説明

ポリペプチドの高収率生産のための方法およびDNA構築物

本発明は、細胞におけるペプチドおよびポリペプチド生産を増大させる封入体融合パートナーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、タンパク質発現の分野に関する。より具体的には本発明は、ポリペプチドおよびタンパク質の発現のための方法およびDNA構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリペプチドは、ヒトおよび動物における病気の治療に有用である。そのようなポリペプチドの例には、糖尿病治療のためのインスリン、ウイルス感染治療のためのインターフェロン、免疫系を変調させるインターロイキン、赤血球形成を刺激するエリスロポエチンならびに出生前および出生後双方の成長を媒介するよう作用する成長因子が含まれる。
【0003】
多くの生物活性ポリペプチドは、化学合成法の使用により製造することができる。しかし、このような生産方法は、効率が悪く、労働集約的であって、治療上有用なポリペプチドのコストを上昇させ、利用度を低下させることが多い。化学合成に代わる方法は、、微生物における生物活性ポリペプチドの高収率生産を可能にする組換え技術により提供される。このような生産により、より多くの人々をより低コストで治療することが可能になる。
【0004】
組換え技術が飛躍的な発展を遂げる一方で、細胞におけるタンパク質およびペプチドの発現が問題となる場合がある。これは、低い発現レベルに起因するか、または細胞内に含まれるタンパク質分解酵素による発現ポリペプチドの破壊による可能性がある。これは、短いタンパク質およびペプチドが発現される場合に、特に問題となる。
【0005】
これらの問題は、これまで、キャリアポリペプチドに融合された所望のポリペプチドを含む融合タンパク質を生産することにより対応されてきた。細胞における融合タンパク質としての所望のポリペプチドの発現は、破壊的酵素から所望のポリペプチドを保護し、融合タンパク質が高収率で精製されるのを可能にすることが多いであろう。次いで、その融合タンパク質を処理して、キャリアポリペプチドから所望のポリペプチドを切断し、所望のポリペプチドを単離する。このプロトコルに従い、多くのキャリアポリペプチドが用いられてきた。このようなキャリアポリペプチドの例には、β-ガラクトシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、L-リブロキナーゼのN末端、バクテリオファージT4 gp55 タンパク質、および細菌のケトステロイド・イソメラーゼタンパク質が含まれる。このプロトコルは多くの利点を与える一方で、キャリアタンパク質のサイズが大きいことに起因して生産効率が減少する問題がある。ゆえに、所望のポリペプチドは、精製された融合タンパク質の全質量のうち低い割合を構成するにすぎず、結果として所望のポリペプチドの収率が低下する場合がある。
【0006】
組換え技術により所望のポリペプチドを生産する別の方法には、追加的ポリペプチド配列に融合された所望のポリペプチドを含む融合タンパク質の生産が含まれる。この場合、追加的ポリペプチド配列は、融合タンパク質に封入体と称する細胞中の不溶性塊を、生成させる。次いでこれらの封入体を細胞から単離し、融合タンパク質を精製する。次いで、この融合タンパク質を処理して、追加的ポリペプチド配列を融合タンパク質から切断し、所望のポリペプチドを単離する。この方法は、所望のポリペプチドの高レベルの発現を提供する。このような方法の利点は、追加的ポリペプチド配列が、所望のポリペプチドより小さいことが多く、ゆえに産生する融合タンパク質のより低い割合を構成するであろうことであって、これにより生産効率の上昇が導かれる。このような系の不都合な点は、所望のポリペプチドを単離するために溶解することが非常に困難である封入体が生産されることである。
【0007】
従って、封入体の形成を経る所望のポリペプチドの生産に用いることができる、付加(追加)的ポリペプチド配列の必要性が存在する。所望のポリペプチドの生産および精製の間、より容易に操作され得る特性を有する封入体の生産に用いられ得る追加的ポリペプチド配列の必要性も存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の要旨
本発明は、封入体を形成するタンデム・ポリペプチド発現のための発現カセットを提供する。さらに本発明は、単離の増強をもたらす封入体を形成するタンデム・ポリペプチド発現のための発現カセットを提供する。さらに、本発明の発現カセットの転写により生じるRNAが、本発明により提供される。また本発明は、本発明の発現カセットの転写により生じるRNAの翻訳により生産されるタンパク質を提供する。さらに本発明の発現カセットおよびベクターを含む核酸構築物が、本発明により提供される。また本発明は、本発明の発現カセットまたは核酸構築物を含む細胞を提供する。さらに、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている(linked)封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドが本発明により提供される。また本発明は、封入体に単離増強を与える封入体融合パートナーを選択する方法を提供する。
【0009】
発現カセットは、封入体融合パートナーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドをコードすることができる。発現カセットは、封入体融合パートナーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドおよび切断可能なペプチドリンカーを含むタンデム・ポリペプチドをコードすることができる。発現カセットは、封入体融合パートナーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドおよび融合タグを含むタンデム・ポリペプチドをコードすることができる。また発現カセットは、封入体融合パートナー、切断可能なペプチドリンカーおよび融合タグに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドをコードすることができる。発現カセットは、タンデム・ポリペプチドに封入体を形成させるであろう任意の順序で作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチド、封入体融合パートナー、切断可能なペプチドリンカーおよび融合タグを有するタンデム・ポリペプチドをコードすることができる。
【0010】
発現カセットは、生物活性ポリペプチドである予め選択されたポリペプチドをコードしていることが好ましい。発現カセットが、ヒトまたは動物における疾病の治療に有用である予め選択されたポリペプチドをコードするのが、より好ましい。発現カセットが、グルカゴン様ペプチド−1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド−2(GLP-2)、副甲状腺ホルモン(PTH)または成長ホルモン放出因子(GRF)である予め選択されたポリペプチドをコードするのがさらに好ましい。発現カセットがコードする予め選択されたポリペプチドが、プロテアーゼであるのが好ましい。発現カセットがコードする予め選択されたポリペプチドがクロストリパイン(clostripain)であるのが、より好ましい。発現カセットは、1を越える、予め選択されたポリペプチドをコードすることができる。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドの20コピーをコードするのが好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドの10コピーをコードするのがより好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドの5コピーをコードするのがさらに好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドの2コピーをコードするのがそれ以上に好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドの1コピーをコードするのが最も好ましい。
【0011】
発現カセットが、配列番号1〜15のいずれか1つの変異体であるアミノ酸配列を有する封入体融合パートナーをコードするのが好ましい。発現カセットが、配列番号1〜15のいずれか1つに相当するアミノ酸配列を有する封入体融合パートナーをコードするのが、より好ましい。発現カセットがタンデム・ポリペプチドから形成される封入体に単離増強を付与する封入体融合パートナーをコードするのが好ましい。発現カセットがタンデム・ポリペプチドから形成される封入体にプロテアーゼ耐性、制御可能な溶解性、精製安定性、または自己接着を付与する封入体融合パートナーをコードするのがより好ましい。発現カセットは、予め選択されたポリペプチドのアミノ末端、予め選択されたポリペプチドのカルボキシル末端、または予め選択されたポリペプチドのアミノ末端およびカルボキシル末端で予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結され得る封入体融合パートナーをコードすることができる。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドのアミノ末端およびカルボキシル末端の各々に独立して作動可能に連結される封入体融合パートナーをコードするのが好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドのカルボキシル末端に作動可能に連結されている封入体融合パートナーをコードするのがより好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドのアミノ末端に作動可能に連結されている封入体融合パートナーをコードするのがさらに好ましい。発現カセットは、予め選択されたポリペプチドのアミノ末端、カルボキシル末端、またはアミノ末端およびカルボキシル末端に作動可能に連結され得る1つまたはそれ以上の封入体融合パートナーをコードすることができる。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている20個の封入体融合パートナーをコードするのが好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている10個の封入体融合パートナーをコードするのがより好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている5個の封入体融合パートナーをコードするのがさらに好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている2個の封入体融合パートナーをコードするのがそれ以上に好ましい。発現カセットが、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている1個の封入体融合パートナーをコードするのが最も好ましい。
【0012】
発現カセットが作動可能に連結されているタンデム・ポリペプチドを単離する際の容易性を増大させる融合タグをコードするのが好ましい。発現カセットがポリ-ヒスチジンタグである融合タグをコードするのが、より好ましい。発現カセットがエピトープタグである融合タグをコードするのが、より好ましい。発現カセットが、基質結合タグである融合タグをコードするのがさらに好ましい。発現カセットがグルタチオン-S-トランスフェラーゼまたはアラビノース結合タンパク質である融合タグをコードするのがそれ以上に好ましい。発現カセットは、細胞受容体に対するリガンドである融合タグをコードすることができる。発現カセットがインスリン受容体に対するリガンドである融合タグをコードするのが好ましい。
【0013】
本発明の発現カセットは、封入体融合パートナーおよび予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結している1つまたはそれ以上の切断可能なペプチドリンカーをコードすることができる。本発明の発現カセットは、封入体融合パートナー、予め選択されたポリペプチドおよび融合タグに作動可能に連結されている1つまたはそれ以上の切断可能なペプチドリンカーをコードすることもできる。発現カセットが、20個の切断可能なペプチドリンカーを有するタンデム・ポリペプチドをコードするのが好ましい。発現カセットが、10個の切断可能なペプチドリンカーを有するタンデム・ポリペプチドをコードするのがより好ましい。発現カセットが、5個の切断可能なペプチドリンカーを有するタンデム・ポリペプチドをコードするのがさらに好ましい。発現カセットが、封入体融合パートナーと予め選択されたポリペプチドの間、封入体融合パートナーと融合タグの間、2つの予め選択されたポリペプチドの間、または予め選択されたポリペプチドと融合タグの間に独立して位置する切断可能なペプチドリンカーを有するタンデム・ポリペプチドをコードするのが最も好ましい。
【0014】
発現カセットは、化学物質で切断しうる切断可能なペプチドリンカーをコードすることができる。発現カセットが、臭化シアンで切断され得る切断可能なペプチドリンカーをコードするのが好ましい。発現カセットが、パラジウムで切断され得る切断可能なペプチドリンカーをコードするのがより好ましい。発現カセットは、プロテアーゼで切断しうる切断可能なペプチドリンカーをコードすることができる。発現カセットが、組織特異的プロテアーゼで切断し得る切断可能なペプチドリンカーをコードするのが好ましい。発現カセットが、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼまたはメタロプロテアーゼで切断し得る切断可能なペプチドリンカーをコードするのが、より好ましい。発現カセットが、クロストリパインで切断し得る切断可能なペプチドリンカーをコードするのが最も好ましい。
【0015】
本発明の発現カセットは、プロモーターを含む。プロモーターが構成的プロモーターであるのが好ましい。プロモーターが調節可能なプロモーターであるのがより好ましい。プロモーターが誘導性プロモーターであるのが最も好ましい。
【0016】
本発明の発現カセットは、1またはそれ以上の抑制可能な終止コドンを含んでいてよい。抑制可能な終止コドンがアンバーまたはオーカー終止コドンであるのが好ましい。
【0017】
本発明の発現カセットは、融合タグをコードしていてよい。発現カセットは、リガンド結合ドメインであり得る融合タグをコードすることができる。発現カセットが金属結合ドメインである融合タグをコードするのが好ましい。発現カセットが糖結合ドメインである融合タグをコードするのがより好ましい。発現カセットがペプチド結合ドメインである融合タグをコードするのがさらに好ましい。発現カセットがアミノ酸結合ドメインである融合タグをコードするのが最も好ましい。発現カセットは、抗体エピトープであり得る融合タグをコードすることができる。発現カセットが、抗マルトース結合タンパク質抗体により認識される融合タグをコードするのが好ましい。発現カセットが、抗-T7遺伝子10バクテリオファージ抗体により認識される融合タグをコードするのが好ましい。発現カセットは、蛍光タンパク質であり得る融合タグをコードすることができる。発現カセットが、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質またはトウガラシ蛍光タンパク質である融合タグをコードするのが好ましい。
【0018】
本発明は、ベクターおよび本発明の発現カセットを含む核酸構築物を提供する。ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、F因子、ウイルス、バクテリオファージ、酵母人工染色体または細菌人工染色体であるのが好ましい。核酸構築物がRNAであるのが好ましい。核酸構築物がDNAであるのが、より好ましい。
【0019】
本発明は、本発明の核酸構築物を含む細胞を提供する。細胞が真核細胞であるのが好ましい。真核細胞が哺乳動物細胞であるのが、より好ましい。真核細胞が酵母細胞であるのがさらに好ましい。真核細胞が昆虫細胞であるのが最も好ましい。細胞が原核細胞であるのが、より好ましい。原核細胞が細菌であるのがさらに好ましい。原核細胞がEscherichia coliであるのが、それ以上に好ましい。原核細胞がEscherichia coli BL21であるのが最も好ましい。
【0020】
本発明は、封入体融合パートナーに作動可能に連結されている、予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドを提供する。また本発明は、切断可能なペプチドリンカーおよび封入体融合パートナーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドを提供する。さらに本発明は、融合タグおよび封入体融合パートナーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドを提供する。さらに本発明は、切断可能なペプチドリンカー、融合タグおよび封入体融合パートナーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドを提供する。さらに本発明は、タンデム・ポリペプチドが封入体を形成するであろう任意の順序で、封入体融合パートナーに作動可能に連結され、切断可能な1つもしくはそれ以上のペプチドリンカーに、または1つもしくはそれ以上の融合タグに独立して作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドを提供する。
【0021】
また本発明は、封入体に単離増強をもたらす封入体融合パートナーを選択する方法を提供する。単離増強が等電点の改変であるのが好ましい。単離増強がプロテアーゼ耐性であるのが、より好ましい。単離増強が溶解性の上昇であるのがさらに好ましい。単離増強が自己-接着であるのが、それ以上に好ましい。単離増強が精製安定性であるのが最も好ましい。
【0022】
定義
省略形:IPTG:イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド;PCR:ポリメラーゼ連鎖反応;mRNA:メッセンジャーリボ核酸;DNA:デオキシリボ核酸;RNA:リボ核酸;β-gal:β-ガラクトシダーゼ;GST:グルタチオン-S-トランスフェラーゼ;CAT:クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ;SPA:ブドウ球菌タンパク質A;SPG:ブドウ球菌タンパク質G;MBP:マルトース結合タンパク質;SBD:デンプン結合タンパク質;CBDCenA:エンドグルカナーゼAのセルロース-結合ドメイン;CBDCex:エキソグルカナーゼCexのセルロース結合ドメイン;FLAG:親水性8-アミノ酸ペプチド;TrpE:トリプトファンシンターゼ;GLP-1:グルカゴン様ペプチド-1;GLP-2:グルカゴン様ペプチド-2; PTH:副甲状腺ホルモン;GRF:成長ホルモン放出因子;PAGE:ポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS:ドデシル硫酸ナトリウム、Vg:ベスティジアル。
【0023】
「等電点の改変」という用語は、封入体融合パートナーのアミノ酸組成を変化させて、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドの等電点を変化させることを表す。
【0024】
「アミノ酸類似体」という用語は、L型よりむしろD型のアミノ酸、ならびに他の周知のアミノ酸類似体、例えばN-アルキルアミノ酸、乳酸などを含む。これらの類似体には、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタメート;馬尿酸、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、スタチン、1,2,3,4,-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、N-メチル-アラニン、パラ-ベンゾイル-フェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、ノルロイシン、ノルバリン、オルトニトロフェニルグリシンおよび他の同様のアミノ酸が含まれる。
【0025】
「細胞」、「細胞培養物」、「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」という用語、および他のこのような用語は、例えば核酸構築物または発現カセットのための受容者(レシピエント)として用いられ得る、または用いられてきた微生物、昆虫細胞および哺乳動物細胞を指し、形質転換された元の細胞の子孫を含んでいる。天然の、偶発的な、または意図的な変異のために、1個の親細胞の子孫は、形態学的に、またはゲノムもしくは全DNA相補体において、元の親細胞と必ずしも完全同一でないかもしれないことが理解される。多くの細胞は、ATCCおよび商業的供給源から入手可能である。多くの哺乳動物セルラインは、当分野で知られており、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、サル腎細胞(COS)およびヒト肝癌細胞(例えばHep G2)が含まれるが、これらに限定はされない。多くの原核細胞は、当分野で知られており、Escherichia coliおよびSalmonella typhimuriumが含まれるがこれらに限定はされない。Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765。多くの昆虫細胞は、当分野で知られており、それにはカイコ細胞および蚊細胞が含まれるが、これらに限定はされない。(Franke et al., J. Gen. Virol., 66:2761 (1985);Marumoto et al., J. Gen. Virol., 68:2599 (1987))。
【0026】
「切断可能なペプチドリンカー」(CPL)という用語は、切断認識配列を有するペプチド配列を表す。切断可能なペプチドリンカーは、酵素剤、または化学的切断物質により切断することができる。切断可能なペプチドリンカーの例には、表Vおよび表VIに記載する物質が含まれるが、これらに限定はされない。酵素または化学物質により切断される多数のペプチド配列が知られている。Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988);Walsh, Proteins Biochemistry and Biotechnology, John Wiley & Sons, LTD., West Sussex, England (2002)。
【0027】
「切断物質」とは、ポリペプチドにおける切断部位を認識し、ポリペプチド内の結合の切断によりポリペプチドを2つのポリペプチドに分割する化学物質または酵素である。切断物質の例には、化学物質およびプロテアーゼが含まれるが、これらに限定はされない。
【0028】
「コード配列」は、通常はmRNAを介して、予め選択されたポリペプチドなどのポリペプチドに翻訳される核酸配列である。コード配列の境界は、mRNAの5'末端の翻訳開始コドンおよび3'末端の翻訳終止コドンにより決定される。コード配列にはcDNAおよび組換え核酸配列が含まれるが、これらに限定はされない。
【0029】
「保存性(的な)アミノ酸」という用語は、第二のアミノ酸と機能的に類似したアミノ酸を表す。このようなアミノ酸を、周知の方法により、ポリペプチドの構造または機能に与える障害が最小限となるよう、ポリペプチドにおいて互いに置換することができる。次の5つの群は各々、互いに保存的置換となるアミノ酸を含んでいる:脂肪族:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);含硫:メチオニン(M)、システイン(C);塩基性:アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H);酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)。
【0030】
「構成的プロモーター」という用語は、付加的な調節がされることなく遺伝子または読み取り枠を発現し得るプロモーターを表している。このような構成的プロモーターは、ほとんど全ての条件下で、作動可能に連結した(linked)遺伝子または読み取り枠の一定した発現をもたらす。
【0031】
「融合タグ」とは、予め選択されたアミノ酸配列に作動可能に連結されている封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドに作動可能に連結され得るアミノ酸断片を表す。融合タグは、多くの特性を呈するであろう。例えば、融合タグは、融合タグに対する結合パートナーを含む精製媒体に選択的に結合し、作動可能に連結したタンデム・ポリペプチドの精製を容易にすることができる。このような融合タグには、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン、マルトース結合タンパク質、アビジン、ビオチンまたはストレプトアビジンが含まれであろうが、これらに限定はされない。別の例において、融合タグは、インスリン受容体などの細胞受容体へのリガンドであってもよい。この相互作用により、融合タグに作動可能に連結されているタンデム・ポリペプチドは、細胞により発現される受容体に基づいて、特定の細胞型を特異的に標的化することができるであろう。別の例において、融合タグは作動可能に連結したタンデム・ポリペプチドのラベルに用いられるポリペプチドであってもよい。このような融合タグの例には、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、トウガラシ蛍光タンパク質が含まれるが、これらに限定はされない。
【0032】
「遺伝子」という用語は、予め選択されたポリペプチドをコードする核酸の任意の断片を示すために広く用いられる。ゆえに、遺伝子には、予め選択されたポリペプチドのコード配列および/または発現に必要な調節配列が含まれるであろう。遺伝子は、所望の供給源からのクローニングを含む様々な供給源から、または既知のもしくは予測された配列情報からの合成により得ることができる。また本発明の遺伝子を、任意の生物における発現のために最適化してもよい。例えば、コドン使用表を用いて、Escherichia coliにおける発現のために遺伝子を最適化してもよい。Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)。
