説明

ポリマー、並びに、それを用いた光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】透明性、耐熱性および力学特性に優れ、光学部品用途に適したポリマー、および、該ポリマーを用いた光学フィルム、並びに、該光学フィルムを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの置換また無置換のアリル基を有し、2つの環がスピロ結合した環,単環または多環を有する特定の式で表わされるジアリルフェノールをジオール成分として用いてエステル結合およびウレタン結合のいずれかを少なくとも有するポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、光学特性、および力学特性に優れた新規なポリマー、および、前記ポリマーを用いて形成された光学フィルムに関するものであり、更には、前記光学フィルムを用いた表示品位に優れた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子、有機EL素子等のフラットパネルディスプレイ分野において、耐破損性の向上、軽量化、薄型化の要望から、基板をガラスからプラスチックに置き換えることが検討されている。特に、携帯電話や、電子手帳、ラップトップ型パソコンなど携帯情報端末などの移動型情報通信機器用表示装置の分野では、プラスチック基板に対する強い要望がある。
このプラスチック基板には導電性を必要とするため、プラスチックフィルム上に、酸化インジウム、酸化錫、或いは錫−インジウム合金の酸化物等の半導体膜、金、銀、パラジウム合金の酸化膜等の金属膜、該半導体膜と該金属膜とを組み合わせて形成された膜を透明導電層として設けた透明導電性基板を表示素子の電極基板として用いることが検討されている。
この目的に使用されるプラスチックとしては、耐熱性の非晶ポリマー、例えば変性ポリカーボネート(変性PC)(例えば、特許文献1参照)、ポリエーテルスルホン(PES)(例えば、特許文献2参照)、シクロオレフィンコポリマー(例えば、特許文献3参照)に透明導電層、ガスバリア層を積層したものが知られている。
しかしこのような耐熱性プラスチックを用いてもプラスチック基板として十分な耐熱性が得ることはできなかった。すなわち、これら耐熱性プラスチックを用いたプラスチック基板に導電層を形成させた後、配向膜などの付与のため150℃以上の温度にさらすと、導電性、ガスバリア性が大きく低下するという問題があった。また、アクティブマトリクス型画像素子作製時のTFTを設置する際には、更なる耐熱性が要求される。
【0003】
特許文献4には、SiH4を含むガスをプラズマ分解することにより300℃もしくはそれ以下の温度で多結晶シリコン膜を形成する方法が記載されている。また、特許文献5にはエネルギービームを照射して高分子基板上にアモルファスシリコンと多結晶シリコンとが混合された半導体層を形成する方法が記載されている。さらに特許文献6には、熱的バッファ層を設け、パルスレーザビームを照射してプラスチック基板上に多結晶シリコン半導体層を形成する方法が記載されている。これらのように300℃以下でTFT用多結晶シリコン膜を形成する方法は、種々提案されているが、構成や装置が複雑で高コストとなるという問題がある。このため、300℃ないし350℃以上の耐熱性が、プラスチック基板に求められている。
【0004】
また、特許文献7には、脂肪族テトラカルボン酸無水物から誘導されるポリイミドを用いた薄膜トランジスタ基板について開示されている。該特許文献7に記載されているポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)315℃および全光線透過率85%と、耐熱性や透明性に優れるが、原料となる脂肪族テトラカルボン酸無水物が高コストである。また高沸点溶媒を用いた高温での製膜が必要であることも製造上好ましくない。
【0005】
特許文献8および9には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下、「ビスフェノールフルオレン」とも称する)とイソフタル酸およびテレフタル酸とから誘導されるポリエステルフィルムに関する記載がある。また、特許文献10には、アルキル置換されたビスフェノールフルオレンとイソフタル酸およびテレフタル酸とから誘導されるポリエステルフィルムに関する記載がある。
これらのアルキル置換または無置換のビスフェノールフルオレンとイソフタル酸およびテレフタル酸とから誘導されるポリエステルは安価な原料から合成可能であり、かつガラス転移温度が300℃付近になる。さらに前記文献によればジクロロメタン、シクロヘキサノンなどの低沸点溶剤を用いて透明性、破断伸びに優れた柔軟なフィルムが作製されている。しかしながら、アクティブマトリクス型画像素子作製時のTFT設置工程に対しては必ずしも十分な耐熱性を有しているとはいえず、またプラスチック基板に求められる力学特性の要求に対してもさらなる改良が望まれていた。
【0006】
特許文献11には、ジアリールアセチレンで末端封止されたポリイミド、ポリイミドオリゴマーについて記載されている。該ポリイミドは、低分子量体であるため良好な溶解性が得られる一方で、製膜後の加熱によるアルキニル基の架橋反応により、耐熱性、および力学特性が向上するものである。しかしながら樹脂の着色の点で光学フィルム用途に対しては好ましくなかった。
【0007】
特許文献12には側鎖にアリル基を有するポリカーボネートが開示されている。しかしながらこれらの化合物は、熱変形開始温度が200℃程度であり、前記ディスプレイ用耐熱基板としては不十分なレベルである。
【0008】
前記の如く、透明性、耐熱性、力学特性を満足する樹脂、およびこれを用いた光学フィルムの開発が強く望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開2000−227603号公報(全頁)
【特許文献2】特開2000−284717号公報(全頁)
【特許文献3】特開2001−150584号公報(全頁)
【特許文献4】特開平7−81919号公報(全頁)
【特許文献5】特表平10−512104号公報(全頁)
【特許文献6】特開平11−102867号公報(全頁)
【特許文献7】特開2003−168800号公報(全頁)
【特許文献8】特開昭57−192432号公報(全頁)
【特許文献9】特開平3−28222号公報(全頁)
【特許文献10】国際公開第99/18141号パンフレット(全頁)
【特許文献11】米国特許5138028号公報(全頁)
【特許文献12】特開平10−77338(全頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする第1の課題は、透明性、耐熱性および力学特性に優れ、光学部品用途に適したポリマーを提供することであり、第2の課題は該ポリマーを用いて形成された透明性、耐熱性および力学特性に優れる光学フィルムを提供することにある。また、第3の課題は該光学フィルムを用い、表示品位に優れた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、以下の1)〜8)の本発明によって達成された。
1)下記一般式(1)または一般式(2)で表わされる繰り返し単位を少なくとも1種類含有し、エステル結合およびウレタン結合のいずれかを少なくとも有することを特徴とするポリマー。
【化1】

