説明

マイクロチップ

【課題】 熱伝導を低減して被温度調節部の温度の精度が向上するマイクロチップを提供する。
【解決手段】 マイクロチップ10のチップ本体11に設置されている流路部14には、ペルチェ素子21を有する温度制御装置20によって温度が調節される被温度調節部15が設定されている。被温度調節部15の外周側には、流路部14を除き不連続に被温度調節部15を包囲する溝16が設置されている。溝16は、チップ本体11を板厚方向に貫いている。被温度調節部15の周囲に溝16を設置することにより、被温度調節部15と溝16の外周側との熱伝導が低減される。したがって、被温度調節部15の温度を精密に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的に温度が調節される被温度調節部を有するマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチップでは、薄い板状のチップ本体に微細な流路や槽領域などが形成されている。このマイクロチップの流路または槽領域において、試料の分離、合成あるいは観察、または細胞や細菌の培養などが行われる。このようなマイクロチップでは、流路または槽領域などの被温度調節部を、高精度かつ局所的に温度制御する必要がある。
【0003】
上記のようにマイクロチップの被温度調節部の温度を局所的に制御する技術として、例えば特許文献1、2または非特許文献1に開示されている技術が公知である。特許文献1では、マイクロチップの分析電極ごとに分析電極を加熱する加熱電極を備えている。これにより、マイクロチップの分析電極は個別に温度が調節される。また、特許文献2では、熱伝導体で構成される複数のアイランドを個別に温度調節する温度調節器を備えている。これにより、アイランドごとに温度調節が可能となり、アイランドに接するサンプル容器の温度が制御される。さらに、非特許文献1では、被温度調節部を有するチップの一方の面側に微小のペルチェ素子を有するヒートシンクが設置されている。これにより、チップの被温度調節部はペルチェ素子によって温度調節が行われる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明の場合、分析電極には加熱電極が設置されるのみである。そのため、分析電極を冷却することは困難である。その結果、設定温度が雰囲気温度に近いとき、精密な温度調節は困難である。また、特許文献2に開示されている発明も、特許文献1と同様にアイランドは加熱されるのみである。そのため、アイランドと接するサンプル容器の冷却は困難であり、精密な温度調節は困難である。
【0005】
一方、非特許文献1に開示されている発明の場合、ペルチェ素子を用いることにより被温度調節部は加熱だけでなく冷却も可能となる。しかしながら、隣接する被温度調節部の間で設定温度に差があるとき、チップを通して被温度調節部の間に熱伝導が生じる。そのため、一方の被温度調節部の温度は他方の被温度調節部の温度の影響を受け、精密な温度の調節が困難になる。特許文献1および特許文献2に開示されている技術の場合も、チップを通して熱伝導が生じる。そのため、隣接する被温度調節部の精密な温度の調節は困難である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−127900号公報
【特許文献2】特開平13−235474号公報
【非特許文献1】シチズン時計株式会社のウェブサイト URL:http://www.citizen.co.jp/med/field/index.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の課題を鑑みて創作されたものであり、熱伝導を低減して被温度調節部の温度の精度が向上するマイクロチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のマイクロチップでは、板状のチップ本体と、前記チップ本体に設置され、温度が調節される被温度調節部と、前記チップ本体において前記被温度調節部の外周側に設置されている断熱部と、を備える。
被温度調節部の外周側に断熱部を設置することにより、被温度調節部と断熱部の外側との間における熱伝導が低減される。これにより、被温度調節部は、周囲の温度の影響を受けにくくなる。したがって、被温度調節部における温度を精密に調節することができる。
【0009】
(2)本発明のマイクロチップでは、前記断熱部は、空気の層である。
空気の熱伝導率は、例えば樹脂やガラスからなるチップ本体の熱伝導率に比較して小さい。これにより、断熱部は被温度調節部と外側との熱伝導を低減する。したがって、被温度調節部における温度を精密に調節することができる。
【0010】
(3)本発明のマイクロチップでは、前記チップ本体に、前記被温度調節部へ連通する流路部をさらに備え、前記断熱部は、前記流路部を除く前記被温度調節部の周囲に連続して設置されている。
これにより、被温度調節部は、断熱部に連通する流路を確保するために最低限必要な部分を除き、周囲が断熱部によって覆われている。そのため、被温度調節部は、周囲の温度の影響を受けにくくなる。したがって、被温度調節部における温度を精密に調節することができる。
