説明

ポリマーブレンドの製造方法

ポリマーブレンドを製造する方法であって、反応押出機に第1ポリマーと第2ポリマーを供給して開始ブレンド物を製造するステップであって、第1ポリマーは、最大35wt%の エチレンを含み、融解熱が80J/g未満で、融点が110℃未満のプロピレンベースのエラストマーであり、第2ポリマーは融点が110℃より高く、融解熱が80J/gより高いプロピレンベースのポリマーであるステップと;開始ブレンド物に過酸化物を供給して反応性ブレンド物を製造するステップと; 反応性ブレンド物の温度を過酸化物の少なくとも50%が分解する温度に保って反応済ブレンド物を製造するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願とのクロスリファレンス>
本願は2008年12月29日出願の米国仮出願第61/141,164号に基づく優先件を主張し、この出願の内容全体を参照として本願に組み込む。
【0002】
この発明はプロピレンベースのエラストマーと、プロピレンベースの熱可塑性樹脂とのブレンドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
セミアモルファスプロピレンコポリマー、又は結晶可能なプロピレンベースのコポリマーとも呼ばれるプロピレンベースのエラストマーは、繊維及び不織布の製造に用いられてきた。これらのコポリマーは、様々な所望の性質を得るために、他のポリマーとブレンドされることがある。
【0004】
例えばU.S. Publication No. 2005/0107529にはポリプロピレンベースのエラストマーから作られた繊維が開示されている。実施例1-4にはMFRが20でエチレンを15重量%含むプロピレン-エチレンコポリマーとプロピレンホモポリマーとから成る溶融物から繊維を製造する例が開示されている。プロピレンホモポリマーは MFRが36のホモポリマー、又は MFRが400のホモポリマーのいずれかである。繊維は公知の紡糸ラインを用いて部分延伸糸モードで製造される。丈夫な織物を作るため、この繊維及びこの繊維から作られる不織布を熱処理することができる。
【0005】
U.S. Patent No. 6,218,010には、柔軟性を有する繊維及びスパンボンド不織布を、経済的に許容される加工条件で製造するために適したエチレン-プロピレンコポリマーアロイが開示されている。このアロイには、エチレン含有量が約1重量%から約5重量%のランダムコポリマーが、アロイの重量の約40重量%から約90重量%含まれており:さらにエチレン含有量が約5重量%から約40重量%の第2エチレン-プロピレンコポリマーがアロイの重量の約10重量%から約60重量%含まれている。このコポリマーアロイはマルチ反応器プロセスで製造され、前記マルチ反応器プロセスは、エチレンとプロピレンの混合物を単一又は複数の反応器中でエチレンモノマー及び/又はアルファ-オレフィンをランダムに高分子に導入してランダムコポリマーを生成することができる触媒システムの存在下で重合する第1ステージと、さらに、活性な触媒を含む前記ランダムコポリマーの存在下でエチレンとプロピレンの混合物を単一段又は複数段で重合して第2エチレン-プロピレンコポリマーを生成する第2ステージとから成ることが開示されている。
【0006】
U.S. Patent No. 6,342,565には、結晶可能なプロピレンコポリマーと、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性プロピレンコポリマーとを含む、柔軟で弾性を有する繊維組成物が開示されている。また、この繊維には第2の結晶可能なプロピレンコポリマーが含まれていてもよい。第1の結晶可能なプロピレンコポリマーは、融点が105℃未満で、融解熱が45J/g未満であることを特徴とする。結晶性プロピレンコポリマーは、融点が110℃より高く、融解熱が60J/gより大きいことを特徴とする。第2の結晶可能なプロピレンコポリマーが用いられる場合、第2の結晶可能なプロピレンコポリマーは、第1の結晶可能なプロピレンコポリマーとは分子量及び/又は結晶成分含有量において異なる。
【0007】
U.S. Patent No. 6,635,715には第1アイソタクチックポリプロピレンホモポリマー又はコポリマー成分と、第2アルファ-オレフィン及びプロピレンコポリマー成分とのブレンドが開示されており、第1アイソタクチックポリプロピレン成分は融点が約110℃より高く、 第2コポリマーは約25℃から105℃の融点を有する。このブレンドは2から95wt%の第1成分と、98から5wt%の第2コポリマー成分とを有する。実施例において用いられたポリプロピレンは公称メルトフローレート(MFR) が2.0 g/10分のアイソタクチックポリプロピレンホモポリマーであるESCORENE 4292 (ExxonMobil Chemical Co.社製)であり、第2コポリマーはMw (重量平均分子量)が248,900から318,900で、ムーニー粘度(ML (1+4)、125℃、ASTM D1646準拠) が12.1から38.4である。このブレンドは、改善された加工時の機械的性質、増加された引張強さ、伸び、及び総合的強靭性を対象としている。
【発明の概要】
【0008】
この発明の1以上の実施形態はポリマーブレンドを製造する方法に関し、この方法は(i)反応押出機に第1ポリマーと第2ポリマーを供給して開始ブレンド物を製造するステップであって、第1ポリマーは、最大35wt%の エチレン由来ユニットを含み、ASTM E-793に準拠してDSC法で測定した融解熱が80J/g未満で、融点が110℃未満のプロピレンベースのエラストマーであり、第2ポリマーは融点が110℃より高く、融解熱が80J/gより高いプロピレンベースのポリマーであるステップと、(ii)前記供給ステップの後、前記開始ブレンド物に過酸化物を供給して反応性ブレンド物を製造するステップと、(iii)反応押出機内の一連のバレルに反応性ブレンド物をある流速で導通させるステップと、(iv)1以上のバレルにおいて反応性ブレンド物を高剪断混合するステップと、(v) 反応性ブレンド物の温度を過酸化物の少なくとも50%が分解する温度に保って反応済ブレンド物を製造するステップと、(vi) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を制限して、反応性ブレンド物が高剪断混合に曝される時間を増加させるステップと、(vii) 反応済ブレンド物又は反応性ブレンド物から化合物を除去するステップと、(viii) 反応済ブレンド物に酸化防止剤を導入するステップと、(ix) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を増加させるステップと、(x) 流速を増加させるステップの後、反応済ブレンド物を1以上の金網(スクリーン)に通して不要な混入物を除去するステップと、(xi) 反応済ブレンド物をペレット化するステップとを備える。
【0009】
この発明の別の実施形態はポリマーブレンドを製造する方法に関し、この方法は(i)反応押出機に第1ポリマーと第2ポリマーを供給してブレンド物を製造するステップであって、第1ポリマーは、最大35wt%の エチレン由来ユニットを含み、ASTM E-793に準拠したDSC法で測定した融解熱が80J/g未満で、融点が110℃未満のプロピレンベースのエラストマーであり、第2ポリマーは融点が110℃より高く、融解熱が80J/gより高いプロピレンベースのポリマーであるステップと、(ii)前記供給ステップの後、前記ブレンド物に過酸化物を供給して反応性ブレンド物を製造するステップと、(iii)反応押出機内の一連のバレルに反応性ブレンド物をある流速で導通させるステップと、(iv)1以上のバレルにおいて反応性ブレンド物を高剪断混合するステップと、(v) 反応性ブレンド物を少なくとも165℃に少なくとも5秒間保って反応済ブレンド物を製造するステップと、(vi) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を制限して、反応性ブレンド物が高剪断混合に曝される時間を増加させるステップと、(vii) 反応済ブレンド物又は反応性ブレンド物から化合物を除去するステップと、(viii) 反応済ブレンド物に酸化防止剤を導入するステップと、(ix) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を増加させるステップと、(x) 流速を増加させるステップの後、反応済ブレンド物を1以上の金網に通して不要な混入物を除去するステップと、(xi) 反応済ブレンド物をペレット化するステップとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施形態に係るプロセスの一連のステップを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<プロピレンベースのエラストマー>
この発明の実施形態では、本願の明細書で単にエラストマーと言う事がある、プロピレンベースのエラストマーを使用する。本願の明細書でプロピレンベースのコポリマーと言う事もあるプロピレンベースのエラストマーは、プロピレン由来のユニット(すなわちマー(mer)ユニット)と、エチレン又は4から20の炭素原子を有するα-オレフィンに由来する1以上のコモノマーユニットと、任意にジエンに由来するユニットとから成る。1以上の実施形態では、α-オレフィンコモノマーユニットは、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び/又は1-オクテンに由来する。1以上の実施形態では、ジエンコモノマーユニットは、5-エチリデン-2-ノルボルネン, 5-ビニル-2-ノルボルネン, ジビニルベンゼン, 1,4-ヘキサジエン, 5-メチレン-2-ノルボルネン, 1,6-オクタジエン, 5-メチル- 1,4-ヘキサジエン, 3,7-ジメチル-l,6-オクタジエン, 1,3-シクロペンタジエン, 1,4-シクロヘキサジエン, ジシクロペンタジエン, 又はこれらの組み合わせに由来する。以下の実施形態では、α-オレフィンコモノマーがエチレンである場合について説明するが、この実施形態は別のα-オレフィンコモノマーを有する別のプロピレンベースのコポリマーにも同様に適用することができる。
