説明

ポリマーレリーフ構造体を作製する方法

本発明は、ポリマーレリーフ構造の作製のための光エンボス加工方法であって、a)1または複数の放射線感受性成分および30重量%より少ないポリマーバインダ材料を含むコーティング組成物で基材をコーティングするステップと、b)前記コーティング組成物の転移温度より低い温度で、周期的、非周期的またはランダムな放射線強度パターンを有する電磁放射線でこのコーティングされた基材を局所処理して潜像を形成するステップと、c)得られたコーティングされた基材を前記コーティング組成物の転移温度より高い温度で重合および/または架橋するステップとを有する方法において、前記転移温度は、前記コーティング組成物の高い粘度および低い粘度の状態間の転移を規定する温度であり、前記コーティング組成物は、少なくとも1つの放射線硬化性基を有する化合物Aおよび光開始剤を有し、前記コーティング組成物は、30℃〜120℃の転移温度を有する、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)1または複数の放射線感受性成分を含むコーティングで基材をコーティングすることと、b)周期的、非周期的またはランダムな放射線強度パターンを有する電磁放射線でこのコーティングされた基材を局所処理して潜像を形成することと、c)得られたコーティングされた基材を重合および/または架橋することとによりポリマーレリーフ構造体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法(これ以降では「光エンボス加工」とも呼ばれる)は、「複雑な表面レリーフ構造体を得るツールとしての光エンボス加工(photo−embossing as a tool for complex surface relief structures)」 ド・ヴィッツ・クリスティアーネ(De Witz,Christiane);ブリュア・ディルク(Broer,Dirk)著 論文抄録誌(J.,Abstracts of Papers),第226回ACS全国大会(226th ACS National Meeting),米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY,United States),2003年9月7〜11日から知られている。
【0003】
表面レリーフ構造体を持つポリマーは、広範囲のアプリケーションを有する。たとえば、データの伝送、保存、および表示に供される光学系で使用されるポリマーに、現在、大きな関心が寄せられている。ポリマーのフィルムまたは層の表面を構造化することにより、これらの層を通過する光を制御することが可能である。たとえば、表面構造体が小さい半球状の素子を含有していれば、透過光を集束させうるレンズアレイが得られる。そのような素子は、たとえば、ディスプレイの透明領域に光を集束させる液晶ディスプレイのバックライトに有用である。これらのタイプの用途では、多くの場合、マイクロメートルの領域まで表面プロファイルの形状を制御することが必要である。さらに、表面構造体の規則的パターンは、透過時にシングルビームをマルチビームに分割するように光を回折しうるので、たとえば、通信機器でビームスプリッタとして使用可能である。表面構造体はまた、光の反射を制御するうえでも重要である。これは、表面の正反射を抑制するように首尾よく適用可能である。このいわゆるアンチグレア効果は、たとえば、テレビのフロントスクリーンに利用されるが、艶出し、車仕上げ材などの用途にも使用されることができる。輪郭の明瞭な表面プロファイルを有するポリマーフィルムに、蒸着アルミニウムやスパッター銀などのコンフォーマル反射膜を設けることが可能である。このミラーに当たった入射光は、反射されると非常に制御された形で空間内に分配される。これは、たとえば、反射型液晶ディスプレイ用の内部拡散リフレクタを作製するために使用される。表面プロファイルの他の用途は、ロータス効果として知られる防汚構造体を作製するためのものである。それには、1マイクロメートル未満の寸法を有する表面プロファイルが必要とされる。
【0004】
UV光重合のような電磁放射線誘起重合は、たとえば2種の(メタ)アクリレートモノマーと光開始剤との混合物からデバイスを作製する方法である。重合反応は、UV光が光開始剤を活性化しうる領域でのみ開始される。このほか、光強度を空間的に変化させてそれに応じて重合速度を変化させることが可能である。モノマーの反応性、サイズまたは長さ、架橋能力、およびエネルギー相互作用の差異は、結果として、モノマーの化学ポテンシャルの勾配を生じる。これらの化学ポテンシャルは、照射領域におけるモノマーの移動およびポリマーの膨潤の原動力となる。モノマーの拡散係数は、この移動が起こるタイムスケールを決定する。その後、パターン化UV照射時よりも高い強度を有する均一なUV照射が用いられて膜全体が重合される。
【0005】
特別な場合には、2つの液体モノマーの混合物のパターン化UV光重合を行うことにより、ポリマーレリーフ構造体が生成される。これは、例えばホログラフィーまたはリソグラフィーにより行うことが可能である。パターン化された方法で重合を誘起させる他の方法は、電子またはイオンのビームによる書き込みに基づく。ホログラフィーの場合、2つのコヒーレント光ビームの干渉パターンにより、高低光強度の領域が形成される。リソグラフィーの場合、フォトマスクを用いてこれらの強度差を生成させる。たとえば、ストライプ状マスクを使用すれば、グレーティングが作製される。円孔を有するマスクを使用すれば、マイクロレンズ構造体が形成される。物質移動により表面プロファイルを作製することのほかに、屈折率も変調することができる。屈折率の差は、ポリマー中のモノマー単位濃度の横方向変動により引き起こされる。屈折率プロファイルは、表面形状から得られるレンズ機能をさらにサポートしうる。
【0006】
これらの技術を用いることにより、相−レリーフ構造体を作製することが可能である。モノマーが、照射された領域に向かってまたはそこから離れて移動するようなシステムを設計することも可能である。グレーティングの形成を説明する2つの機構を区別することができる。第一に、全体的な重量移動が起こりえ、このとき両方のモノマーが照射された領域に向かって拡散する。これは、暗い領域からのモノマーの吸い込みによる、照射された領域における成長するポリマーの膨潤により達成される。この機構は、レリーフグレーティングの形成を説明する。第二に、膨潤が起こらない場合、反応性の差によって引き起こされる二方向拡散が、照光されたおよび照光されていない領域におけるモノマーユニット濃度の差異を有する平坦な表面を有するフィルムの形成を説明する。この機構は、フェーズグレーティングの形成を説明する。
【0007】
WO2005/008321は、ポリマー、モノマー及び開始剤から基本的になるフォトポリマー組成物を用いることにより表面構造体を作製する方法を説明している。ポリマーは、単一のポリマー材料でありうるが、2つ以上のポリマーのブレンドであってもよい。同様に、モノマーは、単一の化合物でありうるが、いくつかのモノマー成分を有してもよい。開始剤は、好ましくはUV光への曝露によりラジカルを生成する光開始剤である。あるいは、光開始剤は、UV光への曝露に際してカチオンを生成する。開始剤は、さらに、光開始剤と上昇した温度においてラジカルを生成する熱開始剤との混合物であってもよい。この混合物は、一般的には、加工(たとえば、スピンコーティングによる薄膜の形成)を促進するために有機溶媒に溶解される。ブレンド条件ならびにポリマーおよびモノマーの性質は、溶媒の蒸発後に固体膜が形成されているように選択される。一般的には、これは、UV光によるパターン化照射時に潜像の形成を可能にするものである。加熱して潜像を現像することにより表面プロファイルを形成することが可能であり、この際、重合および拡散が同時に起こるので、照射領域における材料の体積が増大され(またはその逆)、結果として、表面の変形を生じる。
【0008】
この方法の弱点は、そのような光エンボス加工方法を用いて製造され得られたレリーフ構造体がいくらか低いアスペクト比を依然として有し、特定のアプリケーションのためには更なる向上を必要とすることである。アスペクト比(AR)は、レリーフの高さと構造体幅との間の比として定義される。この結果として、目標とする光学的機能または他の機能は、それほど最適なものではない。
