説明

ポンプ収容窩を備えた磁石ヨークを有する同位体生成システム及びサイクロトロン

サイクロトロンが、荷電粒子を所望の経路に沿って導くように磁場を発生する磁石アセンブリを含んでいる。このサイクロトロンはまた、加速室を包囲するヨーク本体を有する磁石ヨークを含んでいる。磁石アセンブリはヨーク本体に位置する。ヨーク本体は、加速室に流体結合されているポンプ収容(PA)窩を形成する。このサイクロトロンはまた、加速室に真空を導入するように構成されている真空ポンプを含んでいる。真空ポンプはPA窩に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は一般的には、サイクロトロンに関し、さらに具体的には、放射性同位体を生成するのに用いられるサイクロトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体(放射性核種とも呼ぶ)は、医用の治療、撮像及び研究における幾つかの応用、並びに医学に関係しない他の応用を有する。放射性同位体を生成するシステムは典型的には、荷電粒子のビームを加速し、ターゲット物質まで導いて同位体を生成するサイクロトロンのような粒子加速器を含んでいる。サイクロトロンは電場及び磁場を用いて粒子を加速し、加速室の内部の渦状軌道に沿って粒子を誘導する。サイクロトロンの利用時には、加速室を排気して、加速された粒子と相互作用し得る望ましくない気体粒子を除去する。例えば、加速された粒子が水素の陰イオン(H-)であるときには、加速室の内部の水素ガス分子(H2)又は水分子が水素イオンから弱結合電子を取り去り得る。イオンはこの電子を取り去られると中性粒子となって、加速室の内部の電場及び磁場には最早影響されなくなる。中性粒子は失われて回収不能となり、また加速室の内部で他の望ましくない反応を招き得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO2006/012467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加速室の排気状態を保つために、サイクロトロンは加速室に流体結合された真空システムを利用する。しかしながら、従来の真空システムは、望ましくない品質又は特性を有し得る。例えば、従来の真空システムは大型であって広い空間を必要とし得る。このことは、特に大型システムを用いるように本来設計されていない病院の室内でサイクロトロン及び真空システムを用いなければならないときに問題となり得る。さらに、既存の真空システムは典型的には、多数のポンプ(異なる形式のポンプを含む)、弁、管、及びクランプのような幾つかの相互接続された構成要素を有する。真空システムを実効的に運転するために、各々の構成要素を監視し(例えばセンサ及び計器を通して)、これらの構成要素の幾つかを個々に制御する必要がある場合がある。さらに、幾つかの相互接続された構成要素によって、損傷部品又は消耗部品のため漏れが生じ得る界面又は領域がさらに多くなり得る。このため、費用及び時間の掛かる真空システムの保守を招く場合がある。
【0005】
以上のことに加えて、複雑な真空システムは冷却サブシステムを必要とし得る。例えば、一つの公知の真空システムでは、幾つかの拡散ポンプが加速室に流体結合される。拡散ポンプは作動流体(例えば油)を用いており、油を沸騰させて蒸気にし、蒸気を噴射アセンブリに通すことにより真空を生成する。しかしながら、油を凝縮して回収するために、この過程において発生される大量の熱を真空システムから除去しなければならない。冷却サブシステムは真空システムにさらなる複雑さを加える。
【0006】
従って、加速室から望ましくない気体粒子を除去する改良型真空システムが必要とされている。また、公知の真空システムよりも小さい空間を要求し、少ない保守を要求し、複雑さが小さく、又は費用が掛からない真空システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、荷電粒子を所望の経路に沿って導くように磁場を発生する磁石アセンブリを含むサイクロトロンが提供される。このサイクロトロンはまた、加速室を包囲するヨーク本体を有する磁石ヨークを含んでいる。磁石アセンブリはヨーク本体に位置する。ヨーク本体は、加速室に流体結合されているポンプ収容(Pump Acceptance、PA)窩を形成する。このサイクロトロンはまた、加速室に真空を導入するように構成されている真空ポンプを含んでいる。真空ポンプはPA窩に配置される。
【0008】
もう一つの実施形態によれば、同位体生成システムが提供される。このシステムは、荷電粒子を所望の経路に沿って導くように磁場を発生する磁石アセンブリを含んでいる。このシステムはまた、加速室を包囲するヨーク本体を有する磁石ヨークを含んでいる。磁石アセンブリはヨーク本体に位置する。ヨーク本体は、加速室に流体結合されているポンプ収容(PA)窩を形成する。このシステムはまた、ヨーク本体のPA窩に結合されている真空ポンプを含んでいる。真空ポンプは、加速室に真空を導入するように構成されている。加えて、このシステムは、同位体を生成するために荷電粒子を受け取るように配置されたターゲット・システムを含んでいる。
【0009】
さらにもう一つの実施形態によれば、ヨーク本体を有する磁石ヨークを含むサイクロトロンが提供される。ヨーク本体は、当該ヨーク本体の中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁極を含んでいる。これらの磁極は、荷電粒子が所望の経路に沿って導かれる第一の空間領域を間に有する。このサイクロトロンはまた、ヨーク本体の内部で中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁石コイルを含んでいる。各々の磁石コイルが対応する磁極を包囲している。これらの磁石コイルは、第一の空間領域を包囲する第二の空間領域を間に有する。第一及び第二の空間領域は、磁石ヨークの加速室を集合的に形成する。また、このサイクロトロンは、加速室に流体結合されて第一及び第二の空間領域の内部に真空を保つように構成されている真空ポンプを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に従って形成される同位体生成システムのブロック図である。
【図2】一実施形態に従って形成されるサイクロトロンの側面図である。
【図3】図2に示すサイクロトロンの底部の側面図である。
【図4】図2に示すサイクロトロンと共に用いられ得るターボ分子ポンプの側面図である。
【図5】図2に示すサイクロトロンと共に用いられ得るヨーク本体の一部の遠近図である。
【図6】図2に示すサイクロトロンと共に用いられ得る磁石及びヨーク・アセンブリの平面図である。
