説明

ポーション容器

【課題】 蓋部を剥離しやすいポーション容器を提供すること。
【解決手段】 本発明は、容器部と蓋部とによって内容物を密封するためのポーション容器を提供し、該ポーション容器において、該容器部はカップ部および該カップ部の上縁にフランジ部を備え、該カップ部の外側面または該フランジ部の下面に、鉛直下方向に加重可能な構造物が設けられ、そして該蓋部は、該フランジ部に剥離可能に接着され得る。好ましくは、上記フランジ部の一部に、分割可能な切り込みを介してフラップ部が設けられ、そして上記構造物は、該フラップ部の下方に設けられた突起物または溝である。本発明のポーション容器は、飲食物、医薬品、化粧品などの液体について1回使用分を収容するために好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーション容器に関する。より詳細には、蓋部の剥離が容易なポーション容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店あるいは飛行機や列車などの乗り物内でコーヒー・紅茶などを提供する場合、ミルクやガムシロップなどは、これらの1回の使用分を個別に収容したポーション容器で提供されることが多い。
【0003】
図6に示すようにポーション容器400は、通常、容器部410と蓋部420とによって構成されている。容器部410は、内容物430を収容するカップ部411およびこのカップ部411の上縁に形成されたフランジ部412から構成されている。カップ部411の開口部およびフランジ部412全体を覆っている蓋部420がフランジ部412に剥離可能に接着されることによって、内容物430が密封される。通常、蓋部420を剥離しやすいように、フランジ部412の少なくとも一部の幅が広くなっており、その部分では蓋部420はフランジ部412に接着されていない。この蓋部420の非接着部分440をつまんで上向きに力を加えることにより、容器部410から蓋部420を剥離して容器400を開封する。このとき、非接着部分440をつまんでいる手とは反対側の手の指でフランジ部412あるいはカップ部411を挟むことによって、容器400を保持するとともに下向きに力を加えて剥離を補助する。フランジ部412が小さいと、非接着部分440を指先でつまんで保持しにくく、指先での開封が困難である。そこで、フランジ部412を大きくして保持しやすくし、しかも攪拌具としての機能も備える容器が開発されている(特許文献1)。しかし、フランジ部412が大きすぎると、運搬中などに他の容器の蓋部420に接触し、蓋部420が破損して内容物430が漏出する恐れがある。逆に、蓋部420の非接着部分440をつまみやすいように非接着部分440(指で挟む部分)を大きくすると、この部分が他の容器間などに挟まって、蓋部420が自然と剥離する可能性もある。
【0004】
そこで、内容物が液体である場合あるいは容器サイズが小さい場合には、フランジ部および蓋部を保持しやすいように、図7に示すように、フランジ部512に分割可能な切り込み513を介してフラップ部514に設け、フラップ部514に蓋部520をより強力に接着させたポーション容器500が、一般的に使用されている。このポーション容器500では、フラップ部514と蓋部520とを一緒につまみ上げてフランジ部512から分割した後、蓋部520を容器部510から剥離する。しかし、容器部510を保持しにくいため、例えば、フラップ部514を分割する際に剥離の力が強すぎて、フラップ部514が分割されるとともに蓋部520も剥離され、その勢いで内容物530がこぼれ出し、手や衣服などに内容物530が付着することがある。あるいは、カップ部511を強く握りすぎて変形し、内容物530が飛び出す場合がある。カップ部511が変形しないように十分な厚みにすると、容器が重たくかつ大きくなり、大量に扱う場合に輸送コストがかかる。
【特許文献1】特開平8−156992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、蓋部を剥離しやすいポーション容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、図1に示すように、蓋部120を剥離する場合には上向きの力αだけでなく、この力αに拮抗する力βが必要であることに着目し、容器部110に力βを加えて保持するための手段として構造物115を設けることによって、蓋部120の剥離が容易になることに基づく。
【0007】
本発明は、容器部と蓋部とによって内容物を密封するためのポーション容器を提供し、該ポーション容器において、該容器部はカップ部および該カップ部の上縁にフランジ部を備え、該カップ部の外側面または該フランジ部の下面に、鉛直下方向に加重可能な構造物が設けられ、そして該蓋部は、該フランジ部に剥離可能に接着され得る。
【0008】
好適な実施態様では、上記フランジ部の一部に、分割可能な切り込みを介してフラップ部が設けられ、そして上記構造物は、該フラップ部の下方に設けられている。
【0009】
さらに好適な実施態様では、上記構造物は、突起物または溝である。
【0010】
好適な実施態様では、上記容器部は、一体成形された熱可塑性プラスチックであり、そして上記蓋部は、フィルムである。
【0011】
1つの実施態様では、上記内容物は、液状物である。
【0012】
より好適な実施態様では、上記内容物は、飲食物である。
【0013】