〔一般式(1)中、αは環構造を表し、2つの環はスピロ結合によって結合している。R1〜R6は水素原子または置換基を表し、R1〜R4の少なくとも1つが置換または無置換のアリル基を表す。R1とR5、R4とR6とは互いに結合して環を形成していてもよい。〕
【0012】
【化2】

〔一般式(2)中、環βは単環式または多環式の環を表す。R1〜R8は水素原子または置換基を表し、R1〜R4の少なくとも1つが置換または無置換のアリル基を表す。R1とR5、R2とR6、R3とR7、R4とR8、R5とR7とは互いに結合して環を形成していてもよい。〕
【0013】
2)前記1)に記載のポリマーによって形成されたことを特徴とする光学フィルム。
3)前記1)に記載のポリマーにおけるアリル基が架橋していることを特徴とする前記2)に記載の光学フィルム。
4)全光線透過率80%以上であることを特徴とする前記2)または3)に記載の光学フィルム。
【0014】
5)少なくとも片面にガスバリア層が積層されていることを特徴とする前記2)〜4)のいずれか1つに記載の光学フィルム。
6)少なくとも片面に透明導電層が積層されていることを特徴とする前記2)〜5)のいずれか1つに記載の光学フィルム。
7)前記2)〜6)のいずれか1つに記載の光学フィルムを用いた画像表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高温で各種機能層を形成可能な耐熱性を有し、かつ優れた透明性などの光学特性とフィルム成形可能な力学特性とを有するポリマー、および、これを用いた光学フィルム、並びに、表示品位に優れた画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明のポリマー、フィルムおよび画像表示装置について詳しく説明する。
【0017】
(ポリマー)
本発明のポリマーは、下記一般式(1)で表わされるスピロ構造または一般式(2)で表わされるカルド構造を繰り返し単位として少なくとも1種類含有し、エステル結合(−CO−O−)およびウレタン結合(−NH−COO−)のいずれかを少なくとも有することを特徴とする。即ち、本発明におけるポリマーは、下記の繰り返し単位を含有する(アリル基を含有する)、架橋性のポリエステルまたはポリウレタンである。
これらのポリマーは高耐熱性、高弾性率かつ高い引張り破壊応力を有する化合物であり、製造プロセスにおいて種々の加熱操作が要求され、かつ屈曲させても破壊しにくいといった性能が要求される有機EL素子等の基板材料として好適である。
【0018】
【化3】

【0019】
一般式(1)中、αは環構造を表し、2つの環はスピロ結合によって結合している。前記環構造としては、5員または6員環であることが好ましい。R1〜R6は水素原子または置換基を表し、R1〜R4の少なくとも1つが置換または無置換のアリル基を表す。前記アリル基の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、ナフチル基など)が好ましい。これらの置換基は置換可能ないずれの位置に置換していてもよく、複数置換していてもよい。前記アリル基としては無置換のアリル基が特に好ましい。
またR1〜R4のうちの2つ以上が置換または無置換のアリル基であることが好ましく、少なくともR1およびR3が置換または無置換のアリル基であることが好ましい。R1〜R6がアリル基以外の置換基を表す場合、該置換基としてはハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、4―クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、ナフチル基など)などが挙げられ、R1とR5、R4とR6とは互いに結合して環を形成していてもよい。R1〜R6がアリル基以外の置換基を表す場合、水素原子を表すことが特に好ましい。
【0020】
一般式(1)で表わされる構造として特に好ましくは、一般式(3)〜(5)で表わされる構造が挙げられる。
【0021】
【化4】

【0022】
一般式(3)中、R1〜R6は一般式(1)と同じ意味を表す。R7〜R14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R1とR5、R4とR6とは互いに結合して環を形成していてもよい。R7〜R14の好ましい例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0023】
【化5】

【0024】
一般式(4)中、R1〜R6は一般式(1)と同じ意味を表す。R7〜R10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R1とR5、R4とR6とは互いに結合して環を形成していてもよい。R7〜R10の好ましい例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0025】
【化6】

【0026】
一般式(5)中、R1〜R6は一般式(1)と同じ意味を表す。R7〜R10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R1とR5、R4とR6とは互いに結合して環を形成していてもよい。R7〜R10の好ましい例は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0027】
次に一般式(2)について説明する。
【0028】
【化7】

【0029】
一般式(2)中、環βは単環式または多環式の環を表す。R1〜R8は置換基を表す。これら各置換基は同じであっても異なっていてもよい。また、R1〜R4の少なくとも1つが置換または無置換のアリル基を表す。
【0030】
前記アリル基の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、ナフチル基など)が好ましい。これらの置換基は置換可能ないずれの位置に置換していてもよく、複数置換していてもよい。前記アリル基としては無置換のアリル基が特に好ましい。またR1〜R4のうちの2つ以上が置換または無置換のアリル基であることが好ましく、少なくともR1およびR3が置換または無置換のアリル基であることが好ましい。R1〜R8がアリル基以外の置換基を表す場合、置換基としてはハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、ナフチル基など)などが挙げられ、R1とR5、R2とR6、R3とR7、R4とR8、R5とR7はそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。R1〜R8がアリル基以外の置換基を表す場合、水素原子を表すことが特に好ましい。
【0031】
一般式(2)で表わされる構造のうち特に好ましくは、下記一般式(6)で表わされる構造である。
【0032】
【化8】

〔一般式(6)中、R1〜R8は一般式(2)と同じ意味を表す。〕
【0033】
以下に本発明のポリマーとして有用なアリル基含有ポリエステルおよびポリウレタンの好ましい具体例(例示化合物P−1〜P−39)を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
アリル基を含有する本発明のポリマーは、単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。さらに、溶解性、透明性、力学特性等種々の観点から一般式(1)または(2)で表される繰り返し構造を含まない任意のモノマーをコモノマーとして用いることもできる。
【0041】
本発明に用いられる前記ポリマーの好ましい分子量は重量平均分子量で1000〜50万、より好ましくは5千〜30万、特に好ましくは、1万〜20万である。分子量が低すぎる場合、フィルム成形が難しくなったり、力学特性が低下することがある。分子量が高すぎる場合、合成上分子量のコントロールが難しかったり、溶液の粘度が高すぎて取扱いが難しくなることがある。なお、分子量は対応する粘度を目安にすることもできる。
【0042】
本発明のポリマーにおいてはアリル基の導入量を増やすことにより、樹脂の耐熱性および力学特性を向上させることができる反面、架橋反応性基の導入量が多すぎると、硬化収縮が問題になる場合がある。架橋反応性基の最適な導入量は樹脂の構造によって異なるが、一般的にはポリマー中に導入される架橋反応性基の量は、10-4〜10mmol/gであることが好ましく、10-3〜2mmol/gであることがより好ましく10-2〜1mmol/gであることが特に好ましい。
【0043】
アリル基を含有する一般式(1)または(2)の構造を含むビスフェノール誘導体である本発明のポリマーは、特開2004−137200号公報に記載の方法に準じて、対応するビスフェノール誘導体にアリルハライドを作用させ水酸基をアリル化した後、加熱してクライゼン転位反応を行うことにより合成することができる。
【0044】
本発明のポリマーがポリエステルである場合、本発明のポリマー(本発明のポリエステル)は、アリル基を含有する一般式(1)または(2)の構造を含むビスフェノール化合物および必要に応じて他のビスフェノール化合物と、ジカルボン酸誘導体と、を重縮合させて得ることができる。
前記重縮合方法としては、ジカルボン酸クロライドとビスフェノールとを有機塩基の存在下、ポリマーが可溶となる有機溶媒系で反応させる脱塩酸均一重合法;ジカルボン酸クロライドとビスフェノールとをアルカリ水溶液と水非混和性有機溶媒との2相系で反応させる界面重縮合法などの公知の方法を利用することができる。
【0045】
本発明のポリエステルは前記いずれの合成法によっても合成することができるが、特に界面重縮合法が簡便で好ましい。界面重縮合反応においては、アルカリ水溶液に溶解させたビスフェノール化合物と水非混和性有機溶媒(代表的にはジクロロメタンなど)に溶解させたジカルボン酸クロライドとを短時間で混合する方法が一般的であるが、ビスフェノール化合物のアルカリ水溶液に対する溶解度が低い場合がある。また、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドのように水非混和性有機溶媒に対する溶解度が低いジカルボンクロライドにおいて、公知の方法ではポリエステルを合成できない場合がある。この場合、予め水、水非混和性有機溶媒、ビスフェノール化合物、ジカルボン酸クロライドをスラリー状混合撹拌しておき、高濃度のアルカリ水溶液を徐々に添加していく方法が高分子量化に有効である。
【0046】
本発明のポリマーの分子量を調節する方法としては、重合時に一官能の物質を添加して行うことができる。ここでいう分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノールなどの一価フェノール類;安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートなどの一価酸クロライド類;メタノール、エタノール、nープロパノール、イソプロパノール、nーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの一価のアルコール類;酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸などの一価のカルボン酸などが挙げられる。
【0047】
本発明のポリマーのカルボキシル価は300μmol/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは30μmol/g以下であり、特に好ましくは10μmol/g以下である。カルボキシル価が高すぎると、耐アーク放電性や誘電率など電気特性に影響を与えたり、溶剤に溶解して調製したポリマー溶液の保存安定性にも影響したり、溶液キャスト法により得られるキャストフィルムの表面特性に影響を与える場合がある。本発明のポリマーのカルボキシル価は、電位差滴定装置を利用した中和滴定など公知の方法で測定することができる。
【0048】
本発明のポリマーがポリウレタンである場合、本発明のポリマー(本発明のポリウレタン)も公知の製造方法に従って合成することができ、例えば、ビスフェノール化合物とジイソシアネート化合物との重付加法、ビスフェノール化合物とジカルバミン酸クロライドとの重縮合法が好ましい。前記ジイソシアネート化合物はジカルバミン酸クロライドの脱塩化水素反応によって合成することができる。また、前記ジカルバミン酸クロライドはジアミン化合物にホスゲンを作用させて合成することができる。
本発明では、アリル基を有する前記ビスフェノールを用いて重合反応を行なうことが好ましい。
【0049】
本発明のポリマー中の残留アルカリ金属量およびハロゲン量は、50ppm以下であることが好ましく、特に好ましくは10ppm以下である。残留アルカリ金属量およびハロゲン量が高すぎると、上述した電気特性が低下する傾向にあり、さらにはフィルムの表面特性にも悪影響を与え、また導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合があるので、好ましくない。ポリマー中の残留アルカリ金属量およびハロゲン量は、イオンクロマトグラフ分析法、原子吸光法、プラズマ発光分光分析法など公知の方法を利用して定量することができる。
【0050】
また、本発明のポリマー中に残留する第4級アンモニウム塩や第4級ホスホニウム塩などの触媒の量は200ppm未満であることが好ましく、より好ましくは100ppm未満である。残留する触媒量が高すぎると上述した電気特性が低下する傾向にあり、さらにはフィルムの表面特性にも悪影響を与え、また導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合があるので、好ましくない。本発明のポリマー中に残留する第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩などの触媒はHPLC、ガスクロマトグラフ法などを利用して定量できる。
【0051】
さらに本発明のポリマー中に残留するフェノールモノマー、ジカルボン酸、ジカルボン酸クロライド、ジアミン、ジイソシアネート等のモノマー由来の残存成分の量は3000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。残留するモノマー成分の量が多すぎると上述した電気特性が低下する傾向にあり、さらにはフィルムの表面特性にも悪影響を与え、また導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合があるので、好ましくない。例えば、フィルム上に透明導電膜を形成する際、製膜時の加熱やプラズマの影響により、残留するモノマー成分由来のガスが発生したり、熱分解等が生じることにより、透明導電膜中に結晶粒塊が生じたり、また「抜け」と呼ばれるようなコーティングされない部分が生じ、透明導電膜の低抵抗化が阻害されるなどの悪影響を及ぼすため好ましくない。ポリマーおよびそのフィルム中に残留するモノマー量は、HPLCや核磁気共鳴法など公知の方法で分析することができる。
【0052】
本発明のポリエステルおよびポリウレタン、即ち、本発明のポリマーに導入されるアリル基は、ポリマーの有機溶剤への溶解性を高めることができると共に、製膜後に架橋反応を行うことによって耐熱性を向上させることができる。該架橋反応は、加熱、紫外線、赤外線、電子線、またはマイクロ波照射等により行なうことができる。この際、必ずしも重合開始剤を添加しなくてもよいが、迅速かつ効率よく架橋反応を行なう目的から重合開始剤を添加してもよい。前記重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤が挙げられる。
【0053】
前記熱重合開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾおよびジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0054】
光の作用で(ラジカル)重合を開始する光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。前記アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。また、前記ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。前記ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。前記ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0055】
熱または光の作用によってラジカル重合を開始する重合開始剤の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合を開始できる量であればよいが、一般的にはポリマーの全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%の場合である。
【0056】
本発明のポリマーを架橋させるために本発明の光学フィルムに紫外線を照射する場合には通常1〜2000mJ/cm2の紫外線エネルギー密度で行なわれ、好ましくは10〜1000mJ/cm2、より好ましくは50〜750mJ/cm2で行なわれる。高強度の紫外線を短時間で照射するとフィルムの劣化を生じる場合があり、このような場合には低強度の紫外線を長時間かけて照射することもできる。ここで、「本発明の光学フィルム」とは、本発明のポリマーを用いて形成されるフィルムを意味する。
また、本発明の光学フィルムに電子線を照射する場合には2〜10MeV程度の強度が好ましい。
【0057】
前記熱重合による架橋反応は、通常、50〜(Tg+50℃)以下の温度で行なわれ、好ましくは50〜300℃、より好ましくは70〜250℃で行なわれる。紫外線等の照射による架橋反応は、通常0〜50℃、好ましくは20〜40℃で行なわれる。
いずれの架橋反応の場合も、反応時間は1分〜50時間が好ましく、2分〜25時間がより好ましく、5分〜10時間が特に好ましい。
【0058】
本発明のポリマーのガラス転移温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上が特に好ましい。
さらに架橋反応後のポリマーのガラス転移温度は250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがさらに好ましく、350℃以上が特に好ましい。
本発明のポリマーの架橋反応後のガラス転位移温度が250℃以上であると、フィルム上へのアモルファスシリコン半導体層の設置が可能になる。
また、本発明のポリマーのガラス転移温度の上限は特に限定はないが、延伸操作を行なう場合には、ガラス転移温度が高すぎと困難であり、溶媒を含ませた形態でのウエット延伸を想定してもポリマーのガラス転移温度は400℃以下が好ましく、より好ましくは350℃以下の場合である。
【0059】
[光学フィルム]
次に本発明の光学フィルムについて説明する。
本発明の光学フィルムは、上述の本発明のポリマーからなる光学フィルムである。なお、本発明で用いる光学フィルムとは厚みが10〜700μmの範囲であり、420nmにおける光線透過率が40%以上であり全光透過率が60%以上のフィルムを意味する。
【0060】
本発明の光学フィルムにおいては本発明の効果を損なわない範囲で本発明のポリマー以外のポリマーを含んでいてもよい。また、本発明のポリマー以外に適宜架橋反応性樹脂を添加してもよい。前記架橋反応性樹脂の種類としては熱硬化性樹脂、放射線硬化樹脂のいずれも種々の公知のものを特に制限なく用いることができる。
【0061】
前記熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。その他架橋方法としては共有結合を形成する反応であれば特に制限なく用いることができ、ポリアルコール化合物とポリイソシアネート化合物とを用いて、ウレタン結合を形成するような室温で反応が進行する系も特に制限なく使用できる。ただし、このような系は製膜前のポットライフが問題になる場合が多く、通常、製膜直前にポリイソシアネート化合物を添加するような2液混合型として用いられる。一方で1液型として用いる場合、架橋反応に携わる官能基を保護しておくことが有効であり、ブロックタイプ硬化剤として市販もされている。市販されているブロックタイプ硬化剤としては、三井武田ケミカル(株)製「B−882N」、日本ポリウレタン工業(株)製「コロネート2513」(以上ブロックポリイソシアネート)、三井サイテック(株)製「サイメル303」(メチル化メラミン樹脂)などが知られている。また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることのできるポリカルボン酸を保護した下記B−1のようなブロック化カルボン酸も知られている。
【0062】
【化15】

【0063】
前記放射線硬化樹脂は、ラジカル硬化性樹脂とカチオン硬化性樹脂とに大別される。前記ラジカル硬化性樹脂の硬化性成分としては分子内に複数個のラジカル重合性基を有する化合物が用いられる。代表的な例としては、分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に複数個のアクリル酸エステル基を有する化合物が用いられる。
前記カチオン硬化性樹脂の硬化性成分としては分子内に複数個のカチオン重合性基を有する化合物が用いられ、代表的な硬化方法として紫外線の照射により酸を発生する光酸発生剤を添加し、紫外線を照射して硬化する方法が挙げられる。カチオン重合性化合物の例としては、エポキシ基などの開環重合性基を含む化合物やビニルエーテル基を含む化合物を挙げることができる。
【0064】
本発明の光学フィルムにおいてはその製造過程において、前記で挙げた熱硬化性樹脂、放射線硬化樹脂のそれぞれ複数種を混合して用いてもよく、熱硬化性樹脂と放射線硬化樹脂とを併用してもよい。また、架橋性樹脂と架橋性基を有さないポリマーとを混合して用いてもよい。
【0065】
本発明の光学フィルムには、金属の酸化物および/または金属の複合酸化物、およびゾルゲル反応により得た金属酸化物を含有することができる。この場合、前記で挙げた架橋樹脂と同様に、耐熱性や耐溶剤性を付与することができる。さらに必要により本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、染顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤、および潤滑剤などの樹脂改質剤を添加してもよい。
【0066】
本発明のポリマーをフィルムまたはシート形状に成形する方法としては公知の方法が採用できるが、溶液流延法が好ましい方法として挙げられる。前記溶液流延法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号明細書、米国特許2367603号明細書、米国特許2492078号明細書、米国特許2492977号明細書、米国特許2492978号明細書、米国特許2607704号明細書、米国特許2739069号明細書、米国特許2739070号明細書、英国特許640731号明細書、英国特許736892号明細書、特公昭45ー4554号公報、特公昭49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、特開昭60−203430号公報、特開昭62−115035号公報に記載がある。溶液流延法にて製造する製造装置の例としては特開2002−189126号公報の段落[0061]〜[0068]に記載の製造装置、図1、図2などが例として挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
溶液流延法においては、本発明のポリマーやこれと併用するポリマーを溶媒に溶解する。使用する溶媒は前記ポリマーを溶解するものであればいずれの溶媒を用いても構わないが、特に25℃において前記ポリマーを固形分濃度10質量%以上溶解できる溶媒が好ましい。また、使用する溶媒の沸点は200℃以下のものが好ましく、さらに好ましくは150℃以下のものである。沸点が高い場合、溶媒の乾燥が不十分となり、フィルム中に残存する恐れがある。また、本発明に用いられるポリマーの溶解性を損なわない範囲で貧溶媒を混合することも可能である。この場合、溶液流延後の剥ぎ取りや乾燥速度の観点で有利になる場合がある。
【0068】
本発明に用いることができる溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、イソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、酢酸エチル、アセトン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール等が挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。また、溶媒は2種以上を混合して用いてもよく、乾燥性と溶解性との両立の観点からむしろ混合溶媒が好ましい。また、混合溶媒とすることで、本発明の光学フィルムの透明性を向上させることができる場合もある。
【0069】
溶液流延に用いられる溶液中のポリマー濃度は5〜60質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。ポリマーの濃度が低すぎると粘度が低く厚さの調節が困難となる場合があり、高すぎると製膜性が悪くムラが大きくなる場合がある。また、溶液流延前に必要に応じてろ過することで本発明の光学フィルムの透過率やフィルム内の不純物を低減させる事が可能となる。
【0070】
前記溶液の流延方法は特に限定されないが、例えば、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターブレード、ロールコート、ダイコート等を用いて平板、またはロール上に流延することができる。
【0071】
溶媒を乾燥する温度は、使用する溶媒の沸点によって異なるが、2段階に分けて乾燥することが好ましい。これによって、光学的に等方性を有した光学フィルムを得ることができる。第一段階としては30〜100℃で溶媒の質量濃度が10%以下になる、より好ましくは5%以下になるまで乾燥する。次いで、第二段階として平板またはロールからフィルムを剥がし、60℃以上、樹脂のガラス転移温度以下の範囲で乾燥する。
平板またはロールからフィルムを剥がす際、第一段階の乾燥終了直後に剥がしても、いったん冷却してから剥がしてもよい。
【0072】
本発明の光学フィルムは加熱乾燥が不足すれば残留溶媒量が多く、また極度に加熱しすぎるとポリマーの熱分解を引き起こし、残留するモノマー量が多くなる。さらに急激な加熱乾燥は含有溶媒の急速な気化を生じ、フィルムに気泡等の欠陥を生じさせる。このため、本発明の光学フィルム中に残留する溶媒量は2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下である。残留する溶媒量が多すぎると、フィルム表面の特性が悪化し表面処理等に悪影響を及ぼしたり、導電膜、半導体膜等を付与した機能性フィルムの性能低下を引き起こす場合があるので、好ましくない。本発明のポリマーフィルム中に残留する溶媒量はガスクロマトグラフィーなど公知の方法を利用して定量することができる。
【0073】
本発明の光学フィルムは回転ドラムもしくはバンド上への溶液流延、剥ぎ取り、乾燥を連続的に行い、ロール状に巻取り製造する方法が好ましい。このように、本発明の光学フィルムを機械的に搬送する場合など、フィルムの力学強度が高いことが好ましい。好ましい力学強度は、搬送装置にもより一概に言えないが、目安としてフィルムの引張試験から得られる破断応力、破断伸度を用いることができる。好ましい破断応力は50MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。破断伸度はサンプル作製条件などによっても変動するため、信頼性が低いが、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。
【0074】
本発明の光学フィルムは延伸されていてもよい。フィルムを延伸することにより耐折強度など機械的強度が改善され、取扱性が向上する利点がある。特に延伸方向のオリエンテーションリリースストレス(ASTMD1504、以下「ORS」と略記する)が0.3〜3GPaであるものは機械的強度が改善され好ましい。ORSは延伸フィルムまたはシートに凍結されている、延伸により生じた内部応力である。
【0075】
前記延伸は、公知の方法が使用できるが、本発明のポリマーが300℃以上のガラス転移温度を有する場合、単なる加熱のみでの延伸は難しいものとなるため、溶媒を含んだ状態での延伸が可能である。この場合、乾燥途中過程で延伸を行うことが好ましく、例えば溶媒を含んだ状態のガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度から、50℃高い温度の間の温度で、ロール一軸延伸法、テンター一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、インフレーション法により延伸できる。延伸倍率は1.1〜3.5倍が好ましく用いられる。
【0076】
本発明の光学フィルムの厚みは、特に規定されないが30μm〜700μmが好ましく、より好ましくは40μm〜200μmであり、さらに好ましくは50μm〜150μmである。さらにいずれの場合もヘイズは3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。また、全光線透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。
【0077】
本発明の光学フィルムの耐熱温度は高い方が好ましく、DSC測定によるガラス転移温度(Tg)またはTMAによる熱変形開始温度を目安にすることができる。この場合、好ましいガラス転移温度または熱変形開始温度は250℃以上、より好ましくは300℃以上、特に好ましくは330℃以上である。なお、本発明の光学フィルムを本発明のポリマーのみを用いて溶液流延法により作製する場合、乾燥が十分であれば、用いたポリマーのTgと光学フィルムのTgとの差はほとんどなく、測定誤差範囲内である。
【0078】
本発明の光学フィルムの表面には用途に応じて他の層、あるいは部品との密着性を高めるためにフィルム基板表面上にケン化、コロナ処理、火炎処理、グロー放電処理等の処理を行うことができる。さらに、フィルム表面に接着層、アンカー層を設けてもよい。また、表面平滑化のため平滑化層、耐傷性付与のためのハードコート層、反射防止光線透過率向上のための反射防止層、耐光性を高めるための紫外線吸収層、フィルムの搬送性を改良させるための表面粗面化層など目的に応じて種々の公知の機能性層を付与することができる。
【0079】
本発明の光学フィルムは透明導電層を設置することができる。透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等が適用できるが、中でも、透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましい。例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウムおよび酸化スズ;不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズから主としてなり、酸化亜鉛を2〜15重量%含有した酸化インジウムの薄膜が、透明性、導電性が優れており、好ましく用いられる。
【0080】
これら透明導電層の製膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であれば、いかなる方法でもよい。前記製膜方法としては、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法などが適しており、特許第3400324号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報に記載の方法で製膜する事ができる。
中でも、特に優れた導電性・透明性が得られるという観点から、スパッタリング法が好ましい。
【0081】
このようなスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法の好ましい真空度は0.133mPa〜6.65Pa、より好ましくは0.665mPa〜1.33Paである。このような透明導電層を設ける前に、プラズマ処理(逆スパッタ)、コロナ処理のように基材フィルムに表面処理を加えることが好ましい。また透明導電層を設けている間に50℃〜200℃に昇温してもよい。
