ポリマ微粒子の溶質充填量の制御方法
三元溶媒系に溶解した溶質を含む浴に微粒子を浸漬することにより溶質充填ポリマ微粒子が得られる。三元系の第一の溶媒は、溶質と、微粒子を製造しようとするポリマとの双方に対して強い溶媒であり、第二の溶媒は溶質およびポリマの双方に対して弱い溶媒または非溶媒であり(調節溶媒)、第三の溶媒は溶質およびポリマの双方に対して弱い溶媒または非溶媒であるが、第一・第二いずれの溶媒とも相溶性を有し、第一および第二の溶媒に対して共溶媒として働く。微粒子ポリマに対する溶質の量、および三元溶媒系の組成、特に調節溶媒の量を調節することによって微粒子に含有される溶質の量を制御することができる。この方法は相互に区別可能な染料、特に蛍光染料を充填した、コンビナトリアルにコードされた微粒子のライブラリを作成するのに有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、たとえば染色粒子の製造に際して、連続的液相と分散固相との間の溶質の分配を制御する方法に関する。
【0002】
発明の背景
溶質、たとえば染料を取り込んだポリマ粒子は、フローサイトメトリーなどのアッセイの検出方法において、生体分子のマーカーとして、あるいは内部標準や較正用標準として広く使用されている。蛍光性ポリマ粒子の製造方法としては大別して4種が従来知られている。すなわち (A) 染料とモノマの共重合、(B) 予め形成された粒子への水溶性または油溶性染料の分配、(C) 予め形成された粒子の表面機能付与、(D) 染料液滴のカプセル化である。また内核-外殻構造の粒子、すなわちポリマ内核とポリマ外殻からなる粒子を得る重合法も使用されている。
【0003】
A. 共重合に基づく方法
微小粒子を形成するためのモノマ単位を蛍光染料の存在下で重合させることにより蛍光性微粒子を合成することができる。米国特許第 4,326,008 号 (Rembaum, 1982) には官能化アクリルモノマと重合可能な蛍光性コモノマとの共重合により蛍光性微粒子を合成する方法が記載されている。この方法は一般に重合可能な染料分子を必要とする。この種の方法は一般に、蛍光染料によって重合が阻害され、あるいは重合反応時の反応種によって蛍光染料が漂白されるおそれがあるという欠点を有している。
【0004】
米国特許第 4,267,235 号 (Rembaum, 1981) には懸濁重合法によるポリグルタルアルデヒド微小球の合成方法が記載されている。蛍光性微小球の製造には共可溶化したイソチオシアン酸フルオレセイン (FITC) を用いる。この共可溶化染料分子とモノマとの懸濁重縮合により、染料の分解や重合阻害の問題はほぼ回避されるが、生成物は粒度分布幅が広いため、単分散蛍光性微小球の製造方法としては不適当である。
【0005】
米国特許第 5,073,498 号 (Schwartz et al., 1991) にはシード重合による蛍光性微粒子の製造方法が記載されている。モノマおよび開始剤を含む疎水性蛍光染料一又はそれ以上を溶解し、この溶液を予め膨潤させた微粒子に添加する。同特許には1つの粒子に3種の異なった染料を導入する方法が開示されている。この方法は蛍光染料によって重合が阻害され、あるいは重合反応時に蛍光染料が漂白されるおそれがあるという欠点を有している。
【0006】
内核-外殻型粒子を製造する方法としては、表面官能基を利用しない多段乳化重合が知られている。米国特許第 5,952,131 号 (Kumaceheva et al.) に開示されている染色内核-外殻型粒子の製造方法は、2種のモノマ(メタクリル酸メチルとジメタクリル酸エチレングリコール)と蛍光染料(4-アミノ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールで標識したメタクリル酸メチル)の混合物の多段半連続重合に基づくものである。得られた粒子を連鎖移動剤(ドデシルメルカプタン)の存在下でメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルと共重合することにより外殻に包み込む。Kumaceheva らは表面官能基を有する内核-外殻型ポリマを製造しておらず、またそれを目的ともしていない。
【0007】
米国特許第 4,613,559 号 (Ober et al.) には膨潤によるカラートナーの製造法が開示されている。エタノール、ポリアクリル酸、メチルセロソルブおよび過酸化ベンゾイルの存在下でスチレンを分散重合してポリスチレン粒子 (5.5ミクロン) を得、これをドデシル硫酸ナトリウムおよびアセトンの水溶液に分散させて膨潤させる。この分散液に乳化染料溶液 (Passaic Oil Red 2144 の塩化メチレン溶液をドデシル硫酸ナトリウム水溶液で乳化)を加えることにより着色粒子が得られる。
【0008】
表面官能基を有する内核-外殻型粒子の製造に重合法が用いられている。米国特許第 5,395,688 号 (Wang et al.) には、ポリマ内核の周囲に磁性金属酸化物を含むポリマを被覆して成る磁性蛍光性ポリマ粒子が開示されている。最終的なポリマ外殻は生体材料との共有結合を容易にするため機能性モノマを用いて合成される。Wang らの方法は (1) 蛍光性の内核粒子の製造、(2) 乳化剤非存在、過剰の開始剤存在の条件下でのフリーラジカル重合により蛍光性内核粒子上に形成されたポリスチレン外殻への金属酸化物の包含、(3) 得られた磁性蛍光性粒子の機能性ポリマ層による被覆、の3段階を基にしている。機能性ポリマはカルボキシル基、アミノ基、またはスルホン基を有する。Wang らは着色内核粒子を得る方法については記述しておらず、またフリーラジカル重合の過程での染料の分解の問題にも触れていない。
【0009】
米国特許第 4,829,101 号 (Kramer et al.) には内核-外殻型重合による 2ミクロンの蛍光性粒子が開示されている。内核はメタクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、ジメタクリル酸エチレングリコールの混合物を 80°C で過硫酸アンモニウムを開始剤として重合することにより得られる。外殻は内核上に、まず蛍光染料(蛍光−緑−金)を含む同じモノマを半連続的に加え、反応終了まで2種のモノマ混合物、すなわちメタクリル酸メチル、ビスメタクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸グリシジルを含む第1の混合物とメタクリルアミドおよび開始剤を含む第2の混合物を、1時間にわたって加えることによって形成する。重合開始剤としては 4,4'-アゾビス-(シアノ吉草酸) を用いる。
【0010】
Okubo et al., Colloid Polym. Sci. 269: 222-226 (1991), Yamashita et al., Colloids and Surfaces A 153: 153-159 (1999) および米国特許第 4,996,265 号にはシード分散重合によるミクロンサイズの単分散ポリマ粒子の製造方法が記載されている。シード重合に先立ち、シードポリマ粒子を大量のモノマによって予め膨潤させておく。膨潤はシード粒子、モノマ、安定剤、開始剤を含むエタノール・水混合物に水を緩やかに連続的に滴下することで行う。水の添加により連続相におけるモノマの溶解度が減少する結果、モノマが析出してシードポリマ粒子の表面または内部に吸収される。シードポリマ粒子に吸収されたモノマを重合させれば大型の単分散ポリマ粒子が得られる。
【0011】
B. 水溶性または油溶性染料の分配
予め膨潤させた微粒子に染料分子を分配することにより蛍光性粒子を製造する方法は最初に L.B. Bangs (Uniform Latex Particles, Seragen Diagnostics, Inc., 1984, p.40) が報告したものである。この方法では染料分子または染料分子混合物を、ポリマ微粒子を含む適当な溶媒または溶媒混合物に溶解する。微粒子は溶媒を吸収して膨潤し、その際に溶媒混合物中に存在する染料の一部も吸収される。この染色過程は通常溶媒を除去することで停止される。染料の分配の程度は染料濃度の調節によって制御され、また複数の染料を用いる場合には個々の染料の相対量によっても制御される。このようにして染色された微粒子は安定度が高く均一であるが、溶媒の選択によっては希望する分配率を達成するために大過剰の染料が必要であることが多く、高価な染料の損失が大きくなる。
【0012】
米国特許第 5,723,218 号 (Haugland et al., 1998)、同 5,786,219 号 (Zhang et al., 1998)、同 5,326,692 号 (Brinkley et al., 1994)、同 5,573,909 号 (Singer et al., 1996) には、有機溶媒ないし有機溶媒混合物中で膨潤および染料分配を行うことによる各種の蛍光色粒子の製造方法が記載されている。記載されている粒子は多様であり、たとえば複数の染料を含む蛍光性粒子、Stokes シフトが高くかつ制御可能な粒子、球形の蛍光ゾーンを有する粒子などがある。
【0013】
国際特許出願 WO 99/19515 号 (Chandler et al., 1997) には2種の染料を用いてレシオメトリックにコードされた一連の微粒子を製造する改良された方法が記載されており、64種のコードを持つ微粒子を製造する手順が報告されている。また有機溶媒と無水アルコールとの混合物を用いる膨潤浴組成物も開示されている。
【0014】
米国特許第 5,266,497 号 (Matsudo et al., 1993) には、水中で乳化した有機溶媒に溶解した疎水性染料を用いる、染料で標識したポリマ粒子の製造方法が記載されている。この粒子は免疫クロマトグラフィーで使用することを目的としている。
【0015】
米国特許第 4,613,559 号 (Ober et al., 1986) には油溶性染料を用いる着色ポリマ粒子の製造方法が記載されている。ここに開示されている方法では、水とアセトンの混合物中で乳化したジクロロメタン染料溶液を用いて粒子を着色する。
【0016】
C. 微粒子の内表面または外表面の官能化
表面官能化による蛍光性粒子の製造は、予め形成された微粒子の表面の反応基に一又はそれ以上の染料を共有結合的に付着させる方法である。この方法では染料分子が外部環境に露出した状態になるため、染料の分解が早められる。また表面官能化によって粒子表面が強い疎水性を持つことが多く、このため好ましくない非特異的吸着が起こりやすく、粒子表面上または粒子近傍の生体分子の活性が失われることもある。これらの問題は、担体粒子表面に染料分子でなく着色微粒子を付着させることにより回避できる。少数の染料を用いてエンコードされた粒子の大きな集合を得る(比率エンコーディング)場合にこの方法が効率的であるかどうかは明らかでない。
【0017】
米国特許第 4,487,855 号 (Shih, 1984)、米国特許第 5,194,300 号 (Cheung, 1993)、米国特許第 4,774,189 号 (Schwartz, 1988) には一または複数の染料を予め形成された粒子表面に共有結合的に付着させることによる着色または蛍光性微粒子の製造方法が開示されている。Battersby et al., "Encoding Combinatorial Libraries: A Novel Application of Fluorescent Silica Colloids", Langmuir 2000, 16, 9709-9715 および米国特許第 6,268,222 号 (Chandler et al., 2001) には、担体微粒子表面にこれより小さい一群の染色ポリマ粒子を付着させることによる蛍光性微粒子の製造方法が開示されている。
【0018】
D. カプセル化法
カプセル化による蛍光性粒子の形成には、予め形成されたポリマと一又はそれ以上の染料を使用する。1つの方法では、振動ノズルまたはジェットを用いて溶液を液滴として分注し、溶媒を除去して染料をカプセル状に包含するポリマ粒子を得る。この方法では特別の装置が必要であり、製造効率が限られている。別法として、ポリマと染料の混合物を高沸点溶媒中で乳化し、溶液を蒸発させて染料粒子を包含するポリマを得ることができる。この方法では非球形粒子が生じることが多く、また粒度分布幅が広い。
【0019】
米国特許第 3,790,492 号 (Fulwyler et al., 1974) には、噴流を用いて予め溶解したポリマおよび染料の溶液から均一な蛍光性微粒子を製造する方法が開示されている。米国特許第 4,717,655 号 (Fulwyler et al., 1988) には、予め定めた比率で2種の染料をポリマ微粒子に含有させて5種の相互に識別可能な2色粒子を製造する方法が開示されている。
【0020】
蛍光性微粒子を製造するためのこれら各種の先行技術には種々の欠点がある。強力な膨潤溶媒を使用する場合には、微粒子は染料溶液中で分解・変形しないよう架橋しておくことが必要である。大部分の染料は、適切な濃度で溶解するためには、興味あるポリマ特にポリスチレンをも溶解する溶媒系を必要とするから、このことは大きな制約となり、実際先行技術においても、化学的に安定化(架橋)した微粒子への溶媒膨潤法の適用は限られている。更に高度に架橋された粒子の合成はしばしば極めて困難であり、微小粒子の製造に別の困難とコストが含まれることになる。また架橋粒子への制約は微粒子の膨潤の程度、したがって染料包含の程度をも制約する。具体的には、先行技術による溶媒膨潤法を架橋微粒子に適用した場合、一般に染料は微小粒子の外層に浸透するのみであり、各粒子の内容積全体を均一に染色することはできず、したがって一般的には高度の染料包含は不可能である。以上のことから、架橋・非架橋いずれの粒子をも使用できる方法が必要とされ、またたとえば異なった種類または量の染料を含む染色粒子のライブラリを作成するために利用できるような、染料を充填した非架橋粒子を得る方法が必要とされる。
【0021】
先行技術の溶媒膨潤による染料吸収法において、粒子の膨潤の程度は染料の粒子内への輸送速度を決定する。拡散障壁があれば微粒子内の染料分布が不均一になる。このため均一に染色された微粒子群を製造するためには強力なミクロ攪拌(効率的な機械的攪拌または超音波処理)が必要とされる。このような強力な攪拌は実験室的調製の際には有効であるが、大規模生産では容易には使用できない。たとえば超音波処理はプローブソニケータのような特殊な装置を必要とし、また複数の染色処理を並行して行うにも制約がある。したがって攪拌が温和ですむかまたは攪拌を全く必要とせず、並行的染色が可能な染色粒子の製造方法が必要とされる。
【0022】
先行技術の膨潤法で染色した微粒子は、以後溶媒と接触したときには染料が失われるおそれがあり、また多段連続的な染色方法は実施できない。
【0023】
先行技術の諸方法において、ポリママトリックスへの染料の分配の程度は、染料溶液中の染料の濃度を変化させることによって制御される。この方法は、複数の異なる段階の染料含有量が得られるとはいえ、多くの欠点を有する。たとえば浴での染料の溶解度が限られているため、染色の頻度をある程度以上高くすることはできない。溶解度が問題でない場合も、多くの染料は分配係数が低いため大過剰の染料溶液を必要とし、以後の生物学的分析に悪影響を及ぼすおそれがある。実際、先行技術の膨潤法によってカルボキシル化したビーズを製造した場合、カルボキシル基は活性を失い、他の基との共有結合による官能化のために利用できなくなる可能性がある。また高価な染料が相当量失われる。したがって溶解度の低い染料・溶媒の組み合わせにおいても染色微粒子、特に蛍光性微粒子を製造する方法、また染色過程においてポリマ微粒子への溶質(染料)の充填量を精密に制御できる方法が必要とされる。
【0024】
発明の概要
ある実施例においては、本発明はポリマ微粒子への溶質の充填量を制御する方法を提供する。この方法は下記の諸段階を具える。
(a) 下記を用意すること。
(i) 溶質とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも一つの第三の溶媒とからなる混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製すること。
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、溶質を微粒子に吸収させること。
(d) 微粒子懸濁液またはその一部において、懸濁液の液相から微粒子への溶質の分配量が分配完了時より小さくなるように、溶質と第二の溶媒との相対濃度を制御することにより、ポリマ微粒子中の溶質濃度を制御すること。
【0025】
一つの実施例においては、第一の溶質充填濃度で特徴づけられる微粒子懸濁液に、所定量の少なくとも1つの第二の溶媒を加えることにより、所定の第二の溶質の濃度が達成される。他の実施例においては、微粒子懸濁液を分割し、それぞれに所定量の第二の溶媒を加えることにより、複数の所定溶質濃度を持つ微粒子群を得る。
【0026】
本発明の他の実施例においては、ポリマ微粒子の溶質充填量を変化させる方法は下記の各段階からなる。
(a) 下記を用意すること。
(i) 溶質とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも一つの第三の溶媒とからなる混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製すること。
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、溶質を微粒子に吸収させること。
(d) 微粒子懸濁液に第二の溶媒を連続的または半連続的に加えることにより、微粒子内の溶質濃度を連続的または半連続的に変化させ、これにより微粒子への溶質吸収量および最終濃度を制御すること。
【0027】
ポリマ微粒子の溶質充填量を制御する上記方法の一つの実施例においては、同方法は更に、前記第二の溶媒の添加中に一定時間間隔で前記微粒子の少なくとも一部を懸濁液から取り出すことにより溶質濃度の異なる少なくとも2つの微粒子集合を作成する段階を含む。
【0028】
他の実施例においては、本発明は下記の各段階からなる、ポリマ微粒子の染料充填量を変化させる方法である。
(a) 少なくとも1種の染料と下記からなる溶媒系とからなる染料溶液に微粒子を懸濁させ、少なくとも1種の染料の第一の含有濃度によって特徴づけられる微粒子を作成すること。
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 前記微粒子懸濁液に所定量の第二の溶媒を加え、ポリマ微粒子への染料の分配量、および同微粒子内の染料濃度を変化させること。
(c) 微粒子懸濁液を所定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が微粒子懸濁液への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにすること。
【0029】
更に他の実施例においては、本発明は下記の各段階からなる、染色ポリマ微粒子の製造方法である。
(a) 下記を用意すること。
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも1つの第三の溶媒からなる混合物の所定量に前記ポリマ微粒子を懸濁させること。
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、前記第一の溶媒に溶解した染料からなる溶液を加え、染料を微粒子に吸収させ、微粒子中の前記染料の第一の濃度によって特徴づけられる微粒子懸濁液マスターバッチを得ること。
(d) 前記微粒子懸濁液マスターバッチを2つ以上に分割し、各々に所定量の第二の溶媒を加えてポリマ微粒子への染料の分配量を変化させること。
(e) 微粒子懸濁液の各分割単位を所定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が微粒子懸濁液の分割単位への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにすること。
【0030】
染色したポリマ微粒子を自動的に製造する方法も提供される。この方法は下記の各段階からなる。
(a) 第一の染料濃度で特徴づけられる微粒子を、少なくとも1つの染料と下記からなる溶媒系からなる染料溶液に懸濁させて微粒子マスターバッチ懸濁液とすること。
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 前記マスターバッチ懸濁液から、前記染料溶液中の前記第一の染料濃度により各々特徴づけられる、2つ以上の微粒子懸濁液分割単位を作成すること。
(c) 各分割単位に対して、微粒子中の前期第一の染料濃度を所定の第二の染料濃度に変化させるため、下記の工程を少なくとも1回実行すること。
(i) 所定の第二の染料濃度に対して、前記分割単位において微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するのに必要な下記の量を計算すること。
(1) 前記第一の溶媒に溶解すべき染料の量。
(2) 第二の溶媒の量。
(ii) 前記分割単位に、前記第一の溶媒に前記量の染料を溶解した溶液、および微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するために必要な量の第二の溶媒を分注すること。
【0031】
染色ポリマ微粒子を製造するための装置は、ピペット操作ロボットを操作するように結合され、前記自動的方法を実行するようにプログラムされたコンピュータを含む。
微粒子懸濁液から、所定量の第二の溶媒を含む前記2つ以上の分割単位を作成する段階としては、たとえば微粒子懸濁液マスターバッチを2つまたはそれ以上の分割単位に分け、各所定量の第二の溶媒を前記分割単位に加えることによって実行できる。あるいは第二の溶媒を加えた2つ以上の微粒子懸濁液分割単位を作成する段階を、微粒子懸濁液マスターバッチに第二の溶媒を連続的または半連続的に加え、その過程で一定時間間隔でマスターバッチの少なくとも一部を取り除くことによって実行することができる。結果として第二の溶媒の所定量を含む2つ以上の微粒子懸濁液分割単位が得られる。
【0032】
発明の詳細な説明
2つの相溶性のない溶媒1と2の間の溶質の分配は分配係数 K で規定される。分配係数は両相における溶質の平衡量の比、すなわち K = N1/N2 である。
【0033】
本発明は2つの実質的に相溶性のない相の間の溶質の分配係数 K、すなわち連続的な液相と、連続的な液相に固体粒子を分散させた分散相との間の分布を調節する方法を提供する。したがって本発明によれば、溶媒系内のポリマ微粒子への溶質の導入量を制御することが可能である。溶質はポリマ微粒子相に分配することのできる物質であればよく、染料、顔料、医薬、触媒、ナノ粒子、その他ポリマ微粒子内部または表面に充填することが望ましい任意の物質が使用できる。
【0034】
好ましい実施例においては溶質は染料であり、以下では2つの実質的に相溶性のない相、すなわち予め形成されたポリマ微粒子(相1)と均質な三元溶媒系(相2)との間の溶質(染料)の分配を例として本発明を説明する。微粒子は固相からなる。染料はポリマ微粒子に希望する色または蛍光を付与することのできる物質であれば何でもよく、たとえば発色団あるいは蛍光発生基を含む。微粒子に包含される染料の量は、染料の与えられた初期濃度に対して三元溶媒系の組成を調節することにより正確に制御することができる。以下に例示するように、この方法によれば予め定められた濃度の染料を含む相互に区別し得る染色微粒子の集合を再現性よく、かつ試料内の染料含有量の変動を最小限として製造すること、すなわち「染色コーディング」が可能である。
【0035】
このように本発明の方法は、着色微粒子の製造に際して、染料浴と微粒子との間の染料の分布を支配する分配係数を広範囲にわたって定量的に調節する手段として、溶媒の組成を新たな制御パラメータとして導入する。具体的には、溶媒調節を行うときの染料の分配係数 K は式 K = a exp(bY), Y = (1 - φs)/ φs で表される。但し φs は溶媒の容積分率、a, b は定数である。
【0036】
本発明の染色コーディングは微粒子への染料充填量を変化させることによって行われる。「充填」という語は微粒子に含まれる染料に関して、その量あるいは性質を指す。すなわち充填は (i) 含有される染料の量と、(ii) 含有される染料の種類との少なくともいずれか1つの選択によって変化する。したがってコーディングは、微粒子の集合ごとに同一染料の異なった量を用いるか、染料の化学的性質を変える(異なった染料または染料の異なった組み合わせを用いる)か、または両者を併用することによってなされる。
【0037】
