説明

ポリペプチド製造用の改良されたα因子シグナル・ペプチド

本発明は、ポリペプチドの製造方法であって、AからT、S、H、I、F、E、又はGのいずれかへの置換をもたらす第9位の置換を有する変異体α因子シグナルペプチドの使用を含んで成る前記方法に関する。本発明は、変異体シグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列と、上記第1のヌクレオチド配列にとって外来のものである、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトにさらに関する。さらに、それはまた、前述の核酸コンストラクトを含んで成る発現ベクター及び宿主細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
当該出願は、コンピュータ読込可能形態の配列表を含んでいる。前記コンピュータ読込可能形態を、本明細書中で援用する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、ポリペプチドを産生して分泌させるための方法、シグナル・ペプチドと上記ポリペプチドを含んで成る第1及び第2のヌクレオチド配列をコードする核酸コンストラクト、並びに上記核酸コンストラクトを含んで成る発現ベクター及び宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0003】
真菌宿主細胞、特に、アスペルギルス属などの糸状菌細胞、又はサッカロミセス属などの酵母細胞における異種タンパク質の組み換え産生は、商業的に適切な量でタンパク質を産生させるためのより望ましいビヒクルを提供することがある。
【0004】
異種タンパク質の組み換え産生は、通例、上記タンパク質をコードするDNAが、宿主細胞に好適な、制御遺伝子から切り取られたプロモーターの発現制御下に置かれている発現カセットを構築することによって実行される。発現カセットは、宿主細胞内に導入される。そして、異種タンパク質の産生は、発現カセットに含まれたプロモーターの適切な機能に必要な誘導条件下で形質転換宿主細胞を培養することによって達成される。
【0005】
タンパク質の組み換え産生の改良は、通例、宿主細胞においてそのタンパク質の発現を制御するのに好適である新規調節配列の利用可能性を必要とする。そのような調節配列の1つは、Kurjan及びHerskowitz(Cell, vol. 30: 933-943,1982)において最初に開示された酵母α因子シグナル・ペプチドをコードする配列を含んでいる。このシグナル・ペプチドは、酵母における異種ポリペプチドの産生のための一般的な分泌シグナルとして適用できることが続いて明らかにされた(EP 0 116 201 B1)。
【0006】
AllisonとYoung(Molecular and Cellular Biology, 1989, voi:9(11) p. 4977-4985)は、α因子のシグナル配列中の突然変異の影響を記載している。記載の突然変異のすべてが、2分の1〜12分の1までα因子の減少をもたらした。
【0007】
本発明の目的は、酵母α因子シグナル・ペプチドの誘導体を使用した真菌宿主細胞においてポリペプチドを製造するための改良された方法を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、分泌ポリペプチドを増産する方法であって、以下のステップ:
(a)上記ポリペプチドの産生を促す培地中で真菌宿主細胞を培養し、ここで、上記宿主細胞が、上記ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結されたシグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトを含んで成り;ここで、上記の第1のヌクレオチド配列が第2のヌクレオチド配列にとって外来のものであり、その第1のヌクレオチド配列の3’末端が第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、且つ、その第1のヌクレオチド配列が、第9位のアラニンの少なくとも1の置換を有するα因子シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択され;そして、
(b)培養培地から分泌ポリペプチドを単離する、
を含んで成る前記方法を提供する。
【0009】
本発明の第2の側面は、α因子シグナル・ペプチドの単離された変異体であって、ここで、9位又は野性型配列とのアラインメントによって決定される対応位置のアミノ酸が、A9T、A9S、A9H、A9I、A9F、及びA9Gから成る群から選択される置換の1つを含むように変更されたものに関する。
【0010】
さらに、本発明は、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結されたシグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトであって、ここで、上記第1のヌクレオチド配列が第2のヌクレオチド配列にとって外来のものであり、且つ、第1のヌクレオチド配列の3’末端が第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、そして、第1のヌクレオチド配列が本発明によるシグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択されるものを提供する。
【0011】
本発明は、また、前述の核酸コンストラクトを含んで成る発現ベクターと宿主細胞を提供する。
【0012】
最後の側面において、本発明は、ポリペプチドを製造するための改良されたシグナル・ペプチドの使用であって、ここで、上記シグナル・ペプチドが第1のヌクレオチド配列によってコードされ、第1のヌクレオチド配列にとって外来のものである第2のヌクレオチド配列によって上記ポリペプチドがコードされ、且つ、ここで、上記第1のヌクレオチド配列の3’末端が第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、そして、ここで、上記第1のヌクレオチド配列が、9位のアラニンの少なくとも1の置換を持つα因子シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択されるものに関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
他のポリペプチド又はヌクレオチド配列に関して使用される用語「変異体」は、本発明との関連においては、他のポリペプチドと比べた場合の1つ又は数個のアミノ酸又はヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成るポリペプチド又はヌクレオチド配列として理解されるべきである(すなわち、それは比較されるポリペプチド/ヌクレオチド配列の変異体である)。特に、上記変更は、ポリペプチドの活性に顕著に影響しない、保存的なアミノ酸置換のような軽度のものか又は保存的なアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド配列に関するもの、あるいは、通常、その変更が行われるポリペプチドのサイズに依存する1〜約20個のアミノ酸の小さい欠失であってもよい。この場合は、シグナル・ペプチドは、19個のアミノ酸にすぎない。従って、小さい欠失は、1〜3個のアミノ酸の範囲内にある。
【0014】
保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸とアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミンとアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシン)、及び小さいアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、及びメチオニン)の群の中にある。通例、その特定の活性を変更しないアミノ酸置換が、当該技術分野で知られていて、そして、例えば、H. Neurath and R.L. Hill, 1979, in, The Proteins, Academic Press, New Yorkによって記載されている。最も一般的に生じる交換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、及びAsp/Gly、並びに逆方向のこれらである。
【0015】
第1のヌクレオチド配列は、本発明のシグナル・ペプチドをコードする。「シグナル・ペプチド」又は「シグナル・ペプチド配列」という用語は、通常、細胞の細胞膜(原核生物の原形質膜、そして、真核生物の小胞体膜)の向こう側に、若しくは細胞膜の中にポリペプチドを向かわせる、新たに合成された分泌又は膜ポリペプチドのN末端に存在しているペプチド配列と本明細書中に規定される。通常、それはそれに続いて取り除かれる。特に、前述のシグナル・ペプチドは、細胞の分泌経路にポリペプチドを向かわせることができることがある。
【0016】
本発明によるα因子シグナル・ペプチドは、酵母に起因しているシグナル・ペプチドであり、そして、Kurjan及びHerskowitz(Cell, vol. 30: 933-943)に記載されている。野性型α因子アミノ酸配列は、配列番号1に示されている。
【0017】
「作用可能に連結」という用語は、シグナル・ペプチド配列等の制御配列が、コード配列に対する位置において、コード配列によってコードされたポリペプチドの産生を指示するように適切に配置されている配置として本明細書で定義される。
【0018】
「コード配列」という用語は、適切な制御配列の制御下に置かれると、ポリペプチドに翻訳されるヌクレオチド配列として本明細書中に規定される。コード配列の境界は、オープン・リーディング・フレームの始め(5’末端)に位置する開始コドンと、オープン・リーディング・フレームの3’末端に位置する終止コドンによって通例決定される。コード配列には、限定しないが、ゲノムDNA、cDNA、RNA、半合成、合成、及び、組み換えヌクレオチド配列が含まれる。
【0019】
2つのアミノ酸配列の間の関連性は、「同一性」というパラメーターによって説明される。本発明のために、2つのアミノ酸配列のアラインメントは、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)バージョン2.8.0からのNeedleプログラムを使用することによって測定される。Needleプログラムは、Needleman, S. B. and Wunsch, C. D. (1970) J. Mol. Biol. 48,443-453に記載の広範囲のアラインメント・アルゴリズムを実装する。使用される置換マトリクスはBLOSUM62であり、ギャップ開始ペナルティは10であり、そして、ギャップ伸長ペナルティは0.5である。
【0020】
本発明のアミノ酸配列の間の同一度は、(「発明配列」;例えば、配列番号2の第1〜19アミノ酸などと、異なったアミノ酸配列(「外来配列」が、「本発明の配列」の長さ又は「外来配列」の長さのどちらか最も短い方で、割られる、その2つの配列のアラインメントの完全一致数として計算される。結果は、同一性パーセントで発現される。
【0021】
完全一致数は、「発明配列」と「外来配列」がオーバラップの同じ位置に同一のアミノ酸残基を持つときに現れる(以下のアラインメント例では、これが「|」によって表されている)。配列の長さは、配列内のアミノ酸残基の数である(例えば、配列番号2の長さは19である)。
