説明

マイクロバブルの気泡電位制御装置および気泡電位制御方法

【課題】水環境蘇生、環境改善に有効なマイクロバブルを効果的に発生させることを可能としたマイクロバブルの気泡電位制御装置および気泡電位制御方法を提供する。
【解決手段】筒状である本体パイプと、本体パイプの一端から他端側に向けて該本体パイプの内側に液体を吐出させる液体供給管と、本体パイプの内側に気体を供給する気体供給管と、本体パイプの壁に設けられた複数のスリットと、本体パイプの筒状である内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、を備え、複数のスリットは、少なくとも1つの該スリットにおいて本体パイプの筒状の軸との成す角が他のスリットとは異なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルの気泡電位制御装置および気泡電位制御方法に関するものであり、さらに詳細には、パイプ内にプレート(衝突壁)及び空気供給管を設置し、断面積変化で流れる水の流速変化を起こしてパイプ内を負圧にすることで気体の自吸を行い、さらにパイプ内に設置したプレートとパイプに形成した開口(例えばスリット等)のみを使用して、発生する泡のマイクロ化を行うとともに高電位のマイクロバブルを発生させることができるマイクロバブルの気泡電位制御装置および気泡電位制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブルとは直径が数十μmの泡であり、その特徴として
(1)気体同士の合体や吸収が起こらず、単一気体のままで水中に長時間滞留し、比較的寿命が長い、
(2)浮上速度が極めて遅いことから、水中での分散性、拡散性に優れている、
(3)マイクロバブルの電位を高くすることにより、その分散性および安定性を向上させることができる、
等を挙げることができる。
この特徴を活かすことで、閉鎖水域における水質浄化・アオコ発生の抑制等、水環境蘇生にその有効性が確認されている。現在、マイクロバブル発生装置は種々開発されているおり(特許文献1)、マイクロバブルの流体力学発生メカニズムは、ほぼ解明されてきているが、その帯電メカニズムは不明な点も多い。
【0003】
また、マイクロバブルの発生装置としてパイプ内にプレート(衝突壁)を設置し、流れる水の流速変化を起こしてパイプ内を負圧にすることで気体の自吸を行い、さらにパイプ内に設置したプレートとパイプに形成した開口(例えばスリット等)のみを使用して、発生する泡のマイクロ化を行うさらにスリット角度を30°、60°、90°とすることが提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、マイクロバブルについて、マイナス略30〜マイナス略70ミリボルト程度の気泡電位を有し、気泡径が小さくなるに従い、その気泡電位量の絶対値が逆比例して増加することを特徴とする略30μm以下の微細気泡が知られていた(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−126665号公報
【特許文献2】特開2005−334869号公報
【特許文献3】特開2002−143885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においてマイクロバブルの気泡電位を制御するという試みはされていなかった。具体的には、上記した特許文献1、2に記載のマイクロバブル発生装置では、該マイクロバブルの電位については開示されていなかった。また、特許文献3には、マイクロバブルの電位について記載があるものの、電位の高さはマイクロバブルの粒子径のみに依存するものとし、電位の高さを他の方法により高くすることについて開示するものではなかった。
【0007】
そこで本発明は、気泡電位を制御し、水環境蘇生、環境改善に有効なマイクロバブルを効果的に発生させることを可能としたマイクロバブルの気泡電位制御装置および気泡電位制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、鋭意検討の結果以下の知見に基づき発明を完成させた。すなわち、パイプに接続した気体供給管の差し位置を調整することで、パイプ内を流れる液体に流速変化を与え、パイプ内に負圧を作り、パイプに接続した気体供給管からパイプ内に気体を自吸させる。気体の混入した水をパイプ内でプレートに衝突させることで、せん断作用を利用して気体塊を粉砕し、パイプに形成した開口および/又はプレート後方の流路からマイクロバブルを発生させる。
