説明

ポンプシステム

【課題】ターボ分子ポンプ各々の間の駆動状態の時間的な差異及び人的要因による設定ミスを抑制し、複数のターボ分子ポンプに対して迅速かつ正確な設定を行う。
【解決手段】複数のターボ分子ポンプ装置は、それぞれターボ分子ポンプTBと、各ターボ分子ポンプの駆動をそれぞれ制御する複数の電源装置CRとを有する。任意の1台の電源装置113は、ターボ分子ポンプ114の駆動制御のための制御情報を設定するとともに、通信ケーブル107を介して他の電源装置123,133に入力値を送信する。他の電源装置122,133は、受信した入力値をターボ分子ポンプTBの駆動制御のための制御情報として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のターボ分子ポンプを制御するターボ分子ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ターボ分子ポンプは半導体製造装置等の排気装置として用いられている。例えば、複数のターボ分子ポンプと、各ターボ分子ポンプに接続されターボ分子ポンプを駆動制御するコントローラとしての電源装置とを備え、複数の電源装置の背面の通信ポートにケーブルによって接続された1台の集中監視装置を備えたターボ分子ポンプシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−339954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今、半導体製造装置等の大型化・高効率化に伴い、複数のターボ分子ポンプを同時使用することに加え同一の設定で使用することが多くなってきている。しかしながら、複数のターボ分子ポンプを設置した状態で設定変更をしたい場合に、各電源装置への設定変更を手動で行うと、設定変更に要する時間が長くなり、その間に各ターボ分子ポンプ間の駆動状態に、使用に際しての支障となる差異が生じるおそれがある。また、複数の電源装置に設定を行うため、1台の電源装置に設定を行う場合に比べ、人的要因による設定ミスが発生する可能性が高まることも懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるターボ分子ポンプシステムは、複数のターボ分子ポンプと、各ターボ分子ポンプをそれぞれ制御する複数の制御装置と、各ターボ分子ポンプの制御に係る制御情報を入力する単一の入力手段と、入力手段より入力された制御情報を各制御装置にそれぞれ設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、単一の入力手段より入力された制御情報を各ターボ分子ポンプ制御用の制御装置にそれぞれ設定するようにしたので、複数のターボ分子ポンプに対して迅速かつ正確に制御情報を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図1〜図5を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態のターボ分子ポンプシステム100を示す全体構成図である。ターボ分子ポンプシステム100は、真空容器115,125,135内を吸引する複数(図では3台)のターボ分子ポンプ114,124,134(以下、これらをTBで総称することもある)と、各ターボ分子ポンプTBに接続された複数の電源装置113,123,133(以下、これらをCRで総称することもある)とを有する。さらにターボ分子ポンプシステム100は、複数の電源装置CRを通じて複数のターボ分子ポンプTBを監視する集中監視装置102と、通信ケーブル107とを有する。
【0008】
ここで、ターボ分子ポンプTBとそれに接続された電源装置CRとの1組が1台のターボ分子ポンプ装置を構成する。例えば、ターボ分子ポンプ114及び電源装置113がターボ分子ポンプ装置110を、ターボ分子ポンプ124及び電源装置123がターボ分子ポンプ装置120を、ターボ分子ポンプ134及び電源装置133がターボ分子ポンプ装置130をそれぞれ構成する。なお、真空容器および真空容器内を吸引するターボ分子ポンプ装置の数Nは3台に限らず、ターボ分子ポンプシステム100が使用される大型の半導体製造装置等に対応して適宜決められる。本実施の形態では、後述するようにマルチドロップ接続方式を採用しており、31台分のターボ分子ポンプ装置が接続可能であるが、以下ではN=J台として説明する。
