説明

マイクロ波加熱用容器

【課題】異なる食材に応じた加熱パターンとすることができ、その表面に選択的に焦げ目等をつけて加熱、或いは非加熱処理を行うことができるマイクロ波加熱用容器を提供する。
【解決手段】容器10の内面に、導電性高分子を積層して所定パターンに形成された発熱層M及び/又はマイクロ波シールド層Sを形成し、容器本体11に複数の食材を収納配置したマイクロ波加熱用容器10とする。また、本発明のマイクロ波加熱用容器は発熱層M及び/又はマイクロ波シールド層Sが、容器の容器本体11及び/又は蓋部12に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を保持したまま、電子レンジ等のマイクロ波加熱装置により加熱される弁当容器状やトレイ状等形態を有するマイクロ波加熱用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子レンジを用いた調理法においては、電子レンジのオーブン庫内底部に設けられたターンテーブル上に食品を載置し、その側壁部や天井部に設けた導波管を介してマイクロ波を供給して、食品中の水分子等の分極した分子を強制振動させて食品を加熱する。この加熱調理の際、電界の強弱による食品の加熱むらを防ぐために、ターンテーブルを回転駆動させながら食品を加熱する。また、電子レンジにて全体的に焦げ目をつけることができる加熱用シートあるいは電子レンジに装着できる専用のトレイが上市されており、このような電子レンジを用いた技術に関連して例えば以下のようなものが知られている。
【0003】
特許文献1には、発熱体として繊維状またはウィスカー状の導電性物質、天然繊維パルプおよび無機粉体から形成されたシート状物の少なくとも片面に、無機粉体を混合したシリコン樹脂塗布層を設けた電子レンジ調理用発熱シートが記載され、この発熱シートを用いて、電子レンジ等のマイクロ波を照射して食品を加熱する際に、食品表面を加熱し、さらには食品表面に焦げ目を付けることが記載されている。
特許文献2には、容器本体の主食部収納室と副食部収納室とに区分する仕切壁の一部に予め脆弱部を形成し、該脆弱部を介して容器本体を複数に分離可能に形成して、弁当容器内に一部加温したくないものを含む弁当であっても、その一部を除いて加温できるようにした電子レンジ用弁当容器が記載されている。
【特許文献1】特開平5−253055号公報
【特許文献2】特開平7−100011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1又は2等に記載の従来の技術のものでは以下のような課題があった。
特許文献1の電子レンジ調理用発熱シートは、電子レンジ調理時に食品を前記シート上に載せて加熱、或いは焦げ目を付けるものであり、弁当容器等のようにその種類の異なる複数の食材に応じて、これらを個々に適切に加熱することが困難である。
一方、特許文献2の電子レンジ用弁当容器では、容器本体を食材ごと複数の部分に分離して加熱に必要なものだけを電子レンジに入れるので、予め分離する脆弱部を仕切壁の一部に形成しなければならず、また、予め分離するものを選択する必要があり子供や高齢者等では容易に扱えないという問題があった。
【0005】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、その容器本体上に所定パターンとなるマイクロ波発熱域を容易に形成することができるとともに、電子レンジに入れて加熱処理をするだけで、異なる複数の食材に応じた加熱パターンとすることができ、また、その表面に選択的に焦げ目等もつけることができるマイクロ波加熱用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1のマイクロ波加熱用容器は、容器の内面に導電性高分子を積層して所定パターンに形成された発熱層及び/又はマイクロ波シールド層を有し、容器本体に食材を収納配置することを特徴とする。
【0007】
請求項2のマイクロ波加熱用容器は、請求項1において、前記発熱層及び/又はマイクロ波シールド層が、容器の容器本体及び/又は蓋部に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3のマイクロ波加熱用容器は、請求項1又は2において、前記発熱層の表面抵抗値が104〜102[Ω/□]であることを特徴とする。
【0009】
請求項4のマイクロ波加熱用容器は、請求項1又は2において、前記マイクロ波シールド層の表面抵抗値が102[Ω/□]未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマイクロ波加熱用容器は、容器を電子レンジに入れるだけで、容器に収納された複数の食材の種類や形態に合わせて、所定パターンで加熱処理、非加熱処理を選択的に行なうことができ、また、食材の表面に選択的に焦げ目等をつける等の加熱処理、非加熱食材の加熱防止を容易に行なうこともできる。
さらに、容器の内面に所定パターンで形成される発熱層及び/又はマイクロ波シールド層は、導電性高分子を積層又は塗布してして容易かつ安価に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のマイクロ波加熱用容器は、生餃子や炒めもの、揚げ物等の複数の食材が収納配置される弁当箱状やトレイ状等の容器の内面に、前記食材の種類や形態に合わせた所定パターンで導電性高分子を積層又は塗布して(本発明において両者を併せて積層という場合がある)所定パターンに形成した発熱層及び/又はマイクロ波シールド層を有する。
