説明

ポリマー性増粘剤組成物

本発明は、少なくとも1つの水膨潤性の架橋されたコポリマーを含むポリマー性増粘剤組成物、このような組成物を調製するための工程、および、例えば、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の製剤中の増粘剤としてのこれらの使用、に関する。本発明の水膨潤性の架橋されたコポリマーは、(a)アクリルアミド、(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤を含む混合物から調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの水膨潤性の架橋されたコポリマーを含むポリマー性増粘剤組成物、このような組成物を調製するための工程、および、例えば、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の製剤中における増粘剤としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に化粧品産業において、重要な技術的問題または要求が、水分含有製剤(化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の製剤など)の安定性に関連することは周知である。対応する製剤および乳剤の相または成分が分離するのを避けるため、水分含有製剤(溶液、乳剤または懸濁液など)は、しばしば、増粘剤または増粘組成物を加えることによって、より高い粘度まで増粘される。理想的には、これらの増粘剤は、広いpHの範囲にわたって、かつまた電解質の存在下で、所望の増粘特性または粘度の安定性を与えるべきである。
【0003】
化粧品の分野における標準的な増粘剤の安定性を改善するための1つのアプローチは、強酸性モノマーを含む架橋されたポリマーの使用に基づく。架橋されたポリマー性増粘剤組成物は、例えば、特許文献1において提案される。より正確に言えば、特に、アクリルアミドおよび(少なくとも部分的に中和されたユニットを有する)2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸由来のユニット、ならびに(総モノマーユニットのmolあたり0.06〜1mmolの特定の量で使用される)N,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを含む水溶性ポリマー材料を含む増粘組成物が、特許文献1に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0503853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多数の増粘剤が市販されているが、多数の用途に使用でき、広いpHの範囲にわたって、かつまた電解質の存在下で所望の粘度の安定性を与えることができる、増粘剤または増粘組成物に対する強い要求が依然としてある。明白な理由により、例えば、化粧品または医薬品の利用において使用される増粘剤または増粘組成物はまた、相当量の不健康または有害な物質を含むべきではない。従って、(架橋された)アクリルアミドベースのポリマー性増粘剤組成物の使用は、先行技術において知られる組成物で認められる著しい残留モノマー量の観点から、不利であると考えられる可能性がある(これらの組成物は、滑らかさなどの他の要求される特性を与えるかも知れないが)。
【0006】
別の問題は、当該技術分野において記載される増粘剤または増粘組成物の酸化安定性に関する。化粧品の分野において、対応する製剤は、しばしば、増粘剤の安定性を損なう可能性がある電解質を含む。例えば、架橋されたポリマー性増粘剤組成物の調製のために使用される市販の水溶性架橋剤(メチレン−ビス−アクリルアミドなど)のほとんどは、加水分解性の化合物(例えば、メチレン−ビス−アクリルアミドは、希酸溶液中でさえも、容易に加水分解を起こす)である。従って、得られる増粘剤または増粘組成物は、しばしば、酸化、ならびに酸性および/またはアルカリ性の媒質に対して反応性が高い。
【0007】
前述の知見の観点から、広いpHの範囲にわたって、かつまた電解質の存在下で、所望の増粘特性または粘度の安定性を有する増粘剤または増粘組成物を与えることが有利だろう。さらに、増粘剤または増粘組成物が、低い、または無視できる残留モノマー量を有するならば、有利だろう。最終的に、当該増粘剤または増粘組成物が、特に化粧品への利用に好ましい特性または特徴(例えば、要求される滑らかさおよび優れた感触など)を与える場合にも有利だろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚いたことに、今や、(a)アクリルアミド、(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤に基づく水膨潤性の架橋されたコポリマーは、例えば、化粧品用、皮膚用、医薬品用および/または動物用の水分含有製剤のための増粘剤として非常に適していることが見出された。従って、本発明の1つの態様によれば、ポリマー性増粘剤組成物が与えられ、これは下記を含む混合物の重合由来の少なくとも1つの水膨潤性の架橋されたコポリマーを含む:
(a)アクリルアミド、
(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに
(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤。
【0009】
本発明の架橋されたコポリマーに関して本願明細書で使用される用語「水膨潤性」は、本発明の目的においては、不水溶性コポリマーを指すものとして定義され、これは、任意に、一部分の水溶性ポリマーを含んでいてもよく、当該部分は30重量%(当該コポリマーに基づく)を超えない。
【0010】
本発明のさらなる有利な態様によれば、当該アミンベースの多官能性の架橋剤は第三級アミンであり、これは、好ましくは、トリアリルアミン、トリメタリルアミン、アリルジメタリルアミン、ジアリルメタリルアミンおよび前述の化合物の塩を含む群から選択される。当該第三級アミンの適した塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硫化物塩、リン酸塩および亜リン酸塩が挙げられる。
【0011】
本発明の別の態様によれば、本発明のポリマー性増粘剤を作製するための工程が与えられる。当該工程は、(a)アクリルアミド、(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤を含む混合物からの水膨潤性の架橋されたコポリマーの調製に関し、当該工程は、好ましくは、逆相乳化重合によって行われる。このタイプの重合において得られる生成物は、「逆相乳化」と呼ばれる。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、ポリマー性増粘剤を作製するための工程は、総モノマーユニットのmolあたり2mmol超の量、好ましくは総モノマーユニットのmolあたり2.2mmol超の量、さらにより好ましくは総モノマーユニットのmolあたり少なくとも2.4mmolの量、および総モノマーユニットのmolあたり最大10mmolのアミンベースの多官能性の架橋剤を、重合混合物に添加することに関する。
【0013】
本発明の別の有利な態様によれば、3〜5、好ましくは3.5〜4.5の範囲、より好ましくは約4のpH値を有する本発明の重合混合物が、本発明の架橋されたポリマーを調製するために使用される。さらに、上述の量のアミンベースの多官能性の架橋剤を含み、3〜5、好ましくは3.5〜4.5の範囲、より好ましくは約4のpH値を有する重合混合物の使用が有利であることが見出された。
【0014】
さらなる態様によれば、本発明は、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の水分含有製剤中の増粘剤としての本発明のポリマー性増粘剤組成物(これらは、好ましくは洗浄液、ボディクリーム、フェイスクリームおよびヘアケア組成物を含む群から選択される)の使用に関する。対応する増粘された製剤は、本発明によれば、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%、特に好ましくは0.7〜3重量%(当該製剤に基づく)の量の増粘剤組成物を含む可能性がある。
【0015】
本発明の別の態様に基づく本発明のポリマー性増粘剤組成物は、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の含水製剤の粘度の安定性の改善および/または提供のために使用される。本願明細書で使用される用語「粘度の安定性」は、水分含有製剤または乳剤中の相または成分の分離が、広いpHの範囲にわたって(例えば、1〜12、または3〜9)かつ/または電解質の存在下で回避されることを意味する。本発明のコポリマーの使用の重要な利点は、市販の公知の生成物と対照的に、極端に酸性のpHにおいてさえも製剤の粘度安定性が高いことである。
【0016】
本発明のこれらの態様および他の態様は、本願明細書に記載される実施態様への参照によって明らかになり、かつ解明されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の1つの実施態様によれば、ポリマー性増粘剤組成物が与えられ、これは、下記を重合することによって得られる少なくとも1つの水膨潤性の架橋されたコポリマーを含む:
(a)アクリルアミド、
(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに
(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤。
【0018】
