説明

マイクロチャネル反応器における危険反応

本発明は、炭化水素材料を含む第1の流れと酸化剤を含む第2の流れをマイクロチャネル装置の中に搬入すること、混合が起こることを可能にすること、および混合物を抜き出すことを含む、爆発潜在性を有する酸化剤を炭化水素材料と混合するための方法を提供する。マイクロチャネルは0.5から1.5mmの範囲の内部高さおよび/または幅を有する。この方法は、エチレンオキシドの調製に有用であり、マイクロチャネル装置が再循環ガスループ中に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に炭化水素を含むプロセス運転における改善に関する。想定されるプロセス改善は、オレフィンおよび酸素からのオレフィンオキシドの製造と、この随意の更なる変換において特別な用途を見出す。
【背景技術】
【0002】
商業規模で運転する場合、プロセス運転は、多数の重要な設計基準に合致しなければならない。今日の環境においては、プロセス設計は、環境立法を考慮に入れ、健康および安全標準に従うものでなければならない。危険な化学薬品を利用もしくは製造するプロセスは、特別な問題を引き起こし、爆発または反応暴走のリスクを最小とするために、このようなプロセス運転は時には最適ではない条件で行われなければならならず;これはプラントのランニングコスト(運転支出またはOPEX)を増大させる。このようなプロセスは、このプロセスの実施のみに必要とされる以上の装置も利用しなくてはならず;これは建設コスト(資本支出またはCAPEX)の増加を生じる。
【0003】
CAPEXおよびOPEXコストを低減することができ、特にプラントへの損傷のリスクと、一般人および/またはプロセスプラント作業員への危険のリスクを増大することなしで、プロセス運転を提供する必要性が継続して存在する。
【発明の開示】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、プロセス運転においてマイクロチャネル装置を利用することを提供する。このような装置は、ある特定の応用分野における使用について以前に提案されたが、プラント安全リスクを維持、もしくは低減する一方で、CAPEXおよび/またはOPEXの低減の組み合わせをもたらすために以前に提案されたことはなかった。
【0005】
本発明は、炭化水素材料を含む第1の流れと酸化剤を含む第2の流れをマイクロチャネル装置の中に搬入すること、混合が起こることを可能にすること、および混合物を抜き出すことを含む、爆発潜在性を有する酸化剤を炭化水素材料と混合するための方法を提供する。
【0006】
この方法は、エチレンオキシド製造プラントにおいてガス再循環流の中に酸素を混合することに適用される場合に特別な利点を見出す。
【0007】
(発明の詳細)
本発明は、物理的操作のためにマイクロチャネル装置を利用する方法を提供する。以下に、このような装置の説明を述べる。
【0008】
本発明およびこれらの運転での使用に好適なマイクロチャネル反応器は、WO−A−2004/099113、WO−A−01/12312、WO−01/54812、US−A−6440895、US−A−6284217、US−A−6451864、US−A−6491880、US−A−6666909、US−A−6811829、US−A−6851171、US−A−6494614、US−A−6228434、およびUS−A−6192596で述べられた。マイクロチャネル反応器を製造し、ならびにこれらの参考文献で述べられているように運転し得る方法は、本発明の実施において全般的に適用可能であり得る。
【0009】
図1を参照すると、マイクロチャネル反応器100は、ヘッダー102、複数のプロセスマイクロチャネル104、およびフッター108からなり得る。ヘッダー102は、流体がプロセスマイクロチャネル104の中に流れる通路を提供する。フッター108は、流体がプロセスマイクロチャネル104から流れる通路を提供する。
【0010】
マイクロチャネル反応器中に収められているプロセスマイクロチャネル数は極めて多いことがあり得る。例えば、この数は、10まで、または更には10まで、または2×10までであり得る。通常、プロセスマイクロチャネルの数は、少なくとも10または少なくとも100、または更に少なくとも1000であり得る。
【0011】
プロセスマイクロチャネルは、通常、平行に配列され、例えば平面のマイクロチャネルのアレーを形成し得る。プロセスマイクロチャネルの各々は、15mmまでの、例えば0.05から10mmの、特に0.1から5mmの、更に特に0.5から2mmの高さまたは幅の少なくとも1つの内部寸法を有し得る。高さまたは幅の他の内部寸法は、例えば、0.1から100cm、特に0.2から75cm、更に特に0.3から50cmであり得る。プロセスマイクロチャネルの各々の長さは、例えば、1から500cm、特に2から300cm、更に特に3から200cm、または5から100cmであり得る。