【0082】
このようにして得られた透明導電層の膜厚は20nm〜500nmが好ましく、より好ましくは50nm〜300nmが好ましい。
また、このようにして得られた透明導電層の25℃・相対湿度60%で測定した表面電気抵抗は0.1Ω/□〜200Ω/□が好ましく、より好ましくは0.1Ω/□〜100Ω/□であり、さらに好ましくは0.5Ω/□〜60Ω/□である。さらに光透過性は80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上である。
【0083】
本発明の光学フィルムにはガス透過性を抑制するために、ガスバリア層を設けることも好ましい。好ましい前記ガスバリア層としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、イットリウム、タンタルからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属を主成分とする金属酸化物、珪素、アルミニウム、ホウ素の金属窒化物またはこれらの混合物を挙げることができる。この中でも、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0の珪素酸化物を主成分とする金属酸化物が良好である。これら無機のガスバリア層は例えばスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法により作製することができる。なかでも、特に優れたガスバリア性が得られるという観点から、スパッタリング法が好ましい。またガスバリア層を設けている間に50℃〜200℃に昇温してもよい。
【0084】
このようにして得られたガスバリア層の膜厚は10nm〜300nmが好ましく、より好ましくは30nm〜200nmが好ましい。
このようなガスバリア層は透明導電層と同じ側、反対側いずれに設けてもよいが、反対側に設けるほうがより好ましい。
【0085】
また、このようにして得られたガスバリア層を有するフィルム(ガスバリアフィルム)のバリア性は、40℃・相対湿度90%で測定した水蒸気透過度が5g/m2・day以下が好ましく、より好ましくは1g/m2・day以下、さらに好ましくは0.5g/m2・day以下である。40℃・相対湿度90%で測定した酸素透過度は1ml/m2・day以下が好ましく、より好ましくは0.7ml/m2・day以下であり、さらに好ましくは0.5ml/m2・day以下である。
【0086】
本発明の光学フィルムには、バリア性を向上させる目的で、これと隣接して欠陥補償層を設けるのが特に望ましい。前記欠陥補償層としては、(1)米国特許第6171663号明細書、特開2003−94572号公報記載のようにゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層を利用する方法、(2)米国特許第6413645号,64163645号各明細書記載のように有機物層を利用する方法、また、これらの欠陥補償層は、前記公報等に記載のように真空下で蒸着後、紫外線または電子線で硬化させる方法、或いは、塗布した後、加熱、電子線、紫外線等で硬化させることで作製することができる。
塗布方式で作製する場合には、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
【0087】
本発明の光学フィルムは薄膜トランジスタ(TFT)表示素子用基板として用いることができる。TFTアレイの作製方法は特表平10−512104号公報に記載の方法等が挙げられる。さらにこれらの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターはいかなる方法を用いて作製されてもよいが、好ましくはフォトリソグラフィー手法が好ましい。
【0088】
本発明の光学フィルムは必要に応じて各種機能層を設けた上で画像表示装置に用いることができる。ここで、画像表示装置としては特に限定されず、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)、蛍光表示管、発光ダイオードなどフラットパネルディスプレイなど従来知られているものを用いることができる。また、本発明の光学フィルムを用いて表示品質に優れたフラットパネルディスプレイを作製することができる。フラットパネルディスプレイとしては液晶、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)、蛍光表示管、発光ダイオードなどが挙げられ、これら以外にも従来ガラス基板が用いられてきたディスプレイ方式のガラス基板に代わる基板として用いることができる。さらに、本発明の光学フィルムは太陽電池、タッチパネルなどの用途にも利用可能である。前記タッチパネルは、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のものに応用することができる。
【0089】
本発明の光学フィルムを液晶表示用途などに使用する場合には、光学的均一性を達成するために本発明のポリマーが非晶性ポリマーであることが好ましい。また、複屈折が小さい方が好ましく、特に面内レタデーション(Re)が50nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。本発明のポリマーのみを用いて複屈折の小さい光学フィルムを得るためには、溶液流延時の溶媒および乾燥条件を適宜調節することで可能となる。また、必要に応じて延伸して調節することもできる。さらに、レタデーション(Re)、およびその波長分散を制御する目的で固有複屈折の符号が異なる樹脂を組み合わせたり、波長分散の大きい(あるいは小さい)樹脂を組み合わせたりすることができる。また、本発明の光学フィルムはレターデーション(Re)の制御を行ったり、ガス透過性や力学特性の改良を行ったりする目的で異種樹脂の積層等を好適に用いることができる。また、公知の位相差板を併用して位相差補償を行うこともできる。
なお、ここでいうReは、フィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて25℃・相対湿度60%において測定した値である。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnm(通常はλ=590±5nm)の光をフィルム法線方向に入射させて測定する。
【0090】
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる。このうち本発明の光学フィルムは光学特性の調節によりλ/4板、偏光膜用保護フィルムとして用いてもよいが、その耐熱性の観点から基板(上下各基板)としての利用が好ましく、さらには透明性の観点から透明電極および配向膜付上基板として使用することが好ましい。また、必要に応じてガスバリア層、TFTなどを設けることもできる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0091】
透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる。このうち本発明の光学フィルムは光学特性の調節によりλ/4板、偏光膜用保護フィルムとして用いてもよいが、その耐熱性の観点から基板(上下各基板)としての利用が好ましく、透明電極および配向膜付基板として使用することが好ましい。また、必要に応じてガスバリア層、TFTなどを設けることもできる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0092】
液晶セルは特に限定されないが、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−P1ane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crysta1)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optica1ly Compensated Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およぴ、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、前記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の偏光光学フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0093】
これらは特開平2−176625号公報、特公平7−69536号公報、MVA(SID97,Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845)、SID99, Digest of tech. Papers (予稿集)30(1999)206、特開平11−258605号公報、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14)、PVA(Asia Display 98,Proc. of the−18th−Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383)、Para−A(LCD/PDP Iternational`99)、DDVA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838)、EOC(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319)、PSHA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081)、RFFMH(Asia Display 98, Proc. of the−18th−Inter. Display res. Conf. (予稿集)(1998)375)、HMD(SID98, Digest of tech. Papers (予稿集)29(1998)702)、特開平10−123478号公報、国際公開W09848320号公報、特許第3022477号公報、および国際公開第00/65384号パンフレット等に記載されている。
【0094】
本発明の光学フィルムは必要に応じてガスバリア層、TFTを設け、透明電極付基板として有機EL表示用途に使用できる。
有機EL表示素子としての具体的な層構成としては、陽極/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極等が挙げられる。
【0095】
本発明の光学フィルムが使用できる有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜40ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
これら発光素子の駆動については、特開平2−148687号公報、同6−301355号公報、同5−29080号公報、同7−134558号公報、同8−234685号公報、同8−241047号公報、米国特許5828429号明細書、同6023308号明細書、日本特許第2784615号公報等に記載の方法を利用することができる。
【実施例】
【0096】
以下、合成例、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
[合成例1]
1.例示化合物P−32の合成
(1)4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアリルフェノール(III)の合成
【化16】

【0098】
前記化合物(I)(商品名:BPFL、JFEケミカル(株)製)35g、アリルブロマイド29g、炭酸カリウム22gおよびアセトン300mlを混合し、30時間加熱還流し、TLCにてほぼ反応が完結したことを確認した。室温まで冷却後、濾過、濃縮して残渣にトルエン400mlを加え各200mlの水で2回洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後濃縮し化合物(II)の粗結晶を43g得た。
次いで化合物(II)の粗結晶42gとN,N−ジエチルアニリン84gとを混合し、窒素下200℃で18時間加熱攪拌した。N,N―ジエチルアニリンを2.67×10-3MPaで減圧下留去したのちアセトン50mlを加え、さらに60℃に加熱したのち冷却して、再結晶を行なった。結晶を濾過し乾燥させるとによって前記4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアリルフェノール(III)を36.45g得た。生成物(4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアリルフェノール(III)について400MHz1HNMRによって同定した。
1HNMR(CDCl3)、δ(ppm):3.25(d,4H)、4.89(s,2H)、5.09(dd,4H)、5.85〜6.00(m,2H)、6.61(d,2H)、6.89(dd,2H)、6.95(d,2H)、7.18〜7.40(m,6H)、7.71(d,2H)
【0099】
(2)例示化合物P−32の合成
1Lの三口フラスコ中に、前記4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアリルフェノール(III)21.1g、ハイドロサルファイトナトリウム0.15g、テトラブチルアンモニウムクロライド694.8mg、塩化メチレン163ml、および蒸留水188mlを加え、窒素気流下室温で攪拌した。さらに2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド6.33gおよびテレフタル酸クロライド5.1gを塩化メチレン75mlに溶解した溶液を添加した。次いで、該混合液中に2N水酸化ナトリウム水溶液52.5mlを蒸留水22.5mlで希釈したアルカリ水溶液を室温下1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間攪拌を続け、その後酢酸0.9gおよび塩化メチレン100mlを添加した。得られた溶液から有機層を分離しメタノール2Lに添加して析出したポリマーをデカンテーションにより分離した。さらに得られたポリマーを塩化メチレン250mlに溶解し、メタノール1Lに再沈澱させることにより、例示化合物P−32の26.3gを得た。
得られた例示化合物P−32をGPC(THF溶媒)で測定した結果、重量平均分子量21600、数平均分子量10100であった。また、TMA8310(理学電気株式会社製、Thermo Plusシリーズ)で測定した熱変形開始温度は214℃であった。
【0100】
[合成例2]
1.例示化合物P−25の合成
ピペラジン660mmol、テトラブチルアンモニウムクロライド33mmol、ジクロロメタン2227ml、および、水2475mlを攪拌装置を備えた反応容器中に投入し、窒素気流下、水浴中300rpmで撹拌を行った。30分後、前記4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアリルフェノール(III)からトリホスゲンを用いて合成したビスクロロホルメート体660mmolを743mlのジクロロメタンに溶解した溶液と、2規定水酸化ナトリウム水溶液693mlを132mlの水で希釈した溶液とを1時間かけて同時に別々の滴下装置を用いて滴下した。滴下終了後165mlの水およびジクロロメタンでそれぞれ洗い流した。その後3時間撹拌を継続した後、ジクロロメタン1Lを添加し、有機層を分離した。さらに12規定塩酸水6.6mlを水2.5Lで希釈した溶液を添加し有機層を洗浄した。さらに水2.5Lで2回洗浄を行った後、分離した有機層にジクロロメタン1Lを添加し、希釈した後、激しく撹拌した25Lのメタノール中に1時間かけて投入した。メタノール中、得られた白色沈殿を濾取し乾燥させ、前記例示化合物P−25を240g得た。
得られた例示化合物P−25の分子量をGPC(クロロホルム溶媒)で測定した結果、重量平均分子量150000、数平均分子量70000であった。また、TMA8310(理学電気株式会社製、Thermo Plusシリーズ)で測定した熱変形開始温度は190℃であった。
本発明の他の化合物も前記と同様にして合成できる。
【0101】
[比較合成例1]
1.比較化合物X−1の合成
特開昭57−192432号公報実施例1に記載の合成法に準じて下記比較化合物X−1を合成した。数平均分子量は30000、熱変形開始温度は293℃であった。
【0102】
【化17】

