説明

ポリマー組成物及び方法

a)親水性安定剤を含む第1水性混合物を形成する工程、b)i)少なくとも1つのビニル官能性ポリウレタン(イソシアネート官能性モノマー;少なくとも1つのモノール及び/又は少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマーから任意選択的に調製される)ii)任意選択的に、少なくとも1つの炭化水素ポリマー(例えば、ポリスチレン等);及びiii)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマー(例えば、(メタ)アクリレート又はこの酸等);及び/又はiv)任意選択的に、少なくとも1つの疎水性安定剤を含む第2油混合物を別に形成する工程であり、成分(ii)、(iii)及び/又は(iv)が任意選択的に同じであってもよい工程;c)水性及び油混合物を一緒に混合してプレ(マクロ)エマルションを形成する工程;d)水性連続相及び約10〜約1000nmの平均径の安定化油小滴を形成するために任意選択的に高剪断を適用してそれから安定なミニエマルションを生成する工程、及びe)任意選択的に遊離基開始剤の存在下で、小滴内でポリマー前駆体(複数可)を重合してポリマーラテックスを得る工程を含む、非常に高い剪断強度、良好な剥離強度及び/又は、また高い水蒸気透過速度の混成アクリル/ポリウレタン感圧接着剤(PSA)を調製するための複数工程ミニエマルション方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン及びアクリルポリマーの混成物を含む感圧接着剤(PSA)並びに/又は混成ミニエマルションPSAの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
改善された性質(例えば、剥離及び剪断間の良好な調和)を得る試みとして、水性接着剤で使用される従来のポリマー(例えば、アクリル)と別のポリマー(例えば、ポリウレタン)とを組み合わせることは望ましいことである。しかしながら、或種のポリマーとの間の非相溶性が、多くの場合、相分離及び接着性の損失を引き起こす。本発明の目的の1つは、改善された混成ポリウレタン/アクリルポリマーを提供することである。本発明の別の目的は、そのような混成ポリウレタン/アクリルポリマーを調製するために改善されたミニエマルション方法を提供することである。
【0003】
ポリオールは、ポリウレタン合成、例えば、ポリウレタン分散体及びウレタンアクリレートを調製するために広く使用されている。しかしながら、単官能アルコール(モノール)の使用は多くの注目の的とはなっていない。本発明の第2の態様は、ウレタン結合及びエチレン基を含む官能性ポリウレタンポリマーを製造するための合成経路の本出願人の発見に関する。この方法により得られる及び/又は得ることのできる官能性ポリウレタンは、また本明細書において記載される本発明のミニエマルション方法での成分として任意選択的に使用し得る。そのような官能性ポリウレタンの性質は、この方法において単一イソシアネート反応性基をもつ異なる化合物(モノール等)を使用することにより変えることができる。ミニエマルション方法で使用される場合、そのような官能性ポリウレタンは本発明のPSAに対して改善された性質、例えば、改善された水蒸気透過速度(MVTR)を与えることができる。
【0004】
水性ポリマー分散体はここ数年の間ミニエマルション重合によって調製されている。これは、モノマー(複数可)が、ミニエマルションとして形成される連続水性相中でナノサイズの小滴として分散される方法である。ミニエマルションの平均小滴径は10〜1000nmの範囲であることができ、小滴のサイズが1〜10μm(ミクロン)と大きい従来のエマルション及びエマルション重合方法とは区別され得る。ミニエマルション方法では、それぞれのナノサイズ小滴は、核化及びそれによって初期小滴とほぼ同じサイズのポリマーラテックス粒子を生成する極めて平行な形式で生起する重合のための一次座になる。ミニエマルション重合は、従来のエマルション重合に比べて、例えば、疎水性成分が重合中にポリマー中にカプセル化又は導入され得るような多数の利点を与える。
【0005】
種々のミニエマルションは、それらを安定化する方法と一緒に記載されている。
【0006】
WO04/069879(UCB、現在Cytec社に譲渡されている)は、ミニエマルション小滴を安定化するために、800〜100,000の数平均分子量M及び50〜400mg KOH/gの酸価を有する両親媒性安定化ポリマーの使用を記載している。
【0007】
WO00/29451(Max Planck)及び米国特許第5,686,518号(Georgia Tech)は、ミニエマルションの安定化に適した一連の疎水性成分を開示している。これらの文献は、エマルション小滴及び重合後に得られるポリマー粒子の両方を安定化するために、これらの疎水性成分に加えて界面活性剤が必要であることを教示している。使用される界面活性剤は、ナトリウムラウリルスルフェート又はその他のアルキルスルフェート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート又はその他のアルキル若しくはアリールスルホネート、ナトリウムステアレート又はその他の脂肪酸塩、或いはポリビニルアルコールである。
【0008】
US2002/131941A1(BASF)(=EP1191041)は、化粧品として使用される、1000nm未満の平均粒径の着色水性ポリマー分散体を記載している。この参考文献は、0.1〜20%の少なくとも1つの非イオン性表面活性化合物(NS)を含む皮膚刺激剤であるアニオン性界面活性剤を、1〜50%の、0.5〜10モル/kgのアニオン性官能基をもつ少なくとも1つの両親媒性ポリマー(PA)で置き換えるための安定化系を記載している。
【0009】
米国特許第6,911,487号(Dow)は、ミニエマルション方法で形成された混成ポリウレタンアクリルポリマーを記載している。記載されているポリウレタンポリマー前駆体は、ポリマー鎖基盤を延長するためにエマルション重合中に反応するように設計されている反応性イソシアネート基を含む。これらのポリマーはイソシアネート特性を有し、従ってPSAとしての適性を欠く。
【0010】
一般的なミニエマルションの記載は、Keltoum OuzinebによってClaude Bernard大学に2003年3月30日に提出された化学の学位論文、題名「エマルション及びミニエマルション重合:安定化、管状反応器及び実用化(Emulsion and mini−emulsion polymerization:stabilization,tubular reactor and practical applications)」の第1章で与えられる。この方法及び当業者に公知のいずれかのその他の一般的なミニエマルション方法の条件は、本発明の方法のミニエマルション工程で使用し得る。
【0011】
次の参考文献は、また、ミニエマルションを調製するための方法の態様を記載しており、これらの文書の内容は参照として本明細書に組み込まれる:
Adv Polym Sci、175、129頁〜255頁、2005年、Mini−emulsion Polym Rev、Schork;
Adv Polym Sci、155、101頁〜165頁、2001年、Mini−emulsion Polym Rev、Capek;
Top Curr Chem、227、75頁〜123頁、2003年、Mini−emulsion Polym Rev、Landfester;
Prog.Polym.Sci.、2002年、27、689頁、M.Antonietti、K.Landfester;及び
Prog.Polym.Sci.、2002年、27、1283頁、J.M.Asua。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来技術のいくつかの及び/又はすべての問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、広義には、本発明の一態様によれば、
(a)(i)水、及び
(ii)少なくとも1つの安定剤(任意選択的に親水性)
を含む水性混合物(第1混合物)を形成する工程、
(b)(i)少なくとも1つの活性化不飽和部分を含み、未反応イソシアネート基が実質的にない少なくとも1つの官能性ポリウレタンポリマー、
(ii)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体、及び
(iii)任意選択的に少なくとも1つの共安定剤(任意選択的に疎水性)
を含むポリマー前駆体混合物(第2混合物)を前記第1混合物から別に形成する工程であり、成分(i)、(ii)及び/又は(iii)が任意選択的に同じであってもよい工程、
(c)前記第1及び第2混合物を一緒に混合してプレエマルションを形成する工程、
(d)工程(c)の前記プレエマルションへ、適切な手段、任意選択的に高剪断場を適用して、水性連続相及びその中に分散した約10nm〜約1000nmの平均径の安定化小滴を含む本質的に安定なミニエマルションを形成する工程、
(e)任意選択的に遊離基開始剤の存在下で前記ポリマー前駆体(複数可)を重合して、混成ウレタンアクリルポリマーのラテックスを得る工程
を含む、ミニエマルション重合により異種ポリマー粒子の水性分散体を調製するための複数工程方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のミニエマルション方法は、また本発明のPSAを調製するために使用し得る混成アクリルポリウレタンポリマーのネットワークを与える。そのようなPSAは、従来のエマルション方法で調製されたPSAを超える改善された性能と共に、剥離強度を失うことなく非常に高い剪断強度を示し得る。
【0015】
任意選択的に、本発明の方法は、ポリウレタン側鎖がアクリルポリマー基盤上へグラフトし得る混成ポリマーを提供する。
【0016】
本発明の方法の各工程での使用にとって好ましい成分は以下に記載される。
【0017】
好ましくは、工程(a)で得られる第1(水性)混合物は同種水性系であり、更に好ましくは、安定剤は、使用条件下で水に実質的に可溶である。工程(a)での使用に適した組成物の例は、脱物質化水に溶解したSoprophor 4D384、Abex 2535及びAOT−75界面活性剤の混合物である。
【0018】
好ましくは、工程(b)で得られる第2(ポリマー前駆体)混合物は、工程(b)で使用される実質的にすべての成分が実質的に溶解した均質油相を含む。工程(b)での使用に適したα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体の例は、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、エチルアクリレート、アクリル酸及びβ−CEAモノマーの混合物である。疎水性共安定剤の例はポリスチレンであり、官能性ポリウレタンの例はウレタンアクリレートであり両者共に先のアクリルモノマー混合物に溶解し得る。
【0019】
好ましくは、工程(c)での少なくとも1つの官能性ポリウレタンは(メタ)アクリレート化ウレタンポリマーであり、更に好ましくは、本発明(及び以下に記載される)の第2態様を形成する方法によって得られる及び/又は得ることができる。適当なポリマーの例としては、Cytec社からEbecryl(登録商標)230として及び/又はSartomer社からCN3001として市販されているウレタンアクリレートが挙げられる。
【0020】
工程(b)での使用にとって好ましいα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体は本明細書に記載されているものであり、更に好ましくは、(メタ)アクリレートモノマー及び/又はこの酸である。
【0021】
工程(b)での使用にとって好ましい疎水性共安定剤は本明細書に記載されているものであり、例えば、炭化水素ポリマーである。
【0022】
異なるポリマータイプは、一般的には、水性接着剤をブレンドして良好な剥離及び剪断性との間の調和を改善している。しかしながら、アクリルを基にした(コ)ポリマーとこれらの非相溶性はブレンドの接着性を危うくする。
【0023】
本発明の一実施形態は、従来のエマルション方法で調製された従来のPSA又はブレンドと比較して極めて高い剪断強度、優れたラテックス安定性及びまた改善された剥離強度の混成コポリマーPSAを得るための手段を与える。本発明の方法での凝塊の形成はほとんどない。本発明のいくつかのPSAは、自動車テープ用途等の高度な性能用途で溶剤PSAを都合よく置き換え得る。
【0024】
従来のアクリル系エマルション感圧接着剤は、また、一般的に、剥離/剪断の調和に乏しく、水蒸気透過速度(MVTR)に劣るフィルムを形成する。
【0025】
本発明の更なる実施形態は、ポリウレタンポリマーを従来のアクリル系エマルションPSA中に導入するための手段を提供してこれらのMVTRを有効に改善することができる。そのようなPSAは、高いMVTRを伴うPSAを必要とする医療用テープ等の用途で、溶剤を基にしたPSAを置き換えるのに特に利益があり得る。
【0026】
本発明の1つの好ましい態様は、少なくとも約400g/24時間/m、更に好ましくは、少なくとも約450g/24時間/m、最も好ましくは、少なくとも約500g/24時間/m、例えば、少なくとも550g/24時間/mのMVTRを有する本発明のPSAフィルムを与える。別途指示されない限り、本明細書で与えられるMVTR値は、標準方法ATSM D3833/3833Mで得られる値である。
【0027】
何らのメカニズムにも拘束される積りはないが、ミニエマルションを使用する本発明の方法は、例えば、ポリ付加重合によってアクリルポリマーネットワークをもつ新規な構造のポリウレタンを導入するものと考える。MVTR性は、例えば、ポリウレタンを調製するために使用される成分(モノール等)の選択により特定のポリウレタン構造を選択することにより調整され得る。
【0028】
プレエマルションは、一般的に1〜10μm又はそれ以上の小滴サイズを有する濃厚な白色プレエマルションを形成するために、工程(a)からの水性相及び工程(b)からの油相を十分に混合することにより方法の工程(c)で形成され得る。
【0029】
プレエマルションの小滴サイズは、ミニエマルションを形成するために、いずれかの適当な手段(例えば本明細書に記載されているような)により工程(d)で更に減少され得る。
【0030】
有利には、本発明の本明細書に記載のポリマー前駆体は、また、その内容が参照として本明細書に組み込まれる本出願人の同時係属ヨーロッパ特許出願第06021165.3号(Cytec ref 50.24)に記載されている粘着性ミニエマルション組成物を調製するための成分(例えば、α,β−エチレン系不飽和モノマー成分)として使用され得る。任意選択的粘着化樹脂は、1つ又は複数の適当な疎水性粘着付与剤、例えば、ポリテルペン、ロジン樹脂及び/又は炭化水素樹脂等、例えば、先の参考文献に記載されているいずれかのものから選択され得る。
【0031】
本明細書に記載されている重合が、バッチ、連続及び/又は半連続方法として実施し得ることは十分に理解される。
【0032】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載されている本発明の方法により得られる及び/又は得ることのできる粒子分散体及び/又はPSAを提供する。
【0033】
また、少なくとも1つの活性化不飽和部分を含み、未反応イソシアネート基の実質的にない官能性ポリウレタンポリマーを調製することが望ましく、この官能性ポリウレタンは、本発明のミニエマルション方法の工程(b)での使用に場合によって適している。
【0034】
従って、本発明の別の態様は、適当な触媒及び/又は遊離基阻害剤の存在下で、
(1)イソシアネート官能性ポリマー前駆体(例えば、イソシアネート官能性モノマー)と、
(2)単一イソシアネート反応性基をもつ少なくとも1つの化合物(例えば、モノール)、及び/又は
(3)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体(ここで、成分(2)及び(3)は、任意選択的に同じであってもよい)
とを一緒に重合して、少なくとも1つの活性化不飽和部分を任意選択的に含み、未反応イソシアネート基が実質的にない官能性ポリウレタンポリマーを得る工程を含む、官能性ポリウレタンポリマーを調製する方法を提供する。
【0035】
任意選択的に、上で調製された官能性ポリウレタンは、本発明の第1の態様である方法の工程(b)での使用に適した、本明細書に記載されているいずれかのものを含み得る。任意選択的なα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体(官能性ポリウレタンを調製するために任意選択的に使用され得る上記「イソシアネート」方法の成分(3))は、本発明のミニエマルション方法の工程(b)(ii)で使用される相当する成分と同じか異なっていてもよい。
【0036】
任意選択的に、単官能イソシアネート反応性化合物(2)及びα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体(3)が同じである場合、これらは、本明細書に記載のα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体のいずれかのモノヒドロキシ置換誘導体、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシエチルアクリレート等を含み得る。