【0022】
以下の純粋な仮定に基づくアラインメントの例では、オーバラップは、配列1のアミノ酸配列「HTWGER-NL」;又は配列2のアミノ酸配列「HGWGEDANL」に存在する。この例において、ギャップは「-」で示した。
【0023】
仮定に基づくアラインメントの例:
【0024】
【化1】

【0025】
本発明のために、2つのヌクレオチド配列の間の同一度を、同一性テーブルと以下の複合アラインメント・パラメータ:ギャップペナルティ10及びギャップ長ペナルティ10を用いたLASERGENE(登録商標)MEGALIGN(登録商標)ソフトウェア(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を使用したWilbur-Lipman法(Wilbur and Lipman, 1983, Proceedings of the National Academy of Science USA 80: 726-730)によって決定した。ペアワイズ・アラインメント・パラメータは、Ktuple=3、ギャップペナルティ=3、及びウィンドウ=20である。
【0026】
特定の態様において、配列番号2の第1〜19アミノ酸との、若しくはそれに対する、あるポリペプチドのアミノ酸配列の同一性パーセンテージを、以下のステップ:i)BLOSUM62置換マトリクス、ギャップ開始ペナルティ10、及びギャップ伸長ペナルティ0.5を用いたNeedleプログラムを使用して上記の2つのアミノ酸配列をアラインし;ii)上記アラインメントにおける完全一致数をカウントし;iii)2つのアミノ酸配列の中で最も短い長さによって完全一致数を割り;そして、iv)iii)の割り算の結果をパーセンテージに変換する、によって決定した。本発明の他の配列、例えば、配列番号3の第1〜19アミノ酸に対する、若しくはそれとの同一性のパーセンテージが、類似の方法によって計算される。
【0027】
本発明の方法
本発明は、分泌ポリペプチドの増産方法であって、以下のステップ:(a)上記ポリペプチドの産生を促す培地中で、真菌宿主細胞を培養し、ここで、上記宿主細胞が、上記ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結された、シグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトを含んで成り;ここで、上記第1のヌクレオチド配列が上記第2のヌクレオチド配列にとって外来のものであり、上記第1のヌクレオチド配列の3’末端が上記第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、且つ、上記第1のヌクレオチド配列が、第9位のアラニンの少なくとも1の置換を持つα因子シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択され;(b)上記培養培地から分泌ポリペプチドを単離する、を含んで成る前記方法に関する。
【0028】
本発明の方法において、真菌宿主細胞は、ポリペプチドの産生を促す培地中、すなわち、当該技術分野で知られている方法を使用したポリペプチドの産生に好適な培養液中で培養される。例えば、細胞は、実験室の、振盪フラスコ培養によって、又は(連続、バッチ、フェド-バッチ、又は固体発酵等)小規模若しくは大規模な発酵によって、あるいは、ポリペプチドの発現、及び/又は単離を可能にする好適な培地中、且つ、条件下で実施される工業発酵によって培養されることがある。培養は、当該技術分野で知られている手順を用いて、炭素及び窒素の供給源、並びに無機塩を含んで成る好適な培養液中で行われることがある。好適な培地は、商業的な供給業者から入手可能であるか、又は(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログ中に)公開されている組成に従って調製されることがある。
【0029】
ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的な当該技術分野で知られている方法を使用して検出されることがある。そのような検出法には、特異的抗体、酵素産物の形成、又は酵素基質の消失の使用を含むことがある。
【0030】
本発明の方法において、真菌宿主細胞は、同一の産生条件下で培養したときに、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結された固有のシグナル・ペプチド配列を含む真菌細胞と比較して、特に、少なくとも約25%より多くの、より特に少なくとも約50%より多くの、より特に少なくとも約75%より多くの、より特に少なくとも約100%より多くの、よりいっそう特に約200%より多くの、最も特別には少なくとも約300%より多くの、より特に少なくとも約400%より多くの、より更に特別には少なくとも約500%より多くの、そして、さらに最も特に少なくとも約700%より多くのポリペプチドを産生することがある。
【0031】
得られた分泌ポリペプチドは、当該技術分野で知られている方法によって培地から直接回収することができる。例えば、ポリペプチドは、限定しないが、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、留去、又は沈殿を含めた従来の手順によって培養液から回収してもよい。
【0032】
ポリペプチドは、限定しないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング、及びサイズ排除)、電気泳動手順(例えば、調製用等電点フォーカシング)、示差溶解度(例えば、硫安沈殿)、SDS-PAGE、又は抽出を含めた当該技術分野で知られている様々な手順によって精製されることがある(例えば、Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)。
【0033】
シグナル・ペプチド
ポリペプチドのコード配列の5’末端は、ポリペプチドの成熟(又は、プロ型)をコードするヌクレオチド配列セグメントと天然に連結しているシグナル・ペプチドをコードする天然のヌクレオチド配列を含んでもよい。本発明のシグナル・ペプチドは、天然のシグナル・ペプチドを置き換えることがある。
【0034】
本発明の方法において、シグナル・ペプチド配列は、着目のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にとって外来のものであるが、シグナル・ペプチド配列又はヌクレオチド配列は、真菌宿主細胞にとって天然のものであってもよい。このような関係において、「外来のもの」という用語は、シグナル・ペプチドがポリペプチドにとって天然のものではない、すなわち、それはポリペプチドとは別の遺伝子を起源とすると理解されるものとする。
【0035】
1つの態様において、第1のヌクレオチド配列が、配列番号1の変異体であり、且つ、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側に、例えば、細胞の分泌経路内に、ポリペプチドを向かわせる能力を持つアミノ酸配列を持つ改良されたシグナル・ペプチド(以降、「相同シグナル・ペプチド」)をコードすることがある。配列番号1は、Kurjan及びHerskowitz(Cell vol. 30: 933-943, 1982)に記載の酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のα因子に関連している通常のシグナル・ペプチドを示す。具体的な観点において、本発明によるシグナル・ペプチド変異体は、配列番号1とアミノ酸が1つ異なるアミノ酸配列を持つことがある。特に、第1のヌクレオチド配列は、細胞膜の中に、又は、細胞膜の向こう側に、例えば、細胞の分泌経路内に、ポリペプチドを向かわせる能力を有する、そして、ここで、第9位のアラニン(A9A)が他のアミノ酸に置換された、配列番号1のアミノ酸配列、又はその断片を含んで成るシグナル・ペプチドをコードすることがある。より具体的な観点において、第9位におけるこの置換が、A9T、A9S、A9H、A9I、A9F、A9E、A9Gから成る群から選択される置換を含んで成る。これらの特定の置換は、少なくとも(分泌産物として計測される)因子2の発現における改良をもたらすだろう;場合によっては、因子8に至るまでの改良が観察される。改良のレベルは、第2のヌクレオチド配列によってコードされた着目のポリペプチドにより、そして、宿主細胞にもある程度、依存するだろう。
【0036】
これにより、特定の態様において、本発明は、以下の:(a)配列番号2と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであり、配列番号2の第9位に相当する位置のTが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号2のアミノ酸の中の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0037】
他の特定の態様において、本発明は、以下の:(a)配列番号3と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号3の第9位に相当する位置のSが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号3のアミノ酸の中の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0038】
他の特定の態様において、本発明は、以下の:(a)配列番号4と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号4の第9位に相当する位置のHが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号4のアミノ酸の中の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0039】
他の特定の態様において、本発明は、以下の:(a)配列番号5と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号5の第9位に相当する位置のIが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号5のアミノ酸の中の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0040】
他の特定の態様において、本発明は、以下の:(a)配列番号6と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号6の第9位に相当する位置のFが保存されている;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号6のアミノ酸の中の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0041】
他の特定の態様において、本発明は、以下の:(a)配列番号7と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号7の第9位に相当する位置のEが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号7のアミノ酸の中の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0042】
