説明

ポリマーレリーフ構造の調製方法

本発明は、1種又は複数の放射線感受性成分を含む被覆組成物で基板を被覆するステップと、潜像を形成する、周期的又は不規則な放射線強度パターンを有する電磁放射線で、被覆基板を局所的に処理するステップと、得られた被覆基板を重合及び/又は架橋するステップとを含み、被覆組成物は、ステップcにおいて、被覆基板の非処理領域における実質的な重合を阻害/抑制するために十分な量、かつ処理領域における重合及び/又は架橋を可能とするために十分低い量の、1種又は複数のラジカルスカベンジャーを含むが、但し、被覆組成物中に存在する酸素の量は、被覆組成物が空気と接触しているときに存在する酸素の平衡量と等しくない、ポリマーレリーフ構造の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリマーレリーフ及びポリマーレリーフ構造を備える物品の調製方法に関する。
【0002】
本明細書において「光エンボス」とも称されるポリマーレリーフ構造の調製方法は、「photo−embossing as a tool for complex surface relief structures」De Witz、Christiane;Broer、Dirk J.、Abstracts of Papers、226th ACS National Meeting、New York、NY、United States、9月7〜11日、2003年から知られる。
【0003】
そのような方法は、
a)1種又は複数の放射線感受性成分を含む被覆剤で基板を被覆するステップと、
b)潜像を形成する、周期的又は不規則な放射線強度パターンを有する電磁放射線で、被覆基板を局所的に処理するステップと、
c)得られた被覆基板を重合及び/又は架橋するステップとを含む。
【0004】
表面レリーフ構造を有するポリマーは、広範な用途を有する。例えば、データの伝送、保存及び表示用の光学システムでの使用において、そのようなポリマーは近年非常に関心を呼んでいる。ポリマーフィルム又は層の表面を構造化することにより、これらの層を通過する光を制御することができる。例えば、表面構造が小さな半球状素子を含有する場合、透過光を集光することができるレンズアレイが得られる。そのような素子は、例えば、ディスプレイの透明領域に光を集光するための液晶ディスプレイのバックライトにおいて有用である。これらの種類の用途のためには、多くの場合、表面プロファイルの形状をマイクロメートル領域まで制御することが必要である。また、単一の光線が透過後に複数の光線に分割されるように、表面構造の規則的パターンが光を回折することができ、これは例えば電気通信デバイスにおけるビームスプリッタとして使用することができる。表面構造はまた、光の反射を制御するために重要である。これは、表面の正反射を抑制するために成功裏に適用することができる。このいわゆるグレア防止効果は、例えばテレビの前画面に適用される。しかし、艶出しや自動車の仕上げ等の用途にも使用される。明確な表面プロファイルを有するポリマーフィルムに蒸着アルミニウム又はスパッタ銀等の等角反射フィルムを設けることができる。この鏡に向かう入射光は、反射後に非常に制御された様式で空間に分散する。これは、例えば反射型液晶ディスプレイの内部拡散反射体を作製するために使用される。表面プロファイルの他の用途は、ロータス効果として知られる防汚構造を形成するための用途である。そのためには、1マイクロメートル未満の寸法の表面プロファイルが必要とされる。
【0005】
UV光重合等の電磁放射線誘導重合は、例えば2種の(メタ)アクリレートモノマーと光開始剤の混合物からデバイスを調製する方法である。重合反応は、UV光が光開始剤を活性化することができる領域においてのみ開始される。さらに、光強度を空間的に変化させ、またそれに伴い重合速度を変化させることが可能である。モノマーの反応性、サイズ又は長さ、架橋能力、及びエネルギー的相互作用の差により、モノマーの化学ポテンシャルの勾配がもたらされる。これらの化学ポテンシャルは、照射領域におけるモノマーの移動及びポリマーの膨潤の原動力を形成する。モノマーの拡散係数は、この移動が生じる時間スケールを決定する。続いて、パターン化したUV照射中よりも高い強度での均一なUV照射を使用して、フィルム全体を重合する。
【0006】
特定の場合において、2種の液体モノマーの混合物のパターン化されたUV光重合により、ポリマーレリーフ構造が得られる。これは、例えばホログラフィ又はリソグラフィにより行うことができる。パターン化様式の重合を誘導する他の方法は、電子ビーム又はイオンビームによる書込みに基づく。ホログラフィの場合、2本のコヒーレント光線の干渉縞が、高光強度及び低光強度の領域を生成する。リソグラフィの場合、それらの強度差を生成するために、フォトマスクが使用される。例えば縞模様のマスクが使用された場合、格子が生成される。円形の穴を有するマスクが使用された場合、マイクロレンズ構造が形成される。さらに、物質移動により表面プロファイルを形成することにより、屈折率も調節することができる。屈折率の差は、ポリマー中のモノマー単位濃度の横方向の変動によりもたらされる。屈折率のプロファイルは、表面形状から得られるレンズ機能をさらに補助することができる。
【0007】
これらの技術を使用することにより、位相構造及びレリーフ構造を形成することができる。
【0008】
