説明

ポリラクテートまたはその共重合体生成能を有する組換え微生物及びそれを用いたポリラクテートまたはその共重合体の製造方法

本発明は、メガスフェラ・エルスデニ(Megasphaera elsdenii)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子と、ラクチル−CoAを基質として用いるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の遺伝子とを同時に有し、ポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する組換え微生物及びそれを用いたポリラクテートまたはその共重合体の製造方法に関する。本発明によれば、微生物にメガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼを導入することによってラクチル−CoAを円滑に供給することができるので、ポリラクテートまたはその共重合体を効率的に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メガスフェラ・エルスデニ(Megasphaera elsdenii)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子とラクチル−CoAを基質として用いるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)合成酵素の遺伝子を同時に有し、ポリラクテート(PLA)またはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体(lactate copolymer)生成能を有する組換え微生物、及びそれを用いたポリラクテートまたはその共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリラクテート(PLA,polylactate)は、ラクテート(lactate)由来の代表的な生分解性高分子であって、汎用の高分子または医療用の高分子への応用性が高い高分子である。現在、PLAは微生物の発酵によって生産されたラクテートを重合することにより製造されているが、ラクテートの直接重合によっては低分子量(1,000〜5000ダルトン)のPLAのみが生成される。100,000ダルトン以上のPLAを合成するためには、ラクテートの直接重合によって得られた低分子量のPLAから、鎖結合剤(chain coupling agent)を利用してさらに高分子量のPLAに重合する方法がある。しかし、上記方法は、有機溶剤(solvent)や鎖結合剤を添加することから、工程が複雑になり、また、それらを除去し難いという短所がある。
【0003】
現在、商用化されている高分子量のPLA生産工程は、ラクテートをラクチド(lactide)に転換した後、ラクチド環の開環縮合反応を通じてPLAを合成する方法が使用されている。
【0004】
ラクテートの化学合成によってPLAを合成する場合、PLAホモポリマーは容易に得られるが、様々なモノマー組成を含むPLA共重合体を合成することは難しく、商業的に利用できないという短所がある。
【0005】
一方、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、過度な炭素源が存在し、リン、窒素、マグネシウム、酸素などの他の営養分が不足するとき、微生物がエネルギーや炭素源の保存物質としてその内部に蓄積するポリエステルである。PHAは、既存の石油由来の合成高分子と類似した物性を有し、且つ完全な生分解性を有するので、既存の合成プラスチックを代替する物質として認識されている。
【0006】
微生物でPHAを生産するためには、微生物の代謝産物をPHAモノマーに転換する酵素と、PHAモノマーを用いてPHA高分子を合成するPHA合成酵素(synthase)が必須である。微生物を用いてPLA及びPLA共重合体を合成するときも、同じシステムが必要とされ、元来のPHA合成酵素の基質であるヒドロキシアシル−CoAを提供できる酵素に加えてラクチル−CoAを提供できる酵素が必要とされる。
【0007】
そこで、本発明者らは、ラクチル−CoAを提供するために、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼと、それを基質として用いるシュードモナス属6−19(Pseudomonas sp.6-19)のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の変異体を使用して、成功的にポリラクテート及びその共重合体を合成することができた(特許文献1)。
【0008】
また、特許文献2には、クロストリジウム・プロピオニカム由来プロピオニル−CoAトランスフェラーゼの変異体を使用して、クロストリジウム・プロピオニカム由来プロピオニル−CoAトランスフェラーゼの細胞成長阻害及び大腸菌での非効率的な発現問題を解決することによって、ポリラクテート及びその共重合体を高効率で製造することができることが開示されている。
【0009】
上記特許文献1、2から分かるように、微生物を用いて効率的にポリラクテートまたはその共重合体を生産するためには、細胞成長を大きく阻害しない活性化形態に高発現されたラクチル−CoAを円滑に供給しうる単量体供給酵素を導入することが非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2006−0116234号
【特許文献2】韓国特許出願第10−2007−0081855号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明者らは、既存システムで使われているクロストリジウム・プロピオニカム由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ以外の微生物由来のラクチル−CoA転換酵素を見つけ出すために鋭意研究し、メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼがラクチル−CoA転換活性があることを確認した(国際公開番号WO02/42418 A2)。その後、本発明者らはメガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼをクローニングすることによって、大腸菌を用いて、ポリラクテートまたはその共重合体を高効率で製造することができることを確認し、本発明を完成した。
【0012】
