説明

ポリプロピレン繊維を含む染色された織物材料の製造

ポリプロピレン繊維を含む染色された織物材料の製造方法であって、初めに、ポリプロピレンを、50〜200℃の融点を有するポリエステルと、溶融物中で混合し、また未染色のポリプロピレン繊維に加工し、そしてこの未染色ポリプロピレン繊維を織物に加工し、その後この織物を水性液体中で染色し又は印刷することを特徴とする方法、及びこの方法を実施するために特に有用な未染色のポリプロピレン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン繊維を含む染色した織物材料の製造方法であって、初めに、ポリプロピレンを50〜200℃の融点を有するポリエステルと溶融物中で混合し、また未染色のポリプロピレン繊維に加工し、そしてこの未染色のポリプロピレン繊維を織物に加工し、その後、水性液体中で染色又は印刷することを特徴とする製造方法に関し、更にこの方法を実施するために特に有用な未染色のポリプロピレン繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、織物材料を製造するのに非常に有用なポリマーである。繊維への溶融押出による処理は簡便であり、繊維状態では、低費用のためだけでなく、低い比重、高い破断強度、化学物質に対する高い安定性、極性溶媒に対する低い湿潤性、低い水吸収性又は良好なリサイクル性等の数多くの優れた特性のために有名である。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレンから成る織物材料は、ポリプロピレンの無極性のために、水浴で染色することが非常に難しい。ポリオレフィンに深い色合い(shade)をつけるために、原液着色(mass coloration)として知られる方法を使用することが従来より慣習となっている。原液着色では、溶融押出及び溶融紡糸による繊維の製造の過程で、ポリプロピレン溶融物に着色性顔料又は染料を直接添加する。この方法は確かに有用な色を与えるが、設備が一定して稼動するまで、設備の起動及び色の変更に長いリードタイムを必要とし、これには対応する大量の廃棄物が関連する。従って、大きなバッチでの製造のみが経済的に意味がある。比較して、例えば流行に基づく色の要求のため、小さなバッチでは経済的又は短い期間で製造することはできない。また鮮やかな色を容易に得ることもできない。
【0004】
質の悪い押出後の染色能力は、織物分野においてポリプロピレン繊維の広範な使用に対してこれまで影響を及ぼしてきた。そのため、衣類の繊維としての使用のため、特にスポーツやレジャーの衣類の分野のため、その本質的に有利な特性にも関わらず、ポリプロピレン繊維はめったにこの目的のためには使用されない。
【0005】
そのため、適当な助剤の添加によって水性染浴でのポリプロピレンの押出後の染色能力を改善する試みが不足なく行われてきた。
【0006】
特許文献1は、これらの染色能力を改善するために、ポリオレフィン中でアミノ化されたエチレン−アクリル酸グリシジル共重合体を使用することについて開示している。この共重合体は全混合物に対して5〜13質量%の量で使用されるのが好ましい。
【0007】
特許文献2及び特許文献3は、染色可能なポリプロピレン繊維の製造であって、70〜82質量%のエチレンと30〜18質量%のアクリル酸アルキルのエチレン共重合体が助剤として使用されることを特徴とする製造について開示している。この混合物は更にポリエステルを含んでよい。
【0008】
特許文献4は、これらの染色能力を改善するために、ポリオレフィン中でポリエーテルエステルアミドを使用することについて開示している。
【0009】
特許文献5は、染色されたポリオレフィン繊維の製造方法であって、初めに、ポリプロピレンを、ポリアミド、ポリアミド共重合体及びポリエーテルアミドからなる群から選択されるポリマーと混合し、さらに2つ目のポリマー(エチレン酢酸ビニル共重合体)及び更なる添加剤と混合し、その後水性液体中で分散染料で染色することを特徴とする製造方法について開示している。
【0010】
特許文献6は、染色能力を改善するために、ポリオレフィン中で分岐したアクリル酸−ポリエーテル共重合体を使用することについて開示している。
【0011】
特許文献7は、連続ポリオレフィン相及び不連続ポリアクリレート相からなるポリオレフィン組成物について開示しており、このポリアクリレートは連続ポリオレフィン相の中にナノ粒子の状態で細かく分散している。
【0012】
特許文献8は、85〜96質量%のポリプロピレン、3〜9質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体及び2〜6質量%のポリエーテルエステルアミド共重合体からなる染色可能なポリプロピレン組成物について開示している。
【0013】
特許文献9は、ポリオレフィンと非晶質のグリコール−変性PET(PET−G)との混合物を含む分散染色可能な繊維について開示している。無水マレイン酸が好ましくは付加的な助剤として使用される。
【0014】
我々の前出願の特許文献10は、本質的にイソブテン単位から構成される少なくとも1種の無極性ブロック及び本質的にオキシアルキレン単位から構成される少なくとも1種の極性ブロックを含むブロック共重合体と混合されるポリオレフィンを利用する工程を含むポリオレフィンの染色方法について開示している。ポリエステル及び/又はポリアミドをポリオレフィンと共に含んでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US4166079
【特許文献2】US5550192
【特許文献3】US5576366
【特許文献4】US6679754
【特許文献5】US2005/0239927
【特許文献6】US2005/0239961
【特許文献7】WO2005/054309
【特許文献8】WO2006/064732
【特許文献9】WO2006/098730
【特許文献10】PCT/EP2006/062469
【特許文献11】WO1998/12242
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】“polyolefine” Ullmann’s Encyclopedia of Technical Chemistry,第六版,2000,Electronic Release
【非特許文献2】“Industrial Dyes” Klaus Hunger編,Wiley-VCH,Weinheim 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、水性染浴でポリプロピレンからなる未染色の織物材料の改善された押出後の染色方法を提供することにある。均一で、強く、縞のない染色が特に得られるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚くべきことに、我々は、この目的は、付加的な相溶化剤さえ使用せずに、容易に染色可能なポリプロピレン繊維を得るために、PETの融点以下の融点を有するポリエステルを使用することで達成されることを見出した。