他の特定の態様において、本発明は、以下の:(a)配列番号8と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号8の第9位に相当する位置のGが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号8のアミノ酸の中の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0043】
具体的な観点において、本発明は、配列番号2、3、4、5、6、7、又は8の第1〜第19のアミノ酸に対して、少なくとも84%、好ましくは少なくとも85%に、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、いっそう好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも94%、最も好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも96%、最も好ましくは少なくとも97%、そして、さらに最も好ましくは少なくとも98%の同一度を有するアミノ酸配列を持ち、且つ、シグナル・ペプチドが細胞膜の中又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持するところの、配列番号2、3、4、5、6、7、又は8に関して先に指定される本発明の単離されたシグナル・ペプチドに関する。
【0044】
配列番号1の変異体は、また、当該文脈において、このアミノ酸配列のアミノ、及び/又はカルボキシ末端から削除された1つ以上のアミノ酸をもつポリペプチドを意味するところの、断片も含んで成る。特に、断片は、例えば、少なくとも12個のアミノ酸残基、少なくとも13個のアミノ酸残基、少なくとも14個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも16個のアミノ基、少なくとも17個のアミノ酸残基、又は少なくとも18個のアミノ酸残基といった、少なくとも10個のアミノ酸残基を含む。本発明による変異体は、また、1つ以上のアミノ酸の置換又は挿入でもあることがある。変更α因子シグナル・ペプチドが追加的な置換、挿入、又は欠失を含んで成るような場合には、これらの追加的な変更は、変更α因子シグナル・ペプチドが細胞膜の中又は細胞膜の向こう側に、例えば、細胞の分泌経路内に、ポリペプチドを向かわせる能力に影響しない。しかしながら、配列番号1の第9位、又は第9位に相当する位置での特異的変更は、常に存在しているべきである。変更シグナル・ペプチド内の実際の位置は、もちろん、野性型と比較した変更シグナル・ペプチドの長さに依存し、そして、野性型シグナルと変更シグナルのアラインすることによって見つけられるだろう。
【0045】
ポリペプチド
本発明の第2のヌクレオチド配列は、着目のポリペプチドをコードする。前述のポリペプチドは、それが産生される真菌宿主細胞にとって天然のものであるか、又は異種であってもよい。
【0046】
「ポリペプチド」という用語は、特定の長さのコードされた生成物を指すことを本明細書中では意味しておらず、よって、ぺプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質を包含する。タンパク質は、成熟型又はプロペプチドの形態であってもよい。「異種ポリペプチド」という用語は、真菌細胞にとって天然のものでないポリペプチド、変更が天然の配列を変更するためにおこなわれた天然のポリペプチド、又は組み換えDNA技術によってそのポリペプチドをコードする遺伝子の操作の結果として発現が量的に変更された天然のポリペプチドとして本明細書中に規定される。真菌細胞は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のコピーを含むことがある。
【0047】
具体的には、ポリペプチドは、ホルモン若しくはホルモン変異体、酵素、受容体若しくはその断片、抗体若しくはその断片、アレルゲン、又はレポーターであってもよい。具体的な観点において、ポリペプチドは、デルマトファゴイデス属の群を起源とするアレルゲンであってもよい。
【0048】
特に、デルマトファゴイデス属は、デルマトファゴイデス・プテロニッシナス(Dermatophagoides pteronyssinus)、デルマトファゴイデス・ファリナエ(Dermatophagoides farinae)、デルマトファゴイデス・シボネイ(Dermatophagoides siboney)、デルマトファゴイデス・ミクロセアウス(Dermatophagoides microceaus)、ブロミド・トロピカリス(Blomid tropicalis)、及びユーログリファス・マイネイ(Euroglyphus maynei)から成る群から選択されるか、又は後で変更される上述の生物体の中の1種類由来のアレルゲンである。より具体的に、前述のアレルゲンは、デルマトファゴイデス・プテロニッシナス由来のDer p1(配列番号9)又はDer p2(配列番号10)であってもよい。具体的には、ポリペプチドは、配列番号9の第19〜第320アミノ酸の配列であってもよい。より特定の態様において、ポリペプチドは、配列番号9の第19〜第320アミノ酸のポリペプチド配列の変異体であってもよい。より具体的に、前述の変異体は、S54X又はN52X(ここで、「X」は任意のアミノ酸も意味する。)であってもよく、上述のものはDer p1のN-グリコシル化部位を妨害するので、具体的には、上述の変異体はS54N又はN52Qであってもよい。
【0049】
他の特定の態様において、ポリペプチドは、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、又はリガーゼなどの酵素であってもよい。より具体的な観点において、ポリペプチドは、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、セロビオヒドラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリン・グリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エンドグルカナーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、又はβ-キシロシダーゼであってもよい。関連するセルラーゼの例には、限定しないが、ムコール・シシネリデス(Mucor cicinellides)由来のセルラーゼ、例えば、M.シシネリデスIFO4554、が含まれる。関連するタンパク分解性酵素の例には、限定しないが、システイン・プロテアーゼ、例えば、シロツメクサ(Trifolium repens L)由来のシステイン・プロテアーゼ5が含まれる。関連するフィターゼの例には、限定しないが、ペニオフォラ・リシイ(Peniophora lycii)由来のフィターゼ、例えば、P.リシイ CBS 686.96、が含まれる。
【0050】
本発明のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列はまた、どんな原核生物、真核生物、又は他の起源から得てもよい。本発明のために、所定の起源に関連して本明細書中で使用される用語「から得られた」は、そのポリペプチドが、起源によって、又は起源からの遺伝子が挿入された細胞によって産生されることを意味するべきである。
【0051】
着目のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を単離するか、又はクローンニングするのに使用される技術は、当該技術分野で知られていて、そして、ゲノムDNAからの分離、cDNAからの調製、又はその組み合わせを含んでいる。そのようなゲノムDNAからの第2のヌクレオチド配列のクローニングは、例えば、周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を使用することによって達成され得る。例えば、Innis et al., 1990, PCR Protocols: A Guide to Methods and Application, Academic Press, New Yorkを参照のこと。クローニング手順は、ヌクレオチド配列をコードするポリペプチドを含んで成る所望のヌクレオチド断片の切り出しと単離、ベクター分子内への上記断片の挿入、そして、上記ヌクレオチド配列の複数のコピー又はクローンが複製されるところの突然変異真菌細胞内への組み換えベクターの組み込みを伴うことがある。第2のヌクレオチド配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成起源のもの、又はそのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0052】
本発明の方法において、ポリペプチドは、また、他のポリペプチドが上記ポリペプチド又はその断片のN末端若しくはC末端に融合されている融合又はハイブリッド・ポリペプチドであってもよい。融合ポリペプチドは、本発明のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列(又はその断片)に、あるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(又はその断片)を融合することによって製造される。融合ポリペプチドを製造するための技術は、当該技術分野で知られていて、そして、ポリペプチドをコードするコード配列を、それらがフレーム内に存在するように、且つ、その融合ポリペプチドの発現が同じプロモーターとターミネーターの制御下にあるように、つなぎ合わせるステップが含まれる。ハイブリッド・ポリペプチドは、1種類以上が突然変異真菌細胞にとって異種であってもよい、少なくとも2種類の異なったポリペプチドから得られた部分的な若しくは完全なポリペプチド配列の組み合わせを含んで成ることがある。
【0053】
核酸コンストラクト
本発明は、また、本発明のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結された、本発明のシグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトにも関する。より具体的に、本発明は、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結された、シグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトに関し、ここで、上記第1のヌクレオチド配列が、第2のヌクレオチド配列にとって外来のものであり、且つ、第1のヌクレオチド配列の3’末端が、第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、そして、第1のヌクレオチド配列が、本発明によるシグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される。
【0054】
「核酸コンストラクト」は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又は天然に存在しない様式で組み合わせられ、及び並置された核酸のセグメントを含むように変更された一本鎖又は二本鎖のヌクレオチド分子と本明細書中に規定される。核酸コンストラクトがコード配列及びそのコード配列の発現に必要とされるすべての制御配列を含んでいるときに、核酸コンストラクトという用語は、発現カセットという用語と同義である。
