ポリマーコンジュゲート化プロドラッグ中のリンカーとしてのN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)グリシンアミド
少なくとも1つの永久結合を介してビシンリンカーに結合された少なくとも1種のポリマーを含む高分子プロドラッグを記載する。ビシンリンカーは、一時的結合を介してアミン含有生物学的活性部分に結合される。アミン含有生物学的活性部分(たとえば薬剤)は、一時的結合の切断により放出可能である。一例を挙げると、プロドラッグまたは対応する高分子プロドラッグリンカー試薬は、以下の構造:(式Ia)を有する。式中、Tは、DまたはAである(Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、Aは、脱離基である)。Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分である。Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在である。R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択される。R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択される。R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択される。R1は、ポリマーである。他の例では、ポリマーR1は、他の位置に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、タンパク質、天然産物、または合成化学化合物のような生物学的活性物質のアミノ基への一時的結合を有する高分子プロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、薬剤送達におけるポリマーは、溶媒−ポリマー混合物中に物理化学的に配合される薬剤と共に非共有結合的に使用されるか、または薬剤の官能基の1つにポリマー試薬を永久的に共有結合させることにより使用される。
【0003】
非共有結合的薬剤カプセル化は、長時間作用性放出プロファイルを得るべくデポ製剤に適用されてきた。典型的には、薬剤は、ポリマー材料と混合され、そして薬剤がバルクポリマー材料全体にわたり分配された状態になるように処理される。そのようなポリマー−薬剤アグリゲートは、注射可能なサスペンジョンとして投与されるマイクロ粒子として造形されうるか、またはポリマー−薬剤アグリゲートは、単回ボーラス注射で投与されるゲルとして配合される。ポリマーが膨潤したときに薬剤放出が起こるか、またはポリマーの分解によりバルクポリマーの外部への薬剤の拡散が可能になる。そのような分解過程は、自己加水分解的または酵素触媒的でありうる。薬剤−ポリマーゲルのボーラス投与に基づく市販薬の例は、ルプロン・デポ(Lupron Depot)である。懸濁マイクロ粒子に基づく市販薬の例は、ヌトロピン・デポ(Nutropin Depot)である。
【0004】
非共有結合的手法の欠点は、薬剤の無制御な突発型放出を防止するために、立体的にきわめて稠密な環境を形成するので、薬剤のカプセル化が高効率でなければならないことである。未結合の水溶性薬剤分子の拡散を抑制するには、強力なファンデルワールス接触(多くの場合、疎水性部分により媒介される)が必要である。タンパク質やペプチドのようにコンフォメーションの影響を受けやすい多くの薬剤は、カプセル化プロセス中および/またはカプセル化薬剤の後続の貯蔵中に機能を損なう。そのほかに、そのようなアミノ含有薬剤は、ポリマー分解生成物との副反応を起こしやすい(たとえば、非特許文献1を参照されたい)。さらに、薬剤の放出機序が生分解に依存して患者間で差異を生じる可能性がある。
【0005】
他の選択肢として、永久共有結合を介して薬剤をポリマーにコンジュゲートすることが可能である。この手法は、いわゆる小分子から天然産物を含めてより大きいタンパク質まで種々のクラスの分子に適用される。
【0006】
アルカロイドや抗腫瘍剤のような多くの小分子医薬剤は、水性流体への低い溶解性を示す。これらの小分子化合物を可溶化する一方法は、小分子化合物を親水性(水溶性)ポリマーにコンジュゲートすることである。ヒト血清アルブミン、デキストラン、レクチン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(N−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ジビニルエーテル−co−無水マレイン酸)、ヒアルロン酸のようなさまざまな水溶性ポリマーが、この目的で報告されてきた(非特許文献2)。
【0007】
癌治療における主要な課題は、細胞傷害剤を腫瘍細胞に選択的にターゲッティングすることである。小分子抗癌剤を腫瘍組織中に蓄積しかつこの作用剤の望ましくない副作用を低減する有望な方法は、サイトトキシンを巨大分子担体に結合することである。腫瘍への高分子薬剤コンジュゲートの受動的ターゲッティングは、(非特許文献3)に記載されるように、いわゆる浸透性保持性向上効果(EPR)に基づく。その結果として、いくつかのポリマー−薬剤コンジュゲートは、抗癌剤として臨床試験に入っている。
【0008】
ポリ(エチレングリコール)による生体分子の共有結合修飾については、1970年代後半から広範囲に研究されてきた。いわゆるPEG化タンパク質は、溶解性を増大させたり、in vivoで免疫原性を低下させたり、腎クリアランスおよび酵素によるタンパク質分解の減少に基づいて循環半減期を増加させたりすることにより治療効果を改良することが示されている(たとえば、非特許文献4を参照されたい)。
【0009】
しかしながら、INFα2、サキナビル、またはソマトスタチンのような多くの生物学的分子は、共有結合によりポリマーを薬剤にコンジュゲートしたときに、不活性であるかまたは生物学的活性の低下を示す(非特許文献5)。
【0010】
非共有結合性ポリマー混合物または永久共有結合のいずれもが呈する欠点を回避するために、薬剤をポリマー担体に化学的にコンジュゲートするプロドラッグ法を利用することが好ましいこともある。そのような高分子プロドラッグでは、生物学的活性部分(薬剤、治療剤、生物学的分子など)は、典型的には、担体部分と、薬剤分子のヒドロキシ基、アミノ基、またはカルボキシ基と、の間に形成される一時的結合により、高分子担体部分に結合される。
【0011】
プロドラッグとは、それ自体ではほとんど不活性であるが予想どおりに活性代謝物にトランスフォームされる治療剤のことである(非特許文献6を参照されたい)。担体プロドラッグ法は、薬剤がin vivoでポリマーから放出されてその生物学的活性を回復するように適用されうる。薬剤の徐放または制御放出が望まれる場合、プロドラッグの有する低減された生物学的活性は、放出薬剤と比較して有利である。この場合、副作用を伴ったり過量投与のリスクを生じたりすることなく、比較的大量のプロドラッグを投与することが可能である。薬剤の放出が長期間にわたり行われるので、薬剤を反復して頻繁に投与する必要性が低減される。
【0012】
プロドラッグの活性化は、図1に示されるように、担体と薬剤分子との一時的結合を酵素的もしくは非酵素的に切断することにより、またはその両方を逐次的に組み合わせることにより、すなわち、酵素的段階を行ってから非酵素的再構成を行うことにより、実施可能である。水性緩衝溶液のように酵素を含まないin vitro環境では、エステルやアミドのような一時的結合は、加水分解を受ける可能性があるが、対応する加水分解速度は、あまりにも遅すぎて、治療上有用ではない可能性がある。in vivo環境では、典型的には、エステラーゼまたはアミダーゼが存在し、エステラーゼおよびアミダーゼは、2倍から数桁に及ぶ加水分解速度の有意な触媒的促進を引き起こす可能性がある(たとえば、非特許文献7を参照されたい)。
【0013】
IUPACに基づく定義(非特許文献8で与えられる)
【0014】
プロドラッグ
プロドラッグとは、その薬理効果を呈する前に生体内変換を受ける任意の化合物のことである。したがって、プロドラッグは、親分子の望ましくない性質を改変または除外するために一時的に使用される特定の非毒性保護基を含有する薬剤とみなしうる。
【0015】
担体結合プロドラッグ(担体プロドラッグ)
担体結合プロドラッグとは、所与の活性物質と、改良された物理化学的性質または薬動学的性質を生成しかつ通常は加水分解切断によりin vivoで容易に除去しうる一時的担体基との一時的結合を含有するプロドラッグのことである。これは、図1に図式的に示されている。
【0016】
カスケードプロドラッグ
カスケードプロドラッグとは、活性化基のアンマスキング後にかぎり担体基の切断が有効になる担体プロドラッグのことである。
【0017】
高分子カスケードプロドラッグ
高分子カスケードプロドラッグとは、所与の活性物質と、活性化基のアンマスキング後にかぎり担体の切断が有効になる一時的高分子担体基との一時的結合を含有する担体プロドラッグのことである。
【0018】
バイオプレカーサープロドラッグ
バイオプレカーサープロドラッグとは、担体基への結合を必要とせずに活性成分自体の分子修飾により生じるプロドラッグのことである。この修飾は、代謝的もしくは化学的に変換可能な新しい化合物を生成し、得られる化合物は、活性成分である。
【0019】
生体内変換
生体内変換とは、生存生物または酵素製剤による物質の化学変換のことである。
【0020】
さらなる定義:
リンカー
担体物質および薬剤のいずれからも提供されない、担体プロドラッグ中に存在する切断制御化学構造または切断制御基。
【0021】
プロドラッグは、バイオプレカーサーおよび担体結合プロドラッグの2つのクラスに分類される。バイオプレカーサーは、担体基を含有しておらず、官能基の代謝的生成により活性化される。担体結合プロドラッグでは、活性物質は、一時的結合により担体部分に結合される。担体は、生物学的に不活性でありうるか(たとえばPEG)または標的指向性を有しうる(たとえば抗体)。本発明は、担体自体が担体タンパク質または担体ポリサッカリドまたは担体ポリエチレングリコールのような巨大分子である、高分子担体結合プロドラッグまたは巨大分子プロドラッグに関する。
【0022】
担体プロドラッグが切断されると、増大された生物活性を有する分子状物質(薬剤)と少なくとも1種の副生成物(担体)とが生成される。切断後、生物活性物質は、あらかじめコンジュゲートされて保護されていた少なくとも1つの官能基を露出し、この基の存在は、典型的には、薬剤の生物活性に寄与する。
【0023】
プロドラッグストラテジーを実施するために、薬剤分子中の少なくとも1つの選択される官能基を担体ポリマーへの結合に利用する。好ましい官能基は、ヒドロキシル基またはアミノ基である。したがって、結合化学条件および加水分解条件はいずれも、利用される官能基のタイプに依存する。単純な一段階切断機序では、プロドラッグの一時的結合は、多くの場合、内因的反応活性または酵素依存性により特徴付けられる。水性環境中における加水分解に対するこの結合の感受性は、酵素触媒作用の有無を問わず、高分子担体と薬剤との間の切断速度を制御する。
【0024】
一時的結合が反応活性エステル結合である多数の巨大分子プロドラッグが、文献に記載されている。これらの事例では、生物活性物質により提供される官能基は、ヒドロキシル基またはカルボン酸基のいずれかである(たとえば、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。
【0025】
とくに治療用生体巨大分子の場合だけでなく特定の小分子薬剤の場合にも、巨大分子担体を生物活性物質のアミノ基(すなわち、タンパク質のN末端基またはリシンアミノ基)に結合することが望ましいこともある。こうした例としては、薬剤の生物活性をマスキングするのに生物活性物質の特定のアミノ基(たとえば、活性中心またはレセプター結合に関与する領域もしくはエピトープに位置するアミノ基)をコンジュゲートすることが必要な場合が挙げられよう。また、プロドラッグの調製中、アミノ基は、ヒドロキシル基やフェノール性基と比較して求核性が大きいので、より化学選択的に攻撃対象になり、担体と薬剤とをコンジュゲートするためのより良好な手段として役立つ可能性がある。このことは、とくに、多種多様な反応性官能基を含有する可能性のあるタンパク質の場合にあてはまる。この場合、非選択的コンジュゲーション反応により、十分な特徴付けまたは精製を必要とする望ましくない生成物混合物を生じて、生成物の反応収率および治療効率が低下する可能性がある。
【0026】
アミド結合のほかに脂肪族カルバメートもまた、通常、エステル結合よりも加水分解に対してかなり安定であり、アミド結合の切断速度は、担体結合プロドラッグ中の治療有用成分の場合には遅すぎるであろう。したがって、プロドラッグのアミド結合の切断性を制御すべく隣接基のような構造化学成分を追加することが有利である。担体物質および薬剤のいずれからも提供されないそのような追加の切断制御化学構造は、「リンカー」と呼ばれる。プロドラッグリンカーは、所与の一時的結合の加水分解の速度に強い影響を及ぼしうる。こうしたリンカーの化学的性質の変化により、かなりの程度までリンカーの性質を操作することが可能である。
【0027】
標的化放出のために特異的酵素によりアミン含有生物学的活性部分のプロドラッグ活性化を行ういくつかの例が発表されている。酵素依存性の前提条件は、リンカーの構造が、対応する内因性酵素により基質として認識される構造モチーフを提示することである(図2に示されるとおり)。こうした事例では、一時的結合の切断は、酵素により触媒される一段階過程で行われる。(非特許文献14)には、プロテアーゼプラスミンによる抗腫瘍剤の酵素的放出についての記載がある。シタラビンが、トリペプチド配列D−Val−Leu−Lysを介してポリマーα,β−ポリ(N−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド(PHEA)に結合される。シタラビンの酵素的放出は、いろいろな種類の腫瘍塊中で濃度が比較的高いプロテアーゼプラスミンにより誘発される。
【0028】
プロドラッグ切断の酵素触媒的促進は、器官標的化適用または細胞標的化適用に望ましい特徴である。結合を選択的に切断する酵素が、治療の対象として選択された器官または細胞型に特異的に存在する場合、生物活性物質の標的化放出が誘発される。
【0029】
酵素依存性一時的結合の典型的な性質は、加水分解に対するその安定性である。酵素依存性一時的結合自体は、通常の投与レジームで薬剤の治療効果を引き起こしうる程度に薬剤を放出する速度で自己加水分解を受けることはないであろう。酵素が存在する場合に限り、酵素依存性一時的結合への酵素の攻撃により、酵素依存性一時的結合の切断が有意に促進され、同時に遊離薬剤の濃度が増大する。
【0030】
β−ラクタマーゼのような特異的酵素(非特許文献15)およびカテプシンBのようなシステインプロテアーゼ(非特許文献16)により活性化される抗腫瘍性高分子プロドラッグの例が報告されている。Wiwattanapatapeeら(2003)は、5−アミノサリチル酸を結腸に送達するためのデンドリマープロドラッグについて概説している。薬剤分子は、「第3世代」のPAMAMデンドリマーにアゾ結合によりコンジュゲートされる。5−アミノサリチル酸は、アゾレダクターゼと呼ばれる細菌酵素により結腸中で放出される(非特許文献17)。
【0031】
酵素支配的切断の主な欠点は、患者間の差異である。酵素レベルは、個体間で有意に異なる可能性があるので、その結果、酵素的切断によるプロドラッグの活性化に生物学的差異を生じる可能性がある。酵素レベルはまた、投与部位に依存して異なりうる。たとえば、皮下注射の場合、生体の特定の領域が他の領域よりも予測可能な治療効果を生じることが知られている。この予測不能な効果を低減させるために、非酵素的切断または分子内触媒作用に特別な関心が払われている(たとえば、非特許文献18を参照されたい)。
【0032】
さらに、そのような酵素依存性担体結合プロドラッグの薬動学的性質に関してin vivo−in vitro相関を確定することは困難である。信頼性の高いin vivo−in vitro相関の不在下では、放出プロファイルの最適化は、厄介な作業になる。
【0033】
薬剤分子中に存在するアミノ基への一時的結合を利用する他の高分子プロドラッグは、カスケード機序に基づく。カスケード切断は、マスキング基と活性化基との構造的組合せで構成されるリンカー化合物により可能になる。マスキング基は、エステルやカルバメートのような第1の一時的結合により活性化基に結合される。活性化基は、第2の一時的結合(たとえばカルバメート)を介して薬剤分子のアミノ基に結合される。加水分解に対する第2の一時的結合(たとえばカルバメート)の安定性または感受性は、マスキング基の存在または不在に依存する。マスキング基の存在下では、第2の一時的結合は、きわめて安定的であり、治療上有用な速度で薬剤を放出する可能性は低い。マスキング基の不在下では、この結合は、反応活性が高くなり、迅速な切断および薬剤放出を引き起こす。
【0034】
第1の一時的結合の切断は、カスケード機序の律速段階である。この第1の段階は、1,6−脱離のような活性化基の分子再構成を引き起こしうる。再構成により第2の一時的結合の反応活性がかなり高くなるので、その切断が引き起こされる。理想的には、第1の一時的結合の切断速度は、所与の治療シナリオにおける薬剤分子の所望の放出速度と同一である。さらに、第2の一時的結合の切断は、その反応活性が第1の一時的結合の切断により惹起された後、実質的に瞬間的であることが望ましい(図3参照)。
【0035】
1,6−脱離に基づくそのような高分子プロドラッグの例は、(非特許文献19)およびPCT特許出願である(特許文献1)、F.M.H. DeGrootら(特許文献2および特許文献3)、ならびにD. Shabatら(特許文献4)に記載されている。
【0036】
トリメチルロックラクトン化に基づく高分子アミノ含有プロドラッグの例は、(非特許文献20);PCT特許出願である(特許文献5)に記載された。このプロドラッグ系では、置換型o−ヒドロキシフェニル−ジメチルプロピオン酸が、第1の一時的結合としてエステル基、カーボネート基、またはカルバメート基によりPEGに結合され、第2の一時的結合としてアミド結合により薬剤分子のアミノ基に結合される。薬剤放出の律速段階は、第1の結合の酵素的切断である。この段階に続いて、ラクトン化による迅速なアミド切断が起こり、芳香族ラクトン副生成物が遊離される。
【0037】
Greenwald、DeGroot、およびShabatにより記載された上述のプロドラッグ系の欠点は、一時的結合の切断後にキノンメチドや芳香族ラクトンのような高反応性かつ潜在的毒性の芳香族小分子副生成物が放出されることである。潜在的毒性物質は、薬剤と共に1:1の化学量論比で放出され、in vivo濃度が高いと推定されうる。
【0038】
1,6−脱離に基づく芳香族活性化基を有するさまざまな一群のカスケードプロドラッグは、マスキング基と担体とを構造的に分離する。これは、ポリマー担体と活性化基との間で永久結合を利用することにより達成可能である。この安定結合は、カスケード切断機序に関与しない。担体がマスキング基としての役割を果たさず、活性化基が安定結合により担体に結合される場合、活性化基のような潜在的毒性副生成物の放出が回避される。活性化基とポリマーとの安定結合はまた、未確定の薬理学的性質を有する薬剤−リンカー中間体の放出を抑制する。
【0039】
Antczakら(非特許文献21)には、アミン含有薬剤分子用の巨大分子カスケードプロドラッグ系の根底をなす試薬について記載している。この手法では、抗体が担体としての役割を果たし、抗体は、安定結合により、酵素的に切断可能なマスキング基を有する活性化基に結合される。図4に示されるように、エステル結合されたマスキング基を酵素的に除去すると、第2の一時的結合が切断されて薬剤化合物が放出される。
【0040】
D. Shabatら(非特許文献22)は、マンデル酸活性化基に基づく高分子プロドラッグ系について記載している。この系では、マスキング基は、カルバメート結合により活性化基に結合される。活性化基は、アミド結合を介してポリアクリルアミドポリマーに永久的にコンジュゲートされる。触媒抗体によるマスキング基の酵素的活性化の後、マスキング基は、環化により切断され、薬剤が放出される。活性化基は、薬剤放出後、依然としてポリアクリルアミドポリマーに結合されたままである。
【0041】
M. R. Leeら(非特許文献23)は、マンデル酸活性化基と酵素的に切断可能なエステル結合マスキング基とに基づく類似のプロドラッグ系を報告している。
【0042】
それにもかかわらず、このリンカーの場合、1,6−脱離段階で、依然として高反応性芳香族中間体が生成される。芳香族部分が高分子担体に永久的に結合された状態を保持したとしても、潜在的毒性作用または免疫原性作用を伴う副反応が起こる可能性がある。
【0043】
これらの理由により、酵素依存性でなくかつ切断中に反応性芳香族中間体を生成しない脂肪族プロドラッグリンカーを用いてアミン含有活性剤の高分子プロドラッグを形成するための新規なリンカー技術を提供することが必要とされている。
【0044】
A. J. Garmanら(非特許文献24)は、組織型プラスミノーゲンアクチベーター中およびウロキナーゼ中のアミノ基の可逆修飾のためにPEG5000−無水マレイン酸を使用している。pH7.4の緩衝液でのインキュベーションに基づくマレアミン酸結合の切断によるPEG−uPAコンジュゲートからの機能性酵素の再生は、6.1時間の半減期を有する一次速度式に従う。マレアミン酸結合の欠点は、より低いpH値におけるコンジュゲートの安定性の欠如である。このため、マレアミン酸結合の適用可能性は、塩基性(高)pH値で安定な活性剤に限定される。なぜなら、早期プロドラッグ切断を防止するために、活性剤ポリマーコンジュゲートの精製を塩基性(高pH)条件下で行わなければならないからである。
【0045】
つい最近、R. B. Greenwaldら(非特許文献25および特許文献6)は、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)グリシンアミド(ビシン)リンカーに基づくPEGカスケードプロドラッグ系を報告した。Greenwaldらの論文および特許出願に記載の系では、2つのPEG担体分子が、薬剤分子のアミノ基に結合されたビシン分子に一時的結合により結合される。プロドラッグの活性化の最初の2つの段階は、両方のPEG担体分子をビシン活性化基のヒドロキシ基に結合する第1の一時的結合の酵素的切断である。PEGとビシンとの結合が異なるとプロドラッグの活性化速度も異なると記載されている。プロドラッグの活性化の第2の段階は、ビシン活性化基を薬剤分子のアミノ基に結合する第2の一時的結合の切断である(図5)。この系の主な欠点は、一時的結合を介するビシンリンカーへのポリマーの結合およびこの第2の一時的ビシンアミド結合の遅い加水分解速度(リン酸緩衝液中t1/2>3時間)が原因で、元の親薬剤分子と比較して異なる薬動学的性質、免疫原性、毒性、および薬力学的性質を示す可能性のあるビシン修飾プロドラッグ中間体が放出されることである。
【非特許文献1】D.H. Lee et al, J. Contr. ReL, 2003, 92, 291-299
【非特許文献2】R. Duncan, Nature Rev. Drug Disc., 2003, 2, 347-360
【非特許文献3】Matsumura, Y. and Maeda, H., in Cancer Res., 1986, vol 6, pp 6387-6392
【非特許文献4】Caliceti P., Veronese F.M., Adv. Drag Deliv. Rev. 2003, 55, 1261-1277
【非特許文献5】T. Peleg-Shulman et al., J. Med. Chem., 2004, 47, 4897-4904
【非特許文献6】B.Testa, J.M: Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 4
【非特許文献7】R.B. Greenwald et al. J. Med. Chem. 1999, 42 (18), 3857-3867
【非特許文献8】http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/medchem/[2004年3月8日にアクセス]
【非特許文献9】Y. Luo, MR Ziebell, GD Prestwich, "A Hyaluronic Acid-Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted to Cancer Cells", Biomacromolecules 2000, 1, 208-218
【非特許文献10】J Cheng et al, Synthesis of Linear, beta-Cyclodextrin Based Polymers and Their Camptothecin Conjugates, Bioconjugate Chem. 2003, 14, 1007-1017
【非特許文献11】R. Bhatt et al, Synthesis and in Vivo Antitumor Activity of Poly(L-glutamic acid) Conjugates of 20(S)-Campthothecin, J. Med. Chem. 2003, 46, 190-193
【非特許文献12】R.B. Greenwald, A. Pendri, CD. Conover, H. Zhao, Y.H. Choe, A. Martinez, K. Shum, S. Guan, J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667
【非特許文献13】B. Testa, J.M. Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley- VCH, 2003, Chapter 8
【非特許文献14】G. Cavallaro et al., Bioconjugate Chem. 2001, 12, 143-151
