説明

ポリマーブラシ化合物及びその調製方法

【課題】 新規なポリマーブラシ化合物、その調製方法およびその新規用途を提供すること。
【解決手段】 上記課題は、多糖類とケテンダイマーを、その多糖類を溶解し得る溶剤の存在下に反応させて得られる、置換度1以上のポリマーブラシ化合物、下記一般式(I):
【化1】


[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、Rは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)であり;そして、nは7〜10,000の整数である]で示される化学構造を有し、置換度が1〜3であるポリマーブラシ化合物、その調製方法、その新規用途等によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコース鎖を基本骨格とするポリマーブラシ化合物及びその調製方法に関し、より詳しくは、多糖類とケテンダイマーとを反応させて得られるポリマーブラシ化合物、及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース等の多糖類のエステルは、繊維、フィルム、被覆材料、増粘剤などに用いられる機能性材料として研究されている。また最近では、新規な機能性材料を探索するために、セルロース骨格を有するポリマーブラシを合成する研究も行われている。ポリマーブラシとは、繰り返し基本単位(セルロースの場合はグルコース残基)に対して比較的長い側鎖を有する化合物であり、その特殊な構造ゆえに新たな機能性材料として注目されている。セルロースを原料とするポリマーブラシの研究は、種々行なわれているが、現時点において、簡便な方法で置換度の高いセルロース系ポリマーブラシが得られた例は報告されていない(J. Polym. Sci., Polym. Phys. 1996, 34, 1613-1620;J. Appl. Polym. Sci. 1997, 66, 293-305;Polym. Bull. 2000, 45, 381-388;J. Appl. Polym. Sci. 1986, 31, 341-352;J. Polym. Bull. 1988, 20, 373-377;M. Langmuir 1991, 7, 2803-2807;M. Langmuir 1992, 8, 936-941;Polym. J. 1992, 24, 641-652;Macromolecules 1994, 27, 1651-1653等参照)。
【0003】
従来、非水系セルロース溶剤を用いたセルロースとアルキルケテンダイマー(AKD)との均一的なβ―ケトエステル化に関する報告がされている(Journal of Pulp and Paper Science: Vol.26 No.9 (September, 2000):非特許文献1)。しかし、その文献では、置換度0.14のアルキルケテンダイマーβ―ケトエステルが報告されているに過ぎない。
【0004】
一方、特表平10−511728号(特許文献1)には、セルロース またはセルロース誘導体をアシル化試薬、チタン含有化合物及びカルボキサミド希釈剤または尿素系希釈剤と接触させることにより、DS/AGU(ノンヒドログルコース単位に対する置換度)が 0.1〜3.0 のセルロースエステルを製造する方法が開示されている。より具体的には、この方法では、(i)セルロース 物質、(ii)カルボキサミド希釈剤または尿素系希釈剤からなる可溶化量の溶媒系、(iii)アシル化試薬、及び(iv)チタン含有化合物を接触させることによって、全DS/AGU が 0.1〜3.0 であるセルロースエステルが製造される。この公報には、アシル化剤としては膨大なリストの化合物群が記載されており、ケテン及びジケテンも一例として記載されている。しかしながら、この公報には、具体的には、セルロース エステルとして、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネートなどの側鎖が短いものが記載されているのみであり、これらはポリマーブラシではない。
【0005】
また、特表2003−532410号(特許文献2)は、酵素及び化学的方法を使用したケテンダイマーでの多糖類のエステル化について記載している。より具体的には、この公報には、一般式[R-O]-CO-CH(R1)-CO-CH2-R1(式中、Rは多糖類であり、R1は炭素原子数2〜20の線状又は分岐の脂肪族又はオレフィン鎖である)を有する変性多糖類生成物を、該変性多糖類の形成を触媒作用する酵素と組み合わせて含む、生成物が開示されている。そして、この公報に記載の生成物の用途は、塗料増粘剤、塗料安定剤、建設用材料、ポリマー乳化剤、ハレーション防止被覆、洗浄用組成物等であるとされている。この公報には、セルロースエーテルとケテンダイマーとの合成例が記載されているが、ポリマーブラシが得られた例は示されていない。
【0006】
【非特許文献1】Journal of Pulp and Paper Science: Vol.26 No.9 (September, 2000)
【特許文献1】特表平10−511728号公報
【特許文献2】特表2003−532410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにセルロース骨格を有するポリマーブラシ又はセルロースエステルの合成に関する研究は種々行われているが、未だ簡便な方法でセルロース骨格を有する高置換度のポリマーブラシが合成された例は報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、β―ケトエステル化試薬として新たに側鎖長及び形状の異なる様々な化合物を種々選択し、その反応における最適条件の変化、得られたセルロース誘導体の構造・物性の変化などの解析を行った結果、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、下記に示すような、ポリマーブラシ化合物、その調製方法等を提供する。
【0009】
(1)多糖類とケテンダイマーを、その多糖類を溶解し得る溶剤の存在下に反応させて得られる、置換度1以上のポリマーブラシ化合物。
(2)前記多糖類がセルロース、デンプン、プルラン、キチン及びカードランから選択される、前記(1)に記載の化合物。
(3)前記ケテンダイマーが、下記式(III):
【化6】

