説明

マイクロカプセルインキとその製造方法、及びノーカーボン感圧複写紙

【課題】マイクロカプセル同士の凝集による粗大粒子が少なく、ホットメルト方式の印刷に適したマイクロカプセルインキの製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロカプセル及び熱溶融性ワックスを主要構成成分とするマイクロカプセルインキにおいて、水媒体中で作製された合成樹脂膜マイクロカプセルの水性分散体とび融点が50〜90℃の熱溶融性ワックス(A)の水性分散体との混合水性分散液を噴霧乾燥して得られるマイクロカプセル含有粉体を、熱溶融性ワックス(B)と共に、熱溶融性ワックス(A)及び熱溶融性ワックス(B)の融点以上に加熱、攪拌することによりマイクロカプセルを熱溶融性ワックス中に分散してマイクロカプセルインキを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルインキとその製造方法に関するものであり、その一用途として、電子供与性発色剤(以下発色剤と称す)をマイクロカプセルの芯物質として内包するマイクロカプセルインキを部分印刷することにより得られるノーカーボン感圧複写紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、記録材料、香料、医薬品、農薬、殺虫剤、肥料、蓄熱材、接着剤、防錆剤、液晶、酵素、触媒、人工血液等の多種多様な分野で使用されており、その最も代表的な用途として、発色剤をマイクロカプセル化し、顕色剤との発色反応を利用して複写記録に用いるノーカーボン感圧複写紙を挙げることができる。発色剤内包マイクロカプセルをインキ化して支持体の一部に印刷し、部分印刷型のノーカーボン感圧複写紙とすることも知られている。
【0003】
マイクロカプセルの製造方法としては、コアセルベーション法、インサイチュー重合法、界面重合法等が代表的な方法として知られている。コアセルベーション法は、両性高分子電解質であるゼラチンとアニオン性高分子電解質であるアラビアゴム、カルボキシメチルセルロース等との電気的相互作用による相分離を利用したものである。インサイチュー重合法は、芯物質の内側あるいは外側の一方のみから皮膜材料のモノマー及び重合触媒を供給し、芯物質の表面でモノマーの重合あるいは縮合によりポリマー皮膜を形成する方法であり、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等が皮膜材料として知られている。界面重合法は、芯物質とその媒体の双方に異なる種類のモノマーをそれぞれ含有させ、両者の界面すなわち芯物質の表面でポリマーの皮膜を形成させる方法であり、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリアミド樹脂等が皮膜材料として知られている。
【0004】
マイクロカプセルを用いたインキとして種々の印刷方式に対応したインキが知られており、例えばフレキソ印刷型、活版・平版印刷型、ホットメルト印刷型等が公知である(例えば、特許文献1〜5)。また、それらのインキを用いたノーカーボン感圧複写紙についても公知である(例えば、特許文献6〜8)。
【0005】
マイクロカプセルをインキ化し、部分印刷した用紙を作製するには種々の問題点がある。マイクロカプセルの代表的用途であるノーカーボン感圧複写紙を例にとって説明を行う。一般的に印刷機で印刷できるインキ盛量は、シルクスクリーンという特殊な方法を除くと、インキ膜厚としておよそ1〜5μm程度である。従来のノーカーボン感圧複写紙用で使用されている発色剤マイクロカプセルの体積平均粒子径は3〜10μm程度であり、その中には大粒径マイクロカプセル粒子や小粒径マイクロカプセルが複数個凝集した粗大粒子が含まれ、インキ膜厚を超える大粒子はインキ膜から頭を出した形となり、わずかな外部からの擦れ圧力により破壊されるおそれがある。全面水性塗工タイプのノーカーボン感圧複写紙の場合には、スチルト材と呼ばれる体積平均粒子径が20μm程度のマイクロカプセルを保護する材料が共に使用されるために、擦れによるカプセル破壊から守ることができる。しかし、印刷インキの場合は、インキ膜厚に制限があるためにスチルト材を用いることができない。
【0006】
また、マイクロカプセルは通常水性スラリー状で製造されるが、一旦固体状に乾燥された後にインキ化されるのが一般的である。しかし、固体状に乾燥されたマイクロカプセルは凝集しており、単粒子状に再分散してインキの形態にすることは容易ではない。そのためにインキ膜厚よりもはるかに大きな粒子が存在することになり、前述の如くわずかな外部からの擦れ圧力により破壊されることになる。
【0007】
