説明

ポリペプチド、抗体可変ドメインおよびアンタゴニスト

本発明は、免疫グロブリン単一可変ドメイン(dAb)、例えばプロテアーゼ耐性であるdAbに、さらにまた眼送達のためのこのようなdAbを含む製剤および組成物に、ならびに眼の疾患および症状を治療するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリン単一可変ドメイン(dAb)、例えばプロテアーゼ耐性であるdAbに、さらにまた眼送達のためのこのようなdAbを含む製剤および組成物に、ならびに眼の疾患および症状を治療するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
眼の疾患および症状を治療することの難しさは、眼に治療薬を送達することの非効率性にあった。薬剤が眼に送達される場合、それは、非常にしばしば、眼組織から極端に急速に出て行く。さらに、治療薬が眼に局所的に送達される場合、それらが眼の後部セグメント(網膜、硝子体および脈絡膜)に到達し得ない、という問題があった。それゆえ、多数の後部セグメント眼症状は、静脈内に薬剤を投与することにより、または硝子体内投与により、治療されてきた。これらの疾患、例えばAMD、緑内障、糖尿病性網膜症の多くは、最適に治療され得ない。したがって、眼送達に適しており、そして眼の疾患および症状を治療するかまたは予防し得るさらなる作用物質を提供する必要がある。
【0003】
ポリペプチドおよびペプチドは、次第に医療用、治療用および診断用作用物質として用いるための重要な作用物質になってきた。しかしながら、あるin vivo環境、例えば眼において、ならびにある生理学的状態、例えば癌および炎症状態において、組織、器官または動物中に存在するプロテアーゼの量は増大し得る。プロテアーゼのこの増大は、内因性タンパク質の、ならびに疾患を治療するために投与される治療用ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質の分解および不活性化を加速し得る。したがって、in vivo使用(例えば、疾患を治療し、診断し、または予防するに際しての使用)への可能性を有するいくつかの作用物質は、それらがプロテアーゼにより迅速に分解され、不活性化されるため、限定された効力を有するに過ぎなかった。
【0004】
プロテアーゼ耐性ポリペプチドは、いくつかの利点を提供する。例えば、プロテアーゼ耐性ポリペプチドは、プロテアーゼ感受性作用物質より長くin vivoで活性のままであり、したがって、生物学的作用を生じるのに十分な時間の間、依然として機能的である。
【0005】
VEGFは、その一次転写物の代替的スプライシングのために、いくつかの代替形態で存在する分泌型ヘパリン結合性ホモ二量体糖タンパク質である(Leung et al., 1989, Science 246: 1306)。VEGFは、炎症における重要な過程である血管漏出を誘導するその能力のため、血管透過性因子(VPF)としても知られている。
【0006】
眼において、VEGFおよびVEGF受容体は、脈絡膜および網膜血管の血管新生をともに刺激し、このような血管の血管透過性を調節することが知られている。これらの特徴はともに、網膜損傷と、結果として起こる視力悪化(多数の網膜炎症性症状、血管障害および黄斑症に起因する)に関与する。VEGF活性またはVEGF受容体活性を調節する試みは、動物モデルおよびヒト疾患の両方において、血管透過性を有効に管理することが以前に示されている(Gragoudas et al., 2004: N. Engl. J. Med 351: 2805)。
【0007】
現在入手可能な治療薬でVEGFをターゲッティングすることは、全ての患者に有効であるというわけではない。したがって、VEGFにより媒介される病理学的状態、例えば血管増殖性疾患(例えば、加齢性黄斑変性(AMD))を治療するための改良された作用物質が必要とされている。
【0008】
TNF−α(腫瘍壊死因子−α)は、ブドウ膜炎およびAMDのような多数の眼炎症性症状に、ならびに炎症性構成成分が存在する網膜血管障害の発生に関連づけられてきた炎症促進性サイトカインである。加齢性黄斑性疾患に関連する脈絡膜新生血管性病変の発生は、関連炎症構成成分を有することが実証されている。この関連炎症構成成分の有効な管理は、その両方がヒト疾患に影響を及ぼし得る脈絡膜新生血管性病変ならびに血管透過性の発現に直接的に影響することが実証されている。ヒトAMD患者における近年の証拠は、抗TNFα治療薬の使用が、抗VEGF治療薬に非応答性である患者における疾患に影響を及ぼし得る、ということを示唆している(Theodossiadis et al., 2009: Am. J. Ophthalmol. 147: 825-830)。
【0009】
インターロイキン1(IL−1)は、いくつかの型の細胞に及ぼす生物学的影響を有する免疫応答の重要な媒介物質である。インターロイキン1は、2つの受容体、すなわち、IL−1の結合時に細胞中にシグナルを伝達するインターロイキン1受容体1型(IL−1R1、CD121a、p80)、ならびにIL−1の結合時にシグナルを伝達せず、IL−1の内因性調節因子として作用するインターロイキン1受容体2型(IL−1R1、CDw121b)と結合する。IL−1とIL−1R1との相互作用を調節する別の内因性タンパク質は、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)である。IL−1raはIL−1R1に結合するが、しかしシグナルを伝達するためにIL−1R1を活性化することはない。
【0010】
IL−1(例えば、IL−1αまたはIL−1β)の結合時にIL−1R1を介して伝達されるシグナルは、病原性であり得る広範囲の生物学的活性を誘導する。例えば、IL−1の結合時にIL−1R1を介して伝達されるシグナルは、局所性または全身性炎症を、ならびに付加的炎症媒介物質(例えば、IL−6、IL−8、TNF)の生成(elaboration)を引き起こし得る。したがって、IL−1とIL−1R1との相互作用は、眼疾患の病因に関連づけられてきた。
【0011】
インターロイキン1受容体1型(IL−1R1)に結合し、その活性を中和するある作用物質(例えばIL−1ra)は、ある炎症性症状のための有効な治療薬であることが立証されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Leung et al., 1989, Science 246: 1306
【非特許文献2】Gragoudas et al., 2004: N. Engl. J. Med 351: 2805
【非特許文献3】Theodossiadis et al., 2009: Am. J. Ophthalmol. 147: 825-830
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様に於いて、本発明は、眼への投与のための、例えば送達部位で所望の標的分子(例えば、VEGF、IL−1またはTNF−α)と結合し得る免疫グロブリン単一可変ドメイン(またはdAb)を含むかまたはそれからなる組成物を提供する。
【0014】
本発明は、眼の疾患または症状、例えば加齢性黄斑変性(AMD)、ブドウ膜炎、緑内障、ドライアイ、糖尿病性網膜症および糖尿病性浮腫を治療し、予防し、または診断するために用いるための、所望の標的分子(例えば、VEGF、IL−1またはTNF−α、TNFR1、TNFR2、IL−1r)と結合し得る免疫グロブリン単一可変ドメイン(またはdAb)を含むかまたはそれからなる組成物も提供する。
【0015】
一実施形態では、免疫グロブリン単一可変ドメインは、プロテアーゼ耐性であり得る、例えば、以下のうちの1つ以上に対して耐性であり得る:セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパルテートプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、トロンビン、プラスミン、カテプシン(例えばカテプシンG)、プロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼ1、プロテイナーゼ2、プロテイナーゼ3)、サーモリシン、キモシン、エンテロペプチダーゼ、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ9、カスパーゼ12、カスパーゼ13)、カルパイン、フィカイン、クロストリパイン、アクチニダイン、ブロメラインおよびセパラーゼ。特定の実施形態では、プロテアーゼはトリプシン、エラスターゼまたはロイコザイムである。このようなプロテアーゼ耐性ポリペプチドは、眼のようなin vivoでプロテアーゼに富む環境への送達に特に適している。プロテアーゼは、生物学的抽出物、生物学的ホモジネートまたは生物学的調製物によっても提供され得る。一実施形態では、プロテアーゼは、眼および/または涙中に見出されるものである。眼中に見出されるこのようなプロテアーゼの例としては、カスパーゼ、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ、ジスインテグリン、メタロプロテイナーゼ(ADAM)およびトロンボスポンジンモチーフを有するADAM、プロテオソーム、組織プラスミノーゲン活性化因子、セクレターゼ、カテプシンBおよびD、シスタチンC、セリンプロテアーゼPRSS1、ユビキチンプロテオソーム経路(UPP)が挙げられる。一実施形態では、プロテアーゼは非細菌プロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼは、動物、例えば哺乳動物、例えばヒトのプロテアーゼである。
【0016】
組成物は、眼の異なる領域に、例えば眼の表面、角膜、もしくは涙管または涙腺に送達され得るし、あるいは眼内送達(例えば、硝子体液のような眼の前または後眼房への)ならびに虹彩、毛様体、涙腺のような眼構造への送達が存在し得る。そして組成物は、眼のこれらの部分で標的分子(例えば、VEGF、IL−1またはTNF−α)と結合し得る。組成物は、眼周囲領域へも送達され得る。
【0017】
標的分子は、例えばVEGF、IL−1またはTNF−αであり得るし、あるいはそれは、任意の他の所望の標的、例えば眼に、例えば眼の表面に、眼の中に、あるいは涙管または涙腺中に存在する標的分子であり、例えば標的は、IL−1、IL−17またはTNF受容体、例えばTNFR1、TGFβ、IL−6、IL−8、IL−21、IL−23、CD20、Nogo−a、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)またはベータアミロイドであり得る。
【0018】
一実施形態では、本発明は、例えば点眼液の形態で、またはゲルとして、または例えば埋込み物中で、眼への投与のためのプロテアーゼ耐性免疫グロブリン単一可変ドメイン(またはdAb)を提供する。dAbは、例えば眼中に存在する標的分子、例えばVEGF、IL−1またはTNF−αと結合し得る。
【0019】
眼への投与は、例えば、点眼液の形態で、局所投与により得る;代替的には、それは眼への注射により得る。
【0020】
眼の表面、もしくは涙管または涙腺のような眼の特定領域中への免疫グロブリン単一可変ドメインの送達を標的にすることは有用であり得るし、あるいは眼内送達(例えば、硝子体液のような眼の前または後眼房への)が存在し得る。それゆえ、本発明は、眼に直接的に組成物を送達する方法であって、眼内注射、局所送達、点眼、眼周囲投与、ならびに緩徐放出製剤(例えば、高分子ナノまたはマイクロ粒子あるいはゲル)の使用から選択される方法により、もしくはイオン泳動を使用する送達デバイスを用いることにより、眼に前記組成物を投与することを包含する方法をさらに提供する。
【0021】
例えば局所送達により、例えば点眼液として、眼浸透増強剤、例えばカプリン酸ナトリウムとともに、または増粘剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とともに、免疫グロブリン単一可変ドメインが眼に送達される場合も、有用であり得る。したがって、本発明は、例えば、眼への局所的送達のための、(a)例えば眼中の標的分子(例えばVEGF、IL−1またはTNF−α)と結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン、さらにまた(b)眼浸透増強剤、および/または(c)増粘剤を含む組成物をさらに提供する。
【0022】
一態様では、眼に送達されるべき免疫グロブリン単一可変ドメインは、VEGFと結合する、WO2008/149146、WO2008149147またはWO2008149150に開示されたVEGF dAbのうちのいずれかであり得る。例えばそれは、DOM15−26−593のアミノ酸配列(図1a:配列番号1で示される)と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列によりコードされるポリペプチドであり得る。一実施形態では、同一性パーセントは、少なくとも70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%または100%である。一実施形態では、プロテアーゼ耐性ポリペプチドは、プロテアーゼ耐性ポリペプチドを単離するための本明細書中に記載される方法により得られる。眼への送達のためのDOM15−26−593は、さらに、抗体定常領域のドメインも含み得る。例えばそれは、DOM15−26−593−Fc融合物のアミノ酸配列(図1b:配列番号2で示される)と同一のアミノ酸配列を有し得るし、あるいは同一性パーセントは、図1bに示される配列番号2と少なくとも70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%であり得る。
【0023】
一態様では、DOM15−26−593のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列により(例えば、97%またはそれ以上同一であるものにより)コードされるVEGF dAbは、WO2008149150およびWO2008149147(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されたように、位置6(Kabat番号付け)にバリン、および/または位置99にロイシン、および/または位置30にリシンを含み得る。
【0024】
さらなる一態様では、眼に送達されるべき免疫グロブリン単一可変ドメインは、WO2008/149144またはWO2008/149148に開示された抗TNFR1 dAbのいずれかであり得る。
【0025】
一実施形態では、α−TNF−αR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、Dom 1h−131−206のアミノ酸配列(図4:配列番号6で示される)と少なくとも97%(例えば、98%、99%または100%)同一であるアミノ酸配列を含み得る。Dom 1h−131−206の調製および選択は、WO2008149148に開示されている。
【0026】
さらなる一態様では、眼に送達されるべき免疫グロブリン単一可変ドメインは、WO2008/149149に開示された抗IL−1R1 dAbのいずれかであり得る。
【0027】
一実施形態では、IL−1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、(a)DOM4−130−54のアミノ酸配列(図3:配列番号5で示される)と、または(b)DOM0400PEGのアミノ酸配列(図2:配列番号4で示される)と少なくとも97%(例えば、98%、99%または100%)同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0028】
DOM 4−130−54の調製および選択は、WO2007063311に、そしてWO2008149149にも記載されている。Dom 0400を調製するために、DOM 4−130−54 dAb配列が取り上げられ、位置80のシステインをDOM 4−130−54中に存在するプロリンに取り替えるよう、突然変異化され、このdAbは次に、dAbの位置80での遊離システインとの標準マレイミドカップリングにより、40KDa線状PEG分子(NOF Corporation, Europeから得られる)に付着される。
【0029】
本発明は、眼の症状または疾患の治療、予防または診断のための薬剤の製造における免疫グロブリン単一可変ドメインを含むかまたはそれからなる組成物のいずれかの使用も提供するが、例えばこの場合、上記眼疾患は、加齢性黄斑変性(AMD)、ブドウ膜炎、緑内障、ドライアイ、糖尿病性網膜症または糖尿病性浮腫である。
【0030】
本発明は、眼の症状または疾患、例えばAMD、ブドウ膜炎、緑内障、ドライアイ、糖尿病性網膜症または糖尿病性浮腫の治療、予防または診断に用いるための、免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばVEGF、IL−1またはTNF−α dAbを含むかまたはそれからなる組成物も提供する。
【0031】
代替的一実施形態では、眼への送達のための免疫グロブリン単一可変ドメインは、DOM15−26−593のアミノ酸配列(図1a:配列番号1で示される)でないか、またはDOM15−26−593−Fc融合物のアミノ酸配列(図1b:配列番号2で示される)でないものであり得る。
【0032】
別の代替的実施形態では、眼への送達のための免疫グロブリン単一可変ドメインは、以下の出願に開示された分子のいずれかを含むかまたはそれからなる分子でないものであり得る:PCT/GB2008/050399、PCT/GB2008/050400、PCT/GB2008/050406、PCT/GB2008/050405、PCT/GB2008/050403、PCT/GB2008/050404、PCT/GB2008/050407。
【0033】
別の代替的実施形態では、眼への送達のための免疫グロブリン単一可変ドメインは、PCT/GB2008/050400に開示されたようなDom1h−131−511、Dom1h−131−201、Dom1h−131−202、Dom1h−131−203、Dom1h−131−204、Dom1h−131−205のアミノ酸配列でないものであり得る。
【0034】
別の代替的実施形態では、眼への送達のための免疫グロブリン単一可変ドメインは、PCT/GB2008/050406に開示されたようなDom4−130−202のアミノ酸配列でないものであり得る。