【0012】
マイクロチャネル反応器100は、プロセスマイクロチャネル104と熱交換接触している熱交換チャネル(図1に図示せず。)をさらに含む。熱交換チャネルはマイクロチャネルであり得る。マイクロチャネル反応器は、熱交換流体が熱交換ヘッダー110から熱交換チャネルを通って熱交換フッター112に流れることができるようになされている。熱交換チャネルは、プロセスマイクロチャネル104中の流れに対して並流、向流で、もしくはある態様においては、好ましくは交差流方向で流れをもたらすように配列され得る。交差流方向は、矢印114および116により示される。
【0013】
熱交換チャネルの各々は、15mmまでの、例えば0.05から10mmの、特に0.1から5mmの、更に特に0.5から2mmの高さまたは幅の少なくとも1つの内部寸法を有し得る。高さまたは幅の他の内部寸法は、例えば、0.1から100cm、特に0.2から75cm、更に特に0.3から50cmであり得る。熱交換チャネルの各々の長さは、例えば、1から500cm、特に2から300cm、更に特に3から200cm、または5から100cmであり得る。
【0014】
各プロセスマイクロチャネル104と次の隣接する熱交換チャネルの間の分離は、0.05mmから5mmの、特に0.2から2mmの範囲にあり得る。
【0015】
本発明のある実施形態においては、第1の熱交換チャネルおよび第2の熱交換チャネル、または第1の熱交換チャネル、第2の熱交換チャネル、および第3の熱交換チャネル、もしくは第5までの熱交換チャネル、もしくは更なる熱交換チャネルが準備される。こうして、このような場合には、複数の組の熱交換チャネルがあり、したがって複数の熱交換ヘッダー110および熱交換フッター112があり得、これにより各組の熱交換チャネルは、熱交換ヘッダー110から熱交換流体を受け取り、熱交換フッター112の中に熱交換流体を送達するようになされ得る。
【0016】
ヘッダー102、フッター108、熱交換ヘッダー110、熱交換フッター112、プロセスマイクロチャネル104、および熱交換チャネルは、独立して、本発明によりプロセスの運転を可能とさせる充分な強度、場合により寸法安定性、および伝熱特性を提供するいかなる構造材料からも作製され得る。好適な構造材料は、例えばスチール(例えば、ステンレススチールおよびカーボンスチール)、モネル、チタン、銅、ガラスおよびポリマー組成物を含む。熱交換流体の種類は本発明には重要でなく、熱交換流体は各種のものから選択され得る。好適な熱交換流体はスチーム、水、空気、およびオイルを含む。複数の組の熱交換チャネルを含む本発明の実施形態においては、このような組の熱交換チャネルは、異なる熱交換流体と、もしくは異なる温度を有する熱交換流体により動作し得る。
【0017】
本発明において使用のマイクロチャネル反応器は、1つ以上のプロセスマイクロチャネルと1つ以上の熱交換チャネルそれぞれを含む複数の繰り返し単位を含み得る。ここで図2を参照すると、これは通常の繰り返し単位とこの運転を示す。
【0018】
プロセスマイクロチャネル210は、上流末端220と下流末端230を有し、第1の区分240からなり得る。第1の区分240は、第1の熱交換チャネル250と熱交換接触し、プロセスマイクロチャネル210と第1の熱交換チャネル250の第1の区分240の間の熱交換を可能とし得る。繰り返し単位は、1つ以上の第1のオリフィス280を通って第1の区分240の中に至る第1のフィードチャネル260を含み得る。通常、1つ以上の第1のオリフィス280は、もう一つの第1のオリフィス280に対して下流に配置され得る。運転時、フィードは、上流末端220中の開口および/または第1のフィードチャネル260および1つ以上の第1のオリフィス280を通ってプロセスマイクロチャネル210の第1の区分240の中に入り得る。
【0019】
プロセスマイクロチャネル210は、第2の区分340を含み得る。第2の区分340は、第1の区分240の下流に配置される。第2の区分340は、第2の熱交換チャネル350と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の第2の区分340と第2の熱交換チャネル350の間の熱交換を可能とする。ある実施形態においては、第2の区分340は、第2の熱交換チャネル350中の熱交換流体との熱交換により第1の区分240において得られ、受け取られる生成物を急冷するようになされる。急冷は、必要とされるならば、複数の、例えば2つもしくは3つもしくは4つの第2の熱交換チャネル350の存在により段階で行われ得る。このような複数の第2の熱交換チャネル350は、異なる温度を有し、特に第2の区分340の下流方向において低い温度を有する熱交換流体を含む第2の熱交換チャネル350と熱交換が行われる熱交換流体を含むようになされ得る。繰り返し単位は、1つ以上の第2のオリフィス380を通って第2の区分340の中に至る第2のフィードチャネル360を含み得る。運転時、フィードは、プロセスマイクロチャネル210中の上流から、ならびに第2のフィードチャネル360および1つ以上の第2のオリフィス380を通って第2の区分340の中に入り得る。