【0037】
任意選択的に、成分(2)(イソシアネート反応性化合物)及び/又は(3)(α,β−エチレン系不飽和モノマー)は、実質的にすべてのイソシアネートと反応するために過剰に存在する。
【0038】
本発明の方法(複数可)で使用可能な成分
官能性ポリウレタン(例えば、ビニル末端化ポリウレタン)
いずれかの適当な官能性ポリウレタンが、本発明のミニエマルション方法の工程(b)(i)で使用することができることは理解される。官能性ポリウレタンが上述の本発明のイソシアネート方法を使用して又はいずれかのイソシアネートを反応させて製造されることは要件ではない。本明細書で使用される官能性ポリウレタンは、当業者に公知のその他の反応を使用して得られる又は得ることのできるいずれかの適当なものを含み得る。本明細書での使用のための官能性ポリウレタンを製造し得る非イソシアネート方法の例としては:
末端シクロカーボネート基を含む適当な化合物と末端第一級アミン基を含む適当な化合物とを反応させること(例えば、米国特許第6,120,905号に記載されているような)、
適当な炭酸化植物油と適当なポリアミンとを反応させること(例えば、米国特許第7,045,577号に記載されているような)、及び/又は
適当なヒドロキシアルキルカルバメートと、適当な(メタ)アクリレート(複数可)及び適当なカーボネート及び/又はジエステルとをエステル交換すること(例えば、WO05−110978に記載されていて、(メタ)アクリレートは、式[CH=CR−CO−O]−RII(ここで、tは≧1、Rは水素又はメチルであり、RIIはアルキルであり、ヒドロキシで任意選択的に置換されていて、1〜10個のエーテル架橋基、1〜10個の−CO−架橋及び/又は1〜5個の−O−CO−架橋を含み得る)であり、カーボネートは、式RIIIO(C=O)ORIVであり、ジエステルは、式RO(C=O)RVI(C=O)ORVII(ここで、それぞれのRIII、RIV、R、RVIIは、独立に、アルキル及び/又はアリールであり、RVIはアルキレン、アルケニレン又はアリーレンである)である)
が挙げられるがこれらに限定されない。
【0039】
好ましい官能性ポリウレタンは、適当なイソシアネートポリマー前駆体を、任意選択的にその他の適当な反応体の存在下で、例えば、上述の本発明のイソシアネート方法で重合して得られる及び/又は得ることのできるものである。この方法での使用に適したイソシアネートは以下で更に詳しく記載される。
【0040】
有用なイソシアネート(複数可)はモノ又はポリ(イソシアネート)を含み、更に有用なものとしてモノ又はジイソシアネートを含み、最も有用なものとして芳香族及び/又は脂肪族イソシアネートを含み得る。適当なイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルプロパン−(2,2)、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−又は2,6−ジイソシアナト−トルエン及び/又はこれらの異性体の混合物、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び/又はこれらの異性体の混合物、4,4’−ジイソシアナトジフェニルプロパン−(2,2)、p−キシレンジイソシアネート及び/又はα,α,α’,α’−テトラメチル−m−又は−p−キシレンジイソシアネート、不飽和脂肪族イソシアネート及び/又はこれらの化合物のいずれかの混合物からなる群から選択される。
【0041】
特に好ましい芳香族ジイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)である。特に好ましい脂肪族ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジメチルメチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート及び/又はテトラメチルキシレンジイソシアネートから選択される。特に好ましい脂肪族イソシアネートは、ジメチルメタイソプロペニルベンジルイソシアネート(例えば、Cytec社からTMIの商標表示下で入手できるもの)である。イソシアネートの例は、TDI、TMI及び/又はIPDIである。
【0042】
ポリウレタン化学で公知の高官能性イソシアネート及び公知の変性イソシアネート、例えば、カルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基及び/又はビウレット基を含むモノ又はポリイソシアネート等もまた、勿論、本明細書で使用されるポリウレタンの全部又は一部を形成するために使用し得る。
【0043】
本発明の方法で使用される官能性ポリウレタンは、また、活性化エチレン系不飽和基、例えば、本明細書に記載されているもの等(例えば、α,β−エチレン系不飽和基(複数可)、例えば、(メタ)アクリレート(複数可)及び/又はビニル基(複数可))を含み得る。本明細書で使用される好ましい官能性ポリウレタンは、(メタ)アクリレート化ポリウレタンを含む。
【0044】
本明細書で使用されるポリウレタンは、その他の適当な物質、例えば、適当な触媒(複数可)(例えば、ジブチル錫ラウレート及び/又はジブチル錫ジラウレート(DBTDL)等)、阻害剤(複数可)(例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール(MEHQ)及び/又はヒドロキノン(HQ)等)及びラジカル捕獲剤(複数可)(例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(ブチルヒドロキシトルエン−BHT)等)の存在下で都合よく調製され得る。
【0045】
本発明のミニエマルション方法(工程(b)(i))で使用される官能性ポリウレタンの量は、一般的に、同じ工程で調製される混合物の全重量に関して計算して約0.1重量%〜約70重量%、好ましくは、約0.5重量%〜約60重量%であり得る。
【0046】
イソシアネート反応性化合物(例えば、イソシアネート反応で使用できるモノール等)
本発明のイソシアネート方法で成分(2)として使用されるイソシアネート反応性化合物は、反応条件下でイソシアネートと反応することのできる単一基を含む(単官能イソシアネート反応性)。好ましいイソシアネート反応性基は、カルボキシ、チオール、ヒドロキシ又はアミノから選択され、更に好ましくは、ヒドロキシ又はアミノから選択される。有用なものとしては、イソシアネート反応性化合物はモノール(即ち、1つのヒドロキシを、任意選択的に、反応条件下でイソシアネートと実質的に反応しないその他の官能性と一緒に含む)である。更に有用なモノールは、本明細書に記載されているいずれかのα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体のいずれかの適当なモノヒドロキシ置換誘導体及び/又は本明細書に記載されているいずれかの安定剤を含む。
【0047】
最も有用なものとしては、モノールは、(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシエチルアクリレートを含み得、及び/又はSoprophor BSU、Soprophor S/40界面活性剤(共にRhodia社製)、及び/又はメトキシポリエチレングリコール(MPEG、Dow社製)を含み得る。
【0048】
アルファ(α),ベータ(β)−エチレン系不飽和ポリマー前駆体(複数可)(例えば、(メタ)アクリレートモノマー(複数可))
本発明の方法で使用され得るα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体がここに記載される。
【0049】
以下に記載されるα,β−エチレン系不飽和モノマーは異なる様式で使用され得るもので、例えば、これらのモノマーは:
本発明のミニエマルション方法(例えば、工程(b)(ii))で使用されるα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体(複数可)のいくらか又は全部を含み得る;
重合可能なポリマー及び/又はオリゴマー(そこにα,β−エチレン系不飽和基(複数可)をもつ)を形成するために重合され得る(任意選択的に別々の工程で)、従って、本発明のミニエマルション方法(例えば、工程(b)(ii))で使用されるα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体のいくらか又は全部を含み得る;及び/又は
本発明のミニエマルション方法(例えば、工程(b)(i))での使用に適した官能性ポリウレタンポリマー(複数可)を調製するための本発明のイソシアネート方法で使用されるα,β−エチレン系不飽和成分(3)を含み得る。
【0050】
本発明の方法(複数可)で使用されるα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体の量は、一般的に、約10重量%〜約70重量%、好ましくは、約18重量%〜約60重量%の量で存在し得る。別途指示しない限り、本発明のミニエマルション方法では、これらのポリマー前駆体の重量は、工程(e)で調製されるミニエマルションの全重量に関して計算され、本発明のイソシアネート方法では、成分(1)、(2)及び(3)の全重量に関して計算される。
【0051】
有用なα,β−エチレン系不飽和モノマーは、以下の1つ又は複数及び/又はこの混合物及び組合せを含む:
アルキル(メタ)アクリレート、更に好ましくは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート及び/又はラウリルメタクリレート、最も好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレート、
重合可能な芳香族化合物;更に好ましくは、スチレン類、最も好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及び/又はt−ブチルスチレン、
重合可能なニトリル;更に好ましくは、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル、
重合可能なアミド化合物、
α−オレフィン化合物、例えば、エチレン等、
ビニル化合物;更に好ましくは、ビニルエステル(最も好ましくは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び/又は長鎖ビニルエステル同族体)、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル(最も好ましくは、塩化ビニル)及び/又はハロゲン化ビニリデン、
ジエン化合物、更に好ましくは、ブタジエン及び/又はイソプレン、
フッ素及び/又はケイ素原子を含むα,β−エチレン系不飽和モノマー、更に好ましくは、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート及び/又はトリメチルシロキシエチルアクリレート。
【0052】
有利なα,β−エチレン系不飽和モノマーは、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン、ジエン、ビニルエステル並びにこれらの混合物から;更に有利なものとして、メチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブタジエン及び塩化ビニルから選択される。
【0053】
任意選択的に、本発明の工程(b)(ii)でのポリマー前駆体第2混合物は、以下に定義される次のモノマーのいずれかの組合せを含み得る(任意選択的に、既に記載したα,β−エチレン系不飽和モノマーのいずれかとの組合せで):
(i)少なくとも1つの疎水性ポリマー前駆体(成分I)、
(ii)少なくとも1つの親水性ポリマー前駆体(成分II);
(iii)少なくとも1つの部分的に親水性のポリマー前駆体(成分III);及び/又は
(iv)環状アミド部分を含む少なくとも1つのポリマー前駆体(成分IV)。
【0054】
別途指示されない限り(例えば、成分I内のアリールアリールアルキレンの量に対しては)、以下のモノマーに対して本明細書で記載されているすべての重量は、これらのモノマー(成分I、II、III及びIV)の全重量による重量パーセントとして与えられる。
【0055】
成分I(例えば、疎水性モノマー)
成分Iは、少なくとも1つの活性化不飽和部分(都合よくは少なくとも1つの疎水性(メタ)アクリレートモノマー)を含む少なくとも1つの疎水性ポリマー前駆体及び/又はアリールアルキレンポリマー前駆体を含み、都合よくは、から本質的に成る。
【0056】
好ましくは、疎水性(メタ)アクリレートは、C>4ヒドロカルボ(メタ)アクリレート(複数可)を含み、都合よくは、C>4ヒドロカルボ部分は、C4〜20ヒドロカルビル、更に都合よくは、C4〜14アルキル、最も都合よくは、C4〜10アルキル、例えば、C4〜8アルキルであり得る。適当な疎水性(メタ)アクリレート(複数可)は、イソオクチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート及び/又はこれらの混合物、特に、2−エチルヘキシルアクリレート及び/又はn−ブチルアクリレート、例えば、2−エチルヘキシルアクリレートから選択される。
【0057】
好ましくは、アリールアルキレンは、(任意選択的にヒドロカルボ置換した)スチレンを含み、都合よくは、任意選択的ヒドロカルボは、C1〜10ヒドロカルビル、更に都合よくは、C1〜4アルキルであり得る。
【0058】
適当なアリールアルキレンモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン及び/又はこれらの混合物、特にスチレンから選択される。
【0059】
アリールアルキレンモノマーは、成分I(全疎水性モノマー)において、成分Iの全重量当り約30%まで、好ましくは、約1%〜約20%、更に好ましくは、約5%〜約15%で存在し得る。
【0060】
現に好ましい成分Iは、2−エチルヘキシルアクリレート及び/又はn−ブチルアクリレートとスチレンとの混合物、更に好ましくは、2−エチルヘキシルアクリレートとスチレンとの混合物である。
【0061】
成分Iは、合計量で約70重量%〜約90重量%、好ましくは、約75重量%〜約85重量%で存在し得る。
【0062】
成分II(例えば、親水性モノマー)
成分IIは、成分Iの疎水性ポリマー前駆体(複数可)と共重合可能で、水溶性であるものである適当な親水性ポリマー前駆体を含む。都合よくは、少なくとも1つの疎水性ポリマー前駆体は少なくとも1つの活性化不飽和部分を含み得る。
【0063】
好ましい親水性モノマーは、少なくとも1つのエチレン系不飽和カルボン酸を含み、有利には、少なくとも1つのエチレン系不飽和カルボン酸から本質的に成る。更に好ましい酸は1つのエチレン性基及び1つ又は2つのカルボキシ基を有する。最も好ましい酸(複数可)は、アクリル酸(及びこのオリゴマー)、ベータカルボキシエチルアクリレート、シトラコン酸、クロトン酸、フマール酸、イタコン酸、マレイン酸、メタクリル酸及びこれらの混合物、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ベータカルボキシエチルアクリレート及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0064】
現に好ましい成分IIは、ベータカルボキシエチルアクリレート及びアクリル酸の混合物である。
【0065】
成分IIは、合計量で、少なくとも約1重量%、好ましくは、約2重量%〜約10重量%、更に好ましくは、約3重量%〜約9重量%、最も好ましくは、約4重量%〜約8重量%で存在し得る。
【0066】
成分III(部分的親水性モノマー)
成分IIIは、部分的親水性ポリマー前駆体(複数可)及び/又は部分的水溶性モノマーを含み、都合よくは、少なくとも1つの活性化不飽和部分を含み得る。
【0067】
好ましい部分的親水性モノマーは、少なくとも1つのC1〜2アルキル(メタ)アクリレートを含み、都合よくは、少なくとも1つのC1〜2アルキル(メタ)アクリレートから本質的に成る。更に好ましい部分的親水性モノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びこれらの混合物、最も好ましくは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート及びこれらの混合物から成る群から選択され、例えば、エチルアクリレートから選択される。
【0068】
現に好ましい成分IIIはエチルアクリレートである。
【0069】
成分IIは、合計量で、10重量%まで、好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%、更に好ましくは、約0.1重量%〜約3重量%、最も好ましくは、約0.5重量%〜約2.5重量%で存在し得る。
【0070】
成分IV(環状アミドモノマー)
環状アミド部分をもつ好ましいモノマーは式4で表される:
【化1】


