マイクロチャネル熱交換器の製造方法
【課題】 亀裂や割れ等のダメージの発生を抑制できる、流路が磁気冷凍材料により形成されたマイクロチャネル熱交換器の製造方法を提案する。
【解決手段】 中央に円柱形状の空隙を有するカーボン製のダイ21の空隙部分に円柱形状のカーボン製の台座23を配置し、台座23に設けた溝にスペーサ11を差し込んで取り付け、LaFe13系磁気冷凍材料粉末25を充填した。ダイ21の空隙の上下端部に、カーボン製のパンチ33を配置し、スペーサ11、台座23、および材料粉末25をダイ21とパンチ33とによって固定した後、放電プラズマ焼結装置にセットして、上下のパンチ33を介して加圧および通電加熱を行い一体焼結した。その後、焼結体からスペーサ11を引き抜いて除去し、流路を形成した。
【解決手段】 中央に円柱形状の空隙を有するカーボン製のダイ21の空隙部分に円柱形状のカーボン製の台座23を配置し、台座23に設けた溝にスペーサ11を差し込んで取り付け、LaFe13系磁気冷凍材料粉末25を充填した。ダイ21の空隙の上下端部に、カーボン製のパンチ33を配置し、スペーサ11、台座23、および材料粉末25をダイ21とパンチ33とによって固定した後、放電プラズマ焼結装置にセットして、上下のパンチ33を介して加圧および通電加熱を行い一体焼結した。その後、焼結体からスペーサ11を引き抜いて除去し、流路を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気冷凍材料を用いたマイクロチャネル熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境配慮型の冷凍技術として、クリーンでエネルギー効率の高い磁気冷凍に対する期待が高まっている。磁気冷凍材料としてLa(Fe,Si)13系材料が高い磁気熱量効果を発現し、且つこの材料に水素を含有させることで高い磁気熱量効果を室温で発現することが知られている(特許文献1)。あるいは水素の代わりにCoを含有させて室温動作させる方法も提案されている(特許文献2)。
【0003】
特許文献2には、磁気冷凍材料の形状については、球形あるいは楕円体が望ましく、粒径は0.1mm以上2mm以下が好ましく、0.4mm以上1.5mm以下であることがより好ましい、と記載されている。図12(A)に球状の磁気冷凍材料を円筒管に充填した状態の概略断面図を示す。符号100は球状磁気冷凍材料、符号110は円筒管である。
【0004】
冷媒と磁気冷凍材料との熱交換の観点からは磁気冷凍材料の比表面積が最も大きくなる球状が好ましい。しかしながら、球状の磁気冷凍材料を用いた場合にはポンプ動力すなわち圧力損失が高くなってしまう。さらに、容器に球状の磁気冷凍材料を充填した場合に個々の磁気冷凍材料粒子が完全に固定されず、一部の粒子は冷媒によって移動するために隣接する粒子との衝突によって破壊し微細粉を発生してしまう。
【0005】
そこで、磁気冷凍材料の面に接した貫通スリットを形成し、このスリットに冷媒を流すことで磁気冷凍材料と冷媒間での熱交換を行うマイクロチャネル構造が提案されている(非特許文献1)。図12(B)に非特許文献1の模式断面図およびマイクロチャネルの斜視図を示す。本構造とすることで、低圧力損失と高熱交換性能の両立が可能となる。
【0006】
所望の熱交換性能を得るためにはマイクロチャネルのスリット幅および磁気冷凍材料厚さ共に数mm程度以下(好ましくは、1mm程度以下)とする必要がある。一方、非特許文献1ではマイクロチャネルのスリット幅を0.15mm程度としており、磁気冷凍材料(GaSiGe)の厚さを5mmとしている。Si基板をエッチングして0.15mm深さの溝を形成し、この溝を形成した面に対向させて5mm厚の磁気冷凍材料の板を接合することでマイクロチャネルを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−96547号公報
【特許文献2】特開2008−150695号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NASA Supported Hydrogen Research 2005 @University of Florida講演会チャート(http://www.mae.ufl.edu/NasaHydrogenResearch/presentations/Review%20Meeting%20-%20Other%20Projects.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の構造ではマイクロチャネル構造の一部が磁気冷凍材料ではないSiで形成されることになり、磁気熱量効果を十分に引き出すことができない。またSiと磁気冷凍材料とで熱膨張係数が異なるために温度変動によって界面に応力が発生し、最悪の場合界面で剥離する虞がある。
【0010】
非特許文献1において磁気冷凍材料そのものでマイクロチャネルを形成しなかった理由は磁気冷凍材料がSi基板のように単結晶ではないために結晶の異方性を利用したエッチング加工ができず、さらに磁気冷凍材料が機械的に脆いために放電加工など一般的な深溝機械加工では前述のマイクロチャネル構造を形成することが困難であるためである。
【0011】
一方、塊状の磁気冷凍材料に、例えば幅が0.5mm以下で高さ5mm程度、奥行きが20mm程度の貫通スリットを形成するには、レーザー加工や放電加工等が考えられるが、いずれの加工方法も加工時間が長く、加工面の面粗度の悪化や亀裂・割れ等のダメージの発生が課題となる。
【0012】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、亀裂や割れ等のダメージの発生を抑制できる、流路が磁気冷凍材料により形成されたマイクロチャネル熱交換器の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、磁気冷凍材料の内部に流路を形成してなるマイクロチャネル熱交換器の製造方法であり、磁気冷凍材料の粉末中に流路形成用のスペーサを1つ以上配置した状態で粉末を焼結する焼結工程と、焼結工程にて得られた焼結体からスペーサを除去することで流路を形成する除去工程と、を有する。そして上述したスペーサは、その熱膨張係数が上記磁気冷凍材料の熱膨張係数以上であって、且つ融点が焼結工程における焼結温度よりも高いことを特徴とする。
【0014】
このような製造方法であれば、焼結体からスペーサを除去することで焼結時にスペーサが存在していた位置に流路が形成されるため、レーザー加工や放電加工等を行う必要がなく、それらの加工によるクラック・割れ等のダメージなく流路を形成することができる。また、磁気冷凍材料内に流路(マイクロチャネル)が形成されるため、流路は磁気冷凍材料によって囲まれることになり、磁気熱量効果を十分に引き出して高い熱交換性能を発揮することができる。なお、本発明におけるマイクロチャネルとは流路の幅が数mm以下、特に0.5mm以下のものを意味する。
【0015】
スペーサを焼結体から除去する方法としては、焼結体からの引き抜きや、スペーサを所定の溶媒により溶解することなどが考えられる。焼結工程において、スペーサをその一部が磁気冷凍材料の粉末中から外部に突出するように配置して焼結を行い、スペーサの一部が外部に突出した焼結体を形成することで、スペーサの引き抜きや溶解等を容易に行うことができる。また引き抜きを行う場合には、スペーサの一部を焼結体から突出させて、その突出部分を引き抜き手段に固定して、引き抜くことで焼結体とスペーサとを容易に分離することができる。
【0016】
もちろん、焼結工程において、スペーサが焼結体に囲まれるような焼結体を形成してもよく、その場合には焼結体を研磨することなどによりスペーサの端部を露出させればよい。
