説明

ポリプロピレン系防曇フィルム

【課題】ポリプロピレン系防曇フィルムが本来有している優れた防曇性や透明性を保持しながら、水性インキによる印刷性が良好で他のフィルム、紙等の接触物との摩擦や密着による印刷移りやインキずれ、汚れが発生せず、かつ、残留有機溶剤が原因の異臭や包装内容物への吸着がなく流通時や商品陳列時に美麗で、清潔な環境を保ち、水性インキによる印刷層とのラミネート適性を有するポリプロピレン系防曇フィルムを安価に提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に形成されたポリオレフィン系樹脂を主体とする熱融着層とを有する2層以上の積層体からなり、該積層体を構成する層中に、防曇性を有する層と、100g/15mm以上の水性インキ印刷層とのラミネート強度を有する水性インキ密着性表層とを有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷性に優れたポリプロピレン系防曇フィルム、特に、水性インキによる印刷性、透明性に優れ、水性インキによる印刷層とのラミネート適性を有するポリプロピレン系防曇フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系防曇フィルムは、その防曇性、透明性及び価格において非常に優れたものであるところから、生鮮品などを始めとするさまざまな食品の包装材料として広く用いられている。また、これらのポリプロピレン系防曇フィルムは印刷を施されることも通常行われている。
【0003】
近年の環境対応の問題から、一般のフィルムに対する印刷は、従来の、有機溶剤系インキを使用した印刷から水性インキを使用した印刷へとインキの水性化が進んでいる。ポリプロピレン系フィルムに対する印刷についても、水性インキによる印刷性向上対策としてインキメーカーから、水性インキを改良することによりインキ密着性を向上させる方法も提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−1636号公報
【特許文献2】特開平11−279471号公報
【0004】
しかし、ポリプロピレン系防曇フィルムに対する水性インキによる印刷は、従来の有機溶剤系インキによる印刷と比較して、他の面へのインキの転移性が高く実用性が低い。インキ密着性向上を目的とした改良型水性インキによる印刷でもインキ密着性は十分ではない。このように、インキの改質だけでは大幅なインキ密着性の改善は困難であるのに加え、インキの価格も高くなり実用的でない。このため、有機溶剤系インキから水性インキに切り替えるのが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のポリプロピレン系防曇フィルムの有する問題点に鑑み、ポリプロピレン系防曇フィルムが本来有している優れた防曇性や透明性を保持しながら、水性インキによる印刷性が良好で他のフィルム、紙等の接触物との摩擦や密着による印刷移りやインキずれ、汚れが発生せず、かつ、残留有機溶剤が原因の異臭や包装内容物への吸着がなく流通時や商品陳列時に美麗で、清潔な環境を保ち、水性インキによる印刷層とのラミネート適性を有するポリプロピレン系防曇フィルムを安価に提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に形成されたポリオレフィン系樹脂を主体とする熱融着層とを有する2層以上の積層体からなり、該積層体を構成する層中に、防曇性を有する層と、100g/15mm以上の水性インキ印刷層とのラミネート強度を有する水性インキ密着性表層とを有してなることを特徴とする。
【0007】
ここで、ラミネート強度は、水性インキ印刷層とポリプロピレン系防曇フィルムの水性インキ密着性表層との間の剥離時の値である。
【0008】
また、防曇性を有するとは、温水密閉雰囲気を5〜30℃の間で12時間ごとに温度変化を繰り返し2日経過後のフィルムの露付着状況を評価したときに露付着状況が、全面に露が付着しない状態であることをいう。
【0009】
また、水性インキ密着性表層を、大気中の窒素濃度より高い窒素濃度雰囲気下でフィルム表面を表面活性化処理して得たものとすることができる。
【0010】
また、ポリプロピレン系防曇フィルムの120℃、5分の熱収縮率を、10%以下とすることができる。
【0011】
また、ポリプロピレン系防曇フィルムの、少なくとも基材層を防曇剤を含有する層とすることができる。
【0012】
また、熱融着層の厚みを、0.5〜10μmとすることができる。
【0013】
また、ポリプロピレン系防曇フィルムを生鮮品包装用とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムによれば、ポリプロピレン系防曇フィルムが本来有している優れた防曇性や透明性を損なうことなく、水性インキによる印刷性が良好で他のフィルム、紙等の接触物との摩擦や密着による印刷移りやインキずれ、汚染をなくすことができ、流通時や商品陳列時に美麗な状態を保つことができ、水性インキによる印刷層とのラミネート適性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの実施の形態を説明する。