(式中、
Yは電気陰性基を表し、
はH、OH又は任意選択的にヒドロキシ置換されたC1〜10ヒドロカルボであり、
はH又はC1〜10ヒドロカルボであり、
は、少なくとも1つの活性化不飽和部分で置換したC1〜10ヒドロカルボ基であり、
Aは、HN及びY部分の両方に結合した2価オルガノ部分を表し、従って、A、NH、C=O及びY部分は、4〜8個の環原子を有する環を一緒になって表し、R及びRは、環上のいずれかの適当な位置に結合し、又は
Aは、存在せず(即ち、式4は直鎖及び/又は分枝であり、複素環式環を含まない)、この場合、R及びRはR部分に結合し、
xは1〜4の整数である)。
【0071】
都合よくは、成分IVは、本明細書で定義される式4の少なくとも1つのモノマーから本質的に成る。
【0072】
有用なものとしては、式においてAの環部分(複数可)はそれぞれRへ結合し、式4において、xが2、3又は4の場合、Rは多価(xの値に依存する)である。xが1でない場合は、R及びYは、それぞれの環において同じか異なる部分、好ましくはそれぞれの環において同じそれぞれの部分をそれぞれに表し得る。R及びRは環上のいずれかの適当な位置へ結合し得る。
【0073】
式4の好ましいモノマーは:
Aが、任意選択的に置換した2価C1〜6ヒドロカルビレンを表し、
Yが2価NR’(ここで、R’は、H、OH、任意選択的にヒドロキシ置換したC1〜10ヒドロカルボ又はRである)又は2価のOであるものを含み、都合よくは、から本質的に成り、
式4の更に好ましいモノマーは:
xが1又は2であり、
YがNRであり(即ち、式1が環窒素を介してRへ結合する場合)、
Aが2価C1〜3ヒドロカルビレンを表し、
がHであり、
がC1〜10ヒドロカルボであり、
が、(メタ)アクリロキシヒドロカルボ基又はこの誘導体(例えば、無水マレイン酸)を含むものを含み、
式4の最も好ましいモノマーは:
xが1又は2であり、式1での(任意選択的に繰返す)単位が、式6
【化2】


(式中、星印は、R(環上のいずれかの適当な位置に、好ましくは、環窒素を介して存在し得る)への式6の結合点を表す)で表され、
がH又はC1〜8ヒドロカルビルであり、
が(メタ)アクリロキシC1〜10ヒドロカルボ基を含むものを含む。
式4の更に好ましいモノマーは:
【化3】


(式中、RはH又はC1〜8アルキルであり、Lは適当な2価オルガノ結合基(例えば、C1〜10ヒドロカルビレン、例えば、C1〜6アルキレン)である)を含む。
【0074】
式4の更に適当なウレイドモノマーは、参照として本明細書に組み込まれる「ラテックス塗料での使用のための新規な湿式接着モノマー(Novel wet adhesion monomers for use in latex paints)」、Singh et al.、Progress in Organic Coatings、34(1998年)、214頁〜218頁、(特に、2.2及び2.3章を参照されたい)及びEP0629672(National Starch)に記載されている。
【0075】
式4のモノマーの例は、
【化4】


(Atofina社からSipomer(登録商標)WAM IIの商標で市販されている)及びこの適当な混合物から選択される。
【0076】
本発明の同じ及び/又は別の実施形態では、米国特許第6,166,220号(Cytec Technology Corporation、この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されているモノマーが、本明細書の成分IV及び/又は式4のすべて又は一部を含むために使用され得る、及び/又は本発明の配合物にも導入され得る。好ましくは、そのようなモノマーは、米国特許第6,166,220号の第2欄25行の式「B(C=O)Y(C=O)A」で表される(ここで、B、Y及びAはそこに記載されている通りである)。そのようなモノマーは、Cylink(登録商標)の登録商標の下でCytec社から市販されている。適当なそのようなモノマーの例は、次の商標表示の下で入手できるものである:Cylink(登録商標)NMA及び/又はNMA−LF(自己架橋モノマー)、Cylink(登録商標)IBMA(Cylink(登録商標)NMAのイソブトキシ誘導体)、Cylink(登録商標)MBA、Cylink(登録商標)NBMA、Cylink(登録商標)TAC及び/又はCylink(登録商標)C4(湿式接着モノマー)。
【0077】
都合よく、成分IVは、式1の実質的に純粋な化合物(又は化合物の混合物)として使用され得るし、又は適当な(メタ)アクリレート若しくはアクリル誘導体、例えば、メチルメタクリレート等の適当な溶剤に溶解され得る。任意選択的に、そのような溶液は約50重量%〜約75重量%の成分IVを含み得る。
【0078】
成分IVは、少なくとも約0.1重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約2.0重量%、更に好ましくは、約0.2重量%〜約1.0重量%、最も好ましくは、約0.3重量%〜約0.6重量%の合計量で存在し得る。
【0079】
安定剤
本明細書で使用される「安定剤」という用語は、本発明で使用される又は本発明の分散体の安定性を増加するために使用されるいずれかの適当な種を表し、「安定剤」という用語は、その他の用語、例えば、コロイド安定剤、洗剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤及び/又は表面活性剤(例えば、その表面張力を減少することによりその拡散性又は湿潤性を増加するために液体へ添加し得るいずれかの物質)、湿潤剤及び/又は先のいずれかと同様の若しくは類似する機能を発揮する同様の若しくは類似の種を参照するために当業者によく知られたその他の用語でも参照し得るいずれかの種の1つ又は複数を含む。
【0080】
使用される安定剤の量は、本明細書に記載されている平均粒径を有する粒子を有するラテックスエマルションを製造するのに有効な量である。必要とされる粒径を得るために必要な有効量は、攪拌(剪断)、粘度等を含めて粒径に影響を及ぼす当技術分野で公知の操作条件に依存する。安定剤は、プレエマルションを形成するために、重合の開始時に、重合中にバッチで及び/又はモノマーと一緒に添加することができる。
【0081】
本発明のミニエマルション方法の工程(a)では、任意選択的に親水性安定剤(複数可)が使用され得る。
【0082】
有用なものとしては、安定剤は親水性界面活性剤を含み、更に有用なものとしては、少なくとも1つのイオン性界面活性剤を、任意選択的に少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と一緒に含む。最も有用なものとしては、イオン性界面活性剤は、少なくとも1つの芳香族イオン性界面活性剤を含み得る。
【0083】
任意選択的に、芳香族イオン性界面活性剤(a)(i)及び/又は(a)(iii)の少なくとも1つは、約8〜約20、好ましくは、約10〜約18、更に好ましくは、約12〜約17、例えば、約16のHLB値を有する。
【0084】
都合よくは、芳香族イオン性界面活性剤の少なくとも1つは、式1
【化5】


(式中、Ar及びArは、独立に、それぞれの場合において、芳香族部分を含むC8〜18ヒドロカルボをそれぞれ表し、
Lは、2価オルガノ結合基又は直接結合であり、任意選択的に、Ar及びArは一緒になって結合環を形成してもよく、
は、任意選択的に置換したC1〜8ヒドロカルビレン、更に好ましくはC1〜6アルキレンであり、
及びXは、独立に、それぞれの場合において、O、S、CH、NH又はNR(ここで、Rは、任意選択的に置換したC1〜20ヒドロカルビル、更に好ましくはC1〜10アルキルを表す)をそれぞれ表し、
Aは、S(O)1〜3又はP(O)1〜3部分を表し、qは1〜3であり、
Cは適当な対カチオンであり、pは電荷qとバランスを取り、
mは、1〜70、好ましくは、5〜60、更に好ましくは、10〜50、最も好ましくは、10〜30、例えば、約16の整数を表し、
nは、1〜6、任意選択的に1〜3の整数を表す)で表される。
【0085】
更に都合よくは、式1の少なくとも1つのイオン性界面活性剤は、式1a
【化6】


