説明

ポリプロピレン偏光板及びその製造方法

【課題】耐久性、特に耐湿潤性に優れた偏光板の提供。
【解決手段】偏光板の製造方法であって、(1)(a)ポリプロピレンを成形してシートとした後に二色性色素で染色して染色シートを得る工程、もしくは、(b)ポリプロピレンと二色性色素とを加熱下混練後に成形して染色シートを得る工程、および
(2)染色シートを延伸する工程、を有してなる偏光板の製造方法であり、
ポリプロピレンのメルトマスフローレートが0.1〜50g/10minの範囲にある、偏光板の製造方法、並びにそれによって得られる偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン偏光板及びその製造方法に関する。本明細書において、「偏光板」と呼ぶときには、偏光シートおよび偏光フィルムをも包含するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプイの普及にともない、様々な用途での利用が進められているが、耐久性という観点から、特に湿度や熱、光に対する耐久性への要請が高まっている。従来の液晶ディスプレイではヨウ素系偏光フィルムを使用していることから湿度に対する耐久性が低く、耐湿潤性、耐熱性を改善することで将来的に大きな需要が見込まれることから、耐久性、生産性に優れる二色性色素を用いた偏光フィルムの技術の確立が期待されている状況にある。現在、耐久性に優れた二色性色素を用いた偏光フィルム部品の生産技術の確立に向けた研究開発が国内外で進められている。
【0003】
従来、偏光板は、透明性、ヨウ素等の親和性や延伸時における高い配向性に優れるポリビニルアルコールのフィルムを延伸することによって製造されている。ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコールのフィルムを一軸延伸する事により、ヨウ素が延伸方向に配列し、偏光性能を持った偏光素子層が得られる。
【0004】
また、特開2002−048918号公報は、二色性色素を含有するポリビニルアルコールの層を用いて偏光板を製造することを開示している。
【0005】
一方、ポリビニルアルコールが水溶性であることから、偏光板が耐湿潤性に劣る点、および使用できる二色性色素が限定されるという点などを改良すべく、ポリビニルアルコールに代えて、疎水性のポリマーであるポリプロピレンを用いた偏光板も開示されている(特開2009−217012号公報)。この偏光板は、疎水性であることから耐湿潤性に優れ、また使用できる色素もスルホン酸基等の親水性基を有しない二色性色素の範囲まで広がった。しかしながら、得られる偏光板の二色性比や偏光度等の性能は更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−048918号公報
【特許文献2】特開2009−217012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を改良すべく、耐久性、特に耐湿潤性に優れると同時に、二色性比および偏光度等の光特性も改良された偏光板の製造方法並びにその方法で得られた偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
偏光板の製造方法であって、
(1)(a)ポリプロピレンを成形してシートとした後に二色性色素で染色して染色シートを得る工程、もしくは、(b)ポリプロピレンと二色性色素とを加熱下混練後に成形して染色シートを得る工程、および
(2)染色シートを延伸する工程、を有してなる偏光板の製造方法であり、
ポリプロピレンのメルトマスフローレート(以後、MFRと略す。)が0.1〜50g/10minの範囲にある、偏光板の製造方法、およびその方法によって得られた偏光板を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐湿潤性に優れると同時に、二色性比および偏光度等の光特性も改良された偏光板や偏光フィルムを作製できる。従来は、水溶性のポリビニルアルコール(PVA)を使用しているために、偏光フィルムは、高湿度の条件では使用できなかったが、高湿度の環境下でも偏光板の使用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において用いるポリプロピレン(以後、PPと略す。)は、プロピレンのホモポリマー、および/または、プロピレンと他のオレフィンとのコポリマーを含む。ポリプロピレンの立体規則性は特に制限されない。プロピレンと共重合させる他のオレフィンとしては、炭素数2〜8の鎖状または分岐状のオレフィンが用いられてよい。例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等でよく、好ましくは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン等でよい。コポリマーの型としては、プロピレンと他のオレフィンとがランダムに共重合したランダムコポリマーが好ましく用いられ得る。透明性が良いからである。
【0011】
本発明において用いるPPは、MFRが0.1〜50g/10minの範囲にあることを特徴とする。MFRは、好ましくは、0.5〜40g/10min、より好ましくは1〜20g/10minの範囲であってよい。MFRが0.1g/10minより小さいと押出機の負荷が大きくなりPPシートの押出成形が難くなる。MFRが50g/10minより大きいとPPの流動性が上がりすぎて均一な延伸が困難となり、二色性比および偏光度の低下を招き易いからである。
【0012】
本発明の偏光板製造方法は、PPの染色シートを得る工程(1)、および、得られた染色シートを延伸する工程(2)を有してなる。
【0013】
