説明

ポリマー酸コロイドを伴って製造される水分散性ポリチオフェン

【課題】良好な加工性および増加した導電率の改善された導電性ポリチオフェンの提供
【解決手段】ポリチオフェンとコロイド形成ポリマー酸との水性分散液を含んでなる組成物が提供される。発明組成物からのフィルムは、薄膜電界効果トランジスタでのドレイン、ソース、またはゲート電極のような用途において金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブと組み合わせて例えば、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイのような、エレクトロルミネセンスデバイスをはじめとする、有機電子デバイスでの緩衝層として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオフェンの導電性ポリマーの水性分散液であって、導電性ポリマーがポリマー酸コロイドの存在下に合成される水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、特願2004−540202号の分割出願であり、特にポリチオフェン含有組成物に関連する。
【0003】
導電性ポリマーは、発光ディスプレイでの使用のためのエレクトロルミネセンス(EL)デバイスの開発においてをはじめとして、様々な有機電子デバイスにおいて使用されてきた。導電性ポリマーを含有する有機発光ダイオード(OLED)のような、ELデバイスに関して、かかるデバイスは一般に次の構造を有する。
【0004】
陽極/緩衝層/ELポリマー/陰極
陽極は、例えば、インジウム/錫酸化物(ITO)のような、典型的には、半導体ELポリマーのさもなければ充満したπ−バンド中へ正孔を注入する能力を有する任意の材料である。陽極は、任意選択的にガラスまたはプラスチック基材上にサポートされる。ELポリマーは、典型的には、ポリ(パラフェニレンビニレン)またはポリフルオレンのような共役半導体ポリマーである。陰極は、典型的には、半導体ELポリマーのさもなければ空のπ*−バンド中へ電子を注入する能力を有する任意の材料(例えば、CaまたはBaのような)である。
【0005】
緩衝層は典型的には導電性ポリマーであり、陽極からELポリマー層への正孔の注入を容易にする。緩衝層はまた正孔注入層、正孔輸送層と呼ばれることもできるか、または二層陽極の部分として特徴付けられるかもしれない。緩衝層として使用される典型的な導電性ポリマーには、ポリアニリンおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)のようなポリジオキシチオフェンが含まれる。これらの材料は、例えば、「ポリチオフェン分散液、それらの製造およびそれらの使用(Polythiophene dispersions,their production and their use)」という表題の米国特許公報(特許文献1)に記載されているように、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)のような、水溶性ポリマー酸の存在下に水溶液中でアニリンまたはジオキシチオフェンモノマーを重合することによって製造することができる。周知のPEDT/PSS材料は、エッチ.シー.スタルク有限責任会社(H.C.Starck,GmbH)(独国レーベルクーセン(Leverkusen,Germany))から商業的に入手可能なバイトロン(Baytron)(登録商標)−Pである。
【0006】
水溶性ポリマースルホン酸で合成された水性導電性ポリマー分散液は、望ましくない低いpHレベルを有する。低いpHは、かかる緩衝層を含有するELデバイスの低下した応力寿命の原因となり、かつ、デバイス内腐食の原因となり得る。従って、改善された特性を有する組成物およびそれから製造された緩衝層を求める要求がある。
【0007】
導電性ポリマーはまた、薄膜電界効果トランジスタのような電子デバイス用の電極として有用性を有する。かかるトランジスタでは、有機半導体フィルムがソース電極とドレイン電極との間に存在する。電極用途に有用であるためには、導電性ポリマーおよび導電性ポリマーを分散させるまたは溶解するための液体は、導電性ポリマーか半導体ポリマーかのどちらかの再溶解を回避するために、半導体ポリマーおよび半導体ポリマー用の溶剤と相溶性でなければならない。導電性ポリマーから製造された電極の導電率は10S/cm(ここで、Sはオームの逆数である)よりも大きいものであるべきである。しかしながら、ポリマー酸を伴って製造された導電性ポリチオフェンは、典型的には約10-3S/cmまたはそれよりも低い範囲の導電率を与える。導電率を高めるために、導電性添加物がポリマーに添加されてもよい。しかしながら、かかる添加物の存在は、導電性ポリチオフェンの加工性に有害な影響を及ぼし得る。従って、良好な加工性および増加した導電率の改善された導電性ポリチオフェンを求める要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,300,575号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第1 026 152 A1号明細書
【特許文献3】米国特許第3,282,875号明細書
【特許文献4】米国特許第4,358,545号明細書
【特許文献5】米国特許第4,940,525号明細書
【特許文献6】米国特許第4,433,082号明細書
【特許文献7】米国特許第6,150,426号明細書
【特許文献8】国際公開第03/006537号パンフレット
【特許文献9】デュポン第UC0223号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】化学および物理学のCRCハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics),第81版、2000年
【非特許文献2】ザッハ(Zach)ら著、サイエンス(Science)、290、2120ページ
【非特許文献3】ニウ(Niu)ら著、Appl.Phys.Lett.,70、1480ページ
【非特許文献4】エッチ.ベッカー(H.Becker)、エッチ.スプライツー(H.Spreitzer)、ダブリュ.クレデュエル(W.Kreduer)、イー.クルーゲ(E.Kluge)、エッチ.シェンク(H.Schenk)、アイ.ディー.パーカー(I.D.Parker)およびワイ.カオ(Y.Cao)著、Adv.Mater.,12(2000)42ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ポリチオフェンと少なくとも1種のコロイド形成ポリマー酸との水性分散液を含んでなる組成物が提供される。本発明組成物は、例えば有機発光ダイオード(OLED)のような様々な有機電子デバイスで、および金属ナノワイヤもしくはカーボンナノチューブのような導電性充填材と組み合わせて、薄膜電界効果トランジスタでのドレイン、ソース、またはゲート電極のような用途で緩衝層として有用である。
【0011】
本発明の別の実施形態に従って、キャストされている本発明組成物の緩衝層を含んでなる、エレクトロルミネセンスデバイスをはじめとする、有機電子デバイスが提供される。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態に従って、ポリチオフェンと少なくとも1種のコロイド形成ポリマー酸との水性分散液の合成方法が提供される。ポリチオフェンと少なくとも1種のコロイド形成ポリマー酸との水性分散液の製造方法は、
(a)水およびチオフェンの均質な水性混合物を提供する工程と、
(b)コロイド形成ポリマー酸の水性分散液を提供する工程と、
(c)チオフェン混合物をコロイド形成ポリマー酸の水性分散液と組み合わせる工程と、
(d)酸化剤および触媒を、任意順序で、工程(c)の組合せの前後にコロイド形成ポリマー酸の水性分散液と組み合わせる工程と
を含んでなる。
【0013】
他の実施形態は、発明を実施するための最良の形態において記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による緩衝層を含む電子デバイスの断面図を例示する。
【図2】本発明による電極を含む薄膜電界効果トランジスタの断面図を例示する。
【図3】重合反応における酸化剤対モノマーの比でのPEDT/ナフィオン(登録商標)フィルムの導電率の変化を例示する。
【図4】重合反応におけるナフィオン(登録商標)対モノマーの比でのPEDT/ナフィオン(登録商標)フィルムの導電率の変化を例示する。
【図5】緑色発光ポリマーを使ったOLEDデバイスの動作寿命を例示する。
【図6】赤色発光ポリマーを使ったOLEDデバイスの動作寿命を例示する。
【図7】青色発光ポリマーを使ったOLEDデバイスの動作寿命を例示する。
【図8A】OLEDデバイス性能に対するPEDT/PSSA緩衝層のpHの影響を例示する。
【図8B】OLEDデバイス性能に対するPEDT/PSSA緩衝層のpHの影響を例示する。
【図8C】OLEDデバイス性能に対するPEDT/PSSA緩衝層のpHの影響を例示する。
【図8D】OLEDデバイス性能に対するPEDT/PSSA緩衝層のpHの影響を例示する。
【図9A】OLEDデバイス性能に対するPEDT/ナフィオン(登録商標)緩衝層のpHの影響を例示する。
【図9B】OLEDデバイス性能に対するPEDT/ナフィオン(登録商標)緩衝層のpHの影響を例示する。
【図9C】OLEDデバイス性能に対するPEDT/ナフィオン(登録商標)緩衝層のpHの影響を例示する。
【図10】PEDT/ナフィオン(登録商標)またはPEDT/PSSAの分散液に浸漬された時のITO厚さの変化を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態では、ポリジオキシチオフェンをはじめとするポリチオフェンと、コロイド形成ポリマー酸との水性分散液を含んでなる組成物が提供される。本明細書で用いるところでは、用語「分散液」は、微粒子の懸濁を含有する連続液体媒体に関する。本発明に従って、「連続媒体」は典型的には水性液体、例えば、水である。本明細書で用いるところでは、用語「水性」は、かなりの部分の水を有する液体を意味し、一実施形態ではそれは少なくとも約40重量%が水である。本明細書で用いるところでは、用語「コロイド」は、連続媒体中に懸濁した微粒子に関し、前記粒子はナノメートル−スケールの粒径を有する。本明細書で用いるところでは、用語「コロイド形成」は、水溶液に分散された時に微粒子を形成する物質に関し、すなわち、「コロイド形成」ポリマー酸は水溶性ではない。
【0016】
本明細書で用いるところでは、用語「含んでなる」「含む」「はじめとする」、「有する」またはそれらのいかなる他の変形も非排他的包含をカバーすることを意図される。例えば、要素のリストを含んでなるプロセス、方法、物品、もしくは装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確にリストされていない、またはかかるプロセス、方法、物品もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、明確にそうではないと述べられない限り、「または」は包括的なまたはを意味し、排他的なまたはを意味しない。例えば、条件AまたはBは下記の任意の1つによって満たされる。Aが真実であり(または存在し)、Bが虚偽である(または存在しない)、Aが虚偽であり(または存在せず)、Bが真実である(または存在する)、およびAおよびBの両方が真実である(または存在する)。
【0017】
また、「ア(a)」または「アン(an)」の使用は、本発明の要素および成分を記載するのに用いられる。これは、単に便宜上および本発明の一般的意味を与えるために行われる。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むと読まれるべきであり、単数形はまた、明らかに複数形ではないことを意味しない限り複数形をも含む。
【0018】
導電性ポリチオフェンおよび、具体的には、ポリ(ジオキシチオフェン)の水性分散液は、ジオキシチオフェンモノマーをはじめとするチオフェンモノマーがコロイド形成ポリマー酸の存在下に化学重合される時に製造できることが発見された。さらに、ポリチオフェンまたはポリ(ジオキシチオフェン)の水性分散液の製造での水溶性でないポリマー酸の使用は優れた電気特性の組成物をもたらすことが発見された。これらの水性分散液の一利点は、導電性微粒子が使用前の長期にわたって分離した相を形成することなく水性媒体中で安定であることである。さらに、それらは一般に、いったんフィルムへ乾燥されると再分散しない。
【0019】
本発明の一実施形態による組成物は、ポリジオキシチオフェンとコロイド形成ポリマー酸とが分散されている連続水相を含有する。本発明の実施での使用を考慮されるポリジオキシチオフェンは構造
【0020】
【化1】

(式中、
1およびR1’はそれぞれ独立して水素および1〜4個の炭素原子を有するアルキルから選択されるか、
またはR1およびR1’は一緒になって、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン鎖であって任意選択的に1〜12個の炭素原子を有するアルキルもしくは芳香族基、または1,2−シクロヘキシレン基で置換されてもよいアルキレン鎖を形成し、かつ、
nは約6よりも大きい)
を有する。
【0021】
本発明のチオフェンは、R1およびR1’が「OR1O」および「OR1」置換基に置換されている、上に与えられたのと同じ一般構造を有する。
【0022】
ある特定の実施形態では、R1およびR1’は一緒になって1〜4個の炭素原子を有するアルキレン鎖を形成する。別の実施形態では、ポリジオキシチオフェンはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。
【0023】
本発明の実施での使用を考慮されるコロイド形成ポリマー酸は水に不溶性であり、水性媒体中へ分散された時にコロイドを形成する。ポリマー酸は典型的には約10,000〜約4,000,000の範囲の分子量を有する。一実施形態では、ポリマー酸は約100,000〜約2,000,000の分子量を有する。コロイド粒径は典型的には2ナノメートル(nm)〜約140nmの範囲である。一実施形態では、コロイドは2nm〜約30nmの粒径を有する。水中に分散された時にコロイド形成性である任意のポリマー酸が本発明の実施での使用に好適である。一実施形態では、コロイド形成ポリマー酸はポリマースルホン酸である。他の許容できるポリマー酸には、ポリマーリン酸、ポリマーカルボン酸、およびポリマーアクリル酸、ならびにポリマースルホン酸を有する混合物をはじめとするそれらの混合物が含まれる。別の実施形態では、ポリマースルホン酸はフッ素化されている。さらに別の実施形態では、コロイド形成ポリマースルホン酸はパーフルオロ化されている。その上別の実施形態では、コロイド形成ポリマースルホン酸はパーフルオロアルキレンスルホン酸である。