【0035】
別の代替的実施形態では、眼への送達のための免疫グロブリン単一可変ドメインは、PCT/GB2008/050405に開示されたようなDom1h−131−206のアミノ酸配列でないものであり得る。
【0036】
免疫グロブリン単一可変ドメインと組合せて、または関連して、眼にその他の作用物質を送達することも有用である。例えば、浸透増強剤、例えばカプリン酸ナトリウム、または粘性作用物質、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を送達することは有用であり得る。
【0037】
眼送達のための単一免疫グロブリン可変ドメイン(dAb)(例えば、VEGF、IL−1またはTNF−αと結合する)は、例えば、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体またはその少なくともトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域の付着により、あるいは抗体ドメインとの接合により、より大きな水力学的サイズを有するようフォーマット化され得る。例えば、dAbモノマー(例えば、VEGF dAb)は、抗体のより大きな抗原結合断片としてフォーマット化され得る(例えば、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、IgG、scFvとしてフォーマット化される)。dAbの水力学的サイズおよびその血清半減期は、本明細書中に記載されるように、in vivoで半減期を増大する抗原またはエピトープに結合する結合ドメイン(例えば、抗体または抗体断片)にそれを接合するかまたは連結することによっても増大され得る(WO2006038027(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)の付録1参照)。例えば、VEGF dAbは、抗血清アルブミンまたは抗新生児Fc受容体抗体または抗体断片、例えば抗SAまたは抗新生児Fc受容体dAb、Fab、Fab’またはscFvに、あるいは抗SAアフィボディまたは抗新生児Fc受容体アフィボディに接合されるかまたは連結され得る。
【0038】
例えばVEGF結合dAbと連結される、本明細書中に記載される組成物中に用いるための適切なアルブミン、アルブミン断片またはアルブミン変異体の例は、WO 2005/077042A2およびWO2006038027(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0039】
フォーマット化dAb(例えば、PEG化によりフォーマットされるdAb)は、例えば30KDa〜100KDa、例えば約50〜60KDaである分子量を有し得るし、網膜および/または脈絡膜および/または涙液への送達のために有用であり得る。
【0040】
約15KDaの分子量を有する裸(非フォーマット化)dAbは、硝子体液および/または眼房水および/または網膜および/または脈絡膜への送達のために有用であり得る。
【0041】
この開示全体を通して記載される本発明の他の実施形態では、本発明のアンタゴニストまたはリガンドにおいて単一免疫グロブリン可変ドメインまたは「dAb」を用いる代わりに、例えばVEGF、IL−1またはTNF−αに結合するdAbのCDR(例えば、適切なタンパク質足場または骨格、例えばアフィボディ、SpA足場、LDL受容体クラスAドメインまたはEGFドメイン上にグラフトされるCDR)を含むか、あるいはVEGF、IL−1またはTNF−αに関する結合部位を含むタンパク質ドメインであり得る(この場合、ドメインは、アフィボディ、SpAドメイン、LDL受容体クラスAドメインまたはEGFドメインから選択される)ドメインを当業者は用い得ることが意図される。したがって、全体としての開示は、アンタゴニスト、リガンド、ならびにdAbの代わりにこのようなドメインを用いる方法の開示を提供するよう理解されるべきである。
【0042】
本明細書中に記載されるプロテアーゼ耐性dAbは、WO2008149143(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載された方法および教示を用いて選択され得る。
【0043】
一態様では、本発明は、例えばVEGF、IL−1またはTNF−α結合部位を含むプロテアーゼ耐性免疫グロブリン単一可変ドメインであって、
(i)37℃で少なくとも1時間(t)、少なくとも10μg/mlの濃度(c)のプロテアーゼ;あるいは
(ii)30℃で少なくとも1時間(t)、少なくとも40μg/mlの濃度(c’)のプロテアーゼ
とともにインキュベートされた場合にプロテアーゼに対して耐性である上記可変ドメインを提供する。一実施形態では、プロテアーゼ、例えばトリプシンの、可変ドメインに対する比(モル/モルに基づいて)は、8,000対80,000 プロテアーゼ:可変ドメインであり、例えばCが10μg/mlである場合、比は800対80,000 プロテアーゼ:可変ドメインであり;あるいはCまたはC’が100μg/mlである場合、比は8,000対80,000 プロテアーゼ:可変ドメインである。一実施形態では、プロテアーゼ(例えばトリプシン)の可変ドメインに対する比(重量/重量、例えばμg/μgに基づいて)は、16,000対160,000 プロテアーゼ:可変ドメインであり、例えばCが10μg/mlである場合、比は1,600対160,000 プロテアーゼ:可変ドメインであり;あるいはCまたはC’が100μg/mlである場合、比は16,000対160,000 プロテアーゼ:可変ドメインである。一実施形態では、濃度(cまたはc’)は、少なくとも100または1000μg/ml プロテアーゼである。ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーまたはライブラリーを用いて作業する場合(例えばw/wパラメーター)、用いるのに適したプロテアーゼのタンパク質分解活性の条件については、本明細書中の記述を参照されたい。これらの条件は、特定の免疫グロブリン単一可変ドメインのプロテアーゼ耐性を確定するための条件に用いられ得る。一実施形態では、時間(t)は、1、3または24時間あるいは一晩(例えば約12〜16時間)であるかまたはそれらのおよその値である。一実施形態では、可変ドメインは条件(i)下で耐性であり、濃度(c)は10または100μg/mlまたはそれらのおよその値のプロテアーゼであり、時間(t)は1時間である。一実施形態では、可変ドメインは条件(ii)下で耐性であり、濃度(c’)は40μg/mlまたはそのおよその値のプロテアーゼであり、時間(t)は3時間または約3時間である。一実施形態では、プロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼ、ロイコザイムおよびパンクレアチンから選択される。一実施形態では、プロテアーゼはトリプシンである。一実施形態では、プロテアーゼは、痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄液、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液または涙液あるいは眼において見出されるプロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼは眼および/または涙液中に見出されるものである。一実施形態では、プロテアーゼは非細菌プロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼは動物、例えば哺乳動物、例えばヒトプロテアーゼである。
【0044】
一実施形態では、可変ドメインは、トリプシン、および/またはエラスターゼ、ロイコザイムおよびパンクレアチンから選択される少なくとも1つの他のプロテアーゼに対して耐性である。例えば、耐性は、トリプシンおよびエラスターゼ;トリプシンおよびロイコザイム;トリプシンおよびパンクレアチン;トリプシン、エラスターゼおよびロイコザイム;トリプシン、エラスターゼおよびパンクレアチン;トリプシン、エラスターゼ、パンクレアチンおよびロイコザイム;あるいはトリプシン、パンクレアチンおよびロイコザイムに対してである。
【0045】
一実施形態では、条件(i)または(ii)下で、例えば10〜1013、例えば10〜1012複製単位のファージライブラリーサイズ(感染性ビリオン)でインキュベートされる場合、可変ドメインはバクテリオファージ上に提示される。
【0046】
一実施形態では、BiaCore (商標)またはELISA、例えばファージELISAまたはモノクローナルファージELISAを用いて査定される条件(i)または(ii)下でのインキュベーション後、可変ドメインはVEGF、IL−1またはTNF−αに特異的に結合する。
【0047】
一実施形態では、可変ドメインは、プロテインAまたはプロテインLに特異的に結合する。一実施形態では、プロテインAまたはLとの特異的結合は、条件(i)または(ii)下でのインキュベーション後に存在する。
【0048】
一実施形態では、可変ドメインは、例えば条件(i)または(ii)下でのインキュベーション後、少なくとも0.404のELISA(例えば、ファージELISAまたはモノクローナルファージELISA)でのOD450読取値を有し得る。
【0049】
一実施形態では、可変ドメインは、例えば条件(i)または(ii)下でのインキュベーション後に、ゲル電気泳動において(実質的に)単一の帯域を表示する。
【0050】
別の実施形態では、作用物質(dAb)は、埋め込み可能な送達デバイスを介して眼に局所的に投与され得る。したがって、一実施形態では、本発明は、眼送達のための、例えばVEGF、IL−1またはTNF−α dAbを含有する埋め込み可能な送達デバイスを提供する。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、眼送達のための免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVEGF、IL−1またはTNF−α dAb)ならびに薬学的または生理学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1aは、DOM15−26−593のアミノ酸配列を示す図である。図1bは、DOM15−26−593−Fc融合物のアミノ酸配列を示す図である。図1cは、抗体Fcのアミノ酸配列を示す図である。
【図2】DOM 0400PEG(PEG化抗IL1 dAb、分子量約52KDa)のアミノ酸配列を示す図である。
【図3】DOM4−130−54(抗IL1 dAb)のアミノ酸配列を示す図である。
【図4】Dom 1h−131−206(抗TNFαR1 dAb)のアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
この明細書中で、明瞭且つ簡潔な明細書を書き表すよう、実施形態を参照しながら本発明を記載している。実施形態は、本発明を逸脱しない限り、種々に組合され、または切り離され得るよう意図されるし、そのように理解されるべきである。
【0054】
別記しない限り、本明細書中で用いられる技術および科学用語は全て、当該技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学)の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。分子的、遺伝学的および生化学的方法(一般的に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor , N.Y.およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 第4版, John Wiley & Sons, Inc.参照)(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)ならびに化学的方法のための標準技法が用いられる。
【0055】
本明細書中で用いる場合、「血管内皮増殖因子(VEGF)のアンタゴニスト」または「抗VEGFアンタゴニスト」等という用語は、VEGFに結合し、VEGFの(すなわち1つ以上の)機能を抑制し得る作用物質(例えば分子、化合物)を指す。
【0056】
本明細書中で用いる場合、「ペプチド」は、ペプチド結合を介して一緒に繋がれる約2〜約50アミノ酸を指す。
【0057】
本明細書中で用いる場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合により一緒に繋がれる少なくとも約50アミノ酸を指す。ポリペプチドは一般的に、三次構造を含み、機能的ドメインに折りたたまれる。
【0058】
本明細書中で用いる場合、「プロテアーゼ分解に対して耐性」であるペプチドまたはポリペプチド(例えば、ドメイン抗体(dAb))は、プロテアーゼ活性に適した条件下でプロテアーゼとともにインキュベートされる場合、プロテアーゼにより実質的に分解されない。プロテアーゼ活性に適した温度で、例えば37または50℃で、約1時間、プロテアーゼとともにインキュベート後に、プロテアーゼにより約25%以下、約20%以下、約15%以下、約14%以下、約13%以下、約12%以下、約11%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下のタンパク質のタンパク質が分解されるか、または実質的に全くタンパク質が分解されない場合、ポリペプチド(例えばdAb)は実質的に分解されない。タンパク質分解は、本明細書中に記載されるような任意の適切な方法を用いて、例えばSDS−PAGEにより、または機能性検定(例えばリガンド結合)により査定され得る。
【0059】
本明細書中で用いる場合、「標的リガンド」は、ポリペプチドまたはペプチドにより特異的にまたは選択的に結合されるリガンドを指す。例えば、ポリペプチドが抗体またはその抗原結合断片である場合、標的リガンドは任意の所望の抗原またはエピトープであり得る。標的抗原との結合は、機能性であるポリペプチドまたはペプチドに左右される。
【0060】
本明細書中で用いる場合、抗体は、天然に抗体を産生する任意の種に由来するにせよ、または組換えDNA技術により作製されるにせよ;血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、酵母または細菌から単離されるにせよ、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEあるいは断片(例えば、Fab、F(ab’)、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉構造多特性抗体、ジスルフィド結合scFv、ジアボディ)を指す。
【0061】
本明細書中で用いる場合、「抗体フォーマット」は、その構造上に抗原に対する結合特異性を付与するために1つ以上の抗体可変ドメインが組み入れられ得る任意の適切なポリペプチド構造を指す。種々の適切な抗体フォーマット、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または抗体軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、前記のいずれかの抗原結合断片(例えば、Fv断片(例えば一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片)、単一抗体可変ドメイン(例えば、dAb、V、VHH、V)、ならびに前記のいずれかの修飾バージョン(例えば、ポリエチレングリコールまたは他の適切なポリマーの共有的結合により修飾されたもの、あるいはヒト化VHH)が、当該技術分野で知られている。
【0062】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という語句は、他のV領域またはドメインとは関係なく、一抗原またはエピトープに特異的に結合する抗体可変ドメイン(V、VHH、V)を指す。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域または可変ドメインを有するフォーマット(例えば、ホモ−またはへテロ−多量体)中に存在し得るが、この場合、他の領域またはドメインは、単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合のために必要でない(すなわち、この場合、免疫グロブリン単一可変ドメインは、付加的可変ドメインとは関係なく、抗原に結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」は、当該用語を本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。「単一免疫グロブリン可変ドメイン」は、当該用語を本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同一である。「単一抗体可変ドメイン」は、当該用語を本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同一である。免疫グロブリン単一可変ドメインは、一実施形態では、ヒト抗体可変ドメインであるが、しかし、齧歯類(例えば、WO 00/29004(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に開示)、テンジクザメおよびラクダ類VHHdAbのような他の種からの単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ類VHHは、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を産生する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダおよびグアナコを含めた種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。VHHは、ヒト化され得る。
【0063】