【0012】
1以上の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーにはエチレン由来ユニットが少なくとも7 wt%含有され、別の実施形態では少なくとも8wt%含有され、別の実施形態では少なくとも9wt%含有され、別の実施形態では少なくとも10wt%含有されている。また別の実施形態では、コポリマーにはエチレン由来ユニットが最大25 wt%含有され、別の実施形態では最大22 wt%含有され、別の実施形態では最大20 wt%含有され、別の実施形態では最大18 wt%含有されている。ここで重量パーセントはプロピレン由来ユニット及びα-オレフィン由来ユニットの全重量を基準とする。本願の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーには少なくとも75 wt%のプロピレン由来ユニットが含まれ、別の実施形態では少なくとも78 wt%のプロピレン由来ユニットが含まれている。また本願の実施形態では、コポリマーには最大80 wt%のプロピレン由来ユニットが含まれ、別の実施形態では最大82 wt%のプロピレン由来ユニットが含まれ、別の実施形態では最大93 wt%のプロピレン由来ユニットが含まれ、別の実施形態では最大90 wt%のプロピレン由来ユニットが含まれている。ここで重量パーセントはプロピレン由来ユニット及びα-オレフィン由来ユニットの全重量を基準とする。プロピレンベースのエラストマーには、全ポリマーに対し約0.5 wt%から最大5 wt%の量のジエン由来マーユニットが含まれていてもよい。
【0013】
エチレン含有量が5 から40wt%エチレンのコポリマー中のエチレン含有量は、次のようにして測定することができる。ASTM D-3900のサブメソットAに従って均一な薄いフィルムを作成する。次にこのフィルムをPerkin Elmer Spectrum 2000赤外分光光度計に取り付ける。次のパラメータによりフルスペクトルを測定する:解像度4.0cm-1, 測定範囲: 4500から450cm-1。エチレン含有量は、1155cm-1のプロピレンバンドの面積と、722-732cm-1のエチレンバンドの面積との比(C3/C2 = AR)を求め、次の式に当てはめて決めることができる。エチレンのwt% = 73.492 - 89.298X + 15.637X2、ここでX = AR/(AR+1)であり、ARはピーク面積比(1155cm-1 / 722-732cm-1)である。
【0014】
1以上の実施形態のプロピレンベースのエラストマーは、示差走査熱量測定(DSC) で測定したとき広い溶融範囲を示し、1以上の極大値を有することを特徴とする。本願で言う融点(Tm)とは、サンプルが溶融する範囲内で熱吸収の極大が生じる最高温度を意味する。
【0015】
1以上の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーのTmは(DSCで測定したとき)120℃未満であり、別の実施形態では100℃未満であり、別の実施形態では65℃未満であり、別の実施形態では60℃未満である。
【0016】
1以上の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーはDSCで測定した融解熱(Hf)で特徴付けられる。1以上の実施形態では、 プロピレンベースのエラストマーは少なくとも0.5 J/gのHfで特徴付けられ、別の実施形態では少なくとも1.0 J/g、別の実施形態では少なくとも1.5 J/g、別の実施形態では少なくとも3.0、別の実施形態では少なくとも4.0、別の実施形態では少なくとも6.0、別の実施形態では少なくとも7.0のHfで特徴付けられる。本願の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーは80 J/g未満のHfで特徴付けられ、別の実施形態では75 J/g未満のHfで特徴付けられ、別の実施形態では65 J/g未満のHfで特徴付けられ、別の実施形態では55 J/g未満のHfで特徴付けられ、別の実施形態では50 J/g未満のHfで特徴付けられ、別の実施形態では45 J/g未満のHfで特徴付けられ、別の実施形態では約30から約50 J/gのHfで特徴付けられる。結晶化度は、サンプルの融解熱を、結晶化度が100%のポリマーの融解熱で割り算することにより求めることができ、100%のポリマーがアイソタクチックポリプロピレンの場合、融解熱は189J/gとみなされている。
【0017】
本願では、Tm及びHfはDSC法により次のようにして測定する。加熱プレスを用いてポリマーを約200℃から約230℃の温度でプレス成型し、得られたポリマーシートを室温下で大気中に置き冷却する。ポリマーシート約6から10mgをパンチダイで打ち抜く。この6から10mgのサンプルを室温で約80から100時間アニールする。その後、サンプルを示差走査熱量測定(Perkin Elmer 7 Pyris One Thermal Analysis System)に置き、約-50℃から約-70℃まで冷却する。このサンプルを10℃/分で最終温度が約200℃になるまで加熱する。サンプルを200℃に約5分間保った後、第2加熱冷却サイクルを行う。第2加熱冷却サイクルにおける事象を記録する。通常は約0℃から約200℃の間に生じる放熱を、サンプルの融解ピークの下の面積として記録する。ポリマーのHfの指標である放熱をジュールで測定する。本願でいうTm は、サンプルが融解する範囲内で熱吸収の極大が生じる最高温度を意味する。また、Tm はサンプルの融解が生じる範囲内における最大熱吸収の温度であってもよい。
【0018】
プロピレンベースのエラストマーは13C NMRで測定した3つのプロピレンユニットから成るトライアドタクティシティが75%以上、80%以上、82%以上、85%以上、又は90%以上である。1以上の実施形態では、トライアドタクティシティの範囲は約50から約99%であり、別の実施形態では約60から約99%であり、別の実施形態では約75から約99%であり、別の実施形態では約80から約99%であり、、別の実施形態では約60から約97%である。トライアドタクティシティはU.S. Patent No. 7,232,871に開示された方法で求めることができる。
【0019】
1以上の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーは狭い組成分布(CD)を有する。このコポリマー分子内の組成分布は、以下に説明するように、ヘキサンやヘプタン等の溶媒での熱的分別により求めることができる。約75wt%、より好ましくは85wt%のポリマーを、1又は2の隣接する溶解性分画として分離され、コポリマーの残余部が、この分画の直前の分画、及びこの分画の後の分画となる。コポリマーが上記のような狭い組成分布を有するために、分離された各分画は、全第2ポリマー成分の平均エチレン含有量との組成差(エチレン含有量のwt%)が通常20wt% (相対値)を超えず、 別の実施形態では10wt% (相対値)を超えない。
【0020】
通常、プロピレンベースのエラストマーは幅広い分子量範囲で合成され、及び/又は幅広い範囲のMFRで特徴付けられる。例えばプロピレンベースのエラストマーは、ASTM D-1238に準拠して荷重2.16 kgで230℃で測定したMFRが少なくとも1.0 dg/minであり、別の実施形態では少なくとも0.5 dg/minであり、別の実施形態では、少なくとも1.5 dg/minである。本願の実施形態ではMFRは180 dg/min未満であり、別の実施形態では150 dg/min未満であってよい。
【0021】
1以上の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーの重量平均分子量 (Mw)は約5から約 5,000 kg/モルであり、別の実施形態ではMwは約10から約 1,000 kg/モルであり、別の実施形態ではMwは約20から約 500 kg/モルであり、別の実施形態ではMwは約50から約 400 kg/モルである。
【0022】
1以上の実施形態では、プロピレンベースのエラストマー数平均分子量(Mn)は約2.5から約2,500 kg/モルであり、別の実施形態ではMnは約5から約500 kg/モルであり、別の実施形態ではMnは約10から約250 kg/モルであり、別の実施形態ではMnは約25から約200 kg/モルである。
【0023】
1以上の実施形態では、プロピレンベースのエラストマーの分子量分布指数(MWD=(MW/Mn))は約1から約40であり、別の実施形態では約1から約5であり、別の実施形態では約1.8から約5であり、別の実施形態では約1.8から約3である。
【0024】
分子量(Mn, Mw)及び分子量分布(MWD)を測定する方法は、U.S. Patent No. 4,540,753 (Cozewith, Ju and Verstrate) (この文献を米国プラクティスのために本願に参照として組み込む) 及びそこに引用された文献、及び米国プラクティスのために本願に参照として組み込むMacromolecules, 1988, volume 21, p 3360 (Verstrate et al.)及びそこに引用された文献に記載されている。例えば分子量は、屈折率検出器を備えたWaters社の150ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン標準サンプルを用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定することができる。