【0009】
真空容器115,125,135は、例えば半導体製造用のCVD装置などの成膜装置やエッチング装置である。
【0010】
電源装置113,123,133は、各ターボ分子ポンプ114,124,134を駆動制御する機能を有する。これら電源装置113,123,133は、その背面部にそれぞれRS−485規格準拠のシリアル通信ポート113a,123a,133aおよび遠隔操作端子113b,123,133bを有している。各電源装置CRはID、すなわち識別番号を設定可能である。ID番号は、例えば電源装置CRに設けられているLCD液晶パネル(図3)の操作により設定される。本実施の形態においては、電源装置113,123,133からN=J台目の電源装置まで順に、ID=1,2,3,・・・,Jが設定されている。
【0011】
集中監視装置102は、RS−485規格準拠のシリアル通信ポート102aおよび遠隔操作端子102bを有する据置型のコンピュータである。集中監視装置102は、通信ケーブル107により、電源装置CRの背面部の各通信ポート113a,123a,133aと接続され、各電源装置CRからの情報に基づき各ターボ分子ポンプTBの監視を行う。遠隔操作端子102bと各遠隔操作端子113b,123b,133bとをそれぞれ接続し、集中監視装置102が各電源装置CRの運転を開始/停止することもできる。集中監視装置102は、複数のターボ分子ポンプTBについてシーケンシャルに監視を行う。
【0012】
ターボ分子ポンプシステム100の起動後は、各電源装置CRが対応する各ターボ分子ポンプTBをそれぞれ制御する。各電源装置CRは、集中監視装置102からの定期的な問い合わせに応答して、制御しているターボ分子ポンプの運転状態信号(回転速度、電流、電圧等)を集中監視装置102へ送信する。集中監視装置102は受信した各運転状態信号に基づき監視情報を表示し、オペレータは各ターボ分子ポンプTBの運転状況を監視する。各電源装置CRは異常を検出すると集中監視装置102に異常信号を送信し、集中監視装置102は異常信号を受信するとアラームを出力し、オペレータへ異常を報知する。
【0013】
各電源装置CR同士は、RS−485規格準拠のシリアル通信ポート113a、123a、133aを介して通信ケーブル107により接続されている。RS−485規格は、トポロジ(接続形態)として、1対の信号線上に複数のノードを接続できるマルチドロップ接続が可能である。このマルチドロップ接続においては、これらのノードはすべてシングル・ペア・ワイヤーに接続され、送信と受信は同じ2つのワイヤーに配分される。RS−485仕様では接続環境上で32ノードが可能である。本実施形態では、シングル・ペア・ワイヤーの通信ケーブル107に、集中監視装置102及びJ台分の電源装置CRがマルチドロップ接続され、これにより任意の電源装置CR間でシリアル通信におけるハンドシェイクが可能となっている。
【0014】
本実施形態の通信ネットワークは、マスタ・スレーブ方式の動作を可能としている。マスタ・スレーブ方式は、1つのノード(マスタ)のみが通信ネットワークの支配権をもつことによって、通信の衝突を回避する方式で、複数のノードうち1つのノード(マスタ)に他のノード(スレーブ)の処理を管理させる方式である。例えば、オペレータが電源装置113をマスタ用として操作し信号の送信を開始したとする。この場合、マスタ用電源装置113は、スレーブ用電源装置123宛てに信号111aを送信し、電源装置123との通信が完了後に、次のスレーブ用電源装置133宛てに信号111bを送信する、という通信制御が可能である。他の電源装置123、133が信号の送信源(マスタ)となった場合も同様である。
【0015】
図2は、ターボ分子ポンプ装置110の構成をより詳細に示すブロック図である。なお、他のターボ分子ポンプ装置120,130の構成も同様である。電源装置113は、主制御部210、MMI部220、通信制御部230及びポンプ制御部240を有する。ポンプ制御部240は、温度制御部241、磁気軸受駆動部242、モータ駆動部243を含む。MMI部220は、表示部221a及び入力部221bの機能を外部へ提供する正面パネル221を含む。電源装置113は、商用電源209から電力供給を受け動作する。
【0016】