本発明において染色微粒子、特に蛍光性染色微粒子の製造に使用する均一な三元系溶媒を図1(a) に模式的に示す。溶媒 #1 は染料と微粒子原料のポリマとの両者に対して強い溶媒であり、溶媒 #2 は本明細書において「調節溶媒」とも呼称し、染料とポリマの両者に対して弱い溶媒であるか、または非溶媒である。好ましい実施例の一つにおいては、溶媒 #2 は水性溶媒、好ましくは水である。溶媒 #1 と溶媒 #2 とは相溶性がないか、あるいは僅少である。第三の溶媒 #3 は染料とポリマの両者に対して弱い溶媒であるか、または非溶媒であるが、溶媒 #1 および #2 の両方に対して相溶性であり、共溶媒として働く。好ましい実施例の一つにおいては溶媒 #3 はアルコールである。
【0038】
先行技術による、微粒子の膨潤による染料導入方法は染料に使用できる溶媒の選択の幅が限られており、一般に架橋粒子を使用する必要がある点で限界がある。これら先行技術による方法では、染料がある濃度範囲で溶解し得る溶媒を選択し、希望する濃度の染料溶液を調製し、ついで染料溶液をポリマ微粒子と一定時間にわたって接触させ、染料を粒子内へ浸透させる。
【0039】
先行技術の膨潤法により蛍光性粒子を製造する際の問題は、染料浴への染料の溶解度が限定されていることである。染料の溶解度が問題とならない場合でも、多くの染料はポリマとの間の分配係数が小さいため蛍光染料が大過剰に必要であり、しかもその過剰分は廃棄されてしまう。これに対して本発明によれば、溶解度の低い染料/溶媒系を用いた場合でも染料含有量の極めて高い微粒子を得ることができる。これは溶媒調節によって浴中の染料を完全に利用できる事実の反映である。
【0040】
本発明による染料含有方法は従来の溶媒膨潤法と異なり、非架橋粒子、架橋粒子のいずれに対しても同等の効率をもって適用することができる。ポリマ微粒子に関して「架橋」とは、ポリマ鎖が互いに結合して三次元網目構造を形成していることを言う。架橋は重合過程において架橋剤すなわちポリマ鎖上の官能基と反応し得る2つ以上の基を有する試薬を用いて行うことができる。また平均2個以上の官能基を持つモノマの重合によっても架橋ポリマが得られる。
【0041】
このように本発明は、非架橋ポリマからなる染料充填微粒子の製造方法を初めて提供するものである。高度に架橋されたポリマの製造はしばしば極めて困難であるから、このことは著しい進歩性を意味する。更に、染料による微粒子の染色に際して強力な攪拌を必要とする多くの従来法と異なり、本発明の方法は温和な攪拌のみで十分である。この攪拌は微粒子を懸濁状態に保つに足りるものであればよい。従来法で要求されるような強い攪拌は特殊な装置を必要とし、かつスケールアップが困難であるから、このことも著しい改良点である。
【0042】
ポリマの架橋は一般に形成された架橋微粒子ポリマの膨潤を制約し、また粒子内部への染料の浸透を制約する。そのため染料の分布は粒子表面の薄層内に限定され、染料の充填量が制約される。微粒子全体にわたって実質上均一に染料が分布していることを特徴とする染色ポリマ微粒子は、非架橋ポリマを微粒子原料として使用できるようになって初めて可能となった。ここに「実質上均一」とは、着色粒子が蛍光イメージングの条件において、対称的かつ単一モードの蛍光強度プロフィルを生ずることを意味する。これに対して表面着色粒子(蛍光色素が粒子表面上または表面近傍の狭い範囲に限定されている)は対称的ではあるが双峰モードの蛍光強度プロフィルを生ずる。
【0043】
場合によっては微粒子内に不均一な染料分布を作り出すよう制御することが望まれる。染料の浸透を完了以前に止めるには、微粒子を染色浴から、微粒子相中の染料と液相中の染料とが平衡に達する以前に取り出せばよい。染料の浸透の程度は染色浴中での微粒子のインキュベーション時間で決まる。平衡達成前に粒子を浴から取り出すことにより、対称的ではあるが双峰的な蛍光強度プロフィルが得られる。粒子の蛍光強度プロフィルの形状、特に強度ピークの位置は平衡達成前のインキュベーション時間の関数である。したがって染色浴中でのインキュベーション時間を微粒子コーディングの一つの次元として利用することが可能である。同一の染料を用い染色浴中での微粒子のインキュベーション時間を変化させれば、種々の蛍光強度プロフィルを持つ微粒子の集合を製造することができ、複数種の染料を用いれば一層広範なコーディングが可能となる。
【0044】
本発明によれば、微粒子に包含される染料の量は染料の量とポリマの量との比率の調節によって、および染料浴の組成の調節によって制御される。特に先行技術と異なる点として、三元溶媒系の成分の一つ(すなわち調節溶媒)の容積分率を変化させることにより、溶媒と微粒子を構成するポリマとの間の染料の分配を便利に調節することができる。本発明は先行技術と異なり染料および溶媒組成の選択範囲が広く、多成分系溶媒を用いることにより染料の分配をより精密に制御することができる。後述するとおり本発明の方法は分配係数 K が溶媒組成に対して指数的に変化することを利用しており、これによって従来の膨潤法によるよりも良好な染料含有量の制御を達成している。先行技術による方法では分配係数を調節するのではなく、単に浴中の染料の初期濃度を変化させることにより、微粒子の染料含有量を比例的に(その比例係数が分配係数 K である)変化させるにすぎない。
【0045】
図2はポリマ微粒子への染料の分配の変化に関して、本発明の方法と従来の膨潤法とを比較したものである。点 X1(1), X2(1), X3(1) はそれぞれ溶媒系中の染料の質量と系内の微粒子の容積との比であり、点 Z1(1), Z2(1), Z3(1) はそれぞれに対応する、微粒子中に含有される染料の濃度を示す。微粒子への染料の包含の程度は溶媒系中の染料の質量と直線関係にあり(直線 P0)、この直線の傾きが分配係数 K である。したがって先行技術の膨潤法によっては、染色微粒子を製造するために利用できる経路は XZ 面内に限られることが明らかであろう。種々に異なった染色微粒子の下位集合を製造するためには、溶媒中の染料の初期濃度を(染色すべき微粒子の与えられた数に対して)変化させて、粒子への染料の充填の程度を比例的に変化させることが必要である。
【0046】
これに対して本発明においては溶媒組成を、複数の染色微粒子群を製造する工程を制御する新たな変数として導入する。本発明が染色微粒子の製造のために全く新たなパラメータ空間 (Y) を追加して、三次元パラメータ空間 (XYZ) 内の経路を利用可能とすることは、図2の検討により了解されよう。たとえば Z1(1), Z2(1), Z3(1) の各組成から出発して、図2に示した非直線的作業曲線に従うことにより、明確に定義され予測可能な濃度 Z1(2), Z2(2), Z3(2)の染料を包含する、それぞれ異なった微粒子群を製造することができる。任意の固定した溶媒組成(固定した Y)において、Z と X とは直線的関係にある(調節溶媒の容積分率 φ に対しては直線 OP1)。
【0047】
したがって図2の三次元パラメータ空間 XYZ において、複数の経路を通って任意の点に到達することが可能であり、各経路は染色微粒子の複数の下位集合を予測可能な方法で製造するのに利用することができる。本発明の方法は熱力学的平衡によって支配される条件下で操作し、また前記諸経路の定量的表式を提供することにより、染色粒子の製造のためのプロトコルの合理的な設計を可能とするものである。
【0048】
本発明による、連続的液相と分散固相(微粒子)との間の溶質(染料)の分配を操作する作業は以下のように数学的に表現することができる。ただし以下の記述は本発明が何らかの理論により制約されることを意味するものではない。
【0049】
系の最初の状態 {X1, Y1, Z1} から希望する第2の状態 {X2, Y2, Z2} への変換を式 Z = G(X, Y) で表す。すなわち分散相(微粒子)における溶質(染料)の濃度 Z は溶質の濃度 (X) および溶媒組成 (Y) の関数である。希望する第2の状態 {X2, Y2, Z2} は与えられた第1の状態から到達できる多数の状態から、前記の方法により式 Z = G(X, Y) に従って X および Y を調節することにより選択される。その関係はそれぞれ下記のように定義される変数 X, Y, Z により支配される。
X = C(S){φ(S)φ(P)}
Y = φ(P)/φ(S)
Z = C(P)
ただし
φ(P) = V(P)/(V(P) + V(S)) = 粒子相の容積分率
φ(S) = 1 - φ(P) = 溶媒相の容積分率
C(S) = 平衡時の溶液相中の溶質濃度
C(P) = 平衡時の粒子相中の溶質濃度
V(P) = 粒子相の容積
V(S) = 溶媒相の容積
である。
粒子相 (P) と溶媒相 (S) との間の溶質(染料)の分布は分配係数 K に支配される。
K = N(P)/N(S)
ただし N(P) は平衡状態における粒子相内の分子の数、N(S) は平衡状態における溶媒相内の分子の数である。
したがって状態 1 における分配係数 K の値は
K1 = N(P)1/N(S)1
と表され、状態 2 における分配係数 K の値は
K2 = N(P)2/N(S)2
と表される。
質量収支の式
NT1 = NT2(溶質全量に対して) (1)
N(P)1 + N(S)1 + ΔN(S)1 = NT1(状態 1 における溶質分子総数に対して) (2)
N(P)2 + N(S)2 = NT2(状態 2 における溶質分子総数に対して) (3)
(ただし NTi は状態 i における溶質分子の全量(総数)、ΔN(S)i は状態 i において溶媒相に添加された溶質分子の数)を適用すると、次の逐次方程式が得られる。
X2 = {(1 + K1)/(1 + K2)}X1 + {1/(1 + K2)}ΔX1 (4)
Y2 = Y1 + ΔY1 (5)
Z2 = {(1 + K1-1)/(1 + K2-1)}Z1 + {1/(1 + K2-1)}ΔX1 (6)
変数 Y を一定に保つ、すなわち状態 1 から状態 2 への変化をK1 = K2 であるように溶質を添加することのみによって行う特別の場合には、
Z2 = Z1 + {1/(1 + K-1)}ΔX1 (7)
が得られる。
【0050】
更に Z の X および Y への依存関係が Z = K(Y)X の形で得られる。分配係数 K が Y に依存することは、溶媒系に調節溶媒を添加すると溶質に対する溶解能力が低下し、したがって溶質の分散相への再配分が起こる事実を反映している。実験データとその解析から、具体的な関数形として
K = a exp(bY) (8)
が得られる。ただし a, b は図6dに示すようなデータ解析によって決定される定数である。
【0051】
したがって本発明は、希望する状態変化を引き起こすための明確な一連の手順を提供する。具体的には、単一の第1の状態から出発して一連の第2の状態すべてを実現することができる。
【0052】
前記の変換方程式、特に前記逐次方程式の形のものを用いれば、パーソナルコンピュータ、および染料またはその他の溶質あるいは調節溶媒の所要の量を分注するための標準的な自動ピペット操作装置(ロボット)を用いて、一連の染色微粒子を自動的に製造することが容易にできる。変換の逐次方程式の評価は、BASIC や C などの標準的プログラミング言語を用いて開発できるソフトウェアによって行うことができる。標準的な実験機器制御インターフェイス(たとえば GPIB プロトコル)と標準的なソフトウェア開発環境(たとえば LabView (National Instruments)) を利用し、プログラムが染料および調節溶媒の所要量を計算し、その結果に従いピペット操作ロボットを制御して所要量の染料と調節溶媒を計量分注する。たとえば本明細書に開示したマスターバッチを用い、上記の方法によってマスターバッチからの1つ以上の分割単位を分注して第1の状態の懸濁液を作り、希望する第2の状態の懸濁液を得るのに必要な染料および染料溶媒の量を計算し、その必要量の溶質と染料を分注し、変換を起こさせることにより、染色微粒子の集合を容易に製造することができる。この手順を希望する回数だけ反復する。
【0053】
官能基修飾された微粒子を先行技術による膨潤法で染色することは、官能基の健全性を損なう可能性がある。後述の実施例28に示すように、本発明の方法によれば官能基の健全性を損なうことなく、官能基修飾された微粒子を染色することができる。
【0054】
本発明の実施のために、本明細書に記載の溶解度パラメータに従って微粒子の化学的性質、溶媒、染料を選択するために既存の情報を利用することは当業者にとって容易であることが理解されよう。
【0055】
また本発明の方法の記述から、ポリマの安定な分散液が得られるか、または作成可能であれば、ポリマ粒子の製造のためにいかなるポリマでも利用できることも明らかであろう。材質はホモポリマでもコポリマでもよく、後者は2種のモノマからなるものに限らず、3種以上のポリマからなるもの(いわゆるターポリマ)でもよいが、疎水性のポリマであることが好ましく、ビニル系モノマすなわちビニル基を含むモノマからなるものが特にこのましく、スチレン基を含むモノマが最も好ましい。好ましいポリマ群の一つはポリスチレン、またはスチレンモノマ単位を重量比で約50%〜約100%含有するポリスチレンコポリマを含む。ポリマが架橋されているかいないかは任意である。一つの実施例においては微粒子は微粒子重量に対して 1% のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンから形成される。別の実施例においては微粒子は微粒子重量に対して約 0.6〜1% のメタクリル酸を含むスチレン/メタクリル酸コポリマからなる。
【0056】
適当なポリマ材料の例を挙げれば次のとおりである。これらは例証のため挙げるものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
アクリル酸、またはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル;
メタクリル酸、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸セチル、メタクリル酸ステアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、メタクリル酸グリシジル、N,N-(メタクリルオキシヒドロキシプロピル)-(ヒドロキシアルキル)アミノエチルアミダゾリンジオンなどのメタクリル酸エステル;
メタクリル酸アリルなどのアリルエステル;
イタコン酸またはそのエステル;
クロトン酸またはそのエステル;
マレイン酸、またはマレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸エステル;
スチレン、またはエチルスチレン、ブチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの置換誘導体;
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ブチルアミノエチルなどのアミノ基を含有するモノマ単位;
アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基を含有するモノマ単位;
ビニルエーテル、ビニルチオエーテル;ビニルアルコール;ビニルケトン;ハロゲン化ビニル(塩化ビニルなど);ビニルエステル(酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど);ビニルニトリル(アクリロリニトリル、メタクリロニトリルなど)などのビニル基含有モノマ;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;
テトラフルオロエチレン;
ブタジエン、イソプレンなどのジエンモノマ;
アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル。
【0057】
ホモポリマ、およびビニル基含有モノマを含むコポリマとして特に好ましいものには、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(ジビ
ニルベンゼン) などがある。
【0058】
本発明の範囲を限定することなく適切なポリマ材料の例を挙げれば、ポリオキシド(ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)など);ポリエステル(ポリ(エチレンテレフタレート) など);ポリウレタン;ポリスルホネート;ポリシロキサン(ポリ(ジメチルシロキサン) など);ポリスルフィド;ポリアセチレン;ポリスルホン;ポリスルホンアミド;ポリアミド(ポリカプロラクタム、ポリ(ヘキサメチレンアジピンアミド) など);ポリイミン;ポリ尿素;複素環ポリマ(ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジノンなど);天然ポリマ(天然ゴム、ゼラチン、セルロースなど);ポリカーボネート;ポリ無水物;ポリアルケン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンコポリマなど)がある。
【0059】
ポリマ材料には、化学的または生物学的分析における粒子の有用性を向上させるため、化学的または生物学的成分の結合部位となる官能基(カルボキシル基、エステル、アミン、アルデヒド、アルコール、ハロゲン化物など)を含有させてもよい。そのようなポリマから微粒子を製造する方法は当業者には周知である。微粒子ないし架橋微粒子を製造する代表的な方法は後記の製造例に記載されている。
【0060】
本発明の方法は核/外殻型構造の微粒子の染色にも適用することができる。核/外殻型微粒子は1種またはそれ以上のポリマからなる中心核と、それを取り巻く1種またはそれ以上のポリマからなる外殻からなる。外殻は任意のポリマ被覆方法により作製することができる。外殻ポリマが核ポリマよりも極性が高いか、または界面張力が低ければ、熱力学的に有利であり、また外殻ポリマの容積分率が核ポリマより大きいときも有利である。したがって核/外殻型ポリマの合成は外殻/核の重量比を 1 以上として行われる。ある種の実施例においては、核ポリマが疎水性であり外殻ポリマが比較的親水性であって、適当な官能基を担持している。
【0061】
核ポリマとしては、スチレンとそれより疎水性の高いモノマ(たとえばメタクリル酸)とのコポリマがポリスチレンホモポリマよりも好ましい。このコモノマは核の疎水性を減じ、親水性の外殻ポリマ組成物との親和性を高める効果がある。
【0062】
これらの制約の範囲内において、外殻ポリマ用としては任意のモノマまたはモノマの組み合わせを選択することができるが、ビニルモノマの混合物が好ましい。本発明の一つの実施例においては、メタクリル酸メチルを主成分としメタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸を副成分とするモノマ混合物を外殻に、ポリスチレンまたは修飾ポリエチレンを核に用いる。そのようなモノマ混合物の一例は重量比でメタクリル酸ヒドロキシエチル 6%、メタクリル酸約 5〜20% と残余のメタクリル酸メチルからなる。これらのモノマはポリスチレンよりも親水的である。
【0063】
微粒子の大きさは最終用途に応じて選ぶことができる。典型的には粒子径は約 0.1〜約 100ミクロン、より典型的には約 0.5〜約 50ミクロン、一層典型的には約 2〜約 10 ミクロン である。微粒子は単分散であること、すなわち粒径範囲が狭いことが好ましく、平均径の変動係数 (CV) が約 5% を超えないことが好ましい。
【0064】
微粒子は染色の前または後に適当な磁性材料を公知の方法で含有させることによって磁気的応答性とすることができる。その方法の一つは強磁性流体、たとえば実施例19において製造される強磁性流体を含浸させることである。ここで磁気的応答性とは、磁場をかけることによって位置あるいは向きを変えることができることを意味する。
【0065】
染料としては可視的な、または機械により測定可能な色または蛍光を呈するものであれば任意の染料が使用できる。色または蛍光は、肉眼で視認できるものでも、顕微鏡またはその他の光学器械を用いて検出できるものでもよい。好ましい蛍光染料としてはスチリル染料(p-ビス(o-メチルスチリル)ベンゼンなど);ピロメタン染料(緑色蛍光染料 4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ペンタン酸、スクシンイミジルエステル、橙色蛍光染料 4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアゾ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステルなど);クマリン染料(メトキシクマリンなど)が挙げられるが、発光波長が約 400〜約 1000 nm である蛍光染料が好ましい。2種以上の染料を使用する場合には、吸収スペクトル、発光スペクトル、または発光寿命が実質的に異なる染料を選ぶことができる。
【0066】
一つの実施例においては、微粒子はポリスチレンポリマまたはコポリマであり、染料は疎水性染料である。溶媒としてはたとえば表1に示すものを選択することができる。
表1:ポリスチレン微粒子と疎水性染料との組み合わせに対する溶媒候補
【表1】
【0067】
水溶性の極性染料を用いる系の代表的なものとして、ポリ(エチレンオキシド) の微粒子と、水を溶媒 #1、ヘキサンを溶媒 #2、ジオキサンを溶媒 #3 とする三元溶媒系とを用いるものがある。
【0068】
上の表に示した溶媒と、標準的な溶媒相溶性図表を用いて、本発明によるポリスチレンポリマまたはコポリマと疎水性染料との組み合わせに好適な三元溶媒系を設計することができる。たとえば水(調節溶媒、溶媒 #2)、アルコール(共溶媒、溶媒 #3)、ジクロロメタン(染料溶媒、#1)の均一な三元混合物からなる液相に溶質として疎水性染料を溶解し、ポリスチレンまたはポリスチレンコポリマ微粒子からなるポリマ固相とを接触させる。ポリマ相と三元混合溶媒とにおける染料の相対量を支配する染料の分配係数 K は、液相中の調節溶媒の容積分率が増加(したがって染料溶媒または共溶媒の容積分率が減少)すると共に増加する。前記の水/アルコール/ジクロロメタン三元系のほか、たとえば水/アセトン/塩化メチレン系も代表的な三元溶媒系である。
【0069】
上記では例示のため、本発明を溶媒 #1、溶媒 #2、溶媒 #3 各1種を用いるものとして説明したが、本発明の実施に際して各カテゴリーに2種以上の溶媒を用いることも可能であり、たとえば溶媒 #1 が1種、溶媒 #2 が2種、溶媒 #3 が1種からなるような組み合わせも使用できる。
【0070】
本発明の微粒子は、たとえば核酸またはその断片(アプタマーを含む)、蛋白質、ペプチド、有機低分子などの化学的または生物学的成分を取り込むために官能化することができる。このような分子を付着させるためには、共有的カップリング反応など当業者に既知の方法が利用できる。たとえば G.T. Hermanson, Bioconjugate Techniques (Academic Press, 1966) および L. Illum, P.D.E. Jones, Methods in Enzymology 112: 67-84 (1985) (この引用により上記文献は本開示に含まれるものとする)を参照されたい。これらの成分は試験の目的によって適宜選択することができる。そのような試験はたとえば PCT/US01/20179 および米国特許第 6,251,691 号に開示されている。
【0071】
本発明の方法の一つの実施例を図 1(b) に図式的に示す。まず溶媒 #2 と溶媒 #3 とからなる溶媒溶液を、懸濁液形成のための任意的な安定剤の存在下で微粒子に含浸させる。安定剤の機能は微粒子懸濁液の不安定化を防止することである。代表的な安定剤としては、ポリマ、特に高分子アルコール(ポリビニルアルコールなど);酸化物ポリマ(ポリエチレンオキシドなど);ポリビニルポリマ(ポリビニルピロリドンなど);ポリ酸(ポリアクリル酸など)が挙げられるが、その他にもイオン性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、エーロゾル(Aerosol) OT など);非イオン性界面活性剤(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコール第三オクチルフェニルエーテルなど)が代表的な安定剤である。安定剤の濃度は溶媒/微粒子懸濁液に対する重量比として約 0%〜約 2% の範囲で選ぶことができる。
【0072】
懸濁液は緩やかに攪拌することが望ましい。このインキュベーションは典型的には室温で行われるが、より高い、またはより低い温度も、微粒子の健全性に悪影響を及ぼさず溶媒組成が安定に保たれる限り使用できる。インキュベーションは安定剤を微粒子に吸収させることを目的として行われる。必要なインキュベーション時間は溶媒と微粒子の組成によって異なり、それらを考慮して選定する。
【0073】
この最初のインキュベーションに続いて、染料溶媒(溶媒 #1)に溶解した染料を微粒子懸濁液に加える。検出可能な信号を得るために必要な濃度の染料を含有させるため、十分な量の染料を加えることが必要である。インキュベーションは典型的には室温で行われるが、より高い、またはより低い温度も使用できる。この第二のインキュベーションは染料溶媒(溶媒 #1)を微粒子に浸透させることを目的とする。