【0011】
(4)本発明のマイクロチップでは、前記断熱部は、前記被温度調節部の周囲に不連続に設置されている。
これにより、断熱部は被温度調節部と外側との熱伝導を低減する。したがって、被温度調節部における温度を精密に調節することができる。また、溝の不連続な部分によって、被温度調節部はチップ本体に支持することができる。
【0012】
(5)本発明のマイクロチップでは、前記断熱部は、前記被温度調節部の周囲に連続して設置されている。
これにより、断熱部はチップ本体を通した熱伝導が低減される。したがって、被温度調節部における温度を精密に調節することができる。
【0013】
(6)本発明のマイクロチップでは、前記断熱部は、前記被温度調節部の外周側に形成される溝である。
これにより、簡単な構造で断熱部が形成され、断熱部は被温度調節部と外側との熱伝導を低減する。したがって、簡単な構造で被温度調節部における温度を精密に調節することができる。
【0014】
(7)本発明のマイクロチップでは、前記溝は、前記チップ本体を板厚方向に貫いている。
これにより、簡単な構造で断熱部が形成され、断熱部は被温度調節部と外側との熱伝導を低減する。断熱部を形成する溝がチップ本体を板厚方向に貫くことにより、被温度調節部から外部への熱伝導は低減される。したがって、簡単な構造で被温度調節部における温度を精密に調節することができる。
【0015】
(8)本発明のマイクロチップでは、前記溝には、断熱材が充填されている。
これにより、空気にかえて断熱材を充填してもよい。空気より熱伝導率が小さな断熱材を溝に充填することにより、被温度調節部から外部への熱伝導はさらに低減される。したがって、簡単な構造で被温度調節部における温度を精密に調節することができる。また、溝に断熱材を充填することにより、チップ本体の強度を向上することができる。さらに、断熱材として、その熱伝導率が空気の熱伝導率よりも大きく、チップ本体を形成する材料の熱伝導率よりも小さいものを用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるマイクロチップ10の平面および断面を示す概略図である。マイクロチップ10は、薄い板状のチップ本体11を備えている。チップ本体11は、例えば樹脂やガラスなどから形成されている。マイクロチップ10は、細胞や細菌の培養、および化学反応や化学物質の分離などに適用される。
【0017】
マイクロチップ10のチップ本体11は、二つの槽部12、13と、これらの槽部12、13を接続する流路部14とを形成している。槽部12、13および流路部14は、チップ本体11の一方の面側から他方の面側へ窪んで形成されている。チップ本体11には、被温度調節部15が設置されている。被温度調節部15は、槽部12と槽部13との間の流路部14に設置されている。被温度調節部15では、流路部14が蛇行している。すなわち、流路部14の蛇行する部分に、被温度調節部15が設定されている。流路部14が蛇行することにより、被温度調節部15における流路部14の面積を拡大している。これにより、槽部12と槽部13との間では、被温度調節部15に連通する流路部14を経由して流体が移動する。
【0018】
被温度調節部15は温度制御装置20と接している。温度制御装置20は、ペルチェ素子21および温度調節部22を備えている。ペルチェ素子21は、通電する向きによって一方の面が発熱し、他方の面が吸熱する。ペルチェ素子21に印加する電流の向きおよび大きさを制御することにより、温度調節部22は加熱または冷却される。温度調節部22は、例えば銅、アルミニウムまたは各種の合金など、熱伝導体により形成されている。これにより、温度調節部22は所定の温度に制御されるとともに、温度調節部22と接するチップ本体11の被温度調節部15も所定の温度に制御される。温度調節部22は、金属に限らず例えば熱伝導性を有するセラミックスや樹脂などで形成してもよい。
【0019】
チップ本体11は、温度制御装置20の温度調節部22と接することにより、被温度調節部15の温度が制御される。マイクロチップ10は、被温度調節部15の外周側に断熱部を形成する溝16を備えている。チップ本体11は溝16を形成している。溝16は、チップ本体11の槽部12、13および流路部14が形成されている面から温度制御装置20側の面へ窪んで形成されている。溝16は、チップ本体11の槽部12、13および流路部14が形成されている面から温度制御装置20側の面へ深く形成することが望ましく、チップ本体11を貫いて形成することがさらに望ましい。
【0020】
溝16は、被温度調節部15の外周側を包囲するとともに、流路部14が形成されている部分で不連続となっている。これにより、被温度調節部15に連通する流路部14が溝16によって寸断されることはない。溝16は、被温度調節部15の外周側に連続して設置してもよい。この場合、被温度調節部15は、別部材によりチップ本体11に支持することができる。また、溝16は、被温度調節部15の周囲に不連続、すなわち一定の間隔あるいは不定の間隔で複数の位置に設置してもよい。
