説明

マイクロカプセルの製造方法

【課題】乳化時にカプセル壁形成用の重合性物質の反応進行による固化を抑制し、優れた生産性で界面重合法を利用してマイクロカプセルが得られるマイクロカプセルの製造方法。
【解決手段】少なくとも芯物質を含む油相を水相中に乳化して第1乳化液を調製する工程と、少なくともカプセル壁形成用としての重合性物質を含む油相を水相中に乳化して第2乳化液を調製する工程と、前記第1乳化液と前記第2乳化液を混合して混合乳化液を調製する工程と、前記混合乳化液における前記油相と前記水相との界面で前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する工程と、を有することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で柔軟性があり表示メモリ性を示す表示媒体である電子ペーパーの技術として、電気泳動表示、磁気泳動表示、液晶表示などの技術を用いた技術群が知られている。中でも電気泳動表示や液晶表示などは、液状の表示材料をマイクロカプセル中に封入して表示層を形成することによって高い生産性が期待される。
【0003】
マイクロカプセルの製法に一つとして、芯材料とカプセル壁材料として重合性物質を含む油相を水相に乳化させ、重合性物質を界面重合させてマイクロカプセルを得る方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−090716公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、乳化時にカプセル壁形成用の重合性物質の反応進行による固化を抑制し、優れた生産性で界面重合法を利用してマイクロカプセルが得られるマイクロカプセルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
少なくとも芯物質を含む油相を水相中に乳化して第1乳化液を調製する工程と、
少なくともカプセル壁形成用としての重合性物質を含む油相を水相中に乳化して第2乳化液を調製する工程と、
前記第1乳化液と前記第2乳化液を混合して混合乳化液を調製する工程と、
前記混合乳化液における前記油相と前記水相との界面で前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する工程と、
を有することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記第1乳化液及び前記第2乳化液を、多孔質膜を用いた膜乳化法、又はマイクロチャネル乳化法により調製することを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記第1乳化液に対して前記第2乳化液を滴下又は流下させて、前記混合乳化液を調製することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記芯物質が、液晶材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、乳化時にカプセル壁形成用重合性物質の反応進行による固化を抑制し、優れた生産性で界面重合法を利用してマイクロカプセルが得られる。
請求項2に係る発明によれば、膜乳化法に利用される多孔質膜、又はマイクロチャネル乳化法に利用されるマイクロチャネル(流路)において、乳化時にカプセル壁形成用重合性物質の反応進行の固化による目詰まりが抑制され、生産効率の低下や生産不能が長期にわたり回避され、特に生産性に優れる。
請求項3に係る発明によれば、特に、粒度分布のバラツキを抑制されたマイクロカプセルが得られる。
請求項4によれば、乳化時にカプセル壁形成用重合性物質の反応進行による固化を抑制し、優れた生産性で、界面重合法を利用し、液晶を含有したマイクロカプセルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法は、少なくとも芯物質を含む油相を水相中に乳化して第1乳化液を調製する工程と、少なくともカプセル壁形成用の重合性物質を含む油相を水相中に乳化して第2乳化液を調製する工程と、前記第1乳化液と前記第2乳化液を混合して混合乳化液を調製する工程と、前記混合乳化液における前記油相と前記水相との界面で前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する工程と、を有することを特徴としている。
【0012】
芯物質及び重合性物質を含む油相(溶液)は、芯物質を含むことから粘度が高い傾向にあり、乳化に時間を要することから、カプセル壁の製法として界面重合法を利用する場合、乳化中に重合性物質の反応が進行し固化することがある。特に、乳化法として多孔質膜を用いた膜乳化法、又はマイクロチャネル乳化法を利用すると、重合性物質の反応進行による固化によって、膜乳化法に利用される多孔質膜、又はマイクロチャネル乳化法に利用されるマイクロチャネル(流路)に目詰まりが生じてしまうことがある。一方で、芯物質を含まない油相(溶液)は粘度が低い傾向にある。
【0013】
