説明

ポリマーアロイの反応押出成形方法及び装置

【課題】 ポリ乳酸は硬くて脆く、耐摩耗性に問題があり単独での製品化が困難、高エネルギーを要し、製造プロセスが複雑、多品種少量生産ができない。
【解決手段】 反応押出成形装置1は、ポリマーアロイ用の第1原料を供給する第1原料供給部2と、第1原料供給部2と接続し第1原料供給部2から連続して供給されるポリマーアロイ第1原料を必要に応じて溶融しながら押し出す第1押出装置3と、流出口5が第1押出装置3の入口30と接続し、押し出されたポリマーアロイ用の第1原料を流入させ、第2原料供給部6から供給されるポリマーアロイ用の第2原料を流入させ、第1原料及び第2原料とを溶融状態で反応させるポリマーアロイ製造部7と、重合反応させた重合体を流出口5から流入させ、この重合体を連続して押し出す第2押出装置8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーアロイの反応押出成形方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、環境保全の見地から、使用後そのまま廃棄処理できる生分解性プラスチック繊維材料の開発が強く要望されている。その中で、ポリ乳酸は農作物を原料とした生分解性材料であり、近年、特に注目が集まっている。このポリ乳酸に関して次のような製造方法が提案されている。
【0003】
特許文献1の高分子量ポリ乳酸及びその成形体の製造方法に示す通り、重量平均分子量500〜5,000の乳酸プレポリマーをスクリュー式押出機内において加熱下かつ減圧下で水分を除去しながら重縮合反応させる重量平均分子量10,000以上のポリ乳酸の製法、及び生成したポリ乳酸を当該スクリュー式押出機から押し出すことにより成形する発明が提案されている。
【0004】
特許文献2に示すポリ乳酸の製造方法に示す通り、乳酸エステルを回分式の重合反応槽内で、生成するアルコールを除去しながら重縮合させ、得られたオリゴマーをスクリュー式押出機内で、生成するアルコールを除去しながら更に重縮合させる発明が提案されている。
【0005】
特許文献3に示す共重合体の連続製造装置は、ポリエステルエーテル共重合体を、ペレット化等したポリエステルとポリエーテル類の二種の重合原料から、これらを回分槽内で混合攪拌させた後、解重合反応させ、次に所定の反応条件下で重縮合反応させて生成し、成形材料を形成するのにストランド状に押出す一連の過程を連続的に行えるものである。この連続製造装置は、二種以上の重合原料を混合攪拌させる混合攪拌機(1)と、重合原料の混合物を解重合反応させる解重合反応手段(2)と、真空配管(4)(7)を通じて真空手段(5)(8)と連結した重合反応機(3)(6)と、重合反応させて生成される共重合体をストランド状に押出す押出機(9)とよりなり、これらをこの順に流動配管(10)で直列に連結した構成とする。
【0006】
特許文献4に示す乳酸系樹脂組成物の成形体は、乳酸系樹脂50〜90重量部とJIS K7127の試験方法で測定した弾性率が2500Mpa以下の生分解性樹脂50〜10重量部からなる乳酸系樹脂組成物を、押出機ノズル部での平均流速が2.5〜20cm/sの条件で押出加工してなるテープヤーンである。このテープヤーンやモノフィラメントは、従来の技術によるものよりも、柔軟性、安全性に優れ、さらには、使用後の分解性の優れており、土嚢体や植生ネットに好適に使用することができる。
【特許文献1】特開平7-304859号公報
【特許文献2】特開平8-27255号公報
【特許文献3】特開平5-247191号公報
【特許文献4】特開2003-227030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の製法は以下の不都合があり、未だ不十分である。
(1)ポリ乳酸は硬くて脆いため衝撃に弱く、摩耗によって切断されるため、単独での製品化が困難である。
(2)高エネルギーを要し、バッチ式プロセス(回分槽による処理)を要し、製造プロセスが複雑になる。
(3)単一品の大量生産方式である。図9に示す通り、加工業者が加工する場合、既存のポリマー(ペレット等)の供給を受け、押出機を用いて別途に成形しなければならない。そのため、ポリ乳酸の製品に要求される分解時期や性能が異なること等が原因となって、多品種少量生産ができない。当然、新規なオーダーメイド製品を開発することもできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような事情を背景として、本発明者らは、2種類以上のポリマーアロイの重合化と成形とを同時に行う発明を着想した。
【0009】
この着想に基づいて、まず、乳酸系樹脂のアロイ化として、剛性、脆性の改善のために、L-ラクチド(ポリ乳酸モノマー)と軟質な生分解性ユニットであるε-カプロラクトンとの共重合体について、また、摩擦特性の改善のためにポリ乳酸とフッ素系・ケイ素系グラフトポリマーとのポリマーブレンドについて検討を行った。これら2種類の乳酸系ポリマーアロイの実験室的製造を行い、製品及び化学反応の計測評価を行った。その結果に基づき、乳酸系樹脂と種々のポリマーやモノマーとのブレンド法並びに共重合法の双方に使用が可能である新規のポリマーアロイの反応押出成形方法及び装置を開発し、それを用いた生分解性プラスチックの製造試験を行った。さらに、製造された生分解性プラスチックの材料としての総合評価を行い、得られたデータに基づき製造装置の改良を加え、実用の途に供することができるようになった。