【0025】
本願で用いるプロピレンベースのエラストマーは、上記の特徴を有するプロピレンベースのエラストマーを製造するための公知の合成方法を用いて製造することができる。 U.S. Patent No. 6,525,157, 6,982,310, 6,992,158, 6,992,159, 及び6,992,160 を参照することができる。プロピレンベースのエラストマーは、例えば商品名VISTAMAXX (ExxonMobil Chemical Co.社)で市販されている。
【0026】
<プロピレンベースの熱可塑性樹脂>
この発明の実施形態では、本願で単に樹脂又は熱可塑性樹脂と呼ぶことがある、プロピレンベースの熱可塑性樹脂を用いる。プロピレンベースの熱可塑性ポリマーと呼ぶことがあるプロピレンベースの熱可塑性樹脂は、プロピレンの重合に由来するユニットが主成分のポリマーから成る。いくつかの実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーの少なくとも98%のユニットが、プロピレンの重合に由来する。特定の実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーはプロピレンのホモポリマーから成る。
【0027】
いくつかの実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーにはエチレンの重合に由来するユニット、及び/又は1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-l-プロペン、3 -メチル- 1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン又はこれらの混合物等のα-オレフィンの重合に由来するユニットが含有されている。プロピレンベースの熱可塑性ポリマーには特に、プロピレンと、エチレン又は上記の高級α-オレフィン又はC10- C20ジオレフィンとの耐衝撃性及びランダムコポリマーが含まれる。
【0028】
1以上の実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーのTmは120℃より高く、別の実施形態では155℃より高く、別の実施形態では160℃より高い。本願の実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーのTmは180℃未満であり、別の実施形態では170℃未満であり、別の実施形態では165℃未満である。
【0029】
1以上の実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーはDSCで測定したHfが80 J/g以上であることで特徴付けられ、別の実施形態では100 J/g以上、別の実施形態では125 J/g以上、別の実施形態では140J/g以上であることで特徴付けられる。
【0030】
1以上の実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーには結晶性及び半結晶性ポリマーが含まれる。1以上の実施形態では、これらのポリマーはDSCで測定した結晶化度が少なくとも40wt%であることで特徴付けられ、別の実施形態では少なくとも55wt%、別の実施形態では少なくとも65wt%、別の実施形態では少なくとも70wt%であることで特徴付けられる。結晶化度は、サンプルの融解熱を、結晶化度が100%のポリマーの融解熱で割り算することにより求めることができ、100%のポリマーがアイソタクチックポリプロピレンの場合、融解熱は189J/gとみなされている。
【0031】
通常、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーは幅広い分子量範囲で合成され、及び/又は幅広い範囲のMFRで特徴付けられる。例えばプロピレンベースの熱可塑性ポリマーは、ASTM D- 1238に準拠して荷重2.16 kgで230℃において測定したMFRが少なくとも2 dg/minであり、別の実施形態では少なくとも4 dg/minであり、別の実施形態では、少なくとも6 dg/minである。本願の実施形態では、ASTM D-1238に準拠して荷重2.16 kgで230℃において測定したプロピレンベースの熱可塑性ポリマーのMFRは2,000 dg/min未満であり、別の実施形態では400 dg/min未満であり、別の実施形態では250 dg/min未満であり、別の実施形態では100 dg/min未満であり、別の実施形態では50 dg/min未満であってよい。
【0032】
1以上の実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーは、重量平均分子量 (Mw)が約50から約 2,000 kg/モルであることで特徴付けられ、別の実施形態ではMwは約100から約 600 kg/モルであることで特徴付けられる。またプロピレンベースの熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンを標準に用いたGPCで測定したMnが約25から約 1,000 kg/モルであることで特徴付けられ、別の実施形態ではMnが約50から約 300 kg/モルであることで特徴付けられる。
【0033】
プロピレンベースの熱可塑性ポリマーは、スラリー法、気相法、又は溶液法等の適切な公知の重合方法により、公知のチーグラーナッタ触媒、又はメタロセン等のシングルサイト有機金属触媒、又はオレフィン重合可能な任意の有機金属化合物を用いて製造することができるが、これらに限定されない。
【0034】
ひとつの実施形態では、プロピレンベースの熱可塑性ポリマーにはアイソタクチックポリプロピレン等の高結晶性ポリプロピレンが含まれる。このポリプロピレンの密度は約0.85から約0.91 g/ccであり、高度にアイソタクチックなポリプロピレンの密度は約0.90から約0.91 g/ccである。
【0035】
<過酸化物>
この発明の実施形態では過酸化物を用いる。1以上の実施形態では、有用な過酸化物として、ポリマー鎖を分解(すなわち、サイズ又は切断)して分子量分布を帰ることができる過酸化物が挙げられる。様々な公知の過酸化物を用いることができ、非限定的例示としてジアルキルペルオキシドが挙げられる。例として、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシル)ヘキサン及びジクミルペルオキシドが挙げられる。商品名LUPEROX 101 (Arkema社)で市販されている過酸化物を用いることができる。
【0036】
<他の原料>
この発明のブレンド物には他の原料も含まれている。例えばこの発明のブレンド物には、ブレンド組成物中の全ポリマーを基準として、50から4000ppmの造核剤が含まれている。造核剤として、例えば安息香酸ナトリウムやタルクが挙げられる。また、チーグラーナッタオレフィン生成物やその他の高結晶性ポリマー等の、他の造核剤を用いることもできる。造核剤として、HPN-68等のHYPERFORM、Millad添加剤 (例えばMillad 3988) (Milliken Chemicals社, Spartanburg, SC)、及びNA-11やNA-21等の有機リン酸塩(Amfine Chemicals社, Allendale, NJ)が挙げられる。
【0037】
さらに、様々な添加剤を、様々な用途のブレンド物、繊維、布の製造に用いられる上記の実施形態において添加することができる。別の添加剤として、例えば安定剤、酸化防止剤、フィラー、滑剤が挙げられる。第1及び第2酸化防止剤として、例えばヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、及びホスファイトが挙げられる。例えばAcrowax C等の分散剤等の他の添加剤を用いることもできる。また触媒不活性化剤を用いることもでき、例えばステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、及び/又はその他の公知の酸中和剤を用いることができる。
【0038】
1以上の実施形態では有用な滑剤として、繊維のポリマー母材(すなわちプロピレンベースのエラストマー、及び/又はプロピレンベースの熱可塑性ポリマー、及び/又は感触向上剤)との親和性が乏しいため、繊維の表面に移行する化合物又は分子が挙げられる。本願の実施形態では、有用な滑剤は比較的低分子量であることで特徴付けられ、低分子量であることにより表面への移行が促進される。滑剤のタイプとして、Handbook of Antiblocking, Release and Slip Additives, George Wypychの23ページに開示された脂肪酸アミドが挙げられる。脂肪酸アミドの例として、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、N-(2-hdriエチル) エルカ酸アミド(N-(2-hdriethyl) erucamide)、ラウリン酸アミド、N,N'-エチレン−ビス−オレイン酸アミド、N,N'-エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、獣脂アミド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
