説明

マイクロアレイシステム

マイクロアレイシステムが開示される。マイクロアレイシステムは、平面基板上に形成されたマイクロアレイおよびマイクロアレイの周囲に形成されたインキュベーションチャンバーを含む。インキュベーションチャンバーは、その上にマイクロアレイが形成される底面、および底面と対面し且つ底面と概して平行である上面を含む複数の内面を有する。複数の内面のうち少なくとも1つは親水性の表面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野はマイクロアレイシステムおよび、特に、一方向バルブおよび/または廃液チャンバーと接続されたインキュベーションチャンバーを有するマイクロアレイシステムである。
【背景技術】
【0002】
マイクロアレイは、複数の検出反応を同時に遂行することによりサンプルの複雑な分析を実施する大きな可能性を提供する。典型的には、反応物分子の複数のスポットのマイクロアレイが、通常は二次元グリッドパターンにある顕微鏡スライドガラスなどの平面基板上に形成される。次に、液状サンプルおよび試薬をスライドに適用し、同時に複数のスポットと接触させる。マイクロアレイにおいて結合した分子によって、結合した反応物分子の液状サンプルおよび試薬への曝露および洗浄段階を含む多様な反応段階を実施することもある。スライド上に固定された物質または液状サンプル中の物質のいずれかを特性付けるために、マイクロアレイの各スポットにおいて反応の進捗および結果をモニタリングすることもある。
【0003】
マイクロアレイ分析は、通常数分から数時間の範囲に及ぶインキュベーション時間を要する。インキュベーション時間の長さは分析によって異なり、反応物の種類、混合の程度、サンプルの容積、目標コピー数、およびアレイの密度などの多様な因子によって決定される。インキュベーション時間中、液状サンプル中の目標分子はマイクロアレイプローブと密接(密に接触)しなければならない。インキュベーションは、通常はインキュベーションチャンバー内で実施される。インキュベーションチャンバーは、典型的にはマイクロアレイの周囲にガスケットを形成することによって形成される。ガスケットはカバースリップによって被覆され、密閉されたチャンバーを形成する。カバースリップは、インキュベーション後のマイクロアレイの光学的検査(インタロゲーション)を可能とするために、ガラスなどの透明な材料で製作することもできる。
【0004】
カバースリップが入口およびベントを有していない場合、カバースリップをガスケットの上部に載置する前にインキュベーションチャンバーに液状サンプルおよび他の試薬を付加する必要がある。反応混合物をガスケットの縁まで充填する場合、混合物がガスケットの側部より漏出し、ガスケット/カバーシールを毀損し、さらに環境を汚染するリスクを高めることがある。充填のための穴およびベンティングを有するカバースリップはこれら2つの問題を回避する。しかし、カバースリップ上の穴からインキュベーションチャンバーに充填することには、しばしばインキュベーションチャンバー内へ気泡またはエアポケットを導入する危険を伴う。さらに、液状サンプルまたは反応混合物の表面張力も、液状サンプルまたは反応混合物がインキュベーションチャンバーを完全に充填することを妨害することがある。エアポケットがアレイスポットを被覆し、且つアレイスポットと液状サンプルまたは反応混合物との接触を妨害した場合、部分的に充填されたチャンバーが擬陽性の結果を示すことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
マイクロアレイシステムが開示される。マイクロアレイシステムは、平面基板上に形成されたマイクロアレイ、およびマイクロアレイの周囲に形成されたインキュベーションチャンバーを含む。インキュベーションチャンバーは、その上にマイクロアレイが形成される底面、および底面と対面し且つ底面と概して平行である上面を含む複数の内面を有する。複数の内面のうち少なくとも1つは親水性の表面である。
【0006】
平面基板上に形成されたマイクロアレイ、マイクロアレイの周囲に形成されたインキュベーションチャンバー、液状サンプルをインキュベーションチャンバー内に装填するドームバルブ、および一方向バルブをインキュベーションチャンバーに接続する導管を有するマイクロアレイシステムも開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
発明を実施するための形態は、同様の数字が同様の要素を示す以下の図面に言及するであろう。
【0008】
【図1】マイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーの1つの実施形態の模式図である。
【図2】貫通するピペットチップを有するサポートハウジング内のドームバルブの模式図である。
【図3】廃液チャンバーを有するマイクロアレイシステムの1つの実施形態の模式図である。
【図4】廃液チャンバーを有するマイクロアレイシステムの他の実施形態の模式図である。
【図5】統合マイクロアレイシステムの1つの実施形態の模式図である。
【図6】マイクロアレイシステムの1つの実施形態の寸法を示す模式図である。
【図7】廃液チャンバーへの液状物の吸上を評価するために用いられる4つのマイクロアレイインキュベーションチャンバーのアセンブリ(パネルA)およびハイブリダイゼーションの結果(パネルB)を示す図の組合せである。
【図8】統合マイクロアレイシステムの実施形態(パネルA)およびマイクロアレイシステムからのハイブリダイゼーションの結果(パネルB)を示す図の組合わせである。
【図9】マイクロアレイシステムの実施形態の模式図(パネルA)、アレイマップ(パネルB)、およびハイブリダイゼーションの結果(パネルC)を示す図の組み合わせである。
【図10】ハイブリダイゼーションの結果(パネルC)を示す図の組み合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この説明は、本発明の記述された説明全体の一部と見なすべきである、付属の図面と関連付けて読まれることを意図している。図面は正しい縮尺で描出される必要はなく、且つ明解性および簡潔性を図って発明のある特徴を縮尺において誇張したり、または幾分模式的な形態で示したりしてもよい。記述においては、「前」、「後」、「上へ」、「下へ」、「上部」および「底部」などの相対的な用語、ならびにその派生語は、その時に論じられる図の描出において記載されるかまたは示される方向を指すと解釈すべきである。これらの相対的な用語は記載の簡便さを目的としており、通常は特定の方向を必要とすることを意図していない。「連結された」および「着接された」などの着接、接続などに関する用語は、説明的に記載されない限り、構造が直接的または介入構造を経て間接的に相互に固定または着接された関係、ならびに可動性のまたは剛直な着接または関係を指す。