【0010】
即ち、本発明に係るポリマーアロイの反応押出成形装置は、請求項1に示す通り、ポリマーアロイ第1原料を連続して供給する供給部と、前記供給部と接続し、前記供給されるポリマーアロイ製造用の第1原料を連続して押し出す第1押出装置と、流入口と流出口を備え、前記流入口が前記第1押出装置の出口と接続し、前記押し出された第1原料と、少なくとも1種類のポリマーアロイ製造用の第2原料とを流入させて、前記原料を溶融状態で反応させるポリマーアロイ製造部と、前記ポリマーアロイ製造部の流出口と接続し、該反応させた重合体を流入させ、該重合体を連続して押し出す第2押出装置と、を備えるポリマーアロイの反応押出成形装置とする。
【0011】
本発明に係るポリマーアロイの反応押出成形方法は、請求項2に示す通り、ポリマーアロイ製造用の第1原料を連続して供給する供給ステップと、前記供給される第1原料を連続して押し出す第1押出ステップと、前記押し出された前記第1原料とポリマーアロイ製造用の第2原料とを溶融状態で反応させる反応ステップと、該反応させた重合体を連続して押し出す第2押出ステップと、を備えるポリマーアロイの反応押出成形方法とする。
【0012】
請求項1、2でいうポリマーアロイには、主として高分子量のポリ乳酸等を含む。ポリマーアロイは共重合体以外にもポリマーブレンドも含む。ポリマーブレンドの場合には重合反応を含む場合もあるが、ポリマー同士を混合させる場合、さらには混合後、加熱によるエステル交換を行う場合がある。ポリマーアロイ製造用の第1原料には、L-ラクチド(ポリ乳酸モノマー)、ポリマーアロイ製造用の第2原料には生分解ユニット(例えば、ε-カプロラクトン)の組み合わせ例が挙げられる。また、第1原料としてポリ乳酸、第2原料としてフッ素系・ケイ素系グラフトポリマーの組み合わせ例が挙げられる。触媒(例えば、オクチル酸スズ等)も適宜添加することができる。主として、第1原料は乳酸系ではあるが、ほかの種類の原料も採用できる。例えば、一度使ったポリエステル製品は劣化するが、本装置により、元の性能に戻すことができる。第1押出装置及び第2押出装置は、スクリュー式押出装置が好適である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1によれば、第1押出装置とポリマーアロイ製造部が協働することで反応を行い、第2押出装置が押出反応成形を行うことにより、連続的に2種類以上のポリマーアロイ原料を溶融・複合化し、反応と製品成形を同時に行うことができる。したがって、省エネルギー、プロセスの簡素化を実現できる。多品種少量生産が可能である。中小企業等が独自性を持って新規なオーダーメイド製品を開発することができる。さらに第1原料と第2原料の配合を変更することで、乳酸の脆性、耐摩耗性を改善できる。請求項2も請求項1と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明実施形態のポリマーアロイの反応押出成形装置1について図面を参照して説明する。反応押出成形装置1は、図1〜図6に示す通り、ポリマーアロイ製造用の第1原料を供給する第1原料供給部2と、第1原料供給部2と接続し第1原料供給部2から連続して供給されるポリマーアロイ第1原料を必要に応じて溶融しながら押し出す第1押出装置3と、流入口4と流出口5とを備え、流出口5が第1押出装置3の入口30と接続し、押し出されたポリマーアロイ製造用の第1原料を流入させて、第2原料供給部6から供給されるポリマーアロイ用の第2原料を流入させ、第1原料及び第2原料とを溶融状態で反応させるポリマーアロイ製造部7と、ポリマーアロイ製造部7のケーシング70と接続し、反応させた重合体を流出口5から流入させ、この重合体を連続して押し出す第2押出装置8と、ポリマーアロイ製造部7を減圧する真空装置9と、第2押出装置8の先端部に取り付けられ製品Pを成形するダイ10と、ポリマーアロイの製造及び押出成形を制御する制御部11と、を備える。触媒を第1原料及び第2原料に添加する場合、第1原料には添加せず、第2原料に添加する場合が挙げられる。さらに、触媒を第1原料及び/又は第2原料に混合する構成でもよいし、図1の点線で示す通り、前記原料とは別途経路で触媒を添加するため、触媒注入装置12と、触媒注入装置12から第1原料供給部2及び/又はポリマーアロイ製造部7へ触媒を供給するポンプ13と、を備えてもよい。以下、各部を詳細に説明する。
【0015】