マイクロチップ10は、槽部12、13、流路部14および溝16を有するチップ本体11を例えばエンボス加工や射出成形加工したり、エッチング加工することにより形成される。
【0021】
(変形例)
マイクロチップ10は、図1に示した上述の形状に限らず、図2および図3に示すような形状であってもよい。図2に示すマイクロチップ30は、チップ本体31に複数の槽部32および断熱部としての溝36を備えている。これらの複数の槽部32には、それぞれ被温度調節部35が設定されている。溝36は、被温度調節部35が設定されている槽部32の外周側を不連続に囲んでいる。この溝36の不連続な部分によって、槽部32および被温度調節部35はチップ本体31に支持されている。
【0022】
また、図3に示すマイクロチップ40は、チップ本体41に複数の槽部42、槽部43、槽部44、槽部45と、複数の被温度調節部46、被温度調節部47、被温度調節部48とを備えている。槽部42には、被温度調節部46が設定されている。槽部42と、槽部43、槽部44、槽部45との間を連通する流路部49は、被温度調節部47および被温度調節部48において蛇行している。これにより、槽部42および流路部48の複数の位置に被温度調節部46、47、48を設定することができる。各被温度調節部46、47、48の外周側には、溝17、18、19が設置されている。各溝17、18、19は、流路部49に対応する部分を除き連続して形成されている。
【0023】
以上説明した本発明の実施形態では、溝16、17、18、19、36の内部には、空気が充填されている。しかし、溝16、17、18、19、36の内部に空気よりも熱伝導率の小さな物質を充填することにより、被温度調節部15、35、46、47、48から溝16、17、18、19、36の外周側への熱伝導をさらに低減する構成としてもよい。また、空気の熱伝導率よりも大きく、チップ本体11、31、41の材料よりも熱伝導率が小さな物質を断熱材として溝16、17、18、19、36に充填してもよい。この場合の断熱材としては、例えば発泡ウレタン、発泡ポリスチレンなどの発泡材を用いることができる。さらに、溝16、17、18、19、36に断熱材を充填することにより、チップ本体11、31、41の強度を高めることができる。さらに、溝16、17、18、19、36は、被温度調節部15、35、46、47、48の外周側に連続して設置するのではなく、不連続に一定の間隔または不定の間隔など任意の形状に設置してもよい。さらに、溝16、17、18、19、36は、被温度調節部15、35、46、47、48の外周側に二重、三重、またはそれ以上に設置してもよい。
【0024】
次に、マイクロチップ10に設置する断熱部としての溝16の形状と断熱効果について説明する。
(溝の有無による効果)
図4では、(A)にシリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン)製のマイクロチップ50の被温度調節部51の周囲に断熱部としての溝52を設置したときの温度分布を示し、(B)に溝52を設置していないときの温度分布を示している。いずれも、マイクロチップ50は、室温(25℃)の雰囲気にさらされ、被温度調節部51の温度が90℃に制御された例である。図4では、77℃、64℃、51℃および38℃の等温線を示している。このように、被温度調節部51の周囲に溝52を設置することにより、被温度調節部51から溝52の外周側への熱伝導は減少する。そのため、溝52を設置するとき、被温度調節部51の周囲は被温度調節部51の影響を受けず、温度がほとんど上昇しない。
【0025】
これに対し、被温度調節部51の周囲に溝52を設置しない場合、マイクロチップ50のチップ本体を経由した熱伝導により、被温度調節部51から周囲へ熱が移動する。そのため、被温度調節部51の温度は低下しやすく、かつ被温度調節部51の周囲において温度が上昇する範囲は拡大する。
【0026】
このように、被温度調節部51の周囲に溝52を設置することにより、被温度調節部51から周囲への熱の移動は低減される。その結果、被温度調節部51を加熱するとき、被温度調節部51の温度の低下、および被温度調節部51の周囲の温度の上昇は抑えられる。同様に、被温度調節部51を冷却するとき、被温度調節部51の温度の上昇、および被温度調節部51の周囲の温度の低下は押さえられる。したがって、被温度調節部51の温度を高精度に制御することができる。
【0027】
(溝の深さと断熱効果)
図5では、マイクロチップ60の被温度調節部61の周囲に設置する溝62の深さと断熱効果との関係を示している。図5(A)から図5(D)に溝62の深さの異なるマイクロチップ60の断面形状の概略を示し、図5(E)にこれらのマイクロチップ60の表面における温度分布の概略を示している。マイクロチップ60は、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン)により幅35mm×長さ70mm×厚さ1.0mmの矩形状に形成されている。マイクロチップ60は、室温である25℃の雰囲気にさらされ、被温度調節部61が90℃に加熱される。
【0028】
