説明

ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体の製造方法

【課題】リチウムイオン電池等の非水系電池に用いる、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体の製造方法であって、作業性の向上、貧溶媒添加等に伴ったコンタミ低減が可能な製造方法を提供する。
【解決手段】ポリフッ化ビニリデン系樹脂と導電性炭素材料とをポリフッ化ビニリデン系樹脂:導電性炭素材料=80:20〜10:90(重量比)の範囲で混合した混合粉末を作製する工程と、混合粉末をポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒に添加し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてリチウムイオン電池等の非水系電池に用いられる電極形成用バインダーとして用いられるポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。また、自動車搭載用などの大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池の実現が望まれている。
【0003】
そのような要求に応えるため、リチウムイオン二次電池の開発が活発に行われている。リチウムイオン二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質と導電助剤と有機バインダー等からなる電極合材を金属箔の集電体の表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質と導電助剤と有機バインダー等からなる電極合材を金属箔の集電体の表面に固着させた負極が使用されている。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池に用いられるバインダーとしては、リチウムイオン二次電池の高出力に耐えうることが安全性、高寿命化の観点から重視される。そのため、耐薬品性、耐候性、耐汚染性等に優れているポリフッ化ビニリデン系樹脂が広く用いられている。
【0005】
また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂をバインダーとして用いる際には、樹脂溶液として調整することが多く、その方法としては、粉末状態で形成されたポリフッ化ビニリデン系樹脂を、該樹脂に対し十分な溶解力を有する溶媒を選択し、その溶媒に樹脂を投入して、必要に応じて加熱しながら撹拌し溶解する方法が取られている。
【0006】
しかしながら、撹拌時にポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末同士が凝集して団子状になり、凝集樹脂内部への溶媒の浸透が妨げられるため、十分な撹拌力と加熱をもってしても、完全に樹脂を溶解して均一な溶液を得るのには長時間を必要とした。
このようなポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末の団子状凝集の問題は、主として、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末が溶媒中に充分に分散されないうち、すなわち、樹脂粉末粒子相互が近接している状態で、溶媒に接触するため表面が選択的に溶解して糊状になり近接粉末粒子の団子状凝集が起ることが原因である。
【0007】
そこで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を調製する際、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を極めて少量ずつ溶媒中に投入し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶媒中に十分に分散することで、団子状凝集を防止する試みもなされているが作業性と能率の悪さから実用上問題が残っている。
【0008】
また、その他の解決方法として特許文献1に開示されているようにポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末の良溶媒との接触に先立って、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を貧溶媒中でその表面が適度に濡れた状態で充分に分散させることで、粉末粒子相互の近接を抑制し、その後に良溶媒と接触溶解させることで、迅速に溶解させる方法が提案されている。
しかしながら、この方法では、貧溶媒で表面を濡らす工程において加温、さらに溶解後に貧溶媒を優先的に除去する工程を有する必要があり、この操作に伴った貧溶媒の残渣(コンタミ)ならびにランニングコストが問題となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3758297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、主としてリチウムイオン電池等の非水系電池に用いるポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体を作製するに際して、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶解の長時間化に伴った作業性低下、ならびに貧溶媒添加等に伴ったコンタミを解決するポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは通常、リチウムイオン電池電極に用いられる導電性炭素材料とポリフッ化ビニリデン系樹脂を特定の重量比率で混合し、その後、ポリフッ化ビニリデン樹脂の良溶媒に添加することで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が迅速に溶解することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、導電性炭素材料と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒とを含有することを特徴とする分散体の製造方法であって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と導電性炭素材料とをポリフッ化ビニリデン系樹脂:導電性炭素材料=80:20〜10:90(重量比)の範囲で混合した混合粉末を作製する工程と、混合粉末をポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒に添加し、攪拌してポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解する工程とを含む導電性炭素材料分散体の製造方法に関する。