【0103】
[比較合成例2]
2.比較化合物X−2の合成
特開平10−77338号公報実施例1に記載の合成法に準じて下記比較化合物X−2を合成した。数平均分子量は30000であった。
【0104】
【化18】

【0105】
[実施例1]
<特性値の測定方法>
本実施例において重量平均分子量、膜厚、熱変形開始温度、フィルムの全光線透過率、およびフィルムの力学特性(破断応力)は下記に従って測定した。
【0106】
(重量平均分子量)
テトラヒドロフランを溶媒とするポリスチレン換算GPC測定により、を用いて、ポリスチレンの分子量標準品と比較して重量平均分子量を求めた。また測定装置には、GPC(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)を用いた。
(膜厚)
ダイヤル式厚さゲージ(アンリツ(株)製、K402B)により測定した。
(熱変形開始温度)
TMA8310(理学電気株式会社製、Thermo Plusシリーズ)で測定した(窒素中、昇温温度10℃/分)
【0107】
(フィルムの全光線透過率)
ヘイズメーター(スガ試験機(株)社製、HGM−2DP)を用いて測定した。
(フィルムの破断応力)
フィルムサンプル(1.0cmx5.0cm片)を作製し、引張速度3mm/分の条件下、テンシロン(東洋ボールドウィン(株)製、テンシロン RTM−25)にて測定した。測定は3サンプル行い、その平均値を求めた(サンプルは25℃、相対湿度60%で一晩放置後使用した。またチャック間距離は3cmとした。)。
【0108】
<光学フィルム試料(試料101〜109)の作製>
下記表1に記載の本発明のポリマーおよび比較ポリマーをジクロロメタンに溶解した後、溶液粘度が500〜1500mPa・s以下の範囲になる濃度で溶解した。また、本発明のポリマーまたは比較ポリマーX−2を含む溶液にはさらに全固形分の2質量%に相当する2−アゾービスーイソブチロニトリルを添加した。
得られた溶液を5μmのフィルターを通してろ過した後、ドクターブレードを用いてガラス基板上に流延した。流延後、室温で2時間、60℃で2時間乾燥させ、その後窒素雰囲気下150℃で4時間加熱した。加熱後、フィルムをガラス基板より剥離し光学フィルム試料(試料101〜109)を得た。
得られた光学フィルム試料の熱変形開始温度、膜厚、全光線透過率、破断応力を測定した。表1に結果を示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1から、本発明の光学フィルムは、熱変形開始温度が高く、耐熱性に優れることがわかる。また破断点応力が大きく、優れた力学特性を有していることがわかる。
【0111】
[実施例2]
<有機EL素子試料の作製>
(ガスバリア層の設置)
前記で作製した本発明の光学フィルム試料101〜107および比較例の光学フィルム試料108、109の両面にDCマグネトロンスパッタリング法により、Siをターゲットとし500Paの真空下で、Ar雰囲気下、酸素を導入し、圧力を0.1Paとして出力5kWでスパッタリングした。得られたガスバリア層の膜厚は60nmであった。ガスバリア層を形成した光学フィルム試料の40℃、相対湿度90%における水蒸気透過度は0.1 g/m2・day以下であり、40℃、相対湿度90%における酸素透過度は0.1ml/m2・day以下であった。
【0112】
(透明導電層の設置)
ガスバリア層を設置した光学フィルム試料を100℃に加熱しながら、ITO(In23 95質量%、Sn02 5質量%)をターゲットとしDCマグネトロンスパッタリング法により、0.665Paの真空下で、Ar雰囲気下、出力5kWで140nmの厚みのITO膜からなる透明導電層を、片面に設けた。透明導電層を設置した光学フィルム試料の25℃、相対湿度60%における表面電気抵抗は30Ω/□であった。
【0113】
(透明導電層付光学フィルムの加熱処理)
前記で得られた透明導電層を設置した光学フィルム試料を、TFT設置を想定して300℃、1hの加熱処理を行った。
【0114】
(有機EL素子の作製)
前記で加熱処理を行った透明導電層を設置した光学フィルム試料の透明電極層より、アルミニウムのリ−ド線を結線し、積層構造体を形成した。本発明の光学フィルム試料101〜107から得られた透明導電層を設置した光学フィルム試料は変形が認められなかったのに対して、比較例の光学フィルム試料109から得られた透明導電層を設置した光学フィルム試料は変形が激しく、有機EL素子の作製は行わなかった。尚、比較例の光学フィルム試料108から得られた透明導電層を設置した光学フィルム試料も若干の変形が見られたが、顕著ではなかったため、有機EL素子の作製を行った。
透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚さ100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
一方、厚さ188μmのポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、スミライトFS−1300)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚さ13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
【0115】
〔組成〕
・ポリビニルカルバゾール(Mw=63000、アルドリッチ社製):40質量部
・トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体):1質量部
・ジクロロエタン:3200質量部
【0116】
基板Xの有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとした。
【0117】
また、25mm角に裁断した厚さ50imのポリイミドフィルム(UPILEX−50S、宇部興産製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mmラ5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3imの電極を形成した。Al23ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、Al23をAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液をスピンコーター塗布機を用いて塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚さ15nmの電子輸送性有機薄膜層をLiF上に形成した。これを基板Zとした。
【0118】
〔組成〕
・ポリビニルブチラール2000L(Mw=2000、電気化学工業社製):10質量部
・1−ブタノール:3500質量部
・下記構造を有する電子輸送性化合物:20質量部
【0119】
【化19】