(式中、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)で示される化合物である、前記(1)に記載の化合物。
(4)前記多糖類を溶解し得る溶剤が、塩化リチウム/N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン混合溶剤又は塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶剤である前記請求項1に記載の化合物。
(5)前記多糖類と前記ケテンダイマーとの反応が、塩基の存在下行なわれる前記(1)に記載の化合物。
(6)前記ポリマーブラシ化合物が、下記一般式(I):
【化7】

[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、Rは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)であり;そして、nは7〜10,000、好ましくは100〜2000、更に好ましくは150-800の整数である]で示される化学構造を有する化合物である、前記(1)に記載の化合物。
【0010】
(7)下記一般式(I):
【化8】

[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、R及びRは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)であり;そして、nは7〜10,000の整数である]で示される化学構造を有し、置換度が1〜3であるポリマーブラシ化合物。
(8)R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、Rはそれぞれ独立してC8-16アルキル基又はC8-16アルケニル基である)である、前記(7)に記載のポリマーブラシ化合物。
(9)置換度が1.4〜3.0(より好ましくは1.7〜3.0、さらに好ましくは1.9〜3.0)である前記(8)に記載のポリマーブラシ化合物。
【0011】
(10)多糖類とケテンダイマーを、その多糖類を溶解し得る溶剤の存在下に反応させて、置換度1以上のポリマーブラシ化合物を調製する方法。
(11)前記多糖類がセルロース、デンプン、プルラン、キチン及びカードランから選択される、前記(10)に記載の方法。
(12)前記ケテンダイマーが、下記式(III):
【化9】

(式中、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基であるである)で示される化合物である、前記(10)に記載の方法。
(13)前記セルロース溶剤が、塩化リチウム/N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン混合溶剤又は塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶剤である前記請求項1に記載の方法。
【0012】
(14)多糖類と前記ケテンダイマーとの反応が、塩基の存在下行なわれる前記(10)に記載の方法。
(15)下記一般式(I):
【化10】