第1原料供給部2は、ホッパ20と、ホッパ20を開閉する蓋21と、蓋21をホッパ20に封止する複数のクランプ22と、ホッパ20を冷却する冷却装置23と、ホッパ20下部の接続部24と、を備えている。粉又はペレットの第1原料をホッパ20内に供給し、ホッパ20の上部に蓋21を取り付け、クランプ22で締め付けることで外気と遮断してある。真空装置9でポリマーアロイ製造部7内を真空に引くことから、ポリマーアロイ製造部7と連通した第1原料供給部2内も真空に引かれることとなり、ホッパ20内の内部圧力が減圧される。第1原料はポリマー、モノマーのいずれでも適用できる。第1原料に必要に応じて触媒を添加する。第1原料を乾燥させるため、真空に引いた方が第1原料からの水分の除去が促進される。冷却装置23によりホッパ20を冷却する。必要によってはホッパ20をヒータ(図示略)で加熱してもよい。第1原料供給部2の真空効果が少ない場合、第1原料供給部2を直接、真空装置9と接続させてもよい。この場合、図1の点線で示す通り、配管26、真空トラップ92、配管28を設け、真空ポンプ90と接続させてもよい。さらに、第1原料供給部2を複数個設けて、切り替えて第1押出装置3へ第1原料を供給するようにすると、連続運転ができる。また、必要によっては、第1原料供給部2を2個以上設けて、一度、ポリマーアロイ製造部7内で重合反応を起こさせた後、生成した重合体に対して、第1原料及び第2原料とは成分が相違するポリマーアロイ製造用の第3原料を添加できるようにしてもよい。
【0016】
第1押出装置3は、入口30と出口31とを有するケーシング32と、ケーシング32内に配置されるスクリュー33と、スクリュー33を駆動する駆動部34と、駆動部34を駆動するモータ35と、ケーシング32を加熱するヒータ36と、ケーシング32の内部の温度を計測する温度センサ37と、を備える。入口30は接続部24に接続する。出口31はポリマーアロイ製造部7と接続する。ケーシング32は水平に長手方向が配置される。スクリュー33の駆動により第1原料をポリマーアロイ製造部7に供給する。
【0017】
第2原料供給部6は、液状の第2原料及び液状の触媒が貯留される供給容器60と、供給容器60と接続する配管61と、配管61と接続するポンプ62と、ポンプ62とポリマーアロイ製造部7とを接続する配管63とを備える。第2原料供給部6からポリマーアロイ製造部7に第2原料を供給する。ポンプ62の流量制御により供給される第2原料の供給量を変更できる。ポンプ62は液体に限らずに粉体を通すものとしてもよい。
【0018】
ポリマーアロイ製造部7は、ケーシング70と、ケーシング70内に配置されるスクリュー71と、スクリュー71が固定される回転軸72と、回転軸72を回転駆動する駆動部73と、駆動部73を駆動するモータ74と、ケーシング70を加熱するヒータ75と、ケーシング70内部の温度を計測する温度センサ76と、流出口5付近に設けられる定量吐出装置77と、定量吐出装置77を駆動するモータ78と、架台79と、を備える。流入口4は第1押出装置3の出口31と接続される。流出口5は第2押出装置8と接続される。第1原料と第2原料とをスクリュー71(羽根でも良い。)で攪拌し、重合体を生成する。攪拌を停止すれば、重合体はケーシング70内に留まる。制御部11からの信号に基づいて、回転軸72の回転速度を制御することにより、反応の制御を調整する。回転軸72の回転速度を速くすれば、当然、スクリュー71が速く回転するので、反応時間が短くなる。逆に、回転軸72の回転速度を遅くすれば、スクリュー71をゆっくり回転するので、反応時間は長くなる。ケーシング70は垂直に長手方向が配置されていて、また、ケーシング70はホッパ形状であって下端が縮径している。ケーシング70内の温度及び圧力は、第1原料、第2原料の種類によっても相違するが、乳酸系ポリマーアロイでは、もっとも好ましいのが100℃〜130℃、好ましいのが100℃〜180℃、ポリエステル(ペット)を含めれば、100〜300℃となり、真空度は1000〜0.1Paである。できる限り減圧にしたほうが好ましい。ヒータ75を加熱すればポリマーアロイ製造部7内の温度は上がる。ポリマーアロイ製造部7内で反応させながら第2押出装置8で押出成形するが、下流側の第2押出装置8内でも反応が進行する場合もある。ポリマーアロイ製造部7に貯留される重合体の容積は、第2押出装置8の排出量よりも多く設定されている。例えば、ポリマーアロイ製造部7内に滞留する重合体の重量が2Kgであるならば、吐出重量は1Kg/hrに設定される。スクリュー71とケーシング70の内壁の間には隙間が形成され、隙間を介してポリマーアロイ製造部7内で重合体が逆流できるようになっている。運転条件によっては、ポリマーアロイ製造部7内で行う反応は、従来法では1万ぐらいであった分子量が、10万くらいにまで向上させることができる。
【0019】
第2押出装置8は、入口80と出口81とを有するケーシング82と、ケーシング82内に配置されるスクリュー83と、スクリュー83を回転駆動する駆動部84と、駆動部84を駆動するモータ85と、ケーシング82を加熱するヒータ86と、ケーシング82内部の温度を計測する温度センサ87と、冷却ファン88と、を備える。入口80はポリマーアロイ製造部7の流出口5と接続される。出口81はダイ10と接続される。ケーシング82は長手方向が水平に配置される。
【0020】
真空装置9は、真空ポンプ90と、真空ポンプ90と接続する配管91と、配管91と接続する真空トラップ92と、真空トラップ92とポリマーアロイ製造部7とを接続する配管93とを備える。真空装置9により、ポリマーアロイ製造部7内を真空に減圧し、これに伴い、第1原料供給部2内も減圧する。ポリマーアロイ製造部7内で第1原料と第2原料とを反応をさせると、余分な反応生成物ができるので、真空装置9により余分な反応生成物を除去する。この余分な反応生成物には油分も含まれるので、真空ポンプ90にトラップ弁(図示略)を設け、ドレンに排出する。余分な反応生成物を抜く場合は、ある程度、重合体の重合度が上がってきたら、適宜、抜くことが好ましい。