【図7】もう一つの実施形態に従って形成される同位体生成システムの遠近図である。
【図8】もう一つの実施形態に従って形成されて、図6に示す同位体生成システムと共に用いられ得るサイクロトロンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一実施形態に従って形成される同位体生成システム100のブロック図である。システム100は、イオン生成源システム104、電場システム106、磁場システム108、及び真空システム110を含めた幾つかのサブシステムを有するサイクロトロン102を含んでいる。サイクロトロン102の利用時に、荷電粒子はイオン生成源システム104を通してサイクロトロン102の内部に配置され又は注入される。磁場システム108及び電場システム106はそれぞれの場を発生し、これらの場は互いに協働して荷電粒子の粒子ビーム112を発生する。荷電粒子はサイクロトロン102の内部で加速されて、予め決められた経路に沿って誘導される。システム100はまた、引き出しシステム115と、ターゲット物質116を含むターゲット・システム114とを有する。
【0012】
同位体を生成するために、粒子ビーム112はサイクロトロン102によって引き出しシステム115を通してビーム輸送路117に沿ってターゲット・システム114の内部まで導かれると、粒子ビーム112は対応するターゲット域120に位置するターゲット物質116に入射する。システム100は、別個のターゲット物質116A〜116Cが位置する多数のターゲット域120A〜120Cを有し得る。変移装置又はシステム(図示されていない)を用いて、粒子ビーム112が異なるターゲット物質116に入射するようにターゲット域120A〜120Cを粒子ビーム112に関して変移させることができる。変移過程でも真空が保たれ得る。代替的には、サイクロトロン102及び引き出しシステム115は、1本の経路のみに沿って粒子ビーム112を導くのではなく、各々の異なるターゲット域120A〜120C毎に一意の経路に沿って粒子ビーム112を導いてもよい。
【0013】
上述のサブシステムの1又は複数を有する同位体生成システム及び/又はサイクロトロンの例は、米国特許第6,392,246号、同第6,417,634号、同第6,433,495号及び同第7,122,966号、並びに米国特許出願第2005/0283199号に記載されており、これらの特許及び出願の全てを参照によりその全体として本出願に援用する。また、さらに他の例が米国特許第5,521,469号、同第6,057,655号、並びに米国特許出願第2008/0067413号及び同第2008/0258653号にも記載されており、これらの特許及び出願の全てを参照によりその全体として本出願に援用する。
【0014】
システム100は、医用の撮像、研究及び治療に用いられ得る放射性同位体(放射性核種とも呼ぶ)を生成するように構成されているが、科学研究又は解析のような医学に関係しない他の応用にも用いられ得る。核医学(NM)撮像又は陽電子放出断層写真法(PET)撮像のような医用の目的に用いられるときには、放射性同位体をトレーサとも呼ぶ。例として述べると、システム100は、18-同位体を液体形態として製造し、11C同位体をCO2として製造し、13N同位体をNH3として製造するようなプロトンを生成し得る。これらの同位体を製造するのに用いられるターゲット物質116は、濃縮18O水、天然142ガス、及び16O水であってよい。システム100はまた、15Oガス(酸素、二酸化炭素、及び一酸化炭素)並びに15Oで標識された水を生成するために重陽子を生成することができる。
【0015】
幾つかの実施形態では、システム100は1-技術を用いて、ビーム電流を近似的に10μA〜30μAとして荷電粒子を低エネルギ(例えば約7.8MeV)にする。かかる実施形態では、水素の陰イオンは加速されてサイクロトロン102を通して引き出しシステム115まで誘導される。次いで、水素の陰イオンは引き出しシステム115のストリッピング・フォイル(図示されていない)に衝突し、これにより一対の電子を除去して粒子を陽イオン化しすなわち1+にすることができる。但し、代替的な実施形態では、荷電粒子は1+2+、及び3He+のような陽イオンであってもよい。かかる代替的な実施形態では、引き出しシステム115は粒子ビームをターゲット物質116へ向けて誘導する電場を生成する静電デフレクタを含み得る。
【0016】
システム100は、異なるシステムの様々な構成要素によって発生される熱を吸収するために冷却流体又は作動流体をそれぞれの構成要素に輸送する冷却システム122を含み得る。システム100はまた、技術者によって様々なシステム及び構成要素の動作を制御するのに用いられ得る制御システム118を含み得る。制御システム118は、サイクロトロン102及びターゲット・システム114に近接して又は遠隔して位置する1又は複数のユーザ・インタフェイスを含み得る。図1には示していないが、システム100はまた、サイクロトロン102及びターゲット・システム114のための1又は複数の放射線遮蔽を含み得る。
【0017】
システム100は、医用の撮像又は治療に用いられる個々の線量のような予め決められた量又はバッチで同位体を生成し得る。上に列挙した同位体形態例についてシステム100の生成容量は、18-の場合には20μAにおいて約10分間未満に50mCi、11CO2の場合には30μAにおいて約30分間に300mCi、13NH3の場合には20μAにおいて約10分間未満に100mCiであり得る。
【0018】
また、システム100は、当該システム100が限られた空間内に保持されることを可能にする寸法、形状、及び重量を有するように公知の同位体生成システムに関して縮小した空間量を利用し得る。例えば、システム100は、病院環境又は臨床環境のように粒子加速器のために本来構築されていない既存の室内に収まる。このようなものとして、サイクロトロン102、引き出しシステム115、ターゲット・システム114、及び冷却システム122の1又は複数の構成要素は、限られた空間に収まる寸法及び形状を有する共通の筐体124の内部に保持され得る。一例として、筐体124によって用いられる合計容積は2m3であってよい。筐体124の可能な寸法は、2.2mの最大幅、1.7mの最大高さ、及び1.2mの最大奥行きを含み得る。筐体及び内部のシステムの合計重量は、近似的に10000kgであってよい。筐体124はポリエチレン(PE)及び鉛から作製されることができ、サイクロトロン102からの中性子線束及びγ線を減弱するように構成された厚みを有し得る。例えば、筐体124は、中性子線束を減弱する筐体124の予め決められた部分に沿った厚み(サイクロトロン102を包囲する内面と筐体124の外面との間で測定される)が少なくとも約100mmであってよい。