【非特許文献15】R. Satchi-Fainaro et al., Bioconjugate Chem. 2003, 14, 797-804
【非特許文献16】R. Duncan et al. J. Contr. Release 2001, 74, 135-146
【非特許文献17】W. R. Wiwattanapatapee, L. Lomlim, K. Saramunee, J. Controlled Release, 2003, 88: 1-9
【非特許文献18】B. Testa, J.M. Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 5
【非特許文献19】R.B. Greenwald et al. J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667
【非特許文献20】R.B. Greenwald et al. J.Med.Chem. 2000, 43(3), 457-487
【非特許文献21】Bioorg Med Chem 9 (2001) 2843-48
【非特許文献22】Chem. Eur. J. 2004, 10, 2626-2634
【非特許文献23】Angew. Chem. 2004, 116, 1707-1710
【非特許文献24】A.J. Garman, S.B. Kalindjan, FEBS Lett. 1987, 223 (2), 361-365, 1987
【非特許文献25】Greenwald et al. J. Med.Chem. 2004, 47, 726-734
【特許文献1】国際公開第99/30727号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/083180号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/043493号パンフレット
【特許文献4】国際公開第04/019993号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/089789号パンフレット
【特許文献6】国際公開第04/108070号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
本発明は、以上に記載の欠点に対処する。本発明は、ビシンリンカーを介してポリマーをアミン含有薬剤分子の第一級もしくは第二級のアミノ基に結合することにより特徴付けられる高分子プロドラッグを提供する。ただし、ポリマーは、永久結合を介してビシンリンカーに結合され、ビシンリンカーとアミン含有薬剤分子との結合は、一時的結合である。本出願では、ビシンは、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−グリシルまたはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−グリシンアミドまたはN,N−ビス(2−ヒドロキシ)グリシンの同義語として使用される。担体とビシンリンカーとの永久結合の存在に基づいて、本発明に係る高分子プロドラッグは、元の未修飾薬剤分子の放出を保証する(図6)。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明は、式Ia、Ib、またはIc
【化1】
【0048】
〔式中、T、X、およびR1〜R12は、以下に定義される〕
で示される高分子プロドラッグおよび対応する高分子リンカー試薬を提供する。
【0049】
ポリマー置換型ビシン残基の加水分解切断による本発明に係る高分子プロドラッグからの元の薬剤の放出は、式Ia〔式中、R2〜R12は水素である〕で示される高分子プロドラッグにより例示される。
【化2】
【0050】
以上に記載したように、高分子担体からの元の薬剤の放出は、pH依存性加水分解や分子内環化のような酵素的もしくは非酵素的な段階により媒介されうる。本発明の好ましい実施形態では、切断は非酵素的に行われる。pH7.4の水性緩衝液中37℃における本発明に係る高分子プロドラッグの切断速度の半減期は、好ましくは3時間〜6ヶ月、より好ましくは1日〜3ヶ月、最も好ましくは1日〜2ヶ月である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
式Ia中、式Ib中、または式Ic中のX、T、R1〜R12の定義
【0052】
TはDまたはAである。本発明に係る構造が高分子プロドラッグリンカー試薬である場合、TはAであり、Aは脱離基である。好適な脱離基Aの非限定例としては、クロリド、ブロミド、フルオリド、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N−ヒドロキシアザベンゾトリアゾリル、ペンタフルオルフェノキシ、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル、または当業者に公知の任意の他の脱離基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明に係る構造が高分子プロドラッグである場合、TはDであり、Dは、小分子生物活性部分やバイオポリマー(たとえば、タンパク質、ポリペプチド、さらにはオリゴヌクレオチド(RNA、DNA)、ペプチド核酸(PNA))(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとするアミン含有生物学的活性物質の残基である。
【0054】
本明細書中では、多くの場合、プロドラッグについて言及されることに留意されたい。Tがアミン含有生物学的活性物質またはアミン含有生物学的活性部分の残基である場合、真のプロドラッグであるとみなされる。Tが脱離基Aである場合、式は、高分子プロドラッグリンカー試薬を表す。簡潔にするために、本明細書中では、高分子プロドラッグリンカー試薬は、プロドラッグをも意味するものとする。真のプロドラッグを意味するか高分子プロドラッグリンカー試薬を意味するかは、文脈からわかるであろう。
【0055】
好適な有機小分子生物活性部分としては、中枢神経系活性剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、鎮痛剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、血管収縮剤、および心臓血管剤のような部分(少なくとも1つの第一級もしくは第二級のアミノ基を有する)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような化合物の例は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxaxin)、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スペクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドーパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、カルブタミド、アシビシンなどであるが、他を除外するものではない。
【0056】
少なくとも1つの遊離アミノ基を有する好適なタンパク質およびポリペプチドとしては、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α1−アンチトリプシン(AAT)、α1−プロテイナーゼ阻害剤(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル抗体またはポリクロナール抗体、およびフラグメントまたは融合体)、アンチトロンビンIII、アンチトリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形態形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフビルチド、エンケファリン、エリスロポエチン、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズロニダーゼ(idurnonidase)、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL−1レセプターアンタゴニスト(rhIL−1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライム病ワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ(PAF−AH)、プロラクチン、プロテインC、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、テタヌストキシン断片、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNFレセプター−IgG Fc、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン、植物性タンパク質(たとえばレクチンおよびリシン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
そのほかにこれに包含されるのは、in vivo生物活性を有する任意の合成ポリペプチドまたはポリペプチドの任意の部分である。さらに、組換えDNA法により調製されるタンパク質、たとえば、以上に挙げたタンパク質の突然変異体、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒抗体、および融合タンパク質が包含される。
【0058】
好ましいタンパク質は、抗体、カルシトニン、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNFレセプター−IgG Fc、およびGLP−1である。
【0059】
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分である。
【0060】
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または存在しない。
【0061】
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールなどから選択される。
【0062】
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基(高分子アシル基を包含する)、またはヒドロキシル基用保護基(たとえば、トリチル、メトキシトリチル、ジメトキシトリチル、および当業者に公知の他の保護基)から選択される。好適な保護基は、TW Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, John Wiley & Sons, 3rd ed.に記載されている。
【0063】
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドなどから選択される。
【0064】
R4〜R12は、独立して、好ましくは、水素、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のC1〜C8アルキルまたはヘテロアルキルから選択される。
【0065】
R4〜R12は、最も好ましくは水素である。
【0066】
本発明との関連では、「ヘテロアルキル」という用語は、アルキル鎖が、任意の位置で、1つ以上のヘテロ原子(O、S、N、P、Si、Cl、F、Br、Iなどから独立して選択される)または基(カルボキサミド、カルボン酸エステル、ホスホン酸エステル、リン酸エステル、二重結合もしくは三重結合、カルバメート、ウレア、チオウレア、チオカルバメート、オキシム、シアノ、カルボキシル、カルボニルなどから独立して選択される)を含有するかまたはそれらにより置換されている(線状、環状、もしくは分岐状)アルキル鎖を意味する。
【0067】
R1はポリマーである。好適なポリマーの例は、ポリアルキルオキシ系ポリマー、たとえば、ポリ(プロピレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸およびその誘導体、アルギネート、キシラン、マンナン、カラゲナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、および他の炭水化物系ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(アンヒドリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、たとえば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、たとえば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、たとえば、ポリ(乳酸)またはポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、たとえば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、以上に列挙されたポリマーから得られるコポリマー、グラフト型コポリマー、架橋型ポリマー、ヒドロゲル、およびブロックコポリマーであるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
ヒドロゲルは、多量の水を吸収する親水性もしくは両親媒性の三次元高分子網状構造として定義されうる。網状構造は、ホモポリマーまたはコポリマーで構成され、共有結合化学架橋または物理架橋(イオン架橋、疎水性相互作用、絡合い)が存在するので不溶性である。架橋は、網状構造および物理的一体性を提供する。ヒドロゲルは、水との熱力学的相溶性を呈するので、水性媒体中での膨潤が可能である。(N.A. Peppas, P. Bures, W. Leobandung, H. Ichikawa, Hydrogels in pharmaceutical formulations, Eur. J. Pharm. Biopharm. 2000, 50, 27-46を参照されたい)。網状構造の鎖は、細孔が存在しかつこうした細孔の実質的部分が1〜1000nmの寸法であるように結合される。特定の重合条件を選択することにより、ヒドロゲルは、アモルファスゲルの形態でまたはビーズ状樹脂として取得可能である。そのような軟質ビーズは、1〜1000マイクロメートルの直径を有しうる。
【0069】
ヒドロゲルは、W.E. Hennink and C.F. van Nostrum, Adv. Drug Del. Rev. 2002, 54, 13-36に記載されるように、ラジカル重合、アニオン重合、もしくはカチオン重合により、または縮合反応や付加反応のような化学反応により、以上に列挙されたポリマーおよびコポリマーから合成して物理架橋または化学架橋を行うことが可能である。
【0070】
さらなる例としては、分岐状および超分岐状のポリマーが挙げられる。そのようなポリマーの例としては、デンドリマーおよび他の高密度星形ポリマーが挙げられる(R. Esfand, D.A. Tomalia, Drug Discov Today, 2001, 6(8), 427-436; P.M. Heegaard, U. Boas, Chem. Soc. Rev. 2004, 33(1), 43-63; S.M. Grayson, J.M. Frechet, Chem. Rev. 2001, 101(12), 3819-3868)。
【0071】
R1はまた、タンパク質のようなバイオポリマーでありうる。そのようなポリマーの例としては、アルブミン、抗体、トランスフェリン、フィブリン、カゼイン、および他の血漿タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
各R1ポリマーは、本明細書に記載されるような第2のプロドラッグリンカーまたは当業者に公知の任意の他のリンカーとのコンジュゲーションによりポリマーに結合された1種以上の生物学的活性物質を有しうる。ポリマーは、さらなる置換基を有していてもよく、スペーサー部分Xに結合させるべく官能基化することも可能である。そのような官能基の例としては、カルボン酸およびその活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸およびその誘導体、ホスホン酸およびその誘導体、ハロアセチル、アルキルハライド、アクリロイル、アリールフルオリドのようなアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン、ならびにアジリジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
R1ポリマー用の好ましい官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、アルデヒド、ならびにハロアセチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
とくに好ましい官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸およびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、ならびにカーボネートおよびその誘導体が挙げられる。
【0075】
XとR1との間に形成される好適な結合または基の例としては、ジスルフィド、S−スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、オキシム、チオエーテル、ヒドラゾン、ウレア、チオウレア、ホスフェート、ホスホネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
XとR1との間に形成される好ましい結合または基としては、S−スクシンイミド、アミド、カルバメート、およびウレアが挙げられる。
【0077】
好ましくは、R1ポリマーは、哺乳動物において、高水和性、分解性もしくは排泄性、非毒性、かつ非免疫原性である。好ましいR1ポリマーとしては、ポリアルコキシ系ポリマー(たとえば、Nektar Inc. 2003 catalog "Nektar Molecule Engineering - Polyethylene Glycol and Derivatives for Advanced PEGylation"に記載されるようなポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール試薬)、および分岐状ポリマー、超分岐状ポリマー、架橋型ポリマー、ならびにヒドロゲル、さらにはアルブミンのようなタンパク質が挙げられる。
【0078】
高分子プロドラッグの一般的合成手順
【0079】
本発明に係る高分子プロドラッグの代表例の合成については、実施例の節に記載されている。
【0080】
本発明に係るプロドラッグは、多種多様な方法で調製可能である。図8は、式Icで示される本発明に係る高分子プロドラッグを合成するための第1の一般的経路を示している。この第1の方法では、固相固定化中間体(IV)は、固定化出発原料(III)の脱離基Aを出発原料(II)で置換することにより提供される。場合により、この置換は、可溶性出発原料(III)を有する溶液中で実施可能である。(III)中のXは、好適な保護基PGで保護可能である。好適な保護基については、TW Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, John Wiley & Sons, 3rd ed.に記載されている。中間体(V)は、固相から切り離され、保護基はすべて、トリフルオロ酢酸やDTTのような試薬を用いて切り離される。次に、中間体(V)をポリマーR1と反応させると高分子プロドラッグ(Ica)が得られる。
【0081】
式Ibで示される高分子プロドラッグは、式Icで示されるプロドラッグに関連して以上に記載したように、たとえば出発原料IIaを用いて当業者に公知の類似の方法により調製可能である。
【化3】
【0082】
図9は、式Iaで示される本発明に係る高分子プロドラッグを合成するための第2の一般的経路を示している。この第2の方法では、固相固定化中間体(VII)は、1段階もしくは2段階の求核置換または1段階もしくは2段階の還元的アルキル化により出発原料(VI)から提供される。場合により、この置換または還元的アルキル化の段階は、可溶性出発原料(VI)を有する溶液中で実施可能である。(III)中のXは、好適な保護基PGで保護可能である。中間体(VIII)は、固相から切り離され、保護基はすべて、トリフルオロ酢酸やDTTのような試薬を用いて切り離される。次に、中間体(VIII)をポリマーR1と反応させると高分子プロドラッグ(Iaa)が得られる。
【0083】
図10は、式Iaで示される本発明に係る高分子プロドラッグを合成するためのさらなる一般的経路を示している。この方法では、固相固定化中間体(X)は、1段階もしくは2段階の求核置換または1段階もしくは2段階の還元的アルキル化により出発原料(IX)から提供される。場合により、この置換または還元的アルキル化の段階は、可溶性出発原料(IX)を有する溶液中で実施可能である。(X)中のXは、好適な保護基PGで保護可能である。中間体(XI)は、保護基を切り離すことなくヘキサフルオロ−イソプロパノールのような試薬を用いて固相から切り離される。
【0084】
第1の経路では、カルボジイミドやN−ヒドロキシスクシンイミドのような試薬を用いて中間体(XI)を活性化すると(XII)が得られる。中間体(XII)をアミン含有薬剤分子と反応させると中間体(XIII)が得られる。中間体(XIII)から保護基PGを切り離した後、化合物をポリマーR1と反応させると高分子プロドラッグIaaが得られる。
【0085】
第2の経路では、トリフルオロ酢酸やDTTのような試薬を用いて保護基PGを(XI)から切り離し、残基をポリマーR1と反応させると中間体(XIV)が得られる。カルボジイミドやN−ヒドロキシスクシンイミドのような試薬を用いて中間体(XIV)を活性化すると中間体(XV)が得られ、これをアミン含有薬剤と反応させると高分子プロドラッグIaaが得られる。
【0086】
第3の経路では、保護基PGを活性化中間体(XII)から切り離し、残基をポリマーR1と反応させると中間体(XV)が得られ、次に、これをアミン含有薬剤と反応させると高分子プロドラッグIaaが得られる。
【0087】
当然のことながら、対応する高分子プロドラッグの合成に使用される記載の保護基または脱離基を有する概説された本発明に係るリンカー構造は、本発明の範囲内に包含されるとみなされる。
【0088】
分子療法における高分子プロドラッグの適用
【0089】
本発明の主な利点は、高分子プロドラッグからの未修飾生物学的活性部分の放出である。Greenwaldら(Greenwald et al. J. Med. Chem. 2004, 47, 726-734)により報告されたプロドラッグでは、生物学的活性部分は、予測不能な薬動学的性質、免疫原性、毒性、および薬力学的性質を有するビシン修飾薬剤分子として高分子担体から放出される。ビシン修飾薬剤分子の放出は、ビシンリンカーへのポリマー担体の永久結合に基づく本発明に係るプロドラッグでは起こりえない。
【0090】
高分子プロドラッグの場合、一時的結合の切断動態は、人体の血液中に存在する条件下(pH7.4、37℃)で進行することが望ましい。最も重要なこととして、一時的結合の切断は、加水分解に基づくものであり、かつ酵素、塩、または結合タンパク質のようなヒト血液中に存在する化学物質、生化学物質、または物理化学物質への依存性をまったく示さないかまたはごく限られた依存性を示すにすぎないことが望ましい。
【0091】
本発明に係る高分子プロドラッグのさらなる主な利点は、その非酵素支配的切断である。すなわち、in vivoにおけるプロドラッグの半減期は、酵素を含まないpH7.4の緩衝液中におけるプロドラッグの半減期の少なくとも50%である。この非酵素支配的切断により、生存生物への投与後の放出速度のより良好な予測および制御が可能になり、患者間の差異が低減される。
【0092】
驚くべきことに、このたび、ビシンリンカーを薬剤分子のアミノ基に結合する一時的結合の切断の速度をビシンリンカーのさまざまな置換またはポリマー結合により媒介される隣接基効果により制御しうることを見いだした。放出速度は、結果的にリンカーの分子構造に依存する実質的に非酵素的な化学反応により支配される。たとえば、ビシンリンカーのポリマー結合部位を変化させて化学構造の規則的修飾またはランダム修飾を行うことにより、さまざまな放出速度を有するプロドラッグリンカーを生成することが可能である。したがって、さまざまなプロドラッグリンカーを生成し、所与の医薬用途または治療用途で生じる要求に基づいて迅速切断型もしくは緩速切断型のプロドラッグリンカーを選択することが可能である。
【0093】
酵素非依存性放出制御により、カプセル化を必要としないデポ製剤が利用可能になる。今まで、大きい細孔サイズを有するヒドロゲルのような多くの生体適合性材料は、カプセル化特性の欠如が原因で、デポ製剤に使用することができなかった。そのような高水和型で機械的に軟質の生体適合性材料から、生物学的活性部分は、ほとんどの治療用途で必要以上に迅速に放出されてしまうであろう。本発明に記載のプロドラッグリンカーと組み合わせれば、放出がリンカー切断速度だけに支配され、ポリマー担体自体の化学的分解や酵素的分解を必要としないので、生体適合特性に関して担体材料を最適化することが可能である。
【実施例】
【0094】
材料
Fmoc−アミノ酸、樹脂、およびPyBOPは、ノバビオケム(Novabiochem)から購入したものであり、カタログに従って命名されている。Fmoc−Ado−OHは、ネオシステム(Neosystem)から入手した。そのほかの化学薬品はすべて、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から購入した。組換えヒトインスリンは、ICNバイオメディカルズ(ICN Biomedicals)(米国)製であった。マレイミド−PEG5kは、ネクター(Nektar)(米国)から入手した。5(および6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(混合異性体)は、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)から入手した。