図5(A)から図5(D)に示すように、マイクロチップ60は断面の中央部に被温度調節部61を有している。そして、被温度調節部61の外周側に溝62が設置される。溝62の内部は空気が充填される。図5(A)に示すマイクロチップ60は、比較のために被温度調節部61の外周側に溝62を設置していない。すなわち、図5(A)に示すマイクロチップ60は、溝62の深さが0である。図5(B)に示すマイクロチップ60は深さ0.5mmすなわちチップ本体63の板厚の50%の深さの溝62を有し、図5(C)に示すマイクロチップ60は深さ0.9mmすなわちチップ本体63の板厚の90%の深さの溝62を有し、図5(D)に示すマイクロチップ60は深さ1.0mmすなわちチップ本体63を貫く溝62を有している。
【0029】
図5(E)には、上述のマイクロチップ60において、幅方向の中央から端部側への温度分布を示している。すなわち、マイクロチップ60の幅方向の中央を原点0とし、この中央からの長さをLとしている。図5(E)に示すように、被温度調節部61の周囲に溝62を設置することにより、被温度調節部61と溝62の外周側との間が断熱されている。一方、被温度調節部61の周囲に溝62を設置しない図5(A)に示すマイクロチップ60の場合、被温度調節部61からの熱伝導により、被温度調節部61の温度は低下するとともに、その外周側の温度は上昇する。図5(B)に示すマイクロチップ60の場合、被温度調節部61の温度低下は見られないものの、溝62の外周側では図5(A)に示すマイクロチップ60に近似する温度分布を有している。これにより、溝62の深さをチップ本体63の板厚の50%程度に設定する場合、断熱効果は比較的低くなる。
【0030】
これに対し、図5(C)および図5(D)に示すマイクロチップ60の場合、被温度調節部61の温度低下はほとんど見られず、溝62の外周側では温度の上昇が抑えられている。これにより、被温度調節部61の外周側に設置する溝62は、深くなるほど断熱効果が増大する。そして、図5(D)に示すように溝62がチップ本体63を貫くことにより、より大きな断熱効果が得られる。
以上のように、被温度調節部61の周囲に設置する溝62は、断熱効果を高めるために深く設定するほど望ましく、チップ本体63を貫くことがさらに望ましい。
【0031】
(溝の幅と断熱効果)
図6では、マイクロチップ70の被温度調節部71の周囲に設置する溝72の幅と断熱効果との関係を示している。図6(A)から図6(C)に溝72の幅の異なるマイクロチップ70の断面形状の概略を示し、図6(D)にこれらのマイクロチップ70の表面における温度分布の概略を示している。マイクロチップ70は、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン)により幅35×長さ70mm×厚さ1.0mmの矩形状に形成している。マイクロチップ70は、室温である25℃の雰囲気にさらされ、被温度調節部71が90℃に加熱される。
【0032】
図6(A)から図6(C)に示すように、マイクロチップ70は断面の中央部に被温度調節部71を有している。そして、被温度調節部71の外周側に溝72が設置されている。溝72は、チップ本体73を貫いて形成されており、内部に空気が充填される。図6(A)に示すマイクロチップ70は幅0.2mmの溝72を有し、図6(B)に示すマイクロチップ70は幅0.5mmの溝72を有し、図6(C)に示すマイクロチップ70は幅1.0mmの溝72を有している。
【0033】
図6(D)には、上述のマイクロチップ70において、幅方向の中央から端部側への温度分布を示している。すなわち、マイクロチップ70の幅方向の中央を原点0とし、この中央からの長さをLとしている。図6(D)に示すように、被温度調節部71の周囲に設置する溝72の幅が大きくなるほど、被温度調節部71の温度の低下は小さくなり、溝72の外周側での温度上昇が抑えられる。
以上のように、被温度調節部71の周囲に設置する溝72は、断熱効果を高めるために幅を広く設定することが望ましい。
【0034】
(溝の形状と断熱効果)
図7では、マイクロチップ80の被温度調節部81の周囲に設置する溝82の形状と断熱効果との関係を示している。図7(A)から図7(C)には溝82の形状の異なるマイクロチップ80の平面形状の概略を示し、図7(D)にこれらのマイクロチップ80の表面における温度分布の概略を示している。マイクロチップ80は、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン)により幅35mm×長さ70mm×厚さ1.0mmの矩形状に形成している。マイクロチップ80は、室温である25℃の雰囲気にさらされ、被温度調節部81が90℃に加熱される。
【0035】
図7(A)に示すマイクロチップ80は、比較のために被温度調節部81の外周側に溝82を設置していない。図7(B)に示すマイクロチップ80は、流路部に対応する一部を除き被温度調節部81の周囲を溝82が包囲している。図7(C)に示すマイクロチップ80は、被温度調節部81の幅方向の両端部の外側にのみ溝82を設置している。図7(B)および図7(C)示すマイクロチップ80の溝82は、チップ本体83を板厚方向に貫いている。