「ドメイン」は、タンパク質の残部とは無関係な三次構造を有する折り畳まれたタンパク質構造である。一般的に、ドメインはタンパク質の別個の機能的特性の元をなし、多くの場合、残りのタンパク質および/またはドメインの機能の損失を伴わずに、他のタンパク質に付加され、除去され、または運ばれ得る。「単一抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳まれたポリペプチドドメインである。したがって、それは、完全抗体可変ドメインおよび修飾可変ドメイン(例えば、1つ以上のループが、抗体可変ドメインに特徴的でない配列により取り替えられる)、あるいは切断されているかまたはN−またはC−末端伸張を含む抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの少なくとも結合活性および特異性を保持する可変ドメインの折り畳まれた断片を包含する。
【0064】
本明細書中で用いる場合、「用量」は、全てを一度に(単位用量)、または限定時間に亘って2回以上投与で、被験者に投与されるリガンドの量を指す。例えば、用量は、1日(24時間)(一日量)、2日、1週間、2週間、3週間、または1ヶ月以上の経過中に被験者に(例えば、1回投与により、または2回以上の投与により)投与されるリガンド(例えば、標的抗原に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むリガンド)の量を示し得る。投与間の間隔は、任意の所望量の時間であり得る。
【0065】
「半減期」という語句は、例えば、自然の機序によるリガンドの分解および/またはリガンドのクリアランスまたは隔離のため、in vivoで50%低減するためにリガンド(例えば、dAb、ポリペプチドまたはアンタゴニスト)の血清濃度に関して要する時間を指す。本発明のリガンドは、in vivoで安定化され得るし、それらの半減期は、分解および/またはクリアランスまたは隔離を阻止する分子との結合により、増大され得る。典型的には、このような分子は、それ自体、in vivoで長い半減期を有する天然タンパク質である。リガンドの半減期は、その機能的活性が、半減期増大分子に特異的でない類似のリガンドより長い期間、in vivoで存続する場合に増大する。例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的なリガンドおよび標的分子は同一リガンドと比較され、この場合、HSAに対する特異性は存在せず、すなわち、HSAに結合しないが、しかし別の分子に結合する。例えば、それは、細胞上の第三の標的に結合し得る。典型的には、半減期は、10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上増大される。半減期の2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍またはそれ以上の範囲の増大が可能である。代替的には、あるいはさらに、半減期の30倍まで、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍の範囲の増大が考えられ得る。
【0066】
本明細書中で用いる場合、「水力学的サイズ」は、水溶液を通した分子の拡散に基づいた分子(例えば、タンパク質分子、リガンド)の見掛けのサイズを指す。溶液を通してのタンパク質の拡散または動きは、タンパク質の見掛けのサイズを誘導するよう処理され得るが、この場合、サイズは、タンパク質粒子の「ストークス半径」または「水力学的半径」により示される。タンパク質の「水力学的サイズ」は、質量および形状(立体配座)の両方によっており、したがって、同一分子量を有する2つのタンパク質は、タンパク質の全体的立体配座に基づいて種々の水力学的サイズを有し得る。
【0067】
本明細書中で言及される場合、「競合する」という用語は、第一標的とその同種標的結合ドメインとの結合が、上記同種標的に特異的である第二結合ドメインの存在下で抑制される、ということを意味する。例えば、結合は、標的に対するその親和性または結合力が低減されるよう、結合ドメインの物理的遮断により、あるいは結合ドメインの構造または環境の変更により、立体的に抑制され得る。第一および第二結合ドメイン間の競合を確定するために競合ELISAおよび競合BiaCore実験を実施する方法の詳細に関しては、WO2006038027を参照されたい。
【0068】
2つの配列間の「相同性」または「同一性」または「類似性」(これらの用語は、本明細書中では互換的に用いられる)の算定は、以下のように実施される。配列は、最適比較目的のために整列される(例えば、最適アラインメントのためにギャップが第一および第二アミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入され、非相同配列が比較目的に関して無視され得る)。一実施形態では、比較目的のために整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、80%、90%、100%である。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドが、次に比較される。第一の配列中の位置は、第二配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められている場合には、分子はその位置で同一である(本明細書中で用いる場合、アミノ酸または核酸「相同性」はアミノ酸または核酸「同一性」と等価である)。2つの配列間の同一性パーセントは、(2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要がある)ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列が共有する同一位置の数の一関数である。本明細書中で定義されるようなアミノ酸およびヌクレオチド配列アラインメント、ならびに相同性、類似性または同一性は、デフォルトパラメーターを用いて、アルゴリズムBLAST2Sequencesを用いて、調製され、確定され得る(Tatusova, T.A. et al., FEMS Microbiol Lett, 174: 187-188 (1999))。
【0069】
プロテアーゼ耐性:
本発明は、一実施形態において、眼への送達のためのdAb、例えば抗VEGF dAb、TNFR1 dAb、IL−1 dAbに関するが、これらは、所望の生物学的活性、例えばVEGF、TNFR1またはIL−1との結合を有するプロテアーゼ耐性dAbに関する選択方法により選択されている。プロテアーゼ分解に対して高度に安定で且つ耐性であり、そして所望の生物学的活性を有するポリペプチドを選択するための効率的プロセスを生じるための方法に、2つの選択的圧力が用いられる。本明細書中で用いる場合、プロテアーゼ耐性ペプチドおよびポリペプチドは、一般的に、生物学的活性を保持する。これに対比して、プロテアーゼ感受性ペプチドおよびポリペプチドは、本明細書中に記載される方法において、プロテアーゼにより切断されるかまたは消化され、したがって、それらの生物学的活性を失う。したがって、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、一般的に、それらの生物学的活性、例えば結合活性に基づいて選択される。
【0070】
眼環境は、プロテアーゼに富むものであり、それゆえ、本明細書中に記載されるような眼送達のためのプロテアーゼ耐性dAbの使用は、いくつかの利点を提供する。例えば、あるプロテアーゼ(例えばトリプシン)によるタンパク質分解に対する耐性に関して選択される可変ドメインは、他のプロテアーゼ(例えばエラスターゼ、ロイコザイム)による分解に対しても耐性である。プロテアーゼ耐性は、ペプチドまたはポリペプチドの高い融点(Tm)と相関し得る。融点が高いほど、より安定な可変ドメイン、アンタゴニスト、ペプチドおよびポリペプチドであることを示す。プロテアーゼ分解に対する耐性は、標的リガンドに対する高親和性結合とも相関する。したがって、本明細書中で記載され、参照される方法(WO2008149143)は、所望の生物学的活性を有し、そして、それらがプロテアーゼ耐性および安定性であるためin vivoでの治療的および/または診断的眼使用に十分に適しているdAbを選択し、単離し、および/または回収するための効率的な方法を提供する。一実施形態では、プロテアーゼ耐性は、例えば、プロテアーゼ耐性でない可変ドメイン、アンタゴニスト、ペプチドまたはポリペプチドより上回って改良された改良型PKと相関し得る。改良型PKは、改良型AUC(曲線下面積)および/または改良型半減期であり得る。プロテアーゼ耐性は、例えば、プロテアーゼ耐性でない可変ドメイン、アンタゴニスト、ペプチドまたはポリペプチドより上回って改良された、剪断および/または熱応力、および/または噴霧化中の凝集傾向低減に対する可変ドメイン、アンタゴニスト、ペプチドまたはポリペプチドの改良型安定性とも相関し得る。一実施形態では、プロテアーゼ耐性は、例えば、プロテアーゼ耐性でない可変ドメイン、アンタゴニスト、ペプチドまたはポリペプチドより上回って改良された改良型貯蔵安定性と相関する。一態様では、利点のうちの1つ、2つ、3つ、4つまたは全てが提供され、利点はプロテアーゼ分解に対する耐性、高Tmならびに標的リガンドとの高親和性結合である。
【0071】
本明細書中で記載され、参照される方法(WO2008149143)は、所望によりその他の適切な選択方法を含み得る、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド、例えばdAbを単離するためのプログラムの一部として用いられ得る。これらの状況では、本明細書中に記載される方法は、プログラムの任意の所望の時点で、例えば他の選択方法が用いられる前または後に用いられ得る。
【0072】
ある実施形態では、眼送達のためのdAbは、トリプシン、エラスターゼまたはロイコザイムによる分解に対する耐性に関して選択され、VEGFに特異的に結合する。これらの実施形態では、dAbを含むライブラリーまたはレパートリーが提供され、タンパク質分解性消化に適した条件下で、トリプシン、エラスターゼまたはロイコザイム(またはトリプシンを含む生物学的調製物、抽出物またはホモジネート)と組合される。VEGFに結合する、トリプシン、エラスターゼまたはロイコザイム耐性dAbが選択される。例えば、プロテアーゼ耐性dAbは、少なくとも約2時間の期間中、プロテアーゼの0.04%(w/w)溶液中で37℃でインキュベートされる場合、実質的に分解されない。別の例では、プロテアーゼ耐性dAbは、少なくとも約3時間の期間中、プロテアーゼの0.04%(w/w)溶液中で37℃でインキュベートされる場合、実質的に分解されない。別の例では、プロテアーゼ耐性dAbは、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間または少なくとも約12時間の期間中、プロテアーゼの0.04%(w/w)溶液中で37℃でインキュベートされる場合、実質的に分解されない。
【0073】
別の態様では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、dAb)のレパートリーの産生方法が提供される。この方法は、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを提供すること;プロテアーゼ活性に適した条件下でペプチドまたはポリペプチドのレパートリーとプロテアーゼを組合せること;そしてVEGFに特異的に結合する複数のペプチドまたはポリペプチドを回収し、それによりプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーが産生されることを包含する。本方法で用いるのに適しているプロテアーゼ、表示系、プロテアーゼ活性のための条件、ならびにペプチドまたはポリペプチドの選択方法は、他の方法と関連して本明細書中に記載される。
【0074】
いくつかの実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを含む表示系(例えば、核酸のコード機能と核酸によりコードされるペプチドまたはポリペプチドの機能的特徴を連結する表示系)が用いられ、そして当該方法はさらに、複数の選択ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸のコピー数を増幅するかまたは増大することを包含する。核酸は、任意の適切な方法を用いて、例えばファージ増幅、細胞増殖またはポリメラーゼ連鎖反応により増幅され得る。
【0075】
特定の実施形態では、抗VEGF dAbを含むプロテアーゼ耐性ポリペプチドのレパートリーの産生方法が提供される。この方法は、抗VEGF dAbを含むポリペプチドのレパートリーを提供すること;プロテアーゼ活性に適した条件下でペプチドまたはポリペプチドのレパートリーとプロテアーゼ(例えば、トリプシン、エラスターゼ、ロイコザイム)を組合せること;そしてVEGFに対する結合特異性を有するdAbを含む複数のポリペプチドを回収することを包含する。この方法を用いて、ナイーブレパートリー、あるいは所望の結合特異性に偏向されるレパートリー、例えばVEGFに対する結合特異性を有する親dAbを基礎にした親和性成熟レパートリーを産生し得る。
【0076】
選択/単離/回収
プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチド(例えば、プロテアーゼ耐性ポリペプチドの集団)は、任意の適切な方法を用いて、レパートリーまたはライブラリー(例えば、表示系における)から選択され、単離され、および/または回収され得る。一実施形態では、プロテアーゼ耐性ポリペプチドは、選択可能な特徴(例えば、物理的特徴、化学的特徴、機能的特徴)に基づいて、選択されるかまたは単離される。適切な選択可能な機能的特徴としては、レパートリー中のペプチドまたはポリペプチドの生物学的活性、例えば一般的リガンド(例えば、超抗原)との結合、標的リガンド(例えば、抗原、エピトープ、基質)との結合、抗体との結合(例えば、ペプチドまたはポリペプチド上に発現されるエピトープを介して)、および触媒活性が挙げられる(例えば、Tomlinson et al.、WO99/20749;WO01/57065;WO99/58655参照)。一実施形態では、選択は、VEGFとの特異的結合に基づいている。別の実施形態では、選択は、成員がプロテアーゼ耐性である第二レパートリーを産生し、その後、VEGFに特異的に結合する第二レパートリーから成員を選択するよう選択された機能的特徴に基づいている。
【0077】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、実質的に全てのプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが共通の選択可能な特徴を共有するペプチドまたはポリペプチドのライブラリーまたはレパートリーから、選択され、および/または単離される。例えば、プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、実質的に全てのプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドが、共通の一般的リガンドに結合し、共通の標的リガンドに結合し、共通の抗体に結合し(またはそれにより結合され)、あるいは共通の触媒活性を保有するライブラリーまたはレパートリーから選択され得る。この型の選択は、例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインの親和性成熟を実施する場合、所望の生物学的活性を有する親ペプチドまたはポリペプチドに基づいているプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのレパートリーを調製するために特に有用である。
【0078】
共通の一般的リガンドとの結合に基づいた選択は、元のライブラリーまたはレパートリーの構成成分であったプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドのうちの全てまたは実質的に全てを含有するペプチドまたはポリペプチドのコレクションまたは集団を生じ得る。例えば、標的リガンドまたは一般的リガンド、例えばプロテインA、プロテインLまたは抗体に結合するペプチドまたはポリペプチドは、適切な親和性マトリックスをパニング(panning)するかまたは用いることにより、選択され、単離され、および/または回収され得る。パニングは、適切な容器(例えば、試験管、ペトリ皿)にリガンド(例えば、一般的リガンド、標的リガンド)の溶液を付加し、そして容器の壁上にリガンドが沈着しまたは被覆するようにさせることにより成し遂げられ得る。過剰量のリガンドは洗い落とされ、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、プロテアーゼとともにインキュベートされたレパートリー)が容器に付加されて、固定化リガンドに結合するためにペプチドまたはポリペプチドに適した条件下で容器が保持される。任意の適切な方法、例えば削り落とすか、またはpHを下げることにより、非結合ペプチドまたはポリペプチドは洗い落とされて、結合ペプチドまたはポリペプチドが回収され得る。
【0079】
適切なリガンド親和性マトリックスは、一般的に、リガンドが共有的にまたは非共有的に結合される固体支持体またはビーズ(例えば、アガロース)を含有する。親和性マトリックスは、マトリックス上のリガンドとのペプチドまたはポリペプチドの結合に適した条件下で、バッチ法、カラム法または任意の他の適切な方法を用いて、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、プロテアーゼとともにインキュベートされたレパートリー)と組合され得る。親和性マトリックスを結合しないペプチドまたはポリペプチドは洗い落とされて、結合ペプチドまたはポリペプチドが溶離され、任意の適切な方法を用いて、例えば、低pH緩衝液を用いた、低刺激性変性剤(例えば、尿素)を用いた、あるいはリガンドとの結合に関して競合するペプチドを用いた溶離により、溶離され、回収され得る。一例では、ビオチニル化標的リガンドが、レパートリー中のペプチドまたはポリペプチドに適した条件下でレパートリーと組合されて、標的リガンド(VEGF)に結合する。結合ペプチドまたはポリペプチドは、固定化アビジンまたはストレプトアビジン(例えば、ビーズ上)を用いて回収される。
【0080】
いくつかの実施形態では、一般的リガンドは、抗体またはその抗原結合断片である。ライブラリーまたはレパートリーのペプチドまたはポリペプチド中に実質的に保存されるペプチドまたはポリペプチドの構造的特徴に結合する抗体または抗原結合断片は、一般的リガンドとして特に有用である。プロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドを単離し、選択し、および/または回収するためのリガンドとして用いるのに適した抗体および抗原結合断片は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得るし、任意の適切な方法を用いて調製され得る。
【0081】
核酸、宿主細胞およびプロテアーゼ耐性ポリペプチドの産生方法:
本明細書中に記載される方法により選択されるプロテアーゼ耐性ペプチドまたはポリペプチドは、適切なin vitro発現系、例えば大腸菌またはピキア種、例えばメタノール資化酵母において、化学合成により、または任意の他の適切な方法によっても産生され得る。
【0082】
ポリペプチド、dAbおよびアンタゴニスト:
本明細書に記載されるように、プロテアーゼ耐性dAbは、一般に、高い親和性で標的リガンドに結合する。
【0083】
例えば、VEGF dAbは、300nM〜1pM(すなわち、3×10−7〜5×10−12M)、例えば50nM〜1pM、例えば5nM〜1pMおよび例えば1nM〜1pMの親和性(KD;表面プラズモン共鳴により確定した場合、KD=Koff(kd)/Kon(ka));例えば1×10−7M以下、例えば1×10−8M以下、例えば1×10−9M以下、例えば1×10−10M以下および例えば1×10−11M以下のK;および/または表面プラズモン共鳴により確定した場合に5×10−1−1〜1×10−7−1、例えば1×10−2−1〜1×10−6−1、例えば5×10−3−1〜1×10−5−1、例えば5×10−1−1以下、例えば1×10−2−1以下、例えば1×10−3−1以下、例えば1×10−4−1以下、例えば1×10−5−1以下、および例えば1×10−6−1以下のKoff速度定数でVEGFに結合し得る。
【0084】
任意の特定の理論に縛られることなく考えると、プロテアーゼに対して耐性であるペプチドおよびポリペプチドはより低いエントロピーおよび/またはより高い安定化エネルギーを有する。したがって、プロテアーゼ耐性と高親和性結合との間の相関は、本明細書中に記載される方法により選択されるペプチドおよびポリペプチドおよびdAbの表面の緊密性および安定性と関連づけられ得る。
【0085】
一実施形態では、VEGF dAbは、約1μM以下、約500nM以下、約100nM以下、約75nM以下、約50nM以下、約10nM以下、または約1nM以下のIC50の濃度50(IC50)で、VEGFの結合を抑制する。
【0086】
ある実施形態では、VEGF dAbはVEGF、例えばヒトVEGFに特異的に結合し、そして表面プラズモン共鳴により確定した場合に、300nM〜1pMまたは300nM〜5pM、または50nM〜1pM、または50nM〜5pM、または50nM〜20pMまたは約10pM、または約15pM、または約20pMの解離定数(K)でヒトVEGFから解離する。ある実施形態では、ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストは、VEGF、例えばヒトVEGFに特異的に結合し、そして表面プラズモン共鳴により確定した場合に5×10−1−1〜1×10−7−1、例えば1×10−2−1〜1×10−6−1、例えば5×10−3−1〜1×10−5−1、例えば5×10−1−1以下、例えば1×10−2−1以下、例えば1×10−3−1以下、例えば1×10−4−1以下、例えば1×10−5−1以下、および例えば1×10−6−1以下のKoff速度定数でヒトVEGFから解離する。
【0087】
ある実施形態では、VEGF dAbは、1×10−3−1−1〜1×10−7−1−1、または1×10−3−1−1〜1×10−6−1−1、または約1×10−4−1−1、または約1×10−5−1−1のKonで、VEGF、例えばヒトVEGFに特異的に結合する。一実施形態では、ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストは、VEGF、例えばヒトVEGFに特異的に結合し、そして本段落で明示したような解離定数(K)およびKoffで、ヒトVEGFから解離する。一実施形態では、ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストは、VEGF、例えばヒトVEGFに特異的に結合し、そして本段落で明示したような解離定数(K)およびKonで、ヒトVEGFから解離する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたはdAbは、この段落で記述したようなKおよび/またはKoffおよび/またはKonでVEGF(例えばヒトVEGF)に特異的に結合し、そしてDOM15−26−593のアミノ酸配列を有するdAbのアミノ酸配列と少なくともまたは少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0088】
dAbは、大腸菌で、またはピキア種(例えば、メタノール資化酵母)で発現され得る。一実施形態では、リガンドまたはdAbモノマーは、大腸菌で、またはピキア種(例えば、メタノール資化酵母)で発現される場合、少なくとも約0.5mg/Lの量で分泌される。本明細書中に記載されるリガンドおよびdAbモノマーは、大腸菌で、またはピキア種(例えば、メタノール資化酵母)で発現される場合に分泌可能であり得るが、しかし、それらは、大腸菌またはピキア種を用いない任意の適切な方法、例えば合成化学的方法または生物学的産生方法を用いて産生され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストは、ラクダ類免疫グロブリン可変ドメイン、あるいは、例えば位置108、37、44、45および/または47で、ラクダ類生殖系列抗体遺伝子セグメントによりコードされる免疫グロブリン可変ドメインに独特である1つ以上のフレームワークアミノ酸を含まない。
【0090】
VEGFのアンタゴニストは、一価または多価であり得る。いくつかの実施形態では、アンタゴニストは一価であり、本発明のポリペプチドまたはdAbにより提供される結合部位である、VEGFと相互作用する1つの結合部位を含有する。一価アンタゴニストは1つのVEGFに結合し、受容体の活性化およびシグナル伝達を引き起こし得る細胞の表面上のVEGFの架橋またはクラスター化を誘導し得ない。
【0091】
代替的には、VEGFのアンタゴニストは多価である。VEGFの多価アンタゴニストは、VEGFに関する特定結合部位の2つ以上のコピーを含有するか、またはVEGFに結合する2つ以上の異なる結合部位を含有し得る(結合部位の少なくとも1つは、本発明のdAbにより提供される)。例えば、本明細書中に記載されるように、VEGFのアンタゴニストは、VEGFに結合するdAbの2つ以上のコピー、あるいはVEGFに結合する2つ以上の異なるdAbを含む二量体、三量体または多量体であり得る。
【0092】
他の実施形態では、dAbは、本明細書中に記載されるKでVEGFに特異的に結合し、標準マウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖を抑制する(例えば、適切な対照と比較した場合、腫瘍増殖を少なくとも約10%抑制する)。一実施形態では、ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストは、約1mg/kg以上、例えば約5または10mg/kgで投与される場合、標準マウス異種移植モデルにおいて、適切な対照と比較して、少なくとも約10%、または少なくとも約25%、または少なくとも約50%、腫瘍増殖を抑制する。
【0093】
他の実施形態では、ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストはVEGFに結合し、そして≦100nMのND50で標準細胞検定においてVEGFの活性に拮抗する。
【0094】
ある実施形態では、dAbは、有効量が投与される場合、眼疾患の動物モデルにおいて有効である。一般的に、有効量は、約1mg/kg〜約10mg/kg(例えば、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは約10mg/kg)である。dAbは、例えば1日1回または2回、毎週1回または2回、毎月1回または2回の投与頻度で投与され得る。
【0095】
一般的に、dAbは、眼送達のために薬理学的に適切な担体と一緒に、精製形態で利用される。典型的には、これらの担体としては、水性またはアルコール性/水性の溶液、乳濁液または懸濁液、整理食塩水および/または緩衝媒質を含む何れかが挙げられ得る。適切な生理学的に許容可能なアジュバントは、懸濁液中にポリペプチド複合体を保持する必要がある場合、濃化剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩から選択され得る。防腐剤およびその他の添加剤、例えば抗菌剤、酸化防止剤、キレート化剤および不活性ガスも存在し得る(Mack (1982) Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版)。種々の適切な製剤、例えば徐放性製剤が用いられ得る。これらは、埋込み物、ゲル、ナノ粒子およびマイクロ粒子を含み得る。薬剤負荷PLAナノ−およびマイクロ粒子は、製剤の結膜下送達後に眼の後部セグメントに薬剤を送達するために用いられてきた(Kompella et al IOVS 2003 44(3) 1192-1201)。特に、マイクロスフェアは送達部位に保持され、そしてより容易に除去され得るナノ粒子と比較して、腎薬剤送達により適していると思われる(Amrite et al ARVO abstract #5067/B391 2003)。
【0096】
本発明のリガンド(例えばアンタゴニスト)は、別々に投与される組成物として、または他の作用物質とともに用いられ得る。これらの例としては、眼への眼送達のための種々の薬剤、および/または眼浸透増強剤および/または増粘剤が挙げられる。
【0097】
医薬組成物は、本発明のリガンドとともに種々の他の作用物質の、あるいは異なる特異性を有する本発明によるリガンド、例えば(それらが投与前にプールされていてもいなくても)異なる標的抗原またはエピトープを用いて選択されるリガンドの組合せの「カクテル」を包含し得る。
【0098】
眼へのdAbの投与の精確な投与量および頻度は、患者の年齢、性別および症状、他の薬剤の同時投与、禁忌、ならびに臨床医が考慮すべきその他のパラメーターに左右される。
【0099】
本発明のdAbは、貯蔵のために凍結乾燥され、そして使用前に適切な担体中で再構成され得る。この技法は、慣用的免疫グロブリンを用いて有効であることが示されており、当該技術分野で既知の凍結乾燥および再構成技法が用いられ得る。凍結乾燥および再構成が種々の程度の抗体活性損失(例えば、慣用的免疫グロブリンに関しては、IgM抗体はIgG抗体より大きい活性を有する傾向がある)を引き起こし得る、そして使用レベルを補うように上向きに調整しなければならないこともある、と当業者は理解するであろう。
【0100】
本発明のdAbまたはそのカクテルを含有する組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。ある治療的適用では、選択細胞の集団の、少なくとも部分的な抑制、抑圧、調整、死滅、あるいはいくつかの他の測定可能なパラメーターを成し遂げるための適切な量は、「治療的有効用量」と定義され得る。この投与量を達成するために必要とされる量は、患者自身の免疫系の疾患および全身状態の重症度に左右される。疾患を治療し、抑圧し、または防止するための適切な投与間隔を、熟練臨床医は確定し得る。
【0101】
本明細書中に記載される組成物を用いて実施される治療または療法は、治療前に存在するこのような症候に比して、あるいはこのような組成物で治療されない個体(ヒトまたはモデル動物)または他の適切な対照におけるこのような症候に比して、1つ以上の症候が低減される場合(例えば少なくとも10%または臨床的査定尺度で少なくとも1点)、「有効」とみなされる。症候は、標的にされる疾患または障害によって明白に変わるが、しかし通常の熟練臨床医または技術者により測定され得る。このような症候は、例えば、疾患または障害の1つ以上の生化学的指標のレベル(例えば、疾患、罹患細胞数等と相関する酵素または代謝産物のレベル)をモニタリングすることにより、身体的症状発現をモニタリングすることにより、あるいは容認された臨床的査定尺度により、測定され得る。
【0102】
同様に、本明細書中に記載されるような組成物を用いて実施される予防は、当該組成物で治療されない類似の個体(ヒトまたは動物モデル)におけるこのような症候に比して、1つ以上の症候の開始または重症度が遅延され、低減され、または無効にされる場合、「有効」である。
【0103】
一実施形態では、本発明は、例えば癌(例えば固形腫瘍)、炎症性疾患、自己免疫疾患、血管増殖性疾患(例えば、AMD(加齢性黄斑変性))から選択される眼の疾患または症状を治療し、抑圧し、または防止するための方法であって、それを必要とする哺乳動物に、治療的有効用量または量のポリペプチド、dAb(これは、本発明によるVEGFまたはVEGFのアンタゴニストと、あるいはIL−1またはTNF−αまたはTNF−αRと結合する)を投与することを包含する方法である。このような眼の疾患または症状の例としては、AMD、ブドウ膜炎、ドライアイ、糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫が挙げられる。
【0104】
フォーマット:
半減期増大は、免疫グロブリン、特に抗体、最も特定的には小サイズの抗体断片のin vivo適用に有用である。このような断片(Fv、ジスルフィド結合Fv、Fab、scFv、dAb)は、身体からの急速なクリアランスを蒙り得る;したがって、それらは迅速に身体のほとんどの部分に到達し得るし、産生が素早く且つ取扱いが容易である一方で、それらのin vivo適用は、in vivoでのそれらのほんの短い持続性により限定されてきた。それゆえ、本明細書中に記載されるdAbは、in vivoでの半減期増大と、その結果としてのより長い身体中持続時間を提供するよう修飾され得る。
【0105】
薬物動態分析およびリガンド半減期の確定のための方法は、当業者にはよく知られている。詳細は、Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacistsに、ならびにPeters et al, Pharmacokinetic analysis: A Practical Approach (1996)に見出され得る。”Pharmacokinetics”, M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. ex edition (1982)(tアルファおよびtベータ半減期ならびに曲線下面積(AUC)のような薬物動態パラメーターを記載する)も参照され得る。
【0106】
半減期(t1/2アルファおよびt1/2ベータ)およびAUCは、時間に対するリガンドの血清濃度の曲線から確定され得る。例えば、この曲線をモデル化するために、WinNonlin分析パッケージ(Pharsight Corp., Mountain View, CA94040, USAから入手可能)が用いられ得る。第一相(アルファ相)では、リガンドは主に患者における分布を受けつつあり、多少の排除を伴う。第二相(ベータ相)は、リガンドが分布されて、リガンドが患者から排泄されるので、血清濃度が減少している末期相である。tアルファ半減期は第一相の半減期であり、tベータ半減期は第二相の半減期である。したがって、一実施形態では、本発明は、15分またはそれ以上の範囲のtα半減期を有する本発明によるリガンドまたはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、その範囲の下限は、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、10時間、11時間または12時間である。さらに、または代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、12時間を含めて12時間までの範囲のtα半減期を有する。一実施形態では、この範囲の上限は、11、10、9、8、7、6または5時間である。適切な範囲の一例は、1〜6時間、2〜5時間または3〜4時間である。
【0107】
一実施形態では、本発明によるdAbまたはdAbを含む組成物は、30分またはそれ以上の範囲のtβ半減期を有する。一実施形態では、この範囲の下限は、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、10時間、11時間または12時間である。さらに、または代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、21日を含めて21日までの範囲のtβ半減期を有する。一実施形態では、この範囲の上限は、12時間、24時間、2日、3日、5日、10日、15日または20日である。一実施形態では、本発明によるリガンドまたは組成物は、12〜60時間の範囲のtβ半減期を有する。さらなる一実施形態では、それは、12〜48時間の範囲である。さらなる一実施形態では、それは12〜26時間の範囲である。
【0108】
上記判定基準のほかに、またはそれに代替的には、本発明は、1mg・分/mlまたはそれ以上の範囲のAUC値(曲線下面積)を有する本発明によるdAbまたはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、この範囲の下限は、5、10、15、20、30、100、200または300mg・分/mlである。さらに、または代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、600mg・分/mlまでの範囲のAUCを有する。一実施形態では、この範囲の上限は、500、400、300、200、150、100、75または50mg・分/mlである。一実施形態では、本発明によるリガンドは、以下からなる群から選択される範囲のAUCを有する:15〜150mg・分/ml、15〜100mg・分/ml、15〜75mg・分/mlおよび15〜50mg・分/ml。
【0109】