【0017】
なお引き抜きによりスペーサを除去する場合には、焼結工程において、スペーサとして、スペーサ表面における少なくとも上記粉末と接触する部分に窒化ホウ素を主成分とする離型材料が塗布されているものを用いてもよい。
【0018】
このような製造方法であれば、スペーサの引き抜きをスムーズに行うことができ、引き抜き時に焼結体に加わる負荷を低減して焼結体の破損を抑制できる。
形成される流路はスペーサの形状によって定まる。スペーサの形状は特に限定されないが、スペーサとして板状あるいは線状の形状の部材を用いてもよい。
【0019】
また、スペーサとして板状の部材を2つ以上用い、かつ主たる面が互いに平行となるようにスペーサを配置してもよい。このようにスペーサを配置することで、磁気冷凍材料内に流路を効率よく形成することができる。特にマイクロチャネルは流路が狭く流量を大きくすることが難しいため、磁気冷凍材料における流路の割合を高めることができ都合がよい。
【0020】
また、スペーサとして板状あるいは線状の形状の部材を用いて、放電プラズマ焼結により焼結する場合には、スペーサの厚さ方向が放電プラズマ焼結における電流経路の方向に対して略直交となるように配置してもよい。このようにスペーサを配置することで、スペーサによって電流経路を遮断してしまうことを抑制でき、焼結体(磁気冷凍材料粉末)全体を均一に加熱することができる。
【0021】
磁気冷凍材料としては、NaZn13結晶構造を主相とするLaFe13系材料を用いることができる。この材料は高い磁気熱量効果を示すものであるため、高い熱交換性能が期待できる。
【0022】
また上記磁気冷凍材料を用いる場合には、スペーサの材料として、SUS304、炭素鋼、LaFe13系磁気冷凍材料のうちのいずれかを用いてもよい。LaFe13系磁気冷凍材料の熱膨張係数が8.94×10-6/Kであることから、これと同じか、これよりも大きい熱膨張係数のスペーサを用いることで、焼結工程が終了して焼結体が冷却されたときにスペーサが周囲の焼結体以上に収縮するためスペーサの引き抜き操作が容易になり、スペーサ引き抜き時に焼結体が破損してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スペーサを示す斜視図(A),(B)
【図2】焼結型に材料を充填した状態を示す側面断面図
【図3】台座へのスペーサの取り付け操作を説明する斜視図(A)、および取り付け後の断面図(B)
【図4】焼結工程後の磁気冷凍材料焼結体の側面断面図(A)、および研磨後の焼結体の側面断面図(B)
【図5】焼結体への保護板の取り付け操作を説明する斜視図(A)、および取り付け後の斜視図(B)
【図6】スペーサの引き抜き操作を説明する断面図(A),(B)
【図7】磁気冷凍材料マイクロチャネル熱交換器の斜視図(A),(B)
【図8】マイクロチャネル熱交換器をケースに収納した状態を示す断面図(A)、およびA−A断面図(B),(C)
【図9】スペーサガイドを示す平面図(A),(C)および側面図(B),(D)
【図10】焼結型にスペーサを配置した状態を示す斜視図
【図11】スペーサへのガイド部材の取り付け操作を説明する斜視図
【図12】従来技術による小粒子状磁気冷凍材料を収納した熱交換器断面図(A)、従来技術によるマイクロチャネルの概略斜視図(B)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。なお図面は理解を容易にする目的で、同一の対象物であっても図面ごとに大きさの比率やスリットの数などが一致しない場合がある。また本発明は、以下の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0025】
[実施例1]
本実施例では、NaZn13結晶構造を主相とするLaFe13系磁気冷凍材料の内部に流路(マイクロチャネル)を形成してなるマイクロチャネル熱交換器を製造する。マイクロチャネルは、磁気冷凍材料の粉末中に流路形成用のスペーサを配置して一体焼結し、その後スペーサを抜き取ることによって形成する。詳細を以下に説明する。
【0026】
1.スペーサの選定
スペーサを示す模式的な斜視図を図1(A)に示す。スペーサ11は50μm厚のSUS304シートを略矩形となるようにカットしてなるものであって、本実施例では4枚用いる。
【0027】
なお、スペーサ11としてはSUS304以外の材料も用いることができる。スペーサの材料候補一覧を表1に示す。高融点材料で且つ熱膨張係数がLaFe13系磁気冷凍材料と同じあるいはそれよりも大きい材料としてSUS304、炭素鋼(S45C)、LaFe13系材料が有望となる。本実施例では熱膨張係数が最も大きいSUS304を選択した。
【0028】
【表1】
【0029】
2.離型材料の塗布
次に、所定形状にカットした板状のスペーサ11にBNスプレー(オーテック社製BNリリーズ)によりコーティングし、乾燥させることにより、窒化ホウ素を主成分とする離型材料13をスペーサ11の表面全体に塗布した。
【0030】
3.焼結工程
本実施例では、放電プラズマ焼結(SPS)により焼結を行う。図2に焼結型に材料を充填した状態を示す。中央に円柱形状の空隙を有するカーボン製のダイ21の空隙部分に円柱形状のカーボン製の台座23を配置し、台座23に設けた溝27に、BNコートした(離型材料13を塗布した)スペーサ11を差し込んで取り付けた。その後、LaFe13系磁気冷凍材料粉末25(25μmアンダー)を充填した。スペーサ11は、台座23の溝27に挿入されている部分が材料粉末25中から外部へ突出することとなる。
【0031】
スペーサ11の取り付け作業について、図3(A),(B)を用いてさらに説明する。図3(A)に示すように、台座23の中央部には幅150μmの溝27がピッチ400μmで複数本(本実施例では4本)形成されており、この溝27部分にBNコートしたスペーサ11を挿入した。
【0032】
複数の溝27は互いに平行に形成されており、スペーサ11同士はその主たる面が略平行となる。なお溝27の幅は、スペーサ11の厚さに離型材料13の厚さが加わることを考慮してスペーサ11よりも十分に大きく形成されている。
【0033】
また、焼結の際に台座23と磁気冷凍材料の焼結体との固着を防止する目的で、スペーサ11が通過する孔31が形成されたカーボンシート29が台座23の表面、即ち材料粉末25と接触する面に配置される。
【0034】
なお、スペーサ11は台座23の溝27の底まで差し込まずに、溝底から浮かせて固定した。これは焼結の際に材料粉末25(焼結体)の収縮によりスペーサ11が押し下げられて台座23の溝27と当たることでスペーサ11が変形してしまうことを抑制するためである。
【0035】
溝底から浮かせて固定する方法としては、例えば溝27の底に、上方に伸びる弾性を有するワイヤ状の支持具を設け、当該ワイヤでスペーサ11を支持することが考えられるが、もちろんその他の方法であってもよい。
【0036】
説明を図2に戻る。ダイ21の空隙の上下端部に、少なくとも空隙側の先端が円柱形状であるカーボン製のパンチ33を配置し、スペーサ11、台座23、および材料粉末25をダイ21とパンチ33とによって固定した後、図示しない放電プラズマ焼結装置にセットして、上下のパンチ33を介して加圧および通電加熱を行い一体焼結した。
【0037】
焼結条件は温度950℃、加重2.5kN、焼結時間10分とした。電流経路は上下方向(上下のパンチ33が並ぶ方向)であり、スペーサ11は、その主たる面がSPSによる電流経路に対して平行となるように、換言するとスペーサ11の厚さ方向が電流経路の方向と略直交するように配置されている。