【0033】
「封入体」とは、細胞の細胞質における無定形の沈殿物;細胞に適合しているが、損傷し、不適切に折り畳まれたもしくは不適切なリガンドとなった(liganded)凝集タンパク質、または類似の不適当に処理された外来タンパク質、例えばウイルス外被タンパク質または組換えDNA産物などである。
【0034】
「封入体融合パートナー」は、予め選択されたポリペプチドおよび封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドに、それが細胞内で発現されたときに封入体を形成させる、配列番号1〜15のいずれか1つまたはそれらの変異体を有するアミノ酸配列である。本発明の封入体融合パートナーを改変して、その改変封入体融合パートナーを含む封入体に単離増強を付与することができる。封入体融合パートナーの例には、表Iおよび表IIに提供する配列が含まれるが、これらに限定はされない。
【0035】
「誘導性プロモーター」という用語は、外部刺激(例えば、化学的、栄養的ストレス、または熱)により作動し得る、調節性プロモーターを表す。例えば、IPTG(イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド)の使用によりlacプロモーターを誘導することができる。別の例において、低温でPL転写を抑制し高温で抑制しない温度感受性リプレッサーであるcIts857により、バクテリオファージ・ラムダPLプロモーターを調節することができる。ゆえに、温度変化を用いてPLからの転写を誘導してもよい。Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765。
【0036】
「単離増強」という用語は、封入体を構成するポリペプチドの精製に役立つ封入体の特性の改変を表している。例えば、封入体融合パートナーを変化させて、該改変封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドから形成される封入体の溶解性を上昇させることは、単離増強であろう。別の例において、封入体融合パートナーを変化させて封入体の溶解性を選択pHで制御することは、単離増強であろう。
【0037】
「読み取り枠」(ORF)は、予め選択されたポリペプチドなどのポリペプチドをコードする核酸配列の領域であり、この領域は、コード配列の一部を表すこともあるし、または全コード配列を表すこともある。
【0038】
「作動可能に連結」という用語は、一方の機能が他方により影響を受けるような1個の核酸断片または1個のアミノ酸配列上の核酸配列またはアミノ酸配列の関連(association)を表す。例えば、調節性DNA配列と、RNAをコードするDNA配列の2つが、調節性DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を与えるように置かれている(即ち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)なら、調節性DNA配列はRNAをコードするDNA配列に「作動可能に連結("operably linked to")」または「関連("associated with")」していると称される。アミノ酸配列に関する例において、封入体融合パートナーがタンデム・ポリペプチドに封入体を形成させる場合に、該封入体融合パートナーは予め選択されたアミノ酸配列に作動可能に連結されていると称される。別の例では、シグナル配列がタンデム・ポリペプチドを細胞内の特定の位置に方向付けているときに、シグナル配列は予め選択されたアミノ酸に作動可能に連結されていると称される。
【0039】
「オペレーター」は、近傍にあるプロモーターで転写が開始するのを妨げるようリプレッサータンパク質が結合するDNA上の部位である。多くのオペレーターおよびリプレッサーが知られており、その例としてlacオペレーターおよびlacリプレッサーが挙げられる。Lewin, Genes VII, Oxford University Press, New York, New York (2000)。
【0040】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを表しており、ゆえに、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質がポリペプチドの定義内に含まれる。さらにこの用語は、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの発現後修飾物を含む。この定義内に含まれるものとして、例えば1つまたはそれ以上のアミノ酸類似体またはラベル化アミノ酸を含むポリペプチドがある。放射性ラベルされたアミノ酸の例には、S35-メチオニン、S35-システイン、H3-アラニンなどが含まれるが、これらに限定はされない。また、本発明を用いて、重水素中でポリペプチドを発現する細胞を培養することにより、重水素化ポリペプチドを製造してもよい。このような重水素化ポリペプチドは、NMR研究において特に有用である。
【0041】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼおよび適切な転写に必要な他の因子に対して認識部位を提供することによりコード配列の発現を制御している、通常、そのコード配列の上流(5')にあるヌクレオチド配列を表している。「プロモーター」には、TATA-ボックスおよび転写開始部位を指定する働きをする他の配列から成る短いDNA配列である最小プロモーターが含まれ、これに発現制御のための調節要素が付加される。また、「プロモーター」は最小プロモーターに、コード配列の発現を制御し得る調節要素を追加した配列を含むヌクレオチド配列を表す。プロモーターは、天然の遺伝子からその全体を得てもよいし、天然に見い出される異なるプロモーターから得られる異なる要素で構成されていてもよいし、または合成DNA断片から成るものであってもよい。プロモーターは、生理学的条件または環境条件に応答して転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含んでいてもよい。
【0042】
「精製安定性」という用語は、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている封入体融合パートナーを有するタンデム・ポリペプチドから形成される封入体の単離特性を表している。高い精製安定性とは、封入体をそれが産生された細胞から単離することができることを示す。低い精製安定性は、封入体を形成するタンデム・ポリペプチドの解離のため、精製中に封入体が不安定であることを示す。
【0043】
「精製された」および「単離された」という用語は、ポリペプチドまたは核酸配列について言う場合には、同じタイプの他の生体高分子が実質的に存在しない中で、示された分子が存在することを意味する。本明細書中で用いる「精製された」という用語は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の同タイプの生体高分子が存在することを意味する(しかしながら、水、緩衝液および他の小分子、特に分子量が1000未満の分子は存在し得る)。
【0044】
「調節性プロモーター」という用語は、構成的な様式よりむしろ制御された様式で遺伝子発現を指令するプロモーターを表す。調節性プロモーターには、誘導性プロモーターおよび抑制性プロモーターが含まれる。このようなプロモーターには、天然配列および合成配列ならびに合成配列と天然配列の組み合わせであり得る配列が含まれるであろう。異なるプロモーターは、異なる環境条件に応答して遺伝子の発現を指令するであろう。本発明において有用な、通常の、調節性プロモーターには、代謝調節に用いられるプロモーター(例えばIPTG-誘導性lacプロモーター)、熱ショックプロモーター(例えばSOSプロモーター)およびバクテリオファージプロモーター(例えば、T7プロモーター)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0045】
「リボソーム結合部位」とは、リボソームの大小サブユニットが会合して完全リボソームを形成してmRNAの翻訳を開始させる、mRNA上の部位をコードするDNA配列のことである。リボソーム結合部位コンセンサス配列には、AGGAまたはGAGGが含まれ、通常、mRNA上の開始AUGコドンの約8〜13ヌクレオチド上流(5')に位置する。多くのリボソーム結合部位が当分野で知られている。(Shine et al., Nature, 254:34, (1975);Biological Regulation and Development:Gene Expression (ed. R. F. Goldberger)(1979)中, Steitz et al., "Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA")。
【0046】
「自己-接着」という用語は、封入体を形成するための、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている封入体融合パートナー配列を有する個々のタンデム・ポリペプチド間の会合を表している。自己-接着は、タンデム・ポリペプチドから形成される封入体の精製安定性に影響を及ぼす。自己-接着が強すぎる場合、互いに非常に固く会合しているために、単離された封入体から個々のタンデム・ポリペプチドを分離するのが困難であるタンデム・ポリペプチドを有する封入体が生じる。自己-接着が低度でありすぎる場合、封入体を形成するタンデム・ポリペプチドの解離のために単離中、不安定である封入体が生じる。封入体融合パートナーのアミノ酸配列を変化させることによって自己-接着を調節することができる。
【0047】
「シグナル配列」とは、作動可能に連結したポリペプチドを、シグナル配列により指定されたように、細胞部位、区分にまたは細胞からの分泌に向ける役割を担うタンパク質またはポリペプチドにおける領域である。例えば、シグナル配列は、細菌の内膜、ペリプラズム空間および外膜へ、作動可能に連結したポリペプチドを導く。このようなシグナル配列の核酸およびアミノ酸配列は、当分野で周知であり、報告されている。Watson, Molecular Biology of the Gene, 4th edition, Benjamin/Cummings Publishing Company, Inc., Menlo Park, CA (1987);Experimental Manipulation of Gene Expression, (1983)中, Masui et al.;Ghrayeb et al., EMBO J., 3:2437 (1984);Oka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:7212 (1985);Palva et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:5582 (1982);U.S. Patent No. 4,336,336)。
【0048】
昆虫細胞における使用が好ましいシグナル配列は、分泌される昆虫またはバキュロウイルスタンパク質の遺伝子、例えばバキュロウイルス・ポリヘドリン遺伝子(Carbonell et al., Gene, 73:409 (1988))から得ることができる。または、哺乳動物細胞の翻訳後修飾(例えば、シグナルペプチド切断、タンパク質分解およびリン酸化)のためのシグナルは、昆虫細胞により認識されるようであり、さらに分泌および核蓄積に必要なシグナルは、無脊椎動物と脊椎動物の間で保存されるようであるので、非昆虫起源のシグナル配列、例えばヒトα-インターフェロン(Maeda et al., Nature, 315:592 (1985))、ヒトガストリン放出ペプチド(Lebacq-Verheyden et al., Mol. Cell. Biol., 8:3129 (1988))、ヒトIL-2(Smith et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:8404 (1985))、マウスIL-3 (Miyajima et al., Gene, 58:273 (1987))およびヒトグルコセレブロシダーゼ(Martin et al., DNA, 7:99 (1988))をコードする遺伝子から得られるシグナル配列を用いて昆虫における分泌をもたらしてもよい。
【0049】
適当な酵母シグナル配列は、分泌される酵母タンパク質の遺伝子、例えば酵母転化酵素遺伝子(欧州特許庁公開番号012 873;日本国特許庁公開番号62,096,086)およびA-因子遺伝子(米国特許番号4,588,684)から得ることができる。また、インターフェロン由来などの非酵母由来の配列も、酵母における分泌を担うものとして存在する(欧州特許庁公開番号060 057)。
【0050】
「溶解性」という用語は、単位容量の溶媒に溶解し得る物質の量を表している。例えば、本明細書中で用いる溶解性は、生理的緩衝液などの溶媒のある容量に再懸濁されるタンデム・ポリペプチドの能力を示す。
【0051】
「抑制可能な(Suppressible)終止コドン」とは、抑制細胞でない細胞でRNAが翻訳される場合に、抑制可能な終止コドンを含むRNAの翻訳に対して終止コドンとして働くコドンである。しかし、RNAが抑制細胞である細胞において翻訳される場合には、抑制細胞は、抑制可能な終止コドンを認識して伸長するポリペプチド鎖にアミノ酸の挿入を行うトランスファーRNAを産生する。この働きにより、RNA翻訳は抑制可能な終止コドンを越えて継続するのが可能になる。抑制可能な終止コドンは、時にはナンセンス突然変異と称される。抑制可能な終止コドンは、当分野でよく知られており、アンバー突然変異(UAG)およびオーカー突然変異(UAA)などの例が含まれる。伸長するポリペプチド鎖の、抑制可能な終止コドンに対応する位置にアミノ酸を挿入する多くの抑制細胞が存在する。サプレッサー、認識されるコドンおよび挿入アミノ酸の例には次のものが含まれる:supD、アンバー、セリン;supE、アンバー、グルタミン;supF、アンバー、チロシン;supB、アンバーおよびオーカー、グルタミン;およびsupC、アンバーおよびオーカー、チロシン。他のサプレッサーは当分野で知られている。さらに、抑制細胞である多くの細胞が当分野で知られている。このような細胞の例には、細菌株:71/18(supE);BB4(supF58およびsupE44);BNN102(supE44);C600(supE44);およびCSH18(supE)が含まれるが、これらに限定はされない。多くの抑制細胞が知られており、ATCCまたは他の商業的供給源から入手可能であることを当業者なら理解するであろう。抑制可能な終止コドンを用いて、ポリペプチド鎖の特定の位置に特定のアミノ酸を挿入することができる。このような挿入を用いて、化学剤または酵素剤に対して切断部位として作用する、ポリペプチドにおける特定のアミノ酸配列を作り出すことができる。適当な抑制可能な終止コドンの選択および適当な細胞における抑制可能な終止コドンを含むRNAの翻訳を通じて、当業者はどの化学剤または酵素剤が特定の位置でポリペプチド鎖を切断し得るかを制御することができる。
【0052】
本明細書中で定義される「タンデム・ポリペプチド」は、追加のアミノ酸を含むこともある予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている封入体融合パートナーを有するタンパク質である。さらにタンデム・ポリペプチドは、細胞において発現されたときに封入体を形成するものとして定義される。
【0053】
「組織特異的プロテアーゼ」という用語は、他の異なるタイプの細胞よりも特定の細胞において高レベルで発現されるタンパク質分解酵素を表す。前立腺特異抗原は、組織特異的プロテアーゼの一例である。
【0054】
「転写ターミネーター配列」という用語は、DNA鋳型に沿って特定の位置でRNA合成を停止させるよう機能するDNA内のシグナルを表す。転写ターミネーターは、rho因子依存性、または非依存性のどちらであってもよい。転写ターミネーター配列の一例は、T7ターミネーターである。転写ターミネーターは当分野で知られており、当分野で知られた組換え法に従い、商業的に入手可能なベクターから単離してもよい。(Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765;Stratagene, La Jolla, CA)。
【0055】
「形質転換」という用語は、挿入に用いられる方法を問わず、宿主細胞への外来性核酸配列の挿入を表す。例えば、直接取り込み、形質導入、f-接合(mating)または電気穿孔法を用いて、宿主細胞へ核酸配列を導入してもよい。外来性核酸配列は、プラスミドなどの組み込まれないベクターとして維持されていてもよいし、または宿主ゲノムに組み込まれることもある。
【0056】
「翻訳開始配列」という用語は、高レベルの翻訳開始をもたらす転写mRNAにおける配列をコードするDNA配列を表す。多くの翻訳開始配列は、当分野で知られている。これらの配列は、時にはリーダー配列と称される。翻訳開始配列には、最適化されたリボソーム結合部位が含まれる場合もある。本発明においては、細菌の翻訳開始配列が好ましい。このような翻訳開始配列は、当分野で周知であり、バクテリオファージT7, バクテリオファージΦ10およびompTをコードする遺伝子から入手してもよい。当業者なら、多種多様な、商業的に入手可能なプラスミド、例えばプラスミドのpET(T7 RNAポリメラーゼ発現のためのプラスミド)シリーズ(Stratagene, La Jolla, CA)から容易に入手し、翻訳開始配列をクローニングすることができる。
【0057】
「変異体」ポリペプチドは、天然のポリペプチドのN末端および/またはC末端の1つまたはそれ以上のアミノ酸を欠失または追加するか;天然のタンパク質における1またはそれ以上の部位で1つまたはそれ以上のアミノ酸を欠失または追加するか;または天然のタンパク質における1またはそれ以上の部位で1つまたはそれ以上のアミノ酸を置換することにより、天然のポリペプチドから得られるポリペプチドである。このような置換または挿入は、保存的アミノ酸置換であるのが好ましい。このような操作の方法は、一般的に、当分野で知られている。Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:488, (1985);Kunkel et al., Methods in Enzymol., 154:367 (1987);US Patent No. 4,873,192;Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York)およびこれらの引用文献。さらに、DNA突然変異のためのキットが商業的に入手可能である(Quick change Kit, Stratagene, La Jolla, CA)。所望のタンパク質の生物活性に影響を与えない適当なアミノ酸置換についての指導は、Dayhoffら(1978) Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)のモデルにおいて見出されるであろう。
【0058】
「ベクター」には、二本鎖または一本鎖で、線形または円形であり、自ら伝染可能もしくは起動可能であるかまたはそうではなく、細胞ゲノムへ組み込まれるか、または染色体外に存在する(例えば、複製起点を持ち、自律複製するプラスミド)かのどちらかにより原核生物宿主または真核生物宿主を形質転換させ得る、あらゆるプラスミド、コスミド、バクテリオファージ、酵母人工染色体、細菌人工染色体、f因子、ファージミドまたはウイルスが含まれるが、これらに限定はされない。
【0059】
特に、DNA媒体である、天然にまたは設計により2つの異なる宿主生物(例えば、細菌、哺乳動物、酵母または昆虫細胞)において複製し得るシャトルベクターが含まれる。
【0060】
発明の詳細な説明
本発明は、予め選択されたポリペプチドが細胞で効率的に発現されるのを可能にする方法および物質を提供する。予め選択されたポリペプチドをコードする核酸配列を、本発明により提供される発現カセットに挿入する。発現カセットは、予め選択されたポリペプチドを封入体融合パートナーに作動可能に連結させてタンデム・ポリペプチドを形成させる。タンデム・ポリペプチドは、タンデム・ポリペプチドが発現される細胞において封入体を形成するであろう。
【0061】
天然供給源からポリペプチドを単離および精製することにより、組換えDNA技術によりポリペプチドを生産することの重要な利点は、天然供給源からポリペプチドを単離するのに必要であろう出発物質より少ない物質を用いて同等の量のタンパク質を製造し得ることである。さらに、封入体の形成は、タンデム・ポリペプチドをより容易に精製することを可能にし、タンデム・ポリペプチドの細胞内での望まれない分解を防ぐ。さらに、組換え技術を使用してポリペプチドを製造することにより、天然の細胞に通常存在する幾つかの分子がない状態でのタンパク質の単離が可能になる。例えば、組換え非ヒト宿主により製造される唯一のヒトポリペプチドは目的の組換えポリペプチドであるので、ヒトポリペプチドの混入物質を含まないポリペプチド組成物を製造することができる。さらに、ヒトに対して病原性である天然供給源由来の潜在的ウイルス物質およびウイルス成分を避けることもできる。
【0062】
発現カセット
本発明は、封入体融合パートナーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドの発現を指令し得る発現カセットを提供する。さらに本発明は、封入体融合パートナーおよび切断可能なペプチドリンカーに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドの発現を指令し得る発現カセットを提供する。また本発明は、封入体融合パートナーおよび融合タグに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドの発現を指令し得る発現カセットを提供する。さらに本発明は、封入体融合パートナー、切断可能なリンカーペプチドおよび融合タグに作動可能に連結されている予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドの発現を指令し得る発現カセットを提供する。また、本発明は、タンデム・ポリペプチドに封入体を形成させるであろう任意の順序で、封入体融合パートナーに作動可能に連結され、1つもしくはそれ以上の切断可能なペプチドリンカー、または1つもしくはそれ以上の融合タグに独立して作動可能に連結されている、予め選択されたポリペプチドを含むタンデム・ポリペプチドの発現を指令し得る発現カセットを提供する。
【0063】
プロモーター
本発明の発現カセットは、プロモーターを含む。発現カセットの転写を指令し得るあらゆるプロモーターを用いることができる。従って、多くのプロモーターが、本発明の発現カセットの範囲内に含まれるであろう。一部の有用なプロモーターには、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、調節性プロモーター、細胞特異的プロモーター、ウイルスのプロモーターおよび合成プロモーターが含まれる。プロモーターは、RNAポリメラーゼの認識部位、および場合により適切な転写に必要な他の因子を提供することにより、作動可能に連結されている核酸配列の発現を制御するヌクレオチド配列である。プロモーターには、転写開始に必要な全ての基本的要素、例えばTATAボックスおよび/または転写開始部位を特定する働きをする他の配列のみからなる最小プロモーターが含まれる。多種多様な供給源からプロモーターを得ることができる。例えば、プロプロモーターは、天然の遺伝子から全体を得てもよいし、天然に見い出される異なるプロモーターから得られる異なる要素で構成されていてもよいし、または完全な合成物である核酸配列から成るものであってもよい。プロモーターを、多種多様の生物のタイプから得て、特定の細胞内での使用のために調整してもよい。
【0064】
細菌において使用するプロモーター
細菌においてタンデム・ポリペプチドを発現させるために、細菌プロモーターを有する発現カセットが用いられるであろう。細菌プロモーターは、細菌のRNAポリメラーゼを結合して、mRNAへのコード配列の下流(3'')への転写を開始させ得るあらゆるDNA配列である。プロモーターは、コード配列の5'末端に近接した位置に通常置かれている転写開始領域を有するであろう。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。オペレーターと称される第二ドメインが存在して、RNA合成が開始する近接のRNAポリメラーゼ結合部位に重なる場合もある。このオペレーターは、負の調節を受ける(誘導性)転写を可能にするが、これは遺伝子リプレッサータンパク質がオペレーターに結合し、ゆえに特定の遺伝子の転写を妨げているのであろう。オペレーターなどの負の調節要素がない場合に、構成的発現が起こるであろう。さらに、存在するならRNAポリメラーゼ結合配列の近接(5')に位置する、遺伝子活性化タンパク質結合配列により正の調節が達成されるかもしれない。遺伝子活性化タンパク質の例として、E.coliにおけるlacオペロンの転写開始を助けるカタボライト活性化タンパク質(CAP)(Raibaud et al., Ann. Rev. Genet., 18:173 (1984))が挙げられる。従って、調節性発現は、正または負の調節のどちらであってもよく、ゆえに転写増強または低下のどちらかであろう。
【0065】
代謝経路の酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例として、糖代謝酵素、例えばガラクトース、ラクトース(lac)(Chang et al., Nature, 198:1056 (1977))およびマルトース由来のプロモーター配列が挙げられる。別の例として、トリプトファン(trp)(Goeddel et al., Nuc. Acids Res., 8:4057 (1980);Yelverton et al., Nuc. Acids Res., 9:731 (1981);米国特許番号4,738,921;および欧州特許庁公開番号036 776および121 775)などの生合成酵素由来のプロモーター配列が含まれる。さらに、β-ラクタマーゼ(bla)プロモーター系(Interferon 3 (ed. I. Gresser), 1981中, Weissmann, "The cloning of interferon and other mistakes")およびバクテリオファージラムダPL(Shimatake et al., Nature, 292:128 (1981))およびT5(米国特許番号4,689,406)プロモーター系が、有用なプロモーター配列を提供する。好ましいプロモーターは、クロレラウイルスプロモーター(米国特許番号6,316,224)である。