さらに好適な実施態様では、上記カップ部の容量は20mL以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より安定して蓋部を剥離できるポーション容器が提供される。そのため、ポーション容器の開封の際の手や衣服の汚れを防止できる。また、容器の外面に小さな構造物を設けるだけなので、従来の容器と比較しても、容器の重量や嵩があまり大きくならない。さらに、従来使用していた容器の金型の修正・変更も小さくて済むため、製造コストも高くならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のポーション容器を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明のポーション容器100は、通常用いられているポーション容器と同様に、容器部110と蓋部120とによって内容物130を密封するように構成されている。
【0017】
本発明のポーション容器100の容器部110は、少なくとも、内容物を収容するカップ部111;該カップ部111の上縁に形成されたフランジ部112;および該カップ部111の外側面または該フランジ部112の下面に設けられた鉛直下方向に加重可能な(あるいは、力をかけることが可能な)構造物115から構成されている。本発明においては、通常用いられているポーション容器100の容器部110に、この構造物115が設けられていることが重要である。
【0018】
容器部110は、通常用いられているポーション容器と同様に、一体成形された熱可塑性プラスチックである。このような熱可塑性プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドなどが挙げられる。カップ部111の形状も、通常用いられているポーション容器と同様に、種々のカップ形状であり得る。一般的には、カップ部111は、上端が開口した逆台錐形であり、側面は、例えば、平滑であっても波状であってもよく、そして底面は、どのような形状でもよく、例えば、平らであっても中央部が凹んでいても(上げ底になっていても)よい。カップ部111の容量も、特に限定されない。通常用いられているポーション容器においてカップ部を保持しにくい小容量の場合に好適であり、例えば、50mL以下、あるいは20mL以下であり得る。
【0019】
カップ部111の上縁には、通常用いられているポーション容器と同様に、フランジ部112が形成されている。その幅は、蓋部120を剥離可能に接着して、内容物130を密封できるのであれば、特に限定されず、例えば、5mm程度であり得る。通常、蓋部120を剥離しやすいように、フランジ部112の少なくとも一部の幅が広くなっている。フランジ部112が大きすぎると、運搬中などに他の容器の蓋部120に接触し、蓋部120が破損して内容物130が漏出するため、例えば、1cm程度であり得る。
【0020】
蓋部120は、通常用いられているポーション容器の蓋と同様に、積層フィルムである。例えば、表基材層/シーラント層、表基材層/接着層/アルミニウム箔層/シーラント層などである。表基材層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。また、シーラント層は、例えば、アクリル酸アルキルエステル−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの粘着性プラスチックであり、通常、ヒートシールによってフランジ部112に剥離可能に接着されている。接着部分は、フランジ部112全体ではなく、通常は、カップ部111の開口部に沿った部分のみである。蓋部120の形状は、カップ部111を覆って、フランジ部112と接着可能であればよい。フランジ部112よりも大きくてもよいが、通常、フランジ部112と同じ外周を有する。
【0021】
構造物115は、カップ部111の外側面またはフランジ部112の下面に設けられ、容器部110の製造の際に一体成形される。構造物115は、鉛直下方向に力βをかけることが可能であれば、その形状は限定されない。例えば、指の爪を引っ掛けることが可能な突起物または溝であり得る。突起物としては、図2に示すように、断面形状が、矩形、三角形、L字状などの形状が挙げられる。その大きさは、数mm程度、好適には1mm程度の突起であり得、幅は約1cm以下であり得る。溝の場合も、同様のサイズの凹みであり得る。したがって、従来のポーション容器の一体成形に用いた金型を、一部変更するだけで、容易に構造物115を有する容器部110を製造することができる。
【0022】
あるいは、構造物115は、金型からの離型性を考慮して、上記のように一体成形した後に、段加工や溝加工を施すことによって形成してもよい。例えば、図3に示すように、構造物115を設けようとする位置の容器側面部分に、テーパに沿って必要な幅で1mm以上の肉厚の凸部(構造物前駆体)116を成形し、この凸部116の適切な位置に段加工や溝加工を施して、構造物115aおよび必要に応じて115bを形成する。このような加工法としては、鋭利な刃物による切削、ヤスリによる削り取り、熱による溶解除去などが挙げられる。こうして形成された構造物115aおよび/または115bの大きさは、図3に示すAおよびBともに、1mm以上であることが好ましい。さらに、加工により除去された部分の幅Cも、1mm以上であることが好ましい。この場合も、従来のポーション容器の一体成形に用いた金型を一部変更するだけでよく、容易に構造物115aおよび/または115bを形成できる。
【0023】