【0009】
最近、構造体の高さが、成長ラジカルとの交換機構によって安定なラジカルを形成するフォトポリマー組成物に対して分子を付加することによって向上しうるということがK.Hermans,F.K.Wolf,J.Perelaer,R.A.J.Janssen,U.S.Schubert,C.W.M.Bastiaansen,D.J.Broer,in Appl.Phys.Lett.,2007,91,174103によって報告された。これらのラジカルは、潜在開始剤としてふるまい、また密に架橋している環境において連鎖移動機構による形成時に、より容易に重合を再開始することができる。結果として、曝露および非曝露領域間の化学ポテンシャルの差異が増大し、形成する構造体に対する反応性種の拡散が促進される。
【0010】
上記プロセスにおいて、フォトポリマー組成物のフィルムが、UV光の曝露前およびその後のプロセスにおいて粘着性がなく、反応性種の拡散をほとんど示さないということは重要である。ポリマーフィルムの温度が上昇したときのみ(最初の曝露後)流動性が増加しえ、ポリマーレリーフ構造体が形成される。上記プロセスにおいて、多量(例えば45重量%)の不活性ポリマー(またはポリマーバインダ)がフォトポリマー組成物の固体フィルムを得るために適用される。モノマーとポリマーとの比は、フォトポリマー組成物の固化度合いおよびガラス転移温度を決定する。モノマーとポリマーとの間の比は、また所与のコーティング層の厚さにおいて得られる最大のアスペクト比を決定する。上記に記述したコーティング組成物においてより高いアスペクト比を得るためには、コーティングされる層の厚さは増加されなければならない。所与のコーティング層の厚さにおけるアスペクト比を増加する方法(特に薄いコーティング層厚が望まれる場合には)は、たとえば、コーティング組成物のポリマーバインダの含有量を減じることによって、モノマーとポリマーとの間の比を増加することである。結果として、フォトポリマー組成物のガラス転移が室温より低くなり、コーティングされたサンプルが粘着性を持つようになる可能性があるが、これは、接触マスキングを妨げ、プロセス時の塵吸収増加へとつながる。また、フォトポリマー組成物の粘度減少の結果として、レリーフ構造体の部分形成が、曝露ステップ時または直後であるが形成ステップの適用前にすでに起きる。この早過ぎる表面レリーフ形成は、複雑なレリーフ構造体を作製するために複数の曝露ステップを適用する際に、光学的パスを変形する。容易な処理を確実にするためおよび複数の曝露ステップを可能にするためにポリマーバインダが必要であるが、ポリマーバインダの流動性は高い温度においてさえ低く、それ故表面レリーフ構造体の高さに貢献しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高AR比を得ることが可能なポリマーレリーフ構造体を作製する方法を開発することである。
【0012】
本発明の他の目的は、基板に適用された低減された層厚のフォトポリマー組成物において高AR比を達成することである。
【0013】
本発明の他の目的は、高濃度の反応性物質を有するが曝露前に不粘着である固体膜を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ポリマーレリーフ構造体の作製のための光エンボス加工方法であって、a)1または複数の放射線感受性成分および30重量%より少ないポリマーバインダ材料を含むコーティング組成物で基材をコーティングするステップと、b)前記コーティング組成物の転移温度より低い温度で、周期的、非周期的またはランダムな放射線強度パターンを有する電磁放射線でこのコーティングされた基材を局所処理して潜像を形成するステップと、c)得られたコーティングされた基材を前記コーティング組成物の転移温度より高い温度で重合および/または架橋するステップとを有する方法において、前記転移温度は、前記コーティング組成物の高粘度状態と低粘度状態との間の転移を規定する温度であり、前記コーティング組成物は、少なくとも1つの放射線硬化性基を有する化合物Aおよび光開始剤を有し、前記コーティング組成物は、30℃〜120℃の転移温度を有する、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施態様は、ポリマーレリーフ構造体の作製のための光エンボス加工方法であって、a)1または複数の放射線感受性成分および30重量%より少ないポリマーバインダ材料を含むコーティング組成物で基材をコーティングするステップと、b)前記コーティング組成物の転移温度より低い温度で、周期的、非周期的またはランダムな放射線強度パターンを有する電磁放射線でこのコーティングされた基材を局所処理して潜像を形成するステップと、c)得られたコーティングされた基材を前記コーティング組成物の転移温度より高い温度で、重合および/または架橋するステップとを有する方法において、前記コーティング組成物は、トリ(ヘキシルアクリレート)ベンゼントリカルボキサアミド、1,3,5−トリス−(3,4,5−トリドデシルオキシベンゾイルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス−[3,4,5−トリス((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)ベンゾイルアミノ]−ベンゼン、N−(3,5−ビス−{3−[3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−フェニル]−ウレイド}−フェニル)−3,4,5−トリドデキシル−ベンズアミド、N−{3,5−ビス−[3−(3,4,5−トリドデシルオキシフェニル)−ウレイド]−フェニル}−3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−ベンズアミド、3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−N−(3,5−ジニトロフェニル)−ベンズアミド、N−(3,5−ジアミノ−フェニル)−3,4,5−トリドデキシルオキシ−ベンズアミド、N−(3,5−ジアミノ−フェニル)−3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−ベンズアミドおよびN−(5−ソルビル−ペンチル)−N’,N”−ジ(n−オクチル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキサミドからなる群から選択された化合物を含む、方法である。
【0016】
この方法は、多くの利点がある。一つの利点は、フィルムが、溶液として処理されうるコーティング組成物から作製されることが可能であり、ここで、該コーティング組成物が低い量の溶媒を有し、該組成物が高含有量の反応性成分を有するため、溶液の蒸発および排出が減少するので環境特性、処理速度および価格を改善するということである。
【0017】
化合物Aを含むコーティング組成物は、30℃〜120℃の転移温度を有する。化合物Aの存在は、温度上昇によりフォトポリマーコーティング組成物の粘度変化を誘発する。粘度は、高粘度または固体から低粘度へ変化する。
【0018】
本発明のコーティング組成物は、ステップbの温度(たとえば大気温度)において固体であるかまたは高粘度を有し、形成ステップcの温度において低粘度を有する。大気温度とはおよそ25℃であり、高粘度とは少なくとも100Pa.sの粘度であり、好ましくは1000Pa.sより高く、最も好ましくは10,000Pa.sより高い。形成ステップc)の温度において、コーティングの粘度は、ステップb)で示された粘度に対して、好ましくは80%(さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%)より多く減少する。それゆえ、コーティング組成物の粘度は、形成ステップc)の温度において、元の値の20%(好ましくは10%、さらに好ましくは5%)より少なくなるまで減少する。
【0019】