【0066】
天然起源でない合成プロモーターも、細菌プロモーターとして機能する。例えば、1つの細菌またはバクテリオファージプロモーターの転写活性化配列を、別の細菌またはバクテリオファージプロモーターのオペロン配列と接合(joined)して、合成ハイブリッドプロモーター(米国特許番号4,551,433)を作り出してもよい。例えば、tacプロモーターは、trpプロモーターと、lacリプレッサーにより調節されるlacオペロン配列の双方からなるハイブリッドtrp-lacプロモーターである(Amann et al., Gene, 25:167 (1983);de Boer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21 (1983))。さらに、細菌プロモーターは、細菌のRNAポリメラーゼに結合して転写を開始する能力を有する細菌以外の供給源の天然起源のプロモーターを含むこともある。細菌以外を供給源とする天然起源のプロモーターを、適合性のRNAポリメラーゼと結合(coupled)させ、原核生物においてある種の遺伝子を高レベルで発現させることもできる。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、結合させるプロモーター系の一例である(Studier et al., J. Mol. Biol., 189:113 (1986);Tabor et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:1074 (1985))。さらに、ハイブリッドプロモーターは、バクテリオファージプロモーターとE.coliオペレーター領域からなることもある(欧州特許庁公開番号267 851)。
【0067】
昆虫細胞において使用するプロモーター
バキュロウイルスプロモーターを持つ発現カセットを用いて、昆虫細胞においてタンデム・ポリペプチドを発現させることができる。バキュロウイルスプロモーターは、バキュロウイルスRNAポリメラーゼに結合して、mRNAへのコード配列の転写を開始させ得るあらゆるDNA配列である。プロモーターは、コード配列の5'末端に近接して通常存在する転写開始領域を有するであろう。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含んでいる。エンハンサーと称する第二ドメインが存在する場合もあり、これは構造遺伝子の遠位にあるのが普通である。バキュロウイルスプロモーターは、調節性プロモーターであるかまたは構成的プロモーターであってもよい。有用なプロモーター配列は、ウイルス感染サイクルにおける後期に転写される構造遺伝子から得てもよい。その例には、バキュロウイルス多面体タンパク質をコードする遺伝子由来の配列(The Molecular Biology of Baculoviruses (ed. Walter Doerfler), 1986中, Friesen et al., "The Regulation of Baculovirus Gene Expression";および欧州特許庁公開番号127 839および155 476)およびバキュロウイルスp10タンパク質をコードする遺伝子(Vlak et al., J. Gen. Virol., 69:765 (1988))が含まれる。
【0068】
酵母において使用するプロモーター
酵母において機能的であるプロモーターは、当業者に知られている。RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位に加えて、酵母プロモーターは、上流活性化配列と称する第二の領域を有することもある。上流活性化配列は、誘導され得る、調節性発現を可能にする。構成的発現は、上流活性化配列が存在しない場合に起こる。調節性発現は、正または負の調節のどちらであってもよく、ゆえに転写増強または低下のどちらかであろう。
【0069】
酵母において使用するプロモーターを、代謝経路において活性である酵素をコードする酵母遺伝子から得てもよい。このような遺伝子の例には、アルコール脱水素酵素(ADH) (欧州特許庁公開番号284 044)、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPまたはGAPDH)、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼおよびピルビン酸キナーゼ(PyK)(欧州特許庁公開番号329 203)が含まれる。酸性ホスファターゼをコードする酵母PHO5遺伝子も、有用なプロモーター配列を提供する(Myanohara et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:1 (1983))。
【0070】
天然に存在しない合成プロモーターを酵母における発現に用いてもよい。例えば、1つの酵母プロモーター由来の上流活性化配列を別の酵母プロモーターの転写活性化領域と接合して、合成ハイブリッドプロモーターを作り出してもよい。このようなハイブリッドプロモーターの例には、GAP転写活性化領域に連結されたADH調節配列(米国特許番号4,876,197および4,880,734)が含まれる。ハイブリッドプロモーターの他の例には、GAPまたはPyKなどの糖分解酵素遺伝子の転写活性化領域と組み合わせた、ADH2、GAL4、GAL10またはPHO5遺伝子のいずれかの調節配列からなるプロモーター(欧州特許庁公開番号164 556)が含まれる。さらに、酵母プロモーターは、酵母RNAポリメラーゼに結合して転写を開始させる能力を持つ、酵母以外を起源とする天然に存在するプロモーターを含み得る。このようなプロモーターの例は、当分野で知られている(Cohen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:1078 (1980);Henikoff et al., Nature, 283:835 (1981);Hollenberg et al., Curr. Topics Microbiol. Immunol., 96:119 (1981));Plasmids of Medical, Environmental and Commercial Importance (eds. K. N. Timmis and A. Puhler), 1979中, Hollenberg et al., "The Expression of Bacterial Antibiotic Resistance Genes in the Yeast Saccharomyces cerevisiae";(Mercerau-Puigalon et al., Gene, 11:163 (1980);Panthier et al., Curr. Genet., 2:109 (1980))。
【0071】
哺乳動物細胞において使用するプロモーター
多くの哺乳動物プロモーターが、当分野で知られており、本発明の発現カセットと共に使用してもよい。哺乳動物プロモーターは、コード配列の5'末端に近接して通常存在する転写開始領域、および転写開始部位の25〜30塩基対(bp)上流に通常存在するTATAボックスを有することが多い。TATAボックスは正しい部位でRNA合成を始めるようRNAポリメラーゼIIを指令すると考えられている。哺乳動物のプロモーターは、TATAボックスの100〜200bp上流以内に通常は位置する上流プロモーター要素を含むこともある。上流プロモーター要素は、転写が開始される速度を決定し、どちらかの方向に作用することができる(Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed., 1989中, Sambrook et al., "Expression of Cloned Genes in Mammalian Cells")。
【0072】
哺乳動物のウイルス遺伝子は、高度に発現されることが多く、広い宿主範囲を有する;ゆえに哺乳動物のウイルス遺伝子をコードする配列は、有用なプロモーター配列を提供することが多い。例として、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)および単純ヘルペスウイルスプロモーターが挙げられる。さらに、ウイルス遺伝子以外から得られる配列、例えばネズミ・メタロチオネイン遺伝子も有用なプロモーター配列を提供する。発現は、構成的または調節性のどちらであってもよい。
【0073】
哺乳動物プロモーターは、エンハンサーと関連させてもよい。エンハンサーの存在は、通常、関連するプロモーターからの転写を増大させるであろう。エンハンサーは、同種または異種プロモーターに連結されたときに、正常なRNA開始部位で開始する合成に関して、転写を1000倍まで刺激し得る調節性DNA配列である。エンハンサーは、転写開始部位から上流または下流で、正常な方向または反対方向に置かれるか、またはプロモーターから1000ヌクレオチド以上の距離に置かれているときに、活性である(Maniatis et al., Science, 236:1237 (1987));Alberts et al., Molecular Biology of the Cell, 2nd ed., 1989)。ウイルス由来のエンハンサー要素は、通常、宿主範囲が広いので有用であることが多い。例として、SV40初期遺伝子エンハンサー(Dijkema et al., EMBO J., 4:761 (1985))ならびにラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列(LTR)由来(Gorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:6777 (1982b))およびヒトサイトメガロウイルス由来(Boshart et al., Cell, 41:521 (1985))のエンハンサー/プロモーターが挙げられる。さらに、一部のエンハンサーは、誘導物質、例えばホルモンまたは金属イオンの存在下でのみ調節可能であり、活性となる(Sassone-Corsi and Borelli, Trends Genet., 2:215 (1986);Maniatis et al., Science, 236:1237 (1987))。
【0074】
本発明の発現カセットの範囲内で多くのプロモーターおよび関連の調節要素を用いて、コードされるタンデム・ポリペプチドを転写してもよいことは理解されるであろう。上述のプロモーターは、例として提供されているだけであって、本発明の範囲内に含まれるプロモーターの完全なリストとみなすべきではない。
【0075】
翻訳開始配列
本発明の発現カセットは、本発明のタンデム・ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳効率を上昇させる核酸配列を含むこともある。このような翻訳の増大により、タンデム・ポリペプチドの生産が増大する。効率的なリボソーム結合部位の存在は、原核生物における遺伝子発現にとって有用である。細菌のmRNAにおいて、保存された6ヌクレオチドの区間、Shine-Dalgarno配列が、開始AUGコドンの上流に通常、見出される(Shine et al., Nature, 254:34 (1975))。この配列は、リボソーム結合部位とEscherichia coli 16S rRNAの3'末端の間の塩基対合により、mRNAへのリボソームの結合を促進すると考えられている(Biological Regulation and Development:Gene Expression (ed. R. F. Goldberger), 1979)中, Steitz et al., "Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA")。このようなリボソーム結合部位、またはその作動可能な誘導体は、本発明の発現カセットの範囲内に含まれる。
【0076】
翻訳開始配列を、発現されるあらゆるEscherichia coli遺伝子から得ることができ、本発明の発現カセットの範囲内で用いることができる。遺伝子は、高度に発現される遺伝子であるのが好ましい。翻訳開始配列を、通常の組換え法、合成技術、精製技術またはそれらの組み合わせ(それらは全て周知である)により得ることができる(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, NY. (1989);Beaucage and Caruthers, Tetra. Letts., 22:1859 (1981);VanDevanter et al., Nucleic Acids Res., 12:6159 (1984)。または、翻訳開始配列を多くの商業的供給元から得ることができる(Operon Technologies;Life Technologies Inc, Gaithersburg, MD)。好ましい態様において、T7翻訳開始配列を用いる。T7翻訳開始配列は高度に発現されるT7遺伝子10シストロンから得られるものであり、表VIIに示す。翻訳開始配列の他の例には、pMalc2発現ベクター(New England Biolabs, Beverly, MA)に存在するマルトース結合タンパク質(Mal E遺伝子)開始配列(Guan et al., Gene, 67:21 (1997))、および次の遺伝子:チオレドキシン遺伝子(Novagen, Madison, WI)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子(Pharmacia, Piscataway, NJ)、β-ガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子およびE.coli Trp E遺伝子(Ausubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 16, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, NY)の翻訳開始配列が含まれるが、これらに限定はされない。
【0077】
真核生物のmRNAは、Shine-Dalgarno配列を含んでいない。その代わりに、翻訳開始コドンの選択は、通常、mRNAの5'末端のキャップへの近接性により決定される。真核生物のmRNAにおける開始コドンを直接囲んでいるヌクレオチドは、翻訳効率に影響を与える。従って、当業者は、本発明の発現カセットによりコードされるタンデム・ポリペプチドの翻訳をどの核酸配列が増大させるであろうかを決定することができる。このような核酸配列は、本発明の範囲内にある。
【0078】
切断可能なペプチドリンカー
切断可能なペプチドリンカーは、切断物質により認識されて切断され得るアミノ酸配列である。認識、切断される多くのアミノ酸配列が知られている。切断物質およびそれらの認識部位の例には、フェニルアラニン、トレオニンまたはチロシンの後ろを切断するキモトリプシン;アルギニンの後ろを切断するトロンビン、リジンまたはアルギニンの後ろを切断するトリプシン、およびメチオニンの後ろを切断する臭化シアンが含まれるが、これらに限定されず、これらを表Vおよび表VIに示す。本発明の範囲内にある切断可能なペプチドリンカーとして用いられ得る多くのアミノ酸配列が存在することを当業者なら理解するであろう。本発明の発現カセットは、予め選択されたポリペプチドおよび切断可能なペプチドリンカーに作動可能に連結されている封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドをコードすることもある。ゆえに、特定物質により切断し得る切断可能なペプチドリンカーを含むタンデム・ポリペプチドをコードするよう、本発明の発現カセットを設計することができる。さらに、多重切断可能なペプチドリンカーを含むタンデム・ポリペプチドをコードするよう、本発明の発現カセットを設計してもよい。これらの切断可能なペプチドリンカーを、同じ切断物質により、または異なる切断物質により切断してもよい。また、切断可能なペプチドリンカーをタンデム・ポリペプチド内の異なる位置においてもよい。このようなタンデム・ポリペプチドを選択切断物質で異なる時に処理してタンデム・ポリペプチドの異なる切断産物を生産してもよい。
【0079】
さらに、組織特異的方法でタンデム・ポリペプチドの切断を促進させるであろう組織特異的プロテアーゼを含むタンデム・ポリペプチドを発現するように、本発明の発現カセットを設計してもよい。例えば、前立腺特異抗原は、前立腺管内膜細胞において発現されているセリンプロテアーゼである。前立腺特異抗原は、アミノ酸配列セリン-セリン-(チロシン/フェニルアラニン)-チロシン↓セリン-(グリシン/セリン)での切断に選好性を呈する。Coombs et al., Chem. Biol., 5:475 (1998)。従って、前立腺組織で特異的に切断されるタンデム・ポリペプチドを設計することができる。ゆえに本発明の発現カセットを用いて、それを必要とする患者体内の特定組織で活性化されるプロドラッグであるタンデム・ポリペプチドを発現させてもよい。このようなタンデム・ポリペプチドは、プロドラッグが作用部位でのみ活性化され、他の組織への潜在的な毒性効果を回避することができるという有利性を与える。本発明の発現カセットを用いて、組織特異的である切断可能なペプチドリンカーを含む多くの異なるタンデム・ポリペプチドを発現させることができることを当業者なら理解するであろう。
【0080】
封入体融合パートナー
本発明の発現カセットは、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結された封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドをコードしている。驚くべきことに、予め選択されたポリペプチドへの封入体融合パートナーの連結が、産生されるタンデム・ポリペプチドに封入体を形成させるであろうことが、見い出されている。封入体融合パートナーの例には、表Iおよび表IIに示す封入体融合パートナーが含まれるが、これらに限定はされない。また、封入体融合パートナーのアミノ酸配列を改変して、有用な特性を示す封入体を産生させることができることが、驚くべきことに見い出されている。これらの有用な特性は、本発明の封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドから形成される封入体に単離増強を与える。単離増強により、予め選択されたポリペプチドに融合されている封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドが、封入体融合パートナーが存在しない場合の予め選択されたポリペプチドより容易に単離および精製されるのを可能にする。例えば、封入体融合パートナーを改変して、一定の条件群の下で可溶性がより高いまたは低い封入体を産生させてもよい。溶解性がpH、温度、塩濃度およびタンパク質濃度(これらに限定されない)を含む多くの変数に依存することを当業者なら理解するであろう。ゆえに、本発明の封入体融合パートナーを改変して、異なる条件下で所望の溶解性を有する封入体を生産してもよい。別の例において、本発明の封入体融合パートナーを改変して、自己-会合(association)がより強いまたは弱いタンデム・ポリペプチドを含む封入体を産生させてもよい。自己-会合とは、封入体を形成し、本発明の封入体融合パートナーを含む2つまたはそれ以上のタンデム・ポリペプチド間の相互作用の強度を示す。このような自己-会合を、タンパク質-タンパク質相互作用の測定に用いられる様々な既知の方法を用いて決定してもよい。このような方法は当分野で知られており、記載されている。Freifelder, Physical Biochemistry:Applications to Biochemistry and Molecular Biology, W.H. Freeman and Co., 2nd edition, New York, NY (1982)。自己-接着を用いて、精製に対して種々の安定性を示す封入体を産生させることができる。例えば、より強い自己-接着は、細胞から封入体を単離するのに用いられる条件が厳しい場合に、封入体を解離に対して安定化させるのに望ましいであろう。厚い細胞壁を有する細胞から封入体を単離する場合に、このような条件に遭遇することがある。しかし、緩和な条件を用いて封入体を単離する場合に、封入体を構成するタンデム・ポリペプチドがより容易に可溶化され、処理されるのを可能にするであろう弱い自己-接着が望ましいかもしれない。従って、本発明の封入体融合パートナーを改変して、特定の条件群のために所望のレベルの自己-接着を提供することができる。
【0081】
このような封入体融合パートナーを、予め選択されたポリペプチドのアミノ末端、カルボキシル末端または両末端に連結して、タンデム・ポリペプチドを形成してもよい。封入体融合パートナーは、作動可能に連結した予め選択されたポリペプチドに封入体を形成させるのに十分なサイズを有する。封入体融合パートナーのアミノ酸長が100以下であるのが好ましく、50以下であるのがより好ましく、30以下であるのが最も好ましい。
【0082】
一例において、封入体融合パートナーは、GSGQGQAQYLSASCVVFTNYSGDTASQVD(配列番号1)に相当するアミノ酸配列を有している。このアミノ酸配列は、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている封入体融合パートナーを有するタンデム・ポリペプチドに封入体を形成させ得ることが驚くべきことに見いだされている。別の驚くべき発見は、封入体融合パートナーのアミノ酸配列を改変して、単離増強を示す封入体を形成するタンデム・ポリペプチドを産生させることができることである。また、封入体融合パートナーは、配列番号1の変異体であって、作動可能に連結している予め選択されたポリペプチドにより封入体形成を起こすアミノ酸配列を有することができる。例えば、封入体融合パートナーは、次の配列に相当するアミノ配列を有し得るが、これらに限定はされない:
GSGQGQAQYLAASLVVFTNYSGDTASQVD (配列番号2);
GSQYLAASLVVFTNYSGDTASQVD (配列番号3);
GSGQGQAQYLAASLVVFTNYSGD (配列番号4);
GSQYLAASLVVFTNYSGD (配列番号5);
GSQYLAAVLVVFTNYSGDTASQVD (配列番号6);
GSGQGQAQYLTASLVKFTNYSGDTASQVD (配列番号7);
GSGQGQAQYLTASLVQFTNYSGDTASQVD (配列番号8);
GSGQGQAQYLPASLVKFTNYSGDTASQVD (配列番号9);
GSGQGQAQYLPASLVQFTNYSGDTASQVD (配列番号10);
GSGQGQAQYLAASLVKFTNYSGDTASQVD (配列番号11);
GSGQGQAQYLAASLVQFTNYSGDTASQVD (配列番号12);
GSGQGQAQYLSASLVKFTNYSGDTASQVD (配列番号13);
GSGQGQAQYLSASLVQFTNYSGDTASQVD (配列番号14);または
GSGQGQAQYLAAVLVVFTNYSGDTASQVD (配列番号15)。配列番号1〜15の各々をコードする典型的な核酸配列を表IIに示す。ゆえに、封入体融合パートナーは、作動可能に連結した予め選択されたポリペプチドにより封入体を形成させる配列番号1〜15のいずれか1つまたはそれらの変異体に相当するアミノ酸配列を有することも可能である。表VIIに記載するT7タグ配列などの他のアミノ酸配列に、封入体融合パートナーを連結させることもできる。
【0083】
予め選択されたポリペプチドに封入体融合パートナーを作動可能に連結させて、産生されたタンデム・ポリペプチドが細胞内の封入体を形成するかを測定することにより本発明の封入体融合パートナーを同定することができる。このような変異封入体融合パートナーの構築に用いられるであろう組換え法は、当分野で周知であり、報告されている。Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765。
【0084】
また、封入体融合パートナー変異体は、それらの配列の相同性を配列番号1〜15のいずれかと比較することにより同定することができる。配列番号1〜15のいずれかに対して75%以上、特に85〜95%のアミノ酸配列相同性を有するタンパク質断片は変異体と考えられ、本発明に包含される。
【0085】
数学アルゴリズム、例えばSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、配列相同性を決定することもできる(Smith & Waterman, J. Mol. Biol., 147:195 (1981);Pearson, Genomics, 11:635 (1991))。あらゆる配列アルゴリズムを用いて変異体を同定することができるが、本発明は、Smith-Watermanアルゴリズムに準拠して変異体を特徴付け、該アルゴリズムでは配列番号1〜15のいずれかを参照配列として用いてペプチド相同物の全長について相同性の百分率を決定する。一致、不一致および挿入または欠失に対するパラメータ値の選択は任意であるが、一部のパラメータ値は、他の値より生物学的に現実的な結果が得られることが見い出されている。Smith-Watermanアルゴリズムのためのある好ましい一連のパラメータ値は、一致残基に対して1の値を使用し、不一致残基に対して-1/3を使用する(残基は1個のヌクレオチドまたは1個のアミノ酸のどちらかである)「最大相似セグメント」アプローチにおいて示される(Waterman, Bulletin of Mathematical Biology, 46:473 (1984))。挿入および欠失xは、xk=1+k/3(kは、ある挿入または欠失における残基数である)として加重される。封入体融合パートナー変異体は、Smith-Watermanアルゴリズムを用いて、配列番号1〜15のいずれかに対して75%を越えるアミノ酸配列相同性を有するものが好ましい。90%を越えるアミノ酸配列相同性を有する変異体が、より好ましい。95%を越えるアミノ酸配列相同性を有する変異体がさらに好ましく、少なくとも98%のアミノ酸配列相同性を有する変異体が最も好ましい。
【0086】
読み取り枠
多くの核酸配列を本発明の発現カセットまたは核酸構築物に挿入し、これらを用いて多くの異なる、予め選択されたポリペプチドを産生させることができる。このような予め選択されたポリペプチドには、それらが発現される細胞内で可溶性または不溶性であるポリペプチドが含まれる。予め選択されたポリペプチドの例には、表IIIおよび表IVに記載するポリペプチドが含まれるが、これらに限定はされない。核酸配列を発現カセットに挿入して、核酸構築物が適当な細胞に挿入されたときに、対応するポリペプチドが産生されるか否かを判定することにより、本発明の発現カセットを用いて核酸配列を発現させることができるか否かを当業者は決定することができるであろう。
