説明

マイクロアレイ

【課題】高感度にターゲット高分子を検出できるマイクロアレイを提供する。
【解決手段】 検出部位ごとに異なるターゲットDNAに対応するプローブ鎖が固定されている。配列「A」のターゲットDNA1に対応するプローブ鎖2を代表として示している。プローブ鎖2は、配列「A」と相補的な配列「X」を繰り返した配列「XX・・・X」を有するDNA鎖であり、基板3に固定される。ターゲットDNA1に蛍光マーカ11を付加してハイブリダイゼーションを行うと、ターゲットDNA1は、プローブ鎖2の配列「A」の各部位に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ鎖を基材に固定し、相補配列を有するターゲット高分子をプローブ鎖に結合させることで、当該ターゲット高分子を検出するマイクロアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の異なる生体高分子の検出部位が高密度に集積されたマイクロアレイチップが開発されている。各検出部位には、ターゲットDNAやターゲットRNAなど、それぞれのターゲット高分子に相補的な配列のプローブ鎖が固定される。ターゲット高分子に蛍光マーカを付加した上でハイブリダイゼーションを行った後、検出部位ごとの蛍光発光を解析することによりターゲット高分子を検出できる。
【特許文献1】特開2000−235035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなマイクロアレイチップでは、検出感度を増大させるために、ハイブリダイゼーションにより捕捉されるターゲット高分子数を増加させたいという要望がある。しかし、DNAはマイナスにチャージしており、近づきすぎると反発力が生じるために、プローブ鎖の固定密度には限界があり、検出部位における単位面積当たりのプローブ鎖の個数を限界値以上に増加させることはできない。また、プローブをデンドリマー化する方法もあるが、製造コストがかかりマイクロアレイチップが高価なものとなる。
【0004】
また、プローブ鎖の本数を限界まで増やしたとしても、流体力学上、プローブ鎖が固定される基板の近傍ではハイブリダイゼーションが困難となるため、実際には、プローブ鎖の本数に比例して検出感度を高めることができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、高感度にターゲット高分子を検出できるマイクロアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロアレイは、プローブ鎖を基材に固定し、相補配列を有するターゲット高分子を前記プローブ鎖に結合させることで、当該ターゲット高分子を検出するマイクロアレイにおいて、同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子と相補的な同一の特定配列が当該プローブ鎖に沿って複数配置されていることを特徴とする。
このマイクロアレイによれば、同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子と相補的な同一の特定配列が当該プローブ鎖に沿って複数配置されているので、高感度にターゲット高分子を検出できる。
【0007】
前記同一プローブ鎖中で、前記同一の特定配列が反復されていてもよい。
【0008】
本発明のマイクロアレイは、プローブ鎖を基材に固定し、相補配列を有するターゲット高分子を前記プローブ鎖に結合させることで、当該ターゲット高分子を検出するマイクロアレイにおいて、同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子中の互いに離れた複数部位とそれぞれ相補的な複数種類の特定配列が含まれていることを特徴とする。
このマイクロアレイによれば、同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子中の互いに離れた複数部位とそれぞれ相補的な複数種類の特定配列が含まれているので、高感度にターゲット高分子を検出できる。
【0009】
前記同一プローブ鎖中の前記特定配列の間にスペーサ配列を設けてもよい。
【0010】
前記ターゲット高分子は、核酸であってもよい。
【0011】
前記基材として基板、ビーズ、または網状の部材を用いてもよい。
【0012】
前記同一の特定配列が反復されているプローブ鎖は、LANP法またはRCA法を用いて作成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマイクロアレイによれば、同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子と相補的な同一の特定配列が当該プローブ鎖に沿って複数配置されているので、高感度にターゲット高分子を検出できる。