従って、本発明の目的は、ラクチル−CoAの効率的供給酵素としてメガスフェラ・エルスデニ(Megasphaera elsdenii)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼを用いて、ポリラクテートまたはその共重合体を高効率で生成することができる組換え微生物及び上記組換え微生物を用いてポリラクテートまたはその共重合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、メガスフェラ・エルスデニ由来プロピオニル−CoAトランスフェラーゼの遺伝子(me-pct)と、ラクチル−CoAを基質として用いるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)合成酵素の遺伝子とを同時に有し、ポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する組換え微生物を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記組換え微生物をグルコース、ラクテート及びヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される1種以上の炭素源を含有する培地で培養し;上記培養された微生物からポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を回収する;ことを特徴とするポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体[poly(hydroxyalkanoateco-lactate)]の製造方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子とラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子とを含むポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体製造用組換えベクターを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るメガスフェラ・エルスデニ由来プロピオニル−CoAトランスフェラーゼの遺伝子が導入された組換え微生物ではラクチル−CoA供給を円滑に供給することができ、それによりポリラクテートまたはその共重合体を高効率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】グルコース、ラクテート及び3HBを用いてポリラクテート共重合体P(3HB-co-lactate)を細胞内で合成する経路を示す概略図である。
【図2】本発明のシュードモナス属6−19由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素遺伝子とメガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子とを含む組換え発現ベクターを作製する過程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(me-pct)とラクチル−CoAを基質として用いるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)合成酵素の遺伝子とを同時に有し、ポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する組換え微生物を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態によると、上記ポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する組換え微生物は、PHA合成酵素遺伝子を有しない微生物を、メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子とラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子で形質転換して得ることができる。
【0020】
上記PHA合成酵素遺伝子を有しない微生物は大腸菌であってもよい。
【0021】
上記ラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子はphaC1Ps6−19であってもよい。
【0022】
上記組換え微生物は、me−pctを含む組換えベクターで形質転換され、同時にphaC1Ps6−19を含むベクターで形質転換されるか、または、phaC1Ps6−19が染色体上に挿入されていてもよい。
【0023】
本発明の別の実施形態によると、上記組換え微生物は、PHA合成酵素遺伝子を有する微生物をメガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子で形質転換して得ることができる。
【0024】
上記PHA合成酵素の遺伝子はphaC1Ps6−19であってもよい。
【0025】
上記PHA合成酵素遺伝子を有する微生物は大腸菌であってもよい。
【0026】
また、本発明は、上記した組換え微生物をグルコース、ラクテート及びヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される1種以上の炭素源を含有する培地で培養し;上記培養された微生物からポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を回収する;ことを特徴とするポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体[poly(hydroxyalkanoateco-lactate)]の製造方法を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(me-pct)とラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子とを含むポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体製造用組換えベクターを提供する。
【0028】
上記ラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子はphaC1Ps6−19であってもよい。
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
上記ポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する微生物は、(i)PHA合成酵素遺伝子を有しない微生物を、ラクテートをラクチル−CoAに転換する酵素の遺伝子とラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子で形質転換して得られるか、(ii)ラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子を有する微生物を、ラクテートをラクチル−CoAに転換する酵素の遺伝子で形質転換して得られるか、または、(iii)ラクテートをラクチル−CoAに転換する酵素の遺伝子を有する微生物をラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子で形質転換して得られる、ことを特徴としているが、これに制限されない。
【0031】
例えば、上記2つ遺伝子(ラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子及びラクテートをラクチル−CoAに転換する酵素の遺伝子)のいずれかを有する微生物で、その遺伝子を増幅し、且つ別の一つの遺伝子で形質転換させたものも本発明の範囲に属する。
【0032】
本発明において、ラクテートをラクチル−CoAに転換する酵素の遺伝子は、メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(配列番号24、me−pct)であってもよい。
【0033】