【0010】
本明細書で用いられるところの用語「マイクロアレイ」は、目的のリガンドと結合するために提供されたスポットの配列されたアレイを指す。マイクロアレイは少なくとも2つのスポットからなる。目的とするリガンドは核酸、タンパク質、ペプチド、多糖類、抗体、抗原、ウイルス、および細菌を含むがこれに限定されない。
【0011】
本明細書で用いるところの用語「親水性の表面」は、そのような表面上で静止する純水の水滴と60°またはそれ以下の接触角を形成するような表面を指す。本明細書で用いるところの用語「疎水性の表面」は、そのような表面上で静止する純水の水滴と60°を超える接触角を形成するような表面を指す。接触角は接触角度計を用いて測定することができる。
【0012】
本明細書で用いるところの用語「インキュベーションチャンバー」は、マイクロアレイの周囲の密封された空間を指す。インキュベーションチャンバーは、液状サンプルで満たされた場合、液状サンプル中の目標分子がマイクロアレイプローブとの密な接触を維持できるよう、マイクロアレイが液状サンプルに浸漬されることを可能とする。
【0013】
本明細書においては、親水性表面を伴うインキュベーションチャンバーを有するマイクロアレイシステムが開示される。液状物がチャンバーに進入するにつれてこれに接触する親水性表面を用いることによって、インキュベーションチャンバーの完全な充填が可能となる。
【0014】
上述のように、液状サンプルまたは反応混合物の表面張力は、液状サンプルまたは反応混合物が、マイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーなどの小さな空間を完全に充填することをしばしば妨害する。表面張力は、多様な分子間力による液状物分子間の引力の結果である。液状物の大部分において、各分子は隣接する液状物分子により全方向に同等に牽引されるため、全体の力はゼロとなる。液状物の表面においては、分子は液状物内部のより深いところにある他の分子によって内向きに牽引され、且つ(真空、空気または他の液状物であれば)隣接する媒体中の分子によっては同様に強く牽引されない。したがって表面にある全ての分子は、圧縮に対する液状物の抵抗によってのみ均衡することのできる分子間引力の内向きの力を被る。この内向きへの牽引は表面積を減少させる傾向にあり、且つこの点で液状物表面は伸展する弾性の膜に類似している。したがって、液状物はその部分で可能な限り最も小さな表面積を有するまで自身を緊密に圧搾する。最終的な結果は、液状物が小さな空間の内部においてほぼ球状の形状を維持することがあり、かつ隅、特に小さな区間の正方形の隅を充填しないことである。カバーとマイクロアレイの表面を隔離する典型的な小さなギャップは、しばしば液状物を円柱状の形状に圧縮する。
【0015】
マイクロアレイシステムの場合、インキュベーションチャンバーを満たす液状物は、ハイブリダイゼーションバッファーまたは洗浄バッファーなどの水性液状物である可能性が高い。水性液状物の表面張力は、インキュベーションチャンバーの内面の少なくとも一部を親水性物質で被覆することによって克服されることがある。
【0016】
図1はインキュベーションチャンバーの1つの実施形態を示す。この実施形態においては、平面基板30の上面32にプリントまたは形成された多数のマイクロアレイスポット22よりなるマイクロアレイ20の周囲にインキュベーションチャンバー10が形成される。表面32はインキュベーションチャンバー10の底面も形成する。チャンバー10の上部はカバースリップ40によって被覆される。インキュベーションチャンバー10は、典型的にはガラスまたはプラスチックスライドである、平面基板30の寸法と適合するあらゆるサイズまたは形状とすることができる。
【0017】
この実施形態においては、インキュベーションチャンバー10は平面基板30の上部にガスケット34を載置し、且つガスケット34をカバースリップ40で被覆することによって形成される。他の実施形態において、インキュベーションチャンバー10は平面基板30にポケットまたは陥凹領域を(たとえば成形またはエッチングなどによって)作成し、ポケットまたは陥凹領域の底部にマイクロアレイ20をプリントし、さらにポケットまたは陥凹領域をカバースリップ40で被覆することによって形成される。さらに他の実施形態においては、カバースリップ40上にポケットまたは陥凹領域を形成し、その後これを平面基板30の上面に直接載置する。
【0018】
インキュベーションチャンバー10は、インキュベーションチャンバー10におけるハイブリダイゼーションまたは他の何らかの反応に必要とされる液状物の容積を減少させるよう、通常はマイクロアレイ20の周囲に形成される。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバーは約0.1〜10cm,好ましくは約0.5〜5cmの底面積および約0.05〜5mm、好ましくは約0.1〜1mmの高さを有する。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバーの総容積は1〜250μLの範囲内である。
【0019】
インキュベーションチャンバー10は、その形状に応じて、その上にマイクロアレイ20が形成される底面、下向きに底面に対面し且つ概して底面と平行である上面、および1つまたはそれ以上の側面を含むいくつかの内面を有する。インキュベーションチャンバー10の均一な充填を確保する目的のために、全ての内面が親水性である必要はない。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面のみが親水性である。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の底面のみが親水性である。他の実施形態においては、上面および底面が共に親水性である。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバーの全ての内面が親水性である。
【0020】