本発明のdAbは、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体またはその少なくともトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域の付着により、あるいは抗体ドメインとの接合により、より大きな水力学的サイズを有するようフォーマット化され得る。例えば、dAbは、抗体のより大きな抗原結合断片として、または抗体としてフォーマットされ得る(例えば、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、IgG、scFvとしてフォーマットされる)。別の実施形態では、本発明によるdAbは、別のポリペプチドまたはペプチドとの融合体または接合体としてフォーマットされ得る。
【0110】
本発明のリガンド(例えば、dAb単量体および多量体)の水力学的サイズは、当該技術分野で周知の方法を用いて確定され得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、リガンドの水力学的サイズを確定し得る。リガンドの水力学的サイズを確定するための適切なゲル濾過マトリックス、例えば架橋アガロースマトリックスがよく知られており、容易に入手可能である。
【0111】
リガンドのサイズ、すなわちdAbフォーマット(例えば、dAb単量体に付着されるPEG部分のサイズ)は所望の用途によって変わり得る。例えば、dAbが長時間、全身循環中に残存することが望ましい場合、そのサイズは、例えばIg様タンパク質としてフォーマットすることにより増大され得る。
【0112】
in vivoで半減期を増大する抗原またはエピトープを標的化することによる半減期延長
リガンドの水力学的サイズおよびその血清半減期は、本明細書中に記載されるように、in vivoで半減期を増大する抗原またはエピトープに結合する結合ドメイン(例えば、抗体または抗体断片)とdAbを接合するかまたは会合させることによっても増大され得る。例えば、VEGF dAbは、抗血清アルブミンまたは抗新生児Fc受容体抗体または抗体断片、例えば抗SAまたは抗新生児Fc受容体dAb、Fab、Fab’またはscFvに、あるいは抗SAアフィボディまたは抗新生児Fc受容体アフィボディまたは抗SAアビマー、あるいは抗SA結合ドメイン(CTLA−4、リポカリン、SpA、アフィボディ、アビマー、GroElおよびフィブロネクチン(好ましくはこれらに限定されない)からなる群から選択される足場を含む)に接合されるかまたは連結され得る(これらの結合ドメインの開示に関しては、PCT/GB2008/000453(2008年2月8日出願)参照。このドメインおよびそれらの配列は、参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する)。接合することは、血清アルブミンに結合する結合ドメインと(共有的にまたは非共有的に)結合される本発明のポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストを含む組成物を指す。
【0113】
in vivoでの血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、例えば、トランスフェリン受容体特異的リガンド−神経薬学的因子融合タンパク質(米国特許第5,977,307号(この教示は参照により本明細書中で援用される)参照)、脳毛細管内皮細胞受容体、トランスフェリン、トランスフェリン受容体(例えば、可溶性トランスフェリン受容体)、インスリン、インスリン様増殖因子1(IGF1)受容体、インスリン様増殖因子2(IGF2)受容体、インスリン受容体、血液凝固因子X、α1−抗トリプシンおよびHNF 1αが挙げられる。血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、アルファ−1糖タンパク質(オロソムコイド;AAG)、アルファ−1抗キモトリプシン(ACT)、アルファ−1マイクログロブリン(プロテインHC;AIM)、抗トロンビンIII(AT III)、アポリポプロテインA−1(アポA−1)、アポリポプロテインB(アポB)、セルロプラスミン(Cp)、補体成分C3(C3)、補体成分C4(C4)、C1エステラーゼ阻害剤(C1 INH)、C−反応性タンパク質(CRP)、フェリチン(FER)、ヘモペキシン(HPX)、リポタンパク質(a)(Lp(a))、マンノース結合タンパク質(MBP)、ミオグロビン(Myo)、プレアルブミン(トランスチレチン;PAL)、レチノール結合タンパク質(RBP)およびリウマチ因子(RF)も挙げられる。
【0114】
細胞外マトリックスからの適切なタンパク質としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、インテグリンおよびフィブロネクチンが挙げられる。コラーゲンは、細胞外マトリックスの主要タンパク質である。約15の型のコラーゲン分子が一般に知られており、身体の異なる部分に見出され、例えば、I型コラーゲン(身体コラーゲンの90%を占める)は骨、皮膚、腱、靭帯、角膜、内部器官に見出され、あるいはII型コラーゲンは軟骨、椎骨円板、脊索および眼の硝子体液中に見出される。
【0115】
血液からの適切なタンパク質としては、例えば、血漿タンパク質(例えば、フィブリン、α−2マクログロブリン、血清アルブミン、フィブリノーゲン(例えば、フィブリノーゲンA、フィブリノーゲンB)、血清アミロイドプロテインA、ハプトグロビン、プロフィリン、ユビキチン、ウテログロブリンおよびβ−2−マイクログロブリン)、酵素および酵素阻害剤(例えば、プラスミノーゲン、ライソザイム、シスタチンC、アルファ−1−アンチトリプシンおよび膵臓トリプシン阻害剤)、免疫系のタンパク質、例えば免疫グロブリンタンパク質(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、免疫グロブリン軽鎖(カッパ/ラムダ))、輸送タンパク質(例えば、レチノール結合タンパク質、α−1マイクログロブリン)、デフェンシン(例えば、ベータ−デフェンシン1、好中球デフェンシン1、好中球デフェンシン2および好中球デフェンシン3)等が挙げられる。
【0116】
血液脳関門または神経組織で見出される適切なタンパク質としては、例えば、メラノコルチン受容体、ミエリン、アスコルビン酸輸送体等が挙げられる。
【0117】
in vivoでの血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、腎臓に限局されるタンパク質(例えば、ポリシスチン、IV型コラーゲン、有機陰イオン輸送体K1、ヘイマン抗原)、肝臓に限局されるタンパク質(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、G250)、肺に限局されるタンパク質(例えば分泌成分。IgAに結合する)、心臓に限局されるタンパク質(例えばHSP27。拡張心筋症と関連する)、皮膚に限局されるタンパク質(例えばケラチン)、骨特異的タンパク質、例えば形態形成タンパク質(BMP)(これは、骨形成活性を実証するタンパク質の形質転換増殖因子βスーパーファミリーのサブセットである(例えば、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8))、腫瘍特異的タンパク質(例えば、栄養芽細胞抗原、ハーセプチン受容体、エストロゲン受容体、カテプシン(例えば、カテプシンB。これは肝臓および脾臓中に見出され得る))も挙げられる。
【0118】
適切な疾患特異的タンパク質としては、例えば、活性化T細胞上でのみ発現される抗原、例えば、LAG−3(リンパ球活性化遺伝子)、オステオプロテゲリンリガンド(OPGL;Nature 402, 304-309 (1999)参照)、OX40(TNF受容体ファミリーの一成員。活性化T細胞上で発現され、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)産生細胞中で特異的に上方調節される;Immunol. 165(1): 263-70 (2000)参照)が挙げられる。適切な疾患特異的タンパク質としては、例えば、メタロプロテアーゼ(関節炎/癌と関連)、例えばCG6512ショウジョウバエ、ヒト・パラプレジン、ヒトFtsH、ヒトAFG3L2、ネズミftsH;ならびに血管形成増殖因子、例えば、酸性線維芽細胞増殖因子(FGF−1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)、血管内皮細胞増殖因子/血管浸透性因子(VEGF/VPF)、形質転換増殖因子−α(TGFα)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)、アンギオゲニン、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−8(IL−8)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、胎盤増殖因子(P1GF)、ミドカイン血小板由来増殖因子−BB(PDGF)およびフラクタルカインも挙げられる。
【0119】
in vivoでの血清半減期を拡大する適切なポリペプチドとしては、ストレスタンパク質、例えば熱ショックタンパク質(HSP)も挙げられる。HSPは、細胞内に普通に見出される。それらが細胞外に見出される場合、それは、細胞が死んでおり、その内容物を外に出した、ということの指標である。このプログラムされない細胞死(壊死)は、外傷、疾患または損傷の結果として、細胞外HSPが免疫系からの応答を誘発した場合に起こる。細胞外HSPとの結合は、疾患部位への本発明の組成物の局在化を生じ得る。
【0120】
Fc輸送に関与する適切なタンパク質としては、例えば、ブラムベル受容体(FcRBとしても知られている)が挙げられる。このFc受容体は2つの機能を有し、この両方が送達のために潜在的に有用である。この機能は、(1)胎盤を横断する母親から子供へのIgGの輸送、(2)IgGを分解から防護し、それによりその血清半減期を延長することである。受容体はエンドソームからIgGを再循環させる、と考えられる(Holliger et al, Nat Biotechnol 15(7): 632-6 (1997)参照)。
【0121】
血清アルブミンに結合するdAb
本発明は、一実施形態において、眼標的分子、例えばVEGF、IL−1またはTNF−αと結合する第一dAb、ならびに血清アルブミン(SA)に結合する第二dAbを提供し、上記の第二dAbは、表面プラズモン共鳴により確定した場合に、1nM〜1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、100、200、300、400または500μM(すなわち、×10−9〜5×10−4)、または100nM〜10μM、または1〜5μM、または3〜70nMまたは10nM〜1、2、3、4または5μM、例えば30〜70nM(表面プラズモン共鳴により確定した場合)のKで、SAに結合する。一実施形態では、第一dAb(またはdAb単量体)は、表面プラズモン共鳴により確定した場合、約1、50、70、100、150、200、300nM、あるいは1、2または3μMのKで、SA(例えばHSA)に結合する。一実施形態では、第一抗SA dAbおよびVEGFに対する第二dAbを含む二重特異性リガンドに関して、その標的に対する第二dAbの親和性(例えば、BiaCoreを用いて、表面プラズモン共鳴により測定した場合のKおよび/またはKoff)は、SAに対する第一dAbの親和性の1〜100000倍(例えば、100〜100000、または1000〜100000、または10000〜100000倍)である。一実施形態では、血清アルブミンはヒト血清アルブミン(HSA)である。例えば、第一dAbは約10μMの親和性でSAに結合するが、一方、第二dAbは100pMの親和性でその標的に結合する。一実施形態では、血清アルブミンはヒト血清アルブミン(HSA)である。一実施形態では、第一dAbは、約50、例えば70、100、150または200nMのKでSA(例えばHSA)に結合する。二重特異性リガンドの詳細は、WO03002609、WO04003019およびWO04058821に見出される。
【0122】
本発明のdAbは、一実施形態では、表面プラズモン共鳴により確定した場合に、1nM〜1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、100、200、300、400または500μM(すなわち、×10−9〜5×10−4)、または100nM〜10μM、または1〜5μM、または3〜70nMまたは10nM〜1、2、3、4または5μM、例えば30〜70nM(表面プラズモン共鳴により確定した場合)のKで、血清アルブミン(SA)に結合するdAbを含み得る。一実施形態では、第一dAb(またはdAb単量体)は、表面プラズモン共鳴により確定した場合、約1、50、70、100、150、200、300nM、あるいは1、2または3μMのKで、SA(例えばHSA)に結合する。一実施形態では、第一および第二dAbは、リンカー、例えば1〜4アミノ酸、または1〜3アミノ酸、あるいは3より多くのアミノ酸、あるいは4より多い、5より多い、6より多い、7より多い、8より多い、9より多い、10より多い、15より多いまたは20より多いアミノ酸を有するリンカーにより連結される。一実施形態では、より長いリンカー(3アミノ酸より長い)を用いて、効力(アンタゴニスト中のdAbの一方または両方のK)を増強する。
【0123】
特定の実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンに結合し、アルブミンとの結合に関して、以下からなる群から選択されるdAbと競合する:
MSA−16、MSA−26(これらの配列の開示に関してはWO04003019参照(配列およびそれらの核酸相手は参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する))、
DOM7m−16(配列番号473)、DOM7m−12(配列番号474)、DOM7m−26(配列番号475)、DOM7r−1(配列番号476)、DOM7r−3(配列番号477)、DOM7r−4(配列番号478)、DOM7r−5(配列番号479)、DOM7r−7(配列番号480)、DOM7r−8(配列番号481)、DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−3(配列番号483)、DOM7h−4(配列番号484)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7r−13(配列番号497)、DOM7r−14(配列番号498)、DOM7r−15(配列番号499)、DOM7r−16(配列番号500)、DOM7r−17(配列番号501)、DOM7r−18(配列番号502)、DOM7r−19(配列番号503)、DOM7r−20(配列番号504)、DOM7r−21(配列番号505)、DOM7r−22(配列番号506)、DOM7r−23(配列番号507)、DOM7r−24(配列番号508)、DOM7r−25(配列番号509)、DOM7r−26(配列番号510)、DOM7r−27(配列番号511)、DOM7r−28(配列番号512)、DOM7r−29(配列番号513)、DOM7r−30(配列番号514)、DOM7r−31(配列番号515)、DOM7r−32(配列番号516)、DOM7r−33(配列番号517)(これらの配列の開示に関しては、WO2007080392参照。これらの配列およびそれらの核酸相手は参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する。この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb8(dAb10)、dAb 10、dAb36、dAb7r20(DOM7r20)、dAb7r21(DOM7r21)、dAb7r22(DOM7r22)、dAb7r23(DOM7r23)、dAb7r24(DOM7r24)、dAb7r25(DOM7r25)、dAb7r26(DOM7r26)、dAb7r27(DOM7r27)、dAb7r28(DOM7r28)、dAb7r29(DOM7r29)、dAb7r29(DOM7r29)、dAb7r31(DOM7r31)、dAb7r32(DOM7r32)、dAb7r33(DOM7r33)、dAb7r33(DOM7r33)、dAb7h22(DOM7h22)、dAb7h23(DOM7h23)、dAb7h24(DOM7h24)、dAb7h25(DOM7h25)、dAb7h26(DOM7h26)、dAb7h27(DOM7h27)、dAb7h30(DOM7h30)、dAb7h31(DOM7h31)、dAb2(dAbs 4、7、41)、dAb4、dAb7、dAb11、dAb12(dAb7m12)、dAb13(dAb 15)、dAb15、dAb16(dAb21、dAb7m16)、dAb17、dAb18、dAb19、dAb21、dAb22、dAb23、dAb24、dAb25(dAb26、dAb7m26)、dAb27、dAb30(dAb35)、dAb31、dAb33、dAb34、dAb35、dAb38(dAb54)、dAb41、dAb46(dAbs 47、52および56)、dAb47、dAb52、dAb53、dAb54、dAb55、dAb56、dAb7m12、dAb7m16、dAb7m26、dAb7r1(DOM 7r1)、dAb7r3(DOM7r3)、dAb7r4(DOM7r4)、dAb7r5(DOM7r5)、dAb7r7(DOM7r7)、dAb7r8(DOM7r8)、dAb7r13(DOM7r13)、dAb7r14(DOM7r14)、dAb7r15(DOM7r15)、dAb7r16(DOM7r16)、dAb7r17(DOM7r17)、dAb7r18(DOM7r18)、dAb7r19(DOM7r19)、dAb7h1(DOM7h1)、dAb7h2(DOM7h2)、dAb7h6(DOM7h6)、dAb7h7(DOM7h7)、dAb7h8(DOM7h8)、dAb7h9(DOM7h9)、dAb7h10(DOM7h10)、dAb7h11(DOM7h11)、dAb7h12(DOM7h12)、dAb7h13(DOM7h13)、dAb7h14(DOM7h14)、dAb7p1(DOM7p1)およびdAb7p2(DOM7p2)(2008年2月8日に出願され、これらの配列の開示に関してWO 2008/096158として公開されたPCT/GB2008/000453を参照。これらの配列およびそれらの核酸相手は参照により本明細書中に組み入れられ、本文の開示の一部を構成する)。代替的名称は、dAbの後の括弧内に示されており、例えばdAb8はdAb10である代替的名称を有し、すなわちdAb8(dAb10)である。