【0024】
さらに別の実施形態では、コロイド形成ポリマー酸は高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマー(「FSAポリマー」)である。「高度にフッ素化された」は、ポリマー中のハロゲンおよび水素原子の総数の少なくとも約50%、一実施形態では少なくとも約75%、そして別の実施形態では少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。一実施形態では、ポリマーはパーフルオロ化されている。用語「スルホネート官能基」は、スルホン酸基かスルホン酸基の塩かのどちらかを意味し、一実施形態ではアルカリ金属またはアンモニウム塩を意味する。該官能基は式−SO3X(ここで、Xは陽イオンであり、「対イオン」としても知られる)で表される。XはH、Li、Na、KまたはN(R1)(R2)(R3)(R4)であってもよく、R1、R2、R3、およびR4は同じかまたは異なるものであり、一実施形態ではH、CH3またはC25である。別の実施形態では、XはHであり、その場合にはポリマーは「酸の形態」にあると言われる。Xはまた、Ca++、およびAl+++のようなイオンで表されるように多価であってもよい。一般にMn+と表される、多価対イオンの場合には、対イオン当たりのスルホネート官能基の数が価「n」に等しいであろうことは当業者には明らかである。
【0025】
一実施形態では、FSAポリマーは、陽イオン交換基を持った繰り返し側鎖が主鎖に結合したポリマー主鎖を含んでなる。ポリマーには、ホモポリマーまたは2つ以上のモノマーの共重合体が含まれる。共重合体は、非官能モノマーと陽イオン交換基またはその前駆体、例えば、後でスルホネート官能基へ加水分解することができるスルホニルフルオリド基(−SO2F)を持った第2モノマーとから典型的には形成される。例えば、第1フッ素化ビニルモノマーとスルホニルフルオリド基(−SO2F)を有する第2フッ素化ビニルモノマーとの共重合体を使用することができる。可能な第1モノマーには、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、およびそれらの組合せが含まれる。TFEが好ましい第1モノマーである。
【0026】
他の実施形態では、可能な第2モノマーには、ポリマー中に所望の側鎖を提供することができるスルホネート官能基または前駆体基付きのフッ素化ビニルエーテルが含まれる。エチレン、プロピレン、およびR−CH=CH2(ここで、Rは1〜10個の炭素原子のパーフルオロ化アルキル基である)をはじめとする追加のモノマーを、必要ならばこれらのポリマー中へ組み込むことができる。ポリマーは、本明細書でランダム共重合体と言われるタイプのもの、すなわち、コモノマーの相対濃度ができるだけ一定に保たれ、その結果、ポリマー鎖に沿ったモノマー単位の分布がそれらの相対濃度および相対的反応性に一致している重合によって製造される共重合体であってもよい。重合の過程でモノマーの相対濃度を変えることによって製造された、ランダムさがより少ない共重合体もまた使用されてもよい。(特許文献2)に開示されているもののような、ブロック共重合体と呼ばれるタイプのポリマーもまた使用されてもよい。
【0027】
一実施形態では、本発明での使用のためのFSAポリマーには、高度にフッ素化された、一実施形態ではパーフルオロ化された炭素主鎖と式
【0028】
−(O−CF2CFRfa−O−CF2CFR’fSO3
(式中、RfおよびR’fは独立してF、Clまたは1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロ化アルキル基から選択され、a=0、1または2であり、かつ、XはH、Li、Na、KまたはN(R1)(R2)(R3)(R4)であり、R1、R2、R3、およびR4は同じまたは異なるものであり、一実施形態ではH、CH3またはC25である)で表される側鎖とが含まれる。別の実施形態ではXはHである。上に述べられたように、Xはまた多価であってもよい。
【0029】
一実施形態では、FSAポリマーには、例えば、米国特許公報(特許文献3)にならびに米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)に開示されているポリマーが含まれる。好ましいFSAポリマーの例は、パーフルオロカーボン主鎖と式
【0030】
−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO3
(ここで、Xは上に定義されたようなものである)で表される側鎖とを含んでなる。このタイプのFSAポリマーは米国特許公報(特許文献3)に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ化ビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド))(PDMOF)との共重合、引き続くスルホニルフルオリド基の加水分解によるスルホネート基への変換および必要に応じてイオン交換してそれらを所望のイオン形に変換して製造することができる。米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)に開示されているタイプのポリマーの例は、Xが上に定義されたようなものである側鎖−O−CF2CF2SO3Xを有する。このポリマーはテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ化ビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド))(POPF)との共重合、引き続く加水分解および必要に応じてさらなるイオン交換によって製造することができる。
【0031】
一実施形態では、本発明での使用のためのFSAポリマーは典型的には約33未満のイオン交換比を有する。本出願では、「イオン交換比」または「IXR」は、陽イオン交換基に関連したポリマー主鎖中の炭素原子の数と定義される。約33未満の範囲内で、IXRは、特定用途に望まれるように変えることができる。一実施形態では、IXRは約3〜約33であり、別の実施形態では約8〜約23である。
【0032】
ポリマーの陽イオン交換容量はしばしば当量(EW)で表される。本出願の目的のためには、当量(EW)は1当量の水酸化ナトリウムを中和するのに必要とされる酸の形態のポリマーの重量であると定義される。ポリマーがパーフルオロカーボン主鎖を有し、側鎖が−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3H(またはその塩)であるスルホネートポリマーの場合、約8〜約23のIXRに相当する当量範囲は約750EW〜約1500EWである。このポリマーについてのIXRは、式:50IXR+344=EWを用いて当量と関係付けることができる。米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)に開示されているスルホネートポリマー、例えば、側鎖−O−CF2CF2SO3H(またはその塩)を有するポリマーについて同じIXR範囲が用いられるが、陽イオン交換基を含有するモノマー単位のより低い分子量のために、当量は幾分より低い。約8〜約23の好ましいIXR範囲について、相当する当量範囲は約575EW〜約1325EWである。このポリマーについてのIXRは、式:50IXR+178=EWを用いて当量と関係付けることができる。
【0033】
FSAポリマーはコロイド状水性分散液として製造することができる。それらはまた他の媒体中の分散液の形にあってもよく、他の媒体の例には、アルコール、テトラヒドロフランのような水溶性エーテル、水溶性エーテルの混合物、およびそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。分散液の製造で、ポリマーは酸の形態で使用することができる。米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)および(特許文献8)は、水性アルコール性分散液の製造方法を開示している。分散液が製造された後、濃度および分散液組成物は当該技術で公知の方法によって調節することができる。
【0034】
FSAポリマーをはじめとする、コロイド形成ポリマー酸の水性分散液は、安定なコロイドが形成される限り、典型的にはできるだけ小さな粒径およびできるだけ小さなEWを有する。
【0035】
FSAポリマーの水性分散液は、本願特許出願人(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))からナフィオン(Nafion)(登録商標)分散液として商業的に入手可能である。
【0036】
一実施形態では、チオフェンまたはジオキシチオフェンモノマーは、ポリマー酸コロイドを含有する水中で酸化重合する。典型的には、チオフェンまたはジオキシチオフェンモノマーは、重合触媒、酸化剤、およびその中に分散されたコロイド状ポリマー酸粒子を含有する水性分散液と組み合わされるまたはそれに加えられる。この実施形態では、重合反応が進行する準備ができるまで酸化剤および触媒がモノマーと組み合わされないという条件で、組合せまたは添加順序は変わってもよい。
【0037】
重合触媒には、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などおよびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
酸化剤には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、およびそれらの組合せをはじめとするようなものが含まれるが、それらに限定されない。酸化重合は、コロイド内に含有されるポリマー酸の負に帯電した側鎖、例えば、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン、アセチレートアニオン、ホスホネートアニオン、組合せなどによって電荷バランスしている正に帯電した導電性ポリマーチオフェンおよび/またはジオキシチオフェンを含有する安定な水性分散液をもたらす。
【0039】
ポリジオキシチオフェンと少なくとも1種のコロイド形成ポリマー酸との水性分散液の製造方法の一実施形態には、(a)ポリマー酸の水性分散液を提供する工程と、(b)工程(a)の分散液に酸化剤を加える工程と、(c)工程(b)の分散液に触媒を加える工程と、(d)工程(c)の分散液にジオキシチオフェンモノマーを加える工程とが含まれる。上に記載された方法の一代替実施形態には、酸化剤を加える前にジオキシチオフェンモノマーをポリマー酸の水性分散液に加える工程が含まれる。別の実施形態は、水と、典型的には約0.5重量%〜約2.0重量%ポリオキシチオフェンの範囲にある水中の任意の数のポリオキシチオフェン濃度の、ポリジオキシチオフェンとの均質な水性混合物を作り、このポリジオキシチオフェン混合物を、酸化剤および触媒を加える前にポリマー酸の水性分散液に加えることである。
【0040】
重合は水と混和性である共分散液の存在下に実施することができる。好適な共分散液の例には、エーテル、アルコール、アル(al)エーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、およびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、共分散液の量は30容量%未満であるべきである。一実施形態では、共分散液の量は60容量%未満である。一実施形態では、共分散液の量は5容量%〜50容量%である。一実施形態では、共分散液はアルコールである。一実施形態では、共分散液は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンから選択される。酸は、HCl、硫酸などのような無機酸、またはp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、酢酸などのような有機酸であり得る。あるいはまた、酸は、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などのような水溶性ポリマー酸、または上に記載されたような第2コロイド形成酸であり得る。酸の組合せを使用することができる。
【0041】
共酸は、いずれかが最後に加えられる酸化剤かチオフェンモノマーかのどちらかの添加前のプロセスの任意ポイントで反応混合物に加えることができる。一実施形態では、共酸はチオフェンモノマーおよびコロイド形成ポリマー酸の両方の前に加えられ、酸化剤が最後に加えられる。一実施形態では、共酸はチオフェンモノマーの添加の前に加えられ、それにコロイド形成ポリマー酸の添加が続き、酸化剤が最後に加えられる。
【0042】
共分散液は、いずれかが最後である酸化剤、触媒、またはモノマーの添加前の任意ポイントで反応混合物に加えることができる。
【0043】
任意選択的に、上に記載された方法の任意のものの完了後および重合反応の完了後に、合成されたままの水性分散液は、安定な水性分散液を生み出すのに好適な条件下に少なくとも1種のイオン交換樹脂と接触させられる。一実施形態では、合成されたままの水性分散液は、第1イオン交換樹脂および第2イオン交換樹脂と接触させられる。
【0044】
別の実施形態では、第1イオン交換樹脂は、上に述べられたスルホン酸陽イオン交換樹脂のような酸性陽イオン交換樹脂であり、第2イオン交換樹脂は、第三級アミンまたは第四級交換樹脂のような塩基性陰イオン交換樹脂である。
【0045】
イオン交換は、流体媒質(水性分散液のような)中のイオンが流体媒質に不溶である固定固体粒子に結合した同様に帯電したイオンと交換する可逆化学反応である。用語「イオン交換樹脂」は本明細書ではすべてのかかる物質を意味するのに用いられる。樹脂は、イオン交換基が結合しているポリマーサポートの架橋性のために不溶化されている。イオン交換樹脂は、正に帯電した可動イオンを有する酸性陽イオン交換体と、その交換可能なイオンが負に帯電している塩基性陰イオン交換体とに分類される。
【0046】
