説明

ポリプロピレンをベースとしたワイヤーおよびケーブル用の絶縁体またはジャケット

本発明は、少なくとも約18ポンド/平方インチ(psi)の耐破壊性を有するワイヤーまたはケーブルなどの導電性デバイスであって、そのデバイスが、A.少なくとも1つの導電性基材、例えばワイヤーストランドまたは一対の撚りワイヤーストランドを含む導電性部材と;B.導電性部材を実質的に取り囲む、ポリマーの被覆または層などの少なくとも1つの電気絶縁部材であって、その電気絶縁部材が、1.少なくとも約50重量%のポリプロピレン、および2.少なくとも約10重量%のエラストマーを含むポリマーブレンドを含む電気絶縁部材;とを含む導電性デバイスである。一実施形態では、そのブレンドは、i)150℃で200%未満の熱クリープ、ii)60Hzおよび90℃で約2.5未満の誘電定数、iii)60Hzおよび90℃で約0.005未満の散逸率、ならびにiv)約600v/ミル超のAC破壊強度を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性デバイス用の絶縁体およびジャケットに関する。一態様では、本発明は、ポリプロピレンをベースとした絶縁体およびジャケットに関し、他の態様では、本発明は、ワイヤーおよびケーブル用のポリプロピレンをベースとした絶縁体およびジャケットに関する。さらに他の態様では、本発明は、改善された耐破壊性を有する絶縁性のワイヤーおよびケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
今日市販されている導電性デバイス、例えばワイヤーやケーブルの多くは、一般にポリマー材料の1つまたは複数の層またはシースで取り囲まれた金属芯を含む。その例は米国特許第5,246,783号である。その芯は、一般に、それぞれが特定の機能を提供する複数の異なるポリマー層、例えば、半導電性遮蔽層、絶縁層、金属性テープ遮蔽層およびポリマージャケットによって取り囲まれた銅またはアルミニウムである。非金属性の芯、例えば光ファイバーケーブルの様々に金属ドーピングされた二酸化ケイ素芯も知られている。
【0003】
ケーブルは1つまたは複数のポリマー層を含むことができる。特定の層は、2つ以上の機能を提供することができ、かつ/または2つ以上の層の機能は重複していてよい。例えば、耐酷使性ジャケットは、絶縁層としても作用することができ、絶縁層と外側ジャケットの両方が耐酷使性を提供することができる。例えば、低電圧ワイヤーおよびケーブル(5キロボルト(Kv)以下が定格)は、しばしば、絶縁層としても耐酷使性ジャケットとしても作用する単一のポリマー層で取り囲むかまたはそれに納められており、他方、中電圧(5超〜69Kvが定格)、高電圧(69超〜225Kvが定格)および超高電圧(225Kv超が定格)ワイヤーおよびケーブルは、しばしば、少なくとも別個の絶縁層とジャケット層で取り囲むかまたはそれに納められている。米国特許第5,246,783号は、その後者のケーブル構成物の例を提供している。
【0004】
多くの様々なポリマー材料がワイヤーおよびケーブルの製造に使用されている。どのポリマー材料を選択するかということは、もちろん、ポリマー材料の特性を提供する機能に適合させることによって決定される。電線および電気ケーブル用の絶縁層および/またはジャケット層は、良好な誘電特性および耐トリー特性を示さなければならず、この層には、未充填ポリエチレンと充填エチレン−プロピレンゴム(EPR)の両方がしばしば用いられる(例えば、米国特許第5,246,783号および同第5,266,627号を参照されたい)。ワイヤーおよびケーブルジャケットは、特性の中でとりわけ、良好な耐水性および耐溶剤性、柔軟性ならびに耐破壊性を示すことが求められ、そのためには、ワイヤーおよびケーブルジャケットはしばしばシラン架橋ポリエチレンで作製される。米国特許第4,144,202号はエチレンポリマーのシラン架橋を記載している。さらに、これらの材料のいくつかは、他のものより加工するのが困難であり、かつ高価である。
【0005】
例えば、中電圧電力ケーブル用の絶縁体またはジャケットシースの加工には、しばしば、過酸化物を含むポリマー組成物の溶融加工を必要とする。これらの材料は、続いて、連続加硫管中で熱をかけてポリマーを架橋させる必要がある。この方法で重要なことは、溶融加工、例えば押出加工の際の焦げ、すなわち早期架橋を回避することである。通常これは、ポリマーの融点を超える比較的低温(例えば、ケーブルの絶縁層に用いられる低密度ポリエチレンでは140℃)で押し出し、かつ、この温度でゆっくりと分解する過酸化物を用いることによって回避される。しかし、これは次に、残留する過酸化物を分解させ、絶縁層に必要な架橋度を確実にするために、高温、例えば180℃でかなり長い時間保持する必要がある。その結果、プロセス全体では、押出速度が比較的遅く、かつコストが余分にかかるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの既知の材料はよく機能しているが、優れた物理特性、特に破壊強度を示すだけでなく、より効率的にかつより安価に加工できる代替材料を特定することが依然として課題である。
【0007】
ポリプロピレンは商業的に永く利用されているよく知られたポリマーである。ポリプロピレンは、ホモポリマーとしてもコポリマーとしても広く利用可能である。ホモポリマーとコポリマーの両方とも、とりわけ、分子量、分子量分布(MWDまたはM/M)、メルトフローレート(melt flow rate、溶融流速)(MFR)、曲げ弾性率、結晶化度、立体規則性、およびコポリマーの場合のコモノマーのタイプ、量および分布で計られる様々な特性を利用することができる。ポリプロピレンは、多くの既知の触媒、例えばチーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒、幾何拘束型触媒、非メタロセン系金属中心ピリジニルリガンド等のうちのいずれか1つまたは複数を用いて気体、溶液、スラリーまたは懸濁液重合法で製造することができる。
【0008】