【0021】
ダイ10から製品Pが排出される。ダイ10は各種の断面形状を採用できる。例えば、小径穴を形成すれば繊維になり、スリットを形成すればフィルムになる。先端にアタッチメント(図示略)を取り付けると、押し出された製品Pの表面にコーティングをすることもできる。
【0022】
上記実施形態の変形例として、第2原料供給部6が第1原料供給部2に接続され、第1原料供給部2から供給されるように変更されてもよい。また、他の変形例として、真空装置9により、第1原料供給部2内の真空度を高くして、水分等を抜くように設定してもよい。これは第2原料が粉体の場合に好適である。真空装置9により第1原料供給部2内の真空度を上げると、固相重合により重合度があがり強度が大きくなる。
【0023】
本発明実施形態のポリマーアロイの反応押出成形方法は、図1〜図6に示す通り、ポリマーアロイ製造用の第1原料を第1供給部2から接続部24及び入口30を経て、第1押出装置3に連続して供給する供給ステップと、第1押出装置3に供給されるポリマーアロイ第1原料をスクリュー33により連続して出口31に押し出す第1押出ステップと、出口31からポリマーアロイ製造部7の流入口4に押し出された第1原料と、第2原料供給部6からポリマーアロイ製造部7へ供給されるポリマーアロイ製造用の第2原料とを溶融状態でスクリュー71を回転させることで攪拌し反応させる重合反応ステップと、ポリマーアロイ製造部7で反応させた重合体を連続してスクリュー83により出口81に押し出し、ダイ10で成形する第2押出ステップと、を備える。必要に応じて、供給ステップ及び/又は重合反応ステップにおいて、適宜の触媒を加える。方法に関する記載は反応押出成形装置1での説明を援用する。
【0024】
以下、実施例1及び2により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例1及び2は乳酸系樹脂のアロイ化(ブレンド、共重合)方法を示し、また、パイロットプラントスケールでの生分解性プラスチックの製造装置を示すものである。装置内で共重合反応などの反応と押出成形を同時に行うことで、これまで製造できなかった生分解性樹脂の多品種少量生産を可能とするものである。しかしながら、装置内で反応を行うため、生産される樹脂の製品としての評価のみならず化学反応過程の評価も必要となる。そこで、本装置1を設計するための基礎的データとして、実験室系及び従来の押出成形機における共重合反応、溶液キャスト法及びホットプレス法によるポリマーブレンド製造、及び、得られた生成物について、計測による解析評価を行ったので、比較例として、併せて説明することにする。
【0025】
本方法及び装置の発明に先立って、比較例1、2として、実験室系及び既存の装置により共重合反応及びポリマーブレンドの2種類の方法で乳酸系ポリマーアロイの製造を行った。これらの製品及び製造過程について、溶液及び固体NMRの測定により、反応条件と生成物の相関及び生成物の特性との関係について解析評価を行った。その結果、L-ラクチドとε-カプロラクトンとの共重合体ではブロック性の高い高分子量のポリマーが得られた場合に、また、ポリマーブレンドでは添加剤としてグラフトポリマーを加えた場合に、より好ましい特性を持つことがわかった。これらの結果を踏まえ、剛性、脆性の改善のためにはポリマーアロイ製造部7で十分に反応が完了し、かつ、反応押出部分への製品の送り込みが遅滞なく行われることが必要であることがわかった。さらに、耐摩耗性の改善のためには、反応押出部分(2次押出部分)以降でグラフトポリマーを添加した方がより望ましく、混練・真空部分の改良、あるいは、繊維の場合は、芯鞘ノズルなど、ダイ10の構成を改良するなどアタッチメントの接続が必要である。以上の知見により、新規な反応押出成形方法及び装置に係る発明を完成させ、優れた機械的特性を持つポリマーアロイの製造を行うことができた。
【比較例1及び比較例2】
【0026】
L-ラクチド(LLA)とε-カプロラクトン(CL)との共重合反応を行うことによって、ポリ乳酸(PLA)の剛性、脆性を改善することを試みた。実験室系でトルエンを溶媒として用いた方法(以下、比較例1)と従来の押出成形機を用いた製造方法(以下、比較例2という。)の2種類の方法で共重合反応を行い、両者を比較した。比較例1の代表的な手順を以下に示す。50mLのナス型フラスコに、溶媒としてトルエン(21.3mL)、原料モノマーとしてL-ラクチド(LLA 10.5g)とε-カプロラクトン(CL 3.7mL)、LLA:CL=75:25、触媒として、オクタン酸スズ(0.036mL)、を添加し、窒素をフローさせながら、オイルバス中で100から120℃に加熱、攪拌し、40時間反応させた。得られた粘性の生成物は、クロロホルムで溶解後、冷メタノールに再沈殿させた。沈殿物をろ過した後、7日間真空で乾燥させて、LLA/CLポリマーアロイを得た。比較例1ではオクチル酸スズを触媒として用いることで、L-ラクチドとε−カプロラクトンとの組成比と関係なく、4万から5万の高分子量のポリマーアロイを得ることができた。比較例2では、2軸押出機を用いた。装置は、東洋精機製のラボプラストミル、スクリューは20mm、L/Dが20、回転方向は異方向外回りの装置を用いた。代表的な手順を以下に示す。