説明

ポリ(2−オクタデシル−ブタン二酸)および対応の塩の使用方法

ポリマー骨格を含むポリマーに関する。ポリマー骨格は複数の炭素原子を有する。骨格の別個の炭素原子へ結合されている、繰り返し単位当たり2つの疎油性カルボキシレート基またはカルボン酸基が存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年11月30日に出願された米国出願第11/998,612号の一部継続出願であり、これは、図、表、核酸配列、アミノ酸配列、または図面を含む、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、ポリ(2-オクタデシルブタン二酸)ならびにその塩およびエステルに関し、より特には、ポリカーボネート有機ポリマーとしてのポリ(2-オクタデシルブタンジオエート)およびポリ(2-オクタデシルブタン二酸)の使用に関する。本出願は、今まで開示も教示もされていない様式での本明細書に記載の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術の説明
有機ポリマー(プラスチック)は、特徴として冷却で脆くなり加熱で軟らかくなるアモルファス固体である。この構造転移が起こる温度は、ガラス転移温度として公知である。より具体的には、IUPAC Compendium of Chemical Terminologyは、過冷却された融解物が、冷却時の結晶性物質のものと同様の性質を有するガラス状構造を与える、擬似二次相転移として、ガラス転移温度を定義している(IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 66, 83 (1997))。この温度を超えると、これらの材料は、ポリマー鎖間の二次的な非共有結合が弱まることに起因して、軟化し、折れることなく変形が可能となる。この特徴は、熱可塑性物質として公知の一部のプラスチック材料の有用性を高める。当業者は、ポリマーについての転移温度は、可塑剤の添加、他のポリマー物質、冷却比、およびその分子量分布によって影響され得ることを知っている。ポリカーボネートについての平均ガラス転移温度は、145℃であることが報告されている(Engineered Materials Handbook - Desk edition (1995) ASM International, ISBN 0871702835. p.369)。
【0004】
ポリカーボネートを含む、多くのポリマーは、射出、押出、および押出/射出ブロー成形を含むいくつかの成形プロセスのために使用され得る。射出成形において、これらの熱可塑性物質は、加熱され、次いで鋳型へプレスされ、様々な形状のプラスチックが形成される。押出成形において、ポリマーは、液体へ融解され、型を通って押し進められ、型の形状を有するプラスチックの長い連続的な断片が形成される。押出成形された材料が冷えると、それは、所望の形状の固体を形成する。ブロー成形は、中空のプラスチック部品が射出または押出のいずれかによって形成されるプロセスである。当業者は、最適なポリマー融解温度、型および鋳型温度、ならびにアニーリング条件は、各々のプラスチック材料および鋳型/型構造について実験的に決定されなければならないことを知っている。
【0005】
ポリカーボネート樹脂は、非常に高い視覚的透明度ならびに例外的に高いレベルの衝撃強度および延性を有する、頑丈な熱可塑性物質である。ポリカーボネート樹脂、または「ポリカーボネート」はまた、固有の耐火性、UV光に対する比較的良好な耐性、有機酸および無機酸の水溶液に対する良好な耐性、ならびに塩および酸化剤に対する良好な耐性を有するが、有機溶媒に対して限られた耐性しか提供しない。ポリカーボネートの典型的な特性としては、例外的な機械加工性(machine ability)、低吸水性、良好な耐衝撃性、非毒性フォーミュレーション、良好な熱的性質、優れた寸法安定性、耐熱性、および厚さ最大2"の透明性が挙げられる。
【0006】
現在、ポリカーボネート樹脂についての主要な市場としては、電気/電子分野、例えば、コンピュータおよび事務機器および光ディスク、シートおよびグレージング製品、ならびに自動車産業が挙げられる。他の製品としては、安全帽、安全シールド、住宅部材、家電製品、スポーツ用品、ならびに航空機およびミサイル部品が挙げられる。具体的な製品用途としては、ドア、設備の囲い、温室、高電圧スイッチ、高温ウィンドウ、計器カバー、自動車計器盤、ライトベゼル、ポンプおよびバルブ、コネクター、ギア、機械内部部品、リレー、ローラー、レンズ、サイトグラス、ライトシールド、機械ガード、パティオルーフ、写真レンズカバー、安全装置の金属コンポーネントの代替品、ガード、ヘルメット、シールド、ネオンサイン、ソーラロッド、断熱材、温度計ハウジング、およびウィンドウグレージングが挙げられる。ポリカーボネートはまた、医療機器、医療用インプラント、およびチューブにおける使用について、米国食品薬品局からの認可を受けた。
【0007】
ポリカーボネートは、広く使用される一方、特定の場合において制限される。前述したように、ポリカーボネートは、水、希薄有機酸および無機酸、中性塩および酸性塩、ならびに脂肪族および環式炭化水素に対して一般に良好な耐性(室温で)を示す。ポリカーボネートは、アルカリ(alkaline)、アミン、ケトン、エステル、および芳香族炭化水素からの攻撃には耐えない。
【0008】
いくつかの米国の小売業者は、ポリカーボネートの成分である、少量のビスフェノール-A(BPA)が経時的にポリマーから放出され得るという懸念に起因して、ポリカーボネート食品および飲料容器を棚から除去し始めた。米国政府の国家毒性プログラムは、少量のBPAが人において健康問題および生殖欠陥を引き起こし得るという限られた証拠が存在することを示した。
【0009】
ポリカーボネートは、一般的に、2つの主要なカテゴリー:芳香族および脂肪族に分類され得る。芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジオールとホスゲンガス(COCl2)との反応によって製造される。(図3;Howdeshell, K.L., et. al. "Bisphenol A is Released from Used Polycarbonate Animal Cages into Water at Room Temperature." Environ. Health Perspect. 111(9):1180-1187 (2003)を参照のこと)。ビスフェノール-Aは芳香族ジオールとして典型的に使用され、そのポリマーからの放出に関連する健康上の懸念の問題がある。ビスフェノール-Aの原因が、不完全な重合、または加熱および/もしくは酸性もしくは塩基性物質との接触によって誘発されるポリマーの加水分解に起因するモノマーの浸出によるかどうかは、現在、不明である。
【0010】
脂肪族ポリカーボネートは、医療用インプラントおよび薬物送達担体などの、生物医学的用途のための生物再吸収性材料として頻繁に使用されている(Raigorodskii, I.M., et.al. Soedin., Ser. A. 37(3):445(1995);Acemoglu, M. PCT Int. Appl., WO 9320126 (1993);Katz, A.R., et. al., Surg. Gynecol. Obstet. 161:312 (1985);Rodeheaver G.T., et.al., Am. J. Surg. 154:544 (1987);Kawaguchi, T., et. al., Chem. Pharm. Bull. 31, 1400:4157 (1983);Kojima, T., et. al., Chem. Pharm. Bull. 32:2795 (1984)を参照のこと)。これらの材料は、一般的に、良好な生体適合性、低毒性および生物分解性を示す(Zhu, K.J., et.al., Macromolecules. 24:1736 (1991))。ポリアルキレンカーボネートは、脂肪族ジオールとホスゲンとの反応(Schnell, H. Chemistry and Physics of Polycarbonates, Wiley, New York, 1964, p 9)、有機金属触媒の存在下でのエポキシドと二酸化炭素との共重合(Inoue, S., Koinuma, H., Tsuruta, T. Makromol. Chem. 120:210 (1969))、環状カーボネートモノマーの開環重合(Hocker. H. Macromol. Rep., A31 (Suppls. 6&7), 685 (1994))、脂肪族ジオールと炭酸ジアルキルとのカーボネート交換反応(Pokharkar, V., Sivaram, S. Polymer. 36:4851 (1995))、およびジオールとCO2またはアルカリ金属炭酸塩との直接縮合(Soga, K. et. al., Makromol. Chem. 178:2747 (1977);Rokicki, G., et.al., J. Polym. Sci., Polym. Chem. Ed., 20:967 (1982);Rokicki, G., et. al., Polym. J. 14:839 (1982);Chen. X., et. al., Macromolecules, 30:3470-3476 (1997)を参照のこと)によって合成されてきた。
【発明の概要】
【0011】