【0124】
ある実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンに結合し、以下からなる群から選択されるdAbのアミノ酸配列と、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
MSA−16、MSA−26、
DOM7m−16(配列番号473)、DOM7m−12(配列番号474)、DOM7m−26(配列番号475)、DOM7r−1(配列番号476)、DOM7r−3(配列番号477)、DOM7r−4(配列番号478)、DOM7r−5(配列番号479)、DOM7r−7(配列番号480)、DOM7r−8(配列番号481)、DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−3(配列番号483)、DOM7h−4(配列番号484)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7r−13(配列番号497)、DOM7r−14(配列番号498)、DOM7r−15(配列番号499)、DOM7r−16(配列番号500)、DOM7r−17(配列番号501)、DOM7r−18(配列番号502)、DOM7r−19(配列番号503)、DOM7r−20(配列番号504)、DOM7r−21(配列番号505)、DOM7r−22(配列番号506)、DOM7r−23(配列番号507)、DOM7r−24(配列番号508)、DOM7r−25(配列番号509)、DOM7r−26(配列番号510)、DOM7r−27(配列番号511)、DOM7r−28(配列番号512)、DOM7r−29(配列番号513)、DOM7r−30(配列番号514)、DOM7r−31(配列番号515)、DOM7r−32(配列番号516)、DOM7r−33(配列番号517)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb8、dAb 10、dAb36、dAb7r20、dAb7r21、dAb7r22、dAb7r23、dAb7r24、dAb7r25、dAb7r26、dAb7r27、dAb7r28、dAb7r29、dAb7r30、dAb7r31、dAb7r32、dAb7r33、dAb7h21、dAb7h22、dAb7h23、dAb7h24、dAb7h25、dAb7h26、dAb7h27、dAb7h30、dAb7h31、dAb2、dAb4、dAb7、dAb11、dAb12、dAb13、dAb15、dAb16、dAb17、dAb18、dAb19、dAb21、dAb22、dAb23、dAb24、dAb25、dAb26、dAb27、dAb30、dAb31、dAb33、dAb34、dAb35、dAb38、dAb41、dAb46、dAb47、dAb52、dAb53、dAb54、dAb55、dAb56、dAb7m12、dAb7m16、dAb7m26、dAb7r1、dAb7r3、dAb7r4、dAb7r5、dAb7r7、dAb7r8、dAb7r13、dAb7r14、dAb7r15、dAb7r16、dAb7r17、dAb7r18、dAb7r19、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13、dAb7h14、dAb7p1およびdAb7p2。
【0125】
例えば、ヒト血清アルブミンに結合するdAbは、DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−3(配列番号483)、DOM7h−4(配列番号484)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7r−13(配列番号497)、DOM7r−14(配列番号498)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb8、dAb 10、dAb36、dAb7h21、dAb7h22、dAb7h23、dAb7h24、dAb7h25、dAb7h26、dAb7h27、dAb7h30、dAb7h31、dAb2、dAb4、dAb7、dAb11、dAb12、dAb13、dAb15、dAb16、dAb17、dAb18、dAb19、dAb21、dAb22、dAb23、dAb24、dAb25、dAb26、dAb27、dAb30、dAb31、dAb33、dAb34、dAb35、dAb38、dAb41、dAb46、dAb47、dAb52、dAb53、dAb54、dAb55、dAb56、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13およびdAb7h14
と、少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0126】
ある実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンに結合し、以下からなる群から選択されるdAbのアミノ酸配列と、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−8(配列番号496)、DOM7h−22(配列番号489)、DOM7h−23(配列番号490)、DOM7h−24(配列番号491)、DOM7h−25(配列番号492)、DOM7h−26(配列番号493)、DOM7h−21(配列番号494)、DOM7h−27(配列番号495)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb7h21、dAb7h22、dAb7h23、dAb7h24、dAb7h25、dAb7h26、dAb7h27、dAb7h30、dAb7h31、dAb2、dAb4、dAb7、dAb38、dAb41、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13およびdAb7h14。
【0127】
さらに特定の実施形態では、dAbは、ヒト血清アルブミンに結合し、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVκdAbである:
DOM7h−2(配列番号482)、DOM7h−6(配列番号485)、DOM7h−1(配列番号486)、DOM7h−7(配列番号487)、DOM7h−8(配列番号496)(この段落における配列番号は、WO2007080392に出ていたものである)、
dAb2、dAb4、dAb7、dAb38、dAb41、dAb54、dAb7h1、dAb7h2、dAb7h6、dAb7h7、dAb7h8、dAb7h9、dAb7h10、dAb7h11、dAb7h12、dAb7h13およびdAb7h14。
【0128】
さらに特定の実施形態では、dAbは、ヒト血清アルブミンに結合し、dAb7h30およびdAb7h31から選択されるアミノ酸配列を有するVdAbである。
【0129】
さらに特定の実施形態では、dAbはdAb7h11またはdAb7h14である。
【0130】
他の実施形態では、dAb、リガンドまたはアンタゴニストは、ヒト血清アルブミンに結合し、前記のアミノ酸配列のいずれかのCDRのうちの1、2または3つ、例えばdAb7h11またはdAb7h14のCDRのうちの1、2または3つを含む。
【0131】
血清アルブミンに結合する適切なラクダ類VHHとしては、WO 2004/041862(Ablynx N.V.)に、ならびにWO2007080392(このVHH配列およびそれらの核酸相手は、参照により本明細書中に組み入れられ、そして本文の開示の一部を構成する)に開示されたもの、例えば、配列A(配列番号518)、配列B(配列番号519)、配列C(配列番号520)、配列D(配列番号521)、配列E(配列番号522)、配列F(配列番号523)、配列G(配列番号524)、配列H(配列番号525)、配列I(配列番号526)、配列J(配列番号527)、配列K(配列番号528)、配列L(配列番号529)、配列M(配列番号530)、配列N(配列番号531)、配列O(配列番号532)、配列P(配列番号533)、配列Q(配列番号534)が挙げられ、これらの配列番号は、WO2007080392またはWO 2004/041862(Ablynx N.V.)に列挙されたものと対応する。ある実施形態では、ラクダ類VHHは、ヒト血清アルブミンに結合し、WO2007080392に開示されたALB1と、または配列番号518〜534(これらの配列番号は、WO2007080392またはWO 2004/041862に列挙されたものと対応する)のいずれか1つと、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、dAb組成物は、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)との結合に関して本明細書中に開示される任意の抗血清アルブミンdAbと競合する抗血清アルブミンdAbを含む。
【0133】
半減期延長部分(例えばアルブミン)との接合
一実施形態では、(1つ以上の)半減期延長部分(例えば、アルブミン、トランスフェリンならびにその断片および類似体)は、VEGF結合(またはIL−1またはTNF−α結合、あるいはTNF−αR結合)dAbと接合されるかまたは会合される。VEGF(またはIL−1、あるいはTNF−αまたはTNF−αR)結合フォーマットに用いるための適切なアルブミン、アルブミン断片またはアルブミン変異体の例は、WO 2005077042(この開示内容は参照により本明細書中に組み入れられて、本文の開示の一部を構成する)に記載されている。特に、以下のアルブミン、アルブミン断片またはアルブミン変異体が、本発明に用いられ得る:
・配列番号1(WO 2005077042に開示。この配列は、参照により本開示中に明白に組み入れられる);
・WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸1〜387を含むかまたはそれからなるアルブミン断片または変異体;
・(a)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸54〜61;(b)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸76〜89;(c)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸92〜l00;(d)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸170〜176;(e)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸247〜252;(f)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸266〜277;(g)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸280〜288;(h)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸362〜368;(i)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸439〜447;(j)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸462〜475;(k)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸478〜486;および(l)WO 2005077042における配列番号1のアミノ酸560〜566からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアルブミンあるいはその断片または変異体。
【0134】
VEGF結合フォーマットに用いるための適切なアルブミン、断片および類似体のさらなる例は、WO 03076567(この開示内容は参照により本明細書中に組み入れられて、本文の開示の一部を構成する)に記載されている。特に、以下のアルブミン、断片または変異体が本発明に用いられ得る:
・WO 03076567に、例えば図3に記載されているようなヒト血清アルブミン(この配列情報は、参照により本開示中に明白に組み入れられる);
・66,500の式分子量を有する585アミノ酸の単一非グリコシル化ポリペプチド鎖からなるヒト血清アルブミン(HA)(Meloun, et al., FEBS Letters 58: 136 (1975);Behrens, et al., Fed. Proc. 34: 591 (1975);Lawn, et al., Nucleic Acids Research 9: 6102-6114 (1981);Minghetti, et al., J. Biol. Chem. 261: 6747 (1986)参照);
・Weitkamp, et al., Ann. Hum. Genet. 37: 219 (1973)に記載されたようなアルブミンの多型性変異体または類似体または断片;
・EP 322094に記載されたようなアルブミン断片または変異体、例えばHA(1〜373)、HA(1〜388)、HA(1〜389)、HA(1〜369)およびHA(1〜419)ならびに1〜369および1〜419間の断片;
・EP 399666に記載されたようなアルブミン断片または変異体、例えばHA(1〜177)およびHA(1〜200)ならびにHA(1〜X)間の断片(ここで、Xは178から199までの任意の数である)。
【0135】
(1つ以上の)半減期延長部分(例えば、アルブミン、トランスフェリンならびにその断片および類似体)が本発明のdAbをフォーマットするために用いられる場合、それは、任意の適切な方法を用いて、例えば直接融合により、例えば融合タンパク質をコードする単一ヌクレオチド構築物を用いることにより(ここで、上記融合タンパク質は、dAbに対してN−またはC−末端に位置する半減期延長部分を有する単一ポリペプチド鎖としてコードされる)、接合され得る。代替的には、接合は、部分間にペプチドリンカー、例えばWO 03076567またはWO 2004003019に記載されたようなペプチドリンカー(これらのリンカー開示は、参照により本発明の開示中に組み入れられて、本発明に用いるための例を提供する)を用いることにより、達成され得る。典型的には、in vivoで血清半減期を拡大するポリペプチドは、in vivoで天然に生じる、そして生物体(例えばヒト)から望ましくない物質を除去する内因性機序による分解または除去を阻止するポリペプチドである。例えば、in vivoで血清半減期を拡大するポリペプチドは、細胞外マトリックスからのタンパク質、血中に見出されるタンパク質、血液脳関門に、または神経組織中に見出されるタンパク質、腎臓、肝臓、肺、心臓、皮膚または骨に限局されるタンパク質、ストレスタンパク質、疾患特異的タンパク質、あるいはFc輸送に関与するタンパク質から選択され得る。
【0136】
本発明のdAbは、第二免疫グロブリン単一可変ドメインに直接融合される第一免疫グロブリン単一可変ドメインを含有する融合タンパク質としてフォーマットされ得る。所望により、このようなフォーマットは、半減期延長部分をさらに含み得る。例えば、リガンドは、血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインに直接融合される第二免疫グロブリン単一可変ドメインに直接融合される第一免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る。
【0137】
一般的に、標的に対する結合特異性を有する結合部位を有するポリペプチドドメインの配向は、リガンドがリンカーを含んでいてもいなくても、設計選択の問題である。しかしながら、いくつかの配向は、リンカーがあってもなくても、他の配向より良好な結合特性を提供する。全ての配向(例えば、dAb1−リンカー−dAb2;dAb2−リンカー−dAb1)が本発明に包含され、所望の結合特性を提供する配向を含有するリガンドは、スクリーニングにより容易に同定され得る。
【0138】
本発明によるdAbは、dAb単量体、二量体および三量体を含めて、C2およびC3ドメインの一方または両方と、任意にヒンジ領域を含む抗体Fc領域と連結され得る。例えば、単一ヌクレオチド配列としてFc領域に連結されるリガンドをコードするベクターを用いて、このようなポリペプチドを調製し得る。
【0139】
本発明の実施形態において、dAbは、例えば、WO2008149147に記載されたようなメタノール資化酵母または大腸菌E.G.による発現に関して最適化されたコドン最適化ヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【実施例1】
【0140】
ウサギの眼へのDOM15−26−593(mycタグ化抗VEGF dAb)の局所的送達:
DOM−15−26−593は、WO2008149147に記載されたように選択され、調製され得るし、図1aに示したアミノ酸配列(配列番号1)を有する。
【0141】
mycタグ化DOM15−26−593(図1aに示したアミノ酸配列(配列番号1)を有するDom15−26−593 dAbを調製し、c−mycタグ化抗VEGF dAbとしてこの実験に用いた)を、104mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)トゥイーン80、0.5%(w/v)カプリン酸ナトリウム、ならびに0.3%または1.5%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を補足した50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中に製剤化された2mg/mlの濃度の内毒素無含有調製物として調製した。成体のチンチラバスタード・ウサギを、Charles River(Germany)から入手した。使用前に、動物を馴化させた。6匹の雌ウサギの左眼に、4時間の期間に亘って20分毎に、抗VEGF dAbの2mg/ml溶液50μlを投与した。各投与は、結膜嚢下に入れた。3匹には0.3%HPMC中に製剤化した抗VEGF dAbを投与し、3匹には1.5%HPMC中に製剤化した薬剤を用いた。最終投与の2時間後に、動物を屠殺した。安楽死が確証された時から出来るだけ近い時点で、各動物から両眼を摘出した。各眼をPBS中で洗浄して、過剰量の薬剤をその表面から除去した。眼房水および硝子体液の試料を収集し、分析前に凍結保存した(−20℃)。サンドイッチELISA検定を用いて、存在するDOM15−26−593(抗VEGF−dAb)の濃度に関して、眼房水および硝子体液の試料を試験した。この場合、dAbを組換えヒトVEGFタンパク質被覆プレート上に捕捉し、c−mycタグに関して特異性を有する抗体を用いて検出した。