他の添加剤の例として、例えば、難燃剤、可塑剤、加硫又は硬化剤、加硫又は硬化促進剤、硬化抑制剤、加工助剤等が挙げられる。上記の添加剤には、独立に添加剤に添加されるか、又は添加剤に組み込まれた、充填剤及び/又は強化材料が含まれていてもよい。例として、カーボンブラック、クレイ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、ケイ酸塩、これらの組み合わせ等が挙げられる。物性を向上させるために用いられるその他の添加剤として、ブロッキング防止剤又は潤滑剤が挙げられる。
【0040】
又別の実施形態では、イソパラフィン、ポリアルファオレフィン、ポリブテン、又はこれらの2以上の混合物を本発明の組成物に添加することもできる。ポリアルファオレフィンとしてWO 2004/014998に記載されたものが挙げられる。これらのポリアルファオレフィンは、例えば、約0.5wt%から約40 wt%の量で、別の実施形態では約1 wt%から約20 wt%の量で、及び他の実施態様では約2wt%から約10wt%の量で添加することができる。特定の実施形態では、高純度のパラフィンオイルを用いることができる。この高純度のパラフィンオイルには70%より多くの、別の実施形態では80%より多くのパラフィンが含有されている。有用なパラフィンオイルは、本願に参照として組み込むU.S. Publication No. 2006/0008643, 2006/0247332, 2006/0247331, 及び2006/135699にも開示されている。1以上の実施形態では、押出機に1以上の原料を供給するためのキャリヤー又はスラリー媒体としてパラフィンオイルを有効に用いることができる。例えば、パラフィンオイルは押出機に過酸化物を供給するためのキャリヤーとして用いられる。
【0041】
<ブレンド物の製造>
この発明の実施形態はポリマーブレンド物の製造に向けられている。これらの方法により、独特で予想外な、有利なメルトフロー、機械的及び流動特性、及び取り扱い性等の技術的に有用なポリマーブレンド物のペレットを製造することができる。
【0042】
この発明の1以上の実施形態を、図1を参照して説明する。図示されたブレンディングプロセス10では、プロピレンベースのエラストマーはプロピレンベースの熱可塑性樹脂とともに反応押出機(反応押出機の全体は図示していない)のバレル位置12内に導入され、開始ブレンド物が製造される。プロピレンベースのエラストマー及び樹脂は、計重式又は定容式のスクリューフィーダ又はベルトフィーダ等の正確な計量供給装置を用いて供給孔に入れられる。プロピレンベースのエラストマー及び樹脂は別々に同じ位置に供給されるか、又は押出機に沿った別々の位置に供給される。別々の位置に供給される場合、その構成成分はサイド押出機により予め溶融又は可塑化される。
【0043】
当業者であれば、エラストマーと樹脂の導入を押出機の外のリボンブレンダーやタンブラー等のブレンダーで行い、ブレンド物をこの発明から離れることなく押出機に供給できることを理解できよう。このプロセスを多段階の押出で行うこともでき、例えば、1以上のポリマーのマスターバッチを第1段階で調製し、次の段階で反応押出を行うこともできる。マスターバッチには、ポリマー性原料、過酸化物、酸化防止剤、UV又は他の安定剤、及び可塑剤の1以上の分散体が含まれる。マスターバッチは、分子レベルでの「完全濡れ」又は分散ではなく、単純な物理的混合物を意味する「ドライミックス」であってもよい。「ドライミックス」は、例えば2種の原料をタンブラー又はリボンブレンダー中で単純に混ぜ合わせたときに得られる。「分散体」は、1以上の原料が溶融して他の原料を被覆する及び/又は他の原料中に分散するように、各原料を機械的に処理及び/又は加熱したときに得られる。
【0044】
プロピレンベースの熱可塑性樹脂とともに導入されるプロピレンベースのエラストマーの量は、最終目標の物性に応じて種々変更することができる。1以上の実施形態では、ブレンド物には、プロピレンベースの熱可塑性樹脂とプロピレンベースのエラストマーの重量を基準として、少なくとも50重量部のプロピレンベースのエラストマーが含まれ、別の実施形態では少なくとも60重量部のプロピレンベースのエラストマーが含まれ、別の実施形態では少なくとも70重量部のプロピレンベースのエラストマーが含まれ、別の実施形態では少なくとも80重量部のプロピレンベースのエラストマーが含まれている。本願の実施形態ではブレンド物には、プロピレンベースの熱可塑性樹脂とプロピレンベースのエラストマーの重量を基準として、98重量部未満のプロピレンベースのエラストマーが含まれ、別の実施形態では95重量部未満のプロピレンベースのエラストマーが含まれ、別の実施形態では90重量部未満のプロピレンベースのエラストマーが含まれている。
【0045】
1以上の実施形態では、ブレンド物には、プロピレンベースの熱可塑性樹脂とプロピレンベースのエラストマーの重量を基準として、少なくとも2重量部のプロピレンベースの熱可塑性樹脂が含まれ、別の実施形態では少なくとも5重量部のプロピレンベースの熱可塑性樹脂が含まれ、別の実施形態では少なくとも10重量部のプロピレンベースの熱可塑性樹脂が含まれ、別の実施形態では少なくとも12重量部のプロピレンベースの熱可塑性樹脂が含まれている。本願の実施形態では、ブレンド物には、プロピレンベースの熱可塑性樹脂とプロピレンベースのエラストマーの重量を基準として、50重量部未満のプロピレンベースの熱可塑性樹脂が含まれ、別の実施形態では30重量部未満のプロピレンベースの熱可塑性樹脂が含まれ、別の実施形態では20重量部未満のプロピレンベースの熱可塑性樹脂が含まれている。
【0046】
1以上の実施形態では、反応押出機には、反応押出を行える押出機が含まれる。このような押出機として、単軸押出機、同方向回転噛合二軸押出機、逆方向回転非噛合二軸押出機、その他の多軸押出機等の公知の連続混合押出機が挙げられる。これらの反応押出機は通常一連のバレルを含んで構成され、これらのバレルを連結したとき、ポリマーを導通可能な通路又は管路が形成される。この通路には複数のエレメントが取り付けられた2以上のスクリューが設けられ、複数のエレメントは各バレルを通過するポリマーの進行に影響を及ぼす。例えば、複数のエレメントは主に原材料を各バレルに通過させるとともにバレル内で原材料を混合及び混練し、及び/又は、複数のエレメントは主に1以上のバレル内において流動を制限するか又はバックミキシングを生じさせる。所望の混合順序とストラテジーが決められれば、当業者であれば種々のスクリューの種々のエレメントを容易に適合させて、本願に開示する所望の混合順序とストラテジーを達成することができる。
【0047】
再び図1を参照して、開始ブレンド物はその後バレル位置14へ移送され、バレル位置14では開始ブレンド物に過酸化物が導入され、これにより反応性ブレンド物が形成される。過酸化物は、別の供給装置を用いて液体又は粉体の形態で添加される。あるいは、過酸化物はプロピレンベースのエラストマー及び/又はプロピレンベースの熱可塑性樹脂、又はプロセスにおいて用いられる他の原料と予備混合され、次に押出機に供給される。
【0048】
反応性ブレンド物は高剪断混合ゾーン16へ移送される。反応性ブレンド物は、高剪断混合ゾーン16で強力に混合され、混練される。高剪断混合ゾーンには、1以上のバレルが含まれ、押出機の回転シャフト又はスクリューには高剪断混練エレメントが設けられ、任意に高剪断混合ゾーン16内における反応性ブレンド物の滞留時間を増加させるための逆及びバックミキシングエレメントが設けられている。シャフトの回転速度と、混練エレメントによる高剪断混合とにより、反応性ブレンド物の温度が上昇する。1以上の実施形態では、ブレンド物の温度は外部加熱源によっても上昇する。
【0049】
過酸化物は加熱により分解して、プロピレンベースのエラストマー及び/又はプロピレンベースの熱可塑性樹脂と反応するフリーラジカルを生成すると考えられる。また、過酸化物はプロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂に、異なるメカニズムにより異なる影響を及ぼすと考えられる。詳しくは、過酸化物は適切な条件下においてプロピレンベースの熱可塑性樹脂を主に切断又は開裂させ(ビスブレーキングとして知られるプロセス)、これにより分子量を低下させると考えられている。また過酸化物はプロピレンベースのエラストマーのメチレンセグメントに影響を及ぼして分岐又は架橋を生じさせることにより、分子量を増加させる一方、メルトフローレートを低下させると考えられる。またプロピレンベースのエラストマーの主鎖のフリーラジカル末端と、プロピレンベースの熱可塑性樹脂の主鎖のフリーラジカル末端とが互いに反応又はグラフト化して主鎖セグメントが絡み合うことにより、各ポリマー原料のブロックセグメント(すなわちプロピレンベースのエラストマーのブロックとプロピレンベースの熱可塑性樹脂のブロック)が構成される。
【0050】
予期せぬことに、高温に保ち、この高温及び/又は高剪断混合において十分な滞留時間を保つことにより、有利な製品が得られることが見出された。この予想外の発見は、過酸化物と、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂との相互作用又は反応の態様の差に起因すると考えられる。すなわち、過酸化物はプロピレンベースのエラストマーと反応する場合と比較して、プロピレンベースの熱可塑性樹脂と、より低い剪断及び温度下でより速く反応するため、プロピレンベースのエラストマーとの反応に伴う利点は、より高い剪断混合、より高い温度、及び/又はより長い滞留時間においてのみ得られる。すなわち、従来は水冷等によってブレンド物から熱を奪うか、及び/又は、弱い混合プロファイルを用いることに注力していたが、この発明では高剪断混合ゾーン16内の条件を、所望の物性が得られるように、過酸化物の十分な分解が得られる条件に保つ。
【0051】