そして、前記発熱層及び/又はマイクロ波シールド層を形成する導電性高分子は、食材と直接接触する容器の内面に塗布しておくことにより、例えば、容器本体の底部内面に塗布しておくことにより、発熱層とした場合は、生餃子等の表面に適度な焦げ目等をつけて焼き調理することができ、中心部分に対する加熱処理が必要な茶碗蒸しのような食材については、導電性高分子を容器本体の側壁に塗布し、側壁側での発熱を強くすることで食材全体の加熱バランスをとることが可能となる。
また、マイクロ波シールド層を形成した場合は、サラダ等の加熱すべきでない食材をマイクロ波の照射からシールドして加熱することができるようにし、他の食材を加熱調理することができる。
さらに、発熱層及び/又はマイクロ波シールド層を形成した場合は、前記焦げ目等の焼き調理を行う食材と非加熱食材を一緒に加熱することができる。
尚、前記導電性高分子から成る発熱層及び/又はマイクロ波シールド層は、容器の蓋部内面に形成することも可能である。
【0012】
本発明のマイクロ波加熱用容器の容器本体の形態としては、餃子やライス、サラダ、デザート等の食材が、それぞれの区画された部分に保持されるようにした弁当箱状やトレイ状等の形状が挙げられ、その素材としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂等のプラスチック基材、紙、パルプ等の非導電性素材等が挙げられる。
【0013】
発熱層及び/又はマイクロ波シールド層は、食材が接する予定の容器本体の内面に、所定のパターン、塗布厚み、濃度等で、導電性高分子を塗布して形成されており、マイクロ波加熱装置内で照射されるマイクロ波を吸収して、表面抵抗値が発熱又はマイクロ波のシールドの所定値になるようにそれぞれ調整され、所定の発熱量で発熱、或いはマイクロ波をシールドできるようにされている。
容器本体に塗布される発熱体、マイクロ波シールド体としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン等それ自体導電性をもつ導電性高分子を塗料の形態で適用することができる。
【0014】
そして、導電性高分子から成る導電性塗料は、水性塗料とすることで容易に塗膜を形成でき、かつ、導電性は導電性高分子の希釈、電子のドーピングで付与すればよく、濃度の異なるものを順次重ね塗りすることにより厚み方向等に濃度勾配を容易に設定することもできる。
一般に、導電性高分子は表面低抗値104[Ω/□]以上で絶縁物としての性質を現し、102[Ω/□]未満で金属的性質を現し、導電性高分子中をホッピング電導する電子はマイクロ波下で水のフリクション振動より激しく伝搬する。つまり導電性塗料を塗布したポリマー基材はマイクロ波下で水より早く昇温する。このことを利用して導電性塗料のホッピング電子の量を表面抵抗値として管理することでポリマー基材の温度をコントロールして、焦げ目の強弱をつけることも可能である。
さらに、容器本体のそれぞれ分割された区画部に種々な含水率を持った食材を配設して、導電性塗膜の抵抗値をコントロールすることにより、それぞれの区画部を構成している底や壁材のマイクロ波吸収加熱程度を、一度に瞬間的にそれぞれの食材について目標とする温度に加熱することが可能となる。
【0015】
そして、この原理を利用して、本発明のマイクロ波加熱用容器おいて、マイクロ波を吸収して発熱する発熱層を形成する場合は、その表面抵抗値を104〜102[Ω/□]とすることが好ましく、これによって、プラスチック等からなる容器本体をマイクロ波加熱により溶融させることなく、容器本体に保持された食材を適度に加熱することができる。
表面抵抗値は、試験片表面の二つの電極間に印加した直流電圧を、表面層を通って流れる電流で除した数値で定義される(JIS K 6911)。シート抵抗と呼ばれることもある。正式な単位はΩであるが、本発明では単なる抵抗と区別するために[Ω/□]と記載する。
この表面抵抗値が102[Ω/□]より小さくなるとマイクロ波を遮蔽するようになり、逆に、表面抵抗値が104[Ω/□]より大きくなると、マイクロ波吸収発熱層の発熱温度が極端に低下するので好ましくない。
【0016】
一方、本発明のマイクロ波加熱用容器おいて、マイクロ波をシールドしてマイクロ波シールド層を形成する場合は、その表面抵抗値を希釈、電子のドーピング等により102[Ω/□]未満とすることが好ましく、マイクロ波加熱時において、容器本体内の特定の食材をマイクロ波により加熱されることなく選択的に非加熱状態に保持させることが可能となる。
尚、本発明のマイクロ波加熱用容器においては、発熱層及び/又はマイクロ波シールド層を、容器の容器本体及び/又は蓋部の内面に形成することにより、加熱調理の柔軟性を付与したマイクロ波加熱用容器とすることができ、電子レンジを用いて、焦げ目等を選択的に付けたり、非加熱食材を一緒に加熱することが可能となる。
前記発熱層及び/又はマイクロ波シールド層を形成する導電性塗料の塗布方法には、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法、ディッピング法、転写法、アプリケーター法、ハケ塗り法やスプレー法等があり、導電性塗料の特性に合わせて粘度等を調整した上で適宜選択する。
【0017】
このように、本発明のマイクロ波加熱用容器によれば、一般家庭で用いられている電子レンジを用いて食材に焦げ目をつけ焼き調理することができ、しかも電子レンジの中で、ポリマー基材からなる容器本体の所定箇所において、マイクロ波吸収による発熱温度を自在に制御して焦げ目を部分選択的につけることもできる。