ターボ分子ポンプ114は、定常回転時、ロータ(不図示)の回転軸が磁気軸受260aによって、磁力で浮上して支承される磁気軸受型ターボ分子ポンプである。このターボ分子ポンプ114のベースにはヒータ250aが設けられ、生成物が付着しやすいガスを排気する場合には、このヒータ250aによりポンプ温度を上昇させて生成物の付着を抑制する。その際、冷却装置250bによる冷却とヒータ250aによる加熱とを制御してポンプ温度の制御を行う。
【0017】
冷却装置250bは冷却水によりターボ分子ポンプの冷却を行うものであり、電磁バルブ等により流量を調節することにより冷却効果の制御を行う。ヒータ250a及び冷却装置250bには、電源装置113の温度制御部241から制御電流が供給され、ポンプ温度が制御される。温度センサ部250は、ベースの温度を検出し、主制御部210へその信号を入力する。主制御部210は、温度センサ部250で検出される温度をポンプ温度として用いる。
【0018】
磁気軸受260aには、電源装置113の磁気軸受駆動部242から制御電流が供給され、ロータの回転軸が磁気支承される。磁気軸受センサ部260は、ロータとタッチダウンベアリングとの間のギャップを検出し、主制御部210へその信号を入力する。
【0019】
モータ270aは、例えば、ブラシレスDCモータまたは誘導モータであり、モータ270aには、電源装置113のモータ駆動部243から制御電流が供給され、ロータの回転軸(不図示)が回転される。モータセンサ部270は、モータ回転速度を検出し、主制御部210へその信号を入力する。
【0020】
主制御部210は、温度センサ部250からの信号、磁気軸受センサ部260からの信号、およびモータセンサ部270からの信号に基づき、温度制御部241、磁気軸受駆動部242、およびモータ駆動部243をそれぞれ制御する。また、主制御部210は、不図示のシステムメモリを含んでおり、自身へ入力された信号データをシステムメモリへ記憶する。この信号データは、通信制御部230の通信ポート113aを介して集中監視装置102によって読み出し可能である。
【0021】
ポンプ制御に必要な指令やパラメータ等は、主制御部210に接続されたMMI部220の表示部221a及び入力部221bを用いることにより、オペレータが手動で主制御部210に入力可能である。すなわち、オペレータは、表示部221aに表示されたターボ分子ポンプ114の運転状態を見ながら、入力部221bを操作して、ターボ分子ポンプ114の運転を制御することができる。電源装置113に設けられた通信制御部230の通信ポート113aを介して、他の装置等外部からの指令を主制御部210に入力することもできる。
【0022】
図3は、電源装置113の正面パネル221を示す外観図である。なお、他の電源装置123,133についても同様である。正面パネル221には、表示部221aと入力部221bが設けられている。表示部221aは、液晶表示パネルおよびLED表示灯を含み、主制御部210のシステムメモリに記憶されたデータに基づきターボ分子ポンプ114の状態を表示するとともに、電源装置113の設定状態等も表示する。入力部221bは押しボタンスイッチおよび切替スイッチを含み、これらのスイッチ操作により電源装置113自体および電源装置113によるターボ分子ポンプ114の運転状態を制御することができる。
【0023】
各電源装置CRへの制御情報の設定は以下のように行われる。予め正面パネル221を介して各電源装置CRのID番号を設定しておく。次いで、オペレータはマスタ用電源装置113の正面パネル221を介してターボ分子ポンプ114用のポンプ温度設定値tを入力後、SETボタン303を押下操作する。これにより電源装置113はポンプ温度設定値tを設定すると共にスレーブ用電源装置123にポンプ温度設定値tを送信する。スレーブ用電源装置123は受信したポンプ温度設定値tを設定し、マスタ用電源装置113はその設定応答を確認すると、次のスレーブ用電源装置133にポンプ温度設定値tを送信する。スレーブ用電源装置133は受信したポンプ温度設定値tを設定し、マスタ用電源装置113はその設定応答を確認すると、さらに次の他の電源装置にポンプ温度設定値tを順次送信する。
【0024】
このような複数の電源装置CRに順次設定値を設定する処理が、SETボタン303の1度の押下操作で可能とした点に本実施の形態の特徴がある。ここで、どの電源装置CRをマスタ用とするかはオペレータの自由であり、任意な1台の電源装置CRをマスタ用に選ぶことができる。すなわち、本実施の形態は、任意の1台の電源装置CRについてターボ分子ポンプ用の入力とそのコピー操作が行われると、その1台のターボ分子ポンプ用の入力が設定され、他のターボ分子ポンプに対して同設定が順次コピーされることに特徴がある。以下では、この設定内容のコピー機能を実現する処理について説明する。