【0019】
システム100は、荷電粒子を予め決められたエネルギ・レベルまで加速するように構成され得る。例えば、本書に記載される幾つかの実施形態は、近似的に18MeV以下のエネルギまで荷電粒子を加速する。他の実施形態では、システム100は近似的に16.5MeV以下のエネルギまで荷電粒子を加速する。特定的な実施形態では、システム100は近似的に9.6MeV以下のエネルギまで荷電粒子を加速する。さらに特定的な実施形態では、システム100は近似的に7.8MeV以下のエネルギまで荷電粒子を加速する。
【0020】
図2は、一実施形態に従って形成されるサイクロトロン200の側面図である。サイクロトロン200は、加速室206を包囲するヨーク本体204を有する磁石ヨーク202を含んでいる。ヨーク本体204は、間に厚みT1が延在する対向面208及び210を有し、また間に長さLが延在する上端及び下端212及び214を有する。ヨーク本体204は、面208及び210を上端及び下端212及び214に接合する移行領域又は隅部216〜219を含み得る。さらに明確に述べると、上端212は隅部216及び217によってそれぞれ面210及び208に接合され、下端は隅部219及び218によってそれぞれ面210及び208に接合される。この実施形態の例では、ヨーク本体204は、実質的に円形断面を有し、このようなものとして長さLはヨーク本体204の径を表わし得る。ヨーク本体204は鉄から製造されて、サイクロトロン200が動作しているときに所望の磁場を発生するような寸法及び形状を有し得る。
【0021】
図2に示すように、ヨーク本体204は、間に加速室206を画定する相対向するヨーク区画228及び230に分割され得る。ヨーク区画228及び230は、磁石ヨーク202の中央面232に沿って互いに隣接して配置されるように構成されている。図示のように、サイクロトロン200は、中央面232が水平のプラットフォーム220に垂直に延在するように鉛直に(重力に関して)配向され得る。プラットフォーム220はサイクロトロン200の重量を支持するように構成されており、例えば部屋の床又はセメント板であってよい。サイクロトロン200は、ヨーク区画228及び230(並びにそれぞれ対応する面210及び208)の間を通って水平に延在する中心軸236を有する。中心軸236は、ヨーク本体204の中心を通って中央面232に垂直に延在する。加速室206は、中央面232と中心軸236との交差部に位置する中心領域238を有する。幾つかの実施形態では、中心領域238は加速室206の幾何学的中心に位置する。また図示のように、磁石ヨーク202は、中心軸236から上方に延在する上部231と、中心軸236から下方に延在する下部233とを含んでいる。
【0022】
ヨーク区画228及び230は、加速室206の内部で中央面232を挟んで互いに対向する磁極248及び250をそれぞれ含んでいる。磁極248及び250は、磁極間隙Gによって互いから分離され得る。磁極248は磁極頂252を含んでおり、磁極250は磁極頂252に対面する磁極頂254を含んでいる。磁極248及び250、並びに磁極間隙Gは、サイクロトロン200が動作しているときに所望の磁場を発生するような寸法及び形状を有する。例えば、幾つかの実施形態では、磁極間隙Gは3cmであってよい。
【0023】
サイクロトロン200はまた、加速室206の内部に又は加速室206に近接して位置する磁石アセンブリ260を含んでいる。磁石アセンブリ260は、荷電粒子を所望の経路に沿って導くように磁極248及び250によって磁場を発生するのを容易にするように構成されている。磁石アセンブリ260は、中央面232を挟んで距離D1において互いから隔設されている相対向する一対の磁石コイル264及び266を含んでいる。磁石コイル264及び266は、例えば銅合金抵抗コイルであってよい。代替的には、磁石コイル264及び266はアルミニウム合金であってよい。磁石コイルは実質的に円形であって、中心軸236の周りに延在し得る。ヨーク区画228及び230は、対応する磁石コイル264及び266をそれぞれ収容するような寸法及び形状を有する磁石コイル窩268及び270をそれぞれ形成し得る。また図2に示すように、サイクロトロン200は、磁石コイル264及び266を加速室206から分離して所定位置に保持することを容易にする室壁272及び274を含み得る。
【0024】
加速室206は、中心軸236の周りを渦状態様で巻回しつつ中央面232に実質的に沿って留まる予め決められた彎曲経路に沿って、1-イオンのような荷電粒子を内部で加速することを可能にするように構成されている。荷電粒子は最初は中心領域238に近接して配置される。サイクロトロン200が起動されると、荷電粒子の経路は中心軸236の周りに軌道を描くことができる。図示の実施形態では、サイクロトロン200は等時型サイクロトロンであり、このようなものとして、荷電粒子の軌道は中心軸236の周りで彎曲している部分と相対的に線形の部分とを有する。但し、本書に記載される実施形態は等時型サイクロトロンに限定されず、他の形式のサイクロトロン及び粒子加速器も含む。図2に示すように、荷電粒子が中心軸236の周りに軌道を描くときに、荷電粒子は加速室206の上部231において紙面から突出し、加速室206の下部233において紙面の奥へ延在し得る。荷電粒子が中心軸236の周りに軌道を描くにつれて、荷電粒子の軌道と中心領域238との間に延在する半径Rが増大する。荷電粒子が軌道に沿って予め決められた位置に到達すると、荷電粒子は引き出しシステム(図示されていない)に入り又は引き出しシステムを通過してサイクロトロン200を出るように導かれる。
【0025】
加速室206は、粒子ビーム112の形成の前及び最中に排気された状態にあってよい。例えば、粒子ビームが生成される前には、加速室206の圧力は近似的に1×10-7ミリバールであってよい。粒子ビームが活性化されてH2ガスが中心領域238に位置するイオン生成源(図示されていない)を通って流れると、加速室206の圧力は近似的に2×10-5ミリバールとなり得る。このようなものとして、サイクロトロン200は、中央面232に近接して位置し得る真空ポンプ276を含み得る。真空ポンプ276は、ヨーク本体204の端部214から半径方向外向きに突出する部分を含み得る。後にあらためて詳述するように、真空ポンプ276は、加速室206を排気するように構成されているポンプを含み得る。
【0026】