ポリプロピレンは広範囲の用途で有用であることが分かっている。その中でより常用されているいくつかには、フィルム、繊維、自動車および家庭電気器具部品、ロープ、索類、ウェビングならびに敷物類が含まれる。さらに、ポリプロピレンは接着剤、充填剤等として用いられる多くの組成物のよく知られた成分である。他のポリマーと同様に、具体的なポリプロピレンの最終的用途は様々なその化学的および物理的特性によって決定される。しかし、今日まで、ポリプロピレンは、ワイヤーおよびケーブル、特に電力ケーブル用の絶縁体またはジャケットカバーとしての広範な用途は見出されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の実施形態では、本発明は、少なくとも約18ポンド/平方インチ(psi)の耐破壊性(crush resistance)を有するワイヤーまたはケーブルなどの導電性デバイスであって、そのデバイスが、
A.少なくとも1つの導電性基材、例えばワイヤーストランドまたは一対の撚りワイヤーストランドを含む導電性部材(member)と、
B.導電性部材を実質的に取り囲む(surrounding、囲繞する)少なくとも1つの電気絶縁部材、例えば少なくとも1つのポリマー被覆またはジャケットおよび/または絶縁層として作用する層であって、その電気絶縁部材が、
1.少なくとも約50重量%のポリプロピレン、および
2.少なくとも約10重量%のエラストマー
を含むポリマーブレンドを含む電気絶縁部材と
を含む導電性デバイスである。一般に、導電性部材は、銅またはアルミニウム、および少なくとも1種のエチレン、およびα−オレフィンのコポリマー、例えばエチレンとオクテンのコポリマーを含むエラストマーを含む。ポリプロピレンは、ホモポリマーであってもコポリマーであっても、あるいはホモポリマーとコポリマーの両方を含むブレンドであってもよく、どの重合方法によっても調製することができる。ポリマーブレンドは反応器内ブレンドであっても反応器後ブレンドであってもよい。
【0010】
第2の実施形態では、ポリマーブレンドのエラストマー成分が好ましくはエチレン/α−オレフィンコポリマーであり、ポリマーブレンドのプロピレン成分が好ましくは非メタロセン系金属中心ピリジニルの触媒反応によって調製される導電性デバイスであって、そのポリマーブレンドが、(i)150℃で200%未満の熱クリープ(hot creep)、(ii)60ヘルツ(Hz)および90℃で約2.5未満の誘電定数、(iii)60Hおよび90℃で約0.005未満の散逸率、ならびに(iv)約600ボルト/ミル(v/ミル)超の交流(AC)破壊強度を示す導電性デバイスである。そのポリマーブレンドは、(v)約6,000ポンド/平方インチ(psi)未満の引張強度、および(vi)約50%超の引張伸びの少なくとも1つも示すことが好ましい。ポリプロピレン成分はホモポリマーであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施において用いるポリマーブレンドのエラストマー成分には、エチレンコポリマーおよびゴム、熱可塑性ウレタン、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シス−1,4−ポリイソプレン、シリコーンゴムなどが含まれる。エチレン(CH=CH)と、少なくとも1種のC〜C20α−オレフィン(好ましくは脂肪族α−オレフィン)コモノマーおよび/またはポリエンコモノマー、例えば共役ジエン、非共役ジエン、トリエン等のコポリマーは本発明の好ましいエラストマー成分である。「コポリマー」という用語は、2つ以上のモノマーから誘導される単位を含むポリマー、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/オクテン、プロピレン/オクテンなどのコポリマー;エチレン/プロピレン/オクテン、エチレン/プロピレン/ブタジエンなどのターポリマー;エチレン/プロピレン/オクテン/ブタジエンなどのテトラポリマーなどを含む。C〜C20α−オレフィンの例には、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンが含まれる。α−オレフィンは、シクロヘキサンまたはシクロペンタンなどの環状構造を含んで、3−シクロヘキサシル−1−プロペン(アリル−シクロヘキサン)およびビニル−シクロヘキサンなどのα−オレフィンをもたらすこともできる。伝統的な用語の意味ではα−オレフィンではないが、本発明のためにはノルボルネンおよび関連するオレフィンなどの特定の環状オレフィンはα−オレフィンであり、上記α−オレフィンの一部または全部を置き換えて用いることができる。同様に、スチレンおよびその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレン等)は、本発明で用いることができるα−オレフィンである。
【0012】
ポリエンは、分子鎖中に4個を超える炭素原子を含み、少なくとも2個の二重結合および/または三重結合、例えば共役および非共役のジエンおよびトリエンを有する不飽和脂肪族または脂環式化合物である。非共役ジエンの例には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,13−テトラデカジエン、1,19−エイコサジエンなどの脂肪族ジエン;1,4−シクロヘキサジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5−ジエン、4−ビニルシクロヘキサ−1−エン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,6−ジエン、1,7,7−トリメチルビシクロ−[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、1,5−シクロオクタジエンなどの環状ジエン;1,4−ジアリルベンゼン、4−アリル−1H−インデンなどの芳香族ジエン;および2,3−ジイソプロペニリジエン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエンなどのトリエンが含まれる。好ましい非共役ジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよび7−メチル−1,6−オクタジエンである。
【0013】
共役ジエンの例には、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン−1,3、1,2−ジメチルブタジエン−1,3、1,4−ジメチルブタジエン−1,3、1−エチルブタジエン−1,3、2−フェニルブタジエン−1,3、ヘキサジエン−1,3、4−メチルペンタジエン−1,3、1,3−ペンタジエン(CHCH=CH−CH=CH;通常ピペリレンと称される)、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエンなどが含まれる。好ましい共役ジエンは1,3−ペンタジエンである。