1以上の実施形態では、高剪断混合ゾーン16内の反応性ブレンド物の温度は少なくとも195℃に保たれ、別の実施形態では少なくとも205℃に保たれ、別の実施形態では少なくとも215℃に保たれ、別の実施形態では少なくとも220℃に保たれる。本願の実施形態では、反応性ブレンド物の温度は、各ポリマーの分解温度より低い温度、又は有害な量のゲルが生成する温度より低い温度に保たれる。1以上の実施形態では、ブレンド物の温度は300℃より低い温度に保たれ、別の実施形態では270℃より低い温度に保たれ、別の実施形態では250℃より低い温度に保たれる。
【0052】
1以上の実施形態では、反応性ブレンド物が特定の加熱温度に保たれる滞留時間は少なくとも5秒間であり、別の実施形態では少なくとも10秒間であり、別の実施形態では少なくとも15秒間であり、別の実施形態では少なくとも20秒間であり、別の実施形態では少なくとも25秒間であり、別の実施形態では少なくとも30秒間であり、別の実施形態では少なくとも35秒間である。本願の実施形態では、反応性ブレンド物が特定の加熱温度に保たれる滞留時間は90秒未満であり、別の実施形態では80秒未満であり、別の実施形態では70秒未満であり、別の実施形態では60秒未満であり、別の実施形態では50秒未満である。
【0053】
上記に鑑み、当業者であれば所望の反応を得るために操作可能な別の操業条件は、使用する過酸化物の量であることをも理解できよう。別言すれば、ブレンド物中の各ポリマーと過酸化物との間で得ようとする反応は、過酸化物の使用時の温度、滞留時間、及び濃度に依存する。1以上の実施形態では、ブレンド物に導入される過酸化物の量は、プロピレンベースの熱可塑性樹脂とプロピレンベースのエラストマーの重量の合計に対し、少なくとも500 ppm (重量)であり、別の実施形態では少なくとも1000 ppmであり、別の実施形態では少なくとも1500 ppmであり、別の実施形態では少なくとも2000 ppmであり、別の実施形態では少なくとも2500 ppmであり、別の実施形態では少なくとも3000 ppmであり、別の実施形態では少なくとも3500 ppmであり、別の実施形態では少なくとも4000 ppmであり、別の実施形態では少なくとも4500 ppmであり、別の実施形態では少なくとも5000 ppmである。本願の実施形態では、ブレンド物に導入される過酸化物の量は、プロピレンベースの熱可塑性樹脂とプロピレンベースのエラストマーの重量の合計に対し10,000 ppm未満、別の実施形態では8000 ppm未満、別の実施形態では6000 ppm未満、別の実施形態では5000 ppm未満、別の実施形態では4000 ppm未満、別の実施形態では3000 ppmである。
【0054】
別の実施形態では、高剪断混合ゾーン16の条件は混合物に導入された過酸化物の分解により説明することができる。1以上の実施形態では、温度及び滞留時間が含まれる高剪断混合ゾーン16内の条件は、ブレンド物中に導入された過酸化物の分解(すなわち転化率)が少なくとも50%になるように制御され、別の実施形態では少なくとも60%、別の実施形態では少なくとも70%、別の実施形態では少なくとも80%、別の実施形態では少なくとも90%、別の実施形態では少なくとも95%、別の実施形態では少なくとも99%になるように制御される。この転化率は高剪断混合ゾーン16内で完全に生じるか、又は下流側のゾーン又はバレルにおいて所望の転化率となるように、高剪断混合ゾーン16を制御する。
【0055】
図1に示すように、高剪断混合ゾーン16内の揮発性化合物を、押出機のベントセクションを含む出口18を通して高剪断混合ゾーン16から任意に除去することができる。真空ポンプ(詳細は図示していない)を用いて、揮発及び揮発性成分の除去を向上させることができる。
【0056】
出口18に加えて、又は出口18に代えて、後述する移送ゾーン20の出口22から揮発性化合物を任意に除去することができる。出口22には出口18と同様に、押出機内のベントセクションと、揮発及び揮発性成分の除去を向上させる真空ポンプとが含まれる。
【0057】
過酸化物のフリーラジカル開裂によりメタン、水素、及び非限定的例示としてアセトン、t-ブチルアルコール等のアルコール、ホルムアルデヒド等のアルデヒド等が挙げられる酸素含有化合物等の揮発性ガスが発生すると考えられる。供給される原料中の水分からも、水蒸気が発生する。これらの水蒸気、及び供給原料とともに押出機に侵入した空気又は窒素をも含むガスは、揮発性化合物として除去される。これらの揮発性化合物の除去が、次工程のペレタイジングステップによい結果を及ぼすという予期せぬ効果が見出された。ペレタイジングステップについては下記に説明する。
【0058】
再び図1を参照して、反応性ブレンド物は高剪断混合ゾーン16から移送ゾーン20を経て搬出され、反応性ブレンド物から反応済ブレンド物への転換が完了する。又、反応済ブレンド物は移送ゾーン20内で冷却される。当業者であれば、反応済ブレンド物の温度はブレンド物の適切な流動を保つために十分な温度に保つ必要があるが、この温度は過酸化物の分解及び反応が行われた上流側で維持された高温である必要は無く、またこのような高温ではない方が好ましいことを理解できよう。
【0059】
1以上の実施形態では、酸化防止剤を反応済ブレンド物に添加することができる。例えば図1に示すように、反応済ブレンド物が高剪断混合ゾーン16から搬出されるとき、酸化防止剤をフィーダ24から添加することができる。1以上の実施形態では、1以上の酸化防止剤を、可塑剤、エクステンダーオイル、又はその他の低分子量物質等のキャリヤー材料とともに導入する。1以上の実施形態では、酸化防止剤は低粘度物質とともに押出機のバレルにスラリーの形態で注入される。
【0060】
1以上の実施形態では、酸化防止剤は2,6-ジ-ターシャリ-ブチルフェノール(2,6-DTBP)等のアルキル化フェノール、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール等のブチレート化ヒドロキシトルエン、及び/又はトリス(2,4-ジ-(ターシャリ)-ブチルフェニル)フォスファイト等の亜リン酸塩である。酸化防止剤とともに導入される低分子量化合物には、高純度パラフィンオイル、及び上記のもの等のパラフィンオイルが含まれる。有用なオイルの例として、商品名SPECTRASYN (ExxonMobil Chemical Co.社) で市販されているオイルが挙げられる。
【0061】
1以上の実施形態では、押出機内のブレンド物に任意の酸化防止剤、又はその他の任意の材料を導入した後、反応済ブレンド物を圧力増加ゾーン26へ移送する。圧力増加ゾーン26は反応済ブレンド物の圧力及び/又は流速を増加させて、反応済ブレンド物のダイプレート(図示せず)を通した移動を促進する。圧力増加ゾーン26には、適切又は増加した圧力を生じるように設計された押出機のスクリューセグメントが含まれている。別の実施形態では、圧力増加ゾーン26にはギヤポンプが設けられている。ギヤポンプを用いることによりプロセスの変動を最小限にすることができ、下記に説明する金網によるろ過等の下流側の処理に伴う圧力変動から押出機を保護することができる。すなわち、圧力増加ゾーン26は押出機の1以上のバレル内に位置するか、又は押出機の外部に位置することが理解できよう。
【0062】
圧力増加ゾーン26は、反応済ブレンド物が、金属片、ポリマーゲル、及び/又は原料の未溶融ペレット等の混入物を除去するための1以上の金網28を通過することを促進する。この金網によるろ過ステップは押出機内で行われるか、又は反応済ブレンド物が押出機を出るとき、又は出た後に行われる。特定の実施形態では、金網は押出機出口とダイプレートの間に設けられる。
【0063】
1以上の実施形態では、反応済ブレンド物はペレタイザー30でペレット化又は顆粒化される。1以上の実施形態では、高温の押し出し物としての反応済ブレンド物は、回転ドラムを用いて引き出されるリボン形状に製品を賦形するように特別に作られたダイプレートに通される。この回転ドラムは、高温の押し出し物を冷却できるように水冷され、及び/又は水中に設けられている。このリボンは、寸法が約0.5mmから約20mmの範囲になるように切断されるか、又は小さなチップに粉砕される。ダイ孔の幅により、ペレットの厚みが決まる。
【0064】
別の実施形態では、孔開きが約0.5mmから約20mmの範囲の多数の孔を有するダイプレートが用いられる。通常は溶融ストランド状又はロープ状の形態の反応済ブレンド物は切断されて、通常は円柱状の形状の小さなペレットにされる。カッターの刃の回転速度を調整するか、又はカッターの刃の間隔を変更することにより、ペレットの長さを変えることができる。
【0065】
1以上の実施形態では、アンダーウォータペレタイザーが用いられる。溶融押出物の形態の反応済ブレンド物は、1以上のダイ孔を有するダイプレートに通される。ダイプレートは、ブレンド物の粘度がペレタイジングに適した粘度になるように調節するために加熱されているか、及び/又は冷却されている。ダイの温度調節には電気ヒータが用いられる。あるいは、ダイの温度を調節するために、加熱したオイル、水、スチーム及び/又はその他の熱伝達オイルを用いることができる。ダイ孔から流出する押出物は、アンダーウォータペレタイザーのウォーターチャンバーを高速で流れる水流を用いて冷却することができる。特定の実施形態では、ダイプレートの水流を強化してペレット化を改善するためにダイバータが用いられる。本願の実施形態では、所望のサイズのペレットを得るために、ペレターザーの回転軸に取り付ける刃の数を変更する。本願の実施形態では、ペレターザーの刃の回転速度を調整して所望のサイズのペレットを得る。
【0066】
特定の実施形態では、水にアンチブロッキング剤又は分散剤を処方する(又は添加する)。これらの添加剤によりペレットの凝集が防止される。特定の実施形態では、凝集を最小限にするために、ペレット化する水にステアリン酸カルシウムの粉末を分散させる。
