説明

ポーラス成形体成形機およびポーラス成形体の製造方法

【課題】多数の金型を装着した場合にも金型間で発泡むらを生ずることなく、均一な気孔率を有するポーラス成形体の製造可能なポーラス成形体成形機およびポーラス成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】発泡樹脂からなるポーラス成形体を製造するための複数の金型がダイプレート1に装着されたポーラス成形体成形機において、複数の金型によって形成されるキャビティ3に対応して蒸気室4を独立して設けて、これらの蒸気室4にそれぞれ用役配管であるスチーム配管5、冷却水配管6、ドレン配管7を配設するとともに、原料充填機8を配設したポーラス成形体成形機、およびこのポーラス成形体成形機を用いたポーラス成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂からなるポーラス成形体を製造するためのポーラス成形体成形機およびこの成形機を用いたポーラス成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に開示されているような、発泡成形体に適度な空隙を残存させたポーラス成形体が知られている。このポーラス成形体は、所定の形状に構成された金型内に充填した原料ビーズを加熱発泡させて得られる多数の発泡セルで構成される成形体であって、隣接する発泡セルが接触面において軟化溶融して結合されている。この成形体は、3つ以上の発泡セルによって囲まれた多数の空隙を有しており、この空隙によって騒音を吸収することができる。したがって、発泡成形体の吸音性能を上げるには微細な空隙を均一に分散させて望ましくは連通させる必要がある。
【0003】
以上のような発泡成形体を製造する発泡樹脂成形機として、従来は例えば特許文献2に開示されたようなものが使用されてきた。その構造を図3に示すが、このものは、ダイプレート1に複数の金型2が装着されていて、一度に複数の発泡成形体を製造することができる。金型2は多いときには、図4に示すように一つのダイプレート1に12個も取り付けられて成形効率を上げることができる。
【0004】
上記した従来の発泡樹脂成形機は、例えば魚箱等の断熱保冷性や、電気製品に対する衝撃緩衝性の向上を目的として原料ビーズを十分発泡させるようにしたものである。すなわち、原料ビーズをスチームにより十分加熱したのち、隣接する発泡セル間に空隙を残さないように発泡させることにより、接合強度や断熱保冷性、衝撃緩衝性を高めるようにしたものである。したがって、発泡セル間に微小な空隙を残して所望の気孔率を有するポーラス成形体を製造することを目的としたものではなかった。
【0005】
原料ビーズを完全に発泡させることを主目的とした図3の従来の発泡樹脂成形機においては、複数のキャビティ3が形成されているにも関わらず、蒸気室4はダイプレート1において一つの空間として大きく形成されているため、蒸気室4内にスチームや冷却水を供給するための用役配管は一組しか設けられていない。すなわち、ダイプレート1の上部には、スチーム配管が接続されるスチーム金具51と、冷却水配管が接続される冷却水金具61とが配設されており、ダイプレート1の下部には、ドレン排出管7が配設されている。スチーム金具51は排気弁52を備えており、加熱後にスチームを排気して蒸気室4からキャビティ3内を大気開放することができる。
【0006】
以上のような従来構造の発泡樹脂成形機においては、原料ビーズの加熱に際してスチームは蒸気室4の上部から導入されて下部に至るので、蒸気室4の上部では加熱が進むのに対し、下部では加熱が遅れる。よって、蒸気室4の上下のキャビティ3において、原料ビーズの加熱温度にむらが生ずることとなる。また、蒸気室4のコーナー部にはスチームが回り難いので、この部分のキャビティ3も加熱が遅れて温度にむらが生ずる。このような温度むらがある場合に、キャビティ3内を加熱して原料ビーズを発泡させても、温度の高い部分は大きく発泡されて空隙が全く残存しないか少なく、一方、温度の低い部分は発泡の程度が小さく空隙が多量残存することとなる。
【0007】
したがって、金型の位置によって発泡の程度にばらつきが生ずるので、発泡が進んで気孔率の小さい発泡成形体と、発泡が進まずに気孔率が大きい発泡成形体とが混在して製造されてしまい、吸音性能がばらつくという問題があった。