【0014】
トリエンの例には、1,3,5−ヘキサトリエン、2−メチル−1,3,5−ヘキサトリエン、1,3,6−ヘプタトリエン、1,3,6−シクロヘプタトリエン、5−メチル−1,3,6−ヘプタトリエン、5−メチル−1,4,6−ヘプタトリエン、1,3,5−オクタトリエン、1,3,7−オクタトリエン、1,5,7−オクタトリエン、1,4,6−オクタトリエン、5−メチル−1,5,7−オクタトリエン、6−メチル−1,5,7−オクタトリエン、7−メチル−1,5,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエンおよび1,5,9−シクロデカトリエンが含まれる。
【0015】
一般に、本発明を実施するのに用いるエラストマーは、少なくとも約51重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、より好ましくは少なくとも約70重量%(wt%)のエチレン、および少なくとも約1重量%、好ましくは少なくとも約3重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%の少なくとも1種のα−オレフィンを含み、ポリエン含有ターポリマーの場合、0を超える、好ましくは少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%の少なくとも1種のポリエンを含む。概略的な最大値として、本発明の方法により作製されるブレンド成分は、約99重量%以下、好ましくは約97重量%以下、より好ましくは約95重量%以下のエチレン、および約49重量%以下、好ましくは約40重量%以下、より好ましくは約30重量%以下の少なくとも1種のα−オレフィンを含み、ターポリマーの場合、約20重量%以下、好ましくは約15重量%以下、より好ましくは約12重量%以下の少なくとも1種のポリエンを含む。
【0016】
本発明を実施するエラストマーとして用いる好ましいエチレンコポリマーは均一な線状かまたは実質的に線状のポリマーである。どちらのポリマーも当業界でよく知られており、両方とも米国特許第5,986,028号に詳細に記載されている。実質的に線状のエチレンコポリマーが好ましい。Dow Chemical Companyから製造販売されているEngage(登録商標)およびAffinity(登録商標)エチレンコポリマーはこの部類のエチレンコポリマーの代表的なものである。
【0017】
エチレンコポリマーの密度はASTM D−792によって測定される。一般に、エチレンコポリマーの密度は、約0.92g/cm以下、好ましくは約0.90g/cm以下、より好ましくは約0.88g/cm以下である。
【0018】
エチレンコポリマーの結晶化度は、好ましくは約115℃未満、より好ましくは約105℃未満の融点と組み合わせて、好ましくは約40%未満、より好ましくは約30%未満である。0〜約25%の結晶化度を有するエチレンコポリマーがより好ましい。結晶化度%は、示差走査熱量測定法(DSC)により算出されたコポリマー試料の融解熱を、そのポリマーの全融解熱で除して算出する。高密度ホモポリマーポリエチレン(100%の結晶化度)の全融解熱は292ジュール/グラム(J/g)である。
【0019】
ポリマーブレンドのポリプロピレン成分は、ホモポリマーであるか、またはプロピレンと最大で約35モル%のエチレンもしくは最大で約20個の炭素原子を有するα−オレフィンのコポリマー、あるいはホモポリマーと1種もしくは複数のコポリマーとのブレンドまたは2種以上のコポリマーのブレンドである。コポリマーである場合、ポリプロピレンはランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであってよい。ポリマーブレンドのポリプロピレン成分は少なくとも約0.01、好ましくは少なくとも約0.1、より好ましくは少なくとも約0.2の典型的なメルトフローレート(ASTM D−1238、条件Lにより、230℃の温度で測定して)を有する。ポリプロピレン成分のMFRは一般に、約1,000以下、好ましくは約500以下、より好ましくは約100以下である。ポリプロピレンはホモポリマーであることが好ましい。「プロピレンホモポリマー」および類似の用語は、もっぱら、または本質的にすべて、プロピレンから誘導される単位からなるポリマーを意味する。「ポリプロピレンコポリマー」および類似の用語は、プロピレンと、エチレンおよび/または1種または複数の不飽和コモノマーとから誘導される単位を含むポリマーを意味する。「コポリマー」という用語はターポリマー、テトラポリマー等を含む。
【0020】
本発明を実施するのに用いる不飽和コモノマーには、C4〜20α−オレフィン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのC4〜12α−オレフィン;C4〜20ジオレフィン、好ましくは1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)およびジシクロペンタジエン;スチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8〜40ビニル芳香族化合物;ならびにクロロスチレンおよびフルオロスチレンなどのハロゲン置換C8〜40ビニル芳香族化合物が含まれる。本発明のためには、エチレンおよびプロピレンは不飽和コモノマーの定義に含まれない。
【0021】
本発明を実施するのに用いるプロピレンコポリマーは一般に、コポリマーの少なくとも約65モル%、好ましくは少なくとも約75モル%、より好ましくは少なくとも約80モル%の量のプロピレンから誘導される単位を含む。プロピレン/エチレンコポリマー中でのエチレンから誘導される単位の典型的な量は少なくとも約2モル%、好ましくは少なくとも約5モル%、より好ましくは少なくとも約10モル%であり、これらのコポリマー中に存在するエチレンから誘導される単位の最大量は一般に、コポリマーの約35モル%以下、好ましくは約25モル%以下、より好ましくは約20モル%以下である。不飽和コモノマーから誘導される単位の量は、存在する場合、一般に少なくとも約0.01モル%、好ましくは少なくとも約0.1モル%、より好ましくは少なくとも約1モル%であり、不飽和コモノマーから誘導される単位の典型的な最大量は一般に、コポリマーの約35モル%以下、好ましくは約20モル%以下、より好ましくは約10モル%以下である。エチレンと任意の不飽和コモノマーから誘導される単位を合わせた合計量は一般に、コポリマーの約35モル%以下、好ましくは約25モル%以下、より好ましくは約20モル%以下である。