【0067】
別の実施形態では、その中で押出物をペレット化する水は、冷却源を用いて冷却される。1以上の実施形態では、水の温度は50℃以下に冷却され、別の実施形態では40℃以下に冷却され、別の実施形態では30℃以下に冷却され、別の実施形態では20℃以下に冷却され、別の実施形態では10℃以下に冷却される。
【0068】
次にペレットを水流に乗せて回転ドライヤー、振動篩、振動コンベア、流動床ドライヤー、又はその他の乾燥装置へ送り、遠心力又は重力により水を除去する。次にペレットを篩分けして、オーバーサイズペレットと微粒を除去する。流動床ドライヤーを用いてさらにペレットを乾燥することができる。所望の範囲のサイズのペレットを、適切な滞留時間及び/又はブレンド効果が得られ、包装のために均一なサイズが提供されるように設計された貯蔵容器又はサイロに空送する。製品は、スーパーサック(super sack)又はダンボール箱の中に充填される。あるいは、製品を輸送用の貨車、トート(tote)、又はバルク容器に充填する。又は、製品を手動又は自動包装装置又は「成形-充填-封止」包装装置を用いて、袋の中に充填する。
【0069】
<製品の物性>
いくつかの実施形態では、この発明により得られるポリマーブレンド物は、1以上の有利な物性で特徴付けられる。1以上の実施形態では、ブレンド物はASTM D-1238, 2.16 kg@230℃で測定したメルトフローレートが少なくとも60 dg/minであることで特徴付けられ、別の実施形態では少なくとも80 dg/minであることで特徴付けられ、別の実施形態では少なくとも100 dg/minであることで特徴付けられ、別の実施形態では少なくとも150 dg/minであることで特徴付けられ、別の実施形態では少なくとも170 dg/minであることで特徴付けられ、別の実施形態では少なくとも190 dg/minであることで特徴付けられる。本願の実施形態では、ブレンド物のメルトフローレートは800 dg/min未満であり、別の実施形態では500未満、別の実施形態では400未満、別の実施形態では300未満、別の実施形態では250 dg/min未満であることで特徴付けられ、別の実施形態では230 dg/min未満であることで特徴付けられ、別の実施形態では210 dg/minであることで特徴付けられる。
【0070】
<工業上の利用可能性>
この発明の方法で得られるポリマーブレンド物を不織布の製造に用いることができる。前述の組成物からの不織布の製造には、押出成型による繊維の製造工程と、それに続く織り工程又はボンディング工程が含まれる。押出工程は、機械的又は空気力学的な繊維の延伸により行うことができる。この発明の繊維及び布は、当該技術分野で公知の任意の技術及び/又は設備により製造することができ、それらの多くは周知である。例えば、スパンボンド不織布は、ドイツのTroisdorfにあるReifenhauser GmbH & Co.社製のスパンボンド不織布製造ラインにより製造することができる。Reinfenhauser社のシステムは、U.S. Patent No. 4,820,142に記載されたスロットドローイング技術を使用している。
【0071】
1以上の実施形態では、繊維は連続フィラメント法、バルク連続フィラメント法、又はステープル・ファイバー形成法により製造することができる。例えば、溶融したポリマーをダイ(紡糸口金)の穴を通じて押出すことができ、ダイ(紡糸口金)の穴の直径は例えば0.3mmから0.8mmである。使用するポリマーの溶融温度を高くし(例えば、230℃から280℃)、高メルトフローレート(例えば15 g/10 minから40 g/10 min)のポリマーを使用することにより、ポリマーの溶融粘度を低くすることができる。
比較的大きな押出機には、大量の溶融したポリマーを約8から約20の紡糸口金の集積体に分配するためのマニホールドを設けることができる。それぞれの紡糸ヘッドの内部に、紡糸ヘッドからの押出量を制御するための個別のギヤポンプ;「ブレーカープレート」に支持されたフィルターパック;及び口金プレートを設けることができる。口金プレートの穴の数によりヤーン中の繊維の数が決定される。口金プレートの穴の数はヤーンの構造により異なるが、通常は約50から約250の範囲である。冷却エアの流れの良好な分配を補助するため、複数の穴を円形、環状、長方形のパターンに配置することができる。
【0072】
<連続フィラメント>
連続フィラメントのヤーンは、約40デニールから約2000デニールの範囲である(デニール=グラム数/9000ヤード)。繊維は一般に繊維一本あたり1から20デニール(dpf)であるが、これより広い範囲であってもよい。紡糸速度は、800m/minから1500m/min(2500ft/minから5000ft/min)である。例示的な方法は以下の通りである。繊維は3:1以上の延伸倍率で延伸され(1段階又は2段階延伸)、パッケージに巻き取られる。2段階延伸により高い延伸倍率を達成することができる。巻き取り速度は2000m/minから3500m/min(6600ft/minから11500ft/min)である。紡糸速度が900m/min(3000 ft/min)を超える場合は、極細繊維について最善の紡糸性を得るために狭い分子量分布が必要とされる。例えば最小MFRが5で、多分散性指数(PI)が2.8を下回る樹脂が挙げられる。紡糸速度が遅いプロセスの場合、又はより高デニールの繊維の場合、MFRが16の反応器グレードの樹脂が好ましい。
【0073】
<部分延伸糸(POY)>
部分延伸糸(POY)は、(上記の連続フィラメントのような)固相延伸なしの繊維紡糸から直接製造される繊維である。繊維中での分子の配向は、溶融ポリマーが紡糸口金を脱した直後の溶融状態でのみ生じる。繊維が一旦固化された後は繊維は延伸されず、繊維は巻き取られてパッケージにされる。POYヤーンは(固相状態で配向され、高い引っ張り強さと低い伸長を有する完全配向糸、又はFOYとは対照的に)高い伸長と低い引っ張り強さを有する傾向にある。
【0074】
<嵩高連続フィラメント>
嵩高連続フィラメントの製造工程は、1段プロセスと2段プロセスの2つの基本的なタイプに分類される。例えば2段プロセスでは、未延伸のヤーンが1000m/min(3300ft/min)未満、通常は750m/min未満で紡糸され、パッケージにされる。ヤーンは(通常2段プロセスで)延伸され、テクスチャライザー(texturizer)と呼ばれる機械上で「嵩高」にされる。巻き取り及び延伸の速度は、嵩高化装置又はテクスチャライズ装置により、通常は2500m/min(8200ft/min)以下に制限される。2段プロセスのCFプロセスのように、第二の結晶化は迅速な延伸テクスチャライズを必要とする。共通するプロセスには、1段プロセスの紡糸/延伸/テクスチャライズ(SDT)プロセスが含まれる。このプロセスは、2段プロセスよりもよりよい経済性、効率性、及び性質を提供できる。このプロセスは嵩高化装置が組み込まれている点を除いて、1段CFプロセスに類似している。嵩高化又はテクスチャライズは、ヤーンの外観を変化させ、繊維を分離させ、緩やかに屈曲及び折り曲げてヤーンの外観を分厚く(より嵩高く)することができる。
【0075】
<ステープル・ファイバー>
繊維製造プロセスには、伝統的な紡糸とコンパクトな紡糸の二つのプロセスが含まれる。伝統的なプロセスには、通常次の二つのステップが含まれる:i) 製造し、仕上げをして、巻き取り、次いで、ii) 延伸し、第二の仕上げをして、クリンピングさせ、ステープルに切断する。用途に応じて、繊維は例えば1.5dpfから70dpfを超える範囲である。ステープルの長さは、用途に応じて7mmから200mm(0.25インチから8インチ)の範囲である。多くの用途において、繊維はクリンプされる。クリンピングは、トウ(tow)を、一対のニップロールを備え、スチームで加熱されたスタッファーボックス(stuffer box)に過剰に供給することにより行われる。過剰供給によりトウがスタッファーボックス内で折り曲げられ、繊維に屈曲又は縮れを生じさせる。これらの屈曲をボックスに導入した蒸気により熱永久変形させることができる。樹脂のMW、MWD、及びアイソタクチック含量は、縮れの安定性、大きさ、及びクリンピングの容易性に影響する。
【0076】
<メルトブロー布>
メルトブロー布は、繊維の直径が20ミクロンから0.1ミクロンの範囲の微細な繊維のウェブを意味する。メルトブロー繊維の直径は1ミクロンから10ミクロンの範囲であり、別の実施形態では1ミクロンから約5ミクロンの範囲である。これらの微細な直径の繊維で形成された不織布は非常に小さな孔の大きさを有し、非常に優れたバリア特性を有する。例えばメルトブロープロセスでは、押出機でポリマーを融解させて、定量メルトポンプに送る。定量メルトポンプは溶融したポリマーを一定の送出量で特製のメルトブローダイに送る。ダイから押し出された溶融したポリマーは、高温で高速の空気(プロセスエア又は一次エアと呼ばれる)に接触する。このエアは迅速に繊維を延伸し、冷却エアと組み合わされて繊維を固化する。全繊維形成プロセスは、通常はダイから数インチ以内で生じる。ダイの設計は、質の高い製品を効率的に製造するために重要である。不織布は、紡糸口金から通常200mmから400mm(8インチから15インチ)の位置にある多孔成形ベルト(porous forming belt)上に繊維を直接吹き付けることにより形成される。より高坪量でより高ロフトの製品の場合は、より大きな形成距離が使用される。メルトブローでは可能な限り微細な繊維を得るために、200g/10minのような非常に高メルトフローレートの樹脂が必要とされるが、別の実施形態では、より高い加工温度において20g/10min程度のMFRの低い樹脂を用いることができる。
【0077】
<スパンボンド布>