驚いたことに、今や、(a)アクリルアミド、(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤に基づく、水膨潤性の架橋されたコポリマーは、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の水分含有製剤のための増粘剤として非常に適していることが見出された。得られる増粘された製剤または乳剤(洗浄液、ボディクリームおよびフェイスクリーム、ヘアケア組成物など)は、様々な条件下で、かつ、製剤または組成物の調製後の数ヶ月の貯蔵後でさえも、優れた均一性および改善された安定性を示す。
【0019】
本発明の別の実施態様によれば、成分(b)は、アンモニウム塩およびアルカリ金属塩を含む群から選択されるアクリルアミドアルキルスルホン酸塩である。アクリルアミドアルキルスルホン酸モノマーの遊離酸形態は、従来の様式で所望のアンモニウム、アミンまたはアルカリ金属イオンを与える、適した塩基(水酸化物など)を加えることによって、塩形態に変換される可能性がある。
【0020】
本発明のアミンベースの多官能性の架橋剤は、好ましくは、トリアリルアミン、トリメタリルアミン、アリルジメタリルアミン、ジアリルメタリルアミンおよび前述の化合物の塩を含む群から選択されてもよい第三級アミンである。本発明の1つの特定の実施態様によれば、当該アミンベースの多官能性の架橋剤は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硫化物塩、リン酸塩および亜リン酸塩を含む群から選択される塩の形態の第三級アミンである。本発明のさらなる態様によれば、当該アミンベースの多官能性の架橋剤は、好ましくは第三級アミン(これは、好ましくはトリアリルアミン、トリメタリルアミン、アリルジメタリルアミンおよびジアリルメタリルアミンを含む群から選択される)のアルキル化由来の四級アンモニウム塩である。適したアルキル化剤は当業者に周知である。本発明に基づいて使用されてもよいアルキル化された第三級アミンの1つの例は、アルキルトリアリルアンモニウム塩化物(メチル−、エチル−、プロピル−またはブチルトリアリルアンモニウム化合物など)である。
【0021】
本発明の別の実施態様によれば、当該水膨潤性の架橋されたコポリマーは、総モノマーユニットのmolあたり10〜90、好ましくは30〜70、特に40〜60molの(a)アクリルアミド、および総モノマーユニットのmolあたり10〜90、好ましくは30〜70、特に40〜60molの(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩を含む混合物を重合することによって得られる。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様に基づく本発明のポリマー性増粘剤組成物は、連鎖移動剤を重合混合物に加えることによって得られ、当該連鎖移動剤は、好ましくは、リン酸塩型連鎖移動剤(次亜リン酸ナトリウムなど)、低級アルコール(メタノールまたはイソプロパノールなど)、チオールベースの連鎖移動剤(2−メルカプトエタノールなど)、硫酸塩型連鎖移動剤(メタリルスルホン酸ナトリウムなど)、および前述の薬剤の混合物を含む群から選択される。典型的に、使用される連鎖移動剤の量は、約0.001重量%〜約1重量%(モノマーの総重量に基づく)の範囲である。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの水膨潤性の架橋されたコポリマーを含むポリマー性増粘剤組成物を作製するための工程が与えられ、当該コポリマーは、(a)アクリルアミド、(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤を含む混合物から調製される。本発明の1つの有利な態様によれば、当該水膨潤性の架橋されたコポリマーは、逆相乳化重合によって調製される。
【0024】
逆相乳化重合の工程は、通常、下記のステップを含む:
A)疎水性相(不活性な炭化水素液など)中のモノマー(a)および(b)の水溶液の油中水型乳剤を形成するステップ;ならびに
B)当該モノマーを重合し、任意に、反応を開始し反応混合物の温度を制御するための遊離基生成触媒の使用による、ポリマー乳剤を形成するステップ。当該重合混合物は、乳剤の総量のうち約0.5〜約10重量%の濃度で乳化剤/一次界面活性剤を含んでいてもよく、当該ポリマーは、効果的な連鎖移動剤の存在下で生成されてもよい。本発明に従って得られる逆相乳化ポリマー組成物は、約25〜約75重量%の活性ポリマー濃度を有する可能性がある。本発明の逆相乳化組成物は、転相界面活性剤を最大約5重量%の濃度でさらに含んでいてもよい。当該転相界面活性剤は、架橋されたポリマーの水中の溶解性を改善するかも知れない。適した転相界面活性剤は、少なくとも約10、好ましくは10〜20のHLBを有するものであり、約10〜約15のHLBが最も好ましい。特に適したものは非イオン性転相界面活性剤である。典型的な「転相剤」としては、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪酸エステル−ソルビタン−ポリエチレングリコール−グリセロール、アルキルポリグルコシドなどが挙げられる。特定のシリコーン化合物(ジメチコンコポリオールなど)もまた使用できる。
【0025】
本発明によれば、水膨潤性(または膨潤された)ポリマーは、(例えば、一般的に、米国特許第4,059,552号明細書に記載されたように)逆相重合によって生成することができる。
【0026】
本発明の別の態様に基づく本発明の架橋されたポリマー性増粘剤組成物は、pH 3.0で18.000cps超、pH 3で好ましくは19.000cps超、最も好ましくは20.000cps超の粘度、および/または25.000cps超の粘度を与えてもよい。
【0027】
本発明の架橋されたポリマー性増粘剤組成物および/またはこれらの増粘剤を作製するための工程はいくつかの利点を与える。本発明の水膨潤性の架橋されたコポリマーは、いずれの温度で取り込まれてもよい。本発明の水膨潤性の架橋されたコポリマーは、効率的な増粘ポリマーおよび乳化ポリマーであり、従って、シリコーン、植物油、塩類の形態の成分を含む組成物/製剤、または塩、もしくは6未満のpH値を有する成分を含む組成物/製剤のための優れた安定化物質である。
【0028】
本発明のポリマー性増粘剤を作製するための工程は、アミンベースの多官能性の架橋剤を加えるステップを含む。本発明の1つの実施態様に基づくこの架橋剤は、総モノマーユニットのmolあたり2mmol超の量、好ましくは総モノマーユニットのmolあたり2.2mmol超の量、総モノマーユニットのmolあたり最大10mmolを加えられる。本発明の実現のため、(一般的な架橋剤(二官能性のメチレンビスアクリルアミドなど)を使用する標準的な技法と比較して)3つ以上のアリル基を有するアミンベースの多官能性架橋剤の効果は比例的ではないことが予想外にも認められた。それどころか、本発明によれば、総モノマーユニットのmolあたり2mmol未満の量は、乏しい、またはより低い増粘特性を与える可能性があることが見出された。従って、本発明によれば、重合中の当該架橋剤のモル比は、総モノマーユニットのmolあたり2mmol超、好ましくは2.2超、さらにより好ましくは少なくとも2.4であることが有利であると考えられる。
【0029】
本発明のさらなる実施態様によれば、本発明の工程は、逆相乳化重合として行われ、(a)アクリルアミドおよび(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸を含むその水相は、好ましくは、疎水性相中に分散される。当該疎水性相は、ミネラルオイル、合成油、植物油、シリコーンオイルおよびこれらの混合物を含む群から選択される油を含んでいてもよい。
【0030】
本発明の1つの実施態様によれば、疎水性相に対する水相の割合(重量%)は、60:40と80:20との間、好ましくは約70:30である。
【0031】
本発明の工程を行うために乳化剤の使用が有利である可能性が見出され、当該乳化剤は、好ましくは、3〜8の範囲、より好ましくは4〜6の範囲のHLB値を有するべきである。上述の範囲のHLB値は、逆相乳化重合を行うために適した条件を与える。本発明のさらなる態様によれば、当該乳化剤は、2〜5重量%(総乳剤量に基づく)の量で使用される。
【0032】
本発明のさらに別の実施態様に基づく増粘剤組成物中の固形分は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%(乳剤量に基づく)である。
【0033】
本発明によれば、重合混合物のpH値、すなわちモノマー相のpHは、3〜5の範囲が好ましく、より好ましくは約4である。重合のpHは、通常、当該モノマーの機能している酸性官能基の中和率(これは、典型的に5〜95%の範囲である)とともに変化する。本発明によれば、驚いたことに、重合のpHが低いほど、非常に酸性のpH値においてさえも、非常に強く効率的な増粘能を維持しながら、非常に広い範囲のpH値(1−13)にわたってポリマー増粘特性(感触および安定性など)がよいことが見出された。最適な増粘効果は、重合のpHが3.5〜4.5または約4(これは、依然として、工業設備の腐食の問題が減少するpHである)である場合に得られる可能性がある。
【0034】
本発明の架橋された増粘剤組成物を調製するための工程は、好ましくは、リン酸塩型連鎖移動剤(次亜リン酸ナトリウムなど)、低級アルコール(メタノールまたはイソプロパノールなど)、チオールベースの連鎖移動剤(2−メルカプトエタノールなど)および前述の薬剤の混合物を含む群から選択される連鎖移動剤の存在下で有利に行われてもよい。
【0035】
本発明の別の態様によれば、上述の、または本願明細書に記載された本発明の工程によって得ることができるポリマー増粘剤またはポリマー増粘剤組成物が与えられる。