そこで、本実施形態では、比較的粘度が高く乳化に時間が係る芯物質を含む油相(重合性物質を含まない油相)と、比較的粘度が低く乳化に時間を要しないカプセル壁形成用の重合性物質を含む油相(芯物質を含まない油相)の乳化と、を別々に行い、それぞれ調整した乳化液を混合した後、重合性物質の界面重合を行う。これにより、重合性物質を含む油相が短時間で行われることから、界面重合法を利用する場合、乳化中に重合性物質の反応進行が抑制され、即ち固化が抑制されつつ、重合性物質を含む油相の乳化が実施される。したがって、乳化時にカプセル壁形成用の重合性物質の反応進行による固化を抑制し、優れた生産性で界面重合法を利用してマイクロカプセルが得られる。
【0014】
そして、それぞれの乳化液の調製に、多孔質膜を用いた膜乳化法、又はマイクロチャネル乳化法を利用したときでも、膜乳化法に利用される多孔質膜、又はマイクロチャネル乳化法に利用されるマイクロチャネル(流路)が、乳化時にカプセル壁形成用の重合性物質の反応進行の固化による目詰まりを抑制し、生産効率の低下や生産不能が長期にわたり回避され、特に生産性に優れる。
【0015】
以下、各工程につき詳細に説明する。
【0016】
=乳化工程=
乳化工程では、上述のように、少なくとも芯物質を含む油相を水相中に乳化して第1乳化液を調製する工程と、少なくともカプセル壁形成用の重合性物質を含む油相を水相中に乳化して第2乳化液を調製する工程と、前記第1乳化液と前記第2乳化液を混合して混合乳化液を調製する工程と、を行う。
【0017】
まず、第1乳剤液について説明する。
第1乳化剤を調製するための芯物質(内包物)としては、油性組成物であれば何でも用いられる。具体的な芯物質としては、例えば、液晶材料、インク、オイル、香料、接着剤、生理活性物質、忌避剤、難燃剤、消臭剤、植物精油、ミルク、薬品等が挙げられる。これらの中でも、芯物質を含む油相が高粘度になりやすい液晶材料が好適に挙げられる。
【0018】
液晶材料としては、例えば、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶のいずれも使用することができる。これら液晶は公知の液晶が利用できる。液晶の構成材料としては、シアノビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルベンゾエート系、シクロヘキシルベンゾエート系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系、スチルベン系、トラン系など公知の液晶性化合物が利用できる。一般にこれらの液晶性化合物は複数を混合して液晶組成物として用いる。
【0019】
コレステリック液晶は光学活性な液晶性組成物であり、1)ネマチック液晶組成物にカイラル剤と呼ばれる光学活性化合物等を添加するか、2)コレステロール誘導体などのようにそれ自身光学活性な液晶性組成物を用いることで得られる。カイラル剤としてはコレステリルノナノエートなどのコレステロール誘導体や、2−メチルブチル基などの光学活性基を有する化合物等が利用できる。
【0020】
コレステリック液晶の螺旋ピッチはカイラル剤の種類や添加量、液晶の材質によって変化させることができる。螺旋構造を発現させるためには、螺旋ピッチはマイクロカプセルの直径以下とすることがよい。
【0021】
液晶材料には色素や微粒子などの添加物を加えてもよい。また、架橋性高分子や水素結合性ゲル化剤などを用いてゲル化したものでもよく、また、液晶の分子量は高分子、中分子、低分子のいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。
【0022】
ここで、芯物質の含有量は、第1乳化液固形分に対して20重量%以上100重量%以下が望ましく、より望ましくは、80重量%以上100重量%以下である
【0023】
第1乳化液を調製するための油相(油性溶媒)としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アクリル酸エチルなどのエステル類、塩化メチルなどのハロゲン化アルキル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。
【0024】
第1乳化液には、その他、乳化剤などの添加剤を含んでもよい。
例えば、乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤、ポリビニルアルコール、メトローズなどの保護コロイドなどが挙挙げられる。
その他添加剤としては、例えば、消泡剤、比重調整剤、酸化防止剤、潤滑剤などが挙げられる。
【0025】
第1乳化液の調製方法としては、特に制限はないが、粒度分布のバラツキを抑制されたマイクロカプセルが得られ点から、多孔質膜を用いた膜乳化法、又はマイクロチャネル乳化法を採用することがよい。
多孔質膜を用いた膜乳化法(SPG膜乳化法)は、油相を加圧して、多孔質膜(例えば、シラス多孔質ガラス:SPG[Shirau Porous Glass]膜など)の細孔を通じて油相を水相中に分散させる乳化方法である。この方法を用いると、均一な粒子径をもつエマルションを得ることができる。
一方、マイクロチャネル乳化は、多数の平板溝型マイクロチャネルアレイ又は貫通孔型マイクロチャネルアレイを用いて、油相を加圧して、当該マイクロチャネルの細孔を通じて油相を水相中に分散させる乳化法である。
【0026】
次に、第2乳剤液について説明する。
第2乳化剤を調製するためのカプセル壁形成用の重合性物質としては、重合性の単量体が好ましく用いられ、好ましい具体的としては、ポリイソシアネート化合物、酸ハロゲン化物、エポキシ化合物が挙げられる。これらの中でも、ポリイソシアネート化合物が特に好適である。
