説明

マイクロ粒子発生装置、マイクロ粒子の製造方法、及びマイクロ粒子が混入した液体

【課題】液体中にマイクロ粒子を発生させるマイクロ粒子発生装置を提供する。
【解決手段】液体を貯蔵する液体槽と、前記液体槽に連通し、前記液体槽に貯蔵された液体とは性質の異なる液体が注入される圧力槽と、前記液体槽と前記圧力槽との連通部に設けられ、多数の貫通孔を有する多孔のノズルと、前記多孔のノズルに密着され、所定の周波数と振幅で前記多孔のノズルへ振動を与える超音波振動素子を有しする振動源と、前記圧力槽に注入された液体に所定の圧力を加える圧力ポンプと、を備え、前記圧力槽に注入された液体に前記圧力ポンプが圧力を加えると共に、振動が与えられた前記多孔のノズルの貫通孔から前記液体槽へ液体の微粒子を噴射させることで、前記液体槽に貯蔵された液体と反応させ、前記液体槽にマイクロ粒子を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ粒子発生装置、マイクロ粒子の製造方法、及びマイクロ粒子が混入した液体に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブル発生装置として、液体を電気分解によってマイクロバブルを発生させるため、多孔質性を有する導電性材料を用いて液体を電気分解するための2電極の構成が提案されている(例えば、特許文献1)。また、このような装置を用いてマイクロ粒子を発生させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2007−38149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、先行技術として上述の公報に示された構成では、導電性材料に多孔質性を有するチタン又は導電性セラミック等の比較的高価な材料を用いる必要があると共に、マイクロ粒子を形成させる場合、そのマイクロ粒子の粒径又はその分布のコントロールが出来ない。また、構成が複雑となる。
【0005】
本発明は、上記要求に対して、マイクロ粒子の径あるいはその分布がコントロール出来、更に、微細な粒径を有するマイクロ粒子を液体中に発生させることが出来る簡単な構成のマイクロ粒子発生装置、マイクロ粒子が混入した液体、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、液体を貯蔵する液体槽と、前記液体槽に連通し、前記液体槽に貯蔵された液体とは性質の異なる液体が注入される圧力槽と、前記液体槽と前記圧力槽との連通部に設けられ、多数の貫通孔を有する多孔のノズルと、前記多孔のノズルに密着され、所定の周波数と振幅で前記多孔のノズルへ振動を与える超音波振動素子を有する振動源と、前記圧力槽に注入された液体に所定の圧力を加える圧力ポンプと、を備え、前記圧力槽に注入された液体に前記圧力ポンプが圧力を加えると共に、振動が与えられた前記多孔のノズルの貫通孔から前記液体槽へ液体の微粒子を噴射させることで、前記液体槽に貯蔵された液体と反応させ、前記液体槽にマイクロ粒子を発生させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のマイクロ粒子発生装置は、前記振動源における超音波振動素子の周波数あるいは振幅を調整することにより、前記液体槽に貯蔵された液体と反応して発生するマイクロ粒子の粒径を調整することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のマイクロ粒子発生装置は、前記多孔のノズルの孔径及び形状を選択することによって、前記液体槽に貯蔵された液体と反応して発生するマイクロ粒子の粒径を調整することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のマイクロ粒子発生装置は、上記液体槽内に貯蔵する液体及び圧力槽に注入する液体に応じて、上記多孔のノズルの表面に親水性、撥水性、親油性、あるいは撥油性を有する表面処理を施すことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のマイクロ粒子発生装置は、前記液体槽に還元液を貯蔵し、前記圧力槽に金属錯塩溶液を注入し、前記圧力槽から前記液体槽へ、錯塩溶液の微粒子を噴射させ酸化還元反応により金属微粒子を製作することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載のマイクロ粒子発生装置は