【0019】
本発明は従って、ポリプロピレン繊維を含む染色された織物材料の製造方法であって、
少なくとも以下の工程、
(1)ポリプロピレンを溶融し、該ポリプロピレンを、ポリエステル及び任意の更なる
添加剤と、溶融物中で強く混合し、その次にその溶融物から紡糸することによっ
て、ポリプロピレンを実質的に含む未染色の繊維を製造する工程、
(2)得られた繊維を、ポリプロピレン繊維及び任意にポリプロピレン繊維以外の繊維
を含む未染色の織物材料に加工する工程、
(3)・少なくとも水及び染料を含む処方物で処理し、前記織物材料を、前記処理の間
及び/又は後に、ポリプロピレン繊維のガラス転移温度Tg以上で且つその融
点以下の温度に加熱すること、
・染料及び更なる成分を少なくとも含む印刷ペーストで印刷し、前記織物材料を
、印刷の間及び/又は後に、ポリプロピレン繊維のガラス転移温度Tg以上で
且つその融点以下の温度に加熱すること、
によって未染色の織物材料を染色する工程、
を含み、
前記未染色のポリプロピレン繊維が、少なくとも以下の成分を含み、
(A)繊維の全ての成分の合計量に対して80〜99質量%であって、0.1〜60g
/10minのMFRメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する
少なくとも1種のポリプロピレン、及び
(B)少なくともジカルボン酸単位(B1)及びジオール単位(B2)を含み、50〜
200℃の融点を有する1〜20質量%の少なくとも1種のポリエステル、
但し、(B1)は、少なくとも、
(B1a)5〜80mol%のテレフタル酸単位と、
(B1b)20〜95mol%の、4〜10個の炭素原子を有する脂肪酸
1,ω−ジカルボン酸から構成される単位を、
含むジカルボン酸単位(B1)であり、そして
(B1a)及び(B2a)の合計量が少なくとも80mol%であり、百分率は
それぞれ全てのジカルボン酸単位の合計量に対するものであり、
(B2)は、脂肪族、脂環式及び/又はポリエーテルジオールを含み、及び少な
くとも
(B2a)全てのジオールの合計量に対する百分率が、50〜100mo
l%である、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族1,ω−ジオールを含
むジオール単位(B2)であり、
20〜500nmの平均粒子径を有する分離した滴の状態のポリエステルが、ポリプロピレン中に分散されるように、ポリプロピレンとポリエステルとが、溶融物中で、相互に混合されること、
を特徴とする製造方法を提供する。
【0020】
本発明は更に、上述した組成の未染色のポリプロピレン繊維を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施例1のフィラメント中の断面である(4.8質量%のポリエステル(B)及び95.2質量%のポリプロピレン)。
【図2】比較例1からのフィラメント中の断面である(4.8質量%のPET及び95.2質量%のポリプロピレン)。
【図3】比較例2からのフィラメント中の断面である(4質量%のポリエステル(B)、1質量%のブロック共重合体、95質量%のポリプロピレン)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を詳細に以下に詳細に述べる。
【0023】
処理工程(1)は、実質的にポリプロピレンから成る未染色の繊維を、少なくとも成分(A)及び(B)を溶融物中で激しく混合することによって製造する工程を含む。
【0024】
ポリプロピレン(A)
繊維を製造するための適当なポリプロピレンの種類(A)は、基本的には当業者に公知である。これらは比較的高い分子量で、メルトフローレート(ISO1133で測定される)で通常は特徴付けられる粘着性生成物を含む。本発明に従えば、0.1〜60g/10minのMFRメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する少なくとも1種のポリプロピレンを使用する。
【0025】
ポリプロピレン単独重合体を使用することができる。しかし、プロピレンだけでなく、他のコモノマーを少量含むポリプロピレン共重合体を使用することも可能である。適当なコノモマーとして、特に他のオレフィン、例えばエチレン、更に1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、スチレン又はα−メチルスチレン、ジエン及び/又はポリエンが挙げられる。ポリプロピレン中のコモノマーの割合は通常、20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。コモノマーは、繊維にとって望ましい特性に従って、当業者によって種類及び量が選択される。ポリプロピレンの複数の異なる類型の混合物を同様に使用することができることが理解されるであろう。このポリプロピレンは、1〜50g/10min、より好ましくは10〜45g/10min、例えば30〜40g/10minのMFRメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0026】
ポリプロピレンの量は、繊維全体の全ての成分の合計量に対して、80〜99質量%、好ましくは85〜99質量%、より好ましくは90〜98質量%、例えば93〜97質量%である。
【0027】
ポリエステル(B)
未染色の繊維は更に、少なくとも1種のポリエステル(B)を1〜20質量%含む。このポリエステルは50〜200℃の融点を有するポリエステルを含む。PETと比較して、このようなポリエステルは付加的なソフトセグメントを有する。
【0028】
繊維の製造のために本発明に従って使用されるポリエステル(B)は、少なくともジカルボン酸単位(B1)及びジオール単位(B2)を含む。これらは付加的に更なる成分(例えば鎖延長剤等)を含んでよい。
【0029】
ポリエステル(B1)は少なくとも2つの異なるジカルボン酸単位(B1)を有する。これらは少なくとも5〜80mol%のテレフタル酸単位(B1a)と、20〜95mol%の4〜10個の炭素原子を有する脂肪族1,ω−ジカルボン酸(B1b)からの単位を含む。(B1a)及び(B2a)の全量は、少なくとも80mol%であり、それぞれの百分率は、ポリエステル中の全てのジカルボン酸単位の全量に対する。
【0030】
脂肪族1,ω−ジカルボン酸単位(B1b)は、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸又はセバシン酸を含んでよい。アジピン酸が好ましい。
【0031】