【0055】
ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列は、そのポリペプチドの発現を提供するために様々な方法でさらに操作されることがある。ベクター内への挿入前のヌクレオチド配列の操作が、発現ベクターによっては望ましいか、又は必要であってもよい。組み換えDNA法を利用したヌクレオチド配列の変更のための技術は、当該技術分野で周知である。
【0056】
本発明の方法において、核酸コンストラクトは、1種類以上の天然の制御配列を含んで成ることがあるか、それとも、宿主細胞における、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列の発現を改良するために、核酸コンストラクトの第1、及び/又は第2のヌクレオチド配列にとって異質である1種類以上の制御配列で、1種類以上の天然の制御配列を置き換えることがある。
【0057】
「制御配列」という用語は、第2のヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドの発現に必要であるか、又は有利であるすべての成分を含むように本明細書中に規定される。それぞれの制御配列は、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列にとって固有であるか、又は外来のものであってもよい。そのような制御配列には、限定しないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、本発明のシグナル・ペプチド配列、及び転写ターミネーターが含まれる。最小限では、制御配列には、本発明のシグナル・ペプチド配列、転写及び翻訳停止シグナルが含まれる。制御配列は、その制御配列と、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列の連結を容易にする特異的な制限部位を導入するためにリンカーが備わっていることがある。
【0058】
制御配列は、ヌクレオチド配列の発現のために、宿主細胞によって認識される適切なプロモーター配列であってもよい。プロモーター配列は、ポリペプチドの発現を媒介する転写制御配列を含んでいる。プロモーターは、突然変異、切断、及びハイブリッド・プロモーターを含めた、選択された宿主細胞において転写活性を示す任意の配列であり、宿主細胞にとって相同、又は異種の細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られることがある。
【0059】
糸状菌宿主細胞における本発明の核酸コンストラクトの転写を指示するための好適なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・マイハイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性α-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー酸性安定性したα-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー若しくはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・マイハイ・リパーゼ、アスペルギルス・オリゼ・アルカリ性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリゼ・トリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(WO 96/00787)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・リーセイ・セロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーセイ・エンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーセイ・エンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーセイ・エンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーセイ・エンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーセイ・エンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーセイ・キシラナーゼI、トリコデルマ・リーセイ・キシラナーゼII、トリコデルマ・リーセイ・β-キシロシダーゼの遺伝子から得られたプロモーター、並びにNA2-tpiプロモーター(アスペルギルス・ニガー中性α-アミラーゼと、アスペルギルス・オリゼ・トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子からのプロモーターのハイブリッド);そして、その突然変異、切断、ハイブリッド・プロモーターである。
【0060】
酵母宿主において、有用なプロモーターには、限定しないが、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-1)、サッカロミセス・セレビシエ・ガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエ・アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロミセス・セレビシエ・トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロミセス・セレビシエ・メタロチオネイン(CUP1)、及びサッカロミセス・セレビシエ3-ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子から得られたものが含まれる。酵母宿主細胞のための他の有用なプロモーターは、Romanes et al., 1992, Yeast 8: 423-488によって記載されている。
【0061】
制御配列は、転写を終わらせるように宿主細胞によって認識される好適な転写終止配列であってもよい。終止配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端に作用可能に連結される。選択された宿主細胞において機能性である任意のターミネーターが、本発明に使用されることがある。
【0062】
糸状菌宿主細胞のための好適なターミネーターの例には、限定しないが、アスペルギルス・オリゼTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス・アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニガーα-グルコシダーゼ、及びフザリウム・オキシスポラム・トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られたものが含まれる。
【0063】
酵母宿主細胞のための好適なターミネーターの例には、限定しないが、サッカロミセス・セレビシエ・エノラーゼ、サッカロミセス・セレビシエ・シトクロムC(CYC1)、及びサッカロミセス・セレビシエ・グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得られるものが含まれる。酵母宿主細胞のための他の有用なターミネーターは、Romanes et al., 1992、前掲、によって説明されている。
【0064】
制御配列は、また、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端に作用可能に連結され、且つ、転写された場合に、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためのシグナルとして宿主細胞によって認識されるところの、ポリアデニル化配列であってもよい。選択された宿主細胞において機能性である任意のポリアデニル化配列が、本発明に使用されることがある。
【0065】
糸状菌宿主細胞のための好適なポリアデニル化配列の例には、限定しないが、アスペルギルス・オリゼTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス・アントラニル酸シンターゼ、フザリウム・オキシスポラム・トリプシン様プロテアーゼ、及びアスペルギルス・ニガーα-グルコシダーゼの遺伝子から得られるものが含まれる。
【0066】
酵母宿主細胞のための有用なポリアデニル化配列には、限定しないが、Guo and Sherman, 1995, Molecular Cellular Biology 15:5983-5990によって説明されているものが含まれる。
【0067】
制御配列は、また、ポリペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチド・コード領域でもあることがある。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(あるいは、時には、ザイモゲン)として知られている。プロポリペプチドは、通例、不活性であり、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒又は自己触媒による開裂によって成熟活性ポリペプチドに変換され得る。プロペプチド・コード領域の例には、限定しないが、デルマトファゴイデス・プテロニッシナスDer p1遺伝子、又はデルマトファゴイデスから得られる他の遺伝子、フザリウム・オキシスポラム・トリプシン、サッカロミセス・セレビシエα因子、リゾムコール・マイハイ・アスパラギン酸プロテイナーゼ、及びミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)ラッカーゼ(WO 95/33836)から得られたものが含まれる。
【0068】
シグナル・ペプチドとプロペプチド領域の両方がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合には、プロペプチド領域が、ポリペプチドのアミノ末端の次に置かれ、そして、シグナル・ペプチド領域が、プロペプチド領域のアミノ末端の次に置かれる。プロペプチドが存在する場合、1つの態様において、開裂可能部位はプロペプチドと成熟ポリペプチドの間に存在することがある。「開裂可能部位」という用語は、この部位でポリペプチドを開裂することができるタンパク質分解酵素によって認識されるアミノ酸配列と理解すべきである。そのような部位の例には、kex部位、特にkex-II部位が含まれる。
【0069】
宿主細胞の成長に関するポリペプチドの発現の調整を可能にする調節配列を加えることもまた、望ましいことがある。制御系の例には、調節化合物の存在を含めた化学的又は物理的刺激に応答して遺伝子の発現を作動させたり停止させたりする系が含まれる。酵母では、ADH2系又はGAL1系が使用されることがある。糸状菌では、TAKAα-アミラーゼ・プロモーター、アスペルギルス・ニガー・グルコアミラーゼ・プロモーター、及びアスペルギルス・オリゼ・グルコアミラーゼ・プロモーターが、調節配列として使用されることがある。調節配列の他の例は、遺伝子の増幅を可能にするものである。真核細胞系では、これらには、メトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び重金属により増幅されるメタロチオネイン遺伝子が含まれる。これらの場合では、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節配列と作用可能に連結されるだろう。