原料モノマーとしてLLA(粉状)を160g、CL(液状)を40g、触媒としてオクチル酸スズを0.3mmLを混合して、押出機に導入した。押出機のヒータ温度は180℃、回転数は10rpmで運転し、共重合反応させ、直径2mmの口金から粘性の生成物を押出し、室温で冷却し、LLA/CLポリマーアロイを得た。押出機中の原料の滞留時間は10分から30分である。CL比の多い場合(LLA:CL=50:50,25:75,0:100)については仕込み原料が液状になったために装置に導入することが不可能であった上に、CL比の少ない場合であっても重合度が低く、ポリマーアロイの分子量も1万程度に過ぎなかった。さらに、これらの共重合体の溶液NMRを測定することにより、長鎖のLLAユニットにCLユニットが挿入されている形態をとり、CLユニットに関してランダム度がかなり高くなっていることがわかった。比較例1(実験室系)で合成したランダム度の違うポリマーアロイの解析評価を行ったが、それによると、ランダム共重合体と比較してブロック共重合体では、ポリ乳酸と同等程度の強度を持ち、かつ、引張剛性率がポリ乳酸より低く、優れた機械的特性を持っている。また、ランダム共重合体では空気中で放置するだけで容易に加水分解を受けるが、ブロック共重合体では空気中での加水分解速度は遅くポリ乳酸ホモポリマーよりわずかに早い程度であった。したがって、比較例2の押出成形機で製造した共重合体はランダム性がかなり高いため、空気中での分解性も高く、分子量も低いことも相まって、フィラメントやフィルムなどの形状に加工することは不可能であった。
【比較例3】
【0027】
本装置の製作に当たって、真空・混練部を有するポリマーアロイ製造部7部分の機能が重要となるので、第1押出装置3とポリマーアロイ製造部7の製作を先行して行った。重合反応器7の実証試験として、前記比較例1(実験室系)や比較例2(従来の押出成形機)による製造データのあるL-ラクチド(LLA)とε-カプロラクトン(CL)との共重合反応について検討を行った。まず、第1押出装置3からLLAと触媒を加えた後に、CLと触媒をポリマーアロイ製造部7内に溶液注入する方法で製造実験を行った。比較例1の押出成形機では製造できなかったCL比の多い場合(LLA:CL=50:50,25:75,0:100)についても共重合体を得ることができた。しかしながら、LLAとCLの組成比と関係なく、得られた共重合体いずれも黄色から褐色に着色し、分子量が2万から3万程度とそれほど分子量の向上は見られず、内部に気泡が混入していた。そこで、反応しながら脱泡が可能なように、ポリマーアロイ製造部7での攪拌機構を強化して、ポリマーの劣化(黄変)を防ぐために反応温度を低く設定するとともに、窒素ガスをフローさせた。これは反応器内部を窒素ガスで満たすということである。酸素がないと、ポリマーの酸化劣化が起こらないためである。これにより、材料の酸化劣化が抑えられ、透明で、かつ、分子量が5万から8万程度まで上昇した。しかしながら、これらの共重合体は分子量が高いのにもかかわらず、粘着性が高く、気泡も完全には除去できなかった。溶液NMRとGPCの測定結果から考えて、この粘着性は未反応のモノマーの存在によるもので、得られた共重合体はいずれもCLユニットに関してランダム性の高いものであった。
【実施例1】
【0028】
上記比較例1〜3による知見に基づいて実施例1を行った。上記ポリマーアロイ製造部7の実証試験の結果により、真空系、ガス・パージ系(反応器7の上部に真空ポンプに接続されたラインと、窒素ガスボンベに接続したラインがある。それらは、バルブで開閉できるようになっている。)、サンプル導入系(例えば、液状のサンプルを導入できる配管、図1の63に当たる)、攪拌系の改良を行い、第2押出装置8(反応押出部)を加えた。なお、フィラメント状やフィルム状のサンプルの製造が可能なように、第2押出装置8の先端に加熱が可能なダイ10を取り付けて実証試験を行った。
【0029】
L-ラクチド(LLA)とε-カプロラクトン(CL)との本装置による共重合反応については、図7に示す通り、CLユニットのブロック性を高めるためにポリマーアロイ製造部7からCLと触媒)(オクチル酸スズ等)を加え、先にCLユニットの重合度をある程度進めてから、第1原料供給部2からLLAと触媒を加える方法で実証試験を行った。
【0030】
実施例1の具体的な方法を図1に従い列記する。まず、第2原料供給部6にCLを60gと触媒(オクチル酸スズ)0.2gを混合する。ポンプ62を介し、配管63を経由してポリマーアロイ製造部7に送り込まれる。ポリマーアロイ製造部7では、温度120℃、回転数5rpm、20分間、攪拌し、反応させる。
【0031】
続いて、第1原料供給部2にLLAを240g、触媒(オクチル酸スズ)0.8g、酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバスペシャリティーケミカルズ製)0.2gを混合して、ホッパ20に供給し、第1押出装置3に導入される。第1押出装置3のヒータ36が40℃、スクリュー回転数5rpmで原料をフィードし、出口31からポリマーアロイ製造部7に導入される。
【0032】
続いて、第1原料等は、ポリマーアロイ製造部7で、ある程度重合反応が進んだ第2原料と混合し、共重合反応を行った。ポリマーアロイ製造部7での共重合反応の条件は、温度120℃、回転数5rpm、常圧で60分反応させた後、ポリマーアロイ製造部7内部を真空ポンプで30分間減圧し、水分などの不要分を除去した。真空度は1000から0.1Paで、なるべく減圧にしたほうが望ましい。ここで、高い分子量を持つポリマーアロイが合成される。