酸性陽イオン交換樹脂および塩基性陰イオン交換樹脂の両方が本発明の実施での使用を考慮される。一実施形態では、酸性陽イオン交換樹脂は、スルホン酸陽イオン交換樹脂のような有機酸陽イオン交換樹脂である。本発明の実施での使用を考慮されるスルホン酸陽イオン交換樹脂には、例えば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびそれらの混合物が含まれる。別の実施形態では、酸性陽イオン交換樹脂は、カルボン酸、アクリル酸またはリン酸陽イオン交換樹脂のような有機酸陽イオン交換樹脂である。さらに、異なる陽イオン交換樹脂の混合物を使用することができる。多くの場合に、塩基性イオン交換樹脂を用いてpHを所望のレベルに調節することができる。幾つかの場合には、pHは、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの溶液のような塩基性水溶液でさらに調節することができる。
【0047】
別の実施形態では、塩基性陰イオン交換樹脂は第三級アミン陰イオン交換樹脂である。本発明の実施での使用を考慮される第三級アミン陰イオン交換樹脂には、例えば、第三級アミノ化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、第三級アミノ化架橋スチレンポリマー、第三級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第三級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物が含まれる。さらなる実施形態では、塩基性陰イオン交換樹脂は第四級アミン陰イオン交換樹脂、またはこれらの交換樹脂と他の交換樹脂との混合物である。
【0048】
第1および第2イオン交換樹脂は、同時にか、引き続いてかのどちらかで合成されたままの水性分散液に接触してもよい。例えば、一実施形態では、両樹脂は、導電性ポリマーの合成されたままの水性分散液に同時に加えられ、少なくとも約1時間、例えば、約2時間〜約20時間分散液と接触したままにされる。次にイオン交換樹脂は濾過によって分散液から除去することができる。フィルターのサイズは、比較的大きいイオン交換樹脂粒子は除去されるが、より小さい分散液粒子は通過するように選ばれる。理論に縛られたいと願うことなしに、イオン交換樹脂は重合をクエンチし、かつ、イオン性および非イオン性不純物と未反応モノマーのほとんどとを合成されたままの水性分散液から効果的に除去すると考えられる。さらに、塩基性陰イオン交換樹脂および/または酸性陽イオン交換樹脂は、酸性サイトをより塩基性にし、分散液の上昇したpHをもたらす。一般に、約1gのコロイド形成ポリマー酸当たり少なくとも1グラムのイオン交換樹脂が使用される。他の実施形態では、イオン交換樹脂の使用量は、約5グラムまでのイオン交換樹脂対ポリチオフェン/ポリマー酸コロイドの比で用いられ、達成されるべきであるpHに依存する。一実施形態では、ポリジオキシチオフェンと少なくとも1種のコロイド形成ポリマー酸との組成物のグラム当たり約1グラムのレワチッチ(Lewatit)(登録商標)MP62WS(バイエル有限責任会社(Bayer GmbH)製の弱塩基性陰イオン交換樹脂)、および約1グラムのレワチッチ(登録商標)モノプラス(MonoPlus)S100(バイエル有限責任会社製の強酸性ナトリウム陽イオン交換樹脂)が使用される。
【0049】
一実施形態では、フッ素化ポリマースルホン酸コロイドを伴うジオキシチオフェンの重合から生じる水性分散液は、フッ素化ポリマーの水性分散液を反応容器に先ず装入することである。これに、順に、酸化剤、触媒およびジオキシチオフェンモノマーが、または、順に、ジオキシチオフェンモノマー、酸化剤および触媒が加えられる。混合物は撹拌され、次に反応は制御した温度で進行させられる。重合が完了した時、反応は強酸性陽イオン交換樹脂と塩基性陰イオン交換樹脂でクエンチされ、撹拌され、濾過される。あるいはまた、ジオキシチオフェンは、ナフィオン(登録商標)分散液の添加前に、水に加えられ、撹拌されて混合物を均質化することができ、それに酸化剤および触媒が続く。酸化剤:モノマー比は一般に0.5〜2.0の範囲にある。フッ素化ポリマー:ジオキシチオフェンモノマー比は一般に1〜4の範囲にある。全固体含有率は一般に1.5%〜6%、一実施形態では2%〜4.5%の範囲にある。反応温度は一般に5℃〜50℃、一実施形態では20℃〜35℃の範囲にある。反応時間は一般に1〜30時間の範囲にある。
【0050】
ポリジオキシチオフェンとフッ素化ポリマースルホン酸コロイドとを含む、ポリチオフェン・ポリマー酸コロイドの合成されたままの水性分散液は、広範囲のpHを有することができ、典型的には約1〜約8であるように調節することができ、一般には約3〜4のpHを有する。酸性は腐食性である得るので、より高いpHを有することが多くの場合望ましい。pHは公知の技法を用いて、例えば、イオン交換または塩基性水溶液での滴定によって調節できることが見いだされた。pH7〜8までのポリジオキシチオフェンとフッ素化ポリマースルホン酸コロイドとの安定な分散液が形成された。ポリチオフェンと他のコロイド形成ポリマー酸との水性分散液は、同様に処理してpHを調節することができる。
【0051】
別の実施形態では、より導電性の分散液は、ポリジオキシチオフェンとコロイド形成ポリマー酸との水性分散液への高度に導線性の添加物の添加によって形成される。比較的高いpHの分散液が形成され得るので、導電性添加物、特に金属添加物は分散液中の酸によって攻撃されない。さらに、ポリマー酸は事実上コロイド状であり、酸基を主に含有する表面を有するので、導電性ポリチオフェンがコロイド状表面上に形成される。この独特の構造のために、パーコレーション閾値に達するのに、低い重量百分率の高度に導電性の添加物が必要とされるに過ぎない。好適な導電性添加物の例には、金属粒子およびナノ粒子、ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラファイト繊維または粒子、炭素粒子、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
本発明の別の実施形態では、一実施形態としてポリジオキシチオフェンとコロイド形成ポリマー酸とを含む、ポリチオフェンとコロイド形成ポリマー酸とを含んでなる水性分散液からキャストされた緩衝層が提供される。一実施形態では、緩衝層は、コロイド形成ポリマースルホン酸を含んでなる水性分散液からキャストされる。一実施形態では、緩衝層は、ポリ(アルキレンジオキシチオフェン)とフッ素化ポリマー酸コロイドとを含有する水性分散液からキャストされる。別の実施形態では、フッ素化ポリマー酸コロイドはフッ素化ポリマースルホン酸コロイドである。さらに別の実施形態では、緩衝層は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とパーフルオロエチレンスルホン酸コロイドとを含有する水性分散液からキャストされる。
【0053】
ポリジオキシチオフェンと、フッ素化ポリマースルホン酸コロイドのようなポリマー酸コロイドとを含む、ポリチオフェンの乾燥フィルムは、一般に、水中に再分散性ではない。従って、緩衝層は多薄層として付着することができる。さらに、緩衝層は、損傷を受けることなく、異なる水溶性または水分散性材料の層でオーバーコートすることができる。
【0054】
別の実施形態では、ポリマー・ジオキシチオフェンをはじめとするポリチオフェンと、他の水溶性または水分散性材料とブレンドされたコロイド形成ポリマー酸とを含んでなる水性分散液からキャストされた緩衝層が提供される。材料の最終用途に依存して、加えることができる追加の水溶性または水分散性材料のタイプの例には、ポリマー、染料、コーティング助剤、カーボンナノチューブ、ナノワイヤ、有機および無機導電性インクおよびペースト、電荷輸送材料、架橋剤、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。材料は簡単な分子またはポリマーであり得る。好適な他の水溶性または水分散性ポリマーの例には、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアミン、ポリピロール、ポリアセチレン、およびそれらの組合せのような導電性ポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
本発明の別の実施形態では、2つの電気接触層の間に置かれた少なくとも1つの電気活性層(通常は半導体共役ポリマー)を含んでなる電子デバイスであって、デバイスの層の少なくとも1つが本発明の緩衝層を含む電子デバイスが提供される。本発明の一実施形態は、図1に示されるような、1タイプのOLEDデバイスで例示され、それは、陽極層110、緩衝層120、エレクトロルミネセンス層130、および陰極層150を有するデバイスである。任意選択的な電子注入/輸送層140が陰極層150に隣接している。緩衝層120と陰極層150(または任意選択的な電子注入/輸送層140)との間に、エレクトロルミネセンス層130がある。
【0056】
デバイスは、陽極層110または陰極層150に隣接することができるサポートまたは基材(示されていない)を含んでもよい。最も頻繁には、サポートは陽極層110に隣接している。サポートは柔軟なまたは堅い、有機または無機であり得る。一般に、ガラスまたは柔軟な有機フィルムがサポートとして使用される。陽極層110は、陰極層150に比べて正孔を注入するのにより効率的である電極である。陽極は、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料には、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、11族元素、4、5、および6族元素、ならびに8〜10族遷移元素の混合酸化物が含まれる。陽極層110が光伝達性であるべきである場合には、インジウム−錫酸化物のような、12、13および14族元素の混合酸化物が使用されてもよい。本明細書で用いるところでは、語句「混合酸化物」は、2族元素または12、13、もしくは14族元素から選択された2つ以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。陽極層110用材料の幾つかの非限定的な具体例には、インジウム錫酸化物(「ITO」)、アルミニウム錫酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、それらに限定されない。陽極はまた、ポリアニリンまたはポリピロ−ルのような有機材料を含んでなってもよい。周期表の族が左から右に1〜18と番号を付けされる、国際純正応用化学連合(IUPAC)記数法が全体にわたって用いられる(非特許文献1)。
【0057】
陽極層110は、化学もしくは物理蒸着法またはスピンキャスト法によって形成されてもよい。化学蒸着は、プラズマ強化化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行われてもよい。物理蒸着には、e−ビーム蒸発および抵抗蒸発だけでなく、イオンビームスパッタリングをはじめとする、すべての形のスパッタリングが含まれ得る。物理蒸着の具体的形態には、無線周波数(rf)マグネトロンスパッタリングおよび誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が含まれる。これらの蒸着技術は半導体製造技術内では周知である。
【0058】
陽極層110はリソグラフィック操作中にパターン化されてもよい。パターンは要望通り変わってもよい。層は、例えば、第1電気接触層材料を付着する前にパターン化マスクまたはレジストを第1の柔軟な複合バリア構造物上に置くことによってパターンで形成することができる。あるいはまた、層は、全体層(また全面的被覆物とも呼ばれる)として付着し、その次に、例えば、パターン化レジスト層および湿式化学または乾式エッチング技術を用いてパターン化することができる。当該技術で周知であるパターン化の他の方法もまた用いることができる。電子デバイスがアレイ内に置かれる場合、陽極層110は、実質的に同じ方向に伸びる長さを有する実質的に平行のストリップへと典型的に形成される。
【0059】
緩衝層120は、当業者に周知の様々な技術を用いて基材上へ通常キャストされる。典型的なキャスティング技術には、例えば、溶液キャスティング、ドロップ・キャスティング、カーテン・キャスティング、スピン−コーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷などが含まれる。あるいはまた、緩衝層は、インクジェット印刷のような、多数の付着法を用いてパターン化することができる。
【0060】
エレクトロルミネセンス(EL)層130は、典型的には、ポリ(パラフェニレンビニレン)(PVVと略記される)、またはポリフルオレンのような共役ポリマーであってもよい。選ばれる特有の材料は、具体的な用途、動作の間に用いられる電位、または他の因子に依存するかもしれない。エレクトロルミネセンス有機材料を含有するEL層130は、スピン−コーティング、キャスティング、および印刷をはじめとする任意の通常の技術によって溶液から付着することができる。EL有機材料は、材料の性質に依存して、蒸着法によって直接付着することができる。別の実施形態では、ELポリマー前駆体を付着し、次に、典型的には熱または他の外部エネルギー源(例えば、可視光またはUV放射線)によってポリマーに変換することができる。
【0061】
任意選択的な層140は、電子注入/輸送を促進する両方の機能を果たすことができ、かつ、層界面で反応をクエンチするのを防ぐための閉じ込め層としてもまた働くことができる。より具体的には、層140は、電子易動度を高め、かつ、層130と150とがさもなければ直接接触する場合に反応をクエンチする可能性を低下させるかもしれない。任意選択的な層140用の材料の例には、金属−キレート化オキシノイド化合物(例えば、Alq3など)、フェナントロリン−ベース化合物(例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」)など)、アゾール化合物(例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」など)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」など))、他の類似の化合物、またはそれらの任意の1つまたは複数の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。あるいはまた、任意選択的な層140は無機であり、BaO、LiF、Li2Oなどを含んでなってもよい。