【0009】
また、スリットを用いることで、スリット部ではスリットと元の流れの方向に流れが分かれることにより力が作用して気泡が微細化される。さらにスリットによる絞り効果、スリット通過時とスリットから放出された直後の流れの間の速度勾配によるせん断力によっても気泡が微細化される。またスリットに角度を付けることで効率的にマイクロバブルを発生させることができる。
【0010】
さらに、異なった傾斜角を有する複数のスリットを組み合わせたり、スリット開口部よりも上流側に配置した副流路を備えたり、又は本体パイプを配置する液体や本体パイプ内を流れる吐出液体のpHを調整する技術を適用する。これにより、マイクロバブルの気泡電位を変化させることができるとともに、これまでになく効率的に該マイクロバルブを発生させることが可能となる。以下、本発明について説明する。
【0011】
請求項1に記載の発明は、筒状である本体パイプと、本体パイプの一端から他端側に向けて該本体パイプの内側に液体を吐出させる液体供給管と、本体パイプの内側に気体を供給する気体供給管と、本体パイプの壁に設けられた複数のスリットと、本体パイプの筒状である内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、を備え、複数のスリットは、少なくとも1つの該スリットにおいて本体パイプの筒状の軸との成す角が他のスリットとは異なることを特徴とする気泡電位制御装置を提供することにより前記課題を解決する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、筒状である本体パイプと、本体パイプの一端から他端側に向けて該本体パイプの内側に液体を吐出させる液体供給管と、本体パイプの内側に気体を供給する気体供給管と、本体パイプの壁に設けられた複数のスリットと、本体パイプの筒状である内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、流路断面縮小部及び流路断面拡大部を有する流路である副流路と、を備える気泡電位制御装置を提供することにより前記課題を解決する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のマイクロバブル気泡電位制御装置の気体供給管、液体供給管、および衝突壁のうち少なくとも1つが本体パイプから着脱可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、内側に気体を流入可能に取り付けられた気体供給管と、内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、が備えられた筒状である本体パイプを、pH2〜pH11に調整した液体中に浸漬して配置し、本体パイプの内側に液体を吐出して供給するとともに、吐出して供給された液体の本体パイプ内の流れにより発生する負圧により、気体供給管から気体を流入させ、本体パイプ内で、吐出して供給された液体と気体とを混合し、混合された液体及び気体を衝突壁に衝突させてマイクロバブルを発生させることを特徴とする気泡電位制御方法を提供することにより前記課題を解決する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、内側に気体を流入可能に取り付けられた気体供給管と、内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、が備えられた筒状である本体パイプを液体中に配置し、本体パイプの内側にpH2〜pH11に調整した液体を吐出して供給するとともに、吐出して供給された液体の本体パイプ内の流れにより発生する負圧により、気体供給管から気体を流入させ、本体パイプ内で、吐出して供給された液体と気体とを混合し、混合された液体及び気体を衝突壁に衝突させて、気液界面での不安定現象によりマイクロバブルを発生させることを特徴とする気泡電位制御方法を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、極めて簡単な構造(スリットを用いる等の簡単な構造)で、容易にマイクロバブルを発生させる装置を提供できる。従って、閉鎖水域の水質浄化にとどまらず、個人家庭レベルでの使用が可能となり、生活排水の浄化、洗浄効果による洗剤量の低減、マイクロバブル崩壊時の圧力波を利用した生理活性による血流増加での入浴時の保温効果、および水上、水中輸送機器の流体抵抗低減にも利用できる。
【0017】
また装置の構造を圧力損失が少なくかつ小型化することができ(一般家庭の水道に直接取り付けても発生可能)、マイクロバブルの気泡電位制御装置の省エネルギー化を図ることが可能となる。さらに高電位のマイクロバブルをこれまでになく効率的に発生させることもでき、分散性、および安定性に優れたマイクロバブルを発生させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、パイプに接続した気体供給管の差し位置を調整することで、パイプ内を流れる液体に流速変化を与え、パイプ内に負圧を作り、パイプに接続した気体供給管からパイプ内に気体を自吸させる。気体の混入した水をパイプ内でプレートに衝突させることで、せん断作用を利用して気体塊を粉砕し、パイプに形成した開口及び/又はプレート後方の流路からマイクロバブルを発生させる。
【0019】
さらには、異なった傾斜角を有する複数のスリットを組み合わせたり、スリット開口部よりも上流側に配置した副流路を備えたり、又は本体パイプを配置する液体や本体パイプ内を流れる吐出液体のpHを調整するという技術を適用することにより、高電位のマイクロバブルをこれまでになく効率的に発生させることができるものである。
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。
【0021】
図1は第一実施形態に係るマイクロバブルの気泡電位制御装置1の全体構成図、図2はマイクロバブルの気泡電位制御装置1のうちマイクロバブル発生手段10に注目した拡大図である。マイクロバブルの気泡電位制御装置1は、気体供給管2、開閉コック3、ポンプ4、液体供給管5、流量調整バルブ6、及びマイクロバブル発生手段10を備えている。
【0022】
気体供給管2は、マイクロバブルとなる気体をマイクロバブル発生手段10に供給するための管であり、ここには気体の流入を許容、又は禁止するための開閉コック3が配置されている。ポンプ4は、液体を液体供給管5を介してマイクロバブル発生手段10に送るポンプである。液体供給管5にはマイクロバブル発生手段10へ流入する液体の流量を調整する流量調整バルブ6が備えられている。
【0023】
マイクロバブル発生手段10は、図2から特にわかるように、本体パイプ11、スリット12、スリット13、14、…17、及び衝突壁としてのプレート18、を備えている。本体パイプ11は、円筒状の部材である。本体パイプ11の円筒の軸方向両端部は開放されており、一方には上述した液体供給管5が接続され、本体パイプ11の内側に液体を供給することが可能となっている。また、本体パイプ11の円周状側面からは本体パイプ11の内側に気体供給管2が差し込まれている。従って、ここからマイクロバブルとなる気体が本体パイプ11内に供給される。
【0024】
スリット12は、本体パイプ11の壁11aを貫通するスリットで、本体パイプ11の円筒の軸方向(図2の紙面左右方向)を幅、円筒周方向を長手方向に有するスリットである。図3にスリットの配置を模式的に示した。スリット12は、本体パイプ11の円筒の軸(A)に対して角度θ1を有して設けられている。
【0025】
スリット13、14、…、17は、スリット12よりプレート18側に本体パイプ11の円筒の軸方向に並列され、本体パイプ11の壁11aを貫通するスリットである。スリット13、14、…、17もスリット12と同様、本体パイプ11の円筒の軸方向(図2の紙面左右方向)を幅、円筒半径方向を長手方向に有するスリットであるが、図3からわかるように、本体パイプ11の円筒の軸(A)に対して液体流入口から離隔する方に向けて上記θ1とは異なるθ2の角度を有して設けられている。
【0026】
ここで、スリット12、13、…、17においては、本体パイプ11入口流路の断面積を分母とし、全てのスリット12、13、…、17の断面積(スリット幅×スリット長さ)の和を分子とした断面積比Rが、1.3<R≦2.0であることが好ましい。
【0027】
また、θ1及びθ2の角度はθ1とθ2とが異なっていれば特に限定されるものではない。本実施形態では1つの例としてθ1=90度、θ2=60度である場合を示した。さらに、スリット位置も本実施形態のように本体パイプ11の下方に限定されることなく、上方であってもよい。
【0028】
本実施形態では、スリットが設けられる形態について説明したが、必ずしもこれに限定されることはなく、これに準じる開口が設けられればよい。例えばスリット状でなくても、複数の並列された貫通穴が上記のスリットに沿った形態で設けられてもよい。