構造物115に力βをかけたときにカップ部111を安定して保持できる点で、構造物115は、カップ部111の外側面の場合はフランジ部112に近い位置に、一方、フランジ部112の下面の場合は、カップ部111の外側面に近い位置に設けられることが好ましい。また、フランジ部112の幅が広くなっている部分(幅広部)の上面の蓋部120を持って剥離する場合、構造物115は、その幅広部の下方に設けられるべきである。
【0024】
例えば、図4に示すように、内容物230が液体である場合あるいは容器サイズが小さい場合には、必要に応じて、フランジ部212の一部に、分割可能な切り込み213を介してフラップ部214が設けられていてもよい。蓋部220は、フラップ部214に接着されており、フラップ部214を切り込み213でフランジ部212から切り離すとともに蓋部220をフランジ部212から剥離する。この場合、構造物215をフラップ部214の下方に設けることにより、フラップ部214の切り離しおよびそれに続く蓋部220の剥離がより容易に行われ得る。
【0025】
本発明においては、ポーション容器は、図1に示すような個別の容器100であってもよく、あるいは図5に示すように、各容器300がフランジ部312でカット線316を介して連結し、このカット線316の部分において1つずつ切り離せるものあってもよい。
【0026】
図1および4の内容物130および230の形態は、例えば、液体、ゲル、固体(粉状、粒状、塊状、カプセルなど)、液体と固体との混合物など、特に限定されない。内容物130および230の種類も特に限定されず、1回使用分ごとに分けて提供され得るものに適切である。代表的には、飲食物、医薬品、化粧品などが挙げられる。特に、飲食物の分野でよく使用される。飲食物としては、例えば、コーヒークリーム、練乳、ガムシロップ、メープルシロップ、蜂蜜、果汁、ドレッシング、醤油、ソース、濃縮スープなどの液体の食品;ゼリー、水羊羹などのゲル状食品;粉末ミルク、クッキー、ケーキ、冷凍食品用惣菜などの固体の食品が挙げられる。特に、液体の食品に好適である。これらの飲食物は、滅菌条件下で容器部110または210に充填されて、蓋部120または220をヒートシールによって接着して密封される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のポーション容器は、蓋部を剥離する場合に容器部を安定に保持できるため、従来の容器では剥離しにくかった小容量の容器として利用するために適切である。したがって、特に飲食物、医薬品、化粧品などの液体について1回使用分を収容するために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のポーション容器の側面図である。
【図2】本発明のポーション容器の種々の構造物の縦断面図である。
【図3】本発明のポーション容器の構造物の形成方法を説明するための、本発明のポーション容器の側面図ならびにX−X’およびY−Y’断面図である。
【図4】切り離し可能なフラップ部を有する本発明のポーション容器の斜視図である。
【図5】複数連結している本発明のポーション容器の平面図である。
【図6】従来のポーション容器の斜視図である。
【図7】切り離し可能なフラップ部を有する従来のポーション容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
100、200、300、400、500 ポーション容器
110、210、410、510 容器部
111、211、311、411、511 カップ部
112、212、312、412、512 フランジ部
115、115a、115b、215、315 構造物
116 凸部(構造物前駆体)
120、220、420、520 蓋部
130、230、430、530 内容物
213、313、513 切り込み
214、514 フリップ部
316 カット線
440 非接着部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器部と蓋部とによって内容物を密封するためのポーション容器であって、該容器部がカップ部および該カップ部の上縁にフランジ部を備え、該カップ部の外側面または該フランジ部の下面に、鉛直下方向に加重可能な構造物が設けられ、そして該蓋部が、該フランジ部に剥離可能に接着され得る、ポーション容器。
【請求項2】
前記フランジ部の一部に、分割可能な切り込みを介してフラップ部が設けられ、そして前記構造物が、該フラップ部の下方に設けられている、請求項1に記載のポーション容器。
【請求項3】
前記構造物が、突起物または溝である、請求項1または2に記載のポーション容器。
【請求項4】
前記容器部が、一体成形された熱可塑性プラスチックであり、そして前記蓋部が、フィルムである、請求項1から3のいずれかの項に記載のポーション容器。
【請求項5】
前記内容物が、液状物である、請求項1から4のいずれかの項に記載のポーション容器。
【請求項6】
前記内容物が、飲食物である、請求項1から5のいずれかの項に記載のポーション容器。
【請求項7】
前記カップ部の容量が20mL以下である、請求項1から6のいずれかの項に記載のポーション容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−248556(P2006−248556A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65968(P2005−65968)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(505086624)
【Fターム(参考)】