説明

ポンプ式容器の内容物放出機構および内容物放出機構を備えたポンプ式製品

【課題】蓄圧式の吐出弁を備えたポンプ式容器の内容物放出機構を簡単な構成で実現し、ポンプ式製品の使い勝手の良さおよび吐出弁の切換動作の確実さ,シャープさを担保しながら、そのコストダウン化や組立工程の簡単化を図る。
【解決手段】内容物放出口7aに通じる吐出弁の上方球体9をコイルスプリング10で上方受け部3gに付勢して閉状態としておく。利用者が操作ボタン1を図の右方向に押し込むと連動する操作側ピストン2がバッファ空間域Aの内容物を加圧していくが、この圧力増加だけでは上方球体9は上動せず、上方受け部3gから離間しない。さらに操作ボタン1を押し込むと、後スカート部2aの後端部分が上方球体9を上方受け部3gから強制的に上方に持ち上げるので吐出弁は開状態になり、バッファ空間域Aに入っていた内容物はノズル7の内容物放出口7aから外部空間域に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式容器の内容物放出機構に関し、特に内容物放出口を操作部の作動時にも移動しない固定部材の形で設定して、当該放出口にいたる内容物通路域の吐出弁を弾性部材で積極的に閉状態に設定した上で、内容物放出操作時に当該吐出弁を開状態に強制駆動するようにしたポンプ式容器の内容物放出機構に関する。
【0002】
これにより、利用者が内容物放出操作をしていない静止モードで容器が倒れたような場合にも吐出弁が確実に閉状態に保持されて、吐出弁より上流側の多量の内容物が放出口からこぼれるのを防ぐとともに、内容物放出操作時における吐出弁の開状態への切り換え動作をいわばシャープに、また確実にしたものである。
【0003】
本発明の内容物放出機構は、点鼻薬剤をはじめとする後述の各種内容物のポンプ機構として用いられる。また、放出対象の内容物としては液状,発泡性(泡状),ペースト状,ジェル状,粉状などの各種性状のものがある。
【0004】
本明細書において、
(11)静止モードは、吐出弁が弾性部材の作用で強制的に閉じられた状態のことであり、
(12)放出モードは、操作ボタンの内容物放出操作により吐出弁がそれまでの「開」から「閉」に駆動されて、内容物が外部空間域に放出される状態のことであり、
(13)縦は、容器本体の上下方向(例えば図1の上下方向)のことであり、
(14)横は、この上下方向と略直交する方向(例えば図1の左右方向)のことであり、
(15)前は、横方向における操作ボタン設置側(例えば図1の左側)のことであり、
(16)後は、横方向における操作ボタンとは反対側(例えば図1の右側)のことである。
【背景技術】
【0005】
本件出願人は、ポンプ式容器に収納された内容物放出口を操作部とは別の固定タイプの内容物通路域用部材に設けた内容物放出機構として、下記の特許文献の放出機構を提案している。
【0006】
ここでは、吐出弁を蓄圧式のもの、すなわち当該吐出弁をその閉状態にコイルスプリングで付勢しておき、利用者が操作部を押圧して吸込弁と吐出弁との間の内容物収納空間の内容物圧力が所定の大きさになった時点でその圧力作用によって当該吐出弁が当該コイルスプリングの弾性付勢力に抗する形で開状態に移動する形にしている。
【0007】
このように上記提案済みの内容物放出機構は、
(21)内容物放出口が内容物放出操作の際も移動せずに、
(22)静止モードで不意に容器が倒れても容器内容物が放出部からこぼれることもなく、
(23)また、利用者の内容物放出操作に応じて吐出弁がそれまでの閉状態から開状態に切り替わる,
などの利点を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3177695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記(21)〜(23)の利便性を備えた内容物放出機構をもっと簡単でいわば省略化され、かつ吐出弁が弾性力に抗する態様で強制的に駆動されて閉状態に移行する形の放出機構として提供し、ポンプ式製品の使い勝手の良さおよび吐出弁の切換動作の確実さ,シャープさを担保しつつ、そのコストダウン化や組立工程の簡単化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)ポンプ式容器の内容物放出操作用の操作部(例えば後述の操作ボタン1)と、