染色シートを得る工程(1)は、前述の通り、(a)PPを成形してシートとした後に二色性色素で染色して染色シートを得る工程、もしくは、(b)PPと二色性色素とを加熱下に混練した後に成形して染色シートを得る工程のいずれであってもよい。染色シートの染色性の観点からすれば、PPをシートに成形した後に二色性色素で染色して染色シートを得る工程(a)が好ましい。この工程によれば、二色性色素がシート内部にまで浸透し易いからである。一方、PPペレットを二色性色素と加熱混練した後に成形して染色シートを得る工程(b)は、PPの融点以上の加熱温度で混練条件を適宜選択することによって、ペレット内部にまで色素を浸透させることができて、工程(a)と遜色ない染色シートを得ることができる。PPの融点はPPの分子構造、例えば、ホモポリマー、コポリマー、立体規則性、結晶化度、分子量、分子量分布により決定される。
【0014】
本発明の工程(1)(a)におけるPPを成形してPPシートとする操作、および(1)(b)における二色性色素と加熱下混練後に成形して染色シートとする操作は、通常の方法を用いることができる。例えば、押出成形法を使用し得る。シートの厚さは、一般に、1000μm〜1μm、例えば、800μm〜5μm、好ましくは600μm〜10μmであってよい。工程(1)(a)におけるPPシートは無色透明であってよい。無色透明なPPシートとは、厚さ100マイクロメートルのシートの可視光(波長450nm〜650nm)に於ける光線透過率が、70%以上のものをいう。本発明で使用するPPまたはPPシートは、耐候剤、耐光剤、帯電防止剤、防曇剤、潤滑剤、遮光剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、マット化剤、熱安定剤、結晶核剤、塩素補足剤、ブロッキング防止剤、難燃剤などを含有してもよい。また、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記ポリプロピレン以外のポリオレフィン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、石油樹脂等の他の樹脂を含んでいてもよい。
【0015】
本発明において、染色操作は、PPシートを二色性色素で染色するする方法((1)(a)工程)か、またはPPペレット(または粉末)と二色性色素とを加熱下に混練して染色する方法((1)(b)工程中での染色操作)、のいずれかにおいて行われる。
【0016】
PPシートを二色性色素で染色して染色シートを得る工程(1)(a)は、二色性色素の分散液(以後、「色素分散液」と称する。)にPPシートを浸漬することによって行うことができる。染色温度は110〜150℃、例えば、120〜140℃であってよい。二色性色素の分散液の濃度(分散液に対しての色素の重量割合)は、一般に、0.1〜30重量%、例えば、1〜20重量%であってよい。分散液を振動させながら染色を行うことが好ましい。
【0017】
二色性色素の分散液にPPシートを浸漬して行う染色操作は、通常の染色機を用いて行うことができる。例えば、回転式高圧染色機およびロール式高圧染色機(ジッガー染色機)等を用いて行うことができる。二色性色素の分散液において、媒体(溶媒)は、色素を分散させる水または有機溶媒であれば、限定されない。用いる媒体は、色素を溶解してもよいが、シートを溶解するなどのシートの変化を生じさせるものではない。媒体の例としては、水、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類等が挙げられる。
色素分散液において、色素の分散を促進するように、分散剤が存在してもよい。分散剤は、一般に、界面活性剤、例えば、ノニオン性またはイオン性(カチオン性またはアニオン性)の界面活性剤であってよい。
【0018】
一方、PPペレット(または粉末)と二色性色素とを加熱下に混練して染色する操作((1)(b)工程中での染色操作)は、PPペレットを融点以上の温度(例えば、160〜240℃、好ましくは、180〜220℃)で適宜、数分〜数十分間(例えば、1〜30分間、好ましくは、2〜10分間、特に、3〜6分間)混練し、そこに二色性色素粉末を加え、更に数分〜数十分間(例えば、1〜60分間、好ましくは、2〜30分間、特に5〜20分間)混練を続けて、染色PPとすることができる。二色性色素の量は、一般に、PPに対して0.1〜10重量%、例えば、0.5〜5重量%であってよい。この染色PPは、前述押出成形法等によって、染色PPシートとすることができる。
【0019】
本発明で用いる二色性色素は特に制限はないが、カルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を含まない疎水性の二色性色素が好ましい。
二色性色素は、アゾ系色素であることが好ましい。アゾ基の数は2(すなわち、ジアゾ)または3(すなわち、トリアゾ)であることが好ましい。アゾ基とアゾ基の間に芳香族基(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)またはスチルベン基が存在することが好ましい。1つの末端には、ベンゾチアゾールまたはチエノチアゾールが存在することが好ましく、特にチエノチアゾール基が存在することが好ましい。他の末端には、ジエチルアミノベンゼン基、アニソール基、またはベンゼン環が存在することが好ましい。本発明において、基(例えば、アニソール基およびベンゼン環)は、置換されていてもあるいはされていなくてもよい。
【0020】
本発明で用いられる好ましい二色性色素の内、吸収極大波長(λmax)が500nm〜600nm付近にあるマゼンタ系若しくはレッド系二色性色素としては、例えば、片末端にチエノチアゾール基を有するビスアゾ型のR−02が例示される。
【0021】
【化1】

(式中、式中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはシアノ置換アルキル基を表す。)
【0022】
より具体的に示せば、R−1、R−2およびR−3が例示される。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
吸収極大波長(λmax)が600nm〜650nm付近にあるシアン系若しくはブルー系二色性色素としては、例えば、片末端若しくはジアゾ基間にチエノチアゾール基若しくはベンゾチアゾール基を有するビスアゾ若しくはトリアゾ型の二色性色素が挙げられる。それらを例示すれば、B−4、B−5、およびB−07が挙げられる。
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

(式中、R4は炭素数1〜6のアルキル基またはシアノ基を表し、RおよびR6はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0030】
更に、B−07の好ましい具体例としては、B−7が挙げられる。
【0031】
【化8】

【0032】
吸収極大波長(λmax)が450nm〜4000nm付近にあるイエロー系二色性色素としては、例えば、ビスアゾスチルベン構造を有するY−08が挙げられる。
【0033】
【化9】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0034】
Y−08の更に好ましい例としては、両末端ヒドロキシ型のY−8が挙げられる。
【0035】
【化10】

【0036】
チエノチアゾール系色素は、例えば下記の合成反応スキームに従って定法どおり製造することができる。
【0037】
【化11】

【0038】
【化12】

【0039】
イエロー系二色性色素の内、例えば、前記Y−8のイエロー系色素は、次の反応式に従って合成することができる。
【0040】
【化13】

【0041】
即ち、4,4’−ジアミノスチルベン亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化し、フェノールのNa塩とジアゾカップリングを行った後、酸で中和することによって、両末端ヒドロキシ型のY−8を得ることができる。
【0042】
また、このY−8のNa塩をジアルキル硫酸またはアルキルクロライドと反応させることによって、両末端アルコキシ型のY−08を得ることができる。
【0043】
本発明における延伸工程(2)は、一軸延伸および二軸延伸のいずれも採用し得るが、二色性比および偏光度を高める点からは、一軸延伸が好ましい。一軸延伸方向に二色性色素が配向し易いからである。延伸倍率は通常、2〜20倍の範囲、例えば3〜15倍、あるいは4〜10倍の範囲で行ってよい。延伸倍率は通常、高い方が二色性色素の配向性も増加するので、結果としてポリプロピレンシート(又はフィルム)の偏光度も向上することが期待される。
【0044】
延伸工程(2)は通常の延伸機を用いて、通常の方法によって行うことができる。ここで延伸方法としては、二つ以上のロールの回転速度差によりシートを延伸するロール延伸法や、チャック等で両端を固定したシートをオーブン中でチャック間隔を広げて延伸するテンター延伸法が挙げられる。一軸延伸工程の操作温度(延伸温度)はPPの融点を越えない範囲から任意に選んでよい。延伸温度は、通常50℃〜融点の5℃以下(融点−5℃)の範囲、好ましくは60℃〜融点−10℃の範囲であってよい。
延伸工程の操作時間(延伸時間)は、延伸機の構造、延伸温度、延伸倍率によっても変化し得る。延伸温度が低い場合、所望の延伸性を得るためには、より長い延伸時間を要し、延伸温度が高い場合には、所望の延伸性を得るための延伸時間はより短くてよい。従って、適正な延伸時間は延伸温度や経済性等によって異なり得る。
【0045】
本発明で得られる偏光板は、優れた二色性比を保ちながら、疎水性PP偏光板としては比較的高い偏光度を与えることができる。例えば二色性比が2以上、あるいは4以上、さらには6以上であって、偏光度が、例えば70%以上、あるいは80%以上、さらには90%程度の偏光度を得ることができる。本発明で得られるPP偏光板は、耐久性(耐湿潤性及び耐熱性)の点でも優れた特性を示す。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例における各種評価は、それぞれ以下の方法により行った。
(1)メルトマスフローレート(MFR)
株式会社タカラ・サーミスタ製MELT INDEXER L242を用いて、JIS K7210に準拠してPPのMFRを測定した。測定温度は230℃、荷重は2.16Kg/cmとして測定した。
(2) 融点
5mgの試料を精秤後アルミパンに封入し、これを示差熱走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、型式「SSC/5200 」)に装着し、20mL/分の窒素気流中、230℃ まで昇温し、この温度において10分間保持した後、降温速度10℃/分で−10 ℃ まで冷却し、次いで昇温速度10℃/分で210℃ まで昇温する際に得られた吸熱曲線において、最大吸熱を示したピーク温度を融点とした。
(3)二色性測定
染色シートと同じ処理をした二色性色素の入っていないPPシートをリファレンスとして、可視部最大吸収波長(λmax(nm))とその吸光度を測定した。
二色性測定は、コニカミノルタ製スペクトロフォトメーターCM−3600dを用いて測定した。
測定手順は次の通りである。偏光子を振動方向が垂直になるようサンプル側に挿入し、ベースライン測定した。ついで、サンプル延伸シートを検出器側に600nmの波長で入射偏光の振動方向と延伸軸が垂直になるように挿入し、800nm〜400nmの範囲を測定し、次に入射偏光の振動方向と延伸軸が垂直になるように挿入し、それぞれの吸光度(Ay、Az)を測定し、二色性比を算出した。
次にもう1枚のサンプルシートをサンプル側に振動方向と延伸軸が平行になるように挿入し、800nm〜400nmの範囲を測定し、次に2枚目のサンプルシートを振動方向と延伸軸が平行になるように挿入し、透過率を同様に測定した。二色性比および偏光度は、以下の式により算出した。
二色性比の計算式:
二色性比(D)=Ay/Az
偏光度の計算式
A=−log(T)
A:吸光度
T:透過率
T=10(−A)
p:偏光度(%)
p=[(Ty−Tz)/(Ty+Tz)]1/2×100
Ty:入射偏光の振動方向と延伸軸が平行な時の透過率
Tz:入射偏光の振動方向と延伸軸が垂直な時の透過率
【0047】
実施例1
[PPシートの作成]
使用したPPはペレット状であり、ホモPP[1](融点=160℃、MFR=3g/10min)、ホモPP[2](融点=163℃、MFR=8g/10min)、およびエチレンとのランダムコポリプロピレン(ランダムPP[3])(エチレン含量=4mol%、融点=139℃、MFR=7g/10min)である。
上記のPP[1]〜[3]をそれぞれ押出機(90mmφ 押出機)に供給し、260℃で加熱溶融してT型ダイスより押出し、冷却ロール上で冷却固化しながら各PPシートを得た。得られたPPシートは無色透明であり、シートの厚みは300μmであった。
[PPシートの染色]
上記で得られたPPシート[1]〜[3]をそれぞれ、高温高圧染色機(辻井染機工業(株) 製HCC-BS-1)を用いて、130℃において2時間で染色し、各染色シートを得た。 染色液は、チエノチアゾール基含有アゾ系二色性色素R−1
【0048】
【化14】