【0062】
陰極層150は、電子または負電荷キャリアを注入するのに特に効率的である電極である。陰極層150は、第1電気接触層(この場合、陽極層110)よりも低い仕事関数を有する任意の金属または非金属であり得る。本明細書で用いるところでは、用語「より低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図される。本明細書で用いるところでは、「より高い仕事関数」は、少なくともおおよそ4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図される。
【0063】
陰極層用の材料は、1族のアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)、2族金属(例えば、Mg、Ca、Baなど)、12族金属、ランタニド(例えば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(例えば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組合せのような金属もまた使用されてもよい。陰極層150用の材料の具体的な非限定例には、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユーロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0064】
陰極層150は通常化学または物理蒸着法によって形成される。一般に、陰極層は、陽極層110に関して上に議論されたようにパターン化されるであろう。デバイスがアレイ内に位置する場合、陰極層150は実質的に平行のストリップへパターン化されてもよく、そこでは、陰極層ストリップの長さは実質的に同じ方向におよび陽極層ストリップの長さに実質的に垂直に伸びている。ピクセルと呼ばれる電子要素は交差点(そこで、アレイが平面図または上面図から見られる時に陽極層ストリップが陰極層ストリップと交差する)で形成される。
【0065】
他の実施形態では、追加の層は有機電子デバイス内に存在してもよい。例えば、緩衝層120とEL層130との間の層(示されていない)は、正電荷輸送、層のバンド−ギャップ整合、保護層としての機能などを容易にするかもしれない。同様に、EL層130と陰極層150との間の追加の層(示されていない)は、負電荷輸送、層間のバンド−ギャップ整合、保護層としての機能などを容易にするかもしれない。当該技術で公知である層を使用することができる。さらに、上記層の任意のものは、2つ以上の層から製造され得る。あるいはまた、無機陽極層110、緩衝層120、EL層130、および陰極層150の幾つかまたはすべてが電荷キャリア輸送効率を上げるために表面処理されてもよい。成分層のそれぞれのための材料の選択は、デバイスに高いデバイス効率を提供するという目標を、製造コスト、製造複雑性、または潜在的に他の因子とバランスさせることによって決定されてもよい。
【0066】
異なる層は任意の好適な厚さを有してもよい。無機陽極層110は通常おおよそ500nm以下、例えば、おおよそ10〜200nmであり、緩衝層120は通常おおよそ250nm以下、例えば、おおよそ50〜200nmであり、EL層130は通常おおよそ1000nm以下、例えば、おおよそ50〜80nmであり、任意選択的な層140は通常おおよそ100nm以下、例えば、おおよそ20〜80nmであり、そして陰極層150は通常おおよそ100nm以下、例えば、おおよそ1〜50nmである。陽極層110または陰極層150が少なくとも幾らかの光を伝達する必要がある場合、かかる層の厚さはおおよそ100nmを超えることはできない。
【0067】
電子デバイスの用途に依存して、EL層130は、信号によって活性化される発光層(発光ダイオードにおけるような)または印可電位ありもしくはなしで放射エネルギーに応答し、信号を発する材料の層(検出器またはボルタ電池のような)であり得る。本明細書を読んだ後に、当業者は、彼らの特殊用途に好適である材料を選択することができるであろう。発光材料は、添加物ありまたはなしで、別の材料のマトリックス中に分散されてもよく、層だけを形成してもよい。EL層130は一般におおよそ50〜500nmの範囲の厚さを有する。
【0068】
ポリマー酸コロイドを伴って製造された水性分散液ポリチオフェンを含んでなる1つまたは複数の層を有することから恩恵を受けるかもしれない他の有機電子デバイスの例には、(1)電気エネルギーを放射線へ変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、またはダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクス・プロセスによって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器(例えば、光導電素子、フォトレジスター、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管)、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーへ変換するデバイス(例えば、光電池デバイスまたは太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1個または複数の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスタまたはダイオード)が挙げられる。
【0069】
有機発光ダイオード(OLED)において、それぞれ、陰極層150および陽極層110からEL層130へ注入される電子および正孔は、ポリマー中に負および正に帯電した極性イオンを形成する。これらの極性イオンは印可電場の影響下に移動し、逆に帯電した種と極性イオン励起子を形成し、その次に放射再結合を受ける。通常おおよそ12ボルト未満、多くの場合おおよそ5ボルト以下の、陽極と陰極との間の十分な電位差がデバイスに印可されてもよい。実際の電位差は、より大きな電子部品でのデバイスの使用に依存するかもしれない。多くの実施形態では、陽極層110は正の電圧にバイアスをかけられ、陰極層150は電子デバイスの動作の間ずっと実質的に地電位またはゼロボルトである。バッテリーまたは他の電源が回路の部品としての電子デバイスに電気的に接続されてもよいが、図1には例示されていない。
【0070】
ポリマージオキシチオフェンとコロイド形成ポリマー酸とを含んでなる水性分散液からキャストされた緩衝層を備えたOLEDは改善された寿命を有することが見いだされた。緩衝層は、ポリジオキシチオフェンとフッ素化ポリマースルホン酸コロイドとの水性分散液、一実施形態では、pHが約3.5よりも上に調節された水性分散液からキャストされてもよい。
【0071】
より酸性でないまたはpH中性の材料を使用すると、デバイス製造中のITO層の著しく少ないエッチング、従ってOLEDのポリマー層中へのはるかにより低濃度のInおよびSnイオン拡散をもたらす。InおよびSnイオンは減少した動作寿命の原因になると疑われるので、これは重要な便益である。
【0072】
より低い酸性はまた、製造中におよび長期貯蔵にわたってディスプレイの金属部品(例えば電気接触パッド)の腐食をも減少させる。PEDT/PSSA残渣は残留湿気と相互作用してディスプレイ中へ酸を放出し、遅い腐食をもたらすであろう。
【0073】
酸性PEDT/PSSAを分散させるために用いられる装置は、PEDT/PSSAの強酸性を取り扱うために特別にデザインされる必要がある。例えば、PEDT/PSSAをITO基材上へコートするために用いられる、クロムメッキされたスロット−ダイ塗布ヘッドは、PEDT/PSSAの酸性のために腐食することが見いだされた。これは、コートされたフィルムがクロムの粒子で汚染されてしまうので、ヘッドを使用できないものにした。また、ある種のインク−ジェット・プリントヘッドは、OLEDディスプレイの製造にとって興味あるものである。それらは、緩衝層および発光ポリマー層の両方をディスプレイ上の正確な位置に分配するために用いられる。これらのプリント−ヘッドは、インク中の粒子用の内部トラップとしてニッケル・メッシュ・フィルターを含有する。これらのニッケルフィルターは、酸性PEDT/PSSAによって分解され、使用できないものにされる。これらの腐食問題のどちらも、酸性が低くされた本発明の水性PEDT分散液では起こらないであろう。
【0074】
さらに、ある種の発光ポリマーは酸性条件に敏感であることが見いだされており、それらの発光能力は、それらが酸性緩衝層と接触する場合に低下する。より低い酸性または中性のために、本発明の水性PEDT分散液を緩衝層を形成するために使用することは有利である。
【0075】
2つ以上の異なる発光材料を使用するフルカラーまたはエリアカラー・ディスプレイの製造は、各発光材料がその性能を最適化するのに異なる陰極材料を必要とする場合には複雑になる。ディスプレイ装置は発光する多数のピクセルから製造される。マルチカラー・デバイスには、異なる色の光を発する少なくとも2つの異なるタイプのピクセル(時々サブ−ピクセルと言われる)がある。サブ−ピクセルは異なる発光材料で構築される。発光体のすべてで良好なデバイス性能を与えるただ一つの陰極材料を有することは非常に望ましい。これは、デバイス製造の複雑性を最小限にする。緩衝層が本発明の水性PEDT分散液から製造されているマルチカラー・デバイスにおいて色のそれぞれについて良好なデバイス性能を維持しながら共通の陰極を使用できることが見いだされた。陰極は、上に議論された材料の任意のものから製造することができ、アルミニウムのようなより不活性な金属でオーバーコートされたバリウムであってもよい。
【0076】
ポリジオキシチオフェンをはじめとするポリチオフェンと、少なくとも1種のコロイド形成ポリマー酸との水性分散液を含んでなる1つまたは複数の層を有することから恩恵を受けるかもしれない他の有機電子デバイスには、(1)電気エネルギーを放射線へ変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、またはダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクス・プロセスによって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器(例えば、光導電素子、フォトレジスター、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管)、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーへ変換するデバイス(例えば、光電池デバイスまたは太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1個または複数の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスタまたはダイオード)が含まれる。
【0077】
緩衝層は、水溶液または溶剤から塗布される導電性ポリマーの層でさらにオーバーコートすることができる。導電性ポリマーは電荷移動を容易にし、またコーティング性をも改善することができる。好適な導電性ポリマーの例には、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、同時係属出願(特許文献9)に開示されているようなポリアニリン−ポリマー−酸コロイド、ポリピロール、ポリアセチレン、およびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0078】
本発明のその上別の実施形態では、ポリジオキシチオフェンとコロイド形成ポリマースルホン酸とを含んでなる電極を含んでなる薄膜電界効果トランジスタが提供される。薄膜電界効果トランジスタでの電極としての使用のためには、導電性ポリマーおよび導電性ポリマーを分散させるまたは溶解するための液体は、導電性ポリマーか半導体ポリマーかのどちらかの再溶解を避けるために半導体ポリマーおよび半導体ポリマー用の溶剤と相溶性でなければならない。導電性ポリマーから製造された薄膜電界効果トランジスタ電極は、10S/cmよりも大きい導電率を有するべきである。しかしながら、水溶性ポリマー酸を伴って製造された導電性ポリマーは、約10-3S/cmまたはそれよりも低い範囲の導電率を提供するに過ぎない。従って、一実施形態では、電極は、ナノワイヤ、カーボンナノチューブなどのような導電率エンハンサーと組み合わせてポリ(アルキレンジオキシチオフェン)とフッ素化コロイド形成ポリマースルホン酸とを含んでなる。さらに別の実施形態では、電極は、ナノワイヤ、カーボンナノチューブなどのような導電率エンハンサーと組み合わせてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とコロイド形成パーフルオロエチレンスルホン酸とを含んでなる。発明組成物は、ゲート電極、ドレイン電極、またはソース電極として薄膜電界効果トランジスタで使用されてもよい。
【0079】
本発明の別の例示は、薄膜電界効果トランジスタであり、図2に示されている。この例示で、誘電性ポリマーまたは誘電性酸化物薄膜210は一側面にゲート電極220を、反対側に、それぞれ、ドレインおよびソース電極、230および240を有する。ドレイン電極とソース電極との間に、有機半導体フィルム250が置かれる。ナノワイヤまたはカーボンナノチューブを含有する発明水性分散液は、溶液薄膜析出における有機ベース誘電性ポリマーおよび半導体ポリマーとのそれらの相溶性のために、ゲート、ドレインおよびソース電極の用途向けに理想的である。本発明導電性組成物、例えば、一実施形態ではPEDTおよびコロイド状パーフルオロエチレンスルホン酸は、コロイド状分散液として存在するので、高い導電率のパーコレーション閾値に達するのに(水溶性ポリマースルホン酸を含有する組成物と比べて)より少ない重量百分率の導電性充填材が必要とされる。
【0080】
本発明のさらに別の実施形態では、ポリマースルホン酸コロイドの存在下にジオキシチオフェンモノマーを重合する工程を含んでなるポリジオキシチオフェンの水性分散液の製造方法が提供される。本発明方法の一実施形態では、ポリジオキシチオフェンはポリアルキレンジオキシチオフェンであり、コロイド形成ポリマースルホン酸はフッ素化されている。本発明方法の別の実施形態では、ポリジオキシチオフェンはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であり、コロイド形成ポリマースルホン酸はパーフルオロ化されている。さらに別の実施形態では、コロイド形成ポリマースルホン酸はパーフルオロエチレンスルホン酸である。重合は水の存在下に実施される。生じた反応混合物はイオン交換樹脂で処理して反応副生物を除去することができる。