親水性の表面は水を誘引する表面である。親水性の表面は、典型的には電荷分極しており且つ水素結合の能力を有する分子を含む。1つの実施形態においては、平面基板30またはカバースリップ40は親水性材料より製作されるため、それぞれ親水性底面または親水性上面を提供する。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面または底面が不溶性親水性材料によって被覆される。親水性物質の例は、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、メチルセルロース、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、アルキルフェノールエトキシレート、ポリオールモノエステル複合体、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、および脂肪酸ソルビタンエステル等の親水性ポリマー;無機オキシド、金、ゼオライト、およびダイヤモンド様炭素等の無機親水性物質;およびTriton X−l00、Tween、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、アルキルベンゼンスルホン酸、石けん、脂肪酸塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)別名臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、ココアンフォグリシネートアルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリプロピレンオキシドのコポリマー(商品名PoloxamersまたはPoloxamines)、アルキルポリグルコシド、脂肪アルコール、コカミドMBA、コカミドDEA、コカミドTEA等の界面活性剤を含むがこれに限定されない。界面活性剤は、ポリウレタンやエポキシなどの反応ポリマーと混合して親水性コーティングとして用いることができる。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面または底面が雰囲気プラズマ処理によって親水性とされる。
【0021】
代替的に、インキュベーションチャンバーの上面または底面を市販の親水性テープまたはフィルムで被覆してもよい。親水性テープの例はAdhesives Research(AR)テープ90128、ARテープ90469、ARテープ90368、ARテープ90119、ARテープ92276、およびARテープ90741(Adhesives Research社、ペンシルバニア州グレンロック)を含むがこれに限定されない。親水性フィルムの例は、(Film Specialties社、ニュージャージー州ヒルズバラ)製のVistex(登録商標)およびVisguard(登録商標)フィルムおよびLexan HPFAF(GE Plastics社、マサチューセッツ州ピッツフィールド)を含むが、これに限定されない。他の親水性表面は、Surmodics社(ミネソタ州イーデンプレーリー)、Biocoat社(ペンシルバニア州ホーシャム)、Advanced Surface Technology社(マサチューセッツ州ビルリカ)およびHydromer社(ニュージャージー州ブランチバーグ)より入手することができる。
【0022】
1つの実施形態においては、親水性テープまたはフィルムはインキュベーションチャンバーの上部からのマイクロアレイの光学的インタロゲーションを可能とするために十分な透明性を有する。他の実施形態においては、親水性表面はインキュベーションチャンバーの上面を親水性コーティングで被覆することにより作成される。他の実施形態においては、親水性表面は単純にカバースリップ40を親水性テープまたは親水性フィルムに置換することによって作成される。
【0023】
さらに他の実施形態においては、親水性表面はタンパク質を変性させながら細胞膜を溶解し、且つ核酸を捕捉する化学物質が浸漬された親水性基剤である。親水性基剤は、サンプルの精製およびインキュベーションチャンバー内へのサンプルの均一な吸上という2つの機能を実施するであろう。1つの実施形態においては、親水性基剤はFTA紙(登録商標)(Whatman社、ニュージャージー州フロハムパーク)である。生物学的サンプルをFTA(登録商標)紙に適用し、サンプルに含有される細胞を紙の上で溶解させる。紙を洗浄してあらゆる非DNA材料を除去する(DNAは紙に絡着して残る)。次に、その後のマイクロアレイ分析のためにDNAを溶離する。代替的に、溶離段階を伴わずに結合したDNAをマイクロアレイ検出のために原位置で増幅してもよい。
【0024】
FTA紙(登録商標)をアレイの対側面(すなわちインキュベーションチャンバーの上面)として用いることができる。代替的に、マイクロアレイをFTA紙(登録商標)にプリントしてもよく、インキュベーションチャンバー上部の透明なカバースライドによってマイクロアレイの目視が可能となるであろう。他の実施形態においては、FTA紙(登録商標)上で核酸サンプルを増幅するためにPCR試薬をインキュベーションチャンバーに導入してもよい。この実施形態においては、増幅はインキュベーションチャンバー10の内部で実施される。
【0025】
マイクロアレイ20は、核酸マイクロアレイまたはタンパク質マイクアレイを含むがこれに限定されないあらゆる種類のマイクロアレイとすることができる。1つの実施形態においては、マイクロアレイ20は、たとえば全て参照文献として全文が本明細書に援用される米国特許第5,741,700号、第5,770,721号、第5,981,734号、第6,656,725号および米国特許出願番号第10/068,474号、第11/425,667号および第60/793,176号に記載されたプリントゲルスポット法を用いて形成される。
【0026】
他の実施形態においては、マイクロアレイシステムはインキュベーションチャンバー10に液状物(例:サンプル、ハイブリダイゼーションバッファーまたは洗浄バッファー)を導入するための一方向バルブをさらに含む。サンプルは、生物兵器剤の検出などの一定の用途における重要な懸念である環境汚染を防止するために、一方向バルブを経てインキュベーションチャンバー10に導入する。一方向バルブは、インキュベーションチャンバーの入口に載置された逆止弁またはドームバルブとすることができる。多様なサイズのドームバルブが市販されている(例:Minivalve International社より、オハイオ州イエロースプリングス)。図2に示す実施形態においては、ドームバルブ50は2つのコンポーネント:ドーム型バルブボディ52およびバックシール54を含む。バックシールは、イントロデューサー56がバックシール54を貫通することを可能とする1つの穴(示さず)を有する。イントロデューサー56は、バックシール54を貫通する鋭い先端を有するあらゆる液状物送達装置としてよい。この実施形態においては、イントロデューサー56はピペットチップである。他の実施形態においては、イントロデューサー56はシリンジの針である。