幾つかの実施形態では、ヨーク区画228及び230は、加速室206に接近し易い(例えば修理又は保守のために)ように互いへ向けて互いから分離するように移動自在であり得る。例えば、ヨーク区画228及び230は、当該ヨーク区画228及び230の側辺に沿って延在するヒンジ(図示されていない)によって接合され得る。ヨーク区画228及び230の何れか又は両方を、ヒンジの軸を中心として対応するヨーク区画(1又は複数)を回動させることにより開くことができる。もう一つの例として、ヨーク区画228及び230は、ヨーク区画の一方を他方から線形に遠ざけるように線形に横方向に移動させることにより互いから分離され得る。但し、代替的な実施形態では、ヨーク区画228及び230は、一体成形されていてもよいし、加速室206に接近する(例えば加速室206の内部に通じる磁石ヨーク202の孔又は開口を通して)ときにも共に密着されたままであってもよい。代替的な実施形態では、ヨーク本体204は、等分割されていない区画を有していてもよいし且つ/又は2よりも多い区画を含んでいてもよい。例えば、ヨーク本体は、磁石ヨーク504に関して図8に示すように三つの区画を有し得る。
【0027】
加速室206は、中央面232に沿って延在して中央面232に関して実質的に対称である形状を有し得る。例えば、加速室206は実質的に円板形を有し、磁極頂252及び254の間に画定されている内空間領域241と、室壁272及び274の間に画定されている外空間領域243とを含み得る。サイクロトロン200の動作時の粒子の軌道は空間領域241の内部に位置し得る。加速室206はまた、真空ポンプ276へ向けて通じる通路P1(図3に示す)のように空間領域243から半径方向外向きに離隔して通じる通路を含み得る。
【0028】
また図2に示すように、ヨーク本体204は、当該ヨーク本体204の外被207を画定する外面205を有する。外被207は、小窩部、切除部、又は凹部を含めない外面205によって画定されるヨーク本体204の全体的な形状に略同等の形状を有する。例えば、外被207の一部を、端部214の外面205によって画定される平面に沿って延在する破線によって示す。図2に示すように、外被207の断面は、面208及び210、端部212及び214、並びに隅部216〜219から成る外面205によって画定される八面の多角形である。後にあらためて詳述するように、ヨーク本体204は、外被207に貫入する通路、切除部、凹部、及び窩部等を形成し得る。
【0029】
さらに、磁極248及び250(又はさらに明確に述べると磁極頂252及び254)は、荷電粒子が所望の経路に沿って導かれる空間領域241によって間を離隔され得る。また、磁石コイル264及び266は空間領域243によって離隔され得る。具体的には、室壁272及び274は、間に空間領域243を有し得る。さらに、空間領域243の周辺は壁面354によって画定されることができ、壁面354はまた加速室206の周辺を画定している。壁面354は、中心軸236の周りに円周方向に延在し得る。図示のように、空間領域241は、中心軸236に沿って磁極間隙G(図3)に等しい距離にわたり延在し、空間領域243は中心軸236に沿って距離D1にわたり延在する。
【0030】
図2に示すように、空間領域243は、中心軸236の周りで空間領域241を包囲している。空間領域241及び243は集合的に加速室206を形成し得る。従って、図示の実施形態では、サイクロトロン200は、空間領域241を包囲するのみでこれにより空間領域241をサイクロトロンの加速室として画定するような別個の槽も壁も含まない。さらに明確に述べると、真空ポンプ276は、空間領域243を通じて空間領域241に流体結合される。空間領域241に入った気体は空間領域241から空間領域243を通って排気され得る。図示の実施形態では、真空ポンプ276は空間領域243に流体結合されて、空間領域243に隣接して位置している。
【0031】
図3は、サイクロトロン200、さらに明確に述べると下部233の拡大側断面である。ヨーク本体204は、加速室206へ向けて直接開いている真空口278を画定し得る。真空ポンプ276は、真空口278においてヨーク本体204に直接結合され得る。真空口278は、真空ポンプ276への入口又は開口を提供しており、望ましくない気体粒子が真空口278を通過して流れるようにしている。真空口278は、当該真空口278を通る気体粒子の所望のコンダクタンス(流通性)を提供するように成形され得る(他の因子、及びサイクロトロン200の寸法と共に)。例えば、真空口278は、円形、方形状、又は他の幾何学的形状を有し得る。
【0032】
真空ポンプ276は、ヨーク本体204によって形成されるポンプ収容(PA)窩282の内部に配置される。PA窩282は加速室206に流体結合されて加速室206の空間領域243へ向けて開き、通路P1を含み得る。PA窩282の内部に配置されると、真空ポンプ276の少なくとも一部がヨーク本体204(図2)の外被207の内部に入る。真空ポンプ276は、中央面232に沿って中心領域238又は中心軸236から半径方向外向きに離隔して突出し得る。真空ポンプ276は、ヨーク本体204の外被207を越えて突出していてもいなくてもよい。例として述べると、真空ポンプ276は、加速室206とプラットフォーム220との間に位置し得る(すなわち真空ポンプ276は加速室206の直下に位置する)。他の実施形態では、真空ポンプ276はまた、他の位置において中央面232に沿って中心領域238から半径方向外向きに離隔して突出していてもよい。例えば、真空ポンプ276は、図2において加速室206の上方に又は後方に位置し得る。代替的な実施形態では、真空ポンプ276は、中心軸236に平行な方向に面208又は210の一方から離隔して突出し得る。また、一つのみの真空ポンプ276を図3に示しているが、代替的な実施形態は多数の真空ポンプを含み得る。さらに、ヨーク本体204は追加のPA窩を有し得る。
【0033】
真空ポンプ276は、槽壁280及び内部に保持された真空又はポンプ・アセンブリ283を含んでいる。槽壁280は、PA窩282の内部に収まってポンプ・アセンブリ283を内部に保持するような寸法及び形状を有する。例えば、槽壁280は、当該槽壁280がサイクロトロン200からプラットフォーム220まで延在するときに実質的に円形断面を有し得る。代替的には、槽壁280は他の断面形状を有していてもよい。槽壁280は、ポンプ・アセンブリ283が実効的に動作するのに十分な空間を内部に提供し得る。壁面354は開口356を画定することができ、ヨーク区画228及び230は真空口278に近接して位置する対応する辺縁部286及び288を形成し得る。辺縁部286及び288は、開口356から真空口278まで延在する通路P1を画定し得る。真空口278は通路P1及び加速室206へ向けて開いており、径D2を有する。開口356は径D5を有する。径D2及びD5は、サイクロトロン200が放射性同位体の生成時に所望の効率で動作するように構成され得る。例えば、径D2及びD5は、磁極間隙Gを含めた加速室206の寸法及び形状、並びにポンプ・アセンブリ283の動作コンダクタンスに基づき得る。特定的な例として、径D2は約250mm〜約300mmであってよい。