【0081】
ここで本発明は、次の非限定的な実施例を参照することによってより詳細に説明される。
【実施例】
【0082】
(比較例1)
本比較例は、非コロイド状ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDT/PSSA)錯体を製造するための、水溶性ポリマースルホン酸、すなわち、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA)の存在下でのエチレンジオキシチオフェンの酸化重合を実証する。
【0083】
硫酸第二鉄の溶液は、0.3246gの硫酸第二鉄水和物(シグマ−アルドリッチ社、米国ミズーリ州セントルイス(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO,USA))を脱イオン水に溶解することによって調製して39.4566gの総重量の溶液を製造した。この硫酸第二鉄溶液の2.28gをプラスチックボトル中で300gの脱イオン水、10.00gのPSSA(30重量%PSSA、70,000分子量、ポリサイエンス社、米国ペンシルバニア州ウォ−ミントン(PolySciences,Inc.,Warmington,PA,USA))および1.72g過硫酸ナトリウム(フルッカ(Fluka)、シグマ−アルドリッチ社、米国ミズーリ州セントルイス)と混合した。硫酸第二鉄は重合の触媒として働き、過硫酸ナトリウムはエチレンジオキシチオフェンの酸化重合用の酸化剤である。混合物を旋回させ、次に、熱電対用の熱井を備えた3首500mLフラスコに入れた。0.63mLの3,4−エチレンジオキシチオフェン(バイエル、米国ペンシルバニア州ピッツバーグ(Bayer,Pittsburgh,PA,USA)から入手したバイトロン−M(登録商標))をPSSA含有混合物に加える間、混合物を、空気駆動オーバーヘッド撹拌機で作動する撹拌パドルで撹拌した。3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合を室温、すなわち、約22℃で24時間進行させた。重合の結果として、透明な液体は、水に分散されたPEDT/PSSA錯体の色を有する浅黒い液体に変化した。PEDT/PSSA錯体分散液を、ミリポア社(Millipore Corp.)(米国マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford,MA,USA))製の5.0μmミレックス(Millex)(登録商標)−SVシリンジフィルターで濾過性について試験した。高い手動圧をシリンジプランジャーに加えて、透明な無色液体だけがフィルターを通過し、それによってPEDT/PSSA錯体粒子が余りにも長くてフィルターを通過しないことを示唆した。
【0084】
総計約158gに達するPEDT/PSSA錯体の水性分散液の半分をさらに2つのイオン交換樹脂で処理した。1つは陽イオン交換体(架橋ポリスチレンのスルホン酸ナトリウム塩)(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエルから入手したレワチッチ(登録商標)S100WS)である。他は陰イオン交換体(架橋ポリスチレンの第三級/第四級アミンの遊離塩基/塩化物)(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエルから入手したレワチッチ(登録商標)MP62WS)である。53gのレワチッチ(登録商標)S100WSおよび51gのレワチッチ(登録商標)MP62WSを、それぞれ、水に何の色もなくなるまで脱イオン水で洗浄した。次に2つの洗浄した樹脂を、158gのPEDT/PSSA錯体の水性分散液と混合する前に濾過した。混合物をマグネチックスターラーで8時間撹拌した。樹脂を濾過によって除去した。樹脂で処理したPEDT/PSSA錯体の水性分散液は重量分析に基づいて1.2重量%固体を含有することが測定された。樹脂で処理したPEDT/PSSAの水性分散液を、次に、ミリポア社(米国マサチューセッツ州ベッドフォード)製の5.0μmミレックス(登録商標)−SVシリンジフィルターおよびワットマン社(Whatman Inc.)(米国ニュージャージー州クリフトン(Clifton,NJ,USA))製の1.2μmGF/Cシリンジフィルターで濾過性について試験した。分散液は5.0μmミレックス(登録商標)−SVシリンジフィルターを通過したが、高い手動圧をシリンジプランジャーに加えて透明な無色液体だけが1.2μmGF/Cシリンジフィルターを通過した。樹脂で処理したPEDT/PSSA錯体粒子の平均粒径は、上に記載したような光散乱によって測定され、0.40の多分散性で1.12μm(0.04μmの標準偏差で5測定値の平均値)であることが見いだされる。
【0085】
樹脂で処理したPEDT/PSSA錯体を次に導電率および発光特性について試験した。インジウム錫酸化物(ITO)層100〜150nm厚さを有する商業的に入手可能なITO/ガラス板をサイズが30mm×30mmの試料へ切断した。その次にITO層を酸素プラズマでエッチングした。導電率測定用に用いられるべきガラス基材上のITOを、電極として用いられるべきITOの一連の平行線へエッチングした。発光測定用のLEDにされるべき基材上のITOを、陽極として働くためのITOの15mm×20mm層へエッチングした。樹脂で処理したPEDT/PSSA錯体の水性分散液を、1200rpmの回転速度でITO/ガラス基材のそれぞれの上へスピンコートした。生じたPEDT/PSSA錯体層は厚さが約140nmであった。層品質は一様ではなかった。PEDT/PSSA錯体でコートしたITO/ガラス基材を窒素中90℃で30分間乾燥した。
【0086】
PEDT/PSSA錯体層の導電率は、2電極間の抵抗を測ることによって測定し、抵抗、導電層の厚さおよび抵抗を測るために用いた2電極間の距離に基づいて6.1×10-3S/cmであると計算した。
【0087】
発光測定のために、次にPEDT/PSSA錯体層を、活性エレクトロルミネセンス(EL)層として働くためのスーパー−イエロー(Super Yellow)発光体ポリ(置換−フェニレンビニレン)(独国フランクフルトのコビオン・カンパニー(Covion Company,Frankfurt,Germany)から入手したPDY131)でトップコートした。EL層の厚さはおおよそ70nmであった。総フィルム厚さはテンコール500表面プロファイラー(TENCOR 500 Surface Profiler)で測定した。陰極については、BaおよびAl層を1.3×10-4Paの真空下にEL層のトップ上に蒸着した。Ba層の最終厚さは3nmであり、Ba層のトップ上のAl層の厚さは300nmであった。LEDデバイス性能は次の通り試験した。電流対印可電圧、発光強度対印可電圧、および発光効率(カンデラ/アンペア−c/A)の測定値は、ケイスレー・インスツルメント社(Keithley Instrument Inc.)(オハイオ州クリーブランド(Cleveland,OH))製のケイスレイ236光源−測定装置、および較正シリコンフォトダイオード付きS370オプトメーター(Optometer)(UDTセンサー社、カリフォルニア州ホーソーン(UDT Sensor,Inc.,Hawthorne,CA))で測定した。5つのLEDデバイスを、200cd/m2の光強度を得るために印可電圧を上げることによって試験した。この強度を達成するための平均印可電圧は5.0ボルトであり、平均光効率は5.4cd/Aであった。これらのデバイスは80℃で1時間未満の応力半減期を有した。
【0088】
(実施例1)
本実施例は、ナフィオン(登録商標)の存在下でのエチレンジオキシチオフェンの重合を例示し、およびまた、それによって得られたポリ(エチレンジオキシチオフェン)の特性を記載する。
【0089】
142.68g(16.03ミリモルのナフィオン(登録商標)モノマー単位)SE−10072および173.45g脱イオン水を500mLナルゲニック(Nalgenic)(登録商標)プラスチックボトル中へ注ぎ込んだ。硫酸第二鉄の原液は、先ず、0.0667g硫酸第二鉄水和物(97%、シグマ−アルドリッチ社、米国ミズーリ州セントルイス)を脱イオン水で12.2775gの総重量へ溶解することによって製造した。次に1.40gの硫酸第二鉄溶液および1.72g(7.224ミリモル)過硫酸ナトリウム(フルッカ、シグマ−アルドリッチ社、米国ミズーリ州セントルイス)をプラスチックボトル中へ入れた。ナルゲニック(登録商標)プラスチックボトルのキャップをしっかりと元に戻し、ボトルを手で激しく振盪した。ボトル内容物を、上に記載したような外套付き500mL3首フラスコ中へ注ぎ込んだ。次に混合物を反応容器中で30分間撹拌した。0.63mL(5.911ミリモル)のバイトロン−M(バイエル、米国ペンシルバニア州ピッツバーグ製の3,4−エチレンジオキシチオフェンの商品名)を反応混合物に撹拌しながら加えた。重合を約23℃で撹拌しながら進行させた。1時間7分後に、重合液体は非常に濃い青色に変わり、次にそれを2つの250mLプラスチックボトル中へ分配した。反応容器を解体する時、反応容器の撹拌シャフト上またはガラス壁上に何のゲル粒子にも気付かなかった。重合液体の総収量は297.10gであった。液体は、損失なしおよび全変換を仮定すると5.303%(重量/重量)固形分を含有する。固体は、主としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、PEDT/ナフィオン(登録商標)を含有すると推定される。
【0090】
2つのプラスチックボトルのうちの1つ中の148.75gの水性PEDT/ナフィオン(登録商標)を2つのイオン交換樹脂でさらに処理した。2つの樹脂の1つはレワチッチ(登録商標)S100(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル製の架橋ポリスチレンのスルホン酸ナトリウム塩に対する商品名)である。他のイオン交換樹脂はレワチッチ(登録商標)MP62WS(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル製の架橋ポリスチレンの第三級/第四級アミンの遊離塩基/塩化物に対する商品名)である。使用前に、2つの樹脂は、水に何の色も観察されなくなるまで別々に脱イオン水で洗浄した。次に7.75gのレワチッチ(登録商標)S100および7.8gのレワチッチ(登録商標)MP62WSをプラスチックボトル中で148.75g水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液と混合した。次にボトルを約23時間撹拌するためにローラー上に置いた。生じたスラリーを次に粗いフリットガラス漏斗を通して吸引濾過した。収量は110.2gであった。2.6%(重量/重量)分散液から乾燥した試料の元素分析に基づいて、試料は21.75%炭素、0.23%水素、1.06%窒素および2.45%硫黄を含有する。酸素およびフッ素のような他の元素は分析しなかった。フッ素の硫黄分析の妨害を排除するために、CeCl3および陽イオン交換樹脂を加えた。
【0091】
乾燥固体の重量分析に基づいて2.6%(重量/重量)固体を構成する、10gのPEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を10.01g脱イオン水と混合した。次に水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を導電率および発光特性について試験した。100〜150nmのITO厚さと発光用の15mm×20mmITO区域とを有するガラス/ITO基材(30mm×30mm)をきれいにし、その次に比較例2でのように酸素プラズマで処理した。水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を700rpmの回転速度でITO/ガラス基材上へスピンコートして96nm厚さをもたらした。PEDT/ナフィオン(登録商標)でコートしたITO/ガラス基材を真空オーブン中90℃で30分間乾燥した。PEDT/ナフィオン(登録商標)フィルムの導電率は2.4×10-3および5.7×10-4S/cmであると測定された。
【0092】
次にPEDT/ナフィオン(登録商標)層を、コビオン・カンパニー(独国フランクフルト)製のポリ(置換−フェニレンビニレン)であるスーパー−イエロー発光体(PDY131)でトップコートした。EL層の厚さはおおよそ70nmであった。総フィルム厚さはテンコール500表面プロファイラーで測定した。陰極については、BaおよびAl層を1×10-6トルの真空下にEL層のトップ上に蒸着した。Ba層の最終厚さは30Åであり、Al層の厚さは3000Åであった。デバイス性能は次の通り試験した。電流対電圧、発光強度対電圧、および効率は、ケイスレー・インスツルメント社(オハイオ州クリーブランド)製のケイスレイ236光源−測定装置、およびUDTセンサー社(カリフォルニア州ホーソーン)製の較正シリコンフォトダイオード付きS370オプトメーターで測定した。試験した5つの発光デバイスは、3.2〜3.3ボルトの範囲の動作電圧および200Cd/m2輝度で8.3Cd/A〜9.8Cd/Aの範囲の発光効率を示した。これらのデバイスは80℃で243〜303時間の範囲の応力半減期を有する。
【0093】
(比較例2)
本比較例は、水溶性ポリ(スチレンスルホン酸)を伴って製造された市販水性PEDT分散液から乾燥された固体フィルムの特性を例示する。
【0094】
エッチ.シー.スタルク有限責任会社(独国レーベルクーセン)製の約30mLのバイトロンP VP AI 4083(ロット#06Y76982)を室温で窒素気流下ガラスビーカー中で固体フィルムに乾燥した。乾燥フィルムフレークを約10mL脱イオン水と混合し、混合物を手で振盪した。水は青色に変わり、フレークのほとんどが水中に再分散されるにつれて非常に暗色になった。水はまた非常に酸性になり、EMサイエンス(EM Science)(米国ニュージャージー州ギブソン(Gibbson,NJ,USA)、カタログ#9590)製のカラーpHアスト(pHast)(登録商標)指示薬(Indicator)(pH0〜14範囲)を用いてゼロのpHを有した。