【0027】
ドームバルブ50は、イントロデューサー56による容易な到達を可能とし、且つイントロデューサー56の先端がバックシール54を経てドームバルブ50に進入するにつれて先端に適合する。イントロデューサー56を抜去すると、バックシール54の開口部はその後自然に閉鎖し、サンプルがドームバルブ50よりインキュベーションチャンバー10の外に漏出することを阻止する。したがって、ドームバルブ50は刺入可能な隔壁としても逆止弁としても作動する。ドームバルブは、支持構造58を経てマイクロアレイアセンブリに設置してもよい。1つの実施形態においては、ドームバルブは入口11および入口導管14を経てインキュベーションチャンバー10と接続される(図3)。
【0028】
さらに他の実施形態では、マイクロアレイシステムはさらに廃液チャンバーを含む。Aurora Photonics Port Array 5000(TM)マイクロアレイリーダーなどの多くの光学リーダーは、乾燥画像を読む際に改善された信号雑音比をもたらす。したがって、廃液チャンバーをマイクロアレイシステムに組み入れ、マイクロアレイリーダー内にマイクロアレイを載置する前にインキュベーションチャンバーより液状物を除去することは有益である。次に図3を参照すると、インキュベーションチャンバー10は同一のマイクロアレイスライド上に形成された廃液チャンバー60に接続される。
【0029】
廃液チャンバー60はあらゆる形状とすることができ、且つ典型的にはインキュベーションチャンバー10の容積を上回る容積を有する。1つの実施形態においては、廃液チャンバーはガスケットテープ内に形成された後、その上にマイクロアレイ20がプリントされる基板30(図1参照)に着接される。さらに他の実施形態では、基板30はその上面に1つの打ち抜きを有する。打ち抜きは、廃液チャンバー60が一旦基板30とガスケット34の間に形成されたならばインキュベーションチャンバー10の深さを上回る深さを有するよう、ガスケット34内の廃液チャンバー60のサイズおよび位置と適合するサイズおよび位置を有する。他の実施形態においては、基板30上で打ち抜きが容易に作製されるよう基板30はプラスチック材料で製作される。さらに他の実施形態では、インキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60はいずれもガスケット34を用いずに基板30に形成される。しかし廃液チャンバー60は、インキュベーションチャンバー10の深さを上回る深さを有してもよい。
【0030】
1つの実施形態においては、廃液チャンバー60は、一旦インキュベーションチャンバー10内で液状物と接触したならば、液状物をインキュベーションチャンバー10より吸上するため、マイクロアレイ20が乾燥状態で読み取られることを可能とする吸収剤62を収容する。
【0031】
吸収剤62は、比較的大量の液状物を保持することのできるあらゆる物質とすることができる。1つの実施形態においては、吸収剤62は繊維の凝集体より製作される。他の実施形態においては、吸収剤62はスルーエアーボンディング(through-air bonding process)工程において製造される不織布である。不織布の構成繊維は親水性合成繊維、パルプなどの天然セルロース繊維、または再生セルロース繊維とすることができる。繊維は界面活性剤または親水性の油でコーティングまたは浸潤して液状物の吸収を向上させてもよい。本明細書における使用を目的とした不織布は、スルーエアーボンディング工程に限らず、スパンボンディング(spun-bonding process)工程、エアーレイング(air laying process)工程、スパンレーシング(spun-lacing process)工程などの他のあらゆる工程で製造されることがある。1つの実施形態においては、吸収剤62はMillipore社(マサチューセッツ州ビレリア)製のセルロース紙(C048)である。
【0032】
再度図3を参照すると、廃液チャンバー60は導管12を経てインキュベーションチャンバー10に接続される。導管12は二重の目的を果たす。液状物で満たされると、導管12はインキュベーションチャンバー10と廃液チャンバー60の間の液状物経路を提供する。空気で満たされると、導管12はインキュベーションチャンバー10を廃液チャンバー60より分離し、廃液チャンバー60内の吸収剤62の早すぎる吸上を防止する。
【0033】
インキュベーションチャンバー10内の液状物は、インキュベーションチャンバー10内の液状物を導管12内に押出、および導管12内の液状物と廃液チャンバー60内の吸収剤62の接触を確立することによって除去される。接触は、インキュベーションチャンバー10内の液状物に圧力を印加して液状物を導管12より押出するか、または廃液チャンバー60のベント64に吸引を適用して導管12より液状物を引出して確立してもよい。インキュベーションチャンバー10内の液状物に対する圧力は、ドームバルブ50を経て圧力を印加することによって生成してもよい(例:ピペットまたはシリンジを使用)。インキュベーションチャンバー10が親水性テープまたは親水性フィルのみで被覆される場合、インキュベーションチャンバー10の内部の圧力はインキュベーションチャンバー10の上面を形成する親水性テープまたはフィルムを単純に押圧することによって生成してもよい。代替的に、導管12内の液状物と吸収剤62の間の接触は、吸収剤62が導管12の内の液状物に接触するまで吸収剤62を導管12に進入させることによって確立してもよい。
【0034】
一旦接触が確立されたならば、インキュベーションチャンバー10内の液状物を、導管12を経て廃液チャンバー60内の吸収剤62に吸引する。液状物の流量は導管12のサイズ、液状物の表面張力および粘度、および吸収剤62の吸上率によって決定される。さらに、吸収剤がより飽和するにつれて流量が低下する。廃液チャンバー60内に吸収剤62を載置することによっても流量を調節することができる。導管12の出口の近くに載置された吸収剤は、さらに離れて載置された吸収剤よりも高い流量をもたらす。したがって、吸収剤62の隅を切除することにより、導管12の出口と吸収剤62の距離が延長することよって流量が遅くなる。
【0035】