【0014】
本発明のマイクロアレイによれば、同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子中の互いに離れた複数部位とそれぞれ相補的な複数種類の特定配列が含まれているので、高感度にターゲット高分子を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図2を参照して、本発明によるマイクロアレイの実施形態について説明する。
【0016】
図1(a)は、一実施形態のマイクロアレイにおけるプローブ鎖中の配列を示す図である。
【0017】
このマイクロアレイでは、検出部位ごとに異なるターゲットDNAに対応するプローブ鎖が固定されている。図1(a)は、配列「A」のターゲットDNA1に対応するプローブ鎖2を代表として示している。図1(a)に示すように、プローブ鎖2は、配列「A」と相補的な配列「X」を繰り返した配列「XX・・・X」を有するDNA鎖であり、基板3に固定される。本実施形態のマイクロアレイでは、個々のターゲットDNAに対応するプローブ鎖が、該当する検出部位に固定されている。個々のターゲットDNAを検出する検出部位に同一のプローブ鎖を複数固定してもよいし、1箇所の検出部位ごとに1本のプローブ鎖を対応させてもよい。
【0018】
プローブ鎖の作成方法としては、一般的なオリゴ合成法のほか、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification)、RCA法(Rolling Circle Amplification)を用いることで、長い配列の繰り返し構造を効率的に作成することができる。
【0019】
ターゲットDNA1に蛍光マーカ11を付加してハイブリダイゼーションを行うと、図1(b)に示すように、ターゲットDNA1は、プローブ鎖2の配列「A」の各部位に結合する。なお、蛍光マーカの付加とハイブリダイゼーションの処理の前後は任意に選択できる。
【0020】
本実施形態のマイクロアレイでは、ターゲットDNA1は、プローブ鎖2の配列「A」のどこに対してもハイブリダイゼーション可能なため、1本のプローブ鎖2に対し、多数のターゲットDNA1を結合させることができる。したがって、基板3の単位面積当たりの蛍光発光を増大させ、ターゲットDNA1の検出感度を高めることができる。
【0021】
本実施形態のマイクロアレイでは、基板3と垂直方向にプローブ鎖2を伸ばしているため、ハイブリダイゼーション時の結合部位を3次元的に配置することができ、プローブ鎖2の面密度の制限にも拘わらず、プローブ鎖2に結合するターゲット高分子1の数を増加させることができる。また、プローブ鎖2の全体をハイブリダイゼーションのために有効に利用できる。
【0022】
また、同一配列の繰り返しにより、プローブ鎖2を長くすることができるため、基板3から離れた部位へのハイブリダイゼーションが可能となり、流体力学上、ハイブリダイゼーション効率が向上する。このためハイブリダイゼーション時の攪拌作業も容易となる。
【0023】
図1(c)は、スペーサ配列を設けた例を示す図である。図1(c)に示すプローブ鎖21では、配列「A」の間にスペーサ配列「s」が挿入されており、配列「AsAs・・・As」を有するDNA鎖とされている。この場合には、プローブ鎖21の隣り合った配列「A」に結合したターゲットDNA1同士がスペーサ配列「s」によって引き離されるため、相互の干渉を低減できる。このためハイブリダイゼーションの精度を向上させることができる。
【0024】
次に、1つの遺伝子中の複数の部位に対応する配列を1本のプローブ鎖に含めるようにしてもよい。
【0025】
図2(a)には、1つの遺伝子中に、配列「a」、配列「b」および配列「c」をとる3つの異なる部位がある例が示されている。一方、図2(b)に示すプローブ鎖22では、配列「a」と相補的な配列「x」、配列「b」と相補的な配列「y」、および配列「c」と相補的な配列「z」が繰り返されて配置されている。
【0026】
図2(c)に示すように、ハイブリダイゼーションにより、配列「a」の部位には配列「x」が、配列「b」の部位には配列「y」が、配列「c」の部位には配列「z」が、それぞれ結合するため、処理中に切断され断片化した遺伝子(図2(a))を効率的に検出できる。複数部位の選択に際して、1つの遺伝子中で互いに離れた部位の配列を選択することが有効である。例えば、3端末に近い部位と、5端末に近い部位とを選択することができる。このような場合、蛍光試薬は、dCTPなどランダムに挿入されるものを用いる。
【0027】
図2(c)に示すように、所定の配列の繰り返し構造を採ることにより、図1(a)の場合と同様、ハイブリダイゼーション時の結合部位を3次元的に配置することができ、プローブ鎖22に結合するターゲット高分子の数を増加させることができる。また、プローブ鎖22の全体をハイブリダイゼーションのために有効に利用できる。さらに、同一配列の繰り返しにより、プローブ鎖22を長くすることができるため、ハイブリダイゼーション効率が向上する。