【0025】
図4は、本実施形態における上述のマスタ用電源装置113に関わる処理手順を示すフローチャートである。図5は、本実施形態における上述のスレーブ用電源装置123,133に関わる処理手順を示すフローチャートである。図4、5の処理手順は、各電源装置の主制御部210に含まれる不図示のCPUが実行する制御処理の内容を示し、各主制御部210のCPUがシステムメモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0026】
以下では、電源装置113がマスタ用電源装置としてポンプ温度設定値tを設定・送信し、他の電源装置(例えば電源装置123)がスレーブ用電源装置としてポンプ温度設定値tを受信・設定する場合を例に、処理を説明する。
【0027】
(マスタ用制御プログラム)
オペレータが、正面パネル221において、表示部221aに表示されたメニュー画面から「温度設定値変更」をSELECTボン301によって選択し、「温度設定値変更」入力画面を表示するためにDISPLAYボタン304を押下操作すると、図4に示す設定送信処理が開始される。なお、以下の各ステップの処理はCPUが主体となって実行される。
【0028】
まず、ステップS402で、表示部221aに「温度設定値変更」入力画面を表示し、正面パネル221からの入力状況を監視する。例えば、−ボタン302a及び+ボタン302bの操作によりポンプ温度設定値が所望の値に表示され、さらにSETボタン303の操作により表示中のポンプ温度設定値tが入力されると、ステップS404に進む。
【0029】
ステップS404では、システムメモリ上のバッファにポンプ温度設定値tを一時的に格納する。ステップS406では、正面パネル221のSETボタン303の押下操作の有無を判定する。SETボタン303の押下有りと判定されると、ステップS408に進む。
【0030】
ステップS408では、バッファに記憶したポンプ温度設定値tをシステムメモリ上の温度制御設定値エリアに格納し設定する。これにより、主制御部210は、温度センサ部250からの信号に基づいて所定のポンプ温度tとなるように電源装置113の温度制御部241を制御することができる。ステップS410では、システムメモリ上のIDエリアに初期値1を入力し、ステップS412に進む。
【0031】
ステップS412では、IDエリアの値が31(接続可能な電源装置CRの数)を超えたか否かを判定する。ID≦31の場合にはステップS414へ進む。ステップS414では、IDエリアの値が、電源装置CRの立ち上げ時にシステムメモリへ読み込んであった設定ID(自ID)と異なるか否かを判定する。ID≠自IDの場合にはステップS416に進み、ID=自IDの場合にはステップS424に進む。
【0032】
ステップS416では、IDエリアの値と温度制御設定値エリアのポンプ温度設定値tを格納した温度制御設定値コマンドとを編集し、その温度制御設定値コマンドを通信制御部230の通信ポート113aを介して通信ケーブル107へ送信する。
【0033】
次いでステップS418で、送信した温度制御設定値コマンドに対するいずれかのターボ分子ポンプ装置からの応答を監視するためのタイマを起動する。ステップS420では、温度制御設定値コマンドに対する応答受信の有無を判定する。応答無しの場合にはステップS422へ進み、応答有りの場合にはステップS424へ進む。
【0034】
ステップS422では、タイマがタイムアウトしたか否かを判定する。タイムアウトでない場合にはステップS420へ戻る。タイムアウトの場合には、温度制御設定値コマンドに付加したIDの電源装置CRからの応答が無いため、その電源装置CRが停止又は故障等している、あるいは電源装置CRが接続されていないと判断し、ステップS424へ処理を進める。
【0035】
ステップS424では、システムメモリ上のIDエリアをインクリメント(+1)し、ステップS412へ戻る。ステップS412では、IDエリアの値が31(接続可能な電源装置CRの数)を超えたか否かを判定する。ID>31の場合には、全ての電源装置CRにポンプ温度設定値tを格納した温度制御設定値コマンドを送信終了したと判断し、リターンする。