(式中、L、R、X、X、A、C、q、p、n及びmは、式1で与えられた通りであり、Rは、任意選択的に置換したC1〜8ヒドロカルビレン、更に好ましくはC1〜6アルキレンである)で表される。
【0086】
更に好ましくは、式1aでは、
L、R及びRは、独立に、それぞれの場合において、C1〜4アルキレン、更に好ましくは、−CHCH(CH)−、−CH(CH)−又は−CHCH−であり、
及びXは、独立に、それぞれの場合において、O、S、NH又は−N(C1〜6アルキル)−、最も好ましくは、Oであり、
Aは、S(O)又はP(O)であり、qは1であり、
Cは、適当な対カチオンであり、任意選択的にpは1であり、
nは、1〜3、更に好ましくは、3であり、mは10〜30、最も好ましくは、10〜20である。
【0087】
式1及び1aの最も好ましい界面活性剤は、スチレンとフェノールとの反応と、得られたアルコキシル化複数スチリル置換フェノール(例えば、トリスチリルフェノール及び/又はこの誘導体等)のその後のリン酸化及び/又は硫酸化により得られる及び/又は得ることができるものである。
【0088】
式1及び1aの特に好ましいトリスチリルフェノールイオン性界面活性剤は、Rhodia社から次の商標表示下で入手できるものである:
Soprophor 3D−33(エトキシル化ホスフェートエステル遊離酸)、
Soprophor 3D−33/LN(低非イオン性エトキシル化ホスフェートエステル遊離酸)、
Soprophor 3D−FLK(エトキシル化ホスフェートエステルカリウム塩)、
Soprophor 3D−FL(エトキシル化ホスフェートTEA(トリエチルアミン)塩)、
Soprophor 3D−FL−60(エトキシル化ホスフェートTEA(トリエチルアミン)塩)、
Soprophor 4D−384(エトキシル化スルフェート、アンモニウム塩)、
Soprophor 4D−360(エトキシル化スルフェート、アンモニウム塩)、及び/又はこれらのいずれかの適当な混合物。
【0089】
一例としての界面活性剤は、
【化7】


((カチオンがアンモニウムである場合は)、Rhodia社からSoprophor 4D384の商標表示下で入手できる)で表され得る。
【0090】
代替的実施形態では、King Industries社から市販されているアルキレンナフチルスルホネートの、任意選択的に置換した誘導体がイオン性界面活性剤として使用され得る。
【0091】
都合よくは、更なる芳香族イオン性界面活性剤(a)(iii)は、式2
【化8】


(式中、
は、O、S、CH、NH又はNR10(ここで、R10は、任意選択的に置換したC1〜20ヒドロカルビル、更に好ましくはC1〜10アルキルを表す)を表し、
〜Rの基の1〜4個(好ましくは、1〜2個)は、硬い酸から形成される少なくとも1つの電気陰性置換基であり、好ましくは、1価オキシ置換したスルホアニオン、及び/又は1価オキシ置換したホスホアニオン、更に好ましくは、−S(O)1〜3Q−又はP(O)1〜3Q−部分(ここで、Qは1〜3である)から選択され、R〜Rの残りは、独立に、H又はC1〜30ヒドロカルビル、好ましくは、H又はC1〜20アルキレンであり、
P+は対カチオン(ここで、「P」は「Q」である)である)で表され得る。
【0092】
式2の特に好ましいイオン性界面活性剤は、ジナトリウムモノ及びジドデシルジフェニルオキシドジスルホネート、例えば、
【化9】


及び/又はこれらの混合物等、例えば、DPOS−45の商標表示下でCytec社から入手できる混合物等である。
【0093】
代替的任意選択的更なるイオン性界面活性剤(複数可)は、次式
【化10】


(式中、Eは電気陰性基、好ましくは、SO又はPOであり、Lは、3価オルガノ結合基、好ましくは、C1〜4アルキレンであり、R’及びR”は、独立に、それぞれH又は任意選択的に置換したC1〜30ヒドロカルビルである)のものを含む。
【0094】
更に好ましい任意選択的その他のイオン性界面活性剤は、
【化11】


で表される。
【0095】
そのような任意選択的その他のイオン性界面活性剤の例は、ナトリウムジオクチルスルホスクシネート(Aerosol OTの商標名でCytec社から市販されている)である。
【0096】
式1及び/又は1aの界面活性剤は、式2及び/又は2aのものよりも好ましく、有効なものとしては、界面活性剤混合物は式1及び/又は1aの少なくとも1つの界面活性剤を含む。
【0097】
界面活性剤混合物は、強酸から形成される少なくとも1つの電気陰性置換基で置換したポリカルボン酸及び/又はエステルから選択される、好ましくは、1価オキシ置換したスルホアニオン及び/又は1価オキシ置換したホスホアニオンから選択される別のイオン性界面活性剤を任意選択的に更に含み得る。
【0098】
本発明のミニエマルション方法の工程(a)で水性第1混合物を調製するために使用され得る界面活性剤の特に好ましい混合物は:
トリスチリルフェノールエトキシレート(複数可)(例えば、Soprophor 4D384)、
脂肪族非イオン性界面活性剤(複数可)(例えば、アルコキシポリアルキレングリコール(複数可)等、例えば、Abex 2535)、及び
脂肪族イオン性界面活性剤(複数可)(例えば、ナトリウムジオクチルスルホスクシネート−Aerosol−OT−75等)の混合物を含む。
【0099】
本明細書に記載のイオン性界面活性剤の非イオン性均等物は安定剤(例えば、アリールフェノールアルコキシレート(複数可))として使用され得る。上記式(例えば、式1、1a及び1b)でアニオン性置換基がヒドロキシ又はHで置換されている非イオン性トリスチリルフェノール界面活性剤であるこれらの化合物は、本明細書で安定剤としての使用にとって特に好ましいものであり得る。例えば、式1bでスルホ基がHで置き換えられている場合、そのようなトリスチリルフェノール化合物(Rhodia社からSoprophor BSUの商標表示の下で入手できる)は、本明細書でモノール成分として使用され得る。EO繰返し単位が40である類似体モノール化合物(Rhodia社からSoprophor S/40の商標表示の下で入手できる)も使用され得る。
【0100】
任意選択的非イオン性界面活性剤は、いずれかの適当な、例えば、式3
11−X−(Z−XH 式3
(式中、
11は、任意選択的に置換したC1〜50ヒドロカルビル、更に好ましくは、C1〜30アルキル、更に好ましくは、C1〜20アルキルを表し、
及びXは、独立に、それぞれの場合において、O、S、CH、NH又はNR12(ここで、R12は、任意選択的に置換したC1〜20ヒドロカルビル(任意選択的にC1〜10アルキル)を表す)をそれぞれ表し、更に好ましくは、X及びXは、独立に、O、S、NH又は−N(C1〜6アルキル)−、最も好ましくはOであり、
Zは、C1〜4アルキレン、更に好ましくは、−CHCH(CH)−、−CH(CH)−若しくは−CHCH−、
【化12】