【0095】
分析
ウォーターズ(Waters)ZQ 4000 ESI装置を用いて質量分析(MS)を行い、必要に応じて、ウォーターズ(Waters)ソフトウェアMaxEntによりスペクトルの解釈を行った。スーパーデックス(Superdex)200カラムを備えたアマシャム・バイオサイエンス(Amersham Bioscience)AEKTA基本システム(アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Bioscience))を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った。
【0096】
1の合成:
【化4】
【0097】
1g(5.5mmol)の3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジチオールを10mlのDMF中に溶解させ、1g(3.6mmol)のトリチルクロリドおよび1mlのピリジンを添加した。溶液を室温で30分間攪拌し、モノ−S−トリチル保護3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジチオールをRP−HPLCにより精製した(収量850mg、2mmol、56%)。
【0098】
300mg(0.71mmol)のS−トリチル−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジチオールを5mlの19/1(v/v)メタノール/水中に溶解させ、300μlのエピクロルヒドリン、500μlのピリジン、および50μlのDIEAを添加した。溶液を40℃で14時間攪拌し、次に、50mlの水を添加した。沈殿を濾過により捕集し、真空中で乾燥させた。沈殿を5mlのジオキサン中に溶解させ、100μlの水および500μlの2−アミノエタノールを添加した。溶液を60℃で72時間攪拌した。1mlの酢酸を添加した後、生成物1をRP−HPLCにより精製した(収量:215mg、0.4mmol、56%)。
MS[M+Na]+=564.9(MW+Na計算値=564.8g/mol)
【0099】
2の合成:
【化5】
【0100】
1に関連して記載したように1gの1,4−ジチオトレイトールを用いて2を合成した。
MS[M+Na]+=536.8(MW+Na計算値=536.7g/mol)
【0101】
3および4の合成:
【化6】
【0102】
fmocストラテジー(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)を利用してRinkアミド樹脂上でLys28ivDde側鎖保護GLP(7−36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK(ivDde)GR−アミド)を合成した。N末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。500μlのDMF中の42mgのブロモ酢酸(300μmol)および47μl(300μmol)のDICの溶液中に50mgの樹脂(0.11mmol/g、5.5μmol)を懸濁させた。混合物を室温で30分間振盪した。DMFで樹脂を6回洗浄した後、200μlのDMF中の20mgの2および10μlのDIEAの溶液中で樹脂を2時間インキュベートした。DMFで樹脂を6回洗浄した後、DMF中の5%ヒドラジンと共に樹脂を3回にわたり20分間ずつインキュベートすることにより、ivDde保護基を切り離した。樹脂をDMFおよびDCMでそれぞれ6回ずつ洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて90分間かけて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去した。RP−HPLCにより3aを精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1204.2、[M+2H]2+=1806.3(MW計算値=3609g/mol)
【0103】
3bを合成するために、1.5mlのDMF中の126mgのブロモ酢酸(900μmol)および141μl(900μmol)のDICの溶液中に150mgの樹脂(0.11mmol/g、16.5μmol)を懸濁させた。混合物を室温で30分間振盪した。DMFで樹脂を6回洗浄した後、600μlのDMF中の60mgの2および30μlのDIEAの溶液中で樹脂を2時間インキュベートした。DMFで樹脂を6回洗浄した後、DMF中の5%ヒドラジンと共に樹脂を3回にわたり20分間ずつインキュベートすることにより、ivDde保護基を切り離した。樹脂をDMFでそれぞれ6回ずつ洗浄した。20mgのFmoc−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸(50μmol)を8.2μlのDIC(50μmol)、8mgのHOBt(50μmol)、および0.5mlのDMFと混合し、室温で30分間インキュベートした。次に、樹脂を反応混合物と共に2時間インキュベートし、そして樹脂をDMFで6回洗浄した。DMF中の20%ピペリジンを用いて15分間かけてFmoc保護基を除去した。樹脂をDMFで6回洗浄し、500μlのDMF中の12mgの5(および6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(25μmol)および10μlのDIEAの溶液と共に1時間インキュベートした。樹脂をDMFおよびDCMでそれぞれ6回ずつ洗浄し、そして乾燥させた。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて90分間かけて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去した。RP−HPLCにより3bを精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1372.0、[M+2H]2+=2057.5(MW計算値=4113g/mol)
【0104】
4を合成するために、500μlのDMF中の25mgのboc−β−アラニン(80μmol)、29μlのDIEA、および42mgのPyBop(80μmol)の溶液中に50mgの樹脂(0.11mmol/g、5.5μmol)を懸濁させた。混合物を室温で30分間振盪した。DMFで樹脂を6回洗浄した後、DMF中の5%ヒドラジンと共に樹脂を3回にわたり20分間ずつインキュベートすることにより、ivDde保護基を切り離した。ブロモ酢酸を以上に記載したように結合させた。DMFで樹脂を6回洗浄した後、200μlのDMF中の20mgの2および10μlのDIEAの溶液中で樹脂を14時間インキュベートした。樹脂をDMFおよびDCMでそれぞれ6回ずつ洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより4を精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1227.9、[M+2H]2+=1841.4(MW計算値=3680g/mol)
【0105】
5および6の合成:
【化7】
【0106】
それぞれ20mgの1を用いて、3および4に関連して記載したように5および6を合成した。
5:MS:[M+3H]4+=1213.4、[M+2H]3+=1819.3(MW計算値=3637g/mol)
6:MS:[M+3H]4+=1237.4、[M+2H]3+=1855.2(MW計算値=3708g/mol)
【0107】
化合物14の合成スキーム
【化8】
【0108】
化合物11の合成
750mgの6−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)ヘキサン酸(2.9mmol)および180mgの赤リン(5.8mmol)を7mlのCCl4中に懸濁させ、600μlのBr2(11.7mmol)を2回に分けて添加した。反応混合物を90℃で5時間攪拌した。冷却後、混合物を20mlの水および20mlのジエチルエーテルで希釈し、NaHCO3で中和した。NaHSO3を添加することにより過剰のBr2を還元した。分離された有機層を水性NaHCO3で抽出した。水性層を合わせ、濃HClで酸性化した。粗生成物を濾過により捕集し、EtOH−水から再結晶した。
収量350mg(36%)
MS[M+Na]+=364.2(MW+Na計算値=363.0g/mol)
【0109】
化合物13の合成
fmocストラテジー(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)を利用してRinkアミド樹脂上で側鎖保護GLP(7−36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−アミド)を合成した。N末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。300μlのDMF中の3.6mgの11(10μmol)、1.5mgのHOBt(10μmol)、および1.6μlのDIC(10μmol)の溶液を10mgの担持樹脂(0.22mmol/g、2.2μmol)に添加し、混合物を室温で3時間振盪した。DMFおよびDCMで樹脂を洗浄した後、400mlのDMF中の19mgのビス(2−ヒドロキシエチル)アミン(180mmol)の溶液を添加し、サスペンジョンを70℃で2時間インキュベートし、12を得た。DMFおよびEtOHで樹脂を洗浄し、次に、60℃で400μlの1/99(v/v)N2H4一水和物/エタノールで1時間処理し、フタルイミド保護基を除去した。EtOHおよびDMFで洗浄した後、300μlのDMF中の3.8mgのMmt−メルカプトプロピオン酸(10mmol)、1.5mgのHOBt(10μmol)、および1.6μlのDIC(10μmol)の溶液を添加し、混合物を室温で3時間振盪し、続いて、DMFおよびDCMで樹脂を洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより13を精製し、そして凍結乾燥させた。
13:収量1.2mg(14%)
MS[M+2H]2+=1801.4;[M+3H]3+=1201.2(MW計算値=3604g/mol)
【0110】
コンジュゲート7、8、9、10、および14の合成
1/1(v/v)アセトニトリル/水(30μl)中の3(0.1μmol)の溶液を1/1(v/v)アセトニトリル/水(50μl)および50μlの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)中のマレイミド−PEG5k(0.2μmol)と混合した。混合物を室温で10分間インキュベートした。RP−HPLCによりコンジュゲート7を精製し、そして移動相として10mMリン酸緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)を用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200、流量0.75ml/分)により分析した。
7:SEC保持時間:19.5分
【0111】
以上に記載したように、それぞれ4、5、および6から8、9、および10を合成した。
【0112】
以上に記載したように13から14を合成し、移動相として10mMリン酸緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)を用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200、流量:0.75ml/分)により精製した。0.05%NaN3を含有する0.5mlの緩衝液で捕集された溶出液(約1.0ml)を希釈し、そのまま放出速度の測定に供した。
14:SEC保持時間:19.7分
【0113】
化合物17の合成スキーム
【化9】
【0114】
化合物16の合成
4mlのDCM中の200mgのDde−Lys(Fmoc)−OH(0.4mmol)および140μlのDIEA(0.8mmol)と共に170mgの2−クロロトリチルクロリド樹脂(担持量1.2mmol/g、0.2mmol)を1.5時間インキュベートした。DMF中のピペリジンでFmoc保護基を切り離し、DCMおよびDMFで樹脂を洗浄した。DMF中の209mgのTrt−メルカプトプロピオン酸(0.6mmol)、93mgのHOBt(0.6mmol)、および97μlのDIC(0.6mmol)の溶液と共に樹脂を室温で2時間振盪した。DMF中の2%ヒドラジンで樹脂を3回処理し、Dde保護基を除去した。DMFで洗浄した後、20mlのDMF中の240mgのグリコールアルデヒド二量体(2.00mmol)、252mgのNaCNBH3(4.00mmol)、および200μlの酢酸の溶液を添加し、混合物を一晩振盪し、15を得た。樹脂をDMFで洗浄し、2mlのピリジン中の309mgのMmt−Cl(1.00mmol)と共に室温で3時間攪拌した。樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。1/7(v/v)HFIP/DCM(2×2分間)を用いて生成物16を樹脂から切り離した。揮発性物質を窒素流動下で除去し、移動相としてDCM/MeOH/Et3N(85:15:0.03(v/v))を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより16を精製した。
Rf(DCM/MeOH/Et3N(85:15:0.03(v/v))=0.5
16:収量108mg(50%)
MS[M+Na]+=1131.9(MW+Na計算値=1131.6g/mol)
【0115】
化合物17の合成
4mlのアセトニトリル中の65mgの16(59μmol)、9.3μlのDIC(60μmol)、および13.8mgのHOSu(120μmol)を室温で3時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、移動相としてヘプタン/EtOAc/Et3N(50:50:0.03(v/v))を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより17を精製した。
Rf(ヘプタン/EtOAc/Et3N(50:50:0.03(v/v))=0.4)
17:TFA塩として収量56mg(77%)
MS[M+Na]+=1228.7(MW+Na計算値=1228.6g/mol)
【0116】
化合物18の合成
【化10】
【0117】
NεB29−フルオレセインインスリンの合成:
80mg(13.8μmol)のrhインスリンを4mlの1/1(v/v)DMF/DMSO中に溶解させ、40μlのDIEAを添加した。8mg(17μmol)の5(および6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを添加し、溶液を室温で30分間攪拌した。4mlの5/5/1(v/v/v)アセトニトリル/水/酢酸を添加し、生成物NεB29−フルオレセインインスリンをRP−HPLCにより精製し、そして凍結乾燥させた。1,4−ジチオトレイトールによるNεB29−フルオレセインインスリンの還元、プロテアーゼ消化、およびMS分析により、コンジュゲーション部位を確認した。
MS:[M+2H]2+=3084.0;[M+3H]3+=2054.6(MW計算値=6166g/mol)
【0118】
DMF(20μl)中の4.4mgの16(4.0μmol)、0.6μlのDIC(4.0μmol)、および0.9mgのHOSu(8.0μmol)を室温で2時間反応させた。DMSO(60μl)中の6.2mgのNεB29−フルオレセイン−rhインスリン(1.0μmol)およびDIEA(2μl)に溶液を添加し、混合物を室温で90分間攪拌した。反応混合物を酢酸で中和し、アセトニトリル/H2Oで希釈した。RP−HPLC精製により、MmtおよびTrtで保護された適切な中間体を与えた。凍結乾燥後、MmtおよびTrtで保護された中間体を95:5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間攪拌した。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより18を精製し、そして凍結乾燥させた。
MS[M+2H]2+=3238.2;[M+3H]3+=2157.2(MW計算値=6472g/mol)
【0119】
化合物19の合成
【化11】
【0120】
1/4(v/v)アセトニトリル/水(20μl)中の18(1.5nmol)の溶液を1/4(v/v)アセトニトリル/水(10μl)および50μlの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)中のマレイミド−PEG5k(1.9nmol)と混合し、室温で2分間インキュベートした。移動相として10mM HEPES緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)を用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200、流量:0.75mL/分)により化合物を精製した。捕集された溶出液(約1.5mL)をそのまま放出速度の測定に供した。
19:SEC保持時間:18.8分
【0121】
NεB29コンジュゲート化化合物20の合成
【化12】
【0122】
NMP中の8μlの83mM 17(0.6μmol)をDMSO(60μl)中の6.2mgのrhインスリン(1.0μmol)およびDIEA(0.5μl)に添加し、混合物を室温で90分間攪拌した。反応混合物を酢酸で中和し、アセトニトリル/H2Oで希釈した。RP−HPLC精製により、TrtおよびMmtで保護された適切な中間体を与えた。凍結乾燥後、TrtおよびMmtで保護された中間体を95:5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間攪拌した。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより20を精製し、そして凍結乾燥させた。DTT還元およびMS分析によりインスリン修飾の位置を確認した。
MS[M+3H]3+=2038.1;[M+4H]4+=1528.1(MW計算値=6112g/mol)
【0123】
化合物21の合成
【化13】
【0124】
19に関連して記載したように20から21を合成した。
21:SEC保持時間:18.6分
【0125】
22の合成
【化14】
【0126】
fmocストラテジー(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)を利用してRinkアミド樹脂上でLys28ivDde側鎖保護GLP(7−36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK(ivDde)GR−アミド)を合成した。N末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。500μlのDMF中の20mgのFmoc−Ado−OH(50μmol)、25mgのPyBop(50μmol)、および17μlのDIEAの溶液中で150mgの樹脂(0.11mmol/g、16.5μmol)を1時間インキュベートした。96/2/2 DMF/ピペリジン/DBUを用いてfmoc保護基を除去した後、500μlのDMF中の17.4mgのTrt−メルカプトプロピオン酸(50μmol)、25mgのPyBop(50μmol)、および17μlのDIEA(100μmol)の溶液中で樹脂を1時間インキュベートした。500μlの9/1(v/v)DMF/ヒドラジン中の樹脂を2時間インキュベートすることにより、ivDde保護基を除去した。DMFで樹脂を洗浄した後、Fmoc−Ado−OHを結合し、以上に記載したようにfmoc保護基を除去した。次に、500mlのDMF中の16mgの5(および6)−カルボキシフルオレセイン−スクシンイミジルエステルおよび6μlのDIEAの溶液と共に樹脂を2時間インキュベートした。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて90分間かけて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去した。RP−HPLCにより22を精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1345.9、[M+2H]2+=2016.9(MW計算値=4034g/mol)
【0127】
rHSA−マレイミド(23)の合成
【化15】
【0128】
145mM NaCl、32mMナトリウムオクタノエート、0.0015%トゥイーン−80(Tween-80)中の500μlの3mM rHSA(1.5μmol)溶液を100μlの0.5Mリン酸緩衝液pH7.0と混合した。1.5mgのN,N’−ビスマレイミドプロピオニル−2−ヒドロキシ−1,3−ジアミノプロパン(3.75μmol)を添加し、混合物を室温で20分間反応させた。移動相として10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4、150mM NaClを用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200 26/60、流量:4ml/分)により化合物23を精製した。
ESI−MS=66900(MW計算値=66864g/mol)
【0129】
bodipy標識化rHSA(24)の合成
145mM NaCl、32mMナトリウムオクタノエート、0.0015%トゥイーン−80(Tween-80)中の500μlの3mM rHSA(1.5μmol)溶液を250μlの0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH8.0と混合した。DMSO中の43μlの100mM BODIPY(登録商標)TR−X,STPエステル(Molecular Probes)を添加し、混合物を室温で20分間反応させた。移動相として10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4、150mM NaClを用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200 26/60、流量:4ml/分)によりBodipy標識化rHSA(24)を精製した。
【0130】
25の合成
【化16】
【0131】
0.75mlの10mMリン酸ナトリウム 150mM NaCl pH6中の45mgの23を250μlの0.5mlホウ酸ナトリウムpH8と混合し、50μlのDMSO中の8mgの22を添加した。溶液を室温で20分間インキュベートした。移動相として10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4、150mM NaClを用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200 26/60、流量:4ml/分)により25を精製した。
MS:70870(MW計算値=70898g/mol)
【0132】
26の合成
【化17】
【0133】
25に関連して記載したように23および3bを用いて26を合成した。
MS:70950(MW計算値=70977g/mol)
【0134】
in vivoにおけるrHSAコンジュゲート26からのフルオレセイン−GLP−1の放出
ラットへの注射後にコンジュゲートに結合した状態を保持するフルオレセイン−GLP−1の量を決定することにより、減算を行ってin vivoにおけるrHSAコンジュゲート26からのフルオレセインGLP−1の放出を測定した。これは、2つの異なるrHSA−フルオレセイン−GLP−1コンジュゲートを比較することにより行われた。一方の構築物では、フルオレセイン標識化GLP−1は、可逆リンカーを用いてアルブミンに結合され(コンジュゲート26)、対照構築物では、標識化GLP−1は、rHSAに永久結合された(コンジュゲート25)。きわめて正確なin vivo速度を取得しかつ注射部位の差異を抑制するために、内部標準を使用した。この内部標準は、非コンジュゲート化bodipy標識化rHSA(24)を共注射することにより提供された。
【0135】
対照実験では、一群の5匹の雄Sprague Dawleyラットを使用した。450μlの10mMリン酸ナトリウムpH7.4、150mM NaCl中の56nmolの25および97nmolの24の混合物を各ラットに皮下注射した。血漿サンプルを所定の時間間隔で採取し、フルオレセインおよびBodipyの蛍光を測定した。フルオレセイン/Bodipy蛍光の規格化比を時間に対してプロットした(図7、三角)。
【0136】
主実験では、一群の3匹の雄Sprague Dawleyラットを使用した。450μlの10mMリン酸ナトリウムpH7.4、150mM NaCl中の40nmolの26および72nmolの24の混合物を各ラットに皮下注射した。対照実験のときと同一の時間間隔で血漿サンプルを採取し、フルオレセインおよびBodipyの蛍光を測定した。フルオレセイン/Bodipy蛍光の規格化比を時間に対してプロットした(図7、四角)。
【0137】
主実験で得られたデータを対照実験で得られたデータで割り算して時間に対してプロットすると、コンジュゲート26からのフルオレセインGLP−1の放出速度が得られる。
【0138】
緩衝液pH7.4中におけるコンジュゲートからのペプチドまたはフルオレセイン−ペプチドの放出