【0074】
微粒子を溶媒 #2、溶媒 #3 および任意の安定剤と混合してインキュベートする第一の工程と、溶媒 #1 に溶解した染料を加える第二の工程との組み合わせにより、先行技術において要求される、染色工程での機械的または音響的な強い攪拌の必要性が大きく軽減されることが見出されており、攪拌は懸濁状態を保ち得る程度の穏和なものでよい。強力な攪拌は特別な装置を必要とし、かつスケールアップが困難であるため、このことは顕著な改善である。
【0075】
一つの実施例によれば、微粒子懸濁液中の染料の濃度は懸濁粒子の重量基準で約 1〜約 100 μg/g の範囲で選択される。溶媒溶液および微粒子の組成によっては、これ以下または以上の濃度が使用できる場合もある。
【0076】
次に、懸濁液を緩やかに攪拌しつつ調節溶媒の一定量を緩やかに加えて、微粒子への染料の分配促進を図る。調節溶媒の容積分率φは図2の経路に沿って到達すべき終点を達成できるように選択する。
【0077】
調節溶媒の添加速度は懸濁液の相安定性を保つように制御する必要がある。“相安定性”とは、溶質(染料)と液相との実質上均一な混合状態が存在することを特徴とする条件を意味する。相安定性の条件下では、染料は溶媒相に溶解している状態で微粒子に取り込まれ、溶媒から析出することはない。また相安定性は二液相の分離が起こらない点でも特徴づけられる。
【0078】
先行技術の方法によれば、染料浴中の染料の初期濃度と微粒子の容積から微粒子への充填量を正確に求めるため、微粒子相への染料の移行は完全でなければならない。そのような方法では、発生する信号がそれを検出する装置の作動範囲内にあることを保証するには染料充填のレベルを正確に知る必要がある。特に粒子の集合が同一染料の充填量の差によって相互に区別されるような粒子のライブラリを構築しようとするときは染料充填量の正確な決定が重要である。したがって系内に導入された染料が実質上完全に微粒子相に吸収されたことを知るため、懸濁液相中に染料が認められなくなるまで染料充填レベルを監視することが必要になる。
【0079】
本発明によれば、微粒子に包含される染料の量は、微粒子懸濁液に添加される調節溶媒の量を前述の逐次方程式に従って変化させることにより正確に制御される。また染料が微粒子中に完全に分配されない場合でも、予め定めた染料充填レベルを達成することが可能である。溶質(染料など)の「完全な分配」とは、溶質が液相から微粒子相に事実上完全に取り込まれ、液相に染料が事実上存在しないことにより特徴づけられる状態を指す。このように染料充填の制御において染料の完全な取り込みを必要としないから、液相から微粒子懸濁液への染料の移行状況を監視する必要もない。
【0080】
染色浴中の微粒子の懸濁液は、染料が微粒子中に実質上均一に分配されるように、一定時間インキュベートする必要がある。
【0081】
最後の工程として、微粒子懸濁液を遠心する。微粒子を洗浄し適当な緩衝溶液、たとえば任意的な界面活性剤を含む水性緩衝溶液に再分散させてもよい。このようにして得られた微粒子は予め定められた特定の量の染料を含み、それによって集合内の他の粒子と識別できるような染色粒子群である。
【0082】
一つの実施例によれば、各々異なった量の染料を含有するポリマ微粒子の下位集合群を並列に製造することができる。微粒子懸濁液の一連の分割単位を染料溶液中で予備インキュベートした後、予め計算した量の調節溶媒をそれぞれに加える。本発明によれば、微粒子への染料の分配は、調節溶媒の最終容積分率と懸濁液中の染料の初期濃度によって決まる。このアプローチを図 3(a) に図解する。予備インキュベート後の各分割単位を Bn、各分割単位に加えられる調節溶媒の量を Sn、各々から得られる粒子の各下位集合を Fn(Sn) で示す。
【0083】
本発明の他の実施例では、各々異なった量の染料を含有するポリマ微粒子の下位集合群を直列的な処理により製造する。染料用液中に微粒子を懸濁させたマスターバッチに連続的または半連続的に調節溶媒を加えつつ、いくつかの時点で分割単位を採取する。調節溶媒を「半連続的」に加えるときは、バッチから微粒子試料を取り出すために作業を一時的に中断する。各時点 (tFn) に採取した懸濁液の分割単位 Fn(Sn) はそれぞれ異なる量の溶媒 Sn を含むから、着色粒子の複数の下位集合が同一マスターバッチから得られることになる。これらの下位集合はそれぞれ異なる量の染料を含有し、それに応じて異なった蛍光強度を生ずる。このアプローチを図 3(b) に示す。ここに [B] は予備インキュベーション後のマスターバッチを示し、これに調節溶媒の連続流を加える。Fn(Sn) はそれぞれ異なった時点 tFn にマスターバッチから分取された微粒子懸濁液の分割単位である。
【0084】
あるいは一定の時間 (tF) が経過した時点で調節溶媒の連続的添加を中断し、染色微粒子懸濁液を2つ以上の分割単位に分け、溶媒調節によって最終的な染料含有量を調節することもできる。各分割単位に一定量の調節溶媒 (δSn) を加えることにより、少なくとも2つの分割単位に異なる染料含有レベルを作り出すことができ、それぞれのレベルは溶媒調節工程で加えた調節溶媒の総量と染料の初期濃度によって決まる。少なくとも1つの分割単位に 0 でない量の調節溶媒を加える限り、他の少なくとも1つの分割単位に加える調節溶媒の量が 0 であってもよいことは了解されよう。この直列-並列処理方式を図 3(c) に図解する。
【0085】
直列処理と並列処理の他の組み合わせも可能である。図 3(d) は直列処理と並列処理を組み合わせ、溶媒調節と染料濃度の直接調節を併用する方法を図解したものである。同図に示すように、マスターバッチ [B] に調節溶媒の連続流を供給し、調節溶媒の量 Sn を含む微粒子懸濁液の分割単位 Fn(Sn) を捕集する。ついで各分割単位に対して個別に標識を行い、たとえば第三の染料 Dn を加えることにより、それまで同一であった分割単位の微粒子を区別できるようにする。各標識工程で染料 D1, D2, ... Dn を用いることにより相互に識別可能な下位集合 Fm(Sm, Dn) が各分割単位から得られる。
【0086】
各分割単位に含まれる微粒子は予め定められた特定量の蛍光発生基(ないし発色団)を含み、これにより与えられた集合からの粒子を識別することができる。
【0087】
本発明の方法を応用して、識別可能な蛍光染料の溶液を順次添加することにより、コンビナトリアルにコードされた微粒子のライブラリを構築することができる。微粒子のコーディングには二進コードその他、現用の各種コードのいずれをも用いることができるが、たとえば WO 98/53093(この引用により上記文献は本開示に含まれるものとする)の方法によって in-situ でのデコードが可能な二進コードを用いることが好ましい。
【0088】
本発明の実際を更に以下の実施例により説明する。これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0089】
製造例1:非架橋ポリスチレンホモポリマ粒子
100 ml 丸底ガラスフラスコに還流コンデンサ、N2 供給・排出アダプタ、攪拌機を装着し、外套式オイルバスに入れ、エチルアルコール(Aldrich 200 プルーフ、無水、99.5%)43.3 ml に溶解したポリビニルピロリドン(Aldrich、平均分子量約 29,000)0.9475 g とスチレン 18.95 g をフラスコに入れた。遊離酸素を除くため系を緩やかに (50〜70 rpm) 攪拌しつつ N2 で1.5時間パージした後、70°C まで昇温し、攪拌機の回転数を 350 rpm に上げた。2,2'-アゾビスイソブチロニトリルの 2.4 wt% エタノール溶液 10 ml を加えてスチレンモノマの重合を開始させ、17時間反応の後室温まで冷却し、容積平均径 4.1μm の単分散ポリスチレン粒子を得た。モノマ転換率は 96.4%、最終的なラテックス中固体含有率は 27.9% であった。
【0090】
製造例2:非架橋コポリマ粒子
製造例1と同様の装置を用い、スチレンとメタクリル酸メチルとの混合物(モノマ全量に対する重量比でメタクリル酸メチル 3%)10.5 g を反応させて、メタクリル酸メチル 3% を含むポリスチレンコポリマを製造し、単分散粒子を得た。最終転換率は 95.7%、粒子径は 3.2 μm、ラテックスの固体含有率は 15.9% であった。コポリマ粒子は COOH 基1個あたり 2.45 μm2 のパーキング面積を有する。
【0091】
製造例3:架橋コポリマ粒子
100 ml 丸底ガラスフラスコに還流コンデンサ、N2 供給・排出アダプタ、攪拌機を装着し、外套式オイルバスに入れ、ポリビニルピロリドン(製造例1に同じ)1.5 g、ジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(Aldrich, 98%) 0.475 g、エチルアルコール(Aldrich 200 プルーフ、無水、99.5%)53.5 ml、スチレン 9.405 g、ジビニルベンゼン(Aldrich, 異性体混合物、純度 80%)をフラスコに入れた。N2 で30分パージして遊離酸素を除いた後、70°C まで昇温し、エタノール 10 ml に溶解した 4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (Aldrich, 75%) 0.095 g を加えて重合を開始させ、27時間反応の後、室温まで冷却して反応を停止させ、単分散ポリスチレン粒子を得た。モノマ転換率は 93%、容積平均径は 1.6 μm であった。
【0092】
製造例4:非架橋核/外殻型粒子
100 ml 丸底三口フラスコに攪拌機、パージ用 N2 出入口、コンデンサを装着して温度を 70°C に調節した水浴に置き、フラスコに粒径 3.15 μm の単分散ポリスチレン粒子 12.3 wt% を含むラテックス 5.48 g を入れ、蒸留脱イオン水 43.3 ml にドデシル硫酸ナトリウム 0.009 g、炭酸水素ナトリウム 0.007 g を溶解した溶液をラテックスに加えた。懸濁液を 100 rpm で攪拌し N2 でパージしながら 70°C まで昇温し、反応混合物の温度が安定した後、蒸留脱イオン水 0.5 ml に溶解した過硫酸カリウム 0.0068 g を加え、その直後にシリンジポンプを用いて、メタクリル酸メチル 74%、メタクリル酸ヒドロキシメチル 6%、メタクリル酸 20% の混合物 0.676 g を 0.01 ml/min の速度で供給することにより反応を開始させた。添加終了 (1.2 h) の後、70°C で攪拌しつつ反応を更に2時間継続し、水 1 ml に溶解したヒドロキノン 0.0068 g を加え、室温まで急冷して反応を停止させて、粒径 3.32 μm の単分散核/外殻型粒子 2.75 wt% を含むラテックスを得た。表面カルボキシル基のパーキング面積は1個あたり 1.52 Å2 であった。
【0093】
実施例1:緑色蛍光性非架橋微粒子(染料/ポリマ = 0.334 mg/g)の合成
25 ml 丸底三口フラスコに清浄な非架橋コポリマ粒子 0.05 g(エタノール 1 ml、室温 6500 rpm での遠心3回、再分散)を(製造例2で得られたラテックス 0.312 ml として)入れ、この粒子懸濁液にドデシル硫酸ナトリウム 0.75 wt% 溶液 1 ml、ポリ(ビニルアルコール) (Aldrich、分子量 85,000〜146,000、加水分解グレード 87〜89%)水溶液 1.5 ml、エタノール 4.75 ml を加えた。この混合物に緑色蛍光染料 Bodipy FL C5, SE(4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ペンタン酸スクシンイミジルエステル、分子量 417.22、Molecular Probes)0.0167 mg を含むジクロロメタン (Aldrich, 99.9%) 溶液 0.0835 ml を加え、最後に蒸留脱イオン水 10.6 ml を加え、混合物を更に2時間攪拌した。次に混合物全体を 50 ml のプラスチック製遠心分離管に移し、4500 rpm で1分間遠心し、上澄液を除き、着色ビーズを含むペレットをエタノール 2 ml で3回洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム 0.2% 溶液 2 ml に再分散させた。緑色染料とポリマの比率は 0.334 mg/g であった。緑色蛍光の強度と一様性はニコン蛍光顕微鏡、CCD カメラおよび画像取得用ソフトを用いて測定した。結果を図4の散布図に示す。各点の縦座標が粒子1個に対する緑色蛍光強度を示している。これらのデータはバックグラウンド信号や雑音の補正を施していない。
【0094】
実施例2:緑色蛍光性架橋微粒子(染料/ポリマ = 1.667 mg/g)の調製
本実施例は実施例1と同様であるが、ポリマ微粒子は架橋構造を有し、また実験の規模を4倍とした点が異なる。核/外殻型架橋粒子 (Bangs Laboratories, Inc., 3.2 μm, 固体 10%、ジビニルベンゼン 12.5%)0.2 g を含むラテックス乳濁液 2 ml にエタノール 1 ml を加えて 6500 rpm で2分間遠心してラテックスを除去した。この操作は3回反復した。ポリビニルアルコール 1.0 wt% 水溶液 6 ml、ドデシル硫酸ナトリウム 0.75 wt% 水溶液 4 ml、エタノール 19 ml を入れた 100 ml 丸底フラスコに洗浄後のポリマ粒子を移し、この混合物に緑色蛍光染料 Bodipy FL C5, SE 0.3334 mg を含む CH2Cl2 1.5 ml を加え、更に蒸留脱イオン水 53 ml を加えた。得られた粒子懸濁液を回転蒸発器に移し、真空 (26.5 inHg) 下で緩やかに 40°C まで、ついで56°C まで、最終的には 63°C まで加熱して有機溶媒を除去した。濃縮された着色懸濁液を捕集し 6500 rpm で2分間遠心し、上澄液を廃棄して微粒子ペレットを3回の遠心で洗浄した後エタノール 5 ml に再分散させた。最後に洗浄した着色ビーズをドデシル硫酸ナトリウム 0.2 wt% 溶液 2 ml に分散させ、固相濃度を約 10% とした。緑色染料とポリマの量の比率は 1.667 mg/g であった。緑色染料とポリマの比率は 0.334 mg/g であった。緑色蛍光の強度と一様性はニコン蛍光顕微鏡、CCD カメラおよび画像取得用ソフトを用いて測定した。結果を図5の散布図に示す。各点の縦座標が粒子1個に対する緑色蛍光強度を示している。これらのデータはバックグラウンド信号や雑音の補正を施していない。
【0095】
実施例 2A:緑色蛍光染料でコードした架橋微粒子ライブラリ(染料/ポリマ初期濃度比 = 0.833 mg/g)
CH2Cl2 中の緑色蛍光染料の量を 166.67 mg、水の供給速度を 21 ml/h とした以外は実施例1と同様に操作した。水の添加中に30分間隔で4つのフラクションを採取し、直列操作全体で着色粒子含有量の異なる5つの集合を得た(1つは水添加開始前に採取)。これらは水添加量の関数として各々異なる平均蛍光強度を有する。粒子の分析は実施例1と同様に行った。各フラクションの平均蛍光強度を表 1a に示す。以下で a.u. は任意単位を意味する。
【表1a】
【0096】
実施例 2B:緑色蛍光染料でコードした二重着色非架橋微粒子ライブラリ(染料/ポリマ初期濃度比:緑色染料/ポリマ = 橙色染料/ポリマ = 0.75 mg/g)
本発明の直列的溶媒調節法により、緑色および橙色染料でコードした二重着色非架橋ポリマ粒子の相互に区別可能な一連の群を製造した。染料の初期濃度は緑色蛍光染料/ポリマ = 0.75 mg/g、橙色蛍光染料/ポリマ = 0.75 mg/g とした。実施例 2A の方法(当初の予備インキュベーション後の懸濁液中に2種の染料が存在する点のみ異なる)に従って3つのフラクションを採取した。フラクション採取時までの水の添加量と採取された微粒子フラクションの平均蛍光強度と表 1b に示す。
表1b:実施例 2B の緑色および橙色蛍光強度(水添加速度 26.5 ml/h)
【表1b】
【0097】
実施例3−6:緑色蛍光架橋微粒子における染料分配の分析
実施例2の方法と実施例1程度の小規模で4つの緑色蛍光粒子の集合を製造した。それぞれの水添加量は 0.833 ml, 1.74 ml, 5.31 ml, 10.59 ml であり、水の容積分率としてはそれぞれ 0.398, 0.463, 0.623, 0.738 に相当する。染料の取り込み後、着色粒子を遠心し、上澄液を緑色染料残存量測定のため保存した。等量の上澄液4点をアルコールで24倍に希釈し、蛍光スペクトルを記録し、表2の蛍光強度と図 6(a) の較正曲線を用いて各溶液中の緑色染料残存量を計算し、反応当初の緑色染料全量と上澄液中残存量との差から粒子中の緑色染料濃度を計算した。これらの値を表2に示す。
【表2】
【0098】
粒子に取り込まれた染料の量と水の容積分率との非直線的な関係を図 6(b) に示す。
【0099】
粒子中の緑色染料濃度の計算値と蛍光顕微鏡による着色粒子の緑色蛍光強度との相関をも求めた。図 6(c) は直線相関を示している。
【0100】
染料の分配係数 K と Y との関係を図 6(d) に示す。この図に特徴的な指数関係は、本発明による溶媒組成の調節によって染料含有量の微調整が可能であることを示している。
【0101】
実施例7:緑色蛍光染料を含む架橋粒子(染料/ポリマ = 0.833 mg/g)
粒子懸濁液に添加する緑色染料の CH2Cl2 溶液の濃度を 0.1 mg/ml とし、50 ml フラスコを用いる半分の規模て実施例2と同様に操作した。したがって染料溶液添加後の水の添加量も 1.765 ml とした。着色粒子を回収し、遠心と再分散を繰り返して洗浄した。
【0102】
実施例8−10:緑色蛍光染料を含む架橋粒子
実施例7の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0103】
実施例11:橙色蛍光染料を含む架橋粒子(染料/ポリマ = 0.334 mg/g)
橙色染料 Bodipy 558/568, SE(4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル、分子量 443.23, Molecular Probes)を用いて実施例7と同様に操作した。橙色染料の塩化メチレン溶液の濃度は 0.045 mg/ml、染料溶液添加後の水の添加量は 1.765 ml、橙色染料とポリマの重量比は 0.833 mg/g であった。
【0104】
実施例12〜14:橙色蛍光染料を含む架橋粒子
実施例11の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0105】
実施例15:モル比 1:1 の緑色および橙色蛍光染料を含む架橋粒子(緑色染料/ポリマ = 0.150 mg/g、橙色染料/ポリマ = 0.153 mg/g)
実施例7〜14で用いた緑色および橙色染料の等モル混合物を使用したほかは実施例7と同様に操作した。塩化メチレン溶液中の濃度は緑色染料 0.20 mg/g、橙色染料 0.212 mg/g であった。
【0106】
実施例16〜17:異なる量の緑色および橙色染料を含む架橋粒子
実施例15の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 21.2 ml とした2つの粒子集合を更に製造した。
【0107】
実施例18:モル比 1:0.5 の緑色および橙色蛍光染料を含む架橋粒子(緑色染料/ポリマ = 0.150 mg/g、橙色染料/ポリマ = 0.765 mg/g)
緑色染料と橙色染料のモル比を 1:0.5 としたほかは実施例15と同様に操作した。塩化メチレン溶液中の濃度は緑色染料 0.20 mg/g、橙色染料 0.10 mg/g であった。
【0108】
実施例19〜21:緑色および橙色染料を含む架橋粒子
実施例18の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0109】
実施例22:モル比 0.5:1 の緑色および橙色蛍光染料を含む架橋粒子(緑色染料/ポリマ = 0.150 mg/g、橙色染料/ポリマ = 0.765 mg/g)
(a) 緑色染料と橙色染料のモル比を 0.5:1 とし、(b) 水の添加量を 1.5 ml としたほかは実施例15と同様に操作した。塩化メチレン溶液中の濃度は緑色染料 0.10 mg/g、橙色染料 0.212 mg/g であった。
【0110】
実施例23〜25:緑色および橙色染料を含む架橋粒子
実施例22の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0111】
実施例7〜25で製造した着色粒子集合の蛍光強度を表3に示す。
【表3】
【0112】
実施例26:蛍光でコードした粒子ライブラリの構築
実施例7〜25によって製造した19種の蛍光性微粒子を含むライブラリを構築した。19個のうち10個の集合をプールし、ニコン蛍光顕微鏡、CCD カメラ、画像取得用ソフトウェアを用いて緑色および橙色蛍光像を記録した。縦軸・横軸にそれぞれ緑色および橙色染料の強度の対数をとった散布図(クラスタマップ)にはプールした10種の集合に対応する10個のクラスタが明らかに認められる。クラスタ分析の結果を表4に示す。
【表4】
【0113】
実施例27:コードした磁性粒子の製造
A. 水性磁性流体の製造
1 N HCl 中 1 M FeCl3 および 1 N HCl 中 2 M FeCl2 の原液を調製し、100 ml ガラス瓶に 1 M FeCl3 溶液 4 ml, 2 M FeCl2 溶液 1 ml を入れた。脱イオン水 100 ml と 30 wt% NH4OH 溶液を混合して NH3 約 1.7 M の水溶液を調製し、ガラス瓶中の鉄塩溶液を激しく攪拌しながらその 50 ml を緩やかに加えた。次に水酸化テトラメチルアンモニウム 25 wt% 溶液 2 ml を加えた後、溶液を1時間超音波処理した。得られた磁性流体は磁場内で1晩沈降させ、上澄液を傾瀉し、沈澱物を蒸留水で洗浄した。酸化鉄ナノ粒子の脱イオン水中懸濁液をホモジナイズし、重力下で1晩沈降させた後、沈澱物を廃棄し、暗色の上澄液を捕集して最終的な強磁性懸濁液とした。
【0114】
B. コードした磁性粒子の合成
本発明の方法により、染料含有量が等しく粒径約 3 ミクロンの、ポリスチレン核とメタクリル酸メチル (MMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル (HEMA)、メタクリル酸 (MA) の外殻からそれぞれ成る着色ポリマ微粒子を製造した。粒子を蒸留水に分散させ濃度約 1% の懸濁液とし、これに磁性流体懸濁液 50 ml を加えて end-over-end の回転により室温で48時間混合した。得られた溶液を約 200 g で10分間遠心し、黄褐色の粒子ペレットを過剰のナノ粒子を含む赤褐色の上澄液から分離し、上澄液を捨ててペレットをドデシル硫酸ナトリウム 1% 溶液に再分散させて再び遠心した。この工程を2回反復し、最終的には0.5% のTween-20 を含む PBS 緩衝溶液にペレットを再分散させた。1.5 ml の標準 Eppendorf チューブに粒子懸濁液 1 ml をとり、Promega Multitube Magnetic Stand に取り付けた。懸濁粒子は10分間で(器壁上のペレットとして)完全に分離された。
【0115】
実施例28:カルボキシル基で官能化した蛍光コード微粒子の表面へのアビジンの結合
製造例4の方法で製造したカルボキシル化微粒子を実施例1の方法で蛍光性とし、緑色蛍光性微粒子(染料/ポリマ = 0.334 mg/g)を得た。2 ml のバイアルで緑色蛍光性粒子 10 mg を含む液と 10 mM 硼酸緩衝溶液 (pH = 8.5) 1 ml とを混合し、粒子を遠心分離して上澄液をサイホンで排出し、分離したペレットを 0.1 M MES 緩衝溶液 (pH = 4.5) で2回洗浄し、同液 600 ml に再分散させた。別のバイアルで NeutrAvidin(ビオチン結合性蛋白質、Pierce Chemicals, Rockford, IL) 3 mg を MES 緩衝溶液 300 ml に溶解し、この溶液をポリマ微粒子懸濁液に緩やかに加えた。プローブソニケータを用いて懸濁駅を短時間超音波処理した後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミン (EDAC)(Aldrich-Sigma, Milwaukee, WI) 200 mg/ml 溶液 150 ml を加え、室温で2時間反応させた。ついで NeutrAvidin で官能化されたポリマ微粒子を分離し、カップリング洗浄液で1回、硼酸緩衝溶液で2回洗浄し、保存用緩衝溶液 (PBS, pH = 7.4, BSA 0.1% (w/v), Tween 20 0.5% (w/v), EDTA 10 mM, NaN3 0.02% (w/v)) に再分散させて保存した。
【0116】
実施例29:トシル基で官能化した蛍光コード微粒子の表面へのアビジンの結合