骨格へ直接結合されたカルボキシレート基を含有する炭素含有骨格からなる、新規のポリカーボネート、ポリ(2-オクタデシルブタンジオエート)、およびその関連する誘導体を、本明細書を記載する。この構造は、既存のポリカーボネートと全く対照的であり、何故ならば、既存のポリカーボネートは全て、モノマー単位間のエステル結合を特徴とするためである。従って、芳香族ポリカーボネートおよび脂肪族ポリカーボネートの両方の「カーボネート」部分は、ポリマーの直鎖または骨格中に存在する。このカーボネート結合は、ポリ(2-オクタデシルブタンジオエート)の骨格からは除去されている。
【0012】
要約すると、このポリマーの特徴は、文献によって予想されず、従って、記載の様式でのポリカーボネート有機ポリマーとしてのポリマーの使用は、予想外であり、ポリマーについての新規かつ予想外の使用に等しい。このポリマーは経験的に示される様式で機能しないことを教示する文献に反して、本明細書に記載されるポリマーは、新規の予想外の様式で機能し、従って、ポリカーボネートについての新規の使用を含むことが実証された。
【0013】
先行技術において開示されたこれらの化合物は、それらのそれぞれの特定の目的および要件を満たすが、先行技術は、ポリカーボネート有機ポリマーの新規かつ有用な改善、ならびにポリカーボネート樹脂としてのこれらの化合物の使用を可能にするポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を記載していない。
【0014】
この点において、本発明に従う、ポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法は、先行技術に記載の従来の概念および化合物から実質的に逸脱しており、そうすることで、これらの化合物をポリカーボネート樹脂として提供するという目的で主に開発された化合物を提供する。
【0015】
従って、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリカーボネート樹脂として使用できるポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法の必要性が存続していることが理解される。この点において、本発明は、この必要性を実質的に満たしている。
【0016】
ポリ無水物PA-18または当業者に明らかであるような他の作製手段から作製される、ポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)ならびにその塩およびエステルは、新規のポリカーボネート樹脂特徴を有する。必須の特徴/利点を下記に要約する。
【0017】
新規のポリカーボネートである、ポリ(2-オクタデシルブタンジオエート)およびその関連の誘導体は、特有の性質を有する。既存のポリカーボネートの性質に加えて、これらの化合物は、有機溶媒に対する予想外の増加した耐性、予想外の増加した衝撃強度、および予想外の増加した光学的透明度を有する。さらに、これらのポリカーボネートは、生物分解性であり、繊維へ押出成形され得、射出成形され得る。
【0018】
本明細書に記載されるポリマーは、有利であるいくつかの可能性のある用途を有する。これらとしては、ポリカーボネートの全ての既存の用途、耐水性および耐薬品性ファブリック(屋外用ファブリック、病院用シート、化学安全服)、耐薬品性家具、備品、および容器、ならびにBPAを含有しない食品および飲料容器が挙げられる。
【0019】
先行技術において現在存在する公知のタイプのポリカーボネート樹脂に固有の前述の欠点を考慮して、本発明は、改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供する。従って、続いてより詳細に記載される、本発明の一般的な目的は、先行技術の利点の全てを有し、かつ欠点を全く有さない、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供することである。
【0020】
これを達成するために、本発明は、ポリマー骨格を含むポリカーボネート樹脂を本質的に含む。骨格は、水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー構造である。ポリマー骨格に直接結合している、繰り返し単位当たり2つのカルボン酸ナトリウム基またはカルボン酸基が存在する。
【0021】
下記のその詳細な説明がよりよく理解され得るために、また当技術分野への本貢献がよりよく認識され得るために、本発明のより重要な特徴を、むしろ広く、このように概説した。当然のことながら、本明細書以下に記載され、添付の特許請求の範囲の事項を形成する、本発明のさらなる特徴が存在する。
【0022】