本発明に係る微生物は、me−pct遺伝子を含む組換えベクターで形質転換され、同時にシュードモナス属6−19由来のPHA合成酵素の遺伝子であるphaC1Ps6−19を含むベクターで形質転換されるか、またはphaC1Ps6−19が染色体上に挿入されていてもよい。この場合、炭素源としてグルコース、ラクテート、及び様々なヒドロキシアルカノエートからなる群から選択された1つ以上を用いてポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を製造できる。
【0034】
本発明によると、上記組換え微生物をグルコース、ラクテート及びヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される1種以上の炭素源を含有する培地で培養し、上記培養された微生物からポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を回収することができる。
【0035】
上記培養は、ラクテート共重合体を製造するために、ヒドロキシアルカノエートを含有する環境で遂行され得る。このようなヒドロキシアルカノエートには、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレラート、4−ヒドロキシブチレート、炭素数が6〜14の中鎖長の(D)−3−ヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、4−ヒドロキシバレリアン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシデカン酸、5−ヒドロキシバレリアン酸、5−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシ−4−ペンテン酸、3−ヒドロキシ−4−trans−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−4−cis−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−5−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−6−trans−オクテン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−オクテン酸、3−ヒドロキシ−7−オクテン酸、3−ヒドロキシ−8−ノネン酸、3−ヒドロキシ−9−デセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−7−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−5,8−cis−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルバレリアン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−8−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−9−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−7−メチル−6−オクテン酸、リンゴ酸、3−ヒドロキシコハク酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアジピン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアゼライン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシピメリン酸−プロピルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−ベンジルエステル、3−ヒドロキシ−8−アセトキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−9−アセトキシノナン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシ酪酸、フェノキシ−3−ヒドロキシバレリアン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシヘプタン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシオクタン酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシ酪酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシバレリアン酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、para−ニトロフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリアン酸、3−ヒドロキシ−5−シクロヘキシル酪酸、3,12−ジヒドロキシドデカン酸、3,8−ジヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4,5−エポキシデカン酸、3−ヒドロキシ−6,7−エポキシドデカン酸、3−ヒドロキシ−8,9−エポキシ−5,6−cis−テトラデカン酸、7−シアノ−3−ヒドロキシヘプタン酸、9−シアノ−3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシ−7−フルオロヘプタン酸、3−ヒドロキシ−9−フルオロノナン酸、3−ヒドロキシ−6−クロロヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−クロロオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−ブロモヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸、3−ヒドロキシ−11−ブロモウンデカン酸、3−ヒドロキシ−2−ブテン酸、6−ヒドロキシ−3−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、3−ヒドロキシ−2−メチルバレリアン酸、3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−5−ヘプテン酸などが挙げられるが、これに制限されない。
【0036】
上記ヒドロキシアルカノエートは、3−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシブチレート、2−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、炭素数が6〜14の中鎖長の(D)−3−ヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシバレリアン酸、4−ヒドロキシバレリアン酸、5−ヒドロキシバレリアン酸などが好みしく、3−ヒドロキシブチレート(3-HB)がさらに好ましい(図1参照)。
【0037】
本発明のラクテート重合体またはラクテート共重合体は、ポリラクテート、ポリ(ヒドロキシアルカノエート−co−3−ラクテート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート−co−ヒドロキシアルカノエート−co−ラクテート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート−co−ヒドロキシアルカノエート−co−ポリヒドロキシアルカノエート−co−ラクテート)などが挙げられるが、これに制限されない。
【0038】
上記ラクテート共重合体の具体的な例は、ポリ(4−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシプロピオネート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−4−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシプロピオネート−co−4−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)、ポリ(中鎖長(MCL)3−ヒドロキシアルカノエート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−MCL3−ヒドロキシアルカノエート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバレーレート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシプロピオネート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート−co−ラクテート)などであってもよいが、これに制限されない。
【0039】
図1に示されるように、本発明の一実施例において、微生物は3−ヒドロキシブチレート(3-HB)を含有する環境で培養されていてもよく、上記共重合体はP(3HB−co−LA)であってもよい。
【0040】
本発明において、ベクターとは適した宿主内でDNAを発現させるのに適した調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含有するDNA製造物を意味する。ベクターはプラスミド、ファージ粒子、または簡単に潜在的ゲノム挿入物であってもよい。ベクターが適当な宿主に形質転換されれば、ベクターは宿主ゲノムと関係なく自己複製または機能するか、または一部場合に、ゲノムそれ自体に統合され得る。プラスミドが現在ベクターの最も通常的に使われる形態であるので、用語「プラスミド」及び「ベクター」は以下では交互に用いられる。しかし、本発明は当業界に知らされているか、または従来のベクターと同等の機能を遂行するために考慮された、他種のベクターの形態も含む。
【0041】
用語「発現調節配列」とは、特定の宿主生物で作動可能に連結されたコード配列の発現に必須であるDNA配列を意味する。そのような調節配列は、転写を実施するためのプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列及び転写及び解読の終結を調節する配列を含む。例えば、原核生物に適した調節配列はプロモーター、任意にオペレーター配列及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサー(enhancer)が含まれる。プラスミドで遺伝子の発現量に影響を及ぼす因子はプロモーターである。高発現用のプロモーターとしてSRαプロモーターとサイトメガロウイルス (cytomegalovirus)由来のプロモーターなどが使用されていてもよい。
【0042】
本発明のDNA配列を発現させるために、非常に様々な発現調節配列中のどのような1つでもベクターに適用できる。例えば、有用な発現調節配列はSV40またはアデノウイルスの初期及び後期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、T3及びT7プロモーター,ファージラムダの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコードタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセラートキナーゼまたは他のグリコール分解酵素に対するプロモーター、上記ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母α−交配システムのプロモーター及び原核細胞または真核細胞またはこれらのウイルスの遺伝子の発現を調節するものと知らされた構成と誘導のその他の配列及びこれらの様々な組合が含まれる。
【0043】
核酸は他の核酸配列と機能的関係で配置されるとき、“作動可能に連結(operably linked)”される。これは適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)は、調節配列(ら)に結合される時、遺伝子発現を可能にする方式で連結された遺伝子及び調節配列(ら)であってもよい。例えば、プレ配列(pre-sequence)または分泌リーダ(leader)に対するDNAは、ポリペプチドの分泌に参加する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されるか;またはリボソーム結合部位は配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されるか;またはリボソーム結合部位は翻訳を容易にするように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、“作動可能に連結された”とは、連結されたDNA配列が接触し、また分泌リーダの場合、接触してリーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは接触する必要がない。これらの配列の連結は便利な制限酵素部位でライゲーションによって遂行される。そのような部位が存在しない場合、常法によって合成オリゴヌクレオチド・アダプター(oligonucleotide adaptor)またはリンカー(linker)を使用する。
【0044】
用語“発現ベクター”とは、通常異種のDNAの断片が挿入された組換えキャリア(recombinant carrier)として一般的に二本鎖のDNAの断片を意味する。ここで、異種DNAは宿主細胞から天然的に見つからないDNAであるヘテロタイプのDNAを意味する。発現ベクターは、一旦宿主細胞内に存在すれば、宿主染色体DNAと関係なく複製でき、ベクターの数個のコピー及びその挿入された(異種)DNAが生成され得る。
【0045】
周知のように、宿主細胞で形質感染遺伝子の発現水準を高めるためには、当該遺伝子が、選択された発現宿主内で機能を発揮する転写及び解読発現調節配列に作動可能に連結されなければならない。好ましくは、発現調節配列及び当該遺伝子は、細菌選択マーカー及び複製起点(replication origin)を共に含む一つの発現ベクター内に含まれる。発現宿主が真核細胞である場合には、発現ベクターは真核発現宿主内で有用な発現マーカーをさらに含まなければならない。
【0046】
本発明において、組換えベクターとしては、プラスミドベクター、バクテリオファージベクター、コスミドベクター、YAC(Yeast Artificial Chromosome)ベクターなどを使用できる。例えば、本発明の目的上、プラスミドベクターを利用することが好ましい。このような目的に使用され得る典型的なプラスミドベクターは、(a)宿主細胞当たり数百個のプラスミドベクターを含むように複製を効率的に行わせる複製起点、(b)プラスミドベクターで形質転換された宿主細胞が選抜させる抗生剤耐性遺伝子及び(c)外来DNA切片が挿入され得る制限酵素切断部位を含む構造を有している。適切な制限酵素切断部位が存在せずとも、常法による合成オリゴヌクレオチド・アダプター(oligonucleotide adaptor)またはリンカー(linker)を使用すれば、ベクター及び外来DNAを容易にライゲーションすることができる。
【0047】
本発明に係る組換えベクターは、適切な宿主細胞で常法によって形質転換することができる。宿主細胞としては、バクテリア、酵母及び黴などが可能であるが、これに制限されない。本発明に選好される宿主細胞は、原核細胞であり、大腸菌が好ましい。適した原核宿主細胞としては、E.coli菌株DH5a、E.coli菌株JM101、E.coli K12菌株294、E.coli菌株W3110、E.coli菌株X1776、E.coli XL−1Blue(Stratagene)及びE.coli Bなどが含まれる。しかし、FMB101、NM522、NM538及びNM539のようなE.coli菌株及び他の原核生物の種(speices)及び属(genera)などが使用され得る。
【0048】
上述したE.coliに加えて、アグロバクテリウムA4のようなアグロバクテリウム属の菌株、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)のようなバシリ(bacilli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マルセセンス (Serratia marcescens)のような腸内細菌及び様々なシュードモナス(Pseudomonas)属の菌株が宿主細胞として使用できるが、これに制限されない。
【0049】
また、原核細胞の形質転換はSambrook et al., supraの1.82セクションに記載されたカルシウムクロリド方法を使用して容易に達成することができる。選択的に、また、電気穿孔法(electroporation)( Neumann et al., EMBO J., 1:841 (1982))もこのような細胞を形質転換するのに使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業者には明らかである。
【0051】
[製造例1:シュードモナス属6−19由来のPHA合成酵素遺伝子のクローニング及び発現ベクターの作製]
本発明に使われたシュードモナス属6−19 (KCTC 11027BP)由来のPHA合成酵素遺伝子(phaC1Ps6−19)を分離するために、シュードモナス属6−19 の全体DNAを抽出し、phaC1Ps6−19遺伝子配列(Ae-jin Song, Master's Thesis, Department of Chemical and Biomolecular Engineering, KAIST, 2004)に基づいた配列番号1及び配列番号2の塩基配列を有するプライマーを作製し、PCRを遂行してphaC1Ps6−19遺伝子を得た。
配列番号1:5'- GAG AGA CAA TCA AAT CAT GAG TAA CAA GAG TAA CG -3’
配列番号2:5'- CAC TCA TGC AAG CGT CAC CGT TCG TGC ACG TAC -3’
【0052】
PCR反応物をアガロースゲル電気泳動した結果、phaC1Ps6−19遺伝子に該当する1.7kbpサイズの遺伝子切片を確認した。phaC1Ps6−19合成酵素の発現のために、単量体(monomer)供給酵素と合成酵素とが共に発現されるオペンロン形態の常時的発現システムを導入した。
【0053】
pSYL105ベクター(Lee et al., Biotech. Bioeng., 1994, 44:1337-1347)からラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha) H16由来のPHB(poly(hydroxylbutyrate))生産オペロンが含有されたDNA切片をBamHI/EcoRIで切断し、pBluescript II(Stratagene)のBamHI/EcoRI認識部位に挿入することによって、pReCAB組換えベクターを製造した。
【0054】
pReCABベクターは、PHA合成酵素(phaCRE)と単量体供給酵素(phaARE及びphaBRE)がPHBオペロンプロモーターにより常時的に発現され、大腸菌でもよく作動することが知られている(Lee et al., Biotech. Bioeng., 1994, 44:1337-1347)。pReCABベクターをBstBI/SbfIで切断し、R.ユートロファH16PHA合成酵素(phaCRE)を除去した後、上記で得られたphaC1Ps6−19遺伝子をBstBI/SbfI認識部位に挿入することによって、pPs619C1−ReAB組換えベクターを製造した。
【0055】
BstBI/SbfI認識部位がそれぞれ両端に一つのみ含まれたphaC1Ps6−19合成酵素遺伝子切片を作るために、まず、内在しているBstBI位置をSDM(site directed mutagenesis)方法でアミノ酸の変換無しに、除去しており、BstBI/SbfI認識部位を添加するために、配列番号3及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6、配列番号7及び配列番号8の塩基配列を有するプライマーを利用してオーバーラップPCRを遂行した。
配列番号3:5'- atg ccc gga gcc ggt tcg aa - 3’
配列番号4:5' - CGT TAC TCT TGT TAC TCA TGA TTT GAT TGT CTC TC - 3’
配列番号5:5' - GAG AGA CAA TCA AAT CAT GAG TAA CAA GAG TAA CG - 3’
配列番号6:5' - CAC TCA TGC AAG CGT CAC CGT TCG TGC ACG TAC - 3’
配列番号7:5' - GTA CGT GCA CGA ACG GTG ACG CTT GCA TGA GTG - 3’
配列番号8:5'- aac ggg agg gaa cct gca gg - 3’
【0056】
上記作製したpPs619C1−ReAB組換えベクターのphaC1Ps6−19遺伝子の塩基配列は、シークエンシングを通して確認し、配列番号9で示し、これによりコードされるアミノ酸配列を配列番号10で示した。
【0057】
上記遺伝子塩基配列の類似性を分析した結果、シュードモナス属菌株(Matsusaki et al., J. Bacteriol., 180:6459, 1998)由来のphaC1と84.3%の相同性を有し、アミノ酸配列相同性は88.9%と上記2合成酵素がだいぶ類似した酵素であることを確認した。その結果、 本発明で得られたphaC1Ps6−19合成酵素はType II PHA合成酵素であることを確認した。
【0058】
上記phaC1Ps6−19合成酵素によってPHBの生産を確認するために、pPs619C1−ReAB組換えベクターをE.coli XL−1Blue(Stratagene)に形質転換し、これをPHB検出培地(LB agar、グルコース20g/L、ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、PHB生成が観察されなかった。
【0059】
[製造例2:シュードモナス属6−19由来のPHA合成酵素の基質特異性変異体の作製]
様々な種類のPHA合成酵素の中で、Type II PHA合成酵素は比較的炭素数の長い基質を重合させるMCL−PHA(medium-chain-length PHA)合成酵素として知られており、このMCL合成酵素はPLAの共重合体生産に非常に有用であることが期待されている。本発明で獲得したphaC1Ps6-19合成酵素と非常に相同性の高いシュードモナス属61−3由来のphaC1合成酵素はType II合成酵素であるが、比較的広い範囲の基質特異性を有すると報告されている(Matsusaki et al., J. Bacteriol., 180:6459, 1998)。SCL−PHA(short-chain-length PHA)生産に適した突然変異体に関する研究結果が報告されている(Takase et al., Biomacromolecules, 5:480, 2004)。上記研究に基づいて、本発明ではSCL活性に影響を及ぼすアミノ酸位置3箇所をアミノ酸配列分析を通して見つけ出し、配列番号11〜配列番号16のプライマーを使用したSDM方法を利用して下記表1のように変異体を作った。
【0060】
【表1】

【0061】
これらの組換えベクターをE.coli XL−1Blueに形質転換させ、これをPHB検出培地(LB agar、グルコース20g/L、ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、pPs619C1200−ReABで形質転換されたE.coli XL−1BlueとpPs619C1300−ReABで形質転換されたE.coli XL−1BlueでいずれもPHB生成を確認することができた。即ち、単量体供給酵素であるphaAREとphaBREによりグルコースから3HB−CoAが生成され、これを基質としてphaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体(phaC1Ps6−19200及びphaC1Ps6−19300)がPHBを合成したものである。定量的な分析のために、形質転換した組換え大腸菌XL1−Blueをグルコース(20g/L)が含まれたLB培地で37℃の温度で4日間培養した。培養した組換え大腸菌にスクロースショック(sucrose shock)を与えた後、ナイルレッド(Nile-Red)染色をし、これをFACS(Florescence Activated Cell Sorting)分析した。
【0062】
野生型合成酵素を含むベクターであるpPs619C1−ReABベクターで形質転換された大腸菌XL1−Blueはナイルレッドにより染色されない反面、pPs619C1200−ReABで形質転換された大腸菌とpPs619C1300−ReABで形質転換された大腸菌XL1−Blueは細胞内に蓄積されたPHBがナイルレッドにより染色され、高い蛍光度を示した。また、培養菌体を遠心分離を通して回収し、80℃の乾燥器で48時間乾燥した後、気体クロマトグラフィー分析を遂行して細胞内の合成されたPHB含量を測定した結果、pPs619C1200−ReABで形質転換させた大腸菌とpPs619C1300−ReABで形質転換させた大腸菌は、乾燥細胞重量に対して、それぞれ29.7%(w/w)及び43.1%(w/w)であり、pPs619C1−ReABの場合は、検出されなかった。
【0063】
[製造例3:クロストリジウム・プロピオニカム由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼの発現が可能な組換えベクターの製造]
PLAまたはその共重合体合成時に必要な単量体であるラクチル−CoAを提供するために、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ(cp-pct)を用いた。cp−pctの場合、微生物に毒性を示すと知られているが、一般的に組換えタンパク質発現に広く使われるtacプロモーターやT7プロモーターを使用したIPTGによる発現誘導システムでは誘導剤添加と同時に、組換え微生物が全て死滅する。このために弱く発現されるが、微生物成長によって持続的に発現される常時的発現システムを使用することが適すると判断した。cp−pctはクロストリジウム・プロピオニカムの染色体DNAを配列番号17及び配列番号18のプライマーを利用してPCRして得られた断片を使用した。このとき、元来野生型cp−pctに存在するNdeI部位をクローニングの容易性のためにSDM方法を利用して除去した。
配列番号17:5' - ggaattcATGAGAAAGGTTCCCATTATTACCGCAGATGA -3’
配列番号18:5' - gc tctaga tta gga ctt cat ttc ctt cag acc cat taa gcc ttc tg -3'
【0064】
また、SbfI/NdeI認識部位を添加するために、配列番号19と配列番号20の塩基配列を有するプライマーを利用してオーバーラッピングPCRを遂行した。
配列番号19:5' - agg cct gca ggc gga taa caa ttt cac aca gg- 3’
配列番号20:5' - gcc cat atg tct aga tta gga ctt cat ttc c- 3’
【0065】
phaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体であるphaC1Ps6−19300を含有したpPs619C1300−ReABベクターをSbfI/NdeIで切断し、ラルストニア・ユートロファH16由来の単量体供給酵素(phaARE及びphaBRE)を除去した後、上記PCRクローニングしたcp−pct遺伝子をSbfI/NdeI認識部位に挿入することによって、pPs619C1300−CPPCT組換えベクターを製造した。
【0066】
[実施例1:メガスフェラ・エルスデニ(Megasphaera elsdenii)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子のクローニング及び発現ベクターの作製]
本発明に使われたメガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(me-pct)を分離するために、メガスフェラ・エルスデニ(DSM 20460)菌株をPYG液体培地30mLに18時間、嫌気的に培養した後、遠心分離し、ペレットを100mL Tris−EDTA buferを利用して洗浄した後、 Wizard Genomic DNA purification Kit (Promega, Catalog No. A 1120)を利用して菌株の全体DNAを抽出した。PYG培地の組成と製造法は表2に示した。
【0067】
【表2】

【0068】
me−pct遺伝子配列(WO02/42418A2)に基づいた配列番号21及び配列番号22の塩基配列を有するプライマーを作製し、PCRを遂行してme−pctを得た。
配列番号21:5' - act gaa ttc atg aga aaa gta gaa atc att aca gct g -3’
配列番号22:5' - agt cat atg tct aga tta ttt ttt cag tcc cat ggg acc gtc -3’
【0069】
