説明

ポンプ

【課題】シリンダB2に対して上方付勢状態で上下動可能に装着した作動部材B5を備え、該作動部材B5は、ステムB5a 外周下端部に吐出弁座60a を突設するとともに、該吐出弁座60a 上方のステムB5a 外周にフランジ70を介して垂設したシール筒72を備え、ピストンB5d 内周縁に起立する筒状の内周上部摺動部93をシール筒72に摺動可能に嵌合させ、ピストン内周縁に垂下する筒状の吐出弁体部94と吐出弁座60a とで吐出弁95を構成し、ステムB5a の下端部に、開弁した吐出弁95からの液をステムB5a 内に導入する連通窓63を穿設してなるポンプであって、ステムの充分な強度を保て、しかも、ピストンの作動不良等の虞がないポンプを提案するものである。
【解決手段】連通窓63の縦幅を短くしてその上方に、ステムB5a 外面を凹ませた形態の排水用凹部64を連設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンをステムに対して相対上下動が可能に装着した作動部材を備えたポンプが種々提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
【0003】
上記特許文献1に記載されたポンプは、シリンダ内を摺動するピストンをステムの外周下部に所定幅の相対上下動が可能に嵌合させ、前記シリンダに対して上方付勢状態で上下動可能に装着した作動部材を備えている。また、作動部材は、前記ステム外周下端部に吐出弁座を突設するとともに、該吐出弁座上方の前記ステム外周にフランジを介して垂設したシール筒を備えている。更に、前記ピストンは、内周縁に起立する筒状の内周上部摺動部を前記シール筒に摺動可能に嵌合させるとともに、内周縁に垂下する筒状の吐出弁体部と前記吐出弁座とで吐出弁を構成し、前記ステムに内外を連通する連通窓を穿設している。
【0004】
そして、作動部材の最上昇位置では吐出弁が閉じた状態であり、この状態から作動部材を押し下げると当初ピストンは最上昇位置に止まりステムのみが下降して吐出弁が開き、吐出弁下方のシリンダ内の加圧液が窓を介してステム内を通り、ステム上端に嵌着された噴出ヘッドの噴出口より噴出される。吐出弁が開いてステムの下降が始まった直後にシール筒によりピストンは押し下げられるため、そこからはピストンもステムと一緒に下降し液の噴出を続ける。
【0005】
作動部材が最下降位置まで押し下げられた後作動部材の押圧を解除すると、作動部材の上方付勢力により作動部材は上昇し、その際ピストンはシリンダ内の負圧力等により同所に止まるためステムのみが上昇し、吐出弁がとじる。以降は吐出弁座によりピストンが押し上げられて吐出弁を閉じた状態でステムと一緒に上昇し、最上昇の元の状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−154900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のこの種のポンプでは、その連通窓がステム下端部の弁座直上位置から、シール筒に対して最上昇位置にあるピストンの最上端位置程度のシール筒の上部位置までの縦幅の広い縦長な窓として穿設されていた。このことは、縦長な窓でないと作動部材の初期作動時にピストンがステムと一緒に下がってしまって吐出弁が開かない或いは開き難くなる虞があり、作動部材の押し下げが重くなる虞があるいという不都合を防止するためにその様な形態を採っていた。しかしながら、この様な長い窓を穿設したステムの場合には組み付け操作の際等の強度、特に座屈強度に不安が生じる虞があった。
【0008】
本発明はこの点に鑑みてなされたもので、ステムの充分な強度を保て、しかも、ピストンの作動不良等の虞がないポンプを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、シリンダB2内を摺動するピストンB5d をステムB5a の外周下部に所定幅の相対上下動が可能に嵌合させ、シリンダB2に対して上方付勢状態で上下動可能に装着した作動部材B5を備え、該作動部材B5は、ステムB5a 外周下端部に吐出弁座60a を突設するとともに、該吐出弁座60a 上方のステムB5a 外周にフランジ70を介して垂設したシール筒72を備え、ピストンB5d は、内周縁に起立する筒状の内周上部摺動部93をシール筒72に摺動可能に嵌合させるとともに、内周縁に垂下する筒状の吐出弁体部94と吐出弁座60a とで吐出弁95を構成し、ステムB5a の下端部に、開弁した吐出弁95からの液をステムB5a 内に導入する連通窓63を穿設してなるポンプに於いて、連通窓63の縦幅を短くしてその上方に、ステムB5a 外面を凹ませた形態の排水用凹部64を連設した。