【0022】
プロピレンと1種または複数の不飽和コモノマー(エチレン以外の)を含む、本発明を実施するのに用いるコポリマーは一般に、コポリマーの少なくとも約65モル%、好ましくは少なくとも約75モル%、より好ましくは少なくとも約80モル%の量のプロピレンから誘導される単位も含む。コポリマーの1種または複数の不飽和コモノマーは、少なくとも約2モル%、好ましくは少なくとも約5モル%、より好ましくは少なくとも約10モル%を含み、不飽和コモノマーの典型的な最大量はコポリマーの約35モル%以下、好ましくは約25モル%以下である。
【0023】
ポリマーブレンドのプロピレン成分は任意の既知の触媒、例えばチーグラーナッタ触媒、幾何拘束型触媒、メタロセン触媒などを用いて、従来の任意の重合方法で作製することができるが、一実施形態では、プロピレン成分は、非メタロセン系金属中心ピリジニルリガンド触媒を用いて作製する。この実施形態では、プロピレンホモポリマーは一般に、そのピークがほぼ等しい強度である、約14.6ppmおよび約15.7ppmでレジオエラー(regio-error)に対応する13C NMRピークを有することを特徴とする(場合によっては、「Pホモポリマー」または同様の用語で称されることがある)。Pホモポリマーは、実質的にアイソタクチックプロピレン配列を有する、すなわちその配列が13C NMRで測定して0.85超のアイソタクチックトリアド(triad)(mm)を有することを特徴とすることが好ましい。これらのプロピレンホモポリマーは一般に、チーグラーナッタ触媒により調製された同等な(comparable)ポリプロピレンホモポリマーより、このレジオエラーを少なくとも50%多く有している。ここで用いる「同等な」ポリプロピレンは、同じ、すなわち±10%以内の重量平均分子量を有するアイソタクチックプロピレンホモポリマーを意味する。Pホモポリマーは米国特許出願番号10/139,786および同10/289,122に、より詳細に記載されている。
【0024】
ポリプロピレンがコポリマーである実施形態では、ポリプロピレンは、プロピレン、エチレン、および任意選択で1種または複数の不飽和コモノマー、例えばC4〜20α−オレフィン、C4〜20ジエン、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン)等から誘導される単位を含む。これらのコポリマーは、少なくとも約65モルパーセント(モル%)のプロピレン誘導単位、約0.1〜35モル%のエチレン誘導単位、および0〜約35モル%の1種または複数の不飽和コモノマー誘導単位を含むことを特徴とする。但し、エチレン誘導単位と不飽和コモノマー誘導単位の合計モル%は約35を超えないことが条件である。これらのコポリマーは、以下の特性、すなわち、(i)そのピークがほぼ等しい強度である、約14.6および約15.7ppmでレジオエラーに対応する13C NMRピーク;(ii)約−1.20超のひずみ指数Six;および(iii)コポリマー中のコモノマーの量、すなわち、コポリマー中のエチレンおよび/または不飽和コモノマーから誘導される単位が増加しても本質的に(essentially、基本的に)一定であるTmeと、その量が増加するにつれて減少するTmaxとを有するDSC曲線;のうちの少なくとも1つを有することも特徴とする。この実施形態のコポリマーはプロピレン/エチレンコポリマーであり、それらは一般に、その3つの特性のうちの少なくとも2つを特徴とする。
【0025】
ポリプロピレンがコポリマーであるさらに他の実施形態では、ポリプロピレンは、プロピレンおよび1種または複数の不飽和コモノマーを含む。これらのコポリマーは、少なくとも約65モル%のプロピレン誘導単位と約0.1〜35モル%の不飽和コモノマー誘導単位を有することを特徴とする。これらのコポリマーは、以下の特性、すなわち、(i)そのピークがほぼ等しい強度である、約14.6および約15.7ppmでレジオエラーに対応する13C NMRピーク;(ii)約−1.20超のひずみ指数Six;および(iii)コポリマー中のコモノマーの量、すなわち、コポリマー中の不飽和コモノマーから誘導される単位が増加しても本質的に一定であるTmeと、その量が増加するにつれて減少するTmaxとを有するDSC曲線;のうちの少なくとも1つを有することも特徴とする。この実施形態のコポリマーはプロピレン/不飽和コモノマーコポリマーである。一般にこの実施形態のコポリマーはこれらの特性の少なくとも2つを特徴とする。
【0026】
プロピレン/エチレン/任意選択の不飽和コモノマーおよび/または上記のプロピレン/不飽和コモノマーコポリマーは個別に、かつ集合的に「P/Eコポリマー」かまたは類似の用語で称されることがある。P/Eコポリマーは、プロピレン/エチレン(P/E)コポリマーの独特なサブセット(subset)であり、これらは米国特許出願番号10/139,786に、より詳細に記載されている。本開示のためには、P/Eコポリマーは50重量%以上のプロピレンを含み、EP(エチレン/プロピレン)コポリマーは51重量%以上のエチレンを含む。本明細書で用いる、「〜プロピレンを含む」、「〜エチレンを含む」および類似の用語は、ポリマーがプロピレン、エチレンまたは同様のものから誘導された単位を、その化合物自体とは異なるものとして含むことを意味する。
【0027】
さらに他の実施形態では、ポリマーブレンドのポリプロピレン成分はそれ自体2種以上のポリプロピレンのブレンドである。この実施形態についての特定の変更形態では、ブレンドの少なくとも1つの成分、すなわち第1の成分は少なくとも1種のP/Eコポリマーを含み、他の成分、すなわち第2の成分は1種または複数のプロピレンホモポリマー、好ましくはPホモポリマーを含む。ブレンド中の各ポリプロピレンの量は広範囲にかつ適宜変えることができるが、第2の成分はブレンドの少なくとも約50重量%を構成することが好ましい。ブレンドは単一の相であっても複数の相であってもよい。後者の場合、プロピレンホモポリマーおよび/またはP/Eコポリマーは、連続相であっても不連続(すなわち分散した)相であってもよい。