また、本発明は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒として含窒素極性溶媒を用いた上記分散体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の主としてリチウムイオン電池等の非水系電池に用いるポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体の製造方法を用いることで、作業性の向上、貧溶媒添加等に伴ったコンタミ低減が可能な製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<導電性炭素材料>
本発明における導電性炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素材料ナノファイバー、炭素材料ファイバー、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0014】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラック等の各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0015】
導電性炭素材料として用いるカーボンブラックは、酸化処理したカーボンを用いることも可能ではある。カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0016】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、及び#5500等の東海カーボン社製ファーネスブラック、プリンテックスL等のデグサ社製ファーネスブラック、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、及び5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等、PUER BLACK100、115、及び205等のコロンビヤン社製ファーネスブラック、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、及び#5400B等の三菱化学社製ファーネスブラック、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、及びBlackPearls2000等のキャボット社製ファーネスブラック、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、及びSuperP−Li等のTIMCAL社製ファーネスブラック、ケッチェンブラックEC−300J、及びEC−600JD等のアクゾ社製ケッチェンブラック、並びに、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等の電気化学工業社製アセチレンブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
<ポリフッ化ビニリデン系樹脂>
本発明において用いられるポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末は、フッ化ビニリデンの単独重合体または共重合体であり、乳化重合法あるいは懸濁重合法により形成した粉末状のものが好ましく用いられる。
市販のポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末としては、例えば、呉羽社製KFポリマー#W1100、W#1300、W#1700、W#7200、W#7300、W#9100、W#9200、W#9300、ARKEMA社製KYNAR710/711、KYNAR720/721、KYNAR740/741、KYNAR760/761、KYNAR2850/2851、KYNAR2800/2801、KYNAR2820/2821、KYNAR7201、KYNAR8301が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
<溶媒>
本発明においてポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒に添加し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料を製造する工程を含むがここで定義する「貧溶媒」および「良溶媒」は以下に示すように定義する。
ここで、「貧溶媒」および「良溶媒」の語は、一般には、当該高分子(本件においては対象とするポリフッ化ビニリデン系樹脂)に対し特定の溶媒について定まるシータ(θ)温度(得られる高分子溶媒の浸透圧の第二ビリアル係数A2 がゼロになる温度)が室温付近のものを「貧溶媒」、室温(10℃)よりも極めて低い温度となるものを「良溶媒」と分類して用いられる。本明細書において用いる「貧溶媒」および「良溶媒」の語も、この定義で用いる。
【0019】
より具体的には、良溶媒としては、一般的に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶解性が高い溶媒であり、なかでも、含窒素極性溶媒が好んで用いられる。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの溶媒が適当である。
貧溶媒としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶解性が低い溶媒が挙げられ、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルカーボネ−ト、ジエチルカーボネート、2−ブタノン、1,4−ジオキサンなどの溶媒が該当する。
【0020】
<導電性炭素材料とポリフッ化ビニリデン系樹脂の配合量>