を10%o.w.f.の濃度で水中に分散し、分散剤として、CIBA社製Irgasol NA を1%濃度になるように染色液に加えたものを用いた。得られた染色シートは、所定の色に着色された光透過性の良好なシートであった。
[染色シートの延伸]
上記で得られた染色シートを、それぞれ、島津製作所製 恒温槽付引張試験機(AD−500)用い、110℃の温度、200mm/minの延伸速度、延伸倍率4.5倍の条件で一軸延伸(テンター延伸法)することによって偏光板を作成した。得られた偏光板の二色性特性を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例2
実施例1における延伸倍率4.5に代えて、表2に示す延伸倍率とする以外は、実施例1に準じて偏光板を作成した。得られた偏光板の二色性特性を、実施例1の結果も含めて表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例3
[PPと二色性色素の溶融混練]
ホモPP[2]のペレット70gを200℃で3分間予熱混練し、そこに二色性色素R−1を7mg加えて更に10分間混練りして、染色PPを得た。
[染色シートの作成]
次に、ここで得られた染色PPを厚さ300μmの四方金属枠中に充填し、その上下をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルムで挟持し、更にその上下をステンレス板で挟持して、その上下からホットプレートで熱プレスすることによって、染色シートを得た。熱プレスは、190℃で2分間、加熱プレスした。得られた染色シートは厚み300μmで、所定の色に着色された光透過性の良好なシートであった。
[染色シートの延伸]
上記で得られた染色シートを、温度以外は実施例1の方法に準じて一軸延伸し、一軸延伸温度の影響を検討した。延伸温度と得られた偏光板の二色性特性を表3に示す。
【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明で得られる偏光板は、優れた二色性比を保ちながら、疎水性PP偏光板としては比較的高い偏光度を与えることができるため、耐久性(耐湿潤性及び耐熱性)に優れた偏光板を提供し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板の製造方法であって、
(1)(a)ポリプロピレンを成形してシートとした後に二色性色素で染色して染色シートを得る工程、もしくは(b)ポリプロピレンと二色性色素とを加熱下混練後に成形して染色シートを得る工程、および
(2)該染色シートを延伸する工程、を有してなる偏光板の製造方法であり、
該ポリプロピレンのメルトマスフローレートが0.1〜50g/10minの範囲にある、偏光板の製造方法。
【請求項2】
ポリプロピレンが、プロピレンのホモポリマー、またはプロピレンと他のオレフィンとのランダムコポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
該延伸が、一軸延伸である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
該延伸が、延伸倍率2〜20倍の範囲で行われる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の製造方法によって製造された偏光板。

【公開番号】特開2011−232699(P2011−232699A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105466(P2010−105466)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000186979)昭和化工株式会社 (6)
【出願人】(596104050)サン・トックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】