この点において、本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明は、下記の説明に記載されるかまたは図面に示される構成要素のアレンジメントへおよびフォーミュレーションの詳細へその適用が限定されないことが、理解されるべきである。本発明は、他の態様が可能であり、種々の様式で実施および実行され得る。また、本明細書において用いられる語法および用語は、説明のためであり、限定するものとしてみなさるべきではないことが理解されるべきである。
【0023】
従って、当業者は、本開示が基づく概念は、本発明のいくつかの目的を行うための他のフォーミュレーションおよび方法の設計のための基礎として容易に利用され得ることを認識する。従って、特許請求の範囲は、それらが本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、このような等価のフォーミュレーションを含むと見なされることが重要である。
【0024】
従って、本発明の目的は、先行技術のポリカーボネート樹脂の利点の全てを有し、かつ欠点を全く有さない、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、容易にかつ効率的に製造および市販され得る、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、容易に再現される、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供することである。
【0027】
本発明のなおさらなる目的は、材料および労働の両方に関して低コストの製造が可能であり、従って次に、一般消費者への低価格の販売が可能である、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供することであり、それによって、このような改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法が一般購買者に経済的に利用可能となる。
【0028】
本発明のなおさらに別の目的は、射出および/または押出成形プラスチックの製造のためのポリカーボネート樹脂の使用のための、改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供することである。
【0029】
最後に、本発明の目的は、繊維へ押出成形され得る、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマー、ならびにポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)およびその塩およびエステルの使用方法を提供することである。
【0030】
これらは、本発明の他の目的と一緒に、本発明を特徴付ける新規性の種々の特徴と共に、特に、添付され本開示の一部を形成する特許請求の範囲において指摘される。本発明、その実施上の利点およびその使用によって達成される具体的な目的のよりよい理解のために、本発明の好ましい態様が例示される添付の図面および説明事項が参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、関連する構造および式を示す、化合物、ポリ(2-オクタデシル-ブタン二酸)の図面である。図1は、化合物の第1配置であり、2つの可能性のあるカルボン酸環境を図示している。この図において、R1、R3、およびR5は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を示す。カルボン酸基の不安定水素原子は、一価、二価、三価、四価、または他の価数のカチオンで置き換えられて、対応のカルボン酸塩が形成され得る。さらに、これらのカルボン酸基は、エステル化され、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールエステル誘導体を形成し得る。当然ながら、nは、任意の整数であり得る。
【図2】図2は、2-オクタデシル-ブタン二酸アナログの代替合成を示す。図2は、化合物の第2配置である。この図において、R'、R''、およびR'''は、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール基を示す。さらに、カルボン酸のR基は、水素(対応のカルボン酸を形成する)、一価、二価、三価、四価、または他の価数のカチオン(対応のカルボン酸塩を形成する)、または置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール基(対応のエステルを形成する)を示す。