【0038】
4.除去工程
焼結工程においてスペーサ11と一体焼結された磁気冷凍材料の焼結体35の側面断面図を図4(A)に示す。スペーサ11は、台座23の溝27に挿入されていた部分が焼結体35から突出している。またカーボンシート29は焼結後に取り外されている。この焼結体35を、図4(B)に示すように、焼結体35におけるスペーサ11が突出する面と反対の面37を研磨面としてスペーサ11の端部が出現するまで研磨した。
【0039】
次に、図5(A)、(B)に示すように、焼結体35におけるスペーサ11の突出した側の面39に、スペーサ11が通過可能な孔43が形成された金属性の保護板41を配置し、熱軟化性ワックスにより焼結体35と接着した。
【0040】
次に、図6(A)に示すように、焼結体35を押さえジグ51にセットすると共に、焼結体35から突出したスペーサ11とスペーサ抜き取りピン53とを接着剤により固定した。本図における焼結体35は図4(B)の焼結体35を側面方向(図4(B)における矢印方向)から見た図である。そして、図6(B)に示すように、スペーサ抜き取りピン53を下方に引き抜くことでスペーサ11と焼結体35とを分離した。このようにして焼結体35からスペーサ11を除去した。
【0041】
なお、スペーサ抜き取りピン53が本発明の引き抜き手段に対応する。
焼結体35における面39側はスペーサ11が突出している間は研磨機による研磨ができないため、表面に凹凸が形成されていてもそれを除去することが困難である。上述した保護板41を配置しない場合、スペーサ11の引き抜き時において、表面に凹凸が形成された状態で押さえジグ51の面と焼結体35が局所的に接すると、応力によって焼結体35が破損する危険性がある。
【0042】
しかしながら、スリット(孔43)を設けた金属製の保護板41を配置することによって、焼結体35表面の凹凸を緩和して応力集中を抑制することができ、破損の危険を低減してスペーサ11を抜き取ることができる。
【0043】
以上の工程により、図7(A)に示すような磁気冷凍材料からなるマイクロチャネル熱交換器1を製造した。マイクロチャネル熱交換器1は円柱形状であって、奥行き方向に貫通したマイクロチャネル3がスペーサ11の挿入されていた位置に形成される。
【0044】
なお、スペーサ11引き抜き後の空隙幅、即ちマイクロチャネル3の幅は、ほぼ100μmとなった。焼結工程前のスペーサ11の厚みが50μmであったのに対して増加しているが、これは、焼結時における上下方向(スペーサ11の主たる面が拡がる方向)への加重および加熱によって、スペーサ11がその板厚が増大するように変形したためである。したがってスペーサ11を板厚の変形量の分だけ予め薄い寸法とすることで、形成されるマイクロチャネル3の幅を所望の寸法とすることができる。
【0045】
図8(A),(B)は、図7(A)に示したマイクロチャネル熱交換器1を、冷媒を流すためのケース5に収納した状態の概略断面図である。ケース5の両端に設けられたポートより冷媒を充填し、磁気冷凍材料の磁気熱量効果による発熱・吸熱と同期させて冷媒を移動させることで熱交換を行うことができる。
【0046】
(効果)
本実施例の製造方法では、焼結体35からスペーサ11を除去することで焼結時にスペーサ11が存在していた位置に流路(マイクロチャネル3)が形成されるため、レーザー加工や放電加工等を行う必要がなく、それらの加工によって発生するクラック・割れ等のダメージなく流路を形成することができる。
【0047】
本実施例において製造されたマイクロチャネル熱交換器1は、マイクロチャネル3を囲む全ての領域において磁気冷凍材料が存在しているために、非特許文献1のようにマイクロチャネル構造の一部が磁気冷凍材料ではないSiで形成された構成と比較して効率の良い熱交換を実現できる。また、焼結によって磁気冷凍材料同士が接合しているために、熱交換時の温度変化による熱膨張係数差が生じることが無く、信頼性の高い(破損が生じ難い)熱交換器を提供できる。さらに、磁気冷凍材料が一体化しているために冷媒の移動に伴う磁気冷凍材料の移動も無いので、磁気冷凍材料として粒子を用いた場合の粒子同士が衝突することによる微細粉の発生も抑制される。
【0048】
また、スペーサ11は、その主たる面がSPSによる電流経路に対して平行となるように、即ち電流経路とスペーサ3の厚さ方向とが直交するように配置されているため、スペーサ11によって電流経路を遮断してしまうことを抑制でき、焼結体(磁気冷凍材料粉末)全体を均一に加熱することができる。なおスペーサとして線状形状のものを用いた場合にも、その長手方向と電流経路とを平行にすること、即ちスペーサの厚さ方向(径方向)と電流経路とを直交させることによって、上記効果を得ることができる。
【0049】
また、スペーサ11に離型材料13を塗布することによって、焼結工程後に焼結体35からスペーサ11を引き抜く操作をスムーズに行うことができ、引き抜き時に焼結体35に加わる負荷を低減して焼結体35の破損を抑制できる。
【0050】
また、スペーサ11の材料として、LaFe13系磁気冷凍材料の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有するSUS304のスペーサを用いているため、焼結工程が終了して焼結体35が冷却されたときにスペーサ11が周囲の焼結体35以上に収縮する結果スペーサ11の引き抜き操作が容易になり、引き抜き時に焼結体35が破損してしまうことを抑制できる。
【0051】
(変形例)
本実施例では、円柱形状のマイクロチャネル熱交換器1を製造したが、それ以外の形状であってもよい。例えば、ダイ21の空隙を角柱形状とし、台座23およびパンチ33もそれに合わせて角柱形状とすることで、図7(B)に示すような角柱形状のマイクロチャネル熱交換器7を製造することも可能である。その際には、図8(C)に示すように冷媒を流すためのケース9を角柱形状にするとよい。
【0052】
また、離型材料13はスペーサ11の全面に塗布する構成を例示したが、スペーサ11表面の少なくとも焼結時に磁気冷凍材料と接触する部分に塗布されていれば、その効果を得ることができる。もちろん、スペーサ11の引き抜き操作のスムーズさは劣る可能性があるものの、離型材料13がスペーサ11に塗布されていなくともよい。
【0053】
また、離型材料13をスペーサ11の表面に塗布するために、BNコーティングをスプレー塗布により実施する構成を例示したが、離型効果を有するBN膜をスパッタ、蒸着、CVD等の成膜手段によって形成しても良い。
【0054】
また、上記実施例においては、放電プラズマ焼結(SPS)装置を用いて一体焼結する構成を例示したが、ホットプレスにより焼結しても良い。
また、焼結工程においては、スペーサ11の一方の端部が焼結体35から突出するように焼結を行う構成を例示したが、スペーサの両端が焼結体から突出するように構成してもよい。また、スペーサ全体が焼結体に囲まれるように焼結体を形成してもよい。その場合には焼結体を研磨することなどによりスペーサの端部を露出させた後にスペーサを除去すればよい。
【0055】
また、上記実施例においては、スペーサ11として板状の部材を用いる構成を例示したが、それ以外の形状であってもよい。例えば線状形状のものをスペーサとして用いることができる。スペーサの材料も、用いる磁気冷凍材料の熱膨張係数以上であって、且つ融点が焼結工程における焼結温度よりも高いものであれば、SUS304に限らず様々な材料から選択することができる。
【0056】
また、磁気冷凍材料粉末中に配置するスペーサの数は上記実施例の数に限定されることなく、1つ以上配置していればその数はいくつであってもよい。
[実施例2]