【0034】
ポンプ・アセンブリ283は、サイクロトロン200が放射線同位体の生成時に所望の動作効率を有するように加速室206を実効的に排気する1又は複数の吸排気装置284を含み得る。ポンプ・アセンブリ283は、1又は複数の運動量輸送型ポンプ、容積移送型ポンプ、及び/又は他の形式のポンプを含み得る。例えば、ポンプ・アセンブリ283は、拡散ポンプ、イオン・ポンプ、クライオポンプ、ロータリー・ポンプ若しくは粗引きポンプ、及び/又はターボ分子ポンプを含み得る。ポンプ・アセンブリ283はまた、複数の同一形式のポンプ、又は異なる形式を用いた複数ポンプの組み合わせを含み得る。ポンプ・アセンブリ283はまた、上述のポンプの異なる特徴又はサブシステムを用いた混成型ポンプを有し得る。図3に示すように、ポンプ・アセンブリ283はまた、空気を周囲雰囲気に放出し得るロータリー・ポンプ又は粗引きポンプ285と直列に流体結合されていてもよい。
【0035】
さらに、ポンプ・アセンブリ283は、付加的なポンプ、槽又はチェンバ、コンジット、ライナ、換気弁を含めた弁、計器、シール、油、及び排気管のように気体粒子を除去する他の構成要素を含み得る。加えて、ポンプ・アセンブリ283は、冷却システムを含み又は冷却システムに接続され得る。また、ポンプ・アセンブリ283全体は、PA窩282の内部(すなわち外被207の内部)に収まっていてもよいし、代替的には、構成要素の一つのみ又は複数がPA窩282の内部に位置していてもよい。この実施形態の例では、ポンプ・アセンブリ283は、PA窩282の内部に少なくとも部分的に位置する少なくとも一つの運動量輸送型真空ポンプ(例えば拡散ポンプ又はターボ分子ポンプ)を含んでいる。
【0036】
また図示のように、真空ポンプ276は、加速室206の内部で圧力センサ312に結合されて連絡し得る。加速室206が予め決められた圧力に達すると、吸排気装置284が自動的に起動され又は自動的に停止され得る。図示していないが、加速室206又はPA窩282の内部に付加的なセンサが存在していてもよい。
【0037】
図4は、実施形態に従って形成されて真空ポンプ276(図2)として用いられ得るターボ分子ポンプ376の側面図を示す。ターボ分子ポンプ376は、真空口278においてヨーク本体204に直接結合され得る(すなわちヨーク本体204から離隔してPA窩から外に延在するコンジット又はダクトを通してヨーク本体204に結合されているのではない)。ターボ分子ポンプ376は、中心軸290に沿って磁石ヨークの口378とプラットフォーム375との間に延在し得る。ターボ分子ポンプ376は、回転ファン305に結合されて動作するモータ302を含んでいる。回転ファン305は、1又は複数の段を成すロータ・ブレード304及びステータ・ブレード306を含み得る。各々のロータ・ブレード304及びステータ・ブレード306は、中心軸290に沿って延在する心棒291から半径方向外向きに突出している。利用時には、ターボ分子ポンプ376は圧縮器と同様に動作する。ロータ・ブレード304、ステータ・ブレード306、及び心棒291は中心軸290の周りを回転する。通路P2に沿って流れる気体粒子は口378を通ってターボ分子ポンプ376に入り、最初にロータ・ブレード304の組によって衝突される。ロータ・ブレード304は、加速室206(図3)のようなサイクロトロンの加速室から離隔するように気体粒子を押し出す形状を有する。ステータ・ブレード306は対応するロータ・ブレード304に隣接して配置され、やはり加速室から離隔するように気体粒子を押し出す。この過程は、ファン305のロータ・ブレード及びステータ・ブレード304及び306の残りの各段を通して続行し、空気の流れは加速室から離隔してターボ分子ポンプ376の底部領域392へ向かう方向に移動する(矢印Fが流れの方向を示す)。気体粒子がターボ分子ポンプ376の底部領域392に到達すると、気体粒子はターボ分子ポンプ376から強制排出されて排気管又はコンジット308を通ることができる。排気管308は、加速室から除去された空気を、槽壁380から突出した出口310に通すように導く。出口210は、ロータリー・ポンプ又は粗引きポンプ(図示されていない)に流体結合され得る。
【0038】
図5は、ヨーク区画228の単体遠近図であって、磁極248、コイル窩268、及び真空ポンプ276(図2)の真空口278(図2)に通じる通路P1をさらに詳細に示す。ヨーク区画228は、図2に示す長さLに等しい径D3を含む実質的に円形の本体を有する。ヨーク区画228は、環部321の内部に画定されている側面開放窩320を含んでいる。環部321は、中心軸236の周りに延在して側面開放窩320の周辺を画定する内面322を有する。ヨーク区画228はまた、環部321の周りに延在する外面326を有する。環部321の半径方向厚みT2が、内面322と外面326との間に画定される。
【0039】
図示のように、磁極248は側面開放窩320の内部に位置する。環部321及び磁極248は互いに同心であり、貫通して延在する中心軸236を有する。磁極248及び内面322は間にコイル窩268の少なくとも一部を画定している。幾つかの実施形態では、ヨーク区画228は、環部321に沿って延在して半径方向線237及び239によって画定される平面に平行に延在する対を成す表面324を含んでいる。対を成す表面324は、ヨーク区画228及び230が中央面232(図2)に沿って合体されるときにヨーク区画230の対向する対を成す表面(図示されていない)と合体するように構成されている。
【0040】
また図示のように、ヨーク区画228は、通路P1及びPA窩282(図3)を部分的に画定するヨーク凹部330を含み得る。ヨーク区画230は、ヨーク本体204(図2)が通路P1及びPA窩282を形成するように類似の形状を有するヨーク凹部340(図6に示す)を有し得る。ヨーク凹部330は、ヨーク本体204が完全に形成されたときに真空ポンプ276を収容するような形状を有する。例えば、ヨーク凹部330は、矩形形状を有して中心軸236へ向けてヨーク区画228の内部まで奥行きD4にわたり延在し得る切除部341を有し得る。切除部341はまた、ヨーク区画228の弧部分に沿って延在する幅W1を有し得る。ヨーク区画228はまた、真空口278(図3)又は通路P1を部分的に画定する押縁(レッジ)部349を形成し得る。押縁部349及び切除部341を含む凹部330は、サイクロトロン200(図2)の動作時に磁場に最小の影響を有するか又は全く影響を有しないような寸法及び形状を有し得る。ヨーク本体204が完全に形成されたときに、ヨーク区画228の切除部341及びヨーク区画230の切除部345が組み合わさってPA窩282、真空口278、及び通路P1を形成する。このようなものとして、PA窩282は、真空ポンプ276が内部に収まり真空口278が円形になり得るように、立方体形状又は箱形状を有し得る。但し、代替的な実施形態では、PA窩282及び真空口278は他の形状を有し得る。