【0029】
プレート18(衝突壁)は、図2に示すようにスリット17より下流側に配置される板状の部材である。プレート18は、本体パイプ11内の流路断面を適宜割合で閉塞することできるように形成されている。本実施形態では、プレート18は本体パイプ11内の当該流路を全て閉塞するように配置されている。
【0030】
かかる構成を備えるマイクロバブルの気泡電位制御装置1により高い電位を有するマイクロバブルを発生させることができる。
【0031】
次に、マイクロバブルの気泡電位制御装置1よるマイクロバブルの発生方法について説明する。図4は、マイクロバブルの気泡電位制御装置1によりマイクロバブルを発生させている場面を模式的に示した図である。
【0032】
図4からわかるように、液体貯留槽7内に、マイクロバブルの気泡電位制御装置1、及びポンプ4等を配置する。この状態でポンプ4を動作させて液体を汲み上げる。すると、液体供給管5を介して、マイクロバブルの気泡電位制御装置1内に液体が吐出される。吐出された吐出液体は本体パイプ11内に流れこみ、プレート18に衝突する。
【0033】
この時、この吐出液体の流速は変化し、この流速変化により、気体供給管2の先端部付近が負圧となり、この負圧によって気体が開閉コック(作動時には開いている)3を介して吸引されて本体パイプ11内の液体に混入する。気体が混入した液体はプレート18に衝突し、気体は微小化され、微小化した気体は本体パイプ11に形成したスリット12、13、14、…、17から本体パイプ11の外へ出る。
【0034】
スリット12の角度を他のスリットに対して変更することにより、上流側のスリットから比較的大きなサイズの気泡が本体パイプ11の外に逃げ、その割合が他のスリットに対して大きくなる。そして、下流側に導かれるパイプ内の二相流のボイド率が変化し、気液界面の不安定現象に影響を及ぼし、発生する電位に違いが生じると推測される。
【0035】
このように、マイクロバブルの気泡電位制御装置1によるマイクロバブルの発生方法により高い電位のマイクロバブルを発生させることが可能となる。
【0036】
図5は、変形例に係る本発明のマイクロバブルの気泡電位制御装置1’、1’’のうちマイクロバブル発生手段10’、10’’の構成を模式的に示したものである。マイクロバブルの気泡電位制御装置1’、1’’のマイクロバブル発生手段10’、10’’は、上記したマイクロバブル発生手段10とスリットの形態が異なる。それ以外の構成はマイクロバブルの気泡電位制御装置1と共通するのでここでは図示及び説明を省略する。
【0037】
図5(a)に示したマイクロバブル発生手段10’は、気体供給管2に近い側の2つのスリット12’、13’が、本体パイプ11’の円筒の軸方向(図5の紙面左右方向)を幅、円筒半径方向を長手方向に有するスリットである。そしてスリット12’、13’は、本体パイプ11の円筒の軸(A’)に対してθ1’の角度を有して設けられている。一方、残りのスリット14’、15’、16’、17’は、その端部が気体供給管2から離隔するように、円筒の軸(A’)に対してθ2’の角度を有して設けられている。ここで図5(a)に示した例は、θ1’が90度、θ2’が60度である。
【0038】
図5(b)に示したマイクロバブル発生手段10’’は、気体供給管2に近い側の1つのスリット12’’が、本体パイプ11’’の円筒の軸方向(図5の紙面左右方向)を幅、円筒半径方向を長手方向に有するスリットである。そしてその端部が気体供給管2に向けられるように、本体パイプ11の円筒の軸(A’’)に対してθ1’’の角度を有して設けられている。一方、残りのスリット13’’14’’、…、17’’は、その端部が気体供給管2から離隔するように、円筒の軸(A’’)に対してθ2’’の角度を有して設けられている。ここで図5(b)に示した例は、θ1’’が120度、θ2’’が60度である。
【0039】
次に第二実施形態に係る本発明のマイクロバブルの気泡電位制御装置について説明する。図6には、第二実施形態のマクロバブルの気泡電位制御装置のうちマイクロバブル発生手段30を示した。他の構成については、上記した第一実施形態に係るマイクロバブルの気泡電位制御装置1と共通なので、ここでは図示及び説明を省略する。
【0040】