本発明者は、このような不都合を解決する方法として、マイクロカプセル水性分散液乾燥工程において、マイクロカプセル水性分散液中に高級脂肪酸アミドあるいは高級脂肪酸金属塩を添加、混合して乾燥することにより、マイクロカプセルの凝集を防止し、異常破壊の無いマイクロカプセルを製造する方法を開示した(特許文献9)。これらの高級脂肪酸系添加剤は、マイクロカプセル粒子間でスペーサー的な役割を果たし、オフセットインキ用の有機溶媒やワニスに対して親和性が良くマイクロカプセルの分散性を良くするものであったが、ホットメルトタイプのインキに多用される無極性の熱溶融性ワックスへの相溶性は十分とは言えず、ホットメルト印刷方式のマイクロカプセルインキに関しては、マイクロカプセルの分散性の一層の改良が望まれていた。
【特許文献1】特公昭62−5196号公報
【特許文献2】特公昭63−52596号公報
【特許文献3】特公平2−30878号公報
【特許文献4】特公平3−59836号公報
【特許文献5】特許第3147184号公報
【特許文献6】特開昭60−149489号公報
【特許文献7】特公昭63−52597号公報
【特許文献8】特公平2−53238号公報
【特許文献9】特許第3433853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ホットメルト方式の印刷に適したマイクロカプセルインキの製造方法に関するものであり、マイクロカプセル同士の凝集による粗大粒子の少ないマイクロカプセルインキの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
マイクロカプセル及び熱溶融性ワックスを主要構成成分とするマイクロカプセルインキにおいて、マイクロカプセルが水媒体中で作製された合成樹脂膜マイクロカプセルであり、該マイクロカプセルの水性分散体と融点が50〜90℃の熱溶融性ワックス(A)の水性分散体との混合水性分散液を噴霧乾燥して得られるマイクロカプセル含有粉体を、熱溶融性ワックス(B)と共に、熱溶融性ワックス(A)及び熱溶融性ワックス(B)の融点以上に加熱、攪拌して、マイクロカプセルを熱溶融性ワックス中に分散することで上記課題を解決することができる。
【0010】
更には、マイクロカプセルとして、膜材がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂で、体積平均粒子径が1〜3μmのマイクロカプセルを用いることにより、また、熱溶融性ワックス(A)の水性分散体の体積平均粒子径を0.3〜3μmとすることにより良好なマイクロカプセルインキを得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるマイクロカプセルインキの製造方法を用いることにより、マイクロカプセル同士の凝集による粗大粒子が少なく、ホットメルト方式の印刷に適したマイクロカプセルインキを得ることができる。この方法によるノーカーボン感圧複写紙用の発色剤マイクロカプセルを用いた部分印刷型のノーカーボン感圧複写紙上用紙は、粗大粒子の擦れ破壊による発色汚れの発生が少なく、また、発色剤を複写発色に必要な部分に限定して印刷することで、高価な素材の使用量を削減でき省資源化が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明のマイクロカプセルインキの製造方法について詳細に説明する。
マイクロカプセルの製造方法としては前述の通り種々方法が知られているが、本発明においては合成樹脂を膜材とするin−situ法や界面重合法等のマイクロカプセルの製造方法を用いることができる。in−situ法によるメラミン−ホルムアルデヒドあるいは尿素−ホルマムアルデヒド樹脂を皮膜とするマイクロカプセルが耐溶剤性に優れ、特にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を皮膜とするマイクロカプセルが耐熱性に優れ、粉体化しやすい点で好ましい。
【0013】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂膜マイクロカプセルの作製において、芯物質を乳化分散するために水性媒体中に添加して用いられる分散剤としては、熱的に安定でマイクロカプセル化に適するものであれば使用可能であり、カチオン系、アニオン系、ノニオン系または両性の水溶性高分子化合物が用いられ、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体の水溶性塩やアクリル酸系あるいはメタクリル酸系の重合体や共重合体化合物、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の合成高分子を挙げることができる。特に、無水マレイン酸共重合体の水溶性塩の使用が好ましい。