ジカルボン酸単位(B1a)及び(B1b)以外のジカルボン酸単位は、ジカルボン酸単位(B1a)及び(B1b)と共に存在することができる。他の芳香族ジカルボン酸単位及び/又は脂環式ジカルボン酸単位を、一例として挙げてよい。様々なジカルボン酸単位の混合物を同様に使用することができることが理解されるであろう。
【0032】
好ましくは、テレフタル酸単位(B1a)の量は、20〜70mol%であり、(B1b)の量は30〜80mol%である。好ましくは、(B1a)及び(B1b)の合計量は、少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも98mol%、最も好ましくは100mol%である。
【0033】
ジオール単位(B2)は、脂肪族、脂環式及び/又はポリエステルジオールの群から選択され、少なくとも50〜100mol%の脂肪族1,ω−ジオール(B2a)が存在する。百分率は全てのジオールの合計量に対する。
【0034】
4〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジオール(B2a)として、例えば1,4−ブタンジオール、1,5−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。(B2a)は好ましくは1,4−ブタンジオールを含む。
【0035】
ポリエステルジオールの例として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールが挙げられる。脂環式ジオールの例として、シクロペンタンジオール又はシクロヘキサンジオールが挙げられる。(B2a)の定義に合致しない脂肪族ジオールを同様に使用することができることが理解されるであろう。例えば、特にエチレングリコール又はプロピレングリコールが挙げられる。
【0036】
ポリエステルは更に、その性質を微調整するために別の成分を含んでもよいと理解されるであろう。例えば、更なる官能基を有する構成単位が挙げられる。アミノ基は特にここで挙げられる。鎖延長のための構成ブロック成分が更に挙げられなければならない。
【0037】
本発明は50〜200℃の融点を有するポリエステル(B)を使用することで具現化されることが本発明の特徴である。融点は好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜160℃、最も好ましくは100〜150℃、例えば110〜130℃である。
【0038】
ガラス転位温度は、好ましくは20〜35℃、好ましくは25〜30℃であるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0039】
数平均分子量Mnは、通常は5000〜50000g/mol、好ましくは10000〜30000g/molであるべきである。20000〜25000g/molは特に有用であることが分かるであろう。Mw/Mn比は、好ましくは3〜6、例えば4〜5である。2〜6g/10minのMFRメルトフローレート(ISO1133、190℃、2.16kg)を有することが、ポリエステル(B)にとって更に有利であり得る。好ましい質量密度は1.2〜1.35g/cm3、より好ましくは1.22〜1.30g/cm3である。好ましいビカット軟化温度は、75〜85℃、より好ましくは78〜82℃である(VST A/50、ISO306)。
【0040】
ポリエステル(B)の製造、通常の反応条件及び触媒は、基本的には当業者に知られている。ポリエステルを合成するためのジカルボン酸単位は、原則として、遊離酸として又は通常の誘導体の状態で、例えばエステルの状態で、公知のように使用することができる。典型的なエステル化触媒を使用することができる。この反応の1つの有利な類型には、適当な鎖延長剤を用いて、例えばジイソシアネートを用いて、共に結合することができる予め合成したポリエステルジオール単位が含まれる。これにより、異なるポリエステルジオールを使用する場合にはブロック共重合体を合成することが可能となる。構成ブロック成分の及び/又は反応条件の選択を介して、当業者は容易にポリエステルの特性を、必要とされる一定の値に合わせることができる。適当なポリエステル(B)はまた市販されている。
【0041】
複数の異なるポリエステルの混合物を同様に使用することができることが理解されるであろう。
【0042】
本発明に従えば、未染色の繊維は、少なくとも1種のポリエステル(B)を、未染色の繊維の全ての成分の合計量に対して、1〜20質量%含む。ポリエステル(B)の量は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%、例えば3〜7質量%である。
【0043】
更なる成分
未染色の繊維は、成分(A)及び(B)だけでなく、成分(A)及び(B)以外の少量のポリマー(C)を任意に更に含んでよい。このような更なるポリマー(C)の添加は、繊維の特性を微調整するために使用することができる。これらは例えば、モノマーとしてエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、スチレン又はα−メチルスチレンを含む単独重合体又は共重合体である。好ましくはこれらには、主な構成成分としてC2〜C4オレフィンを含むポリオレフィンが含まれる。特にここで挙げられるものは、成分(A)の定義に一致しないポリエチレン又はポリエチレン共重合体あるいはポリプロピレン又はポリプロピレン共重合体である。更なるポリマー(C)として、酸素及び/又は窒素原子を含むポリマーを更に挙げてよい。当業者は、繊維に望まれる特性に従って適切な選択をすることができる。更なるポリマー(C)は含まないことが好ましい。
【0044】
未染色の繊維は、更なる典型的な添加剤及び助剤(D)を任意に更に含んでよい。(D)の例として、帯電防止剤、安定剤、UV吸収剤、遊離基捕捉剤又は酸化防止剤あるいは少量の充填剤が挙げられる。このような添加剤は当業者に知られている。詳細は非特許文献1に記載されている。
【0045】
本発明の特に好ましい実施の形態では、本質的にイソブテンから構成される少なくとも1種の無極性ブロックと、酸素及び/又は窒素原子を含む少なくとも1種の極性ブロックからなるブロック共重合体は、成分(C)及び/又は(D)としての使用からは除外されるものとする。
【0046】
更なるポリマー(D)及び/又は添加剤及び助剤(E)の量は、存在するならば、繊維の全ての成分の量に対して19質量%以下であり、通常は、15質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%を、超えるべきでない。
【0047】
処理工程(1)
処理工程(1)は、成分(A)及び(B)、また任意に更なるポリマー(C)及び/又は添加剤及び助剤(D)を、適切な装置を用いて、初めは溶融するまで加熱することによって互いに激しく混合する工程を含む。例えば、ニーダー、1軸押出機、2軸押出機又は他の混合若しくは分散装置を使用することができる。本発明の好ましい実施の形態では2軸押出機を使用する。