第二実施形態のマイクロバブルの気泡電位制御装置に備えられるマイクロバブル発生手段30は、本体パイプ31、スリット12、スリット13、14、…17、及び衝突壁としてのプレート18、を備えている。本体パイプ31は、円筒状の部材である。本体パイプ31の円筒の軸方向両端部は開放されており、一方には液体供給管5(図1参照)が接続され、本体パイプ31の内側に液体を供給することが可能となっている。また、本体パイプ31の円周状側面からは本体パイプ31の内側に気体供給管2が差し込まれている。従って、ここからマイクロバブルとなる気体が本体パイプ31内に供給される。
【0041】
さらに本体パイプ31には、気体供給管2が差し込まれた位置と、スリット12との間に縮拡管部32が設けられている。当該縮拡管部32では、本体パイプ31の液体供給管(図1参照)側端部からスリット12側に向けて、傾斜して流路断面が縮小し、さらに傾斜して流路断面が拡大する。これにより当該縮管部分において本体パイプ31内を流れる気液二相流のボイド率(流体の単位断面積あたりに含まれる気泡の面積割合)を変化させる(大きくする)ことができ、さらに効果的にマイクロバブルの電位を高くすることが可能となる。
【0042】
縮拡管部32における図6にφで示した傾斜の程度は、特に限定されるものではないが、大きくしすぎると流体の流れが阻害される影響の方が大きくなる虞があることから、0度より大きく10度以下であることが好ましく、3度〜7度がさらに好ましい。
【0043】
その他、スリット12、スリット13、14、…、17、及びプレート18については、上記したマイクロバブル発生手段10と共通するので、ここでは説明を省略する。
【0044】
ここでは、第二実施形態として縮拡管部32、スリット12、及びスリット13、14、…がいずれも具備された例を説明したが、これに限定されることなく、縮拡管部と少なくとも1つのスリットが備えられていればよい。すなわち、縮拡管部が備えられていれば、スリットの形状や角度に限定されることなく上記効果を奏するものとなる。
【0045】
このように、第二実施形態に係るマイクロバブルの気泡電位制御装置によっても、高い電位のマイクロバブルを発生させることが可能となる。
【0046】
次に第三実施形態に係る本発明のマイクロバブル発生方法について説明する。図7には、本方法に供されるマイクロバブルの気泡電位制御装置41及び該装置によりマイクロバブルを発生させている場面を模式的に示した。マイクロバブルの気泡電位制御装置41では、ここに備えられるマイクロバブル発生手段50において、スリット52、53、…、57の全てのスリットは本体パイプ51の円筒の軸に対して同じ角度を有している。本実施形態では、スリット52、53、…、57の端部が気体供給管2から離隔するように円筒の軸に対して60度傾斜している。
【0047】
かかるマイクロバブルの気泡電位制御装置41によりマイクロバブルを発生させる。すなわち、液体貯留槽47の液体内に、マイクロバブル発生手段50、及びポンプ4等を浸漬させる。この状態でポンプ4を動作させて液体を汲み上げる。すると、液体供給管5を介して、マイクロバブル発生手段50内に液体が吐出される。吐出された吐出液体は本体パイプ11内に流れこみ、プレート58に衝突する。
【0048】
ここで、液体貯留槽47の中に満たされ、マイクロバブル発生手段50内に吐出される液体は、pH2〜pH11に調整されている。これにより生成されるマイクロバブルの電位を高くすることができる。
【0049】
本体パイプ51内で、吐出液体の流速は変化し、この流速変化により、気体供給管2の先端部付近が負圧となり、この負圧によって気体が開閉コック3(作動時には開いている)を介して吸引されて本体パイプ51内の液体内に混入する。気体が混入した液体はプレート58に衝突し、気体は微小化され、微小化した気体はスリット52、53、…、57から外に出る。
【0050】
このようにpHを所定の値とすることにより、高い電位のマイクロバブルを発生させることができる。これはpHを変化させることで、OHイオンの割合が変化するからである。ここでOHは疎水性イオンのため、水ではない気泡表面に集まるので、その結果気泡電位が変化する。
【0051】
次に変形例に係る本発明のマイクロバブル発生方法について説明する。図8には、本方法に供されるマイクロバブルの気泡電位制御装置41及び該装置によりマイクロバブルを発生させている場面を模式的に示した。マイクロバブルの気泡電位制御装置41は上記第三実施形態に係る本発明のマイクロバブル発生方法と同じである。
【0052】
本変形例では、マイクロバブル発生手段50は、pHの調節されていない液体の入った液体貯留槽47’の液体に浸漬され、ポンプ4が液体貯留槽48’に入れられたpHを調整した液体の中に浸漬されている。従って、マイクロバブル発生手段50にはpHの調節された液体が供給される。