本発明におけるポリプロピレン系防曇フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に形成されたポリオレフィン系樹脂を主体とする熱融着層とを有する2層以上の積層体からなり、優れた防曇性と、高いラミネート強度とを有するポリプロピレン系フィルムである。
【0016】
本発明におけるポリプロピレン系防曇フィルムの基材層を形成するのに適したポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレンのほか、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体などの1種又は2種以上を用いることができる。また、フィルムの特性を害さない範囲で、さらに他のポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリブテン−1、ブテン・エチレン共重合体などを一部に混合して用いることができる。
【0017】
また、本発明におけるポリプロピレン系防曇フィルムの熱融着層を形成するのに適したポリオレフィン系樹脂としては、基材層を形成するポリプロピレン系樹脂の融点より低い融点を有するポリオレフィン系樹脂、好ましくは、融点140℃以下のプロピレンとα−オレフィンの共重合体からなり、例えば、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体などの1種又は2種以上を用いることができ、また、例えば、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ブテン・エチレン共重合体などの1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、さらに融点の低い共重合体を使用することによって優れた低温シール性と高いシール強度を達成することができる。
【0018】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの少なくとも一方の表面は、防曇性を有する層と、100g/15mm以上の水性インキ印刷層とのラミネート強度を有する水性インキ密着性表層とを有してなる。ここで、ラミネート強度を測定するときの剥離界面は水性インキ印刷層とポリプロピレン系防曇フィルムの水性インキ密着性表層との間である。
【0019】
さらに詳しくは、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの一方の表面の水性インキ密着性表層は、水性インキで印刷したとき、印刷面とのラミネート強度は100g/15mm幅以上、好ましくは120〜200g/15mm幅である。
【0020】
かかる水性インキ密着性表層は、水性インキの濡れ性、印刷ロールからのインキ転移性が良好で水性インキとの密着性が優れていることから水性インキの耐剥離性も大きい。
【0021】
また、上記水性インキ密着性表層は、水性インキで印刷してテープ剥離テストにより評価したときにフィルム表面へのインキ残留割合が60%以上、好ましくは80%以上である。
【0022】
本発明において、水性インキ密着性表層表面に印刷するのに適した水性インキとは、使用時におけるインキ中の有機溶剤量が30重量%以下のものであれば特に制限することなく使用できる。水性インキに用いる分散媒は、水溶解型、コロイダルディスパージョン型、エマルジョン型のいずれのものを用いてもよく、樹脂としては、シェラック、ロジン変性樹脂、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などの単独又は混合物を使用することができる。また、顔料は、有機系、無機系顔料がなんら制限なく使用することができ、分散剤等の各種助剤を任意に添加することもできる。また、かかるインキの溶剤としては、水の他にエタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等を用いることができる。
【0023】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの水性インキ密着性表層に、水性インキでグラビア印刷する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、本発明のフィルムは多色刷りグラビア印刷を用いた場合に特に有効である。
【0024】
また、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの一方の表面の水性インキ密着性表層は水性インキとの密着性が優れていることから水性インキで印刷してテープ剥離テストにより評価したときにフィルム表面へのインキ残留性がよく、その割合は60%以上、好ましくは80%以上である。