前記操作部と連動するピストン(例えば後述の操作側ピストン2)と、
前記ピストンの移動に応じてそれぞれ作動する吸込弁(例えば後述の下方球体12,下方受け部11b)および吐出弁(例えば後述の上方球体9,上方受け部3g)と、
前記吐出弁を閉状態に付勢する弾性部材(例えば後述の縦向きコイルスプリング10)と、
前記操作部とは別部材であって、次回の放出対象となる内容物の収容空間域(例えば後述のバッファ空間域A)を前記吸込弁,前記吐出弁および前記ピストンとの間に設定し、かつ、前記操作部の内容物放出操作時にも移動しない形の内容物通路域用部材(例えば後述のネジキャップ3,ノズル7,コマ部材8,ハウジング11)と、
前記内容物通路域用部材の下流端部に形成された内容物放出口(例えば後述の内容物放出口7a)と、
前記操作部と連動してその内容物放出操作時に前記吐出弁をそれまでの開状態から閉状態に移行させる吐出弁駆動部(例えば後述の後スカート部2a)と、
を備えた内容物放出機構を用いる。
(2)上記(1)において、
前記吐出弁駆動部として、
前記ピストンの一部に形成されたピストン側駆動部を用いる。
(3)上記(2)において、
前記ピストン側駆動部として、
前記内容物収納空間に対するシール作用部分を兼ねた駆動部を用いる。
【0011】
本発明は、以上の特徴を持つ内容物放出機構を対象とするとともに、この内容物放出機構を備えたポンプ式製品も対象にしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記(21)〜(23)の利便性を備えた内容物放出機構をもっと簡単でいわば省略化され、かつ吐出弁が弾性力に抗する態様で強制的に駆動されて閉状態に移行する形の放出機構として提供するので、ポンプ式製品の使い勝手の良さおよび吐出弁の切換動作の確実さ,シャープさを担保しつつ、そのコストダウン化や組立工程の簡単化を図ることができる。
【0013】
また、後述のように、内容物吸上げ用チューブを備えないエアレスタイプと、内容物吸上げ用チューブを備えた減圧防止用エア供給タイプといった異なる種類のポンプ式製品におけるパーツの多くを共通化しているので、ポンプ式製品パーツの管理,利用面での効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】内容物放出機構(その1:内容物吸上げ用チューブなしのエアレスタイプのポンプ式製品)の静止モードを示す説明図である。
【図2】図1の内容物放出機構の放出モードを示す説明図である。
【図3】内容物放出機構(その2:内容物吸上げ用チューブありで容器内部減圧防止用のエア供給タイプのポンプ式製品)の静止モードを示す説明図である。
【図4】図3の内容物放出機構の放出モードを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図4を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1および図2において、
1は鞘状の操作ボタン,
2は操作ボタン1と嵌合して一体化された鞘状の操作側ピストン,
2aは後述の内側筒状部3aの内周面に当接してシール作用を呈し、かつ、内容物放出操作にともなって後述の上方球体9を上方向に駆動する後スカート部,
2bは後述の内側筒状部3aの内周面に当接してシール作用を呈する前スカート部,
2cは静止モードにおいて後述のリップシール6の後面内端部分に当接する環状段部,
3はポンプ式製品の後述の容器本体14の開口側筒状部に螺合するネジキャップ,
3aは操作側ピストン2の後スカート部2aおよび前スカート部2bと密接してこれらを案内する内側横筒状部,
3bは筒状ブッシュ4の後側外周面と嵌合する外側横筒状部,
3cは内容物流入用の縦方向孔部,
3dは当該縦方向孔部へのいわば入口部分となる内側環凹状部,
3eは当該内側環凹状部に囲まれた形の下側天井面中央部,
3fは後述のハウジング11の位置決め作用を呈する外側環凹状部,
3gは縦方向孔部3cの下流側上方に形成されて後述の上方球体9とともに吐出弁を構成する環状の上方受け部,
3hは当該上方受け部の下流側に続く内容物通過用の上内側縦筒状部,
3jは後述のハウジング11のいわば外回りの鍔状部分を保持するための環凹状部,
3kは当該環凹状部の下方に続く部分であって、後述の環状パッキン16の外周面部分を保持(挟持)するための環突状部,
3mは内側横筒状部3aの前端部分に複数形成されて容器本体内部の減圧防止用エア(外気)が通過する切欠状部(図3,図4のポンプ式製品でのみ作動),
4はネジキャップ3と嵌合して、操作ボタン1および操作側ピストン2の前後動に対するガイド機能を備えた筒状ブッシュ,
4aは操作ボタン1のガイド面として作用する前側内周面,
4bは操作側ピストン2のガイド面として作用する中央孔部,
4cは当該中央孔部の周りの部分からなり、径方向断面形状が「ハ字状」であって前方向への斜め起立周回部分,
4dはネジキャップ3の外側横筒状部3bに嵌合している後側筒状部,
5は操作ボタン1の底面外側部分と筒状ブッシュ4の中間面部分(中央孔部4bの回りの環凹状部)との間に配設されて当該操作ボタンを前方向(静止モードの方向)に付勢する横向きコイルスプリング,
6はネジキャップ3の内側横筒状部3aの前端部分と筒状ブッシュ4の周回起立部分4cの回りの後面部分とに挟持された環状のリップシール,
6aは鞘状ピストン2の外周面に密接してシール作用を呈し、その径方向断面形状が周回起立部分4cに対応した「ハ字状」の筒状部分,
7はネジキャップ3の外側上筒状部などと嵌合しているノズル,
7aは上端側に形成された内容物放出口(孔部),
7bは当該内容物放出口にいたる天井面に複数形成された内容物通過用の径方向溝状部,
7cは当該径方向溝状部の直上流側の内周面に複数形成された内容物通過用の縦溝状部,
7dは当該縦溝状部の下端部分内周面に形成された環状段部,
8はネジキャップ3の上内側縦筒状部3hとノズル7の径方向溝状部(天井面)7bとの間に配設された円柱状のコマ部材,
8aはノズル7の環状段部7dおよび当該上内側縦筒状部3hの上端部分に係止された下側大径部,
8bは当該下側大径部の底面および外周面に形成された内容物通過用の径方向・縦方向溝状部,
9はネジキャップ3の上方受け部3gに密接する形で配設された上方球体(吐出弁),
10はコマ部材8と上方球体9との間に配設されて当該上方球体を下方向に付勢する縦向きコイルスプリング,
11はネジキャップ3に係止されて当該ネジキャップおよび操作側ピストン2との間で後述のバッファ空間域Aを画定するハウジング,
11aはネジキャップ3の外側環凹状部3fに位置決めされる環状起立部,
11bはネジキャップ3の下側天井面中央部3eと対向する部分に形成されて後述の下方球体12とともに吸込弁を構成する環状の下方受け部,
11cは当該下方受け部から下方に続く筒状垂下部,
11dは当該下方受け部の外方部分に複数形成されて、それぞれの下端側外面の膨出部分などで後述の環状パッキン17を保持するための垂下片部,
11eは環状起立部11aの外周面の一部から当該ハウジングの鍔状部下面まで貫通する形で設定されて容器本体内部の減圧防止用エア(外気)が通過する溝状孔部(図3,図4のポンプ式製品でのみ作動),
12はハウジング11の下方受け部11bに密接する形で配設された下方球体(吸込弁),
13はハウジング11の筒状垂下部11cに嵌合する形で取り付けられた筒状のエアレスブッシュ,
14は点鼻薬剤などを入れた筒状の容器本体,
14aは容器本体胴部の外周面と嵌合した鞘状の底蓋,
14bは当該底蓋の底面部分に形成されたエア流入用の孔部,
14cは当該底蓋の底面部分に形成された環状起立部,
15は容器本体14に対する可動底部材(フリーピストン),
15aは容器本体14の内周面に密接してシール作用を呈する上下のスカート部,
16は後述の容器内部空間域Bのエアだまり部分を減らすため、容器本体14の天井面側に取り付けられた環状スペーサ,
17はネジキャップ3の環突状部3kとハウジング11の垂下片部11dとに挟持され、かつ、ハウジング11の鍔状部分(の下面)と容器本体14の上端面部分とに挟持された環状パッキン,
Aは次回の放出操作時に放出される内容物が収容されたバッファ空間域(下方球体12から上方球体9までの空間域),
Bはバッファ空間域Aの上流側の内容物が収容された容器内部空間域(可動底部材15から下方球体12までの空間域),
Cは操作側ピストン2の移動に応じて容積が変化するピストン対応空間域(操作側ピストン2,内側横筒状部3aおよびリップシール6などによって画定される空間域),
をそれぞれ示している。
【0017】
図1,図2の内容物放出機構の基本的特徴は、縦向きコイルスプリング10の作用で常時閉状態に設定されている上方球体9(吐出弁)が、操作ボタン1の押圧操作により(当該操作ボタンと連動する)操作側ピストン2の後スカート部2aで駆動されて、それまでの閉状態から強制的に、開状態へと移行することである。
【0018】
これにより、内容物放出機構の静止モードで容器が倒れたときにも内容物が当該吐出弁から外部空間域に漏れることを防止した上で、内容物放出操作にともなう静止モードから放出モードへの移行を確実に、また瞬時におこなうことができる。なお、後述の図3,図4の内容物放出機構の基本的特徴も同じである。
【0019】
図1の静止モードでは、
(31)操作ボタン1および操作側ピストン2が横向きコイルスプリング5の作用で前方向に付勢され、
(32)上方球体9および下方球体12がともに閉じ、
(33)少なくともポンプ式製品を1回でも使用した後の下方球体12から上方球体9までのバッファ空間域Aに、内容物が入っている。
【0020】
図2の、操作ボタン1が押圧されて操作側ピストン2が後方向に移動するとき、
(41)操作側ピストン2の後動に応じる形でバッファ空間域Aの容積が小さくなって、そこの内容物圧力が次第に増加し、
(42)この圧力増加にともない、上方球体9は上方向への力を受け(ただし上方球体9は縦方向コイルスプリング10の下方への押圧作用でネジキャップ3の上方受け部3gに接したまま)、また、下方球体12は下方向への力を受けてハウジング11の下方受け部11bに強く密接し、
(43)そして、操作ボタン1が略図2の位置まで押し込まれた段階では、上方球体9が、操作側ピストン2の後スカート部2aの後端部分でいわば強制的に上方に持ち上がられ、
(44)この上方球体9の上動ともない、バッファ空間域Aに入っていた内容物が「ネジキャップ3の上内側縦筒状部3h−コマ部材8の径方向・縦方向溝状部8b−ノズル7の縦溝状部7c−ノズル7の径方向溝状部7b」を経てノズル7の内容物放出口7aから外部空間域に放出される。
【0021】
そして利用者が操作ボタン1の押圧操作を止める、すなわち操作ボタン1から指を離すと、
(51)当該操作ボタンおよびこれと一体の操作側状ピストン2が、横向きコイルスプリング5の弾性力で前方向に復帰し、
(52)上方球体9(吐出弁)が、縦向きコイルスプリング10の弾性力で下方向に駆動されて、上方受け部3gに密接した閉状態となる。
【0022】
上記(51)の操作側ピストン2の復帰にともない、バッファ空間域Aの容積が増えて当該通路部は容器本体14の容器内部空間域Bに対して負圧化するので、下方球体12(吸込弁)が当該空間域Bの内容物圧力を受けて上動し、当該吸込弁は「開」となる。
【0023】
その結果、容器内部空間域Bの内容物がバッファ空間域Aに流入し、次回の内容物放出操作時の放出対象内容物として収容される。
【0024】
この容器本体内容物のバッファ空間域Aへの流入にともなって、容器本体14の孔部14bから可動底部材15の下方空間域へ外気が流入する。この流入外気の作用で可動底部材15は上動して容器内部空間域Bの内容物圧力が略外気圧に保持される。
【0025】
そして、下方球体12(吸込弁)に対し下方向に作用するバッファ空間域Aの内容物圧力および当該下方球体の自重が、当該下方球体に対して上方向に作用する容器内部空間域Bの内容物圧力を上回ったときに、下方球体12は沈んで下方受け部11bと当接する。すなわち吸込弁が閉じて図1の静止モードに復帰する。