気泡がインキュベーションチャンバー10に導入された場合、気泡はインキュベーションチャンバーに滞留し、導管12への液状物の流入を部分的または完全に遮断することがある。気泡がまさに液状物と吸収剤62の接触部分に位置する場合、気泡が吸収剤の吸上作用を停止させることもある。この問題は図4に示す導管設計によって克服することができる。この実施形態において、導管12は入口部分15、漏斗型接続部分16および出口部分17を含む。出口部分17は入口部分15の口径よりも小さな口径を有する。より小さな口径は、出口部分17において入口部分15における毛細管圧よりも強い圧力をもたらす。圧力の差は出口部分17に向かう液状物の移動に至る。実施中、すでに出口部分17にある液状物は出口部分17より押出され、さらに液状物と吸収剤62の接触部分にあるエアポケットの周囲を通過する。漏斗型接続部分16は、導管の毛細管作用による早すぎる吸上を防止するオーバーフロー領域を提供する。他の実施形態においては、出口部分17は2つのサブセクション:より口径の大きな第1のセクション(図4のセクション17の水平部分に対応)およびより小さな口径の第2のセクション(廃液チャンバー60に入るセクション17の垂直部分に対応)にさらに分割される。
【0036】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における熱サイクルの変性段階などのように、インキュベーションチャンバー10内のハイブリダイゼーションまたは増幅過程が加熱段階を含む場合、インキュベーションチャンバー10内部の液状物は導管12より押出され、さらにインキュベーションチャンバー10内で上昇する圧力により吸収剤62との早すぎる接触を形成する。これらの状況下において、意図的に導管12内に空気を残し(インキュベーションチャンバー10を充填する時)吸収剤62による早すぎる吸上を防止することがある。代替的に、導管12の内部に疎水性の栓を載置して吸収剤62による早すぎる吸上を防止してもよい。1つの実施形態においては、疎水性の栓は疎水性の内面を有する導管セクションを含む。1つの実施形態においては、疎水性表面は未加工の導管表面をテフロン(登録商標)、シリコンまたはシランなどの疎水性物質で被覆または処理することによって形成される。他の実施形態においては、導管12の内面は疎水性材料によって被覆され、且つ疎水性の栓は未加工の疎水性プラスチック材料を露出する非被覆面を有する導管12のセクションを含む。
【0037】
他の実施形態においては、吸上が適切な間隔で起こることを確保するためにインキュベーションチャンバー10が複数の廃液チャンバー62と接続される。
【0038】
本明細書には、均一な充填を目的とした親水性インキュベーションチャンバー、サンプルの汚染を防止するための一方向バルブ、およびインキュベーションチャンバーより液状物を除去するための廃液チャンバーを有する統合マイクロアレイシステムも記載される。今度は図5を参照すると、統合マイクロアレイシステム100の実施形態は基板30上にプリントまたは形成されたマイクロアレイ20、マイクロアレイ20の周囲に形成された親水性インキュベーションチャンバー10、導管(示さず)を経てインキュベーションチャンバー10と流体的に連絡するドームバルブ50、および導管12を経てインキュベーションチャンバー10と接続する廃液チャンバー60を含む。吸収剤62は、ベント64を経て環境中に表出する廃液チャンバー60に組み入れられる。透明な親水性カバー70がインキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60の上面を形成する。1つの実施形態においては、ベント64は単純に廃液チャンバー60のカバーに穴を穿孔することによって形成される。
【0039】
インキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60を親水性テープまたはフィルムで被覆することの利点の1つは、薄いフィルムまたはテープが圧力の下で変形できることである。したがって、インキュベーションチャンバー10にわずかな変形を引き起こすことによりインキュベーションチャンバー内部の液状物に動きを引き起こすような、わずかな圧力を廃液チャンバーに印加することにより、インキュベーションチャンバー10内の液状物を混合することが可能である。
【実施例1】
【0040】
(親水性テープでインキュベーションチャンバーを被覆することでチャンバーの完全な充填がもたらされた)
図6はマイクロアレイシステムの1つの実施形態の幾何学的配置を示す。円は充填入口11であり、正方形はマイクロアレイインキュベーションチャンバー10であり、且つ長い長方形は廃液チャンバーである。幅0.5mmの導管14が充填入口11をマイクロアレイインキュベーションチャンバー10に接続し、2.0mm導管12がマイクロアレイインキュベーションチャンバー10を廃液チャンバー60に接続し、且つ1.0mm導管64がベント(排出口)の役割を果たし廃液チャンバー60を外部に接続する。マイクロアレイインキュベーションチャンバー10は10mm×10mmのサイズを有する。厚さ0.25mmを有する内側のガスケットテープ(3M社より入手可能、Part No.9087)はレーザー切断されて上述の幾何学配置を有するガスケットを形成した。ガスケットは、ゲルスポットプリント工程で用いられるスライドと同様の接触角で疎水性表面上に載置された。ガスケットの上面は親水性テープ(AR90128)で密封されて親水性表面を提供した。30μLの水が気泡またはエアポケットを残すことなく均一にチャンバーに充填された。30μLのハイブリダイゼーションバッファー(3Mチオシアン酸グアニジン、150mM HEPES pH7.5、および15mM EDTA)も気泡を伴わずにチャンバー内に均一に充填された。疎水性テープ(AR8192)を用いた同様の試験では、非均一的な充填によりマイクロアレイチャンバー内にエアポケットが残った。
【0041】
この実験により、チャンバーの親水性表面によって液状物の表面張力が克服され、且つ正方形の隅を含むチャンバーの完全な充填が可能となることが証明された。典型的には正方形の隅は液状物がチャンバーを満たすにつれてエアポケットを捕捉するので、この結果は驚くべきものである。
【実施例2】
【0042】
(廃液チャンバーの吸上効率の評価)