スパンボンド又はスパンボンド繊維には、例えば溶融ポリマーを数千の孔を有する大きな紡糸口金から押出して製造された繊維製品、又は例えば40個程度の孔を有する小さな紡糸口金の集積体から押出して製造された繊維製品のいずれかが含まれる。紡糸口金を出た後、溶融繊維は直交流の冷却空気システムにより冷却され、高速の空気によって紡糸口金から引き離され、細くされる(延伸される)。一般的には空気による細化には2つの方法があり、そのいずれもベンチュリー効果を使用している。第一の方法は、アスピレータ・スロットを使用して繊維を延伸するものであり(スロット・ドロー)、アスピレータ・スロットは紡糸口金の全幅又は装置の全幅に亘っている。第二の方法は、ノズル又はアスピレータ・ガンにより繊維を延伸するものである。この方法で形成される繊維は金網(「ワイヤー」)上又は多孔成形ベルト上に集積され、ウェブが形成される。次いで、ウェブは圧縮ロールに通され、次いで加熱されたカレンダーロールの間に通され、ここで一方のロール上の隆起した部分が、例えばウェブの面積の10%から40%を覆う複数の点でウェブを接合し、不織布が形成される。別の実施形態では、繊維の溶着が、対流又は放射熱により行われる。また別の実施形態では、繊維の溶着がハイドロエンタングリング又はニードルパンチ法を使用した摩擦により行われる。
【0078】
連続フィラメントの繊維を形成した後、又は繊維から不織材料を製造した後、アニーリングを行う。アニーリングは引き伸ばされた繊維の内部応力を部分的に軽減することができ、繊維中のブレンド物の弾性回復特性を回復させことができる。アニーリングは、結晶構造の内部組成、アモルファス及び半結晶相の相対的順序を大きく変化させることが示された。これにより弾性特性が回復される。例えば、室温を超え、少なくとも40℃の(しかし、ブレンド物の結晶の融点からはわずかに低い)温度で繊維をアニーリングすることにより、繊維の弾性特性を十分回復させることができる。
【0079】
繊維の熱的アニーリングは、繊維(又は繊維から作られた布)を、例えば室温から160℃までの範囲、あるいは最大130℃までの温度に数秒間から1時間未満保持することにより行うことができる。通常のアニーリング時間は、約100℃では1分から5分である。アニーリング時間及び温度は、使用する組成物毎に調整することができる。別の実施形態では、アニーリング温度は60℃から130℃の範囲である。別の実施形態では、温度は約100℃である。
【0080】
いくつかの実施形態では、例えば公知の連続繊維紡糸において、公知のアニーリング技術を用いることなく、繊維を加熱したロール(まち(godet))を通過させることによりアニーリングを行うことができる。アニーリングは、好ましくは繊維を収縮させて繊維に弾性を付与するために、非常に低い繊維の張力の下で行う。不織工程では、通常ウェブをカレンダーに通過させてウェブを点接合する(強固にする)。強固にされていない不織布を比較的高い温度で加熱されたカレンダーに通過させることで、繊維は十分アニーリングされ、不織布の弾性が向上する。繊維のアニーリングと同様、不織布の仕上げ工程を低張力下で行って、ウェブを機械方向(MD)と幅方向(CD)の両方向に収縮させることにより、不織布の弾性を強化することが望ましい。別の実施形態では、ボンディングを行うカレンダーロールの温度は100℃から130℃の範囲である。別の実施形態では、カレンダーロールの温度は約100℃である。アニーリング温度は、個々のブレンド物について調整することができる。
【0081】
この発明の繊維及び不織布を、いくつかの用途に用いることができる。1以上の実施形態では、この発明の繊維及び不織布をオムツ及び/又は類似の衛生物品、例えば失禁用衣服等の用途に有利に用いることができる。特に、この発明の繊維及び不織布は、これらの物品の動的な又は伸縮可能な部材として用いることができ、非限定的例示として、弾性のある取付用バンドとして用いることができる。別の実施形態では、この発明の繊維及び不織布を、例えば医療用ガウン又はエプロン、寝具類、又は他の類似の使い捨ての衣類及びカバー等の、他の保護用の衣類、又はカバーに加工することができる。
【0082】
別の実施形態では、この発明の繊維及び布を濾過媒体の製造に用いることができる。例えば、特定の用途には機能性樹脂における使用が含まれ、この用途では不織布を静電的に荷電させてエレクトレットを形成する。
【0083】
<具体的実施形態>
パラグラフA:ポリマーブレンドを製造する方法であって:(i)反応押出機に第1ポリマーと第2ポリマーを供給して開始ブレンド物を製造するステップであって、第1ポリマーは、最大35wt%の エチレン由来ユニットを含み、ASTM E-793に準拠したDSC法で測定した融解熱が80J/g未満で、融点が110℃未満のプロピレンベースのエラストマーであり、第2ポリマーは融点が110℃より高く、融解熱が80J/gより高いプロピレンベースのポリマーであるステップと、(ii)前記供給ステップの後、前記開始ブレンド物に過酸化物を供給して反応性ブレンド物を製造するステップと、(iii)反応押出機内の一連のバレルに反応性ブレンド物をある流速において導通させるステップと、(iv)1以上のバレルにおいて反応性ブレンド物を高剪断混合するステップと、(v) 反応性ブレンド物の温度を過酸化物の少なくとも50%が分解する温度に保って反応済ブレンド物を製造するステップと、(vi) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を制限して、反応性ブレンド物が高剪断混合に曝される時間を増加させるステップと、(vii) 反応済ブレンド物又は反応性ブレンド物から化合物を除去するステップと、(viii) 反応済ブレンド物に酸化防止剤を導入するステップと、(ix) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を増加させるステップと、(x) 前記流速を増加させるステップの後、反応済ブレンド物を1以上の金網に通して不要な混入物を除去するステップと、(xi) 反応済ブレンド物をペレット化するステップとを備える方法。
【0084】
パラグラフB:前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を、過酸化物の少なくとも70%を分解させるために十分な温度に保つ、パラグラフAのプロセス。
【0085】
パラグラフC:前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を、過酸化物の少なくとも90%を分解させるために十分な温度に保つ、パラグラフAまたはBのプロセス。
【0086】
パラグラフD:前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも165℃に保つ、パラグラフAからCのプロセス。
【0087】
パラグラフE:前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に保つ、パラグラフAからDのプロセス。
【0088】
パラグラフF:前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも1,000ppmの過酸化物を添加する、パラグラフAからEのプロセス。
【0089】
パラグラフG:前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも3,000ppmの過酸化物を添加する、パラグラフAからFのプロセス。
【0090】
パラグラフH:ポリマーブレンドを製造する方法であって:(i)反応押出機に第1ポリマーと第2ポリマーを供給してブレンド物を製造するステップであって、第1ポリマーは、最大35wt%のエチレン由来ユニットを含み、ASTM E-793に準拠したDSC法で測定した融解熱が80J/g未満で、融点が110℃未満のプロピレンベースのエラストマーであり、第2ポリマーは融点が110℃より高く、融解熱が80J/gより高いプロピレンベースのポリマーであるステップと、(ii)前記供給ステップの後、前記ブレンド物に過酸化物を供給して反応性ブレンド物を製造するステップと、(iii)反応押出機内の一連のバレルに反応性ブレンド物をある流速において導通させるステップと、(iv)1以上のバレルにおいて反応性ブレンド物を高剪断混合するステップと、(v) 反応性ブレンド物を少なくとも165℃に少なくとも5秒間保って反応済ブレンド物を製造するステップと、(vi) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を制限して、反応性ブレンド物が高剪断混合に曝される時間を増加させるステップと、(vii) 反応済ブレンド物又は反応性ブレンド物から化合物を除去するステップと、
(viii) 反応済ブレンド物に酸化防止剤を導入するステップと、(ix) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を増加させるステップと、(x) 流速を増加させるステップの後、反応済ブレンド物を1以上の金網に通して不要な混入物を除去するステップと、(xi) 反応済ブレンド物をペレット化するステップとを備える方法。
【0091】
パラグラフI:前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に少なくとも15秒間保つ、パラグラフHのプロセス。
【0092】
パラグラフ J:前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に少なくとも20秒間保つ、パラグラフH又はIのプロセス。
【0093】
パラグラフK:前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に少なくとも30秒間保つ、パラグラフHからJのプロセス。