、前記液体槽に摂氏50度〜90度の液体を貯蔵し、前記圧力槽に、樹脂を合成するモノマー、開始剤、硬化剤及び触媒が混合されたモノマー混合液を注入して、前記圧力槽から前記液体槽へ、モノマー混合液を噴射させ、前記液体槽の液中にモノマー粒子を一定時間漂わせてモノマー粒子をポリマー粒子に合成することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載のマイクロ粒子発生装置は、前記液体槽に酸性水溶液を貯蔵し、前記圧力槽に珪酸ソーダ溶液を注入して、前記圧力槽から前記液体槽へ、珪酸ソーダ溶液を噴射させ、前記液体槽に貯蔵された酸性水溶液と前記珪酸ソーダ溶液中の珪酸ソーダの微粒子とを中和させて二酸化珪素(SiO2)の微粒子を合成することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載のマイクロ粒子の製造方法は、請求項1〜7に記載したマイクロ粒子発生装置によってマイクロ粒子を生成することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載のマイクロ粒子が混入した液体は、請求項1〜7に記載したマイクロ粒子発生装置によって生成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関わるマイクロ粒子発生装置は、上述の構成によって液体槽に貯蔵した液体中に、ノズルの孔径、密度に応じて所定の粒径、あるいはその分布を有する微細な粒体としてのマイクロ粒子を発生させることができる。
【0016】
この場合、上記多孔のノズルの素材として耐食性を有するものを選べば、多孔のノズルの寿命が長く、従って装置としての寿命も長く保つことが可能となる。
この際、更に、上記多孔のノズルの表面を、液体槽内の液体に応じて親水性、撥水性、あるいは撥油性処理を施すことによって気液の界面及び液界面に位置する多孔のノズルの液体切れ、気体切れの有効に微細な粒径のマイクロ粒子を発生させることが出来る。
【0017】
また、上記振動源の電圧、周波数を選択することによって多孔のノズル振動モードが制御出来る、その結果マイクロ粒子の直径を制御できるので、従来では得られなかったマイクロ粒子の粒子径を発生源である多孔のノズルの表面で粒子径が制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は圧電振動素子を多孔のノズルに密着させ多孔のノズルを直接振動させて、液体槽中に微細な粒径のマイクロ粒子を発生させる実施例の断面概略図、(B)は多孔のノズルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に従って本発明を説明する。
図1(A)は本発明の一実施例で、本発明の構成要素である圧電振動素子を多孔のノズルに密着させ多孔のノズルを直接振動させて、液体槽中に微細な粒径のマイクロ粒子を発生させる実施例の断面概略図で、(B)は多孔のノズルの斜視図ある。
【0020】
本発明に係るマイクロ粒子発生装置は、内部に液体6を貯蔵する液体槽1と、前記液体槽1の下部近傍の側壁に設けられた多数の微細な貫通孔を有する多孔のノズル2と、所定の液体が投入されて圧力(P1)が与えられるとともに、前記多孔のノズル2を介して前記液体槽1に連設された圧力槽4と、前記多孔のノズル2に密着させた振動源3と、前記振動源3に設けた圧電振動素子に接続され、所定の電圧と周波数を有する駆動信号を発生する駆動源5とから少なくとも構成されている。この図1の実施例は、圧力槽4の端部が図1の右端のようにストレート構造で事足り、圧力P1を加える部分が簡単な構造となる。
【0021】
次に、図1(A)及び図1(B)について説明すると、マイクロ粒子発生装置は、圧電振動素子等からなる駆動源5から振動源3に対して所定の電圧と周波数を有する駆動信号を供給し、振動源3の圧電振動素子を所定の振幅と、所定の振動を発生させる。
上記液体槽1における前記多孔のノズル2の近傍は、中に貯蔵された液体の重量に伴う一定の圧力(P0)となっている。前記圧力(P0)と前記圧力槽4に加えられる圧力(P1)の関係は、P1>P0の関係に設定しておく。
【0022】
先ず、実施例である図1について説明する。マイクロ粒子発生装置は、液体槽1に投入された液体6と、多数の微細な貫通孔を設けた多孔のノズル2と、振動源3に設けた超音波振動素子と、一定の圧力(P1)がエアポンプ等によって加えられた圧力槽4と、所定の電圧によって上記多孔のノズル2に振動を発生させる駆動源5で上記超音波振動素子を駆動させることにより、圧力槽4から多孔を有するノズル2を通して液体槽1内にマイクロ粒子として多孔のノズル2の孔の大きさに対応した、極めて微細な微粒子となって発生させることができる。