【図3】図3は、ビスフェノール-A(BPA)およびホスゲンから合成された芳香族ポリカーボネートであり、BPAの構造、ならびに括弧内のモノマー鎖単位(n)によって示されるコポリマーであるポリカーボネートおよびポリスルホンの部分構造を示している。芳香族環の硬さならびにC--O、C--S、およびC--C単結合の固有の可撓性の両方が、描かれている。ポリカーボネートはエステル結合(O--C==O--O)によって連結されており、一方、ポリスルホンはエーテル結合(C--O)を有する。三次元構造の画像については、Edge et all (1994)を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい態様の説明
ポリカーボネート樹脂としての、ポリ(2-オクタデシル-ブタンジオエート)ならびにその対応の酸および誘導体の使用を本明細書に記載する。
【0033】
前述したように、ポリカーボネート樹脂は、一般的に、非常に高い視覚的透明度ならびに例外的に高いレベルの衝撃強度および延性を有する、頑丈な熱可塑性物質である。それらはまた、固有の耐火性、UV光に対する比較的良好な耐性、有機酸および無機酸の水溶液に対する良好な耐性、ならびに塩および酸化剤に対する良好な耐性を有するが、有機溶媒に対して限られた耐性しか提供しない。典型的な特性としては、例外的な機械加工性、低吸水性、良好な耐衝撃性、非毒性フォーミュレーション、良好な熱的性質、優れた寸法安定性、耐熱性、および厚さ最大2インチの透明性が挙げられる。
【0034】
ポリカーボネートは、広く使用される一方、特定の場合および用途において制限される。前述したように、ポリカーボネートは、水、希薄有機酸および無機酸、中性塩および酸性塩、ならびに脂肪族および環式炭化水素に対して良好な耐性(室温で)を典型的に示す。ポリカーボネートは、アルカリ、アミン、ケトン、エステル、および芳香族炭化水素からの攻撃に耐えない。
【0035】
本明細書に記載のポリマーは、これらの制限を示さず、繊維を作製するために使用され得、次いでこれは、織物へ織られ得るか、または糸を作製するために紡がれ得る。織物は、衣類、または他のこのような物体、例えば、ベッドシーツを作製するために使用され得る。ポリマーはまた、固体シート、または固体物体として形成され得る。このようなシートは、容器を形成するために成形され得、またはウィンドウ代替品もしくは保護シールドにおけるようなシートとして使用され得る。ポリマーのシートは、家具用の保護表面などの、表面を形成するために使用され得る。本明細書に記載のポリカーボネートが使用され得る形態、例えば、繊維、シート、成形可能なシート、容器、および固体物体は、「構築物」と集合的に呼ばれる。従って、用語「構築物」の使用は、ポリマーのこのような形態を指す。
【0036】
骨格に直接結合したカルボキシレート基を含有する炭素含有骨格からなる、新規のポリカーボネート、ポリ(2-オクタデシル-ブタンジオエート)、およびその関連する誘導体を、本明細書を記載する。この構造は、既存のポリカーボネートと全く対照的であり、何故ならば、既存のポリカーボネートは全て、モノマー単位間のエステル結合を特徴とするためである。従って、芳香族ポリカーボネートおよび脂肪族ポリカーボネートの両方の「カーボネート」部分は、ポリマーの直鎖または「骨格」中に存在する。このカーボネート結合は、ポリ(2-オクタデシルブタンジオエート)の骨格からは除去されている。
【0037】
新規のポリカーボネートである、ポリ(2-オクタデシルブタンジオエート)およびその関連の誘導体は、特有の性質を有する。既存のポリカーボネートの性質に加えて、これらの化合物は、有機溶媒に対する増加した耐性、増加した衝撃強度、および増加した光学的透明度を有する。これらの増強された特徴は予想外である。さらに、これらのポリカーボネートは、繊維へ押出成形され得、射出成形され得る。従って、本明細書に記載のポリカーボネートは、予想外の性質および予想外の結果を使用者に示す。
【0038】
可能性のある用途としては、ポリカーボネートの全ての既存の用途、耐水性および耐薬品性ファブリック(屋外用のファブリック、病院用シート、化学安全服)の製造、耐薬品性家具、備品、および容器、ならびにBPAを含有しない食品および飲料容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
図面、特にその図2をここで参照して、本発明の原理および概念を具体化する、新規の改善されたポリカーボネート有機ポリマーならびにポリ(2-オクタデシル-ブタンジオエート、ナトリウム)の使用方法の好ましい態様を説明する。単純化して記載すると、本明細書に記載のポリマーは、カルボキシレート基またはカルボン酸基である、複数の反応基を含む。反応基は、炭素骨格へ直接結合されている。好ましい態様において、反応基は、別個の炭素原子へ結合されている。換言すれば、2つの反応基が存在する場合、各反応基は、2つの炭素原子のうちの一方へ結合されており、(2つ以上の反応基の場合は)反応基は同一の炭素原子へ結合されていない。
【0040】
合成のための初期の、または最初の成分は、一般的に入手可能な、以前に記載された成分である。最初の成分は、以下のように作製され得る:
【0041】
1.ポリカルボキシレートは、対応のポリ無水物から製造される。ポリ無水物は、"Process of forming copolymers of maleic anhydride and an aliphatic olefin having from 16 to 18 carbon atoms"という表題の、S.M. HazenおよびW.J. Heilmanへ付与された、米国特許出願第3,560,456号に記載および開示される方法によって製造される。'456特許に記載される方法の説明は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
2.ポリカルボキシレートは、以下の手順によってポリ無水物から製造される:
10グラムのポリ無水物PA-18を200 mlの4M NaOHに溶解し、85℃で2時間撹拌する。反応混合物を冷却し、pHを6〜6.5へ調節し、真空濾過する。固体ポリマーを、冷たい分析等級メタノールで洗浄し、真空下で乾燥する。
【0043】
3.ポリカルボキシレートを製造するための他の方法がある。1つの方法は、ポリエステルを製造することである。ポリエステルのその後の加水分解によって、ポリカルボキシレートが製造される。これらの反応スキームは、有機合成またはポリマー合成の当業者に明らかである。
【0044】
図2に示される反応シーケンスにおいて、反応物および生成物の両方におけるRは、置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール基、例えば、メチルまたはエチルであり得、反応物および生成物の両方をエステルにする。他の態様において、上記の生成物は、塩基性または酸性媒体中におけるエステルの加水分解によってさらに修飾され、それぞれ、ポリカルボキシレートまたはポリカルボン酸が生成され得る。
【0045】
塩基性媒体中における加水分解の場合、水酸化ナトリウムが使用されると、ポリカルボン酸イオンのナトリウム塩が形成される(R=Na+と示される)。同様に、水酸化カリウムが使用されると、ポリカルボン酸イオンのカリウム塩が生じる(R=K+と示される)。酸触媒エステル加水分解が行われる(酸が上記第2反応において使用される)場合、ポリカルボン酸が生成される(R=Hと示される)。
【0046】
これらのポリマーにおいて、カルボキシレート基またはカルボン酸基は、0〜8個の炭素原子によって隔てられている。他の態様において、カルボキシレート基またはカルボン酸基の間の炭素原子の数は、最大20炭素原子であり得る。
【0047】
使用の説明および特許請求において、カルボキシレート基またはカルボン酸基が参照される。このような基(カルボン酸またはカルボキシレート)へ化学的に結合されている炭素原子の説明において、炭素は、「結合された」炭素原子と呼ばれる。反応基は、カルボキシレート基またはカルボン酸基以外の基を含む。用語「反応基」は、炭素原子へ結合し得る任意の反応基を含むように意図される。炭素原子へ「結合」されているような、カルボキシレート基またはカルボン酸基が参照される場合、その用語は、カルボキシレート基およびカルボン酸基のみに限定される。
【0048】
次いで、上記の説明に関して、当業者は、図面に示され本明細書に記載されたものとの等価な関係を認識し、このような等価物は、本発明によって包含されるように意図されることが、理解される。
【0049】
従って、前述のものは、本発明の原理を例示するに過ぎないと考えられる。さらに、多数の修飾物および変更物が当業者によって容易に考えられるので、表示および説明されたまさにそのフォーミュレーションおよび操作へ本発明を限定することは望ましくなく、従って、全ての適切な修飾物および等価物が再分類され得、本発明の範囲内に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭素原子を有するポリマー骨格、および
各反応基が該骨格の別個の炭素原子に結合している、少なくとも1つの反応基
を含む、図2に示すポリマー。
【請求項2】
反応基がカルボキシレート基である、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
反応基がカルボン酸基である、請求項1記載のポリマー。
【請求項4】
織物へ織るための繊維を作製するために使用される、請求項1記載のポリマー。
【請求項5】
水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー骨格であるポリマー骨格、および
少なくとも1つの疎油性カルボキシレート基
をさらに含む、請求項2記載のポリマーであって、
該少なくとも1つのカルボキシレート基が、該ポリマー骨格中の炭素原子の1つに直接結合している、
前記ポリマー。
【請求項6】