【0048】
ポリプロピレン(A)及びポリエステル(B)を、適当な計量装置を用いて、ペレットとして混合装置に計量導入するのが好ましい。前もって混合したペレットを使用することもできることは理解されるであろう。
【0049】
混合は、ポリエステル(B)が20〜500nmの平均粒子径を有する分離した滴(droplet)の状態で、ポリプロピレン(A)中に分散されることで達成される。80〜400nmの滴の大きさが好ましい。この大きさは繊維の横断面、すなわち繊維の縦軸に対して垂直な面を用いた測定に基づく。染色又は印刷の過程において、染料は滴によって優先的に取り込まれる。
【0050】
滴は好ましくは円形であるべきであり、小さい粒子径分布を有するべきである。ポリエステル/ポリプロピレン界面領域は、不規則な滴の形に起因して、与えられた粒子径にとって大きすぎてはならない。5dtex/filament未満の繊維の場合は、より良好な紡糸をするために小さな滴が望ましい。90〜170nmの中間ぐらいの値が、紡糸性能に関しては特に有用であろう。
【0051】
当業者は、混合の強さを介して、また、混合装置における粘性条件を介して、ポリエステル(B)の滴の大きさを変えることができる。
【0052】
混合温度は、当業者によって選択され、成分(A)及び(B)の種類に依存する。ポリプロピレン及び更なる成分は、混合を可能にするために十分に軟化すべきである。一方、これらは過度に液体状にすべきでない。さもなければ、せん断エネルギーの十分なインプットがもはや可能でなくなり、さらに熱分解が生じ得る。概して、混合は160〜230℃、好ましくは160〜190℃の製造温度で行われるが、本発明はこれに限定されるべきではない。使用される混合装置の加熱ジャケットの温度は、基本的に当業者が知っているように、通常はやや高めである。
【0053】
混合の後、溶融物は非染色の繊維を形成するために紡糸される。繊維を紡糸するために、溶融物は、主に公知の方法で、1又は好ましくはそれ以上のダイ、例えばブレーカープレートを介してプレスされ、対応するフィラメントを形成する。220〜260℃のダイの温度は、本発明に従って使用される混合物を紡糸するために有用であることが分かるであろう。繊維又はフィラメントは通常、25μm未満の直径を有すべきである。この直径は好ましくは10〜15μmであるが、本発明はこれに限定されない。概して、紡績糸は複数のフィラメントからなる。例えば、紡績糸全体の線密度が30〜4000dtex(dtex=g/10kmの繊維)の場合、10〜200フィラメントである。証明済みのフィラメントの線密度は、衣料産業の場合はフィラメント当たり1〜8dtexであり、カーペット産業の場合は10〜50dtex/フィラメントである。
【0054】
本発明に従って使用される高分子材料及び他の物質(例えばPET)を、適切な配置のダイプレートを通して溶融紡糸することによって、定義された幾何学的配置において複数のポリマーからフィラメントを製造することも可能である。
【0055】
この方法の好ましい実施の形態には、初めに、成分(A)及び(B)更に任意の(C)及び/又は(D)の濃縮物を製造することが含まれる。上述した混合技術及び条件を使用することができる。ポリプロピレン(A)及びポリエステル(B)の体積の比率は、1よりも大きくなるように選択されることが有用である。約0.9g/cm3のポリプロピレン及び約1.2〜1.3g/cm3のポリエステル、少なくとも約45質量%、好ましくは約50質量%のポリプロピレン(A)が使用されるべきである。
【0056】
本発明の一実施の形態には、濃縮物を製造するためのコロタトリー(corotatory)2軸押出機を使用することが含まれる。2つのポリマー(A)及び(B)は、好ましくは最初に押出機に溶融される。添加の位置の下流においてこのスクリューは、混合及びせん断部品からなる複数の均質化域を有する。このスクリューの構造は、特にそれぞれの成分の徹底的な均質化を促し、所望の滴(droplet)の大きさを得ることが容易になる。バレル温度は、160〜230℃、好ましくは160〜190℃が有用であり、ダイへ向かってやや低下することが好ましい。(A)及び(B)の均質化された溶融物は、ダイプレートを通して押出することができ、水浴中で冷却され、次にペレット化される(ストランドペレット化)。しかし、ダイプレートで直接的に水面下でのペレット化によって溶融物をペレットに切断することも可能である。必要であれば、このペレットは次に乾燥される。
【0057】
次にこの濃縮物を、第二工程で、上述したように、更なるポリプロピレン及び任意の更なる成分(C)及び/又は(D)と共に溶融して非染色の糸(thread)に加工する。溶融して紡糸するための慣用の装置を使用することができる。紡糸処理において、濃縮物中で前もって形成した滴は重大には変化せず、主にポリプロピレンの追加的な添加によって薄められる。
【0058】
濃縮物は、成分を最適に混合し且つ滴の大きさを調整することに特に適合する装置を使用して製造することができ、一方、糸は慣用の溶融紡糸装置を使用して製造することができることが、この2工程が有する利点である。
【0059】
濃縮物の製造及び糸の製造は、同じ設備で別々にだけでなく直列的に行うことができ、あるいは異なる設備で行うこともできる。例えば、濃縮物を原料供給機によって製造し販売することができ、一方、更なる処理は織物材料の製造機の設備で行われる。
【0060】
処理工程(2)
非染色の繊維を、処理工程(2)で、処理工程(1)に従って製造されたポリプロピレン繊維及びそれとは異なる任意の繊維を含む非染色の織物材料に加工する。
【0061】
「織物材料」という言葉は、織物の製造鎖(production chain)全体における全ての材料を含むものとする。この用語には、製品に仕上がったあらゆる織物、例えば、あらゆる種類の衣類、絨毯、カーテン、毛布又は家具等の家用の織物、又は家の中の商業及び産業目的又は用途のための技術的織物、例えば掃除のための布や雑巾又は傘の布が含まれる。この用語には出発物質が更に含まれる。すなわち、フィラメントやステープル繊維等の織物の使用のための繊維、及び紡績糸、織布、編物、繊維状不織布ウェブ又は不織布等の半製品又は中間製品が更に含まれる。織物材料の製造方法は、基本的には当業者に知られている。
【0062】
織物材料は、本発明に従って使用されるポリプロピレン組成物のみから製造することができる。しかし、他の材料、例えばポリエステル若しくはポリアミド材料又は天然繊維と組み合わせて使用することもできることは理解されるであろう。組み合わせはいろいろな製造段階で行うことができる。例えば、定義された幾何学的配置における複数のポリマーからなるフィラメントを溶融紡糸工程で製造することができる。紡績糸製造工程では、他のポリマーからなる繊維を組み込むことができ、又は繊維の混合物(blend)をステープル繊維から製造することもできる。異なる紡績糸を一緒に加工することもまた可能であり、そして最終的には、本発明のポリプロピレン組成物を含む織布、編物又はその類似物を、化学的に異なる織布と結合することもまた可能である。