樹脂組成物の照射後のモノマーの拡散を利用し、それにより構造化材料を生成する代替法が存在する。例えば、モノマーが照射領域に向かって、又はそこから離れて移動するシステムを設計することができる。格子の形成を説明する2つのメカニズムを区別することができる。第1に、両方のモノマーが照射領域に向かって拡散する全体的な集団移動が生じ得る。これは、暗領域からのモノマーの吸引に起因する、照射領域における成長ポリマーの膨潤により達成される。このメカニズムはレリーフ格子の形成を説明している。第2に、膨潤が生じない場合、反応性の差により誘導される2方向の拡散が、平坦表面を有するが曝露領域及び非曝露領域におけるモノマー単位濃度の変動を有するフィルムの形成を説明する。このメカニズムは位相格子の形成を説明している。
【0009】
より良い方法は、基本的にポリマー、モノマー、及び開始剤からなる樹脂組成物を使用することにより表面構造が形成される光エンボスプロセスである。ポリマーは単一のポリマー材料であってもよいが、複数のポリマーのブレンドであってもよい。同様に、モノマーは単一の化合物であってもよいが、いくつかのモノマー成分を含んでもよい。開始剤は、好ましくはUV光への曝露によりラジカルを生成する光開始剤である。或いは、光開始剤はUV光への曝露によりカチオンを生成する。開始剤はまた、光開始剤と、高温でラジカルを生成する熱開始剤との混合であってもよい。この樹脂組成物は、一般に、処理、例えばスピンコーティングによる薄膜形成を促進するために、有機溶剤に溶解される(そして被覆組成物を生成する)。ブレンド条件、並びにポリマー及びモノマーの性質は、溶剤の揮発後に固体フィルムが形成されるように選択される。一般に、これによって、UV光による曝露後に潜像を形成することが可能となる。加熱して重合及び拡散を同時に生じさせ、それにより曝露領域での材料容積を増加させる、又はその逆を行って表面の変形をもたらすことにより、潜像を表面プロファイル中に構築することができる。最後の処理ステップにおいて、高温でフラッド露光を施すことによりサンプルを完全に重合させる。そのような光エンボスプロセスにより形成される表面レリーフ構造は、典型的には1〜200μmの範囲であり、好ましくは、レリーフ構造は、2μmから100μmの間、又は4μmから60μmの間の高さを有する。
【0010】
光エンボスプロセスは、従来のフォトリソグラフィと混同されるべきではない。従来のフォトリソグラフィプロセスでは、光反応性樹脂(フォトレジスト)が基板上にフィルムとして塗布される。フィルムは局所的に電磁放射線に曝露され、その結果、曝露領域と非曝露領域との間で溶解度の差が形成される。レリーフ構造を形成するために、溶剤を用いることにより溶解性領域が除去され、次いで基板表面のエッチングが行われる。
【0011】
光エンボスにおいては、表面レリーフ構造は、曝露領域と非曝露領域との間の化学ポテンシャルの変化、及び得られるモノマーの拡散により形成される。
【0012】
当技術分野で知られる光エンボスプロセスの弱点は、得られるレリーフ構造が有するアスペクト比が幾分低いことである。アスペクト比(AR)は、レリーフの高さと構造の幅との間の比率と定義される。その結果、目標とされる光機能又は他の機能性が最適ではない。
【0013】
より良い(物理的)機能性及び他の性質をもたらす、改善されたARを有するポリマーレリーフ構造を得る必要性がある。
【0014】
今回、ラジカルスカベンジャーの存在が、予期しない形でポリマーレリーフ構造のARに影響することが判明した。ある量のラジカルスカベンジャーを適用することによりARを改善することができることが、予想外にも判明した。ラジカルスカベンジャーが存在しない場合、及び存在するラジカルスカベンジャーの量が多すぎる場合のいずれにおいても、低いARを有するレリーフ構造が生成される。
【0015】
本発明は、
a)1種又は複数の放射線感受性成分を含む被覆組成物で基板を被覆するステップと、
b)潜像を形成する、周期的又は不規則な放射線強度パターンを有する電磁放射線で、被覆基板を局所的に処理するステップと、
c)得られた被覆基板を重合及び/又は架橋するステップと
を含み、被覆組成物は、ステップcにおいて、被覆基板の非処理領域における実質的な重合を阻害/抑制するために十分な量、かつ処理領域における重合及び/又は架橋を可能とするために十分低い量の、1種又は複数の有機ラジカルスカベンジャーを含むが、但し、被覆組成物中に存在する酸素の量は、被覆組成物が空気と接触しているときに存在する酸素の平衡量に満たない、ポリマーレリーフ構造の調製方法に関する。
【0016】
本発明の他の実施形態は、
a)1種又は複数の放射線感受性成分を含む被覆組成物で基板を被覆するステップと、
b)潜像を形成する、周期的又は不規則な放射線強度パターンを有する電磁放射線で、被覆基板を局所的に処理するステップと、
c)得られた被覆基板を重合及び/又は架橋するステップと
を含み、被覆組成物は、少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種のモノマー、光開始剤、任意選択的に溶剤、並びに(1種又は複数のポリマー、モノマー、及び開始剤のブレンドに対して)0.5wt%から20wt%の間の量の1種又は複数の有機ラジカルスカベンジャーを含む、ポリマーレリーフ構造の調製方法である。
【0017】
ラジカルスカベンジャーは、ラジカルと反応する化合物である。これは、少なくとも2通りの異なる様式で行うことができる。これらの反応の効果は、ラジカルスカベンジャーがモノマーの重合を抑えることである。これらのスカベンジャーは、開始及び成長ラジカルと反応し、それらを非ラジカル種又は成長するには反応性が低すぎるラジカルに変換することで作用する。そのようなラジカルスカベンジャーは、その有効性に従い分類される。阻害剤はあらゆるラジカルを阻止し、それらが消費されるまで重合が完全に停止される。抑制剤はより効率が低く、ラジカルのごく一部を阻止する。この場合、重合は生じるが、速度がより遅く、ポリマー分子量がより低い。