【特許文献1】特開2006−110982号公報 (図1)
【特許文献2】特開平6−262691号公報 (図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、多数の金型を装着した場合にも金型間で発泡むらを生ずることなく、均一な気孔率を有するポーラス成形体を製造することができるポーラス成形体成形機およびこの成形機を用いたポーラス成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明のポーラス成形体成形機は、発泡樹脂からなるポーラス成形体を製造するための複数の金型がダイプレートに装着されたポーラス成形体成形機において、
複数の金型によって形成されるキャビティに対応して蒸気室を独立して設けて、
これらの蒸気室にそれぞれ用役配管と原料充填機とを配設したことを特徴とするものである。
【0010】
上記した発明において、用役配管は、少なくともスチーム配管と、冷却水配管と、ドレン配管とからなるものとすることができ、これらの用役配管には、独立して制御可能な用役弁を設けることができる。また、独立した蒸気室に対して、それぞれ独立した成形工程制御機能を持たせることができる。
【0011】
また、本発明のポーラス成形体の製造方法は、上記したようなポーラス成形体成形機を用いたポーラス成形体の製造方法であって、
金型によって形成されたキャビティに原料充填機により発泡性樹脂からなる原料ビーズを充填したのち、
各々の蒸気室に用役配管からスチームを導入して、隣接する原料ビーズとの間に空隙を残して原料ビーズを発泡させて、その後冷却、固化することを特徴とするものである。
この発明において、ポーラス成形体の気孔率を、10〜40%とするのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明は、独立した各蒸気室にそれぞれスチームを送り込んでキャビティ内の原料ビーズを加熱するので、金型間で加熱温度にむらが生ずることがない。
【0013】
請求項2に係る発明は、用役配管に必要な機能を持たせることができるので、用役配管に無駄がない。
【0014】
請求項3、4に係る発明は、原料ビーズの加熱の進行に対応して用役弁を開閉または制御することができるので、成型品に気孔率のばらつきが生ずることがない。
【0015】
請求項5に係る発明は、各蒸気室に設けた用役配管からスチームを導入して、原料ビーズを均一に加熱して発泡させるので、気孔率のばらつきがないポーラス成形体を製造することができる。
【0016】
請求項6に係る発明は、強度を確保して吸音性能を最適化したポーラス成形体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態であるポーラス成形体成形機を示す図である。この実施形態においては、ダイプレート1に金型が4個横一列に配置されて4つのキャビティ3が形成されている。そして、4つのキャビティ3に対応して、区画されて独立した蒸気室4がダイプレート1の内部に形成されている。それぞれの蒸気室4には、上方のスチーム配管5および冷却水配管6と、下方のドレン配管7とが設けられている。さらに、キャビティ3の中央部には、蒸気室4を貫通して原料充填機8とエジェクトピン(図示せず)が装着されている。
【0018】
図2には、第2の実施形態である吸音体成形機を示す。この実施形態においては、ダイプレート1に金型が上下2段、横方向に4個配置されて合計8つのキャビティ3が形成されている。そして、8つのキャビティ3に対応して、区画されて独立した蒸気室4がダイプレート1の内部に形成されている。上段の蒸気室4には、上部のスチーム配管5および冷却水配管6と、蒸気室4背面下部のドレン配管7とが設けられている。下段の蒸気室4には、蒸気室4背面上部のスチーム配管5および冷却水配管(図示していない)と、蒸気室4下部のドレン配管7とが設けられている。さらに、キャビティ3の中央部には、蒸気室4を貫通して原料充填機8とエジェクトピン(図示せず)が装着されている。
【0019】
以上の何れの形態の成形機においても、用役配管として離型エア用配管を追加して用いることができる。これらの用役配管には、独立して制御可能な用役弁9を設けることができる。この用役弁によって加熱の進行状態に対応して各キャビティ3を別個独立して加熱、冷却することができる。また、各蒸気室4には成形体押し出し用のエジェクトピン(図示せず)を適宜の本数装着することができる。