【0020】
第1および第2のオリフィス280もしくは380と組み合わされた、第1および第2のフィードチャネル260もしくは360によって、1つ以上の第1もしくは第2のオリフィス280もしくは380は、もう一つの第1もしくは第2のオリフィス280もしくは380それぞれに対して下流に配置され、反応物質の補給が可能となる。反応物質の補給が本発明のいくつかの実施形態で利用可能である。
【0021】
プロセスマイクロチャネル210は、第1の区分240の下流および第2の区分340の上流に配置されている中間区分440を含み得る。中間区分440は、第3の熱交換チャネル450と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の中間区分440と第3の熱交換チャネル450の間の熱交換を可能とする。
【0022】
ある実施形態においては、プロセスマイクロチャネル210は、第2の区分340の下流の第3の区分(図示せず。)と、場合により第2の区分340の下流および第3の区分の上流の第2の中間区分(図示せず。)を含み得る。第3の区分は、第4の熱交換チャネル(図示せず。)と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の第3の区分と第4の熱交換チャネルの間の熱交換を可能とする。第2の中間区分は、第5の熱交換チャネル(図示せず。)と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の第2の中間区分と第5の熱交換チャネルの間の熱交換を可能とする。繰り返し単位は、1つ以上の第3のオリフィス(図示せず。)を通って第3の区分の中に至る第3のフィードチャネル(図示せず。)を含み得る。通常、1つ以上の第3のオリフィスは、もう一つの第3のオリフィスに対して下流に配置され得る。運転時、フィードは、プロセスマイクロチャネル210中の上流から、ならびに第3のフィードチャネルおよび1つ以上の第3のオリフィスを通して第3の区分の中に入り得る。
【0023】
フィードチャネルの各々はマイクロチャネルであり得る。これらは、15mmまでの、例えば0.05から10mmの、特に0.1から5mmの、更に特に0.5から2mmの高さまたは幅の少なくとも1つの内部寸法を有し得る。高さまたは幅の他の内部寸法は、例えば、0.1から100cm、特に0.2から75cm、更に特に0.3から50cmであり得る。フィードチャネルの各々の長さは、例えば、1から250cm、特に2から150cm、更に特に3から100cm、または5から50cmであり得る。
【0024】
プロセスマイクロチャネルの区分の各々の長さは、例えば、必要とされる熱交換容量により、相互に独立して選択され得る。この区分の長さは、独立して少なくとも1cm、または少なくとも2cm、または少なくとも5cmであり得る。この区分の長さは、独立して多くても250cm、または多くても150cm、または多くても100cm、または多くても50cmであり得る。この区分の他の寸法は、プロセスマイクロチャネル210の対応する寸法により規定される。
【0025】
本発明のマイクロチャネル反応器は、既知の方法、例えば従来の機械加工、レーザー切断、成形、型打ち、およびエッチングおよびこれらの組み合わせを用いて製造され得る。本発明のマイクロチャネル反応器は、通路を可能とさせる除去済の形状付きのシートを形成することにより製造され得る。このようなシートの積重体は、既知の方法、例えば拡散接合、レーザー溶接、冷溶接、拡散ろう付け、およびこれらの組み合わせを使用することにより組み立てられて集積化素子を形成する。本発明のマイクロチャネル反応器は、反応物質の入力、生成物の出力、および熱交換流体の流れを制御するための適切なヘッダー、フッター、バルブ、導管ライン、および他の形状を含む。これらは図面中には示されていないが、当業者によれば容易に設置可能である。また、プロセスマイクロチャネルに入る前に、フィードの温度制御のための、特にフィードまたはフィード成分を加熱するための、もしくはプロセスマイクロチャネルを出た後で生成物の温度制御のための、特に生成物を冷却するための更なる熱交換装置(図示せず。)があり得る。このような更なる熱交換装置は、マイクロチャネル反応器と一体であり得るが、通常、別々の装置である。これらは図面中には示されていないが、当業者によれば容易に設置可能である。