【0018】
酸素は効果的なラジカルスカベンジャーであることが知られている。環境における酸素濃度がARに影響する。不活性雰囲気(100%窒素)下で処理されたフォトポリマーは、空気(21%v酸素、79%窒素)下で処理されたフォトポリマーよりも低いAR構造を生成することが判明している。また、酸素の最適含量は、潜像を形成するための放射線の量によって決定されることも判明した。より放射線の量が高い場合、酸素の最適含量もより高くなる。環境の酸素含量を空気中に存在する濃度より上に増加させると、さらにより高い構造を得ることができる。本発明の一実施形態において、被覆組成物上の雰囲気中の酸素の量は、好ましくは30vol%から100vol%の間の酸素、より好ましくは40vol%から80vol%の間の酸素を含む。
【0019】
空気と平衡した組成物への有機ラジカルスカベンジャーの添加が、ARを低下させることが判明した。有機ラジカルスカベンジャーは、少なくとも1つ又は複数の有機基を有するラジカルスカベンジャーである。驚くべきことに、有機ラジカルスカベンジャーの添加は、特に組成物中に存在する酸素のレベルがより低い場合、ARに対しプラスの効果を有する。酸素が存在しないか、又は少量の酸素が存在する場合、有機ラジカルスカベンジャーをフォトポリマーに添加して構造のARを増加させることができる。本発明の方法における(より低い酸素レベル下での)有機ラジカルスカベンジャーの添加により、有機スカベンジャーを使用せずに作製された構造よりも高いAR比を有する構造が生成される。適した有機ラジカルスカベンジャーの例は、フェノール、キノン、キャプトデイティブオレフィン、ニトロン、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、及び遷移金属錯体である。
【0020】
有機ラジカルスカベンジャーは、(1種又は複数のポリマー、モノマー、及び開始剤を含むブレンドに対して)好ましくは0.5〜20wt%の範囲、より好ましくは1〜18%の間、さらに好ましくは2〜16wt%の間、最も好ましくは6wt%から14wt%の間の量で存在する。
【0021】
有機ラジカルスカベンジャーの添加により、ガス状ラジカルスカベンジャーと比較した場合、約2倍の高さの構造が得られることは、驚くべきことである。例えば、最適化された酸素濃度下、充填比が0.5の40μmラインマスクに対する光エンボス構造の最大ARは約0.199である。最適化されたt−ブチルヒドロキノン下、充填比が0.5の40μmラインマスクに対する光エンボス構造の最大ARは約0.396である。
【0022】
充填比が0.5のラインマスクは、表面の50%が非透明である、平行ラインを備えるマスクである。t−ブチルヒドロキノンは、ここでは有機ラジカルスカベンジャーである。
【0023】
有機ラジカルスカベンジャーは、当業者には既知である。それらは、阻害剤又は抑制剤として知られている場合がある。適した有機ラジカルスカベンジャーの限定されない例は、フェノール(例えば、ヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、3,5−t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキノン、α−ナフトール、2−ニトロ−α−ナフトール、β−ナフトール、1−ニトロ−β−ナフトール、フェノール、2,4−ジニトロフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、ヒドロキノンモノメチル、ジ−tert−ブチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、テトラフルオロヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン等);キノン(例えば、p−ベンゾキノン、クロロ−p−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,3−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、メトキシ−p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、テトラブロモ−p−ベンゾキノン、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、テトラ−ヨード−p−ベンゾキノン、テトラメチル−p−ベンゾキノン、トリクロロ−p−ベンゾキノン、トリメチル−p−ベンゾキノン等);ニトロン、ニトロ化合物及びニトロソ化合物(例えば、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、ニトロベンゼン、ニトロ−d5−ベンゼン、p−ニトロクロロベンゼン、1,3,5−トリニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、ニトロ−ジフェニル、ジフェニルピクリルヒドラジル、ジニトロジュレン、1,5−ジニトロ−ナフタレン、ピクラミド、ピクリン酸、塩化ピクリル、2,4−ジニトロトルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、1,3,5−トリニトロトルエン等);キャプトデイティブオレフィン;安定ラジカル(例えば、アセトフェノン、アニリン、ブロモベンゼン、ジアゾアミノベンゼン、安息香酸、安息香酸エチルエステル、ベンゾフェノン、塩化ベンゾイル、ジフェニル、ジフェニルアミン、ジュレン、フッ素、トリフェニルメタン、ナフタレン、フェナントレン、スチルベン、硫黄、トルエン、p−ブロモトルエン、トルニトリル、p−キシレン等);1,1ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)である。
【0024】
結果として、レリーフアスペクト比が向上したレリーフ構造が得られる(典型的に改善は2倍の増加を示す)。
【0025】
本方法のステップa)において使用される被覆剤は、概して電磁放射線により重合可能なC=C不飽和モノマーである、1種又は複数の放射線感受性成分を含む。これらの成分はそのまま使用することができるが、溶液の形態でも使用することができる。
【0026】
被覆剤は、(湿式)被覆堆積の技術分野では既知のいかなるプロセスによっても基板上に塗布することができる。適したプロセスの例は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレイコーティング、フローコーティング、メニスカスコーティング、ドクターブレーディング、キャピラリコーティング、及びロールコーティングである。
【0027】
典型的には、放射線感受性成分を、好ましくは少なくとも1種の溶剤、及び任意選択的に架橋開始剤と混合し、選択された塗布方法を使用した基板への塗布に適した混合物を調製する。
【0028】
原則として、広範な溶剤を使用することができる。しかし、溶剤と、混合物中に存在する他の全ての材料との組合せは、選択的に安定な懸濁液又は溶液を形成すべきである。
【0029】
好ましくは、使用される溶剤は、被覆剤が基板上に塗布された後に揮発される。本発明による方法において、任意選択的に、被覆剤は、基板への塗布後、溶剤の揮発を促進するために加熱されるか、又は真空中で処理されてもよい。
【0030】
適した溶剤の例は、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、クロロフェノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジクロロメタン、酢酸ジエチル、ジエチルケトン、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸エチル、m−クレゾール、モノ−及びジ−アルキル置換グリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、p−クロロフェノール、1,2−プロパンジオール、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−ヘキサノン、2−メトキシエタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−オクタノン、2−プロパノール、3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、ヘキサフルオロイソプロパノール、メタノール、酢酸メチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、n−メチルピロリドン−2、n−ペンチルアセテート、フェノール、テトラフルオロ−n−プロパノール、テトラフルオロイソプロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、及び水である。アルコール、ケトン、及びエステル系溶剤もまた使用可能であるが、高分子量アルコールではアクリレートの溶解度が問題となり得る。ハロゲン化溶剤(ジクロロメタン及びクロロホルム等)、及び炭化水素(ヘキサン及びシクロヘキサン等)が適している。
【0031】
混合物は、好ましくはポリマー材料を含有する。実際には、他の成分との一様な混合物を形成する各種ポリマーを使用することができる。十分研究されたポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、ポリベンジルメタクリレート、ポリイソボルニルメタクリレートである。しかし、他の多くのポリマーも同様に適用することができる。混合物はまた、反応性粒子、すなわちフリーラジカル又はカチオン性粒子と接触すると重合する、比較的低分子量、すなわち1500ダルトン未満の化合物であるモノマー化合物を含有する。好ましい実施形態において、重合後にポリマーネットワークが形成されるように、モノマー、又はモノマー混合物のモノマーのうちの1つが複数の重合基を含有する。さらに、好ましい実施形態において、モノマーは、ビニル、アクリレート、メタクリレート、エポキシド、ビニルエーテル、オキセタン、又はチオール−エンのクラスの反応基を含有する分子である。混合物はまた、化学線への曝露後に反応性粒子、すなわちフリーラジカル又はカチオン性粒子を生成する化合物である、感光性成分を含有する。
【0032】