本発明は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を迅速に溶解した導電性炭素材料分散体の製造方法を提案するものであるが、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の迅速な溶解を達成する機構としては以下のように考察している。一般的にポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末の団子状凝集、この現象に伴った作業時間の長時間化の問題は、主として、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末が溶媒中に充分に分散されないうち、すなわち、樹脂粉末粒子相互が近接している状態で、溶媒に接触するため表面が選択的に溶解して糊状になり近接粉末粒子の団子状凝集が起ることが原因である。本発明者らは、導電性炭素材料が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末粒子相互の間に混合されることによって、樹脂粉末粒子相互が近接した状態が緩和され、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶解効率が著しく向上するものと考察している。
【0021】
本発明において、導電性炭素材料とポリフッ化ビニリデン系樹脂は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂:導電性炭素材料=80:20〜10:90(重量比)で混合することが好ましい。本発明は主としてリチウムイオン電池等の非水系電池に用いることを目的としており、ポリフッ化ビニリデン系樹脂:導電性炭素材料=10:90の比率よりも導電性炭素材料量を増やすと電池を構成する際に実益のある範囲から大きく外れてしまう。一方でポリフッ化ビニリデン系樹脂:導電性炭素材料=80:20よりも導電性炭素材料が少ないとポリフッ化ビニリデン系樹脂間に混合される導電性炭素材料の量が少なくなり、結果、樹脂粉末粒子相互が近接した状態が緩和できず、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶解効率が著しく低下する。
【0022】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体は、用途に応じて異なった濃度あるいは粘度の溶液の調製に用いられるのは当然であるが、非水系電池用バインダー溶液として用いる場合には、使用するポリフッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度にもよるが、樹脂濃度1〜20重量%、特に2〜15重量%程度の濃度に調製することが好ましい。
また、導電性炭素材料の溶媒への分散性は、炭素材料の諸物性、例えば表面の酸化状態、粒径、ストラクチャーによって異なる。特に導電性炭素材料としてカーボンブラック、特にアセチレンブラック、良溶媒としてN−メチルー2−ピロリドンを用いる場合、混合粉末を溶媒へ添加した際にアセチレンブラックの溶媒への分散性が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末粒子相互の近接を効果的に阻害し、樹脂溶解が効率的に進行する。
【0023】
<導電性炭素材料とポリフッ化ビニリデン系樹脂の混合粉末作製方法>
導電性炭素材料とポリフッ化ビニリデン系樹脂とを混合処理するための装置としては、顔料の混合、分散等に通常用いられている混合、分散機が使用できる。例えば、タンブラー、シェーカー、ミキサー、V型混合機等の、混合機類;ディスパー、ホモミキサー、ヘェンシェルミキサー若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、ハイブリダイザー((株)奈良機械製作所)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所)、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株))、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;ロールミル、ニーダー、コロイドミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。混合処理装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0024】
<ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体の作製方法>
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体を作製するための樹脂溶解処理するための装置としては、樹脂の溶解、分散等に通常用いられる攪拌、分散機が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」、IKA社製「MKOミキサー」等のメディアレス分散機等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、樹脂溶解に用いる攪拌、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。これらの装置は、一種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0025】
<電極への適合性>
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体は、非水系電池用、非水系電池用の電極合材スラリーの形成の一環として行われることが好ましい。すなわち、本発明によって得られた導電性炭素材料分散体は、そこに含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂の1〜20重量部に対し、100重量部の粉末電極材料(正極あるいは負極活物質および必要に応じて加えられる導電性助剤、その他の助剤)を分散混合することにより、非水系電池用の電極合材スラリーが得られる。
得られたスラリーを集電体上に塗布し、乾燥することにより非水系電池の正極または負極として用いられる電極構造体が得られる。
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明を詳しく説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部を表す。
実施例及び比較例で使用した導電性炭素材料、フッ化ビニリデン系樹脂を以下に示す。
【0027】
<導電性炭素材料>
・デンカブラックHS−100(電気化学工業社製):アセチレンブラック、一次粒子径48nm、比表面積39m2/g、以下HS−100と省略する。
・デンカブラック粉状品(電気化学工業社製):アセチレンブラック、一次粒子径35nm、比表面積68m/g、以下粉状品と省略する。
・トーカブラック#5500(東海カーボン社製):ファーネスブラック、一次粒子径25nm、比表面積225m/g、以下#5500と省略する。
・EC−300J(アクゾ社製):ケッチェンブラック、一次粒子径40nm、比表面積800m2/g。