【0036】
別の実施態様に基づいて本発明によって与えられるポリマー性増粘剤組成物は、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の水分含有製剤中の増粘剤として、すなわち、このような製剤の粘度を増加させるために使用される。本発明によれば、当該増粘剤組成物は、洗浄液、ボディクリーム、フェイスクリームおよびヘアケア組成物を含む群から選択される製剤中に含まれていてもよい。本発明の別の実施態様に基づく増粘された製剤は、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%、特に好ましくは0.7〜3重量%(当該製剤に基づく)の水膨潤性の架橋されたコポリマーを含む。
【0037】
本発明によって与えられるポリマー性増粘剤組成物は、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の水分含有製剤の粘度の安定性を提供および/または改善するために使用されてもよい。
【0038】
本発明によれば、全ての公知技術によって、架橋されたポリマーを(真空下で加熱し、蒸留によって過剰な水および有機溶剤を除去することによって)濃縮し、または単離することも可能である。特に、可溶性ポリマー乳剤または水中で膨潤するものに基づいて、粉末を得るための多くの工程がある。これらの工程は、乳剤の他の構成物からの活性物質の単離を含む。このような工程は下記を含む:
− 非溶剤媒質(アセトン、メタノール、および他の極性溶剤など)中の沈殿:次いで、単純な濾過によりポリマー粒子の単離が可能になる、
− 粒子の濾過後の乾燥によって容易に単離される集塊物を得ることを可能にする凝集剤および安定化ポリマーの存在下での共沸蒸留が行われる、
− 「噴霧乾燥」、または微粒化もしくは粉状化による乾燥は、制御された期間、熱風の流れの中で乳剤の微細液滴の霧を作ることからなる。
【0039】
水溶性ポリマーの割合を増加させることが確実に技術的に可能である場合でさえも、本発明の水膨潤性の架橋されたコポリマーが、これが(欧州特許第0 343 840号明細書の8ページに記載されているような計測方法によって決定される)不水溶性であることに特徴付けられることは注目されなければならない。従って、これは、30重量%を超えず、好ましくは20重量%未満である一部分の水溶性ポリマーを示す。
【0040】
本発明は、その特定の実施態様に関して記載される一方、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの改変、強化、および/または変化が達成され得ることが当業者によって認識されるだろう。従って、本発明は、請求項の範囲およびその均等物によってのみ制限されることが明白に意図される。語「含む(comprising)」は、請求項中に記載されたもの以外の要素またはステップの存在を除外しない。要素の前に来る語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、複数のこのような要素の存在を除外しない。下記において、本発明は特定の例を考慮して示される。しかし、これらの例は、本発明をその範囲について制限しようとする意図は全くなく、むしろ、代表的な実施態様のうちのいくつかによって本発明を示す役割を果たす。
【実施例】
【0041】
A)ポリマー
下記の項に記載される各ポリマーは、逆相乳化重合によって得た。得られたポリマーまたは組成物の比較を可能にするため、別段の記載がない限り、重合条件を一定に維持した。
【0042】
(重合条件)
モノマー溶液は、120gの50% アクリルアミド水溶液および650gの50% 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の水溶液を含むように調製する。次いで、一定量の架橋剤、1.0gのジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、および25gの水を加える。水性モノマー相のpHは、硫酸を加えることによって得る。水相を移し、Silverson L2R ミキサーを使用して、10分間、7000rpmで油相(12.3gのソルビタンモノオレエート、および250gのホワイトミネラルオイルの混合物を含む)にホモジナイズする。当該系を10℃まで冷却し、窒素で10分間パージする。次いで、重合を、6mlの1% 重量/重量 ペルオキソ二硫酸アンモニウム(水中)を1回で、かつ0.2ml/分でメタ重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液を加えることによって開始する。温度の上昇が認められ、さらなる上昇が生じない場合は、完全な重合が想定される。最終的な液体分散物に、40gのエトキシ化脂肪アルコール(HLB>10)を加えることによって水分散性になる。
【0043】