【0026】
なお、操作ボタン1の押圧操作やその解除にともなう操作側ピストン2の前後動によりピストン対応空間域Cの容積が変化する。すなわち、ピストン対応空間域Cの容積は、操作ボタン1の押圧操作にともない増加し、押圧操作解除によって初期状態に戻る。
【0027】
ここで、図1,図2の内容物放出機構はピストン対応空間域Cが閉空間域になっているものの、静止モードから放出モードへの移行にともなうピストン対応空間域Cの図示程度の容積増加(7倍ほど)であれば、当該ピストン対応空間域のエアは静止モードの状態から十分に膨張し、また、押圧操作解除にともなう放出モードから静止モードへの復帰時には、当該エアは膨張前の初期状態に戻る。
【0028】
そのため、特にピストン対応空間域Cに対する外気連通路を設けなくても、操作側ピストン2の前後動に支障はない。なお、当該外気経路を確保すべく、リップシール6を省略するようにしてもよい。
【0029】
図1,図2のネジキャップ3への(容器本体14,可動底部材15および環状スペーサ16を除く)他の構成要素の組立作業手順は、例えば、
(61)筒状ブッシュ4の前側空間域に操作ボタン1および横向きコイルスプリング5を配設した状態で、リップシール6に挟まれた形の操作側ピストン2を筒状ブッシュ4にその後側空間域から入れることにより操作ボタン1と嵌合させて、筒状ブッシュユニットを設定し、
(62)ノズル7の内部空間域にコマ部材8を取りつけて、ノズルユニットを設定し、
(63)ハウジング11の下側部分(筒状垂下部11c,垂下片部11d)にエアレスブッュ13および環状パッキン17を取りつけて、ハウジングユニットを設定し、
(64)上記(61)の筒状ブッシュユニットをネジキャップ3に取りつけ、
(65)ネジキャップ3の上方受け部3gに上方球体9を置き、その上に縦向きコイルスプリング10を配設してから上記(62)のノズルユニットを取りつけ、
(66)上記(63)のハウジングユニットを、その下方受け部11bに下方球体12を置いてからネジキャップ3に取り付ける、
といった作業内容となる。なお、(61)〜(63)の各作業単位の実行順序および、(64)〜(66)の各作業単位の実行順序はそれぞれ任意である。
【0030】
ここで、操作ボタン1,操作側ピストン2,ネジキャップ3,筒状ブッシュ4,横向きコイルスプリング5,リップシール6,ノズル7,コマ部材8,上方球体9,縦向きコイルスプリング10,ハウジング11,下方球体12,エアレスブッシュ13および環状パッキン17の各構成要素は、上記(61)〜(66)の組立後、一つのユニットとして管理,運送することなどができる。
【0031】
図3および図4の内容物放出機構と図1,図2のそれとの構成上の相違点は、
(71)図1,図2の操作側ピストン2に代えて、操作ボタン1の押圧操作およびその解除の際に、ピストン対応空間域Cを外部空間域と連通させ、また容器内部空間域B’に減圧防止用エアを流入させるための横方向溝状部21aを外周面に形成した、操作側ピストン21を用い、
(72)図1,図2のネジキャップ3に代えて、減圧防止用エアの流入用孔部22aを形成したネジキャップ22を用い、
(73)図1,図2のエアレスブッシュ13に代えて、操作ボタンの押圧解除にともない内容物の放出モードから静止モードへと復帰する際に容器本体の内容物を吸い込んでバッファ空間域Aに送るためのチューブ23を用い、
(74)図1,図2の容器本体14および可動底部材15に代えて、固定底部で定量内部空間からなる容器本体24(容器内部空間域B’)を用いた、
ことなどである。
【0032】
ここで、
・操作側ピストン21における横方向溝状部21a以外の部分
・ネジキャップ22の流入用孔部22a以外の部分
はそれぞれ図1,図2の操作側ピストン2およびネジキャップ3の形態と同一である。
【0033】
また、他の構成要素である操作ボタン1,筒状ブッシュ4,横向きコイルスプリング5,リップシール6,ノズル7,コマ部材8,上方球体9,縦向きコイルスプリング10,ハウジング11,下方球体12および環状パッキン17はそれぞれ図1,図2の対応構成要素と同じものである。