【0023】
例えば、圧力槽4に12パスカルの圧力をかけ、振動源にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用い、6Vの電圧印加で130kHzの振動を発生させ、多孔のノズルの孔径を20μmφにして、酸素ガスを液体層1に注入したところ、おおよそ数μmφ、好ましくは5μmφの酸素ガス微粒子が液中に注入出来た。
【0024】
また、圧力槽4にサラダオイルを入れその中に200nmの粒径の銀の粉末を3重量パーセント混合して12パスカルの圧力をかけながら振動源3にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用い、6ボルトの電圧で、130kHzの交流を印加させた場合、多孔ノズルの孔径を6μmφにして銀の微粒子を混入させると、液体中には微細な銀粉末が上記サラダオイルによって覆われた状態の微粒子が得られる。
【0025】
次に、振動源3に用いる圧電振動素子は、極めて振動効率が良いチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリューム、フェライトを使用すれば有効である。また、上記液体槽に貯蔵させる液体6は、水あるいは各種化学薬品、特に、薬剤でも良く、また、有機溶媒でも良い。上記液体槽1に貯蔵された液体は、圧力槽4に挿入するものを、それぞれ要求する機能を有した液体を選べば、新たな機能を有する液体として調合が可能となる。
【0026】
金属粒子を製作は、上記多孔のノズル2を挟んで液体槽1に還元液を、圧力槽4に金属錯塩溶液をそれぞれ投入して、圧力槽4より金属錯塩溶液の微粒子を噴射させ、酸化還元反応を行うことができる。
【0027】
また、上記多孔のノズル3を挟んで液体槽1に摂氏50度〜90度の液体を投入し圧力槽4に所定の樹脂を合成するモノマーと、開始剤、たとえば、メタクリル酸メチル(モノマー Methacrylate−MMA)、エチレングリコールジアメタアクリル(Ethylene Glyco Diametha Acryl−EGDMA)、アゾビスイソスプチロニトリル(Azobis Isobutyronitrile−AIBN)、硬化剤、触媒の混合液を投入し、圧力槽4よりモノマー混合液を多孔のノズル3より微粒子を液体槽1に噴射させ、液体槽1の液中にモノマー粒子を一定時間漂わせ、モノマーをポリマー樹脂に合成して、その結果、ポリマーのマイクロ粒子を発生させることが出来る。
【0028】
更に、上記多孔のノズル2を挟んで液体槽1に酸性水溶液、例えば塩酸の1規定溶液を満たし、圧力槽4に珪酸ソーダの50%水溶液を投入し、多孔のノズル3を通じて圧力槽4より珪酸ソーダ溶液の微粒子を液体槽1の酸性溶液に噴射し、珪酸ソーダが中和され、二酸化珪素(SiO2)の微粒子に合成することができる。
【0029】
更に、振動源3に設けた超音波振動素子に与える駆動源5からの駆動信号の電圧あるいは周波数を変えることによって、所望のマイクロ粒子を発生させることができる。上記多孔のノズル2の孔径を変えることによって、上述のような粒径あるいは分布を変化させることも可能となる。
【0030】
上記多孔のノズル2の材質を種々の材料を用いて選択すれば、耐食性が達成することが出来ると共に、特に、薬剤の調合、あるいは食品の製造に本発明を用いる場合、人体等に無害な材質を選択出来る。
【0031】
更に、上記多孔のノズル2に表面処理、即ち、上記多孔のノズル2の表面に親水性、撥水性、親油性、あるいは撥油性処理を行うことによって、液体槽1に貯蔵する液体と、圧力槽4に挿入する材料を選択することが出来る。また、液体槽1に貯蔵する液体は、燃料とした場合、本発明によって、マイクロバブルを上記液体中に発生させると、その燃焼効率が向上させることが可能となり、例えば、輸送機器におけるエンジンに利用することが出来る。
【0032】