【0028】
ポリマーブレンドは少なくとも約50重量%、一般に少なくとも約60重量%、好ましくは少なくとも約70重量%のポリプロピレン成分を含む。ポリマーブレンドは少なくとも約10重量%、一般に少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%のエラストマー成分を含む。ポリマーブレンドは、ポリプロピレンとエラストマー成分に加えて他のポリマー成分を含むことができるが、そうしたポリマー成分が存在する場合、それらは比較的少量、例えばポリマーブレンドの全重量に対して約5重量%未満存在する。ブレンド中に含むことができる他のポリマー成分の代表例はエチレン酢酸ビニル(EVA)およびスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)である。
【0029】
本発明を実施するのに用いるポリプロピレンおよび/またはエラストマーは、アルコキシシランおよび/または類似の材料で官能化させて、水分架橋を可能にすることもできる。本発明を実施するのに用いるポリプロピレンおよび/またはエラストマーには、湿潤電気特性に悪影響を及ぼす可能性がある水溶性の塩が存在しないかまたは無視できる程度の量(inconsequential amount、微量に)しか存在しないことが好ましい。そうした塩の例には、様々なナトリウム塩、例えば、ポリプロピレン用の核形成剤としてしばしば用いられる安息香酸ナトリウムが含まれる。
【0030】
ポリマーブレンドは、反応器内でも反応器後でも生成させることができる。反応器内で生成させる場合、一段反応容器かまたは多段反応容器を用いることができる。前者の場合、一般に1つのブレンド成分をまず生成させ、続いて、同じ反応器内で第1の成分の存在下で第2の成分を生成させる。後者の場合、反応容器は直列かまたは並列で配置することができる。重合は任意の相、例えば溶液、スラリー、気体等で実施することができ、単一触媒系または混合触媒系を用いることができる。通常の装置および条件が用いられる。
【0031】
ポリマーブレンドを反応器後で生成する、すなわち配合する場合、通常の任意の混合手段、例えば静的ミキサー(static mixers)、押出機などを用いることができる。一般に、各成分を適切な加工助剤、架橋剤および他の添加剤と一緒に押出機中に供給し、次いでブレンドして比較的均一なマス(mass)にし、一般に架橋させるかまたは少なくともいずれかの慣用的手段、例えば水分、放射線等への曝露による押出後の架橋への準備をしておく。
【0032】
添加剤を加える前、ポリマーブレンドは望ましい特性を組み合わせた特性を示す。それらの特性の中には、(i)150℃で200%未満、好ましくは150%未満、より好ましくは100%未満の熱クリープ、(ii)60ヘルツ(Hz)および90℃で約2.5未満、好ましくは約2.4未満、より好ましくは約2.3未満の誘電定数、(iii)60Hzおよび90℃で約0.005未満、好ましくは約0.004未満、より好ましくは約0.003未満の散逸率(dissipation factor)、および(iv)約600ボルト/ミル超、好ましくは約700ボルト/ミル超、より好ましくは約800ボルト/ミル(v/ミル)超の交流(AC)破壊強度(breakdown strength)がある。ブレンドはまた、(v)約6,000ポンド/平方インチ未満、好ましくは約5000ポンド/平方インチ未満、より好ましくは約4000ポンド/平方インチ(psi)未満の引張強度(tensile strength)、および(vi)約50%超、好ましくは約75%超、より好ましくは約100%超の引張伸び(tensile elongation)の少なくとも1つも示すことが好ましい。熱クリープは、ICEA T−28−562により、150℃で50ミルプラークを用いて測定する(「ポリマー絶縁体の熱クリープ測定のための試験方法(Test Method for Measurement of Hot Creep of Polymeric Insulations)」1995年、3月)。誘電定数(dielectric constant、誘電率)および散逸率(DC/DF)は、ASTM D−150により、60Hzおよび90℃で測定する。AC破壊強度はASTM D−149により測定する。引張強度(最大負荷時応力)および伸びは、ASTM D−638−00により、50ミルプラークを用いて室温で2インチ/分の変位速度(displacement rate)で測定する。
【0033】
ポリマーブレンドは約100グラム/10分未満、好ましくは約50グラム/10分未満、より好ましくは約30グラム/10分(g/10分)未満の典型的メルトフローレート(ASTM D−1238、条件Lにより、230℃、2.16kgで測定したMFR)を有する。ポリマーブレンドのポリプロピレン成分は約300,000psi未満、好ましくは約250,000psi未満、より好ましくは約200,000psi未満の典型的曲げ弾性率(flexural modulus)(ASTM D−790Aにより測定して)を有する。
【0034】
導電性デバイスの絶縁用被覆またはジャケットは、1種または複数の添加剤と一緒にポリマーブレンドを含むことができる。一般に、ポリマーブレンドは、絶縁用被覆またはジャケットの少なくとも約30重量%、好ましくは少なくとも約40重量%、より好ましくは少なくとも約50重量%を構成する。
【0035】
典型的な添加剤には、充填剤、顔料、架橋剤、加工助剤、金属不活性化剤(metal deactivators)、エキステンダー油(extender oil)、酸化防止剤、安定剤、潤滑剤、難燃剤などの材料が含まれる。充填剤を用いる場合、絶縁体またはジャケットは0超〜約70重量%、より好ましくは約10〜約70重量%、より好ましくは約20〜約70重量%の少なくとも1種の充填剤を含むことが好ましい。代表的な充填剤には、カーボンブラック、二酸化ケイ素(例えば、ガラスビーズ)、タルク、炭酸カルシウム、粘土、フルオロカーボン、シロキサンなどが含まれる。
【0036】
適切なエキステンダー油(または可塑剤)には、芳香油、ナフテン油、パラフィン系オイルまたは硬化(hydrogenated)油(ホワイト油)およびこれらの材料の2つ以上の混合物が含まれる。エキステンダー油を絶縁またはジャケット組成物に加える場合、一般に約0.5〜約25、好ましくは約5〜15重量部/100重量部程度加える。
【0037】