【0063】
本発明に従う好ましい織物材料には、特にスポーツ及びレジャーの衣類、シャワーカーテン、傘の布、絨毯又は繊維状不織布ウェブのための織物が含まれる。
【0064】
処理工程(3)
処理工程(3)は、少なくとも水と染料を含む処方物で処理することによって未染色の材料を染色する工程を含む。織物材料を染色するための水性処方物は当業者に「リカー(liquor)」とも呼ばれている。
【0065】
好ましくは、この処方物は水のみを含む。しかし少量の水混和性有機溶媒を同様に含んでもよい。このような有機溶媒の例は、一価又は多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセロールである。エーテルアルコールが更に可能である。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)エチレン又は(ポリ)プロピレングリコールのモノアルキルエーテルである。しかしながら、水以外のこのような溶媒の量は通常、処方物又はリカー中の全ての溶媒の合計量に対して、20質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%を超えるべきでない。
【0066】
この処方物は、原則として、両極性がポリエステルの滴中に溶解するのに十分である公知の染料を利用してよい。例として、カチオン染料、アニオン染料、媒染染料、直接染料(direct dyes)、分散染料、イングレイン染料、バット染料、金属化染料、反応染料、硫化染料、酸性染料又は直接染料(substantive dyes)が挙げられる。
【0067】
本発明は、分散染料、様々な分散染料の混合物又は酸性染料又は様々な酸性染料の混合物を利用するのが好ましい。
【0068】
当業者は、「分散染料」の意味を知っている。分散染料は、水に対する溶解性が低い染料であり、染色のため、特に繊維及び織物材料の染色のために、分散、コロイド状態で使用される。
【0069】
本発明は原則として、所望の分散染料を利用してよい。利用される分散染料は様々な発色団又はその混合体を有してよい。より特にアゾ染料又はアントラキノン染料がよい。これらは更に、キノフタロン、ナフタルイミド、ナフトキノン又はニトロ染料であってよい。分散染料の例として、C.I.ディスパーズイエロー3、C.I.ディスパーズイエロー5、C.I.ディスパーズイエロー64、C.I.ディスパーズイエロー160、C.I.ディスパーズイエロー211、C.I.ディスパーズイエロー241、C.I.ディスパーズオレンジ29、C.I.ディスパーズオレンジ44、C.I.ディスパーズオレンジ56、C.I.ディスパーズレッド60、C.I.ディスパーズレッド72、C.I.ディスパーズレッド82、C.I.ディスパーズレッド388、C.I.ディスパーズブルー79、C.I.ディスパーズブルー165、C.I.ディスパーズブルー366、C.I.ディスパーズブルー148、C.I.ディスパーズバイオレット28、C.I.ディスパーズグリーン9が挙げられる。当業者は、染料の学名の全てについて知っている。完全な化学式は、関連参考書及び/又はデータベース(例えばthe Colour Index)で調べることができる。分散染料及び別の例に関する更なる詳細は、例えば非特許文献2の134〜158頁で多く検討されている。
【0070】
様々な分散染料の混合物は同様に使用することができることは理解されるであろう。この方法で混合色(combination shades)が得られる。良好な堅牢度を有し、三原色染色可能な分散染料を使用することが好ましい。
【0071】
当業者は「酸性染色」という用語についてよく知っている。酸性染料は、1以上の酸性基を有する。例えば、スルホン酸基又はその塩である。これらは様々な発色団又は発色団の混合体を含んでよい。より特にアゾ染料がよい。酸性染料の例として、C.l.アシッドイエロー17、C.l.アシッドブルー92、C.l.アシッドレッド88、C.l.アシッドレッド14又はC.l.アシッドオレンジ67等のモノアゾ染料、C.l.アシッドイエロー42、C.l.アシッドブルー113又はC.l.アシッドブラック1等のジスアゾ染料、C.l.アシッドブラック210、C.l.アシッドブラック234等のトリスアゾ染料、C.l.アシッドイエロー99、C.l.アシッドイエロー151、C.l.アシッドブルー193等の金属化染料、C.l.モーダントブルー13又はC.l.モーダントレッド19等の媒染染料、あるいはC.l.アシッドオレンジ3、C.l.アシッドブルー25又はC.l.アシッドブラウン349等の様々な別の構造を有する酸性染料が挙げられる。酸性染料及び別の例に関する更なる詳細は、例えば非特許文献2の276〜295頁で多く検討されている。様々な酸性染料の混合物を同様に使用することができることを理解されるであろう。
【0072】
処方物中における染料の量は、意図した用途に従って当業者によって決定されるべきである。
【0073】
処方物は、溶媒及び染料と同様に、更なる助剤成分を含んでよい。例えば、分散剤及びレベリング剤、酸、塩基、緩衝剤系、界面活性剤、錯化剤、消泡剤、UV分解に対する安定剤などの典型的な織物助剤が挙げられる。助剤としてUV吸収剤を使用することが好ましい。
【0074】
染色は、好ましくは、中性又は酸性処方物(例えばpHが2〜7、好ましくは4〜6)を使用して行われる。
【0075】
水性染料処方物を用いて織物原料を処理することは、慣用の染色方法、例えば適当な装置を用いた処方物中へのディッピング、処方物を用いたスプレー、又は処方物のコーティングによって行うことができる。処理は連続式処理でもバッチ式処理でもよい。染色装置は当業者に知られている。染色は、例えば、リールベック、紡績糸染色装置、ビーム染色装置又は噴射を使用したバッチ式、あるいは適当な乾燥及び/又は固定手段を用いたスロップパディング(slop padding)、フェイスパディング(face padding)、噴射又はフォームコーティング処理による連続式で、行われてよい。
【0076】
染料処方物と織物材料との質量比(「液比(liquor ratio)」としても知られる)、及び特に染料と織物材料との質量比は、意図した用途に従って当業者により決定される。一般的な場合は、染料処方物/織物原料は、5:1〜50:1、好ましくは10:1〜50:1であり、処方物中の染料の量は、織物材料に対して0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%であるが、本発明はこの範囲に限定されないものとする。
【0077】