【0028】
図2(d)に示すように、1つの遺伝子中の複数の配列を1本のプローブ鎖に含める代わりに、当該遺伝子を検出する検出部位(スポット)に固定されたプローブ鎖群の中に、これらの配列を取り込むようにしてもよい。図2(d)の例では、配列「x」の繰り返し構造を有するプローブ鎖23と、配列「y」の繰り返し構造を有するプローブ鎖24と、配列「z」の繰り返し構造を有するプローブ鎖25と、を検出部位31に固定している。これにより、検出部位31全体で、当該遺伝子(図2(a))を検出することができる。
【0029】
図2(d)の例においても、所定の配列の繰り返し構造を採ることにより、ハイブリダイゼーション時の結合部位を3次元的に配置することができ、プローブ鎖23〜25に結合するターゲット高分子の数を増加させることができる。また、プローブ鎖23〜25の全体をハイブリダイゼーションのために有効に利用できる。さらに、同一配列の繰り返しにより、プローブ鎖23〜25を長くすることができるため、ハイブリダイゼーション効率が向上する。
【0030】
上記実施形態では、プローブ鎖を固定する基材として基板を用いる例を示したが、基材としてビーズ、網状の部材、その他の任意の形態の基材を用いることができる。
【0031】
また、上記実施形態では、ターゲット高分子としてDNAを例示したが、ターゲット高分子は、任意の生体高分子を含んでおり、例えば、核酸であってもよい。
【0032】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、プローブ鎖を基材に固定し、相補配列を有するターゲット高分子を前記プローブ鎖に結合させることで、当該ターゲット高分子を検出するマイクロアレイに対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のマイクロアレイを示す図であり、(a)は、一実施形態のマイクロアレイにおけるプローブ鎖中の配列を示す図、(b)は、ハイブリダイゼーションを行った後の状態を示す図、(c)は、スペーサ配列を設けた例を示す図。
【図2】別実施形態のマイクロアレイを示す図であり、(a)は、1つの遺伝子中の配列を示す図、(b)はプローブ鎖の構造を示す図、(c)は、ハイブリダイゼーション後の状態を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1 ターゲットDNA(ターゲット高分子)
2 プローブ鎖
3 基板(基材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ鎖を基材に固定し、相補配列を有するターゲット高分子を前記プローブ鎖に結合させることで、当該ターゲット高分子を検出するマイクロアレイにおいて、
同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子と相補的な同一の特定配列が当該プローブ鎖に沿って複数配置されていることを特徴とするマイクロアレイ。
【請求項2】
前記同一プローブ鎖中で、前記同一の特定配列が反復されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項3】
プローブ鎖を基材に固定し、相補配列を有するターゲット高分子を前記プローブ鎖に結合させることで、当該ターゲット高分子を検出するマイクロアレイにおいて、
同一プローブ鎖中に、特定のターゲット高分子中の互いに離れた複数部位とそれぞれ相補的な複数種類の特定配列が含まれていることを特徴とするマイクロアレイ。
【請求項4】
前記同一プローブ鎖中の前記特定配列の間にスペーサ配列を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
【請求項5】
前記ターゲット高分子は、核酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
【請求項6】
前記基材として基板、ビーズ、または網状の部材を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
【請求項7】
前記同一の特定配列が反復されているプローブ鎖は、LANP法またはRCA法を用いて作成されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−103552(P2009−103552A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274822(P2007−274822)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】