得られたポリマーから、脱イオン水中の製剤を調製し、異なるpH値におけるその粘度について試験した。さらに、残留モノマー量を特定した。結果を下記表1にまとめた。
【0044】
【表1】

【0045】
得られ、表1で示された結果によれば、本発明の水膨潤性の架橋されたコポリマー(P1、P2)の増粘特性は、実施例X1、X2およびX3よりも、(特に酸性のpHで)顕著に良い。最良の結果は、2.5mmolの量の架橋剤 TAAを使用し、かつ約4のpHで重合を行うことによって得られることに注目すべきである。さらに、本発明の実施例における残留モノマー量は、実施例X1、X2およびX3と比較して、低いことが認められる。
【0046】
B)組成物
組成物中で使用した成分の名称は、INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)において与えられたものである。
【0047】
ポリマー「P1乾燥」は、ポリマー P1と同一のポリマーであるが、噴霧乾燥によって得られる粉末の形態で使用される。
【0048】
【表2】

【0049】
(調製方法)
* 第1の段階: 水相の調製。
* 第2の段階: 酸の添加による水相のpH値の調整。
* 第3の段階: 撹拌中にポリマーを加える。
* 第4の段階: 保存剤および香料を加える。
* 第5の段階: 4.9までのpHの再調整。
【0050】
【表3】

【0051】
(調製方法)
ポリマー P1をシクロペンタシロキサン中で混合し、予混合したものを油に加え、次いで、水相を油相中に加える。
【0052】
【表4】

【0053】
(調製方法)
Aを混合し、予混合したBを加え、均一になるまでCを加える。次いで、pHを、DでpH=4まで調整する。
【0054】
【表5】

【0055】
(調製方法)
水相を調製する。次いで、油相を取り込む。ポリマー、次いで保存剤および香料を撹拌中に加える。
【0056】
【表6】

【0057】
(調製方法)
50℃での油相の調製。油を水に加え、温度を50℃に維持する。撹拌中にポリマーを加える。次いで、保存剤および香料を加えるために、混合物を常温にする。次いで、pH値を合わせる。
【0058】
【表7】

【0059】
(調製方法)
成分Aを水に注ぐ。pH値は、6に合わせる。次いで、撹拌中に保存剤および香料を加える。
【0060】
前述の通り示された例は、これらの増粘特性および/またはこれらの乳化特性の両方により、このタイプのポリマーの使用の目的となる可能性がある様々な組成物を示す。
【0061】
試験された各最終組成物は、最適な化粧品の特性(感触および安定性など)を示す。異なる製剤から得られる感触は油っぽい。利用時は、本発明の組成物または製剤の形態(texture)は、よりゆっくりと「広がり(breaks down)」、従って、過度に「水様」(水に似ているもの)であり、特に、組成物の効率および快適性の観点から、消費者にとって魅力が少ない感触を避けることが可能になる。
【0062】
この特性はまた、皮膚、毛髪、爪、毛髪、または体毛の表面に塗布された組成物が、早く流出しすぎることを防ぐことを可能にする。従って、処置される表面上の組成物の塗布および拡散の制御がより容易である。
【0063】
可能性のある処方のそれぞれのための包装の膨大な選択(ポンプボトル、チューブ、スプレー、ジャーなど)があることが注目されなければならない。
【0064】
さらに、本願明細書において、粉末形態のポリマーの使用は、さらなる可能性を示すことが示される。これは、最終組成物中の油相(ポリマー溶剤)の存在を防ぐ一方で、上記などのポリマーの特性の利点を可能にする。この可能性は、新しい技術的要求および/またはマーケティングの要求に合う様々な製剤または組成物の提供を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む混合物の重合に由来する少なくとも1つの水膨潤性の架橋されたコポリマーを含むポリマー性増粘剤組成物:
(a)アクリルアミド、
(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに
(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤。
【請求項2】
前記アクリルアミドアルキルスルホン酸塩は、好ましくは、少なくとも部分的にアンモニウム塩および/またはアルカリ金属塩の形態の2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸である請求項1記載のポリマー性増粘剤組成物。
【請求項3】
前記アミンベースの多官能性の架橋剤は、好ましくはトリアリルアミン、トリメタリルアミン、アリルジメタリルアミン、ジアリルメタリルアミンおよび前述の化合物の塩を含む群から選択される第三級アミンである請求項1または請求項2記載のポリマー性増粘剤組成物。
【請求項4】