PCR反応物をアガロースゲル電気泳動した結果、me−pct遺伝子に該当する1.6kbpサイズの遺伝子切片を確認した。me−pctの発現のために、PHA合成酵素と単量体供給酵素cp−pctとが共に発現されるオペロン形態の常時的発現ベクターであるpPs619C1300−CPPCT(韓国特許出願第10−2006−0116234号)を利用した。pPs619C1300−CPPCTベクターをSbfI/NdeIで切断し、既存cp−pct遺伝子を除去した後、上記で得られたme−pct遺伝子をSbfI/NdeI認識部位に挿入することによって、pPs619C1300−MEPCT組換えベクターを製造した(図2参照)。SbfI/NdeI認識部位をそれぞれ両端に一つのみ含みながら、開始コドン前にRBS領域が含まれたme−pct遺伝子切片を作るために、上記作製したme−pct遺伝子PCR反応物を鋳型とし、配列番号22と配列番号23の塩基配列を有するプライマーを利用してPCRを遂行した。
配列番号23:5' - agg cct gca ggc gga taa caa ttt cac aca gga aac aga att cat gag aaa agt ag -3’
【0070】
上記作製したpPs619C1300−MEPCT組換えベクターのme−pct塩基配列は、シークエンシングを通して確認しており、これは既存WO02/42418A2に報告された塩基配列と一致した。me−pctの正常な発現を確認するために、pPs619C1300−MEPCT組換えベクターをE.coli JM109に導入し、これを3HBが含まれたPHB検出培地(LB agar、グルコース20g/L、3HB2g/L、ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、PHB生成を確認することができた。即ち、培地内に含まれた3HBをme−pctが3HB−CoAに転換され、これをphaC1Ps6−19300合成酵素が重合して細胞内にPHBを蓄積したものである。
【0071】
[実施例2及び比較例:メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼを用いたPLA共重合体製造]
実施例1で作製されたme−pctの活性を定量的に分析するために、組換え発現ベクターpPs619C1300−MEPCT(図2参照)で形質転換されたE.coli JM109とpPs619C1300−CPPCTで形質転換されたE.coli JM109をブドウ糖(20g/L)と3HB(2g/L)が含まれたLB培地で、37℃で、4日間フラスコ培養した。培養菌体を遠心分離して回収し、100℃の乾燥器で24時間乾燥した後、気体クロマトグラフィー分析を通して細胞内の合成された高分子含量を測定した。その結果を表3に示した。
【0072】
【表3】

【0073】
気体クロマトグラフィー分析結果、本発明で製造したme−pctが含まれた組換え発現ベクターは、野生型cp−pct含有ベクターであるpPs619C1300−CPPCTベクターに比べて、PLA共重合体合成能が3倍程度優れており、PLAのモル含量は類似していることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メガスフェラ・エルスデニ(Megasphaera elsdenii)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(me-pct)とラクチル−CoAを基質として用いるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)合成酵素の遺伝子とを同時に有し、ポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する組換え微生物。
【請求項2】
PHA合成酵素遺伝子を有しない微生物をメガスフェラ・エルスデニ(Megasphaera elsdenii)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子とラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子で形質転換して得られるものであるポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
上記PHA合成酵素遺伝子を有しない微生物は、大腸菌であるポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する請求項2に記載の組換え微生物。
【請求項4】
上記ラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子は、phaC1Ps6−19であるポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項5】
me−pctを含む組換えベクターで形質転換され、同時にphaC1Ps6−19を含むベクターで形質転換されるか、又はphaC1Ps6−19が染色体上に挿入されているポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する請求項4に記載の組換え微生物。
【請求項6】
PHA合成酵素遺伝子を有する微生物をメガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子で形質転換して得られるポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項7】
上記PHA合成酵素の遺伝子は、phaC1Ps6−19であるポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体生成能を有する請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項8】
上記PHA合成酵素遺伝子を有する微生物は大腸菌なものであるポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート-ラクテート共重合体生成能を有する請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組換え微生物をグルコース、ラクテート及びヒドロキシアルカノエートからなる群から選択される1種以上の炭素源を含有する培地で培養した後、上記培養された微生物からポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を回収することを特徴とするポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体[poly(hydroxyalkanoateco-lactate)]の製造方法。
【請求項10】
上記ヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を構成するヒドロキシアルカノエートは、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレラート、4−ヒドロキシブチレート、炭素数が6〜14の中鎖長の(D)−3−ヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、4−ヒドロキシバレリアン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシデカン酸、5−ヒドロキシバレリアン酸、5−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシ−4−ペンテン酸、3−ヒドロキシ−4−trans−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−4−cis−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−5−