適切な酸化防止剤には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのヒンダードフェノール(hindered phenols);1,3,5−トリメチル2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン;テトラキス[(メチレン3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(Ciba−Geigyより市販されているIRGANOX(商標)1010);オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート(やはりCiba−Geigyより市販されているIRGANOX(商標)1076)および類似の既知の材料が含まれる。存在する場合、酸化防止剤は、絶縁またはジャケット組成物100重量部当たり約0.05〜約2重量部の好ましいレベルで用いられる。本発明を実施するのに用いる安定化用添加剤、酸化防止剤、金属不活性化剤および/またはUV安定剤はよく知られており、慣用的に用いられる。これらは、文献、例えば米国特許第5,143,968号および同第5,656,698号に記載されている。
【0038】
本発明を実施するのに用いることができる架橋剤には、米国特許第5,266,627号に記載のビニルトリアルコキシシランなどの通常のシラン、および米国特許第6,124,370号に記載の過酸化ジクミルや他のものなどの過酸化物である。架橋剤や架橋性ポリマーは周知の方法および周知の量で用いられる。
【0039】
導電性デバイスの導電性部材は一般に、導電性金属、例えば銅またはアルミニウムのワイヤーまたはケーブルであるが、光ファイバーケーブルの芯などのような1種または複数の金属性物質、例えばゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、アンチモンなどでドーピングされた二酸化ケイ素などの導電性非金属材料であってもよい。ワイヤーとケーブルの違いは一般に寸法の違いによるものである。この部材は、単一ストランドかまたは複数のストランド、例えば一対の撚り銅ワイヤーを含むことができる。導電性デバイスは通常、それが形成されるか、引き出されるかまたは加工される際に絶縁部材が導電性部材を取り囲むように導電性部材の周りに押し出された絶縁部材、例えば被覆物を用いて従来の任意の方法で形成される。そうしたデバイスを作製するための装置および条件は当業界で周知である。
【0040】
一実施形態では、本発明の導電性デバイスは、SAE Jl128の試験方法(ピンチ試験)により、14番米国電線規格(American Wire Gauge(AWG))固体銅ワイヤー上の45ミル壁厚の絶縁体またはジャケットを測定して、少なくとも約18psi、好ましくは少なくとも約20psi、より好ましくは少なくとも約22psiの耐破壊性を有する。
【0041】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものであり、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。別段の指定のない限り、すべての部および割合は重量ベースで表わす。
【実施例】
【0042】
実施例1〜3および比較例1〜3
表1に記載の成分から表2に示した組成物を調製した。次いで、これらの組成物のうちの4つを、ポリエチレンスクリューとMaddock混合ヘッドを備えたDavis Standard単ねじ2.5インチ押出機、24:1の長さ:直径(L/D)を用いて、14番AWG固体銅ワイヤー上に押し出した。典型的な溶融温度は、比較例1および2については185℃であったが、実施例1および2の溶融温度は、滑らかな表面が得られるまで、典型的には215℃の溶融温度に調節した。45ミル(0.045インチ)壁厚の絶縁体またはジャケットを固体銅ワイヤー上に押し出した。試料を集め、比較例1および2の試料を90℃水浴中で1時間硬化させた。実施例1および2の試料は水浴中で硬化させなかった。すべての試料を、少なくとも24時間かけて周囲条件(ambient conditions)にした。ワイヤー試料をSAE−Jl128によりピンチ試験装置で測定した。その値を表3に示す。
【0043】
実施例3および比較例3の組成物は、19のストランド(strands)を用いて1/0アルミニウム導体上に押し出した。次いでこのケーブルの試料を種々の物理的試験にかけた。結果を表4に示す。改善係数を、比較例3、DGDA−5800NT、高耐久化ケーブル構造物で用いられる代表的な高密度ポリエチレンに対する改善度で示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
表3のデータは45ミルの絶縁体またはジャケットを有する14番AWG固体銅ワイヤーからのものである。4つの側から4つのデータを読み取り、平均を取ってピンチ数(psi)を算出した。実際の厚さを測定し、psi/ミルを算出するのに用いた。本発明の実施例のピンチ値は比較例のピンチ値よりずっと大きい。ピンチ値が大きければ大きいほど、破壊力(crush force)に対する抵抗性が高い。
【0049】
表4のデータは、70〜75ミルのジャケット厚さを有する1/0アルミニウム導体からのものである。示した7つのテストのそれぞれにおいて、本発明の組成物のジャケットは、HDPEジャケットより著しく優れていた。
【0050】
比較例4(過酸化物で架橋したLDPE)
低密度ポリエチレン(246.9g、2.4dg/分 MI、0.9200g/cc密度)を、予め窒素パージしておいたBrabenderミキシングボウルに加えた。125℃で3分間流動させた後、3.1gのLuperox Ll30過酸化物(Arkema,Inc.社製)をボウルに加え、LDPEと過酸化物をさらに125℃で4分間混合した。この混合物から、2つの50ミルプラークを、125℃で10分間、続いて180℃で70分間圧縮成形した。引張強度、伸びおよび熱クリープの測定用に、一方のプラークから7個のドッグボーン(dogbone)試料を切り出した。他方のプラークは誘電定数と散逸率を測定するのに用いた。混合物はまた、同じ条件下で40ミルプラークを圧縮成形するのにも用い、このプラークを、交流(AC)破壊強度を測定するのに用いた。これらの測定結果を図1〜5に示す。
【0051】
比較例5(水分架橋エチレン−シランコポリマー)