【0087】
1を越える読み取り枠のコピーを本発明の発現カセットに挿入することができる。好ましくは、1を越える読み取り枠を本発明の発現カセットに挿入するなら、それら読み取り枠の間に切断可能なペプチドリンカーを挿入する。このような構築物は、タンデム・ポリペプチドが切断物質によって切断され、1を越える読み取り枠を含む発現カセットから発現されるポリプロテインから個々の予め選択されたポリペプチドを産生することを可能にする。
【0088】
本発明の発現カセットまたは核酸構築物は、発現される細胞内で分解される予め選択されたポリペプチドの生産に特に好都合であると考えられる。短いポリペプチドは、このような予め選択されたポリペプチドの例である。また、本発明の発現カセットおよび核酸構築物は、細胞からの精製が困難である予め選択されたポリペプチドを生産するのに有用であると考えられている。例えば、通常、細胞壁または細胞膜と固く結び付いているであろう予め選択されたポリペプチドに封入体融合パートナーを作動可能に連結することにより、タンパク質は封入体から、より容易に精製され得るであろう。
【0089】
好ましい読み取り枠は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド−2(GLP-2)、副甲状腺ホルモン(PTH)および成長ホルモン放出因子(GRF)をコードする。他の好ましい読み取り枠には、グルカゴン様ペプチド類、グルカゴン様ペプチド-1の類似体、グルカゴン様ペプチド-2の類似体、GLP-2(7-36)および成長ホルモン放出因子類似体をコードするものが含まれる。このような類似体を、それらの個々の受容体に結合する能力により同定してもよい。例えば、グルカゴン様ペプチド-1の類似体と、グルカゴン様タンパク質-1受容体の結合は検出可能であろう。
【0090】
本発明の発現カセットまたは核酸構築物内で多くの読み取り枠を用いてもよいことを当業者は理解するであろう。このような読み取り枠の例には、後記の表Iに列挙するポリペプチドをコードする読み取り枠が含まれるが、これらに限定はされない。
【0091】
抑制可能な終止コドン
また、本発明の発現カセットは抑制可能な終止コドンを含む。抑制可能な終止コドンは、ナンセンス突然変異と称されることもある。抑制可能な終止コドンは、サプレッサーが存在しない場合に、抑制可能な終止コドンの位置でRNAの翻訳を終了させるシグナルとして働く。しかし、サプレッサーの存在下で、別の終止コドンがRNAの翻訳終了を合図するまで、抑制可能な終止コドンにより翻訳は継続するであろう。抑制可能な終止コドンおよびサプレッサーは、当分野で知られている。Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765。このようなコドンの例として、オーカー(UAA)およびアンバー(UAG)コドンが挙げられる。抑制可能な終止コドンは、該コドンを認識して、該コドンを含むRNAから翻訳されるポリペプチド鎖へのアミノ酸の挿入を容易にするtRNAをコードする細胞において抑制され得る。異なる細胞は、抑制可能な終止コドンでポリペプチド鎖への異なるアミノ酸の挿入を容易にする異なるtRNAを含む。例えば、アンバーコドンは、セリン、グルタミン、チロシン、グルタミンおよびチロシンを各々ポリペプチドに挿入するsupD, supE, supF, supBおよびsupC細菌株により抑制することができる。オーカーコドンは、グルタミンおよびチロシンを各々ポリペプチド鎖に挿入するsupBおよびsupC細菌株により抑制することができる。本発明の発現カセット内で、別の抑制可能なコドンおよびサプレッサーを用いてもよい。
【0092】
本発明の発現カセットにおける抑制可能な終止コドンの使用により、発現カセットを改変せずに、抑制可能な終止コドンによりコードされる位置に異なるアミノ酸が挿入されたポリペプチドの生産が可能になる。また抑制可能な終止コドンの使用により、異なる分子量を有するタンデム・ポリペプチドが、同じ発現カセットから発現され得る。例えば、アンバー突然変異を含むよう設計された発現カセットを非抑制株において発現させて、アンバーコドンで終了するタンデム・ポリペプチドを産生させることができる。supE Escherichia coliにおいて同じ発現カセットを発現させて、アンバー突然変異で融合ポリペプチドにグルタミンが挿入されたタンデム・ポリペプチドを生産することができる。またこのタンデム・ポリペプチドは、第二終止コドンで終了する融合タグなどの追加のアミノ酸配列をふくむこともある。抑制可能な終止コドンを含む本発明の発現カセットは、同じ発現カセットから発現され得る多種多様なタンデム・ポリペプチドの産生をもたらす。このようなタンデム・ポリペプチドの変形は、発現カセット内で用いられる抑制可能な終止コドンと発現カセットが挿入される細胞の組み合わせに依存するであろう。
【0093】
適当な抑制可能な終止コドンおよび抑制細胞の使用により、1またはそれ以上の切断物質認識部位を、本発明の発現カセットから発現されるタンデム・ポリペプチドに導入してもよい。例えば、融合ポリペプチドにチロシンが挿入されるように、タンデム・ポリペプチドをコードしアンバーコドンを有する発現カセットをsupFまたはsupC細菌において使用することにより、タンデム・ポリペプチドを、キモトリプシン切断部位を含むよう設計することができる。別の例において、supD細胞においてアンバーを含む発現カセットの使用によりナイセリア2型IgAプロテアーゼ認識部位を作り出すことができる。さらに別の例では、supFまたはsupC細胞においてアンバーまたはオーカーコドンを含む発現カセットを適当に使用することにより、Plum poxポティウイルスのNiaプロテアーゼ、ポリオウイルス2AproプロテアーゼまたはNiaプロテアーゼ(タバコetchウイルス)の認識部位を作り出すことができる。従って、本発明の発現カセットは、設計した1を越える切断物質認識部位を含み得るタンデム・ポリペプチドを発現させるための1を越える抑制可能なコドンを含むこともある。
【0094】
さらに、本発明の発現カセットを用いて、抑制可能な終止コドンに相当する、ポリペプチド鎖に沿った任意の位置に予め選択されたアミノ酸が挿入されたタンデム・ポリペプチドを発現させてもよい。簡潔には、予め決定されたアミノ酸でサプレッサーtRNAを特異的にアシル化する細胞にアミノアシル-tRNAシンセターゼを導入することができる。アシル化-tRNAにより抑制されるであろう抑制可能な終止コドンを含む発現カセットは、その細胞において発現され得る。これにより、タンデム・ポリペプチドの抑制可能な終止コドンに相当する位置に予め決定されたアミノ酸が挿入されているタンデム・ポリペプチドが産生するであろう。このような系により、1つまたはそれ以上の切断物質認識部位を有するタンデム・ポリペプチドの設計および生産が可能となる。同様に、これは、組織特異的プロテアーゼにより切断され得るタンデム・ポリペプチドの生産を可能にする。ポリペプチド鎖への特異的アミノ酸の挿入を容易にする方法は、当分野で知られており、報告されている。Kowal et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 98:2268 (2001)。
【0095】
本発明の発現カセットを用いて、アミノ酸類似体が任意のアミノ酸位置に挿入されたタンデム・ポリペプチドを生産してもよい。簡潔には、抑制可能な終止コドンを抑制し得るtRNAを、当分野で既知の方法に従い、インビトロで所望のアミノ酸類似体でアミノアシル化する。次いで、アミノアシル化サプレッサーtRNAを、本発明の発現カセットを含む細胞に取り込ませる。次いで、取り込まれたtRNAは、抑制可能な終止コドンの位置に相当する位置で発現カセットから発現されたタンデム・ポリペプチドの位置でのアミノ酸類似体の組み入れを容易にする。哺乳動物細胞、例えばCOS1細胞に関して、このような方法を用いてもよい。Kohrer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 98:14310 (2001)。
【0096】
融合タグ
本発明の発現カセットは、所望により、融合タグを含むタンデム・ポリペプチドを発現させることができる。融合タグは、タンデム・ポリペプチドに有用な性質を与えるアミノ酸配列である。一例において、融合タグは、リガンドを含む分離培地に融合タグを含むタンデム・ポリペプチドを加えることにより、タンデム・ポリペプチドの精製に用いられ得るリガンド結合ドメインであってもよい。このような組み合わせの例として、グルタチオン-S-トランスフェラーゼドメインを含むタンデム・ポリペプチドを、グルタチオン-連結分離培地を含むクロマトグラフィーカラムに適用することが挙げられる。別の例において、タンデム・ポリペプチド精製用に、ポリヒスチジン融合タグを含むタンデム・ポリペプチドをニッケルカラムに適用してもよい。さらに別の例において、融合タグはリガンドであり得る。このようなタンデム・ポリペプチドは、グルタチオンを融合タグとして含み、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ-連結分離培地を含むクロマトグラフィーカラムに適用することができる。さらに別の例において、融合タグは、抗体エピトープであってもよい。このような組み合わせの例として、マルトース結合タンパク質を融合タグとして含むタンデム・ポリペプチドが挙げられる。このようなタンデム・ポリペプチドを、抗マルトース結合タンパク質を含む分離培地に適用することができる。このような系は、当分野で知られており、商業的に入手可能である。(New England Biolabs, Beverly, MA;Stratagene, La Jolla, CA)。多数の融合タグを、本発明の発現カセットに組み込んでもよいことを当業者なら理解するであろう。
【0097】
終止配列
細菌において使用する終止配列
通常、細菌により認識される転写終止配列は、翻訳終止コドンの3'側に位置し、プロモーターと共にコード配列の側面に位置する調節領域である。これらの配列は、DNAによりコードされるポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写を指令する。転写終止配列は、転写終止を助けるステムループ構造を形成し得る約50ヌクレオチドのDNA配列を含むことが多い。例として、強力なプロモーターを持つ遺伝子、例えばE.coliにおけるtrp遺伝子ならびに他の生合成遺伝子由来の転写終止配列が含まれる。
【0098】
哺乳動物細胞において使用する終止配列
通常、哺乳動物細胞により認識される転写終止およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの3'側に位置し、プロモーター要素と共にコード配列の側面に位置する調節領域である。成熟mRNAの3'末端は、部位特異的な転写後切断およびポリアデニル化により形成される(Birnstiel et al., Cell, 41:349 (1985);Transcription and Splicing (eds. B. D. Hames and D. M. Glover), 1988中, Proudfoot and Whitelaw, "Termination and 3' end processing of eukaryotic RNA";Proudfoot, Trends Biochem. Sci., 14:105 (1989))。これらの配列は、DNAによりコードされるポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写を指令する。転写終止/ポリアデニル化シグナルには、SV40から得られるシグナルが含まれる(Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 1989中, Sambrook et al., "Expression of cloned genes in cultured mammalian cells")。
【0099】
酵母および昆虫細胞において使用する終止配列
酵母により認識される転写終止配列は、翻訳終止コドンの3'側に通常位置する調節領域である。酵母および昆虫発現系において終止配列として用いてもよい転写終止配列の例は、周知である。Lopez-Ferber et al., Methods Mol. Biol., 39:25 (1995);King and Possee, The baculovirus expression system. A laboratory guide. Chapman and Hall, London, England (1992);Gregor and Proudfoot, EMBO J., 17:4771 (1998);O'Reilly et al., Baculovirus expression vectors:a laboratory manual. W.H. Freeman & Company, New York, NY (1992);Richardson, Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol., 28:1 (1993);Zhao et al., Microbiol. Mol. Biol. Rev., 63:405 (1999)。
【0100】
II 核酸構築物および発現カセット
周知の組換え法により核酸構築物および発現カセットを作り出すことができる。(Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765;Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, NY (1989))。通常、組換え法には、所望のDNA断片の調製、およびプラスミドなどの別のDNAベクターにおける予め選択された位置へのそのDNA断片のライゲーションが含まれる。
【0101】
通常の例において、まず所望のDNA断片の両側で切断する1つまたはそれ以上の制限酵素を用いて、所望のDNA断片を含むDNAを消化することにより、所望のDNA断片を得る。制限酵素は、「平滑」末端または「突出」末端を生じさせるであろう。「平滑」末端とは、DNA断片の末端が一本鎖DNAの領域を含まないことを意味する。「突出」末端を有するDNA断片とは、DNA断片の末端が一本鎖DNAの領域を有することを意味する。突出末端は、5'または3'突出を有するであろう。多くの制限酵素は、商業的に入手可能であり、それらの使用条件も周知である(USB, Cleveland, OH;New England Biolabs, Beverly, MA)。消化されたDNA断片を、フェノール/クロロホルム抽出などの既知の方法により抽出して、制限酵素を含まないDNA断片を得てもよい。熱または他の適当な方法により制限酵素を不活性化してもよい。また、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動などの電気泳動を使用して所望のDNA断片を別の核酸配列および制限酵素から単離してもよい。通常、アガロースゲル電気泳動を用いて、大きな核酸断片を単離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて小さな核酸断片を単離する。このような方法を一連の手順で用いてDNA断片を単離する。次いで、電気溶離(electoelution)、カラムクロマトグラフィーまたはガラスビーズへの結合などの多くの既知の方法により、泳動されたDNA断片を、電気泳動後のゲルから抽出することができる。DNA断片抽出および単離のための物質および方法を含む多くのキットが商業的に入手可能である(Qiagen, Venlo, Netherlands;Qbiogene, Carlsbad, CA)。
【0102】
次いで、断片が挿入されることになるDNAセグメントを、1つまたはそれ以上の制限酵素で消化する。所望のDNA断片を産生させるのに用いられた、同じ制限酵素でDNAセグメントを消化するのが好ましい。これにより、相補的末端の方向性に基づいた、DNAセグメントへのDNA断片の指向性挿入が可能となるであろう。例えば、その5'末端にEcoRI部位を持ち3'末端にBamHI部位を持つDNA断片が産生するなら、各々のDNA末端の相補性に基づき、該断片はEcoRIおよびBamHIで消化されたDNAセグメントに指向性挿入されるであろう。または、指向性クローニングを可能にする都合のよい制限部位が存在しないなら、平滑末端クローニングを使用してもよい。例えば、制限酵素BsaAIは、5'または3'の突出部を持たないDNA末端を生じさせる。平滑末端クローニングにより、平滑末端を生じさせる酵素で同様に消化されたDNAセグメントにDNA断片を挿入してもよい。さらに、DNA断片およびセグメントを、突出部を生じさせる制限酵素で消化し、次いで適当な酵素で処理して、平滑末端を生じさせてもよい。このような酵素には、ポリメラーゼおよびエキソヌクレアーゼが含まれる。当業者なら、選択的に結合する(combined)であろうDNA断片およびセグメントを選択的に得るために、このような方法を、単独または組み合わせにおいて如何に使用するかを知っている。
【0103】
ライゲーション反応を行うことにより、DNA断片およびDNAセグメントを結合させることができる。ライゲーションは、DNAの2断片間にリン酸ジエステル結合を形成させることによりDNAの2断片を連結する。通常、2つまたはそれ以上のDNA断片のライゲーションは、DNA断片を適当な条件下でリガーゼとインキュベートしたときにリガーゼ酵素の作用により生じる。リガーゼおよびその使用の方法および条件は、当分野で周知であり、商業的に入手可能である。
【0104】
次いで、ライゲーション反応またはその一部を用いて、細胞を形質転換し、挿入物を有するプラスミドなどの、形成した組換えDNAを増幅させる。細胞にDNAを導入する方法は、周知であり、本明細書中で開示されている。
【0105】
組換え核酸を得るための多くの技術を用いて、本発明の発現カセットまたは核酸構築物を得ることができることを当業者は理解している。これらの技術を用いて、存在するDNA構築物から本発明の発現カセットの個々の要素を単離して、その要素を別のDNA断片に挿入して発現カセットを構築してもよい。このような技術を用いて、本発明の発現カセットを単離して、それを所望のベクターに挿入し、本発明の核酸構築物を作り出すこともできる。さらに、入手可能な、または天然から得られる遺伝子から読み取り枠を得てもよい。天然から遺伝子を単離してクローニングする方法は知られている。例えば、所望のポリペプチドを発現する細胞からcDNAライブラリーを作り出すことにより、所望の読み取り枠を得てもよい。次いで、読み取り枠を本発明の発現カセットに挿入して、コードされている予め選択されたポリペプチドを生産してもよい。
【0106】
ベクター
用いられるであろうベクターには、原核生物および真核生物において複製可能なベクターが含まれるが、これらに限定はされない。例えば、細菌、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞で複製されるベクターを用いてもよい。ベクターの例として、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージ、ウイルス、コスミドおよびF因子が挙げられる。本発明は、インビトロまたはインビボで本発明の発現カセットを挿入し複製してもよいあらゆるベクターを含む。特定の細胞タイプのために特定のベクターを用いてもよい。さらに、1を越える細胞タイプにおけるクローニングおよび複製のためにシャトルベクターを用いてもよい。このようなシャトルベクターは、当分野で知られている。核酸構築物は宿主細胞内の染色体外で運ばれる場合もあるし、または宿主細胞の染色体に組み込まれる場合もある。ベクターの多くの例は、当分野で知られており、商業的に入手可能である。(Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765;New England Biolab, Beverly, MA;Stratagene, La Jolla, CA;Promega, Madision, WI;ATCC, Rockville, MD;CLONTECH, Palo Alto, CA;Invitrogen, Carlabad, CA;Origene, Rockville, MD;Sigma, St. Louis, MO;Pharmacia, Peapack, NJ;USB, Cleveland, OH)。これらのベクターも、当業者らが既知の組換え技術の使用により本発明の核酸構築物の範囲内に含めるであろう多くのプロモーターおよび他の調節要素を提供する。
【0107】
原核生物において使用するためのベクター
細菌などの原核生物宿主において使用するための核酸構築物には、発現のためまたはクローニングおよび複製のために宿主において該構築物が維持されるのを可能にする複製系を含めるのが好ましいであろう。さらに、核酸構築物は、コピー数が多いまたは少ない状態で細胞中に存在するであろう。一般的には、約5〜約200、そして通常約10〜約150コピーの、コピー数が多い核酸構築物が宿主細胞内に存在するであろう。コピー数が多いプラスミドを含む宿主は、少なくとも約10のプラスミドを含むのが好ましく、少なくとも約20のプラスミドを含むのがより好ましい。一般的には、約1〜10、そして通常約1〜4コピーの低コピー数の核酸構築物が、宿主細胞中に存在するであろう。当分野で既知の方法に従い、異なる複製起点を選択することにより、核酸構築物のコピー数を制御してもよい。Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765。
【0108】
組み込みベクターの使用により、発現カセットを含む核酸構築物を細菌宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。通常、組み込みベクターは、ベクターの組み込みを可能にする細菌染色体に相同な少なくとも1つの配列を含んでいる。組み込みは、ベクターと細菌染色体における相同なDNA間の組換えから生じると考えられている。例えば、様々なBacillus株由来のDNAで構築された組み込みベクターは、Bacillus染色体に組み込まれる(欧州特許庁公開番号127 328)。組み込みベクターは、バクテリオファージまたはトランスポゾン配列を含んでいてもよい。
【0109】
染色体外に存在する核酸構築物および組み込みを行う核酸構築物は、形質転換されている細菌株の選択を可能にする、選択可能なマーカーを含んでいてもよい。選択可能なマーカーは、細菌宿主において発現可能であり、細菌をアンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)およびテトラサイクリンなどの薬物に対して耐性にする遺伝子を含んでいてもよい(Davies et al., Ann. Rev. Microbiol., 32:469 (1978))。選択可能なマーカーは、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシン生合成経路における遺伝子などの生合成遺伝子を含んでいてもよい。
【0110】
染色体外ベクターまたは組み込みベクターのどちらかである多くのベクターは、多くの細菌への形質転換のために開発されてきた。例えば、ベクターは、次の細菌用に開発されている:B. subtilis (Palva et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:5582 (1982));欧州特許庁公開番号036 259および063 953;PCT公開番号WO 84/04541), E.coli (Shimatake et al., Nature, 292:128 (1981);Amann et al., Gene, 40:183 (1985);Studier et al., J. Mol. Biol., 189:113 (1986);欧州特許庁公開番号036 776, 136 829および136 907), Streptococcus cremoris (Powell et al., Appl. Environ. Microbiol., 54:655 (1988));Streptococcus lividans (Powell et al., Appl. Environ. Microbiol., 54:655 (1988))およびStreptomyces lividans (米国特許番号4,745,056)。また多くのベクターは、商業的に入手可能である(New England Biolabs, Beverly, MA;Stratagene, La Jolla, CA)。
【0111】
酵母において使用するためのベクター
多くのベクターを用いて、本発明の発現カセットを含み、酵母におけるタンデム・ポリペプチドの発現をもたらす核酸構築物を構築してもよい。このようなベクターには、プラスミドおよび酵母人工染色体が含まれるが、これらに限定はされない。該ベクターは、例えば発現のために酵母中で、クローニングおよび増幅のために原核細胞宿主中でベクターが維持されるのを可能にする2つの複製系を有するのが好ましい。このような酵母-細菌シャトルベクターの例には、YEp24 (Botstein, et al., Gene, 8:17 (1979)), pCl/1 (Brake et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:4642 (1984))およびYRp17 (Stinchcomb et al., J. Mol. Biol., 158:157 (1982))が含まれる。ベクターは、コピー数が多いまたは少ない状態で宿主細胞内で維持されるであろう。例えば、コピー数の多いプラスミドは、一般的に約5〜約200、通常約10〜約150の範囲のコピー数を有するであろう。コピー数の多いプラスミドを含む宿主は、少なくとも約10を有するのが好ましく、少なくとも約20を有するのがより好ましい。宿主に対するベクターおよびタンデム・ポリペプチドの効果に依存して、コピー数が多いベクターまたは少ないベクターのどちらを選択してもよい(Brake et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:4642 (1984))。
【0112】