本実施例では市販のトシル化蛍光性核/外殻型架橋微粒子(Bangs Laboratories, Inc., 3.2 μm, 固体 10%、ジビニルベンゼン 12.5%)を使用した。この微粒子は 1 g あたり約 0.3 mg の緑色蛍光染料を含む。微粒子 1% を含む懸濁液 200 ml を 100 mM の燐酸緩衝液 (pH 7.4) 500 ml で3回洗浄し、同液 500 ml に再分散させた。これに NeutrAvidin 5 mg/ml 溶液を 20 ml 加え、37°C で1晩反応させた。インキュベーション終了の後、官能化された粒子を BSA 10 mg/ml 含有 PBS (pH 7.4) 500 ml で1回洗浄し、同溶液 500 ml に再分散させ、37°C で1時間反応させて微粒子表面の未反応部位をブロックした。ついで微粒子を BSA 10 mg/ml 含有 PBS (pH 7.4) 500 ml で3回洗浄し、BSA 10 mg/ml 含有 PBS (pH 7.4) 200 ml 中に保管した。
【0117】
実施例30:蛍光性微粒子を用いる NeutrAvidin-ビオチン結合試験
実施例28の固体 1% を含有する NeutrAvidin 官能化蛍光性微粒子懸濁液 100 ml を 1.5 ml のバイアルに入れ、Tween 20 を 0.01% (w/v) 含有する PBS (PBST) 900 ml で希釈し、渦流攪拌により混合した後援新分離し、上澄液を吸引した後ペレットを PBS 980 ml に再分散させた。ついで濃度 26.7 ng/ml の biotin-Oligo(dT)5-CY5.5(蛍光染料 Cy5.5 で標識したオリゴ)(IDT, Coralville, IA) 20 ml を加え、室温で30分インキュベートした後、微粒子を分離して PBST で2回洗浄し、PBST 1 ml に再分散させた。次に微粒子をチップ上に集め、NeutrAvidin 官能化粒子への biotin-Oligo(dT)5-CY5.5 の結合量の直接の指標として表面蛍光を測定した。図8に示した結果は、本発明の方法で染色した2種の粒子(試料と記したもの)のビオチニル化プローブの捕捉効率、および陽性対照として用いた非染色微粒子の捕捉効率を示している。
【0118】
実施例31:蛍光性微粒子を用いるハイブリダイゼーション試験
NeutrAvidin で官能化した蛍光コーディング微粒子(実施例30で製造したもの)に以下のようにして塩基配列既知のビオチニル化オリゴヌクレオチドを付着させた。ビオチニル化オリゴヌクレオチド 0.4 mM を含む反応緩衝液(150 mM NaCl, 0.05 M EDTA, 0.5% ウシ血清アルブミン、0.5 mM Tris-HCl, 100 mM 燐酸ナトリウム、pH 7.2)0.1 ml に NeutrAvidin 官能化微粒子 1% を含む溶液 50 ml を加え、微粒子含有量を約 7 × 105 個とした。反応混合物を室温で渦流攪拌しつつ30分インキュベートし、反応完了後粒子を遠心して捕集し、PBST (150 mM NaCl, 100 mM 燐酸ナトリウム、pH 7.2、Tween 20 0.05% 含有)で3回洗浄し、PBS (150 mM NaCl, 100 mM 燐酸ナトリウム、pH 7.2) 0.2 ml に再分散させた。この方法は NeutraVidin 官能化粒子に任意のビオチニル化オリゴヌクレオチドを結合させるために利用することができる。
【0119】
合成ターゲット (5'-/CY5.5/SEQ ID No:1-3') の脱イオン水中 10 mM 溶液 1 ml を 1x TMAC (4.5 M 塩化テトラメチルアンモニウム、75 mM Tris pH 8.0, 3 mM EDTA, 0.15% SDS) 19 ml で希釈し、最終容積を 20 ml とした。2種のオリゴヌクレオチド官能化蛍光性微粒子をシリコン基板上の平面アレイに捕集した。第1の微粒子群はマッチしたプローブ配列である 5'-ビオチン/(TEG スペーサー)/SEQ ID NO:2/-3' で、第2の微粒子群はマッチしないプローブ配列であるビオチン/(TEG スペーサー)/SEQ ID NO;3/-3' で官能化されたものである。合成ターゲット 20 ml を基板表面に加え、基板を 30 rpm で振盪しつつ 53°C のヒーターで15分間加熱した。次にスライドをヒーターから取り出し、ターゲット溶液を吸引し、基板を室温の 1x TMAC で1回洗浄した後、10 ml の 1x TMAC を基板面上に置き、カバーグラスで被って、アレイの蛍光強度を前述の装置で測定した。結果は図9に見られるようにハイブリダイゼーションが特異的であることを示している。
【0120】
実施例32:蛍光性微粒子を用いたイムノアッセイ
本実施例では市販のトシル化蛍光性核/外殻型架橋微粒子(Bangs Laboratories, Inc., 3.2 μm, 固体 10%、ジビニルベンゼン 12.5%)を使用した。この微粒子は 1 g あたり約 0.3 mg の緑色蛍光染料を含む。PBST (PBS pH 7.4, 0.1% Tween-20 含有)1 ml、トシル基官能化染色微粒子の1% 懸濁液 50 μl (0.5 mg) を Eppendorf 管に入れ、渦流攪拌により十分混合した。次に懸濁液を 7500 rpm で2分間遠心し、上澄液を傾瀉した。この操作は 1 ml の PBST で1回、1 ml の PBS で1回行い、最終的に 1 ml の PBS に再分散させた。予め計算した量の抗 TNF-α 抗体 (R&D Systems) を濃度 50 μg 蛋白質/mg 微粒子で添加し、懸濁液を室温で end-over-end で回転させつつ1晩インキュベートした。ついで微粒子をブロッキング/保存用緩衝液(BSA 0.1%, Tween 20 0.1%, NaN3 0.1% 含有)で洗浄し、同液 1 ml に再分散させた。この抗体で官能化された微粒子の懸濁液 10 ml を 1.5 ml の Eppendorf 管に入れ、PBST 1 ml で2回、PBS (pH 7.2) 1 ml で1回洗浄した。Cy5.5 で標識したヤギ抗マウス IgG の原液 30 ml に 1470 μl の PBS を加えて希釈 (1:50) し、この液の 500 ml を微粒子懸濁液に加えて end-over-end 回転で混合しつつ室温で60分間インキュベートして抗体結合反応を行わせた。インキュベーション後の粒子を PBST 1 ml で2回洗浄し、PBS 10 ml に再分散させた。ついで実施例31と同様にシリコン基板上に平面状の微粒子アレイを作成し、前記の装置と条件で Cy5.5 の平均強度 6500 を記録した。
【0121】
本明細書で引用した文献はすべて引用により本開示に含まれるものとする。本発明が目的を達成し前記の効果、および同方法に固有の効果を上げるのに適していることは当業者には容易に理解し得るところである。本発明はその精神ないし本質的な属性を離れることなく他の具体的方法においても実施可能であり、したがって本発明の範囲は以上の明細書の記述よりも後掲の特許請求範囲によって知るべきである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1(a)】図1(a) は本発明で使用する三元溶媒系を示す模式図である。
【図1(b)】図1(b) は本発明の1つの実施例における実施手順である。
【図2】図2は、本発明によるポリマ微粒子への染料の吸収レベルを、3つの変数の関数として三次元的に示したものである。(X) は浴中の染料の質量(染料の濃度 C(s) と浴に加えた染料の容積 V(s) との積として表される)と微粒子の容積 V(p) との比であり、(Y) は浴中の微粒子の容積分率 φ(p) と溶質の容積分率 φ(s) との比であり、(Z) は微粒子中の染料の濃度 C(p) である。すなわち (Z) 軸は微粒子内に分配された染料の質量と微粒子の容積の比を示している。粒子の容積分率 φ(p) は式 φ(p) = 1 - φ(s) で与えられる。(X, Z) 平面上の直線 (P0) は調節溶媒の存在しないときの微粒子への染料の分配を X の関数として表したものであり、直線 (P1) は調節溶媒が容積分率 φ で存在するときの微粒子への染料の分配を、浴中の染料の質量 (X) の関数として表したものである。
【図3(a)】図3(a) は本発明において、n 種の溶媒系/微粒子懸濁液 Bn から蛍光性染色微粒子の n 種の部分集合 (Fn(Sn)) を得るために並列処理を行う実施例の模式図である。各懸濁液は指定された量 Sn の調節溶媒を含む。
【図3(b)】図3(b) は本発明において、単一の反応によって蛍光性染色微粒子の n 種の部分集合を得るために直列処理を行う実施例の模式図である。[B] は予めインキュベートした溶媒系/微粒子マスターバッチを示し、これに調節溶媒の連続流を注入する。Fn(Sn) は時間 t = tFn においてマスターバッチから除去される微粒子懸濁液の分率を示す。
【図3(c)】図3(c) は本発明において、蛍光性染色微粒子の n 種の部分集合 Fn(Sn) を得るために直列および並列処理を組み合わせて行う実施例の模式図である。[B] は予めインキュベートした溶媒系/微粒子マスターバッチを示し、これに既知量 S(tF) の調節溶媒を加えた後、n 個の分割単位 Bn に分け、その各々に n 種の異なった量 δSn の調節溶媒を加える。
【図3(d)】図3(d) は本発明において、蛍光性染色微粒子の m×n 種の部分集合 Fm(Sm, Dn) を得るために、溶媒調節と染料の追加を併用し、直列処理に続いて並列処理を行う実施例の模式図である。Sm は部分集合 Fm(Sm, Dn) に加えられる調節溶媒の量、Dn は同じく蛍光染料の量を示す。
【図4】図4は下記の実施例1によって製造した粒子集合の蛍光のプロットである。
【図5】図5は下記の実施例2によって製造した粒子集合の蛍光のプロットである。
【図6(a)】図6(a) は緑色蛍光染料である 4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダンセン-3-ペンタン酸スクシンイミジルエステルのエタノール溶液に対する、波長 512 nm における蛍光発光強度と染料濃度との関係をプロットした蛍光較正曲線である。
【図6(b)】図6(b) は実施例3〜6の粒子に捕捉された緑色蛍光染料の量の計算値と、実施例3〜6の粒子の作成に使用した水の容積分率との関係をプロットしたものである。
【図6(c)】図6(c) は実施例3〜6の粒子に捕捉された緑色蛍光染料の量の計算値と緑色蛍光の強度との関係をプロットしたものである。
【図6(d)】図6(d) は緑色蛍光染料の分配係数と Y (= (1 - φs)/φs) との関係をプロットしたものである。
【図7】図7は実施例26によって製造した粒子集合の蛍光のプロットである。
【図8】図8は実施例30によって製造した粒子の発生する蛍光のプロットである。
【図9】図9は実施例31によって製造した粒子の発生する蛍光のプロットである。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、たとえば染色粒子の製造に際して、連続的液相と分散固相との間の溶質の分配を制御する方法に関する。
【0002】
発明の背景
溶質、たとえば染料を取り込んだポリマ粒子は、フローサイトメトリーなどのアッセイの検出方法において、生体分子のマーカーとして、あるいは内部標準や較正用標準として広く使用されている。蛍光性ポリマ粒子の製造方法としては大別して4種が従来知られている。すなわち (A) 染料とモノマの共重合、(B) 予め形成された粒子への水溶性または油溶性染料の分配、(C) 予め形成された粒子の表面機能付与、(D) 染料液滴のカプセル化である。また内核-外殻構造の粒子、すなわちポリマ内核とポリマ外殻からなる粒子を得る重合法も使用されている。
【0003】
A. 共重合に基づく方法
微小粒子を形成するためのモノマ単位を蛍光染料の存在下で重合させることにより蛍光性微粒子を合成することができる。米国特許第 4,326,008 号 (Rembaum, 1982) には官能化アクリルモノマと重合可能な蛍光性コモノマとの共重合により蛍光性微粒子を合成する方法が記載されている。この方法は一般に重合可能な染料分子を必要とする。この種の方法は一般に、蛍光染料によって重合が阻害され、あるいは重合反応時の反応種によって蛍光染料が漂白されるおそれがあるという欠点を有している。
【0004】
米国特許第 4,267,235 号 (Rembaum, 1981) には懸濁重合法によるポリグルタルアルデヒド微小球の合成方法が記載されている。蛍光性微小球の製造には共可溶化したイソチオシアン酸フルオレセイン (FITC) を用いる。この共可溶化染料分子とモノマとの懸濁重縮合により、染料の分解や重合阻害の問題はほぼ回避されるが、生成物は粒度分布幅が広いため、単分散蛍光性微小球の製造方法としては不適当である。
【0005】
米国特許第 5,073,498 号 (Schwartz et al., 1991) にはシード重合による蛍光性微粒子の製造方法が記載されている。モノマおよび開始剤を含む疎水性蛍光染料一又はそれ以上を溶解し、この溶液を予め膨潤させた微粒子に添加する。同特許には1つの粒子に3種の異なった染料を導入する方法が開示されている。この方法は蛍光染料によって重合が阻害され、あるいは重合反応時に蛍光染料が漂白されるおそれがあるという欠点を有している。
【0006】
内核-外殻型粒子を製造する方法としては、表面官能基を利用しない多段乳化重合が知られている。米国特許第 5,952,131 号 (Kumaceheva et al.) に開示されている染色内核-外殻型粒子の製造方法は、2種のモノマ(メタクリル酸メチルとジメタクリル酸エチレングリコール)と蛍光染料(4-アミノ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールで標識したメタクリル酸メチル)の混合物の多段半連続重合に基づくものである。得られた粒子を連鎖移動剤(ドデシルメルカプタン)の存在下でメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルと共重合することにより外殻に包み込む。Kumaceheva らは表面官能基を有する内核-外殻型ポリマを製造しておらず、またそれを目的ともしていない。
【0007】
米国特許第 4,613,559 号 (Ober et al.) には膨潤によるカラートナーの製造法が開示されている。エタノール、ポリアクリル酸、メチルセロソルブおよび過酸化ベンゾイルの存在下でスチレンを分散重合してポリスチレン粒子 (5.5ミクロン) を得、これをドデシル硫酸ナトリウムおよびアセトンの水溶液に分散させて膨潤させる。この分散液に乳化染料溶液 (Passaic Oil Red 2144 の塩化メチレン溶液をドデシル硫酸ナトリウム水溶液で乳化)を加えることにより着色粒子が得られる。
【0008】
表面官能基を有する内核-外殻型粒子の製造に重合法が用いられている。米国特許第 5,395,688 号 (Wang et al.) には、ポリマ内核の周囲に磁性金属酸化物を含むポリマを被覆して成る磁性蛍光性ポリマ粒子が開示されている。最終的なポリマ外殻は生体材料との共有結合を容易にするため機能性モノマを用いて合成される。Wang らの方法は (1) 蛍光性の内核粒子の製造、(2) 乳化剤非存在、過剰の開始剤存在の条件下でのフリーラジカル重合により蛍光性内核粒子上に形成されたポリスチレン外殻への金属酸化物の包含、(3) 得られた磁性蛍光性粒子の機能性ポリマ層による被覆、の3段階を基にしている。機能性ポリマはカルボキシル基、アミノ基、またはスルホン基を有する。Wang らは着色内核粒子を得る方法については記述しておらず、またフリーラジカル重合の過程での染料の分解の問題にも触れていない。
【0009】
米国特許第 4,829,101 号 (Kramer et al.) には内核-外殻型重合による 2ミクロンの蛍光性粒子が開示されている。内核はメタクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、ジメタクリル酸エチレングリコールの混合物を 80°C で過硫酸アンモニウムを開始剤として重合することにより得られる。外殻は内核上に、まず蛍光染料(蛍光−緑−金)を含む同じモノマを半連続的に加え、反応終了まで2種のモノマ混合物、すなわちメタクリル酸メチル、ビスメタクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸グリシジルを含む第1の混合物とメタクリルアミドおよび開始剤を含む第2の混合物を、1時間にわたって加えることによって形成する。重合開始剤としては 4,4'-アゾビス-(シアノ吉草酸) を用いる。
【0010】
Okubo et al., Colloid Polym. Sci. 269: 222-226 (1991), Yamashita et al., Colloids and Surfaces A 153: 153-159 (1999) および米国特許第 4,996,265 号にはシード分散重合によるミクロンサイズの単分散ポリマ粒子の製造方法が記載されている。シード重合に先立ち、シードポリマ粒子を大量のモノマによって予め膨潤させておく。膨潤はシード粒子、モノマ、安定剤、開始剤を含むエタノール・水混合物に水を緩やかに連続的に滴下することで行う。水の添加により連続相におけるモノマの溶解度が減少する結果、モノマが析出してシードポリマ粒子の表面または内部に吸収される。シードポリマ粒子に吸収されたモノマを重合させれば大型の単分散ポリマ粒子が得られる。
【0011】
B. 水溶性または油溶性染料の分配
予め膨潤させた微粒子に染料分子を分配することにより蛍光性粒子を製造する方法は最初に L.B. Bangs (Uniform Latex Particles, Seragen Diagnostics, Inc., 1984, p.40) が報告したものである。この方法では染料分子または染料分子混合物を、ポリマ微粒子を含む適当な溶媒または溶媒混合物に溶解する。微粒子は溶媒を吸収して膨潤し、その際に溶媒混合物中に存在する染料の一部も吸収される。この染色過程は通常溶媒を除去することで停止される。染料の分配の程度は染料濃度の調節によって制御され、また複数の染料を用いる場合には個々の染料の相対量によっても制御される。このようにして染色された微粒子は安定度が高く均一であるが、溶媒の選択によっては希望する分配率を達成するために大過剰の染料が必要であることが多く、高価な染料の損失が大きくなる。
【0012】
米国特許第 5,723,218 号 (Haugland et al., 1998)、同 5,786,219 号 (Zhang et al., 1998)、同 5,326,692 号 (Brinkley et al., 1994)、同 5,573,909 号 (Singer et al., 1996) には、有機溶媒ないし有機溶媒混合物中で膨潤および染料分配を行うことによる各種の蛍光色粒子の製造方法が記載されている。記載されている粒子は多様であり、たとえば複数の染料を含む蛍光性粒子、Stokes シフトが高くかつ制御可能な粒子、球形の蛍光ゾーンを有する粒子などがある。
【0013】
国際特許出願 WO 99/19515 号 (Chandler et al., 1997) には2種の染料を用いてレシオメトリックにコードされた一連の微粒子を製造する改良された方法が記載されており、64種のコードを持つ微粒子を製造する手順が報告されている。また有機溶媒と無水アルコールとの混合物を用いる膨潤浴組成物も開示されている。
【0014】
米国特許第 5,266,497 号 (Matsudo et al., 1993) には、水中で乳化した有機溶媒に溶解した疎水性染料を用いる、染料で標識したポリマ粒子の製造方法が記載されている。この粒子は免疫クロマトグラフィーで使用することを目的としている。
【0015】
米国特許第 4,613,559 号 (Ober et al., 1986) には油溶性染料を用いる着色ポリマ粒子の製造方法が記載されている。ここに開示されている方法では、水とアセトンの混合物中で乳化したジクロロメタン染料溶液を用いて粒子を着色する。
【0016】
C. 微粒子の内表面または外表面の官能化
表面官能化による蛍光性粒子の製造は、予め形成された微粒子の表面の反応基に一又はそれ以上の染料を共有結合的に付着させる方法である。この方法では染料分子が外部環境に露出した状態になるため、染料の分解が早められる。また表面官能化によって粒子表面が強い疎水性を持つことが多く、このため好ましくない非特異的吸着が起こりやすく、粒子表面上または粒子近傍の生体分子の活性が失われることもある。これらの問題は、担体粒子表面に染料分子でなく着色微粒子を付着させることにより回避できる。少数の染料を用いてエンコードされた粒子の大きな集合を得る(比率エンコーディング)場合にこの方法が効率的であるかどうかは明らかでない。
【0017】
米国特許第 4,487,855 号 (Shih, 1984)、米国特許第 5,194,300 号 (Cheung, 1993)、米国特許第 4,774,189 号 (Schwartz, 1988) には一または複数の染料を予め形成された粒子表面に共有結合的に付着させることによる着色または蛍光性微粒子の製造方法が開示されている。Battersby et al., "Encoding Combinatorial Libraries: A Novel Application of Fluorescent Silica Colloids", Langmuir 2000, 16, 9709-9715 および米国特許第 6,268,222 号 (Chandler et al., 2001) には、担体微粒子表面にこれより小さい一群の染色ポリマ粒子を付着させることによる蛍光性微粒子の製造方法が開示されている。
【0018】
D. カプセル化法
カプセル化による蛍光性粒子の形成には、予め形成されたポリマと一又はそれ以上の染料を使用する。1つの方法では、振動ノズルまたはジェットを用いて溶液を液滴として分注し、溶媒を除去して染料をカプセル状に包含するポリマ粒子を得る。この方法では特別の装置が必要であり、製造効率が限られている。別法として、ポリマと染料の混合物を高沸点溶媒中で乳化し、溶液を蒸発させて染料粒子を包含するポリマを得ることができる。この方法では非球形粒子が生じることが多く、また粒度分布幅が広い。
【0019】
米国特許第 3,790,492 号 (Fulwyler et al., 1974) には、噴流を用いて予め溶解したポリマおよび染料の溶液から均一な蛍光性微粒子を製造する方法が開示されている。米国特許第 4,717,655 号 (Fulwyler et al., 1988) には、予め定めた比率で2種の染料をポリマ微粒子に含有させて5種の相互に識別可能な2色粒子を製造する方法が開示されている。
【0020】
蛍光性微粒子を製造するためのこれら各種の先行技術には種々の欠点がある。強力な膨潤溶媒を使用する場合には、微粒子は染料溶液中で分解・変形しないよう架橋しておくことが必要である。大部分の染料は、適切な濃度で溶解するためには、興味あるポリマ特にポリスチレンをも溶解する溶媒系を必要とするから、このことは大きな制約となり、実際先行技術においても、化学的に安定化(架橋)した微粒子への溶媒膨潤法の適用は限られている。更に高度に架橋された粒子の合成はしばしば極めて困難であり、微小粒子の製造に別の困難とコストが含まれることになる。また架橋粒子への制約は微粒子の膨潤の程度、したがって染料包含の程度をも制約する。具体的には、先行技術による溶媒膨潤法を架橋微粒子に適用した場合、一般に染料は微小粒子の外層に浸透するのみであり、各粒子の内容積全体を均一に染色することはできず、したがって一般的には高度の染料包含は不可能である。以上のことから、架橋・非架橋いずれの粒子をも使用できる方法が必要とされ、またたとえば異なった種類または量の染料を含む染色粒子のライブラリを作成するために利用できるような、染料を充填した非架橋粒子を得る方法が必要とされる。
【0021】
先行技術の溶媒膨潤による染料吸収法において、粒子の膨潤の程度は染料の粒子内への輸送速度を決定する。拡散障壁があれば微粒子内の染料分布が不均一になる。このため均一に染色された微粒子群を製造するためには強力なミクロ攪拌(効率的な機械的攪拌または超音波処理)が必要とされる。このような強力な攪拌は実験室的調製の際には有効であるが、大規模生産では容易には使用できない。たとえば超音波処理はプローブソニケータのような特殊な装置を必要とし、また複数の染色処理を並行して行うにも制約がある。したがって攪拌が温和ですむかまたは攪拌を全く必要とせず、並行的染色が可能な染色粒子の製造方法が必要とされる。
【0022】
先行技術の膨潤法で染色した微粒子は、以後溶媒と接触したときには染料が失われるおそれがあり、また多段連続的な染色方法は実施できない。
【0023】