【0014】
芯物質としては、前記の分散剤を用いて水性媒体中に乳化分散できる疎水性物質であれば良く、記録材料、香料、医薬品、農薬、殺虫剤、肥料、蓄熱材、接着剤、防錆剤、液晶、酵素、触媒、人工血液等の分野で有用な素材の中からマイクロカプセル化が可能な素材を適宜選択して用いることができる。
【0015】
ノーカーボン感圧複写紙用としては、公知の疎水性液体に電子供与性発色剤を溶解した溶液が用いられ、疎水性液体としては、フェニルキシリルエタン、フェニルイソプロピルフェニルエタン、フェニルブチルフェニルエタン等のジアリールアルカン化合物、モノイソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン化合物、モノイソプロピルビフェニル、ジイソプロピルビフェニルなどのアルキルビフェニル類、部分水素化ターフェニル化合物、アルキルベンゼン化合物、パラフィン類、植物油、脂肪酸エステル化合物等が用いられる。
【0016】
電子供与性発色剤としては、ノーカーボン感圧複写紙用として公知の化合物を単独あるいは混合して用いることができ、トリフェニルメタン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、インドリルアザフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、スピロピラン系化合物等を挙げることができる。これらの発色剤は、疎水性液体中に、0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%程度の濃度となるように溶解あるいは分散して用いられる。
【0017】
本発明で用いられるマイクロカプセルの体積平均粒子径としては0.5〜10μmが好ましいが、1〜3μmの範囲が最も好ましい。体積平均粒子径が0.5μmより小さい場合には、マイクロカプセルを破壊して芯物質を露出させる際にマイクロカプセルが破壊しにくく露出効率が低くなるおそれがあり、体積平均粒子径が10μmを超えると、物理的強度が低下するために望まざるマイクロカプセルの破壊が発生するおそれが生じる。
【0018】
本発明で用いられるマイクロカプセルは、通常は水性分散体の形態で作製され、これを脱水、乾燥してインキ化に用いられる。乾燥装置としては、微細な粉体粒子を得ることのできるスプレードライヤ装置が好ましく、水分含有量が5%以下、好ましくは2%以下になるように乾燥して粉体化されることが望ましい。
【0019】
粉体化の際にマイクロカプセル水性分散体と共に混合して用いられる融点が50〜90℃の熱溶融性ワックス(A)の水性分散体としては、カルナバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス等を水媒体に分散したものが用いられる。熱溶融性ワックス(A)の融点が50℃未満の場合、加熱乾燥時にワックスが融解してスペーサーとしての効果が軽減されるため望ましくない。また、マイクロカプセル含有粉体は、熱溶融性ワックス(B)と共に加熱してワックス成分を融解してインキ化を行うが、熱溶融性ワックス(A)の融点が90℃を超える場合は、マイクロカプセル含有粉体の粉体内奥部に含まれる熱溶融性ワックス(A)の粒子が融解しにくく、分散性向上の効果が得られにくくなる。
【0020】
また、熱溶融性ワックス(A)の水性分散体の体積平均粒子径は0.3〜3μmの範囲が好ましい。体積平均粒子径が0.3μm未満の場合、得られたマイクロカプセル乾燥物を熱溶融性ワックス(B)に加熱して十分に分散させるためには個数的に多くの熱溶融性ワックス(A)粒子を必要とする。また、体積平均粒子径が3μmを超える場合、マイクロカプセル粒子間にワックス粒子が効率良く存在するためには容量的に多くの熱溶融性ワックス(A)が必要となり、マイクロカプセル含有粉体の生産効率が低下する。
【0021】
マイクロカプセルと熱溶融性ワックス(A)の固体質量比は、各々の体積平均粒子径にもよるが、マイクロカプセル1に対し、熱溶融性ワックス(A)は0.1〜3の範囲が好ましい。
【0022】
本発明で用いられる熱溶融性ワックス(B)としては、ホットメルト型カーボンインキで一般的に使用されるような融点が50〜120℃程度のワックス類が用いられ、具体例としては、木蝋、カルナバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ワックス、高級脂肪酸類、高級アルコール類、高級脂肪酸アミド類、高級脂肪酸エステル類等が挙げられ、単独あるいは適宜混合して使用することができる。