・VGCF−H(昭和電工社製):カーボンナノファイバー、繊維径150nm、繊維長6μm。
・SP−270(日本黒鉛工業社製):黒鉛粉末、平均粒径4μm。
【0028】
<ポリフッ化ビニリデン系樹脂>
・KFポリマーW#7300:フッ化ビニリデン単独重合体、固有粘度 3.10dl/g、以下W#7300と省略する。
・KFポリマーW#1700:フッ化ビニリデン単独重合体、固有粘度 1.69dl/g、以下W#1700と省略する。
・KFポリマーW#1100:フッ化ビニリデン単独重合体、固有粘度 1.10dl/g、以下W#1100と省略する。
・KFポリマーW#9300:カルボキシル基含有フッ化ビニリデン単独重合体、固有粘度 3.10dl/g、以下W#9300と省略する。
【0029】
<導電性炭素材料分散液の調整方法>
(実施例1〜3、比較例1)
表1に示す組成に従い、アセチレンブラック(HS−100)とフッ化ビニリデン単独重合体(W#7300)を仕込み、プラネタリーミキサー(PRIMIX社製 T.K.ハイビスミックス)を用いて混合し、続いてビーカーにN−メチルー2−ピロリドンを取り、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、混合粉末を1分間かけて添加した。1時間の攪拌後、2%のフッ化ビニリデン単独重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0030】
【表1】

【0031】
(比較例2)
ビーカーにN−メチルー2−ピロリドンを96部とり、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、フッ化ビニリデン単独重合体(KFポリマーW#7300)2部を1分間かけて添加した。0.5時間の攪拌後、フッ化ビニリデン単独重合体樹脂分散体を作製し、この分散体にアセチレンブラック(HS−100)2部を1分間かけて添加した。さらに1時間の攪拌することで、2%のフッ化ビニリデン単独重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0032】
(比較例3)
ビーカーにN−メチルー2−ピロリドンを96部とり、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、フッ化ビニリデン単独重合体(KFポリマーW#7300)2部を1分間かけて添加した。0.5時間の攪拌後、フッ化ビニリデン単独重合体樹脂分散体を作製し、この分散体にアセチレンブラック(HS−100)2部を1分間かけて添加した。さらに5時間の攪拌することで、2%のフッ化ビニリデン単独重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0033】
(比較例4)
ビーカーにN−メチルー2−ピロリドンを96部とり、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、フッ化ビニリデン単独重合体(KFポリマーW#7300)2部を1分間かけて添加した。0.5時間の攪拌後、フッ化ビニリデン単独重合体樹脂分散体を作製し、この分散体にアセチレンブラック(HS−100)2部を1分間かけて添加した。さらに12時間の攪拌することで、2%のフッ化ビニリデン単独重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0034】
(比較例5)
ビーカーにN−メチルー2−ピロリドンを96部とり、加温下(80℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、フッ化ビニリデン単独重合体(KFポリマーW#7300)2部を1分間かけて添加した。0.5時間の攪拌後、フッ化ビニリデン単独重合体樹脂分散体を作製し、この分散体にアセチレンブラック(HS−100)2部を1分間かけて添加した。さらに1時間の攪拌することで、2%のフッ化ビニリデン単独重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0035】
(比較例6)
ビーカーにN−メチルー2−ピロリドンを96部とり、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、アセチレンブラック(HS−100)2部を1分間かけて添加した。0.5時間の攪拌後、フッ化ビニリデン単独重合体(KFポリマーW#7300)2部を1分間かけて添加した。1時間の攪拌後、2%のフッ化ビニリデン単独重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0036】
(比較例7)
室温(25℃)で、プラネタリーミキサー(T.K.ハイビスミックス)を用いて攪拌下、アセトンを4部、フッ化ビニリデン単独重合体(KFポリマーW#7300)2部を投入し、0.5時間かけて混合し、フッ化ビニリデン単独重合体をアセトンにて湿らせた。その後、ビーカーにN−メチルー2−ピロリドンを96部とり、加温(50℃)下にて、ディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌しながら、アセトンで湿らせたフッ化ビニリデン単独重合体(KFポリマーW#7300)6部(アセトン重量含む)を1分間かけて添加した。2時間の攪拌後、重量減少量よりアセトンの消失を確認し、フッ化ビニリデン単独重合体溶液を得た。この樹脂溶液にアセチレンブラック(HS−100)2部を1分間かけて添加し、0.5時間攪拌することで、2%のフッ化ビニリデン単独重合体を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0037】
(実施例4〜10)
表2にした従って導電性炭素材料 2部とフッ化ビニリデン単独重合体(W#7300)2部を仕込み、プラネタリーミキサー(PRIMIX社製 T.K.ハイビスミックス)を用いて混合し、続いてビーカーにN−メチルー2−ピロリドン 96部を取り、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、混合粉末を1分間かけて添加した。1時間の攪拌後、2%のフッ化ビニリデン単独重合体樹脂を含む導電性炭素材料分散体が得られた。
【0038】
【表2】

【0039】
(実施例11〜13)
アセチレンブラック(HS−100)2部と表3にした従ってフッ化ビニリデン系樹脂 2部を仕込み、プラネタリーミキサー(PRIMIX社製 T.K.ハイビスミックス)を用いて混合し、続いてビーカーにN−メチルー2−ピロリドン 96部を取り、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、混合粉末を1分間かけて添加した。1時間の攪拌後、2%のフッ化ビニリデン系樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0040】