【0025】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの少なくとも一方の表面は防曇性を有することが必要であって、このため、少なくとも基材層を形成する樹脂中に防曇剤を含有させるのが通常である。フィルム製造時に、基材層を形成する樹脂だけに防曇剤を配合してフィルムを製造してもよく、基材層を形成する樹脂及び熱融着層を形成する樹脂の両方に防曇剤を配合してもよい。前者の場合であっても、フィルム製造時及びフィルム形成後の保管時には基材層を形成する樹脂中の防曇剤は熱融着層に順次移行し、基材層と熱融着層の両層に防曇剤が存在することになり、次いで熱融着層表面にブリードアウトして熱融着層表面が防曇性を有する状態になる。このポリプロピレン系防曇フィルムを生鮮品の包装体として用いる場合、包装体の内面、例えば、青果物、鮮魚等の生鮮品に接する側の熱融着層表面には、生鮮品を包装した状態で保存乃至流通期間中防曇性を示すような防曇剤が存在しなければならない。即ち、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムでは、包装体内側面の曇り現象を防止して商品価値を高めるばかりでなく、曇りの進行によって形成される水滴による包装体内容物の水腐れを防止するうえでも防曇作用は極めて重要な特性である。そして、収穫後も生理作用を持続することが特徴である生鮮品を包装対象としたときにその効果を発揮することができる。そして、流通過程で長期的に優れた防曇性を持続させるためには、包装体は冷凍保存よりもむしろ室温雰囲気での保存が望まれるところから、保存乃至流通時の気温変化を考慮して、5〜30℃の間で温度変化を繰り返す経過中継続して防曇性を示すような防曇剤が包装体を形成するポリプロピレン系防曇フィルムの熱融着層表面に存在するものであることが望まれる。
【0026】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの少なくとも一方の表面に防曇性を付与するのに用いる防曇剤としては、例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などを典型的なものとして挙げることができる。かかる防曇剤のフィルム中での存在量は全層換算で0.1〜10重量%、特に0.2〜5重量%が好ましく、熱融着層形成成分中では5.0重量%以下、特に0.1〜1.0重量%であるのが好ましい。
【0027】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などや、フィルムの耐ブロッキング性や滑り性を確保するための、無機質あるいは有機質の微細粒子を基材層、熱融着層の一方あるいはいずれの層にも配合することも可能である。
【0028】
無機質微細粒子としては、二酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、カオリン、雲母、ゼオライトなどが挙げられ、これらの形状は、球状、楕円状、円錐状、不定形と種類を問うものではなく、その粒子径もフィルムの用途、使用法により所望のものを使用配合することができる。また、有機質の微細粒子としては、アクリル、アクリル酸メチル、スチレン−ブタジエンなどの架橋体粒子を使用することができ、形状、大きさに関しては無機質微細粒子と同様にさまざまなものを使用することが可能である。また、これら無機質あるいは有機質の微細粒子表面に各種の表面処理を施すことも可能であり、また、これらは単独で使用し得るほか、2種以上を併用することも可能である。
【0029】
このとき、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムのフィルム厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、包装フィルムとしてのポリプロピレン系フィルムは一般的に5〜250μm、特に、10〜100μm程度であり、機械的強度や透明性の点において、より好ましくは、15〜60μm程度である。また、熱融着層の厚み(基材層の両面に熱融着層を有するときはその合計厚み)は、通常0.5〜10μm程度であるのが好ましく、熱融着層と基材層の厚み比率としては、特に制限するものではないが、通常、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの全層に対し1/50〜1/3程度である。熱融着層の厚み割合がより小さいとヒートシール強度が不十分となり、包装体としての信頼性が欠けることになる。また、熱融着層の厚み割合がより大きいと、基材層部分の割合が小さいことによりポリプロピレン系防曇フィルム全体に腰がなくなり、生鮮品を充填した後の包装体の形状が不安定で実用性に欠ける。
【0030】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの製膜条件は、所望のフィルム物性を得る温度、倍率で押出し、延伸することでよく、一般的なポリプロピレン系フィルムの場合の製膜条件となんら変わるものではなく、例えば、押出し温度150〜300℃の温度で溶融押出しした樹脂組成物を10〜100℃の冷却ロールで固化させたシートに延伸を施すことによって得ることができる。
【0031】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムは積層フィルムであって、その積層方法は、熱融着層と基材層を形成する樹脂をそれぞれ別々の押出機より溶融混錬し、Tダイ内で積層てから押出すことが好ましい実施態様である。延伸工程では、面積倍率で8〜50倍程度、好ましくは10〜40倍程度に延伸することができる。また、得られた積層フィルムの延伸方法は、1軸延伸、2軸延伸を問うものではなく、2軸延伸の場合も、同時2軸延伸法、逐次2軸延伸法、インフレーション法などで実施することができるが逐次2軸延伸が一般的である。
【0032】