SI−LINK DFDA−5451 NTエチレン−シランコポリマー(249.13g)を、予め窒素パージしておいたBrabenderミキシングボウルに加えた。160℃で3分間流動させた後、0.5gのIrganox1010(Ciba Specialty Chemicalsから市販されているヒンダードフェノール系酸化防止剤)と0.38gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)をボウルに加え、得られた混合物を160℃でさらに3分間ブレンドした。この混合物から、複数の50ミルプラークを直ちに160℃で10分間圧縮成形した。各プラークから7個のドッグボーン試料を切り出し、90℃水浴中で4時間硬化させ、次いで引張強度、伸び、熱クリープ誘電定数、散逸率を測定し、交流(AC)破壊強度を測定した。これらの測定値の結果も図1〜5に示す。
【0052】
実施例4(70/30hPP/POEブレンド)
DOW H314−02Zプロピレンホモポリマー(hPP、70重量%)と30重量%のAffinity8150ポリオレフィンエラストマー(POE)を、バンバリーミキサー(Banbury mixer)中、180℃で3.5分間溶融ブレンドさせ、押出機に通し、次いで水中ペレッターにかけた。次いでペレッターからのペレットを収集し、170℃で10分間圧縮成形して50ミルプラークにした。各プラークから5個のドッグボーン試料を切り出し、次いで試料について、引張強度、伸び、熱クリープ誘電定数、散逸率を測定し、交流(AC)破壊強度を測定した。これらの測定値の結果も図1〜5に示す。
【0053】
実施例5(55/45hPP/POEブレンド)
DOW H314−02Zプロピレンホモポリマー(137.50g)とAffinity8150(112.50g)を、予め窒素パージしておいたBrabenderミキシングボウルに加えた。170℃で3分間流動させた後、50ミルプラークを直ちに170℃で10分間圧縮成形した。各プラークから7個のドッグボーン試料を切り出し、引張強度、伸び、熱クリープ誘電定数、散逸率を測定し、交流(AC)破壊強度を測定した。これらの測定値の結果も図1〜5に示す。
【0054】
実施例6(94/6ICP/POE)
DOW 7C54Hインパクトコポリマーポリプロピレン(impact copolymer polypropylene)(235g)とAffinity8150(15g)を、予め窒素パージしておいたBrabenderミキシングボウルに加えた。170℃で3分間流動させた後、50ミルプラークを直ちに170℃で10分間圧縮成形した。各プラークから7個のドッグボーン試料を切り出し、引張強度、伸び、熱クリープ誘電定数、散逸率を測定し、交流(AC)破壊強度を測定した。これらの測定値の結果も図1〜5に示す。
【0055】
すべての実施例において、本発明の圧縮成形プラークは比較例プラークの特性に匹敵するかまたはそれより優れていた。
【0056】
本発明を、明細書と実施例によりかなり詳細に説明してきたが、当業者は、冒頭の特許請求の範囲で説明した本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、多くの変更や改変を行うことができることを理解されよう。明細書または実施例で引用したすべての米国特許および許可された米国特許出願を参照により本明細書に組み込むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、比較例4〜5および実施例4〜6の圧縮成形プラークの引張強度と伸び率%を比較して示す棒グラフである。
【図2】図2は、比較例4および実施例5〜6の圧縮成形プラークの熱クリープを比較して示す棒グラフである。
【図3】図3は、比較例4〜5および実施例4〜6の圧縮成形プラークの誘電定数(dielectric constant、誘電率)を比較して示す折れ線グラフである。
【図4】図4は、比較例4〜5および実施例4〜6の圧縮成形プラークの散逸率を比較して示す折れ線グラフである。
【図5】図5は、比較例4〜5および実施例4〜6の圧縮成形プラークのAC破壊強度を比較して示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約18psiの耐破壊性を有する導電性デバイスであって、
A.少なくとも1つの導電性基材を含む導電性部材と、
B.導電性部材を実質的に取り囲み、
1.少なくとも約50重量%のポリプロピレン、および
2.少なくとも約10重量%のエラストマー
を含むポリマーブレンドを含む少なくとも1つの電気絶縁部材と
を含む導電性デバイス。
【請求項2】
前記エラストマーがエチレンとα−オレフィンのコポリマーである、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項3】
前記エラストマーがエチレンとC4〜20α−オレフィンのコポリマーである、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項4】
前記エラストマーがエチレンとC4〜10α−オレフィンのコポリマーである、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項5】
前記エラストマーがエチレンとオクテンのコポリマーである、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項6】
前記エラストマーが約0.92g/cm以下の密度を有する、請求項2に記載の導電性デバイス。
【請求項7】
前記ポリプロピレンがプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンのコポリマーである、請求項6に記載の導電性デバイス。
【請求項8】
前記ポリプロピレンがプロピレンとエチレンおよびC4〜20α−オレフィンの少なくとも1つとのコポリマーである、請求項6に記載の導電性デバイス。
【請求項9】
前記ポリプロピレンを、チーグラーナッタ触媒、幾何拘束型触媒およびメタロセン触媒による触媒反応の少なくとも1つによって調製する、請求項8に記載の導電性デバイス。
【請求項10】
前記ポリプロピレンを非メタロセン系金属中心ピリジニルの触媒反応によって調製する、請求項8に記載の導電性デバイス。
【請求項11】