【0023】
熱溶融性ワックス(A)と熱溶融性ワックス(B)とは同一種のワックスであっても良いし、異なっていても良い。各々の融点は、前記範囲内であれば使用可能であるが、熱溶融性ワックス(A)の融点は熱溶融性ワックス(B)の融点に比べ同等か低い方がマイクロカプセルの良好な分散性を得る上で好ましい。
【0024】
また、マイクロカプセルインキにおいては、必要により、着色顔料、体質顔料や油類を添加することができ、油類としては、マシン油、モーター油等の鉱物油、ヒマシ油等の不乾性油を挙げることができる。
【0025】
熱溶融性ワックス(A)は、粉体化の際にマイクロカプセルに対しスペーサー的な役割を果たすと共に、融点が50〜90℃で比較的融解しやすく、熱溶融性ワックス(B)に対し比較的相溶性の良い素材であるために、加熱攪拌してインキ化する際にマイクロカプセル凝集粒子中に存在する熱溶融性ワックス(A)が溶融して熱溶融性ワックス(B)中に溶け出してマイクロカプセル粒子が分散するのを促進する効果が生じていると推測される。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。マイクロカプセルの代表的な応用例としてノーカーボン感圧複写紙を例にとって説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は固形質量基準である。
【0027】
(発色剤マイクロカプセルAの作製)
電子供与性発色剤であるCVL(クリスタルバイオレットラクトン)10部を高沸点炭化水素油(新日本石油(株)製、商品名:ハイゾールSAS・N−296)190部に溶解した溶液をスチレン・無水マレイン酸共重合体の5%水溶液200部中に加え、乳化機(プライミクス(株)製、T.K.ロボミックス)で体積平均粒子径が1.5μmになるまで乳化分散した。次にメラミン30部と37%ホルムアルデヒド水溶液45部、水80部をpH9.5で加熱溶解し、メラミン・ホルムアルデヒド初期縮合物を作製した。これを上記乳化分散液に加え、75℃で2時間攪拌した後、pHを9.5にし、固形分濃度を45%に調整してメラミン・ホルムアルデヒド樹脂を皮膜とするスラリー状発色剤マイクロカプセルAを得た。
【0028】
(発色剤マイクロカプセルBの作製)
乳化分散体積平均粒子径を3μmとする以外は、発色剤マイクロカプセルAの作製と同様にしてスラリー状発色剤マイクロカプセルBを得た。
【0029】
(発色剤マイクロカプセルCの作製)
乳化分散体積平均粒子径を5μmとする以外は、発色剤マイクロカプセルAの作製と同様にしてスラリー状発色剤マイクロカプセルCを得た。
【0030】
(発色剤マイクロカプセルDの作製)
乳化分散体積平均粒子径を0.8μmとする以外は、発色剤マイクロカプセルAの作製と同様にしてスラリー状発色剤マイクロカプセルDを得た。
【0031】
(発色剤マイクロカプセルEの作製)
電子供与性発色剤であるCVL(クリスタルバイオレットラクトン)10部を高沸点炭化水素油(商品名:ハイゾールSAS・N−296)190部に溶解した溶液をエチレン・無水マレイン酸共重合体の10%水溶液200部中に加え、乳化機(商品名:T.K.ロボミックス)で体積平均粒子径が3μmになるまで乳化分散した。次に尿素20部、レゾルシン2部、37%ホルムアルデヒド水溶液45部、水80部を加えて75℃で3時間攪拌した後、pHを8にし、固形分濃度を45%に調整して尿素・ホルムアルデヒド樹脂を皮膜とするスラリー状発色剤マイクロカプセルEを得た。
【0032】
(香料マイクロカプセルの作製)
CVL10部を香料油(長谷川香料(株)製、商品名:THP−10881)10部とし、体積平均粒子径を3μmとする以外は発色剤マイクロカプセルAの作製と同様にしてスラリー状香料マイクロカプセルを得た。
【0033】
(実施例1)
スラリー状発色剤マイクロカプセルAの67部(固形質量)に、融点70℃、体積平均粒子径1.0μmのパラフィンワックスエマルジョン(中京油脂(株)製、商品名:ハイドリンL−703−35)の33部(固形質量)を混合し、固形分濃度を30%に調整した水性分散液をスプレードライヤ(ニロ・ジャパン(株)製、モービルマイナー型)に供給して、アトマイザー回転速度30,000回転/分、入口温度270℃、出口温度105℃の乾燥条件で、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体A−1を得た。
【0034】
(実施例2)
スラリー状発色剤マイクロカプセルAをスラリー状発色剤マイクロカプセルBに替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体B−1を得た。
【0035】