重合成分としての使用に適し、また1分子あたり少なくとも2つの架橋性基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリロイル基を含有するモノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノ−及びジ(メタ)アクリレート、C〜C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、並びに上記モノマーのいずれかのアルコキシル化物、好ましくはエトキシル化及び/若しくはプロポキシル化物、さらに、ビスフェノールAへのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAへのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、及びトリエチレングリコールジビニルエーテルの、ビスフェノールAへの(メタ)アクリレート付加物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、イソホロンジイソシアネート、及びヒドロキシエチルアクリレートの付加物(HIH)、ヒドロキシエチルアクリレート、トルエンジイソシアネート、及びヒドロキシエチルアクリレートの付加物(HTH)、並びに、アミドエステルアクリレートが挙げられる。
【0033】
1分子あたり1つだけの架橋基を有する適したモノマーの例としては、ビニル基を含有するモノマー、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン;イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル;並びに、下記式(I)で表される化合物
CH=C(R)−COO(RO)−R (I)
(上記式中、Rは、水素原子又はメチル基であり;Rは、2個から8個、好ましくは2個から5個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;mは、0から12、好ましくは1から8の整数であり;Rは、水素原子、又は1個から12個、好ましくは1個から9個の炭素原子を含有するアルキル基であり;或いは、Rは、任意選択で1〜2個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい4〜20個の炭素原子を有するテトラヒドロフラン基含有アルキル基であり;或いは、Rは、任意選択でメチル基で置換されていてもよい4〜20個の炭素原子を有するジオキサン基含有アルキル基であり;或いは、Rは、任意選択でC〜C12アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基で置換されていてもよい芳香族基である)、並びに、アルコキシル化脂肪族単官能モノマー、例えばエトキシル化イソデシル(メタ)アクリレート、エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
放射線感受性成分としての使用に適したオリゴマーは、例えば、芳香族若しくは脂肪族ウレタンアクリレート、又はフェノール樹脂(例えば、ビスフェノールエポキシジアクリレート等)に基づいたオリゴマー、及び、エトキシレートにより伸びた上記オリゴマー鎖のいずれかである。ウレタンオリゴマーは、例えば、ポリオール骨格、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール等に基づくことができる。これらのポリオールは、個別に、又は2種以上の組合せとして使用することができる。これらのポリオールにおける構造単位の重合様式に対し特定の制限はない。ランダム重合、ブロック重合、又はグラフト重合のいずれも許容される。ウレタンオリゴマーの形成に適したポリオール、ポリイソシアネート、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの例は、参照することにより本明細書に組み入れられる国際公開第00/18696号パンフレットに開示されている。
【0035】
共に架橋相の形成をもたらすことができ、したがって組合せとして反応性希釈剤としての使用に適した化合物の組合せは、例えば、エポキシと組み合わせたカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、ヒドロキシ化合物、特に2−ヒドロキシアルキルアミドと組み合わせた酸、イソシアネート、例えばブロックイソシアネート、ウレトジオン又はカルボジイミドと組み合わせたアミン、アミン又はジシアンジアミドと組み合わせたエポキシ、イソシアネートと組み合わせたヒドラジンアミド、イソシアネート、例えばブロックイソシアネート、ウレトジオン又はカルボジイミドと組み合わせたヒドロキシ化合物、無水物と組み合わせたヒドロキシ化合物、(エーテル化)メチロールアミド(「アミノ樹脂」)と組み合わせたヒドロキシ化合物、イソシアネートと組み合わせたチオール、アクリレート又は他のビニル種(任意選択的にラジカル開始されている)と組み合わせたチオール、アクリレートと組み合わせたアセトアセテート、並びに、カチオン架橋が用いられる場合は、エポキシ化合物及びエポキシ又はヒドロキシ化合物である。
【0036】
放射線感受性成分として使用されてもよいさらなる可能な化合物は、湿気硬化性イソシアネート、アルコキシ/アシルオキシシラン、アルコキシチタネート、アルコキシジルコネート、又は尿素−、尿素/メラミン−、メラミン−ホルムアルデヒド若しくはフェノール−ホルムアルデヒド(レゾール、ノボラック型)の湿気硬化性混合物、或いは、ラジカル硬化性(過酸化物開始又は光開始された)エチレン性不飽和単官能性及び多官能性モノマー及びポリマー、例えばアクリレート、メタクリレート、マレエート/ビニルエーテル、或いは、ラジカル硬化性(過酸化物開始又は光開始された)不飽和、例えばマレイン酸又はフマル酸の、スチレン及び/又はメタクリレート中のポリエステルである。
【0037】