水性緩衝液pH7.4中におけるリンカー加水分解により、(フルオレセイン)−ペプチドコンジュゲート7、8、9、10、14、19、21、および26からの(フルオレセイン)−ペプチドの放出を行った。10mM HEPES緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)中に凍結乾燥コンジュゲートを溶解させた。(フルオレセイン)ペプチドコンジュゲートの再溶解されたコンジュゲートおよび捕集されたSEC溶出液を37℃でインキュベートし、所定の時間間隔でサンプルを採取し、RP−HPLC(ペプチドコンジュゲート)および215nmにおけるUV検出によりまたはSEC(フルオレセインペプチドコンジュゲート)および500nmにおける検出により分析した。それぞれ元のペプチドまたはフルオレセイン−ペプチドの保持時間に関連するピークを積分してインキュベーション時間に対してプロットし、カーブフィッティングソフトウェアを適用して対応する放出半減期を推定した。
【表1】
【0139】
略号:
Ado 8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸
Boc t−ブチルオキシカルボニル
Bodipy BODIPY(登録商標)TR−X
DBU 1,3−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン
DCM ジクロロメタン
(iv)Dde 1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソ−シクロヘキシリデン)−3−メチル−ブチル
DIC ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DSC ジスクシンイミジルカーボネート(disuccinidylcarbonate)
EDTA エチレンジアミン四酢酸
eq 化学量論的当量
fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
Fmoc−Ado−OH Fmoc8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸
HFIP ヘキサフルオロイソプロパノール
HEPES N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LCMS 質量分析結合液体クロマトグラフィー
Mal マレイミドプロピオニル
Mmt 4−メトキシトリチル
MS 質量スペクトル
MW 分子質量
Npys 3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
rHSA 組換えヒト血清アルブミン
RP−HPLC 逆相高性能液体クロマトグラフィー
RT 室温
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
Suc スクシンイミドプロピオニル
TES トリエチルシラン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
UV 紫外
VIS 可視
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、担体結合プロドラッグを示している。
【図2】図2は、酵素依存性担体結合プロドラッグを示している。
【図3】図3は、マスキング基が担体の一部であるときのカスケードプロドラッグを示している。
【図4】図4は、マスキング基が担体とは異なりかつ担体が活性化基に永久結合されているときの酵素依存性カスケードプロドラッグを示している。
【図5】図5は、マスキング基が担体の一部であるときのビシン活性化基を有する担体結合カスケードプロドラッグを示している。
【図6】図6は、担体がビシンリンカーに永久結合されているときのビシンリンカーを有する担体結合プロドラッグを示している。
【図7】図7は、高分子プロドラッグのin vivo切断を示している。
【図8】図8は、一般的合成方法を示している。
【図9】図9は、一般的合成方法を示している。
【図10】図10は、一般的合成方法を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、タンパク質、天然産物、または合成化学化合物のような生物学的活性物質のアミノ基への一時的結合を有する高分子プロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、薬剤送達におけるポリマーは、溶媒−ポリマー混合物中に物理化学的に配合される薬剤と共に非共有結合的に使用されるか、または薬剤の官能基の1つにポリマー試薬を永久的に共有結合させることにより使用される。
【0003】
非共有結合的薬剤カプセル化は、長時間作用性放出プロファイルを得るべくデポ製剤に適用されてきた。典型的には、薬剤は、ポリマー材料と混合され、そして薬剤がバルクポリマー材料全体にわたり分配された状態になるように処理される。そのようなポリマー−薬剤アグリゲートは、注射可能なサスペンジョンとして投与されるマイクロ粒子として造形されうるか、またはポリマー−薬剤アグリゲートは、単回ボーラス注射で投与されるゲルとして配合される。ポリマーが膨潤したときに薬剤放出が起こるか、またはポリマーの分解によりバルクポリマーの外部への薬剤の拡散が可能になる。そのような分解過程は、自己加水分解的または酵素触媒的でありうる。薬剤−ポリマーゲルのボーラス投与に基づく市販薬の例は、ルプロン・デポ(Lupron Depot)である。懸濁マイクロ粒子に基づく市販薬の例は、ヌトロピン・デポ(Nutropin Depot)である。
【0004】
非共有結合的手法の欠点は、薬剤の無制御な突発型放出を防止するために、立体的にきわめて稠密な環境を形成するので、薬剤のカプセル化が高効率でなければならないことである。未結合の水溶性薬剤分子の拡散を抑制するには、強力なファンデルワールス接触(多くの場合、疎水性部分により媒介される)が必要である。タンパク質やペプチドのようにコンフォメーションの影響を受けやすい多くの薬剤は、カプセル化プロセス中および/またはカプセル化薬剤の後続の貯蔵中に機能を損なう。そのほかに、そのようなアミノ含有薬剤は、ポリマー分解生成物との副反応を起こしやすい(たとえば、非特許文献1を参照されたい)。さらに、薬剤の放出機序が生分解に依存して患者間で差異を生じる可能性がある。
【0005】
他の選択肢として、永久共有結合を介して薬剤をポリマーにコンジュゲートすることが可能である。この手法は、いわゆる小分子から天然産物を含めてより大きいタンパク質まで種々のクラスの分子に適用される。
【0006】
アルカロイドや抗腫瘍剤のような多くの小分子医薬剤は、水性流体への低い溶解性を示す。これらの小分子化合物を可溶化する一方法は、小分子化合物を親水性(水溶性)ポリマーにコンジュゲートすることである。ヒト血清アルブミン、デキストラン、レクチン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、ポリ(N−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ジビニルエーテル−co−無水マレイン酸)、ヒアルロン酸のようなさまざまな水溶性ポリマーが、この目的で報告されてきた(非特許文献2)。
【0007】
癌治療における主要な課題は、細胞傷害剤を腫瘍細胞に選択的にターゲッティングすることである。小分子抗癌剤を腫瘍組織中に蓄積しかつこの作用剤の望ましくない副作用を低減する有望な方法は、サイトトキシンを巨大分子担体に結合することである。腫瘍への高分子薬剤コンジュゲートの受動的ターゲッティングは、(非特許文献3)に記載されるように、いわゆる浸透性保持性向上効果(EPR)に基づく。その結果として、いくつかのポリマー−薬剤コンジュゲートは、抗癌剤として臨床試験に入っている。
【0008】
ポリ(エチレングリコール)による生体分子の共有結合修飾については、1970年代後半から広範囲に研究されてきた。いわゆるPEG化タンパク質は、溶解性を増大させたり、in vivoで免疫原性を低下させたり、腎クリアランスおよび酵素によるタンパク質分解の減少に基づいて循環半減期を増加させたりすることにより治療効果を改良することが示されている(たとえば、非特許文献4を参照されたい)。
【0009】
しかしながら、INFα2、サキナビル、またはソマトスタチンのような多くの生物学的分子は、共有結合によりポリマーを薬剤にコンジュゲートしたときに、不活性であるかまたは生物学的活性の低下を示す(非特許文献5)。
【0010】
非共有結合性ポリマー混合物または永久共有結合のいずれもが呈する欠点を回避するために、薬剤をポリマー担体に化学的にコンジュゲートするプロドラッグ法を利用することが好ましいこともある。そのような高分子プロドラッグでは、生物学的活性部分(薬剤、治療剤、生物学的分子など)は、典型的には、担体部分と、薬剤分子のヒドロキシ基、アミノ基、またはカルボキシ基と、の間に形成される一時的結合により、高分子担体部分に結合される。
【0011】
プロドラッグとは、それ自体ではほとんど不活性であるが予想どおりに活性代謝物にトランスフォームされる治療剤のことである(非特許文献6を参照されたい)。担体プロドラッグ法は、薬剤がin vivoでポリマーから放出されてその生物学的活性を回復するように適用されうる。薬剤の徐放または制御放出が望まれる場合、プロドラッグの有する低減された生物学的活性は、放出薬剤と比較して有利である。この場合、副作用を伴ったり過量投与のリスクを生じたりすることなく、比較的大量のプロドラッグを投与することが可能である。薬剤の放出が長期間にわたり行われるので、薬剤を反復して頻繁に投与する必要性が低減される。
【0012】
プロドラッグの活性化は、図1に示されるように、担体と薬剤分子との一時的結合を酵素的もしくは非酵素的に切断することにより、またはその両方を逐次的に組み合わせることにより、すなわち、酵素的段階を行ってから非酵素的再構成を行うことにより、実施可能である。水性緩衝溶液のように酵素を含まないin vitro環境では、エステルやアミドのような一時的結合は、加水分解を受ける可能性があるが、対応する加水分解速度は、あまりにも遅すぎて、治療上有用ではない可能性がある。in vivo環境では、典型的には、エステラーゼまたはアミダーゼが存在し、エステラーゼおよびアミダーゼは、2倍から数桁に及ぶ加水分解速度の有意な触媒的促進を引き起こす可能性がある(たとえば、非特許文献7を参照されたい)。
【0013】
IUPACに基づく定義(非特許文献8で与えられる)
【0014】
プロドラッグ
プロドラッグとは、その薬理効果を呈する前に生体内変換を受ける任意の化合物のことである。したがって、プロドラッグは、親分子の望ましくない性質を改変または除外するために一時的に使用される特定の非毒性保護基を含有する薬剤とみなしうる。
【0015】
担体結合プロドラッグ(担体プロドラッグ)
担体結合プロドラッグとは、所与の活性物質と、改良された物理化学的性質または薬動学的性質を生成しかつ通常は加水分解切断によりin vivoで容易に除去しうる一時的担体基との一時的結合を含有するプロドラッグのことである。これは、図1に図式的に示されている。
【0016】
カスケードプロドラッグ
カスケードプロドラッグとは、活性化基のアンマスキング後にかぎり担体基の切断が有効になる担体プロドラッグのことである。
【0017】
高分子カスケードプロドラッグ
高分子カスケードプロドラッグとは、所与の活性物質と、活性化基のアンマスキング後にかぎり担体の切断が有効になる一時的高分子担体基との一時的結合を含有する担体プロドラッグのことである。
【0018】
バイオプレカーサープロドラッグ
バイオプレカーサープロドラッグとは、担体基への結合を必要とせずに活性成分自体の分子修飾により生じるプロドラッグのことである。この修飾は、代謝的もしくは化学的に変換可能な新しい化合物を生成し、得られる化合物は、活性成分である。
【0019】
生体内変換
生体内変換とは、生存生物または酵素製剤による物質の化学変換のことである。
【0020】
さらなる定義:
リンカー
担体物質および薬剤のいずれからも提供されない、担体プロドラッグ中に存在する切断制御化学構造または切断制御基。
【0021】
プロドラッグは、バイオプレカーサーおよび担体結合プロドラッグの2つのクラスに分類される。バイオプレカーサーは、担体基を含有しておらず、官能基の代謝的生成により活性化される。担体結合プロドラッグでは、活性物質は、一時的結合により担体部分に結合される。担体は、生物学的に不活性でありうるか(たとえばPEG)または標的指向性を有しうる(たとえば抗体)。本発明は、担体自体が担体タンパク質または担体ポリサッカリドまたは担体ポリエチレングリコールのような巨大分子である、高分子担体結合プロドラッグまたは巨大分子プロドラッグに関する。
【0022】
担体プロドラッグが切断されると、増大された生物活性を有する分子状物質(薬剤)と少なくとも1種の副生成物(担体)とが生成される。切断後、生物活性物質は、あらかじめコンジュゲートされて保護されていた少なくとも1つの官能基を露出し、この基の存在は、典型的には、薬剤の生物活性に寄与する。
【0023】
プロドラッグストラテジーを実施するために、薬剤分子中の少なくとも1つの選択される官能基を担体ポリマーへの結合に利用する。好ましい官能基は、ヒドロキシル基またはアミノ基である。したがって、結合化学条件および加水分解条件はいずれも、利用される官能基のタイプに依存する。単純な一段階切断機序では、プロドラッグの一時的結合は、多くの場合、内因的反応活性または酵素依存性により特徴付けられる。水性環境中における加水分解に対するこの結合の感受性は、酵素触媒作用の有無を問わず、高分子担体と薬剤との間の切断速度を制御する。
【0024】
一時的結合が反応活性エステル結合である多数の巨大分子プロドラッグが、文献に記載されている。これらの事例では、生物活性物質により提供される官能基は、ヒドロキシル基またはカルボン酸基のいずれかである(たとえば、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。
【0025】
とくに治療用生体巨大分子の場合だけでなく特定の小分子薬剤の場合にも、巨大分子担体を生物活性物質のアミノ基(すなわち、タンパク質のN末端基またはリシンアミノ基)に結合することが望ましいこともある。こうした例としては、薬剤の生物活性をマスキングするのに生物活性物質の特定のアミノ基(たとえば、活性中心またはレセプター結合に関与する領域もしくはエピトープに位置するアミノ基)をコンジュゲートすることが必要な場合が挙げられよう。また、プロドラッグの調製中、アミノ基は、ヒドロキシル基やフェノール性基と比較して求核性が大きいので、より化学選択的に攻撃対象になり、担体と薬剤とをコンジュゲートするためのより良好な手段として役立つ可能性がある。このことは、とくに、多種多様な反応性官能基を含有する可能性のあるタンパク質の場合にあてはまる。この場合、非選択的コンジュゲーション反応により、十分な特徴付けまたは精製を必要とする望ましくない生成物混合物を生じて、生成物の反応収率および治療効率が低下する可能性がある。
【0026】
アミド結合のほかに脂肪族カルバメートもまた、通常、エステル結合よりも加水分解に対してかなり安定であり、アミド結合の切断速度は、担体結合プロドラッグ中の治療有用成分の場合には遅すぎるであろう。したがって、プロドラッグのアミド結合の切断性を制御すべく隣接基のような構造化学成分を追加することが有利である。担体物質および薬剤のいずれからも提供されないそのような追加の切断制御化学構造は、「リンカー」と呼ばれる。プロドラッグリンカーは、所与の一時的結合の加水分解の速度に強い影響を及ぼしうる。こうしたリンカーの化学的性質の変化により、かなりの程度までリンカーの性質を操作することが可能である。
【0027】
標的化放出のために特異的酵素によりアミン含有生物学的活性部分のプロドラッグ活性化を行ういくつかの例が発表されている。酵素依存性の前提条件は、リンカーの構造が、対応する内因性酵素により基質として認識される構造モチーフを提示することである(図2に示されるとおり)。こうした事例では、一時的結合の切断は、酵素により触媒される一段階過程で行われる。(非特許文献14)には、プロテアーゼプラスミンによる抗腫瘍剤の酵素的放出についての記載がある。シタラビンが、トリペプチド配列D−Val−Leu−Lysを介してポリマーα,β−ポリ(N−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド(PHEA)に結合される。シタラビンの酵素的放出は、いろいろな種類の腫瘍塊中で濃度が比較的高いプロテアーゼプラスミンにより誘発される。
【0028】
プロドラッグ切断の酵素触媒的促進は、器官標的化適用または細胞標的化適用に望ましい特徴である。結合を選択的に切断する酵素が、治療の対象として選択された器官または細胞型に特異的に存在する場合、生物活性物質の標的化放出が誘発される。
【0029】
酵素依存性一時的結合の典型的な性質は、加水分解に対するその安定性である。酵素依存性一時的結合自体は、通常の投与レジームで薬剤の治療効果を引き起こしうる程度に薬剤を放出する速度で自己加水分解を受けることはないであろう。酵素が存在する場合に限り、酵素依存性一時的結合への酵素の攻撃により、酵素依存性一時的結合の切断が有意に促進され、同時に遊離薬剤の濃度が増大する。
【0030】
β−ラクタマーゼのような特異的酵素(非特許文献15)およびカテプシンBのようなシステインプロテアーゼ(非特許文献16)により活性化される抗腫瘍性高分子プロドラッグの例が報告されている。Wiwattanapatapeeら(2003)は、5−アミノサリチル酸を結腸に送達するためのデンドリマープロドラッグについて概説している。薬剤分子は、「第3世代」のPAMAMデンドリマーにアゾ結合によりコンジュゲートされる。5−アミノサリチル酸は、アゾレダクターゼと呼ばれる細菌酵素により結腸中で放出される(非特許文献17)。
【0031】
酵素支配的切断の主な欠点は、患者間の差異である。酵素レベルは、個体間で有意に異なる可能性があるので、その結果、酵素的切断によるプロドラッグの活性化に生物学的差異を生じる可能性がある。酵素レベルはまた、投与部位に依存して異なりうる。たとえば、皮下注射の場合、生体の特定の領域が他の領域よりも予測可能な治療効果を生じることが知られている。この予測不能な効果を低減させるために、非酵素的切断または分子内触媒作用に特別な関心が払われている(たとえば、非特許文献18を参照されたい)。
【0032】
さらに、そのような酵素依存性担体結合プロドラッグの薬動学的性質に関してin vivo−in vitro相関を確定することは困難である。信頼性の高いin vivo−in vitro相関の不在下では、放出プロファイルの最適化は、厄介な作業になる。
【0033】
薬剤分子中に存在するアミノ基への一時的結合を利用する他の高分子プロドラッグは、カスケード機序に基づく。カスケード切断は、マスキング基と活性化基との構造的組合せで構成されるリンカー化合物により可能になる。マスキング基は、エステルやカルバメートのような第1の一時的結合により活性化基に結合される。活性化基は、第2の一時的結合(たとえばカルバメート)を介して薬剤分子のアミノ基に結合される。加水分解に対する第2の一時的結合(たとえばカルバメート)の安定性または感受性は、マスキング基の存在または不在に依存する。マスキング基の存在下では、第2の一時的結合は、きわめて安定的であり、治療上有用な速度で薬剤を放出する可能性は低い。マスキング基の不在下では、この結合は、反応活性が高くなり、迅速な切断および薬剤放出を引き起こす。
【0034】
第1の一時的結合の切断は、カスケード機序の律速段階である。この第1の段階は、1,6−脱離のような活性化基の分子再構成を引き起こしうる。再構成により第2の一時的結合の反応活性がかなり高くなるので、その切断が引き起こされる。理想的には、第1の一時的結合の切断速度は、所与の治療シナリオにおける薬剤分子の所望の放出速度と同一である。さらに、第2の一時的結合の切断は、その反応活性が第1の一時的結合の切断により惹起された後、実質的に瞬間的であることが望ましい(図3参照)。
【0035】
1,6−脱離に基づくそのような高分子プロドラッグの例は、(非特許文献19)およびPCT特許出願である(特許文献1)、F.M.H. DeGrootら(特許文献2および特許文献3)、ならびにD. Shabatら(特許文献4)に記載されている。
【0036】
トリメチルロックラクトン化に基づく高分子アミノ含有プロドラッグの例は、(非特許文献20);PCT特許出願である(特許文献5)に記載された。このプロドラッグ系では、置換型o−ヒドロキシフェニル−ジメチルプロピオン酸が、第1の一時的結合としてエステル基、カーボネート基、またはカルバメート基によりPEGに結合され、第2の一時的結合としてアミド結合により薬剤分子のアミノ基に結合される。薬剤放出の律速段階は、第1の結合の酵素的切断である。この段階に続いて、ラクトン化による迅速なアミド切断が起こり、芳香族ラクトン副生成物が遊離される。
【0037】
Greenwald、DeGroot、およびShabatにより記載された上述のプロドラッグ系の欠点は、一時的結合の切断後にキノンメチドや芳香族ラクトンのような高反応性かつ潜在的毒性の芳香族小分子副生成物が放出されることである。潜在的毒性物質は、薬剤と共に1:1の化学量論比で放出され、in vivo濃度が高いと推定されうる。
【0038】
1,6−脱離に基づく芳香族活性化基を有するさまざまな一群のカスケードプロドラッグは、マスキング基と担体とを構造的に分離する。これは、ポリマー担体と活性化基との間で永久結合を利用することにより達成可能である。この安定結合は、カスケード切断機序に関与しない。担体がマスキング基としての役割を果たさず、活性化基が安定結合により担体に結合される場合、活性化基のような潜在的毒性副生成物の放出が回避される。活性化基とポリマーとの安定結合はまた、未確定の薬理学的性質を有する薬剤−リンカー中間体の放出を抑制する。
【0039】
Antczakら(非特許文献21)には、アミン含有薬剤分子用の巨大分子カスケードプロドラッグ系の根底をなす試薬について記載している。この手法では、抗体が担体としての役割を果たし、抗体は、安定結合により、酵素的に切断可能なマスキング基を有する活性化基に結合される。図4に示されるように、エステル結合されたマスキング基を酵素的に除去すると、第2の一時的結合が切断されて薬剤化合物が放出される。
【0040】
D. Shabatら(非特許文献22)は、マンデル酸活性化基に基づく高分子プロドラッグ系について記載している。この系では、マスキング基は、カルバメート結合により活性化基に結合される。活性化基は、アミド結合を介してポリアクリルアミドポリマーに永久的にコンジュゲートされる。触媒抗体によるマスキング基の酵素的活性化の後、マスキング基は、環化により切断され、薬剤が放出される。活性化基は、薬剤放出後、依然としてポリアクリルアミドポリマーに結合されたままである。
【0041】
M. R. Leeら(非特許文献23)は、マンデル酸活性化基と酵素的に切断可能なエステル結合マスキング基とに基づく類似のプロドラッグ系を報告している。
【0042】
それにもかかわらず、このリンカーの場合、1,6−脱離段階で、依然として高反応性芳香族中間体が生成される。芳香族部分が高分子担体に永久的に結合された状態を保持したとしても、潜在的毒性作用または免疫原性作用を伴う副反応が起こる可能性がある。
【0043】
これらの理由により、酵素依存性でなくかつ切断中に反応性芳香族中間体を生成しない脂肪族プロドラッグリンカーを用いてアミン含有活性剤の高分子プロドラッグを形成するための新規なリンカー技術を提供することが必要とされている。
【0044】
A. J. Garmanら(非特許文献24)は、組織型プラスミノーゲンアクチベーター中およびウロキナーゼ中のアミノ基の可逆修飾のためにPEG5000−無水マレイン酸を使用している。pH7.4の緩衝液でのインキュベーションに基づくマレアミン酸結合の切断によるPEG−uPAコンジュゲートからの機能性酵素の再生は、6.1時間の半減期を有する一次速度式に従う。マレアミン酸結合の欠点は、より低いpH値におけるコンジュゲートの安定性の欠如である。このため、マレアミン酸結合の適用可能性は、塩基性(高)pH値で安定な活性剤に限定される。なぜなら、早期プロドラッグ切断を防止するために、活性剤ポリマーコンジュゲートの精製を塩基性(高pH)条件下で行わなければならないからである。
【0045】
つい最近、R. B. Greenwaldら(非特許文献25および特許文献6)は、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)グリシンアミド(ビシン)リンカーに基づくPEGカスケードプロドラッグ系を報告した。Greenwaldらの論文および特許出願に記載の系では、2つのPEG担体分子が、薬剤分子のアミノ基に結合されたビシン分子に一時的結合により結合される。プロドラッグの活性化の最初の2つの段階は、両方のPEG担体分子をビシン活性化基のヒドロキシ基に結合する第1の一時的結合の酵素的切断である。PEGとビシンとの結合が異なるとプロドラッグの活性化速度も異なると記載されている。プロドラッグの活性化の第2の段階は、ビシン活性化基を薬剤分子のアミノ基に結合する第2の一時的結合の切断である(図5)。この系の主な欠点は、一時的結合を介するビシンリンカーへのポリマーの結合およびこの第2の一時的ビシンアミド結合の遅い加水分解速度(リン酸緩衝液中t1/2>3時間)が原因で、元の親薬剤分子と比較して異なる薬動学的性質、免疫原性、毒性、および薬力学的性質を示す可能性のあるビシン修飾プロドラッグ中間体が放出されることである。
【非特許文献1】D.H. Lee et al, J. Contr. ReL, 2003, 92, 291-299
【非特許文献2】R. Duncan, Nature Rev. Drug Disc., 2003, 2, 347-360
【非特許文献3】Matsumura, Y. and Maeda, H., in Cancer Res., 1986, vol 6, pp 6387-6392
【非特許文献4】Caliceti P., Veronese F.M., Adv. Drag Deliv. Rev. 2003, 55, 1261-1277
【非特許文献5】T. Peleg-Shulman et al., J. Med. Chem., 2004, 47, 4897-4904
【非特許文献6】B.Testa, J.M: Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 4