【0120】
基板XYと基板Zとを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、貼り合せ、有機EL素子試料201〜208を得た。
【0121】
得られた有機EL素子試料201〜208をソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加した。若干変形の見られた比較試料208は発光が確認できなかったが、本発明の試料201〜207は、発光することを確認した。
【0122】
前記実施例より、本発明の光学フィルムは、耐熱性、透明性、力学特性に優れ、ガスバリア層、透明導電層を積層可能でTFT工程を想定した加熱処理を行っても有機EL素子用基板フィルムとして機能することが明らかとなった。
【0123】
以上からわかるように、本発明のポリマーおよびそれより得られる光学フィルムは、透明性、耐熱性、力学特性に優れている。さらに、本発明の光学フィルムはガスバリア層、透明導電層を積層可能で、表示品位に優れた有機ELディスプレイを提供可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または一般式(2)で表わされる繰り返し単位を少なくとも1種類含有し、エステル結合およびウレタン結合のいずれかを少なくとも有することを特徴とするポリマー。
【化1】

【化2】

〔一般式(2)中、環βは単環式または多環式の環を表す。R1〜R8は水素原子または置換基を表し、R1〜R4の少なくとも1つが置換または無置換のアリル基を表す。R1とR5、R2とR6、R3とR7、R4とR8、R5とR7とは互いに結合して環を形成していてもよい。〕
【請求項2】
請求項1に記載のポリマーによって形成されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載のポリマーにおけるアリル基が架橋していることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
全光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
少なくとも片面にガスバリア層が積層されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
少なくとも片面に透明導電層が積層されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いた画像表示装置。

【公開番号】特開2007−63418(P2007−63418A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251477(P2005−251477)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】