【0026】
ある態様においては、本発明は、酸素または空気を用いるアルキレンの直接的なエポキシ化によるアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドの製造方法において特別な用途を見出す。Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,3rd edition,Volume 9,1980,pages 445−447を参照のこと。空気をベースとする方法においては、空気または酸素により富化された空気が酸化剤源として使用され、酸素をベースとする方法においては、高純度(少なくとも95モル%)の酸素が酸化剤源として使用される。現在は、大部分のエポキシ化プラントは酸素をベースとする。このエポキシ化方法は、広い範囲から選択される反応温度を用いて行われ得る。好ましくは、エポキシ化反応器内の反応温度は、150℃から340℃の範囲に、更に好ましくは180から325℃の範囲にある。反応は、好ましくは1000から3500kPaの範囲の圧力で行われる。
【0027】
酸化剤と炭化水素材料の混合は危険プロセスである。酸化剤が特に酸素ガスである場合には、混合方法は、炭化水素材料への添加に続く酸素ガスの混合体積を最小にするように厳格に制御されなければならない。
【0028】
酸素ガスと炭化水素材料、例えばエチレンの混合を考えると、2つの材料の混合物は最小および最大の酸素レベルを有し、その間で混合物は爆発性となることができる。混合の前には、酸素流は上方の爆発限界を超える酸素レベルを有し、混合の後では、酸素レベルが下方の爆発限界の下になることを目的とする。しかしながら、混合時には混合物が爆発領域に存在する酸素レベルを有する段階が不可避である。
【0029】
従って、酸化剤−炭化水素混合物が関連性のある爆発領域に存在する時間の長さを最小とする混合工程を有することは有利である。
【0030】
商用のエチレンオキシド製造においては、酸素は、エチレンと極めて大きな体積で反応される。商用の運転においては、この反応は、現在は、エチレンと、窒素、二酸化炭素、およびメタンの1つ以上を含み得るバラストガスを含有するガス流に酸素ガスを添加することにより行われる。加えて、このガス流は、再循環の後で他のガス、例えばエタン、酸素、およびアルゴンも含有し得る。例えば、US−A−3,119,837およびEP−A−893,443を参照のこと。著しい体積の酸素ガスをガス流に添加した後で爆発のリスクを最小とすることは、最大の関心事である。迅速な混合を確保し、爆発領域に存在するガス流中のガスの体積を最小とする、すなわち完全に混合されないガスの体積を最小とするために、特定の装置が開発された。一つのこのような装置は、環または「ドーナツ」の形状の混合装置である。Research Disclosure No.465117,Research Disclosure Journal,January 2003,page 106,Kenneth Mason Publications Ltd.を参照のこと。しかしながら、このような装置によれば、大きな体積の酸素ガスがガス流の中になお直接混合され、完全に混合されないガスのポケットにより酸素−ガス混合物が爆発性であることができる領域がガス流中になお存在する。
【0031】
マイクロチャネル装置を使用することにより、酸化剤と炭化水素の混合は、1つ以上の個別のプロセスマイクロチャネル中で行われる。好ましくは、酸化剤と炭化水素は気相中にある。望ましくは、酸化剤流と炭化水素流は、別々のフィードライン経由で共通のプロセスマイクロチャネルに添加される。マイクロチャネル装置内には多数のプロセスマイクロチャネルが存在するので、酸化剤フィードと炭化水素フィードは、多数の小体積に分割されて、混合が個別のプロセスマイクロチャネル中で行われる。このことによって、高効率の混合が確保され、フィードがガスである場合には、爆発領域にあるガスの体積が最小化される。マイクロチャネルの内側では、熱が直ちに放散され、火炎が消化され、装置を本質的に安全にするので、爆発は起こることができない。完全に混合された場合、各プロセスマイクロチャネルからの混合物は、マイクロチャネル装置内、もしくは外部の出口ラインへのヘッダー経由のいずれかで一つの流れに収束し、および完全に混合された流れは最小の爆発リスクによってもたらされる。
【0032】
図2を参照すると、例えば2つのフィード流れの一方、好ましくは炭化水素流がプロセスマイクロチャネル260および/または220経由で1つのマイクロチャネル区画240に入り、ならびにこのフィードが中間区画440経由で第2の区画340の中に導入され、2つのフィードの他方、好ましくは酸化剤を第2のフィードチャネル360経由で導入することができる。次に、2つのフィードの混合がマイクロチャネル230中で行われ、これに第2のフィードをオリフィス380経由で導入することができる。関与するフィード成分が増進された安全性をもたらすことが必要ならば、マイクロチャネル装置はそれ自体マイクロチャネルであり得、冷却媒体を通すことができる熱交換チャネルも含み得る。