【0033】
続いて、窒素ボンベの接続ラインのバルブを開き、ポリマーアロイ製造部7及び第1押出装置3に窒素を導入し、常圧にする。その後、定量吐出装置77を回転数5rpmで回転させ、第2押出装置8に反応物(ポリマーアロイ)を導入する。
【0034】
第2押出装置8のヒータは、140℃に設定され、スクリュー83は3〜5 rpmで回転させ、さらに重合反応させ(分子量をさらに増加させる)、ダイ10から、押し出され、目的とする形状のポリマーアロイを得た。押出の圧力は、2〜5MPaが最も成形しやすい条件であった。
【0035】
ここで、表1に、比較例1,2、実施例1のLLA/CL系の仕込み組成、アロイ組成、アロイ特定の一覧表を示す。
【表1】

【0036】
このように第1押出装置3で第1次反応を行い、ポリマーアロイ製造部7で第2次反応を行い、第2押出装置8で第3次反応及び成形を行わせた。さらに、共重合体の重合度を向上させるために、真空により水分などの不要分を除去してから、第2押出装置8にサンプルの送り出しを行った。これによって、気泡を含まず、かつ、着色ない透明な共重合体を得ることができた。この共重合体の溶液NMRを測定した結果、これまで得られなかったCLユニットのブロック性の高い共重合体が生成していることがわかった。LLAとCLの組成比と関係なく高分子量のポリマーを得ることができたが、CL含有量が上昇するについて、共重合体の柔軟性は増した。これは固体NMRの緩和時間測定の結果から、分子鎖の運動性が増加したためであると考えられた。この固体NMRの緩和時間と共重合体の柔軟性との関係は、前記比較例1の実験室系及び比較例2の押出成形機で製造した共重合体についても見られたものであった。得られた共重合体については、適切な形状のダイ10を選ぶことにより、フィラメント状にもフィルム状にも加工することができた。LLA:CL=90:10の共重合体は曲げに弱く、伸展性に乏しく、また、LLA:CL=60:40は柔軟であったが強度に乏しく、特にLLA:CL=80:20で優れた性質を持つ共重合体が得られることがわかった。
【比較例4及び比較例5】
【0037】
フッ素系やケイ素系ポリマーを添加することにより乳酸系ポリマーアロイを製造し、耐磨耗性を改善することを試みた。最初にポリ乳酸(PLA)にケイ素系ポリマーとしてポリジメチルシロキサン(PDMS)を添加したが、PDMSが低分子量の場合はPDMSが揮発する一方、高分子量の場合にはPDMSが表面上で斑になり、満足すべきポリマーブレンドを製造することはできなかった。そこで、PLAにフッ素系・ケイ素系の置換基を側鎖に持つグラフトポリマーを添加することにより、乳酸系ポリマーアロイの製造を試みた。PLAにフッ素系(F-gra)・ケイ素系(Si-gra)のグラフトポリマーを1〜5重量%添加し、溶液キャスト法とホットプレス法の2種類の方法でポリマーブレンドを製造した。溶液キャスト法により製膜した場合、F-graについては2重量%で、Si-graについては5重量%添加することにより、フィルム表面が白濁し、硬度も硬くなっていた。これらのポリマーブレンド・フィルムを偏光顕微鏡写真により観察すると、白濁はフィルム中に存在する球晶の粒径の増加によるもので、添加剤が核剤となってポリ乳酸の結晶化が促進されていることがわかった。続いて、製造したポリマーブレンド・フィルムの表面特性を風合試験機により調べた。摩擦子の種類にかかわらず、摩擦係数(MIU)の低下が見られた。特に、フィルムキャスト法の場合について、添加剤が偏在するため、添加量が少量の場合であってもMIUの低下に効果的に働くことがわかった。
【実施例2】
【0038】
比較例4及び5の知見に基づき、実施例2により、ポリ乳酸(PLA)に数重量%のグラフトポリマーを含むポリマーブレンドの製造を行った。まず、L-ラクチド(LLA)、ケイ素系グラフトポリマー(Si-gra,LLAに対して5重量%)、触媒を加え、重合反応とポリマーブレンドを同時に行うことを試みた。図8に示す通り、第1原料供給部2からLLA190gを加え、第1押出装置3に導入し、温度40℃、スクリュー回転数5rpmで、出口31を経由してポリマーアロイ製造部7に導入された。
【0039】
ポリマーアロイ製造部7にSi-gra溶液を16.3g(溶媒キシレン、固形分45%)と触媒0.7gの混合液を加えた。ポリマーアロイ製造部7は、温度120℃、回転数5rpmで45分間、攪拌した。このとき、可燃性の溶媒を除去するため、窒素ガスは、0.1でフローさせた。その後、ポリマーアロイ製造部7内部を真空ポンプで30分間減圧し、水分、溶媒(キシレン)などの不要分を除去した。真空度は1000〜0.1Paで、なるべく減圧にしたほうが望ましい。
【0040】
続いて、窒素ボンベの接続ラインのバルブを開き、ポリマーアロイ製造部7及び第1押出装置3に窒素を導入し、常圧にする。その後、定量吐出装置77を回転数5rpmで回転させ、第2押出装置8に反応物(ポリマーアロイ)を導入する。
【0041】
押出装置のヒータは、150℃に設定され、スクリュー83は3〜5rpmで回転させ、さらに重合反応を継続させることで(分子量をさらに増加させる)、ダイ10から反応物が押し出され、目的とする形状のポリマーアロイを得た。押出の圧力は、2〜5MPaが最も成形しやすい条件であった。
【0042】
ここで、表2に、実施例2と比較例4のLLAとSi-gra系の仕込み組成、アロイ特性を示す。
【表2】

【0043】
グラフトポリマーを加えた場合においても、LLAの重合反応は問題なく進行し、高分子量のポリマーを与えた。また、Si-graとの溶融ブレンドも同時に進行し、ほぼ均質なフィラメント状のサンプルが得られた。このように、ポリマーアロイ製造部7で第1次反応を行い、第2押出装置8で第2次反応及び成形を行う。
【実施例3】
【0044】
比較例4、5及び実施例2の知見に基づき、実施例3により、ポリ乳酸(PLA)にフッ素系のグラフトポリマー(F-gra)を数重量%含むポリマーブレンドの製造を行った。まず、L-ラクチド(LLA)、フッ素系グラフトポリマー(F-gra,LLAに対して2.5重量%)、触媒を加え、重合反応とポリマーブレンドを同時に行うことを試みた。図8に示す通り、第1原料供給部2からLLA195gを加え、押出装置3に導入し、温度40℃、スクリュー回転数5rpmで、出口31を経由して反応器7に導入された。
【0045】
ポリマーアロイ製造部7にF-gra溶液を30.6g(溶媒キシレン、固形分7.5%)を濃縮して固形分含量50%にしたものと触媒0.7gの混合液を加えた。ポリマーアロイ製造部7は、温度120℃、回転数5rpmで45分間、攪拌した。このとき、可燃性の溶媒を除去するため、窒素ガスは、0.1でフローさせた。その後、ポリマーアロイ製造部7内部を真空ポンプで30分間減圧し、水分、溶媒(キシレン)などの不要分を除去した。真空度は1000から0.1Paで、なるべく減圧にしたほうが望ましい。
【0046】
続いて、窒素ボンベの接続ラインのバルブを開き、反応器7及び押出装置3に窒素を導入し、常圧にする。その後、定量吐出装置77を回転数5rpmで回転させ、押出装置8に反応物(ポリマーアロイ)を導入する。
【0047】
押出装置のヒータは、150℃に設定され、スクリュー83は3〜5rpmで回転させ、さらに重合反応を継続させることで(分子量をさらに増加させる)、ダイPから反応物が押し出され、目的とする形状のポリマーアロイを得た。押出の圧力は、2〜5MPaが最も成形しやすい条件であった。
【0048】
ここで、表2に、実施例3と比較例5のLLAとF-gra系の仕込み組成、アロイ特性を示す。
【表3】

【0049】
実施例2及び3においては、ポリマーアロイ製造部7からグラフトポリマーと触媒を加えているが、第1原料供給部2から加えることができるし、LLAと同時に加えることもできる。
【0050】
芯鞘ノズルを第2押出装置8以降に接続するなど添加方法の改良を行うことで、溶液キャスト法によるフィルムと同様の摩擦特性を実現することが可能である。
【0051】
上記実施例1〜3のように、ポリマーブレンドについても共重合体と同様、製品加工の可能なサンプルを得ることは可能である。乳酸系樹脂と種々のポリマーやモノマーとの共重合法並びにブレンド法の双方に使用が可能である新規な反応押出成形装置1及び反応押出方法を提供することができる。
【0052】
以上のような本実施形態に係る反応押出成形装置1及び反応押出成形方法では、第1原料供給部2から第1原料を第1押出装置3に直接供給し、ポリマーアロイ製造部7内で第1原料と第2原料とが反応し、第2押出装置8により成形することができる。また、第1原料と第2原料との配合を簡単に変更できる。さらには、反応押出成形装置1内で反応と成形が同時に進行させることも可能であるし、第2押出装置8内でポリマーアロイの分子量を向上させることも可能である。これにより以下の効果が生じるので、説明する。
【0053】
(1)実験室レベルでしか行うことができなかった共重合反応などの化学反応を装置内で行うことを可能にしたので、中小企業等がその優位性を確保し用途に応じた多品種少量生産(オーダーメイドの製品)を行うことができる。また、ポリマーブレンドについて、添加ポリマーの探索及び添加方法の改良により、優れた機械的特性を持つ製品の開発が可能となる。そして、装置内で反応を行うため、運転のためには合成化学や高分子化学の知識が必要となるが、製造試験をさらに行うことで、材料系・反応系に応じてマニュアル化を行うことができる。これにより、中小のユーザー企業が製品用途に合致するように共重合組成や化学構造を自由に変えることができ、ユーザー企業の独創性に富んだ種々の生分解性プラスチック商品を製造することを実現できる。
【0054】
(2)第1原料供給部2でモノマー、ポリマーの双方を導入することができ、ポリマーアロイ製造部7を持ち、溶液サンプルや触媒の導入を行うことができ、共重合やブレンドなど複数のコンポーネントの組み合わせにより、乳酸系ポリマーアロイの製造を簡便に行うことができる。
【0055】
(3)真空装置9によるポリマーアロイ製造部7内の真空化など、特殊な条件でポリマーアロイの混練を行うことができる。例えば、ポリマーアロイ製造部7内を真空にすることにより反応により生じる不要な成分の除去が可能であり、また、水分除去による分子量の向上が期待される。さらに、真空トラップ92により油分を分離するので、重合過程の廃液処理問題が解決できる。
【0056】