【0036】
図7(D)には、上述のマイクロチップ80において、幅方向の中央から端部側への温度分布を示している。すなわち、マイクロチップ80の幅方向の中央を原点0とし、この中央からの長さをLとしている。図7(D)に示すように、マイクロチップ80の幅方向への温度分布は、図7(B)に示すマイクロチップ80および図7(C)に示すマイクロチップ80のいずれも溝82を設置することにより被温度調節部81の温度の低下が小さくなり、溝82の外周側での温度上昇が抑えられる。しかし、図7(C)に示すマイクロチップ80の場合、マイクロチップ80の長さ方向の両端部には溝82が設置されていない。そのため、図7(C)に示すマイクロチップ80の断熱効果は、図7(B)に示すマイクロチップ80に比較して低下する。
以上のように、被温度調節部81の周囲に設置する溝82は、断熱効果を高めるために、より広い範囲で被温度調節部81を包囲することが望ましい。
以上の実施例では、被温度調節部が過熱される例について説明したが、被温度調節部を冷却する場合でも本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態によるマイクロチップを示す概略図であって、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB−B線における断面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるマイクロチップの変形例の平面視を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態によるマイクロチップの変形例の平面視を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態によるマイクロチップの温度分布を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態によるマイクロチップにおいて、被温度調節部の外周側に設置される溝の深さと温度分布との関係を示す図であって、(A)から(D)は溝の形状を示す模式的な断面図であり、(E)は温度分布を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施形態によるマイクロチップにおいて、被温度調節部の外周側に設置される溝の幅と温度分布との関係を示す図であって、(A)から(C)は溝の形状を示す模式的な断面図であり、(D)は温度分布を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施形態によるマイクロチップにおいて、被温度調節部の外周側に設置される溝の形状と温度分布との関係を示す図であって、(A)から(C)は溝の形状を示す模式的な平面図であり、(D)は温度分布を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
10、30、40、50、60、70、80 マイクロチップ、11、31、41、63、73、83 チップ本体、14、49 流路部、15 被温度調節部、16、17、18、19、36、52、62、72、82 溝(断熱部)、35 被温度調節部、46、47、48、51、61、71、81 被温度調節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のチップ本体と、
前記チップ本体に設置され、温度が調節される被温度調節部と、
前記チップ本体において前記被温度調節部の外周側に設置されている断熱部と、
を備えるマイクロチップ。
【請求項2】
前記断熱部は、空気の層である請求項1記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記チップ本体に、前記被温度調節部へ連通する流路部をさらに備え、
前記断熱部は、前記流路部を除く前記被温度調節部の周囲に連続して設置されている請求項1または2記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記断熱部は、前記被温度調節部の周囲に不連続に設置されている請求項1または2記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記断熱部は、前記被温度調節部の周囲に連続して設置されている請求項1または2記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記断熱部は、前記被温度調節部の外周側に形成される溝である請求項1から5のいずれか一項記載のマイクロチップ。
【請求項7】
前記溝は、前記チップ本体を板厚方向に貫いている請求項6記載のマイクロチップ。
【請求項8】
前記溝には、断熱材が充填されている請求項6または7記載のマイクロチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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