【0094】
パラグラフL:前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも1,000ppmの過酸化物を添加する、パラグラフHからKのプロセス。
【0095】
パラグラフM:前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも3,000ppmの過酸化物を添加する、パラグラフHからLのプロセス。
【0096】
パラグラフN:パラグラフAからMのいずれかのプロセスで製造された組成物。
【0097】
パラグラフO:少なくとも1の第1ポリマーのブロックセグメントと、少なくとも1の第2ポリマーのブロックセグメントとから成る、パラグラフNの組成物。
【0098】
この発明の実施形態について説明するために、以下の実施例を計画し、テストを行った。しかし、これらの実施例をこの発明の範囲を限定するものとして理解してはならない。この発明は特許請求の範囲の記載により規定される。
【0099】
<実施例>
<実施例1>
この発明のプロセスを、同方向回転、噛合二軸押出機のBERSTORFF ZE-90A (Berstorff社) を用いて実施した。エチレンを15 wt%含有するプロピレンとエチレンのコポリマーを、計重式スクリューフィーダを用いて押出機の供給孔に供給した。同一の供給孔に、主成分がアイソタクチックホモポリマーのポリプロピレンを別の計重式スクリューフィーダを用いて供給した。このブレンド物を、商品名LUPEROX 101 (Arkema社)で入手した過酸化物の存在下でビスブレーキングにより処理した。バレルセクションは、表1に示す構成にした。
【表1】

【0100】
スクリューセグメントは表2に示す構成にした。
【表2】

【0101】
表3にビスブレーキングプロセスの条件を示す。
【表3】

【0102】
<実施例2>
この発明のプロセスを、同方向回転噛合二軸押出機のWERNER-PFLEIDERER ZSK-90 (Werner-Pfleiderer社, nka, Coperion) を用いて実施した。
【0103】
押出機の出口にギヤポンプを設け、その次にスクリーンチェンジャー、ダイプレート、及びペレターザーを設けた。バレル8のベントポートに真空ポンプを接続した。ポリプロピレン及びエチレン−プロピレンコポリマーを、それぞれ独立した計重フィーダから供給した。過酸化物をバレル2の注入ノズルから注入した。酸化防止剤のIRGAPHOS 168 (Ciba Specialties社)は、スラリーの形態で押出機の6番目のバレルに注入した。スラリーの媒体には、ポリアルファオレフィンSPECTRASYN 100 (ExxonMobil Chemical Co.社)を用いた。プロセス条件を下記の表4に示す。メルトフローレートが118の製品が得られた。
【表4】

【0104】
特定の実施形態を参照してこの発明について説明したが、当業者であれば本願に示されていない変形例も有用であることを理解できよう。このため、この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて決められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーブレンドを製造する方法であって:
(i)反応押出機に第1ポリマーと第2ポリマーを供給して開始ブレンド物を製造するステップであって、第1ポリマーは、最大35wt%の エチレン由来ユニットを含み、ASTM E-793に準拠してDSC法で測定した融解熱が80J/g未満で、融点が110℃未満のプロピレンベースのエラストマーであり、第2ポリマーは融点が110℃より高く、融解熱が80J/gより高いプロピレンベースのポリマーであるステップと、
(ii)前記供給ステップの後、前記開始ブレンド物に過酸化物を供給して反応性ブレンド物を製造するステップと、
(iii)反応押出機内の一連のバレルに反応性ブレンド物をある流速において導通させるステップと、
(iv)1以上のバレルにおいて反応性ブレンド物を高剪断混合するステップと、
(v) 反応性ブレンド物の温度を過酸化物の少なくとも50%が分解する温度に保って反応済ブレンド物を製造するステップと、
(vi) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を制限して、反応性ブレンド物が高剪断混合に曝される時間を増加させるステップと、
(vii) 反応済ブレンド物又は反応性ブレンド物から化合物を除去するステップと、
(viii) 反応済ブレンド物に酸化防止剤を導入するステップと、
(ix) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を増加させるステップと、
(x) 前記流速を増加させるステップの後、反応済ブレンド物を1以上の金網に通して不要な混入物を除去するステップと、
(xi) 反応済ブレンド物をペレット化するステップとを備える方法。
【請求項2】
前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を、過酸化物の少なくとも70%を分解させるために十分な温度に保つ、請求項1の方法。
【請求項3】
前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を、過酸化物の少なくとも90%を分解させるために十分な温度に保つ、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも165℃に保つ、請求項1から3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に保つ、請求項1から4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも1,000ppmの過酸化物を添加する、請求項1から5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも3,000ppmの過酸化物を添加する、請求項1から6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
ポリマーブレンドを製造する方法であって:
(i)反応押出機に第1ポリマーと第2ポリマーを供給してブレンド物を製造するステップであって、第1ポリマーは、最大35wt%のエチレン由来ユニットを含み、ASTM E-793に準拠してDSC法で測定した融解熱が80J/g未満で、融点が110℃未満のプロピレンベースのエラストマーであり、第2ポリマーは融点が110℃より高く、融解熱が80J/gより高いプロピレンベースのポリマーであるステップと、
(ii)前記供給ステップの後、前記ブレンド物に過酸化物を供給して反応性ブレンド物を製造するステップと、
(iii)反応押出機内の一連のバレルに反応性ブレンド物をある流速において導通させるステップと、
(iv)1以上のバレルにおいて反応性ブレンド物を高剪断混合するステップと、
(v) 反応性ブレンド物を少なくとも165℃に少なくとも5秒間保って反応済ブレンド物を製造するステップと、
(vi) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を制限して、反応性ブレンド物が高剪断混合に曝される時間を増加させるステップと、
(vii) 反応済ブレンド物又は反応性ブレンド物から化合物を除去するステップと、
(viii) 反応済ブレンド物に酸化防止剤を導入するステップと、
(ix) 1以上のバレルを通過する反応済ブレンド物の流速を増加させるステップと、
(x) 流速を増加させるステップの後、反応済ブレンド物を1以上の金網に通して不要な混入物を除去するステップと、
(xi) 反応済ブレンド物をペレット化するステップとを備える方法。
【請求項9】
前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に少なくとも15秒間保つ、請求項8の方法。
【請求項10】
前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に少なくとも20秒間保つ、請求項8または9の方法。
【請求項11】
前記ステップ(v)において、反応性ブレンド物の温度を少なくとも185℃に少なくとも30秒間保つ、請求項8から10のいずれか1項の方法。
【請求項12】
前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも1,000ppmの過酸化物を添加する、請求項8から11のいずれか1項の方法。
【請求項13】
前記ステップ(iii)において、プロピレンベースのエラストマー及びプロピレンベースの熱可塑性樹脂の合計重量を基準として少なくとも3,000ppmの過酸化物を添加する、請求項8から12のいずれか1項の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項の方法で製造された組成物。
【請求項15】
少なくとも1の第1ポリマーのブロックセグメントと、少なくとも1の第2ポリマーのブロックセグメントとから成る、請求項14の組成物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−514106(P2012−514106A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544455(P2011−544455)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067533
【国際公開番号】WO2010/077769
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】