本実施例では、実施例1と同じ素材の磁気冷凍材料粉末およびスペーサを用い、スペーサを保持する治具を実施例1の台座23から図9(A),(B)に示すスペーサガイド61、および図9(C),(D)に示すスペーサガイド63に変更してマイクロチャネル熱交換器を製造する。
【0057】
図9(A)はスペーサガイド61の平面図であり、図9(B)はスペーサガイド61を矢印方向から見た側面図である。スペーサガイド61は、円柱をその軸方向(以降、軸方向とはこの方向を指す。)に沿って半分に切断した半円柱であって、さらにその切断面において軸方向に延びる矩形の溝65が形成されてなる形状となっている。また別の言い方をすると、円柱の断面中央部を軸方向に矩形状にくり貫いて半割した形状となっている。
【0058】
溝65の底には、複数のガイド溝67が軸方向に沿って形成されている。このガイド溝67は、スペーサが挿入可能な幅(150μm)であり、ピッチは400μm、深さは0.5mmとして形成されている。
【0059】
図9(C)はスペーサガイド63の平面図であり、図9(D)はスペーサガイド63を矢印方向から見た側面図である。スペーサガイド63は、スペーサガイド61と同様に、円柱をその軸方向に沿って半分に切断した半円柱であり、さらに矩形の溝69が形成されている。また溝69の底には、複数のガイド溝71が軸方向に沿って形成されている。
【0060】
ガイド溝71はスペーサが挿入可能な幅に形成されている。ガイド溝71の幅およびピッチはガイド溝67と同様であるが、深さは2mmでありガイド溝67よりも深く形成されている。
【0061】
次に、マイクロチャネル熱交換器の製造方法について説明する。スペーサの選定と離型材料の塗布までは実施例1と同様である。
1.焼結工程
図10に示すように、下部パンチ75の上にスペーサガイド61,63を溝65,69同士が向かい合うようにして組み合わせて配置した。これによってスペーサガイド61,63の間に略角柱形状の空間領域が形成された。そしてスペーサ11を上部からガイド溝67,71に沿って挿入し、所定の位置(高さ)で固定した。
【0062】
その後、磁気冷凍材料粉末(図示しない)をスペーサガイド61,63の間に形成された空間領域の上部から充填し、その空間領域を塞ぐように上部パンチ77を配置して、SPS装置内に装填し焼結を実施した。
【0063】
2.除去工程
焼結工程後、スペーサガイド61,63を分離し、磁気冷凍材料の焼結体とスペーサとが一体となったものを取り出した。その後、実施例1の図6(A),(B)で示したように、押さえジグ51とスペーサ抜き取りピン53を用いてスペーサと焼結体とを分離した。ガイド溝71は深く形成されているため焼結体から飛び出すスペーサの長さが長くなり、スペーサ抜き取りピン53とスペーサとの固定を容易に行うことができる。
【0064】
以上の工程により、磁気冷凍材料からなるマイクロチャネル熱交換器を製造した。このマイクロチャネル熱交換器は全体として角柱形状となっている。
(効果)
本実施例の製造方法では、実施例1と同様にクラック・割れ等のダメージなく、磁気冷凍材料で囲まれた流路を形成することができる。
【0065】
本実施例において製造されたマイクロチャネル熱交換器は、焼結工程においてスペーサ11の両端をガイド溝67,71によって位置決めすることができるため、スペーサ材料の間隔が所定の値に制御でき、その結果、形成されるマイクロチャネルの間隔を所定の値に高度に制御することができる。
【0066】
なお、上記実施例においては、スペーサガイド61,63の両方にガイド溝を設ける構成を例示しているが、いずれか一方のスペーサガイドにのみガイド溝が設けられる構成であっても、マイクロチャネルの間隔の精度は落ちるものの、実施例1と同様に信頼性の高いマイクロチャネル熱交換器を製造できる。
【0067】
[実施例3]
本実施例では、基本的に実施例1と同様の方法でマイクロチャネル熱交換器を製造するが、焼結工程において一部異なる点があるためその部分のみを説明し、他の工程の説明は割愛する。
【0068】
図11に示すように、カーボン製の台座23を配置し、台座23に設けた溝に離型材料13を塗布したスペーサ11を差し込んだ後、ガイド部材81をスペーサ11の上端に配置した。このガイド部材81は、台座23に形成された複数の溝27と対応するように複数の溝83が形成されている。その後、磁気冷凍材料粉末を充填して焼結し、スペーサ11およびガイド部材81を除去してマイクロチャネル熱交換器を製造した。
【0069】
本実施例において製造されたマイクロチャネル熱交換器は、実施例2にて製造されたマイクロチャネル熱交換器と同様に、スペーサ11の両端を位置決めすることができるため、スペーサの間隔が所定の値に制御でき、その結果、形成されるマイクロチャネルの間隔を所定の値に制御することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…マイクロチャネル熱交換器、3…マイクロチャネル、5…ケース、7…マイクロチャネル熱交換器、9…ケース、11…スペーサ、13…離型材料、21…ダイ、23…台座、25…磁気冷凍材料粉末、27…溝、29…カーボンシート、31…孔、33…パンチ、35…焼結体、37…面、39…面、41…保護板、43…孔、51…押さえジグ、53…スペーサ抜き取りピン、61…スペーサガイド、63…スペーサガイド、65…溝、67…ガイド溝、69…溝、71…ガイド溝、75…下部パンチ、77…上部パンチ、81…ガイド部材、83…溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気冷凍材料を用いたマイクロチャネル熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境配慮型の冷凍技術として、クリーンでエネルギー効率の高い磁気冷凍に対する期待が高まっている。磁気冷凍材料としてLa(Fe,Si)13系材料が高い磁気熱量効果を発現し、且つこの材料に水素を含有させることで高い磁気熱量効果を室温で発現することが知られている(特許文献1)。あるいは水素の代わりにCoを含有させて室温動作させる方法も提案されている(特許文献2)。
【0003】
特許文献2には、磁気冷凍材料の形状については、球形あるいは楕円体が望ましく、粒径は0.1mm以上2mm以下が好ましく、0.4mm以上1.5mm以下であることがより好ましい、と記載されている。図12(A)に球状の磁気冷凍材料を円筒管に充填した状態の概略断面図を示す。符号100は球状磁気冷凍材料、符号110は円筒管である。
【0004】
冷媒と磁気冷凍材料との熱交換の観点からは磁気冷凍材料の比表面積が最も大きくなる球状が好ましい。しかしながら、球状の磁気冷凍材料を用いた場合にはポンプ動力すなわち圧力損失が高くなってしまう。さらに、容器に球状の磁気冷凍材料を充填した場合に個々の磁気冷凍材料粒子が完全に固定されず、一部の粒子は冷媒によって移動するために隣接する粒子との衝突によって破壊し微細粉を発生してしまう。
【0005】
そこで、磁気冷凍材料の面に接した貫通スリットを形成し、このスリットに冷媒を流すことで磁気冷凍材料と冷媒間での熱交換を行うマイクロチャネル構造が提案されている(非特許文献1)。図12(B)に非特許文献1の模式断面図およびマイクロチャネルの斜視図を示す。本構造とすることで、低圧力損失と高熱交換性能の両立が可能となる。
【0006】
所望の熱交換性能を得るためにはマイクロチャネルのスリット幅および磁気冷凍材料厚さ共に数mm程度以下(好ましくは、1mm程度以下)とする必要がある。一方、非特許文献1ではマイクロチャネルのスリット幅を0.15mm程度としており、磁気冷凍材料(GaSiGe)の厚さを5mmとしている。Si基板をエッチングして0.15mm深さの溝を形成し、この溝を形成した面に対向させて5mm厚の磁気冷凍材料の板を接合することでマイクロチャネルを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−96547号公報