【0095】
(比較例3)
本比較例は、水溶性ポリ(スチレンスルホン酸)を伴って製造された別の市販水性PEDT分散液から乾燥された固体フィルムの吸湿を例示する。
【0096】
エッチ.シー.スタルク有限責任会社(独国レーベルクーセン)製の約30mLのバイトロン−P CH8000(ロット#CHN0004)を室温で窒素気流下ガラスビーカー中で固体フィルムに乾燥した。乾燥フィルムの主要部分を約10mL脱イオン水中での再分散性および酸性について試験し、比較例2に記載したように挙動することを見いだした。次に乾燥フィルムフレークのほんの一部分を、熱重量分析器(窒素中で20℃/分で)によって吸湿について分析する前に周囲条件で平衡させた。フィルムフレークは周囲条件で29.4%水を吸収した。この結果は、PEDTフィルムが非常に吸湿性であり、そのように水を吸収したいかなる湿気も比較例2に例示されるように非常に酸性になることを明らかに実証している。VP AI 4083およびCH8000PEDTの両方ともOLED用に緩衝層として市販されている。
【0097】
(実施例2)
本実施例は、発明水性PEDT/ナフィオン(登録商標)から乾燥された固体フィルムの特性を例示する。
【0098】
実施例1の水性PEDT/ナフィオン(登録商標)(2.6%)の約30mLを、室温で窒素気流下ガラスビーカー中で固体フィルムに乾燥した。乾燥フィルムフレークの主要部を脱イオン水と混合し、混合物を手で振盪した。フレークは輝いたままであり、フィルムが膨潤しないことを示唆した。驚くべきことに、水は無色であり、PEDT/ナフィオン(登録商標)が水中に再分散性でないことを意味した。さらに、水は、EMサイエンス(米国ニュージャージー州ギブソン、カタログ#9590)製のカラーpHアスト(登録商標)指示薬(pH0〜14範囲)を用いて7のpHを有した。この結果は、ポリマー酸が移動性でないことを明らかに示す。さらに、結果は、PEDT/ナフィオン(登録商標)の表面が圧倒的にスルホン酸陰イオンをPEDTによって電荷バランスされた導電層であることを示す。
【0099】
乾燥フィルムフレークのほんの一部を、熱重量分析器(窒素中で20℃/分で)によって吸湿について分析する前に周囲条件で平衡させた。フィルムフレークは、比較例3で例示されたような市販PEDTよりもはるかに少ないたったの5.6%水を吸収した。低い吸湿はまた、PEDT/ナフィオン(登録商標)の表面が圧倒的にスルホン酸陰イオンをPEDTによって電荷バランスされた導電層であることも示す。これは、それを比較例2および3で製造した乾燥フィルムよりも少ない吸湿性にする。
【0100】
(実施例3)
本実施例は、薄膜電界効果トランジスタでの電極としてのPEDT/ナフィオン(登録商標)の使用を例示する。
【0101】
実施例2に記載した乾燥フィルムの一部をトルエン、クロロホルムまたはジクロロメタン(薄膜電界効果トランジスタでの使用のための有機半導体ポリマーを溶解するために使用される一般的な有機溶剤)と混合した。フィルムフレークは有機溶剤のどれによっても膨潤しなかったし、また、フレークは溶剤を変色させもしなかった。この結果は、PEDT/ナフィオン(登録商標)フィルムが半導体ポリマー用の有機溶剤と相溶性であることを明らかに実証している。導電性ポリマーは水性分散液からキャストされるので、水は、トルエンのような有機芳香族溶剤、またはクロロホルムもしくはジクロロメタンのような塩素化溶剤に可溶性であるに過ぎない半導体ポリマーを攻撃しないであろう。
【0102】
実施例2で製造した水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液(2.6%、重量/重量)を導電率について試験した。100〜150nmのITO厚さを有するガラス/ITO基材(30mm×30mm)をきれいにし、その次に酸素プラズマで処理した。ITO基材に、抵抗測定のためにそれらの上にITO線を平行エッチングした。水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液をITO/ガラス基材上へスピンコートした。PEDT/ナフィオン(登録商標)でコートしたITO/ガラス基材を真空オーブン中90℃で30分間乾燥した。PEDT/ナフィオン(登録商標)フィルムの導電率は2.4×10-3および5.7×10-4S/cmであることが測定された。導電率は、薄膜電界効果トランジスタ電極に必要とされるものよりも低い。しかしながら、導電性ポリマーが分散液でコロイドとして存在する導電性PEDT/ナフィオン(登録商標)の使用は、ナノ−ワイヤ、金属のナノ粒子、またはカーボンナノチューブのような導電性充填材の組み込みを可能にさせる。例えば、15nmの直径および1.7×104S/cmの導電率を有する金属モリブデンワイヤは入手可能であり、(非特許文献2)に記載されているように、導電率を高めるために使用することができる。8nmの直径、20μmの長さ、および60S/cmの導電率を有するカーボンナノチューブもまた入手可能であり、(非特許文献3)に記載されているように、導電率を高めるために使用することができる。PEDT/ナフィオン(登録商標)のコロイド性のために、および粒子の表面が圧倒的に導電層であるので、いったんPEDT/ナフィオン(登録商標)が合体すると、高導電率のパーコレーション閾値に達するのに、より低い重量百分率の高導電性充填材が必要とされる。
【0103】
(実施例4)
本実施例は、変化する条件下ナフィオン(登録商標)の存在下でのエチレンジオキシチオフェンの重合を例示する。3つの異なるタイプのナフィオン(登録商標)樹脂(SE−10072、DE−1021、およびDE−1020)を使用した。
【0104】
外套付きフラスコに水性ナフィオン(登録商標)分散液および水を加えた。混合物を示された温度に加熱し、45分間撹拌した。この混合物に、順に、酸化剤、触媒およびジオキシチオフェンモノマーを加えた。添加が完了した後、示された温度で示された時間撹拌するに任せた。次に反応を、レワチッチ(登録商標)強酸性陽イオン樹脂(ナトリウム形態)およびレワチッチ(登録商標)弱塩基性陰イオン樹脂で、反応混合物の回分処理か、これら2つのイオン交換樹脂で充填したカラムを通過させるかのどちらかによってクエンチした。生じたスラリー混合物を次に室温で16時間撹拌し、次に濾紙(孔径>20〜25マイクロメートル)を通して濾過した。次に濾液を濾紙(孔径>6マイクロメートル)を通して濾過した。最後に、得られた濾液を0.45マイクロメートル・フィルターを通して濾過した。得られた濾液を、脱イオン水を加えることによってターゲット固体含有率の最終製品に調合し、振盪することによって十分に混合した。重合パラメーターを下の表1にまとめる。
【0105】
【表1】

【0106】
(実施例5)
本実施例は、実施例4からのPEDT/ナフィオン(登録商標)分散液から製造したフィルムの導電率の差を例示する。ガラス基材をパターン化ITO電極で製造した。緩衝層を、示された分散液からスピンキャストしてパターン化基材のトップ上にフィルムを形成し、その後真空オーブン中90℃で0.5時間ベーキングした。ITO電極間の抵抗は、ドライボックス中で高抵抗電位計を用いて測定した。フィルムの厚さは、デック−タック(Dec−Tac)表面プロファイラー(アルファ−ステップ(Alpha−Step)500表面プロファイラー、テンコール・インスツルメンツ(Tencor Instruments))を用いることによって測定した。緩衝層の導電率は、抵抗および厚さから計算する。
【0107】
結果を図3および4にグラフにより示す。組成物を変えることによって導電率を10-2Scm-1〜10-9Scm-1の範囲で十分に制御できたことを理解することができる。
【0108】
(実施例6)
本実施例は、OLEDで緩衝層として使用した異なるPEDT/ナフィオン(登録商標)組成物の性能を例示する。
【0109】
発光ダイオードを、活性な半導体発光性ポリマーとして可溶性ポリ(1,4−フェニレンビニレン)共重合体(C−PPV)(非特許文献4)を使用して製造し、C−PPVフィルムの厚さは700〜900Åであった。C−PPVは約560nmに発光ピークを持った黄−緑色光を発する。インジウム/錫酸化物を陽極として使用した。PEDT/ナフィオン(登録商標)フィルムを溶液からパターン化基材のトップ上にスピンキャストし、その後、真空オーブン中90℃で0.5時間ベーキングした。デバイス構造はITO/PEDT−ナフィオン(登録商標)/C−PPV/金属であった。デバイスを、基材としてのガラス上のITO(付着ITO/ガラス)を使用して製造した。デバイスを、陰極としてCaかBaかどちらかの層を使って製造した。金属陰極フィルムを、1×10-6トルよりも下の圧力で真空蒸着を用いてC−PPV層のトップ上に製造し、3cm2の面積の活性層をもたらした。蒸着をSTM−100厚さ/速度計(サイコン・インスツルメンツ社(Sycon Instruments,Inc.))で監視した。2,000〜5,000Åのアルミニウムを、30Åのバリウムまたはカルシウム層のトップ上に蒸着した。デバイスのそれぞれについて、電流対電圧曲線、光対電圧曲線、および量子効率を測定した。
【0110】
デバイスを、UV硬化性エポキシによって挟まれたカバーガラスを用いてカプセル化した。カプセル化したデバイスをオーブン中80℃で一定電流で運転した。デバイスを流れる全電流は、おおよそ200cd/m2または600cd/m2の輝度で約10mAであった。デバイスの輝度および電圧を記録して80℃での半減期および電圧増加を測定した。
【0111】
結果を下の表2に示す。
【0112】
【表2】

【0113】
(実施例7)
本実施例は、PEDT/ナフィオン(登録商標)の水性分散液の製造を例示する。ナフィオン(登録商標)は、米国特許公報(特許文献7)、実施例9の手順に類似の手順を用いて製造した、990のEWの12.5%(重量/重量)水性コロイド状分散液であった。
【0114】
63.87g(8.06ミリモルのナフィオン(登録商標)モノマー単位)ナフィオン(登録商標)水性コロイド状分散液、および234.47g脱イオン水を500mL外套付き3首丸底フラスコ中へ量り入れた。硫酸第二鉄および過硫酸ナトリウムの添加の前に混合物を45分間撹拌した。硫酸第二鉄の原液は、先ず、0.0141g硫酸第二鉄水和物(97%、アルドリッチ・カタログ#30,771−8)を脱イオン水で3.6363gの総重量へ溶解することによって製造した。次に、混合物を撹拌しながら0.96g(0.0072ミリモル)の硫酸第二鉄溶液および0.85g(3.57ミリモル)過硫酸ナトリウム(フルッカ、カタログ#71899)を反応フラスコ中へ入れた。次に混合物を、撹拌しながら0.312mL(2.928ミリモル)のバイトロン−M(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル製の3,4−エチレンジオキシチオフェンの商品名)を加える前に3分間撹拌した。循環流体によって制御した約20℃で撹拌しながら重合を進行させた。重合液体は13分後に青色に変わり始めた。16.1時間後に8.91gレワチッチ(登録商標)S100(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル製の架橋ポリスチレンのスルホン酸ナトリウム塩に対する商品名)、および7.70gレワチッチ(登録商標)MP62WS(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル製の架橋ポリスチレンの第三級/第四級アミンの遊離塩基/塩化物に対する商品名)を加えることによって反応を停止させた。2つの樹脂は、先ず、使用前に水に何の色もなくなるまで別々に脱イオン水で洗浄した。樹脂処理を5時間続けた。生じたスラリーを次にワットマン#54濾紙を通して吸引濾過した。それは濾紙を非常に速く通過した。収量は244gであった。固体%は、加えられた重合成分を基準にして約3.1%(重量/重量)であった。水性PEDT/ナフィオン(登録商標)のpHは、コーニング・カンパニー(Corning Company)(米国ニューヨーク州コーニング(Corning,New York,USA))製の315pH/イオン計(Ion meter)で3.8であると測定された。
【0115】
(実施例8)
本実施例はPEDT/ナフィオン(登録商標)の乾燥フィルムの非分散性を例示する。
【0116】
実施例7で製造した約10mLの水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を周囲温度で窒素気流で乾燥した。乾燥したPEDT/ナフィオン(登録商標)を10mL脱イオン水と混合した。水は何ヶ月も無色であり、透明のままであった。
【0117】
(実施例9)
本実施例は水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液のITOへの非腐食性を例示する。
【0118】
実施例7で製造した水性PEDT/ナフィオン(登録商標)を使用してITO基材上にスピンコートした。PEDT/ナフィオン(登録商標)上面を、X線光電子分光法(XPS)を用いて検査した。検出された何のインジウムまたは錫元素もなく、ITOが3.8のpHを有する水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液によって攻撃されないことを示唆した。
【0119】
(比較例4)
本比較例は乾燥バイトロン−Pの再分散性およびそのITOへの腐食性を例示する。
【0120】
CH8000(エッチ.シー.スタルク有限責任会社(独国レーベルクーセン)製のバイトロン−PのOLEDグレードの1つ)は、ポリスチレンスルホン酸(PSSA)を伴って製造された水性ポリ(3.4−ジオキシエチレンチオフェン)(PEDT)である。PEDT対PSSAおよびポリスチレンスルホネート(PSS)の比は1:20(重量/重量)である。PEDT/PSS/PSSAは1の範囲のpHを有する。水性分散液から周囲条件で乾燥されたPEDT/PSS/PSSAは水中に非常に容易に再分散した。PEDT/PSS/PSSAを実施例9でのようにITO上へコートした。上面を、X線光電子分光法(XPS)を用いて検査した。インジウムおよび錫元素の両方が検出され、ITOが約1のpHを有する水性PEDT/PSSA/PSS分散液によって攻撃されることを示唆した。
【0121】
(実施例10〜12)
これらの実施例は、多層コーティングでのPEDT/ナフィオン(登録商標)の使用を例示する。
【0122】
(実施例10)
本実施例は、水性PEDT/ナフィオン(登録商標)の多層コーティングを用いることによるより厚い層の形成を例示する。