前記ポリプロピレンが、少なくとも約65モルパーセント(モル%)のプロピレン誘導単位、約0.1〜35モル%のエチレン誘導単位および0〜約35モル%の1種または複数の不飽和コモノマー誘導単位を含むことを特徴とし、但し、エチレン誘導単位と不飽和コモノマー誘導単位の合計モル%が約35を超えない、請求項10に記載の導電性デバイス。
【請求項12】
前記ポリプロピレンが、以下の特性すなわち、(i)そのピークがほぼ等しい強度である、約14.6および約15.7ppmでレジオエラーに対応する13C NMRピーク;(ii)約−1.20超のひずみ指数Six;および(iii)コポリマー中のコモノマーの量が増加しても本質的に一定であるTmeと、その量が増加するにつれて減少するTmaxとを有するDSC曲線;のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項11に記載の導電性デバイス。
【請求項13】
前記ポリプロピレンが、少なくとも約65モル%のプロピレン誘導単位と、約0.1〜35モル%の不飽和コモノマー誘導単位を有することを特徴とする、請求項10に記載の導電性デバイス。
【請求項14】
前記ポリプロピレンが、以下の特性すなわち、(i)そのピークがほぼ等しい強度である、約14.6および約15.7ppmでレジオエラーに対応する13C NMRピーク;(ii)約−1.20超のひずみ指数Six;および(iii)コポリマー中のコモノマーの量が増加しても本質的に一定であるTmeと、その量が増加するにつれて減少するTmaxとを有するDSC曲線;のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項13に記載の導電性デバイス。
【請求項15】
前記ポリプロピレンがホモポリマーである、請求項6に記載の導電性デバイス。
【請求項16】
前記ポリプロピレンを、チーグラーナッタ触媒、幾何拘束型触媒およびメタロセン触媒の少なくとも1つの触媒反応によって調製する、請求項15に記載の導電性デバイス。
【請求項17】
前記ポリプロピレンを非メタロセン系金属中心ピリジニルの触媒反応によって調製する、請求項15に記載の導電性デバイス。
【請求項18】
前記ポリプロピレンが、(i)そのピークがほぼ等しい強度である、約14.6および約15.7ppmでレジオエラーに対応する13C NMRピーク、(ii)実質的にアイソタクチックなプロピレン配列、および(iii)チーグラーナッタ触媒により調製された同等なポリプロピレンホモポリマーより少なくとも50%多いレジオエラーを有することを特徴とする、請求項17に記載の導電性デバイス。
【請求項19】
前記ポリプロピレンがポリマーブレンドの少なくとも約60重量%を構成する、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項20】
前記ポリプロピレンがポリマーブレンドの少なくとも約70重量%を構成する、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項21】
前記絶縁部材が、充填剤、顔料、架橋剤、酸化防止剤、加工助剤、金属不活性化剤、エキステンダー油、安定剤および潤滑剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項22】
前記ポリマーブレンドが絶縁部材の少なくとも約30重量%を構成する、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項23】
前記導電性部材がワイヤーおよびケーブルの少なくとも1つである、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項24】
少なくとも約20psiの耐破壊性を有する、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項25】
前記ポリマーブレンドが反応器後ブレンドである、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項26】
前記ポリマーブレンドが反応器内ブレンドである、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項27】
前記ポリマーブレンドが、前記デバイスの湿潤電気特性に悪影響を及ぼす水溶性塩を無視できる程度の量しか含まない、請求項1に記載の導電性デバイス。
【請求項28】
A.少なくとも1つの導電性基材を含む導電性部材と、
B.導電性部材を実質的に取り囲み、
1.少なくとも約50重量%のポリプロピレン、および
2.少なくとも約10重量%のエラストマー
を含むポリマーブレンドを含む少なくとも1つの電気絶縁部材と
を含む導電性デバイスであって、前記ブレンドが、(i)150℃で200%未満の熱クリープ、(ii)60Hzおよび90℃で約2.5未満の誘電定数、(iii)60Hzおよび90℃で約0.005未満の散逸率、ならびに(iv)約600v/ミル超のAC破壊強度を有することを特徴とする導電性デバイス。
【請求項29】
前記ブレンドが、(v)約6,000ポンド/平方インチ(psi)未満の引張強度および(vi)約50%超の引張伸びの少なくとも1つを有することをさらに特徴とする、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記エラストマーがエチレン/α−オレフィンコポリマーである、請求項28に記載のデバイス。
【請求項31】
低電圧、中電圧、高電圧または超高電圧用のワイヤーまたはケーブルの形態である、請求項28に記載のデバイス。
【請求項32】
前記ポリマーブレンドが、前記デバイスの湿潤電気特性に悪影響を及ぼす水溶性塩を無視できる程度の量しか含まない、請求項28に記載の導電性デバイス。
【請求項33】
低電圧、中電圧、高電圧または超高電圧用のワイヤーまたはケーブルの形態である、請求項1に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−503801(P2009−503801A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525057(P2008−525057)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029491
【国際公開番号】WO2007/019088
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】