説明

ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法

【課題】ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いた型内発泡成形によって熱融着性、外観及び機械的強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法は、チャンバーを備えた雌雄型1、2を型締めして形成されるキャビティ内にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填した後、上記雌雄型のチャンバー11、21内に水蒸気及び60〜100℃の温水を供給し、上記水蒸気と上記温水とを接触させることによって霧状の水滴を発生させ、この霧状の水滴によって上記キャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸系樹脂は、天然に存在する乳酸を重合されて得られた樹脂であり、自然界に存在する微生物によって分解可能な生分解性樹脂であると共に、常温での機械的特性についても優れていることから注目を集めている。
【0003】
ポリ乳酸系樹脂は、一般に、D−乳酸及び/又はL−乳酸を重合させるか、或いは、L−ラクチド、D−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって製造されている。
【0004】
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法としては、型内発泡成形が提案されている。上記型内発泡成形とは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を金型内に充填し、熱水や水蒸気などの熱媒体によってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して発泡させ、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡圧によって発泡粒子同士を融着一体化させて所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法である。
【0005】
特許文献1には、ポリ乳酸系樹脂を主成分とする樹脂から形成された発泡粒子を型内に5〜70%の圧縮率となるように充填した後に加熱媒体により該発泡粒子を加熱し、融着させるポリ乳酸発泡粒子成形体の製造方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂は、そのガラス転移温度がポリスチレン系樹脂に比して極めて低く、約50℃程度であることから、100℃を超える高圧の水蒸気を金型内に供給してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱すると、ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度と水蒸気との温度差が大きいために、得られる発泡成形体に収縮が生じ、或いは、発泡成形体の表面性が低下するなどの問題を生じる。更に、発泡成形体を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化が急激に進み、発泡粒子同士の熱融着性が低下し、発泡成形体を構成している発泡粒子同士の熱融着性が悪く、機械的強度の低い発泡成形体しか得られないといった問題点を有している。
【0007】
又、特許文献2には、脂肪族ポリエステル、分散剤及び発泡剤を所定割合で含有し、脂肪族ポリエステルの結晶化度が20%以下であり、所定温度で加熱したときに発泡する機能を有する発泡性粒子が開示されている。そして、発泡性粒子の加熱方法として、段落番号〔0038〕には、加熱された窒素、水蒸気、炭酸ガスなどの不活性ガスを吹き込むことが記載されている。
【0008】
しかしながら、水蒸気などの気体は比熱が小さいことから、金型内に供給する際にあたっては水蒸気の温度を高い温度に設定せざるを得ず、その結果、上述したように、得られる発泡成形体に収縮が生じ、或いは、発泡成形体の表面性が低下するなどの問題や、発泡成形体を構成している発泡粒子同士の熱融着性が悪く、機械的強度の低い発泡成形体しか得られないといった問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−64213号公報
【特許文献2】特開2007−291293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いた型内発泡成形によって熱融着性、外観及び機械的強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法は、チャンバーを備えた雌雄型を型締めして形成されるキャビティ内にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填した後、上記雌雄型のチャンバー内に水蒸気及び60〜100℃の温水を供給し、上記水蒸気と上記温水とを接触させることによって霧状の水滴を発生させ、この霧状の水滴によって上記キャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造することを特徴とする。
【0012】
又、上記ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法において、雌雄型のチャンバー内に配設した温水供給管から温水を噴射させると共に、この噴出した温水に水蒸気を接触させていることを特徴とする。
【0013】
更に、上記ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法において、雌雄型間に形成されるキャビティを構成する壁部と、温水を噴射させる温水供給管との間に形成された空間部に水蒸気供給管を配設し、この水蒸気供給管から水蒸気を噴出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法は、上述のように、雌雄型のチャンバー内に水蒸気及び60〜100℃の温水を供給し、温水と水蒸気とを衝突させることによって生じる微細な霧状の水滴をチャンバー内に充満させることによって雌雄型を全体的に均一に加熱すると共に、微細な霧状の水滴をキャビティ内に円滑に進入させてキャビティ内に充填しているポリ乳酸系樹脂発泡粒子を全体的に均一に加熱し発泡させるものである。