本発明に従えば、織物材料を、染料処方物で処理する間及び/又は処理した後に、ポリプロピレン繊維のガラス転移温度Tg以上でその融点以下である温度に加熱する。この処理は、処方物全体を前記温度に加熱し、織物材料を処方物に浸漬することによって行うのが好ましい。ポリプロピレン繊維のガラス転移温度Tgは、使用される高分子組成物の種類に依存し、当業者に知られている方法によって測定することができる。
【0078】
しかしながら、Tg以下の温度で、適切な場合には乾燥させて、織物材料を処方物で処理することも可能であり、また次いで、織物材料をTg以上の温度に加熱することも可能である。この二つの可能性の組み合わせが同様に可能であることが理解できるであろう。
【0079】
処理中の温度は当然ながら、使用されるポリプロピレン組成物の種類及び使用される染料の種類に依存する。90〜145℃、好ましくは95〜130℃の温度が有利であろう。
【0080】
処理の持続時間は、高分子組成物の種類、処方物の種類、及び染色条件の種類に従って当業者によって決定される。処理時間の機能として温度を変更することも可能である。例えば、比較的低い初期温度(例えば70〜100℃)を120〜140℃に徐々に上げてもよい。10〜90分、好ましくは20〜60分の加熱段階、及びその次の10〜90分、好ましくは20〜60分の高温段階についての実用性が証明されている。
【0081】
本発明の一実施の形態は、蒸気で処理する過程を含む。これは、蒸気又は過熱蒸気で、例えば約0.5〜5分の持続時間の短時間処理の形をとることが好ましい。
【0082】
熱処理の過程において、染色された織物材料を形成するために、染料が織物材料の繊維に染み込む。繊維の中では、染料がポリエステル(B)から成る滴の中に実質的に取り込まれる。ポリプロピレン(A)は、実質的に未染色のままである。ポリプロピレン相中の細かい滴の状態のポリエステルの均一な分布のおかげで、繊維は均一に及び徹底的に着色される。
【0083】
染色に続いて慣用の後処理を行ってよい。例えば洗濯洗剤又は酸化性若しくは還元性作用後処理剤又は堅牢改良剤である。このような後処理は基本的に当業者に知られている。
【0084】
色の強度、明るさ及び堅牢は、特に蒸気で処理することによって高めることができる。このような蒸気での処理は、レベリング剤で更なる後処理をする必要がないか、あるいは少なくとも使用するレベリング剤の量を顕著に減少させることができるという有利な点を有する。
【0085】
本発明の別の実施の形態では、未染色の織物材料を印刷することもできる。印刷に有用であるために、織物材料は当然に十分な面積を有さなければならない。例えば、繊維状不織布ウェブ、織布、編物又はフィルムを印刷することができる。織布が印刷に好ましく使用される。
【0086】
織物基材に印刷する方法は、基本的に当業者に知られている。例えばスクリーン印刷又はインクジェット印刷を使用することができる。
【0087】
本発明の好ましい一実施の形態では、印刷はスクリーン印刷技術によって行う。少なくともバインダー、染料及び増粘剤、また任意に更なる添加剤(例えば、湿潤剤、レオロジー助剤又はUV安定剤等)を通常含む織物印刷ペーストを、基本的に公知の方法で、このために使用してもよい。上述した染料を着色剤として使用することができる。分散染料又は酸性染料が好ましく、分散染料が特に好ましい。織物を印刷するための印刷ペースト及びその慣用の成分は当業者に知られている。
【0088】
印刷処理は、直接印刷方法、すなわち印刷ペーストが直接的に基材に移動する方法として行うことができる。
【0089】
当業者は、他の方法、例えばインクジェット技術を使用する直接印刷を用いて、印刷を行うこともできる。
【0090】
本発明に従えば、熱後処理は印刷の場合も同様に行われる。最後に、本発明で使用される織物材料からなる基材を、印刷の間及び/又は好ましくは後に、ポリプロピレン繊維のガラス転移温度Tg以上でポリプロピレン繊維の融点以下である温度に加熱する。
【0091】
印刷された基材は最初に、例えば50〜90℃で30秒〜5分の間、好ましくは乾燥してよい。次に熱処理を上述した温度で行うのが好ましい。適当であると理解される時間は、慣用の装置、例えば大気圧乾燥機、テンター又は真空乾燥機において、30秒〜5分間である。
【0092】
印刷に続いて、上述した慣用の後処理を行ってよい。例えば織物の手触りを改善するため、又は摩耗に対する保護のために、織物を更にその後、公知の方法でコーティングしてよい。
【0093】
染色及び印刷は、互いに組み合わせることができる。例えば最初に一定の色に織物材料を染色し、次に配色、ロゴやそのようなものを印刷する。
【0094】
本発明の染色及び/又は印刷する方法は、既に述べた成分だけでなく、特に分散染料又は酸性染料、より好ましくは分散染料を更に含む染色された織物材料を提供する。染料の量は、組成物の全ての成分の量に対して、0.5〜10質量%、好ましくは1〜6質量%であることが好ましい。
【0095】
ポリエステル(B)を組み込み剤として使用することは、非常に徹底的で、均一な染色を提供する。この染色は非常に良好な摩擦堅牢及び非常に良好な洗浄堅牢を有する。
【0096】
実施例を用いて本発明を説明する。
【0097】
使用するポリエステル(B)
この実験は、テレフタル酸単位(全てのジカルボン酸単位の量に対して約40mol%)、アジピン酸単位(全てのジカルボン酸単位の量に対して約60mol%)、更に特許文献11の実施例1において記述されている手順によって生成された1,4−ブタンジオール単位を含むポリエステルを使用して行った。このポリエステルの融点は110〜120℃であった。
【0098】
PIBSA1000及びポリエチレンングリコール6000からのABA構造のブロック共重合体の生成
PIBSA1000(加水分解価(hydrolysis number)HN=86mg/gKOH)とPluriol(登録商標)E6000(ポリエチレンオキシド、Mn≒6000)との反応。
【0099】
内部温度計、還流冷却機及び窒素導入孔を備えた4lの三口フラスコに、783gのPIBSA(Mn=1305;DP=1.5)及び1800gのPluriol(登録商標)E6000(Mn≒6000、DP=1.1)を入れた。80℃に加熱しながら、フラスコを3回真空吸引し窒素置換を行った。この混合物を次いで130℃に加熱し、この温度で3時間維持した。その後、生成物を室温にまで冷却した。
【0100】
本発明実施例1
工程2:ポリプロピレン及びポリエステルからの濃縮物の生成
濃縮物を、40mmのスクリュー直径(ZSK40)及び長さと直径の比(L/D)が33であるコロタトリー(corotatory)2軸押出機を使用して生成した。
【0101】
初めに、52質量%のポリプロピレン(Moplen HP 561S、MFRメルトフローレート(230℃、2.16kg))及び48質量%の上述したポリエステル(B)の濃縮物を生成した。
【0102】