本発明に従う光エンボス加工方法の最中のコーティング組成物中の反応性成分の重合および/または架橋によって、反応性コーティング組成物の粘度は、コーティング組成物の反応性成分の重合および/または架橋状態への転換の程度の上昇と共に徐々に増加する。本発明の文脈において、光エンボス加工方法のステップb)およびc)におけるコーティング組成物の粘度は、それゆえこれらステップにおけるコーティング組成物の初期の粘度に関連する。これらの初期粘度は、電磁放射線で処理されないコーティング組成物について、ステップb)およびステップc)のそれぞれの温度におけるコーティング組成物の粘度によって決定される。このように決定された粘度は、前記の反応性成分の転換の程度とは独立している。粘度は、円錐およびプレート形状を有するWells−Brookfieldレオメーターによって、107Pa.sまで計測される。非放射コーティング組成物が水平プレート上に置かれ、低い円錐がその上に置かれる。円錐およびプレートの表面間の角度は、1度に近い(すなわち、非常に低い円錐である)。測定機構は、次に、所望の温度、具体的には本発明の光エンボス加工方法のステップb)およびc)の温度にそれぞれ加熱される。一般的には、プレートが回転され、円錐に対するトルクが測定される。そのトルクから流体内のせん断応力が計算される。せん断率は、回転速度および円錐の寸法により決定される。せん断応力とせん断率との間の比は、測定条件、特に温度における流体の粘度の指標である。コーティングとしてのアプリケーションのため、本発明に従う光エンボス加工方法に用いられるコーティング組成物について興味のある粘度は、低せん断率における粘度である。上記方法に従うコーティング組成物の粘度は、それ故、プレートの回転速度が、0.01〜1.0rpm、好ましくは0.01〜0.5rpm、より好ましくは0.01〜0.1rpmで測定される。
【0020】
本発明の好ましい実施態様において、化合物Aは、DSCで測定されたとき、大気温度と形成ステップの温度との間で、高粘度状態と低粘度状態との間の転移を示す。高粘度状態と低粘度状態との間の転移は、たとえば、融点、結晶化温度、ガラス転移温度、等方性温度(isotropic temperature)、(可逆性)ポリマーの解重合温度、または液晶性特性を有する化合物については、ネマチック、スメクチック、コレステリックまたはカラムナー等の中間相に変化が起こる温度であってよい。
【0021】
好ましくは、コーティング組成物は40℃〜120℃の、より好ましくは50℃〜90℃の前記転移温度を含む。
【0022】
最も好ましくは、コーティング組成物は、ステップb)の温度において固体である。
【0023】
25℃より高い温度で、高粘度状態と低粘度状態との間で転移を起こしうる化合物Aの例は、水素結合した反応性モノマー等の化合物である。これらのモノマーは室温で超分子ポリマーを形成するが、高温で非常に流動的である。超分子ポリマーは、可逆的非共有結合(たとえば水素結合)によって結合される繰り返し単位から形成されたポリマーである。水素結合した反応性モノマーの例は、シクロヘキサントリカルボキサミド誘導体またはベンゼントリカルボキサミド誘導体である。ベンゼントリカルボキサミドは、アミド水素結合によってロッド状凝集体を形成しうる円盤状分子として知られている。このように形成された液晶種は、室温で高粘度または固体であるが、水素結合が破断し、超分子相が液相に変化する高温においては、可動度を増す。このように、これらのタイプのモノマーがポリマーバインダの必要性を除去する一方で、反応性アクリレート基が、光開始剤の存在下で紫外(UV)光への曝露により容易に重合して共有結合ネットワークを形成する。ベンゼントリカルボキサミド−誘導体の例は、トリ(ヘキシルアクリレート)ベンゼントリカルボキサミド、1,3,5−トリス−(3,4,5−トリドデシルオキシベンゾイルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス−[3,4,5−トリス((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)ベンゾイルアミノ]−ベンゼン、N−(3,5−ビス−{3−[3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−フェニル]−ウレイド}−フェニル)−3,4,5−トリドデキシルオキシ−ベンズアミド、N−{3,5−ビス−[3−(3,4,5−トリドデキシルオキシフェニル)−ウレイド]−フェニル}−3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−ベンズアミド、3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−N−(3,5−ジニトロフェニル)−ベンズアミド、N−(3,5−ジアミノ−フェニル)−3,4,5−トリドデシルオキシ−ベンズアミド、N−(3,5−ジアミノ−フェニル)−3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−ベンズアミド、N−(5−ソルビル−ペンチル)−N’,N”−ジ(n−オクチル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキサミドである。
【0024】
25℃より高温で高粘度状態と低粘度状態との間の転移を起こしうる化合物Aの他の例は、立体相互作用によって、室温でガラス状態を形成する化合物である。このような分子は、少なくとも1つの側基を含むが、より一般的には、化合物の結晶化を立体的に妨げる1つより多い側基を含む。このような化合物を堆積する(たとえば溶液から基板へ)際、ポリマーバインダをまったく使用せずに薄い固形フィルムが作製できる。このような分子の例は、一般的に使用されるエポキシベースのネガティブフォトレジストであるSU−8である。
【0025】
化合物Aは、種々の化合物の混合物であってもよく、組み合わせられた化合物は、これら化合物の混合物が大気温度では固体であるかまたは高粘度を有し、形成ステップの温度では低粘度を有することを特徴とする。前記混合物はさらに、大気温度と形成ステップの温度との間で高粘度状態と低粘度状態との間の転移を示すことを特徴とする。
【0026】
好ましくは、重合および/または架橋反応を開始するために、開始剤がコーティング内に存在してよい。開始剤の量は広い範囲に変動してよい。開始剤の適切な量は、重合および/または架橋反応に関与する化合物の総重量に対して、たとえば0.1重量%〜10重量%である。
【0027】
重合および/または架橋反応を開始するためにUV光への曝露がなされる場合、この混合物は好ましくは、UV光開始剤を含む。光開始剤は、光の吸収により重合および/または架橋反応を開始することが可能である。したがって、UV光開始剤はUV領域内のスペクトルの光を吸収する。いかなる知られたUV光開始剤もこの発明による方法に使用されることができる。
【0028】
可視スペクトルで吸収して反応性種を生成する光開始剤も同様に適用可能である。
【0029】
UV光開始剤および感光剤の組み合わせも、組成物をより長い波長(たとえば、種々のレーザーシステムが放射する可視スペクトルの緑色または赤色部分)に反応するようにするために使用されて良い。感光剤は、曝露に使用される光を吸収して励起され、励起エネルギーを光開始剤に転送して、この光開始剤は引き続き反応性種へと分解する。好ましくは、重合開始剤は、光開始剤および熱開始剤の混合物を含む。コーティング組成物は、モノマー化合物を含んでもよく、これは、比較的低分子量(すなわち1500gram/molより小さい)の化合物であって、この化合物は、反応性粒子(すなわちフリーラジカルまたはカチオン粒子)と接触して重合する。好ましい実施態様において、モノマーまたはモノマー混合物のうちの1個のモノマーは、重合によりポリマーネットワークが形成されるように、1個より多い重合基を含む。さらに、好ましい実施態様において、モノマーは1または複数の次のような種類の反応性基を含んでいる分子である。ビニル、アクリレート、メタアクリレート、エポキシド、オキセタン、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、チオール−エンまたはマレイミド。