【特許文献2】特開2008−150695号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NASA Supported Hydrogen Research 2005 @University of Florida講演会チャート(http://www.mae.ufl.edu/NasaHydrogenResearch/presentations/Review%20Meeting%20-%20Other%20Projects.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の構造ではマイクロチャネル構造の一部が磁気冷凍材料ではないSiで形成されることになり、磁気熱量効果を十分に引き出すことができない。またSiと磁気冷凍材料とで熱膨張係数が異なるために温度変動によって界面に応力が発生し、最悪の場合界面で剥離する虞がある。
【0010】
非特許文献1において磁気冷凍材料そのものでマイクロチャネルを形成しなかった理由は磁気冷凍材料がSi基板のように単結晶ではないために結晶の異方性を利用したエッチング加工ができず、さらに磁気冷凍材料が機械的に脆いために放電加工など一般的な深溝機械加工では前述のマイクロチャネル構造を形成することが困難であるためである。
【0011】
一方、塊状の磁気冷凍材料に、例えば幅が0.5mm以下で高さ5mm程度、奥行きが20mm程度の貫通スリットを形成するには、レーザー加工や放電加工等が考えられるが、いずれの加工方法も加工時間が長く、加工面の面粗度の悪化や亀裂・割れ等のダメージの発生が課題となる。
【0012】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、亀裂や割れ等のダメージの発生を抑制できる、流路が磁気冷凍材料により形成されたマイクロチャネル熱交換器の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、磁気冷凍材料の内部に流路を形成してなるマイクロチャネル熱交換器の製造方法であり、磁気冷凍材料の粉末中に流路形成用のスペーサを1つ以上配置した状態で粉末を焼結する焼結工程と、焼結工程にて得られた焼結体からスペーサを除去することで流路を形成する除去工程と、を有する。そして上述したスペーサは、その熱膨張係数が上記磁気冷凍材料の熱膨張係数以上であって、且つ融点が焼結工程における焼結温度よりも高いことを特徴とする。
【0014】
このような製造方法であれば、焼結体からスペーサを除去することで焼結時にスペーサが存在していた位置に流路が形成されるため、レーザー加工や放電加工等を行う必要がなく、それらの加工によるクラック・割れ等のダメージなく流路を形成することができる。また、磁気冷凍材料内に流路(マイクロチャネル)が形成されるため、流路は磁気冷凍材料によって囲まれることになり、磁気熱量効果を十分に引き出して高い熱交換性能を発揮することができる。なお、本発明におけるマイクロチャネルとは流路の幅が数mm以下、特に0.5mm以下のものを意味する。
【0015】
スペーサを焼結体から除去する方法としては、焼結体からの引き抜きや、スペーサを所定の溶媒により溶解することなどが考えられる。焼結工程において、スペーサをその一部が磁気冷凍材料の粉末中から外部に突出するように配置して焼結を行い、スペーサの一部が外部に突出した焼結体を形成することで、スペーサの引き抜きや溶解等を容易に行うことができる。また引き抜きを行う場合には、スペーサの一部を焼結体から突出させて、その突出部分を引き抜き手段に固定して、引き抜くことで焼結体とスペーサとを容易に分離することができる。
【0016】
もちろん、焼結工程において、スペーサが焼結体に囲まれるような焼結体を形成してもよく、その場合には焼結体を研磨することなどによりスペーサの端部を露出させればよい。
【0017】
なお引き抜きによりスペーサを除去する場合には、焼結工程において、スペーサとして、スペーサ表面における少なくとも上記粉末と接触する部分に窒化ホウ素を主成分とする離型材料が塗布されているものを用いてもよい。
【0018】
このような製造方法であれば、スペーサの引き抜きをスムーズに行うことができ、引き抜き時に焼結体に加わる負荷を低減して焼結体の破損を抑制できる。
形成される流路はスペーサの形状によって定まる。スペーサの形状は特に限定されないが、スペーサとして板状あるいは線状の形状の部材を用いてもよい。
【0019】
また、スペーサとして板状の部材を2つ以上用い、かつ主たる面が互いに平行となるようにスペーサを配置してもよい。このようにスペーサを配置することで、磁気冷凍材料内に流路を効率よく形成することができる。特にマイクロチャネルは流路が狭く流量を大きくすることが難しいため、磁気冷凍材料における流路の割合を高めることができ都合がよい。
【0020】
また、スペーサとして板状あるいは線状の形状の部材を用いて、放電プラズマ焼結により焼結する場合には、スペーサの厚さ方向が放電プラズマ焼結における電流経路の方向に対して略直交となるように配置してもよい。このようにスペーサを配置することで、スペーサによって電流経路を遮断してしまうことを抑制でき、焼結体(磁気冷凍材料粉末)全体を均一に加熱することができる。
【0021】
磁気冷凍材料としては、NaZn13結晶構造を主相とするLaFe13系材料を用いることができる。この材料は高い磁気熱量効果を示すものであるため、高い熱交換性能が期待できる。
【0022】
また上記磁気冷凍材料を用いる場合には、スペーサの材料として、SUS304、炭素鋼、LaFe13系磁気冷凍材料のうちのいずれかを用いてもよい。LaFe13系磁気冷凍材料の熱膨張係数が8.94×10-6/Kであることから、これと同じか、これよりも大きい熱膨張係数のスペーサを用いることで、焼結工程が終了して焼結体が冷却されたときにスペーサが周囲の焼結体以上に収縮するためスペーサの引き抜き操作が容易になり、スペーサ引き抜き時に焼結体が破損してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スペーサを示す斜視図(A),(B)
【図2】焼結型に材料を充填した状態を示す側面断面図
【図3】台座へのスペーサの取り付け操作を説明する斜視図(A)、および取り付け後の断面図(B)
【図4】焼結工程後の磁気冷凍材料焼結体の側面断面図(A)、および研磨後の焼結体の側面断面図(B)
【図5】焼結体への保護板の取り付け操作を説明する斜視図(A)、および取り付け後の斜視図(B)
【図6】スペーサの引き抜き操作を説明する断面図(A),(B)
【図7】磁気冷凍材料マイクロチャネル熱交換器の斜視図(A),(B)
【図8】マイクロチャネル熱交換器をケースに収納した状態を示す断面図(A)、およびA−A断面図(B),(C)
【図9】スペーサガイドを示す平面図(A),(C)および側面図(B),(D)
【図10】焼結型にスペーサを配置した状態を示す斜視図
【図11】スペーサへのガイド部材の取り付け操作を説明する斜視図
【図12】従来技術による小粒子状磁気冷凍材料を収納した熱交換器断面図(A)、従来技術によるマイクロチャネルの概略斜視図(B)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。なお図面は理解を容易にする目的で、同一の対象物であっても図面ごとに大きさの比率やスリットの数などが一致しない場合がある。また本発明は、以下の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0025】