【0036】
(スレーブ用制御プログラム)
電源装置123が通信ポート123aを介して通信ケーブル107からのコマンドを検知すると、図5に示す応答処理が開始される。
【0037】
ステップS502では、温度制御設定値コマンドか否かを判定する。温度制御設定値コマンドの場合にはステップS504に進み、温度制御設定値コマンド以外の場合にはリターンする。ステップS504では、温度制御設定値コマンドに付加されているIDが電源装置123の立ち上げ時にシステムメモリへ読み込んであった設定ID(自ID=2)と同じか否かを判定する。コマンドの付加ID=自IDの場合にはステップS506に進み、コマンドの付加ID≠自IDの場合にはリターンする。
【0038】
ステップS506では、温度制御設定値コマンド中のポンプ温度設定値tをシステムメモリ上の温度制御設定値エリアに格納し設定する。これにより、主制御部210は、ターボ分子ポンプ124の温度センサ部250からの信号に基づいて所定のポンプ温度tとなるように電源装置123の温度制御部241を制御することができる。次いでステップS508で、温度制御設定値コマンドに対する応答を通信制御部の通信ポート123aを介して通信ケーブル107へ送信し、リターンする。
【0039】
本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)単一の電源装置113に入力されたターボ分子ポンプTBの制御情報をこの電源装置113に設定するとともに、通信ケーブル107を介して他の電源装置123,133にも送信し、設定するようにした。これにより各ターボ分子ポンプ用の制御情報の設定を個別に行う場合に比べ、ターボ分子ポンプ各々の間の駆動状態の時間的な差異および人的要因による設定ミスが抑制され、複数のターボ分子ポンプTBの制御情報を迅速かつ正確に設定変更することができる。
【0040】
(2)複数の電源装置CRのうち、任意の電源装置113をマスター用、他の電源装置123,133をスレーブ用として、マスター用電源装置113に設定された制御情報をスレーブ用電源装置123,133にコピーするようにした。これにより制御情報入力用の入力装置を電源装置CRとは別に設ける必要がなく、構成が簡単である。
(3)各電源装置CRにシリアル通信ポート113a,123a,133a、制御情報入力用の入力部221b、制御情報設定用および制御用の主制御部210等を設け、マスター用およびスレーブ用の電源装置CRを同一の装置構成としたので、コストを低減できる。
(4)複数の電源装置CRをシリアル通信ポートを介してマルチドロップ接続するようにしたので、配線ラインの取り回しが容易である。
【0041】
なお、上記実施の形態では、マスタ用に選んだ任意の電源装置(第1の制御装置)113の入力部221bの操作により、ターボ分子ポンプ用の制御情報を入力するとともに、他の電源装置(第2の制御装置)123,133へのそのコピー操作を行う場合を示したが、制御情報を入力する入力手段と制御情報を設定する設定手段を電源装置CRとは別に設けてもよい。例えば図1、2の構成においてマスタ用に集中監視装置102を適用してもよい。
【0042】
この場合、集中監視装置102は、各電源装置CRからの情報に基づく各ターボ分子ポンプの監視に加え、各ターボ分子ポンプTBの制御も可能とする。具体的には、集中監視装置102が図4に示したマスタ用制御プログラムを実行可能なように、集中監視装置102のプログラムを改修する。この場合、ステップS408及びS414の処理は不要である。これにより、集中監視装置102から、任意な1台の電源装置CRに対するターボ分子ポンプ用の入力とそのコピー操作が行われると、その1台のターボ分子ポンプ用の入力が設定され、他のターボ分子ポンプTBに対して同設定が順次コピーされる。この構成においても、各ターボ分子ポンプ用の設定を手動で行うことに比べ、ターボ分子ポンプ各々の間の駆動状態の時間的な差異及び人的要因による設定ミスが抑制される。
【0043】
上記実施の形態では、制御装置としての各電源装置CRをマルチドロップ接続するようにしたが、マルチドロップ接続を適用しない構成も可能である。例えばそれぞれの電源装置CRと集中監視装置102とをポイントツーポイント(1対1)で接続するようにしてもよい。上記実施の形態では、電源装置113がマスタ用電源装置としてポンプ温度設定値tを設定・送信し、他の電源装置123,133がスレーブ用電源装置としてポンプ温度設定値tを受信・設定する場合を例に説明したが、他の制御情報を同様に設定するようにしてもよい。例えばロータのギャップ値や回転速度の設定を同様に行うようにしてもよい。