ポリプロピレン及びポリエステルを2つの計量器を介してペレットとして押出機の入口に計量導入した。2つのポリマーを押出機内で150rpmの速度及び50kg/hの合計処理量で溶融した。バレルの温度は、入口の下流では180℃であり、ダイの方へ向かって150℃に低下した。ポリマーの添加の位置の下流で、スクリューは、混合及びせん断部品からなる複数の均質化ゾーンを有する。このスクリュー構造は、特にそれぞれの成分の徹底的な均質化を促進する。均質化した溶融物を次に、ダイプレートを通して押し出し、ダイプレートでの直接的な水中ペレット化によって約5mmの大きさのペレットに切断した。
【0103】
工程2:繊維への溶融紡糸
溶融紡糸を慣用の溶融紡糸装置を使用して行った。この装置は、使用する材料を最初に押出機内で溶融し、次にダイプレートを通して押出する。
【0104】
10質量%の第一工程で得られた材料と、90質量%の更なるポリプロピレン(Moplen HP 561S、MFRメルトフローレート(230℃、2.16kg))との混合物を使用した。スクリューのための加熱温度は約260℃であった。ダイプレート温度は約230℃であった。約3dtex/filament(dtex=g/10kmの繊維)の24フィラメントを紡糸し、78dtexの繊維に加工した。
【0105】
得られた繊維は、4.8質量%のポリエステル(B)及び95.2質量%のポリプロピレンから成るものであった。図1は、フィラメント中の横断面を示している。ポリプロピレンは、繊維の中で、約80〜200nmの大きさの細かい滴の状態で分散している。
【0106】
比較例1
本発明実施例1を、約260℃の融点を有する市販のポリエチレンテレフタレート(PET)を本発明に従い使用されるポリエステルの代わりに使用することを除いて、繰り返した。
【0107】
濃縮物の製造の過程において、PETもまたポリプロピレン相の中で分散するが、PET滴の大きさは、μmの範囲内のままであった。それ故濃縮物を、線密度が20dtex/filament未満の細いフィラメントに紡糸することはできなかった。比較的太いフィラメントのみが得られた。200dtex12フィラメント繊維を製造した。
【0108】
図2は、得られたフィラメント中の横断面を示している。PETは滴の状態で分散するが、PET滴の大きさは1〜4μmであった。
【0109】
比較例2
本発明実施例1を、50質量%のポリプロピレン、40質量%の上述したポリエステル、及び10質量%のPIBSA1000とポリプロピレングリコール6000からのABA構造の更なるブロック共重合体の濃縮物を除いて、繰り返した。この更なるポリマーが相溶化剤として作用することを意図した。
【0110】
5質量%のPET及び95質量%のポリプロピレン更に1質量%のブロック共重合体からなる繊維が得られた。図1は、フィラメント中の横断面を示している。ポリプロピレンは繊維の中で、約80〜200の大きさの細かい滴の状態で分散している。ポリエステル(B)とポリプロピレンの間の境界は、本発明実施例1の場合よりもより強力に染み込んでいる。
【0111】
織物布の製造
本発明実施例1及び比較例2のポリプロピレン繊維を染色試験のために使用される織物布に編んだ。
【0112】
分散染料を用いた染色
染色は上述したように製造した編物を加熱することによって行い、これは、脱塩水中で、使用する未染色の織物材料に対して2質量%の市販の染料(Dianix Rubine,SEB;Dianix Black AMB;Dianix Yellow SLG;Teratop Blue GLF)の存在下に、pH4.5で、AHIBA染色機械内で、初めは90〜130℃で、40分以上、1℃/minの加熱速度で行い、130℃で更に60分間放置した。この液比(liquor ratio)、すなわち、処理浴の容積(リットル)と乾燥ポリプロピレン含有編物の質量(キログラム)の比は、50:1であった。染色後、染色物を約90℃に冷却し、取出し、完全にすすいで、100℃で乾燥した。リカー比=1:50。
【0113】
この染色処理により実施例1におけるポリエステル相の強力な着色を実現した。一方、ポリプロピレン相は、染料を少しも取り込まなかった。それにもかかわらず、織物材料は均一に着色/染色されたように見える。比較例2では、わずかに着色したポリエステルの周りの領域が存在した。全体の色の印象は実施例1の場合と同じであった。
【0114】
この織物材料の洗浄堅牢及び光堅牢を5段階で評価した、比較例2の場合よりも実施例1の場合の方が、評価ポイントが1/2の差でそれぞれ良好であった。従って、付加的な分散助剤の使用は、本発明のポリエステル(B)を使用する場合には必要ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン繊維を含む染色された織物材料の製造方法であって、
少なくとも以下の工程、
(1)ポリプロピレンを溶融し、該ポリプロピレンを、ポリエステル及び任意の更なる
添加剤と、溶融物中で強く混合し、その次にその溶融物から紡糸することによっ
て、ポリプロピレンを実質的に含む未染色の繊維を製造する工程、
(2)得られた繊維を、ポリプロピレン繊維及び任意にポリプロピレン繊維以外の繊維
を含む未染色の織物材料に加工する工程、
(3)・少なくとも水及び染料を含む処方物で処理し、前記織物材料を、前記処理の間
及び/又は後に、ポリプロピレン繊維のガラス転移温度Tg以上で且つその融
点以下の温度に加熱すること、
・染料及び更なる成分を少なくとも含む印刷ペーストで印刷し、前記織物材料を
、印刷の間及び/又は後に、ポリプロピレン繊維のガラス転移温度Tg以上で
且つその融点以下の温度に加熱すること、
によって未染色の織物材料を染色する工程、
を含み、
前記未染色のポリプロピレン繊維が、少なくとも以下の成分を含み、
(A)繊維の全ての成分の合計量に対して80〜99質量%であって、0.1〜60g
/10minのMFRメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する
少なくとも1種のポリプロピレン、及び
(B)少なくともジカルボン酸単位(B1)及びジオール単位(B2)を含み、50〜
200℃の融点を有する1〜20質量%の少なくとも1種のポリエステル、
但し、(B1)は、少なくとも、
(B1a)5〜80mol%のテレフタル酸単位と、
(B1b)20〜95mol%の、4〜10個の炭素原子を有する脂肪酸
1,ω−ジカルボン酸から構成される単位を、
含むジカルボン酸単位(B1)であり、そして
(B1a)及び(B2a)の合計量が少なくとも80mol%であり、百分率は
それぞれ全てのジカルボン酸単位の合計量に対するものであり、
(B2)は、脂肪族、脂環式及び/又はポリエーテルジオールを含み、及び少な
くとも
(B2a)全てのジオールの合計量に対する百分率が、50〜100mo
l%である、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族1,ω−ジオールを含
むジオール単位(B2)であり、