[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、R及びRは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)であり;そして、nは7〜10,000の整数である]で示される化学構造を有し、置換度が1〜3であるポリマーブラシ化合物と、物質包摂機能を有する化合物を含有する複合体。
(16)前記物質包摂機能を有する化合物が、大環状ケテンダイマー多量体又はシクロデキストリンである、前記(15)に記載の複合体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリマーブラシ化合物は、プラスチック、フィルム、繊維及び被膜用材料、紙、プラスチック、金属等の基材の表面改質剤、高分子触媒、撥水化剤、偏光フィルター、伝導性高分子として用いることができる。また、本発明のポリマーブラシ化合物は、その側鎖の種類、置換度に応じて液晶構造を有するので、新規液晶物質として用いることもできる。
また、本発明のポリマーブラシ化合物の調製方法によれば、特別な反応試薬や反応条件を用いるものでもないため、簡便に所望のポリマーブラシ化合物を調製することができる。
さらに、本発明のポリマーブラシ化合物に、ケテンダイマーの副生成物である大環状ケテンダイマー多量体等の物質包摂機能を有する化合物を組み合わせてなる複合体は、その大環状ケテンダイマー多量体等の物質包摂機能を利用してドラッグデリバリーシステムを構築することができる。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の態様は、多糖類とケテンダイマーを、その多糖類を溶解し得る溶剤の存在下に反応させて得られる、置換度1以上のポリマーブラシ化合物に関する。本明細書中、用語「置換度」は、グルコース残基(AGU)に対する置換度、すなわち、グルコース環の3個の水酸基に対する置換基の結合の度合いを示す。例えば、グルコース環の3個の水酸基に2個のケテンダイマー残基が結合した状態を置換度が2であるという。このような置換度は、NMRなどの公知の手法によって容易に測定することができる。本明細書中、用語「ポリマーブラシ」とは、多糖の構成単位である単糖の大きさに対して比較的長い(例えば炭素数10以上)鎖状あるいは分岐官能基をエステル結合、エーテル結合、グラフト化等により複数導入したポリマー状の化合物をいう。セルロースの場合には、(I)に示す化合物のように繰り返し基本単位であるグルコース残基の大きさに対して比較的長い側鎖(例えば炭素数10以上)を複数有するポリマー状の化合物をいう。
【0016】
本発明において用いられる出発物質としての多糖類は、グルコース鎖を有する限り特に限定されない。そのような多糖類としては、例えば、セルロース、デンプン、プルラン、キチン、カードランなどが挙げられる。本明細書中、「セルロース、デンプン、プルラン、キチン、カードラン」という用語は、それらの誘導体を含む意味で用いられる。セルロースの誘導体としては、例えば、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。本発明で用いられるセルロースは、微結晶セルロース、広葉樹材パルプ、針葉樹材パルプ、コットンリンターなどから得られるセルロース、細菌セルロース、再生セルロース等が挙げられる。本発明においてはその均質性ゆえに微結晶セルロースが好ましく用いられる。微結晶セルロースは、例えば、例えば、アビセル(商標;旭化成社製)、ワットマンCFシリーズセルロース粉末(商標:フナコシ社製)として市販されているものを用いることができる。また、デンプン、プルラン、キチン及びカードランその化学構造、製造方法、入手方法などについては、例えば、例えば、糖質の化学(山科郁夫・山川民夫・鈴木旺編、東京化学同人、1976年発行)、和光純薬の試薬カタログ(2003年版)、東京化成の試薬カタログ(2003年版)、Aldrichの試薬カタログ(2003年版)などに記載されている。
【0017】
本明細書中、ケテンダイマーは、特に限定されないが、好ましく用いられるケテンダイマーは、下記式(III):
【化11】

(式中、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基であるである)で示される化合物である。ここで、「C8-30アルキル基」は、直鎖状のものも、分岐状のものも含むC8-30飽和炭化水素基である。また、「C8-30アルケニル基」は、直鎖状のものも、分岐状のものも含む二重結合を含むC8-30炭化水素基であり、好ましくは1〜3個の二重結合を有する。ここで、「置換されていてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基」の「置換されていてもよい」とは、最終生成物としてのポリマーブラシ化合物の合成を妨害しない置換基がC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基に結合してもよい、という意味である。例えば、そのような置換基として、C1-6アルキル基、C1-6アルケニル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシ基、フェニル基、ヘテロ環状基等が1〜3個、C8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基に結合していてもよい。
【0018】
本発明で好適に用いることができるケテンダイマーとしては、デカン酸からから得られるケテンダイマー(C10AKD)、ウンデカン酸からから得られるケテンダイマー(C12AKD)、ミリスチン酸からから得られるケテンダイマー(C14AKD)、パルミチン酸からから得られるケテンダイマー(C16AKD)、ステアリン酸からから得られるケテンダイマー(C18AKD)、イソステアリン酸からから得られるケテンダイマー(iso-AKD)、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸の単体それぞれ、あるいはそれらの混合物から得られるC18アルケニルケテンダイマー、上記カルボン酸の混合物から得られるケテンダイマー(例えばC12-C14-C16AKD等)等が例示される。なお、このようなケテンダイマー及びその合成法は公知であり、例えば、J. C. Sauer, J. Am. Chem. Soc., 69,2444 (1947)に記載されている。本発明において好ましく用いられるケテンダイマーは、上記式(III)で示され、式中、RがC8-16アルキル基又はC8-16アルケニル基、より好ましくはC8-16アルケニル基である化合物である。なお、オレイン酸ケテンダイマーは、上記式(III)で、Rが(CH2)6-CH=CH-(CH2)7-CH3の化合物である。
【0019】
本発明のポリマーブラシ化合物は、上記のような多糖類とケテンダイマーを、その多糖類を溶解し得る溶剤の存在下に合成することができる。本発明で用いられる多糖類を溶解し得る溶剤は、出発物質として選択される多糖類の種類に応じて選択することができる。出発物質として、セルロースを選択する場合は、公知のセルロース溶剤を用いることができ、例えば、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、スクシンイミド、フタルイミド、グルタルイミド等を用いることができる。本発明においては、これらの溶剤に塩化リチウムを加えた系を好ましく用いることができる。本発明で特に好適に用いられる溶媒は、塩化リチウム/N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン混合物及び塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド混合物である。
【0020】
上記反応は、好ましくは塩基の存在下行なわれる。本発明において用いられる塩基としては、例えば、1−メチルイミダゾール、ピリジン、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム等が用いられる。好適に用いられる塩基は、1−メチルイミダゾールである。
【0021】
ここで、本発明のポリマーブラシ化合物の調製方法の一例は、下記反応式によって模式的に示すことができる。
反応式(I)
【化12】