【0053】
このように、マイクロバブル発生手段50をpHの調節された液体に浸漬しなくても、該マイクロバブル発生手段50内にpHの調節された液体が供給されれば本発明のマイクロバブル発生方法とすることができる。
【実施例】
【0054】
次に実施例によりさらに詳しく説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
実施例1では、図1に示したマイクロバブルの気泡電位制御装置を用いてマイクロバブルを発生させ、その電位を測定した。比較例として、マイクロバブル発生手段に備えられるスリットが全て本体パイプの軸に対して60度であるものにより発生させたマイクロバブルの電位を測定した。詳しくは次の通りである。
【0056】
マイクロバブル発生手段の本体パイプは、内径6mm、厚さ1mm、長さ150mmのアクリル管を用いた。気体供給管は、内径3mmのアルミニウム管で、液体流入側の端部から20mm離隔した位置に配置した。また、プレートは任意の厚さのアルミニウムにより形成した。そして該プレートは、本体パイプの下流側端部から10mmの位置で流路断面を100%閉塞(全閉)するように配置した。
【0057】
スリットは、全部で10本設け、そのうちの気体供給管に最も近い1本を本体パイプの円筒軸に直角となるように設け、その他は60度になるように傾けて具備した。スリットの幅はすべて0.5mm、スリット間隔は10mmである。
【0058】
また、本体ポンプ内へ流入される液体は水であり、その流量は12〜50L/分とした。
【0059】
発生したマイクロバブルの電位は、ゼータ電位により評価し、該ゼータ電位は電気詠動法により測定した。また、マイクロバブルの直径はマイクロスコープによる直接測定をするとともに、光透過法により測定した。
【0060】
図9に結果のグラフを示した。図9はマイクロバブルの直径を横軸に、ゼータ電位を縦軸にとったグラフである。これをみてもわかるように、同じ直径であっても本発明の装置により形成されたマイクロバブルの方が高い電位を有している。
【0061】
(実施例2)
実施例2では、本体パイプ内へ吐出させる吐出液体のpHを変えてその時発生したマイクロバブルの電位を測定した。実施例2では、図7に示したマイクロバブル発生方法によりマイクロバブルを発生させた。ここでマイクロバブル発生手段のスリットは全て本体パイプの円筒軸から60度の傾きを有して設けられる。他の構成については実施例1と同じである。
【0062】
pHは、4.0、6.8、10.0の3種についておこなった。pHの調整は、水酸化ナトリウム、塩酸及び硫酸の混合比を変更することによりおこなった。
【0063】
結果を図10に示す。図10はマイクロバブルの直径を横軸に、ゼータ電位を縦軸にとったグラフである。これをみてもわかるように本発明の装置により、pHを変えることにより、形成されるマイクロバブルの電位を変えることが可能となる。
【0064】
これによれば、pHの値を大きくすることにより、マイクロバブルの電位を高くすることができる。
【0065】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、マイクロバブルの気泡電位制御装置および気泡電位制御方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第一実施形態にかかるマイクロバブルの気泡電位制御装置の全体構成図である。
【図2】マイクロバブル発生手段の拡大図である。
【図3】マイクロバブル発生手段を模式的に示した図である。
【図4】図1のマイクロバブルの気泡電位制御装置によりマイクロバブルを発生させる一場面を示す図である。
【図5】変形例にかかるマイクロバブルの気泡電位制御装置のうちマイクロバブル発生手段を模式的に示した図である
【図6】第二実施形態にかかるマイクロバブルの気泡電位制御装置のうちマイクロバブル発生手段を示した図である。
【図7】第三実施形態にかかるマイクロバブル発生方法を説明するための図である。
【図8】変形例であるマイクロバブル発生方法を説明するための図である。
【図9】実施例1の結果を示すグラフである。
【図10】実施例2の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1 マイクロバブルの気泡電位制御装置
2 気体供給管
3 開閉コック
4 ポンプ