先行技術の諸方法において、ポリママトリックスへの染料の分配の程度は、染料溶液中の染料の濃度を変化させることによって制御される。この方法は、複数の異なる段階の染料含有量が得られるとはいえ、多くの欠点を有する。たとえば浴での染料の溶解度が限られているため、染色の頻度をある程度以上高くすることはできない。溶解度が問題でない場合も、多くの染料は分配係数が低いため大過剰の染料溶液を必要とし、以後の生物学的分析に悪影響を及ぼすおそれがある。実際、先行技術の膨潤法によってカルボキシル化したビーズを製造した場合、カルボキシル基は活性を失い、他の基との共有結合による官能化のために利用できなくなる可能性がある。また高価な染料が相当量失われる。したがって溶解度の低い染料・溶媒の組み合わせにおいても染色微粒子、特に蛍光性微粒子を製造する方法、また染色過程においてポリマ微粒子への溶質(染料)の充填量を精密に制御できる方法が必要とされる。
【0024】
発明の概要
ある実施例においては、本発明はポリマ微粒子への溶質の充填量を制御する方法を提供する。この方法は下記の諸段階を具える。
(a) 下記を用意すること。
(i) 溶質とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも一つの第三の溶媒とからなる混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製すること。
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、溶質を微粒子に吸収させること。
(d) 微粒子懸濁液またはその一部において、懸濁液の液相から微粒子への溶質の分配量が分配完了時より小さくなるように、溶質と第二の溶媒との相対濃度を制御することにより、ポリマ微粒子中の溶質濃度を制御すること。
【0025】
一つの実施例においては、第一の溶質充填濃度で特徴づけられる微粒子懸濁液に、所定量の少なくとも1つの第二の溶媒を加えることにより、所定の第二の溶質の濃度が達成される。他の実施例においては、微粒子懸濁液を分割し、それぞれに所定量の第二の溶媒を加えることにより、複数の所定溶質濃度を持つ微粒子群を得る。
【0026】
本発明の他の実施例においては、ポリマ微粒子の溶質充填量を変化させる方法は下記の各段階からなる。
(a) 下記を用意すること。
(i) 溶質とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも一つの第三の溶媒とからなる混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製すること。
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、溶質を微粒子に吸収させること。
(d) 微粒子懸濁液に第二の溶媒を連続的または半連続的に加えることにより、微粒子内の溶質濃度を連続的または半連続的に変化させ、これにより微粒子への溶質吸収量および最終濃度を制御すること。
【0027】
ポリマ微粒子の溶質充填量を制御する上記方法の一つの実施例においては、同方法は更に、前記第二の溶媒の添加中に一定時間間隔で前記微粒子の少なくとも一部を懸濁液から取り出すことにより溶質濃度の異なる少なくとも2つの微粒子集合を作成する段階を含む。
【0028】
他の実施例においては、本発明は下記の各段階からなる、ポリマ微粒子の染料充填量を変化させる方法である。
(a) 少なくとも1種の染料と下記からなる溶媒系とからなる染料溶液に微粒子を懸濁させ、少なくとも1種の染料の第一の含有濃度によって特徴づけられる微粒子を作成すること。
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 前記微粒子懸濁液に所定量の第二の溶媒を加え、ポリマ微粒子への染料の分配量、および同微粒子内の染料濃度を変化させること。
(c) 微粒子懸濁液を所定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が微粒子懸濁液への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにすること。
【0029】
更に他の実施例においては、本発明は下記の各段階からなる、染色ポリマ微粒子の製造方法である。
(a) 下記を用意すること。
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも1つの第三の溶媒からなる混合物の所定量に前記ポリマ微粒子を懸濁させること。
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、前記第一の溶媒に溶解した染料からなる溶液を加え、染料を微粒子に吸収させ、微粒子中の前記染料の第一の濃度によって特徴づけられる微粒子懸濁液マスターバッチを得ること。
(d) 前記微粒子懸濁液マスターバッチを2つ以上に分割し、各々に所定量の第二の溶媒を加えてポリマ微粒子への染料の分配量を変化させること。
(e) 微粒子懸濁液の各分割単位を所定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が微粒子懸濁液の分割単位への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにすること。
【0030】
染色したポリマ微粒子を自動的に製造する方法も提供される。この方法は下記の各段階からなる。
(a) 第一の染料濃度で特徴づけられる微粒子を、少なくとも1つの染料と下記からなる溶媒系からなる染料溶液に懸濁させて微粒子マスターバッチ懸濁液とすること。
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒。
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒。
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒。
(b) 前記マスターバッチ懸濁液から、前記染料溶液中の前記第一の染料濃度により各々特徴づけられる、2つ以上の微粒子懸濁液分割単位を作成すること。
(c) 各分割単位に対して、微粒子中の前期第一の染料濃度を所定の第二の染料濃度に変化させるため、下記の工程を少なくとも1回実行すること。
(i) 所定の第二の染料濃度に対して、前記分割単位において微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するのに必要な下記の量を計算すること。
(1) 前記第一の溶媒に溶解すべき染料の量。
(2) 第二の溶媒の量。
(ii) 前記分割単位に、前記第一の溶媒に前記量の染料を溶解した溶液、および微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するために必要な量の第二の溶媒を分注すること。
【0031】
染色ポリマ微粒子を製造するための装置は、ピペット操作ロボットを操作するように結合され、前記自動的方法を実行するようにプログラムされたコンピュータを含む。
微粒子懸濁液から、所定量の第二の溶媒を含む前記2つ以上の分割単位を作成する段階としては、たとえば微粒子懸濁液マスターバッチを2つまたはそれ以上の分割単位に分け、各所定量の第二の溶媒を前記分割単位に加えることによって実行できる。あるいは第二の溶媒を加えた2つ以上の微粒子懸濁液分割単位を作成する段階を、微粒子懸濁液マスターバッチに第二の溶媒を連続的または半連続的に加え、その過程で一定時間間隔でマスターバッチの少なくとも一部を取り除くことによって実行することができる。結果として第二の溶媒の所定量を含む2つ以上の微粒子懸濁液分割単位が得られる。
【0032】
発明の詳細な説明
2つの相溶性のない溶媒1と2の間の溶質の分配は分配係数 K で規定される。分配係数は両相における溶質の平衡量の比、すなわち K = N1/N2 である。
【0033】
本発明は2つの実質的に相溶性のない相の間の溶質の分配係数 K、すなわち連続的な液相と、連続的な液相に固体粒子を分散させた分散相との間の分布を調節する方法を提供する。したがって本発明によれば、溶媒系内のポリマ微粒子への溶質の導入量を制御することが可能である。溶質はポリマ微粒子相に分配することのできる物質であればよく、染料、顔料、医薬、触媒、ナノ粒子、その他ポリマ微粒子内部または表面に充填することが望ましい任意の物質が使用できる。
【0034】
好ましい実施例においては溶質は染料であり、以下では2つの実質的に相溶性のない相、すなわち予め形成されたポリマ微粒子(相1)と均質な三元溶媒系(相2)との間の溶質(染料)の分配を例として本発明を説明する。微粒子は固相からなる。染料はポリマ微粒子に希望する色または蛍光を付与することのできる物質であれば何でもよく、たとえば発色団あるいは蛍光発生基を含む。微粒子に包含される染料の量は、染料の与えられた初期濃度に対して三元溶媒系の組成を調節することにより正確に制御することができる。以下に例示するように、この方法によれば予め定められた濃度の染料を含む相互に区別し得る染色微粒子の集合を再現性よく、かつ試料内の染料含有量の変動を最小限として製造すること、すなわち「染色コーディング」が可能である。
【0035】
このように本発明の方法は、着色微粒子の製造に際して、染料浴と微粒子との間の染料の分布を支配する分配係数を広範囲にわたって定量的に調節する手段として、溶媒の組成を新たな制御パラメータとして導入する。具体的には、溶媒調節を行うときの染料の分配係数 K は式 K = a exp(bY), Y = (1 - φs)/ φs で表される。但し φs は溶媒の容積分率、a, b は定数である。
【0036】
本発明の染色コーディングは微粒子への染料充填量を変化させることによって行われる。「充填」という語は微粒子に含まれる染料に関して、その量あるいは性質を指す。すなわち充填は (i) 含有される染料の量と、(ii) 含有される染料の種類との少なくともいずれか1つの選択によって変化する。したがってコーディングは、微粒子の集合ごとに同一染料の異なった量を用いるか、染料の化学的性質を変える(異なった染料または染料の異なった組み合わせを用いる)か、または両者を併用することによってなされる。
【0037】
本発明において染色微粒子、特に蛍光性染色微粒子の製造に使用する均一な三元系溶媒を図1(a) に模式的に示す。溶媒 #1 は染料と微粒子原料のポリマとの両者に対して強い溶媒であり、溶媒 #2 は本明細書において「調節溶媒」とも呼称し、染料とポリマの両者に対して弱い溶媒であるか、または非溶媒である。好ましい実施例の一つにおいては、溶媒 #2 は水性溶媒、好ましくは水である。溶媒 #1 と溶媒 #2 とは相溶性がないか、あるいは僅少である。第三の溶媒 #3 は染料とポリマの両者に対して弱い溶媒であるか、または非溶媒であるが、溶媒 #1 および #2 の両方に対して相溶性であり、共溶媒として働く。好ましい実施例の一つにおいては溶媒 #3 はアルコールである。
【0038】
先行技術による、微粒子の膨潤による染料導入方法は染料に使用できる溶媒の選択の幅が限られており、一般に架橋粒子を使用する必要がある点で限界がある。これら先行技術による方法では、染料がある濃度範囲で溶解し得る溶媒を選択し、希望する濃度の染料溶液を調製し、ついで染料溶液をポリマ微粒子と一定時間にわたって接触させ、染料を粒子内へ浸透させる。
【0039】
先行技術の膨潤法により蛍光性粒子を製造する際の問題は、染料浴への染料の溶解度が限定されていることである。染料の溶解度が問題とならない場合でも、多くの染料はポリマとの間の分配係数が小さいため蛍光染料が大過剰に必要であり、しかもその過剰分は廃棄されてしまう。これに対して本発明によれば、溶解度の低い染料/溶媒系を用いた場合でも染料含有量の極めて高い微粒子を得ることができる。これは溶媒調節によって浴中の染料を完全に利用できる事実の反映である。
【0040】
本発明による染料含有方法は従来の溶媒膨潤法と異なり、非架橋粒子、架橋粒子のいずれに対しても同等の効率をもって適用することができる。ポリマ微粒子に関して「架橋」とは、ポリマ鎖が互いに結合して三次元網目構造を形成していることを言う。架橋は重合過程において架橋剤すなわちポリマ鎖上の官能基と反応し得る2つ以上の基を有する試薬を用いて行うことができる。また平均2個以上の官能基を持つモノマの重合によっても架橋ポリマが得られる。
【0041】
このように本発明は、非架橋ポリマからなる染料充填微粒子の製造方法を初めて提供するものである。高度に架橋されたポリマの製造はしばしば極めて困難であるから、このことは著しい進歩性を意味する。更に、染料による微粒子の染色に際して強力な攪拌を必要とする多くの従来法と異なり、本発明の方法は温和な攪拌のみで十分である。この攪拌は微粒子を懸濁状態に保つに足りるものであればよい。従来法で要求されるような強い攪拌は特殊な装置を必要とし、かつスケールアップが困難であるから、このことも著しい改良点である。
【0042】
ポリマの架橋は一般に形成された架橋微粒子ポリマの膨潤を制約し、また粒子内部への染料の浸透を制約する。そのため染料の分布は粒子表面の薄層内に限定され、染料の充填量が制約される。微粒子全体にわたって実質上均一に染料が分布していることを特徴とする染色ポリマ微粒子は、非架橋ポリマを微粒子原料として使用できるようになって初めて可能となった。ここに「実質上均一」とは、着色粒子が蛍光イメージングの条件において、対称的かつ単一モードの蛍光強度プロフィルを生ずることを意味する。これに対して表面着色粒子(蛍光色素が粒子表面上または表面近傍の狭い範囲に限定されている)は対称的ではあるが双峰モードの蛍光強度プロフィルを生ずる。
【0043】
場合によっては微粒子内に不均一な染料分布を作り出すよう制御することが望まれる。染料の浸透を完了以前に止めるには、微粒子を染色浴から、微粒子相中の染料と液相中の染料とが平衡に達する以前に取り出せばよい。染料の浸透の程度は染色浴中での微粒子のインキュベーション時間で決まる。平衡達成前に粒子を浴から取り出すことにより、対称的ではあるが双峰的な蛍光強度プロフィルが得られる。粒子の蛍光強度プロフィルの形状、特に強度ピークの位置は平衡達成前のインキュベーション時間の関数である。したがって染色浴中でのインキュベーション時間を微粒子コーディングの一つの次元として利用することが可能である。同一の染料を用い染色浴中での微粒子のインキュベーション時間を変化させれば、種々の蛍光強度プロフィルを持つ微粒子の集合を製造することができ、複数種の染料を用いれば一層広範なコーディングが可能となる。
【0044】
本発明によれば、微粒子に包含される染料の量は染料の量とポリマの量との比率の調節によって、および染料浴の組成の調節によって制御される。特に先行技術と異なる点として、三元溶媒系の成分の一つ(すなわち調節溶媒)の容積分率を変化させることにより、溶媒と微粒子を構成するポリマとの間の染料の分配を便利に調節することができる。本発明は先行技術と異なり染料および溶媒組成の選択範囲が広く、多成分系溶媒を用いることにより染料の分配をより精密に制御することができる。後述するとおり本発明の方法は分配係数 K が溶媒組成に対して指数的に変化することを利用しており、これによって従来の膨潤法によるよりも良好な染料含有量の制御を達成している。先行技術による方法では分配係数を調節するのではなく、単に浴中の染料の初期濃度を変化させることにより、微粒子の染料含有量を比例的に(その比例係数が分配係数 K である)変化させるにすぎない。
【0045】
図2はポリマ微粒子への染料の分配の変化に関して、本発明の方法と従来の膨潤法とを比較したものである。点 X1(1), X2(1), X3(1) はそれぞれ溶媒系中の染料の質量と系内の微粒子の容積との比であり、点 Z1(1), Z2(1), Z3(1) はそれぞれに対応する、微粒子中に含有される染料の濃度を示す。微粒子への染料の包含の程度は溶媒系中の染料の質量と直線関係にあり(直線 P0)、この直線の傾きが分配係数 K である。したがって先行技術の膨潤法によっては、染色微粒子を製造するために利用できる経路は XZ 面内に限られることが明らかであろう。種々に異なった染色微粒子の下位集合を製造するためには、溶媒中の染料の初期濃度を(染色すべき微粒子の与えられた数に対して)変化させて、粒子への染料の充填の程度を比例的に変化させることが必要である。
【0046】
これに対して本発明においては溶媒組成を、複数の染色微粒子群を製造する工程を制御する新たな変数として導入する。本発明が染色微粒子の製造のために全く新たなパラメータ空間 (Y) を追加して、三次元パラメータ空間 (XYZ) 内の経路を利用可能とすることは、図2の検討により了解されよう。たとえば Z1(1), Z2(1), Z3(1) の各組成から出発して、図2に示した非直線的作業曲線に従うことにより、明確に定義され予測可能な濃度 Z1(2), Z2(2), Z3(2)の染料を包含する、それぞれ異なった微粒子群を製造することができる。任意の固定した溶媒組成(固定した Y)において、Z と X とは直線的関係にある(調節溶媒の容積分率 φ に対しては直線 OP1)。
【0047】
したがって図2の三次元パラメータ空間 XYZ において、複数の経路を通って任意の点に到達することが可能であり、各経路は染色微粒子の複数の下位集合を予測可能な方法で製造するのに利用することができる。本発明の方法は熱力学的平衡によって支配される条件下で操作し、また前記諸経路の定量的表式を提供することにより、染色粒子の製造のためのプロトコルの合理的な設計を可能とするものである。
【0048】
本発明による、連続的液相と分散固相(微粒子)との間の溶質(染料)の分配を操作する作業は以下のように数学的に表現することができる。ただし以下の記述は本発明が何らかの理論により制約されることを意味するものではない。
【0049】
系の最初の状態 {X1, Y1, Z1} から希望する第2の状態 {X2, Y2, Z2} への変換を式 Z = G(X, Y) で表す。すなわち分散相(微粒子)における溶質(染料)の濃度 Z は溶質の濃度 (X) および溶媒組成 (Y) の関数である。希望する第2の状態 {X2, Y2, Z2} は与えられた第1の状態から到達できる多数の状態から、前記の方法により式 Z = G(X, Y) に従って X および Y を調節することにより選択される。その関係はそれぞれ下記のように定義される変数 X, Y, Z により支配される。
X = C(S){φ(S)φ(P)}
Y = φ(P)/φ(S)
Z = C(P)
ただし
φ(P) = V(P)/(V(P) + V(S)) = 粒子相の容積分率
φ(S) = 1 - φ(P) = 溶媒相の容積分率
C(S) = 平衡時の溶液相中の溶質濃度
C(P) = 平衡時の粒子相中の溶質濃度
V(P) = 粒子相の容積
V(S) = 溶媒相の容積
である。
粒子相 (P) と溶媒相 (S) との間の溶質(染料)の分布は分配係数 K に支配される。
K = N(P)/N(S)
ただし N(P) は平衡状態における粒子相内の分子の数、N(S) は平衡状態における溶媒相内の分子の数である。
したがって状態 1 における分配係数 K の値は
K1 = N(P)1/N(S)1
と表され、状態 2 における分配係数 K の値は
K2 = N(P)2/N(S)2
と表される。
質量収支の式
NT1 = NT2(溶質全量に対して) (1)
N(P)1 + N(S)1 + ΔN(S)1 = NT1(状態 1 における溶質分子総数に対して) (2)
N(P)2 + N(S)2 = NT2(状態 2 における溶質分子総数に対して) (3)
(ただし NTi は状態 i における溶質分子の全量(総数)、ΔN(S)i は状態 i において溶媒相に添加された溶質分子の数)を適用すると、次の逐次方程式が得られる。
X2 = {(1 + K1)/(1 + K2)}X1 + {1/(1 + K2)}ΔX1 (4)
Y2 = Y1 + ΔY1 (5)
Z2 = {(1 + K1-1)/(1 + K2-1)}Z1 + {1/(1 + K2-1)}ΔX1 (6)
変数 Y を一定に保つ、すなわち状態 1 から状態 2 への変化をK1 = K2 であるように溶質を添加することのみによって行う特別の場合には、
Z2 = Z1 + {1/(1 + K-1)}ΔX1 (7)
が得られる。
【0050】
更に Z の X および Y への依存関係が Z = K(Y)X の形で得られる。分配係数 K が Y に依存することは、溶媒系に調節溶媒を添加すると溶質に対する溶解能力が低下し、したがって溶質の分散相への再配分が起こる事実を反映している。実験データとその解析から、具体的な関数形として
K = a exp(bY) (8)
が得られる。ただし a, b は図6dに示すようなデータ解析によって決定される定数である。
【0051】
したがって本発明は、希望する状態変化を引き起こすための明確な一連の手順を提供する。具体的には、単一の第1の状態から出発して一連の第2の状態すべてを実現することができる。
【0052】
前記の変換方程式、特に前記逐次方程式の形のものを用いれば、パーソナルコンピュータ、および染料またはその他の溶質あるいは調節溶媒の所要の量を分注するための標準的な自動ピペット操作装置(ロボット)を用いて、一連の染色微粒子を自動的に製造することが容易にできる。変換の逐次方程式の評価は、BASIC や C などの標準的プログラミング言語を用いて開発できるソフトウェアによって行うことができる。標準的な実験機器制御インターフェイス(たとえば GPIB プロトコル)と標準的なソフトウェア開発環境(たとえば LabView (National Instruments)) を利用し、プログラムが染料および調節溶媒の所要量を計算し、その結果に従いピペット操作ロボットを制御して所要量の染料と調節溶媒を計量分注する。たとえば本明細書に開示したマスターバッチを用い、上記の方法によってマスターバッチからの1つ以上の分割単位を分注して第1の状態の懸濁液を作り、希望する第2の状態の懸濁液を得るのに必要な染料および染料溶媒の量を計算し、その必要量の溶質と染料を分注し、変換を起こさせることにより、染色微粒子の集合を容易に製造することができる。この手順を希望する回数だけ反復する。
【0053】
官能基修飾された微粒子を先行技術による膨潤法で染色することは、官能基の健全性を損なう可能性がある。後述の実施例28に示すように、本発明の方法によれば官能基の健全性を損なうことなく、官能基修飾された微粒子を染色することができる。
【0054】
本発明の実施のために、本明細書に記載の溶解度パラメータに従って微粒子の化学的性質、溶媒、染料を選択するために既存の情報を利用することは当業者にとって容易であることが理解されよう。
【0055】
また本発明の方法の記述から、ポリマの安定な分散液が得られるか、または作成可能であれば、ポリマ粒子の製造のためにいかなるポリマでも利用できることも明らかであろう。材質はホモポリマでもコポリマでもよく、後者は2種のモノマからなるものに限らず、3種以上のポリマからなるもの(いわゆるターポリマ)でもよいが、疎水性のポリマであることが好ましく、ビニル系モノマすなわちビニル基を含むモノマからなるものが特にこのましく、スチレン基を含むモノマが最も好ましい。好ましいポリマ群の一つはポリスチレン、またはスチレンモノマ単位を重量比で約50%〜約100%含有するポリスチレンコポリマを含む。ポリマが架橋されているかいないかは任意である。一つの実施例においては微粒子は微粒子重量に対して 1% のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンから形成される。別の実施例においては微粒子は微粒子重量に対して約 0.6〜1% のメタクリル酸を含むスチレン/メタクリル酸コポリマからなる。
【0056】
適当なポリマ材料の例を挙げれば次のとおりである。これらは例証のため挙げるものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
アクリル酸、またはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル;
メタクリル酸、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸セチル、メタクリル酸ステアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、メタクリル酸グリシジル、N,N-(メタクリルオキシヒドロキシプロピル)-(ヒドロキシアルキル)アミノエチルアミダゾリンジオンなどのメタクリル酸エステル;
メタクリル酸アリルなどのアリルエステル;
イタコン酸またはそのエステル;
クロトン酸またはそのエステル;
マレイン酸、またはマレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸エステル;
スチレン、またはエチルスチレン、ブチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの置換誘導体;
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ブチルアミノエチルなどのアミノ基を含有するモノマ単位;
アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基を含有するモノマ単位;
ビニルエーテル、ビニルチオエーテル;ビニルアルコール;ビニルケトン;ハロゲン化ビニル(塩化ビニルなど);ビニルエステル(酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど);ビニルニトリル(アクリロリニトリル、メタクリロニトリルなど)などのビニル基含有モノマ;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;
テトラフルオロエチレン;
ブタジエン、イソプレンなどのジエンモノマ;
アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル。
【0057】
ホモポリマ、およびビニル基含有モノマを含むコポリマとして特に好ましいものには、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(ジビ
ニルベンゼン) などがある。
【0058】
本発明の範囲を限定することなく適切なポリマ材料の例を挙げれば、ポリオキシド(ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)など);ポリエステル(ポリ(エチレンテレフタレート) など);ポリウレタン;ポリスルホネート;ポリシロキサン(ポリ(ジメチルシロキサン) など);ポリスルフィド;ポリアセチレン;ポリスルホン;ポリスルホンアミド;ポリアミド(ポリカプロラクタム、ポリ(ヘキサメチレンアジピンアミド) など);ポリイミン;ポリ尿素;複素環ポリマ(ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジノンなど);天然ポリマ(天然ゴム、ゼラチン、セルロースなど);ポリカーボネート;ポリ無水物;ポリアルケン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンコポリマなど)がある。
【0059】
ポリマ材料には、化学的または生物学的分析における粒子の有用性を向上させるため、化学的または生物学的成分の結合部位となる官能基(カルボキシル基、エステル、アミン、アルデヒド、アルコール、ハロゲン化物など)を含有させてもよい。そのようなポリマから微粒子を製造する方法は当業者には周知である。微粒子ないし架橋微粒子を製造する代表的な方法は後記の製造例に記載されている。
【0060】
本発明の方法は核/外殻型構造の微粒子の染色にも適用することができる。核/外殻型微粒子は1種またはそれ以上のポリマからなる中心核と、それを取り巻く1種またはそれ以上のポリマからなる外殻からなる。外殻は任意のポリマ被覆方法により作製することができる。外殻ポリマが核ポリマよりも極性が高いか、または界面張力が低ければ、熱力学的に有利であり、また外殻ポリマの容積分率が核ポリマより大きいときも有利である。したがって核/外殻型ポリマの合成は外殻/核の重量比を 1 以上として行われる。ある種の実施例においては、核ポリマが疎水性であり外殻ポリマが比較的親水性であって、適当な官能基を担持している。
【0061】
核ポリマとしては、スチレンとそれより疎水性の高いモノマ(たとえばメタクリル酸)とのコポリマがポリスチレンホモポリマよりも好ましい。このコモノマは核の疎水性を減じ、親水性の外殻ポリマ組成物との親和性を高める効果がある。
【0062】
これらの制約の範囲内において、外殻ポリマ用としては任意のモノマまたはモノマの組み合わせを選択することができるが、ビニルモノマの混合物が好ましい。本発明の一つの実施例においては、メタクリル酸メチルを主成分としメタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸を副成分とするモノマ混合物を外殻に、ポリスチレンまたは修飾ポリエチレンを核に用いる。そのようなモノマ混合物の一例は重量比でメタクリル酸ヒドロキシエチル 6%、メタクリル酸約 5〜20% と残余のメタクリル酸メチルからなる。これらのモノマはポリスチレンよりも親水的である。
【0063】
微粒子の大きさは最終用途に応じて選ぶことができる。典型的には粒子径は約 0.1〜約 100ミクロン、より典型的には約 0.5〜約 50ミクロン、一層典型的には約 2〜約 10 ミクロン である。微粒子は単分散であること、すなわち粒径範囲が狭いことが好ましく、平均径の変動係数 (CV) が約 5% を超えないことが好ましい。
【0064】
微粒子は染色の前または後に適当な磁性材料を公知の方法で含有させることによって磁気的応答性とすることができる。その方法の一つは強磁性流体、たとえば実施例19において製造される強磁性流体を含浸させることである。ここで磁気的応答性とは、磁場をかけることによって位置あるいは向きを変えることができることを意味する。
【0065】
染料としては可視的な、または機械により測定可能な色または蛍光を呈するものであれば任意の染料が使用できる。色または蛍光は、肉眼で視認できるものでも、顕微鏡またはその他の光学器械を用いて検出できるものでもよい。好ましい蛍光染料としてはスチリル染料(p-ビス(o-メチルスチリル)ベンゼンなど);ピロメタン染料(緑色蛍光染料 4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ペンタン酸、スクシンイミジルエステル、橙色蛍光染料 4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアゾ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステルなど);クマリン染料(メトキシクマリンなど)が挙げられるが、発光波長が約 400〜約 1000 nm である蛍光染料が好ましい。2種以上の染料を使用する場合には、吸収スペクトル、発光スペクトル、または発光寿命が実質的に異なる染料を選ぶことができる。
【0066】
一つの実施例においては、微粒子はポリスチレンポリマまたはコポリマであり、染料は疎水性染料である。溶媒としてはたとえば表1に示すものを選択することができる。
表1:ポリスチレン微粒子と疎水性染料との組み合わせに対する溶媒候補
【表1】
【0067】
水溶性の極性染料を用いる系の代表的なものとして、ポリ(エチレンオキシド) の微粒子と、水を溶媒 #1、ヘキサンを溶媒 #2、ジオキサンを溶媒 #3 とする三元溶媒系とを用いるものがある。
【0068】
上の表に示した溶媒と、標準的な溶媒相溶性図表を用いて、本発明によるポリスチレンポリマまたはコポリマと疎水性染料との組み合わせに好適な三元溶媒系を設計することができる。たとえば水(調節溶媒、溶媒 #2)、アルコール(共溶媒、溶媒 #3)、ジクロロメタン(染料溶媒、#1)の均一な三元混合物からなる液相に溶質として疎水性染料を溶解し、ポリスチレンまたはポリスチレンコポリマ微粒子からなるポリマ固相とを接触させる。ポリマ相と三元混合溶媒とにおける染料の相対量を支配する染料の分配係数 K は、液相中の調節溶媒の容積分率が増加(したがって染料溶媒または共溶媒の容積分率が減少)すると共に増加する。前記の水/アルコール/ジクロロメタン三元系のほか、たとえば水/アセトン/塩化メチレン系も代表的な三元溶媒系である。
【0069】
上記では例示のため、本発明を溶媒 #1、溶媒 #2、溶媒 #3 各1種を用いるものとして説明したが、本発明の実施に際して各カテゴリーに2種以上の溶媒を用いることも可能であり、たとえば溶媒 #1 が1種、溶媒 #2 が2種、溶媒 #3 が1種からなるような組み合わせも使用できる。
【0070】
本発明の微粒子は、たとえば核酸またはその断片(アプタマーを含む)、蛋白質、ペプチド、有機低分子などの化学的または生物学的成分を取り込むために官能化することができる。このような分子を付着させるためには、共有的カップリング反応など当業者に既知の方法が利用できる。たとえば G.T. Hermanson, Bioconjugate Techniques (Academic Press, 1966) および L. Illum, P.D.E. Jones, Methods in Enzymology 112: 67-84 (1985) (この引用により上記文献は本開示に含まれるものとする)を参照されたい。これらの成分は試験の目的によって適宜選択することができる。そのような試験はたとえば PCT/US01/20179 および米国特許第 6,251,691 号に開示されている。
【0071】
本発明の方法の一つの実施例を図 1(b) に図式的に示す。まず溶媒 #2 と溶媒 #3 とからなる溶媒溶液を、懸濁液形成のための任意的な安定剤の存在下で微粒子に含浸させる。安定剤の機能は微粒子懸濁液の不安定化を防止することである。代表的な安定剤としては、ポリマ、特に高分子アルコール(ポリビニルアルコールなど);酸化物ポリマ(ポリエチレンオキシドなど);ポリビニルポリマ(ポリビニルピロリドンなど);ポリ酸(ポリアクリル酸など)が挙げられるが、その他にもイオン性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、エーロゾル(Aerosol) OT など);非イオン性界面活性剤(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコール第三オクチルフェニルエーテルなど)が代表的な安定剤である。安定剤の濃度は溶媒/微粒子懸濁液に対する重量比として約 0%〜約 2% の範囲で選ぶことができる。
【0072】
懸濁液は緩やかに攪拌することが望ましい。このインキュベーションは典型的には室温で行われるが、より高い、またはより低い温度も、微粒子の健全性に悪影響を及ぼさず溶媒組成が安定に保たれる限り使用できる。インキュベーションは安定剤を微粒子に吸収させることを目的として行われる。必要なインキュベーション時間は溶媒と微粒子の組成によって異なり、それらを考慮して選定する。
【0073】
この最初のインキュベーションに続いて、染料溶媒(溶媒 #1)に溶解した染料を微粒子懸濁液に加える。検出可能な信号を得るために必要な濃度の染料を含有させるため、十分な量の染料を加えることが必要である。インキュベーションは典型的には室温で行われるが、より高い、またはより低い温度も使用できる。この第二のインキュベーションは染料溶媒(溶媒 #1)を微粒子に浸透させることを目的とする。
【0074】
微粒子を溶媒 #2、溶媒 #3 および任意の安定剤と混合してインキュベートする第一の工程と、溶媒 #1 に溶解した染料を加える第二の工程との組み合わせにより、先行技術において要求される、染色工程での機械的または音響的な強い攪拌の必要性が大きく軽減されることが見出されており、攪拌は懸濁状態を保ち得る程度の穏和なものでよい。強力な攪拌は特別な装置を必要とし、かつスケールアップが困難であるため、このことは顕著な改善である。
【0075】
一つの実施例によれば、微粒子懸濁液中の染料の濃度は懸濁粒子の重量基準で約 1〜約 100 μg/g の範囲で選択される。溶媒溶液および微粒子の組成によっては、これ以下または以上の濃度が使用できる場合もある。
【0076】
次に、懸濁液を緩やかに攪拌しつつ調節溶媒の一定量を緩やかに加えて、微粒子への染料の分配促進を図る。調節溶媒の容積分率φは図2の経路に沿って到達すべき終点を達成できるように選択する。
【0077】
調節溶媒の添加速度は懸濁液の相安定性を保つように制御する必要がある。“相安定性”とは、溶質(染料)と液相との実質上均一な混合状態が存在することを特徴とする条件を意味する。相安定性の条件下では、染料は溶媒相に溶解している状態で微粒子に取り込まれ、溶媒から析出することはない。また相安定性は二液相の分離が起こらない点でも特徴づけられる。
【0078】
先行技術の方法によれば、染料浴中の染料の初期濃度と微粒子の容積から微粒子への充填量を正確に求めるため、微粒子相への染料の移行は完全でなければならない。そのような方法では、発生する信号がそれを検出する装置の作動範囲内にあることを保証するには染料充填のレベルを正確に知る必要がある。特に粒子の集合が同一染料の充填量の差によって相互に区別されるような粒子のライブラリを構築しようとするときは染料充填量の正確な決定が重要である。したがって系内に導入された染料が実質上完全に微粒子相に吸収されたことを知るため、懸濁液相中に染料が認められなくなるまで染料充填レベルを監視することが必要になる。
【0079】
本発明によれば、微粒子に包含される染料の量は、微粒子懸濁液に添加される調節溶媒の量を前述の逐次方程式に従って変化させることにより正確に制御される。また染料が微粒子中に完全に分配されない場合でも、予め定めた染料充填レベルを達成することが可能である。溶質(染料など)の「完全な分配」とは、溶質が液相から微粒子相に事実上完全に取り込まれ、液相に染料が事実上存在しないことにより特徴づけられる状態を指す。このように染料充填の制御において染料の完全な取り込みを必要としないから、液相から微粒子懸濁液への染料の移行状況を監視する必要もない。
【0080】
染色浴中の微粒子の懸濁液は、染料が微粒子中に実質上均一に分配されるように、一定時間インキュベートする必要がある。
【0081】
最後の工程として、微粒子懸濁液を遠心する。微粒子を洗浄し適当な緩衝溶液、たとえば任意的な界面活性剤を含む水性緩衝溶液に再分散させてもよい。このようにして得られた微粒子は予め定められた特定の量の染料を含み、それによって集合内の他の粒子と識別できるような染色粒子群である。
【0082】
一つの実施例によれば、各々異なった量の染料を含有するポリマ微粒子の下位集合群を並列に製造することができる。微粒子懸濁液の一連の分割単位を染料溶液中で予備インキュベートした後、予め計算した量の調節溶媒をそれぞれに加える。本発明によれば、微粒子への染料の分配は、調節溶媒の最終容積分率と懸濁液中の染料の初期濃度によって決まる。このアプローチを図 3(a) に図解する。予備インキュベート後の各分割単位を Bn、各分割単位に加えられる調節溶媒の量を Sn、各々から得られる粒子の各下位集合を Fn(Sn) で示す。
【0083】
本発明の他の実施例では、各々異なった量の染料を含有するポリマ微粒子の下位集合群を直列的な処理により製造する。染料用液中に微粒子を懸濁させたマスターバッチに連続的または半連続的に調節溶媒を加えつつ、いくつかの時点で分割単位を採取する。調節溶媒を「半連続的」に加えるときは、バッチから微粒子試料を取り出すために作業を一時的に中断する。各時点 (tFn) に採取した懸濁液の分割単位 Fn(Sn) はそれぞれ異なる量の溶媒 Sn を含むから、着色粒子の複数の下位集合が同一マスターバッチから得られることになる。これらの下位集合はそれぞれ異なる量の染料を含有し、それに応じて異なった蛍光強度を生ずる。このアプローチを図 3(b) に示す。ここに [B] は予備インキュベーション後のマスターバッチを示し、これに調節溶媒の連続流を加える。Fn(Sn) はそれぞれ異なった時点 tFn にマスターバッチから分取された微粒子懸濁液の分割単位である。
【0084】
あるいは一定の時間 (tF) が経過した時点で調節溶媒の連続的添加を中断し、染色微粒子懸濁液を2つ以上の分割単位に分け、溶媒調節によって最終的な染料含有量を調節することもできる。各分割単位に一定量の調節溶媒 (δSn) を加えることにより、少なくとも2つの分割単位に異なる染料含有レベルを作り出すことができ、それぞれのレベルは溶媒調節工程で加えた調節溶媒の総量と染料の初期濃度によって決まる。少なくとも1つの分割単位に 0 でない量の調節溶媒を加える限り、他の少なくとも1つの分割単位に加える調節溶媒の量が 0 であってもよいことは了解されよう。この直列-並列処理方式を図 3(c) に図解する。
【0085】
直列処理と並列処理の他の組み合わせも可能である。図 3(d) は直列処理と並列処理を組み合わせ、溶媒調節と染料濃度の直接調節を併用する方法を図解したものである。同図に示すように、マスターバッチ [B] に調節溶媒の連続流を供給し、調節溶媒の量 Sn を含む微粒子懸濁液の分割単位 Fn(Sn) を捕集する。ついで各分割単位に対して個別に標識を行い、たとえば第三の染料 Dn を加えることにより、それまで同一であった分割単位の微粒子を区別できるようにする。各標識工程で染料 D1, D2, ... Dn を用いることにより相互に識別可能な下位集合 Fm(Sm, Dn) が各分割単位から得られる。
【0086】
各分割単位に含まれる微粒子は予め定められた特定量の蛍光発生基(ないし発色団)を含み、これにより与えられた集合からの粒子を識別することができる。
【0087】
本発明の方法を応用して、識別可能な蛍光染料の溶液を順次添加することにより、コンビナトリアルにコードされた微粒子のライブラリを構築することができる。微粒子のコーディングには二進コードその他、現用の各種コードのいずれをも用いることができるが、たとえば WO 98/53093(この引用により上記文献は本開示に含まれるものとする)の方法によって in-situ でのデコードが可能な二進コードを用いることが好ましい。
【0088】
本発明の実際を更に以下の実施例により説明する。これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0089】
製造例1:非架橋ポリスチレンホモポリマ粒子
100 ml 丸底ガラスフラスコに還流コンデンサ、N2 供給・排出アダプタ、攪拌機を装着し、外套式オイルバスに入れ、エチルアルコール(Aldrich 200 プルーフ、無水、99.5%)43.3 ml に溶解したポリビニルピロリドン(Aldrich、平均分子量約 29,000)0.9475 g とスチレン 18.95 g をフラスコに入れた。遊離酸素を除くため系を緩やかに (50〜70 rpm) 攪拌しつつ N2 で1.5時間パージした後、70°C まで昇温し、攪拌機の回転数を 350 rpm に上げた。2,2'-アゾビスイソブチロニトリルの 2.4 wt% エタノール溶液 10 ml を加えてスチレンモノマの重合を開始させ、17時間反応の後室温まで冷却し、容積平均径 4.1μm の単分散ポリスチレン粒子を得た。モノマ転換率は 96.4%、最終的なラテックス中固体含有率は 27.9% であった。
【0090】
製造例2:非架橋コポリマ粒子
製造例1と同様の装置を用い、スチレンとメタクリル酸メチルとの混合物(モノマ全量に対する重量比でメタクリル酸メチル 3%)10.5 g を反応させて、メタクリル酸メチル 3% を含むポリスチレンコポリマを製造し、単分散粒子を得た。最終転換率は 95.7%、粒子径は 3.2 μm、ラテックスの固体含有率は 15.9% であった。コポリマ粒子は COOH 基1個あたり 2.45 μm2 のパーキング面積を有する。
【0091】
製造例3:架橋コポリマ粒子
100 ml 丸底ガラスフラスコに還流コンデンサ、N2 供給・排出アダプタ、攪拌機を装着し、外套式オイルバスに入れ、ポリビニルピロリドン(製造例1に同じ)1.5 g、ジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(Aldrich, 98%) 0.475 g、エチルアルコール(Aldrich 200 プルーフ、無水、99.5%)53.5 ml、スチレン 9.405 g、ジビニルベンゼン(Aldrich, 異性体混合物、純度 80%)をフラスコに入れた。N2 で30分パージして遊離酸素を除いた後、70°C まで昇温し、エタノール 10 ml に溶解した 4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (Aldrich, 75%) 0.095 g を加えて重合を開始させ、27時間反応の後、室温まで冷却して反応を停止させ、単分散ポリスチレン粒子を得た。モノマ転換率は 93%、容積平均径は 1.6 μm であった。
【0092】
製造例4:非架橋核/外殻型粒子
100 ml 丸底三口フラスコに攪拌機、パージ用 N2 出入口、コンデンサを装着して温度を 70°C に調節した水浴に置き、フラスコに粒径 3.15 μm の単分散ポリスチレン粒子 12.3 wt% を含むラテックス 5.48 g を入れ、蒸留脱イオン水 43.3 ml にドデシル硫酸ナトリウム 0.009 g、炭酸水素ナトリウム 0.007 g を溶解した溶液をラテックスに加えた。懸濁液を 100 rpm で攪拌し N2 でパージしながら 70°C まで昇温し、反応混合物の温度が安定した後、蒸留脱イオン水 0.5 ml に溶解した過硫酸カリウム 0.0068 g を加え、その直後にシリンジポンプを用いて、メタクリル酸メチル 74%、メタクリル酸ヒドロキシメチル 6%、メタクリル酸 20% の混合物 0.676 g を 0.01 ml/min の速度で供給することにより反応を開始させた。添加終了 (1.2 h) の後、70°C で攪拌しつつ反応を更に2時間継続し、水 1 ml に溶解したヒドロキノン 0.0068 g を加え、室温まで急冷して反応を停止させて、粒径 3.32 μm の単分散核/外殻型粒子 2.75 wt% を含むラテックスを得た。表面カルボキシル基のパーキング面積は1個あたり 1.52 Å2 であった。
【0093】
実施例1:緑色蛍光性非架橋微粒子(染料/ポリマ = 0.334 mg/g)の合成
25 ml 丸底三口フラスコに清浄な非架橋コポリマ粒子 0.05 g(エタノール 1 ml、室温 6500 rpm での遠心3回、再分散)を(製造例2で得られたラテックス 0.312 ml として)入れ、この粒子懸濁液にドデシル硫酸ナトリウム 0.75 wt% 溶液 1 ml、ポリ(ビニルアルコール) (Aldrich、分子量 85,000〜146,000、加水分解グレード 87〜89%)水溶液 1.5 ml、エタノール 4.75 ml を加えた。この混合物に緑色蛍光染料 Bodipy FL C5, SE(4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ペンタン酸スクシンイミジルエステル、分子量 417.22、Molecular Probes)0.0167 mg を含むジクロロメタン (Aldrich, 99.9%) 溶液 0.0835 ml を加え、最後に蒸留脱イオン水 10.6 ml を加え、混合物を更に2時間攪拌した。次に混合物全体を 50 ml のプラスチック製遠心分離管に移し、4500 rpm で1分間遠心し、上澄液を除き、着色ビーズを含むペレットをエタノール 2 ml で3回洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム 0.2% 溶液 2 ml に再分散させた。緑色染料とポリマの比率は 0.334 mg/g であった。緑色蛍光の強度と一様性はニコン蛍光顕微鏡、CCD カメラおよび画像取得用ソフトを用いて測定した。結果を図4の散布図に示す。各点の縦座標が粒子1個に対する緑色蛍光強度を示している。これらのデータはバックグラウンド信号や雑音の補正を施していない。
【0094】
実施例2:緑色蛍光性架橋微粒子(染料/ポリマ = 1.667 mg/g)の調製
本実施例は実施例1と同様であるが、ポリマ微粒子は架橋構造を有し、また実験の規模を4倍とした点が異なる。核/外殻型架橋粒子 (Bangs Laboratories, Inc., 3.2 μm, 固体 10%、ジビニルベンゼン 12.5%)0.2 g を含むラテックス乳濁液 2 ml にエタノール 1 ml を加えて 6500 rpm で2分間遠心してラテックスを除去した。この操作は3回反復した。ポリビニルアルコール 1.0 wt% 水溶液 6 ml、ドデシル硫酸ナトリウム 0.75 wt% 水溶液 4 ml、エタノール 19 ml を入れた 100 ml 丸底フラスコに洗浄後のポリマ粒子を移し、この混合物に緑色蛍光染料 Bodipy FL C5, SE 0.3334 mg を含む CH2Cl2 1.5 ml を加え、更に蒸留脱イオン水 53 ml を加えた。得られた粒子懸濁液を回転蒸発器に移し、真空 (26.5 inHg) 下で緩やかに 40°C まで、ついで56°C まで、最終的には 63°C まで加熱して有機溶媒を除去した。濃縮された着色懸濁液を捕集し 6500 rpm で2分間遠心し、上澄液を廃棄して微粒子ペレットを3回の遠心で洗浄した後エタノール 5 ml に再分散させた。最後に洗浄した着色ビーズをドデシル硫酸ナトリウム 0.2 wt% 溶液 2 ml に分散させ、固相濃度を約 10% とした。緑色染料とポリマの量の比率は 1.667 mg/g であった。緑色染料とポリマの比率は 0.334 mg/g であった。緑色蛍光の強度と一様性はニコン蛍光顕微鏡、CCD カメラおよび画像取得用ソフトを用いて測定した。結果を図5の散布図に示す。各点の縦座標が粒子1個に対する緑色蛍光強度を示している。これらのデータはバックグラウンド信号や雑音の補正を施していない。
【0095】