【非特許文献7】R.B. Greenwald et al. J. Med. Chem. 1999, 42 (18), 3857-3867
【非特許文献8】http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/medchem/[2004年3月8日にアクセス]
【非特許文献9】Y. Luo, MR Ziebell, GD Prestwich, "A Hyaluronic Acid-Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted to Cancer Cells", Biomacromolecules 2000, 1, 208-218
【非特許文献10】J Cheng et al, Synthesis of Linear, beta-Cyclodextrin Based Polymers and Their Camptothecin Conjugates, Bioconjugate Chem. 2003, 14, 1007-1017
【非特許文献11】R. Bhatt et al, Synthesis and in Vivo Antitumor Activity of Poly(L-glutamic acid) Conjugates of 20(S)-Campthothecin, J. Med. Chem. 2003, 46, 190-193
【非特許文献12】R.B. Greenwald, A. Pendri, CD. Conover, H. Zhao, Y.H. Choe, A. Martinez, K. Shum, S. Guan, J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667
【非特許文献13】B. Testa, J.M. Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley- VCH, 2003, Chapter 8
【非特許文献14】G. Cavallaro et al., Bioconjugate Chem. 2001, 12, 143-151
【非特許文献15】R. Satchi-Fainaro et al., Bioconjugate Chem. 2003, 14, 797-804
【非特許文献16】R. Duncan et al. J. Contr. Release 2001, 74, 135-146
【非特許文献17】W. R. Wiwattanapatapee, L. Lomlim, K. Saramunee, J. Controlled Release, 2003, 88: 1-9
【非特許文献18】B. Testa, J.M. Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 5
【非特許文献19】R.B. Greenwald et al. J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667
【非特許文献20】R.B. Greenwald et al. J.Med.Chem. 2000, 43(3), 457-487
【非特許文献21】Bioorg Med Chem 9 (2001) 2843-48
【非特許文献22】Chem. Eur. J. 2004, 10, 2626-2634
【非特許文献23】Angew. Chem. 2004, 116, 1707-1710
【非特許文献24】A.J. Garman, S.B. Kalindjan, FEBS Lett. 1987, 223 (2), 361-365, 1987
【非特許文献25】Greenwald et al. J. Med.Chem. 2004, 47, 726-734
【特許文献1】国際公開第99/30727号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/083180号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/043493号パンフレット
【特許文献4】国際公開第04/019993号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/089789号パンフレット
【特許文献6】国際公開第04/108070号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
本発明は、以上に記載の欠点に対処する。本発明は、ビシンリンカーを介してポリマーをアミン含有薬剤分子の第一級もしくは第二級のアミノ基に結合することにより特徴付けられる高分子プロドラッグを提供する。ただし、ポリマーは、永久結合を介してビシンリンカーに結合され、ビシンリンカーとアミン含有薬剤分子との結合は、一時的結合である。本出願では、ビシンは、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−グリシルまたはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−グリシンアミドまたはN,N−ビス(2−ヒドロキシ)グリシンの同義語として使用される。担体とビシンリンカーとの永久結合の存在に基づいて、本発明に係る高分子プロドラッグは、元の未修飾薬剤分子の放出を保証する(図6)。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明は、式Ia、Ib、またはIc
【化1】
【0048】
〔式中、T、X、およびR1〜R12は、以下に定義される〕
で示される高分子プロドラッグおよび対応する高分子リンカー試薬を提供する。
【0049】
ポリマー置換型ビシン残基の加水分解切断による本発明に係る高分子プロドラッグからの元の薬剤の放出は、式Ia〔式中、R2〜R12は水素である〕で示される高分子プロドラッグにより例示される。
【化2】
【0050】
以上に記載したように、高分子担体からの元の薬剤の放出は、pH依存性加水分解や分子内環化のような酵素的もしくは非酵素的な段階により媒介されうる。本発明の好ましい実施形態では、切断は非酵素的に行われる。pH7.4の水性緩衝液中37℃における本発明に係る高分子プロドラッグの切断速度の半減期は、好ましくは3時間〜6ヶ月、より好ましくは1日〜3ヶ月、最も好ましくは1日〜2ヶ月である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
式Ia中、式Ib中、または式Ic中のX、T、R1〜R12の定義
【0052】
TはDまたはAである。本発明に係る構造が高分子プロドラッグリンカー試薬である場合、TはAであり、Aは脱離基である。好適な脱離基Aの非限定例としては、クロリド、ブロミド、フルオリド、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N−ヒドロキシアザベンゾトリアゾリル、ペンタフルオルフェノキシ、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル、または当業者に公知の任意の他の脱離基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明に係る構造が高分子プロドラッグである場合、TはDであり、Dは、小分子生物活性部分やバイオポリマー(たとえば、タンパク質、ポリペプチド、さらにはオリゴヌクレオチド(RNA、DNA)、ペプチド核酸(PNA))(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとするアミン含有生物学的活性物質の残基である。
【0054】
本明細書中では、多くの場合、プロドラッグについて言及されることに留意されたい。Tがアミン含有生物学的活性物質またはアミン含有生物学的活性部分の残基である場合、真のプロドラッグであるとみなされる。Tが脱離基Aである場合、式は、高分子プロドラッグリンカー試薬を表す。簡潔にするために、本明細書中では、高分子プロドラッグリンカー試薬は、プロドラッグをも意味するものとする。真のプロドラッグを意味するか高分子プロドラッグリンカー試薬を意味するかは、文脈からわかるであろう。
【0055】
好適な有機小分子生物活性部分としては、中枢神経系活性剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、鎮痛剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、血管収縮剤、および心臓血管剤のような部分(少なくとも1つの第一級もしくは第二級のアミノ基を有する)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような化合物の例は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxaxin)、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スペクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドーパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、カルブタミド、アシビシンなどであるが、他を除外するものではない。
【0056】
少なくとも1つの遊離アミノ基を有する好適なタンパク質およびポリペプチドとしては、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α1−アンチトリプシン(AAT)、α1−プロテイナーゼ阻害剤(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル抗体またはポリクロナール抗体、およびフラグメントまたは融合体)、アンチトロンビンIII、アンチトリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形態形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフビルチド、エンケファリン、エリスロポエチン、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズロニダーゼ(idurnonidase)、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL−1レセプターアンタゴニスト(rhIL−1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライム病ワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ(PAF−AH)、プロラクチン、プロテインC、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、テタヌストキシン断片、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNFレセプター−IgG Fc、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン、植物性タンパク質(たとえばレクチンおよびリシン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
そのほかにこれに包含されるのは、in vivo生物活性を有する任意の合成ポリペプチドまたはポリペプチドの任意の部分である。さらに、組換えDNA法により調製されるタンパク質、たとえば、以上に挙げたタンパク質の突然変異体、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒抗体、および融合タンパク質が包含される。
【0058】
好ましいタンパク質は、抗体、カルシトニン、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNFレセプター−IgG Fc、およびGLP−1である。
【0059】
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分である。
【0060】
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または存在しない。
【0061】
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールなどから選択される。
【0062】
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基(高分子アシル基を包含する)、またはヒドロキシル基用保護基(たとえば、トリチル、メトキシトリチル、ジメトキシトリチル、および当業者に公知の他の保護基)から選択される。好適な保護基は、TW Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, John Wiley & Sons, 3rd ed.に記載されている。
【0063】
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドなどから選択される。
【0064】
R4〜R12は、独立して、好ましくは、水素、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のC1〜C8アルキルまたはヘテロアルキルから選択される。
【0065】
R4〜R12は、最も好ましくは水素である。
【0066】
本発明との関連では、「ヘテロアルキル」という用語は、アルキル鎖が、任意の位置で、1つ以上のヘテロ原子(O、S、N、P、Si、Cl、F、Br、Iなどから独立して選択される)または基(カルボキサミド、カルボン酸エステル、ホスホン酸エステル、リン酸エステル、二重結合もしくは三重結合、カルバメート、ウレア、チオウレア、チオカルバメート、オキシム、シアノ、カルボキシル、カルボニルなどから独立して選択される)を含有するかまたはそれらにより置換されている(線状、環状、もしくは分岐状)アルキル鎖を意味する。
【0067】
R1はポリマーである。好適なポリマーの例は、ポリアルキルオキシ系ポリマー、たとえば、ポリ(プロピレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸およびその誘導体、アルギネート、キシラン、マンナン、カラゲナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、および他の炭水化物系ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(アンヒドリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、たとえば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、たとえば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、たとえば、ポリ(乳酸)またはポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、たとえば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、以上に列挙されたポリマーから得られるコポリマー、グラフト型コポリマー、架橋型ポリマー、ヒドロゲル、およびブロックコポリマーであるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
ヒドロゲルは、多量の水を吸収する親水性もしくは両親媒性の三次元高分子網状構造として定義されうる。網状構造は、ホモポリマーまたはコポリマーで構成され、共有結合化学架橋または物理架橋(イオン架橋、疎水性相互作用、絡合い)が存在するので不溶性である。架橋は、網状構造および物理的一体性を提供する。ヒドロゲルは、水との熱力学的相溶性を呈するので、水性媒体中での膨潤が可能である。(N.A. Peppas, P. Bures, W. Leobandung, H. Ichikawa, Hydrogels in pharmaceutical formulations, Eur. J. Pharm. Biopharm. 2000, 50, 27-46を参照されたい)。網状構造の鎖は、細孔が存在しかつこうした細孔の実質的部分が1〜1000nmの寸法であるように結合される。特定の重合条件を選択することにより、ヒドロゲルは、アモルファスゲルの形態でまたはビーズ状樹脂として取得可能である。そのような軟質ビーズは、1〜1000マイクロメートルの直径を有しうる。
【0069】
ヒドロゲルは、W.E. Hennink and C.F. van Nostrum, Adv. Drug Del. Rev. 2002, 54, 13-36に記載されるように、ラジカル重合、アニオン重合、もしくはカチオン重合により、または縮合反応や付加反応のような化学反応により、以上に列挙されたポリマーおよびコポリマーから合成して物理架橋または化学架橋を行うことが可能である。
【0070】
さらなる例としては、分岐状および超分岐状のポリマーが挙げられる。そのようなポリマーの例としては、デンドリマーおよび他の高密度星形ポリマーが挙げられる(R. Esfand, D.A. Tomalia, Drug Discov Today, 2001, 6(8), 427-436; P.M. Heegaard, U. Boas, Chem. Soc. Rev. 2004, 33(1), 43-63; S.M. Grayson, J.M. Frechet, Chem. Rev. 2001, 101(12), 3819-3868)。
【0071】
R1はまた、タンパク質のようなバイオポリマーでありうる。そのようなポリマーの例としては、アルブミン、抗体、トランスフェリン、フィブリン、カゼイン、および他の血漿タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
各R1ポリマーは、本明細書に記載されるような第2のプロドラッグリンカーまたは当業者に公知の任意の他のリンカーとのコンジュゲーションによりポリマーに結合された1種以上の生物学的活性物質を有しうる。ポリマーは、さらなる置換基を有していてもよく、スペーサー部分Xに結合させるべく官能基化することも可能である。そのような官能基の例としては、カルボン酸およびその活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸およびその誘導体、ホスホン酸およびその誘導体、ハロアセチル、アルキルハライド、アクリロイル、アリールフルオリドのようなアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン、ならびにアジリジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
R1ポリマー用の好ましい官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、アルデヒド、ならびにハロアセチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
とくに好ましい官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸およびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、ならびにカーボネートおよびその誘導体が挙げられる。
【0075】
XとR1との間に形成される好適な結合または基の例としては、ジスルフィド、S−スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、オキシム、チオエーテル、ヒドラゾン、ウレア、チオウレア、ホスフェート、ホスホネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
XとR1との間に形成される好ましい結合または基としては、S−スクシンイミド、アミド、カルバメート、およびウレアが挙げられる。
【0077】
好ましくは、R1ポリマーは、哺乳動物において、高水和性、分解性もしくは排泄性、非毒性、かつ非免疫原性である。好ましいR1ポリマーとしては、ポリアルコキシ系ポリマー(たとえば、Nektar Inc. 2003 catalog "Nektar Molecule Engineering - Polyethylene Glycol and Derivatives for Advanced PEGylation"に記載されるようなポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール試薬)、および分岐状ポリマー、超分岐状ポリマー、架橋型ポリマー、ならびにヒドロゲル、さらにはアルブミンのようなタンパク質が挙げられる。
【0078】
高分子プロドラッグの一般的合成手順
【0079】
本発明に係る高分子プロドラッグの代表例の合成については、実施例の節に記載されている。
【0080】
本発明に係るプロドラッグは、多種多様な方法で調製可能である。図8は、式Icで示される本発明に係る高分子プロドラッグを合成するための第1の一般的経路を示している。この第1の方法では、固相固定化中間体(IV)は、固定化出発原料(III)の脱離基Aを出発原料(II)で置換することにより提供される。場合により、この置換は、可溶性出発原料(III)を有する溶液中で実施可能である。(III)中のXは、好適な保護基PGで保護可能である。好適な保護基については、TW Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, John Wiley & Sons, 3rd ed.に記載されている。中間体(V)は、固相から切り離され、保護基はすべて、トリフルオロ酢酸やDTTのような試薬を用いて切り離される。次に、中間体(V)をポリマーR1と反応させると高分子プロドラッグ(Ica)が得られる。
【0081】
式Ibで示される高分子プロドラッグは、式Icで示されるプロドラッグに関連して以上に記載したように、たとえば出発原料IIaを用いて当業者に公知の類似の方法により調製可能である。
【化3】
【0082】
図9は、式Iaで示される本発明に係る高分子プロドラッグを合成するための第2の一般的経路を示している。この第2の方法では、固相固定化中間体(VII)は、1段階もしくは2段階の求核置換または1段階もしくは2段階の還元的アルキル化により出発原料(VI)から提供される。場合により、この置換または還元的アルキル化の段階は、可溶性出発原料(VI)を有する溶液中で実施可能である。(III)中のXは、好適な保護基PGで保護可能である。中間体(VIII)は、固相から切り離され、保護基はすべて、トリフルオロ酢酸やDTTのような試薬を用いて切り離される。次に、中間体(VIII)をポリマーR1と反応させると高分子プロドラッグ(Iaa)が得られる。
【0083】
図10は、式Iaで示される本発明に係る高分子プロドラッグを合成するためのさらなる一般的経路を示している。この方法では、固相固定化中間体(X)は、1段階もしくは2段階の求核置換または1段階もしくは2段階の還元的アルキル化により出発原料(IX)から提供される。場合により、この置換または還元的アルキル化の段階は、可溶性出発原料(IX)を有する溶液中で実施可能である。(X)中のXは、好適な保護基PGで保護可能である。中間体(XI)は、保護基を切り離すことなくヘキサフルオロ−イソプロパノールのような試薬を用いて固相から切り離される。
【0084】
第1の経路では、カルボジイミドやN−ヒドロキシスクシンイミドのような試薬を用いて中間体(XI)を活性化すると(XII)が得られる。中間体(XII)をアミン含有薬剤分子と反応させると中間体(XIII)が得られる。中間体(XIII)から保護基PGを切り離した後、化合物をポリマーR1と反応させると高分子プロドラッグIaaが得られる。
【0085】
第2の経路では、トリフルオロ酢酸やDTTのような試薬を用いて保護基PGを(XI)から切り離し、残基をポリマーR1と反応させると中間体(XIV)が得られる。カルボジイミドやN−ヒドロキシスクシンイミドのような試薬を用いて中間体(XIV)を活性化すると中間体(XV)が得られ、これをアミン含有薬剤と反応させると高分子プロドラッグIaaが得られる。
【0086】
第3の経路では、保護基PGを活性化中間体(XII)から切り離し、残基をポリマーR1と反応させると中間体(XV)が得られ、次に、これをアミン含有薬剤と反応させると高分子プロドラッグIaaが得られる。
【0087】
当然のことながら、対応する高分子プロドラッグの合成に使用される記載の保護基または脱離基を有する概説された本発明に係るリンカー構造は、本発明の範囲内に包含されるとみなされる。
【0088】
分子療法における高分子プロドラッグの適用
【0089】
本発明の主な利点は、高分子プロドラッグからの未修飾生物学的活性部分の放出である。Greenwaldら(Greenwald et al. J. Med. Chem. 2004, 47, 726-734)により報告されたプロドラッグでは、生物学的活性部分は、予測不能な薬動学的性質、免疫原性、毒性、および薬力学的性質を有するビシン修飾薬剤分子として高分子担体から放出される。ビシン修飾薬剤分子の放出は、ビシンリンカーへのポリマー担体の永久結合に基づく本発明に係るプロドラッグでは起こりえない。
【0090】
高分子プロドラッグの場合、一時的結合の切断動態は、人体の血液中に存在する条件下(pH7.4、37℃)で進行することが望ましい。最も重要なこととして、一時的結合の切断は、加水分解に基づくものであり、かつ酵素、塩、または結合タンパク質のようなヒト血液中に存在する化学物質、生化学物質、または物理化学物質への依存性をまったく示さないかまたはごく限られた依存性を示すにすぎないことが望ましい。
【0091】
本発明に係る高分子プロドラッグのさらなる主な利点は、その非酵素支配的切断である。すなわち、in vivoにおけるプロドラッグの半減期は、酵素を含まないpH7.4の緩衝液中におけるプロドラッグの半減期の少なくとも50%である。この非酵素支配的切断により、生存生物への投与後の放出速度のより良好な予測および制御が可能になり、患者間の差異が低減される。
【0092】
驚くべきことに、このたび、ビシンリンカーを薬剤分子のアミノ基に結合する一時的結合の切断の速度をビシンリンカーのさまざまな置換またはポリマー結合により媒介される隣接基効果により制御しうることを見いだした。放出速度は、結果的にリンカーの分子構造に依存する実質的に非酵素的な化学反応により支配される。たとえば、ビシンリンカーのポリマー結合部位を変化させて化学構造の規則的修飾またはランダム修飾を行うことにより、さまざまな放出速度を有するプロドラッグリンカーを生成することが可能である。したがって、さまざまなプロドラッグリンカーを生成し、所与の医薬用途または治療用途で生じる要求に基づいて迅速切断型もしくは緩速切断型のプロドラッグリンカーを選択することが可能である。
【0093】
酵素非依存性放出制御により、カプセル化を必要としないデポ製剤が利用可能になる。今まで、大きい細孔サイズを有するヒドロゲルのような多くの生体適合性材料は、カプセル化特性の欠如が原因で、デポ製剤に使用することができなかった。そのような高水和型で機械的に軟質の生体適合性材料から、生物学的活性部分は、ほとんどの治療用途で必要以上に迅速に放出されてしまうであろう。本発明に記載のプロドラッグリンカーと組み合わせれば、放出がリンカー切断速度だけに支配され、ポリマー担体自体の化学的分解や酵素的分解を必要としないので、生体適合特性に関して担体材料を最適化することが可能である。
【実施例】
【0094】
材料
Fmoc−アミノ酸、樹脂、およびPyBOPは、ノバビオケム(Novabiochem)から購入したものであり、カタログに従って命名されている。Fmoc−Ado−OHは、ネオシステム(Neosystem)から入手した。そのほかの化学薬品はすべて、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から購入した。組換えヒトインスリンは、ICNバイオメディカルズ(ICN Biomedicals)(米国)製であった。マレイミド−PEG5kは、ネクター(Nektar)(米国)から入手した。5(および6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(混合異性体)は、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)から入手した。
【0095】
分析
ウォーターズ(Waters)ZQ 4000 ESI装置を用いて質量分析(MS)を行い、必要に応じて、ウォーターズ(Waters)ソフトウェアMaxEntによりスペクトルの解釈を行った。スーパーデックス(Superdex)200カラムを備えたアマシャム・バイオサイエンス(Amersham Bioscience)AEKTA基本システム(アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Bioscience))を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った。
【0096】
1の合成:
【化4】
【0097】
1g(5.5mmol)の3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジチオールを10mlのDMF中に溶解させ、1g(3.6mmol)のトリチルクロリドおよび1mlのピリジンを添加した。溶液を室温で30分間攪拌し、モノ−S−トリチル保護3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジチオールをRP−HPLCにより精製した(収量850mg、2mmol、56%)。
【0098】
300mg(0.71mmol)のS−トリチル−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジチオールを5mlの19/1(v/v)メタノール/水中に溶解させ、300μlのエピクロルヒドリン、500μlのピリジン、および50μlのDIEAを添加した。溶液を40℃で14時間攪拌し、次に、50mlの水を添加した。沈殿を濾過により捕集し、真空中で乾燥させた。沈殿を5mlのジオキサン中に溶解させ、100μlの水および500μlの2−アミノエタノールを添加した。溶液を60℃で72時間攪拌した。1mlの酢酸を添加した後、生成物1をRP−HPLCにより精製した(収量:215mg、0.4mmol、56%)。
MS[M+Na]+=564.9(MW+Na計算値=564.8g/mol)
【0099】
2の合成:
【化5】
【0100】
1に関連して記載したように1gの1,4−ジチオトレイトールを用いて2を合成した。
MS[M+Na]+=536.8(MW+Na計算値=536.7g/mol)
【0101】
3および4の合成:
【化6】
【0102】
fmocストラテジー(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)を利用してRinkアミド樹脂上でLys28ivDde側鎖保護GLP(7−36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK(ivDde)GR−アミド)を合成した。N末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。500μlのDMF中の42mgのブロモ酢酸(300μmol)および47μl(300μmol)のDICの溶液中に50mgの樹脂(0.11mmol/g、5.5μmol)を懸濁させた。混合物を室温で30分間振盪した。DMFで樹脂を6回洗浄した後、200μlのDMF中の20mgの2および10μlのDIEAの溶液中で樹脂を2時間インキュベートした。DMFで樹脂を6回洗浄した後、DMF中の5%ヒドラジンと共に樹脂を3回にわたり20分間ずつインキュベートすることにより、ivDde保護基を切り離した。樹脂をDMFおよびDCMでそれぞれ6回ずつ洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて90分間かけて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去した。RP−HPLCにより3aを精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1204.2、[M+2H]2+=1806.3(MW計算値=3609g/mol)
【0103】
3bを合成するために、1.5mlのDMF中の126mgのブロモ酢酸(900μmol)および141μl(900μmol)のDICの溶液中に150mgの樹脂(0.11mmol/g、16.5μmol)を懸濁させた。混合物を室温で30分間振盪した。DMFで樹脂を6回洗浄した後、600μlのDMF中の60mgの2および30μlのDIEAの溶液中で樹脂を2時間インキュベートした。DMFで樹脂を6回洗浄した後、DMF中の5%ヒドラジンと共に樹脂を3回にわたり20分間ずつインキュベートすることにより、ivDde保護基を切り離した。樹脂をDMFでそれぞれ6回ずつ洗浄した。20mgのFmoc−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸(50μmol)を8.2μlのDIC(50μmol)、8mgのHOBt(50μmol)、および0.5mlのDMFと混合し、室温で30分間インキュベートした。次に、樹脂を反応混合物と共に2時間インキュベートし、そして樹脂をDMFで6回洗浄した。DMF中の20%ピペリジンを用いて15分間かけてFmoc保護基を除去した。樹脂をDMFで6回洗浄し、500μlのDMF中の12mgの5(および6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(25μmol)および10μlのDIEAの溶液と共に1時間インキュベートした。樹脂をDMFおよびDCMでそれぞれ6回ずつ洗浄し、そして乾燥させた。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて90分間かけて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去した。RP−HPLCにより3bを精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1372.0、[M+2H]2+=2057.5(MW計算値=4113g/mol)
【0104】
4を合成するために、500μlのDMF中の25mgのboc−β−アラニン(80μmol)、29μlのDIEA、および42mgのPyBop(80μmol)の溶液中に50mgの樹脂(0.11mmol/g、5.5μmol)を懸濁させた。混合物を室温で30分間振盪した。DMFで樹脂を6回洗浄した後、DMF中の5%ヒドラジンと共に樹脂を3回にわたり20分間ずつインキュベートすることにより、ivDde保護基を切り離した。ブロモ酢酸を以上に記載したように結合させた。DMFで樹脂を6回洗浄した後、200μlのDMF中の20mgの2および10μlのDIEAの溶液中で樹脂を14時間インキュベートした。樹脂をDMFおよびDCMでそれぞれ6回ずつ洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより4を精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1227.9、[M+2H]2+=1841.4(MW計算値=3680g/mol)
【0105】
5および6の合成:
【化7】
【0106】
それぞれ20mgの1を用いて、3および4に関連して記載したように5および6を合成した。
5:MS:[M+3H]4+=1213.4、[M+2H]3+=1819.3(MW計算値=3637g/mol)
6:MS:[M+3H]4+=1237.4、[M+2H]3+=1855.2(MW計算値=3708g/mol)
【0107】
化合物14の合成スキーム
【化8】
【0108】
化合物11の合成
750mgの6−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)ヘキサン酸(2.9mmol)および180mgの赤リン(5.8mmol)を7mlのCCl4中に懸濁させ、600μlのBr2(11.7mmol)を2回に分けて添加した。反応混合物を90℃で5時間攪拌した。冷却後、混合物を20mlの水および20mlのジエチルエーテルで希釈し、NaHCO3で中和した。NaHSO3を添加することにより過剰のBr2を還元した。分離された有機層を水性NaHCO3で抽出した。水性層を合わせ、濃HClで酸性化した。粗生成物を濾過により捕集し、EtOH−水から再結晶した。
収量350mg(36%)
MS[M+Na]+=364.2(MW+Na計算値=363.0g/mol)
【0109】
化合物13の合成
fmocストラテジー(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)を利用してRinkアミド樹脂上で側鎖保護GLP(7−36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−アミド)を合成した。N末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。300μlのDMF中の3.6mgの11(10μmol)、1.5mgのHOBt(10μmol)、および1.6μlのDIC(10μmol)の溶液を10mgの担持樹脂(0.22mmol/g、2.2μmol)に添加し、混合物を室温で3時間振盪した。DMFおよびDCMで樹脂を洗浄した後、400mlのDMF中の19mgのビス(2−ヒドロキシエチル)アミン(180mmol)の溶液を添加し、サスペンジョンを70℃で2時間インキュベートし、12を得た。DMFおよびEtOHで樹脂を洗浄し、次に、60℃で400μlの1/99(v/v)N2H4一水和物/エタノールで1時間処理し、フタルイミド保護基を除去した。EtOHおよびDMFで洗浄した後、300μlのDMF中の3.8mgのMmt−メルカプトプロピオン酸(10mmol)、1.5mgのHOBt(10μmol)、および1.6μlのDIC(10μmol)の溶液を添加し、混合物を室温で3時間振盪し、続いて、DMFおよびDCMで樹脂を洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより13を精製し、そして凍結乾燥させた。
13:収量1.2mg(14%)
MS[M+2H]2+=1801.4;[M+3H]3+=1201.2(MW計算値=3604g/mol)
【0110】
コンジュゲート7、8、9、10、および14の合成
1/1(v/v)アセトニトリル/水(30μl)中の3(0.1μmol)の溶液を1/1(v/v)アセトニトリル/水(50μl)および50μlの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)中のマレイミド−PEG5k(0.2μmol)と混合した。混合物を室温で10分間インキュベートした。RP−HPLCによりコンジュゲート7を精製し、そして移動相として10mMリン酸緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)を用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200、流量0.75ml/分)により分析した。
7:SEC保持時間:19.5分
【0111】
以上に記載したように、それぞれ4、5、および6から8、9、および10を合成した。
【0112】
以上に記載したように13から14を合成し、移動相として10mMリン酸緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)を用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200、流量:0.75ml/分)により精製した。0.05%NaN3を含有する0.5mlの緩衝液で捕集された溶出液(約1.0ml)を希釈し、そのまま放出速度の測定に供した。
14:SEC保持時間:19.7分
【0113】
化合物17の合成スキーム
【化9】
【0114】
化合物16の合成
4mlのDCM中の200mgのDde−Lys(Fmoc)−OH(0.4mmol)および140μlのDIEA(0.8mmol)と共に170mgの2−クロロトリチルクロリド樹脂(担持量1.2mmol/g、0.2mmol)を1.5時間インキュベートした。DMF中のピペリジンでFmoc保護基を切り離し、DCMおよびDMFで樹脂を洗浄した。DMF中の209mgのTrt−メルカプトプロピオン酸(0.6mmol)、93mgのHOBt(0.6mmol)、および97μlのDIC(0.6mmol)の溶液と共に樹脂を室温で2時間振盪した。DMF中の2%ヒドラジンで樹脂を3回処理し、Dde保護基を除去した。DMFで洗浄した後、20mlのDMF中の240mgのグリコールアルデヒド二量体(2.00mmol)、252mgのNaCNBH3(4.00mmol)、および200μlの酢酸の溶液を添加し、混合物を一晩振盪し、15を得た。樹脂をDMFで洗浄し、2mlのピリジン中の309mgのMmt−Cl(1.00mmol)と共に室温で3時間攪拌した。樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。1/7(v/v)HFIP/DCM(2×2分間)を用いて生成物16を樹脂から切り離した。揮発性物質を窒素流動下で除去し、移動相としてDCM/MeOH/Et3N(85:15:0.03(v/v))を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより16を精製した。
Rf(DCM/MeOH/Et3N(85:15:0.03(v/v))=0.5
16:収量108mg(50%)
MS[M+Na]+=1131.9(MW+Na計算値=1131.6g/mol)
【0115】
化合物17の合成
4mlのアセトニトリル中の65mgの16(59μmol)、9.3μlのDIC(60μmol)、および13.8mgのHOSu(120μmol)を室温で3時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、移動相としてヘプタン/EtOAc/Et3N(50:50:0.03(v/v))を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより17を精製した。
Rf(ヘプタン/EtOAc/Et3N(50:50:0.03(v/v))=0.4)
17:TFA塩として収量56mg(77%)
MS[M+Na]+=1228.7(MW+Na計算値=1228.6g/mol)
【0116】
化合物18の合成
【化10】
【0117】
NεB29−フルオレセインインスリンの合成:
80mg(13.8μmol)のrhインスリンを4mlの1/1(v/v)DMF/DMSO中に溶解させ、40μlのDIEAを添加した。8mg(17μmol)の5(および6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを添加し、溶液を室温で30分間攪拌した。4mlの5/5/1(v/v/v)アセトニトリル/水/酢酸を添加し、生成物NεB29−フルオレセインインスリンをRP−HPLCにより精製し、そして凍結乾燥させた。1,4−ジチオトレイトールによるNεB29−フルオレセインインスリンの還元、プロテアーゼ消化、およびMS分析により、コンジュゲーション部位を確認した。
MS:[M+2H]2+=3084.0;[M+3H]3+=2054.6(MW計算値=6166g/mol)
【0118】
DMF(20μl)中の4.4mgの16(4.0μmol)、0.6μlのDIC(4.0μmol)、および0.9mgのHOSu(8.0μmol)を室温で2時間反応させた。DMSO(60μl)中の6.2mgのNεB29−フルオレセイン−rhインスリン(1.0μmol)およびDIEA(2μl)に溶液を添加し、混合物を室温で90分間攪拌した。反応混合物を酢酸で中和し、アセトニトリル/H2Oで希釈した。RP−HPLC精製により、MmtおよびTrtで保護された適切な中間体を与えた。凍結乾燥後、MmtおよびTrtで保護された中間体を95:5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間攪拌した。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより18を精製し、そして凍結乾燥させた。
MS[M+2H]2+=3238.2;[M+3H]3+=2157.2(MW計算値=6472g/mol)
【0119】
化合物19の合成
【化11】
【0120】
1/4(v/v)アセトニトリル/水(20μl)中の18(1.5nmol)の溶液を1/4(v/v)アセトニトリル/水(10μl)および50μlの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)中のマレイミド−PEG5k(1.9nmol)と混合し、室温で2分間インキュベートした。移動相として10mM HEPES緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)を用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200、流量:0.75mL/分)により化合物を精製した。捕集された溶出液(約1.5mL)をそのまま放出速度の測定に供した。
19:SEC保持時間:18.8分
【0121】
NεB29コンジュゲート化化合物20の合成
【化12】
【0122】
NMP中の8μlの83mM 17(0.6μmol)をDMSO(60μl)中の6.2mgのrhインスリン(1.0μmol)およびDIEA(0.5μl)に添加し、混合物を室温で90分間攪拌した。反応混合物を酢酸で中和し、アセトニトリル/H2Oで希釈した。RP−HPLC精製により、TrtおよびMmtで保護された適切な中間体を与えた。凍結乾燥後、TrtおよびMmtで保護された中間体を95:5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間攪拌した。窒素流動下で揮発性物質を除去し、RP−HPLCにより20を精製し、そして凍結乾燥させた。DTT還元およびMS分析によりインスリン修飾の位置を確認した。
MS[M+3H]3+=2038.1;[M+4H]4+=1528.1(MW計算値=6112g/mol)
【0123】
化合物21の合成
【化13】
【0124】
19に関連して記載したように20から21を合成した。
21:SEC保持時間:18.6分
【0125】
22の合成
【化14】
【0126】
fmocストラテジー(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)を利用してRinkアミド樹脂上でLys28ivDde側鎖保護GLP(7−36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK(ivDde)GR−アミド)を合成した。N末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、そして乾燥させた。500μlのDMF中の20mgのFmoc−Ado−OH(50μmol)、25mgのPyBop(50μmol)、および17μlのDIEAの溶液中で150mgの樹脂(0.11mmol/g、16.5μmol)を1時間インキュベートした。96/2/2 DMF/ピペリジン/DBUを用いてfmoc保護基を除去した後、500μlのDMF中の17.4mgのTrt−メルカプトプロピオン酸(50μmol)、25mgのPyBop(50μmol)、および17μlのDIEA(100μmol)の溶液中で樹脂を1時間インキュベートした。500μlの9/1(v/v)DMF/ヒドラジン中の樹脂を2時間インキュベートすることにより、ivDde保護基を除去した。DMFで樹脂を洗浄した後、Fmoc−Ado−OHを結合し、以上に記載したようにfmoc保護基を除去した。次に、500mlのDMF中の16mgの5(および6)−カルボキシフルオレセイン−スクシンイミジルエステルおよび6μlのDIEAの溶液と共に樹脂を2時間インキュベートした。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて90分間かけて樹脂からのペプチドの切離しおよび保護基の除去を行った。窒素流動下で揮発性物質を除去した。RP−HPLCにより22を精製し、そして凍結乾燥させた。
MS:[M+3H]3+=1345.9、[M+2H]2+=2016.9(MW計算値=4034g/mol)
【0127】
rHSA−マレイミド(23)の合成
【化15】
【0128】
145mM NaCl、32mMナトリウムオクタノエート、0.0015%トゥイーン−80(Tween-80)中の500μlの3mM rHSA(1.5μmol)溶液を100μlの0.5Mリン酸緩衝液pH7.0と混合した。1.5mgのN,N’−ビスマレイミドプロピオニル−2−ヒドロキシ−1,3−ジアミノプロパン(3.75μmol)を添加し、混合物を室温で20分間反応させた。移動相として10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4、150mM NaClを用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200 26/60、流量:4ml/分)により化合物23を精製した。
ESI−MS=66900(MW計算値=66864g/mol)
【0129】
bodipy標識化rHSA(24)の合成
145mM NaCl、32mMナトリウムオクタノエート、0.0015%トゥイーン−80(Tween-80)中の500μlの3mM rHSA(1.5μmol)溶液を250μlの0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH8.0と混合した。DMSO中の43μlの100mM BODIPY(登録商標)TR−X,STPエステル(Molecular Probes)を添加し、混合物を室温で20分間反応させた。移動相として10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4、150mM NaClを用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200 26/60、流量:4ml/分)によりBodipy標識化rHSA(24)を精製した。
【0130】
25の合成
【化16】
【0131】
0.75mlの10mMリン酸ナトリウム 150mM NaCl pH6中の45mgの23を250μlの0.5mlホウ酸ナトリウムpH8と混合し、50μlのDMSO中の8mgの22を添加した。溶液を室温で20分間インキュベートした。移動相として10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4、150mM NaClを用いてSEC(カラム:スーパーデックス(Superdex)200 26/60、流量:4ml/分)により25を精製した。
MS:70870(MW計算値=70898g/mol)
【0132】
26の合成
【化17】
【0133】
25に関連して記載したように23および3bを用いて26を合成した。
MS:70950(MW計算値=70977g/mol)
【0134】
in vivoにおけるrHSAコンジュゲート26からのフルオレセイン−GLP−1の放出
ラットへの注射後にコンジュゲートに結合した状態を保持するフルオレセイン−GLP−1の量を決定することにより、減算を行ってin vivoにおけるrHSAコンジュゲート26からのフルオレセインGLP−1の放出を測定した。これは、2つの異なるrHSA−フルオレセイン−GLP−1コンジュゲートを比較することにより行われた。一方の構築物では、フルオレセイン標識化GLP−1は、可逆リンカーを用いてアルブミンに結合され(コンジュゲート26)、対照構築物では、標識化GLP−1は、rHSAに永久結合された(コンジュゲート25)。きわめて正確なin vivo速度を取得しかつ注射部位の差異を抑制するために、内部標準を使用した。この内部標準は、非コンジュゲート化bodipy標識化rHSA(24)を共注射することにより提供された。