【0027】
ポリイソシアネート化合物としては、1)エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2、2、4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2、6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(2−イソシアネートエチル)カーボネート、2−イソシアネートエチル−2、6−ジイソシアネートヘキサノエートなどの脂肪族ポリイソシアネート、2)イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)−4−シクロヘキセン−1、2−ジカルボキシレートなどの脂環式ポリイソシアネート、3)キシリレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート、4)トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、などが挙げられる。
【0028】
ポリイソシアネート化合物としては、速やかに重合度を上げるため観点から、官能基数が3つ以上のポリイソシアネートが特に好適である。このようなポリイソシアネートは上記ジイソシアネートのアダクト体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などかたちで得られる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物の市販品としては、住化バイエルウレタン株式会社製のスミジュールシリーズ、デスモジュールシリーズ、SBUイソシアネート、三井化学ポリウレタン社製のタケネートシリーズ、日本ポリウレタン工業社製のミリオネートシリーズが好適に挙げられる。
【0030】
ここで、重合性物質の含有量は、第2乳化液固形分に対して20重量%以上80重量%以下が望ましい。
【0031】
第2乳化液を調製するための油相(油性溶媒)としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アクリル酸エチルなどのエステル類、塩化メチルなどのハロゲン化アルキル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物など第1乳化液を調整するのと同様のものが挙げられる。
【0032】
第2乳化液には、その他、乳化剤などの添加剤を含んでもよい。
例えば、乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤、ポリビニルアルコール、メトローズなどの保護コロイドなどが挙挙げられる。
その他添加剤としては、例えば、消泡剤、比重調整剤、酸化防止剤、潤滑剤などが挙げられる。
【0033】
第2乳化液の調製方法としては、特に制限はないが、粒度分布のバラツキを抑制されたマイクロカプセルが得られ点から、多孔質膜を用いた膜乳化法、又はマイクロチャネル乳化法を採用することがよい。
【0034】
次に、混合乳化液について説明する。
混合乳化液は、第1乳化液と第2乳化液とを混合することで調製する。これにより、混合乳化液は、少なくとも芯物質と重合性物質を含む油相が水相に分散した乳化液となる。この混合乳化液を調製する際の第1乳化液と第2乳化液との混合比は、特に制限はなく、混合乳化液が、マイクロカプセルを作製するための従来の乳化液組成と同様となるようする。
【0035】
第1乳化液と第2乳化液の混合方法としては、特に制限はないが、第1乳化液が第2乳化液に比べ粘度が高いことから、第1乳化液に対して第2乳化液を滴下又は流下させて、混合乳化液を調製することがよい。これにより、芯物質を含む油相と重合性物質を含む油相が混ざり合いやすくなり、特に、粒度分布のバラツキを抑制されたマイクロカプセルが得られる。
【0036】
混合乳化液には、その他の添加剤を含んでもよい。その他添加剤としては、例えば、消泡剤、比重調整剤、酸化防止剤、潤滑剤などが挙げられる。
【0037】
ここで、重合性物質としてイソシアネート化合物を適用した場合、混合乳化液に、ポリアミン、ポリオールを添加することがよい。これら、ポリアミン、ポリオールの添加量は、特に制限はなく、従来公知の量とされる。
ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンなどの低分子ポリアミンや、キトサン、ポリリジン、ホフマン変成ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリアミジン、ポリアリルアミンなどの高分子ポリアミンが好適に挙げられる。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ひまし油誘導体、トール油誘導体などが好適に挙げられる。
【0038】
=重合工程=
上記得られた混合乳化液を、例えば加熱することで、混合乳化液における油相と水相との界面で重合性物質が界面重合され、カプセル壁が形成される。加熱温度及び時間は使用する材料に応じて反応が十分に進行するように適宜選択する必要があるが、一般的には加熱温度が50℃以上100℃以下、過熱時間が1時間以上20時間以下程度である。これにより、芯物質を内包したマイクロカプセルが得られる。
【0039】
=後工程=
水相に形成されたマイクロカプセルは、必要に応じて、マイクロカプセルの洗浄(イオン性物質の除去)、濃縮が行われる。具体的には、例えば、遠心分離、上澄み除去、蒸留水添加、を繰り返し行うことで、マイクロカプセルの洗浄(イオン性物質の除去)、濃縮が行われる。
【0040】
以上説明した本実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法によって得られるマイクロカプセルは、例えば、芯物質として液晶材料を用いたものであれば光書き込み型表示媒体等に好適に用い得る。また、芯物質して香料を用いたものは消臭剤や芳香剤等、芯物質して忌避剤を用いたものは防鼠剤等、芯物質としてインクを用いたものは目詰まり防止インク等に好適に用い得る。
【0041】
特に、芯物質として液晶材料を用いたマイクロカプセル(以下、液晶マイクロカプセル組成物と称する)は、バインダ材料(樹脂部材)中に分散して様々な表面上へ塗布して使用されること、液晶が壁材によって保護されているため他の機能層をこの上へ形成されること、圧力や曲げなどの機械強度に優れることなどの特長を有するため利用範囲が広い。
【0042】
具体的には、例えば、液晶マイクロカプセル組成物は、例えば、表示素子、画像・情報記録素子、空間光変調器などに利用される。特に、表示素子、即ち液晶表示素子に利用することがよい。なお、液晶マイクロカプセル組成物は、液晶を内包したマイクロカプセルからなるスラリー状の組成物や、当該スラリー状の組成物をバインダーポリマー(樹脂部材)と混合したインク組成物としての形態も含むものである。
【0043】
以下、液晶マイクロカプセル組成物を利用した液晶表示素子について説明する。
【0044】
本実施形態に係る液晶表示素子は、液晶マイクロカプセル組成物を一対の電極間に挟持した構成である。具体的には、例えば、図1のように、液晶マイクロカプセル組成物4を、電極11、12がそれぞれ設けられた基板21、22の間に挟持して、駆動回路30によって電圧パルスを与えて表示させる構成となる。表示背景として光吸収部材を液晶マイクロカプセル組成物4と電極12との間、又は基板22の裏面に設けてもよい。基板21、22としては例えば、ガラス、樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどの透明誘電体)が利用される。電極11、12としては、例えば、酸化インジウム錫合金や酸化亜鉛などの透明導電膜が利用される。
【0045】
ここで、図3に示す液晶表示素子は、液晶マイクロカプセル組成物4として、樹脂部材1中にコレステリック液晶2を内容したマイクロカプセル3を分散・保持させた形態を示している。
【0046】
本実施形態に係る液晶表示素子において、液晶としてコレステリック液晶を適用した場合、当該コレステリック液晶のメモリ状態におけるP配向とF配向の光学的差異を際立たせるものであるので、表示モードとしてはこれまで述べてきた選択反射モード以外に、P配向とF配向の光散乱強度の差を利用した散乱−透過モード、旋光度の差を利用した旋光モード、複屈折の差を利用した複屈折モードなどを利用してもよい。この場合、補助部材として偏光板や位相差板と併用してもよい。また、液晶中に2色性色素を加えてゲスト−ホストモードで表示してもよい。
【0047】
本実施形態に係る液晶表示素子の駆動方法としては、1)表示形状にパターニングされた電極間に挟んで駆動するセグメント駆動法、2)交差(例えば直交)する一対のストライプ状電極基板間に液晶マイクロカプセル組成物を挟んで線順次走査して画像を書き込む単純マトリクス駆動法、3)個々の画素ごとに薄膜トランジスタ、薄膜ダイオード、MIM(metal−insulator−metal)素子などの能動素子を設けてこれらの能動素子を介して駆動するアクティブ・マトリクス駆動法、4)光導電体と積層して一対の電極間に挟持して、光像を投影ながら電圧を印加して画像を書き込む光駆動法、5)一対の電極間に挟持した液晶マイクロカプセル組成物(液晶材料としてコレステリック液晶を適用した組成物)を、電圧印加でP配向へ遷移させてその後にレーザーやサーマルヘッドで相転移温度以上へ加熱して画像を書き込む熱駆動法、6)電極基板上へ液晶含有組成物を塗布して、スタイラスヘッドやイオンヘッドで画像を書き込む静電駆動法など、公知の駆動方法が適用される。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0049】
(実施例1)
ネマチック液晶E7(メルク社製)を86.25部と、カイラル剤R811(メルク社製)を11.0部と、カイラル剤R1011(メルク社製)を2.75部とを混合して、波長650nmを選択反射するコレステリック液晶100部を得た。シラス多孔質ガラス膜(平均細孔径4.2μm)を利用した膜乳化法(SPGテクノ製マイクロキット、窒素圧力0.12kgf/cm)により、この油相組成物100部を0.2%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液1000部に分散させ、体積平均粒径が15μm、GSD(粒度分布:Geometric Standard Di−vision)1.05のo/wエマルジョン(乳化液A)を調製した。
【0050】