【0022】
上記反応式(I)に示されるように、多糖類の一例としてのセルロース(II)にケテンダイマー(III)を、塩化リチウム/N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン混合溶剤と1−メチルイミダゾールの存在下に反応させることによってセルロースβ―ケトエステル(I')を得ることができる。より詳しくは、まず、セルロースなどの出発物質をそれを溶解する溶剤に溶解する。セルロース試料として微結晶セルロースを用いる場合は、例えば、150℃加熱法によって、塩化リチウム/N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン混合溶剤に溶解してから、これに1−メチルイミダゾール等の塩基を加えて反応を実施する。
【0023】
多糖類とケテンダイマーとの反応は、例えば、10〜140℃で、10分〜72時間、好ましくは、20〜80℃で、1〜24時間行われる。上記反応において、高置換度を達成するために、多糖類中のグルコース残基当たり3〜10倍モル、好ましくは8〜10倍モルのケテンダイマーを使用する。1メチルイミダゾール等の塩基は、好ましくは、多糖類中のグルコース残基当たり1〜10倍モル使用する。溶媒の使用量は、出発物質である多糖類に対する溶解性を考慮して適宜決定することができる。
【0024】
上記反応は、反応形式を模式的に示したに過ぎず、実際には、多糖類は、1分子当り複数のグルコース鎖を有し、よって多くの水酸基を有する化合物、あるいはこれらの混合物である。したがって、実際に得られる最終生成物は、例えば、下記一般式(I):
【化13】