20〜500nmの平均粒子径を有する分離した滴の状態のポリエステルが、ポリプロピレン中に分散されるように、ポリプロピレンとポリエステルとが、溶融物中で、相互に混合されること、
を特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記平均粒子径が、80〜400nmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族1,ω−ジカルボン酸単位(B1b)が、アジピン酸単位を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪族1,ω−ジオール(B2a)が、1、4−ブタンジオールを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
(B1a)の量が20〜70mol%であり、(B1b)の量が30〜80mol%であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエステル(B)が、(B1)及び(B2)だけでなく、鎖延長剤単位含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエステル(B)が、10000〜30000g/molの数平均分子量Mnを有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリエステルの融点が、80〜160℃であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリプロピレン繊維が、(A)及び(B)以外に、19質量%以上の更なるポリマー(C)及び/又は添加剤及び助剤(D)を更に含むことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記染料が、分散染料を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
第一工程で、前記成分(A)と(B)及び任意の更なる成分(C)及び/又は(D)の濃縮物を、全ての成分の合計量に対して40〜60質量%のポリプロピレンの量で、溶融物中で混合することにより生成し、
第二工程で、前記濃縮物を、溶融物中で更なるポリプロピレン(A)と共に、未染色の繊維に加工する、
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも以下の成分、
(A)繊維の全ての成分の合計量に対して80〜99質量%であって、0.1〜60g/
10minのMFRメルトフローレート(230℃、2.16kg)を有する少な
くとも1種のポリプロピレン、及び
(B)少なくともジカルボン酸単位(B1)及びジオール単位(B2)を含み、50〜2
00℃の融点を有する1〜20質量%の少なくとも1種のポリエステル、
但し、(B1)が、少なくとも、
(B1a)5〜80mol%のテレフタル酸単位と、
(B1b)20〜95mol%の4〜10個の炭素原子を有する脂肪酸1
,ω−ジカルボン酸から構成される単位を、
含むジカルボン酸単位(B1)であり、そして
(B1a)及び(B2a)の合計量が少なくとも80mol%であり、百分率はそ
れぞれ全てのジカルボン酸単位の合計量に対するものであり、
(B2)が、脂肪族、脂環式及び/又はポリエーテルジオールを含み、少なくとも
(B2a)全てのジカルボン酸単位の合計量に対する百分率が、50〜1
00mol%である、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族1
,ω−ジオール、
が存在するジオール単位(B2)である、
を含み、
前記ポリエステルは、平均粒子径が20〜500nmの分離した滴の状態で、ポリプロピレン中に分散している未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項13】
前記平均粒子径が、80〜400nmであることを特徴とする請求項12に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項14】
前記脂肪族1,ω−ジカルボン酸単位(B1b)が、アジピン酸単位を含むことを特徴とする請求項12又は13に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項15】
前記脂肪族1,ω−ジオール(B2a)が、1,4−ブタンジオールを含むことを特徴とする請求項12〜14の何れか1項に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項16】
(B1a)の量が20〜70mol%であり、(B1b)の量が30〜80mol%であることを特徴とする請求項12〜15の何れか1項に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項17】
前記ポリエステル(B)が、(B1)及び(B2)のみならず、鎖延長剤単位も含むことを特徴とする請求項12〜16の何れか1項に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項18】
前記ポリエステル(B)が、10000〜30000g/molの数平均分子量Mnを有することを特徴とする請求項12〜16の何れか1項に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項19】
前記ポリエステルの融点が、80〜160℃であることを特徴とする請求項13〜18の何れか1項に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項20】
前記ポリプロピレン繊維が、(A)及び(B)以外に、19質量%以上の更なるポリマー(C)及び/又は添加剤及び助剤(D)を含むことを特徴とする請求項12〜18の何れか1項に記載の未染色のポリプロピレン繊維。
【請求項21】
請求項12〜20の何れか1項に記載の未染色のポリプロピレン繊維を含む未染色の織物材料を染色及び/又は印刷することによって得られる染色した織物材料であって、前記染料が実質的にポリプロピレン相の中に存在することを特徴とする染色した織物材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−511107(P2010−511107A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538721(P2009−538721)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063058
【国際公開番号】WO2008/065185
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】