(実施例3)
スラリー状発色剤マイクロカプセルAをスラリー状発色剤マイクロカプセルCに替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体C−1を得た。
【0036】
(実施例4)
スラリー状発色剤マイクロカプセルAをスラリー状発色剤マイクロカプセルDに替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体Dを得た。
【0037】
(実施例5)
スラリー状発色剤マイクロカプセルAをスラリー状発色剤マイクロカプセルEに替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体Eを得た。
【0038】
(実施例6)
パラフィンワックスエマルジョンを融点53℃、体積平均粒子径0.5μmのパラフィンワックスエマルジョン(中京油脂(株)製、商品名:セロゾール428)に替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の粉体状の発色剤マイクロカプセル含有粉体A−2を得た。
【0039】
(実施例7)
パラフィンワックスエマルジョンを融点83℃、体積平均粒子径1.0μmのモンタン酸エステルワックスエマルジョン(中京油脂(株)製、商品名:ハイドリンJ−537)に替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体A−3を得た。
【0040】
(実施例8)
パラフィンワックスエマルジョンを融点83℃、体積平均粒子径0.2μmのカルナバワックスエマルジョン(中京油脂(株)製、商品名:セロゾール524)に替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体A−4を得た。
【0041】
(実施例9)
パラフィンワックスエマルジョンを融点83℃、体積平均粒子径0.3μmのカルナバワックスエマルジョン(中京油脂(株)製、商品名:セロゾールK−375)に替える以外は実施例4と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体D−2を得た。
【0042】
(実施例10)
パラフィンワックスエマルジョンを融点75℃、体積平均粒子径3.0μmのパラフィンワックスエマルジョン(中京油脂(株)製、試作品P−150)に替える以外は実施例2と同様にして、水分が1%の発色剤マイクロカプセル含有粉体B−2を得た。
【0043】
(実施例11)
スラリー状発色剤マイクロカプセルAをスラリー状香料マイクロカプセルに替える以外は実施例1と同様にして、水分が1%の香料マイクロカプセル含有粉体を得た。
【0044】
(比較例1)
パラフィンワックスエマルジョンを不使用とする以外は実施例1と同様にして発色剤マイクロカプセル含有粉体A−5を得た。
【0045】
(比較例2)
パラフィンワックスエマルジョンを融点120℃、体積平均粒子径0.2μmのステアリン酸亜鉛エマルジョン(中京油脂(株)製、商品名:ハイドリンF−115)とする以外は実施例1と同様にして発色剤マイクロカプセル含有粉体A−6を得た。
【0046】
(比較例3)
パラフィンワックスエマルジョンを不使用とする以外は実施例2と同様にして発色剤マイクロカプセル含有粉体B−3を得た。
【0047】
(比較例4)
パラフィンワックスエマルジョンを不使用とする以外は実施例3と同様にして発色剤マイクロカプセル含有粉体C−2を得た。
【0048】
(比較例5)
パラフィンワックスエマルジョンを不使用とする以外は実施例4と同様にして発色剤マイクロカプセル含有粉体D−3を得た。
【0049】
(比較例6)
パラフィンワックスエマルジョンを不使用とする以外は実施例11と同様にして香料マイクロカプセル含有粉体香−2を得た。
【0050】
「マイクロカプセル含有粉体の分散性の評価」
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた発色剤マイクロカプセル含有粉体、実施例11及び比較例6で得られた香料マイクロカプセル含有粉体の各10gを流動パラフィン100g中に分散し、90℃に加熱しながら1時間攪拌した。冷却した後、マイクロカプセル粒子の分散状態を光学顕微鏡により観察し、凝集粒子の残存状態により評価を行い、結果を表1に示した。評点は、◎:凝集粒子が無く良好な分散、○:若干凝集粒子が残るが大部分は分散し実用可能な状態、△:凝集粒子と単粒子が混在し分散やや不十分、×:凝集粒子が多量残存し分散不良、とした。
【0051】
「マイクロカプセルインキの作製」