を表し、
「W」は、1〜50、好ましくは、1〜30、更に好ましくは、5〜20の整数を表す)の脂肪族非イオン性界面活性剤等であり得る。
【0101】
特に好ましい非イオン性界面活性剤は、Rhodia社からAbex 2535の商標表示下で入手できる脂肪族非イオン性界面活性剤のこれらの混合物である。
【0102】
モノマーの全重量を基準にした、本発明のエマルションを作製するために使用される界面活性剤の合計量は、工程(b)で使用される成分の約0.1〜約5重量%、好ましくは、約0.5〜約2重量%である。
【0103】
本発明のミニエマルション方法の工程(b)では、任意選択的に、共安定剤(複数可)は、いずれかのその他の適当な安定剤(複数可)との組合せで任意選択的に使用され得る。工程(b)で使用される共安定剤は、ポリマー、界面活性剤及び/又はコロイド安定剤の混合物を含み得る。好ましくは、共安定剤は疎水性である。
【0104】
共安定剤は複数の共安定剤を含んでもよく、任意選択的にその内の少なくとも1つは反応性である(即ち、その後の重合に加わる)。反応性共安定剤(複数可)は、追加の非反応性共安定剤(複数可)と一緒に又はそれを伴わずに使用することができる。
【0105】
好ましい反応性共安定剤は、次の1つ又は複数を含む:
疎水性(コ)モノマー、更に好ましくは、アクリレート、最も好ましくは、ステアリルアクリレート及び/又は長鎖(メタ)アクリレート、
マクロモノマー;
疎水性連鎖移動剤、更に好ましくは、ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン及び/又はその他の長鎖メルカプタン;
疎水性開始剤、更に好ましくは、2,5−ジメチル−2−5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン及びその他の長鎖(ヒドロ)ペルオキシド、及び/又はアゾ開始剤
いずれかの両親媒性安定化ポリマー及び/又はWO04/069879に記載されている疎水性共安定剤;
適当な炭化水素ポリマー、例えば、ポリスチレン(PS)及び/又はポリメチルメタクリレート(PMMA)及び/又は
これらの適当な混合物及び/又は組合せ。
【0106】
有用なものとしては、共安定剤(複数可)は、C12〜24アルカン(特に、ヘキサデカン)、C12〜24アルコール、C18〜22アクリレート(特に、Atofina社からNorsocryl(商標)A−18−22の商標名で市販されているアクリレートの混合物);及び/又はこれらの混合物から選択される。
【0107】
都合よく、(コ)モノマーは、共安定剤及びα,β−エチレン系不飽和モノマーとして両方共に機能するものから選択されてよく、いずれの場合でもそのような(コ)モノマー(複数可)の量は約70重量%と高いものであることができる。一般的に、共安定剤は約0.05重量%〜約40重量%の量で添加され得る。特に、共安定剤が(コ)モノマーではない場合、共安定剤の量は、好ましくは、約0.1重量%〜約10重量%、更に好ましくは、約0.2重量%〜約8重量%、最も好ましくは、約0.5重量%〜約5重量%である。本明細書で使用される共安定剤の重量は、本発明の方法の工程(b)で調製されるポリマー前駆体混合物の全重量に関して計算される。
【0108】
方法
本発明のプロセス工程についての更なる任意選択的特徴は以下で与えられる。
【0109】
本発明の方法の各工程は、独立に、使用される試薬に依存して選択されるいずれかの適当な条件下で実施され得る。都合よく、いずれの工程も、種々の混合物(複数可)及びそこに存在する成分の凝固点及び沸点との間のいずれかの適当な温度、更に都合よくは、約0℃〜約100℃、最も都合よくは、凡そ室温で実施され得る。都合よく、工程は、約0.01〜約100気圧、更に都合よくは、凡そ大気圧の圧力下で実施され得る。
【0110】
水性の第1混合物(例えば、親水性安定剤の溶液)を形成する工程(a)
本発明の方法のなお更なる態様によれば、α,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)に加えて、1つ又は複数の水溶性モノマー(本明細書では、第2モノマーとして表示される)が、工程(b)中に形成される水性混合物へ添加され得る。これらの任意選択的第2モノマーは、付加重合を受けることのできるエチレン系不飽和有機化合物を含み得る。好ましい第2モノマーは、約15%よりも高い水溶解度(25℃で測定した、水100g当りに溶解したモノマーのグラム数の割合として)を有する。都合よく、第2モノマーは、少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマーの存在だけで、及びそのようなモノマー混合物において少割合でのみ使用し得る。好ましくは、そのようなモノマー混合物における任意選択的第2モノマーの量は、全モノマー重量に関して約10重量%未満、更に好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%、最も好ましくは、約0.1重量%〜約3重量%である。
【0111】
好ましい第2モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、2−スルホエチルメタクリレート、及び/又は無水マレイン酸である。本発明の方法で第2モノマーを使用することにより、得られるポリマー分散体から製造されるコーティングに対して所望の性質を与えることができる。
【0112】
工程(a)での水性第1混合物の形成は、約0℃〜約100℃の温度、好ましくは、凡そ室温で実施される。
【0113】
工程(a)で形成される混合物は、また、pHを変更する1つ又は複数の成分を含み得るが、これは必ずしも必要ではない。例えば、水性混合物がカルボン酸基を伴う安定化両親媒性ポリマーを含む場合(以下を参照されたい)、安定化ポリマーが所望の両親媒性を示すように高いpHでミニエマルションを調製し且つ重合することが有用であり得る。そのようなカルボン酸官能性ポリマーに対しての適当なpH範囲は、両親媒性ポリマーのその他の成分の性質によって、約6.0〜約10.0、好ましくは、約7.5〜約10.0であり得る。安定化ポリマーが、スルホン酸、スルフェート、ホスフェート又はホスホネートから誘導される酸官能を含む場合、pHの適当な範囲は約2.0〜約10.0であり得る。
【0114】
pHを調整することのできる化合物は、アンモニア、アミン(例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヒドロキシプロパン)、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム)、重炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)及び/又は酸化物(例えば、酸化カルシウム)を含み得る。好ましいpH調整化合物は強塩基であり、任意選択的に、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム等)及び/又はアンモニアから選択される。
【0115】
pH調整化合物は、本発明の方法の工程(a)中に、好ましくは、両親媒性ポリマーが混合物へ添加される前に添加され得る。
【0116】
プレ混合物から水性第1混合物を任意選択的に調製すること
本発明の方法のなおその他の態様では、工程(a)で、水性第1混合物は、両親媒性安定化ポリマー及び水を含む第1プレ混合物と、疎水性共安定剤及びα,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)を含む第2プレ混合物とを混合することによって都合よく形成され得る。
【0117】
第1プレ混合物は、両親媒性安定化ポリマーを水に対して、好ましくは、約0℃〜約100℃の温度で添加し、次いで、1つ又は複数の任意選択的成分(本明細書に開示されているもので且つ開示されている量で)、例えば、第2水溶性モノマー(複数可)、pH調整化合物(複数可)及び/又は重合開始剤(複数可)等の添加によって調製され得る。
【0118】
第1プレ混合物がカルボン酸官能(複数可)を含む両親媒性安定化ポリマーを使用して調製される場合、その場合は、pH調整化合物(複数可)は、第1プレ混合物(i)における両親媒性ポリマーの溶解度(25℃で測定した場合)を、少なくとも約1×10−2g/l、更に好ましくは、少なくとも約1×10−1g/l、最も好ましくは、少なくとも約1g/lに調整するために添加され得る。ポリマーが水及び第1プレ混合物のいずれかの任意選択的追加成分へ添加される前に、pH調整化合物を両親媒性ポリマーへ添加することが好ましい。
【0119】
第2プレ混合物は、所望量の疎水性共安定剤をα,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)へ、好ましくは、穏やかな攪拌下で添加することにより調製され得る。また、第2プレ混合物を室温で、更に好ましくは、透明な溶液が得られるまで調製することが好ましい。任意選択的に、1つ又は複数の第2水溶性モノマー(本明細書に開示されているもの)及び/又は重合開始剤も第2プレ混合物へ添加され得る。
【0120】
ポリマー前駆体第2混合物(例えば、(メタ)アクリレートモノマー、官能性ポリウレタン及び安定剤)を形成する工程(b)
一般的に、ポリマー前駆体第2混合物のために本明細書に記載されている成分は、適当な容器でいずれかの適当な手段で一緒に混合される。成分の選択によって、混合物は1つの均質な相を形成し得るし、また、連続且つ分散した相を伴う分散体又はエマルションを形成し得る。実質的に均質な混合物は、例えば、共安定剤及び官能性ポリウレタンがα,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)に実質的に溶解される場合に好まれる。
【0121】
プレエマルション(例えば、水中油マクロエマルション)を形成する工程(c)
水性第1混合物及び(任意選択的に疎水性)ポリマー前駆体第2混合物は、プレ(マクロ)エマルション、即ち、小滴がマクロサイズである場合のエマルションを形成するために、いずれかの適当な手段で一緒に混合され得る。プレエマルションは、連続水性相及び油小滴の分散相を含み得る。しかし、また、第2混合物が均質相(即ち、それ自体がエマルションである)を形成しない場合は、プレエマルションは複数層をもつ系を形成し得る、例えば、分散小滴は均質ではあり得ないが、それ自体は油小滴内に連続し且つ分散した相をもつエマルションを含むことは可能であることが理解される。例えば、プレエマルションは、3重相の水中油中水エマルションを形成し得る。そのような系に対して、本明細書に記載される小滴サイズは、主たる連続水性相に分散した大きな疎水性油小滴を意味する。
【0122】
ミニエマルションを(例えば、高剪断で)形成する工程(d)
好ましくは、本発明の方法では、プレエマルションは、約10〜約900nm、更に好ましくは、約50〜約500nm、最も好ましくは、約80〜約450nm、例えば、約100〜約430nmの平均径を有する安定化小滴を含む本質的に安定なミニエマルションが形成されるまで、任意選択的に高剪断下で混合される。
【0123】
小滴サイズは、本明細書では、脱イオン水(又は、好ましくは、ミニエマルション中に存在するモノマー(複数可)で飽和した脱イオン水)で希釈したミニエマルションのサンプルを使用して測定した。サンプルの平均小滴径は、動的光散乱を使用して、例えば、Coulter(商標)N4 Plus又はNicomp 380 ZLS装置で15分以内に直接決定した。
【0124】
本発明の工程(d)で、プレエマルション混合物は、適当な手段、例えば、ナノサイズ小滴を生成するために高応力等を適用することにより混合される。応力は単位面積当りの力として記載される。応力を働かせる1つの方法は剪断によるものである。剪断とは、力が、1つの層又は相を、隣接する層又は相に対して平行に移動させるようなものを意味する。応力は、また、応力がほとんど何らの剪断なしで働くようなバルク圧縮応力としてすべての側面から働かせることができる。応力を働かせる別の方法は、液体内の圧力が蒸発を引き起こすために十分に低下した時に生起するキャビテーションによるものである。蒸気泡の形成及び破裂は短時間で激しく起こり、強力な応力を生成する。応力を適用する別の方法は、超音波エネルギーの使用である。局在化高剪断を生成することのできる装置を、好ましくは、適度なバルク混合と一緒に使用することが好ましい。好ましくは、工程(d)で、ミニエマルションは、超音波処理、コロイドミル及び/又はホモジナイザーを使用して得られる。ミニエマルションを生成するために使用し得る市販の装置としては(例えば、その内のいくつかは、高剪断場を適用し得る)、ソニファイアー、マイクロ流体化器(maicro−fluidizer)、Manton−Gaulinホモジナイザー、スタテイックミキサー及び/又はロータステイター(rotastator)が挙げられる。十分なエネルギー入力を与えると、従来のマクロエマルション(例えば、本明細書に記載されている工程(c)で形成されるプレエマルション等)は、主にサブミクロン小滴を含むミニエマルションへ転換され得る。
【0125】
モノマーのミニエマルションは、混合物及びそこに存在する成分の凝固点及び沸点間のいずれかの温度、好ましくは、約5℃〜約50℃、更に好ましくは、約5℃〜約20℃で有効に形成され得る。
【0126】
本発明の方法の工程(d)は、水性連続相及びα,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)並びに任意選択的に疎水性安定剤を含む小滴の分散相を含む本質的に安定なミニエマルションを生成する。
【0127】
本質的に安定とは、十分に長い貯蔵寿命をもち、エマルション内に分散したモノマー(複数可)が、ミニエマルションが不安定化して相が分離を引き起こす前に小滴内で重合することができるミニエマルションを意味する。本発明の方法で得られるミニエマルションは、一般的に、24時間を超え、多くの場合数日を超える貯蔵寿命を有する。
【0128】
ミニエマルションを重合する工程(e)
ポリマー前駆体(例えば、α,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)等)の重合は、ミニエマルション内の小滴内で生起することが好ましい。
【0129】
重合は、当業者に公知のいずれかの適当な従来方法、例えば、熱及び/又は放射線等の適用により開始することができる。適当な放射線は、化学線及び/又は紫外(UV)線(任意選択的に、別の成分、例えば、光開始剤等の存在下で)及び/又はイオン化放射線(例えば、電子ビーム等)であり得るが、熱による重合が好ましい。開始の方法は使用される重合開始剤に依存し、当業者には容易に明らかである。
【0130】
ポリマー前駆体(複数可)は、一般的に、ラジカル重合条件下で、好ましくは、遊離基開始剤の存在下で重合される。重合開始剤は水溶性又は油溶性化合物であり得る。
【0131】
本明細書で使用されるα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体は、いずれかの適当な(好ましくは熱)開始剤(例えば、本明細書に記載されているもの等)の存在下で重合し得る。これらは、また、好ましくは、本明細書に記載される官能性ポリウレタンポリマー(例えば、脂肪族及び/又は芳香族ポリウレタン等)の存在下でも重合される。
【0132】
適当な遊離基開始剤は当技術分野ではよく知られていて、(非限定的に列挙すれば)例えば、有機過酸化物、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,5−ジメチル2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン及びジクミルペルオキシド等;水溶性(例えば、無機)過硫酸塩、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び/又は過硫酸アンモニウム等;アゾ開始剤、例えば、アゾビス−(イソブチロニトリル)(AIBN);アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル);及び/又は4,4’−アゾビス4−シアノ−ペンタン酸(V−501の商標表示下でWako Chemicals社から市販されている);水溶性過酸化物(例えば、過酸化水素、及びtert−ブチルヒドロペルオキシド)、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、硫酸アンモニウム第一鉄、エチレンジアミン四酢酸第二鉄;及び適当な還元剤と任意選択的に対と成ったもの、例えば、レドックス対、例えば、Fe2+/H、ROH/Ce4+(ここで、Rは有機基、例えば、C1〜6アルキル又はC5〜8アリール等)及び/又はK/Fe2+を含むもの等;tertブチルヒドロキシペルオキシド(「t−BHP」と略称され、「Luperox H70」の商標名でArkema社から又は「Trigonox A−W70」の商標名でAkzoNobel社から市販されている)、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート(「Rongalit C(登録商標)」の商標名でBASF社から市販されている);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(「Bruggolite FF−6」の商標名でBrueggeman Chemical社から市販されている);及び/又は、例えば、アスコルビン酸及び/又は1つ若しくは複数の重亜硫酸塩とのいずれかの対を含む。
【0133】
開始剤の一般的な濃度は、モノマーの全重量の約0.01重量%〜約1重量%、好ましくは、約0.01重量%〜約0.5重量%である。
【0134】
重合開始剤は、当技術分野で公知のいずれかの従来の方法で、例えば、重合工程前及び/又は途中で重合反応へ添加することができる。開始剤の溶解度によって、開始剤を水性第1混合物(例えば、工程(a)における)及び/又はポリマー前駆体第2混合物(例えば、工程(b)における)へ添加し得る。開始剤が(任意選択的に疎水性)ポリマー前駆体混合物の方に可溶であれば、開始剤は、好ましくは、ポリマー前駆体第2混合物へ添加される。しかしながら、開始剤が水性第1混合物の方に可溶であれば、プレエマルション混合物が開始剤を形成した後に(例えば、工程(c)の最後で)開始剤を添加することが好ましく又は更に好ましくは、工程(d)の最後で得られるミニエマルションへ添加される。水溶性開始剤の一部を、任意選択的に水溶性又は水分散性安定剤の有効量と一緒に工程(a)で水性第1混合物へ添加することが場合によって好ましい。開始剤の残部はミニエマルション重合中に連続的に又は漸進的に添加することができる。残りの開始剤を連続的に添加することが現に好ましい。
【0135】
本発明の重合工程(e)中に安定化ポリマーを両親媒性状態に保持するために、先に述べたpH調整化合物を、pHが重合中に低下する場合は特に更に添加することが必要であり得る。pHでのそのような低下は、過硫酸塩開始剤(例えば、過硫酸アンモニウム)の解離により及び/又は混合物に既に存在するいずれかのpH調整化合物が蒸発する(例えば、アンモニアが使用される場合)ことにより引き起こされ得る。工程(e)中で添加されるpH調整化合物(複数可)は、いずれかの先の工程中に添加されるいずれかと同じか異なっていてもよい。
【0136】
重合後に、ラテックスエマルションのpHは、また、pHを約5.5〜約9、更に好ましくは、約6.5〜約8、最も好ましくは、約7〜約8まで上げるのに必要な量の適当な塩基とラテックスエマルションを接触させることによっても調整され得る。ラテックスエマルションのpHを調整するための適当な塩基の例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウム、アミン等及びこれらの混合物が挙げられる。本発明での使用にとって現に好ましい塩基は水酸化アンモニウムである。
【0137】
重合はエマルション重合のできるいずれかの従来の反応容器で実施することができ、開始剤の選択によって広い温度範囲にわたって実施し得る。重合は、エマルション重合にとって一般的な温度、好ましくは、約20℃〜約95℃、更に好ましくは、約25℃〜約85℃、最も好ましくは、約50℃〜約80℃、例えば、約60℃〜約80℃の範囲、例えば、約70℃で実施することができる。
【0138】
重合時間は、その他の反応条件、例えば、温度プロフィール、及び反応成分、例えば、モノマー開始剤等に基づいた所望の転換率を達成するのに必要とされるその時間である。重合時間は、当業者には容易に明らかである。しかしながら、任意選択的に、ミニエマルションの重合は、約10分〜約24時間、更に普通には、約2〜約10時間、最も普通には、約4〜約6時間にわたって実施され得る。
【0139】
ポリマーラテックス
本発明は、また、本明細書に記載の本発明の方法で得られる及び/又は得ることのできる水性ポリマー分散体(また、ポリマーエマルション、ミニエマルション及び/又はポリマーラテックスとして本明細書では参照される)及びそのような分散体から集めることのできる(乾燥)ポリマーに関する。
【0140】
本発明の水性ポリマー分散体は、分散体が形成されたミニエマルション中の小滴の平均サイズとほぼ同じ平均径を有するポリマー粒子を含み得る。
【0141】
本発明の好ましいポリマーラテックスは、約10〜約900ナノメートル(nm)、更に好ましくは、約50〜約500nm、最も好ましくは、約50〜約400nm、例えば、約80〜約350nmの平均径を有する。本明細書の粒径は、光散乱等のいずれかの適当な方法で測定し得る数平均である。
【0142】
本発明の好ましい水性ポリマー分散体は、分散体の約25重量%〜約70重量%、更に好ましくは、約28重量%〜約60重量%、最も好ましくは、約30重量%〜約50重量%の固形分含有量を有する。
【0143】
一般的定義
活性化不飽和部分
「活性化不飽和部分」という用語は、少なくとも1つの活性化部分へ化学的に近接する少なくとも1つの不飽和炭素対炭素二重結合を含む種類を意味するために本明細書で使用される(例えば、式4でのRに対して)。好ましくは、活性化部分は、適当な求電子基によりそこへの付加のためにエチレン系不飽和二重結合を活性化するいずれかの基を含む。都合よく、活性化部分は、オキシ、チオ、(任意選択的にオルガノ置換した)アミノ、チオカルボニル及び/又はカルボニル基(後者の2つの基は、チオ、オキシ又は(任意選択的にオルガノ置換した)アミノで任意選択的に置換されている)を含む。更に好都合な活性化部分は、(チオ)エーテル、(チオ)エステル及び/又は(チオ)アミド部分(複数可)である。最も好都合な「活性化不飽和部分」は、1つ若しくは複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)カルボニル(チオ)オキシ」及び/又は1つ若しくは複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)−カルボニル(オルガノ)アミノ」基及び/又は類似体及び/又は誘導された部分、例えば、(メタ)アクリレート官能性及び/又はこの誘導体を含む部分を含むオルガノ種を示す「不飽和エステル部分」を含む。「不飽和エステル部分」は、チオ誘導体及びこの類似体を含めて、任意選択的に置換した総称的α,β−不飽和酸、エステル及び/又はこれらのその他の誘導体を任意選択的に含み得る。
【0144】
好ましい活性化不飽和部分は、式5
【化13】


(式中、n’は0又は1であり、Xはオキシ又はチオであり、Xはオキシ、チオ又はNR17(ここで、R17は、H又は任意選択的に置換したオルガノを表す)であり、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、式1の別の部分への結合、H、任意選択的置換基及び/又は任意選択的に置換したオルガノ基を表し、任意選択的に、R13、R14、R15及びR16のいずれかは結合して環を形成してもよく、R13、R14、R15及びR16の少なくとも1つは結合である)のラジカルで表されるもの、及びこのすべての適当な異性体、同じ種類でのこの組合せ及び/又はこの混合物である。
【0145】
本明細書での「活性化不飽和部分」;「不飽和エステル部分」という用語及び/又は式5は、本明細書では式の一部を表し、本明細書で使用されるこれらの用語は、部分が式において位置する場所によって1価又は多価(例えば、2価)であり得るラジカル部分を表す。従って、例えば、式4では、R13、R14、R15及びR16の少なくとも1つは単一共有結合を表す、即ち、式5が式4の残部へ結合した場合を表すことが理解されよう。
【0146】
式5(この異性体及び混合物を含めて)の更に好ましい部分は、n’が1であり、XがOであり、XがO、S又はNRであるものである。
【0147】
13、R14、R15及びR16は、独立に、結合、H、任意選択的置換基及び任意選択的に置換したC1〜10ヒドロカルボから選択され、任意選択的に、R15及びR16は結合して(これらが結合している部分と一緒に)環を形成してもよく、存在するR17はH及び任意選択的に置換したC1〜10ヒドロカルボから選択される。
【0148】
最も好ましくは、n’は1であり、XはOであり、XはO又はSであり、R13、R14、R15及びR16は、独立に、結合、H、ヒドロキシ及び/又は任意選択的に置換したC1〜6ヒドロカルビルである。
【0149】
例えば、n’は1であり、X及びXは共にOであり、R、R、R及びRは、独立に、結合、H、OH及び/又はC1〜4アルキルであり、又は任意選択的に、R及びRは一緒になって、2価C0〜4アルキレンカルボニルC0〜4アルキレン部分を形成してもよく、従って、式5は環状無水物(例えば、R15及びR16が一緒になってカルボニルである場合は、式5は無水マレイン酸又はこの誘導体を表す)を表す。
【0150】
n’が1であり、X及びXが共にOである場合の式5の部分に対しては、(R13及びR14)の1つがHであり、また、R13がHである場合は、式5は、アクリレート(R13及びR14が共にHである場合)及びこの誘導体(R13及びR14のいずれかがHではない場合)を含むアクリレート部分を表す。同様に、(R13及びR14)の1つがHであり、また、R15がCHである場合は、式5は、メタクリレート(R13及びR14が共にHである場合)及びこの誘導体(R13及びR14のいずれかがHではない場合)を含むメタクリレート部分を表す。式5のアクリレート及び/又はメタクリレート部分は特に好ましい。
【0151】
都合よく、式5の部分は、n’が1であり、X及びXが共にOであり、R13及びR14が、独立に、結合、H、CH又はOHであり、R15がH又はCHであり、R16がHであり又は、R15及びR16が一緒になって2価C=O基であるものである。
【0152】
更に都合よく、式5の部分は、n’が1であり、X及びXが共にOであり、R13がOHであり、R14がCHであり、R15がHであり、Rが結合及び/又はこの互変異性体(複数可)(例えば、アセトアセトキシ官能性種の)であるものである。
【0153】
最も好都合な不飽和エステル部分は、−OCO−CH=CH、−OCO−C(CH)=CH、アセトアセトキシ、−OCOCH=C(CH)(OH)及びこれらのすべての適当な互変異性体(複数可)から選択される。
【0154】
式5で表されるいずれかの適当な部分は、例えばその他の反応性部分等として本発明の文脈で使用することができることは理解される。
【0155】
本明細書で使用される「任意選択的置換基」及び/又は「任意選択的に置換した」という用語は(続いてその他の置換基が列挙されない限り)、次の基(又はこれらの基による置換)の1つ又は複数を表す:カルボキシ、スルホ、ホルミル、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、ニトリロ、メルカプト、シアノ、ニトロ、メチル、メトキシ及び/又はこれらの組合せ。これらの任意選択的基は、前述の基の複数(好ましくは2つ)の同じ部分でのすべての化学的に可能な組合せを含む(例えば、互いに直接結合してスルファモイル基を表す場合のアミノ及びスルホニル)。好ましい任意選択的置換基は、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、メチル、ハロ、トリハロメチル及び/又はメトキシを含む。
【0156】
本明細書で使用される同義語的用語「有機置換基」及び「有機基」(また、本明細書では「オルガノ」と略称されている)は、1つ又は複数の炭素原子及び任意選択的に1つ又は複数のその他のヘテロ原子を含むいずれかの1価又は多価部分(1つ又は複数のその他の部分へ任意選択的に結合している)を表す。有機基は、炭素を含む1価基を含み、従って、有機であるが炭素以外の原子においてこれらの自由原子価を有するオルガノヘテリル基(オルガノ元素基としても知られている)(例えば、オルガノチオ基)を含み得る。有機基は、官能タイプに関係なく、炭素原子に1つの自由原子価を有するいずれかの有機置換基を含むオルガニル基を選択的に又は付加的に含み得る。有機基は、また、複素環式化合物のいずれかの環原子から水素原子を除去することにより形成される1価基を含むヘテロシクリル基を含み得る(環構成原子として、少なくとも2つの異なる元素(この場合、1つは炭素である)を有する環状化合物)。好ましくは、有機基の非炭素原子は、水素、ハロ、燐、窒素、酸素、ケイ素及び/又は硫黄から選択されてもよく、更に好ましくは、水素、窒素、酸素、燐及び/又は硫黄から選択されてもよい。好都合な燐含有基は、ホスフィニル(即ち、「PR」基(ここで、Rは、独立に、H又はヒドロカルビルを表す))、ホスフィン酸基(複数可)(即ち、「−P(=O)(OH)」基)及びホスホン酸基(複数可)(即ち、「−P(=O)(OH)」基)を含み得る。
【0157】
最も好ましい有機基は、次の炭素含有部分の1つ又は複数を含む:アルキル、アルコキシ、アルカノイル、カルボキシ、カルボニル、ホルミル及び/又はこれらの組合せ、任意選択的に、次のヘテロ原子含有部分の1つ又は複数との組合せで:オキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、アミノ、イミノ、ニトリロ及び/又はこれらの組合せ。有機基としては、前述の炭素含有及び/又はヘテロ原子部分の複数(好ましくは2つ)の同じ部分ですべての化学的に可能な組合せが挙げられる(例えば、互いに直接結合してアルコキシカルボニル基を表す場合のアルコキシ及びカルボニル)。
【0158】
本明細書で使用される「ヒドロカルボ基」という用語は有機基のサブセットであり、1つ又は複数の水素原子及び1つ又は複数の炭素原子から成るいずれかの1価又は多価部分(1つ又は複数のその他の部分へ任意選択的に結合している)を表し、1つ又は複数の飽和、不飽和及び/又は芳香族部分を含み得る。ヒドロカルボ基は、次の基の1つ又は複数を含み得る。ヒドロカルビル基は、炭化水素から水素原子を除去することにより形成される1価基(例えば、アルキル)を含む。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2個の水素原子を除去することにより形成される2価基を含み、その自由原子価は二重結合にかかわらない(例えば、アルキレン)。ヒドロカルビリデン基は、炭化水素の同じ炭素原子から2個の水素原子を除去することにより形成される2価基(「RC=」で表され得る)を含み、その自由原子価は二重結合にかかわる(例えば、アルキリデン)。ヒドロカルビリジン基は、炭化水素の同じ炭素原子から3個の水素原子を除去することにより形成される3価基(「RC≡」で表され得る)を含み、その自由原子価は三重結合にかかわる(例えば、アルキリジン)。ヒドロカルボ基は、また、飽和炭素−炭素単結合(例えば、アルキル基における)、不飽和二重及び/又は三重炭素−炭素結合(例えば、それぞれにアルケニル及びアルキニル基における)、芳香族基(例えば、アリール基における)及び/又はこれらの組合せを同じ部分内に含んでもよく、必要に応じて、その他の官能基で置換され得る。
【0159】
本明細書で使用される「アルキル」という用語又はその均等物(例えば、「アルク」)は、必要に応じて及び文脈が明確に別途指示しない限り、いずれかのその他のヒドロカルボ基、例えば、本明細書に記載されているもの等(例えば、二重結合、三重結合、芳香族部分(例えば、それぞれに、アルケニル、アルキニル及び/又はアリール等)を含む)及び/又はこれらの組合せ(例えば、アラルキル)並びに2つ以上の部分を結合しているいずれかの多価ヒドロカルボ種(例えば、2価ヒドロカルビレン基等、例えば、アルキレン)を包含する用語で簡単に置き換え得る。
【0160】
本明細書で言及された(例えば、置換基として)いずれかの遊離基又は部分は、別途言及しない限り又は文脈が別途明確に指示しない限り多価又は1価基であり得る(例えば、2つのその他の部分を結合する2価ヒドロカルビレン部分)。しかしながら、本明細書で指示した場合は、そのような1価又は多価基は、なおまた、任意選択的置換基を含み得る。3個以上の原子の鎖を含む基は、鎖全体又は一部が、直鎖、分枝であり得る及び/又は環(スピロ及び/又は結合環を含む)を形成し得る基を表す。ある原子の合計数はある置換基を特定し、例えば、C1〜Nオルガノは1〜N個の炭素原子を含むオルガノ部分を表す。本明細書の式のいずれにおいても、1つ又は複数の置換基が、ある部分(例えば、鎖及び/又は環に沿った特定の位置で)のいずれかの特定の原子へ結合することが示されていない場合、置換基はいずれかのHを置換してもよく及び/又は化学的に適当な及び/又は有効な部分上のいずれかの利用可能な位置に配置されてもよい。
【0161】
好ましくは、本明細書に列挙されるオルガノ基のいずれもが、1〜36個の炭素原子、更に好ましくは、1〜18個の炭素原子を含む。オルガノ基の炭素原子の数は1〜12個、特に1〜10個(1と10を含む)、例えば、1〜4個の炭素原子であることが特に好ましい。
【0162】
本明細書に記載の式及び部分のいくつかは、ポリヘテロオルガノ、好ましくは、ポリオキシヒドロカルビレン、更に好ましくは、例えば、適当な非置換又は置換アルキレン基、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソブチレン等を含むことのできる繰返し単位のポリオキシアルキレンを含む。この文脈で、複数繰返し単位という用語は、本明細書に記載され且つ表されている部分は、ホモ、ブロック及び/又はランダムポリマー部分及び/又はこれらのいずれかの適当な混合物を表すために単独で及び/又は複数回生じる同じ及び/又は異なる繰返し単位を含み得ることを示すことが理解される。
【0163】
(アルキル)アクリレート、(メタ)アクリレート及び/又は(コ)ポリマー等の括弧内で与えられている特徴を含む本明細書で使用される化学的用語(特に同定された化合物に対するIUAPC名以外)は、括弧内のその部分が、文脈が示すように任意選択的なもので、従って、例えば、(メタ)アクリレートという用語はメタクリレート及びアクリレートの両方を表すことを意味する。
【0164】
本明細書に記載されている本発明の一部又は全部を含む及び/又は使用するある部分、種、基、繰返し単位、化合物、オリゴマー、ポリマー、材料、混合物、組成物及び/又は配合物は、次の非限定的列挙におけるいずれかのもの等の1つ又は複数の異なる形態として存在し得る:立体異性体(例えば、鏡像異性体(例えば、E及び/又はZ形)、ジアステレオ異性体及び/又は幾何異性体等)、互変異性体(例えば、ケト及び/又はエノール形)、コンフォーマー、塩、両性イオン、錯体(例えば、キレート、クラスレート、クラウン化合物、シプタンド(cyptand)/クリプテード(cryptade)、包接化合物、挿入化合物、格子間化合物、リガンド錯体、有機金属錯体、非化学量論的錯体、π−アダクト、溶媒和物及び/又は水和物等)、同位体置換形態、ポリマー配列[ホモ若しくはコポリマー、ランダム、グラフト及び/又はブロックポリマー、直鎖若しくは分枝ポリマー(例えば、星状及び/また側鎖分枝)、架橋及び/又はネットワークポリマー、2価及び/又は3価繰返し単位から得ることのできるポリマー、デンドリマー、異なる立体規則性のポリマー(例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックポリマー)等]、多形体(例えば、侵入形、結晶形及び/又は無定形等)、異なる相、固溶体及び/又は可能な場合のこれらの組合せ及び/又はこれらの混合物。本発明は本明細書で定義されている通りに有効なそのような形態のすべてを含み及び/又は使用する。