【0034】
すなわち、これらの各構成要素は図1,図2のエアレスタイプのポンプ式製品および図3,図4の容器内部減圧防止用のエア供給タイプのポンプ式製品のいずれにも使用できる汎用部品となっている。
【0035】
図3,図4の内容物放出機構の、
・操作ボタン1の押圧操作およびその解除にともなう上方球体9(吐出弁)および下方球体12(吸込弁)の開閉状態の変化や、バッファ空間域Aでの内容物の流入出態様
・静止モードにおける容器内部空間域B’と外部空間域との間の非連通化(リップシール6)
などは、図1,図2の内容物放出機構の場合と同一である。
【0036】
ただ、上述したように、操作ボタン1が押圧されて静止モードから後方向に所定長以上移動した状態では、操作側ピストン21の横方向溝状部21aの部分がリップシール6に当接する。
【0037】
その結果、外部空間域とピストン対応空間域Cとが、「操作ボタン1の外周面と筒状ブッシュ4の前側内周面4aとの隙間部分−操作側ピストン2の外周面と筒状ブッシュ4の中央孔部4bの内周面との隙間部分−横方向溝状部21a」などを経て連通する。
【0038】
また、ピストン対応空間域Cと容器内部空間域B’とが、「ネジキャップ22の切欠状部3m−内側横筒状部3aの外周面と筒状ブッシュ4の後側筒状部4dの内周面との隙間部分−ネジキャップ22の流入用孔部22a−ハウジング11の溝状孔部11e」などを経て連通する。
【0039】
すなわち、操作ボタン1が静止モードから後方に移動した状態のとき、容器内部空間域B’はピストン対応空間域Cおよび外部空間域と連通している。
【0040】
そのため、操作ボタン1がその押圧操作解除後に前方に復帰して容器内部空間域B’の内容物がバッファ空間域Aに流入する際には、ピストン対応空間域C(外部空間域)から当該容器内部空間域にエアが流入してそこでの内容物圧力が略外気圧に保持される。
【0041】
図3,図4の内容物放出機構におけるネジキャップ3への(容器本体24を除く)他の構成要素の組立作業手順は、上記(61)〜(64)と同様である。異なるのは上記(63)においてエアレスブッュ13の代わりにチューブ23を用いることである。
【0042】
以上の各構成要素の中、操作ボタン1,操作側ピストン2,21,ネジキャップ3,22,筒状ブッシュ4,ノズル7,コマ部材8,ハウジング11,エアレスブッシュ13,容器本体14,24,可動底部材15,環状スペーサ16およびチューブ23は、ナイロン,ポリアセタール,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリブエチレンテレフタレート,NBR,ネオプレン,ブチルゴムなどからなる合成樹脂製のものである。
【0043】
また、横向きコイルスプリング5,上方球体9,縦向きコイルスプリング10および下方球体12は金属製や合成樹脂製のものである。リップシール6および環状パッキン17はゴム製や合成樹脂製のものである。
【0044】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり、例えば、
(81)図1,図2のポンプ式製品において流入用孔部22aを設けた形のネジキャップ22を用いることにより、エアレスタイプおよびエア供給タイプそれぞれでのネジキャップの共通化を図る(リップシール6は省略しない)、
(82)リップシール6を省略して図3,図4のポンプ式製品の場合にも横方向溝状部21aなしの操作側ピストン2を用いることにより、エアレスタイプおよびエア供給タイプそれぞれでの操作側ピストンの共通化を図る、
ようにしてもよい。