好ましくは、塗布される被覆剤はまた、ポリマー、好ましくは、放射線感受性成分の架橋から得られるポリマーと同じ性質のポリマーを含む。好ましくは、このポリマーは、少なくとも20,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0038】
ポリマーは、被覆ステップa)で使用される場合、好ましくは少なくとも300Kのガラス転移温度を有する。好ましくは、ステップa)で使用される被覆剤中のポリマーは、ステップa)の放射線感受性被覆剤中に存在する1種又は複数のモノマーに溶解しているか、又は本発明の方法のステップa)の被覆剤において使用される溶剤に溶解している。
【0039】
本発明による方法における基板として、広範な基板を使用することができる。適した基板は、例えば、平坦又は湾曲した、硬質又は柔軟ポリマー基板であり、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロ−エチレン、ナイロン、ポリノルボルネン、或いは、例えばガラス等の非晶質固体、又は例えばシリコン若しくはガリウムヒ素等の結晶性材料のフィルムを含む。金属基板もまた使用可能である。ディスプレイ用途における使用に好ましい基板は、例えば、ガラス、ポリノルボルネン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、三酢酸セルロース、ポリカーボネート、及びポリエチレンナフタレートである。
【0040】
架橋反応を開始させるために、被覆剤中に開始剤が存在してもよい。開始剤の量は、広い範囲にわたり変動し得る。開始剤の適した量は、架橋反応に関与する化合物の総重量に対して、例えば0wt%を超え10wt%までの間である。
【0041】
架橋を開始するためにUV架橋が用いられる場合、混合物は、好ましくはUV光開始剤を含む。光開始剤は、光を吸収すると架橋反応を開始することができ、つまりUV光開始剤は、スペクトルの紫外線領域の光を吸収する。本発明による方法においては、いかなる既知のUV光開始剤でも使用することができる。
【0042】
好ましくは、重合開始剤は、光開始剤と熱開始剤の混合物を含む。
【0043】
最終的な被覆が形成されるように被覆剤を重合及び/又は架橋させることができるいかなる架橋法も、本発明による方法における使用に適している。架橋を開始させる適した手法は、例えば、電子ビーム照射、電磁放射線照射(UV、可視光及び近赤外)、熱的及び湿気を加えることによるもの(湿気硬化性化合物が使用される場合)である。好ましい実施形態において、架橋はUV照射により達成される。UV架橋は、フリーラジカルメカニズムを介して、又はカチオンメカニズムにより、又はそれらの組合せにより生じることができる。他の好ましい実施形態において、架橋は熱的に達成される。
【0044】
本発明の方法のステップb)において、方法ステップa)から得られた被覆基板は、周期的又は潜在的な放射線強度パターンを有する電磁放射線で局所的に処理され、結果として潜像が形成される。好ましい一実施形態において、この処理は、マスクと組み合わせてUV光を使用して行われる。他の好ましい実施形態において、この処理は、光干渉/ホログラフィを使用することにより行われる。さらに他の実施形態は、電子ビームリソグラフィの使用によるものである。
【0045】
本発明の本質的な特徴は、高いアスペクト比を備えたレリーフ構造の生成のための、重合速度又は阻害時間又はその両方を正確に調整するために適切な量でのラジカルスカベンジャーの使用である。
【0046】
方法ステップa)〜d)が行われる際に基づくべき条件は、放射線重合の技術分野で知られているような条件である。上記方法ステップの温度として、ステップb)に対しては好ましくは175Kから375Kの間の温度が使用され、ステップc)に対しては好ましくは300Kから575Kの間の温度が使用される。
【0047】
ポリマーレリーフ構造のARは、より高いUV曝露線量を追加することによりさらに改善することができることが判明した。ラジカルスカベンジャーの最適量は、より高い曝露線量が用いられた場合、概して増加する。より高い曝露線量とより高いラジカルスカベンジャー濃度を組み合わせることにより、本発明の方法のさらなる改善が得られた。
【0048】
本発明のポリマーレリーフ構造は、改善されたアスペクト比を有する。本発明のレリーフのアスペクト比(AR、レリーフの高さと構造の幅(どちらもμm)との間の比率)は、一般に少なくとも0.075であり、より好ましくは少なくとも0.12であり;さらにより好ましくは、ARは少なくとも0.2である。
【0049】
本発明のポリマーレリーフ構造は、光学部品に適用することができる。その例は、例えばLCD又はLEDにおける用途の1/4波長フィルム及びワイヤグリッド偏光子である。また、自浄表面のためのモスアイ構造又はハスの花構造がそれにより達成される。他の好ましい実施形態は、有機物又は無機物における複製目的のマスタとしてのポリマーレリーフ構造の使用である。他の用途には、反射防止/グレア防止層;垂直配列ディスプレイ(LCの配列のための突起を形成するために光エンボスが使用される);マイクロレンズ;反射体、トランスフレクタ;偏光子;タンパク質アレイ、DNAアレイ、及びマイクロコンタクト印刷が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】光学表面形状測定装置により測定した比較例1におけるレリーフ構造を示すグラフである。
【図2】光学表面形状測定装置により測定した比較例2におけるレリーフ構造を示すグラフである。
【実施例】
【0051】
本発明は、本発明を制限することを意図しない以下の実施例及び比較実験によりさらに明確化される。