【0142】
上記のVEGF dAbELISAは、以下のように実施した:
本検定は、VEGF dAbを捕捉するために、Immunsorbプレート(Nuncから入手)の表面に被覆される組換えヒトVEGF(rVEGF、R&D Systemsから入手)を用いる。プレートを洗浄して、任意の非結合dAbを除去した。その後、VEGF dabのMycタグに対する抗体(Sigmaから入手)を用いて、結合dAbを検出した。過剰量の抗体を洗浄により除去し、抗マウスIgGペルオキシダーゼ接合体(Sigma)を用いて結合抗myc抗体を検出した。TMB溶液を用いて検定を発現させ、酸を用いて停止した。検定からのシグナルは、dAbの量と比例する。検定における段階を以下に要約する:
プレートの被覆:
1.十分量のrVEGFを0.25μg/mlで調製して、プレートを被覆した(各ELISAプレートに関して5ml)。これを、各プレートに関して、ストックVEGF25μLを5mLの炭酸塩コーティング緩衝液(0.2M炭酸−重炭酸ナトリウムコーティング緩衝液、pH9.4(Pierce、カタログ番号28382))に添加し、転倒混合することによって実行した。
【0143】
2.rVEGF(0.25μg/mL)溶液50μLを、マルチチャンネルピペットを用いてImmunsorb96ウェルELISAプレートの各ウェルに添加した。
【0144】
3.プレートにプラスチック蓋を被せて、4℃で約42時間保存した。
【0145】
プレートの洗浄およびブロッキング:
4.プレートを4℃貯蔵から取り出した。
【0146】
5.各プレートを、PBS+0.1%トゥイーン20で6回洗浄した。
【0147】
6.検定ブロッキング緩衝液(1%BSA/PBS)100μLを、各プレートの全ウェルに添加した。
【0148】
7.プレートを、1時間撹拌しながら室温でインキュベートした。
【0149】
試料および標準物質の調製:
8.標準物質および試料を、プレートをブロッキングする間、検定希釈液(0.1%BSA/0.05%トゥイーン20/PBS)中に希釈した。標準物質(参照物質、すなわちDom15−26−593)を連続(10倍)希釈して、対数希釈曲線を作成した。
【0150】
試料の添加:
9.ブロッキングしたプレートを洗浄した(上記6.)。
【0151】
10.希釈試料または標準物質50μlを、適切なウェルに添加した。50μl/ウェル検定希釈液をウェルに添加して、陰性対照として用いた。
【0152】
11.撹拌しながら室温で2時間、プレートをインキュベートした。
【0153】
12.プレートを6回洗浄し、ブロット乾燥した(上記6.)。
【0154】
13.全ウェルに、1:500に希釈した(検定希釈液:0.1%BSA/0.05%トゥイーン20/PBS中)抗myc抗体 50μL(9E10 Sigma M5546)を添加した(すなわち、各プレートに関して、抗myc抗体(9E10)10μLを検定希釈液5mlに添加した)。
【0155】
14.室温で少なくとも1時間、ロッカー上でプレートをインキュベートした。
【0156】
15.プレートを6回洗浄し、ブロット乾燥した(上記6.)。
【0157】
16.50μLの抗マウスIg HRP(SigmaA9309)を1:10000で全ウェルに添加した(すなわち、抗マウスIg HRP抗体5μLを、検定希釈液(0.1%BSA/0.05%トゥイーン20/PBS)45μLに添加することにより、ストック抗体を1:10に希釈する)。各プレートに関して、1:10希釈ストック5μLを検定希釈液5mlに添加する。
【0158】
17.室温で少なくとも1時間、ロッカー上でプレートをインキュベートした。
【0159】
18.プレートを6回洗浄し、ブロット乾燥した(上記6.)。
【0160】
19.TMB基質50μLを全ウェルに添加した。この検定の発現は非常に迅速であるので、一度に3つ以下のプレートにTMBを添加することが望ましい。TMBは、冷蔵庫から直接、あるいは室温で用いられ得る。
【0161】
20.(一旦、十分に発色したら、)全てのウェルに1M HCl 50μLを添加することにより、反応を停止させた。
【0162】
21.プレートを、96ウェルプレート読取器で450nmで読み取った。
【0163】
結果:
結果を表1に示す。投与スケジュールは十分に耐容されて、発赤、刺激性または異常動物行動の徴候は観察されなかった。処置および対側(非処置)眼から得られた硝子体液および眼房水試料中に存在する抗VEGF dAb(DOM15−26−593)のレベルを調べるために実行されるELISA検定の結果は、検出されたdAbのほとんどが処置眼の硝子体液中に存在する、ということを示した。硝子体液中に最高濃度を有したウサギ(動物3)は、処置眼の眼房水中に存在する検出レベルの抗VEGF dAbも示した。
【0164】
1.5%HPMC(より粘性の溶液である)中に製剤化されたdAbは、より流動性の0.3%HPMC含有製剤より有効に各投与後に、眼中に保持されると思われる、ということも観察された。低HPMC濃度で投与されたウサギは、それを瞬きして出すことにより、その後の投与物質を多少失うと思われた。
【表1】

【0165】
結論:
抗VEGF dAbの用量を、結膜嚢中に入れた。多少のdAbは角膜を通り抜けて、その後、眼房水中に検出され得る、と予測された。意外にも、検出された抗VEGF dAbの大部分は硝子体液中に存在し、この観察は、後眼房に進入するために強膜および脈絡膜を通して眼窩から分散することにより眼に入る抗VEGF dAbと一致する。
【0166】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)は、増粘剤として製剤中に含まれた。1.5%製剤は、より効果的に処置眼中に保持されると思われた。より流動性の0.3%製剤は十分には保持されず、これが、この群における3羽のウサギのうちの2羽で観察された対側眼への抗VEGF dAbの移動に関与し得る。
【実施例2】
【0167】
ウサギの眼への硝子体内投与後のDOM15−26−593の薬物動態:
硝子体液中へのDOM15−26−593の直接注入後に、抗VEGF免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体(抗VEGF dAb)DOM15−26−593が眼中に保持される持続期間を調べるために、実験を実行した。図1aに示したアミノ酸配列(配列番号1)を有するDom15−26−593 dAbを調製し(104mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)トゥイーン80を補足した50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中に製剤化された2mg/ml濃度)、この実験においてc−myc標的化抗VEGF dAbとして用いた。成体のチンチラバスタード・ウサギを、Charles River(Germany)から入手した。使用前に、動物を馴化させた。各ウサギを麻酔して、c−mycタグ化抗VEGF dAb(DOM15−26−593)の2mg/ml溶液(実施例1に記載したように調製した溶液)10μlを左眼の硝子体液中に直接注入した(総量20μg)。注入後の種々の時点(2、24および30時間)でウサギを安楽死させて、両眼を摘出し、眼房水および硝子体液の試料を収集した。これらの試料を、分析前に凍結保存した(−20℃)。サンドイッチELISA検定を用いて、存在するDOM15−26−593の濃度に関して、眼房水および硝子体液の試料を試験した。この場合、dAbを組換えVEGFタンパク質被覆プレート上に捕捉し、c−mycタグに関して特異性を有する抗体を用いて検出した。
【0168】
結果:
DOM15−26−593(抗VEGF dAb)の濃度を、以下の表2に示す:
【表2】

【0169】
結論:
実験の結果は、DOM15−26−593の濃度が投与後24時間目の注入濃度に近いレベルに保持された、ということを示した。ドメイン抗体は、投与後24および30時間目に硝子体液中に存在する。
【0170】
低濃度のDOM15−26−593(抗VEGF dAb)が、処置眼のいくつかの眼房液中で検出された。しかしながら、対側非処置眼へのDOM15−26−593の移入は最小であった。
【実施例3】
【0171】
ラットレーザー誘導脈絡膜新血管新生(CNV)モデル:
5匹の2〜4月齢雌Dark Agouti(DA)ラットの群において、実験的脈絡膜新血管新生(CNV)を片側で誘導した。レーザー光凝固(PC)を用いて、麻酔ラットのブルッフ膜を破裂させた。スリットランプ眼底検査鏡に取り付けられたダイオード励起532nmアルゴンレーザー(Novus Omni, Coherent Inc., Santa Clara, CA)、ならびに視力(ocular power)を中和するために角膜に適用されるハンドヘルド平凹コンタクトレンズ(Moorfields Eye Hospital, London, UK)を用いて、色素レーザーPCを実施した。5つの病変(532nm、150mW、0.2秒、直径200μm)を、各実験動物の片眼に作成した。視神経を中心に置いて半径500μmで、大きな血管を避けて、乳頭周囲分布および標準化方式で、病変を作成した。レーザー損傷の形態学的終点を、ブルッフ膜の崩壊に関連した徴候である空洞気泡の一過性出現として同定した。気泡の形成を生じないレーザースポットを、分析から除外した。レーザーCNV誘導直後に、各動物に(視神経円板を中心にして)5μL容積で硝子体内投与した(病変が作成された網膜域を被覆するのに十分な容積が存在すると算定されたので、この容積を選択した)。104mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)トゥイーン80を補足した50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中に2mg/mlの濃度として、dAbを処方した。5μL容積は、50μgの抗VEGF dAb(DOM15−26−593;図1aに示したアミノ酸配列(配列番号1)を有する)、50μgの抗VEGF DOM15−26−593−Fc融合体(図1bに示したアミノ酸配列(配列番号2)を有する)(あるいは化合物なし(ビヒクルのみ、陰性対照))を含有した。病変生成および注入後7および14日目に、共焦点高分解能SLO蛍光眼底造影(0.2mlの10%腹腔内注入フルオレセインナトリウム、FS)およびOCT(Heidelberg Spectralis, Heidelberg, Germany)を用いて、CNVおよび関連漏出のin vivo画像データを生成した。ベースライン反射率(488nmおよび790nmでの)および自己蛍光(励起 488nm、発光 >498nm)画像をFSの注入前に作成して、蛍光眼底造影画像における病変の位置を示す手助けをした。FS注入直後に、動静脈相を記録した。その後、注入の1分後および4分後に再び、蛍光眼底造影を記録した。後期蛍光眼底造影の半定量的査定により、薬剤治療の効果を評価した。漏出は、後期血管撮影像において時間に伴ってサイズを増大する過蛍光病変の存在として定義された。後期蛍光眼底造影における染色の強度および面積を、遮蔽方式で2名の実験者が等級づけした。特定病変に関して示された2つのスコアが一致しなかった場合、高いほうのスコアを分析のために用いた。このような矛盾するスコアづけは分析された病変の<10%で観察され、矛盾は一等級より大きくはなかった。遮蔽方式で試験を実行し、一旦データがすべて収集されたら、物質の遮蔽を解いた。
【0172】
結果
結果を、表3で以下に示す。ラット網膜にレーザー熱傷を用いた脈絡膜新血管新生(CNV)の誘導後7および14日目に、蛍光眼底造影を用いて、各病変を観察した。病変を、以下のように等級分けした:等級0=漏出なし、等級1=小漏出、等級2=中等度漏出、および等級3=大漏出。抗血管内皮細胞増殖因子ドメイン抗体(抗VEGF dAb、DOM15−26−593)、DOM15−26−593−Fc融合体で硝子体内処置されたラットの群に関する、ならびに陰性対照ビヒクル投与群に関する結果を、以下に表記する。結果は、抗VEGF dAb(DOM15−26−593)またはDOM15−26−593−Fc融合体による処置が、対照(擬似処置)ラットと比較して、新血管新生および漏出の程度を低減した、ということを示す。
【表3】

【0173】
結論:
結果は、RPE−脈絡膜のレーザー光凝固により誘導される実験的脈絡膜新血管新生(CNV)が蛍光眼底造影により特性化されるラットモデルにおいて、DOM15−26−593−Fc融合体(抗VEGF dAb−Fc)が有効であった、ということを示した。DOM15−26−593−Fc融合体に関する結果は、7および14日目の両方での対照ビヒクル投与群より有意に良好であった。この群は、抗VEGF dAb(DOM15−26−593)群よりわずかに高い活性を保持すると思われた。しかしながら、抗VEGF dAb(DOM15−26−593)も有効であった(レーザー誘導性損傷後7および14日目の両方で、対照より有意に良好であった)。
【0174】
これらの結果は、抗VEGF dAb(DOM15−26−593)および抗VEGF dAb−Fcが実験的ラットCNVモデルにおいて有効であった、ということを示す。眼疾患のin vivo齧歯類モデルにおける効能についてのこの実証は、ドメイン抗体が加齢性黄斑変性(AMD)における脈絡膜新血管新生の治療に有益であり得る、ということを示す。
【実施例4】
【0175】
ウサギへの抗TNF−α抗体、Fc−フォーマット化抗VEGF dAb、PEG化抗IL−1 dAbおよび抗IL−1 dAbの局所送達
方法
雌成体チンチラバスタード・ウサギを、Charles River(Germany)から入手した。使用前に、動物を馴化させた。投与の開始の5日前に、全ウサギの周縁耳静脈から血液試料を採取した。血液を室温で凝固させて、遠心分離(12000rpm/2分)して、血清を分離した。血清を新しい試験管に移して、凍結保存した(−20℃)。
【0176】
DOM4−130−54の調製および選択は、WO 2007063311に、そしてWO2008149149にも記載されている。Dom0400を調製するために、DOM4−130−54 dAb配列を得て、位置80のシステインがDOM4−130−54 dAb中に存在するプロリンに取って代わり、このdAbが次に、dAbの位置80の遊離システインとの標準マレイミドカップリングにより、40KDa線状PEG分子(NOF Corp., Europe)に付着される。
【0177】
裸フォーマット(DOM4−130−54;IL−1裸dAb、12.026kDa;図3に示したアミノ酸配列(配列番号5)を有する)またはPEG化フォーマット(DOM0400PEG;IL−1PEG化dAb、52.032kDa;図2に示したアミノ酸配列(配列番号4)を有する)でのIL−1に対する特異性を有するドメイン抗体(dAb)を、20mMコハク酸塩、5%ソルビトール、pH6.0中でそれぞれ8.5および10.4mg/mlで製剤化した。Fcフォーマット化α−VEGF dAb(図1bに示したアミノ酸配列(配列番号2)を有するVEGF15−26−593)を、50mMリン酸塩、1%L−アルギニン、0.05mM EDTA、0.02%ポリソルベートおよび0.3%NaCl、pH7.0中で9.1mg/mlで製剤化した。TNF−α(市販)に対する特異性を有するモノクローナル抗体を、滅菌蒸留水をもちいて、10mg/mlでの凍結乾燥調製物から再構成した。4羽のウサギの群の左眼に、4.2日の期間に亘って1日5回(3時間間隔で)、投与した。各投与日間、動物には12時間(一晩)の休止期間を与えた。各用量は、上眼瞼の下に入れられる関連化合物の溶液25μlで構成された。投与後、少なくとも30秒間、動物を静止させた。投与スケジュールの前および最中の種々の時点で、多少の流体を吸収するために眼瞼下に紙の小吸収片を入れることにより、涙液(涙)の試料を収集した。涙液を含浸した紙の領域を、リン酸塩緩衝生理食塩水200μLを含有する試験管中に入れた。試験管を遠心分離(12000rpm/2分)し、紙を取り出し、回収試料を分析前に凍結保存した(−20℃)。
【0178】
最終投与の1時間後、全ウサギの周縁耳静脈から血液試料を採取した。血液を凝固させて、その結果、上記の方法により血清を分離し、保存し得た。その直後に、動物を安楽死させた。安楽死が確証された時から出来るだけ近い時点で、各動物から両眼を摘出した。各眼をPBS中で洗浄して、過剰量の薬剤をその表面から除去した。眼房水および硝子体液の試料を収集し、分析前に凍結保存した(−20℃)。各検定で試験する前に、硝子体液を単一凍結/解凍サイクルに付した。眼を切り出して、網膜/脈絡膜を採取した。網膜/脈絡膜試料を計量し、100μlの溶解緩衝液(10mMトリス、pH7.4;0.1%SDS;プロテイナーゼ阻害剤カクテル(Roche)を有する)を、各々15mgの網膜/脈絡膜組織に添加した。2分周期の反復高および低周波バーストを用いる超音波破砕(Covaris S2 Sonolab Single)を用いて、試料をホモジナイズした。網膜/脈絡膜の試料を、微量遠心管(Heraeus)中で遠心分離(12000rpm/2分)した。上清を新しい試験管に移して、凍結保存した(−20℃)。
【0179】
サンドイッチフォーマットELISA検定を用いて、各試料の薬剤含量を試験し、測定した。α−TNF−α抗体を、組換えヒトTNF−αタンパク質(Peprotech)で被覆したプレートを用いて捕捉し、アルカリホスファターゼ接合抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体(Sigma)を用いて検出した。IL−1およびPEG化IL−1 dAbを、組換えヒトIL−1受容体1型Fc(Axxora)で被覆したプレートを用いて捕捉し、プロテインL−ペルオキシダーゼ(Sigma)を用いて検出した。VEGF−Fcフォーマット化dAbを、組換えVEGFタンパク質の企業内調製物を用いて捕捉し、抗ヒトIgG(Fc特異的)アルカリホスファターゼ接合抗体(Sigma)で検出した。
【0180】
結果
全症例において、薬剤投与は良好に耐容され、発赤、刺激性または異常動物行動の徴候はなかった。