【0010】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、連通窓63及び排水用凹部64を対向位置に一対設けた。
【0011】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、作動部材B5は、ステムB5a と、ステムB5a の上部に嵌合させた下部をフランジ70を介して大径化したシール筒72に構成した連結筒B5b と、連結筒B5b 上端部に嵌着した噴出ヘッドB5c とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連通窓63の縦幅を短くしてその上方に、ステムB5a 外面を凹ませた形態の排水用凹部64を連設したので、従来品と比較して連通窓63が小さく、従って、ステムB5a の強度が充分保たれ、特に座屈強度が大きくなり組み付け時におけるステムB5a の変形等の不都合を極力防止できる。また、排水用凹部64の存在でステムB5a とシール筒72との間に侵入した液がピストンB5d の内周上部摺動部93に邪魔されて下方へ排出されず、その結果ピストンB5d のステムB5a に対する相対移動に支障を来すというような不都合を防止でき、上記液の排出を円滑に行えて作動時にピストンB5d の相対移動は極めて円滑に行え、作動部材B5の押し下げが重くなる等の不都合を防止する利点も備えている。尚、連通窓63の縦幅を短くしてもステムB5a 内への充分な液の供給は可能である。
【0013】
連通窓63及び排水用凹部64を対向位置に一対設けた場合には、液の流れが平均化され、また、ステムB5a の組み付け時等に負荷が偏っての変形等を起こす虞が少ない。
【0014】
作動部材B5は、ステムB5a と、ステムB5a の上部に嵌合させた下部をフランジ70を介して大径化したシール筒72に構成した連結筒B5b と、連結筒B5b 上端部に嵌着した噴出ヘッドB5c とを備えている構成の場合には、ステムB5a の長さが短くなる傾向があり、そのため連通窓63の占める割合が大きくなるが、上記構成の連通窓63及び排水用凹部64の構成を備えているため、その強度を充分保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ポンプの縦断面図である。(実施例1)
【図2】作動部材押し下げ直後のポンプの縦断面図である。(実施例1)
【図3】ポンプの要部拡大断面図である。(実施例1)
【図4】ステムの連通窓及び排水用凹部部分を示す要部拡大図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は容器体Aに装着したポンプBの一例を示す。
【0018】
容器体Aは、胴部10より肩部11を介して口頸部12を起立している。
【0019】
ポンプBは、装着キャップB1と、シリンダB2と、係止部材B3と、ポペット弁体B4と、作動部材B5とを備えている。
【0020】
装着キャップB1は、容器体Aの口頸部12外周に嵌合させる周壁20の上端縁よりフランジ状の頂壁21を延設し、頂壁21の内周縁より案内筒22を起立している。
【0021】
シリンダB2は、容器体口頸部12に嵌合させた装着キャップB1により容器体Aに固定したもので、周壁30の上端よりフランジ31を延設し、また、周壁30の下端部からはテーパー状の底壁32を介してパイプ嵌合筒33を垂設している。パイプ嵌合筒33にはパイプ34を嵌着させ容器体A内下部に垂下させている。また、周壁30内周下端部から底壁32上面にわたり形成され、上面に上向きの段部35を備えた係止リブ36を周方向複数突設している。
【0022】
そして、フランジ31を装着キャップB1の頂壁21裏面に嵌合させて一体化し、周壁30の内周上端部には係止部材B3を嵌着している。係止部材B3は、シリンダB2の周壁内周上端部に嵌着した係止筒40を、外周をシリンダB2のフランジ31と装着キャップB1の頂壁21との間に嵌着したリング状頂板41の下面より垂設し、リング状頂板41の内周より案内筒22内下部に起立する筒部42を立設している。
【0023】
シリンダB2内下端部にはポペット弁体B4を装着している。ポペット弁体B4は、下部を大径の筒状部50に形成するとともに、上部を小径の棒状部51に形成し、筒状部50の下面とシリンダB2の底壁32上面が形成する吸込み弁座32a とで吸込み弁52を形成している。また、筒状部50外周面には突片53を周方向複数突設している。そして、シリンダB2の係止リブ36の上面に下端を係止させたコイルスプリングsの下面に各突片53の上面が当接する位置から、筒状部50下面が吸込み弁座32a に当接して吸込み弁52が閉まる位置までの上下動が可能に装着されている。上記の如く装着キャップB1に嵌合したシリンダB2は、口頸部12外周に周壁20を嵌合させて装着キャップB1を装着することで、フランジ31を容器体口頸部12上面との間にパッキンpを介して圧接し、容器体A内に垂下して装着する。
【0024】
作動部材B5は、ステムB5a と、連結筒B5b と、噴出ヘッドB5c と、ピストンB5d とを備えている。
【0025】
ステムB5a は、上下端を開口した筒状をなし、外周下端部より外方へ環状突部60を突設し、その上面を吐出弁座60a として構成している。また、環状突部60の外周には周方向複数の案内リブ61を突設している。更に、環状突部60の下面とシリンダB2の係止リブ36上面との間にコイルスプリングsを介在させてステムB5a を常時上方へ付勢させ、牽いては作動部材B5を常時上方へ付勢させている。また、ステムの内周下端部からはテーパー筒状をなす環状シール片62を突設し、ポペット弁体B4の棒状部51を液密摺動可能に嵌合突出させている。
【0026】
ステムB5a の下部には連通窓63が穿設されている。本例における連通窓63は、対向位置に一対設けられており、シール筒72の上部から吐出弁座60a の直上までのステム対応位置に於いて、その下半部の縦幅を備えている。従って、通常のこの種のポンプに於ける連通窓63の約半分の縦幅を備えている。また、その上半部の縦幅を備えた排水用凹部64を上方にそれぞれ延設している。排水用凹部64は、連通窓63の上縁に連続してステムB5a 外面を凹設した形態をなしており、連通窓63と同じ横幅を備えている。
【0027】
排水用凹部64は、図1或いは図3に示す如く、ピストンB5d がステムB5a に対して相対的に最下降位置ある状態から、ステムB5a に対して相対上昇する際にその上方に侵入した液を容易に下方に排出する役割を果たす。従って、ピストンB5d のステムB5a に対する相対最上昇位置において、内周上部摺動部93の上方空間(ステムB5a とシール筒71との間)と排水用凹部64の上端部が連通する如く、排水用凹部64の上端部位置を設定するのが好ましいが、ピストンB5d の上記相対最上昇位置で必ずしも連通状態になくても、それまでのピストンB5d の上昇時に於ける排出で初期の目的は達成できる。因みに、本例ではピストンB5d の内周上部摺動部93の上部を上方へ拡がるテ−パ状に形成しており、排水用凹部64の上端部位置が、ピストンB5d がステムB5a に対する相対最上昇位置にある場合に、ピストンB5d のテーパ状部分の下端より上方に位置する如く構成している。
【0028】
連通窓63及び排水用凹部64をの横幅は、従来の縦長な連通窓の場合と同様の横幅を採用でき、収容液の粘度等により適宜選択すると良い。因みに、連通窓63を一対設けた場合の各連通窓63の横幅としては、ステムB5a の内周角の30〜75度相当の横幅が適当とおもわるがこれに限られるものでもない。
【0029】
連結筒B5b は、ステムB5a の外周上部に嵌合させた下端部をフランジ70を介して拡径し、シール筒72として垂設している。
【0030】
噴出ヘッドB5c は、連結筒B5b の上端外周に下部を嵌合させた縦筒80を頂板81裏面より垂設し、頂板81周縁からは周壁82を垂設し、また、縦筒80の上部に基端を開口し、周壁82を貫通して前方へ延びるノズル83を延設している。
【0031】
ピストンB5d は、環状の連結板90の外周縁より起立した筒状の外周上部摺動部91と、連結板90の外周より垂下した筒状の外周下部摺動部92と、連結板90の内周縁より起立した筒状の内周上部摺動部93と、連結板90の内周より垂下した筒状の吐出弁体部94とを備えた断面H状をなす環状で、外周上部摺動部91及び外周下部摺動部92をシリンダB2内周に摺動可能に嵌合させるとともに、内周上部摺動部93をシール筒72内周に摺動可能に嵌合させ、また、吐出弁体部94の下端部と、吐出弁座60a とで吐出弁95を構成する。
【0032】
そして、吐出弁体部94の下端部が吐出弁座60a に圧接して吐出弁95を閉塞する図1の状態から、内周上部摺動部93の外面に設けた上向き段部96がシール筒72の下面に当接する状態までの間をステムB5a に対して相対上下動が可能に嵌合させている。
【0033】