【0020】
金型の配置は上記した実施例に限定されるものではなく、独立した蒸気室4を形成して、これに必要な用役配管を配設することができれば、適宜の大きさ、個数のものを、任意の状態に配置することができる。
【0021】
図1に示すポーラス成形体成形機を用いたポーラス成形体の製造方法を、以下に説明する。
原料充填機8を用いて各々のキャビティ3内に原料ビーズを充填する。発泡性樹脂からなる原料ビーズとして、例えば予備発泡させた粒径3mm程度のポリオレフィン樹脂を用いることができる。また、金型として、ベントホールを備えたスチームによる通常の加熱タイプの開閉金型を用いることができる。
【0022】
原料ビーズ充填後はスチーム配管5から蒸気室4内にスチームを送入して、キャビティ3内を加熱する。加熱温度は、120〜160℃とするのが好ましい。キャビティ3内が均一な温度に加熱された後に、圧力を制御しつつ軟化された原料ビーズを発泡させる。このとき、隣接する原料ビーズとの間に空隙を残して所望の気孔率を確保することが必要である。気孔率は、容積率で10〜40%とするのが望ましい。10%未満では、十分な吸音性能を確保することができないからであり、40%を超えると、吸音性能の低下、接合強度の不足をもたらすこととなるからである。
【0023】
加熱完了後に、冷却水配管6から蒸気室4内に冷却水を注入して成形体を冷却、固化させる。その後、金型を開いてエジェクトピンを用いて成形体を取り出す。このような工程によって、気孔率が20%である吸音性能に優れた吸音体を製造することができた。
【0024】
以上に述べたように、本発明のポーラス成形体成形機は、複数の金型に対応して蒸気室を別個独立なものとしたので、それぞれの蒸気室を介してキャビティ内を加熱制御することができる。また、本発明のポーラス成形体の製造方法は、当該ポーラス成形体成形機を用いて原料ビーズを均一な大きさに発泡させることができるので、気孔率のばらつきのない複数のポーラス成形体を一度に製造することができるという大きな利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態のポーラス成形体成形機の概略構成図であって、(a)正面図、(b)側面図である。
【図2】第2の実施形態のポーラス成形体成形機の概略構成図であって、(a)正面図、(b)側面図である。
【図3】従来の発泡樹脂成形機の概略構成を示す断面図である。
【図4】従来の発泡樹脂成形機の概略構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ダイプレート、3 キャビティ、4 蒸気室、5 スチーム配管、6 冷却水配管、7 ドレン配管、8 原料充填機、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂からなるポーラス成形体を製造するための複数の金型がダイプレートに装着されたポーラス成形体成形機において、
複数の金型によって形成されるキャビティに対応して蒸気室を独立して設けて、
これらの蒸気室にそれぞれ用役配管と原料充填機とエジェクトピンとを配設したことを特徴とする発泡樹脂ポーラス成形体成形機。
【請求項2】
用役配管は、少なくともスチーム配管と、冷却水配管と、ドレン配管とからなる請求項1に記載のポーラス成形体成形機。
【請求項3】
用役配管には、独立して制御可能な用役弁を設けた請求項1または2に記載のポーラス成形体成形機。
【請求項4】
独立した蒸気室に対して、それぞれ独立した成形工程制御機能を持たせた請求項1〜3に記載のポーラス成形体成型機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のポーラス成形体成形機を用いたポーラス成形体の製造方法であって、
金型によって形成されたキャビティに原料充填機により発泡性樹脂からなる原料ビーズを充填したのち、
各々の蒸気室に用役配管からスチームを導入して、隣接する原料ビーズとの間に空隙を残して原料ビーズを発泡させて、
その後冷却、固化することを特徴とするポーラス成形体の製造方法。
【請求項6】
ポーラス成形体の容積気孔率を、10〜40%とする請求項5に記載のポーラス成形体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate