説明

マイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液およびとその分散液の製造方法

本発明は、室温で固体のポリマーを作成するのに用いるポリマー前駆体分散液に関し、さらに、付加モノマー、縮合モノマー、プレポリマーまたはポリマー変性剤を含んでなるポリマー前駆体と、体積平均長さが0.01〜100マイクロメートルの0.01〜50重量パーセントのマイクロパルプとを含んでなる当該分散液の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロパルプをポリマー前駆体に組み込むプロセス、得られた分散液、その分散液から作成されたポリマーおよびそのポリマーから作成された物品に関する。
【背景従来】
【0002】
パルプは、その繊維状の性質のため、他の材料に均一に分散するのが難しい。多くのポリマーは、パルプを添加することにより増強でき、僅か少量のパルプの添加でもプラスの効果をもたらし得る。
【0003】
2002年11月15日出願の特許文献1は、液体成分中にマイクロパルプを製造するプロセスに関するものであり、液体成分が水性液体、1種類もしくはそれ以上の液体ポリマー、1種類もしくはそれ以上の溶剤またはこれらの組み合わせとすることができることが開示されている。
【0004】
2002年11月15日出願の特許文献2は、水性液体、1種類もしくはそれ以上の液体ポリマー、1種類もしくはそれ以上の溶剤またはこれらの組み合わせよりなる群から選択される液体成分中でのマイクロパルプの分散液から製造されたコーティング組成物に関するものである。
【0005】
2003年3月28日出願の特許文献3は、樹脂と溶剤を含んでなるネイルポリッシュ樹脂系で製造されたマイクロパルプ含有液体ネイルポリッシュ組成物に関するものである。
【0006】
2003年4月11日出願の特許文献4は、アセトアセチル化ポリビニルポリマーを含有するコーティング組成物および成形品に関し、マイクロパルプをアセトアセチル化ポリビニルポリマーを含んでなる組成物と混合し、ポリマーを溶融し、そしてマイクロパルプとポリマーの混合物から成形形状を製造することを含んでなる成形品の製造方法が開示されている。
【0007】
これらの参考文献は全て、溶剤中の液体ポリマーまたはポリマー溶液中のマイクロパルプの形成および組み込みに関るものである。しかしながら、多くのポリマーは、粘度が高いか、室温で固体であるかのいずれかのせいで、使用可能な液体形態で利用可能ではなく、これらのポリマーうちいくつかは、熱的またはその他手段を介して液化するのに向いていない。
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第10/295,455号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/295,341号明細書
【特許文献3】米国特許出願第10/401,347号明細書
【特許文献4】米国特許出願第60/462,236号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、付加モノマー、縮合モノマー、プレポリマーまたはポリマー変性剤を含んでなるポリマー前駆体と、体積平均長さが0.01〜100マイクロメートルであり、0.01〜50重量パーセントの分散液を含んでなるマイクロパルプとを含んでなる室温で固体のポリマーを作成するのに用いるポリマー前駆体分散液に関する。
【0010】
本発明は、さらに、有機繊維、ポリマー前駆体および固体成分を接触させ、有機繊維、ポリマー前駆体および固体成分を攪拌して、有機繊維を体積平均長さが0.01〜100マイクロメートルであり、ポリマー前駆体に分散されたマイクロパルプへと変形し、そして場合により固体成分を除去することを含んでなる室温で固体のポリマーを作成するためにマイクロパルプをポリマー前駆体に組み込む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、マイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液およびポリマーを製造するためのポリマー前駆体にマイクロパルプを組み込む方法に関する。このポリマー前駆体分散液は、ポリマーと反応、重合またはその他組み合わせて、マイクロパルプ分散ポリマーを作成することができる。
【0012】
ポリマー前駆体分散液
本発明のポリマー前駆体分散液は、室温で固体のポリマーを作成するのに用いられる。この分散液は、付加モノマー、縮合モノマー、プレポリマーまたはポリマー変性剤を含んでなるポリマー前駆体を含んでなる。この分散液は体積平均長さが0.01〜100マイクロメートルのマイクロパルプをさらに含んでなり、マイクロパルプは0.01〜50重量パーセントの分散液を含んでなる。
【0013】
マイクロパルプ
本明細書において、マイクロパルプは、体積平均長さが0.01〜100マイクロメートル、好ましくは0.1〜50マイクロメートルの処理済み有機繊維である。かかるマイクロパルプは、通常、平均表面積が1グラムあたり25〜500平方メートルである。本発明のマイクロパルプは、2つもしくはそれ以上のウェブ、樹枝状、分岐、マッシュルームまたはフィブリル構造のインターメッシュ組み合わせを含む繊維状有機材料である。
【0014】
マイクロパルプは、液体成分と固体成分を含んでなる媒体と有機繊維を接触させ、その組み合わせを攪拌して、有機繊維のサイズを減じ、変性させることにより製造される。出発材料として用いる有機繊維は、パルプ、短繊維、フィブリッドまたはこれらの形態の混合物とすることができる。この処理により、マイクロパルプは液体成分中に均一に分散される。
【0015】
パルプは、回転ディスク間で短繊維を精製して、繊維を小片へと切断および剪断することにより製造することができる。パルプ粒子は、各パルプ粒子の本体から延在している多数のフィブリルまたは触毛を有している点で短繊維とは異なる。これらのフィブリルまたは触毛は、複合体材料を強化するための微小毛髪状固定部を提供し、パルプに非常に広い表面積を与える。特に有用な出発材料は、アラミドパルプであり、これは業界に周知で、アラミド繊維を精製して、短片のアラミド繊維材料をフィブリル化することにより作成することができる。かかるパルプの表面積は4.2〜15平方メートル/グラム、カヤーニ重量平均長さは0.6〜1.1ミリメートル(mm)と報告されている。かかるパルプは、マイクロパルプに比べて体積平均長さが長い。例えば、E.I.デュポンデネムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)より入手可能な型番1F543アラミドパルプのカヤーニ重量平均長さは0.6〜0.8mmであり、レーザーデフラクションを用いてこのパルプを測定すると、体積平均長さは500〜600マイクロメートル(0.5〜0.6mm)である。重合溶液から直接アラミドパルプを製造する変形方法は、米国特許第5,028,372号明細書に開示されている。
【0016】
短繊維(フロックと呼ばれることがある)は、繊維を大幅にフィブリル化することなく、連続フィラメントを短く切断することにより作成される。短繊維長さは、一般的に約0
.25mm〜12mmである。本発明に用いるのに好適な短繊維は、米国特許第5,474,842号明細書に開示された強化繊維である。
【0017】
フィブリッドは、平均最大長さまたは寸法が0.2〜1mmで、長さ対幅のアスペクト比が5:1〜10:1である顆粒でないフィルム状粒子である。厚さ寸法は、凡そ数分の一ミクロンである。アラミドフィブリッドは業界に周知であり、米国特許第5,209,877号明細書、同第5,026,456号明細書、同第3,018,091号明細書および同第2,999,788号明細書に開示されたプロセスに従って作成することができる。このプロセスには、一般的に、溶剤中の有機ポリマー溶液をポリマーの非溶剤であるが、溶剤とは混和する他の液体に添加し、激しく攪拌してフィブリッドを凝固させることが含まれる。凝固したフィブリッドを湿潤粉砕し、分離し、乾燥して、広い表面積を有するフィブリッドの塊とし、この塊を崩して微粒子フィブリッド生成物を得る。
【0018】
本発明に用いるマイクロパルプは、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリフルオロカーボン、フェノール、ポリベンズイミダゾール、ポリフェニレントリアゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキサジアゾール、ポリイミド、芳香族ポリアミドまたはこれらの混合物を含んでなる有機繊維から作成することができる。特に有用なポリマーは、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾールまたはこれらの混合物から製造される。本発明に好適なその他の有機繊維としては、セルロース、綿、絹および/または羊毛繊維のような天然繊維が挙げられる。
【0019】
マイクロパルプの出発材料として有用な市販の繊維としては、東洋紡(日本)(Toyobo,Japan)より提供されるザイロン(ZYLON)(登録商標)PBO−AS(ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、ザイロン(ZYLON)(登録商標)PBO−HM(ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、ダイニーマ(DYNEEMA)(登録商標)SK60およびSK71超高強度ポリエチレン繊維;エンジニアリングファイバーテクノロジー(コネチカット州シェルトン)(Engineering Fibers Technology, Shelton, Connecticut)より提供されるセラネーゼ(Celanese)ベクトラン(VECTRAN)(登録商標)HSパルプ、EFT 1063−178;ステアリングファイバー社(フロリダ州ペース)(Sterling Fibers,Inc.,Pace,Florida)より提供されるCFFフィブリル化アクリル繊維;およびダイセル化学工業株式会社、日本、堺市鉄砲町(Daicel Chemical Industries,Ltd.,1 Teppo−Cho,Sakai City Japan)より提供されるティアラアラミド(Tiara Aramid)KY−400Sパルプが挙げられる。
【0020】
好ましい有機繊維は、芳香族ポリアミドポリマーポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)および/またはポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)から製造された繊維を含んでなる。かかる繊維もアラミド繊維として知られている。本明細書で用いる「アラミド」とは、少なくとも85%のアミド(−CONH−)結合が2つの芳香環に直接付加しているポリアミドのことを意味する。アラミドと共に添加剤を用いることができる。実際、10重量パーセントまでのその他のポリマー材料をアラミドとブレンドしたり、アラミドのジアミンを10パーセントのその他のジアミンに置換した、またはアラミドの二酸塩化物を10パーセントのその他の二酸塩化物に置換したコポリマーを用いることができることが分かっている。かかる有機繊維は、米国特許第3,869,430号明細書、同第3,869,429号明細書、同第3,767,756号明細書および同第2,999,788号明細書に開示されている。好ましい芳香族ポリアミド有機繊維は、ケブラー(KEVLAR)(登録商標)ファイバー、ケブラー(KEVLAR)(登録商標)アラミドパル
プ、型番1F543、1.5mmケブラー(KEVLAR)(登録商標)アラミドフロック型番6F561およびノーメックス(NOMEX)(登録商標)アラミド繊維型番F25Wという登録商標で知られている。これらは全て、E.I.デュポンデネムール・アンド・カンパニー(デラウェア州、ウィルミントン)(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware)より入手可能である。
【0021】
ポリマー前駆体
本発明のポリマー前駆体は、付加モノマー、縮合モノマー、あるいはプレポリマーまたはポリマー変性剤とすることができる。
【0022】
付加モノマーは業界に周知であり、自身が重合してポリ(メチルメタクリレート)になる、またはエチルアクリレートのようなその他のモノマーと重合してアクリレートコポリマーになるメチルメタクリレートが挙げられるがこれに限られるものではない。本発明に有用なその他の付加モノマーとしては、スチレン、アクリロニトリルおよび塩化ビニルのようなビニルモノマーが挙げられる。
【0023】
縮合モノマーも業界に周知であり、本発明においては、モノマーまたはポリマーを形成するために縮合反応で用いる1つもしくはそれ以上の反応物質、または反応物質により形成される実際のモノマーのうちの1つとすることができる。有用な縮合モノマーとしては、ジメチルテレフタレートと反応させてポリマーポリエチレンテレフタレートを形成できるエチレングリコールが挙げられるがこれに限られるものではない。本発明に有用なその他の縮合モノマーとしては、ジエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールまたはシクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0024】
プレポリマーは、低分子量で、高分子量へとさらに重合できる部分重合ポリマーである。部分重合とは、反応するモノマーが完全なポリマー鎖を形成する正規化学量論比で存在しておらず、高分子量とならないようにすることを意味している。モノマーのかかる正規化学量論比とは、多くのポリマーについて通常1:1である。かかるプレポリマーは低分子量であるため、僅かの繰り返し単位のみ、通常は、約20個未満の繰り返し単位、一般的には約10個の繰り返し単位を有する非常に短い鎖しか形成できない。プレポリマーとしてはポリアミド酸が挙げられるがこれに限られるものではない。マイクロパルプおよびポリアミド酸の分散液であるポリマー前駆体を作成した後、追加のモノマーを添加することにより、プレポリマーの化学量論比をまず調整することにより、ポリマーを分散液から作成する。プレポリマーを熱によりイミド化してポリマーを作成し、ポリイミドポリマーを作成する。その他の有用なプレポリマーとしては、ポリエステルオリゴマーのような後に重合できる低分子量オリゴマーが挙げられる。本発明において、プレポリマーは、さらに反応させて有用なポリマーを形成する乳化ポリマー分散液とすることもできる。例えば、ある酸コポリマーを金属塩と反応させて頑強なポリマー組成物を形成することができる。マイクロパルプは、まずマイクロパルプを酸コポリマーのエマルジョン中で生成することによりこれらのポリマーに組み込むことができる。得られたポリマー前駆体分散液を用いてポリマーを形成することができる。好適な酸コポリマーとしては、極性コモノマーメタクリル酸を含有するエチレンコポリマーが挙げられるがこれに限られるものではない。
【0025】
ポリマー前駆体はまたポリマー変性剤とすることもできる。本発明において、ポリマー変性剤は最終ポリマーと相容性があり実質的にそこに残る材料である。ポリマー変性剤とは、最終ポリマーまたはポリマー自身にとって溶剤となるべきことを意味するものではなく、何らかの方法で最終ポリマーを変性するものである。例えば、ポリマー変性剤は、ポリマーの可塑剤やポリマーの硬化剤のような添加剤とすることができる。ポリマー変性剤のその他の種類は、例えば、特性向上剤、処理助剤または表面潤滑剤として機能すること
ができる。ポリマー変性剤としては、混合および中和しながら、エチレン−コポリマー系酸コポリマーまたはイオノマーと組み合わせ可能なオレイン酸のような液体脂肪酸が例示されるがこれに限られるものではない。このポリマー変性オレイン酸はポリマーの弾力を向上させる。
【0026】
本発明に用いる好ましいポリマー前駆体の室温での粘度は10,000センチポイズ未満である。10,000センチポイズを超えると、有機繊維をマイクロパルプに適切に組み込み処理するには液体粘度が高くなりすぎる。
【0027】
固体成分
ポリマー前駆体および有機繊維と接触する固体成分の形状は重要ではなく、楕円体、対角、不規則形粒子またはこれらの組み合わせを挙げることができる。楕円体が好ましい。固体成分の最大平均サイズは、10マイクロメートル〜127,000マイクロメートルであり、マイクロパルプを生成するのに用いる攪拌装置の種類により異なる。例えば、アトライタを用いるときは、サイズは通常直径約0.6mm〜約25.4mmまで変化する。メディアミルを用いるときは、直径は通常約0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜2.0mmまで変化する。ボールミルを用いるときは、直径は通常約3.2mm(1/8インチ)〜76.2mm(3.0インチ)、好ましくは3.2mm(1/8インチ)〜9.5mm(3/8インチ)まで変化する。固体成分は、通常、液体成分と化学的に相容性があり、代表的な固体成分は、ガラス、アルミナ、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、セリウム安定化酸化ジルコニウム、溶融ジルコニアシリカ、鋼、ステンレス鋼、砂、炭化タングステン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、めのう、ムライト、フリント、ビトリファイドシリカ、硝酸ボラン、セラミクス、クロム鋼、炭素鋼、鋳ステンレス鋼、プラスチック樹脂またはこれらの組み合わせから製造される。固体成分に好適なプラスチック樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびポリアミドが挙げられる。固体成分に好適なガラスとしては、無鉛ソーダ石灰、ホウケイ酸塩およびブラックガラスが挙げられる。ケイ酸ジルコニウムは溶融または焼結することができる。
【0028】
最も有用な固体成分は炭素鋼、ステンレス鋼、炭化タングステンまたはセラミックでできたボールである。所望であれば、同じサイズで組成の異なる、またはサイズの異なるボールの混合物を用いることもできる。ボールの直径は約0.1ミリメートル〜76.2ミリメートル、好ましくは約0.4ミリメートル〜9.5ミリメートル、より好ましくは約0.7ミリメートル〜3.18ミリメートルである。固体成分は、ニュージャージー州クリフトンのグレンミル社(Glenn Mills,Inc.,Clifton,New
Jersey)、ニュージャージー州フェアフィールドのフォックスインダストリー社(Fox Industries,Inc.,Fairfield,New Jersey)およびオハイオ州アクロンのユニオンプロセス(Union Process,Akron,Ohio)をはじめとする様々な源より容易に入手可能である。
【0029】
ポリマーおよび物品
マイクロパルプをポリマー前駆体に組み込むと、ポリマー前駆体分散液は、従来の方法を用いて、反応、重合またはその他処理して、マイクロパルプ含有ポリマーへと変換することができる。本発明のポリマー前駆体分散液から作成されたマイクロパルプ分散ポリマーは、室温で固体である限りは、熱可塑性、熱硬化性またはその他の種類のポリマーとすることができる。ポリマーは、スパン、押出し、造形または成形する等従来のやり方で処理して様々な物品(繊維およびフィルムをはじめとする)や部品にすることができる。ポリマーへのマイクロパルプの組み込みプロセスによって、マイクロパルプが良好に分散されるのが確実になるため、造形品または部品は均一な機械的特性を有している。非常に小さなサイズのマイクロパルプだと、従来技術の大きなパルプの造形時に生じる栓塞の問題が実質的に排除される。
【0030】
マイクロパルプを組み込む方法
室温で固体のポリマーを作成するためのポリマー前駆体にマイクロパルプを組み込む方法は、接触工程、攪拌工程および場合により除去工程を含んでなる。接触工程は、有機繊維、ポリマー前駆体および固体成分を接触させることを含んでなる。攪拌工程は、有機繊維、ポリマー前駆体および固体成分を攪拌して、有機繊維を、ポリマー前駆体に分散された体積平均長さが0.01〜100マイクロメートルのマイクロパルプへと変形することを含んでなる。任意の除去工程は、固体成分を場合により除去することを含んでなる。
【0031】
接触工程
本発明において、マイクロパルプは、有機繊維を処理する液体成分であるポリマー前駆体中で製造される。かかるポリマー前駆体は、常温で液体の場合には、溶剤なしでそのまま用いることができる。しかしながら、ポリマー前駆体が固体または粘性が高い場合は、ポリマー前駆体は溶剤に溶解することができるのでそのようなやり方で用いる。ポリマー前駆体を溶剤なしで用いる場合には、マイクロパルプは、ポリマー前駆体とマイクロパルプの総重量に基づいて0.01〜10重量パーセントの量で存在させるのが好ましい。溶剤をポリマー前駆体に添加する場合には、存在させる有機繊維の好ましい量は、ポリマー前駆体、繊維および存在する溶剤の総重量に基づいて0.01〜10重量パーセントであるのが好ましい。しかしながら、マイクロパルプ形成後、分散液から溶剤の全てまたは一部を除去することにより濃縮ポリマー前駆体を製造することができる。このやり方で、濃度が50重量パーセントまたはそれ以上のマイクロパルプを有するポリマー前駆体を作成することができる。
【0032】
本発明のポリマー前駆体分散液を形成するプロセスにおいて、ポリマー前駆体を存在させて、有機繊維を処理して、体積平均長さが0.01マイクロメートル〜100マイクロメートル、平均表面積が1グラム当たり25〜500平方メートルのマイクロパルプとする。これは、有機繊維を液体ポリマー前駆体および固体成分と接触させ攪拌することにより行う。固体成分を存在させて有機繊維を攪拌すると、有機繊維のサイズが減じ変性される。有機繊維を、例えば、アトライタの1つもしくはそれ以上の攪拌アームにより攪拌状態に維持された固体成分と繰り返し接触させ、素練りする。たとえ、ある程度表面積が増え、フィブリル化が進んだとしても、繊維長さのみを大幅に減じる傾向のある従来の研削またはチョッピングプロセスとは異なり、本発明のプロセスにおけるサイズ減少は、長さ減少と共に繊維の直径も実質的に小さくなる有機繊維の両長手方向の分離の結果である。1倍、2倍もしくはそれ以上の平均繊維長さ減少がなされる。攪拌工程は、有機繊維がマイクロパルプへと変換されるのに十分な間にわたって続ける。さらに、有機繊維を含有する媒体を攪拌装置に繰り返し通過させることによる数回の通過において有機繊維がマイクロパルプへと増分しながら変換されるのが望ましい。
【0033】
攪拌工程
マイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液を、固体成分および液体ポリマー前駆体またはポリマー前駆体溶液を攪拌することにより作成するときは、マイクロパルプの表面を完全に濡らして、塊状集積や凝集を最小にして、分散液中に均一に分配する。
【0034】
有機繊維をマイクロパルプへと処理するのは、アトライタやミルをはじめとする1つもしくはそれ以上の種類の攪拌装置で行うことができ、装置はバッチで、または連続で操作することができる。バッチアトライタは業界で公知であり、オハイオ州アクロンのユニオンプロセス(Union Process,Inc.,Akron,Ohio)より提供されるアトライタ型番01、1−S、10−S、15−S、30−S、100−Sおよび200−Sのようなものが本発明のプロセスに好適である。かかる装置の他の供給業者はニュージャージー州クリフトンのグレンミル社(Glenn Mills,Inc.,C
lifton,New Jersey)である。メディアミルは、ペンシルバニア州リーディングのプレミアミルズ(Premier Mills,Reading Pennsylvania)より提供され、これらの好適なミルとしてはスーパーミル(Supermill)HMおよびEHPモデルが挙げられる。
【0035】
好ましい攪拌装置はアトライタであり、固体成分がアトライタの攪拌チャンバに注がれて、攪拌アームにより攪拌されて、その後、有機繊維と液体成分の予備混合物がチャンバへと注がれるのが好ましい。変形速度を加速するために、垂直メディアミルのチャンバの下部と上部近傍に一般に接続された外部通路を通して固体成分を攪拌工程中循環させる。固体成分を攪拌する速度は、変形される有機繊維の物理および化学構造、固体成分のサイズおよび種類、変形の期間および所望のマイクロパルプのサイズにより異なる。アトライタにおける固体成分の攪拌は、通常、攪拌アームの先端速度および攪拌アームの数により制御される。代表的なアトライタは4〜12個のアームを有しており、攪拌アームの先端速度は、通常、約150fpm〜約1200fpm(1分当たり約45メートル〜1分当たり約366メートル)である。好ましいアトライタは6つのアームを有しており、約200fpm〜約1000fpm(1分当たり約61メートル〜1分当たり約305メートル)、より好ましくは約300fpm〜約500fpm(1分当たり約91メートル〜1分当たり約152メートル)の先端速度で操作される。メディアミルを用いる場合には、攪拌アームの先端速度は、通常約1500fpm〜約3500fpm(1分当たり約457メートル〜1分当たり約1067メートル)、より好ましくは約2000fpm〜約3000fpm(1分当たり約610メートル〜1分当たり約914メートル)である。攪拌プロセス中に生成された過剰の熱は、通常、攪拌チャンバに冷却ジャケットを用いることにより除去される。
【0036】
攪拌チャンバで用いる固体成分の量はロードと呼ばれ、攪拌チャンバの実際の体積ではなくバルク体積により測定される。従って、100%ロードとは、実質的にエアポケットが固体成分中に存在するため、チャンバ体積の約60%のことを意味する。メディアミルまたはアトライタのロードは、フルロードに基づいて40%〜90%、好ましくは75%〜90%である。ボールミルのロードは、フルロードに基づいて30%〜60%である。実際、パーセントロードは、フルロードの重量を求めるために固体成分と共にチャンバをまず完全に充填することにより求める。フルロードのパーセントとして所望のロードを重量基準で測定する。
【0037】
任意の除去工程
有機繊維をマイクロパルプへ変形した後、通常は、固体成分を除去して、ポリマー前駆体中でマイクロパルプの分散液を形成する。一般的に、固体成分は攪拌チャンバに残る。しかしながら、必要であれば、従来のいくつかの分離プロセスには、固体成分はメッシュスクリーンに保持しつつ、マイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液を通過させるのに十分な小ささの開口部を有するメッシュスクリーンが含まれる。その後、分散液を直接用いることができる。一般的に、好ましいマイクロパルプの分散液は、ガラスに254ミクロン(10ミル)落として目視により観察したとき、無視できる程度のグリットやシードを含有しているものである。
【0038】
試験方法
ベックマン(Beckman)LS粒度分布測定装置を用いてレーザー回折により体積平均長さ測定を行った。一点窒素BET表面積測定をストローレイン(Strohlein)面積計を用いて行った。本明細書において、体積平均長さは、以下の式により計算される。
【0039】
【数1】

【実施例】
【0040】
以下の特定の実施例により、本発明を例証する。特に断らない限り、部およびパーセンテージはすべて重量基準である。本発明のプロセスに従って作成された例および試料は数値により示される。対照または比較例および試料は文字で示されている。
【0041】
実施例1
本実施例は、縮合モノマー中でマイクロパルプのポリマー前駆体分散液を製造し、縮合モノマーを重合してポリマーを作成する方法を例証するものである。本実施例において、縮合モノマーはエチレングリコールであり、最終ポリマーはポリエステルである。
【0042】
ポリマー前駆体分散液は、300グラムのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプ(E.I.デュポンデネムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)より入手可能なケブラー(KEVLAR)(登録商標)パルプマージ(Merge)1F543)をタンク中で12,908グラムのエチレングリコールに添加して、パルプ含量が2.27重量パーセントのエチレングリコール中パルプ分散液を形成することにより調製した。パルプは、分散液中に渦ができるほど十分な高速で操作されるコウレス刃を備えた高速分散機を用いて分散した。分散液を1.5リットルのプレミア(Permier)SMLスーパーミル(Supermill)を通して再循環させた。ミルを周囲ディスク速度1分当たり2400フィート(1分当たり732メートル)で操作し、再循環の8時間後、エチレングリコール中マイクロパルプの分散液の試料を集めた。この試料1のマイクロパルプ含量は2.27重量パーセントであった。エチレングリコール中のマイクロパルプの残りの分散液を追加のエチレングリコールで、マイクロパルプ含量が1.85重量パーセントになるまで希釈し、この分散液をさらに8時間再循環させてから集め、マイクロパルプ含量が1.85重量パーセントの試料2を形成した。これらの試料の体積平均繊維長さは、8および16時間の試料についてそれぞれ約5および3マイクロメートルであった。試料について表1にまとめてある。
【0043】
【表1】

【0044】
エチレングリコール中2.27重量パーセントのマイクロパルプを有するポリマー前駆体分散液試料1を用いて、マイクロパルプ分散ポリエステルポリマーを作成した。オートクレーブのクレーブ部分の上に攪拌器、真空ジェットおよびモノマー蒸留釜を備えた40ポンド(18キログラム)の水平オートクレーブでポリマーを作成した。モノマー蒸留釜
に40ポンド(18キログラム)のジメチルテレフタレート(DMT)、26ポンド(12キログラム)のエチレングリコールおよび8.8ポンド(4キログラム)の試料1を入れた。チタン酸テトラプロピルを交換および重合触媒の両方として用いた。釜の温度を240℃まで徐々に上げ、約6000グラムのメタノール留出液を回収した。溶融プレポリマーをモノマー釜からオートクレーブのクレーブ部分へ落とした。温度を約280℃まで上げることにより、プレポリマーを混合、攪拌、重合した。約2時間にわたって約1mmHg(133Pa)まで圧力を減じて、材料をこの条件で約4時間保持した。ポリマーを3穴鋳造板を通して押出し、冷却し、切断した。
【0045】
エチレングリコール中1.85重量パーセントのマイクロパルプを有する分散液2試料のポリマー前駆体を用いて、僅か1ポンド(0.45キログラム)の試料2をモノマー蒸留釜に添加した以外は上記の工程を繰り返すことによりマイクロパルプ分散ポリエステルポリマーを作成した。
【0046】
エチレングリコール中1.85重量パーセントのマイクロパルプを有する分散液2のポリマー前駆体を用いて、2.2ポンド(1キログラム)の試料2をモノマー蒸留釜に添加した以外は上記の工程を繰り返すことによりマイクロパルプ分散ポリエステルポリマーを作成した。
【0047】
実施例2
本実施例は、縮合モノマー中でマイクロパルプのポリマー前駆体分散液を製造し、縮合モノマーを重合してポリマーを作成する方法を例証するものである。本実施例において、縮合モノマーは1,4−ブタンジオールであり、最終ポリマーはコポリエーテルエステルである。
【0048】
まず、136.8グラムのポリ(パラフェニレンテレフタレート)パルプ(ケブラー(KEVLAR)(登録商標)パルプ、マージ(Merge)1F543)を8986グラムの1,4−ブタンジオールに加え、1.5リットルのプレミア(Permier)メディアミルに実施例1と同様にしてこれを通して、第1の混合物を作成することにより、1,4−ブタンジオール中僅か1.5重量パーセントのマイクロパルプが分散された一連の試料を作成した。混合タンクの容量による制限のため、第1の混合物はミルで処理し、さらに6140グラムの1,4−ブタンジオールと93.5グラムのパルプの第2の混合物を混合タンクに添加し、これを第1の混合物と組み合わせた。組み合わせた混合物を1回通過後に集め、マイクロパルプを含有するこの第1のポリマー前駆体分散液を試料3とした。ミルに2回通過させることにより、マイクロパルプを含有する第2のポリマー前駆体分散液、試料4を作成し、その後、さらに535gのブタンジオールを残りのスラリーに添加した。ミルに3回通過させた後試料を集めることにより、マイクロパルプを含有する第3のポリマー前駆体分散液、試料5を作成した。この試料を集めた後、残り2回通過の分散液を再循環させた。後の試料6〜9は、それぞれ、ミルを通した2、4、6および11時間の再循環で集めた。希釈および蒸発の可能性があるため、マイクロパルプの最終の重量パーセントをこれらの品目について測定した。結果を表2aに示す。
【0049】
【表2】

【0050】
コポリエーテルエステルポリマーを、表2aから選択した試料および表2bに挙げた成分から作成した。表2bには、マイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液なしでポリマーが作成された対照試料Aについての成分を示してある。全ポリマーについて、表2bの成分を蒸留およびステンレス鋼スターラーを装備した攪拌フラスコに入れた。フラスコの内径に合うように切断されたパドルは、フラスコ下部から約2mmに位置していた。真空を適用することによりフラスコ内の空気を窒素に入れ替え、窒素により再加圧した。フラスコを155℃のウッズ(Woods)金属浴に入れ、攪拌を開始した。浴温度を210℃まで上げ、40分間210℃に保持した。この間に、メタノールが反応混合物から留出した。次に、浴温度を25分にわたって250℃まで上げた。温度が250℃に達したら、圧力を200Paまで20分間にわたって徐々に減じた。重合塊を250℃および200Paでさらに30分間攪拌した。ポリマー塊はより粘性となり、スターラーのトルクがこのとき増大した。得られた粘性の溶融ポリマーをフラスコから擦り取って、冷やした。約200℃で1分間圧縮成形し、プレスで急冷することにより、物理試験用試料を調製した。得られたポリマーの特性を表2cに示す。意外なことに、極微量のマイクロパルプの添加により、ポリマーの機械的特性が大幅に増大した。さらに意外で予期しなかったのは、伸びおよび40%での伸びでの応力の両方が増大したことである。これらの特性は、通常は、他方を犠牲にして一方が増大するものである。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
実施例3
本実施例は、付加モノマー中でマイクロパルプのポリマー前駆体分散液を製造し、付加モノマーを重合してポリマーを作成する方法を例証するものである。本実施例において、付加モノマーはメチルメタクリレートであり、最終ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)である。
【0054】
前の実施例と同様に、1.5リットルのプレミア(Permier)ミルを用いてマイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液を作成した。混合タンクに7840グラムのメチルメタクリレートと160グラムのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプ(ケブラー(KEVLAR)(登録商標)パルプマージ(Merge)1F543)を入れた。実施例2と同様に、混合タンクの容量による制限のため、第1の混合物はミルで処理し、さらに4704グラムのメチルメタクリレートと96グラムのパルプの第2の混合物を混合タンクに添加し、これを第1の混合物と組み合わせた。組み合わせた混合物を1回通過後に集め、マイクロパルプを含有するこの第1のポリマー前駆体分散液を試料10とした。体積平均長さは100マイクロメートルであった。残りの分散液をミルに2回目の通過をさせ、2リットルの試料11を集めた。この分散液中のマイクロパルプの体積平均長さは39マイクロメートルであった。残りの分散液をミルを通して再循環させた。1時間後、さらに2リットルの試料12を集めた。この分散液中のマイクロパルプの体積平均長さは12マイクロメートルであった。さらに2時間、すなわち合計で3時間の再循環後、3リットルの他の試料13を集めた。この前駆体分散液中のマイクロパルプの体積平均長さは3.4ミクロンであった。試料について表3にまとめてある。
【0055】
【表5】

【0056】
これらのそれぞれマイクロパルプと付加モノマーを含有するポリマー前駆体分散液をそれぞれ、自身で重合して(付加反応)、マイクロパルプ分散ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーを作成した。
【0057】
実施例4
本実施例は、プレポリマー中でマイクロパルプのポリマー前駆体分散液を製造し、プレポリマーを重合してマイクロパルプ分散ポリマーを作成する方法を例証するものである。本実施例において、プレポリマーはエマルジョンであり、最終ポリマーはエチレンとメタクリル酸のコポリマーである。
【0058】
前の実施例と同様に、1.5リットルのプレミア(Permier)ミルにおいてマイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液を作成した。混合タンクに、3908グラムのアクアシール(AQUASEAL)(登録商標)1243とE.I.デュポンデネムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)よりケブラー(KEVLAR)(登録商標)パルプマージ(Merge)1F361(これは50%水であり、実際には60.4グラムのパルプが添加された)として入手可能な120.8グラムの湿潤ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプを入れた。アクアシール(AQUASEAL)(登録商標)は、エチレンとアクリル酸(19重量%)のコポリマー約25重量パーセントと、約10パーセントの水酸化アンモニウムを含有する脱塩水75パーセントの水性エマルジョンである。この混合物を、2,4および6時間再循環させたポリマー前駆体分散液の150mlの各試料14〜16と共にミルを再循環させた。9時間の再循環後残りを集めた。これは試料17であった。試料について表4にまとめてある。
【0059】
【表6】

【0060】
マイクロパルプ含有ポリマーは、ポリマー前駆体分散液を、亜鉛イオンで部分的に中和された(約60%)エチレンとメタクリル酸(19重量%)の溶融コポリマーを含有する押出し機に注入することによって各試料から作成した。水を押出し機から真空抽出し、マイクロパルプ分散コポリマーをペレットの形態で押出した。
【0061】
実施例5
本実施例は、ポリマー変性剤中でマイクロパルプのポリマー前駆体分散液を製造し、ポリマー変性剤をポリマーに組み込んで、マイクロパルプ分散ポリマーを作成する方法を例証するものである。本実施例において、ポリマー変性剤はオレイン酸であり、最終ポリマーはエチレンとメタクリル酸のコポリマーである。
【0062】
大きな15リットルのプレミア(Permier)ミルにおいて本実施例のマイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液を作成した。ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプ(ケブラー(Kevlar)(登録商標)パルプマージ1F543)を、オレイン酸中1重量パーセントのパルプの分散液を形成するのに十分な量のオレイン酸と混合した。188ポンド(85キログラム)の1%分散液をミルの混合タンクに入れた。この分散液を15リットルのプレミア(Premier)ミルに2lbs/分(0.9kg/分)の速度でミルに1回通過で供給し、他のタンクに集めた。合計で9回通過するまで1回通過を繰り返した。約5ガロンの試料を1、2、4、6および9回の通過後に集めた。試料18〜22についてそれぞれ表5に示してある。
【0063】
【表7】

【0064】
9回通過のポリマー前駆体分散液(試料22)を個々のポリマーを含有する押出し機に注入することにより、マイクロパルプ含有の2種類のポリマーを作成した。第1のポリマーは、エチレンとメタクリル酸のコポリマー(19重量%)のコポリマーの溶融イオノマーを含有しており、第2のポリマーは、エチレンとn−ブチルアクリレート(23.5重量%)と水酸化マグネシウムで部分中和されたメタクリル酸(9重量%)のコポリマーの溶融イオノマーを含有していた。両ポリマーについて、水を押出し機から真空抽出し、マイクロパルプ分散ポリマーをペレットの形態で押出した。
【0065】
エチレンとメタクリル酸(19重量%)のコポリマーの溶融イオノマーと、エチレンとn−ブチルアクリレート(23.5重量%)と水酸化マグネシウムで部分中和されたメタクリル酸(9重量%)のコポリマーの溶融イオノマーを含有する押出し機に9回通過のポリマー前駆体分散液(試料22)を注入することによりマイクロパルプ含有ポリマーを作成した。水を押出し機から真空抽出し、マイクロパルプ分散コポリマーをペレットの形態で押出した。
【0066】
実施例6
本実施例は、プレポリマー中でマイクロパルプのポリマー前駆体分散液を製造し、プレポリマーを重合してマイクロパルプ分散ポリマーを作成する方法を例証するものである。本実施例において、プレポリマーはポリアミド酸であり、最終ポリマーはポリイミドである。本実施例はまた、溶剤をポリマー前駆体に添加して、マイクロパルプがポリマー前駆体中に形成された後に除去する一つの方法を例証するものである。
【0067】
プレポリマーを調製するために、4,4’−オキシジアニリンをジメチルアセトアミド(DMAc)溶剤に溶媒和し、等モルより僅かに少ない量(95〜99%の化学量論)のピロメリト酸二無水物を攪拌しながら添加した。プレポリマーであるポリアミド酸が形成されるまで混合物を攪拌した。混合物の粘度は20〜100ポイズであり、プレポリマーが10〜30重量パーセントの量で存在していた。
【0068】
前の実施例と同様に、1.5リットルのプレミア(Permier)ミルを用いてマイクロパルプ含有ポリマー前駆体分散液を作成した。混合タンクに、DMAcとポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプ(ケブラー(KEVLAR)(登録商標)パルプマージ(Merge)1F543)を含有するポリアミド酸プレポリマー混合物を入れた。さらにDMAcを混合物に添加した。最終混合物は約10.1キログラムであり、約7.5重量パーセントのポリアミド酸プレポリマー、約1重量パーセントのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプ(ケブラー(KEVLAR)(登録商標)パルプマージ(Merge)1F543)、および約91.5重量パーセントのDMAcを含有していた。この混合物を、4、8、12、16および20時間の再循環後集めたマイクロパルプ含有プレポリマー分散液の1リットル試料に、表6に示す各試料23〜27と共に、20時間ミルを通して再循環させた。
【0069】
【表8】

【0070】
マイクロパルプ分散ポリイミドポリマーをマイクロパルプ含有プレポリマー分散液から作成する。プレポリマーをまず、分子量と粘度を増大させるために、ジアミン/二無水物のモル比が1:1に近づくのを目標として、少量のピロメリト二無水物の添加によりまず「仕上げ」た。目的の最終粘度は200〜5000ポイズである。液体フィルムをダイカストプロセスを用いて平滑表面に鋳造する。液体フィルムを鋳造表面にあるようにしながら、初期温度をオーブンにより60℃〜200℃まで5〜60分にわたって傾斜上昇させる。鋳造プロセスによって、DMAc溶剤が除去され、70〜90%固体のマイクロパルプとポリアミド酸プレポリマーを含有する自立形フィルムが作成される。
【0071】
プレポリマーフィルムを、200〜400℃の高温オーブンに5〜60分間入れてイミド化することにより、マイクロパルプ分散ポリイミドポリマーフィルムへ変形する。
【0072】
比較例A
本例では、マイクロパルプを高粘度液体ポリマーに組み込もうとする際の問題を例証する。周知のエポキシ樹脂エポン(EPON)828に添加された前の実施例での出発材料としてポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプを用い、エポキシ樹脂中でパルプを処理して、樹脂中に分散されたマイクロパルプを作成しようとした。エポン(EPON)828の室温での粘度は11,000センチポイズであるため、ミル中で処理するには粘性が強すぎ、この高粘性樹脂中にマイクロパルプを分散させることはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加モノマー、縮合モノマー、プレポリマーまたはポリマー変性剤を含んでなるポリマー前駆体と、
体積平均長さが0.01〜100マイクロメートルであり、0.01〜50重量パーセントの分散液を含んでなるマイクロパルプと
を含んでなる室温で固体のポリマーを作成するのに用いるポリマー前駆体分散液。
【請求項2】
前記ポリマー前駆体の室温での粘度が10,000センチポイズ未満である請求項1記載のポリマー前駆体分散液。
【請求項3】
前記ポリマー前駆体がさらに溶剤を含んでなる請求項1記載のポリマー前駆体分散液。
【請求項4】
マイクロパルプの重量パーセントが0.01〜10重量パーセントである請求項1記載のポリマー前駆体分散液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー前駆体分散液を用いて作成されたポリマー。
【請求項6】
請求項5記載のポリマーを含んでなる造形品。
【請求項7】
有機繊維、ポリマー前駆体および固体成分を接触させ、
前記有機繊維、前記ポリマー前駆体および前記固体成分を攪拌して、前記有機繊維を体積平均長さが0.01〜100マイクロメートルであり、前記ポリマー前駆体に分散されたマイクロパルプへと変形し、そして
場合により前記固体成分を除去する、
ことを含んでなる室温で固体のポリマーを作成するためにマイクロパルプをポリマー前駆体に組み込む方法。
【請求項8】
前記ポリマー前駆体が付加モノマー、縮合モノマー、プレポリマーまたはポリマー変性剤を含んでなる請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記付加モノマーがメチルメタクリレート、エチルアクリレート、スチレン、アクリロニトリルおよび塩化ビニルよりなる群から選択され、
前記縮合モノマーがエチレングリコール、ジメチルテレフタレート、ジエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールおよびシクロヘキサンジメタノールよりなる群から選択され、
前記プレポリマーがポリアミド酸、ポリエステルオリゴマーおよび乳化ポリマー分散液よりなる群から選択され、または
前記ポリマー変性剤がポリマー可塑剤、ポリマー添加剤、ポリマー硬化剤、ポリマー特性向上剤、ポリマー処理助剤およびポリマー表面潤滑剤からなる群より選択される
請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー前駆体の粘度が10,000センチポイズ未満である請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー前駆体がさらに溶剤を含んでなる請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー前駆体分散液から前記溶剤の一部を除去して、濃縮ポリマー前駆体分散液を形成する追加の工程をさらに含んでなる請求項11記載の方法。
【請求項13】
マイクロパルプが分散した前記ポリマー前駆体からポリマーを形成することをさらに含んでなる請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーから物品を形成することをさらに含んでなる請求項13記載の方法。

【公表番号】特表2007−521357(P2007−521357A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514290(P2006−514290)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/013926
【国際公開番号】WO2004/099474
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】