実施例1〜10で得られた発色剤マイクロカプセル含有粉体及び実施例11で得られた香料マイクロカプセル含有粉体の各36部を、融点が69℃のパラフィンワックス(日本精蝋(株)製)44部、カルナバワックス(融点83℃))15部、融点が98℃の高級脂肪酸アマイド(ライオン(株)製、商品名:アーマイドHT)5部と共に100℃に加熱、攪拌して、実施例のマイクロカプセルインキ1〜11を得た。また、比較例1〜5で得られた発色剤マイクロカプセル含有粉体及び比較例6で得られた香料マイクロカプセル含有粉体の各24部を融点が69℃のパラフィンワックス(日本精蝋(株)製)56部、カルナバワックス15部、高級脂肪酸アマイド(ライオン(株)製、商品名:アーマイドHT)5部と共に100℃に加熱、攪拌して比較例のマイクロカプセルインキ1〜6を得た。
【0052】
「ノーカーボン感圧複写紙・スポット印刷上用紙の作製」
実施例のマイクロカプセルインキ1〜10及び比較例のマイクロカプセルインキ1〜5を加熱溶融した後、約80℃で、坪量が50g/mの上質紙にインキ盛量が約5g/mとなるようにスポット印刷を行い、ノーカーボン感圧複写紙・スポット印刷上用紙を作製した。
【0053】
得られたノーカーボン感圧複写紙・スポット印刷上用紙を市販のノーカーボン感圧複写紙下用紙(三菱製紙(株)製、商品名:NCR紙N50下)に重ね合わせ、タイプライターで印字して印字発色濃度の評価を行った。また、同じ組み合わせで上下用紙を擦り合わせ、汚れの程度を観察した。各々を以下の基準により5段階評価を行い、その結果を表1に示した。1:不良、2:やや不良、3:実用可能な下限レベル、4:ほぼ良好、5:良好
【0054】
「香料マイクロカプセル塗布シートの作製及び評価」
実施例のマイクロカプセルインキ11及び比較例のマイクロカプセルインキ6を加熱溶融した後、約80℃で、坪量が50g/mの上質紙にインキ盛量が約5g/mとなるようにスポット印刷を行い、香料マイクロカプセル塗布シートを作製した。印刷部分を指先でなぞると、比較例の印刷物は表面に凝集物によると思われる凹凸が感じられたが、実施例の印刷物は凹凸が無く、良好であった。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果より、発色剤マイクロカプセル水性分散体の乾燥時に融点が50〜90℃の熱溶融性ワックス水性分散体を混合して得た粉体を用いたノーカーボン感圧複写紙・スポット印刷上用紙は、発色剤マイクロカプセルの凝集物が少なく、下用紙と擦れ合った時の発色汚れが少ないことが分かる。一方、熱溶融性ワックス水性分散体を使わなかった場合や、融点が90℃を超える熱溶融性ワックスの水性分散体を混合した場合は、発色剤マイクロカプセルによると思われる凝集物が発生し、擦れによる発色汚れが生じて商品価値の低いものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセル及び熱溶融性ワックスを主要構成成分とするマイクロカプセルインキにおいて、マイクロカプセルが水媒体中で作製された合成樹脂膜マイクロカプセルであり、該マイクロカプセルの水性分散体と融点が50〜90℃の熱溶融性ワックス(A)の水性分散体との混合水性分散液を噴霧乾燥して得られるマイクロカプセル含有粉体を、熱溶融性ワックス(B)と共に、熱溶融性ワックス(A)及び熱溶融性ワックス(B)の融点以上に加熱、攪拌してマイクロカプセルを熱溶融性ワックス中に分散することを特徴とするマイクロカプセルインキの製造方法。
【請求項2】
合成樹脂膜がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂膜であり、マイクロカプセル水性分散体の体積平均粒子径が1〜3μmである請求項1記載のマイクロカプセルインキの製造方法。
【請求項3】
熱溶融性ワックス(A)の水性分散体の体積平均粒子径が0.3〜3μmである請求項1記載のマイクロカプセルインキの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の製造方法により得られるマイクロカプセルインキ。
【請求項5】
マイクロカプセルが、電子供与性発色剤、電子受容性顕色剤の一方もしくは両方を別々に芯物質として内包する請求項4記載のマイクロカプセルインキ。
【請求項6】
請求項5により得られるマイクロカプセルインキを支持体に部分印刷して得られるノーカーボン感圧複写紙。

【公開番号】特開2010−59348(P2010−59348A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228404(P2008−228404)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】