実施例 2A:緑色蛍光染料でコードした架橋微粒子ライブラリ(染料/ポリマ初期濃度比 = 0.833 mg/g)
CH2Cl2 中の緑色蛍光染料の量を 166.67 mg、水の供給速度を 21 ml/h とした以外は実施例1と同様に操作した。水の添加中に30分間隔で4つのフラクションを採取し、直列操作全体で着色粒子含有量の異なる5つの集合を得た(1つは水添加開始前に採取)。これらは水添加量の関数として各々異なる平均蛍光強度を有する。粒子の分析は実施例1と同様に行った。各フラクションの平均蛍光強度を表 1a に示す。以下で a.u. は任意単位を意味する。
【表1a】
【0096】
実施例 2B:緑色蛍光染料でコードした二重着色非架橋微粒子ライブラリ(染料/ポリマ初期濃度比:緑色染料/ポリマ = 橙色染料/ポリマ = 0.75 mg/g)
本発明の直列的溶媒調節法により、緑色および橙色染料でコードした二重着色非架橋ポリマ粒子の相互に区別可能な一連の群を製造した。染料の初期濃度は緑色蛍光染料/ポリマ = 0.75 mg/g、橙色蛍光染料/ポリマ = 0.75 mg/g とした。実施例 2A の方法(当初の予備インキュベーション後の懸濁液中に2種の染料が存在する点のみ異なる)に従って3つのフラクションを採取した。フラクション採取時までの水の添加量と採取された微粒子フラクションの平均蛍光強度と表 1b に示す。
表1b:実施例 2B の緑色および橙色蛍光強度(水添加速度 26.5 ml/h)
【表1b】
【0097】
実施例3−6:緑色蛍光架橋微粒子における染料分配の分析
実施例2の方法と実施例1程度の小規模で4つの緑色蛍光粒子の集合を製造した。それぞれの水添加量は 0.833 ml, 1.74 ml, 5.31 ml, 10.59 ml であり、水の容積分率としてはそれぞれ 0.398, 0.463, 0.623, 0.738 に相当する。染料の取り込み後、着色粒子を遠心し、上澄液を緑色染料残存量測定のため保存した。等量の上澄液4点をアルコールで24倍に希釈し、蛍光スペクトルを記録し、表2の蛍光強度と図 6(a) の較正曲線を用いて各溶液中の緑色染料残存量を計算し、反応当初の緑色染料全量と上澄液中残存量との差から粒子中の緑色染料濃度を計算した。これらの値を表2に示す。
【表2】
【0098】
粒子に取り込まれた染料の量と水の容積分率との非直線的な関係を図 6(b) に示す。
【0099】
粒子中の緑色染料濃度の計算値と蛍光顕微鏡による着色粒子の緑色蛍光強度との相関をも求めた。図 6(c) は直線相関を示している。
【0100】
染料の分配係数 K と Y との関係を図 6(d) に示す。この図に特徴的な指数関係は、本発明による溶媒組成の調節によって染料含有量の微調整が可能であることを示している。
【0101】
実施例7:緑色蛍光染料を含む架橋粒子(染料/ポリマ = 0.833 mg/g)
粒子懸濁液に添加する緑色染料の CH2Cl2 溶液の濃度を 0.1 mg/ml とし、50 ml フラスコを用いる半分の規模て実施例2と同様に操作した。したがって染料溶液添加後の水の添加量も 1.765 ml とした。着色粒子を回収し、遠心と再分散を繰り返して洗浄した。
【0102】
実施例8−10:緑色蛍光染料を含む架橋粒子
実施例7の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0103】
実施例11:橙色蛍光染料を含む架橋粒子(染料/ポリマ = 0.334 mg/g)
橙色染料 Bodipy 558/568, SE(4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル、分子量 443.23, Molecular Probes)を用いて実施例7と同様に操作した。橙色染料の塩化メチレン溶液の濃度は 0.045 mg/ml、染料溶液添加後の水の添加量は 1.765 ml、橙色染料とポリマの重量比は 0.833 mg/g であった。
【0104】
実施例12〜14:橙色蛍光染料を含む架橋粒子
実施例11の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0105】
実施例15:モル比 1:1 の緑色および橙色蛍光染料を含む架橋粒子(緑色染料/ポリマ = 0.150 mg/g、橙色染料/ポリマ = 0.153 mg/g)
実施例7〜14で用いた緑色および橙色染料の等モル混合物を使用したほかは実施例7と同様に操作した。塩化メチレン溶液中の濃度は緑色染料 0.20 mg/g、橙色染料 0.212 mg/g であった。
【0106】
実施例16〜17:異なる量の緑色および橙色染料を含む架橋粒子
実施例15の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 21.2 ml とした2つの粒子集合を更に製造した。
【0107】
実施例18:モル比 1:0.5 の緑色および橙色蛍光染料を含む架橋粒子(緑色染料/ポリマ = 0.150 mg/g、橙色染料/ポリマ = 0.765 mg/g)
緑色染料と橙色染料のモル比を 1:0.5 としたほかは実施例15と同様に操作した。塩化メチレン溶液中の濃度は緑色染料 0.20 mg/g、橙色染料 0.10 mg/g であった。
【0108】
実施例19〜21:緑色および橙色染料を含む架橋粒子
実施例18の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0109】
実施例22:モル比 0.5:1 の緑色および橙色蛍光染料を含む架橋粒子(緑色染料/ポリマ = 0.150 mg/g、橙色染料/ポリマ = 0.765 mg/g)
(a) 緑色染料と橙色染料のモル比を 0.5:1 とし、(b) 水の添加量を 1.5 ml としたほかは実施例15と同様に操作した。塩化メチレン溶液中の濃度は緑色染料 0.10 mg/g、橙色染料 0.212 mg/g であった。
【0110】
実施例23〜25:緑色および橙色染料を含む架橋粒子
実施例22の方法により、水の添加量をそれぞれ 5.3 ml, 10.6 ml, 21.2 ml とした3つの粒子集合を更に製造した。
【0111】
実施例7〜25で製造した着色粒子集合の蛍光強度を表3に示す。
【表3】
【0112】
実施例26:蛍光でコードした粒子ライブラリの構築
実施例7〜25によって製造した19種の蛍光性微粒子を含むライブラリを構築した。19個のうち10個の集合をプールし、ニコン蛍光顕微鏡、CCD カメラ、画像取得用ソフトウェアを用いて緑色および橙色蛍光像を記録した。縦軸・横軸にそれぞれ緑色および橙色染料の強度の対数をとった散布図(クラスタマップ)にはプールした10種の集合に対応する10個のクラスタが明らかに認められる。クラスタ分析の結果を表4に示す。
【表4】
【0113】
実施例27:コードした磁性粒子の製造
A. 水性磁性流体の製造
1 N HCl 中 1 M FeCl3 および 1 N HCl 中 2 M FeCl2 の原液を調製し、100 ml ガラス瓶に 1 M FeCl3 溶液 4 ml, 2 M FeCl2 溶液 1 ml を入れた。脱イオン水 100 ml と 30 wt% NH4OH 溶液を混合して NH3 約 1.7 M の水溶液を調製し、ガラス瓶中の鉄塩溶液を激しく攪拌しながらその 50 ml を緩やかに加えた。次に水酸化テトラメチルアンモニウム 25 wt% 溶液 2 ml を加えた後、溶液を1時間超音波処理した。得られた磁性流体は磁場内で1晩沈降させ、上澄液を傾瀉し、沈澱物を蒸留水で洗浄した。酸化鉄ナノ粒子の脱イオン水中懸濁液をホモジナイズし、重力下で1晩沈降させた後、沈澱物を廃棄し、暗色の上澄液を捕集して最終的な強磁性懸濁液とした。
【0114】
B. コードした磁性粒子の合成
本発明の方法により、染料含有量が等しく粒径約 3 ミクロンの、ポリスチレン核とメタクリル酸メチル (MMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル (HEMA)、メタクリル酸 (MA) の外殻からそれぞれ成る着色ポリマ微粒子を製造した。粒子を蒸留水に分散させ濃度約 1% の懸濁液とし、これに磁性流体懸濁液 50 ml を加えて end-over-end の回転により室温で48時間混合した。得られた溶液を約 200 g で10分間遠心し、黄褐色の粒子ペレットを過剰のナノ粒子を含む赤褐色の上澄液から分離し、上澄液を捨ててペレットをドデシル硫酸ナトリウム 1% 溶液に再分散させて再び遠心した。この工程を2回反復し、最終的には0.5% のTween-20 を含む PBS 緩衝溶液にペレットを再分散させた。1.5 ml の標準 Eppendorf チューブに粒子懸濁液 1 ml をとり、Promega Multitube Magnetic Stand に取り付けた。懸濁粒子は10分間で(器壁上のペレットとして)完全に分離された。
【0115】
実施例28:カルボキシル基で官能化した蛍光コード微粒子の表面へのアビジンの結合
製造例4の方法で製造したカルボキシル化微粒子を実施例1の方法で蛍光性とし、緑色蛍光性微粒子(染料/ポリマ = 0.334 mg/g)を得た。2 ml のバイアルで緑色蛍光性粒子 10 mg を含む液と 10 mM 硼酸緩衝溶液 (pH = 8.5) 1 ml とを混合し、粒子を遠心分離して上澄液をサイホンで排出し、分離したペレットを 0.1 M MES 緩衝溶液 (pH = 4.5) で2回洗浄し、同液 600 ml に再分散させた。別のバイアルで NeutrAvidin(ビオチン結合性蛋白質、Pierce Chemicals, Rockford, IL) 3 mg を MES 緩衝溶液 300 ml に溶解し、この溶液をポリマ微粒子懸濁液に緩やかに加えた。プローブソニケータを用いて懸濁駅を短時間超音波処理した後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミン (EDAC)(Aldrich-Sigma, Milwaukee, WI) 200 mg/ml 溶液 150 ml を加え、室温で2時間反応させた。ついで NeutrAvidin で官能化されたポリマ微粒子を分離し、カップリング洗浄液で1回、硼酸緩衝溶液で2回洗浄し、保存用緩衝溶液 (PBS, pH = 7.4, BSA 0.1% (w/v), Tween 20 0.5% (w/v), EDTA 10 mM, NaN3 0.02% (w/v)) に再分散させて保存した。
【0116】
実施例29:トシル基で官能化した蛍光コード微粒子の表面へのアビジンの結合
本実施例では市販のトシル化蛍光性核/外殻型架橋微粒子(Bangs Laboratories, Inc., 3.2 μm, 固体 10%、ジビニルベンゼン 12.5%)を使用した。この微粒子は 1 g あたり約 0.3 mg の緑色蛍光染料を含む。微粒子 1% を含む懸濁液 200 ml を 100 mM の燐酸緩衝液 (pH 7.4) 500 ml で3回洗浄し、同液 500 ml に再分散させた。これに NeutrAvidin 5 mg/ml 溶液を 20 ml 加え、37°C で1晩反応させた。インキュベーション終了の後、官能化された粒子を BSA 10 mg/ml 含有 PBS (pH 7.4) 500 ml で1回洗浄し、同溶液 500 ml に再分散させ、37°C で1時間反応させて微粒子表面の未反応部位をブロックした。ついで微粒子を BSA 10 mg/ml 含有 PBS (pH 7.4) 500 ml で3回洗浄し、BSA 10 mg/ml 含有 PBS (pH 7.4) 200 ml 中に保管した。
【0117】
実施例30:蛍光性微粒子を用いる NeutrAvidin-ビオチン結合試験
実施例28の固体 1% を含有する NeutrAvidin 官能化蛍光性微粒子懸濁液 100 ml を 1.5 ml のバイアルに入れ、Tween 20 を 0.01% (w/v) 含有する PBS (PBST) 900 ml で希釈し、渦流攪拌により混合した後援新分離し、上澄液を吸引した後ペレットを PBS 980 ml に再分散させた。ついで濃度 26.7 ng/ml の biotin-Oligo(dT)5-CY5.5(蛍光染料 Cy5.5 で標識したオリゴ)(IDT, Coralville, IA) 20 ml を加え、室温で30分インキュベートした後、微粒子を分離して PBST で2回洗浄し、PBST 1 ml に再分散させた。次に微粒子をチップ上に集め、NeutrAvidin 官能化粒子への biotin-Oligo(dT)5-CY5.5 の結合量の直接の指標として表面蛍光を測定した。図8に示した結果は、本発明の方法で染色した2種の粒子(試料と記したもの)のビオチニル化プローブの捕捉効率、および陽性対照として用いた非染色微粒子の捕捉効率を示している。
【0118】
実施例31:蛍光性微粒子を用いるハイブリダイゼーション試験
NeutrAvidin で官能化した蛍光コーディング微粒子(実施例30で製造したもの)に以下のようにして塩基配列既知のビオチニル化オリゴヌクレオチドを付着させた。ビオチニル化オリゴヌクレオチド 0.4 mM を含む反応緩衝液(150 mM NaCl, 0.05 M EDTA, 0.5% ウシ血清アルブミン、0.5 mM Tris-HCl, 100 mM 燐酸ナトリウム、pH 7.2)0.1 ml に NeutrAvidin 官能化微粒子 1% を含む溶液 50 ml を加え、微粒子含有量を約 7 × 105 個とした。反応混合物を室温で渦流攪拌しつつ30分インキュベートし、反応完了後粒子を遠心して捕集し、PBST (150 mM NaCl, 100 mM 燐酸ナトリウム、pH 7.2、Tween 20 0.05% 含有)で3回洗浄し、PBS (150 mM NaCl, 100 mM 燐酸ナトリウム、pH 7.2) 0.2 ml に再分散させた。この方法は NeutraVidin 官能化粒子に任意のビオチニル化オリゴヌクレオチドを結合させるために利用することができる。
【0119】
合成ターゲット (5'-/CY5.5/SEQ ID No:1-3') の脱イオン水中 10 mM 溶液 1 ml を 1x TMAC (4.5 M 塩化テトラメチルアンモニウム、75 mM Tris pH 8.0, 3 mM EDTA, 0.15% SDS) 19 ml で希釈し、最終容積を 20 ml とした。2種のオリゴヌクレオチド官能化蛍光性微粒子をシリコン基板上の平面アレイに捕集した。第1の微粒子群はマッチしたプローブ配列である 5'-ビオチン/(TEG スペーサー)/SEQ ID NO:2/-3' で、第2の微粒子群はマッチしないプローブ配列であるビオチン/(TEG スペーサー)/SEQ ID NO;3/-3' で官能化されたものである。合成ターゲット 20 ml を基板表面に加え、基板を 30 rpm で振盪しつつ 53°C のヒーターで15分間加熱した。次にスライドをヒーターから取り出し、ターゲット溶液を吸引し、基板を室温の 1x TMAC で1回洗浄した後、10 ml の 1x TMAC を基板面上に置き、カバーグラスで被って、アレイの蛍光強度を前述の装置で測定した。結果は図9に見られるようにハイブリダイゼーションが特異的であることを示している。
【0120】
実施例32:蛍光性微粒子を用いたイムノアッセイ
本実施例では市販のトシル化蛍光性核/外殻型架橋微粒子(Bangs Laboratories, Inc., 3.2 μm, 固体 10%、ジビニルベンゼン 12.5%)を使用した。この微粒子は 1 g あたり約 0.3 mg の緑色蛍光染料を含む。PBST (PBS pH 7.4, 0.1% Tween-20 含有)1 ml、トシル基官能化染色微粒子の1% 懸濁液 50 μl (0.5 mg) を Eppendorf 管に入れ、渦流攪拌により十分混合した。次に懸濁液を 7500 rpm で2分間遠心し、上澄液を傾瀉した。この操作は 1 ml の PBST で1回、1 ml の PBS で1回行い、最終的に 1 ml の PBS に再分散させた。予め計算した量の抗 TNF-α 抗体 (R&D Systems) を濃度 50 μg 蛋白質/mg 微粒子で添加し、懸濁液を室温で end-over-end で回転させつつ1晩インキュベートした。ついで微粒子をブロッキング/保存用緩衝液(BSA 0.1%, Tween 20 0.1%, NaN3 0.1% 含有)で洗浄し、同液 1 ml に再分散させた。この抗体で官能化された微粒子の懸濁液 10 ml を 1.5 ml の Eppendorf 管に入れ、PBST 1 ml で2回、PBS (pH 7.2) 1 ml で1回洗浄した。Cy5.5 で標識したヤギ抗マウス IgG の原液 30 ml に 1470 μl の PBS を加えて希釈 (1:50) し、この液の 500 ml を微粒子懸濁液に加えて end-over-end 回転で混合しつつ室温で60分間インキュベートして抗体結合反応を行わせた。インキュベーション後の粒子を PBST 1 ml で2回洗浄し、PBS 10 ml に再分散させた。ついで実施例31と同様にシリコン基板上に平面状の微粒子アレイを作成し、前記の装置と条件で Cy5.5 の平均強度 6500 を記録した。
【0121】
本明細書で引用した文献はすべて引用により本開示に含まれるものとする。本発明が目的を達成し前記の効果、および同方法に固有の効果を上げるのに適していることは当業者には容易に理解し得るところである。本発明はその精神ないし本質的な属性を離れることなく他の具体的方法においても実施可能であり、したがって本発明の範囲は以上の明細書の記述よりも後掲の特許請求範囲によって知るべきである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1(a)】図1(a) は本発明で使用する三元溶媒系を示す模式図である。
【図1(b)】図1(b) は本発明の1つの実施例における実施手順である。
【図2】図2は、本発明によるポリマ微粒子への染料の吸収レベルを、3つの変数の関数として三次元的に示したものである。(X) は浴中の染料の質量(染料の濃度 C(s) と浴に加えた染料の容積 V(s) との積として表される)と微粒子の容積 V(p) との比であり、(Y) は浴中の微粒子の容積分率 φ(p) と溶質の容積分率 φ(s) との比であり、(Z) は微粒子中の染料の濃度 C(p) である。すなわち (Z) 軸は微粒子内に分配された染料の質量と微粒子の容積の比を示している。粒子の容積分率 φ(p) は式 φ(p) = 1 - φ(s) で与えられる。(X, Z) 平面上の直線 (P0) は調節溶媒の存在しないときの微粒子への染料の分配を X の関数として表したものであり、直線 (P1) は調節溶媒が容積分率 φ で存在するときの微粒子への染料の分配を、浴中の染料の質量 (X) の関数として表したものである。
【図3(a)】図3(a) は本発明において、n 種の溶媒系/微粒子懸濁液 Bn から蛍光性染色微粒子の n 種の部分集合 (Fn(Sn)) を得るために並列処理を行う実施例の模式図である。各懸濁液は指定された量 Sn の調節溶媒を含む。
【図3(b)】図3(b) は本発明において、単一の反応によって蛍光性染色微粒子の n 種の部分集合を得るために直列処理を行う実施例の模式図である。[B] は予めインキュベートした溶媒系/微粒子マスターバッチを示し、これに調節溶媒の連続流を注入する。Fn(Sn) は時間 t = tFn においてマスターバッチから除去される微粒子懸濁液の分率を示す。
【図3(c)】図3(c) は本発明において、蛍光性染色微粒子の n 種の部分集合 Fn(Sn) を得るために直列および並列処理を組み合わせて行う実施例の模式図である。[B] は予めインキュベートした溶媒系/微粒子マスターバッチを示し、これに既知量 S(tF) の調節溶媒を加えた後、n 個の分割単位 Bn に分け、その各々に n 種の異なった量 δSn の調節溶媒を加える。
【図3(d)】図3(d) は本発明において、蛍光性染色微粒子の m×n 種の部分集合 Fm(Sm, Dn) を得るために、溶媒調節と染料の追加を併用し、直列処理に続いて並列処理を行う実施例の模式図である。Sm は部分集合 Fm(Sm, Dn) に加えられる調節溶媒の量、Dn は同じく蛍光染料の量を示す。
【図4】図4は下記の実施例1によって製造した粒子集合の蛍光のプロットである。
【図5】図5は下記の実施例2によって製造した粒子集合の蛍光のプロットである。
【図6(a)】図6(a) は緑色蛍光染料である 4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダンセン-3-ペンタン酸スクシンイミジルエステルのエタノール溶液に対する、波長 512 nm における蛍光発光強度と染料濃度との関係をプロットした蛍光較正曲線である。
【図6(b)】図6(b) は実施例3〜6の粒子に捕捉された緑色蛍光染料の量の計算値と、実施例3〜6の粒子の作成に使用した水の容積分率との関係をプロットしたものである。
【図6(c)】図6(c) は実施例3〜6の粒子に捕捉された緑色蛍光染料の量の計算値と緑色蛍光の強度との関係をプロットしたものである。
【図6(d)】図6(d) は緑色蛍光染料の分配係数と Y (= (1 - φs)/φs) との関係をプロットしたものである。
【図7】図7は実施例26によって製造した粒子集合の蛍光のプロットである。
【図8】図8は実施例30によって製造した粒子の発生する蛍光のプロットである。
【図9】図9は実施例31によって製造した粒子の発生する蛍光のプロットである。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマ微粒子の溶質充填量を変化させる方法であって、下記の各ステップ:
(a) 下記を用意するステップ:
(i) 溶質とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒;
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも一つの第三の溶媒を具える混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製するステップ;
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、溶質を微粒子に吸収させるステップ;
(d) 微粒子懸濁液またはその一部において、懸濁液の液相から微粒子への溶質の分配量が分配完了時より小さくなるように、溶質と第二の溶媒との相対濃度を制御することにより、ポリマ微粒子中の溶質濃度を制御するステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
溶質が染料であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
微粒子懸濁液をフラクションに分割し、各フラクションに選択された量の第二の溶媒を添加することにより、選択された溶質濃度を持つ複数個の微粒子フラクションを提供することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
ポリマ微粒子の溶質充填量を変化させる方法であって、下記の各ステップ:
(a) 下記を用意するステップ、
(i) 前記溶質と前記ポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 前記溶質と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 前記溶質と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの前記第三の溶媒;
(b) 少なくとも1つの前記第二の溶媒と少なくとも一つの前記第三の溶媒とからなる混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製するステップ;
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、前記溶質を前記微粒子に吸収させるステップ;
(d) 前記微粒子懸濁液に第二の溶媒を連続的または半連続的に加えることにより、微粒子内の溶質濃度を連続的または半連続的に変化させ、これにより前記微粒子への溶質吸収量および最終濃度を制御するステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記第二の溶媒の添加中に一定時間間隔で前記微粒子の少なくとも一部を懸濁液から取り出すことにより溶質濃度の異なる少なくとも2つの微粒子集合を作成するステップを更に含むことを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
溶質が染料であることを特徴とする請求項3の方法。
【請求項7】
溶質が染料であるであることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項8】
ポリマ微粒子の染料充填量を変化させる方法であって、下記の各ステップ:
(a) 少なくとも1種の染料と下記からなる溶媒系を具える染料溶液に微粒子を懸濁させ、少なくとも1種の染料の第一の含有濃度によって特徴づけられる微粒子を作成するステップ:
(i) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 前記染料と前記ポリマとが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 前記染料と前記ポリマとが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒;
(b) 前記微粒子懸濁液に選択された量の第二の溶媒を加え、前記ポリマ微粒子への前記溶質の分配量、および当該微粒子内の前記染料濃度を変化させるステップ;
(c) 前記微粒子懸濁液を一定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が前記微粒子懸濁液への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにするステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
染色ポリマ微粒子の製造方法であって、下記の各ステップ:
(a) 下記を用意するステップ:
(i) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒、
(iii) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒、
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも1つの第三の溶媒を具える混合物の一定量に前記ポリマ微粒子を懸濁させるステップ;
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、前記第一の溶媒に溶解した染料を具える溶液を加え、染料を微粒子に吸収させ、微粒子中の前記染料の第一の濃度によって特徴づけられる微粒子懸濁液マスターバッチを得るステップ;
(d) 前記微粒子懸濁液マスターバッチから2つ以上の分割単位を作成し、各々に選択された量の第二の溶媒を加えてポリマ微粒子への染料の分配量を変化させること、
(e) 前記微粒子懸濁液の各分割単位を一定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が微粒子懸濁液の分割単位への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにするステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項10】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチを2つまたはそれ以上の分割単位に分割し、選択された量の第二の溶媒を前記分割単位に加えることを具える請求項9の方法。
【請求項11】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチに第二の溶媒を連続的または半連続的に添加し、同マスターバッチの少なくとも一部を前記第二の溶媒の添加の過程で一定時間間隔で取り出し、選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成するステップを具える請求項9の方法。
【請求項12】
前記染料が蛍光染料であることを特徴とする請求項9の方法。
【請求項13】
前記染料が疎水性染料であることを特徴とする請求項12の方法。
【請求項14】
前記染料がスチリル染料、ピロメタン染料、クマリン染料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項12の方法。
【請求項15】
前記微粒子が疎水性ポリマを具えることを特徴とする請求項13の方法。
【請求項16】
前記ポリマがビニル基含有モノマからなるホモポリマまたはコポリマであることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項17】
ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシメチル)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(ジビニルベンゼン) のホモポリマまたはコポリマ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項18】
前記ポリマがポリスチレンまたは少なくとも50重量%のスチレンモノマ単位を含むそのコポリマであることを特徴とする請求項17の方法。
【請求項19】
前記ポリマがスチレン/メタクリル酸コポリマであることを特徴とする請求項18の方法。
【請求項20】
前記ポリマが架橋されていることを特徴とする請求項16の方法。
【請求項21】
前記微粒子が約 0.1〜約 100ミクロンの直径を有することを特徴とする請求項15の方法。
【請求項22】
前記粒子が単分散であることを特徴とする請求項21の方法。
【請求項23】
前記微粒子を前記染料溶液に接触させて得られる微粒子懸濁液中に存在する染料の前記濃度が、微粒子懸濁液の重量を基準として約 10〜約 100 μg/g であることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項24】
前記第一の溶媒が塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、酢酸ブチル、塩素化低級脂肪族炭化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;前記第二の溶媒が水であり;前記第三の溶媒がアセトン、低級アルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項25】
前記第一の溶媒が塩化メチレンまたはジクロロメタンであり、前記第二の溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項24の方法。
【請求項26】
前記第三の溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項25の方法。
【請求項27】
前記微粒子が、一又はそれ以上の核ポリマが一又はそれ以上のポリマからなる外殻に囲まれた核/外殻型微粒子であることを特徴とする請求項9の方法。
【請求項28】
前記核ポリマがスチレンとスチレンより親水性の他のモノマとのコポリマを具えることを特徴とする請求項27の方法。
【請求項29】
前記核ポリマがメタクリル酸を具えることを特徴とする請求項27の方法。
【請求項30】
微粒子の少なくとも一部が磁気応答性であることを特徴とする請求項9の方法。
【請求項31】
染色ポリマ微粒子を製造する自動化された方法であって、下記の各ステップ:
(a) 第一の染料濃度で特徴づけられる微粒子を、少なくとも1つの染料と下記からなる溶媒系からなる染料溶液に懸濁させて微粒子マスターバッチ懸濁液とするステップ:
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒;
(b) 前記マスターバッチ懸濁液から、前記染料溶液中の前記第一の染料濃度により各々特徴づけられる、2つ以上の微粒子懸濁液分割単位を作成するステップ;
(c) 各分割単位に対して、微粒子中の前期第一の染料濃度を所定の第二の染料濃度に変化させるため、下記の工程を少なくとも1回実行するステップ:
(i) 所定の第二の染料濃度に対して、前記分割単位において微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するのに必要な下記の量を計算するステップ:
(1) 前記第一の溶媒に溶解すべき染料の量、
(2) 第二の溶媒の量、
(ii) 前記分割単位に、前記第一の溶媒に前記量の染料を溶解した溶液、および微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するために必要な量の第二の溶媒を分注するステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項32】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチを2つまたはそれ以上の分割単位に分割し、選択された量の第二の溶媒を前記分割単位に加えることを具える、請求項31の方法。
【請求項33】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチに第二の溶媒を連続的または半連続的に添加し、同マスターバッチの少なくとも一部を前記第二の溶媒の添加の過程で一定時間間隔で取り出し、選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成することを具える、請求項31の方法。
【請求項34】
染料が蛍光染料であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項35】
染料が疎水性染料であることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項36】
染料がスチリル染料、ピロメタン染料、クマリン染料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項37】
微粒子が疎水性ポリマを具えることを特徴とする請求項35の方法。
【請求項38】
微粒子の少なくとも一部が磁気応答性であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項39】
ピペット操作ロボットを操作するために接続され、請求項31の方法を実行するようにプログラムされたコンピュータを具えることを特徴とする染色ポリマ微粒子を製造するための装置。
【請求項1】
ポリマ微粒子の溶質充填量を変化させる方法であって、下記の各ステップ:
(a) 下記を用意するステップ:
(i) 溶質とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 溶質とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒;
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも一つの第三の溶媒を具える混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製するステップ;
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、溶質を微粒子に吸収させるステップ;
(d) 微粒子懸濁液またはその一部において、懸濁液の液相から微粒子への溶質の分配量が分配完了時より小さくなるように、溶質と第二の溶媒との相対濃度を制御することにより、ポリマ微粒子中の溶質濃度を制御するステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
溶質が染料であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
微粒子懸濁液をフラクションに分割し、各フラクションに選択された量の第二の溶媒を添加することにより、選択された溶質濃度を持つ複数個の微粒子フラクションを提供することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
ポリマ微粒子の溶質充填量を変化させる方法であって、下記の各ステップ:
(a) 下記を用意するステップ、
(i) 前記溶質と前記ポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 前記溶質と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 前記溶質と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、前記第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの前記第三の溶媒;
(b) 少なくとも1つの前記第二の溶媒と少なくとも一つの前記第三の溶媒とからなる混合物中の、前記ポリマ微粒子の懸濁液を調製するステップ;
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、溶質と前記第一の溶媒とからなる溶液を添加することにより、前記溶質を前記微粒子に吸収させるステップ;
(d) 前記微粒子懸濁液に第二の溶媒を連続的または半連続的に加えることにより、微粒子内の溶質濃度を連続的または半連続的に変化させ、これにより前記微粒子への溶質吸収量および最終濃度を制御するステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記第二の溶媒の添加中に一定時間間隔で前記微粒子の少なくとも一部を懸濁液から取り出すことにより溶質濃度の異なる少なくとも2つの微粒子集合を作成するステップを更に含むことを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
溶質が染料であることを特徴とする請求項3の方法。
【請求項7】
溶質が染料であるであることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項8】
ポリマ微粒子の染料充填量を変化させる方法であって、下記の各ステップ:
(a) 少なくとも1種の染料と下記からなる溶媒系を具える染料溶液に微粒子を懸濁させ、少なくとも1種の染料の第一の含有濃度によって特徴づけられる微粒子を作成するステップ:
(i) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 前記染料と前記ポリマとが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 前記染料と前記ポリマとが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒;
(b) 前記微粒子懸濁液に選択された量の第二の溶媒を加え、前記ポリマ微粒子への前記溶質の分配量、および当該微粒子内の前記染料濃度を変化させるステップ;
(c) 前記微粒子懸濁液を一定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が前記微粒子懸濁液への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにするステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
染色ポリマ微粒子の製造方法であって、下記の各ステップ:
(a) 下記を用意するステップ:
(i) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒、
(iii) 前記染料と前記ポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒、
(b) 少なくとも1つの第二の溶媒と少なくとも1つの第三の溶媒を具える混合物の一定量に前記ポリマ微粒子を懸濁させるステップ;
(c) 前記ポリマ微粒子懸濁液に、前記第一の溶媒に溶解した染料を具える溶液を加え、染料を微粒子に吸収させ、微粒子中の前記染料の第一の濃度によって特徴づけられる微粒子懸濁液マスターバッチを得るステップ;
(d) 前記微粒子懸濁液マスターバッチから2つ以上の分割単位を作成し、各々に選択された量の第二の溶媒を加えてポリマ微粒子への染料の分配量を変化させること、
(e) 前記微粒子懸濁液の各分割単位を一定時間インキュベートし、染料溶液中の染料の与えられた初期濃度に対して微粒子内に分配される染料の量が微粒子懸濁液の分割単位への第二の溶媒の添加量によって制御されるようにするステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項10】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチを2つまたはそれ以上の分割単位に分割し、選択された量の第二の溶媒を前記分割単位に加えることを具える請求項9の方法。
【請求項11】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチに第二の溶媒を連続的または半連続的に添加し、同マスターバッチの少なくとも一部を前記第二の溶媒の添加の過程で一定時間間隔で取り出し、選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成するステップを具える請求項9の方法。
【請求項12】
前記染料が蛍光染料であることを特徴とする請求項9の方法。
【請求項13】
前記染料が疎水性染料であることを特徴とする請求項12の方法。
【請求項14】
前記染料がスチリル染料、ピロメタン染料、クマリン染料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項12の方法。
【請求項15】
前記微粒子が疎水性ポリマを具えることを特徴とする請求項13の方法。
【請求項16】
前記ポリマがビニル基含有モノマからなるホモポリマまたはコポリマであることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項17】
ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシメチル)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(ジビニルベンゼン) のホモポリマまたはコポリマ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項18】
前記ポリマがポリスチレンまたは少なくとも50重量%のスチレンモノマ単位を含むそのコポリマであることを特徴とする請求項17の方法。
【請求項19】
前記ポリマがスチレン/メタクリル酸コポリマであることを特徴とする請求項18の方法。
【請求項20】
前記ポリマが架橋されていることを特徴とする請求項16の方法。
【請求項21】
前記微粒子が約 0.1〜約 100ミクロンの直径を有することを特徴とする請求項15の方法。
【請求項22】
前記粒子が単分散であることを特徴とする請求項21の方法。
【請求項23】
前記微粒子を前記染料溶液に接触させて得られる微粒子懸濁液中に存在する染料の前記濃度が、微粒子懸濁液の重量を基準として約 10〜約 100 μg/g であることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項24】
前記第一の溶媒が塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、酢酸ブチル、塩素化低級脂肪族炭化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;前記第二の溶媒が水であり;前記第三の溶媒がアセトン、低級アルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項25】
前記第一の溶媒が塩化メチレンまたはジクロロメタンであり、前記第二の溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項24の方法。
【請求項26】
前記第三の溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項25の方法。
【請求項27】
前記微粒子が、一又はそれ以上の核ポリマが一又はそれ以上のポリマからなる外殻に囲まれた核/外殻型微粒子であることを特徴とする請求項9の方法。
【請求項28】
前記核ポリマがスチレンとスチレンより親水性の他のモノマとのコポリマを具えることを特徴とする請求項27の方法。
【請求項29】
前記核ポリマがメタクリル酸を具えることを特徴とする請求項27の方法。
【請求項30】
微粒子の少なくとも一部が磁気応答性であることを特徴とする請求項9の方法。
【請求項31】
染色ポリマ微粒子を製造する自動化された方法であって、下記の各ステップ:
(a) 第一の染料濃度で特徴づけられる微粒子を、少なくとも1つの染料と下記からなる溶媒系からなる染料溶液に懸濁させて微粒子マスターバッチ懸濁液とするステップ:
(i) 染料とポリマ微粒子とが可溶な少なくとも1つの第一の溶媒;
(ii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一の溶媒と相溶性がないか、多くとも部分的にのみ相溶性である少なくとも1つの第二の溶媒;
(iii) 染料とポリマ微粒子とが不溶または溶解度が低く、第一および第二の溶媒と相溶性である少なくとも1つの第三の溶媒;
(b) 前記マスターバッチ懸濁液から、前記染料溶液中の前記第一の染料濃度により各々特徴づけられる、2つ以上の微粒子懸濁液分割単位を作成するステップ;
(c) 各分割単位に対して、微粒子中の前期第一の染料濃度を所定の第二の染料濃度に変化させるため、下記の工程を少なくとも1回実行するステップ:
(i) 所定の第二の染料濃度に対して、前記分割単位において微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するのに必要な下記の量を計算するステップ:
(1) 前記第一の溶媒に溶解すべき染料の量、
(2) 第二の溶媒の量、
(ii) 前記分割単位に、前記第一の溶媒に前記量の染料を溶解した溶液、および微粒子中の前記第二の染料濃度を達成するために必要な量の第二の溶媒を分注するステップ
を具えることを特徴とする方法。
【請求項32】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチを2つまたはそれ以上の分割単位に分割し、選択された量の第二の溶媒を前記分割単位に加えることを具える、請求項31の方法。
【請求項33】
選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成する工程が、微粒子懸濁液マスターバッチに第二の溶媒を連続的または半連続的に添加し、同マスターバッチの少なくとも一部を前記第二の溶媒の添加の過程で一定時間間隔で取り出し、選択された量の第二の溶媒を含む微粒子懸濁液の前記2つ以上の分割単位を作成することを具える、請求項31の方法。
【請求項34】
染料が蛍光染料であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項35】
染料が疎水性染料であることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項36】
染料がスチリル染料、ピロメタン染料、クマリン染料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項34の方法。
【請求項37】
微粒子が疎水性ポリマを具えることを特徴とする請求項35の方法。
【請求項38】
微粒子の少なくとも一部が磁気応答性であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項39】
ピペット操作ロボットを操作するために接続され、請求項31の方法を実行するようにプログラムされたコンピュータを具えることを特徴とする染色ポリマ微粒子を製造するための装置。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1(b)】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2006−516999(P2006−516999A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501050(P2006−501050)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/001433
【国際公開番号】WO2004/064988
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(503369358)バイオアレイ ソリューションズ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/001433
【国際公開番号】WO2004/064988
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(503369358)バイオアレイ ソリューションズ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】
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