図7Aは4つの試験マイクロアレイスライドを示し、それぞれが吸収剤を収容する廃液チャンバーと接続する親水性インキュベーションチャンバーを有する。廃液チャンバーは環境中に表出していた。チャンバーはマイクロアレイ支持スライドの上部にガスケット(Grace Biolab社より提供された両面テープをレーザーカットする)を載置することにより形成された。インキュベーションチャンバー内の親水性表面は、インキュベーションチャンバーの空隙を親水性テープ(AR90469)で被覆することによって生成された。吸収剤はミリポア社製であった(C048)。Yersinia pestisに由来する増幅生成物、ハイブリダイゼーションマーカー、BSAおよびハイブリダイゼーションバッファーを含有するサンプル95μLを95℃で5分間変性させた後、入口よりインキュベーションチャンバーに導入した。次に入口をテープ(AR90697)で密封した。スライドタワーを着接したMJ Research PTC−200 DNA Engineサーマルサイクラー内で反応物を50℃で1時間インキュベートした。マイクロアレイスライドをタワーより取出し、室温で水150μLにより洗浄した。水が入口よりインキュベーションチャンバーに付加されるにつれて、インキュベーションチャンバー内の液状物はインキュベーションチャンバーと廃液チャンバーを接続する導管を経て廃液チャンバー内に押出された。一旦インキュベーションチャンバー内の液状物と廃液チャンバー内の吸収剤の間で接続が確立されると、吸収剤はインキュベーションチャンバーより液状物(洗浄容積を含む)を吸上することができた。次に、マイクロアレイスライドを95℃で20分間加熱し、インキュベーションチャンバーを完全に乾燥させた。マイクロアレイは、装置に一切操作を行わずにAurora Photonics Port Array 5000(TM)上で撮影した。画像はインキュベーションチャンバーを被覆する親水性テープ越しに撮影した。
【0043】
図7Bは、ハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥段階後のマイクロアレイの例の画像を示す。生成物スポットは暗黒色の点として示される。コントロールスポットはCy3スポットおよびハイブリダイゼーションマーカーを含む。各アレイは4つのサブアレイの複製であるので、4組のYp生成物スポットである。全ての試験スライドで均一なハイブリダイゼーションが達成された。
【実施例3】
【0044】
(ドームバルブ、親水性インキュベーションチャンバーおよび廃液チャンバーを含むマイクロアレイシステム)
図8Aは、親水性テープで被覆されたインキュベーションチャンバー、吸収剤が組み込まれた廃液チャンバー、およびインキュベーションチャンバーと接続されたドームバルブを有する統合マイクロアレイシステムの1つの実施形態を示す。ハイブリダイゼーションマスター混合物およびYersinia pestis生成物からなるサンプル95μLを、95℃で5分間変性させ、Raminin P200μLピペッターによりドームバルブを経てインキュベーションチャンバー内に導入した。サンプルは、気泡またはエアポケットを残すことなくマイクロアレイチャンバーに均一に流入した。インキュベーションチャンバーを、スライドタワーを着接したMJ Research PTC−200 DNA Engineサーモサイクラー上で、流動セル装置に一切変更を加えることなく、50℃で60分間加熱した。マイクロアレイスライドをスライドタワーより取出し、水150μLで洗浄した。水がインキュベーションチャンバー内に導入されるにつれて、インキュベーションチャンバー内のハイブリダイゼーション混合物は廃液チャンバーに押出され、Millipore C048吸収剤がインキュベーションチャンバーより液状物の全容量を吸上した。次に、マイクロアレイスライドを95℃で20分間加熱し、インキュベーションチャンバーを完全に乾燥させた。マイクロアレイは、装置に一切操作を行わずにAurora Photonics Port Array 5000(TM)上で撮影した。画像は、インキュベーションチャンバーを被覆する親水性テープ越しに撮影した。
【0045】
図8Bは、ハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥段階後の代表的なマイクロアレイの画像を示す。生成物スポットは暗黒色の点として示される。コントロールスポットはCy3スポットおよびハイブリダイゼーションマーカーを含む。各アレイは4つのサブアレイの複製であるので、4組のYp生成物スポットである。図8Bに示すように、全てのサブアレイにおいて均一なハイブリダイゼーションが達成された。
【実施例4】
【0046】
(親水性インキュベーションチャンバーおよび廃液チャンバーを含むマイクロアレイシステム)
図9Aは親水性チャンバー10および廃液チャンバー60を有するマイクロアレイシステムの他の実施形態を示す。2つのチャンバーは入口セクション15を有する導管12、漏斗型の接続セクション16、大口径出口セクション17および小口径出口セクション17によって接続される。液状サンプルを、入口11および導管14を経てインキュベーションチャンバー10に付加する。
【0047】
図9Aに示すマイクロアレイシステムは、両面テープよりレーザーカットされたガスケット(Grace Biolabs社)を用いて、ガラススライド上に構築された。廃液チャンバー60は濾紙吸収剤(CF4、Millipore)を収容し、且つ環境中に表出した。生成したマイクロアレイアセンブリは、Lexan HPFAF(0.007’’/175μm)曇り止めテープ(GE Plastics社)によって被覆した。Streptococcus pyrogenaseに由来する増幅生成物、ハイブリダイゼーションマーカー(陽性対照)、BSAおよびハイブリダイゼーションバッファーを含有するサンプル20μLを95℃で5分間変性させ、さらにRainin P200μLピペッターにより入口を経てインキュベーションチャンバー10に導入した。入口ポート11をテープで密封し、スライドタワーを着接したMJ Research PTC−200 DNA Engineサーマルサイクラー内でスライド全体を55℃で30分間インキュベートした。スライドをタワーより取出し、室温で水150μLにより洗浄した。アレイはAurora Photonics Port Array 5000(TM)マイクロアレイリーダー上で撮影した(露出時間2秒)。図9Bはハイブリダイゼーションの結果を示す。図9Cはアレイスポットの配置を示すチップマップである。図9Bに示すように、ハイブリダイゼーション対照およびStreptococcus特異性プローブより強い陽性の結果が得られた。
【実施例5】
【0048】
(ワンステップタンパク質マイクロアレイシステム)