【0135】
対照実験では、一群の5匹の雄Sprague Dawleyラットを使用した。450μlの10mMリン酸ナトリウムpH7.4、150mM NaCl中の56nmolの25および97nmolの24の混合物を各ラットに皮下注射した。血漿サンプルを所定の時間間隔で採取し、フルオレセインおよびBodipyの蛍光を測定した。フルオレセイン/Bodipy蛍光の規格化比を時間に対してプロットした(図7、三角)。
【0136】
主実験では、一群の3匹の雄Sprague Dawleyラットを使用した。450μlの10mMリン酸ナトリウムpH7.4、150mM NaCl中の40nmolの26および72nmolの24の混合物を各ラットに皮下注射した。対照実験のときと同一の時間間隔で血漿サンプルを採取し、フルオレセインおよびBodipyの蛍光を測定した。フルオレセイン/Bodipy蛍光の規格化比を時間に対してプロットした(図7、四角)。
【0137】
主実験で得られたデータを対照実験で得られたデータで割り算して時間に対してプロットすると、コンジュゲート26からのフルオレセインGLP−1の放出速度が得られる。
【0138】
緩衝液pH7.4中におけるコンジュゲートからのペプチドまたはフルオレセイン−ペプチドの放出
水性緩衝液pH7.4中におけるリンカー加水分解により、(フルオレセイン)−ペプチドコンジュゲート7、8、9、10、14、19、21、および26からの(フルオレセイン)−ペプチドの放出を行った。10mM HEPES緩衝液(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.005%トゥイーン20(Tween 20)中に凍結乾燥コンジュゲートを溶解させた。(フルオレセイン)ペプチドコンジュゲートの再溶解されたコンジュゲートおよび捕集されたSEC溶出液を37℃でインキュベートし、所定の時間間隔でサンプルを採取し、RP−HPLC(ペプチドコンジュゲート)および215nmにおけるUV検出によりまたはSEC(フルオレセインペプチドコンジュゲート)および500nmにおける検出により分析した。それぞれ元のペプチドまたはフルオレセイン−ペプチドの保持時間に関連するピークを積分してインキュベーション時間に対してプロットし、カーブフィッティングソフトウェアを適用して対応する放出半減期を推定した。
【表1】
【0139】
略号:
Ado 8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸
Boc t−ブチルオキシカルボニル
Bodipy BODIPY(登録商標)TR−X
DBU 1,3−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン
DCM ジクロロメタン
(iv)Dde 1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソ−シクロヘキシリデン)−3−メチル−ブチル
DIC ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DSC ジスクシンイミジルカーボネート(disuccinidylcarbonate)
EDTA エチレンジアミン四酢酸
eq 化学量論的当量
fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
Fmoc−Ado−OH Fmoc8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸
HFIP ヘキサフルオロイソプロパノール
HEPES N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LCMS 質量分析結合液体クロマトグラフィー
Mal マレイミドプロピオニル
Mmt 4−メトキシトリチル
MS 質量スペクトル
MW 分子質量
Npys 3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
rHSA 組換えヒト血清アルブミン
RP−HPLC 逆相高性能液体クロマトグラフィー
RT 室温
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
Suc スクシンイミドプロピオニル
TES トリエチルシラン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
UV 紫外
VIS 可視
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、担体結合プロドラッグを示している。
【図2】図2は、酵素依存性担体結合プロドラッグを示している。
【図3】図3は、マスキング基が担体の一部であるときのカスケードプロドラッグを示している。
【図4】図4は、マスキング基が担体とは異なりかつ担体が活性化基に永久結合されているときの酵素依存性カスケードプロドラッグを示している。
【図5】図5は、マスキング基が担体の一部であるときのビシン活性化基を有する担体結合カスケードプロドラッグを示している。
【図6】図6は、担体がビシンリンカーに永久結合されているときのビシンリンカーを有する担体結合プロドラッグを示している。
【図7】図7は、高分子プロドラッグのin vivo切断を示している。
【図8】図8は、一般的合成方法を示している。
【図9】図9は、一般的合成方法を示している。
【図10】図10は、一般的合成方法を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの永久結合を介してビシンリンカーに結合された少なくとも1種のポリマーを含む高分子プロドラッグであって、該ビシンリンカーが一時的結合を介してアミン含有生物学的活性部分に結合される、上記プロドラッグ。
【請求項2】
以下の構造:
【化1】
〔式中、
Tは、DまたはAであり、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を有する、請求項1に記載のプロドラッグまたは対応する高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項3】
以下の構造:
【化2】
〔式中、
Tは、DまたはAであり、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を有する、請求項1に記載のプロドラッグまたは対応する高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項4】
以下の構造:
【化3】
〔式中、
Tは、DまたはAであり、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を有する、請求項1に記載のプロドラッグまたは対応する高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項5】
前記生物学的活性部分が、小分子生物学的活性剤またはバイオポリマーよりなる生物学的部分の群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項6】
前記バイオポリマーが、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、およびペプチド核酸よりなるバイオポリマーの群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α1−アンチトリプシン(AAT)、α1−プロテイナーゼ阻害剤(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル抗体またはポリクロナール抗体、およびフラグメントまたは融合体)、アンチトロンビンIII、アンチトリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形態形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフビルチド、エンケファリン、エリスロポエチン、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズロニダーゼ、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL−1レセプターアンタゴニスト(rhIL−1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライム病ワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ(PAF−AH)、プロラクチン、プロテインC、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、テタヌストキシン断片、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNFレセプター−IgG Fc、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン、ならびに植物性タンパク質(たとえばレクチンおよびリシン)よりなるポリペプチドの群から選択される、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項8】
前記タンパク質が、組換えDNA技術により調製されるタンパク質である、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項9】
前記タンパク質が、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒抗体、および融合タンパク質よりなるタンパク質の群から選択される、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項10】
前記タンパク質が、抗体、カルシトニン、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNFレセプター−IgC Fc、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)よりなるタンパク質の群から選択される、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項11】
前記小分子生物学的活性剤が、中枢神経系活性剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、鎮痛剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、血管収縮剤、および心臓血管剤よりなる作用剤(少なくとも1つの第一級もしくは第二級のアミノ基を有する)の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項12】
前記小分子生物学的活性剤が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxaxin)、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スペクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドーパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、アシビシン、およびカルブタミドよりなる化合物の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項13】
R4〜R12が、独立して、水素、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のC1〜C8のアルキルまたはヘテロアルキルから選択される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項14】
R1が、ポリアルキルオキシ系ポリマー、たとえば、ポリ(プロピレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸およびその誘導体、アルギネート、キシラン、マンナン、カラゲナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)および他の炭水化物系ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(アンヒドリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、たとえば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、たとえば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、たとえば、ポリ(乳酸)またはポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、たとえば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、以上に列挙されたポリマーから得られるコポリマー、グラフト型コポリマー、架橋型ポリマー、およびブロックコポリマーよりなるポリマーの群から選択される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項15】
R1がヒドロゲルである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項16】
R1が分岐状もしくは超分岐状のポリマーである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項17】
R1がデンドリマーまたは高密度星形ポリマーである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項18】
R1がバイオポリマーである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項19】
R1がタンパク質である、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項20】
前記タンパク質が、アルブミン、抗体、フィブリン、カゼイン、または任意の他の血漿タンパク質である、請求項19に記載のプロドラッグ。
【請求項21】
R1が1種以上の生物学的活性物質をさらに含む、請求項2〜20のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項22】
R1がXへの結合のための少なくとも1つの官能基を有する、請求項2〜21のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項23】
前記少なくとも1つの官能基が、カルボン酸およびその活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸およびその誘導体、ホスホン酸およびその誘導体、ハロアセチル、アルキルハライド、アクリロイル、アリールフルオリドのようなアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン、ならびにアジリジンよりなる官能基の群から選択される、請求項22に記載のプロドラッグ。
【請求項24】
前記少なくとも1つの官能基が、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、アルデヒド、ならびにハロアセチルよりなる官能基の群から選択される、請求項22または23に記載のプロドラッグ。
【請求項25】
XとR1と間に形成される結合または基が、ジスルフィド、S−スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、チオエーテル、イミン、オキシム、ヒドラゾン、ウレア、チオウレア、ホスフェート、ホスホネートよりなる結合または基の群から選択される、請求項22〜24のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項26】
XとR1との間に形成される結合または基が、S−スクシンイミド、アミド、カルバメート、チオエーテル、およびウレアよりなる結合または基の群から選択される、請求項22〜25のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項27】
Aが、クロリド、ブロミド、フルオリド、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N−ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオルフェノキシ、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル、またはヘテロアリールよりなる脱離基の群から選択される、請求項2〜26のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項28】
生物学的活性部分との共有結合コンジュゲーションおよび担体との結合のための、Tが脱離基Aである、先行請求項のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグリンカー試薬プロドラッグ。
【請求項29】
・式III
【化4】
で示される出発分子を提供することと、
・式II
【化5】
で示される出発分子でAを置換することと、
・得られた中間体を固相から切り離しかつ存在する保護基をすべて切り離すことにより、式V
【化6】
で示される中間体を形成することと、
・式Vで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項30】
・式VI
【化7】
で示される出発分子を提供することと、
・少なくとも1段階の置換または還元的アルキル化により、式VII
【化8】
で示される中間体を形成することと、
・式VIIで示される中間体を固相から切り離しかつ存在する保護基をすべて切り離すことにより、式VIII
【化9】
で示される中間体を形成することと、
・式Vで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項31】
・式IX
【化10】
で示される出発分子を提供することと、
・少なくとも1段階の置換または還元的アルキル化により、式X
【化11】
で示される中間体を形成することと、
・存在する保護基をすべて切り離すことなく式Xで示される中間体を固相から切り離すことにより、式XI
【化12】
で示される中間体を形成することと、
・XI式で示される中間体を活性化試薬で活性化することにより、式XII
【化13】
で示される中間体を形成することと、
・式XIIで示される中間体をアミン含有薬剤Dと反応させることにより、式XIII
【化14】
で示される中間体を形成することと、
・保護基PGを切り離した後で式XIIで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項32】
・式XI
【化15】
で示される出発分子を提供することと、
・保護基PGを切り離した後で式XIで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、式XIV
【化16】
で示される中間体を形成することと、
・式XIVで示される中間体を活性化試薬で活性化することにより、式XV
【化17】
で示される高分子プロドラッグ試薬を形成することと、
・式XIIで示される中間体をアミン含有薬剤Dと反応させることにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項33】
・式XII
【化18】
で示される出発分子を提供することと、
・保護基PGを切り離した後で式XIIで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、式XV
【化19】
で示される高分子リンカー試薬を形成することと、
・式XIIで示される中間体をアミン含有薬剤Dと反応させることにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項34】
前記活性化剤がカルボジイミドとN−ヒドロキシスクシンイミドとの混合物である、請求項31および32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
Aが、クロリド、ブロミド、フルオリド、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N−ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオルフェノキシ、およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミジルから選択される、請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
約7.4のpHを有する溶液中に前記プロドラッグを配置する段階を含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載のプロドラッグの加水分解方法。
【請求項37】
前記溶液が細胞外液である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
・請求項1〜26のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグを提供する第1の段階と、
・該高分子プロドラッグを生存生物に投与する第2の段階と、
・実質的に非酵素的な反応により該高分子プロドラッグからアミン含有部分を切り離す第3の段階と、
を含む、生存生物へのアミン含有部分の投与方法。
【請求項39】
前記アミン含有部分が生物学的活性部分である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記生物学的活性部分が、小分子生物学的活性剤またはバイオポリマーよりなる生物学的部分の群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記バイオポリマーが、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、およびペプチド核酸よりなるバイオポリマーの群から選択される、請求項40に記載のプロドラッグ。
【請求項42】
前記ポリペプチドが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α1−アンチトリプシン(AAT)、α1−プロテイナーゼ阻害剤(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル抗体またはポリクロナール抗体、およびフラグメントまたは融合体)、アンチトロンビンIII、アンチトリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形態形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフビルチド、エンケファリン、エリスロポエチン、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズロニダーゼ(idurnonidase)、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL−1レセプターアンタゴニスト(rhIL−1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライム病ワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ(PAF−AH)、プロラクチン、プロテインC、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、テタヌストキシン断片、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNFレセプター−IgG Fc、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン、ならびに植物性タンパク質(たとえばレクチンおよびリシン)よりなるポリペプチドの群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質が、組換えDNA技術により調製されるタンパク質である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記タンパク質が、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒抗体、および融合タンパク質よりなるタンパク質の群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記小分子生物学的活性剤が、中枢神経系活性剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、鎮痛剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、血管収縮剤、および心臓血管剤よりなる作用剤(少なくとも1つの第一級もしくは第二級のアミノ基を有する)の群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記小分子生物学的活性剤が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxaxin)、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スペクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドーパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、アシビシン、およびカルブタミドよりなる化合物の群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記第3の段階が細胞外液中で行われる、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解の段階を含む、請求項38〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグにおいて、求核剤含有リンカーの実質的に非酵素的な反応により担体からアミン含有部分を切り離す方法。