組み込みベクターを使用して、核酸構築物を酵母ゲノムに組み込んでもよい。組み込みベクターは、通常、ベクターの組み込みを可能にする酵母染色体に相同な少なくとも1つの配列を含んでおり、本発明の発現カセットの側面に位置する2つの相同配列を含むのが好ましい。組み込みは、ベクターと酵母染色体における相同なDNA間の組換えから生じるようである(Orr-Weaver et al., Methods in Enzymol., 101:228 (1983))。組み込みベクターは、ベクターに含めるための適当な相同配列を選択することにより、酵母における特定の遺伝子座に指向性であってもよい。1つまたはそれ以上の核酸構築物を組み込むこともあり、これは産生する組換えタンパク質のレベルに影響するであろう。(Rine et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:6750 (1983))。ベクターに包含される染色体の配列は、ベクター中で1個のセグメントとして存在する場合には、ベクター全体の組み込みを生じ、または染色体における隣接セグメントに相同でベクターに含まれる発現カセットの側面に位置する2個のセグメントとして存在する場合には、発現カセットのみの安定な組み込みを生じ得ることもある。
【0113】
染色体外核酸構築物および組み込み核酸構築物は、形質転換された酵母株の選択を可能にする選択可能なマーカーを含んでいてもよい。選択可能なマーカーには、酵母細胞において各々ツニカマイシンおよびG418への耐性を付与するADE2、HIS4、LEU2、TRP1およびALG7ならびにG418耐性遺伝子などの酵母宿主において発現可能な生合成遺伝子が含まれるが、これらに限定はされない。さらに、選択可能なマーカーは、金属などの毒性化合物の存在下で生育する能力を酵母に与えることもできる。例えば、CUP1の存在により、酵母は銅イオンの存在下で生育することができる。(Butt et al., Microbiol. Rev., 51:351 (1987))。
【0114】
多くの酵母への形質転換のために、多くのベクターが開発されている。例えば、次の酵母のためのベクターが開発されている:Candida albicans (Kurtz et al., Mol. Cell. Biol., 6:142 (1986)), Candida maltose (Kunze et al., J. Basic Microbiol., 25:141 (1985)), Hansenula polymorpha (Gleeson et al., J. Gen. Microbiol., 132:3459 (1986);Roggenkamp et al., Mol. Gen. Genet., 202:302 (1986), kluyveromyces fragilis (Das et al., J. Bacteriol., 158:1165 (1984)), Kluyveromyces lactis (De Louvencourt et al., J. Bacteriol., 154:737 (1983);van den Berg et al., Bio/Technology, 8:135 (1990)), Pichia guillerimondii (Kunze et al., J. Basic Microbiol., 25:141 (1985)), Pichia pastoris (Cregg et al., Mol. Cell. Biol., 5:3376, 1985;米国特許番号4,837,148および4,929,555), Saccharomyces cerevisiae (Hinnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:1929 (1978);Ito et al., J. Bacteriol., 153:163 (1983)), Schizosaccharomyces pombe (Beach and Nurse, Nature, 300:706 (1981))およびYarrowia lipolytica (Davidow et al., Curr. Genet., 10:39 (1985);Gaillardin et al., Curr. Genet., 10:49 (1985))。
【0115】
昆虫細胞において使用するためのベクター
数種の昆虫細胞への感染のためにバキュロウイルスベクターが開発されており、本発明の発現カセットを含む核酸構築物を得るために用いることができる。例えば、組換えバキュロウイルスは、Aedes aegypti, Autographa californica、Bombyx mori、Drosophila melanogaster、Spodoptera frugiperdaおよびTrichoplusia ni(PCT公開番号 WO 89/046699;Carbonell et al., J. Virol., 56:153 (1985);Wright, Nature, 321:718 (1986);Smith et al., Mol. Cell. Biol., 3:2156 (1983)および一般的にはFraser et al., In Vitro Cell. Dev. Biol., 25:225 (1989))を参照されたい)のために開発されている。このようなバキュロウイルスベクターを用いて、昆虫に発現カセットを導入し、昆虫細胞内でのタンデム・ポリペプチドの発現をもたらしてもよい。
【0116】
バキュロウイルスベクターに本発明の発現カセットが挿入された核酸構築物を形成する方法は、当分野でよく知られている。簡潔には、通常の組換え法により、本発明の発現カセットを、トランスファーベクター、通常はバキュロウイルスゲノムの断片を含む細菌プラスミドに挿入する。プラスミドは、ポリヘドリンポリアデニル化シグナル(Miller et al., Ann. Rev. Microbiol., 42:177 (1988))および原核生物選択マーカー、例えばアンピシリン耐性およびEscherichia coliにおける選択および増殖のための複製起点を含んでいてもよい。外来遺伝子をAcNPVに導入するための通常のトランスファーベクターは、pAc373である。当分野で知られている他の多くのベクターが設計されている。このようなベクターはpVL985(Luckow and Summers, Virology, 17:31 (1989))である。
【0117】
野生型バキュロウイルスゲノムおよび発現カセット挿入物を有するトランスファーベクターを、ベクターと野生型ウイルスゲノムが組み換えられる昆虫宿主細胞にトランスフェクションする。バキュロウイルスにおける所望の部位に発現カセットを導入する方法は、当分野で知られている。(Summers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No. 1555, 1987. Smith et al., Mol. Cell. Biol., 3:2156 (1983);およびLuckow and Summers, Virology, 17:31 (1989))。例えば、相同な二重交差型組換えによるポリヘドリン遺伝子などの遺伝子への挿入であってもよく;所望のバキュロウイルス遺伝子中に設計された制限酵素部位への挿入であってもよい(Miller et al., Bioessays, 4:91 (1989))。発現カセットは、核酸構築物においてポリヘドリン遺伝子の代わりにクローニングされたときには、ポリヘドリン-特異的配列が5'および3'の両側面に位置するであろう。発現カセットをポリヘドリン遺伝子に挿入する利点は、野生型ポリヘドリン遺伝子の発現から生じる封入体が除去されるであろうことにある。これは、ポリヘドリン遺伝子の機能性コピーを有する昆虫細胞において、封入体を形成するであろう野生型タンパク質による、昆虫細胞中で封入体の発現および形成により産生するタンデム・ポリペプチドの汚染を低下させるであろう。
【0118】
パッケージ化された組換えウイルスを発現させ、組換えプラークを同定し精製する。バキュロウイルスおよび昆虫細胞発現系のための材料および方法は、キットの形で商業的に入手可能である(Invitrogen, San Diego, Calif., USA ("MaxBac"キット))。これらの技術は、通常、当業者に知られており、Summers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555, 1987に十分に記載されている。
【0119】
昆虫細胞に本発明の発現カセットを導入してタンデム・ポリペプチドを生産するために用いられるであろうプラスミドに基づく発現系も、開発されている(MaCarroll and King, Curr. Opin. Biotechnol., 8:590 (1997))。これらのプラスミドは、タンデム・ポリペプチド生産用組換えウイルスの生産に代わる方法を提供する。
【0120】
哺乳動物細胞において使用するためのベクター
当分野で知られており、商業的に入手可能である(CLONTECH, Palo Alto, CA;Promega, Madision, WI;Invitrogen, Carlsbad, CA)多くの哺乳動物ベクターに本発明の発現カセットを挿入してもよい。このようなベクターは、エンハンサーおよび機能的スプライスドナーおよびアクセプター部位を有するイントロンなどの追加の要素を含む場合がある。核酸構築物を染色体外で維持するか、または宿主細胞の染色体DNA中に組み込んでもよい。哺乳動物ベクターには、複製のためにトランス作用因子を必要とする、動物ウイルス由来のベクターが含まれる。例えば、SV40(Gluzman, Cell, 23:175 (1981))などのパポバウイルスまたはポリオーマウイルスの複製系を含むベクターは、適当なウイルスT抗原の存在下で複製し、非常に高いコピー数が得られる。哺乳動物ベクターの別の例には、ウシパピローマウイルスおよびEpstein-Barrウイルス由来のベクターが含まれる。さらに、ベクターは、例えば、発現のために哺乳動物細胞において、およびクローニングおよび増幅のために原核生物宿主において維持されるのを可能にする2つの複製系を有する場合がある。このような哺乳動物-細菌シャトルベクターの例には、pMT2(Kaufman et al., Mol. Cell. Biol., 9:946 (1989))およびpHEBO(Shimizu et al., Mol. Cell. Biol., 6:1074 (1986))が含まれる。
【0121】
III 発現カセットまたは核酸構築物を含む細胞
本発明は、本発明の発現カセットまたは本発明の核酸構築物を含む細胞を提供する。このような細胞を用いて、予め選択されたポリペプチドを発現させてもよい。また、このような細胞を用いて核酸構築物を増幅させてもよい。核酸構築物の増幅および予め選択されたポリペプチドの発現に、多くの細胞が適している。これらの細胞は原核生物細胞または真核生物細胞であってもよい。
【0122】
好ましい態様において、細菌を宿主細胞として用いる。細菌の例には、グラム陰性菌およびグラム陽性菌が含まれるが、これらに限定はされない。Escherichia coliは、予め選択されたポリペプチドの発現および核酸構築物の増幅に好ましい生物である。多くの公に入手可能なE.coli株には、K-株、例えばMM294(ATCC 31, 466);X1776(ATCC 31, 537);KS 772(ATCC 53, 635);JM109;MC1061;HMS174;およびB-株BL21が含まれる。組換えマイナス(recombination minus)株を用いて核酸構築物を増幅させ、組換え現象を回避してもよい。このような組換え現象は、読み取り枠のコンカテマーを除去し、また発現カセットの不活性化を起こすであろう。さらに、選択プロテアーゼを発現しない細菌株も、予め選択されたポリペプチドを発現させて、発現されたポリペプチドのタンパク質分解プロセシングを減少させるのに有用であろう。このような株の例として、lonプロテアーゼを欠くY1090hsdRが挙げられる。
【0123】
真核細胞を用いて予め選択されたポリペプチドを生産し、核酸構築物を増幅してもよい。追加的な細胞性プロセシングが望ましいときに、真核細胞は予め選択されたポリペプチドの生産に有用である。例えば、ポリペプチドのグリコシル化が望ましいときに、予め選択されたポリペプチドを真核細胞において発現させてもよい。用いられるであろう真核細胞株の例には、AS52、H187、マウスL細胞、NIH-3T3、HeLa、Jurkat、CHO-K1、COS-7、BHK-21、A-431、HEK293、L6、CV-1、HepG2、HC11、MDCK、カイコ細胞、蚊細胞および酵母が含まれるが、これらに限定はされない。
【0124】
外来性DNAを細菌に導入する方法は、当分野でよく知られており、通常、CaCl2で処理するかまたは他の物質、例えば二価陽イオンおよびDMSOで処理した細菌の形質転換が含まれる。エレクトロポレーション、バクテリオファージの使用、またはバリスティック(ballistic)形質転換によりDNAを細菌細胞に導入することもできる。形質転換の手順は、通常、形質転換される細菌種により異なる(Masson et al., FEMS Microbiol. Lett., 60:273 (1989);Palva et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:5582 (1982);欧州特許庁公開番号036 259および063 953;PCT公開番号WO 84/04541 [Bacillus]、Miller et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 8:856 (1988);Wang et al., J. Bacteriol., 172:949 (1990) [Campylobacter]、Cohen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69:2110 (1973);Dower et al., Nuc. Acids Res., 16:6127 (1988);Genetic Engineering:Proceedings of the International Symposium on Genetic Engineering (eds. H. W. Boyer and S. Nicosia), 1978中, Kushner, "An improved method for transformation of Escherichia coli with ColE1-derived plasmids";Mandel et al., J. Mol. Biol., 53:159 (1970);Taketo, Biochim. Biophys. Acta, 949:318 (1988) [Escherichia]、Chassy et al., FEMS Microbiol. Lett., 44:173 (1987) [Lactobacillus]、Fiedler et al., Anal. Biochem, 170:38 (1988) [Pseudomonas]、Augustin et al., FEMS Microbiol. Lett., 66:203 (1990) [Staphylococcus]、Barany et al., J. Bacteriol., 144:698 (1980);Streptococcal Genetics (ed. J. Ferretti and R. Curtiss III), 1987中, Harlander, "Transformation of Streptococcus lactis by electroporation";Perry et al., Infec. Immun., 32:1295 (1981);Powell et al., Appl. Environ. Microbiol., 54:655 (1988);Somkuti et al., Proc. 4th Eur. Cong. Biotechnology, 1:412 (1987) [Streptococcus])。
【0125】
外来性DNAを酵母宿主に導入する方法は、当分野でよく知られており、通常は、スフェロプラストの形質転換、またはアルカリ陽イオンで処理された無傷の酵母細胞の形質転換のどちらかを含む。形質転換の手順は、通常、形質転換される酵母種により異なる(例えば、Kurtz et al., Mol. Cell. Biol., 6:142 (1986);Kunze et al., J. Basic Microbiol., 25:141 (1985) [Candida]、Gleeson et al., J. Gen. Microbiol., 132:3459 (1986);Roggenkamp et al., Mol. Gen. Genet., 202:302 (1986) [Hansenula]、Das et al., J. Bacteriol., 158:1165 (1984);De Louvencourt et al., J. Bacteriol., 754:737 (1983);Van den Berg et al., Bio/Technology, 8:135 (1990) [Kluyveromyces]、Cregg et al., Mol. Cell. Biol., 5:3376 (1985);Kunze et al., J. Basic Microbiol., 25:141 (1985);米国特許番号4,837,148および4,929,555 [Pichia]、Hinnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:1929 (1978);Ito et al., J. Bacteriol., 153:163 (1983) [Saccharomyces]、Beach and Nurse, Nature, 300:706 (1981) [Schizosaccharomyces]およびDavidow et al., Curr. Genet., 10:39 (1985);Gaillardin et al., Curr. Genet., 10:49 (1985) [Yarrowia]を参照)。
【0126】
本明細書中に記載するバキュロウイルスなどの組換えウイルスの使用により、通常、外来性DNAを昆虫細胞に導入する。
【0127】
異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入する方法は、当分野で知られており、脂質-介在性トランスフェクション、デキストラン-介在性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン-介在性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチドの封入、ビオリスティックス(biollistics)、核へのDNAの直接微量注入を含む。方法の選択は、形質転換される細胞に依存しており、ある種の形質転換法は、別の形質転換法より、1つの細胞タイプに関して有効である(Felgner et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 84:7413 (1987);Felgner et al., J. Biol. Chem., 269:2550 (1994);Graham and van der Eb, Virology, 52:456 (1973);Vaheri and Pagano, Virology, 27:434 (1965);Neuman et al., EMBO J., 1:841 (1982);Zimmerman, Biochem. Biophys. Acta., 694:227 (1982);Sanford et al., Methods Enzymol., 217:483 (1993);Kawai and Nishizawa , Mol. Cell. Biol., 4:1172 (1984);Chaney et al., Somat. Cell Mol. Genet., 12:237 (1986);Aubin et al., Methods Mol. Biol., 62:319 (1997))。さらに、真核生物のトランスフェクションのための多くの市販キットおよび試薬が入手可能である。
【0128】
細胞への核酸の形質転換またはトランスフェクション後に、選択可能なマーカーの使用により細胞を選択してもよい。選択可能なマーカーは、受容細胞へ導入される核酸上に通常、コードされている。しかし、受容細胞へ核酸を導入するときに、選択可能なマーカーの同時トランスフェクションを用いることもできる。受容宿主細胞において発現され得る選択可能なマーカーには、受容宿主細胞にアクチノマイシンC1、アクチノマイシンD、アンフォテリシン、アンピシリン、ブレオマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ジェネティシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、一硫酸カナマイシン、メトトレキサート、マイトマイシンC、硫酸ネオマイシンB、ノボビオシンナトリウム塩、ペニシリンGナトリウム塩、ピューロマイシンニ塩酸塩、リファンピシン、硫酸ストレプトマイシン、塩酸テトラサイクリンおよびエリスロマイシンなどの薬物への耐性を与える遺伝子が含まれるが、これらに限定はされない(Davies et al., Ann. Rev. Microbiol., 32:469, 1978)。選択可能なマーカーは、例えばヒスチジン、トリプトファンおよびロイシン生合成経路における生合成遺伝子を含んでいてもよい。宿主細胞をトランスフェクションまたは形質転換した上で、適当な選択可能マーカーと接触するように細胞を置く。
【0129】
例えば、アンピシリン耐性をコードする核酸構築物で細菌が形質転換されるなら、形質転換された細菌を、アンピシリンを含む寒天プレート上に置いてもよい。その後、核酸構築物が導入されなかった細胞は、増殖してコロニーを生じることが妨げられ、一方でコロニーは形質転換に成功した細菌により形成されるであろう。類似の系を用いて、原核細胞および真核細胞の両方を含む他のタイプの細胞を選択してもよい。
【0130】
IV. タンデム・ポリペプチド
本発明は、有用な単離増強特性を有する封入体をタンデム・ポリペプチドが形成するために、封入体融合パートナーに作動可能に連結された予め選択されたポリペプチドを含む多くのタンデム・ポリペプチドを提供する。1つの態様において、タンデム・ポリペプチドは、予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結されている封入体融合パートナーを含み得る。封入体融合パートナーを、予め選択されたポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に連結してもよい。別の態様において、タンデム・ポリペプチドは、予め選択されたポリペプチドのアミノ末端およびカルボキシル末端の両方に作動可能に連結された封入体融合パートナーを有することがある。タンデム・ポリペプチドは、封入体融合パートナーの多数のコピーを含んでいてもよい。他の態様において、タンデム・ポリペプチドは、封入体融合パートナーおよび予め選択されたポリペプチドに加えて、別のアミノ酸配列を有することがある。例えば、タンデム・ポリペプチドは、1つまたはそれ以上の切断可能なペプチドリンカー、融合タグおよび予め選択されたポリペプチドを含んでいてもよい。切断可能なペプチドリンカーを、封入体融合パートナーと予め選択されたポリペプチドの間、予め選択されたポリペプチドと融合タグの間、予め選択されたポリペプチドの多数のコピーの間に、またはそれらのあらゆる組み合わせに作動可能に連結することができる。また、異なる切断物質により切断される切断可能なペプチドリンカーを、1個のタンデム・ポリペプチド内に作動可能に連結することができる。別の態様において、タンデム・ポリペプチドは1つまたはそれ以上の融合タグを含む場合がある。
【0131】
タンデム・ポリペプチドは、封入体融合パートナーに作動可能に連結した多くの予め選択されたポリペプチドを有することができる。予め選択されたポリペプチドが生物活性ポリペプチドであるのが好ましい。そのようなポリペプチドの例として、GLP-1、GLP-2、PTH、GRFおよびそれらの活性型が挙げられる。
【0132】
V. タンデム・ポリペプチドの生産方法
タンデム・ポリペプチドを生産する方法は、本発明により提供される。該方法は、タンデム・ポリペプチドを生産するための本発明の発現カセットの使用を含む。インビトロ転写および翻訳系、例えばウサギ網状赤血球溶解物系の使用により、タンデム・ポリペプチドをインビトロで生産することができる。タンデム・ポリペプチドをコードしている発現カセットが導入された細胞内でタンデム・ポリペプチドを発現させるのが好ましい。
【0133】
通常、発現カセットがそのゲノムに組み込まれているかまたは発現カセットを染色体外で運ぶ細胞を、高密度まで増殖させて、次いで誘導する。誘導後に、細胞をハーベストして、タンデム・ポリペプチドを単離する。発現カセットが抑制されたプロモーターを含むときに、このような系が好ましい。タンデム・ポリペプチドが細胞にとって毒性である、予め選択されたポリペプチドを含むときに、このタイプの系が有用である。このような予め選択されたポリペプチドの例には、プロテアーゼおよび細胞増殖を妨げる他のポリペプチドが含まれる。発現カセットを発現させる、熱変動、IPTGなどの誘導物質の添加、またはウイルスまたはバクテリオファージによる感染を含む(これらに限定はされない)当分野で認められている多くの方法により細胞を誘導することができる。
【0134】
また、構成的プロモーターを有する発現カセットを運ぶ細胞は、プロモーターが常に活性であるので、誘導する必要はない。このような系において、所望量のタンデム・ポリペプチドが生産されるまで細胞を増殖させ、次いで細胞を収穫する。
【0135】
多くのタイプの細胞の増殖および維持のための方法および物質は、周知であり、商業的に入手可能である。用いられるであろう培地の例には、YEPD、LB、TB、2xYT、GYT、M9、NZCYM、NZYM、NZN、SOB、SOC、Alsever溶液、CHO培地、ダルベッコ改変イーグル培地およびHBSS(Sigma, St. Louis, MO;Sambrook and Russell, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd edition (January 15, 2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN:0879695765;Summers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No. 1555, (1987))が含まれるが、これらに限定はされない。
【0136】