【0052】
比較例1:(空気)
フォトポリマーは、50wt%のポリマー、ポリベンジルメタクリレート(Mw=70kg/mol)、及び50wt%の多官能性モノマー、ジ−ペンタエリスリトールテトラアクリレートを含有する混合物で構成された。フォトポリマーに、5wt%の光開始剤(Irgacure819)を添加した。フォトポリマーと光開始剤の混合物を、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートとエトキシプロピルアセテートの1:1混合物50wt%に溶解した。
【0053】
溶解した混合物を、ガラス基板上にスピンコートした。スピンコーティング後、薄膜を有するガラス基板を80℃に20分間加熱して残留した微量の溶剤を除去し、厚さ約16μmのフィルムを得た。格子を有するフォトマスク(ピッチ=40μm)を、固体ポリマーフィルムに直接接触させて使用した。紫外線への曝露(Oriel遠紫外線ランプ、モデル型式66902、E=0.128J/cm)を行った。UV光への曝露後、サンプルを110℃(20分)に加熱し、レリーフ構造を生成した。最後に、UVランプ(E=0.8J/cm)で110℃でフラッド露光を行い、サンプルを定着させた。
【0054】
形成されたレリーフ構造を、光学表面形状測定装置で分析した(図1)。レリーフ構造は、約2.6μmの高さ、及び0.14のARを有していた。
【0055】
比較例2:(窒素)
比較例1の実験条件を使用した。照射中及び加熱ステップ中の両方において、フィルムを窒素雰囲気下に維持した。光学表面形状測定装置を使用して、構造の高さを測定した(図2)。レリーフ構造は、約1.5μmの高さ、及び0.08のARを有していた。
【0056】
比較例1及び比較例2は、環境中の酸素がレリーフ構造の生成に大きな影響を与えることを示している。
【0057】
比較例3:(空気+t−ブチルヒドロキノン)
比較例1の実験条件を使用した。処理前に、2重量パーセントのt−ブチルヒドロキノンを乾燥したフォトポリマーに添加した。照射中及び加熱ステップ中の両方において、フィルムを空気雰囲気下に維持した。光学表面形状測定装置で構造の高さを測定したところ、構造を検出することができなかった。比較例3は、環境中の酸素を追加のラジカルスカベンジャーと組み合わせると、構造が形成されない結果となることを示している。
【0058】
実施例1:(酸素)
比較例1の実験条件を使用した。照射中及び加熱ステップ中の両方において、酸素含量に関して制御された環境にフィルムを曝露した。各酸素濃度に対する最適曝露線量を見出すために、総曝露線量を0.01J/cmから3.1J/cmの間で変動させた。光学表面形状測定装置を使用して構造のARを決定した。その結果を以下の表1に示す。
【0059】
上記表の結果は、少なくとも0.13J/cmの高い曝露線量を適用した場合、最適酸素含量が30〜100vol%の間であることを示している。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例2:(t−ブチルヒドロキノン)
ポリマー結合剤としてポリベンジルメタクリレート(M70kg mol−1)、多官能性モノマーとしてジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート、及び光開始剤としてIrgacure819を使用した。溶剤として、エトキシプロピルアセテートとプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの50/50wt%混合物を使用した。フォトポリマー溶液を調製するために、多官能性モノマー及び溶剤を1:2の重量比で混合した。この溶液をラジカルスカベンジャー除去カラムに加えて、モノマー中に存在する500ppmのMEHQを除去した。次に、モノマー/溶剤混合物を、ポリマー及び光開始剤とそれぞれ30:10:1の重量比で混合した。ラジカルスカベンジャーとしてt−ブチルヒドロキノン(TBHQ)を使用し、異なる濃度でフォトポリマー溶液に添加した。
【0062】
フォトポリマー溶液を、ガラス基板(5×5×m)上に800rpmでスピンコートした。溶剤を除去するために、サンプルを80℃で20分間乾燥させ、その後室温まで冷却した。10、15、20、30、及び40μmの異なるピッチを有するコンタクトマスクを使用して、フィルムを平行UV光源(Oriel遠紫外線ランプ、モデル型式66902)に曝露した。総曝露線量を、0.6、1.35、及び2.38J/cmの間で変動させた。その後、フィルムを110℃(20分)に加熱してレリーフ構造を生成した。照射中及び加熱ステップ中の両方において、フィルムを窒素に曝露した。最後に、UVランプ(E=0.8J/cm)で110℃でフラッド露光を行い、サンプルを定着させた。
【0063】
機械的表面形状測定装置を使用してARを決定した。その結果を以下の表2〜4に示す。表2は、0.6J/cmに曝露されたサンプルの結果、表3は、1.35J/cmに曝露されたサンプルの結果、また表4は、2.38J/cmに曝露されたサンプルの結果を示す。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
表2、3、及び4の結果は、被覆組成物にt−ブチルヒドロキノンを添加すると、環境中の酸素が存在しない場合、増加したARが得られることを示している。
【0068】
実施例3:(トリメチルヒドロキノン)