【0041】
一実施形態では、表面322の全て又は一部、及び粒子と相互作用し得る他の任意の表面が銅めっきを施される。銅めっきを施した表面は、多孔質の鉄表面の影響を低減するように構成される。一実施形態では、真空ポンプ276の内面は銅めっきを含み得る。銅めっきを施した内面はまた、表面抵抗を減少させるように構成され得る。
【0042】
図示していないが、ヨーク区画228の半径方向厚みT2を通して延在する付加的な孔、開口、又は通路が存在し得る。例えば、半径方向厚みT2を通して延在するRFフィードスルー及び他の電気的接続が存在し得る。また、粒子ビームがサイクロトロン200(図2)を出るビーム出口通路も存在し得る。さらに、冷却システム(図示されていない)が、加速室206の内部の構成要素を冷却するために半径方向厚みT2を通して延在するコンジットを有し得る。
【0043】
図示の実施形態では、サイクロトロン200は、磁極248の磁極頂252が山331〜334及び谷336〜339を含む扇形構成を形成しているような等時型サイクロトロンである。後にあらためて詳述するように、山331〜334及び谷336〜339は磁極250(図2)の対応する山及び谷と相互作用して、荷電粒子の経路を集束させるための磁場を形成する。
【0044】
図6は、ヨーク区画230の平面図である。ヨーク区画230は、ヨーク区画228(図2)に関して記載したものと同様の構成要素及び特徴を有し得る。例えば、ヨーク区画230は、内部に磁石の磁極250を配置した側面開放窩420を画定する環部421を含んでいる。環部421は、ヨーク区画228の対を成す表面324(図5)と係合するように構成されている対を成す表面424を含み得る。また図示のように、ヨーク区画230はヨーク凹部340を含んでいる。
【0045】
磁極250の磁極頂254は、山431〜434及び谷436〜439を含んでいる。ヨーク区画230はまた、互いへ向けて、且つ磁極250の中心444へ向けて半径方向内向きに延在する無線周波数(RF)電極440及び442を含んでいる。RF電極440及び442は、支持軸(ステム)445及び447からそれぞれ延在する中空のD字形部材441及び443をそれぞれ含んでいる。D字形部材441及び443は、谷436及び438の内部にそれぞれ位置している。支持軸445及び447は、環部421の内面422に結合され得る。また図示のように、ヨーク区画230は、磁極250及び内面422の周囲に配置されている複数の遮断パネル471〜474を含み得る。遮断パネル471〜474は、加速室206の内部の逸失粒子を遮断するように配置される。遮断パネル471〜474はアルミニウムを含み得る。ヨーク区画230はまた、やはりアルミニウムを含み得るビーム・スクレーパ481〜484を含み得る。
【0046】
RF電極440及び442は、図1に関して記載されている電場システム106のようなRF電極システムを形成することができ、このシステムにおいてRF電極440及び442は加速室206(図2)の内部の荷電粒子を加速する。RF電極440及び442は互いに協働して、予め決められた周波数(例えば100MHz)に同調された誘導素子と容量素子とを含む共振系を形成する。RF電極システムは、1又は複数の増幅器と連絡した周波数発振器を含み得る高周波電力発生器(図示されていない)を有し得る。RF電極システムは、RF電極440及び442の間に交流電位を生成し、これにより荷電粒子を加速する。
【0047】
図7は、一実施形態に従って形成される同位体生成システムの遠近図である。システム500は、病院設定又は臨床設定の範囲内で用いられるように構成されており、システム100(図1)及びサイクロトロン200(図2〜図6)と共に用いられる類似の構成要素及びシステムを含み得る。システム500は、サイクロトロン502と、患者と共に用いられる放射性同位体を発生するターゲット・システム514とを含み得る。サイクロトロン502は、当該サイクロトロン502が起動されたときに荷電粒子が予め決められた経路に沿って移動する加速室533を画定している。利用時には、サイクロトロン502は予め決められた又は所望のビーム経路536に沿って荷電粒子を加速して、粒子をターゲット・システム514のターゲット・アレイ532に導く。ビーム経路536は加速室533からターゲット・システム514の内部まで延在しており、破線として示されている。
【0048】
図8は、サイクロトロン502の断面である。図示のように、サイクロトロン502は、サイクロトロン200(図2)と類似の特徴及び構成要素を有する。但し、サイクロトロン502は、共に介設されている三つの区画528〜530を含み得る磁石ヨーク504を含んでいる。さらに明確に述べると、サイクロトロン502は、ヨーク区画528及び530の間に位置する環区画529を含んでいる。環区画及びヨーク区画528〜530は図示のように共に積層されており、ヨーク区画528及び530は中央面534を挟んで互いに対面して内部に磁石ヨーク504の加速室506を画定している。図示のように、環区画529は、真空ポンプ576の口578に通じる通路P3を画定し得る。真空ポンプ576は真空ポンプ276(図2)と類似の特徴及び構成要素を有することができ、ターボ分子ポンプ376(図4)のようなターボ分子ポンプであってよい。
【0049】
図7に戻り、システム500は、開いて互いに対面する可動式隔壁552及び554を含むシュラウド又は筐体524を含み得る。図7に示すように、隔壁552及び554は両方とも開放位にある。筐体524は、放射線を遮蔽するのを容易にする材料を含み得る。例えば、筐体は、ポリエチレン及び選択随意で鉛を含み得る。閉じたときには、隔壁554はターゲット・システム514のターゲット・アレイ532及びユーザ・インタフェイス558を覆うことができる。隔壁552は、閉じたときにサイクロトロン502を覆うことができる。
【0050】
また図示のように、サイクロトロン502のヨーク区画528は、開放位と閉鎖位との間で移動自在であり得る。(図7は開放位を示し、図8は閉鎖位を示す。)ヨーク区画528は、当該ヨーク区画528が扉又は蓋のように回動して開いて加速室533への接近を提供することを可能にするヒンジ(図示されていない)に取り付けられ得る。ヨーク区画530(図8)もまた、開放位と閉鎖位との間で移動自在であってもよいし、環区画529(図8)と密着され又は一体形成されていてもよい。
【0051】
さらに、真空ポンプ576は、環区画529及び筐体524のポンプ室562の内部に位置し得る。ポンプ室562は、隔壁552及びヨーク区画528が開放位にあるときに接近され得る。図示のように、真空ポンプ576は、水平の支持体520から口578の中心を通って延在する鉛直軸が中心領域538と交差するように加速室533の中心領域538の下方に位置する。また図示のように、ヨーク区画528及び環区画529は、遮蔽凹部560を有し得る。ビーム経路536は遮蔽凹部560を通って延在している。
【0052】
本書に記載される実施形態は、医療用途のための放射性同位体を生成することに限定されるものではなく、他の同位体を生成し、他のターゲット物質を用いてもよい。さらに、図示の実施形態では、サイクロトロン200は鉛直配向の等時型サイクロトロンである。しかしながら、代替的な実施形態は、他種のサイクロトロン及び他の配向(例えば水平)を含み得る。
【0053】
以上の記載は例示説明のためのものであって制限するものではないことを理解されたい。例えば、上述の各実施形態(及び/又は各実施形態の諸観点)を互いに組み合わせて用いてよい。加えて、本発明の範囲を逸脱することなく、特定の状況又は材料を発明の教示に合わせて適応構成する多くの改変を施すことができる。本書に記載されている材料の寸法及び形式は、本発明の各パラメータを定義するためのものであるが、限定するものではなく例示する実施形態である。以上の記載を吟味すれば、当業者には他の多くの実施形態が明らかとなろう。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲に関連して、かかる特許請求の範囲が網羅する等価物の全範囲と共に決定されるものとする。特許請求の範囲では、「including包含する」との用語は「comprising含む」の標準英語の同義語として、また「in whichこのとき」との用語は「whereinここで」の標準英語の同義語として用いられている。また、特許請求の範囲では、「第一」、「第二」及び「第三」等の用語は単にラベルとして用いられており、これらの用語の目的語に対して数値的要件を課すものではない。さらに、特許請求の範囲の制限は、「手段プラス機能(means-plus-function)」形式で記載されている訳ではなく、かかる特許請求の範囲の制限が、「〜のための手段」に続けて他の構造を含まない機能の言明を従えた文言を明示的に用いていない限り、合衆国法典第35巻第112条第6パラグラフに基づいて解釈されるべきではない。
【0054】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0055】
100:同位体生成システム
102:サイクロトロン
104:イオン生成源システム
106:電場システム
108:磁場システム
110:真空システム
112:荷電粒子ビーム
114:ターゲット・システム
115:引き出しシステム
116:ターゲット物質
117:ビーム輸送路
118:制御システム
120:ターゲット域
122:冷却システム
124:筐体
200:サイクロトロン
202:磁石ヨーク
204:ヨーク本体
205:外面
206:加速室
207:外被
208、210:側面
212:上端
214:下端
216、217、218、219:隅部
220:プラットフォーム
228、230:ヨーク区画
231:上部
232:中央面
233:下部
236:中心軸
237、239:半径方向線
238:中心領域
241:内空間領域
243:外空間領域
248、250:磁極
252、254:磁極頂
260:磁石アセンブリ
264、266:磁石コイル
268、270:磁石コイル窩
272、274:室壁
276:真空ポンプ
278:真空口
280:槽壁
282:ポンプ収容窩
283:ポンプ・アセンブリ
284:吸排気装置
285:粗引きポンプ
286、288:辺縁部
290:中心軸
291:心棒
302:モータ
304:ロータ・ブレード
305:回転ファン
306:ステータ・ブレード
308:排気管
310:出口
312:圧力センサ
320:側面開放窩
321:環部
322:内面
324:対を成す表面
326:外面
330、340:ヨーク凹部
331、332、333、334:山
336、337、338、339:谷
340:凹部
341、345:切除部
349:押縁部
354:壁面
356:開口
375:プラットフォーム
376:ターボ分子ポンプ
378:磁石ヨークの口
380:槽壁
392:底部領域
420:側面開放窩
421:環部
422:内面
424:対を成す表面
431、432、433、434:山
436、437、438、439:谷
440、442:無線周波数電極
441、443:D字形部材
444:中心
445、447:支持軸
471、472、473、474:遮断パネル
481、482、483、484:ビーム・スクレーパ
500:同位体生成システム
502:サイクロトロン
504:磁石ヨーク
506:加速室
514:ターゲット・システム
520:支持体
524:筐体
528、530:ヨーク区画
529:環区画
532:ターゲット・アレイ
533:加速室
534:中央面
536:ビーム経路
538:中心領域
552、554:可動式隔壁
558:ユーザ・インタフェイス
560:遮蔽凹部
562:ポンプ室
576:真空ポンプ
578:真空ポンプの口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を所望の経路に沿って導くように磁場を発生する磁石アセンブリと、
加速室を包囲するヨーク本体を有する磁石ヨークであって、前記磁石アセンブリは前記ヨーク本体に位置し、該ヨーク本体は、前記加速室に流体結合されているポンプ収容(PA)窩を形成する、磁石ヨークと、
前記加速室に真空を導入するように構成されており、前記PA窩に配置される真空ポンプと
を備えたサイクロトロン。
【請求項2】
前記加速室は、前記磁石ヨークの中央面に沿って配向される円板形を有し、前記中央面は前記PA窩を通って延在する、請求項1に記載のサイクロトロン。
【請求項3】
前記ヨーク本体は、第一及び第二の磁石コイルを収容するように構成されている磁石コイル窩を含んでおり、前記第一及び第二の磁石コイルは、前記磁石ヨークの中央面を挟んで互いに対向して位置し且つ互いから隔設され、前記PA窩は、前記第一及び第二の磁石コイルの間に通路を含んでいる、請求項1に記載のサイクロトロン。
【請求項4】