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−6−trans−オクテン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−オクテン酸、3−ヒドロキシ−7−オクテン酸、3−ヒドロキシ−8−ノネン酸、3−ヒドロキシ−9−デセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−7−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−5,8−cis−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルバレリアン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−8−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−9−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−7−メチル−6−オクテン酸、リンゴ酸、3−ヒドロキシコハク酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアジピン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアゼライン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシピメリン酸−プロピルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−ベンジルエステル、3−ヒドロキシ−8−アセトキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−9−アセトキシノナン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシ酪酸、フェノキシ−3−ヒドロキシバレリアン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシヘプタン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシオクタン酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシ酪酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシバレリアン酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、para−ニトロフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリアン酸、3−ヒドロキシ−5−シクロヘキシル酪酸、3,12−ジヒドロキシドデカン酸、3,8−ジヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4,5−エポキシデカン酸、3−ヒドロキシ−6,7−エポキシドデカン酸、3−ヒドロキシ−8,9−エポキシ−5,6−cis−テトラデカン酸、7−シアノ−3−ヒドロキシヘプタン酸、9−シアノ−3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシ−7−フルオロヘプタン酸、3−ヒドロキシ−9−フルオロノナン酸、3−ヒドロキシ−6−クロロヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−クロロオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−ブロモヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸、3−ヒドロキシ−11−ブロモウンデカン酸、3−ヒドロキシ−2−ブテン酸、6−ヒドロキシ−3−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、3−ヒドロキシ−2−メチルバレリアン酸、及び3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−5−ヘプテン酸からなる群から選択される1以上である請求項9に記載のポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体の製造方法。
【請求項11】
上記ヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体は、ポリ(4−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシプロピオネート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−4−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシプロピオネート−co−4−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)、ポリ(MCL3−ヒドロキシアルカノエート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−MCL3−ヒドロキシアルカノエート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバレーレート−co−ラクテート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシプロピオネート−co−ラクテート)、及びポリ(3−ヒドロキシプロピオネート−co−ラクテート)からなる群から選択される請求項9に記載のポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体の製造方法。
【請求項12】
メガスフェラ・エルスデニ由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(me-pct)とラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子を含むポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体製造用組換えベクター。
【請求項13】
上記ラクチル−CoAを基質として用いるPHA合成酵素の遺伝子はphaC1Ps6−19である請求項12に記載のポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体製造用組換えベクター。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−525835(P2010−525835A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507342(P2010−507342)
【出願日】平成20年12月30日(2008.12.30)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007790
【国際公開番号】WO2009/091141
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】