【0015】
よって、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法によれば、雌雄型間に形成されたキャビティ内に充填されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させて均一に且つ強固に熱融着一体化させることができ、機械的強度及び外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0016】
又、ポリ乳酸系樹脂は、そのガラス転移温度が低い樹脂であるが、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法では、水蒸気を直接、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に接触させるのではなく、水蒸気を温水と接触させて霧状の水滴とした上でポリ乳酸系樹脂発泡粒子に接触させているので、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化を急激に進めることなく互いに強固に熱融着一体化させることができ、更に、比熱の高い温水で加熱しているのでポリ乳酸系樹脂の結晶化度を充分に高めることができ、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた機械的強度及び外観を有していると共に、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体に収縮が生じることはない。
【0017】
そして、上記ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法において、雌雄型のチャンバー内に配設した温水供給管から温水を噴射させると共に、この噴出した温水に水蒸気を接触させている場合には、温水供給管から噴出させている温水の流れによってチャンバー内にキャビティ方向に流れる空気の流れが生じ、水蒸気と温水との衝突によって生じた霧状の水滴が空気の流れによってキャビティ方向に円滑に誘導され、よって、霧状の水滴をキャビティ内に円滑に誘導してキャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を円滑に加熱、発泡させることができる。
【0018】
又、上記ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法にて、雌雄型間に形成されるキャビティを構成する壁部と、温水を噴射させる温水供給管との間に形成された空間部に水蒸気供給管を配設し、この水蒸気供給管から水蒸気を噴出させる場合には、チャンバー内に供給した水蒸気を温水に更に確実に衝突させることができると共に、水蒸気と温水とが衝突して生じた霧状の水滴を温水の流れにより生じる空気の流れによってキャビティ方向により確実に誘導してキャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子をより均一に加熱し発泡させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いた型内発泡成形を行うための成形装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法について説明する。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を成形するための成形装置Aについて説明する。
【0021】
図1中、1は雌型であり、2は雄型である。雌雄型1、2を型締めすることによって雌雄型1、2間にキャビティが形成されるように構成されている。そして、雌雄型1、2のそれぞれにはチャンバー11、21が一体的に設けられている。
【0022】
一方、3は、雌雄型1、2のチャンバー11、21に供給する温水を製造するための温水槽である。この温水槽3には図示しないヒーターなどの加熱手段や、サーモスタットなどの温度検知手段が付帯されており、温度検知手段によって加熱手段を制御して温水槽3内の温水が所定温度に加熱、維持されている。そして、温水槽3には温水供給管4の一端が連結、連通されていると共に、温水供給管4の他端部を二股状に分岐して分岐管41、42に形成し、これらの分岐管41、42のそれぞれの他端部を雌雄型1、2のチャンバー11、21内に挿入、配設している。
【0023】
そして、雌雄型1、2のチャンバー11、21内において、温水供給管4の分岐管41、42はバックプレート12、22の内面に沿って配設されていると共に、温水供給管4の分岐管41、42には多数の水噴出孔41a、42a・・・が所定間隔毎に穿設されており、この水噴出孔41a、42a・・・を通じて雌雄型1、2間に形成されたキャビティに向かって温水を噴出するように構成されている。
【0024】
なお、温水供給管4中には、温水槽3中の温水を雌雄型1、2のチャンバー11、21に供給するためのポンプP1が介在されていると共に、温水供給管4の分岐管41、42の他端部には雌雄型1、2のチャンバー11、21外において開閉弁41b、42bが介在されている。
【0025】
更に、温水供給管4には三方弁4aを介して雌雄型1、2を冷却するための冷却水供給管5が連結、連通されており、冷却水供給管5中には冷却水を雌雄型1、2のチャンバー11、21内に供給するためのポンプP2が介在されている。
【0026】