【0030】
重合成分として使用するのに好適でありかつ1分子あたり少なくも2個の架橋性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノおよびジ(メタ)アクリレート、C7〜C0アルキルジ(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、および前述のモノマーのいずれかのアルコキシル化体、好ましくはエトキシル化体および/またはプロポキシル化体、さらにはビスフェノールAへのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAへのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルエーテルのビスフェノールAへの(メタ)アクリレート付加物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、およびトリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルアクリレートとイソホロンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物(HIH)、ヒドロキシエチルアクリレートとトルエンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物(HTH)、ならびにアミドエステルアクリレートが挙げられる。
【0031】
1分子あたりただ1つの架橋基を有する好適なモノマーの例としては、ビニル基を含有するモノマー、たとえば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾ−ル、ビニルピリジン;イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ベータ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル;および次式
CH2=C(R6)−COO(R7O)m−R8 (I)
〔式中、Rは、水素原子またはメチル基であり;Rは、2〜8個、好ましくは2〜5個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;そしてmは、0〜12、好ましくは1〜8の整数であり;Rは、水素原子もしくは1〜12個、好ましくは1〜9個の炭素原子を含有するアルキル基であるか;またはRは、1〜2個の炭素原子を有するアルキル基で場合により置換されていてもよい4〜20個の炭素原子を有するテトラヒドロフラン基含有アルキル基であるか;またはRは、メチル基で場合により置換されていてもよい4〜20個の炭素原子を有するジオキサン基含有アルキル基であるか;またはRは、C〜C12アルキル基(好ましくはC〜Cアルキル基)で場合により置換されていてもよい芳香族基である〕により表される化合物、およびアルコキシル化脂肪族単官能性モノマー、たとえば、エトキシル化イソデシル(メタ)アクリレート、エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0032】
放射線感受性成分として使用に適しているオリゴマーは、たとえば芳香族もしくは脂肪族ウレタンアクリレート、または、フェノール樹脂(たとえばビスフェノールエポキシジアクリレート)をベースとしたオリゴマーおよびエトキシレートで鎖延長された上記オリゴマーのいずれかである。ウレタンオリゴマーは、たとえばポリオール主鎖をベースとしているもの、たとえばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール等であってよい。これらのポリオールは、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられても良い。これらのポリオールにおける構造単位の重合の仕方に特段の制限はない。ランダム重合、ブロック重合またはグラフト化重合のいずれも可能である。ウレタンオリゴマーを形成するための適切なポリオール、ポリイソシアネートおよびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの例が、本明細書に参照により組み込まれるWO00/18696に開示されている。
【0033】
共に架橋状態を形成しそれゆえ組み合わせた場合に希釈剤として使用されるのに適した化合物の組み合わせは、たとえば、エポキシと組み合わされたカルボン酸および/またはカルボン酸無水物、ヒドロキシ化合物と組み合わされた酸、特に2−ヒドロキシアルキルアミド、イソシアネートたとえばブロックドイソシアネート、ウレトジオンまたはカルボジイミドと組み合わされたアミン、アミンまたはジシアンジアミドと組み合わされたエポキシ、イソシアネートと組み合わされたヒドラジンアミド(hydrazinamide)、イソシアネートたとえばブロックドイソシアネート、ウレトジオンまたはカルボジイミドと組み合わされたヒドロキシ化合物、無水物と組み合わされたヒドロキシ化合物、(エ−テル化)メチロールアミド(“アミノ樹脂”)と組み合わされたヒドロキシ化合物、イソシアネートと組み合わされたチオール、アクリレートまたは他のビニル種(任意にラジカル開始した)と組み合わされたチオール、アクリレートと組み合わされたアセトアセテート、およびカチオン架橋を使用する場合にはエポキシ化合物とエポキシまたはヒドロキシ化合物である。
【0034】
放射線感受性成分として使用するのに適した、さらに可能な化合物は、湿気硬化性イソシアネート、アルコキシ/アシルオキシ−シランの湿気硬化性混合物、アルコキシチタネート、アルコキシジルコネート、またはウレア−、ウレア/メラミン−、メラミン−ホルムアルデヒドまたはフェノール−ホルムアルデヒド(レゾール、ノボラック型)、またはラジカル硬化性(過酸化物−または光−開始)エチレン系不飽和単官能−および多官能モノマーおよびポリマー、たとえばアクリレート、メタクリレート、マレエート/ビニルエーテル)、またはラジカル硬化性(過酸化物−または光−開始)不飽和、たとえば、マレイン酸またはフマル酸、スチレン中および/またはメタクリレート中のポリエステルである。
【0035】
本発明のコーティング組成物は溶媒を含んで良い。溶媒は、基板上のコーティング組成物の塗布に使用されて良いが、好ましくはUV光への曝露前に塗布されたコーティング組成物から除去される。原則的には、多様な溶媒が使用されて良い。しかしながら、溶媒および混合物内に存在する他のすべての物質の組み合わせは、優先的に安定な懸濁液または溶液を形成すべきである。
【0036】
好ましくは、使用される溶媒は、基板上にコーティングを塗布した後(ステップ(a))でステップ(b)の前に蒸発させられる。本発明に従う方法において、任意にコーティングは、基板への塗布後に溶媒の蒸発を助けるため加熱されるか真空中で処理されてもよい。
【0037】
好適な溶媒の例は、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、クロロフェノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジクロロメタン、ジエチルアセテート、ジエチルケトン、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、エチルアセテート、m−クレゾール、モノ-およびジ-アルキル置換グリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、p−クロロフェノール、1,2−プロパンジオール、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−ヘキサノン、2−メトキシエタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−オクタノン、2−プロパノール、3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、ヘキサフルオロイソプロパノール、メタノール、メチルアセテート、ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、n−メチルピロリドン−2、n−ペンチルアセテート、フェノール、テトラフルオロ−n−プロパノール、テトラフルオロイソプロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンおよび水である。アルコール、ケトン、およびエステルをベースとする溶媒を使用してもよいが、高分子量アルコールを用いた場合にはアクリレートの溶解性が問題となる可能性がある。ハロゲン化溶媒(たとえば、ジクロロメタンおよびクロロホルム)および炭化水素(たとえば、ヘキサンおよびシクロヘキン)は好適である。