図5および図9に示された実施形態の1つのようなワンステップ統合タンパク質マイクロアレイシステムは、捕捉抗体を含有するゲルドロップ部材を用いて構築される。捕捉抗体は、生物兵器剤(BWA)パネルと特異的に結合する抗体である。各ゲルスポットは特定の1種類のBWAと結合する1種類の抗体を含有する。金コロイド標識された二次抗体群を入口導管付近に載置する。二次抗体は同一パネルのBWAを認識する。液状サンプルを入口導管よりインキュベーションチャンバーに装填すると、サンプルがインキュベーションチャンバーに進入するにつれて金コロイド標識二次抗体がサンプルと混合する。目的のBWAは、インキュベーション中にアレイゲルスポット中の抗体によって捕捉され、さらに二次抗体が捕捉されたBWAと結合する。インキュベーション時間の後に未結合の二次抗体を洗流する。二次抗体はゲルスポットに捕捉されたBWAと結合し、さらにマイクロアレイにおいて陽性シグナルを生成する。
【0049】
本明細書で用いるところの用語「抗体」は可能な限り最も広い意味で用いられ、抗体、組換え抗体、遺伝子改変抗体、キメラ抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、多重性抗体、二特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、異種抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ラクダ化抗体、脱免疫抗体、抗イディオタイプ抗体、および/または抗体フラグメントを含むことがあるが、これに限定されない。用語「抗体」は、IgA、IgD、IgE、IgGおよび/またはIgM等の抗体の種類、および/またはサブタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1および/またはIgA2を含むことがあるが、これに限定されない。用語「抗体」は、たとえば抗体結合可変領域などの無傷な抗体の少なくとも一部などのような抗体のフラグメントも含むことがあるが、これに限定されない。抗体フラグメントの例はFv、Fab、Fab’、F(ab’)、F(ab’)、Fvフラグメント、二特異性抗体、線形抗体、短鎖抗体分子、多重特異性抗体、および/またはある抗体のその他の抗原結合配列を含む。追加的な情報は、参照文献として本明細書に組み入れられた米国特許第5,641,870号、米国特許第4,816,567号、国際公開第WO93/11161号、Holliger他Diabodies:small bivalent and bispecific antibody fragments,PNAS,90:6444−6448(1993)、Zapata他Engineering linear F(ab’)2 fragments for efficient production in Escherichia coli and enhanced antiproliferative activity,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)に認められることもある。
【実施例6】
【0050】
(ツーステップタンパク質マイクロアレイシステム)
図5および図9に示された実施形態の1つのようなツーステップ統合タンパク質マイクロアレイシステムは、抗体を含有するゲルドロップ部材を用いて構築される。各ゲルスポットは特定の目標物と結合する1種類の抗体を含有する。サンプルをインキュベーションチャンバーに導入し、固定された長さの時間チャンバー内でインキュベートする。洗浄バッファーを付加して未結合のサンプルを除去する。洗浄バッファーが廃液バッファーに吸上されるので、インキュベーションチャンバー内の液状物が全て除去される。次の段階では、1つまたは複数の二次抗体をインキュベーションチャンバーに付加し、さらに固定された長さの時間インキュベートする。インキュベーション時間の後に未結合の二次抗体を洗流する。ゲルスポットに捕捉された目標物と結合した二次抗体は、マイクロアレイにおいて陽性シグナルを生成する。
【0051】
この実施形態においては、インキュベーションチャンバーを廃液チャンバーと接続する導管内に気泡が1個残り、インキュベーションチャンバー内の液状物を廃液と分離し、且つ早すぎる吸上を防止した。インキュベーションチャンバーに追加的な洗浄容積を付加すると、未結合の抗体はインキュベーションチャンバーより押出され、廃液チャンバーに吸上される。複数の廃液チャンバーにより、確実に適切な間隔で吸上が発生する。
【0052】
本明細書で用いた用語および記述は例示のみを目的として説明され、制限としては意図されていない。当業者は、特に示さない限り全ての用語がその可能な限り最も広い意味において理解されるべき以下の請求項、またはその相当記載で定義するように、本発明の趣旨および範囲内で多くの変法が可能であることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロアレイシステムであって:
平面基板上に形成されたマイクロアレイ、および
前記マイクロアレイの周囲に形成されたインキュベーションチャンバーを含み、
前記インキュベーションチャンバーがその上に前記マイクロアレイが形成される底面および前記マイクロアレイと対面する上面を含む複数の内面を含み、且つ
前記複数の内面のうち少なくとも1つが親水性の表面である、前記マイクロアレイシステム。
【請求項2】
前記親水性の表面が前記上面である、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項3】
前記親水性の表面が前記上面を親水性コーティングで被覆することにより形成される、請求項2に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項4】
前記インキュベーションチャンバーが前記マイクロアレイの周囲にガスケットを載置し且つ前記ガスケットを親水性テープまたは親水性フィルムで被覆することによって形成される、請求項2に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項5】
前記親水性のテープまたは親水性のフィルムが透明である、請求項4に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記平面基板を被覆するカバースリップをさらに含み、前記マイクロアレイが前記平面基板上の陥凹領域に形成され且つ前記インキュベーションチャンバーが前記カバースリップと前記平面基板上の前記陥凹領域の間に形成される、前記マイクロアレイシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記平面基板を被覆するカバースリップをさらに含み、前記カバースリップが陥凹領域を有し、前記陥凹領域が前記マイクロアレイよりも大きく且つ前記マイクロアレイの上部に位置し、且つ前記インキュベーションチャンバーが前記マイクロアレイと前記カバースリップ上の前記陥凹領域の間に形成される、前記マイクロアレイシステム。