又、水蒸気を供給するための水蒸気供給管6はその一端部が二股状に分岐されて分岐管61、62に形成されており、これらの分岐管61、62のそれぞれの一端部が雌雄型1、2のチャンバー11、21内に挿入、配設されている。そして、雌雄型1、2のチャンバー11、21内において、水蒸気供給管6の分岐管61、62は、温水供給管4の分岐管41、42と、雌雄型1、2のキャビティを形成している壁部13、23との間の空間部に配設されていると共に、水蒸気供給管6の分岐管61、62には、多数の水蒸気噴出孔61a、62a・・・が所定間隔毎に穿設されており、この水蒸気噴出孔61a、62a・・・を通じて雌雄型1、2間に形成されたキャビティに向かって水蒸気を噴出するように構成されている。なお、水蒸気供給管6の他端部は、蒸気ボイラーなどの水蒸気発生源Sに接続されている。又、分岐管61、62の一端部には雌雄型1、2のチャンバー11、21外において開閉弁61b、62bが介在されている。
【0027】
そして、雌雄型1、2のチャンバー11、21内には、チャンバー11、21内において生じた排水を排除するための排水管7が連結、連通されている。
【0028】
具体的には、排水管7の一端部は二股状に分岐して分岐管71、72に形成されており、これらの分岐管71、72の一端部がそれぞれ、雌雄型1、2のチャンバー11、21内に連結、連通されている。そして、各分岐管71、72には雌雄型1、2のチャンバー11、21外において開閉弁71a、72aが介在されている。
【0029】
更に、排水管7の他端は温水槽3内に連結、連通されており、雌雄型1、2のチャンバー11、21内で生じた排水を温水槽3に還流させて再利用することができるように構成されている。
【0030】
又、雌雄型1、2のキャビティを形成している壁部13、23には、チャンバー11、21内と、雌雄型1、2間に形成されたキャビティとを連通させるための貫通孔13a、23aが多数、形成されており、この貫通孔13a、23aを通じて、雌雄型1、2のチャンバー11、21内に供給された温水と水蒸気との接触によって形成された霧状の水滴をキャビティ内に供給して、キャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱、発泡させることができるように構成されている。
【0031】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法で用いられるポリ乳酸系樹脂発泡粒子について説明する。本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、一般に市販されているポリ乳酸系樹脂を用いることができ、具体的には、D−乳酸及びL−乳酸をモノマーとして共重合させるか、D−乳酸又はL−乳酸の何れか一方をモノマーとして重合させるか、或いは、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって得ることができ、何れのポリ乳酸系樹脂であってもよい。
【0032】
そして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法としては、汎用の方法を用いることができ、例えば、ポリ乳酸系樹脂及び発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたノズル金型から押出発泡させ、ノズル金型から押出された直後の押出発泡体を連続的に回転刃によって切断した後に直ちに冷却するポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法が挙げられる。
【0033】
発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び成形装置Aを用いて型内発泡成形を行う要領について説明する。先ず、雌雄型1、2を型締めして雌雄型1、2間にキャビティを形成し、このキャビティ内にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填する。
【0035】
次に、温水供給管4の分岐管41、42に介在させた開閉弁41b、42bを開放状態とすると共に、温水供給管4に介在させた三方弁4aを制御して温水槽3と雌雄型1、2のチャンバー11、21内とが連通した状態とする一方、冷却水供給管5と雌雄型1、2のチャンバー11、21内とは切断された状態とする。更に、水蒸気供給管6の分岐管61、62に介在させている開閉弁61b、62b、及び、排水管7の分岐管71、72に介在させた開閉弁71a、72aを開放状態とする。
【0036】
しかる後、ポンプP1を駆動させて温水槽3内の温水を温水供給管4を通じて雌雄型1、2のチャンバー11、21内に供給し、温水供給管4の分岐管41、42の水噴出孔41a、42aから60〜100℃の温水をキャビティに向かって噴射させる。
【0037】
これと同時に、水蒸気発生源Sから水蒸気供給管6を通じて雌雄型1、2のチャンバー11、21内に供給し、水蒸気供給管6の分岐管61、62の水蒸気噴出孔61a、61aから、好ましくは101〜125℃の水蒸気を、好ましくはゲージ圧力0.01〜0.14MPaでもってキャビティに向かって噴出させる。
【0038】
すると、水蒸気供給管6の分岐管61、62の水蒸気噴出孔61a、62aから噴出させた水蒸気は、その後方(バックプレート12、22側)から温水供給管4の分岐管41、42の水噴出孔41a、42aから噴出された温水と衝突する。
【0039】
この温水と水蒸気との衝突によって霧状の微細な水滴が発生し、霧状の水滴は、雌雄型1、2のチャンバー11、21内に充満する。この充満した霧状の水滴によって雌雄型1、2のキャビティを形成している壁部13、23が全面的に均一に加熱される。更に、霧状の水滴は微細であるから、雌雄型1、2の壁部13、23に形成された貫通孔13a、23aを通じてキャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子間に円滑に進入してキャビティ内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子を全体的に均一に加熱する。なお、霧状とは「無数の微細な水滴が空気中に浮遊して煙のように見える状態」をいう。
【0040】
従って、雌雄型1、2のキャビティ内に充填されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は全体的に短時間のうちに均一に加熱されて発泡し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士は互いの発泡圧力によって強固に一体化して機械的強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0041】
