】
他の有機樹脂が、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項3】
分離膜が、多孔質分離機能層を構成する樹脂の一部が基材層中に入り込み、多孔質分離機能層と基材層とが複合化した層が存在する平膜である請求項1又は2に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項4】
平均粒径が0.9μmの微粒子の排除率が少なくとも90%である請求項1〜3のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項5】
基材層を構成する多孔質基材の密度が0.7g/cm3以下である請求項1〜4のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項6】
基材層を構成する多孔質基材が不織布または織編物である請求項1〜5のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の平膜状の分離膜と流路材と透過液の集液部材とを有している膜分離エレメント。
【請求項8】
請求項7記載の膜分離エレメントの複数個をハウジングに収容した膜分離モジュール。
【請求項1】
基材層と多孔質分離機能層とからなる分離膜において、多孔質分離機能層が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂51重量%〜95重量%と他の有機樹脂5重量%〜49重量%とのブレンド樹脂から構成されることを特徴とするポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項2】
他の有機樹脂が、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項3】
分離膜が、多孔質分離機能層を構成する樹脂の一部が基材層中に入り込み、多孔質分離機能層と基材層とが複合化した層が存在する平膜である請求項1又は2に記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項4】
平均粒径が0.9μmの微粒子の排除率が少なくとも90%である請求項1〜3のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項5】
基材層を構成する多孔質基材の密度が0.7g/cm3以下である請求項1〜4のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項6】
基材層を構成する多孔質基材が不織布または織編物である請求項1〜5のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の平膜状の分離膜と流路材と透過液の集液部材とを有している膜分離エレメント。
【請求項8】
請求項7記載の膜分離エレメントの複数個をハウジングに収容した膜分離モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−283287(P2007−283287A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17496(P2007−17496)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]