5 液体供給管
6 流量調整バルブ
7 液体貯留槽
10 マイクロバブル発生手段
11 本体パイプ
12、13、14、15、16、17 スリット
18 プレート
32 縮拡管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状である本体パイプと、
前記本体パイプの一端から他端側に向けて該本体パイプの内側に液体を吐出させる液体供給管と、
前記本体パイプの内側に気体を供給する気体供給管と、
前記本体パイプの壁に設けられた複数のスリットと、
前記本体パイプの筒状である内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、を備え、
前記複数のスリットは、少なくとも1つの該スリットにおいて前記本体パイプの筒状の軸との成す角が他のスリットとは異なることを特徴とする気泡電位制御装置。
【請求項2】
筒状である本体パイプと、
前記本体パイプの一端から他端側に向けて該本体パイプの内側に液体を吐出させる液体供給管と、
前記本体パイプの内側に気体を供給する気体供給管と、
前記本体パイプの壁に設けられた複数のスリットと、
前記本体パイプの筒状である内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、
流路断面縮小部及び流路断面拡大部を有する流路である副流路と、
を備える気泡電位制御装置。
【請求項3】
前記気体供給管、前記液体供給管、および前記衝突壁のうち少なくとも1つが前記本体パイプから着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロバブル気泡電位制御装置。
【請求項4】
内側に気体を流入可能に取り付けられた気体供給管と、前記内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、が備えられた筒状である本体パイプを、pH2〜pH11に調整した液体中に浸漬して配置し、
前記本体パイプの前記内側に前記液体を吐出して供給するとともに、前記吐出して供給された液体の前記本体パイプ内の流れにより発生する負圧により、前記気体供給管から気体を流入させ、
前記本体パイプ内で、前記吐出して供給された液体と前記気体とを混合し、
前記混合された前記液体及び前記気体を前記衝突壁に衝突させてマイクロバブルを発生させることを特徴とする気泡電位制御方法。
【請求項5】
内側に気体を流入可能に取り付けられた気体供給管と、前記内側空間の少なくとも一部を閉塞する面を有する衝突壁と、が備えられた筒状である本体パイプを液体中に配置し、
前記本体パイプの前記内側にpH2〜pH11に調整した液体を吐出して供給するとともに、前記吐出して供給された液体の前記本体パイプ内の流れにより発生する負圧により、前記気体供給管から気体を流入させ、
前記本体パイプ内で、前記吐出して供給された液体と前記気体とを混合し、
前記混合された前記液体及び前記気体を前記衝突壁に衝突させて気液界面での不安定現象によりマイクロバブルを発生させることを特徴とする気泡電位制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−189912(P2009−189912A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31062(P2008−31062)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月24日 The 1st International Colloquium on Dynamics Physics and Chemistry of Bubbles and Gas−Liquid Boundaries (気泡と気液界面の力学・物理・化学に関する第1回国際コロッキウム) 組織委員会発行の「The 1st International Colloquium on Dynamics Physics and Chemistry of Bubbles and Gas−Liquid Boundaries」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年11月16日 社団法人 日本機械学会発行の「日本機械学会 第85期 液体工学部門講演会 CD−ROM版 講演論文集」に発表
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】