【0033】
本発明においては、酸化剤は最も好ましくは酸素ガスである。本明細書中の炭化水素または炭化水素材料は、水素および炭素を含有するいかなる有機化合物でもあり得;酸素などの他の元素も存在し得る。本発明のこの態様においては、炭化水素材料は、炭化水素、例えばC1−10炭化水素、例えばメタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、およびブタン;オキシド、例えばC2−10アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド;グリコール、例えばC2−10アルキレングリコール、例えばモノ−、ジ−もしくはトリ−エチレングリコール;およびC1−10有機酸、例えば酢酸の1つ以上であり得る。このようにして、本発明の方法は、例えばエチレンのエチレンオキシドまたはビニルアセテートへの触媒的部分酸化において利用され得る。
【0034】
最も好適には、本発明は、酸素源をマイクロチャネル装置の1つ以上のプロセスマイクロチャネルの中に導入すること、同一のプロセスマイクロチャネルの中にエチレン源を導入すること、混合を起こしてガス状生成物の混合物を形成することを可能にすること、およびガス状生成物の混合物をエチレンオキシドへの反応が起こり得る反応領域に送ることを含む、エチレンオキシドを調製するための方法を提供する。好ましくは、エチレン源は、エチレンと、メタン、エタン、酸素、アルゴン、二酸化炭素、および窒素から選択される1つ以上の化合物の混合物を含む。酸素源が95から99.99容積%の範囲の純度を有する酸素ガスである場合には、本発明の方法が最も好ましくは利用されるが;酸素源は、低純度の、例えば85容積%以上の空気または酸素ガスでもあり得、したがって好ましくは、酸素源は、15から99.99容積%の範囲の酸素含量を有するガスである。
【0035】
本発明のこの態様においては、ガスは、マイクロチャネル装置のプロセスマイクロチャネル内で「ミクロレベル」で、すなわち極めて小さな規模で混合される。初期的には両方のフィードの混じり合いの後に、勿論、酸素に富んだ混合物および酸素の欠乏した混合物のポケットが存在するが、プロセスマイクロチャネル中での、ならびに存在する場合には、マイクロチャネルオリフィス経由での酸素流の分割と再結合が爆発限界以下の平均酸素濃度を確保する。ガス混合物がマイクロチャネル装置中を進行すると、これらのポケットは消失し、ガスはミクロレベルでよく混合される。
【0036】
EO製造プラントにおいては、再循環ガスループ中の従来の混合装置を利用する同一の場所に、すなわち反応器の前にマイクロチャネル装置を配置することが最も有用である。しかしながら、再循環ガスループ中のいかなる場所であれマイクロチャネル装置を配置することが可能である。ある場所においては、ガスの状態、例えば組成、圧力および/または温度によって、最終のよく混合されたガスでも爆発領域になる可能性があり;このような環境において条件を調整して本発明の方法の使用が可能となるように、例えば再循環ガス流の温度を低下させることが必要であり得る。好適には、エチレン源から装置の中にフィードラインが走り、および別のフィードラインが酸素源から設けられる。好適には、混合操作に対して適用され得る一般的な工程条件は、1000から3500kPaの範囲の圧力、および外周温度(20℃)から250℃の範囲の温度である。
【0037】
本発明の方法は、迅速なタイムスケールで増強された混合をもたらし、実際には特に爆発潜在性を有するガスの混合に対しては以前の提案よりも短いタイムスケールで完全に混合された生成物をもたらし得る。
【0038】
このようにして、マイクロチャネル装置の使用は、フィードガスを迅速に分割し、先行の環混合装置により得られるよりも著しく速い速度で小体積を混合する利点をもたらす。いかなる混合物であれ爆発領域に存在し得る時間の長さが著しく短縮され、および最終的に完全に混合されたガス流が著しく速く得られる。
【0039】
加えて、マイクロチャネルそれ自体のサイズによって、混合装置がフレームアレスタとして機能するということが確保される。いかなるガスまたはガス混合物に対しても、特性的な火炎消化直径が存在し;これは、いかなる火炎も消化されるパイプまたは容器の直径である。適切なマイクロチャネル直径を選択することによって、いかなる出発燃焼反応も直ちに消化可能であるということを確保することができる。このようにして、加えて、マイクロチャネル装置の物理的な性状は、混合操作に対して本質的な安全性をもたらし得る。これは現在の混合系では全く可能でない。マイクロチャネル装置が熱交換チャネルを更に含む場合には、安全性の利点が更に増強される。