表I 封入体融合パートナー例のアミノ酸配列
【表1】

【0137】
表II 封入体融合パートナー例の核酸配列
【表2】

【0138】
【表3】

【0139】
表III 予め選択されたポリペプチド例のアミノ酸配列および修飾体
【表4】

【0140】
【表5】

【0141】
【表6】

【0142】
表IV 予め選択されたポリペプチド例の核酸配列
【表7】

【0143】
【表8】

【0144】
【表9】

【0145】
【表10】

【0146】
表V 切断可能なペプチドリンカー(CPL)例のアミノ酸配列
【表11】

【0147】
表VI 切断可能なペプチドリンカー(CPL)例の核酸配列
【表12】

【0148】
表VII 追加配列
【表13】

【0149】
実施例
プライマーを、DNAオリゴヌクレオチド合成専門会社に外注した(例えば、Operon Technologies, Alamedo, CA)。通常のクローニング手順は、Molecular Cloning(Sambrook et al, 2nd edition)の記載に従い行った。制限酵素をNew England Biolab(Beverly, MA)から得た。
【0150】
実施例1 pBN95(Tac)ベクターの構築
pBN95(Tac)は、pBR322プラスミド(New England Biolab, Beverly, MA)由来の骨格、複製起点およびテトラサイクリン耐性遺伝子;pET16b(Novagen, Madison, WI)由来のlacI遺伝子(リプレッサータンパク質をコードしている);pGEX2T(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)由来のtacプロモーター;およびpKK223-3(Amersham Pharmacia Biotech)由来のrrnB終止配列を含む最適化発現ベクターである。以下に記載のようにプラスミドを構築した。
【0151】
pBR322プラスミド(New England Biolabs, Beverly, MA)をPstI-SspIで切断し、アガロースゲルから大きな(約3.5kb)骨格断片を単離することにより、pBR322ベクター骨格を調製した。PstI、SapIおよびPshAIによる切断によってpET16bベクター(Novagen)からlacI遺伝子を切り出した。3つの切り離された断片のうちの大きい方(2.8kb;1.2kbおよび1.7kbと比較)をアガロースゲルから単離した。lacIを含む断片を3.5kbのpBR322骨格断片と混合し、T4DNAリガーゼ(Life Technologies, division of Invitrogen, Carslbad, CA)を用いてライゲーションした。42℃で45秒間の熱ショックにより、高効率のE.coliコンピテント細胞をライゲーション混合物で形質転換した。形質転換された細胞を、LB+15μl/mlのテトラサイクリン(LBT)+寒天プレート中で選択した。5mlのLBT培地中での振盪培養を、1個のコロニーから開始し、これらの培養物からプラスミドを調製した。制限酵素地図の作成により正しいプラスミド構築物を同定した。得られたプラスミドをpBN93と表した。
【0152】
次いで、pBN93プラスミドをXhoIおよびDraIで消化し、精製した大きい方の断片を、pKK223-3(Amersham Pharmacia Biotech)と同様にrrnB終止配列を含むpCRScript-rrnBプラスミド由来のEcoRV-XhoI断片に連結することによりpBN95プラスミドを構築した。このターミネーターは、pBN93プラスミドにおけるT7ターミネーターを置換するのに用いられた極めて有効な終止シグナルを提供する。pET16b、pBR322およびrrnB由来の3つの断片をいかに連結してpBN95 (T7)プラスミドを作るかを示す地図を、図1に表す。
【0153】
続いて、T7プロモーターを、修飾されたtacプロモーターと置換する。再設計されたtacプロモーターを、PCRにより、tacプロモーター配列を含むpGEX2Tプラスミド(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて増幅させる。次のプライマーを用いた:
プライマー1:5' TGC ATT TCT AGA ATT GTG AAT TGT TAT CCG CTC A 3' (配列番号85)
プライマー2:5' TCA AAG ATC TTA TCG ACT GCA CGG 3' (配列番号86)
【0154】
PCR増幅により、次の生成物が得られた:
【化1】

(配列番号87)
【0155】
上流のBglII制限エンドヌクレアーゼ認識配列(A/GATCT)および下流のXbaI(T/CTAGA)認識配列の下に単線を記す。-35および-10のプロモーターコンセンサス配列を太字にして下に点線を記す。下流の転写開始A残基(lacオペレーター遺伝子配列内)を太字にして下に実線を記す。lacオペレーター配列を、括弧で囲む。上記生成物のBglII-XbaI断片を、T7プロモーターの代わりにpBN95(T7)プラスミドに挿入した。制限地図およびT7タグVg-リンカー-GRF(1-44)A発現カセットを含むpBN95(Tac)プラスミドの成分を図2に示す。
【0156】
実施例2 pET23a-T7タグVg-GRF(1-44)Aプラスミド、pBN95(Tac)-T7タグVgCH-GRF(1-44)AプラスミドおよびpBN95-T7タグVgCH-GRF-(1-44)Aプラスミドの構築
異なるプロモーター(例えば、tacまたはT7)および異なる抗生物質選択性(例えば、テトラサイクリンまたはアンピシリン)を含む発現ベクターの使用により、異なるE.coli株(例えば、K株またはB株)によるポリペプチド生産を開発した。発現ベクターpET23a(Novagen)はT7プロモーターおよびアンピシリン耐性遺伝子を持つ。発現ベクターpBN95(Tac)は、tacプロモーターおよびテトラサイクリン耐性遺伝子を持つ。発現ベクターを、次の遺伝子配列:(a)T7タグの12アミノ酸(MASMTGGQQMGR)(配列番号83);(b)ベスティジアル(Vg)ペプチドの29アミノ酸(GSGQGQAQYL AASLVVFTNY SGDTA SQVD)(配列番号2)(Williams et al., Genes & Development, 5:2481, 1991);(c)アミノ酸リンカー(VNGPR AMVDD DDKCH)(配列番号146);および(d)GRF(1-44)Aの標的ペプチドを含むよう構築した。T7タグVgCH-GRF(1-44)Aのための発現カセットの配列を図3に示す。
【0157】
(1) pET23a-T7タグ-GRF(1-44)Aプラスミドの構築
pET23aプラスミド(Novagen)をEcoRI-HincIIで消化し、リンカーおよびGRF(1-44)A遺伝子配列をEcoRI-EcoRV切断遺伝子断片として挿入することにより、pET23a-T7タグ-GRF(1-44)Aプラスミドを構築した。通常の方法により重複合成オリゴヌクレオチドをアニーリングしてクローニングすることにより遺伝子配列を構築した。pET23aプラスミド(Novagen)をEcoRI-HincIIで消化し、3.7kbバンドをアガロースゲルから切り出し、精製した。EcoRI-EcoRV GRF(1-44)A遺伝子配列を7.5%PAGEゲル上で分離し、GRFを含む断片を精製した。この2つの断片を混合し、連結した。42℃で45秒間の熱ショックにより、ライゲーション混合物で、高効率E.coliコンピテント細胞を形質転換した。形質転換された細胞を、LB+50μg/mlアンピシリン(LBA)+寒天プレートにおいて選択した。1個の形質転換体由来のプラスミドを調製した。正しいpET23a-T7タグ-GRF(1-44)Aプラスミドを含む組換え構築物を、制限酵素マッピングにより同定し、確認した。この構築物は、エンテロキナーゼ消化によりGRFが遊離されるリンカー配列を含む。この構築物の配列を図4に示す。
【0158】
(2) 29アミノ酸のベスティジアル(Vg)遺伝子断片の構築
ベスティジアル(Vg)遺伝子の29アミノ酸断片の合成を容易にするために、互いにアニーリングするであろう2つのプライマーをPCRプライマーとして設計した。
【化2】

【0159】
オリゴプライマーは、自己アニーリングするので、追加のテンプレートは必要なかった。SH17VおよびSH18VにおけるBamHI-HpaI部位を、各々下線で示す。PCR反応産物を精製し、Invitrogen's Zero Blunt PCR Cloning Kitを用いてpCRBluntベクター(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)にクローニングして、pCRBlunt-Vgプラスミドを得た。pCRBunt-Vg中のVg断片をBamHI-HpaIで消化し、7.5%ポリアクリルアミドゲル上で精製した。この断片を溶離させ、BamHI-HpaIで消化したpET23a-T7タグ-GRF(1-44)Aプラスミドと連結した(部位について図4を参照)。組換えクローンpET23a-T7タグVg-GRF(1-44)Aを単離し、制限マッピングおよび配列決定により正しいプラスミド構築物を含むことを示した(図5)。挿入物は、プライマー17に示ように1個の塩基置換を含んでいた。
【0160】
(3) pET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aプラスミドの構築
テンプレートとしてプラスミドpET23a-T7タグVg-GRF(1-44)Aを用い、次の2つのプライマー:
【化3】

を用いて、CH-GRF(1-44)A遺伝子断片をPCR増幅させた。
【0161】
下線で示したプライマーSH23CHにおけるXhoI部位は、終止コドン(太字)の直後に位置している。プライマーSH-24におけるSalI部位を下線で示す。プライマーSH-24は、パラジウム(Pd)切断部位(太字)を与えるCys-Hisのコード配列も含んでいた。得られた生成物をSalI-XhoIで消化し、SalI-XhoIで消化したpET23a-T7タグVg-GRF(1-44)Aプラスミドに連結する。正しいpET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aプラスミドを含む組換え構築物を同定した(発現カセット配列については図3を参照)。
【0162】
(4) pBN95(Tac)-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aプラスミドの構築
pET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aプラスミドの発現カセットをXbaI-XhoIを用いて切り出し、0.4kb断片として単離した。この断片をpBN95(Tac)プラスミドのXbaI-XhoI部位に連結した。pBN95(Tac)-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aと表される組換え構築物を単離し、正しい挿入物を含むことを確認した(発現カセット配列については図3を参照)。
【0163】
実施例3 GRF(1-44)Aを含むポリペプチドのE.coli振盪培養物発現
ポリペプチドを発現させるために、tacプロモーターを用いる場合にはE.coli BL21を宿主細胞とし、T7プロモーターを用いる場合にはBL21(DE3)を宿主細胞とした(両細胞は、Novagen, Madison, WIから得た)。42℃で45秒間の熱ショックによりpET23a-T7タグ-GRF(1-44)A、pET23a-T7タグVg-GRF(1-44)A、pET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)AおよびpBN95(Tac)-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aのプラスミドを、CaCl2処理したコンピテント細胞に形質転換した。形質転換された細胞を、LB+50μg/mLアンピシリン(LBA)+寒天プレート上でpET23a構築物について選択するか、またはLB+15μg/mLテトラサイクリン(LBT)培地+寒天プレート上でpBN95(tac)構築物について選択した。5mlのLBAまたはLBT培地の振盪フラスコ培養を、形質転換細胞の1個のコロニーから開始した。対数後期の、または一夜の細胞培養物を10〜15%グリセロール中、80℃以下で保存した(グリセロール・ストック)。5ml〜500mlのLBAまたはLBT培地中での振盪フラスコ培養物(100ul〜10ml一夜培養物により植菌)を37℃/220rpmで、A600が0.5〜1.0になるまで増殖させ、IPTG(最終濃度1mM)の添加によりポリペプチド発現を誘導した。3時間〜一夜の時間範囲で培養物を誘導した。誘導前および誘導後の細胞からサンプルを採取した。細胞をペレット化し、次いでTE(10mM Tris、1mM EDTA、pH8)緩衝液中で超音波処理することにより溶解させた。このサンプルを遠心分離にかけ、不溶性および可溶性タンパク質を分離した。上清(可溶性タンパク質)を、2×SDS-PAGEサンプル緩衝液を用いて1:1で混合した。ペレットを、1×SDS-PAGEサンプル中に直接再懸濁した。これらのサンプルを、製造者の指示によりSDS-PAGE(BioradまたはNovex)上で分離し、Coomassie Brilliant Blueで染色した。
【0164】
pET23a-T7タグ-GRF(1-44)A/BL21(DE3)構築物からは、いかなる発現も観察されなかった。11kダルトンの予想分子量を有する不溶性前駆体ペプチドの高レベルの発現が、BL21(DE3)におけるpET23a-T7タグVg-GRF(1-44)Aプラスミドについて観察された。この結果により、Vg配列がポリペプチド封入体の高レベルの発現を促進したことが示された。しかし、Vg配列を含まない構築物については、いかなるポリペプチド発現も検出されなかった。
【0165】
pET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)A/BL21(DE3)およびpBN95(Tac)-T7タグVgCH-GRF(1-44)A/BL21構築物の両方は、高レベルの、予測サイズを有するポリペプチドを生産した。これにより、Vgを含むポリペプチドの高レベルの発現は、tacまたはT7プロモーターのどちらかを用いて達成され得ることが示された。さらに、リンカー領域の改変がポリペプチド封入体の高レベルな発現を促進するVg配列の能力に影響しないことが、pET23a-T7タグVg-GRF(1-44)AおよびpET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aの両構築物からの発現により示された。
【0166】
実施例4 E.coliにおけるVgのコドン最適化
Drosophila melanogasterにより用いられている、Vg遺伝子のための遺伝子コドンは、E.coliのために最適化されていない。例えば、グリシンをコードするGGAなどのコドン、ロイシンをコードするCTAおよびロイシンをコードするTTGは、E.coliによりまれにしか用いられていない。これらのコドンを、PCRにより次のプライマー:
【化4】