[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、Rは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基及びC8-30アルケニル基である)であり;そして、nは7〜10,000の整数である]で示される化学構造を有する化合物、あるいは上記式を有する化合物の混合物として得られる。ここで、「アルキル基」、「アルケニル基」及び「置換していてもよい」という用語の意味は前述した通りである。
【0025】
本発明の好ましいポリマーブラシ化合物は、上記式(I)の化合物であって、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、Rはそれぞれ独立してC8-16アルキル基又はC8-16アルケニル基である)であり、置換度が1〜3の化合物である。このようなポリマーブラシ化合物は、通常、3,000〜20,000,000の数平均分子量;3,000〜80,000,000の重量平均分子量;及び1〜5の多分散度(Mw/Mn)、好ましくは60,000〜4,000,000の数平均分子量;60,000〜10,000,000の重量平均分子量;及び1〜3の多分散度(Mw/Mn)を有する。参考のため、図1に、セルロースとオレイン酸ケテンダイマーとを反応させて得られる置換度2のポリマーブラシ化合物の化学構造を示す。
【0026】
なお、本発明の化合物は、イソプロピルアルコールのようなアルコールで洗浄し、反応生成物を乾燥することによって精製することができる。
【0027】
上記のようにして得られる本発明のポリマーブラシ化合物は、棒状固体として挙動することが見出されている。このメカニズムは、これに拘束されることはないが、例えば、長鎖アルキル基又はアルケニル基を高密度にグルコース鎖に導入したことによって、その溶液中においても、その置換基の分子運動の占有体積バランス及び置換基部分の運動による引張力と圧縮力の均衡からグルコース鎖自身の剛直性が維持され、あたかも棒状のような構造を呈するものと考えられる。このように溶液中において棒状構造を呈するようなポリマーブラシ化合物は未だ知られておらず、新規化合物であるため、新たな機能を有する材料として新たな用途が見出されることが期待される。
【0028】
さらに、本発明のセルロースβ−ケトエステル化合物(微結晶セルロースとOKDから得られた置換度1.4以上のもの)は、クロロホルムやTHFといった有機溶剤に可溶化し、融点は室温以下であるため室温ではガム状態を呈した。室温ではガム状態でありながら、X線回折パターンには長周期に対応する2θ角3−5°部分に回折ピークを有しており、常温でも液晶状態であることを示唆する結果が得られている。ゆえに、このようなポリマーブラシ化合物は、液晶材料として使用できることが実証されている。
【0029】
なお、本発明の別の態様によれば、上記ポリマーブラシ化合物に、物質包摂機能を有する化合物を組み合わせることによって、ドラッグデリバリーシステム等として利用できる複合体を提供することができる。ここで、本明細書中、用語「複合体」とは、各成分が物理的または化学的に結合した状態で存在しているものをいう。本発明の複合体においては、上記ポリマーブラシ化合物と、物質包摂機能を有する化合物が物理的に絡み合って一体化している場合もあるし、それらの化合物が各成分中の官能基を介して化学的に結合した状態で一体化している場合もある。
【0030】
本発明で用いられる物質包摂機能を有する化合物としては、シクロデキストリン、大環状ケテンダイマー多量体などが挙げられる。ここで用いられるシクロデキストリンは、公知であり、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル基又はスルフォアルキルエーテル基で置換されたβ−シクロデキストリンの誘導体等が挙げられる。これらのシクロデキストリンは、公知の手法で容易に合成できるか、あるいは市販されている(和光純薬の試薬カタログ(2003年版)、東京化成の試薬カタログ(2003年版)、Aldrichの試薬カタログ(2003年版)等参照)。ここで用いられる大環状ケテンダイマー多量体としては、上記セルロースβ―ケトエステルの調製時に副生成物として得られるものが例示され、例えば、下記構造(IV)を有する。
【化14】