【0181】
眼房水および硝子体液中の、ならびに網膜/脈絡膜中の、種々のフォーマットのドメイン抗体の、ならびにα−TNF−α抗体に関する結果を、以下の表に示す。結果を、(各試料が三重反復実験で試験された3つの別個の検定からの)平均濃度に関して、+/−標準偏差(括弧内に示す)として示す。
【表4】

【表5】

【表6】

【0182】
投与20および21の直前に、ウサギから涙液(涙)試料を採取した。存在する薬剤の濃度に関する結果を、それぞれ表4および5に示す。左(投与)眼の全てにおいて、投与物質を検出し(しかし、個々のウサギ間の濃度には非常に多くの変動が認められた)、ほとんどの対側(投与されなかった右)眼への多少の移送も起きていた。投与20の12時間後には、投与物質は依然として存在した。DOM0400PEG(PEG化IL−1 dAb)およびVEGF−Fc(15−26−593)は、裸IL−1 dAb(DOM4−130−54)より高い濃度で、投与20および21間の12時間の期間中、保持されると思われた。
【0183】
種々のフォーマットのドメイン抗体の濃度に関する、ならびに涙液(涙)中の抗体に関する結果を、以下の表に示す(左眼のみに投与した)
【表7】

【表8】

【0184】
種々のフォーマットのドメイン抗体の濃度に関する、ならびにプレブリード(prebleed)中および血清中の抗体に関する結果を、以下の表に示す:
【表9】

【実施例5】
【0185】
α−TNF−αR1 dAbの局所的送達
方法
成体雄チンチラバスタード・ウサギを、Charles River(Germany)から入手した。使用前に、動物を馴化させた。投与の開始の7日前に、全ウサギの周縁耳静脈から血液試料を採取した。血液を室温で凝固させた後、遠心分離(12000rpm/2分)して、血清を分離した。血清を新しい試験管に移して、凍結保存した(−20℃)。
【0186】
図4に示したアミノ酸配列(配列番号6)を有するDom 1h−131−206(Dom 1h−131−206の調製および選択は、WO2008149148に記載されている)であるTNF−αR1(すなわち、抗TNFα受容体1型dAb)に対する特異性を有するドメイン抗体(dAb)を、10mg/mlでリン酸塩緩衝液中に製剤化した。4羽のウサギの群の左眼に、単一日に10回(1時間間隔で)、投与した。各用量は、上眼瞼の下に入れられる10mg/ml α−TNF−αR1 dAb溶液50μlで構成された。投与後、少なくとも30秒間、動物を静止させた。投与スケジュールの前および最中の種々の時点で、多少の流体を吸収するために眼瞼下に紙の小吸収片を入れることにより、涙液(涙)の試料を収集した。涙液を含浸した紙の領域を、リン酸塩緩衝生理食塩水200μLを含有する試験管中に入れた。試験管を遠心分離(12000rpm/2分)し、紙を取り出し、回収試料を分析前に凍結保存した(−20℃)。
【0187】
最終投与の1時間後、全ウサギの周縁耳静脈から血液試料を採取した。血液を凝固させて、その結果、上記の方法により血清を分離し得た。その直後に、動物を安楽死させた。安楽死が確証された時から出来るだけ近い時点で、各動物から両眼を摘出した。各眼をPBS中で洗浄して、過剰量の薬剤をその表面から除去した。眼房水および硝子体液の試料を収集し、分析前に凍結保存した(−20℃)。各検定で試験する前に、硝子体液を1回の凍結/解凍サイクルに付した。眼を切り出して、網膜/脈絡膜を採取した。網膜/脈絡膜試料を計量し、900μlの溶解緩衝液(10mMトリス、pH7.4;0.1%SDS;プロテイナーゼ阻害剤カクテル(Roche)を有する)を、各試料に添加した。2分周期の反復高および低周波バーストを用いる超音波破砕(Covaris S2 Sonolab Single)を用いて、試料をホモジナイズした。網膜/脈絡膜の試料を、微量遠心管(Heraeus)中で遠心分離(12000rpm/2分)した。上清を新しい試験管に移して、凍結保存した(−20℃)。サンドイッチELISA検定により、α−TNF−αR1 dAbの濃度に関して試料を試験した。この場合、dAbを、組換えヒトTNF R1/TNFRSF1A/Fcキメラ(R+D Systems)で被覆したプレートを用いて捕捉し、ヒトIgG(F(ab)2)断片(Thermo)に対する特異性を用いて検出した。この抗体は接合されておらず、したがって、抗ヤギ/ヒツジ−HRP試薬(Sigma)を用いて、結合抗体を検出した。
【0188】
結果
薬剤投与は良好に耐容され、発赤、刺激性または異常動物行動の徴候は観察されなかった。
【0189】
眼内液および血清中のα−TNF−αR1 dAbの濃度を、三重反復実験で試験した試料に関して示す。試験した眼試料のすべてにおいて、α−TNF−αR1 dAbを検出した。
【表10】

【0190】
投与2、6、10の直前に、同時に、最終投与の1時間後に、ウサギから涙液(涙)試料を採取した。試料中に検出されたα−TNF−αR1 dAbの濃度を表8に示す。左(投与)眼の全てにおいて、α−TNF−αR1 dAbを検出し、ほとんどの対側(投与されなかった右)眼への多少の移送も起きていた。
【表11】

【0191】
初回投与前ならびに安楽死時に血清に関して血液を採取した。その結果生じたデータを、表9に示す。最終投与の1時間後に、4羽のウサギの各々から得た血清中で、低濃度のα−TNF−αR1 dAbを検出した。
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼送達のための、標的分子と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む組成物。
【請求項2】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインがプロテアーゼに耐性である請求項1記載の組成物であって、前記プロテアーゼが、眼プロテアーゼ、カスパーゼ、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ、ジスインテグリン、メタロプロテイナーゼ(ADAM)およびトロンボスポンジンモチーフを有するADAM、プロテオソーム、組織プラスミノーゲン活性化因子、セクレターゼ、カテプシンB、カテプシンD、シスタチンC、セリンプロテアーゼPRSS1およびユビキチンプロテオソーム経路(UPP)からなる群から選択される眼送達のための組成物。
【請求項3】
眼送達のための、VEGF、TNFα、TNFαR、IL−1、IL−1r、TNFαR1、TGFβ、IL−6、IL−8、IL−17、IL−21、IL−23、CD20、Nogo−a、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)およびベータアミロイドの群から選択される標的分子と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
VEGFと結合する前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、(a)DOM15−26−593のアミノ酸配列(配列番号1で示される)または(b)DOM15−26−593−Fcのアミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、Kabatによる番号付けで位置6にバリンを含む請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、Kabatによる番号付けで位置99にロイシンを含む請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、Kabatによる番号付けで位置30にリシンを含む請求項4記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、(a)DOM15−26−593のアミノ酸配列(配列番号1で示される)、(b)DOM15−26−593−Fcのアミノ酸配列(配列番号2で示される)から選択される配列と同一であるアミノ酸配列を含む請求項4記載の組成物。
【請求項9】
IL−1と結合する前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、(a)DOM4−130−54のアミノ酸配列(配列番号5で示される)と、または(b)DOM0400PEGのアミノ酸配列(配列番号4で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む請求項3記載の組成物。
【請求項10】
IL−1と結合する前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、(a)DOM4−130−54のアミノ酸配列(配列番号5で示される)と、または(b)DOM0400PEGのアミノ酸配列(配列番号4で示される)と同一であるアミノ酸配列を含む請求項9記載の組成物。
【請求項11】
α−TNF−αR1と結合する前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、Dom 1h−131−206のアミノ酸配列(配列番号6で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む請求項3記載の組成物。
【請求項12】
α−TNF−αR1と結合する前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、Dom 1h−131−206のアミノ酸配列(配列番号6で示される)と同一であるアミノ酸配列を含む請求項3記載の組成物。
【請求項13】
抗体定常領域の一ドメインをさらに含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物であって、前記抗体定常領域が抗体Fc領域である組成物。
【請求項14】
前記抗体Fc領域が配列番号3で示されるアミノ酸Fc配列を有する請求項9記載の組成物。
【請求項15】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインがFcとの融合体として存在し、DOM15−26−593−Fc融合体のアミノ酸配列(配列番号2で示される)と同一のアミノ酸配列を有する請求項9記載の組成物。
【請求項16】
硝子体液、眼房水、網膜および脈絡膜から選択される眼領域のうちの1つ以上への送達のための、標的分子と結合する裸の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む組成物。
【請求項17】
前記標的分子が、VEGF、VEGFアンタゴニスト、TNFα、TNFα受容体、IL−1、α−TNF−αR1、IL−6、IL−8、IL−17、IL−21、IL−23、Nogo−a、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)およびベータアミロイドから選択される請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインがプロテアーゼに耐性である請求項16または17記載の組成物であって、前記プロテアーゼが、眼プロテアーゼ、カスパーゼ、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ、ジスインテグリン、メタロプロテイナーゼ(ADAM)およびトロンボスポンジンモチーフを有するADAM、プロテオソーム、組織プラスミノーゲン活性化因子、セクレターゼ、カテプシンB、カテプシンD、シスタチンC、セリンプロテアーゼPRSS1ならびにユビキチンプロテオソーム経路(UPP)の群から選択される組成物。
【請求項19】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、(a)VEGFと結合し、(i)DOM15−26−593のアミノ酸配列(配列番号1で示される)または(ii)DOM15−26−593−Fcのアミノ酸配列(配列番号2で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメイン;(b)IL−1と結合し、(i)DOM4−130−54のアミノ酸配列(配列番号5で示される)と、または(ii)DOM0400PEGのアミノ酸配列(配列番号4で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメイン;(c)α−TNF−αR1と結合し、Dom 1h−131−206のアミノ酸配列(配列番号6で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメインからなる群から選択される請求項16または17記載の組成物。
【請求項20】
網膜、脈絡膜および涙液から選択される眼領域のうちの1つ以上への送達のための、標的分子と結合するフォーマット化免疫グロブリン単一可変ドメインを含む組成物。
【請求項21】
前記標的分子が、VEGF、VEGFアンタゴニスト、TNFα、TNFα受容体、IL−1、α−TNF−αR1、IL−17、IL−21、IL−23、Nogo−a、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)およびベータアミロイドから選択される請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインがプロテアーゼに耐性である請求項20または21記載の組成物であって、前記プロテアーゼが、眼プロテアーゼ、カスパーゼ、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ、ジスインテグリン、メタロプロテイナーゼ(ADAM)およびトロンボスポンジンモチーフを有するADAM、プロテオソーム、組織プラスミノーゲン活性化因子、セクレターゼ、カテプシンB、カテプシンD、シスタチンC、セリンプロテアーゼPRSS1ならびにユビキチンプロテオソーム経路(UPP)の群から選択される組成物。
【請求項23】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、(a)VEGFと結合し、(i)DOM15−26−593のアミノ酸配列(配列番号1で示される)または(ii)DOM15−26−593−Fcのアミノ酸配列(配列番号2で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメイン;(b)IL−1と結合し、(i)DOM4−130−54のアミノ酸配列(配列番号5で示される)と、または(ii)DOM0400PEGのアミノ酸配列(配列番号4で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメイン;(c)α−TNF−αR1と結合し、Dom 1h−131−206のアミノ酸配列(配列番号6で示される)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメインからなる群から選択される請求項16または17記載の組成物。
【請求項24】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインが約50KDaの分子量を有する請求項20〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインがPEG化または抗体Fcとの融合によりフォーマット化される請求項20〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
眼浸透増強剤および増粘剤から選択される1つ以上のエンハンサーをさらに含む請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
薬学的または生理学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
眼に直接的に請求項1〜27のいずれか一項に記載の組成物を送達する方法であって、点眼液によるような眼への局所送達、または眼内注射、眼周囲投与、あるいは緩徐放出製剤による群から選択される方法により眼に前記組成物を投与することを包含する方法。
【請求項29】
眼内注射、硝子体内注射、例えば点眼液によるような眼への局所送達、または眼周囲投与による、および緩徐放出製剤からなる群から選択される方法により、眼に直接的に請求項1〜27のいずれか一項に記載の組成物を投与することを包含する眼症状を治療し、予防し、または診断するための方法。
【請求項30】
前記組成物が、眼の表面、涙管、涙腺、眼内領域、前眼房、後眼房および硝子体液の群から選択される眼の1つ以上の領域に投与される請求項28または29記載の方法。
【請求項31】
硝子体液、眼房水、網膜および脈絡膜の群から選択される眼の1つ以上の領域への請求項16〜19および26〜27のいずれか一項に記載の組成物の送達方法であって、局所的送達により、例えば点眼液を用いることにより、眼に前記組成物を投与することを包含する方法。
【請求項32】
網膜、脈絡膜および涙液の群から選択される眼の1つ以上の領域への請求項20〜27のいずれか一項に記載の組成物の送達方法であって、局所的送達により、例えば点眼液を用いることにより、眼に前記組成物を投与することを包含する方法。
【請求項33】
(a)請求項1〜27のいずれか一項に記載の組成物を(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と混合することを包含する医薬組成物の製造方法。
【請求項34】
前記医薬組成物が眼の症状または疾患を治療し、予防し、または診断するためのものである請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記眼の症状または疾患が、AMD、ブドウ膜炎、緑内障、ドライアイ、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫およびブドウ膜炎の群から選択される請求項34記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−509852(P2012−509852A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536817(P2011−536817)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064654
【国際公開番号】WO2010/060768
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】