【0123】
実施例7と同じ方法で製造した水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を、800rpmの回転速度で引き続き3回スピンコートした。各スピンコーティングの間に、キャストフィルムを真空で90℃でベーキングした。厚さを、テンコール・プロフィロメーターで2測定値の平均で採取した。
第1層=ベーキング後99nm
第2層(総厚さ)=ベーキング後203nm
第3層(総厚さ)=ベーキング後322nm
【0124】
厚さデータは、各付着が約100nmの厚さを有することを明らかに例示する。さらに、データはまた、乾燥PEDT/ナフィオン(登録商標)フィルムが水に再分散性でないことも示す。
【0125】
(実施例11)
本実施例は、PEDT/ナフィオン(登録商標)がITO陽極と接触している、2つの緩衝層を持ったOLEDでのPEDT/ナフィオン(登録商標)の使用を例示する。
【0126】
2つの水性PEDT分散液を発光試験用の二重緩衝層の構築のために使用した。1つは比較例4に記載したCH8000(ロット#KIM4952)である。他は実施例7に記載した水性PEDT/ナフィオン(登録商標)である。100〜150nmのITO厚さおよび発光用の15mm×20mmITO区域を有するガラス/ITO基材(30mm×30mm)をきれいにし、その次に酸素プラズマで処理した。水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を先ずITO/ガラス基材上へスピンコートし、その次に真空で90℃で30分間ベーキングした。次にPEDT/ナフィオン(登録商標)層をCH8000でトップコートし、その次に真空で90℃で30分間ベーキングした。二重層の総厚さは86nmである。次に二重緩衝層をBP−79(ダウ・ケミカル(Dow Chemical)、青色発光ポリマー)のキシレン溶液(1.2%重量/重量)でトップコートした。BP−79層の厚さは70nmである。次にBP−79層を、1×10-6トルの真空下2nm、20nmおよび500nmのそれぞれの厚さでLiF、Caそして最後にアルミニウムで蒸着した。二重層構築物から製造したデバイスは、2.9〜3.5Cd/Aの初期効率および3.8〜3.9ボルトの初期動作電圧を有する。室温でのデバイスの半減期は307時間である。
【0127】
これは、ITO用のパッシベーション層としてのPEDT/ナフィオン(登録商標)の有用性を例示する。
【0128】
(実施例12)
本実施例は、PEDT/ナフィオン(登録商標)がEL層と接触している、2つの緩衝層を持ったOLEDでのPEDT/ナフィオン(登録商標)の使用を例示する。
【0129】
CH8000(ロット#KIM4952)を実施例11に記載したITO/ガラス基材上へスピンコートし、その次に空気中ホットプレート上200℃で3分間ベーキングした。層の厚さは85nmであった。次にCH8000層を水性PEDT/ナフィオン(登録商標)でトップコートし、その次に真空で90℃で30分間ベーキングした。PEDT/ナフィオン(登録商標)層の厚さは21nmであった。次に二重緩衝層をBP−79(ダウ・ケミカル、青色発光ポリマー)のキシレン溶液(1.2%重量/重量)でトップコートした。BP−79層の厚さは70nmであった。次にBP−79層を、1×10-6トルの真空下2nm、20nmおよび500nmのそれぞれの厚さでLiF、Caそして最後にアルミニウムで蒸着した。二重層構築物から製造したデバイスは、2.5〜3.1Cd/Aの初期効率および4.1〜4.2ボルトの初期動作電圧を有した。室温でのデバイスの半減期は54時間であった。これは、ただCH8000だけを伴って製造されたデバイスの寿命と似ており、実施例11に記載した半減期よりもはるかに短い。比較は、ITO基材と接触したPEDT/ナフィオン(登録商標)のパッシベーション機能を例示する。
【0130】
(実施例13)
本実施例は、PEDT/ナフィオン(登録商標)緩衝層と緑色発光ポリマーとを使用するOLEDデバイスの改善された動作寿命を例示する。
【0131】
OLEDデバイスは次の通り製造した。15mm×20mmITO区域を有する30mm×30mmガラス基材を溶剤および酸素プラズマできれいにした。ITO層は厚さが100〜150nmであった。水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を、空気中でITO/ガラス基材上へスピンコートし、真空中90℃で30分間ベーキングした。乾燥フィルム厚さは50〜100nm範囲にあった。次にこれらの基材を、約1ppm酸素および水レベルの窒素充満ドライボックス中へ移した。発光ポリマー(ダウ・グリーン(DOW Green)K2)(ダウ・ケミカル社、ミシガン州ミッドランド(Midland,MI))をPEDT/ナフィオン(登録商標)層のトップ上にスピンコートした。ダウK2溶液はキシレン溶剤中約1%固形分であった。次にフィルムをドライ−ボックス中130℃で5分間2度目のベーキングをした。K2層の厚さは約75nmであった。次にこれらの基材をサーマル・エバポレーター中へ移し、陰極をおおよそ1×10-6トルの真空下に蒸着した。陰極は約5nmのBa、引き続き約0.5ミクロンのAlよりなった。最後にこれらのデバイスをドライ−ボックスから取り出し、環境室中での動作寿命試験の前に密封した。これらのディスプレイについての動作寿命試験条件は、初期輝度200cd/m2、DC一定電流、80℃の試験温度(試験過程を加速するために)であった。
【0132】
結果を図5にグラフにより示す。PEDT/ナフィオン(登録商標)のディスプレイについての推定寿命は、PEDT/PSSAのディスプレイについてのそれよりもおおよそ10倍長かった。初期動作電圧は、PEDT/ナフィオン(登録商標)について約10%より低かった。さらに、電圧増加速度は約25%より低かった。
【0133】
(実施例14)
本実施例は、PEDT/ナフィオン(登録商標)緩衝層と赤色発光ポリマーとを使用するOLEDデバイスの改善された動作寿命を例示する。
【0134】
OLEDデバイスは次の通り製造した。15mm×20mmITO区域を有する30mm×30mmガラス基材を溶剤および酸素プラズマできれいにした。ITO層は厚さが100〜150nmであった。水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を、空気中でITO/ガラス基材上へスピンコートし、真空中90℃で30分間ベーキングした。乾燥フィルム厚さは50〜100nm範囲にあった。次にこれらの基材を、約1ppm酸素および水レベルの窒素充満ドライボックス中へ移した。発光ポリマー(AEF2157)(コビオン有限責任会社、独国フランクフルト(Covion GmbH,Frankfurt,Germany))をPEDT/ナフィオン(登録商標)層のトップ上にスピンコートした。AEF2157溶液はトルエン溶剤中約1%固形分であった。次にフィルムをドライ−ボックス中130℃で5分間2度目のベーキングをした。AEF2157層の厚さは約75nmであった。次にこれらの基材をサーマル・エバポレーター中へ移し、陰極をおおよそ1×10-6トルの真空下に蒸着した。陰極は約5nmのBa、引き続き約0.5ミクロンのAlよりなった。最後にこれらのデバイスをドライ−ボックスから取り出し、環境室中での動作寿命試験の前に密封した。これらのディスプレイについての動作寿命試験条件は、初期輝度170cd/m2、DC一定電流、80℃の試験温度(試験過程を加速するために)であった。
【0135】
結果を図6にグラフにより示す。PEDT/ナフィオン(登録商標)のディスプレイについての推定寿命は、PEDT/PSSAのディスプレイについてのそれよりもおおよそ4倍長かった。初期動作電圧は、PEDT/ナフィオン(登録商標)について約20%より低かった。また、電圧増加速度は約3倍を超える低さだった。
【0136】
(実施例15)
本実施例は、PEDT/ナフィオン(登録商標)緩衝層と青色発光ポリマーとを使用するOLEDデバイスの改善された動作寿命を例示する。
【0137】
OLEDデバイスは次の通り製造した。15mm×20mmITO区域を有する30mm×30mmガラス基材を溶剤および酸素プラズマできれいにした。ITO層は厚さが100〜150nmであった。水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液を、空気中でITO/ガラス基材上へスピンコートし、真空中90℃で30分間ベーキングした。乾燥フィルム厚さは50〜100nmの範囲にあった。次にこれらの基材を、約1ppm酸素および水レベルの窒素充満ドライボックス中へ移した。発光ポリマー(SCB−11)(ダウ・ケミカル社、ミシガン州ミッドランド)をPEDT/ナフィオン(登録商標)層のトップ上にスピンコートした。SCB−11溶液はキシレン溶剤中約1%固形分であった。次にフィルムをドライ−ボックス中130℃で5分間2度目のベーキングをした。SCB−11層の厚さは約75nmであった。次にこれらの基材をサーマル・エバポレーター中へ移し、陰極をおおよそ1×10-6トルの真空下に蒸着した。陰極は約2nmのLiF、引き続き20nmのCa、および次に約0.5ミクロンのAlよりなった。最後にこれらのデバイスをドライ−ボックスから取り出し、環境室中での動作寿命試験の前に密封した。これらのディスプレイについての動作寿命試験条件は、初期輝度170cd/m2、DC一定電流、80℃の試験温度(試験過程を加速するために)であった。
【0138】
結果を図7にグラフにより示す。PEDT/ナフィオン(登録商標)のディスプレイについての推定寿命は、PEDT/PSSAのディスプレイについてのそれよりもおおよそ10倍長かった。初期動作電圧は、PEDT/ナフィオン(登録商標)について約20%より低かった。また、電圧増加速度も6倍を超える低さだった。
【0139】
(実施例16〜21)
これらの実施例は、異なるPEDT緩衝層に対するpHの影響を例示する。
【0140】
(実施例16)
本実施例はPEDT/ナフィオン(登録商標)の製造を例示する。ナフィオン(登録商標)は、米国特許公報(特許文献7)、実施例9の手順に類似の手順を用いて製造した、1050のEWの12.5%(重量/重量)水性コロイド状分散液であった。
【0141】
150.90g(17.25ミリモルのナフィオン(登録商標)モノマー単位)ナフィオン(登録商標)(1050EW)水性コロイド状分散液(12%、重量/重量)および235.11g脱イオン水を500mLナルゲネ(Nalgene)(登録商標)プラスチックボトル中へ量り入れ、次にそれを約2時間転がした。希釈したコロイド状分散液を次に500mL外套付き3首丸底フラスコに移した。移し替えでの分散液の少損失のために、146.18gナフィオン(登録商標)だけが移され、それは反応フラスコ中16.71ミリモルのナフィオン(登録商標)に相当した。硫酸第二鉄の原液は、先ず、0.0339g硫酸第二鉄水和物(97%、アルドリッチ、カタログ#30,771−8)を脱イオン水で3.285gの総重量へ溶解することによって製造した。次に、混合物を撹拌しながら1.50g(0.0315ミリモル)の硫酸第二鉄溶液および1.76g(7.392ミリモル)過硫酸ナトリウム(フルッカ、カタログ#71899)を反応フラスコ中へ入れた。次に、撹拌しながら0.647mL(6.071ミリモル)のバイトロン−Mを加える前に混合物を5分間撹拌した。循環流体によって制御した約20℃で撹拌しながら重合を進行させた。重合液体は5分後に青色に変わり始めた。実施例7でのように、3.2時間後に20.99gレワチッチ(登録商標)S100および20.44gレワチッチ(登録商標)MP62WSを加えることによって反応を停止させた。2つの樹脂は、先ず、使用前に水に何の色もなくなるまで別々に脱イオン水で洗浄した。樹脂処理を21時間続けた。生じたスラリーを次にワットマン#54濾紙を通して吸引濾過した。濾過はかなり容易であった。固体%は、加えられた重合成分を基準にして約4.89%(重量/重量)であった。
【0142】
2.6%固体(重量/重量)にするために、255.6gのPEDT/ナフィオン(登録商標)に480.8gの総重量まで脱イオン水を加えた。希釈した水性PEDT/ナフィオン(登録商標)のpHは、コーニング・カンパニー(米国ニューヨーク州コーニング)製の315pH/イオン計で3.9であると測定された。
【0143】
(実施例17)
本実施例は2.2のpHのPEDT/ナフィオン(登録商標)分散液の製造を例示する。
【0144】
実施例16で製造した希釈PEDT/ナフィオン(登録商標)を出発原料として使用した。3.07gダウエックス(Dowex)550A樹脂(アルドリッチ・カタログ#43,660−7)(強塩基性陰イオン交換樹脂)を加え、1.2時間撹拌するままにした。ダウエックス550Aは、先ず、使用前に水に何の色もなくなるまで脱イオン水で洗浄した。混合物を濾過し、濾液に3.0gアンバーリスト(Amberlyst)15(アルドリッチ・カタログ#21,639,9、プロトン陽イオン交換樹脂)を加え、45分間撹拌するままにし、濾過した。濾液に3.0gの新アンバーリスト15を加え、15時間撹拌するままにして、OLED試験のために濾過した。アンバーリスト15は、先ず、使用前に脱イオン水で数回洗浄した。アンバーリスト15で処理した水性PEDT/ナフィオン(登録商標)のpHは2.2であると測定された。
【0145】
(実施例18)
本実施例は4.3のpHのPEDT/ナフィオン(登録商標)分散液の製造を例示する。
【0146】
PEDT/ナフィオン(登録商標)のバッチを実施例16と同じ方法で製造した。61.02gの製造したままの分散液を45.05g脱イオン水で2.8%(重量/重量)に希釈した。希釈した分散液は4.3のpHを有した。
【0147】
(実施例19)
本実施例は、リチウム塩を使用する7.0のpHのPEDT/ナフィオン(登録商標)分散液の製造を例示する。
【0148】
リチウムイオンで中和されたPEDT/ナフィオン(登録商標)の分散液を下に記載する。これは2段階法であり、先ず、合成から残しておいた残留金属イオンを、プロトンと交換することによって除去し、次に第2のイオン交換を用いてこれらのプロトンをリチウムイオンと交換する。これは高純度の分散液を与える。
【0149】