(式中、Rは前述した通りである。)
【0031】
本発明の複合体は、必要に応じて、前述の式(I)の化合物に、適当量(例えば、式(I)の化合物のグルコース単位当たり0.01〜3モル)の物質包摂化合物を適当な溶媒の存在下で混合することによって調製することができる。このようにして得られる複合体においては、シクロデキストリン又は大環状ケテンダイマー多量体等の物質包摂化合物は、上記式(I)の構造を有するポリマーブラシ化合物の長側鎖に物理的に絡まった状態で存在し得る。なお、上記式(IV)の大環状ケテンダイマー多量体は、上記式(I)の構造を有するポリマーブラシ化合物の合成時に副生成物として合成されることがあり、この場合は、新たに物質包摂化合物を添加することなく本発明の複合体を調製することができる。また、上記2成分を化学的に結合させる場合は、上記2成分のそれぞれに、互いに反応する適当な官能基を導入し、適当な条件でそれらを反応させることによって調製することができる。このような複合体は、物質包摂機能を有する化合物部分で所望の薬剤を包摂し、所望の部位にデリバリーすることができるのでドラッグデリバリーシステムとして利用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(実験材料)
微結晶セルロース(セルロース粉末;Advantec Tokyo社製)を、1日室温で真空乾燥させてから、セルロース試料として用いた。NOF社から提供されたオレイン酸ケテンダイマー(シス−9−オクタデシルケテンダイマー(OKD))をアルケニルケテンダイマーとして用いた。OKDはオレイン酸クロライドとトリエチルアミンを、アルキルケテンダイマー調製の常法に従って調製した。OKDは室温で淡黄色の液体であり、OKDの純度は、1H-NMRで測定したところ、90%以上であった。無水リチウムクロライド(LiCl)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、1-メチルイミダゾール(MEI)、その他の試薬及び溶媒は、和光純薬社製の研究室グレードのものさらに精製することなく用いた。OKDとメタノールの混合物を、少量の酢酸ナトリウム存在下、90℃で3時間加熱することによって、メチルβ−ケトエステルを参照サンプルとして調製した。
【0034】
(セルロース溶液の調製)
公知の方法(Macromolecules 1985, 18, 2394-2401)に基づいて、微結晶セルロース粉末(10g)をDMI(450.8g)に懸濁させ、この懸濁液を150℃で30分加熱し、次いで、自然冷却下約100℃でLiCl(39.2g)を添加した。室温で1日混合して、透明なセルロース溶液を得た。セルロースを完全に溶解した後、DMI(500g)をその溶液に添加し、粘度を下げた。そして、4重量%のLiCl/DMI中の1重量%のセルロース溶液を得た。
【0035】
(セルロースとオレイン酸ケテンダイマーとの反応)
上記のようにして調製したセルロース溶液に対し、塩基として1-メチルイミダゾールをセルロースのグルコース残基(AGU)当り0〜10倍モル添加した。続いて、AGU当り3〜10倍モルのオレイン酸ケテンダイマー(OKD)を加え、20℃〜100℃で、0〜12時間反応させた。より具体的には、所望量のオレイン酸ケテンダイマーと1-メチルイミダゾールを、室温で撹拌状態にあるセルロース溶液にゆっくりと添加した。所定の時間、室温、60℃、100℃の温度で撹拌し、その混合物を大容量のエタノールに注ぎいれた。得られた析出物を新しいエタノールで数回洗浄し、ろ過した。得られた乾燥物を、非セルロース物質を、90℃で数時間、1−プロパノールによって抽出することによってさらに精製し、次いで、1−プロパノールを用いてろ過により完全に洗浄し、真空オーブン中40℃で1時間乾燥した。
【0036】
なお、エタノールの代わりに1−プロパノールを用いた場合は、非セルロース物質を洗浄によって、より効率的に除去することができた。
ここで、図2Aに、THFに溶解する代表的反応生成物(微結晶セルロースとOKDの反応生成物)のHPSECパターンを示す。図2Aに示すように、この生成物はβ−ケトエステル、低分子量副生成物と未反応OKDを含んでいる。なお、図2B及び図2Cに示すように、殆どの副生成物と未反応OKDは1−プロパノールによる抽出によって除去できることが分かった。
【0037】
(FT-IRスペクトルによる構造解析)
次に、精製された反応生成物のFT-IRスペクトルを図3に示す。図3に示されるように置換度が増すに連れてセルロースの水酸基の量が減少し、約3400
cm-1に見られる吸収バンドが減少し、逆にβ−ケトエステルのC=Oストレッチ振動による1740及び1710cm-1に見られる吸収バンドが増加している。また、C-Hストレッチ振動及びアルキル鎖の変形に基づく2800〜3000 cm-1、1470 cm-1及び1720 cm-1のバンドがβ−ケトエステル化に応じて増加している。これらの情報に基づいて、LiCl/DMIをセルロース溶媒として均質反応に供することによって、OKDがβ−ケトエステル結合を介してセルロースの水酸基に導入されていると結論づけることができる。
【0038】
(反応条件と置換度との関係)
(1)反応時間: 図4、5及び6に、反応条件を変更して得られた、反応時間とセルロースβ−ケトエステルの置換度との関係を示す。
(2)反応温度: 図7に、図5及び図6に示すデータを、反応温度との関係で書き直すことによって、反応温度と置換度との関係を示した。図7に示すように、反応温度が高くなるにつれて置換度が減少することが分かった。この結果は、上記反応が、アルコール化合物とエステル化剤との反応での通常の反応の場合と一致しないことを示している。
(3)1-メチルイミダゾールとオレイン酸ケテンダイマーのモル比:
図8に1-メチルイミダゾールとオレイン酸ケテンダイマーのモル比と置換度との関係を示す実験結果を示す。これらの反応は、室温又は100℃で3時間行なわれた。OKDとアンヒドログルコース単位とのモル比は10:1に固定した。置換度はアミン触媒の添加量を10:0から10:4(OKD:MEI)に増やすにつれて増加した。この実験では、OKDとMEIの最適モル比は10:4であることが分かった。
(4)OKDとアンヒドログルコース単位のモル比: 図9にOKD:AGUモル比と置換度との関係を示す実験結果を示す。ここでは、OKD:MEIモル比を1:1と固定した。反応は室温で3時間行なった。図9に示すように、置換度はOKD:AGUモル日が6を越えたときに急激に増加した。
【0039】
(セルロースβ−ケトエステル)
上記実験によって得られたセルロースβ−ケトエステルの置換度、分子量、重合度、分子量分布などを表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
(NMRによる構造解析結果)
図10及び図11に、OKD、メタノールβ−ケトエステル及び得られた置換度2.1のセルロースβ−ケトエステルの13C-NMRスペクトルと1H-NMRスペクトルのチャートをそれぞれ示す。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のポリマーブラシ化合物は、プラスチック、フィルム、繊維及び被膜用材料、紙、プラスチック、金属等の基材の表面改質剤、高分子触媒、撥水化剤、偏光フィルター、伝導性高分子として用いることができる。また、本発明のポリマーブラシ化合物は、その側鎖の種類、置換度に応じて液晶構造を有するので、新規液晶物質として用いることもできる。
【0043】