【0044】
上記実施の形態では、電源装置CRの構成として、ターボ分子ポンプTBの制御情報を手動で入力する入力部221bと、制御情報を送受信するためのシリアル通信ポート113a,123a,133aと、制御情報を設定するとともにターボ分子ポンプTBを制御する主制御部210とを設けたが、これら入力部、通信部、設定部、および制御部の構成はこれに限らない。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態のターボ分子ポンプシステムに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係るターボ分子ポンプシステムを示す全体構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係るターボ分子ポンプ装置の構成をより詳細に示すブロック図。
【図3】本発明の実施の形態に係る電源装置の正面パネルを示す外観図。
【図4】本発明の実施の形態に係るマスタ用電源装置に関わる処理手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施の形態に係るスレーブ用電源装置に関わる処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0046】
100 ターボ分子ポンプシステム
102 集中監視装置
102a、113a、123a、133a 通信ポート
102b、113b、123b、133b 遠隔操作端子
107 通信ケーブル
110、120、130 ターボ分子ポンプ装置
113、123、133 電源装置
114、124、134 ターボ分子ポンプ
210 主制御部
221b 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のターボ分子ポンプと、
前記各ターボ分子ポンプをそれぞれ制御する複数の制御装置と、
前記各ターボ分子ポンプの制御に係る制御情報を入力する単一の入力手段と、
前記入力手段より入力された制御情報を前記各制御装置にそれぞれ設定する設定手段とを備えることを特徴とするターボ分子ポンプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ分子ポンプシステムにおいて、
前記複数の制御装置は、第1の制御装置および第1の制御装置以外の第2の制御装置からなり、
前記入力手段は、前記第1の制御装置に設けられ、
前記設定手段は、前記入力手段により入力された制御情報を前記第1の制御装置に設定するとともに、前記入力手段により入力された制御情報を前記第2の制御装置にそれぞれ送信し、設定することを特徴とするターボ分子ポンプシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のターボ分子ポンプシステムにおいて、
前記各制御装置は、
前記制御情報を送受信するための通信部と、
前記制御情報を手動で入力する入力部と、
前記入力部により入力された制御情報または前記通信部を介して入力された制御情報を設定する設定部と、
前記設定された制御情報に基づいて前記各ターボ分子ポンプを制御する制御部とをそれぞれ有し、
前記第1の制御装置の設定部は、前記入力部により入力された制御情報を設定し、
前記第2の制御装置の設定部は、前記通信部を介して入力された制御情報を設定することを特徴とするターボ分子ポンプシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のターボ分子ポンプシステムにおいて、
前記複数の制御装置は、前記通信部を介して互いにマルチドロップ接続されていることを特徴とするターボ分子ポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−59908(P2010−59908A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228267(P2008−228267)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】