逐次2軸延伸を行う場合の典型的な条件としては、まず、縦方法に100〜150℃程度に加熱した周速差を有するロール間で3〜8倍程度延伸し、次いで、幅方向にテンター延伸機を用いて140〜170℃程度の温度で4〜10倍程度延伸する。しかる後、150〜170℃の温度で熱固定処理を施した後、巻き取る方法を例示することができる。
【0033】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムにおいて、水性インキ密着性表層は大気中の窒素濃度より高い窒素濃度雰囲気下でフィルム表面をコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、火炎処理などの表面活性化処理、好ましくはコロナ放電処理して得ることができる。水性インキ密着性表層を得るために、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、火炎処理などの表面活性化処理を、実質的に窒素ガス(窒素ガス濃度99.99%以上)雰囲気下で行うのが特に好ましい。このとき、処理条件として、フィルム速度、電極間距離、処理前のロール温度、雰囲気温度、処理電力などを設定することができる。表面活性化処理を行うときの雰囲気が大気中であるとき、即ち、酸素濃度21%であるときは得られた処理表面は、水性インキとの密着性が十分でなく、水性インキの脱落、はじき等の問題が生じ易く好ましくない。
【0034】
本発明で水性インキの接着性を改良するための、大気中の窒素濃度より高い窒素濃度雰囲気下でフィルム表面を表面活性化処理を行う方法としては特に限定するものではないが、該処理はフィルム製造工程のなかで行ういわゆるインライン処理で行ってもよいし、製造されたフィルムに後工程として処理するいわゆるオフライン処理で行ってもよい。しかしながら、コスト、簡便性を考えるとインライン処理が好ましい。
【0035】
さらに、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムにおいて、その少なくとも一方の表面を防曇性を有するようにするには、少なくとも基材層に防曇剤を含有する積層フィルムに通常のコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、火炎処理などの表面活性化処理、好ましくはコロナ放電処理を行うのが好ましく、該処理はインライン処理、オフライン処理のいずれであってもよいが、コスト、簡便性を考えるとインライン処理が好ましい。
【0036】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの水性インキ密着性表層は、水性インキの濡れ性、印刷ロールからのインキ転移性が良好であって、印刷品位に優れ、水性インキとの密着性が良好であることから水性インキの剥離強度が大きく、フィルムの印刷時に有機溶剤により環境を汚染することがなく、他方の表面は防曇性を有する面であることから水分を含有する物品、特に、生鮮品、なかでも生鮮食料品を包装したときに袋の内側面に使用することにより袋の内側面が曇るようなことがないばかりでなく、外側に水性インキによる印刷を行った袋の陳列中に、食品等の包装の開口部から内容物に有機溶剤が転移したり展示環境に悪影響を及ぼすようなことがない。
【0037】
本発明のポリプロピレン系防曇フィルムには、さらに、目的に応じてエンボス加工、コーティング、印刷、押出ラミネーション加工、他の樹脂フィルム、紙、布等と張合わせ加工を行って用いることもできる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の内容及び効果を実施例によって説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しないかぎり以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中における特性値の測定方法は以下の通りである。
【0039】
(1)水性インキ密着性
(印刷面とのラミネート強度)
フィルム面上に、グラビア印刷機(三谷鉄工所社製)を使用して速度50m/分でインキ量2g/mのグラビア印刷を実施した。このときに使用したインキは、水性インキ(東洋インキ製造社製:商品名アクワエコールJW224R63T白)である。引き続いて、印刷されたフィルム上に、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤(東洋モートン社製:商品名アドコート)を3g/m塗布した後に、シーラント基材(東洋紡績社製:パイレンP1128 20μm)のコロナ放電処理面と張合わせ、40℃で72時間エージング処理を施し、印刷、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムについてラミネート強度の評価を行った。
上記のラミネート加工サンプルを引張試験機(東洋測機社製:商品名テンシロンUTM)を使用して、シーラントとフィルムをそれぞれ把持して、T字剥離強度の測定(水性インキ印刷層とポリプロピレン系防曇フィルムの水性インキ密着性表層との間の剥離時の値)を行った。この値をラミネート強度とした。引張速度は200mm/分で行った。
【0040】
(テープ剥離テスト)
