説明

ポンプ及びポンプモータの点検工法

【課題】モータ及びポンプモータの点検に要する期間を短縮する。
【解決手段】原子炉格納容器1内において、再循環ポンプ及びポンプモータをポンプ本体12とモータとに解体し、クレーン20によってモータをポンプ本体12から吊り上げ搬送し、原子炉格納容器1内の床22上の受台24上に載置する。モータをモータ本体14Aとブラケット16とに解体し、モータ本体14Aからブラケット16をクレーン20によって吊り上げ搬送し、ポンプ本体12上に設置された仮置架台26上に仮置きする。モータ本体12からロータ18を解体し、このロータ18をクレーン20によって吊り上げ搬送して仮置架台26上に仮置きする。この状態で、ポンプ本体12、モータ、ブラケット16及びロータ18を点検する。これにより、原子炉格納容器1からの再循環ポンプ及びポンプモータの搬出、搬入作業を無くすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ及びポンプモータの点検工法に係り、特に沸騰水型原子炉の原子炉格納容器内に設置された再循環ポンプ及びポンプモータの点検工法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉圧力容器内には核燃料が配列された炉心が納められ、炉心で発生した熱は原子炉冷却材(水)に伝えられる。この冷却材は蒸気と水に分離され、蒸気は主蒸気管を介してタービンへ導かれるとともに、水は再循環系を介して再び冷却材として炉心へ戻される。
【0003】
前記再循環系を構成する再循環ポンプ及びポンプモータは原子炉格納容器内に設置されており、定期的(例えば5年毎)に分解されてポンプ本体、モータ、ブラケット、及びロータ等の各部品が点検される。
【0004】
再循環ポンプ及びポンプモータの従来の点検工法は、まず、再循環ポンプ及びポンプモータを常設のクレーンを用いて再循環系の配管から取り外し、これを特許文献1に記載されたようなモータ搬送用の台車に搭載する。次に、この台車を用いて再循環ポンプ及びポンプモータを原子炉格納容器から搬出し、原子炉建屋(リアクタービル)の所定の検査場所(例えば、リアクタービルの揚上設備のある最上階(オペレーションフロア))まで搬送し、ここで再循環ポンプ及びポンプモータを解体して各部品を点検していた。
【特許文献1】特開平5−294272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の再循環ポンプ及びポンプモータの点検工法は、原子炉圧力容器と原子炉格納容器との間のスペースが点検作業としては狭隘であると考えられていたことから、台車を用いて再循環ポンプ及びポンプモータを原子炉格納容器の外に搬出して点検していた。原子炉格納容器内に設置される再循環ポンプ及びポンプモータは、大型なもので機高が8メールにもおよび、総重量も数十トンもある大型重量物である。このため、再循環ポンプ及びポンプモータを台車に安全に載置し、これを検査場所まで搬送する行程に数日を要する。したがって、従来の点検工法では、実質的な検査期間の他、再循環ポンプ及びポンプモータの搬出、搬入に数日を要するため、全体的な検査期間が長くなるという欠点があった。
【0006】
なお、従来の点検工法は、軽度の点検においても行われていたが、軽度な点検(モータやポンプを分解するまでには至らない点検等)では、搬出、搬入を省略し目的を達成したい要望があった。すなわち、従来の点検工法は、分解まで行わない軽度な点検の場合でも、再循環ポンプ及びポンプモータを原子炉格納容器の外に搬出して点検していたため、軽度な点検の場合では、点検に要する時間に比較し、搬出、搬入の時間が長く不合理という現象が生じていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、モータ及びポンプモータの点検に要する期間を短縮することができるポンプ及びポンプモータの点検工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、原子炉格納容器内に配置されたポンプ及びポンプモータの点検工法において、前記原子炉格納容器内において、前記ポンプ及びポンプモータをポンプ本体とモータとに解体し、前記原子炉格納容器内に設置されたクレーンによって前記モータを前記ポンプ本体から吊り上げ搬送して原子炉格納容器内に配置された受台に載置し、前記受台に載置された前記モータをモータ本体とブラケットとに解体し、前記モータ本体から前記ブラケットを前記クレーンによって吊り上げ搬送して前記ポンプ本体上に設置された仮置架台に仮置きするとともに、前記モータ本体のロータを前記クレーンによって吊り上げ搬送して前記仮置架台に仮置きし、この状態で前記ポンプ本体、モータ、ブラケット、及びロータを前記原子炉格納容器内で点検することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、ポンプ本体からモータを取り外すことによって生じた、ポンプ本体上方の空間を点検場所として利用する点に着目してなされたものである。この空間を点検場所として有効利用することにより、原子炉格納容器に対するポンプの搬出、搬入作業を無くすことができるので、ポンプ及びポンプモータの点検期間を大幅に短縮することができる。
【0010】
具体的なポンプ及びポンプモータの点検工法は、原子炉格納容器内において、まず、ポンプ及びポンプモータをポンプ本体とモータとに解体する。次に、原子炉格納容器内に常設されているクレーンを使用してモータをポンプ本体から吊り上げ搬送し、モータを原子炉格納容器内に配置された受台に載置する。次いで、受台に載置されたモータをモータ本体とブラケットとに解体し、モータ本体からブラケットを前述したクレーンを使用して吊り上げ搬送し、ポンプ本体上に設置された仮置架台に仮置きする。この後、モータ本体のロータをクレーンによって吊り上げ搬送し、同様に仮置架台に仮置きする。この状態でポンプ本体、モータ、ブラケット、及びロータを前記原子炉格納容器内で点検する。
【0011】
なお、ポンプの点検順序として、モータをポンプ本体から切り離し、これを受台に載置した後、モータが切り離されたポンプ本体を最初に点検してもよい。また、モータの点検順序として、モータを受台に載置した後、又はモータからブラケットとロータとを取り外した後に点検してもよい。
【0012】
また、仮置架台を構成する複数本の鋼材を、ポンプ本体の上フランジ面に突設されたモータを固定するためのボルトを利用して固定することが好ましい。更に、仮置架台をポンプ本体上に安定して設置するために、強力サポート(商品名:中央ビルト工業(株)製)と称される足場補強部材等を使用して櫓を組んで建屋の床上に支持することが好ましい。また、ブラケットとは、モータの出力軸側のカバーであり、出力軸側のロータを支持するベアリングが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るポンプ及びポンプモータの点検工法によれば、上述の如くモータの点検に要する期間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付図面に従って、本発明に係るポンプ及びポンプモータの点検工法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
図1〜図4には、原子炉格納容器1内に設置された再循環ポンプ及びポンプモータ10の点検工法の手順が順に示されている。この再循環ポンプ及びポンプモータ10は、例えば5年に一度分解されてポンプ本体12、モータ14、ブラケット16、及びロータ18等の各部品が点検される。この点検項目には、軸受部、ベアリング交換、メタルPT検査、固定子、鉄心等の点検、洗浄、絶縁更新、直流漏れ電流試験等があり、ダスト付着による性能低下を防止すること、軸受、接続部の摩耗、損傷状況を点検すること、絶縁測定、異常加熱、振動を抑制することを目的としている。
【0016】
図1〜図4に基づいて再循環ポンプ及びポンプモータ10の点検工法を説明すると、まず、図1に示すように、原子炉格納容器1内において、再循環ポンプ及びポンプモータ10をポンプ本体12とモータ14とに解体する。この解体方法は、ボルト、ナット等による締結部材(不図示)で固定されたポンプ本体12とモータ14との固定部を、前記締結部材による固定を解除することにより行う。なお、再循環ポンプ及びポンプモータ10は、駆動時に比較的大きな振動を発生する装置であるため、原子炉格納容器1等の躯体に対し、スプリング等からなる複数の緩衝部材を介して躯体に吊り下げ支持されている。また、再循環ポンプ及びポンプモータ10は、その機高が約8メートルにもおよぶ大型ポンプであり、解体したモータ14の総重量は約32トン、モータ14から解体したブラケット16の重量は約4.5トン、ロータ18の重量は約8.5トンにもおよぶ重量物である。このような重量物の吊り上げ搬送は、原子炉格納容器1内に常設されているチェーンブロックと天秤とを用いたクレーン20によって行われる。図1〜図4において、符号2は、原子炉格納容器1を覆うコンクリート製の躯体であり、符号3は原子炉圧力容器等を覆うコンクリート製の躯体である。
【0017】
ポンプ本体12とモータ14との解体が終了すると、クレーン20によってモータ14をポンプ本体12から吊り上げ搬送し、図2の如く原子炉格納容器1内の床22上に配置された受台24上に載置する。
【0018】
次に、受台24上に載置されたモータ14をモータ本体14Aとブラケット16とに解体し、図3の如くモータ本体14Aからブラケット16をクレーン20によって吊り上げ搬送し、ポンプ本体12上に設置された仮置架台26上に仮置きする。
【0019】
この後、図4の如くモータ本体14Aからロータ18を解体し、このロータ18をクレーン20によって吊り上げ搬送して仮置架台26上に仮置きする。
【0020】
この状態で、すなわち、ポンプ本体12の上方空間を有効利用した状態で、ポンプ本体12、モータ14、ブラケット16、及びロータ18を原子炉格納容器1内で点検する。なお、ポンプ本体12の点検は、ポンプ本体12からモータ14を取り外した状態で実施してもよい。
【0021】
このように、実施の形態の再循環ポンプ及びポンプモータ10の点検工法によれば、ポンプ本体12からモータ14を取り外すことによって生じた、ポンプ本体12の上方の空間を点検場所として利用する点に着目し、この空間を点検場所として有効利用している。これにより、原子炉格納容器1に対する再循環ポンプ及びポンプモータ10の搬出、搬入作業を無くすことができるので、再循環ポンプ及びポンプモータ10の点検期間を大幅に短縮することができる。
【0022】
仮置架台26は図5に示すように、円弧状に形成された4台のブロック28、28…、4本の鋼材(H型鋼材)30、30、32、32、及び櫓34等によって構成されている。
【0023】
4台のブロック28、28…は、ポンプ本体12の上部フランジ12Aに植設された多数本のボルト36、36を利用して、対向する一対のブロック28、28がポンプ本体12の軸心Oに対して点対称となる位置に固定されている。これらのブロック28、28上に一対の鋼材30、30が平行に載置されるとともにボルト38、38を介してブロック28、28に固定される。また、鋼材30、30上に鋼材32、32が載置され、この鋼材32、32はボルト40、40により鋼材30、30を介してブロック28、28に固定される。更に、鋼材32、32の端部は櫓34を構成する複数本の強力サポート(商品名:中央ビルト工業(株)製)と称される足場補強部材42、42…によって床22上に支持されている。更にまた、鋼材30、30の端部には、一対の支持材44A、44Bが所定の間隔を持って固着されている。この間隔の隙間にロータ18の下端部18Aが挿入されることにより、下端部18Aが支持され、上部が図4の如くクレーン20によって吊り下げ支持される。なお、支持材44Bは、ロータ18の下端部18Aを固定するために、多少の移動ができるように鋼材30に固定されている。
【0024】
また、図5の鋼材32、32上にはブラケット16が載置される。このブラケット16は図4の如くワイヤ46を介してクレーン20のレール21に支持され、鋼材32、32からの脱落が防止されている。
【0025】
なお、長尺のロータ18をモータ本体14Aからクレーン20で吊り上げる際、既存の天秤では吊り上げ代が短いためロータ18をモータ本体14Aから抜き去ることができない。このため、ロータ18を吊り上げる際には既存の天秤に代えて図6、図7に示す天秤50を使用する。
【0026】
この天秤50は、一対の鋼材52、52が所定の間隔を持って固着されることにより構成され、その上部52Aにシャックルピン54を保持した2台の軸受部56が所定間隔を持って固定されている。シャックルピン54、54にはエンドレスワイヤ58、58が掛け渡され、これらのエンドレスワイヤ58、58は鋼材52、52の間の隙間に通され、ロータ吊上用トラニオン60に連結されている。このロータ吊上用トラニオン60に、ロータ18の上部18Bが保持される。
【0027】
既存の天秤は、軸受部56が鋼材52、52の下部52Bに固定されている。これに対して図6、図7の天秤50は、鋼材52、52の上部52Aに軸受部56を固定し、鋼材52、52間の隙間をエンドレスワイヤ挿通用のスペースとして使用した。このため、既存の天秤に対して図6、図7の天秤50は、鋼材52の幅寸法B分だけ、吊上代をかせぐことができる。これによって、ロータ18をモータ本体14Aから抜き去ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ポンプ本体からモータを解体しモータをクレーン搬送する説明図
【図2】モータを仮置架台に仮置きした説明図
【図3】モータ本体からブラケットを解体しブラケットをクレーン搬送する説明図
【図4】ポンプ本体上部にブラケットとロータを仮置架台を介して載置させた説明図
【図5】図4に示した仮置架台の平面図
【図6】ロータ吊上用天秤の要部正面図
【図7】図6に示したロータ吊上用天秤の側面図
【符号の説明】
【0029】
10…再循環ポンプ及びポンプモータ、12…ポンプ本体、14…モータ、16…ブラケット、18…ロータ、20…クレーン、22…床、24…受台、26…仮置架台、28…ブロック、30、32…鋼材、34…櫓、36、38、40…ボルト、42…足場補強部材、44…支持材、46…ワイヤ、50…天秤、52…鋼材、54…シャックルピン、56…軸受部、58…エンドレスワイヤ、60…ロータ吊上用トラニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器内に配置されたポンプ及びポンプモータの点検工法において、
前記原子炉格納容器内において、前記ポンプ及びポンプモータをポンプ本体とモータとに解体し、
前記原子炉格納容器内に設置されたクレーンによって前記モータを前記ポンプ本体から吊り上げ搬送して原子炉格納容器内に配置された受台に載置し、
前記受台に載置された前記モータをモータ本体とブラケットとに解体し、
前記モータ本体から前記ブラケットを前記クレーンによって吊り上げ搬送して前記ポンプ本体上に設置された仮置架台に仮置きするとともに、前記モータ本体のロータを前記クレーンによって吊り上げ搬送して前記仮置架台に仮置きし、
この状態で前記ポンプ本体、モータ、ブラケット、及びロータを前記原子炉格納容器内で点検することを特徴とするポンプ及びポンプモータの点検工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−85778(P2009−85778A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256090(P2007−256090)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】