【0070】
発現ベクター
本発明は、また、本発明の核酸コンストラクトを含んで成る組み換え発現ベクターに関する。本発明のシグナル・ペプチド及びポリペプチドのそれぞれをコードする第1及び第2のヌクレオチド配列を含んで成ることに加えて、前述の発現ベクターは、特に、転写及び翻訳停止シグナルをさらに含んで成ることがある。先に記載の様々なヌクレオチド及び制御配列は、そのような部位でのプロモーター、及び/又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の挿入又は置換を可能にする1つ以上の好都合な制限部位を含むことがある組み換え発現ベクターを作り出すために一緒につなぎ合わせられることがある。あるいは、核酸コンストラクトは、第2のヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドの発現に適切なベクター内に挿入されることがある。発現ベクターを作成する際に、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列は、上述の配列が本発明のシグナル・ペプチド配列、及び発現のための1つ以上の好適な制御配列に作用可能に連結されるように、ベクター内に配置される。
【0071】
組み換え発現ベクターは、組み換えDNA手順に都合よく付することができ、且つ、ヌクレオチド配列の発現を引き起こすことができる、任意の(例えば、プラスミド又はウイルス)ベクターであってもよい。ベクターの選択は、通常、ベクターが導入される宿主細胞とベクターの適合性に依存するだろう。ベクターは、線状であるか、又は閉環状プラスミドであってもよい。
【0072】
本発明のベクターは、形質転換細胞の簡単な選択を可能にする1種類以上の選択マーカーを特に含むことがある。選択マーカーは、その産物が殺虫剤又はウイルス抵抗性、重金属への耐性、栄養要求変異株に対する原栄養性等を提供する遺伝子である。酵母宿主細胞のための好適なマーカーには、限定しないが、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3が含まれる。糸状菌宿主細胞における使用のための選択マーカーには、限定しないが、amdS(アセトアミダーゼ)、argS(オルニチン・カルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(フォスフィノスリシン・アセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ハイグロマイシン・ホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン-5′-ホスフェート・デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、trpC(アントラニル酸シンターゼ)、並びにその同等物が含まれる。特に、アスペルギルス細胞に関して、アスペルギルス・ニデュランス若しくはアスペルギルス・オリゼのamdS及びpyrG遺伝子、又はストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子が使用される。
【0073】
ベクターは、自律増殖ベクター、すなわち、染色体外物質として存在するベクターであり、その複製は染色体の複製から独立している、例えば、プラスミド、染色体外因子、ミニクロモソーム、又は人工染色体であってもよい。ベクターは、自己複製を確保するいずれかの手段を含むことがある。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入すると、ゲノム内に組み込まれ、そして、それが組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。さらに、宿主細胞のゲノム内に導入されるべき全DNAを一緒に含む単一のベクター、プラスミド、二つ以上のベクター、又はプラスミド、あるいは、トランスポゾンが使用されることがある。
【0074】
本発明のベクターは、宿主細胞のゲノム内へのベクターの安定した組み込み、又はゲノムとは無関係な細胞におけるベクターの自律増殖を可能にする(単一若しくは複数の)要素を特に含むことがある。
【0075】
宿主細胞ゲノム内への組み込みのために、ベクターは、ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列、あるいは、相同又は非相同組み換えによるゲノム内へのベクターの安定した組み込みのためのベクター内のいずれか他の要素を頼ることがある。あるいは、ベクターは、宿主細胞のゲノム内への相同組み換えによる組み込みを指示するための追加的なヌクレオチド配列を含むことがある。追加的なヌクレオチド配列は、ベクターが染色体内の正確な位置において宿主細胞ゲノムに組み込まれることを可能にすることがある。正確な位置における組み込みの可能性を高めるために、組み込み要素は、特に、例えば、100〜1,500塩基対、好ましくは400〜1,500塩基対、そして、最も好ましくは800〜1,500塩基対といった十分な数のヌクレオチドを含むべきであり、これは、対応する標的配列と高度に相同であって、相同組み換えの確率を高める。組み込み要素は、宿主細胞のゲノム内の標的配列と相同であるいずれかの配列であってもよい。さらに、組み込み要素は、非コード又はコード・ヌクレオチド配列であってもよい。その一方、ベクターは、非相同組み換えによって宿主細胞のゲノム内に組み込まれることがある。
【0076】
自動複製のために、ベクターは、ベクターが問題の宿主細胞内で自律的に複製されることを可能にする複製開始点をさらに含んで成ることがある。複製開始点は、細胞内で機能する自動複製を媒介するいずれかのプラスミド・レプリケーターであってもよい。「複製開始点」又は「プラスミド・レプリケーター」という用語は、プラスミド又はベクターが生体内で複製されることを可能にするヌクレオチド配列として本明細書中で規定される。
【0077】
酵母宿主細胞における使用のための複製開始点の例は、2ミクロンの複製開始点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3の組み合わせ、及びARS4とCEN6の組み合わせである。複製開始点は、宿主細胞においてその能力が温度感受性で働くようにする突然変異を持つものであってもよい(例えば、Ehrlich, 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75: 1433を参照のこと)。
【0078】
糸状菌宿主細胞において有用な複製開始点の例は、AMA1とANS1である(Gems et al., 1991, Gene 98:61-67;Cullen et al., 1987, Nucleic Acids Research 15: 9163-9175;WO 00/24883)。AMA1遺伝子の単離、及びその遺伝子を含んで成るプラスミド又はベクターの構築は、WO 00/24883に開示されている方法に従って達成することができる。
【0079】
ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の2コピー以上が、遺伝子産物の産生を増強するために宿主細胞内に挿入されることがある。ヌクレオチド配列のコピー数の増加は、宿主細胞ゲノム内に追加的な少なくとも1コピーの配列を組み込むことによって得られるか、あるいは、ヌクレオチド配列を伴う増幅可能な選択マーカーの遺伝子を含むことによって、選択可能なマーカー遺伝子の増幅されたコピーを含む、従って、ヌクレオチド配列の追加的なコピーを含む細胞が、適切な選択可能な作用物質の存在下でその細胞を培養することによって選択される場合に、得られる。
【0080】
本発明の組み換え発現ベクターを構築するために先に記載した要素を連結するために使用される手順は、当業者にとって周知である(例えば、Sambrook et al., 1989、前掲、を参照のこと)。
【0081】
宿主細胞
本発明は、ポリペプチドを真菌宿主細胞において製造する方法、及び本発明の核酸コンストラクトを含んで成る組み換え宿主細胞に関する。
【0082】
ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結された本発明のシグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成るベクターが、先に記載したように、上記ベクターが染色体の要素として、又は自己複製する染色体外ベクターとして維持されるように、真菌宿主細胞に導入される。「宿主細胞」という用語は、複製中に起こる突然変異のために親細胞と同一ではない親細胞の任意の子孫も網羅する。宿主細胞の選択は、大体において、ポリペプチドをコードする遺伝子、及びその起源によるだろう。
【0083】
宿主細胞は、本発明の方法において有用ないずれかの真菌細胞であってもよい。本明細書で使用する場合、「菌類」には、(Hawksworth et al., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKによって規定されるように)子嚢菌門、担子菌門、ツボカビ菌門、及び接合菌、並びに(Hawksworth et al., 1995、前掲、171ページに引用されている)卵菌門、及びすべての栄養胞子真菌(Hawksworth et al., 1995、前掲)が含まれる。
【0084】
具体的な観点において、真菌宿主細胞は酵母細胞である。本明細書で使用する場合、「酵母」には、有嚢胞子酵母(エンドミセタレス)、担子胞子酵母、及び不完全菌類に属する酵母(ブラストミセテス)が含まれる。酵母の分類法は今後変わることがあるので、本願発明の目的のために、酵母は、Biology and Activities of Yeastにおいて規定されるものとする(Skinner, FA, Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds, Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No. 9, 1980)。
【0085】
より具体的な観点において、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、サッカロミセス、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、又はヤロウィア(Yarrowia)細胞である。
【0086】
最も具体的な観点において、酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カリスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ、例えば、S.セレビシエYNG318、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシイ(Saccharomyces dougfasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、又はヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。