フィルム面上に、グラビア印刷機(三谷鉄工所社製)を使用してインキ量2g/mのグラビア印刷を実施した。このときに使用したインキは、水性インキ(東洋インキ製造社製:商品名アクワエコールJW224R63T白)である。この印刷面に碁盤目剥離法によるマス目(2mmマス×25個のマス目)を付け、23℃の雰囲気中に5分放置した後、ニチバン社製セロテープ(登録商標)18mm幅を貼り付け、上部から押さえローラーで押圧した後90度角方向にセロテープを10m/分の速度で剥離し、剥離部分を数え、4段階で評価した。評価は10回行った平均値である。
碁盤目剥離部分5個以下 (インキ残留割合80%以上)・・・◎
〃 6〜10個 (インキ残留割合60%以上)・・・○
〃 11〜15個(インキ残留割合40%以上)・・・△
〃 16個以上 ・・・×
【0041】
(2)防曇性
次の順序で測定した。
1) 500mLの上部開口容器に50℃の温水を300mL入れる。
2) フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
3) 5℃の冷室中に12時間放置する。
4) 5℃の冷室に放置後、30℃の環境に移し、12時間放置する。
5) 4)の操作を2日間繰り返した後、フィルム測定面の露付着状況を4段階で評価した。
全面露なし (付着面積ゼロ) ・・・・◎
若干の露付着(付着面積1/4まで) ・・・・○
多少の露付着(付着面積1/2まで) ・・・・△
露付着 (付着面積1/2以上) ・・・・×
【0042】
(3)熱収縮率
JIS−C−2318に準じて、120℃×5分で測定した。
【0043】
(実施例1)
一方の押出機より基材層としてポリプロピレン単独重合体(MI=2.5g/10分)100重量部に防曇剤POE(2)ステアリルアミン−モノ−ステアリン酸エステルを1重量部配合した樹脂(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、もう一方の押出機により熱融着層としてプロピレン−エチレン−ブテン共重合体(MI=10g/10分、エチレン成分2%、ブテン成分20%のコポリマー)100重量部に防曇剤ステアリン酸モノグリセリンエステルを0.5重量部配合した樹脂(B)を220℃の樹脂温度にて溶融押出しし、2分割して基材層の両面に重ね、Tダイ内にて厚み比が熱融着層/基材層/熱融着層=0.5/19/0.5になるように積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.7倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は170℃、延伸部温度は155℃であった。
【0044】
さらに、テンター延伸機の後半では、熱固定を160℃にて実施した後、熱融着層(A)表面(インキ密着性表層形成側)に窒素ガス雰囲気(窒素ガス濃度99.99%)で春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理(A)(ワット密度:0.27KW/m/min)を施し、次いで、上記処理面の反対面の熱融着層(B)に大気雰囲気下で春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理(B)(ワット密度:0.27KW/m/min)を施し、フィルムワインダーにより巻き取ってポリプロピレン系フィルムを得た。最終的なフィルム厚みは20μmであった。得られたフィルムは熱収縮率4.0%であった。
【0045】
(比較例1)
実施例1において、コロナ放電処理をフィルムの熱融着層(A)表面、熱融着層(B)表面とも大気雰囲気下(窒素ガス濃度79%、酸素濃度21%)で行うこと以外は実施例1と同じ条件で製膜し、ポリプロピレン系フィルムを得た。得られたフィルムは熱収縮率4.1%であった。
【0046】
(比較例2)
実施例1において、基材層を形成する樹脂、熱融着層を形成する樹脂ともに防曇剤を配合しなかった以外は実施例1と同じ条件で膜し、ポリプロピレン系フィルムを得た。得られたフィルムは熱収縮率4.0%であった。
【0047】
(比較例3)
比較例1において、基材層を形成する樹脂、熱融着層を形成する樹脂ともに防曇剤を配合しなかった以外は比較例1と同じ条件で製膜し、ポリプロピレン系フィルムを得た。得られたフィルムは熱収縮率4.0%であった。
【0048】
(実施例2)
一方の押出機より基材層としてポリプロピレン単独重合体(MI=2.5g/10分)100重量部に防曇剤グリセリンモノステアレートを1重量部配合した樹脂(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、もう一方の押出機により熱融着層としてプロピレン−エチレン−ブラン共重合体(MI=10g/10分、エチレン成分2%、ブラン成分20%のコポリマー)100重量部に防曇剤グリセリンモノステアレートを0.5重量部配合した樹脂(B)を220℃の樹脂温度にて溶融押出しし、Tダイ内にて厚み比が基材層/熱融着層=2/23になるように積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し2層の未延伸シートを得た。引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.7倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は170℃、延伸部温度は155℃であった。
【0049】