【0038】
コーティング組成物は、ポリマー物質を含むことが可能である。事実、他の化合物と均質な混合物を形成する各ポリマーが用いられることが可能である。よく研究されたポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、ポリベンジルメタクリレート、ポリイソボルニルメタクリレートである。しかし、多くの他のポリマーも同様に適用できる。ポリマー物質量は、好ましくは全組成の30重量%より少なく、より好ましくは10重量%より少なく、さらにより好ましくは全組成の5重量%より少ない。最も好ましくはコーティング組成物は、ポリマーバインダ物質を含まない。好ましくはこのポリマーは、少なくとも20,000g/molの粘度平均分子重量(Mv)を有する。ポリマーの粘度平均分子重量は、好ましくは105〜107の範囲である。ポリマーの粘度平均分子重量は、Mark−Houwinkの式より算出される。
[η]=KMW
定数Kおよびaの値は、たとえば、Polymer Data Handbook,edited by James E. Mark,published by Oxford University Books(1999),(http://www.qmc.ufsc.br/~minatti/docs/20061/polymer_data_handbook.pdf)等の文献に見いだしうる。
【0039】
コーティングステップa)で用いられる場合、ポリマーは、好ましくは少なくとも300Kのガラス転移温度を有する。好ましくは、ステップa)で用いられるコーティング中のポリマーは、モノマー中に溶解され、ステップa)の放射線感受性コーティング中に存在し、または本発明の方法のステップa)のコーティングにおいて使用される溶媒中に存在する。
【0040】
コーティング組成物は、RAFT剤を含んで良い。RAFT剤は、たとえば、WO99/31144、またはPolymer International 49:993−1001(2000)等の数種類の参考文献に開示されている。これらの公開文献の中でRAFT剤は、種々のモノマーの制御されたラジカル重合に対して用いられている。本発明の方法におけるRAFT剤の存在は、作製されるポリマーレリーフ構造体のARをさらに改善しうる。
【0041】
本発明で使用されるRAFT剤は、式IIに従う一般的な構造を有する。
【化1】

ここで、Rは置換または非置換アリールまたはアルキル基であり;Zは1〜100のC原子および場合によりO、N、S、P、Si等のヘテロ原子を有する有機基である。有機基Zの例は、アルキル基、アリール基、チオール、アミン、ピロール、ピリジンおよびアルコキシである。
【0042】
本発明の好ましい実施例において、Rは式−C−(R−Yを持つ化合物であり、ここでRはアルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基であり、Yは芳香族基、たとえばフェニル、トルイル、ナフチル基、CN、エーテル基またはエステル基である。より好ましくは、Rは、−C−(CH−CN、−C−(CH−Y2基であり、ここで、Y2は、フェニル、トルイルもしくはナフチル基、または−C−(CH−COOR基であり、ここでRはC−C10置換または非置換アルキル基である。もっとも好ましくは、Rは−C−(CH−CN、−C−(CH−フェニル、−C−(CH−トルイルおよび−C−(CH−COORからなる群から選択され、ここでRはメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。
【0043】
好ましくはZはフェニル、トルイル、ナフチル、チオール、1〜10の炭素原子を有するアルキル、ピロール基からなる群から選択されてもよい。より好ましくは、Zは6から20の炭素原子を有する芳香族基である。もっとも好ましくはZはフェニルまたはトルイル基である。
【0044】
本発明において用いられうるRAFT剤の量は、全組成物に対して一般的に0.1〜20重量%である。
【0045】
コーティング組成物は有機ラジカルスカベンジャーを含んで良い。有機ラジカルスカベンジャーは、当業者に知られている。それらは、阻害剤または抑制剤としても知られている。適切な有機ラジカルスカベンジャーの限定されない例は、以下のものである。フェノール、(たとえば、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、3,5−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、α−ナフトール,2−ニトロ−α−ナフトール、β−ナフトール、1−ニトロ−β−ナフトール、フェノール、2,4−ジニトロフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、ヒドロキノンモノメチル、ジ−tert−ブチルハイドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、テトラフルオロヒドロキノン、トリメチルヒドロキノンなど);キノン、(たとえば、p−ベンゾキノン、クロロ−p−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,3−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、メトキシ−p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、テトラブロモ−p−ベンゾキノン、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、テトラ−ヨード−p−ベンゾキノン、テトラメチル−p−ベンゾキノン、トリクロロ−p−ベンゾキノン、トリメチル−p−ベンゾキノンなど);ニトロン、ニトロ−およびニトロソ−化合物(たとえば、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、ニトロベンゼン、ニトロ−d5−ベンゼン、p−ニトロ−クロロベンゼン、1,3,5−トリニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、ニトロジフェニル、ジフェニルピクリルヒドラジル、ジニトロジュレン、1,5−ジニトロ−ナフタレン、ピクラミド、ピクリン酸、ピクリルクロライド、2−4−ジニトロトルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、1,3,5−トリニトロトルエン;カプトディティブ(Captodative)オレフィン;安定なラジカル(たとえば、アセトフェノン、アニリン、ブロモベンゼン、ジアゾアミノベンゼン、安息香酸、安息香酸エチルエステル、ベンゾフェノン、塩化ベンゾイル、ジフェニル、ジフェニルアミン、ジュレン、フルオリン、トリフェニルメタン、ナフタレン、フェナントレン、スチルベン、硫黄、トルエン、p−ブロモトルエン、トルニトリル、p−キシレン);1,1ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)。
【0046】
有機ラジカルスカベンジャーは、最大20重量%の量、たとえば、0.5〜18重量%、または2〜16重量%、あるいは、6〜14重量%の範囲の量で存在しうる(溶媒をのぞいたコーティング組成物に対して)。
【0047】
曲線因子0.5を有するラインマスクは、表面の50%が不透明である平行線を含むマスクである。
【0048】
コーティング組成物は、業界で知られているいかなる(湿式)コーティング堆積方法によっても基板に塗布されてよい。好適な方法の例は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、メニスカスコーティング、ドクターブレード、キャピラリーコーティングおよびロールコーティングである。
【0049】
一般的に、放射感受性成分は、選択された塗布方法を用いて基板に塗布するのに好適な混合物を作製するために、好ましくは少なくとも1個の溶媒および架橋開始剤と混合される。
【0050】
多様な基板が本発明に従う方法において、基板として使用されてよい。好適な基板は、たとえば平らなまたは湾曲した、剛性または可撓性の高分子基板であり、たとえばポリカーボネート、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrollidone)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロ−エチレン、ナイロン、ポリノルボルネンのフィルム;または非晶質固体、たとえばガラスまたは結晶性物質など、たとえばシリコンまたはガリウムヒ素を含む。金属基板も用いられてよい。ディスプレイ応用に使用するための好ましい基板は、たとえばガラス、ポリノルボルネン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、セルローストリアセテート、ポリカーボネートおよびポリエチレンナフタレートである。
【0051】
本発明の方法のステップa)において、コーティング組成物は、業界で知られているいかなる(湿式)コーティング堆積方法によっても基板に塗布されてよい。好適な方法の例は、スピンコーティング、ディイップコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、メニスカスコーティング、ドクターブレード、キャピラリーコーティングおよびロールコーティングである。コーティング方法は、たとえば、存在するかもしれない溶媒も蒸発させるために、基板またはコーティング組成物の緩やかな加熱を伴ってよい。
【0052】
本発明の方法のステップb)においては、プロセスステップa)から得たコーティングされた基板は、周期的なまたは潜在的な放射強度パターニングを有する電磁放射線で局所的に処理され、その結果、潜像が形成される。好ましい1実施態様においては、この処理は、UV光をマスクと共に使用して行われる。別の好ましい実施態様においては、この処理は、光干渉/ホログラフィーを用いて実行される。さらに別の実施態様は、電子ビームリソグラフィーの使用により行うものである。電子ビームリソグラフィーが用いられる場合では、電子ビームが化合物Aおよび/またはモノマーの重合を開始するための十分なエネルギーを有しているので、光開始剤は存在しなくても良い。
【0053】
電磁放射線による組成物の処理は、たとえばフリーラジカルメカニズムまたはカチオン性メカニズム、またはそれらの組み合わせによって架橋を開始することができるラジカルまたはカチオン等の活性種の形成を誘発する。
【0054】
ステップc)において、コーティングされた組成物は、曝露領域で重合を開始または強めるため、および、非曝露領域からの曝露領域へのモノマーの拡散を誘起させるために、加熱される。加熱時に、先に確定された転移温度に達し、そこで組成物の粘度が減少し物質の移送が促進される。
【0055】
放射感受性組成物の完全な重合を確実にするため、UV光もしくは加熱または両者の組み合わせにより試料がポストキュアステップを受ける、任意のステップd)があってもよい。
【0056】
本発明の必須の特徴は、高アスペクト比を有するレリーフ構造体を形成するための、バインダとして用いられるポリマーの量が少量であるかまたはポリマーバインダは使用しない状態での化合物Aの使用である。
【0057】
プロセスステップa)〜d)が実行されなければならない条件自体は、放射重合の業界で知られているものである。これらプロセスステップの温度として、好ましくは250〜320Kがステップb)で用いられ、さらに好ましくはステップb)は大気温で実行され、好ましくは325〜450Kの温度がステップc)で用いられる。
【0058】
本発明のポリマーレリーフ構造体は、向上したアスペクト比を有する。本発明のレリーフのアスペクト比(AR、レリーフ高さと構造体幅(双方μmで表される)との比である)は一般に少なくとも0.05であり、より好ましくは少なくとも0.075であり;さらにより好ましくは、3μm厚のコーティングを用いる場合には、ARは少なくとも0.1である。コーティングの厚さは、ARに重要な影響を及ぼすものであり、システムの比較の際には常に類似であるべきである。
【0059】
驚くべきことに、本発明の方法は、基板に塗布するフォトポリマー組成物の比較的薄い層において、高AR比を有する構造体を作製することを可能にする。このことは、ポリマーレリーフ構造体の透明性が向上し、ポリマーレリーフ構造体を作製するために必要な物質がより少量になり、レリーフ構造体を作製する時間が短縮するという利点を与える。
【0060】
ある層の厚さにおけるAR比は、相対アスペクト比(AR((相対))として表され、層の厚さ(l)で標準化した、構造体の幅(w)で除された高さ(h)として定義される。
【数1】

【0061】
以前より業界で知られている従来のフォトポリマーは、20μm幅の構造体(h=0.8μm,l=3μm)について、一般的に1.33×10−2μm−1のAR(相対)を有している。RAFTまたはラジカルスカベンジャーをフォトポリマー組成物に付加すると、20μm幅の構造体(h=6μm,l=16μm)について、AR(相対)は、一般的に1.88×10−2μm−1にまでさらに向上することが可能である。本発明に従うフォトポリマーにおいて、AR(相対)は20μm幅の構造体(h=2.1μm,l=3μm)について、一般的に3.5×10−2μm−1である。本発明に従う光エンボス加工方法により作製されるポリマーレリーフ構造体の相対的なアスペクト比は、従前の業界で知られているレリーフ構造体のAR(相対)をしのいでいる。本発明に従う光エンボス加工方法で作製されるポリマーレリーフ構造体は、少なくとも2.8×10−2μm−1の、好ましくは少なくとも3.0×10−2μm−1の、より好ましくは少なくとも3.2×10−2μm−1の、最も好ましくは少なくとも3.4×10−2μm−1のAR(相対)を有する。20μm幅の構造体について、ポリマーレリーフ構造体の高さは、元の被膜層の厚さに対して少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも65%、そして最も好ましくは少なくとも70%である。上記に与えられたケース(h=2.1μm,l=3μm)において、レリーフ構造体の高さは、元の被膜層の厚さの70%である。
【0062】
本発明は、本発明に従う光エンボス加工方法により作製されるポリマーレリーフ構造体を含む物品にもまた関する。そのような物品はたとえば、光学材料に適用可能である。それに関する例は、1/4波長フィルムおよび、たとえばLCDまたはLED等に適用するワイヤグリッド偏光子である。また、自己清浄性面のためのモスアイ構造体またはロータスフラワー構造体も、これにより得られる。他のそして好ましい実施態様は、有機物または無機物における複製目的のマスターとしてのポリマーレリーフ構造体の使用である。反射防止/グレア防止層を含むその他のアプリケーションは、垂直整列ディスプレイ(光エンボスが、LCsの位置合わせ用の突起を形成するために使用される);マイクロレンズ;リフレクタ;トランスフレクタ;偏光体;たんぱく質アレイ、DNAアレイおよびマイクロ接触印刷である。
【0063】
本発明のポリマーレリーフ構造体は、ポリマーが、引き続きのエッジングステップにおいて基板を保護するために用いられる(エッジングの後、ポリマーレリーフ構造体は基板に構造体を残した状態で基板から除去されうる)電子または光学デバイスを作製するためにもまた使用可能である。
【0064】
本発明は、本発明の限定を意味するものではない以下の例および比較実験によりさらに明らかにされる。
【0065】
例1
本発明に従うフォトポリマーの例は、疑似固体超分子から液相へ転移する水素結合反応性種に基づいている。これらの分子は、113℃でこの特別な転移を示す。それゆえ、この例で用いられる形成温度は115℃である。この温度で、反応性種は低粘度を有し容易に拡散しうる。
【0066】
水素結合反応性種、(トリ(ヘキシルアクリレート)ベンゼン−トリカルボキサミド)を、ベンゼン1,3,5−トリカルボン酸クロライドとアミノヘキシルアクリレートとの反応により合成した。この合成は40mlのアミノヘキサノール(5.0g,43mmol)のCHCl溶液にジ−tert−ブチルジカルボネート(10g,46mmol)の溶液を徐々に加えることにより行った。3時間のさらなる撹拌の後、7mlのトリエチルアミンを加え、次に氷浴中で冷却しながら、4mlのアクリロイルクロライドを滴下した。室温で3時間撹拌の後、溶液を濾過し、100mlのCHClを加えた。有機層を1MのHClおよび1MのNaOHの水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥した。MgSOの除去の後、溶媒が蒸発し、N−Boc−アミノヘキシルアクリレートが無色オイル(9.5g,81%)として生じた。アミノへキシルアクリレート塩酸塩が2MのHClジエチルエーテル溶液との反応後得られ、これを精製することなしにその後の反応に用いた。アミノヘキシルアクリレート塩酸塩(1.5g,7.2mmol)およびベンゼン1,3,5−トリカルボン酸塩化物(0.50g,1.9mmol)を、10mLのCHClに溶解した。この混合物に、トリエチルアミン(1.0g,10mmol)を氷浴内で冷却しながら滴下した。30分の撹拌の後、100mLのCHClを加え、次に生成物をクロロホルム/アセトングラディエント(CHCl→CHCl/アセトン3:1v/v)のカラム・クロマトグラフィーにかけた:収量0.55g(43%)。
【0067】
H NMR(400MHz,CDCl):δ=8.19(s,3H,Ph−H),7.43(t,3H,−NH−),6.4−5.8(m,9H,アクリレート)、4.13(t,6H,CHCO)、3.38(m,6H,−CHNH−)、1.7−1.4(m,24H,その他のCH);13C NMR(100MHz,CDCl):δ=166.6,135.6,130.9,128.7,128.3,64.6,40.3,29.5,28.6,26.7,25.7.MALDI−TOF MS:Calculated:669.36,found:692.30([M+Na]
【0068】
固体薄膜を作製するため、水素結合反応性種をクロロホルム中に1:4の重量比で溶解した。種々の濃度の開始剤(Irgacure 819−Ciba Specialty Chemicals)を当該混合物に加えた。次に、20μm間隔の特製ブレードを有するErichsen Coatmaster 509MC−1を用いて、溶液をドクターブレードにより、ガラス基板(10×10cm)上に固体フィルムを作製した。特製のブレードは8×6cmの外周および5×1.4cmの内部開口部を有する長方形のステンレススチールブロックからなるものであった。当該ブロックは、2つの6cmの辺が8cmの辺より20μm厚く設計されており、ブロックが基板上に配置されたらブロックを支持するようになっている。内部開口部に数滴の溶液を滴下して、基板上を25mm/sの一定スピードでブロックを移動することによりフィルムを作製する。得られたフィルムを、存在しうる残留溶媒を除去するために30分室温で乾燥し、約3μmの乾燥フィルムを得た。次に、試料はEXFO OmniCure s−2000光源および40μmの周期的ラインマスクを使用してUVマスク曝露した。強度を変化させるため、0.24,0.53,1.37,2.22および2.31J/cmの範囲の光密度を有するリニア可変の中性密度フィルターを曝露の間中ラインマスクの上端に置いた。マスク曝露の後、試料を徐々に115℃まで加熱し、その温度下で合計20分間保持した。最終ステップにおいて、試料を25mW/cmの強度で5分間フラッド曝露し(flood exposed)、その後室温に冷却した。
【0069】
構造体の高さを、50倍の対物レンズを有するSensofar Plμ2300共焦点顕微鏡により解析した。
【0070】
DSC測定を10℃/minの加熱率でTA Q1000を用いて行った。この測定は、−40℃〜140℃の範囲の2度の加熱/冷却のサイクルからなり、2度目のサイクルで得られた測定値がデータとして用いられる。
【0071】
レリーフ構造体の測定されたAR(相対)が、表1に示されている。最大ARは、約0.11であったが、これは、3.6×10−2μm−1(元の被膜層厚は3μmである)の最大AR(相対)に対応するものであり、同様に20μmの構造体幅を有する2.16μmの構造体高さに対応するものである。構造体高さは、元の層厚の72%である。
【表1】

【0072】
比較例1:(大気中に存在するフォトポリマー、薄層)
フォトポリマーは、50重量%のポリマー、ポリベンジルメタクリレート(Mw=70kg/mol)、および50重量%の多官能モノマー、ジ−ペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリレートを含む混合物からなるものであった。フォトポリマーに5重量%の光開始剤(Irgacure 819)を加えた。フォトポリマーと光開始剤との混合物を、66重量%の、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートとエトキシプロピルアセテートとの1:1混合物中に溶解した。これ以降混合物をフォトポリマー溶液と呼ぶ。
【0073】
当該フォトポリマー溶液を、800RPMでガラス基板上にスピンコートする。スピンコーティングの後、溶媒残留痕跡を除去するために試料を80℃で20分間加熱し、その結果約3μm厚のフィルムを形成する。
【0074】
次に、40μm(充填係数0.5)の回折格子を有するフォトマスクを、固体ポリマーフィルムとの直接接触により用いた。UV光(EXFO OmniCureTM Series 2000,Photonic SolutionsInc.)への曝露を、0.24,0.53,1.37,2.22および2.31J/cmの範囲のエネルギードーズを用いて行った。UV光への曝露の後、試料を115℃で20分間加熱してレリーフ構造体を形成した。最後に、115℃でUVランプ(E=0.8J/cm)を用いてフラッド曝露を行い、試料を凝固した。
【0075】
最終的に形成されたレリーフ構造体を、50倍の対物レンズを有する白色光走査型共焦点顕微鏡(PLμ2300,Sensofar)により特性評価した。レリーフ構造体のAR(相対)が表1に示されている。最大AR(相対)は、約1.0×10−2μm−1であった。
【0076】
比較例2:(大気中に存在するフォトポリマー、厚層)
フォトポリマーは、50重量%のポリマー、ポリベンジルメタクリレート(Mw=70kg/mol)、および50重量%の多官能モノマー、ジ−ペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリレートを含む混合物からなるものであった。フォトポリマーに5重量%の光開始剤(Irgacure 819)を加えた。フォトポリマーと光開始剤との混合物を、50重量%の、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートとエトキシプロピルアセテートとの1:1混合物中に溶解した。これ以降混合物をフォトポリマー溶液と呼ぶ。
【0077】
当該フォトポリマー溶液を、800RPMでガラス基板上にスピンコートする。スピンコーティングの後、溶媒残留痕跡を除去するために試料を80℃で20分間加熱しその結果、約16μm厚のフィルムを形成する。
【0078】
次に、40μm(充填係数0.5)の回折格子を有するフォトマスクを、固体ポリマーフィルムとの直接接触により用いた。UV光(EXFO OmniCureTM Series 2000,Photonic SolutionsInc.)への曝露を、0.24,0.53,1.37,2.22および2.31J/cmの範囲のエネルギードーズを用いて行った。UV光への曝露の後、試料をレリーフ構造体を形成するために115℃で20分間加熱した。最後に、試料を凝固するため、115℃でUVランプ(E=0.8J/cm)を用いてフラッド曝露を行った。
【0079】
最終的に形成されたレリーフ構造体を、50倍の対物レンズを有する白色光走査型共焦点顕微鏡(PLμ2300,Sensofar)により特性評価した。レリーフ構造体のAR(相対)表1に示されている。最大AR(相対)は、約0.7×10−2μm−1)であった。
【0080】
比較例3:(窒素中に存在するフォトポリマー、厚層)
比較例2の実験条件を用いた。照明時および加熱ステップ時とも、フィルムを窒素雰囲気下に置いた。構造体の高さを光学プロフィロメータを用いて計測し、レリーフ構造体のAR(相対)が表1下部に示されている。最大AR(相対)は、約0.3×10−2μm−1)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーレリーフ構造体の作製のための光エンボス加工方法であって、
a)1または複数の放射線感受性成分および30重量%より少ないポリマーバインダ材料を含むコーティング組成物で基材をコーティングするステップと、
b)前記コーティング組成物の転移温度より低い温度で、周期的、非周期的またはランダムな放射線強度パターンを有する電磁放射線でこのコーティングされた基材を局所処理して潜像を形成するステップと、
c)得られたコーティングされた基材を前記コーティング組成物の転移温度より高い温度で重合および/または架橋するステップと
を有する方法において、前記転移温度は、前記コーティング組成物の高い粘度および低い粘度の状態間の転移を規定する温度であり、前記コーティング組成物は、少なくとも1つの放射線硬化性基を有する化合物Aおよび光開始剤を有し、前記コーティング組成物は、30℃〜120℃の転移温度を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記コーティング組成物は、当該方法のステップbにおいて1000Pa.sより高い粘度を有する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記コーティング組成物は、当該方法のステップbにおいて固体である、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法であって、ステップcにおける前記コーティング組成物の粘度は、ステップbにおける粘度の20%より下まで低下する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記転移は、融点、結晶化温度、ガラス転移温度、等方性温度、(可逆性)ポリマーの解重合温度により、または、液晶性特性を有する化合物については、ネマチック、スメクチック、コレステリックまたはカラムナー等の中間相の変化が起こる温度により特徴付けられる、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法であって、前記化合物Aは、水素結合反応性モノマーである、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法であって、化合物Aは、シクロヘキサントリカルボキサミド−誘導体またはベンゼントリカルボキサミド誘導体からなる群から選択される、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法であって、化合物Aは、トリ(ヘキシルアクリレート)ベンゼントリカルボキサアミド、1,3,5−トリス−(3,4,5−トリドデシルオキシベンゾイルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス−[3,4,5−トリス((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)ベンゾイルアミノ]−ベンゼン、N−(3,5−ビス−{3−[3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−フェニル]−ウレイド}−フェニル)−3,4,5−トリドデキシル−ベンズアミド、N−{3,5−ビス−[3−(3,4,5−トリドデシルオキシフェニル)−ウレイド]−フェニル}−3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−ベンズアミド、3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−N−(3,5−ジニトロフェニル)−ベンズアミド、N−(3,5−ジアミノ−フェニル)−3,4,5−トリドデキシルオキシ−ベンズアミド、N−(3,5−ジアミノ−フェニル)−3,4,5−トリス−((S)−3,7−ジメチルオクチルオキシ)−ベンズアミドおよびN−(5−ソルビル−ペンチル)−N’、N”−ジ(n−オクチル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキサミドからなる群から選択される、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法であって、前記組成物は、(重合および/または架橋反応に関与する化合物の総重量に対し)0.1〜10重量%のラジカル光開始剤を含む、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法であって、前記コーティング組成物は、ビニル、アクリレート、メタクリレート、エポキシド、オキセタン、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、チオール−エンまたはマレイミドの種類の1または複数の反応性基を含む分子である少なくとも1つの分子を含む、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法であって、前記コーティング組成物は、該組成物の総量に対し0.1〜20重量%のRAFT剤を含む、方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法であって、前記コーティング組成物は、溶媒を除いたときの該組成物の総量に対し2〜16重量%の有機ラジカルスカベンジャーを含む、方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の方法に従って作製されたポリマーレリーフ構造を有する物品であって、前記ポリマーレリーフ構造は、少なくとも3×10−2μm−1の相対アスペクト比(AR(相対))を有する、物品。
【請求項14】
LCDまたはLEDで利用される1/4波長フィルムおよびワイヤグリッド偏光子;自己清浄性表面のためのモスアイ構造体またはロータスフラワー構造体;または有機物または無機物における複製目的のマスターである、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
反射防止/グレア防止層、垂直整列ディスプレイ、マイクロレンズ、リフレクタ、トランスフレクタ、偏光体、たんぱく質アレイ、DNAアレイまたはマイクロ接触印刷として用いられる請求項13に記載の物品。

【公表番号】特表2011−516677(P2011−516677A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503422(P2011−503422)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054161
【国際公開番号】WO2009/124942
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510071633)スティヒティング ダッチ ポリマー インスティテュート (3)
【氏名又は名称原語表記】STICHTING DUTCH POLYMER INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】John F. Kennedylaan 2, NL−5612AB Eindhoven NL.
【Fターム(参考)】