(4)第2押出装置8は反応押出機能を持ち、脱泡や均一化などにより優れたポリマーアロイが得られることが期待できる。この反応押出機能を実現するものとしては既存の押出成形機をそのまま用いることが可能である。
【0057】
(5)L-ラクチド(LLA)とε-カプロラクトン(CL)との共重合体、又は、ポリ乳酸(PLA)とフッ素系(F-gra)・ケイ素系(Si-gra)グラフトポリマーとのポリマーブレンドを得ることができ、フィラメント状あるいはフィルム状の成形体としての乳酸系ポリマーアロイを製造することができる。
【0058】
(6)生分解性能を備える触媒を適宜プロセスの途中で加えれば、柔軟性に富み、耐磨耗性に優れたポリ乳酸を製造できる。例えば、柔軟な生分解ユニットとしてε-カプロラクトン(CL)を用い、バイオマスによって供給されるイタコン酸など新たな生分解ユニットについて検討を行うことで、完全なバイオマス商品の製造方法を確立することができる。
【0059】
(7)第2押出装置8の出口に種々の機能を持つアタッチメントを設けることにより、目的とする製品を容易に成形できる。例えば、フィラメント状やフィルム状など形状を持つ生分解性樹脂製品を製造することができる。さらに、表面の摩擦特性を改善するなど、不均質性を持つ生分解性樹脂製品を製造することができる。
【0060】
(8)既存設備に追加設備することで本装置を設置することもでき、既存の押出装置を無駄にしない効果がある。例えば、既存の溶融紡糸製造ラインに取り付けることができるので、実用性が高いもので、装置設置のコスト低減も実現できる。
【0061】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改良、変更、追加等を加えることができる。それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、網、ロープ、プラスチック成形加工、玩具、繊維、オフィス用品等の産業に適用できる。また、本装置を導入することにより独自商品の開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明実施形態の反応押出成形装置1の模式図である。
【図2】同反応押出成形装置1の電気回路のブロック図である。
【図3】同反応押出成形装置1の正面図である。
【図4】同反応押出成形装置1の右側面図である。
【図5】同反応押出成形装置1の左側面図である。
【図6】同反応押出成形装置1の平面図である。
【図7】実施例1の対応図である。
【図8】実施例2の対応図である。
【図9】従来のバッチ式の生分解樹脂の製法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1…反応押出成形装置 2…第1原料供給部 3…第1押出装置 4…流入口
5…流出口 6…第2原料供給部 7…ポリマーアロイ製造部 8…第2押出装置
9…真空装置 10…ダイ 11…制御部 12…触媒注入装置
13…ポンプ 20…ホッパ 21…蓋 22…クランプ 23…冷却装置
24…接続部 26…配管 28…配管 30…入口 31…出口
32…ケーシング 33…スクリュー
34…駆動部 35…モータ 36…ヒータ 37…温度センサ
60…供給容器 61…配管 62…ポンプ 63…配管
70…ケーシング 71…スクリュー 72…回転軸 73…駆動部
74…モータ 75…ヒータ 76…温度センサ 77…定量吐出装置
78…モータ 79…架台 80…入口 81…出口 82…ケーシング
83…スクリュー 84…駆動部 85…モータ 86…ヒータ
87…温度センサ 88…冷却ファン 90…真空ポンプ
91…配管 92…真空トラップ 93…配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーアロイ第1原料を連続して供給する供給部と、
前記供給部と接続し、前記供給されるポリマーアロイ第1原料を連続して押し出す第1押出装置と、
流入口と流出口を備え、前記流入口が前記第1押出装置の出口と接続し、前記押し出されたポリマーアロイ第1原料と、少なくとも1種類のポリマーアロイ第2原料とを流入させて、前記原料を溶融状態で反応させるポリマーアロイ製造部と、
前記ポリマーアロイ製造部の流出口と接続し、該反応させた重合体を流入させ、該重合体を連続して押し出す第2押出装置と、
を備えるポリマーアロイの反応押出成形装置。
【請求項2】
ポリマーアロイ製造用の第1原料を連続して供給する供給ステップと、
前記供給される第1原料を連続して押し出す第1押出ステップと、
前記押し出された第1原料と、ポリマーアロイ製造用の第2原料とを溶融状態で反応させる反応ステップと、
該反応させた重合体を連続して押し出す第2押出ステップと、
を備えるポリマーアロイの反応押出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−301776(P2007−301776A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130875(P2006−130875)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【出願人】(300054206)株式会社シーエンジ (15)
【Fターム(参考)】