上記圧力槽4に水に対して溶解しにくい無機ガス、あるいは有機ガスを挿入することによって、液体中に気泡を保持することが可能となり、その結果、同液体を農業、園芸、林業関係の、殺菌、酸素供給、等各種の目的に対応した水が出来る。その気体の例として、酸素ガス、オゾン、窒素ガス、二酸化炭素ガス、あるいはメタンガス、ブタンガスを含む有機ガスを、たとえば、数μmφ、好ましくは5μmφ以下にする事により液中にいつまでも存在する所定の気泡混入液が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明のマイクロ粒子発生装置は、種々の目的、例えば、薬剤の調合、微細な粒径のマイクロ粒子を有する燃料用、あるいは農業用の肥料又は薬品等に利用でき、その応用範囲は極めて広い。
本発明は、上述した内容に限定することなく、マイクロ粒子発生装置として、更に、同装置で得られたマイクロ粒子を有する液体は種々の目的に多用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 液体槽
2 多孔のノズル
3 振動源
4 圧力槽
5 駆動源
6 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵する液体槽と、
前記液体槽に連通し、前記液体槽に貯蔵された液体とは性質の異なる液体が注入される圧力槽と、
前記液体槽と前記圧力槽との連通部に設けられ、多数の貫通孔を有する多孔のノズルと、
前記多孔のノズルに密着され、所定の周波数と振幅で前記多孔のノズルへ振動を与える超音波振動素子を有する振動源と、
前記圧力槽に注入された液体に所定の圧力を加える圧力ポンプと、
を備え、
前記圧力槽に注入された液体に前記圧力ポンプが圧力を加えると共に、振動が与えられた前記多孔のノズルの貫通孔から前記液体槽へ液体の微粒子を噴射させることで、前記液体槽に貯蔵された液体と反応させ、前記液体槽にマイクロ粒子を発生させることを特徴としたマイクロ粒子発生装置。
【請求項2】
前記振動源における超音波振動素子の周波数あるいは振幅を調整することにより、前記液体槽に貯蔵された液体と反応して発生するマイクロ粒子の粒径を調整することを特徴とした請求項1に記載のマイクロ粒子発生装置。
【請求項3】
前記多孔のノズルの貫通孔の孔径及び形状を選択することによって、前記液体槽に貯蔵された液体と反応して発生するマイクロ粒子の粒径を調整することを特徴とした請求項1又は2に記載のマイクロ粒子発生装置。
【請求項4】
前記液体槽内に貯蔵する液体及び圧力槽に注入する液体に応じて、前記多孔のノズルの表面に親水性、撥水性、親油性、あるいは撥油性を有する表面処理を施すことを特徴とした請求項1〜3の何れか1項に記載のマイクロ粒子発生装置。
【請求項5】
前記液体槽に還元液を貯蔵し、前記圧力槽に金属錯塩溶液を注入し、前記圧力槽から前記液体槽へ、錯塩溶液の微粒子を噴射させ酸化還元反応により金属微粒子を製作することを特徴とした請求項1〜3の何れか1項に記載のマイクロ粒子発生装置。
【請求項6】
前記液体槽に摂氏50度〜90度の液体を貯蔵し、前記圧力槽に、樹脂を合成するモノマー、開始剤、硬化剤及び触媒が混合されたモノマー混合液を注入して、前記圧力槽から前記液体槽へ、モノマー混合液を噴射させ、前記液体槽の液中にモノマー粒子を一定時間漂わせてモノマー粒子をポリマー粒子に合成することを特徴とした請求項1〜3の何れか1項に記載のマイクロ粒子発生装置。
【請求項7】
前記液体槽に酸性水溶液を貯蔵し、前記圧力槽に珪酸ソーダ溶液を注入して、前記圧力槽から前記液体槽へ、珪酸ソーダ溶液を噴射させ、前記液体槽に貯蔵された酸性水溶液と前記珪酸ソーダ溶液中の珪酸ソーダの微粒子とを中和させて二酸化珪素(SiO2)の微粒子を合成することを特徴とした請求項1〜3の何れか1項に記載のマイクロ粒子発生装置。
【請求項8】
請求項1〜7に記載したマイクロ粒子発生装置によってマイクロ粒子を生成することを特徴とするマイクロ粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7に記載したマイクロ粒子発生装置によって生成されたマイクロ粒子が混入した液体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−46914(P2013−46914A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264407(P2012−264407)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−249049(P2007−249049)の分割
【原出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(396026710)株式会社オプトニクス精密 (34)
【Fターム(参考)】