【0165】
本発明のポリマーは、有機及び/又は無機であり得る1つ又は複数の適当なポリマー前駆体で調製され得るものであり、本明細書で示されるように直接結合(複数可)を介して別のこの又はそれぞれのポリマー前駆体(複数可)で鎖延長及び/又は架橋を与えるためにこの又はそれぞれのポリマー前駆体(複数可)と結合を形成することのできる部分を含む、いずれかの適当な(コ)モノマー(複数可)、(コ)ポリマー(複数可)[ホモポリマー(複数可)を含む]及びこれらの混合物を含む。
【0166】
本発明のポリマー前駆体は、適当な重合可能な官能性を有する、1つ又は複数のモノマー、オリゴマー、ポリマー、これらの混合物及び/又はこれらの組合せを含み得る。
【0167】
モノマーは、重合することのできる低分子量(例えば、1000ダルトン未満)の実質的に単分散性化合物である。
【0168】
ポリマーは、重合方法で調製される大きな分子量(例えば、数千ダルトン)のマクロ分子の多分散性混合物であり、マクロ分子は小さな単位(自体がモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーであり得る)の複数反復を含み、(性質が分子構造の細部に決定的に依存しない限り)1つ若しくはいくつかの単位の付加又は除去はマクロ分子の性質への影響を無視できる。
【0169】
オリゴマーは、モノマーとポリマーとの間の中間分子量を有する分子の多分散性混合物であり、分子は小さな複数のモノマー単位を含み、1つ若しくはいくつかの単位の除去は分子の性質を著しく変動する。
【0170】
文脈によって、ポリマーという用語はオリゴマーを包含してもよく又は包含しなくてもよい。
【0171】
本発明のポリマー前駆体及び/又は本発明で使用されるポリマー前駆体は直接合成により又は(ポリマー前駆体がそれ自体ポリマーである場合は)重合により調製され得る。重合可能なポリマーがそれ自体、本発明のポリマー前駆体として及び/又は本発明で使用されるポリマー前駆体として使用される場合、そのようなポリマー前駆体は、このポリマー前駆体から形成されるいずれかのポリマー材料での副反応、副生成物の数及び/又は多分散性を最少化するために、低多分散性、更に好ましくは、実質的に単分散性を有することが好ましい。ポリマー前駆体(複数可)は、標準温度及び圧力で実質的に非反応性であり得る。
【0172】
本明細書で示した以外に、本発明のポリマー及び/又は高分子ポリマー前駆体及び/又は本発明で使用されるポリマー及び/又は高分子ポリマー前駆体は、当業者によく知られたいずれかの適当な重合手段で(共)重合することができる。適当な方法の例は、熱的開始、適当な作用剤を添加することによる化学的開始、触媒、及び/又は任意選択的開始剤の使用とその後の照射、例えば、適当な波長、例えばUV等での電磁放射線(光化学的開始)で、及び/又は電子ビーム、α粒子、中性子及び/又はその他の粒子等のその他の放射線のタイプによる開始を含む。ポリマー及び/又はオリゴマーの繰返し単位における置換基は、これらが本明細書に記載の使用のために配合され及び/又は導入され得るポリマー及び/又は樹脂を伴う材料の相溶性を改善するために選択される。従って、置換基のサイズ及び長さは、樹脂との物理的絡み又は相互配置を最適化するために選択され得るか、又はこれらは、必要に応じて、その他の樹脂等と化学的に反応及び/架橋することのできるその他の反応性体を含んでもよく又は含まなくてもよい。
【0173】
文脈が別途明確に指示しない限り、本明細書で使用される本明細書での用語の複数形は単数形を含み、逆もまた同様であるものと解釈される。
【0174】
本明細書で使用される「含む」という用語は、それに続くリストは非限定的で、必要に応じていずれかのその他の追加の適当な項目、例えば、1つ又は複数の更なる特徴、構成成分、成分及び/又は置換基を含んでもよく又は含まなくてもよいことを意味することが理解される。
【0175】
「有効な」、「許容される」、「活性な」及び/又は「適当な」という用語(例えば、必要に応じて、本発明の及び/又は本明細書に記載されているいずれかの方法、使用、手法、用途、調製、生成物、材料、配合物、化合物、モノマー、オリゴマー、ポリマー前駆体及び/又はポリマーに関する)は、正確な方法で使用される場合は、本明細書に記載されている通りに有用性であるためにこれらが付加され及び/又は導入される必要とされる性質を与える本発明のそれらの特徴を参照することが理解される。そのような有用性は、例えば、材料が前述の使用にとって必要とされる性質を有する場合は直接的であり及び/又は、例えば、材料が直接的有用性のその他の材料を調製する際の合成中間体及び/又は診断手段としての使用を有する場合は間接的であり得る。本明細書で使用されるこれらの用語は、また、官能基が、有効な、許容される活性な及び/又は適当な最終生成物を製造することと適合することを意味する。
【0176】
本発明の多数のその他の改変形態の実施形態は当業者には明らかであり、そのような改変形態は、本発明の広い範囲内で考慮される。
【0177】
本発明の更なる態様は特許請求の範囲で与えられる。
【実施例】
【0178】
本発明は、例示の目的だけの以下の非限定的実施例及び標準方法(複数可)を参照して詳細に記載される。
【0179】
種々の登録商標、その他の表示及び/又は略称は、本発明のポリマー及び組成物を調製するために使用されるいくつかの成分を表すために本明細書で使用される。これらは、化学名及び/又は商標名で、場合によっては、これらを入手することのできるこれらの製造業者若しくは供給者により以下の表で確認される。しかしながら、本明細書に記載の物質の化学名及び/又は供給者が与えられていない場合は、例えば、「McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents」、Rock Road、Glen Rock、N.J.07452−1700、USA、1997年及び/又はHawley’s Condensed Chemical Dictionary(14th Edition)by Lewis,Richard J.,Sr.;John Wiley & Sonsで簡単に見付けることができる。
【0180】
「AA」は、アクリル酸(CH=CHCOH)を表す。
Abex 2535は、この商標表示下でRhodia社から入手できる脂肪族非イオン性界面活性剤の混合物である。
AOT−75は、Aerosol OT(−75)の商標名下でCytec社から市販されているナトリウムジオクチルスルホスクシネートである。
「BHT」は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(ブチルヒドロキシトルエンとしても知られている)を表し、
「CEA」は、Sipomerの商標名下でRhodia社から市販されている、AAから形成されるオリゴマーのベータカルボキシエチルアクリレート(β−CEA)を表し、
「CN3001」は、この商標表示下でSartomer社から市販されているウレタンアクリレート、モノマー及び炭化水素樹脂の混合物を表す。
「DBTDL」は、ジブチル錫ジラウレートを表し、
「DM」は脱物質化水を表し、
「EA」はエチルアクリレートを表し、
「EB230」は、Ebecryl(登録商標)230の商標の下でCytec社から市販されているウレタンアクリレートを表し、
「EHA」は2−エチルヒドロキシアクリレートを表し、
「EO」はエトキシ(例えば、ポリエーテル部分での繰返し単位)を表す。
「HEA」は、ヒドロキシエチルアクリレートを表し、
「HQ」はヒドロキノンを表し、
「IPDI」はイソホロンジ−イソシアネートを表し、
「MEHQ」は4−メトキシフェノール(又は、メトキシヒドロキノンとしても知られている)を表し、
「Norsocryl 102」は、Arkema社からこの商標名で市販されている、メチルメタクリレート及び(2−メタクリロキシエチル)ヘテロ単環式(ウレイドモノマー)の75/25の混合物であり、
「PS」は、Piccolastic(登録商標)「A−75」の商標名でHercules社から市販されているもの等のポリスチレンを表し、
「SFS」は、Formoponの商標名でRohm & Haas社から市販されているナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート還元剤を表す。
「Soprophor BSU」は、アルキルフェノールエトキシレート(APE)のない非イオン性界面活性剤としてこの商標名でRhodia社から市販されているトリスチリルフェノールエトキシレート(EO単位の平均数が〜16である)を表す。
「Soprophor S40」は、アルキルフェノールエトキシレート(APE)のない非イオン性界面活性剤としてこの商標名でRhodia社から市販されているトリスチリルフェノールエトキシレート(EO単位の平均数が−40である)を表す。
「Soprophor 4D384」は、この商標名で、水中での25%分散体としてRhodia社から市販されている、本明細書で先に記載された構造をもつ芳香族エトキシル化スルフェートアンモニウム塩を表し、
「SPS」は過硫酸ナトリウム開始剤を表し、
「STY」はスチレンを表し、
「TBHP」は、Luperox H70又はTrigonox A−W70(それぞれに、Arkema社又はAkzoNobel社製)の商標表示下で、例えば、水30%中の70%TBHPとして市販されているtert.ブチルヒドロキシペルオキシドを表し、
「TMI」は、ジメチルメタ−イソプロペニルベンジルイソシアネート物質に対するCytec社の商標であり
「XSM5006」、「XSM5106」及び「XSM5206」は、これらの表示下でCytec社から入手できる種々の反応性ウレタンオリゴマーを表す。
【0181】
本発明の実施例は、以下の表での情報を参照して以下の本明細書に記載の一般的な方法の1つ又は複数により調製される。例えば、本発明のそれぞれの実施例を調製するために使用される成分は表で示される。
【0182】
一般的ポリウレタン合成1(PU1)
モノール(「A」、「a」g)を、乾燥窒素でパージした1リットルの反応容器へ添加する。次いで、容器内容物を90℃まで加熱し、調節物質を添加し(例えば、「B」、「b」g)、得られた混合物を70rpmの速度でミキサーで攪拌しながら、2官能イソシアネート(「C」、「c」g)を、100℃より低い反応温度を保持する速度で容器へゆっくりと添加する。この添加後に、混合物の温度が室温まで減少した場合、イソシアネート含有量が0.2%未満であるまで混合物のイソシアネート含有量を時間毎に測定する(NCO基の%として)。得られたポリウレタンを集め(任意選択的に、液体である場合は反応容器の外へ注ぐことにより)、表で与えられているように特徴付けした。
【0183】
一般的ポリウレタン合成2(PU2)
ジイソシアネート(「C」、「c」g)を、乾燥窒素でパージした1リットルの反応容器へ添加する。次いで、容器を水浴に置き、温度を18〜20℃に維持し、内容物を120rpmの速度でミキサーで攪拌する。モノール(「A」、「a」g)を容器に滴状添加し、反応温度を約20℃(しかし、25℃未満)に維持する。モノールを完全に添加した後、反応を一定期間(「h」、分)20℃で保持し、次いで、容器内容物を60℃まで加熱する。急激な温度増加を避けるために、更にモノール(「A’」、「a’」g)を、60℃で混合物へゆっくりと添加する。混合物は、任意選択的に更なる期間(「h」、分)60℃で保持し、その後に任意選択的更なるモノール(「A”」「a”g)を添加し得る。混合物の温度が室温まで減少した場合、イソシアネート含有量が0.2%未満であるまで混合物のイソシアネート含有量を時間毎に測定する(NCO基の%として)。得られたポリウレタンを集める(任意選択的に、液体として反応容器の外へ注ぐことにより)。
表1−ポリウレタン(PU)
【表1】