実施例16に記載したような希釈PEDT/ナフィオン(登録商標)を、先ず、5.13gダウエックス550A樹脂(アルドリッチ・カタログ#43,660−7)(強塩基性陰イオン交換樹脂)で処理し、2時間撹拌するままにした。ダウエックス550Aは、先ず、使用前に水に何の色もなくなるまで脱イオン水で洗浄した。混合物を濾過し、濾液を4.13gアンバーリスト15(アルドリッチ・カタログ#21,639,9、プロトン陽イオン交換樹脂)で処理し、10時間撹拌するままにし、濾過した。次に3.14gの新アンバーリスト15を加え、1.5時間撹拌するままにした。最後に分散液を濾過した。次に37.82gの酸性化PEDT/ナフィオン(登録商標)を1.99g、2.33g、2.06g、2.08gおよび2.00gのアンバーリスト15のリチウム塩で処理した。各新しいアンバーリスト15のリチウム塩の置き換えの間に、混合物を濾過した。また、混合物を各濾過の間に撹拌し、総樹脂処理時間は7時間であった。処理したナフィオン(登録商標)のpHは7.0であると測定された。
【0150】
(実施例20)
本実施例は、ナトリウム塩を使用する7.2のpHのPEDT/ナフィオン(登録商標)分散液の製造を例示する。
【0151】
ナトリウムイオンで中和されたPEDT/ナフィオン(登録商標)の分散液を記載する。出発原料は、実施例16に記載したリチウムイオン分散液である。さらなる処理は、下に記載するようにリチウムイオンをナトリウムイオンで交換した。これは高純度の分散液を与える。
【0152】
実施例16に記載したような希釈PEDT/ナフィオン(登録商標)を、先ず、2.76g、3.57g、3.55g、および3.25gレワチッチ(登録商標)S100で処理した。各新しい樹脂の置き換えの間に、混合物を濾過した。また、混合物を各濾過の間に撹拌し、総樹脂処理時間は7時間であった。処理したナフィオン(登録商標)のpHは7.2であると測定された。
【0153】
(比較例5)
本比較例は修正されたpH値のPEDT/PSSA分散液の製造を例示する。
【0154】
(試料化合物5−A)
PEDT/PSSA(AI 4083、独国レーベルクーセンのエッチ.シー.スタルク有限責任会社製のバイトロン−PのOLEDグレード)は1.8のpHを有する。
【0155】
(試料化合物5−B)
58.9gの脱イオンAI 4083(脱イオンAI 4083としてエッチ.シー.スタルクから購入した)に、総量10gのアンバーリスト15のリチウム塩を24時間かけて加えた。混合物を全時間中撹拌した。混合物を濾過し、集めた濾液のpHは3.2であると測定された。
【0156】
(試料化合物5−C)
58.18gの脱イオンAI 4083に、総量14gのアンバーリスト15のバリウム塩を約18時間かけて加えた。混合物を全時間中撹拌した。混合物を濾過し、集めた濾液のpHは3.4であると測定された。
【0157】
(試料化合物5−D)
エッチ.シー.スタルク有限責任会社から購入した、ナトリウムなしであるはずである脱イオンAI 4083をテトラブチルアンモニウム塩への変換に使用した。50.96gの脱イオンAI 4083に、総量約9gのアンバーリスト15のテトラブチルアンモニウム塩を20時間かけて加えた。混合物を全時間中撹拌した。混合物を濾過し、集めた濾液のpHは4.3であると測定された。
【0158】
同様に、AI 4083の試料をリチウムおよびセシウムイオン交換樹脂で処理して、1.8よりも大きいpH値の2つの追加シリーズ試料をもたらした。
【0159】
(実施例21)
本実施例は、実施例16〜21および比較例5の分散液から作った緩衝層で製造したOLEDの性能を例示する。
【0160】
デバイスを実施例6に記載したのに類似の方法で製造した。
【0161】
次のELポリマーを使用した。
【0162】
【表3】

【0163】
ここで、「ポリスピロ」はポリマー・スピロ−ビフルオレンを意味する。
【0164】
図8(a)〜8(c)は、PEDT/PSSA緩衝層を含有する、そのpHが調節されたOLEDの初期デバイス性能を示す。明らかに、バイトロン−PのpHを2.5よりもはるかに上に高くすると、OLEDデバイスの性能を著しく低下させる。図8(a)および8(b)は、バイトロン−P AI4071、およびバイトロン−P4083(2つの類似の製品であるが異なる導電率の製品)を比較している。それらは両方とも、ナトリウムイオン交換樹脂を用いてそれらのpHを調節された。図8(c)および8(d)は、リチウムおよびセシウムイオン交換樹脂が、それぞれ、同じ現象を起こさせることを示す。
【0165】
図9(a)〜9(c)は、PEDT/ナフィオン(登録商標)緩衝層を含有する、そのpHが調節されたOLEDの初期デバイス性能を示す。PEDT/PSSAを含有するデバイスとは違って、これらのデバイスはpH中性の緩衝層によって性能低下しない。
【0166】
動作寿命を評価するために、デバイスを、200cd/m2の初期輝度を与えるための一定DC電流で動作させ、それらの劣化を促進するために80℃のオーブン中に入れた。デバイスを、それらの光出力および動作電圧の変化について絶えず監視した。動作寿命は、輝度がその元の値の半分に(すなわち、100cd/m2に)落ちる時間と定義した。結果を下の表3に示す。
【0167】
【表4】

【0168】
明らかにPEDT/PSSAデバイスは狭いpH範囲(pH<約2.5)についてのみ良好な寿命を与えるが、PEDT/ナフィオン(登録商標)デバイスははるかにより広いpH範囲(少なくともpH1.8〜7.0)にわたって動作することができる。
【0169】
(実施例22)
本実施例は、PEDT/ナフィオン(登録商標)がITO接触面をエッチングしないことを例示する。
【0170】
ITO試験基材は次の通り製造した。約1300オングストロームのITOでコートしたガラス基材はアプライド・フィルムズ社(Applied Films Inc.)から入手した。ITO層を、幅が300ミクロンのITOストライプのストライプ・パターンへエッチングした。これらのストライプは、基材ガラスがストライプ間に露出するように、ITO層の全深さまで伸びていた。これらのストライプは十分に画定されたエッジを有した。約10オングストロームの垂直再現性を持ったテンコール・プロフィロメーターを用いてITOストライプの高さを測定した。試料をCH8000またはPEDOT:ナフィオン中に室温で様々な時間浸漬した。ITO厚さを測定する前に、いかなる有機残渣も除去するために試料をDI水中でリンスし、15分間プラズマ灰化した。各場合に、ITO厚さを2つの別個の基材上の4ストライプについて測定し、各測定について合計8データ・ポイントを与えた。PEDT/ナフィオン(登録商標)溶液は、実施例7に記載したように製造され、3.8のpHを有した。PEDT/PSSA溶液は、約1のpHのバイトロンCH8000であった。結果を図10に示す。PEDT/PSSA中への24時間の浸漬後に、ITO厚さが約1%だけ減少したことに留意されたい。これは、ITOフィルムの光干渉色において明らかに目に見えた。デバイス製造では、ITOの液体PEDT/PSSAへの暴露は典型的にはたったの2、3秒続くに過ぎない。しかしながら、PEDT/PSSAフィルム中の残留湿気は、デバイスの寿命の全体にわたってITOの腐食を永続させるであろう。ITO層の1%の溶解は、PEDT/PSSA層中に高濃度のインジウムおよび錫イオンをもたらすであろう。
【0171】
(実施例23)
本実施例は、水性PEDT/ナフィオン(登録商標)分散液とPEDT/PSSAとの相溶性を例示する。
【0172】
PEDT/PSSA(バイトロン−P、グレードAI 4083)を、実施例16からの水性PEDT/ナフィオン(登録商標)との相溶性を試験するために選択した。95:5PEDT/ナフィオン(登録商標):AI 4083から5:95PEDT/ナフィオン(登録商標):AI 4083まで様々の水性ブレンドを製造した。すべての分散液ブレンドは均質であり、相分離しないことが見いだされた。これらのブレンドは、OLEDおよび他の電気的に活性なデバイスの製造に有用である。
【0173】
(実施例24)
本実施例は、全カラーについて共通の陰極金属および共通の緩衝層ポリマーを用いるカラーOLEDディスプレイの製造および性能向上を例示する。
【0174】
OLEDデバイスは次の通り製造した。15mm×20mmITO区域を有する30mm×30mmガラス基材を溶剤および酸素プラズマできれいにした。ITO層は厚さが100〜150nmであった。水性緩衝(実施例16でのように製造したPEDOT/ナフィオン(登録商標)か、バイトロン−P CH8000かのどちらか)分散液を、空気中でITO/ガラス基材上へスピンコートし、真空中90℃で30分間ベーキングした。乾燥フィルム厚さは範囲50〜100nmにあった。次にこれらの基材を、約1ppm酸素および水レベルの窒素充満ドライボックス中へ移した。発光ポリマー(レッド:コビオンAEF2198、またはグリーン:ダウK2、またはブルー:コビオンHS670)を緩衝層のトップ上にスピンコートした。発光ポリマー溶液は、トルエンまたはキシレンのような一般的な有機溶剤中約1%固形分であった。次にフィルムをドライ−ボックス中130℃で5分間2度目のベーキングをした。発光層の厚さは約75nmであった。次にこれらの基材をサーマル・エバポレーター中へ移し、陰極をおおよそ1×10-6トルの真空下に蒸着した。陰極は次のもの(i)約5nmのBa、引き続き約0.5ミクロンのAl、または(ii)約5nmのCa、引き続き約0.5ミクロンのAl、または(iii)約5nmのLiF、引き続き約20nmのCa、引き続き0.5ミクロンのAlのうちの1つよりなった。最後にこれらのデバイスをドライ−ボックスから取り出し、環境室中での動作寿命試験の前に密封した。これらのディスプレイについての動作寿命試験条件は、初期輝度200cd/m2、DC一定電流、80℃の試験温度(試験過程を加速するために)であった。結果を下の表4に示す。
【0175】
【表5】

【0176】
本発明はその幾つかの実施形態に関して詳細に記載してきたが、修正および変形は記載されているおよび特許請求されているものの精神および範囲内であることが理解されるであろう。
【0177】
(実施例25)
本実施例は、共分散液ありの水中のPEDOT/ナフィオン(登録商標)分散液の製造を例示する。ナフィオン(登録商標)は、米国特許公報(特許文献7)、実施例9の手順に類似の手順を用いて製造した、1050のEWの12%(重量/重量)水性コロイド状分散液であった。
【0178】
95.41g(10.89ミリモルのナフィオン(登録商標)モノマー単位)ナフィオン(登録商標)(1050EW)水性コロイド状分散液(12.0%、重量/重量)、185.12g脱イオン水および14.49g1−プロパノール(アルドリッチ・カタログ#49,619−7)を500mL外套付き3首丸底フラスコへ量り入れた。混合物を、0.421mLのバイトロン−Mジオキシチオフェンモノマーの添加前に10分間撹拌した。それを、硫酸第二鉄および過硫酸アンモニウムの添加前に約1時間撹拌した。硫酸第二鉄の原液は、先ず、0.0722g硫酸第二鉄水和物(97%、アルドリッチ・カタログ#30,771−8)を脱イオン水で21.44gの総重量へ溶解することによって製造した。次に4.47g(0.0452ミリモル)の硫酸第二鉄原液および1.65g(7.23ミリモル)過硫酸アンモニウムを、混合物を撹拌しながら反応フラスコ中へ入れた。最終重合液体で、水と1−プロパノールとの間の比は9対5であった。循環流体によって制御した約20℃で撹拌しながら重合を進行させた。重合液体は直ちに青色に変わり始めた。17時間後に13.89gレワチッチ(登録商標)S100および13.89gレワチッチ(登録商標)MP62WSを加えることによって反応を停止させた。2つの樹脂は、先ず、使用前に水に何の色もなくなるまで別々に脱イオン水で洗浄した。樹脂処理を5時間続けた。生じたスラリーを次にワットマン#54濾紙を通して吸引濾過した。それは容易に濾紙を通過した。固体%は、加えられた重合成分を基準にして約4.5%(重量/重量)であった。
【0179】
PEDOT/ナフィオン(登録商標)分散液のpHは、コーニング・カンパニー(米国ニューヨーク州コーニング)製の315pH/イオン計で5.3であると測定された。表面張力は、FTA T10張力計(Tensiometer)モデル1000IUD(KSVインスツルメンツ社、フィンランド国(KSV Instruments LTD、Finland))で20.6℃で41.9ミリニュートン/メートルであると測定された。表面張力は、実施例7でのように、共分散液なしで製造された水性PEDOT/ナフィオン(登録商標)のそれ(約73mN/m)よりもはるかに低かった。分散液を濾過性について試験した。40mLの分散液がフィルターを取り替えることなしに0.45μmHVフィルター(ミリポア・ミレックス−HV25mm、カタログ#SLHVR25KS)を通過した。粘度が流体流動状況から判断して共分散液なしで製造された同じ固体%のそれよりもかなり低いこともまた注目された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジオキシチオフェンと少なくとも1種のコロイド形成ポリマー酸との水性分散液を含み、前記コロイド形成ポリマー酸が、ハロゲンおよび水素の合計数の少なくとも50%がフッ素原子である高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマーであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリジオキシチオフェンが構造
【化1】

(式中、
1およびR1’はそれぞれ独立して水素および1〜4個の炭素原子を有するアルキルから選択されるか、
またはR1およびR1’は一緒になって、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン鎖であって任意選択的に1〜12個の炭素原子を有するアルキルもしくは芳香族基、または1,2−シクロヘキシレン基で置換されてもよいアルキレン鎖を形成し、かつ、
nはよりも大きい)
を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コロイド形成ポリマー酸がパーフルオロエチレンスルホン酸を含み、かつ、前記ポリチオフェンがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−270117(P2009−270117A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−185739(P2009−185739)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【分割の表示】特願2004−540202(P2004−540202)の分割
【原出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】