しかも、雌雄型1、2のチャンバー11、21内に充満している霧状の水滴は、水蒸気が60〜100℃の温水と衝突して形成されたものであるから、100℃以下の適度な温度を有している。
【0042】
そして、雌雄型1、2のチャンバー11、21内には100℃以下の霧状の水滴が充満しており、この霧状の水滴が、水蒸気供給管6の分岐管61、62の水蒸気噴出孔61a、62aから噴射された水蒸気と衝突し、この衝突でも100℃以下の適度な温度を有する微細な霧状の水滴が発生する。
【0043】
従って、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に直接、高温の水蒸気が接触することは殆どなく、適度な温度を有する霧状の水滴が、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を急激に促進させることなく、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して発泡させ、更に、比熱の高い温水で加熱しているのでポリ乳酸系樹脂の結晶化度を充分に高めることができ、機械的強度及び外観の優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0044】
このようにしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させた後、水蒸気供給管6の分岐管61、62の開閉弁61b、62bを閉止状態とすると共に、温水供給管4に介在させている三方弁4aを制御して、冷却水供給管5と雌雄型1、2のチャンバー11、21内とが連通した状態とする。この状態においては、温水槽3と、雌雄型1、2のチャンバー11、21内とは切断されている。
【0045】
しかる後、ポンプP2を駆動させて冷却水を冷却水供給管5並びに温水供給管4及びその分岐管41、42を通じて雌雄型1、2のチャンバー11、21内に供給し、温水供給管4の分岐管41、42の水噴出孔41a、42aから冷却水をキャビティに向かって噴射して雌雄型1、2間に形成されたキャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却し、しかる後、雌雄型1、2を型開きしてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0046】
なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡工程及びポリ乳酸系樹脂発泡成形体の冷却工程において雌雄型1、2のチャンバー11、21内において生じた排水は、図示しないポンプを駆動させて排水管7を通じて温水槽3内に還流させて再利用される。
【0047】
上記では、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡工程及びポリ乳酸系樹脂発泡成形体の冷却工程において、排水管7の分岐管71、72に介在させた開閉弁71a、72aを常時開放した状態としたが、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の冷却工程中において開閉弁71a、72aを閉止し、雌雄型1、2のチャンバー11、21内に冷却水を溜めてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却水中に浸漬させた状態としてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却してもよい。
【0048】
そして、雌雄型1、2を再度、型締めし、雌雄型1、2間に形成されたキャビティ内にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填して上記と同様の要領でポリ乳酸系樹脂発泡成形体を繰返し製造すればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 雌型
11 チャンバー
12 バックプレート
13 壁部
13a 貫通孔
2 雄型
21 チャンバー
22 バックプレート
23 壁部
23a 貫通孔
3 温水槽
4 温水供給管
41 分岐管
41a 水噴出孔
41b 開閉弁
4a 三方弁
5 冷却水供給管
6 水蒸気供給管
61 分岐管
61a 水蒸気噴出孔
61b 開閉弁
7 排水管
71 分岐管
71a 開閉弁
A 成形装置
1 ポンプ
2 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーを備えた雌雄型を型締めして形成されるキャビティ内にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填した後、上記雌雄型のチャンバー内に水蒸気及び
60〜100℃の温水を供給し、上記水蒸気と上記温水とを接触させることによって霧状の水滴を発生させ、この霧状の水滴によって上記キャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
雌雄型のチャンバー内に配設した温水供給管から温水を噴射させると共に、この噴出した温水に水蒸気を接触させていることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
雌雄型のチャンバーにおいて、雌雄型間に形成されるキャビティを構成する壁部と、温水を噴射させる温水供給管との間に形成された空間部に水蒸気供給管を配設し、この水蒸気供給管から水蒸気を噴出させることを特徴とする請求項2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−208091(P2010−208091A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55380(P2009−55380)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】