【0087】
他の具体的な観点において、真菌宿主細胞は糸状菌細胞である。「糸状菌」には、(Hawksworth et al., 1995、前掲、に規定されるように)亜門の真菌門と卵菌門のすべての糸状体が含まれる。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖体で構成された菌糸体壁を特徴とする。栄養成長は菌糸の伸長により、そして、炭素異化は無条件的に好気性である。対照的に、例えば、サッカロミセス・セレビシエなどの酵母による栄養成長は単細胞性葉状体の発芽により、そして、炭素異化は発酵性であってもよい。
【0088】
より具体的な観点において、糸状菌宿主細胞は、限定しないが、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス、フザリウム、フミコラ(Humicola)、ムコール、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、又はトリコデルマ(Trichoderma)の種の細胞である。
【0089】
よりいっそう具体的な観点において、糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・フェチヅス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス、アスペルギルス・ニガー又はアスペルギルス・オリゼ細胞である。
他のよりいっそう具体的な観点において、糸状菌宿主細胞は、フザリウム・バクトリディオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポラム、フザリウム・レチクラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロセウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サムブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテキオイデス(Fusarium trichothecioides)、又はフザリウム・ベネナツム細胞である。他のよりいっそう具体的な観点において、糸状菌宿主細胞は、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・マイハイ、ミセリオフトラ・サーモフィラ、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・パープロゲナム(Penicillium purpurogenum)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma iongibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である。
【0090】
最も具体的な観点において、フザリウム・ベネナツム細胞は、元々、フザリウム・グラミネアラムATCC 20334として寄託され、そして、最近、Yoder and Christianson, 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 62-80及びO'Donnell et al., 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 57-67によってフザリウム・ベネナツムとして再分類されたフザリウム・ベネナツム A3/5;並びにそれらが現在知られているところの種名に関係なくフザリウム・ベネナツムの分類学上の同等物である。他の特定側面において、フザリウム・ベネナツム細胞は、WO 97/26330で開示されているように、フザリウム・ベネナツム A3/5又はフザリウム・ベネナツムATCC 20334の形態学的突然変異株である。
【0091】
他の最も具体的な観点において、トリコデルマ細胞は、トリコデルマ・リーセイ ATCC 56765、トリコデルマ・リーセイ ATCC 13631、トリコデルマ・リーセイCBS 526.94、トリコデルマ・リーセイCBS 529.94、トリコデルマ・ロンギブラキアツムCBS 528.94、トリコデルマ・ロンギブラキアツム ATCC 2106、トリコデルマ・ロンギブラキアツムCBS 592.94、トリコデルマ・ビリデ NRRL 3652、トリコデルマ・ビリデCBS 517.94、又はトリコデルマ・ビリデ NIBH FERM/BP447である。
【0092】
真菌細胞は、プロトプラスト形成を伴う過程、プロトプラストの形質転換、及び自体公知の様式による細胞壁の再生によって形質転換されることがある。アスペルギルス宿主細胞の変換のための好適な手順は、EP 238 023、及びYelton et al., 1984, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81: 1470-1474に記載されている。トリコデルマ・リーセイ宿主細胞の変換のための好適な手順は、Penttila et al., 1987, Gene 61: 155-164及びGruber et al., 1990, Curr Genet. 18(1): 71-6に記載されている。フザリウム種を形質転換するための好適な方法は、Malardier et al., 1989, Gene 78: 147-156、及びWO 96/00787によって記載されている。酵母は、Becker and Guarente, In Abelson, J.N. and Simon, M.I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York;Ito et al., 1983, Journal of Bacteriology 153: 163;及びHinnen et al., 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1920によって記載された手順を用いて形質転換されることがある。
【0093】
材料と方法
菌株とプラスミド
菌株
E.コリ(E. coli)DH12S(Gibco BRLから入手可能)を、酵母プラスミドレスキュー法に使用する。
【0094】
サッカロミセス・セレビシエ YNG318:MATa Dpep4[cir+]ura3-52、leu2-D2、his4-539は、J. Biol. Chem. 272 (15), 9720-9727, 1997中に記載されている。
【0095】
プラスミド
すべての酵母発現ベクターが、WO 00/10038に記載のpJC039から構築したTPIプロモーターの制御下にあるS.セレビシエ及びE.コリ・シャトルベクターである。
【0096】
遺伝子
デルマトファゴイデス・プテロニッシナス由来のDer p1:NCBI受入番号:P08176、アミノ酸配列を配列番号9に示す。
【0097】
デルマトファゴイデス・プテロニッシナス由来のDer p2:NCBI受入番号:P49278、アミノ酸配列を配列番号10に示す。
【0098】
培地と基質
RS-25:40g/Lの大豆粉末、40g/Lのグルコース、10g/LのKH2PO4、0.25g/LのMgSO4、0.01g/LのFeSO4、2.5g/LのNH4NO3;pH6
YPD:20g/Lのグルコース、20g/Lのペプトン、及び10g/Lの酵母抽出物
10×基本溶液:66.8g/lの酵母窒素塩基W/Oアミノ酸(DIFCO)、100g/lのスクシナート、及び60g/lのNaOH。
【0099】
SC-グルコース(又はSC-培地):100ml/lの20%のグルコース(すなわち、2%の終濃度=2g/100ml)、4ml/lの5%のトレオニン、10ml/lの1%のトリプトファン、25ml/lの20%カザミノ酸、及び100ml/lの10×基本溶液。この溶液を、0.20μmの孔サイズのフイルターを使用して滅菌処理した。寒天及びH2O(約761ml)を一緒にオートクレーブ処理し、そして、別々に滅菌したSC-グルコース溶液をその寒天液に加える。
【0100】
PEG/LiAc溶液: 50mlの40% PEG4000(オートクレーブによって滅菌した)及び1mlの5M 酢酸リチウム(オートクレーブによって滅菌した)。
【0101】
方法
酵母の形質転換
この方法を、実施例1と2で使用した。
【0102】
酵母を形質転換するために、ベクター配列とPCR断片の両方に同じフランキング領域がある場合には、酵母が生体内においてベクター配列とPCR断片を再結合して、発現ベクターを作成することが可能である生体内組み換え機構を利用した。
【0103】
DNA混合物を、0.5μLの(EcoRI-NotI消化した)ベクターと1μLのPCR断片を混合することによって調製した。S.セレビシエYNG318コンピテント細胞を、氷上で解凍した。100μLの細胞を、12mlのポリプロピレン・チューブ(Falcon 2059)内、DNA混合物及び10μLの担体DNA(Clontech)と混合した。これに0.6mlのPEG/LiAc溶液を加え、そして、緩やかに混合し、次に30℃、200rpmにて30分間インキューベートした。その後、それを42℃(ヒートショック)にて30分間インキューベートした後に、それをエッペンドルフチューブに移し、そして、5秒間遠心分離処理した。上清を取り除き、3mlのYPD中に溶解した。次に、その細胞懸濁液を、30℃、200rpmにて45分間インキューベートした後、それをSC-グルコース・プレート上に注ぎ入れた。
【0104】
PCR反応
別段の指示のない限り、以下の条件下でPCR反応を実施した:
PCR反応は、38.9μLのH2O、5μLの10×反応バッファー、1μLのKlen Taq LA(Clontech)、4μLの10mM dNTPs、0.3μL×2の100pmol/μLプライマー、及び0.5μL 鋳型DNAを含み、そして、以下の条件下で実施した:98℃にて10秒間、そして、68℃にて90秒間、そして、最後に68℃にて10分間を30サイクル。
【0105】
サンドイッチELISA法
イムノプレート(Nunc Maxisorb;Nunc-Nalgene)を、それぞれ、Der p1又はDer p2測定のために、好適な用量のポリクローナル・ウサギ抗Der p1又はDer p2免疫グロブリン(immunoglobin)で4℃にて一晩コートした。次に、そのプレートを、0.05%のTween20(PBST)を含む0.15Mのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で徹底的に洗浄し、そして、残っている結合部位を、2%の脱脂乳を含むPBSで室温にて1時間ブロッキングした。精製することもできるサンプル、準精製した組み換えダニ・ポリペプチド・アレルゲン、又は着目のタンパク質を含む未精製の培養培地を、好適な用量又は用量域で加えた。次に、そのプレートを、0.15MのPBSTで徹底的に洗浄した後に、アレルゲンを、それぞれ、ビオチン化抗Der p1又はDer p2抗体と一緒に室温にて1時間インキュベーションすることによって検出した。次に、プレートを、0.15MのPBSTで再び洗浄した後、室温にて1時間、ストレプトアビジン:ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Kierkegaard & Perry)の複合体と結合させた。洗浄ステップを繰り返し、次に、プレートに3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン過酸化水素(TMB Plus, Kem-En-Tec)を加えることによって現像した後に、0.2MのH2SO4の付加によって反応を止めた。450nmの吸光度(OD)が免疫グロブリン(immunoglobin)へのアレルゲンの結合を反映するので、検出し、そして、また、既知濃度の用量範囲でELISAに含まれる天然のDer p1又はDer p2(InDoor biotechnologiesから入手可能である)に関して得られたデータと比較することによってアレルゲン結合の量を測定することも可能であった。