【表3】

【0041】
(実施例14)
アセチレンブラック(HS−100)2部とフッ化ビニリデン単独重合体(W#7300)2部を仕込み、プラネタリーミキサー(T.K.ハイビスミックス)を用いて混合し、続いてビーカーにN、N−ジメチルホルムアミド96部を取り、室温(25℃)でディスパー(PRIMIX社製 T.K.ホモディスパー)を用いて攪拌下、混合粉末を1分間かけて添加した。1時間の攪拌後、2%のフッ化ビニリデン重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0042】
(実施例15)
アセチレンブラック(HS−100)2部とフッ化ビニリデン単独重合体(W#7300) 2部を仕込み、プラネタリーミキサー(PRIMIX社製 T.K.ハイビスミックス)を用いて混合し、続いてビーカーにN−メチルー2−ピロリドン 96部を取り、室温(25℃)でホモジナイザー(SILVERSON社製 1.5M−A)を用いて攪拌下、混合粉末を1分間かけて添加した。1時間の攪拌後、2%のフッ化ビニリデン系重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0043】
(実施例16)
アセチレンブラック(HS−100)2部とフッ化ビニリデン単独重合体(W#7300) 2部を仕込み、プラネタリーミキサー(PRIMIX社製 T.K.ハイビスミックス)を用いて混合し、続いてビーカーにN−メチルー2−ピロリドン 96部を取り、室温(25℃)でコロイドミル(IKA社製 マジックラボ MKOモジュール)を用いて攪拌下、混合粉末を1分間かけて添加した。1時間の攪拌後、2%のフッ化ビニリデン系重合体樹脂を含むカーボンブラック分散体が得られた。
【0044】
<フッ化ビニリデン系樹脂の溶解状態評価方法>
実施例1〜17、比較例1〜5で作製したフッ化ビニリデン系樹脂を含むカーボンブラック分散体に関して以下の評価基準にてフッ化ビニリデン系樹脂の溶解状態を判断した。
【0045】
◎ グラインドゲージにて粗粒子が15〜20μm位置に確認できる。
○ グラインドゲージにて粗粒子が20〜50μm位置に確認できる。
× グラインドゲージにて粗粒子が50〜200μm、または200μm以上の位置に確認できる。
以上の判断基準で評価した測定結果を下記の表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
上記の表4の結果から明らかなように、導電性炭素材料:ポリフッ化ビニリデン系樹脂=90:10〜20:80(重量比)の割合で混合し、混合粉末を良溶媒に攪拌したポリフッ化ビニリデン系樹脂含有導電性炭素材料分散体、特に、実施例1〜5、ならびに10〜14からわかるようにアセチレンブラックを用いた場合には、比較例1〜7のポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液および導電性炭素材料分散体と比較して、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が均一に溶解した導電性炭素材料分散体を得ることができることがわかる。また、比較例7から分かるように貧溶媒の除去工程を含まないことから、作業工程の効率化が計れると共に、貧溶媒の残渣を確認する必要がないことから、低コスト化ならびに安全性確保の観点から、本発明の製造方法は優れていることがわかる。
【0048】
(実施例17)
正極活物質コバルト酸リチウムLiCoO(HLC−17、本荘ケミカル社製)を90部、実施例1で得たポリフッ化ビニリデン単独重合体を5%含むアセチレンブラック分散液(デンカブラックHS−100:KFポリマーW#7300=50:50)100部をプラネタリーミキサー(T.K.ハイビスミックス)に投入し、1時間混合処理を行い、正極合材ペーストを得た。この正極合材ペーストを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧下120℃で加熱乾燥することで、表面の平滑な正極合材塗膜を得ることができた。その後、ローラープレス機にて圧延処理し、厚さ60μmの正極合材層を作製した。負極活物質としてメソフェーズカーボンMFC(MCMB6−28、大阪ガスケミカル社製)を90部、実施例1で得たポリフッ化ビニリデン単独重合体を5%含むアセチレンブラック分散液(デンカブラックHS−100:KFポリマーW#7300=50:50)100部をプラネタリーミキサー(T.K.ハイビスミックス)に投入し、1時間混合処理を行い、負極合材ペーストを得た。この負極合材ペーストを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧下120℃で加熱乾燥することで、負極合材塗膜を得ることができた。このようにして作製した合材塗膜を用いて、セルを作製し、電池特性評価を行ったところ、問題なく電池として機能した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した導電性炭素材料分散体の製造方法は、主としてリチウムイオン電池等の非水系電池に用いること可能であり、コスト低下、ならびにコンタミ抑制効果が期待されることから産業上の利用可能性がある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性炭素材料と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒とを含有することを特徴とする分散体の製造方法であって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と導電性炭素材料とをポリフッ化ビニリデン系樹脂:導電性炭素材料=80:20〜10:90(重量比)の範囲で混合した混合粉末を作製する工程と、混合粉末をポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒に添加し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解する工程とを含む分散体の製造方法。
【請求項2】
良溶媒が含窒素極性溶媒であることを特徴とする請求項1記載の分散体の製造方法。








【公開番号】特開2012−169059(P2012−169059A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27064(P2011−27064)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】