を用いて、残基17についてはGGTに、残基22についてはCTAをCTGに、残基26についてはTTGをCTGに変えた(図6において下線で示す)。
【0167】
得られたPCR産物をBamHI-XhoIで消化し、pET23aプラスミド(Novagen, Madison, WI)のBamHI-XhoI部位にクローニングし、プラスミドpET23a-T7タグVg(opt)CH-GRF(1-44)Aを得た。pET23a-T7タグVg(opt)CH-GRF(1-44)A由来のXbaI-XhoI断片を、pBN95(Tac)ベクターのXbaI-XhoI部位にクローニングしてpBN95(Tac)-T7タグVg(opt)-CHGRF(1-44)Aプラスミドを得た。このプラスミドを、E.coli BL21細胞に形質転換した。形質転換された細胞を、LBT培地中で選択し、正しい構築物を同定し、制限酵素マッピングおよびDNA配列決定により確認した。振盪フラスコ培養物中でのこの構築物によるポリペプチド発現を、実施例3に記載のように、評価した。ポリペプチドT7タグVgCH-GRF(1-44)Aの封入体の高レベルの発現を、SDS-PAGE分析により観察した。
【0168】
実施例5 E.coli発酵によるポリペプチドの生産
pBN95(Tac)-T7タグVg(opt)-CHGRF(1-44)Aプラスミドを含むE.coli BL21の発酵を、5L以上の発酵により評価した。プラスミドを含む細菌のグリセロール・ストック(100μl)を用いて、振盪フラスコ内のLBT培地(100ml)に植菌した。回転式振盪培養機において37℃で、A540が1.5±0.5に達するまで、振盪培養物を増殖させた。次いで振盪フラスコ培養の内容物を用いて、合成最小培地(例えば、M9培地、Molecular Cloning, 2nd edition, Sambrook et al.)を含む5Lの発酵タンクに植菌した。グルコースは炭素源としての役割を果たし、これを4%未満に維持した。発酵において約15μg/mlのテトラサイクリンを用いた。溶解酸素を、段階的な攪拌および追加酸素での通気により40%に制御した。水酸化アンモニウム溶液を供給して、pHを約6.9に維持し、追加的窒素源として用いた。A540が50〜75に4〜10時間達した後に、この細胞を0.1〜1mM IPTGの最終濃度で誘導した。誘導完了後に、細胞を冷却して、遠心分離によりハーベストした。-20℃未満の温度で保存するかまたは、直ちに溶解させた。細胞を、凍結しているなら解凍後、50mM Tris、2.5mM EDTA、pH7.5に再懸濁し、超音波処理またはホモジナイズにより溶解させた。溶解物を遠心分離して、発現されたポリペプチドの封入体ペレットを得た。分析またはさらに処理するためにポリペプチド沈殿物を8M尿素、または95%ギ酸に溶解した。5gを越える、所望のポリペプチドを、1L発酵培養液から得た。
【0169】
実施例6 Vg疎水性コアの修飾
疎水性コア配列(LAASLVVF)(配列番号92)を、疎水性プロットにより同定した(例えば、DNAsisプログラムにおけるKyte & Doolittle, Hopp & Woods)(図7を参照)(Kyte et al., J. Mol. Biol., 157:105 (1982))。この領域を、他のアミノ酸で置換し、溶解性、発現収率、リンカー切断に対する効果およびポリペプチドの他の特性を変化させた。置換は、PCRにより、縮重プライマーを用いて行った。VgMut1を、Vg疎水性コア領域におけるアミノ酸配列LAASLVVをDEASDVEに変化させるよう設計した。変異VgをコードするDNAを、PCRにより、テンプレートとしてpET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aプラスミドおよび次のプライマー:
VgXY1:5'-CGC GGA TCC GGC CAG GGT CAG GCT CAA TAT GAC GAA GCT TCC GAC GTT GAA TTC ACC AAC TAC TCG-3'(配列番号93)
XBAXY2:5'- TCA GTC ACG ATG AAT TCC C-3'(配列番号94)
を用いて増幅させた。
【0170】
VGXY1プライマーにおいて下線を記した塩基は、変化した残基のコドンを表している。PCR産物を、BamHI-XhoIで消化し、次いでpET23aベクターのBamHI-XhoI部位にクローニングし、pET23a-T7タグVgMut1CH-GRF(1-44)Aプラスミドを得た(VgMut1を含むポリペプチドの配列について、図8を参照)。制限酵素マッピングおよびDNA配列決定により確認後に、プラスミドをBL21(DE3)細胞に形質転換し、実施例3に記載のようにポリペプチド発現について評価した。
【0171】
SDS-PAGE分析により、T7タグVgMut1CH-GRF(1-44)Aに対応するいかなる有意な量のポリペプチドも観察されないことが示され、これにより、LAASLVVF(配列番号92)疎水性コアの親水性領域への劇的な変化が、封入体形成を増強するVg機能およびE.coliにおけるポリペプチドの全生産を完全に破壊したことが示された。
【0172】
互いに相補的な2つの縮重プライマーをアニーリングさせることにより、Vg疎水性コア領域における別の突然変異体(VgMut4と示す)を調製した。プライマー配列は次の通りである:
PL35Vg:5'-GAT CCG GCC AGG GTC AGG CTC AAT ATC TGN CGG CCT CCC TGG TTM-3'(配列番号95)
PL36VgR:5'-AAT TKA ACC AGG GAG GCA GNC AGA TAT TGA GCC TGA CCC TGG CCG-3'(配列番号96)
【0173】
これらの2つのプライマーにおける、下線を付した塩基は、変化した残基を表す(VgMut4を含むポリペプチドの配列について、図9を参照)。2つのプライマーを、等モル濃度で混合し、94℃で1分間変性させ、50℃で10分間アニーリングし、次いでpET23a-T7タグVgMut1CH-GRF(1-44)AのBamHI-EcoRI部位にクローニングして、pET23a-T7タグVgMut4CH-GRF(1-44)Aプラスミドのライブラリーを得た。得られたプラスミドを、BL21(DE3)細胞に形質転換し、実施例3と同様にポリペプチド発現について評価した。
【0174】
いくつかのクローンは、SDS-PAGE分析によりポリペプチド封入体の高レベルの発現を示した。これらのクローン由来のプラスミドを、配列決定し、Vg疎水性コア領域における突然変異を決定した。IPTGで誘導した5ml〜500mlのLBA培養物由来の細胞の溶解および遠心分離により封入体を単離した。次いで、封入体を4M尿素および50mM HClにおける溶解性について評価した。T7VgMut4CH-GRF(1-44)Aの異なるポリペプチド由来の封入体の同量を、少量の4M尿素および50mM HClに懸濁し、この溶液がポリペプチドで飽和するようにした。可溶化されたポリペプチドの濃度を、280nmでのUV吸光度の測定およびSDS-PAGE分析により測定した。ポリペプチドが4M尿素または50mM HCl中で他のポリペプチドより高い濃度に達することができたなら、より高い溶解性を示すものとして同定した。1個のアミノ酸置換を含むクローン(表VIIIを参照)は、尿素溶媒中での溶解特性が改変されており、高レベルの発現を示した。
【0175】
表VIII:修飾Vgに関するポリペプチドの溶解性
【表14】

【0176】
実施例7 T7タグVg-PTH(1-34)ポリペプチドの発現
次に示すプライマー:
PTH19981:5' ACC GCT CGA GGA TAT CTT AGA AGT TGT GAA CGT CCT GCA G-3'(配列番号100)
PTH19982:5' CAG CGT TAA CCC GGA ATT CTC TGT TGG TGG TGG TGG TGG TCC GCG TTC T-3'(配列番号101)
を用いてPTH配列を増幅させた。
【0177】
XhoIおよびHpaI部位を、PTH19981およびPTH19982プライマーにおいて各々下線で示す。増幅した断片をXhoI-HpaIで切断し、pET23a-T7タグVg-GRF(1-44)AプラスミドにおけるXhoI-HpaI部位にクローニングした。得られたpET23a-T7タグVg-PTH(1-34)プラスミドのポリペプチド配列を図10および12に示す。PTHの前のGly-Pro-Arg'配列は、PTHペプチドの放出をもたらすトロンビン切断部位である。
【0178】
Pd切断のためのCys-Hisジペプチドを、PCRにより、テンプレートとしてpET23a-T7タグVg-PTH(1-34)を用い、上記から得たPTH19981プライマーおよび以下に同定するPTH19983プライマーを用い、トロンビンリンカーとPTH(1-34)の間に挿入した。
PTH19983:5' CCG GAA TTC TCT GTT GGT GGT GGT GGT GGT CCG CGT TGC CAC TCT GTT TCT GAA ATC 3'(配列番号102)
【0179】
このプライマーのEcoRI部位を下線で示す。PCR産物をEcoRI-XhoIで切断し、EcoRI-XhoI切断されたpET23a-T7タグVg-PTH(1-34)プラスミド中にクローニングした。得られたクローンの配列をpET23a-T7タグVgCH-PTH(1-34)と命名した。
【0180】
上記の2つのプラスミドを、BL21(DE3)細胞に形質転換し、実施例3に記載のように、ポリペプチド発現について評価した。両構築物は、所望のポリペプチドの、IPTG誘導性不溶性封入体(実施例1〜3から得た異なるリンカーおよび標的ペプチドを有する)を高レベルに発現した。
【0181】
実施例8 Vgにおける欠失
Vgリーダーの一部を欠失させてリーダーの長さを最小にした。テンプレートとしてpET23a-T7タグVgCH-PTH(1-34)を用い、実施例7に記載のPTH19981プライマーおよび次のプライマー:
【化5】

(配列番号103)
を用いてPCR反応を行った。
【0182】
GRFXY629プライマーは、BamHI部位(下線)の直後にあるアミノ酸配列GQGQA(配列番号104)を欠失し、Vg疎水性配列においてセリン(TCC)にバリン(GTG、太字)置換を導入する(LAASLVVF(配列番号92)から
【化6】

(配列番号105)へ)。この置換により、Vgペプチドの疎水性が上昇した(Kyte & Doolittle plot)。さらにこの欠失は、タンデム・ポリペプチドにおける封入体融合パートナーの比率を低下させ、ゆえにタンデム・ポリペプチドにおける予め選択されたポリペプチドの比率を増大させた。PCR産物をBamHI-HpaIで切断し、HpaI-BamHI切断されたpET23a-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aにクローニングした。得られたクローン、pET23a-T7タグVg(Del1)CH-GRF(1-44)Aは、高レベルのIPTG-誘導性封入体を発現した。
【0183】
以下のように、pET23a-T7タグVg(Del1)CH-GRF(1-44)AベクターにおいてPTH(1-34)遺伝子をGRF(1-44)Aと置換した。
【0184】
pET23a-T7タグVg(Del1)CH-GRF(1-44)AをHpaI-XhoIで切断し、GRF(1-44)Aを除去し、pET23a-T7タグVg-PTH(1-34)由来のPTH(1-34)要素を、HpaI/XhoI消化により得た。これらの断片のライゲーションにより、プラスミドpET23a-T7タグVg(Del1)-PTH(1-34)(図10を参照)を得た。高レベルのT7タグVg(Del1)-PTH(1-34)ポリペプチドのIPTG-誘導性封入体が、BL21(DE3)におけるこの構築物により得られた。
【0185】
Vgペプチドの第二の欠失が行われ、VgペプチドにおけるHpaI部位のN末端側に直接位置するアミノ酸TASQVD(配列番号106)が欠失された(Del2;図10および12を参照)。PCRに用いたプライマーは、MGDEL3およびPL28(PL28はリボソーム結合部位の5'領域にアニーリングする)であり、pET23a-T7タグVg-PTH(1-34)クローンをテンプレートとして用いた。
MGDEL3:5' GAC GTT AAC GTC GCC CGA GTA GTT GGT GAA CAC -3'(配列番号107)(HpaI部位を下線で示す)
PL28:5' GAG CGG ATA ACA ATT CAC A -3'(配列番号108)
【0186】
PCR産物をHpaI-XbaIで切断し、HpaI-XbaI切断したpET23a-T7タグVg-PTH(1-34)プラスミド中にクローニングした。得られたプラスミドpET23a-T7タグVg(Del2)-PTH(1-34)は、T7タグVg(Del2)-PTH(1-34)前駆体ペプチドに対応するサイズを有する、高レベルのIPTG-誘導性、不溶性の封入体を発現した。この実験により、この領域(TASQVD)(配列番号106)は、Vgが封入体を形成するのに重要でないことが示された。
【0187】
別の実験において、T7タグVgCH-PTH(1-34)前駆体ペプチドのリンカー領域を欠失させた。C末端がHpaI部位に隣接したPEFSV(配列番号109)のアミノ酸配列を欠失させた(Del 3;図10および12を参照)。Del 3領域を、PCR増幅により、テンプレートとしてpET23a-T7タグVg-PTH(1-34)プラスミドを用い、以下に示すプライマーを用いて作り出した。PL39プライマーは、終止領域において、プラスミドにアニーリングした。
【化7】

【0188】
図11に示すように、PCR産物は、Cys-Hisコード配列をPTH(1-34)のN末端に含んでいた。配列決定によりPCR産物が確認された後に、それをHpaI-XhoIで消化し、次いでpET23a-T7タグVg-PTH(1-34)プラスミドのHpaI-XhoI部位にクローニングして、pET23a-T7タグVg(Del3)CH-PTH(1-34)プラスミドを得た。HpaI-XhoI消化PCR断片をpET23a-T7タグVg(Del2)CH-PTH(1-34)プラスミドのHpaI-XhoI部位にクローニングしたときに、これはpET23a-T7タグVg(Del2+3)CH-PTH(1-34)プラスミドを生じた。両構築物のDNA配列および予測アミノ酸配列を図10および12に示す。
【0189】
上記のプラスミドおよびpET23a-T7タグVg-PTH(1-34)プラスミド(非欠失)の両方を、E.coli K株、HMS-174(DE3)に別々に形質転換した。発現をIPTGで誘導した。3つ全てのクローンは、高レベルのIPTG-誘導性、不溶性封入体を生成した。この結果は、Vgは、BL21およびHMS-174株の両方で機能するので株特異的でないことを示し、さらにDel1、Del2、Del3またはDel2+3欠失はVg機能に影響を与えないことを示した。Del2+3欠失は、11個のアミノ酸を除去し、T7タグVg(Del2+3)CHリーダー要素の全長は、44アミノ酸に縮小した。ゆえに、T7タグVg(Del2+3)CHPTH(1-34)構築物全体は、78アミノ酸長へと縮小した。
【0190】
実施例9 T7タグVg-CATの発現
開示された発明が、大きなペプチドまたは可溶性タンパク質の生産を増強するか否かを決定するために、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードするDNA構築物を、Vgへ融合するまたはしないように調製した。活性なCATは、クロラムフェニコール耐性を付与する。
【0191】
(1) pBN115ベクター
tacプロモーター-GST構造遺伝子融合を含むFspI-SmaI断片をpBN95(Tac)プラスミド由来のBglII-XbaI-NheI-XhoIカセットと置換することにより、pBN115を、pGEX-2Tから得た。tacプロモーターを、コレラウイルスプロモーター(米国特許番号6,316,224)とBglII-XbaI部位で置換した。プラスミドpBN115は、lacIqおよびAmprを含む。pBN115ベクターの使用は、米国特許番号6,316,224においてXiaにより記載されている。
【0192】
(2) CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)
CAT遺伝子(219アミノ酸をコードする)をプラスミドpKK232-8(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)からPCR増幅させた。PCR反応において次の2つのオリゴを用いた:CATXY1:5'- GGT GCT AGC ATG GAG AAA AAA ATC ACT -3'(配列番号112)
CATXY2:5'- ATC CTC GAG CTG CCA AGG GTT -3'(配列番号113)
【0193】
フォワードプライマーとして用いたCATXY1は、クローニングのためにNheI部位(GCTAGC)を含んでいる。リバースプライマーとして用いたCATXY2は、クローニングのためにXhoI部位(CTCGAG)を含んでいる。得られたPCR産物をpBN115のNheI-XhoI部位に挿入し、pBN115-CATプラスミド(図13)を作り出した。pBN115-CATプラスミドを、E.coliに形質転換し、実施例3に記載のように発現させた。CATは、37℃でクロレラウイルスプロモーターの制御下に、可溶性、活性な酵素タンパク質として過発現された。
【0194】
(3) T7タグVg-CAT
T7タグVg融合遺伝子を含むNheI-解離可能DNA断片をPCRにより調製した。次のプライマーをPCRプライマーとして用いた:
VGNHE:5'- ATC GCT AGC GTT AAC GTC CAC CTG GCT GGC -3'(配列番号114)
XBAXY1:5'- CCC GGG TCG ACA ACT TTA AGA AGG AGA TA -3'(配列番号115)
【0195】
VGNHEは、リバースプライマーとして働き、制限部位HpaI(GTTAAC)およびNheI(GCTAGC)を含んでいた。XBAXY1は、フォワードプライマーとして働き、開始コドン上流のDNA配列を含んでいた。コドン-最適化Vgを含むpBN95(Tac)-T7タグVg(opt)-CHGRF(1-44)Aプラスミドを、PCRのためのテンプレートとして用いた。
【0196】
PCRにより生成した、T7タグVg融合を含むNheI断片(図14)を、pBN115-CATのNheI部位に挿入し、pBN115-T7タグVg-CATプラスミドを得た。プラスミドを、制限酵素マッピングし、挿入物の正しい方向性が得られたことを確認した。プラスミドをE.coliに形質転換し、実施例3に記載のように発現させた。T7タグVg-CATは、37℃で不溶性タンパク質として過発現したが、CATは、可溶性タンパク質として発現した。
【0197】
実施例10 T7タグVg-β-ガラクトシダーゼの発現
1021アミノ酸からなるβ-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子を、E.coli MG1655 LacZ遺伝子から、以下の2つのプライマー:
BGXY1:5'-ATG GCT AGC ATA GAT CCC GTC GTT TTA CAA CGT CGT GAC-3'(配列番号116)
BGXY2:5'-CGG CTC GAG TTA TTA TTT TTG ACA CCA GAC CAA CTG GTA-3'(配列番号117)
を用いて増幅した。
【0198】
フォワードプライマーBGXY1は、NheI部位(下線)をPCR産物に導入し、リバースプライマーBGXY2は、XhoI部位(下線)を導入した。PCR産物をNheI-XhoIで消化し、次いでpBN115プラスミドのNheI-XhoI部位にクローニングして、pBN115-LacZプラスミドを得た。実施例9から得たNheI-解離可能なT7タグVg断片を、pBN115-LacZプラスミドのNheI部位に挿入し、pBN115-T7タグVg-LacZプラスミド(図15)を得た。このプラスミドを制限酵素マッピングにより、挿入物の正しい方向性が得られたことを確認した。プラスミドを、E.coliに形質転換し、実施例3に記載のように発現させた。
【0199】
振盪培養物の発現により、T7タグVg-LacZのタンデム・ポリペプチドは大部分が37℃で封入体として発現され、27℃で部分的に可溶性であることが示された(図16)。Vgリーダーを持たない場合、LacZは、E.coliにおいて可溶性タンパク質として発現された。この驚くべき結果は、大きな可溶性タンパク質に融合されたときでさえ、Vgリーダーが封入体またはポリペプチド凝集体の形成を促進することを示した。封入体またはポリペプチド凝集体の形成は、より高い発現温度で増大した。
【0200】
実施例11 T7タグVgCH-GLP(7-36)CHの発現
PCRにより以下のプライマー:
プライマーCHGLP:5' GCT ATG GTC GAC GAC GAC GAC AAA TGC CAC CAT GCT GAA GGT ACC TTC ACC TCC 3' (配列番号118)
プライマーGLPCH:5' ATG CAT CTC GAG TTA GTG GCA ACG ACC TTT AAC CAG CCA AGC GAT GAA 3' (配列番号119)
を用いてCH-GLP(7-36)CH断片を得た。
【0201】
プライマーCHGLPにおけるSalI部位およびプライマーGLPCHにおけるXhoI部位に下線を記す。PCR産物を、SalI-XhoIで切断し、SalI-XhoI切断されてアルカリホスファターゼで処理したpBN95(Tac)-T7タグVg(opt)CH-GRF(1-44)Aベクターにライゲーションした。得られたプラスミドpBN95(Tac)-T7タグVgCH-GLP(7-36)CHを、E.coli HMS174およびBL21に形質転換した。これらセルラインの全ては、IPTG誘導後にT7VgCH-GLP(7-36)CHに対応する高レベルのポリペプチド封入体を発現した。
【0202】
実施例12 一般的発現カセット
本明細書中に記載した方法、構築物および封入体融合パートナーを使用することにより、多くの予め選択されたポリペプチドを得ることができる。予め選択されたポリペプチドを、配列番号2〜4で示される封入体融合パートナーに作動可能に連結するのが好ましい。これらのタンデム・ポリペプチドの例として、図18に示す一般的構造が挙げられる。実施例1および2に記載の方法を用いて、実質的に任意の予め選択されたポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸構築物を調製することができる。実施例3、5、7および9〜11に記載された方法に従い、この核酸構築物を増殖させて、予め選択されたポリペプチドを生産するのに用いることができる。ゆえに、この方法および構築物を多種多様な環境下で用いて、多くの異なる、予め選択されたポリペプチドを得ることができる。
【0203】
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【0204】
全ての文献、特許および特許出願および優先権米国特許出願番号60/383,370は、参照により本明細書中に組み込まれる。本発明は、その特定の好ましい態様に関して上記の明細書中に記載されているが、多くの詳細は説明の目的で示したのであり、本発明は別の態様が可能であり、本明細書中の特定の詳細な記述は本発明の基本原理から逸脱しない範囲で大きく改変することができることが当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、pBN95発現プラスミドのプラスミド地図である。
【図2】図2は、pBN95(Tac)-T7タグVgCH-GRF(1-44)Aプラスミドのプラスミド地図である。
【図3】図3は、T7タグVgCH-GRF(1-44)Aカセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。リーダー配列、Vg配列、リンカー配列およびGRF(1-44)A配列を、範囲を示す線で表す。制限酵素認識部位を、名称と下線で示す。切断部位を矢印で示す。
【図4】図4は、T7タグ-GRF(1-44)Aカセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。T7タグ、リンカーおよびGRF(1-44)Aの核酸およびアミノ酸配列を示す。制限酵素認識部位を、名称と下線で示す。エンテロキナーゼ認識部位を矢印で示す。
【図5】図5は、T7タグVg-GRF(1-44)Aカセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。リーダー配列、Vg配列、リンカー配列およびGRF(1-44)A配列を、範囲を示す線で表す。制限酵素認識部位を、名称と下線で示す。切断部位を矢印で示す。終止コドンに星印を付けて示す。
【図6】図6は、T7タグVg(opt)CH-GRF(1-44)Aカセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。最適化コドンに下線を記す。終止コドンを星印で示す
【図7】図7は、配列番号2を有する封入体融合パートナーの疎水性をグラフに示したものである。
【図8】図8は、T7タグVgMut1CH-GRF(1-44)Aカセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸置換を小文字のコドンでコードされているように示す。制限酵素認識部位を、名称により示す。終止コドンを星印で示す。
【図9】図9は、T7タグVgMut4CH-GRF(1-44)Aカセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸置換を小文字のコドンで示す。終止コドンを星印で示す。
【図10】図10は、T7タグVg-PTH(1-34)カセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。トロンビン切断部位は、アミノ酸55位と56位の間に位置する。制限部位を、下線および名称により示す。
【図11】図11は、アミノ酸16位と17位の間に位置するパラジウム切断部位を含むリンカー配列の核酸およびアミノ酸配列を示す。T7タグ、リンカーおよびPd切断配列を示す。
【図12】図12は、PTH前駆体ペプチドをコードするpET23 T7タグVg(Del3)-CHPTH(1-34)およびpET23T7タグVg(Del2+3)CHPTH(1-34)発現カセットのDNAおよびペプチド配列を示す。最適化コドンを下線で示し、制限酵素認識部位を名称および下線により示す。
【図13】図13は、pBN115-T7タグVg-CATプラスミドのプラスミド地図である。
【図14】図14は、NheI-解離可能なT7Vg断片の核酸およびアミノ酸配列を示す。制限酵素認識部位を名称で示す。
【図15】図15は、pBN115-T7タグVg-LacZプラスミドのプラスミド地図である。
【図16】図16は、示した条件に従い処理された細胞から得たサンプルのSDS-PAGEゲルを示す。レーン1:Novex multimark分子量マーカー;レーン2:37℃、誘導2時間、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの可溶性画分;レーン3:37℃、非誘導、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの可溶性画分;レーン4:27℃、誘導2時間、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの可溶性画分;レーン5:27℃、非誘導、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの可溶性画分;レーン6:37℃、誘導2時間、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの不溶性画分;レーン7:37℃、非誘導、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの不溶性画分;レーン8:27℃、誘導2時間、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの不溶性画分;レーン9:27℃、非誘導、pBN115(Tac)-T7タグVg-LacZの不溶性画分。
【図17】図17は、T7タグVgCH-GLP-1(7-36)CHカセットの核酸およびアミノ酸配列を示す。制限酵素認識部位を名称により示す。
【図18】図18は、本発明のポリペプチドの一般化構造を示す。
【図19】図19は、配列番号2の疎水性コアの周りに生じる一連のアミノ酸欠失を示す。
【配列表】

















