【0018】
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明のマイクロ波加熱用容器について具体的に説明する。
図1は、本発明のマイクロ波加熱用容器における実施形態1の斜視図であり、図2はその容器本体部分の平面図である。
図1及び図2において、10は弁当箱状容器から成るマイクロ波加熱用容器、11はポリマー基材から成る容器本体、12は同様にポリマー基材から成る容器本体11の開口部分を覆う蓋部、13〜17は収納配置される複数の食材に合わせて仕切り壁部19により区画された区画部、Mは容器本体11の区画部13、16の底部内面に、食材の種類や形態に合わせ、導電性高分子塗料を塗布して形成した複数の発熱層で、本実施形態では発熱層のみを形成している。
【0019】
前記発熱層Mは、周知の塗膜形成法により、表面抵抗値を10〜10[Ω/□]に設定され、これによって、電子レンジの中で照射されるマイクロ波を吸収して発熱し、これに接触する餃子等の食材を加熱して、容易に適度な加熱や焦げ目をつけることができ、その調理効率や熱効率を最適化することが可能となる。
【0020】
マイクロ波加熱用容器10は、それぞれの区画部13〜17に餃子や米飯、サラダ、デザート等の食材が配置され、電子レンジ中に保持されてマイクロ波が照射されることによって、食材及び発熱層Mが加熱される。こうして、マイクロ波加熱用容器10を、電子レンジに入れるだけで、複数の食材の種類や形態に合わせて、加熱及び遮蔽処理を行なうことができ、また、餃子等の食材をその形態等に応じて適正かつ効果的に加熱して、その表面に選択的に焦げ目等をつけることができ、これを美味しく食することができる。
【0021】
(実施形態2)
図3は、本発明のマイクロ波加熱用容器における実施形態2の平面図である。
図3において、20は弁当箱状容器から成るマイクロ波加熱用容器、21は蓋部22がヒンジ部23を介して接続された容器本体、24〜28は収納配置される複数の食材に合わせて仕切り壁部29により区画された区画部、Mは容器本体21の区画部24、27の底部内面に、食材の種類や形態に合わせ、導電性高分子塗料を塗布して形成した複数の発熱層、Sは区画部28及びこれに対向する位置の蓋部22の内面に、それぞれ塗布して形成した導電性高分子被膜からなるマイクロ波シールド層で、本実施形態では発熱層及びマイクロ波シールド層を形成している。
【0022】
マイクロ波加熱用容器20は、図示するように、蓋部22がヒンジ部23を介して開閉可能に容器本体21に設けられ、発熱層M及びマイクロ波シールド層Sが、蓋部22及び容器本体21のそれぞれの区画部に、それぞれ対向して配設されている。
これによって、所定食材を発熱層Mで上下方向から選択的に加熱したり、上下に配設されたマイクロ波シールド層Sにより、サラダ等の加熱すべきでない食材をマイクロ波の照射からシールドしたりすることができるようにしている。
また、発熱層Mにおいて、区画部毎に導電性成分の濃度を異なるようにすることにより、その区画部に配置された食材毎に適正な温度に加熱されるようにすることも可能である。
前記のように、食材の種類や形態に応じた発熱層M及び/又はマイクロ波シールド層Sを容器本体21や蓋部22に配設することにより、加熱調理の柔軟性を付与したマイクロ波加熱用容器20とすることができ、電子レンジを用いて、焦げ目等を選択的に付けたり、非加熱食材を一緒に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のマイクロ波加熱用容器における実施形態1の斜視図である。
【図2】実施形態1の容器本体部分の平面図である。
【図3】本発明のマイクロ波加熱用容器における実施形態2の平面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 マイクロ波加熱用容器(弁当箱状容器)
11 容器本体
12 蓋部
13〜17 区画部
19 仕切り壁部
20 実施例2に係るマイクロ波加熱用容器(弁当箱状容器)
21 容器本体
22 蓋部
23 ヒンジ部
24〜28 区画部
29 仕切り壁部
M 発熱層
S マイクロ波シールド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内面に導電性高分子を積層して所定パターンに形成された発熱層及び/又はマイクロ波シールド層を有し、容器本体に食材を収納配置することを特徴とするマイクロ波加熱用容器。
【請求項2】
前記発熱層及び/又はマイクロ波シールド層が、容器の容器本体及び/又は蓋部に形成されている請求項1に記載のマイクロ波加熱用容器。
【請求項3】
前記発熱層の表面抵抗値が104〜102[Ω/□]であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波加熱用容器。
【請求項4】
前記マイクロ波シールド層の表面抵抗値が102[Ω/□]未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波加熱用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−206083(P2006−206083A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18953(P2005−18953)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】