さらに、テンター延伸機の後半では、熱固定を160℃にて実施した後、基材層表面(インキ密着性表層形成側)に窒素ガス雰囲気(窒素ガス濃度99.99%)で春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理(A)(ワット密度:0.27KW/m/min)を施し、次いで、熱融着層表面(上記処理面の反対面)に大気雰囲気下で春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理(B)(ワット密度:0.27KW/m/min)を施し、フィルムワインダーにより巻き取ってフィルムを得た。最終的な積層フィルム厚みは25μmであった。得られたフィルムは熱収縮率4.2%であった。
【0050】
(比較例4)
実施例2において、コロナ放電処理をフィルムの基材層(A)表面、熱融着層(B)表面とも大気雰囲気下(窒素ガス濃度79%、酸素濃度21%)で行うこと以外は実施例2と同じ条件で製膜し、ポリプロピレン系フィルムを得た。得られたフィルムは熱収縮率4.2%であった。
【0051】
(比較例5)
実施例2において、基材層を形成する樹脂、熱融着層を形成する樹脂ともに防曇剤を配合しなかった以外は実施例2と同じ条件で製膜し、ポリプロピレン系フィルムを得た。得られたフィルムは熱収縮率4.2%であった。
【0052】
(比較例6)
比較例4において、基材層を形成する樹脂、熱融着層を形成する樹脂ともに防曇剤を配合しなかった以外は比較例4と同じ条件で製膜し、ポリプロピレン系フィルムを得た。得られたフィルムは熱収縮率4.2%であった。
【0053】
実施例1、比較例1、2、3、実施例2、比較例4、5、6で得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
以上、本発明の印刷性に優れたポリプロピレン系防曇フィルムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の印刷性に優れたポリプロピレン系防曇フィルムは、本来有している優れた防曇性や透明性を損なうことなく、水性インキにより印刷したときに他のフィルム、紙等の接触物との摩擦や密着による印刷移りやインキずれ、汚染がなく、また、印刷面のラミネート性に優れ、流通時や商品陳列時に美麗な状態を保つことができ、水性インキによる印刷層とのラミネート適性を有していることから、生鮮品の包装用途に好適に用いることができるほか、例えば、含水性の物品の包装用途等の幅広い用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(A)は、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの一例の断面図、(B)は、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムの他の例の断面図、(C)は、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムに水性インキのよる印刷を行った積層フィルムの一例の断面図、(D)は、本発明のポリプロピレン系防曇フィルムに水性インキのよる印刷を行った積層フィルムの他の例の断面図。
【符号の説明】
【0058】
1 基材層
11 水性インキ密着性表層を有する基材層
2 熱融着層
21 水性インキ密着性表層を有する熱融着層
3 水性インキ印刷層
4 接着剤層
5 シーラント層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に形成されたポリオレフィン系樹脂を主体とする熱融着層とを有する2層以上の積層体からなり、該積層体を構成する層中に、防曇性を有する層と、100g/15mm以上の水性インキ印刷層とのラミネート強度を有する水性インキ密着性表層とを有してなることを特徴とするポリプロピレン系防曇フィルム。
【請求項2】
水性インキ密着性表層が、大気中の窒素濃度より高い窒素濃度雰囲気下でフィルム表面を表面活性化処理して得たものであることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系防曇フィルム。
【請求項3】
120℃、5分の熱収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリプロピレン系防曇フィルム。
【請求項4】
少なくとも基材層が防曇剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のポリプロピレン系防曇フィルム。
【請求項5】
熱融着層の厚みが0.5〜10μmであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のポリプロピレン系防曇フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載のポリプロピレン系防曇フィルムからなる生鮮品包装用ポリプロピレン系防曇フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−21472(P2006−21472A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203107(P2004−203107)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】