【0106】
他の方法
酵母プラスミドをレスキューするためのE.コリの形質転換を、エレクトロポレーション(BIO-RAD Gene Pulser)によって実施した。
【0107】
DNAプラスミドを、Qiagen(登録商標)Plasmid Kitを用いて調製した。DNA断片を、Qiagenゲル抽出キットによってアガロースゲルから回収した。
【0108】
PCR法を、PTC-200 DNA Engineによって実施した。
【0109】
ABI PRISMTM 310 Genetic Analyzerを、すべてのDNA配列の決定に使用した。酵母の全DNAを、Nucleic acids research vol.20, No. 14 (1992) 3790に記載のRobzyk及びKassirの方法によって抽出した。
【実施例1】
【0110】
S.セレビシエにおけるDer p1の発現
本発明の改良されたα因子シグナルを使用した着目のポリペプチドの発現レベルを、例えば、Der p1の発現レベルによって例証することができる。酵母におけるポリペプチドの発現に好適な任意の発現ベクターを使用できる。以下の記載に、酵母pYES2ベクターを基本とした適切な発現コンストラクトの例を記載する。S.セレビシエのゲノムDNAから、TPIプロモーターをPWO-ポリメラーゼを使用した標準的なPCR反応によって増幅する。
【0111】
プライマー:
順方向プライマー:5’ TACTG ACACC GGTGC ATGCC TGCAG GTCGA CTCTA G 3’(配列番号11)
逆方向プライマー:5’ TAAGT AAAGC TTTCT TTTAA TCGTT TATAT TGTGT ATG 3’(配列番号12)
【0112】
増幅産物を、Qiaquick Spin Columnで精製する。精製した産物とベクターpYes2を、Nebuffer2(New England Biolabs)中、HinDIII/AgeIで消化する。この消化は、ベクターからGal1-プロモーターを取り外す。ベクターと挿入断片を、QIAquick法(Qiagen)を使用して1.5%の調製用アガロースゲルから精製する。ベクターと挿入物を、T4-DNAligaseによって繋ぎ合わせ、CaCl2コンピテントDH10B細胞内に形質転換し、アンピシリン(100μg/ml)を含むLBプレートに蒔く。クローニングをDNA配列決定によって確認し、そして、pYES-TPIと命名する。
【0113】
アミノ酸配列MRFPSIFTAVLFAASSALAをもつαシグナルの導入のため、及びDer p1の増幅のためのオリゴ(Oligos)を設計する:順方向DNAオリゴは、プラスミドのHinDIII部位(1〜42)、及びαシグナルをコードする配列を含む部分(43〜99)、及びプロペプチドのN末端をコードするDer p1遺伝子に対する重複配列を含む部分(100〜132)から成る5’末端配列重複からpYES-TPI配列上流までをもつ:
【0114】
5’ GAGTG TTGTT CATAC ACAAT ATAAA CGATT AAAAG AAAGC TTATG AGATT TCCTT CTATT TTTAC TGCTG TTTTA TTCGC TGCTT CCTCC GCTTT AGCTC GCCCG AGCAG CATTA AAACC TTCGA AGAAT AT 3’(配列番号13)
【0115】
逆方向オリゴは、プラスミドのHinDIII部位(1〜40)及びDer p1遺伝子の端部をコードするC末端までの部分(41〜68)から成る5’末端配列の重複からpYES-TPI下流までをもつ:
5’ ACTAA TTACA TGATG CGGCC CTCTA GATCT CGACT CATTA CAGGA TAACA ACGTA CGGGT ATTCT TCG 3’(配列番号14)
【0116】
αシグナル-proDer p1遺伝子を、標準的な反応によってPCR増幅し、そして、DNA精製する。
【0117】
pYES-TPI発現ベクターを、HinDIII(New England Biolabs)で消化し、そして、線状化ベクターを精製し、そして、αシグナル-proDer p1増幅遺伝子と一緒にS.セレビシエの形質転換に使用する(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989)。ベクター断片と増幅遺伝子は、ギャップ修復によって酵母細胞内で再結合した(Orr-Weaver and Szostak, PNAS, 1983, vol. 80, p. 4417-4421)。形質転換の後に、形質転換体を、2%のグルコースを含むSC寒天上に蒔く。30℃にて3〜4日間のインキュベーションの後に、コロニーを、プラスミドレスキューとαシグナル-pro Der p1遺伝子のDNA配列決定のために、SC培地(2%のグルコース)中で培養する。
【0118】
Metから、第9位においてAlaをコードする67〜69位が、Thr又は他の関連置換のいずれかをコードするコドン使用頻度を変える順方向プライマーを除いて、αシグナル変異体を、同じやり方で構築する。
【0119】
他の発現コンストラクトもまた、適用されることがある。一組のデータにおいて、酵母発現ベクターpYES2.0に由来するpSteD212ベクターを使用した(Invitrogen, UK及びKofod et al. 1994 J. Biol. Chem. 269: 29182-29189)。このプラスミドを、E.コリとS.セレビシエにおいて複製させた。S.セレビシエにおいて、Der p1を、このプラスミドから発現させた。
【0120】
pSteD212は、最少培地による選択を可能にするオロチジン5’-デカルボキシラーゼをコードする、ウラシルの新生経路の遺伝子である、URA3を含むエピソマー発現ベクターである。前記ベクターは、酵母とE.コリの両方におけるプラスミドの多コピーを確保するDNA複製開始点である、2my開始点をさらに含む。TPI(トリオースリン酸イソメラーゼ)プロモーターは、プロモーターの川下に位置する多重クローニング部位(mcs)内にクローンニングされ得る着目の遺伝子の構成的発現を確保する。酵母の転写ターミネーターは、mcsの下流に存在する。アンピシリン耐性の遺伝子もまた、pSteD212上で運ばれ、それはE.コリの選択に使用される。これにより、pSteD212ベクターは、機能的及び構造的にpYES2と非常に似ている。
【0121】
遺伝子発現ベクターに関して先に記載した要素に対するより詳細な説明は、Romanes et al., 1992, Yeast, 8, 423-488及びSambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989)の中に見ることができる。
【0122】
組み換えDer p1は、Der p1プロペプチドによって発現され、成熟配列内の唯一のN-グリコシル化モチーフを妨害する突然変異S54Nを持っていた。
【0123】
Der p1を発現する酵母の形質転換体のスクリーニングにおいて、30℃にて3日間のコロニー形成のために、形質転換溶液をSC-寒天プレート上に蒔いた。コロニーを、それぞれのチューブが10mlのSC培地を含む50ml容の無菌プラスチック・チューブ内に植え付けた。前記チューブを、100mlのSC培地を含む500ml容のバッフ付き三角フラスコ内、30℃、250rpmにて4日間発酵させた。これらの発酵からの培養培地を、サンドイッチELISA実験に使用して、発現タンパク質の濃度を測定した。
【0124】
野性型αシグナル又はA9Tαシグナルによって発現したDer p1 S54Nの発現レベルを、方法の項に記載されているように、サンドイッチELISA法で測定した。A9Tαシグナルを用いたDer p1 S54Nの発現は、野性型αシグナルを用いた同じタンパク質の発現と比較して、約5倍増強された。
【実施例2】
【0125】
S.セレビシエにおけるDer p2の発現
他の説明に役立つ本発明による実施例として、本発明によるシグナル・ペプチドの異なった変異体を使用したDer p2の発現を記載する。
【0126】
以下の記載では、酵母pYES2ベクター・ベースのコンストラクトの適切な発現に関する実施例を記載している。
【0127】
遺伝子をコードするデルマトファゴイデス・プテロニッシナス由来のDer p2(それのアミノ酸配列を配列番号10に示す)を、実施例1に記載の酵母発現ベクターpYES2(Invitrogen)に由来するベクターpYES-TPI内に配置する。
【0128】
このプラスミドを、E.コリとS.セレビシエで複製させる。S.セレビシエにおいて、Der p2をこのプラスミドから発現させることができる。
【0129】
一組の実験データを、発現ベクターとしてpSteD212を使用して得た。
【0130】
酵母における分泌に関して、異なるαシグナル・ペプチド変異体を、Der p2遺伝子をコードするものの上流にそれらを導入することによってそれらの発現効率について試験した。一方のαシグナルが、アミノ酸配列MRFPSIFTAVLFAASSALAをもつ野性型シグナルであり、そして、もう一方のシグナルは、A9位のアミノ酸の変更を除いて同じであった。Der p2配列に重複を有するプライマーを用いたことを除いて、実施例1に記載の標準的なのオリゴとPCR技術によって、第9位のアラニンを、S、H、I、F、E、G、又はTに置換した。異なったシグナル・ペプチドを有する発現コンストラクトを、同様に先に記載のDNA断片のクローニングによって作製した。そのコンストラクトを、S.セレビシエ内に形質転換した。Der p2を発現する酵母の形質転換体のスクリーニングのために、形質転換溶液を、30℃にて3日間のコロニー形成のために、SC-寒天プレート上に蒔いた。コロニーを、それぞれのチューブが10mlのSC培地を含む50ml容の無菌プラスチック・チューブ内に植え付けた。前記チューブを、100mlのSC培地を含む500ml容のバッフ付き三角フラスコ内、30℃、250rpmにて4日間発酵させた。先に記載したように、これらの発酵からの培養培地を、サンドイッチELISA実験に使用して、発現タンパク質の濃度を測定した。
【0131】
異なったαシグナル突然変異によるDer p2の発現レベルを、サンドイッチELISA法によって測定し、そして、野性型αシグナル(A9A)を用いたDer p2発現と比較した。野性型αシグナルと比較した改良された発現の倍数を、以下の表の中に示す。
【0132】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分泌ポリペプチドを増産する方法であって:
(a)上記ポリペプチドの産生を促す培地中で真菌宿主細胞を培養すること、ここで、上記宿主細胞は、上記ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結された、シグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトを含んで成り、上記第1のヌクレオチド配列は、上記第2のヌクレオチド配列にとって外来のものであり、上記第1のヌクレオチド配列の3’末端が上記第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、且つ、上記第1のヌクレオチド配列は、第9位のアラニンの少なくとも1の置換を有するα因子シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される;そして
(b)培養培地から上記分泌ポリペプチドを単離すること、
を含んで成る前記方法。
【請求項2】
前記第1のヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列(A9Xaa)の少なくとも1つの変更が、A9T、A9S、A9H、A9I、A9F、A9E、及びA9Gから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞膜の中、又は、細胞膜の向こう側に、例えば、細胞の分泌経路内に前記ポリペプチドを向かわせる、前記変更されたα因子シグナル・ペプチドの能力に影響しない追加的な置換又は欠失を当該変更されたα因子シグナル・ペプチドが含んで成る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のヌクレオチド配列が、真菌宿主細胞にとって天然のポリペプチドをコードする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のヌクレオチド配列が、真菌宿主細胞にとって異種のポリペプチドをコードする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記真菌宿主細胞が、2コピー以上の第1及び第2のヌクレオチド配列を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のヌクレオチド配列が、ホルモン又はホルモン変異体、酵素、受容体又はその断片、抗体又はそのフラグメント、アレルゲン、あるいは、レポーターをコードする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素が、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、又はリガーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリン、グリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エンドグルカナーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、又はβ-キシロシダーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のヌクレオチド配列が、デルマトファゴイデス属の種(Dermatophagoides sp.)の群由来のアレルゲンをコードする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記デルマトファゴイデス属の種(Dermatophagoides sp.)が、デルマトファゴイデス・プテロニッシナス(Dermatophagoides pteronyssinus)、デルマトファゴイデス・ファリナ(Dermatophagoides farinae)、デルマトファゴイデス・シボネイ(Dermatophagoides siboney)、デルマトファゴイデス・ミクロセアウス(Dermatophagoides microceaus)から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アレルゲンが、デルマトファゴイデス・プテロニッシナス由来のDer p1若しくはDer p2、又はその変異体から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記真菌宿主細胞が、糸状菌宿主細胞である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記糸状菌宿主細胞が、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、フザリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、又はトリコデルマ(Trichoderma)から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アスペルギルス宿主細胞が、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フェチヅス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、又はアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)から成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記真菌宿主細胞が酵母細胞である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記酵母細胞が、サッカロミセス(Saccharomyces)細胞又はピキア(Pichia)細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記酵母細胞が、S.セレビシエ(S. cerevisiae)細胞又はP.パストリス(P. pastoris)細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
以下の:(a)配列番号2と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号2の第9位に相当する位置のTが保存されている;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号2のアミノ酸の中の1個又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチド。
【請求項20】
以下の:(a)配列番号3と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号3の第9位に相当する位置のSが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号3のアミノ酸の中の1個又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチド。
【請求項21】
以下の:(a)配列番号4と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号4の第9位に相当する位置のHが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号4のアミノ酸の中の1個又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチド。
【請求項22】
以下の:(a)配列番号5と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号5の第9位に相当する位置のIが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号5のアミノ酸の中の1個又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチド。
【請求項23】
以下の:(a)配列番号6と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号6の第9位に相当する位置のFが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号6のアミノ酸の中の1個又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチド。
【請求項24】
以下の:(a)配列番号8と少なくとも84%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも94%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドであって、配列番号8の第9位に相当する位置のGが保存されているポリペプチド;及び(b)第9位と異なる位置における配列番号8のアミノ酸の中の1個又は数個のアミノ酸の保存的置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成り、細胞膜の中に又は細胞膜の向こう側にポリペプチドを向かわせる能力を維持する変異体、から成る群から選択される単離されたシグナル・ペプチド。
【請求項25】
ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結された、シグナル・ペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含んで成る核酸コンストラクトであって、ここで、上記第1のヌクレオチド配列が、上記第2のヌクレオチド配列にとって外来のものであり、且つ、上記第1のヌクレオチド配列の3’末端が、第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、且つ、上記第1のヌクレオチド配列が、請求項19〜24のいずれか1項に記載のシグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される、核酸コンストラクト。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸コンストラクトを含んで成る組み換え発現ベクター。
【請求項27】
請求項25に記載の核酸コンストラクト、又は請求項26に記載の発現ベクターを含んで成る組み換え宿主細胞。
【請求項28】
ポリペプチドを製造するための改良されたシグナル・ペプチドの使用であって、ここで、上記シグナル・ペプチドが第1のヌクレオチド配列によってコードされ、そして上記ポリペプチドが、上記第1のヌクレオチド配列にとって外来のものである第2のヌクレオチド配列によってコードされ、且つ、上記第1のヌクレオチド配列の3’末端が、上記第2のヌクレオチド配列の上流に存在し、そして、ここで、上記第1のヌクレオチド配列が、第9位のアラニンの少なくとも1の置換を有するα因子シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る群から選択される、使用。

【公表番号】特表2010−507381(P2010−507381A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533810(P2009−533810)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061344
【国際公開番号】WO2008/049837
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】