前記PA窩は、真空口を通して前記加速室に流体結合されており、前記真空口は、前記加速室から前記PA窩への粒子の流通性を促進する寸法を有する、請求項1に記載のサイクロトロン。
【請求項5】
前記ヨーク本体は、当該ヨーク本体の中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁極を含んでおり、該各磁極は、荷電粒子が所望の経路に沿って導かれる第一の空間領域を間に有し、
前記磁石アセンブリは、前記ヨーク本体の内部で前記中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁石コイルを含んでおり、各々の磁石コイルが対応する磁極を包囲しており、前記各磁石コイルは、前記第一の空間領域を包囲する第二の空間領域を間に有し、前記第一及び第二の空間領域は前記磁石ヨークの前記加速室を集合的に形成し、前記真空ポンプは、前記第一及び第二の空間領域の内部に真空を保つように構成されている、請求項1に記載のサイクロトロン。
【請求項6】
前記第二の空間領域を挟んで互いに対向する一対の室壁をさらに含んでおり、各々の室壁が対応する磁極の周囲に延在して、対応する磁石コイルを前記加速室から離隔している、請求項5に記載のサイクロトロン。
【請求項7】
前記ヨーク本体は、前記中央面に垂直な中心軸に関して配向されており、該中心軸は前記各磁極の中心を通って延在し、前記中央面は前記真空ポンプを通って延在している、請求項5に記載のサイクロトロン。
【請求項8】
荷電粒子を所望の経路に沿って導くように磁場を発生する磁石アセンブリと、
加速室を包囲するヨーク本体を有する磁石ヨークであって、前記磁石アセンブリは前記ヨーク本体に位置し、該ヨーク本体は、前記加速室に流体結合されているポンプ収容(PA)窩を形成する、磁石ヨークと、
前記加速室に真空を導入するように構成されており、前記PA窩に配置される真空ポンプと、
同位体を生成するために前記荷電粒子を受け取るように配置されているターゲット・システムと
を備えた同位体生成システム。
【請求項9】
前記加速室は、前記磁石ヨークの中央面に沿って配向される円板形を有し、前記中央面は前記PA窩を通って延在する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ヨーク本体は、第一及び第二の磁石コイルを収容するように構成されている磁石コイル窩を含んでおり、前記第一及び第二の磁石コイルは、前記磁石ヨークの中央面を挟んで互いに対向して位置し且つ互いから隔設され、前記PA窩は、前記第一及び第二の磁石コイルの間に通路を含んでいる、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記PA窩は、真空口を通して前記加速室に流体結合されており、前記真空口は、前記加速室から前記PA窩への粒子の流通性を促進する寸法を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記ヨーク本体は、当該ヨーク本体の中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁極を含んでおり、該各磁極は、荷電粒子が所望の経路に沿って導かれる第一の空間領域を間に有し、
前記磁石アセンブリは、前記ヨーク本体の内部で前記中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁石コイルを含んでおり、各々の磁石コイルが対応する磁極を包囲しており、前記各磁石コイルは、前記第一の空間領域を包囲する第二の空間領域を間に有し、前記第一及び第二の空間領域は前記磁石ヨークの前記加速室を集合的に形成し、前記真空ポンプは、前記第一及び第二の空間領域の内部に真空を保つように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記ヨーク本体は、前記中央面に垂直な中心軸に関して配向されており、該中心軸は前記各磁極の中心を通って延在し、前記中央面は前記真空ポンプを通って延在している、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
ヨーク本体を有する磁石ヨークであって、前記ヨーク本体は、当該ヨーク本体の中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁極を含んでおり、該各磁極は、荷電粒子が所望の経路に沿って導かれる第一の空間領域を間に有する、磁石ヨークと、
前記ヨーク本体の内部で前記中央面を挟んで互いに対向して位置する一対の磁石コイルであって、各々の磁石コイルが対応する磁極を包囲しており、当該各磁石コイルは、前記第一の空間領域を包囲する第二の空間領域を間に有し、前記第一及び第二の空間領域は前記磁石ヨークの加速室を集合的に形成する、一対の磁石コイルと、
前記加速室に流体結合されており、前記第一及び第二の空間領域の内部に真空を保つように構成されている真空ポンプと
を備えたサイクロトロン。
【請求項15】
前記第二の空間領域を挟んで互いに対向する一対の室壁をさらに含んでおり、各々の室壁が対応する磁極の周囲に延在して、対応する磁石コイルを前記加速室から離隔している、請求項14に記載のサイクロトロン。
【請求項16】
前記真空ポンプは、前記第二の空間領域へ向けて開いた真空口に直接結合されている、請求項14に記載のサイクロトロン。
【請求項17】
前記ヨーク本体は、前記中央面に垂直な中心軸に関して配向されており、該中心軸は前記各磁極の中心を通って延在している、請求項14に記載のサイクロトロン。
【請求項18】
前記磁石コイル同士を離隔する距離が、前記磁極同士を離隔する距離よりも大きい、請求項14に記載のサイクロトロン。
【請求項19】
前記ヨーク本体は、前記第二の空間領域に流体結合されているポンプ収容(PA)窩を形成しており、前記真空ポンプは前記PA窩の内部に配置される、請求項14に記載のサイクロトロン。
【請求項20】
前記PA窩は、真空口を通して前記加速室に流体結合されており、前記真空口は、前記加速室から前記PA窩への粒子の流通性を促進する寸法を有する、請求項19に記載のサイクロトロン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−526358(P2012−526358A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509828(P2012−509828)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031394
【国際公開番号】WO2010/129157
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】