【0045】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、点鼻薬剤,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0046】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0047】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0048】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0049】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0050】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0051】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0052】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0053】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1:操作ボタン
2:操作側ピストン
2a:後スカート部
2b:前スカート部
2c:環状段部
3:ネジキャップ
3a:内側横筒状部
3b:外側横筒状部
3c:縦方向孔部
3d:内側環凹状部
3e:下側天井面中央部
3f:外側環凹状部
3g:上方受け部
3h:上内側縦筒状部
3j:環凹状部
3k:環突状部
3m:切欠状部(図3,図4のポンプ式製品でのみ作動)
4:筒状ブッシュ
4a:前側内周面
4b:中央孔部
4c:起立周回部分
4d:後側筒状部
5:横向きコイルスプリング
6:リップシール
6a:筒状部分
7:ノズル
7a:内容物放出口(孔部)
7b:径方向溝状部
7c:縦溝状部
7d:環状段部
8:コマ部材
8a:下側大径部
8b:径方向・縦方向溝状部
9:上方球体(吐出弁)
10:縦向きコイルスプリング
11:ハウジング
11a:環状起立部
11b:下方受け部
11c:筒状垂下部
11d:垂下片部
11e:溝状孔部(図3,図4のポンプ式製品でのみ作動)
12:下方球体(吸込弁)
13:エアレスブッシュ
14:容器本体
14a:底蓋
14b:孔部
14c:環状起立部
15:可動底部材(フリーピストン)
15a:スカート部
16:環状スペーサ
17:環状パッキン
A:バッファ空間域
B:容器内部空間域
C:ピストン対応空間域
(以下の符号は図3,図4のみで使用)
21:操作側ピストン
21a:横方向溝状部
22:ネジキャップ
22a:流入用孔部
23:チューブ
24:容器本体
B’:容器内部空間域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ式容器の内容物放出操作用の操作部と、
前記操作部と連動するピストンと、
前記ピストンの移動に応じてそれぞれ作動する吸込弁および吐出弁と、
前記吐出弁を閉状態に付勢する弾性部材と、
前記操作部とは別部材であって、
次回の放出対象となる内容物の収容空間域を前記吸込弁,前記吐出弁および前記ピストンとの間に設定し、かつ、前記操作部の内容物放出操作時にも移動しない形の内容物通路域用部材と、
前記内容物通路域用部材の下流端部に形成された内容物放出口と、
前記操作部と連動してその内容物放出操作時に前記吐出弁をそれまでの開状態から閉状態に移行させる吐出弁駆動部と、
を備えたことを特徴とする内容物放出機構。
【請求項2】
前記吐出弁駆動部は、
前記ピストンの一部に形成されたピストン側駆動部である、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出機構。
【請求項3】
前記ピストン側駆動部は、
前記内容物収納空間に対するシール作用部分を兼ねている、
ことを特徴とする請求項2記載の内容物放出機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の内容物放出機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228794(P2010−228794A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80226(P2009−80226)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】