水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー骨格であるポリマー骨格、および
複数の疎油性カルボキシレート基
をさらに含む、請求項2記載のポリマーであって、
該カルボキシレート基は各々、該ポリマー骨格中の炭素原子の1つに直接結合しており、
該炭素原子は互いに隣接している該カルボキシレート基に結合している、
前記ポリマー。
【請求項7】
水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー骨格であるポリマー骨格、および
該ポリマー骨格中の炭素原子に直接結合している複数の疎油性カルボキシレート基
をさらに含む、請求項2記載のポリマーであって、
該カルボキシレート基が結合している該炭素原子の各々は、カルボキシレート基が結合していない少なくとも1つの炭素原子によって隔てられている、
前記ポリマー。
【請求項8】
水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー骨格であるポリマー骨格、および
該ポリマー骨格中の炭素原子に直接結合している疎油性カルボン酸基
をさらに含む、請求項3記載のポリマーであって、
該カルボン酸基が結合している炭素原子は互いに隣接している、
前記ポリマー。
【請求項9】
水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー骨格であるポリマー骨格、および
ポリマー骨格中の炭素原子に直接結合している疎油性カルボン酸基
をさらに含む、請求項3記載のポリマーであって、
該カルボン酸基が結合している炭素原子は、カルボン酸基が結合していない少なくとも1つの炭素原子によって隔てられている、
前記ポリマー。
【請求項10】
複数の反応基をさらに含む、請求項1記載のポリマーであって、
該反応基の各々はポリマー骨格中の個々の炭素原子に直接結合しており、該結合された炭素原子は互いに隣接している、
前記ポリマー。
【請求項11】
複数の反応基をさらに含む、請求項1記載のポリマーであって、
該反応基の各々は、ポリマー骨格中の個々の炭素原子にそれぞれ直接結合しており、該反応基が結合している各々の炭素原子は、反応基が結合していない少なくとも1つの炭素原子によって隔てられている、
前記ポリマー。
【請求項12】
骨格を構成する原子の全てが炭素原子であることをさらに含む、請求項1記載のポリマー。
【請求項13】
重合ポリカルボキシレートを製造する工程と、
重合ポリカルボキシレートを形成して繊維を作製する工程と、
繊維を使用して構築物を作製する工程と
を含む、図2に示すポリマーの使用方法。
【請求項14】
構築物が繊維である、請求項13記載のポリマーの使用方法。
【請求項15】
構築物がシートである、請求項13記載のポリマーの使用方法。
【請求項16】
重合ポリカルボキシレートの製造が、重合ポリカルボキシレートの製造をもたらすポリエステルの加水分解によって行われる、請求項13記載のポリマーの使用方法。
【請求項17】
複数の炭素原子を有するポリマー骨格、および
該骨格の別個の炭素原子に結合している複数の反応基
を含む、図2に示すポリマー。
【請求項18】
反応基がカルボキシレート基である、請求項17記載のポリマー。
【請求項19】
反応基がカルボン酸基である、請求項17記載のポリマー。
【請求項20】
水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー骨格であるポリマー骨格、および
少なくとも1つの疎油性カルボキシレート基
をさらに含む、請求項18記載のポリマーであって、
各疎油性カルボキシレート基が、該ポリマー骨格中の個々の炭素原子へ直接結合しており、該炭素原子は互いに隣接している、
前記ポリマー。
【請求項21】
水に溶けない疎水性の脂肪族ポリマー骨格であるポリマー骨格、および
少なくとも1つの疎油性カルボキシレート基
をさらに含む、請求項18記載のポリマーであって、
各疎油性カルボキシレート基が、該ポリマー骨格中の個々の炭素原子へ直接結合しており、該炭素原子は、反応基へ結合していない少なくとも1つの炭素原子によって隔てられている、
前記ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−532228(P2012−532228A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518593(P2012−518593)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/040569
【国際公開番号】WO2011/002865
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(510149334)
【Fターム(参考)】