実施例2の実験条件を使用した。ラジカルスカベンジャーとしてトリメチルヒドロキノン(TMHQ)を使用し、異なる濃度でフォトポリマー溶液に添加した。総曝露線量は2.7J/cm(予備試験において最適曝露線量であることが判明した)であった。光学表面形状測定装置を使用して構造の高さを測定した。その結果を以下の表5に示す。
【0069】
【表5】

【0070】
実施例4:(テトラフルオロヒドロキノン)
実施例2の実験条件を使用した。ラジカルスカベンジャーとしてテトラフルオロヒドロキノン(Aldrich)を使用し、異なる濃度でフォトポリマー溶液に添加した。総曝露線量は0.330J/cm(予備試験において最適曝露線量であることが判明した)であった。光学表面形状測定装置を使用して構造の高さを測定した。その結果を表6に示す。
【0071】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種又は複数の放射線感受性成分を含む被覆組成物で基板を被覆するステップと、
b)潜像を形成する、周期的又は不規則な放射線強度パターンを有する電磁放射線で、被覆基板を局所的に処理するステップと、
c)得られた被覆基板を重合及び/又は架橋するステップと
を含み、前記被覆組成物は、ステップcにおいて、前記被覆基板の非処理領域における実質的な重合を阻害/抑制するために十分な量、かつ処理領域における重合及び/又は架橋を可能とするために十分低い量の、1種又は複数の有機ラジカルスカベンジャーを含むが、但し、前記被覆組成物中に存在する酸素の量は、前記被覆組成物が空気と接触しているときに存在する酸素の平衡量と等しくない、ポリマーレリーフ構造の調製方法。
【請求項2】
a)1種又は複数の放射線感受性成分を含む被覆組成物で基板を被覆するステップと、
b)潜像を形成する、周期的又は不規則な放射線強度パターンを有する電磁放射線で、被覆基板を局所的に処理するステップと、
c)得られた被覆基板を重合及び/又は架橋するステップと
を含み、前記被覆組成物は、少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種のモノマー、光開始剤、任意選択的に溶剤、並びに(1種又は複数のポリマー、モノマー、及び開始剤のブレンドに対して)0.5wt%から20wt%の間の量の1種又は複数の有機ラジカルスカベンジャーを含む、ポリマーレリーフ構造の調製方法。
【請求項3】
ステップb)及びc)が組み合わされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記被覆組成物が、少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種のモノマー、光開始剤、及び任意選択的に溶剤のブレンドを含む、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶剤が、ステップaとbとの間で除去される、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ラジカルスカベンジャーが、30vol%から100vol%の間の酸素を含有する雰囲気から溶解した酸素である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
カチオンスカベンジャーが存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
有機ラジカルスカベンジャーが存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
フェノール、キノン、キャプトデイティブオレフィン、ニトロン、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、及び遷移金属錯体からなる群から選択されるラジカルスカベンジャーが存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆組成物中の有機ラジカルスカベンジャーの量が、(1種又は複数のポリマー、モノマー、及び開始剤のブレンドに対して)0.5wt%から20wt%の間である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記被覆組成物中のラジカルスカベンジャーの量が、1種又は複数のポリマー、モノマー、及び開始剤を含むブレンドに対して2wt%から18wt%の間である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
光エンボス法である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法により得ることができるポリマーレリーフ構造を備える物品。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法により得ることができるポリマー位相格子を備える物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501687(P2010−501687A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525964(P2009−525964)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007498
【国際公開番号】WO2008/025508
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505307806)スティッチング ダッチ ポリマー インスティテュート (18)
【Fターム(参考)】