一方、多価イソシアネートとしてタケネートD−110N(武田薬品工業社製)10部を、酢酸エチル1000部中に溶解して油相組成物を調製した。ホモジナイザ(TKロボミックス、特殊機化工業製)を用いた器械乳化法(条件8000回転、20分)により、この油相組成物1010部を1%ポリビニルアルコール水溶液10000部に分散させ、体積平均粒径が2μmのo/wエマルジョン(乳化液B)を調製した。
【0051】
次に、得られた乳化液A1000部に対し、乳化液B200部を流下させて混合し、混合乳化液を調整した。そして、混合乳化液1200部に対し、ポリアリルアミンPAA−10C(日東紡社製)の10%水溶液を30部加え、70℃で2時間加熱してポリウレアを壁材とするマイクロカプセルを作製した。マイクロカプセルを遠沈回収後、ポリビニルアルコール水溶液を加えて液晶マイクロカプセル組成物とした。
【0052】
−評価−
得られた液晶マイクロカプセル組成物の粒度分布につき、次のように測定したところ、体積平均粒径16μm、GSD1.1であった。
体積平均粒径、粒度分布(GSD)の測定は、ベックマン−コールタによる測定を常温で実施した。
【0053】
また、上記液晶マイクロカプセル組成物の作製を3回繰り返し行い、乳化液Aの調製に利用した、膜乳化法に利用したシラス多孔質ガラス膜を観察したところ、残渣は見られず、乳化速度、乳化物の粒度分布ともに変化がなかった。なお、乳化法としてマイクロチャネル法を採用した場合でも、同様な現象が見られた。
【0054】
(実施例2)
実施例1において、得られた乳化液Bに対して、乳化液Aを流下させて混合して、混合乳化液を調製した以外は、実施例1と同様にして液晶マイクロカプセル組成物を調製した。
【0055】
−評価−
得られた液晶マイクロカプセル組成物の粒度分布につき、次のように測定したところ、体積平均粒径15μm、GSD1.2であった。
【0056】
(比較例1)
ネマチック液晶E7(メルク社製)を86.25部と、カイラル剤R811(メルク社製)を11.0部と、カイラル剤R1011(メルク社製)を2.75部とを混合して、波長650nmを選択反射するコレステリック液晶100部を得た。このコレステリック液晶100部と多価イソシアネートとしてタケネートD−110N(武田薬品工業社製)10部とを、酢酸エチル1000部中に溶解して油相組成物を調製した。シラス多孔質ガラス膜(平均細孔径4.2μm)を利用した膜乳化法(SPGテクノ製マイクロキット、窒素圧力0.12kgf/cm)により、この油相組成物1100部を1%ポリビニルアルコール水溶液10000部に分散させ、体積平均粒径が15μmのo/wエマルジョン(乳化液)を調製した。
【0057】
次に、得られた乳化液1000部に対し、ポリアリルアミンPAA−10C(日東紡社製)の10%水溶液を30部加え、70℃で2時間加熱してポリウレアを壁材とするマイクロカプセルを作製した。マイクロカプセルを遠沈回収後、ポリビニルアルコール水溶液を加えて液晶マイクロカプセル組成物とした。
【0058】
−評価−
得られた液晶マイクロカプセル組成物の粒度分布につき、次のように測定したところ体積平均粒径13μm、GSD 1.15であった。
【0059】
また、上記液晶マイクロカプセル組成物の作製を3回繰り返し行い、重合性物質として多価イソシアネートを含む乳化液の調製に利用した、膜乳化法に利用したシラス多孔質ガラス膜を観察したところ、表面への樹脂の付着、細孔の目詰まり見られた、2回目の乳化以降の乳化速度は極端に低下した。。なお、乳化法としてマイクロチャネル法を採用した場合でも、同様な現象が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態に係る液晶表示素子の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0061】
1 樹脂部材
2 コレステリック液晶
3 マイクロカプセル
4 液晶含有組成物
11,12 電極
21,22 基板
30 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも芯物質を含む油相を水相中に乳化して第1乳化液を調製する工程と、
少なくともカプセル壁形成用としての重合性物質を含む油相を水相中に乳化して第2乳化液を調製する工程と、
前記第1乳化液と前記第2乳化液を混合して混合乳化液を調製する工程と、
前記混合乳化液における前記油相と前記水相との界面で前記重合性物質を界面重合してカプセル壁を形成する工程と、
を有することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記第1乳化液及び前記第2乳化液を、多孔質膜を用いた膜乳化法、又はマイクロチャネル乳化法により調製することを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記第1乳化液に対して前記第2乳化液を滴下又は流下させて、前記混合乳化液を調製することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】

前記芯物質が、液晶材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−172539(P2009−172539A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15577(P2008−15577)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】