説明

マイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置

【課題】異物の付着による露光不良を防止できるスキャン露光装置を提供する。
【解決手段】スキャン露光装置1には、光源11と共にマスク12及び基板7に対して相対的に水平の第1方向5に移動されマスク12の正立等倍像を基板4に結像させるマイクロレンズアレイ14が設けられている。マスク12とマイクロレンズアレイ14との間には、マスク12への異物4の付着を防止するフィルム状又はシート状のペリクル13が設けられており、ローラ15a及びローラ15b間を、マスク12及びマイクロレンズアレイ14の双方に対して相対的に移動される。ペリクル13は、マイクロレンズアレイ14に同期させてスキャン方向5に移動されるか、又はマスク12に対してスキャン方向5に対して傾斜する方向に移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源及びマイクロレンズアレイを、マスク及び基板に対して、相対的に移動させることにより、光源から出射された露光光によりマスクを1方向にスキャンして、マスクに形成されたパターンをマイクロレンズアレイにより基板に転写する露光装置に関し、特に、マスクに異物が付着することによる露光不良を防止できるマイクロレンズアレイを使用した露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、マイクロレンズを2次元的に配置したマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置が提案されている(特許文献1)。このスキャン露光装置においては、複数個のマイクロレンズアレイを一方向に配列し、この配列方向に垂直の方向に基板及びマスクを、マイクロレンズアレイ及び露光光源に対して、相対的に移動させることにより、露光光がマスクをスキャンして、マスクの孔に形成された露光パターンを基板上に結像させる。
【0003】
図3は、従来のスキャン露光装置におけるマイクロレンズアレイを示す図である。図3に示すように、従来のスキャン露光装置においては、マイクロレンズアレイ2は、複数枚のマイクロレンズアレイチップ20が、遮光性の支持基板140に、スキャン方向5に垂直の方向に例えば4個ずつ2列に配置されており、スキャン方向5にみて、前段の4個のマイクロレンズアレイチップ20の相互間に、後段の4個のマイクロレンズアレイチップ20のうち3個が夫々配置されて、2列のマイクロレンズアレイチップ20が千鳥になるように配列されている。各マイクロレンズアレイチップ20は、複数個のマイクロレンズが2次元的に配置されたものであり、マスク12を透過した露光光は、各マイクロレンズの位置に対応して基板上に照射される。2列のマイクロレンズアレイチップ20は、スキャン方向からみて、複数個のマイクロレンズが相互に隣接するように配置されており、露光光がマスク12をスキャンすることにより、基板7におけるスキャン方向5に垂直の方向の露光領域の全域が露光される。
【0004】
図4に示すように、各マイクロレンズアレイチップ20は、例えば、4枚8レンズ構成であり、4枚の単位マイクロレンズアレイ20−1,20−2,20−3,20−4が積層された構造を有する。各単位マイクロレンズアレイ20−1乃至20−4は2個のレンズから構成されている。これにより、露光光は単位マイクロレンズアレイ20−2と単位マイクロレンズアレイ20−3との間で一旦収束し、更に単位マイクロレンズアレイ20−4の下方の基板上で結像する。即ち、単位マイクロレンズアレイ20−2と単位マイクロレンズアレイ20−3との間には、マスク12の倒立等倍像が結像し、基板7上には、マスク12の正立等倍像が結像する。よって、マスクに埃等の異物が付着していた場合、この異物の像がそのまま基板に投影されてしまい、露光不良が発生する。なお、図4において、単位マイクロレンズアレイ20−2と単位マイクロレンズアレイ20−3との間、及び単位マイクロレンズアレイ20−3と単位マイクロレンズアレイ20−4との間の符号2d,2cは、夫々、6角視野絞り、開口絞りを示し、開口絞り2cが各マイクロレンズのNA(開口数)を制限すると共に、6角視野絞り2dが結像位置に近いところで視野を6角に絞っている。
【0005】
このような異物の付着による露光不良を防止するために、マスクの表面に薄膜状の保護材(ペリクル)を装着し、ペリクル自身に異物を付着させることにより、マスクに直接異物が付着することを防止する技術が提案されている。例えば特許文献2には、ペリクルによってマスクを覆うことにより、埃等の異物の付着による露光不良の影響を低減することが開示されている。即ち、露光時においては、露光光はマスク面に焦点を結ぶように照射されるが、この際、異物は、マスクから高さ方向にずれて配置されたペリクルに付着し、露光光の焦点位置に存在しない。よって、異物の像が投影されても、その像は不鮮明となり、露光不良を抑制できる。
【0006】
特許文献3及び4においては、ペリクルの透過光又は異物による反射光を検出する光センサを設け、これにより、ペリクルに付着した異物の検出精度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−3829号公報
【特許文献2】特開平11−224843号公報
【特許文献3】特開2002−57097号公報
【特許文献4】特開2001−159613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のようなマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置においては、マスクとマイクロレンズアレイとの間の距離が例えば1mm程度と小さい。よって、このような露光装置に特許文献2乃至4のようなペリクルを設ける場合、ペリクルは、マスクの表面に近接して配置する必要がある。よって、ペリクルの表面の位置とマスクの表面に設定されている露光光の焦点位置とが極めて近くなる。従って、マイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置においては、ペリクルを設けて、異物が付着する位置を露光光の焦点位置からずらす効果が極めて小さいという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、異物の付着による露光不良を防止できるスキャン露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置は、露光光を出射する光源と、露光対象の基板に転写すべきパターンが形成され前記光源からの露光光を透過させるマスクと、前記光源と共に前記マスク及び前記基板に対して相対的に水平の第1方向に移動され前記マスクのパターンの正立等倍像を前記基板に結像させるマイクロレンズアレイと、前記マスクと前記マイクロレンズアレイとの間に配置され、異物を自身に付着させて前記マスクへの異物の付着を防止するペリクルと、前記マスクに対する前記マイクロレンズアレイの相対的第1方向への移動の際に、前記ペリクルを前記マスクに対して相対的に前記第1方向に移動させるペリクル移動装置と、を有し、前記ペリクル移動装置は、前記マイクロレンズアレイを前記マスクに対して相対的に移動させる1スキャンの間に、前記マイクロレンズアレイと前記ペリクルとの相対的速度差による相対的移動距離の差が、所定距離以下になるように、前記ペリクルを前記マイクロレンズアレイに同期させて移動させることを特徴とする。例えば前記マイクロレンズアレイは、複数個のマイクロレンズが2次元的に配置されて構成されており、前記所定距離は、前記第1方向に並ぶ前記マイクロレンズの間隔未満である。
【0011】
本発明に係る他のマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置は、露光光を出射する光源と、露光対象の基板に転写すべきパターンが形成され前記光源からの露光光を透過させるマスクと、前記光源と共に前記マスク及び前記基板に対して相対的に水平の第1方向に移動され前記マスクのパターンの正立等倍像を前記基板に結像させるマイクロレンズアレイと、前記マスクと前記マイクロレンズアレイとの間に配置され、異物を自身に付着させて前記マスクへの異物の付着を防止するペリクルと、前記マスクに対する前記マイクロレンズアレイの相対的第1方向への移動の際に、前記ペリクルを前記マスクに対して相対的に前記第1方向に対して傾斜する水平の第3方向に移動させるペリクル移動装置と、を有することを特徴とする。この場合に、例えば前記第3方向は、前記第1方向に直交する方向である。
【0012】
本発明においては、例えば前記ペリクルは、フィルム状又はシート状をなし、前記ペリクル移動装置は、供給ロールから巻き解いた前記ペリクルを前記マスクと前記マイクロレンズアレイとの間に供給し、巻き取り側のロールに巻き取るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、マスクとマイクロレンズアレイとの間にペリクルが配置され、ペリクル自身に異物を付着させることにより、マスクへの異物の付着を防止できる。また、マイクロレンズアレイが光源と共にマスク及び基板に対して相対的に第1方向に移動される際には、ペリクルは、ペリクル移動装置により、マスクに対して相対的に第1方向又は第1方向に対して傾斜する水平の第3方向に移動されるため、ペリクルに付着した異物がマスクの下方の特定の位置に存在することによる露光不良を防止できる。
【0014】
そして、ペリクルがマスクに対して相対的に第1方向に移動される場合には、ペリクル移動装置は、マイクロレンズアレイをマスクに対して相対的に移動させる1スキャンの間に、マイクロレンズアレイとペリクルとの相対的速度差による相対的移動距離の差が所定距離以下となるように、ペリクルをマイクロレンズアレイに同期させて移動させるため、露光光の光路の外側の領域に異物が付着した場合には、露光光の光路内に異物が侵入することによる露光不良は生じず、仮に、露光光の光路上に異物が付着して、この異物によりマイクロレンズアレイに露光光が入射されない領域が生じたとしても、マイクロレンズアレイのその他の領域にはマスクの透過光を確実に入射させることができる。よって、露光不良が発生しても、これを最小限に抑制することができる。同様に、ペリクルがマスクに対して相対的に第1方向に対して傾斜する第3方向に移動される場合においても、ペリクルに付着した異物によりマイクロレンズアレイに露光光が入射されない領域が生じたとしても、この領域は、ペリクルの移動に伴って第3方向に移動されるため、第1方向についてみれば、マイクロレンズアレイに露光光が入射されない領域が存在している期間を短くでき、露光不良が発生しても、これを最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は下面図である。
【図2】(a)は本発明の第2実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置を示す下面図、(b)はマイクロレンズアレイの各マイクロレンズの配置を一例として示す図である。
【図3】従来のマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置を示す斜視図である。
【図4】マイクロレンズアレイの各マイクロレンズの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置を示す図であり、図1(a)は側面図、図1(b)は下面図である。図1に示すように、本実施形態に係る露光装置1は、光源11から出射された露光光16の光路上に、マスク12、ペリクル13及びマイクロレンズアレイ14が配置されており、光源11から出射された露光光16がマスク12に形成されたパターンに透過された後、ペリクル13に透過され、マイクロレンズアレイ14の各マイクロレンズに透過されることにより、基板7上にマスク12のパターンの正立等倍像が結像されるように構成されている。そして、光源11及びマイクロレンズアレイ14を、図1に黒矢印で示すように、マスク12及び基板7に対して相対的に水平方向に1方向にスキャンすることにより、マスク12のパターンを露光光のスキャン方向に転写していく。光源11からの露光光16の照射領域(図1(b)における領域16a)は、マイクロレンズアレイ14の大きさより若干小さく、よって、マイクロレンズアレイ14における光を透過すべき領域、即ち、マイクロレンズが配置された領域に、マスクを透過した露光光の全てが入射される。
【0017】
本実施形態においては、マスク12は、マスクホルダ30によりその縁部を支持されており、基板7に露光すべきパターンが形成されている。なお、図1においては、マスク12のパターンは図示を省略している。
【0018】
マイクロレンズアレイ14は、マスク12のパターンが形成された領域の幅に対応するように、1又は複数枚のマイクロレンズアレイチップが遮光性の支持基板に支持されたものであり、例えば、図4に示す従来のマイクロレンズアレイチップ20と同様に、4枚8レンズ構成である。即ち、図4に示すように、マイクロレンズアレイチップ20は、4枚の単位マイクロレンズアレイ20−1,20−2,20−3,20−4が積層された構造を有し、各単位マイクロレンズアレイ20−1乃至20−4は2個のレンズから構成されている。これにより、露光光は単位マイクロレンズアレイ20−2と単位マイクロレンズアレイ20−3との間で一旦収束し、更に単位マイクロレンズアレイ20−4の下方の基板上で結像する。即ち、単位マイクロレンズアレイ20−2と単位マイクロレンズアレイ20−3との間には、マスク12の倒立等倍像が結像し、基板7上には、マスク12の正立等倍像が結像する。なお、図1においては、マイクロレンズアレイには、1枚のマイクロレンズアレイチップが配置されているが、例えば基板7の露光すべき面積が広い場合においては、図3に示す態様と同様に、マイクロレンズアレイに複数枚のマイクロレンズアレイチップが配置されていてもよい。
【0019】
本実施形態においても、例えば、従来のマイクロレンズアレイと同様に、マスク12の倒立等倍像が結像する位置には、6角視野絞り2dが配置されており、露光光を6角に成形している。また、単位マイクロレンズアレイ20−3と単位マイクロレンズアレイ20−4との間には、円形の開口絞り2cが配置されており、各マイクロレンズのNA(開口数)を制限している。
【0020】
ペリクル13は、例えば光透過性のフィルム又はシートであり、マスク12とマイクロレンズアレイ14との間に配置され、ペリクル13自身に異物を付着させてマスク12への埃等の異物の付着を防止している。即ち、ペリクル13は、少なくともマスク12の下面よりも広く設けられており、マスク12の透過光の全てが入射される。本実施形態のように、マスク12とマイクロレンズアレイ14との間の距離が1mm程度と小さい場合においても、薄膜状のペリクル13を使用することにより、露光時に、ペリクル13がマスク12及びマイクロレンズアレイ14等に干渉することはない。このフィルム状又はシート状のペリクル13は、図1に示すように、例えばロール15aから巻き解かれてマスク12とマイクロレンズアレイ14との間に供給され、巻き取り側のロール15bに巻き取られる。即ち、巻き取り側のロール15bは、例えば同軸的に設けられたモータ等により回転駆動され、供給側のロール15aから順次ペリクル13が巻き取られる。
【0021】
このロール15a,15bによるペリクル13の移動は、少なくともマスク12(及び基板7)に対するマイクロレンズ14(及び光源11)のスキャン時に行われる。本実施形態においては、ペリクル13は、マスク12に対する露光光16の相対的なスキャン方向5に移動される。よって、図1に示すように、ペリクル13の下面に例えば埃等の異物4が付着した場合には、この異物4もマスク12に対して相対的にスキャン方向5に移動される。マスク12に対する露光光16の相対的スキャンは、スキャン方向5に例えば100mm/秒の速度で進行する。この場合に、ペリクル13の移動速度は、例えば100mm/秒である。よって、ペリクル13は、マイクロレンズアレイ14に同期するように相対速度が0で移動され、マスク12に対しては、スキャン方向5に100mm/秒の相対速度で移動される。よって、本実施形態においては、図1(b)に示すように、ペリクル13に付着した異物4は、マイクロレンズアレイ14に対しては相対的に移動されない。よって、露光光の光路の外側の領域に異物4が付着した場合には、異物4が露光光の光路内に侵入することはなく、露光不良は生じない。しかし、仮に、露光光の光路上に異物4が付着して、ペリクル13に付着した異物4によりマイクロレンズアレイ14に露光光16が入射されない領域が生じたとしても、その他の領域にはマスク12の透過光を確実に入射させることができ、露光不良が発生しても、これを最小限に抑制することができる。また、異物4は、マスク12に対しては、相対的に移動されるため、マスク12の下方の特定の位置に異物4が存在することによる露光不良も防止できる。なお、本実施形態においては、マイクロレンズアレイ14に対するペリクル13の相対的移動速度が0である場合について説明するが、例えば基板7に所定のパターンを転写できる光量が得られる範囲において、ペリクル13は、マイクロレンズアレイ14に対して相対的に若干移動可能に構成されていてもよい。即ち、本実施形態においては、ペリクル13は、マイクロレンズアレイ14をマスク12に対して相対的に移動させる1スキャンの間に、マイクロレンズアレイ14とペリクル13との相対的速度差による相対的移動距離の差が、所定距離以下となるように移動される。例えば、マイクロレンズアレイ14は、複数個のマイクロレンズがスキャン方向5に直交する第2方向に配列されて、マイクロレンズ列が構成され、このマイクロレンズ列がスキャン方向5に所定ピッチで配置されて構成されている。即ち、マスク12に形成されたパターンの特定箇所についてみれば、露光光のスキャンに伴い、そのパターンを透過した露光光は、スキャン方向5に所定ピッチで並ぶ複数個のマイクロレンズを、順次透過して基板7上に集光される。よって、例えばスキャン方向5に150μmピッチで1000個のマイクロレンズが配置され、例えば990個のマイクロレンズの透過光によりパターンを転写する光量が得られる場合においては、異物4による遮光領域がスキャン方向5におけるマイクロレンズ10個分の間隔(1.5mm)未満である範囲において、異物4はマイクロレンズアレイ14に対して相対的に移動可能に構成できる。例えば、マイクロレンズアレイ14とペリクル13との相対的移動距離の差は、スキャン方向に並ぶマイクロレンズの間隔未満である。
【0022】
次に、本実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置の動作について説明する。先ず、露光装置の所定位置に露光対象の基板7が配置される。この基板7の搬送は、例えば基板7が載置されるステージを移動させることにより行われる。基板7が所定位置に配置されたら、光源11から露光光が出射される。光源11から出射された露光光16は、先ず、マスク12に照射され、マスク12に形成されたパターン形状に応じて透過される。そして、このマスク12の透過光が、ペリクル13へと向かう。この露光光16の出射の開始に合わせて、ロール15bの回転軸に取り付けられたモータ等の駆動要素を駆動させ、供給側のロール15aから薄膜状のペリクル13を巻き取り側のロール15bにより巻き取り始める。このペリクル13は、薄膜状をなしているため、移動される際に、マスク12及びマイクロレンズアレイ14等に干渉することなく移動される。
【0023】
マスク12の透過光は、ペリクル13を透過し、マイクロレンズアレイ14に入射され、各マイクロレンズにより、基板7上にマスク12の正立等倍像が結像し、基板7にマスク12のパターンが転写される。この状態で、光源11及びマイクロレンズアレイ14がマスク12及び基板7に対して相対的にスキャン方向5に移動されることにより、基板7に帯状の露光領域がスキャン方向5に形成されていく。
【0024】
ペリクル13に埃等の異物が付着していない場合においては、マスク12の透過光は、ペリクル13をそのまま透過して、マイクロレンズアレイ14へと向かう。しかし、図1に示すように、ペリクル13に異物4が付着している場合には、この異物4は、ペリクル13の移動に伴ってスキャン方向5に移動される。本実施形態においては、ペリクル13の移動速度は、マイクロレンズアレイ14に対して相対的に0である。よって、ペリクル13に異物4が付着する位置がマスク12を透過した露光光の光路の外側である場合には、異物4が露光光の光路内に侵入することはなく、露光不良は生じない。しかし、仮に、マスク12を透過した露光光の光路上に異物4が付着して、マイクロレンズアレイ14に露光光が入射されない領域が生じたとしても、この異物4は、ペリクル13の移動に伴い、マイクロレンズアレイ14と同期するように移動されるため、マイクロレンズアレイ14のその他の領域には、マスク12の透過光が確実に入射される。よって、異物の付着により発生する露光不良を最小限に抑制することができる。
【0025】
また、ペリクル13に付着した異物4は、マスク12に対しては、相対的にスキャン方向5に移動されるため、マスク12の透過光が特定の位置で遮光されて露光不良となることも防止できる。
【0026】
このように、マイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置においても、ペリクル13及びその移動装置(ロール15a,15b)を設けることにより、埃等の異物の付着による露光不良を確実に防止することができ、仮に、露光光の光路上に異物が付着した場合においても、発生する露光不良を最小限に抑制することができる。
【0027】
本実施形態においては、ペリクル13に付着した異物4がマイクロレンズアレイ14に同期するようにマスク12に対して相対的に移動されるように構成されていればよい。即ち、例えば、本実施形態においては、光源11及びマイクロレンズアレイ14の位置が一定であり、光源11及びマイクロレンズアレイ14をマスク12及び基板7に対して移動させる場合について説明したが、光源11及びマイクロレンズアレイ14の位置が固定され、マスク12及び基板7が光源11及びマイクロレンズアレイ14に対して移動されてもよく、光源11及びマイクロレンズアレイ14と、マスク12及び基板7の両群が、同時一体的に相対的に移動されてもよい。但し、ペリクル13は、露光光16(及びマイクロレンズアレイ14)に同期するように、マスク12に対して相対的にスキャン方向5に移動される。
【0028】
また、本実施形態においては、ペリクル13の移動を容易にするために、ペリクル13が薄膜状に形成され、ロール15a,15bにより移動される場合を説明したが、例えばペリクルは、板状の光透過性の部材により構成することができ、この板状のペリクルを露光光のスキャンと連動させて移動させ、ペリクルに付着した異物4をマイクロレンズアレイ14と同期させてスキャン方向5に移動させてもよい。
【0029】
なお、ペリクル14に付着した埃等については、露光終了後に取り除くか、又はペリクル14を交換することにより、マスク12のメンテナンス性が向上し、露光精度を高く維持できる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置について説明する。図2(a)は本発明の第2実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置を示す下面図、図2(b)はペリクルの移動速度を示す図である。第1実施形態においては、薄膜状のペリクル13をマイクロレンズアレイ14に同期させてスキャン方向5に移動させ、これにより、露光不良を防止する場合を説明した。本実施形態においては、ペリクル13の幅及び移動方向が第1実施形態と異なり、スキャン露光装置のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0031】
図2(a)に示すように、本実施形態においては、ペリクル13を移動させる供給側のロール15c及び巻き取り側のロール15dが、マスク12の側方に設けられており、薄膜状のペリクル13を露光光の相対的スキャン方向5に対して直交する水平方向6に移動させる。よって、本実施形態においては、ペリクル13に付着した埃等の異物4は、マスク12に対して、相対的にスキャン方向5に直交する方向6に移動され、マイクロレンズアレイ14に対しては、相対的にスキャン方向5の反対方向の速度成分とスキャン方向5に直交する速度成分を有し、異物4がマスク12及びマイクロレンズアレイ14の双方に対して相対的に移動される。
【0032】
本実施形態においても、ペリクル13の移動速度は、例えば基板7にパターンを転写する光量が得られる範囲で調節される。例えば露光光の光量の変動によるパターンの線幅変動が10%以内になるように、ペリクル13の移動速度が調節される。即ち、マスク12に対する露光光16の相対的スキャン速度が例えば100mm/秒である場合においては、ペリクル13の移動速度は、例えば12mm/秒である。また、マイクロレンズアレイ14は、例えば図2(b)に示すように、複数個のマイクロレンズが2次元的に配置されて構成されており、複数個のマイクロレンズがスキャン方向5に直交する方向(図2(b)における左右方向)に所定ピッチ(図2(b)においては150μmピッチ)で配列されてマイクロレンズ列が構成されており、このマイクロレンズアレイ列がスキャン方向5に所定の列ピッチ(図2(b)においては150μm)で複数列(図2(b)においては3列)配置されてマイクロレンズアレイ列群が構成されており、隣接するマイクロレンズアレイ列同士は、スキャン方向5に直交する方向に所定間隔(図2(b)においては50μm)偏倚している。よって、スキャン方向には、マイクロレンズが450μmピッチで配置されている。この場合においては、異物4の付着による露光不良がスキャン方向に並ぶ複数群のマイクロレンズアレイ群にわたって発生しないようにペリクルを移動させる。例えば、マスク12に対する露光光16の相対的スキャン速度が100mm/秒であるとき、スキャン方向5に並ぶマイクロレンズがマスク12の特定の1点をスキャンするためには、4.5ミリ秒の時間を要する。この間に、異物4がスキャン方向5におけるマイクロレンズアレイ列の列ピッチ以上の速度で移動されればよい。よって、ペリクルの移動速度は、(50×10−6μm)/(4.5×10−3秒)=11.1mm/秒以上とする。
【0033】
本実施形態においても、ペリクル13に付着した異物4によりマイクロレンズアレイ14に露光光が入射されない領域が生じたとしても、この異物4は、ペリクル13の移動に伴い、マイクロレンズアレイ14に対しては、スキャン方向5に対して傾斜する方向に移動され、異物により露光光が入射されない領域が、順次、移動される。よって、スキャン方向5についてみれば、マイクロレンズアレイ14に露光光が入射されない領域が存在している期間を短くでき、露光不良が発生しても、これを最小限に抑制することができる。また、本実施形態においては、異物4は、マイクロレンズアレイ14に対して相対的に移動されるため、露光光の光路上から速やかに移動される。更に、異物4は、マスク12に対しても相対的に移動されるため、マスク12の下方の特定の位置に異物4が存在することによる露光不良も防止できる。
【0034】
なお、本実施形態においては、ペリクル13に付着した異物4が露光光16及びマスク12に対して相対的に移動されて、露光光の照射領域から速やかに取り除かれるように構成されていればよく、光源11及びマイクロレンズアレイ14の位置が固定され、マスク12及び基板7が光源11及びマイクロレンズアレイ14に対して移動されてもよく、光源11及びマイクロレンズアレイ14と、マスク12及び基板7の両群が、同時一体的に相対的に移動されてもよい。但し、マスク12及び基板7がペリクル13に対してスキャン方向の速度成分を有する場合においては、マスク12の移動範囲に対応させて、ペリクル13の幅を広く設定する必要がある。
【0035】
また、本実施形態においても、ペリクルは、板状の光透過性の部材により構成することができ、この板状のペリクルを露光光のスキャンと連動させて移動させてもよい。
【0036】
更に、本実施形態においては、ペリクル13の移動方向が露光光のスキャン方向5に対して直交する方向6である場合を説明したが、ペリクル13が露光光のスキャン方向5に対して傾斜する水平方向に移動されることにより、本実施形態と同様の効果が得られる。この場合には、マスク12及びマイクロレンズアレイ14に対するペリクル13の移動速度を移動方向に応じて調節する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、マスクとマイクロレンズアレイとの距離が短い高精度のスキャン露光装置において、マスクに異物が付着することをペリクルにより防止でき、ペリクルに異物が付着した場合においても、この異物は、マイクロレンズアレイに同期するようにスキャン方向に移動されるか、又は、マイクロレンズアレイに対してスキャン方向に傾斜する方向に相対的に移動される。よって、異物の付着による露光不良を防止でき、マスクの下方の特定の位置に異物が存在することによる共通欠陥等の露光不良も防止でき、基板等の露光対象物を高精度で露光できる。
【符号の説明】
【0038】
1:露光装置、11:光源、12:マスク、13:ペリクル、14:マイクロレンズアレイ、15:ロール、16:露光光、2:マイクロレンズアレイ、20:マイクロレンズアレイチップ、30:マスクホルダ、4:異物、5:スキャン方向、6:(スキャン方向に直交する)方向、7:基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光を出射する光源と、露光対象の基板に転写すべきパターンが形成され前記光源からの露光光を透過させるマスクと、前記光源と共に前記マスク及び前記基板に対して相対的に水平の第1方向に移動され前記マスクのパターンの正立等倍像を前記基板に結像させるマイクロレンズアレイと、前記マスクと前記マイクロレンズアレイとの間に配置され、異物を自身に付着させて前記マスクへの異物の付着を防止するペリクルと、前記マスクに対する前記マイクロレンズアレイの相対的第1方向への移動の際に、前記ペリクルを前記マスクに対して相対的に前記第1方向に移動させるペリクル移動装置と、を有し、
前記ペリクル移動装置は、前記マイクロレンズアレイを前記マスクに対して相対的に移動させる1スキャンの間に、前記マイクロレンズアレイと前記ペリクルとの相対的速度差による相対的移動距離の差が、所定距離以下になるように、前記ペリクルを前記マイクロレンズアレイに同期させて移動させることを特徴とするマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置。
【請求項2】
前記マイクロレンズアレイは、複数個のマイクロレンズが2次元的に配置されて構成されており、
前記所定距離は、前記第1方向に並ぶ前記マイクロレンズの間隔未満であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置。
【請求項3】
露光光を出射する光源と、露光対象の基板に転写すべきパターンが形成され前記光源からの露光光を透過させるマスクと、前記光源と共に前記マスク及び前記基板に対して相対的に水平の第1方向に移動され前記マスクのパターンの正立等倍像を前記基板に結像させるマイクロレンズアレイと、前記マスクと前記マイクロレンズアレイとの間に配置され、異物を自身に付着させて前記マスクへの異物の付着を防止するペリクルと、前記マスクに対する前記マイクロレンズアレイの相対的第1方向への移動の際に、前記ペリクルを前記マスクに対して相対的に前記第1方向に対して傾斜する水平の第3方向に移動させるペリクル移動装置と、を有することを特徴とするマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置。
【請求項4】
前記第3方向は、前記第1方向に直交する方向であることを特徴とする請求項3に記載のマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置。
【請求項5】
前記ペリクルは、フィルム状又はシート状をなし、
前記ペリクル移動装置は、供給ロールから巻き解いた前記ペリクルを前記マスクと前記マイクロレンズアレイとの間に供給し、巻き取り側のロールに巻き取るものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイを使用したスキャン露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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