[実施例1]
本実施例では、NaZn13結晶構造を主相とするLaFe13系磁気冷凍材料の内部に流路(マイクロチャネル)を形成してなるマイクロチャネル熱交換器を製造する。マイクロチャネルは、磁気冷凍材料の粉末中に流路形成用のスペーサを配置して一体焼結し、その後スペーサを抜き取ることによって形成する。詳細を以下に説明する。
【0026】
1.スペーサの選定
スペーサを示す模式的な斜視図を図1(A)に示す。スペーサ11は50μm厚のSUS304シートを略矩形となるようにカットしてなるものであって、本実施例では4枚用いる。
【0027】
なお、スペーサ11としてはSUS304以外の材料も用いることができる。スペーサの材料候補一覧を表1に示す。高融点材料で且つ熱膨張係数がLaFe13系磁気冷凍材料と同じあるいはそれよりも大きい材料としてSUS304、炭素鋼(S45C)、LaFe13系材料が有望となる。本実施例では熱膨張係数が最も大きいSUS304を選択した。
【0028】
【表1】
【0029】
2.離型材料の塗布
次に、所定形状にカットした板状のスペーサ11にBNスプレー(オーテック社製BNリリーズ)によりコーティングし、乾燥させることにより、窒化ホウ素を主成分とする離型材料13をスペーサ11の表面全体に塗布した。
【0030】
3.焼結工程
本実施例では、放電プラズマ焼結(SPS)により焼結を行う。図2に焼結型に材料を充填した状態を示す。中央に円柱形状の空隙を有するカーボン製のダイ21の空隙部分に円柱形状のカーボン製の台座23を配置し、台座23に設けた溝27に、BNコートした(離型材料13を塗布した)スペーサ11を差し込んで取り付けた。その後、LaFe13系磁気冷凍材料粉末25(25μmアンダー)を充填した。スペーサ11は、台座23の溝27に挿入されている部分が材料粉末25中から外部へ突出することとなる。
【0031】
スペーサ11の取り付け作業について、図3(A),(B)を用いてさらに説明する。図3(A)に示すように、台座23の中央部には幅150μmの溝27がピッチ400μmで複数本(本実施例では4本)形成されており、この溝27部分にBNコートしたスペーサ11を挿入した。
【0032】
複数の溝27は互いに平行に形成されており、スペーサ11同士はその主たる面が略平行となる。なお溝27の幅は、スペーサ11の厚さに離型材料13の厚さが加わることを考慮してスペーサ11よりも十分に大きく形成されている。
【0033】
また、焼結の際に台座23と磁気冷凍材料の焼結体との固着を防止する目的で、スペーサ11が通過する孔31が形成されたカーボンシート29が台座23の表面、即ち材料粉末25と接触する面に配置される。
【0034】
なお、スペーサ11は台座23の溝27の底まで差し込まずに、溝底から浮かせて固定した。これは焼結の際に材料粉末25(焼結体)の収縮によりスペーサ11が押し下げられて台座23の溝27と当たることでスペーサ11が変形してしまうことを抑制するためである。
【0035】
溝底から浮かせて固定する方法としては、例えば溝27の底に、上方に伸びる弾性を有するワイヤ状の支持具を設け、当該ワイヤでスペーサ11を支持することが考えられるが、もちろんその他の方法であってもよい。
【0036】
説明を図2に戻る。ダイ21の空隙の上下端部に、少なくとも空隙側の先端が円柱形状であるカーボン製のパンチ33を配置し、スペーサ11、台座23、および材料粉末25をダイ21とパンチ33とによって固定した後、図示しない放電プラズマ焼結装置にセットして、上下のパンチ33を介して加圧および通電加熱を行い一体焼結した。
【0037】
焼結条件は温度950℃、加重2.5kN、焼結時間10分とした。電流経路は上下方向(上下のパンチ33が並ぶ方向)であり、スペーサ11は、その主たる面がSPSによる電流経路に対して平行となるように、換言するとスペーサ11の厚さ方向が電流経路の方向と略直交するように配置されている。
【0038】
4.除去工程
焼結工程においてスペーサ11と一体焼結された磁気冷凍材料の焼結体35の側面断面図を図4(A)に示す。スペーサ11は、台座23の溝27に挿入されていた部分が焼結体35から突出している。またカーボンシート29は焼結後に取り外されている。この焼結体35を、図4(B)に示すように、焼結体35におけるスペーサ11が突出する面と反対の面37を研磨面としてスペーサ11の端部が出現するまで研磨した。
【0039】
次に、図5(A)、(B)に示すように、焼結体35におけるスペーサ11の突出した側の面39に、スペーサ11が通過可能な孔43が形成された金属性の保護板41を配置し、熱軟化性ワックスにより焼結体35と接着した。
【0040】
次に、図6(A)に示すように、焼結体35を押さえジグ51にセットすると共に、焼結体35から突出したスペーサ11とスペーサ抜き取りピン53とを接着剤により固定した。本図における焼結体35は図4(B)の焼結体35を側面方向(図4(B)における矢印方向)から見た図である。そして、図6(B)に示すように、スペーサ抜き取りピン53を下方に引き抜くことでスペーサ11と焼結体35とを分離した。このようにして焼結体35からスペーサ11を除去した。
【0041】
なお、スペーサ抜き取りピン53が本発明の引き抜き手段に対応する。
焼結体35における面39側はスペーサ11が突出している間は研磨機による研磨ができないため、表面に凹凸が形成されていてもそれを除去することが困難である。上述した保護板41を配置しない場合、スペーサ11の引き抜き時において、表面に凹凸が形成された状態で押さえジグ51の面と焼結体35が局所的に接すると、応力によって焼結体35が破損する危険性がある。
【0042】
しかしながら、スリット(孔43)を設けた金属製の保護板41を配置することによって、焼結体35表面の凹凸を緩和して応力集中を抑制することができ、破損の危険を低減してスペーサ11を抜き取ることができる。
【0043】
以上の工程により、図7(A)に示すような磁気冷凍材料からなるマイクロチャネル熱交換器1を製造した。マイクロチャネル熱交換器1は円柱形状であって、奥行き方向に貫通したマイクロチャネル3がスペーサ11の挿入されていた位置に形成される。
【0044】
なお、スペーサ11引き抜き後の空隙幅、即ちマイクロチャネル3の幅は、ほぼ100μmとなった。焼結工程前のスペーサ11の厚みが50μmであったのに対して増加しているが、これは、焼結時における上下方向(スペーサ11の主たる面が拡がる方向)への加重および加熱によって、スペーサ11がその板厚が増大するように変形したためである。したがってスペーサ11を板厚の変形量の分だけ予め薄い寸法とすることで、形成されるマイクロチャネル3の幅を所望の寸法とすることができる。
【0045】
図8(A),(B)は、図7(A)に示したマイクロチャネル熱交換器1を、冷媒を流すためのケース5に収納した状態の概略断面図である。ケース5の両端に設けられたポートより冷媒を充填し、磁気冷凍材料の磁気熱量効果による発熱・吸熱と同期させて冷媒を移動させることで熱交換を行うことができる。
【0046】
(効果)
本実施例の製造方法では、焼結体35からスペーサ11を除去することで焼結時にスペーサ11が存在していた位置に流路(マイクロチャネル3)が形成されるため、レーザー加工や放電加工等を行う必要がなく、それらの加工によって発生するクラック・割れ等のダメージなく流路を形成することができる。
【0047】