また、本発明のポリマーブラシ化合物の調製方法によれば、特別な反応試薬や反応条件を用いるものでもないため、簡便に所望のポリマーブラシ化合物を調製することができる。さらに、本発明のポリマーブラシ化合物に、例えば、ケテンダイマーの副生成物である大環状ケテンダイマー多量体を加えることによって、その大環状ケテンダイマー多量体の物質包摂機能を利用してドラッグデリバリーシステムを構築することができる。
【0044】
さらに、本発明のポリマーブラシ化合物は、長鎖アルキル又はアルケニル基を高密度に導入したことによってあたかも棒状固体として挙動することが見出されている。このような構造を有するポリマーブラシ未だ知られておらず、新たな機能を有する材料として新たな用途が見出されることが期待される。
【0045】
なお、下記文献は本件発明をより理解するために参照することができる。
(1) Isogai, A. In Wood and Cellulosic Chemistry 2nd Editio n; Hon, D. N.-S.; Shiraishi, N., Eds.; Mercel Dekker: New York, 20 01; p 599-625.
(2) Dawsey, T. R.; McCormick, C. L. J. Mcromol. Sci. Rev . Macromol. Chem. 1990, C30, 405-440.
(3) McCormick, C. L.; Callais, P. A. Polymer 1987, 28, 2 317-2323.
(4) Samaranayaske, G.; Glasser, W. G. Carbohydr. Polym. 1993, 22, 1-7.
(5) Heinze, T.; Rahn, K.; Jaspers, M.; Berghmans, H. J. Appl. Polym. Sci. 1996, 60, 1891-1900.
(6) Sealey, J. E.; Samaranayak, G.; Todd, J. G.; Glasser , W. G. J. Polym. Sci., Polym. Phys. 1996, 34, 1613-1620.
(7) Zhang, Z. B; McCormick, C. L. J. Appl. Polym. Sci. 1 997, 66, 293-305.
(8) Zhou, Q.; Zhang, L.; Minoda, M.; Miyamoto, T. Polym. Bull. 2000, 45, 381-388.
(9) Namikoshi, H. (1984), Japan Patent 59-124933.
(10) Takaragi, A.; Minoda, M.; Miyamoto, T.; Liu, H . Q.; Zhang, L. N. Cellulose 1999, 6, 93-102.
(11) Yanagisawa, M.; Shibata, I.; Isogai, A. Cellul ose 2004, 11, 169-176.
(12) Isogai, A.; Ishizu, A.; Nakano, J. J. Appl. Po lym. Sci. 1986, 31, 341-352.
(13) Yamagishi, T.; Fukuda, T.; Miyamoto, T.; Watan abe, J. Polym. Bull. 1988, 20, 373-377.
(14) Itoh, T.; Tsujii, Y.; Fukuda, T.; Miyamoto, T. ; Ito, S.; Asada, T.; Yamamoto, M. Langmuir 1991, 7, 2803-2807.
(15) Tsujii, Y., Itoh, T.; Fukuda, T.; Miyamoto, T. ; Ito, S.; Yamamoto, M. Langmuir 1992, 8, 936-941.
(16) Itoh, T.; Tsujii, Y.; Suzuki, H.; Fukuda, T.; Miyamoto, T. Polym. J. 1992, 24, 641-652.
(17) Takada, A.; Fujii, K.; Watanabe, J.; Fukuda, T .; Miyamoto, T. Macromolecules 1994, 27, 1651-1653.
(18) Ruthes, M.; Johannsmann, D.; Ruhe, J.; Knoll, W. Macromolecules 2000, 33, 3860-3870.
(19) Ishizu, K.; Tsubaki, K.; Mori, A.; Uchida S. P rog. Polym. Sci. 2003, 28, 27-54.
(20) Isogai, A. J. Pulp Paper Sci. 2000, 26, 330-33 4.
(21) Isogai, A.; Asakura, K. Nordic Pulp Paper Res. J. 2001, 16, 103-107.
(22) Isogai, A.; Asakura, K. Nordic Pulp Paper Res. J. 2001, 16, 108-112.
(23) Sauer, J. C. J. Am. Chem. Soc. 1947, 69, 2444- 2448.
(24) McCormick, C. L.; Callais, P. A.; Hutchinson, B. H. Jr. Macromolecules 1985, 18, 2394-2401.
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、セルロースとオレイン酸ケテンダイマーとを反応させて得られる置換度2のポリマーブラシ化合物の化学構造を示す図である。
【図2】図2は、実施例における代表的反応生成物のHPSECパターンを示す図である。
【図3】図3は、精製された反応生成物のFT-IRスペクトルを示す図である。
【図4】図4は、反応時間とセルロースβ−ケトエステルの置換度との関係を示す図である。
【図5】図5は、反応時間とセルロースβ−ケトエステルの置換度との関係を示す他の図である。
【図6】図6は、反応時間とセルロースβ−ケトエステルの置換度との関係を示す他の図である。
【図7】図7は、反応温度とセルロースβ−ケトエステルの置換度との関係を示す他の図である。
【図8】図8は、1-メチルイミダゾールとオレイン酸ケテンダイマーのモル比と置換度との関係を示す実験結果を示す図である。
【図9】図9は、OKD:AGUモル比と置換度との関係を示す実験結果を示す図である。
【図10】図10は、OKD,メタノールβ−ケトエステル及び得られた置換度2.1のセルロースβ−ケトエステルの13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図11】図11は、OKD,メタノールβ−ケトエステル及び得られた置換度2.1のセルロースβ−ケトエステルの1H-NMRスペクトルのチャートを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類とケテンダイマーを、その多糖類を溶解し得る溶剤の存在下に反応させて得られる、置換度1以上のポリマーブラシ化合物。
【請求項2】
前記多糖類がセルロース、デンプン、プルラン、キチン及びカードランから選択される、前記請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ケテンダイマーが、下記式(III):
【化1】