表1の脚注
1 実施例3は500mLの反応容器を使用する
表2−表1のPUの特徴付け
【表2】


表2の脚注
1 最終生成物は、1つのHEA分子及び1つのSoprophor BSU分子が1つのIPDI分子に結合している分子構造を有するオリゴマーを含むポリマー混合物の>50%を伴う分子量分布で複数ピークを有する。
【0184】
一般的PS調製
ミニエマルション(ME)を形成する工程(i)
ミニエマルションは、表3を参照して次の方法を使用して調製される。1つの適当な容器で、界面活性剤(「S」/「s」g)を水に完全に溶解し、「水性相」として本明細書で参照される混合物を形成する。別の適当な容器で、ポリマー(「P」/「p」g)を、初めに、アクリルモノマー(「M」/「m」g)の混合物に溶解し、「油相」として本明細書で参照される混合物を形成する。水性相及び油相をよく混合して、一般的に1〜10μm以上のサイズの範囲の分散相の小滴を含む、濃厚な白色プレエマルションを形成する。次いで、プレエマルションを高剪断に掛け(本明細書に記載されているいずれかの適当な方法、例えば、プレエマルションを含む容器は冷水浴中に置かれて、90%の振幅で設定されたBranson、Model 450ソニファイアーを使用して6分間音波処理され得る)、主にサブミクロン小滴を含む濃厚な白色ミニエマルションを形成する。
表3 工程(i)−ミニエマルション調製
【表3】


表3の脚注
1 XSM5006は、一晩掛けてアクリルモノマー中に溶解した。
2 XSM5106はアクリルモノマーに完全に溶解性ではなく、濁った分散体を形成した
【0185】
PSAラテックス(PSA)の調製(工程(ii))
PSAラテックスは、表4を参照して次の方法を使用して調製される。ミニエマルションの初期画分(工程(i)で調製した、「e」g)を、水(「w」g)を含み、凝縮器、熱電対及び攪拌機を備えた2リットルのジャケット付ガラス反応器へ添加する。混合物を82℃まで加熱する。水(「w」g)に溶解したいくらかの第1熱開始剤(「I」「i」g)を容器へ添加して種重合を開始し、反応混合物を「h」分間又は発熱が止むまで保持する。次いで、工程(i)からの更なる(残りの)ミニエマルション及び水(w/g)に溶解した開始剤(「I」「i」g)を、ミニエマルションに対しては「D」分の遅延期間にわたって毎分「R」g、開始剤に対しては「D」分の遅延期間にわたって(シリンジポンプを使用して)毎分「R」mlのそれぞれの速度でゆっくりと混合物へ両方共添加する。添加中、反応温度を82〜83℃に維持し、添加が終了した場合、反応混合物を更に「h」分間82〜83℃に保持し、その後、容器内容物を60℃まで冷却する。レドックス開始剤を、別に30分間反応温度で保持した混合物に添加し(「RI/「rI」g)、次いで、室温まで冷却し、ラテックスを濾過で集め、以下で特徴付けする。
表4 工程(ii)−ラテックス調製
【表4】


表4の脚注
1 5.0gのDM中の0.34gのTBHP及び2.61gのDM中の0.29gのSFSのレドックス開始剤系。
【0186】
ラテックスの特徴付け
本明細書に記載されたように調製されたラテックスの固形分含有量(重量%として)は、計量したアルミニウム中へ既知量のラテックスを入れ、150℃で60分間乾燥したスズを計量し、再度スズを計量し、固形分を計算することにより決定される。平均粒径(PS)は、Horiba LA−910型のHoriba製レーザー光散乱粒径分布分析器で線寸法として測定する。中和前のラテックスのpHは、Orion型pHメーターで測定する。次いで、ラテックスを、水酸化アンモニウムで、以下の表で与えられるpHまで中和した。
表5 ラテックスの特徴付け
【表5】

【0187】
PSAの性質の試験
上述のように調製した中和ラテックスを、1ミルのMylarフィルム上に被覆する。このフィルムを10分間空気乾燥し、90℃で5分間加熱乾燥した。被覆Mylarを剥離ライナーと一緒にラミネートした。PSAフィルムの水蒸気透過速度(MVTR)を、ASTM D3833/D3833Mによりg/24時間/mの単位で測定する。接着剤で被覆したMylarフィルムを基体(ステンレススチール(SS)又は高密度ポリエチレン(HDPE))へ適用し、20分及び24時間の養生後に、Instron装置を使用して剥離した後、それぞれの剥離値を記録する。接着フィルムの剪断値は、ステンレススチール(SS)基体へ接着させた0.5”×0.5”の細片上に1lbの重量を適用することにより決定する。壊れるまでの重量に対して要した時間(時間)を記録する。データは以下の表で与えられる(ここで、NMは測定しなかったことを表す):
表6 PSA試験データ
【表6】


表6の脚注
1 実施例8、9及び10に対して、剪断値を2つの試験で測定した:0.25inのサンプルに1ポンド重量(1lb試験)及び0.25inのサンプルに1キログラム重量(1kg試験)。時間での剪断結果は表7で与えられる。
表7−剪断データ
【表7】

【0188】
比較例
以下の比較例をまた調製し及び/又は本明細書で試験した。
【0189】
比較例Aは、PSA製品GME2484(この商標表示下でCytec社から市販されている)である。
【0190】
比較例B、D及びEは、それぞれに実施例4、7及び8と同じ組成を有する従来のエマルション重合で調製した。これは、プレエマルションが、最初ミニエマルションへ転換されることなくマクロエマルションとして直接に重合されたことを意味する。その他は、上記及び本明細書の表に記載されているものと同じ方法条件を使用した。
【0191】
比較例Cは、ポリウレタン成分を伴わない実施例6のミニエマルション重合である。
【0192】
データは以下の表で与えられる(ここで、NMは測定しなかったことを表す):
表8−比較データ
【表8】


表8の脚注
1 比較例B及びDを調製するための方法は多数の凝塊を生成した。
2 比較例Eを調製するための方法は安定なプレエマルションを生成したが、著しい凝塊がプレエマルション遅延工程で発生し、その結果、反応が停止した。
【0193】
比較例は、従来のエマルションと比較してミニエマルションを使用することの利点を証明する。従来のエマルション技法は良好な接着性を与えるものの、低剪断で且つかなりの凝塊を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)水、及び
(ii)任意選択的に親水性である少なくとも1つの安定剤
を含む水性混合物(第1混合物)を形成する工程、
(b)(i)少なくとも1つの活性化不飽和部分を含み、未反応イソシアネート基が実質的にない少なくとも1つの官能性ポリウレタンポリマー、
(ii)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体、及び
(iii)任意選択的に疎水性である、任意選択的に少なくとも1つの共安定剤
を含むポリマー前駆体混合物(第2混合物)を前記第1混合物とは別に形成する工程であり、成分(i)、(ii)及び/又は(iii)が任意選択的に同じであってもよい工程、
(c)前記第1及び第2混合物を一緒に混合してプレエマルションを形成する工程、
(d)工程(c)の前記プレエマルションへ、適当な手段、任意選択的に高剪断場を適用して、水性連続相及びその中に分散した約10nm〜約1000nmの平均径の安定化小滴を含む本質的に安定なミニエマルションを形成する工程、
(e)任意選択的に遊離基開始剤の存在下で前記ポリマー前駆体を重合して、混成ウレタンアクリルポリマーのラテックスを得る工程
を含む、ミニエマルション重合により異種ポリマー粒子の水性分散体を調製するための複数工程方法。
【請求項2】
前記安定剤が、親水性芳香族界面活性剤及び/又は親水性脂肪族界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定剤が、少なくとも1つのアリールフェノールアルコキシレート及び少なくとも1つのアルコキシポリアルキレングリコールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記官能性ポリウレタンが、1つ又は複数の適当なモノ又はポリ(イソシアネート)から得られる及び/又は得ることのできる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モノ又はポリイソシアネートが、1つ若しくは複数の芳香族及び/又は脂肪族モノ又はジイソシアネートから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イソシアネートが、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルプロパン−(2,2)、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−又は2,6−ジイソシアナト−トルエン及び/又はこれらの異性体の混合物、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び/又はこれらの異性体の混合物、4,4’−ジイソシアナトジフェニルプロパン−(2,2)、p−キシレンジイソシアネート及び/又はα,α,α’,α’−テトラメチル−m−又は−p−キシレンジイソシアネート、不飽和脂肪族イソシアネート及び/又はこれらの化合物のいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)で使用される前記官能性ポリウレタンが、適当な触媒及び/又は遊離基阻害剤の存在下で、
(1)請求項3、4及び/又は5に記載の1つ又は複数の適当なモノ又はポリイソシアネートから任意選択的に得られる及び/又は得ることのできるイソシアネート官能性ポリマー前駆体と、
(2)カルボキシ、チオール、ヒドロキシ及びアミノからなる群から任意選択的に選択される単一イソシアネート反応性基をもつ少なくとも1つの化合物、及び/又は
(3)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和ポリマー前駆体(ここで、成分(2)及び(3)は、任意選択的に同じであってもよい)
とを一緒に重合して、少なくとも1つの活性化不飽和部分を任意選択的に含み、未反応イソシアネート基が実質的にない官能性ポリウレタンポリマーを得る工程を含む方法により得られる及び/又は得ることのできる、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)で使用される前記官能性ポリウレタンが、
末端シクロカーボネート基を含む適当な化合物と末端第一級アミン基を含む適当な化合物とを反応させること、
適当な炭酸化植物油と適当なポリアミンとを反応させること、及び/又は
適当なヒドロキシアルキルカルバメートと、適当な(メタ)アクリレート並びに適当なカーボネート及び/又はジエステルとをエステル交換すること
から選択される少なくとも1つの工程を含む方法により得られる及び/又は得ることのできる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記単一イソシアネート反応性基をもつ化合物が、モノール、任意選択的に適当なモノヒドロキシ官能性α,β−エチレン系不飽和モノマーを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記モノールが、(メタ)アクリレートモノマー、任意選択的にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシエチルアクリレートを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記α,β−エチレン系不飽和モノマーが、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ジエン、ビニルエステル及びこれらの混合物を含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記α,β−エチレン系不飽和モノマーが、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、エチルアクリレート、アクリル酸及び/又はβ−CEAからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)が、約50nm〜約500nmの平均径を有する安定化小滴を含むミニエマルションを生成する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)で、プレエマルションが、高剪断、任意選択的に適度なバルク混合と組み合わせた高剪断に掛けられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法により間接的に及び/又は直接的に得られる及び/又は得ることのできる安定な水性ポリマー分散体。
【請求項16】
コーティング、フィルム、接着剤、局所適用のための医療用組成物及び/又はインキ組成物を調製するための、請求項15に記載のポリマー分散体の使用。
【請求項17】
請求項15に記載のポリマー分散体を使用して得られる及び/又は得ることのできるコーティング、フィルム、接着剤、局所適用のための医療用組成物及び/又はインキ組成物。

【公表番号】特表2010−515794(P2010−515794A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545152(P2009−545152)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000199
【国際公開番号】WO2008/083991
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】