【請求項50】
前記実質的に非酵素的な反応が約7.4のpHで行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記担体に結合された前記アミン含有部分が細胞外液中で切り離される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解の段階を含む、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記アミン含有部分が生物学的活性部分である、請求項49〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
請求項1〜26のいずれか1項に記載のプロドラッグから生物学的活性分子をin vivoで切り離すことにより治療上有用な濃度の生物学的活性分子を提供する方法。
【請求項1】
少なくとも1つの永久結合を介してビシンリンカーに結合された少なくとも1種のポリマーを含む高分子プロドラッグであって、該ビシンリンカーが一時的結合を介してアミン含有生物学的活性部分に結合される、上記プロドラッグ。
【請求項2】
以下の構造:
【化1】
〔式中、
Tは、DまたはAであり、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を有する、請求項1に記載のプロドラッグまたは対応する高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項3】
以下の構造:
【化2】
〔式中、
Tは、DまたはAであり、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を有する、請求項1に記載のプロドラッグまたは対応する高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項4】
以下の構造:
【化3】
〔式中、
Tは、DまたはAであり、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を有する、請求項1に記載のプロドラッグまたは対応する高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項5】
前記生物学的活性部分が、小分子生物学的活性剤またはバイオポリマーよりなる生物学的部分の群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項6】
前記バイオポリマーが、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、およびペプチド核酸よりなるバイオポリマーの群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α1−アンチトリプシン(AAT)、α1−プロテイナーゼ阻害剤(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル抗体またはポリクロナール抗体、およびフラグメントまたは融合体)、アンチトロンビンIII、アンチトリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形態形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフビルチド、エンケファリン、エリスロポエチン、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズロニダーゼ、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL−1レセプターアンタゴニスト(rhIL−1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライム病ワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ(PAF−AH)、プロラクチン、プロテインC、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、テタヌストキシン断片、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNFレセプター−IgG Fc、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン、ならびに植物性タンパク質(たとえばレクチンおよびリシン)よりなるポリペプチドの群から選択される、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項8】
前記タンパク質が、組換えDNA技術により調製されるタンパク質である、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項9】
前記タンパク質が、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒抗体、および融合タンパク質よりなるタンパク質の群から選択される、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項10】
前記タンパク質が、抗体、カルシトニン、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNFレセプター−IgC Fc、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)よりなるタンパク質の群から選択される、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項11】
前記小分子生物学的活性剤が、中枢神経系活性剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、鎮痛剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、血管収縮剤、および心臓血管剤よりなる作用剤(少なくとも1つの第一級もしくは第二級のアミノ基を有する)の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項12】
前記小分子生物学的活性剤が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxaxin)、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スペクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドーパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、アシビシン、およびカルブタミドよりなる化合物の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項13】
R4〜R12が、独立して、水素、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のC1〜C8のアルキルまたはヘテロアルキルから選択される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項14】
R1が、ポリアルキルオキシ系ポリマー、たとえば、ポリ(プロピレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸およびその誘導体、アルギネート、キシラン、マンナン、カラゲナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)および他の炭水化物系ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(アンヒドリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、たとえば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、たとえば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、たとえば、ポリ(乳酸)またはポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、たとえば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、以上に列挙されたポリマーから得られるコポリマー、グラフト型コポリマー、架橋型ポリマー、およびブロックコポリマーよりなるポリマーの群から選択される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項15】
R1がヒドロゲルである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項16】
R1が分岐状もしくは超分岐状のポリマーである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項17】
R1がデンドリマーまたは高密度星形ポリマーである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項18】
R1がバイオポリマーである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項19】
R1がタンパク質である、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項20】
前記タンパク質が、アルブミン、抗体、フィブリン、カゼイン、または任意の他の血漿タンパク質である、請求項19に記載のプロドラッグ。
【請求項21】
R1が1種以上の生物学的活性物質をさらに含む、請求項2〜20のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項22】
R1がXへの結合のための少なくとも1つの官能基を有する、請求項2〜21のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項23】
前記少なくとも1つの官能基が、カルボン酸およびその活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸およびその誘導体、ホスホン酸およびその誘導体、ハロアセチル、アルキルハライド、アクリロイル、アリールフルオリドのようなアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン、ならびにアジリジンよりなる官能基の群から選択される、請求項22に記載のプロドラッグ。
【請求項24】
前記少なくとも1つの官能基が、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸およびその誘導体、カーボネートおよびその誘導体、カルバメートおよびその誘導体、アルデヒド、ならびにハロアセチルよりなる官能基の群から選択される、請求項22または23に記載のプロドラッグ。
【請求項25】
XとR1と間に形成される結合または基が、ジスルフィド、S−スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、チオエーテル、イミン、オキシム、ヒドラゾン、ウレア、チオウレア、ホスフェート、ホスホネートよりなる結合または基の群から選択される、請求項22〜24のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項26】
XとR1との間に形成される結合または基が、S−スクシンイミド、アミド、カルバメート、チオエーテル、およびウレアよりなる結合または基の群から選択される、請求項22〜25のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項27】
Aが、クロリド、ブロミド、フルオリド、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N−ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオルフェノキシ、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル、またはヘテロアリールよりなる脱離基の群から選択される、請求項2〜26のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグリンカー試薬。
【請求項28】
生物学的活性部分との共有結合コンジュゲーションおよび担体との結合のための、Tが脱離基Aである、先行請求項のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグリンカー試薬プロドラッグ。
【請求項29】
・式III
【化4】
で示される出発分子を提供することと、
・式II
【化5】
で示される出発分子でAを置換することと、
・得られた中間体を固相から切り離しかつ存在する保護基をすべて切り離すことにより、式V
【化6】
で示される中間体を形成することと、
・式Vで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項30】
・式VI
【化7】
で示される出発分子を提供することと、
・少なくとも1段階の置換または還元的アルキル化により、式VII
【化8】
で示される中間体を形成することと、
・式VIIで示される中間体を固相から切り離しかつ存在する保護基をすべて切り離すことにより、式VIII
【化9】
で示される中間体を形成することと、
・式Vで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項31】
・式IX
【化10】
で示される出発分子を提供することと、
・少なくとも1段階の置換または還元的アルキル化により、式X
【化11】
で示される中間体を形成することと、
・存在する保護基をすべて切り離すことなく式Xで示される中間体を固相から切り離すことにより、式XI
【化12】
で示される中間体を形成することと、
・XI式で示される中間体を活性化試薬で活性化することにより、式XII
【化13】
で示される中間体を形成することと、
・式XIIで示される中間体をアミン含有薬剤Dと反応させることにより、式XIII
【化14】
で示される中間体を形成することと、
・保護基PGを切り離した後で式XIIで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項32】
・式XI
【化15】
で示される出発分子を提供することと、
・保護基PGを切り離した後で式XIで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、式XIV
【化16】
で示される中間体を形成することと、
・式XIVで示される中間体を活性化試薬で活性化することにより、式XV
【化17】
で示される高分子プロドラッグ試薬を形成することと、
・式XIIで示される中間体をアミン含有薬剤Dと反応させることにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項33】
・式XII
【化18】
で示される出発分子を提供することと、
・保護基PGを切り離した後で式XIIで示される中間体中のXにポリマーR1を結合することにより、式XV
【化19】
で示される高分子リンカー試薬を形成することと、
・式XIIで示される中間体をアミン含有薬剤Dと反応させることにより、高分子プロドラッグを形成することと、
〔式中、
Dは、アミン含有生物学的活性部分の残基であり、
Aは、脱離基であり、
Xは、R13−Y1のようなスペーサー部分であり、
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素炭素結合、もしくは遊離電子対を含有する任意のヘテロ原子であるか、または不在であり、
R13は、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリールから選択され、
R2およびR3は、独立して、水素、アシル基、またはヒドロキシル基用保護基から選択され、
R4〜R12は、独立して、水素、X−R1、置換型もしくは非置換型の線状、分岐状、もしくは環状のアルキルまたはヘテロアルキル、アリール、置換型アリール、置換型もしくは非置換型のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキサミドから選択され、
R1は、ポリマーである〕
を含む、高分子プロドラッグの合成方法。
【請求項34】
前記活性化剤がカルボジイミドとN−ヒドロキシスクシンイミドとの混合物である、請求項31および32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
Aが、クロリド、ブロミド、フルオリド、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N−ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオルフェノキシ、およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミジルから選択される、請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
約7.4のpHを有する溶液中に前記プロドラッグを配置する段階を含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載のプロドラッグの加水分解方法。
【請求項37】
前記溶液が細胞外液である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
・請求項1〜26のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグを提供する第1の段階と、
・該高分子プロドラッグを生存生物に投与する第2の段階と、
・実質的に非酵素的な反応により該高分子プロドラッグからアミン含有部分を切り離す第3の段階と、
を含む、生存生物へのアミン含有部分の投与方法。
【請求項39】
前記アミン含有部分が生物学的活性部分である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記生物学的活性部分が、小分子生物学的活性剤またはバイオポリマーよりなる生物学的部分の群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記バイオポリマーが、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、およびペプチド核酸よりなるバイオポリマーの群から選択される、請求項40に記載のプロドラッグ。
【請求項42】
前記ポリペプチドが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α1−アンチトリプシン(AAT)、α1−プロテイナーゼ阻害剤(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル抗体またはポリクロナール抗体、およびフラグメントまたは融合体)、アンチトロンビンIII、アンチトリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形態形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフビルチド、エンケファリン、エリスロポエチン、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、濾胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(たとえばGLP−1)、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズロニダーゼ(idurnonidase)、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL−1レセプターアンタゴニスト(rhIL−1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、トランスフォーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライム病ワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ(PAF−AH)、プロラクチン、プロテインC、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、テタヌストキシン断片、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNFレセプター−IgG Fc、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン、ならびに植物性タンパク質(たとえばレクチンおよびリシン)よりなるポリペプチドの群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質が、組換えDNA技術により調製されるタンパク質である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記タンパク質が、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒抗体、および融合タンパク質よりなるタンパク質の群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記小分子生物学的活性剤が、中枢神経系活性剤、抗感染症剤、抗新生物剤、抗菌剤、抗真菌剤、鎮痛剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、血管収縮剤、および心臓血管剤よりなる作用剤(少なくとも1つの第一級もしくは第二級のアミノ基を有する)の群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記小分子生物学的活性剤が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxaxin)、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スペクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドーパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、アシビシン、およびカルブタミドよりなる化合物の群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記第3の段階が細胞外液中で行われる、請求項38〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解の段階を含む、請求項38〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の高分子プロドラッグにおいて、求核剤含有リンカーの実質的に非酵素的な反応により担体からアミン含有部分を切り離す方法。
【請求項50】
前記実質的に非酵素的な反応が約7.4のpHで行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記担体に結合された前記アミン含有部分が細胞外液中で切り離される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解の段階を含む、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記アミン含有部分が生物学的活性部分である、請求項49〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
請求項1〜26のいずれか1項に記載のプロドラッグから生物学的活性分子をin vivoで切り離すことにより治療上有用な濃度の生物学的活性分子を提供する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−543916(P2008−543916A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517500(P2008−517500)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063418
【国際公開番号】WO2006/136586
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(506318698)コンプレックス バイオシステムズ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063418
【国際公開番号】WO2006/136586
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(506318698)コンプレックス バイオシステムズ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]