(式中、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)で示される化合物である、前記請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記多糖類を溶解し得る溶剤が、塩化リチウム/N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン混合溶剤又は塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶剤である前記請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記多糖類と前記ケテンダイマーとの反応が、塩基の存在下に行なわれる前記請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリマーブラシ化合物が、下記一般式(I):
【化2】

[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、Rは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)であり;そして、nは7〜10,000の整数である]で示される化学構造を有する化合物である、前記請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
下記一般式(I):
【化3】

[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、R及びRは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)であり;そしてnは7〜10,000の整数である]で示される化学構造を有し、置換度が1〜3であるポリマーブラシ化合物。
【請求項8】
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、Rはそれぞれ独立してC8-16アルキル基又はC8-16アルケニル基である)である、前記請求項7に記載のポリマーブラシ化合物。
【請求項9】
置換度が1.4〜3.0である前記請求項8に記載のポリマーブラシ化合物。
【請求項10】
多糖類とケテンダイマーを、その多糖類を溶解し得る溶剤の存在下に反応させて、置換度1以上のポリマーブラシ化合物を調製する方法。
【請求項11】
前記多糖類がセルロース、デンプン、プルラン、キチン及びカードランから選択される、前記請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ケテンダイマーが、下記式(III):
【化4】

(式中、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基であるである)で示される化合物である、前記請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記セルロース溶剤が、塩化リチウム/N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン混合溶剤又は塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶剤である前記請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記多糖類と前記ケテンダイマーとの反応が、塩基の存在下に行なわれる前記請求項10に記載の方法。
【請求項15】
下記一般式(I):
【化5】

[式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素又は-CO-CH(R)-CO-CH2-R(式中、R及びRは、それぞれ独立して、置換していてもよいC8-30アルキル基又はC8-30アルケニル基である)であり;そして、nは7〜10,000の整数である]で示される化学構造を有し、置換度が1〜3であるポリマーブラシ化合物成分と、物質包摂機能を有する化合物成分を含有する複合体。
【請求項16】
前記物質包摂機能を有する化合物成分が、大環状ケテンダイマー多量体又はシクロデキストリンである、前記請求項15に記載の複合体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−8866(P2006−8866A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188617(P2004−188617)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】