本実施例において製造されたマイクロチャネル熱交換器1は、マイクロチャネル3を囲む全ての領域において磁気冷凍材料が存在しているために、非特許文献1のようにマイクロチャネル構造の一部が磁気冷凍材料ではないSiで形成された構成と比較して効率の良い熱交換を実現できる。また、焼結によって磁気冷凍材料同士が接合しているために、熱交換時の温度変化による熱膨張係数差が生じることが無く、信頼性の高い(破損が生じ難い)熱交換器を提供できる。さらに、磁気冷凍材料が一体化しているために冷媒の移動に伴う磁気冷凍材料の移動も無いので、磁気冷凍材料として粒子を用いた場合の粒子同士が衝突することによる微細粉の発生も抑制される。
【0048】
また、スペーサ11は、その主たる面がSPSによる電流経路に対して平行となるように、即ち電流経路とスペーサ3の厚さ方向とが直交するように配置されているため、スペーサ11によって電流経路を遮断してしまうことを抑制でき、焼結体(磁気冷凍材料粉末)全体を均一に加熱することができる。なおスペーサとして線状形状のものを用いた場合にも、その長手方向と電流経路とを平行にすること、即ちスペーサの厚さ方向(径方向)と電流経路とを直交させることによって、上記効果を得ることができる。
【0049】
また、スペーサ11に離型材料13を塗布することによって、焼結工程後に焼結体35からスペーサ11を引き抜く操作をスムーズに行うことができ、引き抜き時に焼結体35に加わる負荷を低減して焼結体35の破損を抑制できる。
【0050】
また、スペーサ11の材料として、LaFe13系磁気冷凍材料の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有するSUS304のスペーサを用いているため、焼結工程が終了して焼結体35が冷却されたときにスペーサ11が周囲の焼結体35以上に収縮する結果スペーサ11の引き抜き操作が容易になり、引き抜き時に焼結体35が破損してしまうことを抑制できる。
【0051】
(変形例)
本実施例では、円柱形状のマイクロチャネル熱交換器1を製造したが、それ以外の形状であってもよい。例えば、ダイ21の空隙を角柱形状とし、台座23およびパンチ33もそれに合わせて角柱形状とすることで、図7(B)に示すような角柱形状のマイクロチャネル熱交換器7を製造することも可能である。その際には、図8(C)に示すように冷媒を流すためのケース9を角柱形状にするとよい。
【0052】
また、離型材料13はスペーサ11の全面に塗布する構成を例示したが、スペーサ11表面の少なくとも焼結時に磁気冷凍材料と接触する部分に塗布されていれば、その効果を得ることができる。もちろん、スペーサ11の引き抜き操作のスムーズさは劣る可能性があるものの、離型材料13がスペーサ11に塗布されていなくともよい。
【0053】
また、離型材料13をスペーサ11の表面に塗布するために、BNコーティングをスプレー塗布により実施する構成を例示したが、離型効果を有するBN膜をスパッタ、蒸着、CVD等の成膜手段によって形成しても良い。
【0054】
また、上記実施例においては、放電プラズマ焼結(SPS)装置を用いて一体焼結する構成を例示したが、ホットプレスにより焼結しても良い。
また、焼結工程においては、スペーサ11の一方の端部が焼結体35から突出するように焼結を行う構成を例示したが、スペーサの両端が焼結体から突出するように構成してもよい。また、スペーサ全体が焼結体に囲まれるように焼結体を形成してもよい。その場合には焼結体を研磨することなどによりスペーサの端部を露出させた後にスペーサを除去すればよい。
【0055】
また、上記実施例においては、スペーサ11として板状の部材を用いる構成を例示したが、それ以外の形状であってもよい。例えば線状形状のものをスペーサとして用いることができる。スペーサの材料も、用いる磁気冷凍材料の熱膨張係数以上であって、且つ融点が焼結工程における焼結温度よりも高いものであれば、SUS304に限らず様々な材料から選択することができる。
【0056】
また、磁気冷凍材料粉末中に配置するスペーサの数は上記実施例の数に限定されることなく、1つ以上配置していればその数はいくつであってもよい。
[実施例2]
本実施例では、実施例1と同じ素材の磁気冷凍材料粉末およびスペーサを用い、スペーサを保持する治具を実施例1の台座23から図9(A),(B)に示すスペーサガイド61、および図9(C),(D)に示すスペーサガイド63に変更してマイクロチャネル熱交換器を製造する。
【0057】
図9(A)はスペーサガイド61の平面図であり、図9(B)はスペーサガイド61を矢印方向から見た側面図である。スペーサガイド61は、円柱をその軸方向(以降、軸方向とはこの方向を指す。)に沿って半分に切断した半円柱であって、さらにその切断面において軸方向に延びる矩形の溝65が形成されてなる形状となっている。また別の言い方をすると、円柱の断面中央部を軸方向に矩形状にくり貫いて半割した形状となっている。
【0058】
溝65の底には、複数のガイド溝67が軸方向に沿って形成されている。このガイド溝67は、スペーサが挿入可能な幅(150μm)であり、ピッチは400μm、深さは0.5mmとして形成されている。
【0059】
図9(C)はスペーサガイド63の平面図であり、図9(D)はスペーサガイド63を矢印方向から見た側面図である。スペーサガイド63は、スペーサガイド61と同様に、円柱をその軸方向に沿って半分に切断した半円柱であり、さらに矩形の溝69が形成されている。また溝69の底には、複数のガイド溝71が軸方向に沿って形成されている。
【0060】
ガイド溝71はスペーサが挿入可能な幅に形成されている。ガイド溝71の幅およびピッチはガイド溝67と同様であるが、深さは2mmでありガイド溝67よりも深く形成されている。
【0061】
次に、マイクロチャネル熱交換器の製造方法について説明する。スペーサの選定と離型材料の塗布までは実施例1と同様である。
1.焼結工程
図10に示すように、下部パンチ75の上にスペーサガイド61,63を溝65,69同士が向かい合うようにして組み合わせて配置した。これによってスペーサガイド61,63の間に略角柱形状の空間領域が形成された。そしてスペーサ11を上部からガイド溝67,71に沿って挿入し、所定の位置(高さ)で固定した。
【0062】
その後、磁気冷凍材料粉末(図示しない)をスペーサガイド61,63の間に形成された空間領域の上部から充填し、その空間領域を塞ぐように上部パンチ77を配置して、SPS装置内に装填し焼結を実施した。
【0063】
2.除去工程
焼結工程後、スペーサガイド61,63を分離し、磁気冷凍材料の焼結体とスペーサとが一体となったものを取り出した。その後、実施例1の図6(A),(B)で示したように、押さえジグ51とスペーサ抜き取りピン53を用いてスペーサと焼結体とを分離した。ガイド溝71は深く形成されているため焼結体から飛び出すスペーサの長さが長くなり、スペーサ抜き取りピン53とスペーサとの固定を容易に行うことができる。
【0064】
以上の工程により、磁気冷凍材料からなるマイクロチャネル熱交換器を製造した。このマイクロチャネル熱交換器は全体として角柱形状となっている。
(効果)
本実施例の製造方法では、実施例1と同様にクラック・割れ等のダメージなく、磁気冷凍材料で囲まれた流路を形成することができる。
【0065】
本実施例において製造されたマイクロチャネル熱交換器は、焼結工程においてスペーサ11の両端をガイド溝67,71によって位置決めすることができるため、スペーサ材料の間隔が所定の値に制御でき、その結果、形成されるマイクロチャネルの間隔を所定の値に高度に制御することができる。
【0066】
なお、上記実施例においては、スペーサガイド61,63の両方にガイド溝を設ける構成を例示しているが、いずれか一方のスペーサガイドにのみガイド溝が設けられる構成であっても、マイクロチャネルの間隔の精度は落ちるものの、実施例1と同様に信頼性の高いマイクロチャネル熱交換器を製造できる。