【請求項8】
前記親水性の表面が細胞膜を溶解する浸漬された化学物質を含む、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項9】
前記親水性の表面が溶解した細胞に由来する核酸を保持する親水性マトリクスを含む、請求項8に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項10】
前記親水性の表面が前記上面である、請求項8に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項11】
前記親水性の表面が前記底面である、請求項8に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項12】
前記親水性の表面が前記底面である、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項13】
前記インキュベーションチャンバーに液状サンプルを装填するための一方向バルブをさらに含む、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項14】
前記一方向バルブが逆止弁である、請求項13に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項15】
前記一方向バルブがドームバルブである、請求項13に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項16】
前記一方向バルブが第1の導管を経て前記インキュベーションチャンバーに接続される、請求項13に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項17】
廃液チャンバーをさらに含む、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項18】
前記廃液チャンバーが前記インキュベーションチャンバーより液状物を吸上することのできる吸収剤を含む、請求項17に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項19】
前記吸収剤がセルロースを含む、請求項18に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項20】
前記廃液チャンバーが前記インキュベーションチャンバーの容積より大きな容積を有する、請求項17に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項21】
前記廃液チャンバーが第2の導管を経て前記インキュベーションチャンバーに接続される、請求項17に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項22】
前記廃液チャンバーが吸上率を調節することを目的として前記第2の導管から距離をおいて載置された吸収剤を含む、請求項21に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項23】
前記第2の導管が入口セクション、漏斗型接続セクション、および出口セクションを含み、前記入口セクションが前記出口セクションの口径よりも大きな口径を有する、請求項21に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項24】
前記廃液チャンバーがベンティング導管を経て環境中に表出する、請求項17に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項25】
前記基板がガラスである、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項26】
前記基板がプラスチックである、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項27】
前記マイクロアレイがオリゴヌクレオチドアレイである、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項28】
前記マイクロアレイがタンパク質アレイである、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項29】
前記タンパク質アレイが抗体アレイである、請求項28に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項30】
前記マイクロアレイがゲルスポットプリント法によって形成される、請求項1に記載のマイクロアレイシステム。
【請求項31】
マイクロアレイシステムであって:
平面基板上に形成されたマイクロアレイ;
インキュベーションチャンバーが前記マイクロアレイを囲繞する、前記インキュベーションチャンバー;
液状サンプルを前記インキュベーションチャンバーに装填するためのドームバルブ;および
前記一方向バルブを前記インキュベーションチャンバーと接続する導管を含む、前記マイクロアレイシステム。
【請求項32】
マイクロアレイシステムであって:
平面基板上に形成されたマイクロアレイ、
インキュベーションチャンバーが前記マイクロアレイを囲繞する、前記インキュベーションチャンバー;
吸収剤を収容する廃液チャンバー;および
前記廃液チャンバーを前記インキュベーションチャンバーと接続する導管を含む、前記マイクロアレイシステム。
【請求項33】
前記インキュベーションチャンバーが親水性の内面を含む、請求項32に記載のマイクロアレイシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−523698(P2011−523698A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508454(P2011−508454)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/005933
【国際公開番号】WO2009/136892
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510048369)アコーニ バイオシステムズ (8)
【氏名又は名称原語表記】AKONNI BIOSYSTEMS
【Fターム(参考)】