前記アミンベースの多官能性の架橋剤は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硫化物塩、リン酸塩および亜リン酸塩を含む群から選択される塩の形態の第三級アミンである請求項3記載のポリマー性増粘剤組成物。
【請求項5】
前記アミンベースの多官能性の架橋剤は、好ましくは、第三級アミン(好ましくは、トリアリルアミン、トリメタリルアミン、アリルジメタリルアミンおよびジアリルメタリルアミンを含む群から選択される)のアルキル化由来の四級アンモニウム塩である請求項1または請求項2記載のポリマー性増粘剤組成物。
【請求項6】
前記水膨潤性の架橋されたコポリマーは、総モノマーユニットのmolあたり10〜90、好ましくは30〜70、特に40〜60molの(a)アクリルアミド、および総モノマーユニットのmolあたり10〜90、好ましくは30〜70、特に40〜60molの(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩を含む混合物から得られるポリマーによって得られる請求項1〜5いずれか1項に記載のポリマー性増粘剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー性増粘剤を作製するための方法であって、前記水膨潤性の架橋されたコポリマーは、(a)アクリルアミド、(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはその塩、ならびに(c)少なくとも3つのアリル基を含むアミンベースの多官能性の架橋剤を含む混合物からの逆相乳化重合によって調製される方法。
【請求項8】
前記アミンベースの多官能性の架橋剤は、総モノマーユニットのmolあたり2mmol超、好ましくは総モノマーユニットのmolあたり2.2mmol超、さらにより好ましくは総モノマーユニットのmolあたり少なくとも2.4mmol、および総モノマーのmolあたり最大10mmolの量で重合混合物に加えられる請求項7記載のポリマー性増粘剤を作製するための方法。
【請求項9】
前記(a)アクリルアミドおよび前記(b)アクリルアミドアルキルスルホン酸を含む水相は、疎水性相中に分散される請求項7または請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記重合は、好ましくは、リン酸塩型連鎖移動剤(次亜リン酸ナトリウムなど)、低級アルコール(メタノールまたはイソプロパノールなど)、チオールベースの連鎖移動剤(2−メルカプトエタノールなど)、硫酸塩型連鎖移動剤(メタリルスルホン酸ナトリウムなど)および前述の薬剤の混合物を含む群から選択される連鎖移動剤の存在下で行われる請求項7〜9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記重合混合物のpH値は、3〜5、好ましくは3.5〜4.5の範囲、より好ましくは約4である請求項7〜10いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水膨潤性の架橋されたコポリマーは、凝集剤および安定化ポリマーの存在下での共沸蒸留による非溶剤媒質中の重合生成物の沈殿、次いで、噴霧乾燥、または微粒化もしくは粉状化による乾燥による、得られるポリマー組成物の濾過後の乾燥によって、固形状で単離され、または得られる請求項7〜11いずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項7〜12いずれか1項に記載の方法によって得ることができるポリマー性増粘剤組成物。
【請求項14】
前記水膨潤性の架橋されたコポリマーは、固形状で得られ、または単離される請求項13記載のポリマー性増粘剤組成物。
【請求項15】
化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の水分含有製剤中の増粘剤としての請求項1〜6、13または14いずれか1項に記載のポリマー性増粘剤組成物の使用。
【請求項16】
6未満のpH値を有し、かつシリコーン、植物油、塩類の形態の成分、塩または成分を含む、化粧品用、皮膚用、医薬品用または動物用の水分含有製剤の粘度の安定性を改善するための請求項1〜6、13または14いずれか1項に記載のポリマー性増粘剤組成物の使用。

【公表番号】特表2011−505473(P2011−505473A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536333(P2010−536333)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064513
【国際公開番号】WO2008/107034
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(510157524)エス.ピー.シー.エム. エス.エイ. (2)
【Fターム(参考)】