【0067】
[実施例3]
本実施例では、基本的に実施例1と同様の方法でマイクロチャネル熱交換器を製造するが、焼結工程において一部異なる点があるためその部分のみを説明し、他の工程の説明は割愛する。
【0068】
図11に示すように、カーボン製の台座23を配置し、台座23に設けた溝に離型材料13を塗布したスペーサ11を差し込んだ後、ガイド部材81をスペーサ11の上端に配置した。このガイド部材81は、台座23に形成された複数の溝27と対応するように複数の溝83が形成されている。その後、磁気冷凍材料粉末を充填して焼結し、スペーサ11およびガイド部材81を除去してマイクロチャネル熱交換器を製造した。
【0069】
本実施例において製造されたマイクロチャネル熱交換器は、実施例2にて製造されたマイクロチャネル熱交換器と同様に、スペーサ11の両端を位置決めすることができるため、スペーサの間隔が所定の値に制御でき、その結果、形成されるマイクロチャネルの間隔を所定の値に制御することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…マイクロチャネル熱交換器、3…マイクロチャネル、5…ケース、7…マイクロチャネル熱交換器、9…ケース、11…スペーサ、13…離型材料、21…ダイ、23…台座、25…磁気冷凍材料粉末、27…溝、29…カーボンシート、31…孔、33…パンチ、35…焼結体、37…面、39…面、41…保護板、43…孔、51…押さえジグ、53…スペーサ抜き取りピン、61…スペーサガイド、63…スペーサガイド、65…溝、67…ガイド溝、69…溝、71…ガイド溝、75…下部パンチ、77…上部パンチ、81…ガイド部材、83…溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気冷凍材料の内部に流路を形成してなるマイクロチャネル熱交換器の製造方法であって、
磁気冷凍材料の粉末中に流路形成用のスペーサを1つ以上配置した状態で前記粉末を焼結する焼結工程と、
前記焼結工程にて得られた焼結体から前記スペーサを除去することで流路を形成する除去工程と、を有し、
前記スペーサは、熱膨張係数が前記磁気冷凍材料の熱膨張係数以上であって、且つ融点が前記焼結工程における焼結温度よりも高い
ことを特徴とするマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項2】
前記スペーサは、板状あるいは線状の部材である
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記スペーサは板状の部材であって、
前記焼結工程において、前記スペーサは、2つ以上配置され、かつ主たる面が互いに平行となるように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記焼結が放電プラズマ焼結であり、前記スペーサは、その厚さ方向が放電プラズマ焼結における電流経路の方向に対して略直交となるように配置されている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記焼結工程では、前記スペーサとして、前記スペーサの表面における少なくとも前記粉末と接触する部分に窒化ホウ素を主成分とする離型材料が塗布されているものを用いる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項6】
前記磁気冷凍材料が、NaZn13結晶構造を主相とするLaFe13系材料である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項7】
前記スペーサは、SUS304、炭素鋼、LaFe13系磁気冷凍材料のうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項8】
前記焼結工程は、前記スペーサをその一部が前記粉末中から外部に突出するように配置した状態で前記粉末を焼結し、前記一部が突出した焼結体を形成する工程であり、
前記除去工程は、前記焼結体から突出した前記一部を引き抜き手段に固定して引き抜くことで前記スペーサを除去する工程である
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項1】
磁気冷凍材料の内部に流路を形成してなるマイクロチャネル熱交換器の製造方法であって、
磁気冷凍材料の粉末中に流路形成用のスペーサを1つ以上配置した状態で前記粉末を焼結する焼結工程と、
前記焼結工程にて得られた焼結体から前記スペーサを除去することで流路を形成する除去工程と、を有し、
前記スペーサは、熱膨張係数が前記磁気冷凍材料の熱膨張係数以上であって、且つ融点が前記焼結工程における焼結温度よりも高い
ことを特徴とするマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項2】
前記スペーサは、板状あるいは線状の部材である
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記スペーサは板状の部材であって、
前記焼結工程において、前記スペーサは、2つ以上配置され、かつ主たる面が互いに平行となるように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記焼結が放電プラズマ焼結であり、前記スペーサは、その厚さ方向が放電プラズマ焼結における電流経路の方向に対して略直交となるように配置されている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記焼結工程では、前記スペーサとして、前記スペーサの表面における少なくとも前記粉末と接触する部分に窒化ホウ素を主成分とする離型材料が塗布されているものを用いる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項6】
前記磁気冷凍材料が、NaZn13結晶構造を主相とするLaFe13系材料である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項7】
前記スペーサは、SUS304、炭素鋼、LaFe13系磁気冷凍材料のうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【請求項8】
前記焼結工程は、前記スペーサをその一部が前記粉末中から外部に突出するように配置した状態で前記粉末を焼結し、前記一部が突出した焼結体を形成する工程であり、
前記除去工程は、前記焼結体から突出した前記一部を引き抜き手段に固定して引き抜くことで前記スペーサを除去する工程である
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のマイクロチャネル熱交換器の製造方法。
【図8】
【図9】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図9】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−57434(P2013−57434A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195260(P2011−195260)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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