上記の如く構成したポンプを使用する場合について説明する。図1の状態から作動部材B5を押し下げると、当初シリンダB2内の液圧等により、図2に示す如く、ピストンB5d は同じ位置に止まり、ステムB5a が下降して吐出弁95が開き、また、ポペット弁体B4が環状シール片62と棒状部51との摩擦力で押し下げられ吸込み弁52が閉じ、シリンダB2内の加圧液はステムB5a 内からノズル83を介して噴出される。その際、排水用凹部64を備えているため、ピストンB5d の内周上部摺動部93上方に侵入した液が下方へ排出されずに作動部材B5の押し下げが重くなってしまうということはない。
【0034】
次いで、シール筒72とピストンB5d の上向き段部96が当接してピストンB5d も下降を始め、液の噴出が継続する。作動部材B5が最下降位置まできた後押圧を解除すれば、コイルスプリングsの作用で作動部材B5は上昇し、当初はシリンダB2内の負圧化等によりピストンB5d が同位置に止まりステムB5a のみが上昇して吐出弁95が閉じ、そこからピストンB5d も上昇を始める。同時に環状シール片62と棒状部51との摩擦力でポペット弁体B4が引き上げられて吸込み弁52が開き負圧化したシリンダB2内に液が導入される。ポペット弁体B4はその突片53がコイルスプリングsの下面に当接するまで上昇し、それ以降は環状シール片62が棒状部51を摺動上昇する。作動部材B5は、ピストンB5d の外周上部摺動部91が係止部材B3の係止筒40下面に当接するまで上昇する。
【符号の説明】
【0035】
A…容器体
10…胴部,11…肩部,12…口頸部
B…ポンプ
B1…装着キャップ
20…周壁,21…頂壁,22…案内筒
B2…シリンダ
30…周壁,31…フランジ,32…底壁,32a …吸込み弁座,33…パイプ嵌合筒,
34…パイプ,35…上向き段部,36…係止リブ
B3…係止部材
40…係止筒,41…リング状頂板,42…筒部
B4…ポペット弁体
50…筒状部,51…棒状部,52…吸込み弁,53…突片
B5…作動部材
B5a …ステム
60…環状突部,60a …吐出弁座,61…案内リブ,62…環状シール片,
63…連通窓,64…排水用凹部
B5b …連結筒
70…フランジ,71…シール筒
B5c …噴出ヘッド
80…縦筒,81…頂板,82…周壁,83…ノズル
B5d …ピストン
90…連結板,91…外周上部摺動部,92…外周下部摺動部,
93…内周上部摺動部,94…吐出弁体部,95…吐出弁,96…上向き段部
p…パッキン
s…コイルスプリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(B2)内を摺動するピストン(B5d) をステム(B5a) の外周下部に所定幅の相対上下動が可能に嵌合させ、シリンダ(B2)に対して上方付勢状態で上下動可能に装着した作動部材(B5)を備え、該作動部材(B5)は、ステム(B5a) 外周下端部に吐出弁座(60a) を突設するとともに、該吐出弁座(60a) 上方のステム(B5a) 外周にフランジ(70)を介して垂設したシール筒(72)を備え、ピストン(B5d) は、内周縁に起立する筒状の内周上部摺動部(93)をシール筒(72)に摺動可能に嵌合させるとともに、内周縁に垂下する筒状の吐出弁体部(94)と吐出弁座(60a) とで吐出弁(95)を構成し、ステム(B5a) の下端部に、開弁した吐出弁(95)からの液をステム(B5a) 内に導入する連通窓(63)を穿設してなるポンプに於いて、連通窓(63)の縦幅を短くしてその上方に、ステム(B5a) 外面を凹ませた形態の排水用凹部(64)を連設したことを特徴とするポンプ。
【請求項2】
連通窓(63)及び排水用凹部(64)を対向位置に一対設けた請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
作動部材(B5)は、ステム(B5a) と、ステム(B5a) の上部に嵌合させた下部をフランジ(70)を介して大径化したシール筒(72)に構成した連結筒(B5b) と、連結筒(B5b) 上端部に嵌着した噴出ヘッド(B5c) とを備えている請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230836(P2011−230836A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105461(P2010−105461)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】