【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動可能に連結した、以下に示す核酸配列:
5' Pr-(TIS)D-(IBFP1)E-(CL1)G-ORF-[CL2-ORF]L-(CL3)M-(IBFP2)Q-(SSC)R-(CL4)T-(Ft)W-(Tr)X-3'
[式中、Prはプロモーター配列であり、
TISは、翻訳開始配列をコードし、
IBFP1は、配列番号1〜15のうちいずれか1つに相当するアミノ酸配列またはその変異体を含む第一封入体融合パートナーをコードし、
CL1は、第一の切断可能なペプチドリンカーをコードし、
ORFは、予め選択されたポリペプチドをコードし、
CL2は、第二の切断可能なペプチドリンカーをコードし、
CL3は、第三の切断可能なペプチドリンカーをコードし、
IBFP2は、配列番号1〜15のうちいずれか1つまたはその変異体に相当するアミノ酸配列を含む第二封入体融合パートナーをコードし、
SSCは、抑制可能な終止コドンをコードし、
CL4は、第四の切断可能なペプチドリンカーをコードし、
Ftは、融合タグをコードし、そして
Trは、転写終止配列であり、
式中、DまたはXの各々は独立して0または1〜4の整数であり、
式中、Rは0または1〜2の整数であり、
式中、E、G、L、M、Q、TまたはWは独立して0または1〜20の整数であり、
式中、IBFP1またはIBFP2のどちらか一方または両方が存在し、そして
式中、発現カセットの発現により、細胞において発現されたきに封入体を形成するタンデム・ポリペプチドが生じる。]
を含む発現カセット。
【請求項2】
タンデム・ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端にまたはその近位に作動可能に結合したシグナル配列をコードする核酸配列をさらに含む請求項1に記載の発現カセット。
【請求項3】
シグナル配列が、作動可能に関連したタンデム・ポリペプチドを細胞のペリプラズム空間、内膜、または外膜に方向付けている、請求項2に記載の発現カセット。
【請求項4】
シグナル配列が、ファージfd大コートタンパク質、ファージfd小コートタンパク質、アルカリホスファターゼ、マルトース結合タンパク質、ロイシン特異的結合タンパク質、β-ラクタマーゼ、リポタンパク質、LamBおよびOmpAからなる群から選択されるタンパク質から得られる、請求項2に記載の発現カセット。
【請求項5】
IBFP1またはIBFP2のどちらかまたは両方の核酸配列が、タンデム・ポリペプチドから形成される封入体の単離増強を調節する封入体融合パートナーをコードする、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項6】
封入体の単離増強が、自己-接着、溶解性、精製安定性、タンパク質分解に対する耐性または改変された等電点である、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項7】
プロモーターが、lacオペレーター、ラムダファージオペレーター、β-ガラクトシダーゼオペレーター、アラビノースオペレーター、lexAオペレーターおよびtrpオペレーターからなる群から選択されるオペレーターを含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項8】
プロモーターが、T71acプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター、ラムダファージプロモーター、熱ショックプロモーターまたはクロレラウイルスプロモーターである、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項9】
翻訳開始配列が、ファージT7遺伝子10、ファージQβA、ファージQβコート、ファージQβレプリカーゼ、ファージラムダCro、ファージf1コート、ファージΦX174 A、ファージΦX174 B、ファージΦX174 E、リポタンパク質、RecA、GalE、GalT、LacI、LacZ、リボソームL10、リボソームL7/L12およびRNAポリメラーゼβサブユニットからなる群から選択されるタンパク質をコードする遺伝子から得られる、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項10】
第一の切断可能なペプチドリンカー、第二の切断可能なペプチドリンカー、第三の切断可能なペプチドリンカーまたは第四の切断可能なペプチドリンカーの各々が、パラジウム、臭化シアン、クロストリパイン、トロンビン、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロキナーゼ、Kex 2プロテアーゼ、Omp Tプロテアーゼ、Xa因子プロテアーゼ、スブチリシン、HIVプロテアーゼ、ライノウイルスプロテアーゼ、フリリシン(Furilisin)プロテアーゼ、IgAプロテアーゼ、ヒトPaceプロテアーゼ、コラゲナーゼ、Plum posポティウイルスNiaプロテアーゼ、ポリオウイルス2Aproプロテアーゼ、ポリオウイルス3Cプロテアーゼ、Niaプロテアーゼ、ゲネナーゼ、フューリン、キモトリプシン、エラスターゼ、スブチリシン、プロテイナーゼK、ペプシン、レンニン、微生物アスパラギン酸プロテアーゼ、パパイン、フィシン、ブロメライン、コラゲナーゼ、サーモリシン、エンドプロテアーゼArg-C、エンドプロテアーゼGlu-C、エンドプロテアーゼLys-C、カリクレインおよびプラスミンからなる群から選択される切断物質により独立して切断され得る、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項11】
ORFがGLP-1、GLP-2、PTH、GRF、クロストリパインまたはそれらの変異体をコードする、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項12】
ORFが抑制可能な終止コドンを含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項13】
抑制可能な終止コドンがアンバーコドンまたはオーカーコドンである、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項14】
抑制可能な終止コドンが切断可能なペプチドリンカーを作り出す、請求項13に記載の発現カセット。
【請求項15】
切断可能なペプチドリンカーが組織特異的プロテアーゼにより切断される、請求項14に記載の発現カセット。
【請求項16】
組織特異的プロテアーゼが前立腺特異抗原である、請求項15に記載の発現カセット。
【請求項17】
融合タグが、β-gal、GST、CAT、TrpE、SPA、SPG、MBP、SBD、CBDCenA、CBDCex、ビオチン-結合ドメイン、recA、フラッグ、poly(Arg)、Poly(Asp)、グルタミン、poly(His)、poly(Phe)、poly(Cys)、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、トウガラシ蛍光タンパク質、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたは抗体エピトープである、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項18】
終止配列がT7ターミネーターである、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項19】
請求項1に記載の発現カセットの転写により生じたRNA。
【請求項20】
請求項19に記載のRNAの翻訳により生じるタンデム・ポリペプチド。
【請求項21】
ベクターおよび請求項1に記載の発現カセットを含む核酸構築物。
【請求項22】
ベクターがウイルス、プラスミド、ファージミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、バクテリオファージ、F因子またはコスミドである、請求項21に記載の核酸構築物。
【請求項23】
請求項21に記載の核酸構築物を含む細胞。
【請求項24】
細胞が原核細胞または真核細胞である、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
細胞が細菌である、請求項23に記載の細胞。
【請求項26】
細菌がEscherichia coliである、請求項25に記載の細胞。
【請求項27】
細胞が酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞である、請求項23に記載の細胞。
【請求項28】
次の領域:
a) 配列番号1〜15のうちいずれか1つまたはそれらの変異体に相当するアミノ酸配列を有する封入体融合パートナーを含む第一領域;および
b) 予め選択されたアミノ酸配列を含む第一領域と天然で関連しない第二領域
を含むタンデム・ポリペプチド。
【請求項29】
第一領域が第二領域のN末端またはその近位にある、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項30】
第一領域が第二領域のC末端またはその近位にある、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項31】
予め選択されたアミノ酸配列がGLP-1、GLP-2、PTH、GRF、クロストリパインまたはそれらの変異体のアミノ酸配列に相当する、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項32】
切断可能なペプチドリンカーを第一領域と第二領域の間にさらに含む、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項33】
切断可能なペプチドリンカーが、パラジウム、臭化シアン、クロストリパイン、トロンビン、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロキナーゼ、Kex 2プロテアーゼ、Omp Tプロテアーゼ、Xa因子プロテアーゼ、スブチリシン、HIVプロテアーゼ、ライノウイルスプロテアーゼ、フリリシン(Furilisin)プロテアーゼ、IgAプロテアーゼ、ヒトPaceプロテアーゼ、コラゲナーゼ、Plum posポティウイルスNiaプロテアーゼ、ポリオウイルス2Aproプロテアーゼ、ポリオウイルス3Cプロテアーゼ、Niaプロテアーゼ、ゲネナーゼ、フューリン、キモトリプシン、エラスターゼ、スブチリシン、プロテイナーゼK、ペプシン、レンニン、微生物アスパラギン酸プロテアーゼ、パパイン、フィシン、ブロメライン、コラゲナーゼ、サーモリシン、エンドプロテアーゼArg-C、エンドプロテアーゼGlu-C、エンドプロテアーゼLys-C、カリクレインおよびプラスミンからなる群から選択される切断物質により切断され得る、請求項32に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項34】
切断可能なペプチドリンカーが組織特異的プロテアーゼにより切断される、請求項32に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項35】
組織特異的プロテアーゼが前立腺特異抗原である、請求項34に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項36】
作動可能に連結された融合タグをさらに含む、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項37】
融合タグが細胞受容体に対するリガンドである、請求項36に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項38】
融合タグがインスリンである、請求項37に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項39】
融合タグが、β-gal、GST、CAT、TrpE、SPA、SPG、MBP、SBD、CBDCenA、CBDCex、ビオチン-結合ドメイン、recA、フラッグ、poly(Arg)、Poly(Asp)、グルタミン、poly(His)、poly(Phe)、poly(Cys)、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、トウガラシ蛍光タンパク質、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたは抗体エピトープである、請求項36に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項40】
予め選択されたアミノ酸配列が2〜1000アミノ酸長である、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項41】
予め選択されたアミノ酸配列が2〜100アミノ酸長である、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項42】
予め選択されたアミノ酸配列が2〜10アミノ酸長である、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項43】
予め選択されたアミノ酸配列における少なくとも1つのアミノ酸がアミノ酸類似体と置換されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項44】
封入体融合パートナーにおける少なくとも1つのアミノ酸が、保存性アミノ酸である別のアミノ酸と置換されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項45】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、少なくとも1つのアミノ酸を酸性アミノ酸と置換することにより改変されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項46】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、少なくとも1つのアミノ酸を塩基性アミノ酸と置換することにより改変されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項47】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、少なくとも1つのアミノ酸を脂肪族アミノ酸と置換することにより改変されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項48】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、4〜12のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項49】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、4〜7のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項50】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、7〜12のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項51】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、6〜7のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変されている、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項52】
予め選択されたアミノ酸配列と融合タグの間に切断可能なペプチドリンカーをさらに含む、請求項36に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項53】
切断可能なペプチドリンカーが、パラジウム、臭化シアン、クロストリパイン、トロンビン、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロキナーゼ、Kex 2プロテアーゼ、Omp Tプロテアーゼ、Xa因子プロテアーゼ、スブチリシン、HIVプロテアーゼ、ライノウイルスプロテアーゼ、フリリシン(Furilisin)プロテアーゼ、IgAプロテアーゼ、ヒトPaceプロテアーゼ、コラゲナーゼ、Plum posポティウイルスNiaプロテアーゼ、ポリオウイルス2Aproプロテアーゼ、ポリオウイルス3Cプロテアーゼ、Niaプロテアーゼ、ゲネナーゼ、フューリン、キモトリプシン、エラスターゼ、スブチリシン、プロテイナーゼK、ペプシン、レンニン、微生物アスパラギン酸プロテアーゼ、パパイン、フィシン、ブロメライン、コラゲナーゼ、サーモリシン、エンドプロテアーゼArg-C、エンドプロテアーゼGlu-C、エンドプロテアーゼLys-C、カリクレインおよびプラスミンからなる群から選択される切断物質により切断され得る、請求項52に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項54】
細胞内で発現されるときに、第一領域がタンデム・ポリペプチドに封入体を形成させる、請求項28に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項55】
細胞が細菌である、請求項54に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項56】
細菌がEscherichia coliである、請求項55に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項57】
細胞が昆虫細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞である、請求項54に記載のタンデム・ポリペプチド。
【請求項58】
請求項28に記載のタンデム・ポリペプチドをコードするDNA配列。
【請求項59】
封入体に単離の増強を付与する封入体融合パートナーのアミノ酸配列を選択するための、以下の工程からなる方法:
a)封入体を形成するタンデム・ポリペプチドを形成するための融合パートナーと天然には関連しないアミノ酸配列に作動可能に連結された配列番号1〜15のうちいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列を改変し、そして
b)封入体が自己-接着の増強、制御可能な溶解、精製安定性またはタンパク質分解に対する耐性を示すか否かを決定する。
【請求項60】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、少なくとも1つのアミノ酸を保存性アミノ酸と置換することにより改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、少なくとも1つのアミノ酸を疎水性アミノ酸と置換することにより改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、少なくとも1つのアミノ酸を親水性アミノ酸と置換することにより改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、少なくとも1つのアミノ酸を非荷電アミノ酸と置換することにより改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、4〜12のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、4〜7のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、7〜12のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
配列番号1〜15のいずれか1つを含む封入体融合パートナーのアミノ酸配列が、6〜7のpK値を有する少なくとも1つのアミノ酸の置換により改変される、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
配列番号1〜15のいずれか1つおよびそれらの変異体に相当するアミノ酸配列を有する、単離された封入体融合パートナー。
【請求項69】
タンデム・ポリペプチドを生産するための、以下の工程からなる方法:
a)細胞中で予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結された封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチドを発現させ、そして
b)タンデム・ポリペプチドを単離する。
【請求項70】
配列番号83および配列番号1〜15のいずれか1つを含むアミノ酸配列をコードする核酸配列。
【請求項71】
配列番号83および配列番号1〜15のいずれか1つを含むアミノ酸配列。
【請求項72】
配列番号1〜15に相当する核酸配列。
【請求項73】
配列番号1〜15に相当するアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有する核酸配列。
【請求項74】
配列番号1〜15に相当するアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列。
【請求項75】
配列番号1〜15に相当するアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列。
【請求項76】
配列番号1〜15に相当するアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列。
【請求項77】
配列番号1〜15のいずれか1つに相当するアミノ酸配列。
【請求項78】
配列番号1〜15のいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項79】
配列番号1〜15のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項80】
配列番号1〜15のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項81】
配列番号1〜15のいずれか1つに対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項82】
予め選択されたポリペプチドに作動可能に連結された配列番号1〜15のいずれか1つに相当するアミノ酸配列を有する封入体融合パートナーを含むタンデム・ポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2006−508639(P2006−508639A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−508263(P2004−508263)
【出願日】平成15年5月23日(2003.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/016643
【国際公開番号】WO2003/100021
【国際公開日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(504433397)リストレイジェン・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】RESTORAGEN, INC.
【出願人】(504433401)
【氏名又は名称原語表記】Scott HARLEY
【Fターム(参考)】