【0040】
本発明の方法においては、多くても5mmの、最も好ましくは多くても2mmの、および特に多くても1.5mmの高さおよび/または幅の内部寸法を有するプロセスマイクロチャネルの1つ以上、および好ましくは全部を有するマイクロチャネル装置を使用することが好ましい。上記の内部寸法は、好ましくは少なくとも0.1mm、最も好ましくは少なくとも0.5mm、および特に少なくとも0.5mmである。
【0041】
ここで、本発明を次の実施例により例示する。
【実施例】
【0042】
400,000mt/a エチレンオキシドプラント中で反応器系への再循環ガスの流れは、600mt/時である。この流れは、主としてメタン、エチレン、酸素、アルゴン、二酸化炭素、および窒素からなる。反応器入口における温度は140℃であり、圧力は2000kPaゲージである。
【0043】
図3中で反応器1内部の触媒上でエチレンオキシド(EO)と二酸化炭素(CO)の製造において、エチレンと酸素を消費する。反応生成物ガスを水により洗浄して、EO吸収器2中でEOを吸収し、およびCOの再循環ガスの一部をCO吸収器3中で洗浄した後、反応器1に入る前に、フィードエチレンをライン4経由で、ならびに酸素をライン5経由で再循環ガスに供給する。37.5mt/時のエチレンと34.6mt/時の酸素を再循環ガスにフィードする。反応器1から吸収器2および吸収器3から反応器1まで、これらの区画プラス相互接続用配管のすべてが再循環ガスループを形成する。
【0044】
混合器7中で酸素を再循環ガスと混合する。混合器7は、図1および図2について本明細書中で述べられているマイクロチャネル装置である。このマイクロチャネル装置によって、多数の小体積のガスを個別のマイクロチャネル中で混合して、爆発反応の影響を低下させることにより、酸素の再循環ガスとの改善された混合が確保される。世界的な規模のEO製造設備におけるこのような可燃性ガスの大体積での爆発は、甚大な影響を及ぼし、このようなプラントにおいてマイクロチャネル装置を使用することにより、事故のリスクが減少する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】マイクロチャネル反応器とこの主な構成要素の概略図を示す。
【図2】プロセスマイクロチャネルおよび熱交換チャネルと、本発明の実施において使用される場合のこの運転を含む、繰り返し単位の通常の例の概略図を示す。本発明で利用されるマイクロチャネル装置もしくは反応器は、複数のこのような繰り返し単位を含み得る。
【図3】本発明によりエチレンオキシドを調製する方法の例の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素材料を含む第1の流れと酸化剤を含む第2の流れをマイクロチャネル装置の中に送ること、混合が起こることを可能にすること、および混合物を抜き出すことを含む、爆発潜在性を有する酸化剤を炭化水素材料と混合するための方法。
【請求項2】
酸素源をマイクロチャネル装置の1つ以上のプロセスマイクロチャネルの中に導入すること、同一のプロセスマイクロチャネルの中にエチレン源を導入すること、混合を起こして、ガス状生成物の混合物を形成することを可能にすること、およびガス状生成物の混合物をエチレンオキシドへの反応が起こり得る反応領域に送ることを含む、エチレンオキシドを調製するための方法。
【請求項3】
マイクロチャネル装置がエチレンオキシド製造プラントの再循環ガスループ中に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エチレン源がエチレン、およびエタン、酸素、アルゴン、二酸化炭素、窒素、およびメタンの1つ以上の混合物を含み、ならびに酸素源が15から99.99容積%の範囲の酸素含量を有するガスである、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
マイクロチャネル装置が0.5から1.5mmの範囲の内部高さおよび/または幅を有する1つ以上のプロセスマイクロチャネルを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520762(P2009−520762A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546451(P2008−546451)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070027
【国際公開番号】WO2007/071737
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】