説明

マウス装置

【課題】従来のホイール操作によって生じる指の腱鞘炎などの身体的疲労をなくすことができるマウス装置を提供する。
【解決手段】姿勢検出部によってマウス装置の姿勢が検出され(S1)、マウス筐体の底面が作業用平面と平行且つ接する状態であるか否かが判定される(S2)。判定結果がNOの場合、制御信号生成部によってスクロール制御信号が生成され(S3)、判定結果がYESの場合は、ステップS1に戻る。ステップS3で生成されたスクロール制御信号は送信部を介してコンピュータに送信される(S4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウス装置に係り、特に、マウス装置におけるホイールの操作により生じる疲労を回避するマウス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マウス装置(Mouse)とは、コンピュータ機器(パーソナルコンピュータ、ノート型パソコンなど)の入力位置を指示するポインティングデバイスの一種で、操作画面上に現れるマウスポインターと呼ばれるカーソルを操作するために用いられる、手のひらに収まるサイズの機器のことである。
【0003】
マウス装置は機械式マウス装置及び光学式マウス装置の二種類に分けられる。機械式マウス装置は、その一部がマウス装置底面から露出されたボールを内蔵し、マウス装置の作業用平面上での移動に伴い、作業用平面に接触するボールが回転するようになっている。マウス装置には、ボールの他にローラとロータリーエンコーダが設けられ、ローラの一端はボールと接触し、他端はロータリーエンコーダに接触する。ロータリーエンコーダは、ローラの回転方向と回転速度とからマウス装置の移動方向と距離を判断し、これを利用して対応するコンピュータのカーソル位置信号を生成する。一方、光学式マウス装置は、その底面にイメージセンサーを備え、イメージセンサーが撮影する画像の変化によりマウス装置の移動方向と距離を判断する。すなわち、イメージセンサーが撮影したマウス装置の移動前の画像と移動後の画像とを比較して、それらに含まれる同一部分がどの程度ずれたのかを検出し、そのずれの大きさに対応するコンピュータのカーソル位置信号を生成する。
【0004】
マウス装置による操作としては、上述のマウスポインターの移動操作だけでなく、操作画面を上下方向に移動させるスクロール操作もある。このスクロール操作に関して、マウス装置表面に設けられたホイールをユーザーが指で回転することによってスクロール操作を行うマウス装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−163216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマウス装置でのホイールを用いたスクロール等の操作(以下、ホイール操作という)には、以下のような問題がある。すなわち、ホイール操作は、ユーザーの指に単調な動きを繰り返し強いることになり、またスクロール等のスピードは指の動きのスピードに委ねられるので、ユーザーの指、ひいては体の疲労を招く恐れがある。特に医療現場で行われている読影診断では、数百枚ものCTスキャン画像を、ホイール操作によって連続でコマ送り/戻しすることが行われており、作業者(読影医)にとって大きな負担となっている。経験年数の長い医師では、指が腱鞘炎となり、ホイール操作ができなくなるケースも出ている。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来のホイール操作によって生じる指の腱鞘炎などの身体的疲労をなくすことができるマウス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係るマウス装置は、筐体の底面に設けられて筐体の移動距離及び移動方向を検出する移動情報検出部と、前記筐体の底面が作業用平面と平行且つ接するか否かを検出する姿勢検出部と、前記筐体に加わる加速度を検出する加速度検出部と、外部機器を制御するための信号を生成する制御信号生成部と、前記制御信号生成部によって生成された制御信号を外部機器に送信する送信部とを備え、さらに、前記制御信号生成部は、前記姿勢検出部によって前記筐体の底面が作業用平面と平行且つ接すると検出された場合に、前記移動情報検出部で検出された前記移動距離及び移動方向に基づき、外部機器のポインティング位置を制御するための第一の制御信号を生成し、前記姿勢検出部によって前記筐体の底面が作業用平面と平行ではない又は接していないと検出された場合のみに、前記加速度検出部によって検出された加速度に基づき、外部機器を操作するための第二の制御信号を生成することを特徴とするマウス装置である。
【0009】
第2発明に係るマウス装置は、第1発明において、前記制御信号生成部は、前記加速度検出部によって検出された加速度から求められる筐体の傾き及び傾き方向に基づき外部機器を操作するための第二の制御信号を生成することを特徴とする。
【0010】
第1発明にあっては、姿勢検出部によってマウス筐体の底部が作業用平面と平行ではない又は接触していないことが検出された場合、加速度検出部によって検出されたマウス筐体に加わる加速度に基づき、外部機器を操作するための第二制御信号が生成され、外部機器に送信される。第二制御信号とは、例えばスクロール操作を制御するためのスクロール制御信号である。これにより、ユーザーは、マウス筐体の姿勢を変えることによって操作画面のスクロール等を制御することができるので、従来のホイール操作によって生じる指の腱鞘炎などの身体的疲労がなくなる。また、マウス筐体の姿勢を変える度合いによってスクロール等のスピードを制御することができるので、指を早く動かすことなく高速スクロール等の操作を行うことができる。
【0011】
さらに、姿勢検出部によってマウス筐体の底部が作業用平面と平行且つ接することが検出された場合には、外部機器のポインティング位置を制御するための第一制御信号が生成され、外部機器に送信される。すなわち、ユーザーが、マウス筐体の底部と作業用平面とが平行且つ接する状態を維持したままマウス筐体を移動させてカーソルを操作した場合は、第二制御信号であるスクロール等の制御信号は生成されないため、ポインティング操作中にスクロール等の操作が誤って行われることを防止することができる。
【0012】
第2発明にあっては、制御信号生成部は、加速度検出部によって検出された加速度からマウスの筐体の傾き度合い(角度)及び傾き方向を求め、求められた筐体の傾き度合い及び傾き方向に基づき、第二制御信号となるスクロール等の制御信号を生成する。これにより、ユーザーは、指を早く動かすことなく高速スクロール等が可能になるとともに、マウス筐体の傾き角度と操作スピードとが連動するため、直感的な操作が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マウス筐体の傾きでスクロール等の制御を行うため、従来のホイール操作によって生じる指の腱鞘炎などの身体的疲労をなくすことができる。また、マウス筐体の傾き角度と操作スピードとが連動するため、直感的な操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のマウス装置を上から見た外観平面図である。
【図2】本実施形態のマウス装置の底面を示す外観平面図である。
【図3】本実施形態のマウス装置の内部構造を示すブロック図である。
【図4】本実施形態のマウス装置の処理順序を示すフローチャートである。
【図5】加速度センサー値とマウス装置の傾き角度との関連性を示すテーブルである。
【図6】加速度からマウス装置の傾き角度を算出する原理を示す図である。
【図7】本実施形態のマウス装置におけるスクロール制御信号の送信タイミングと送信回数を示す図である。
【図8】本実施形態のマウス装置におけるスクロール制御信号の生成を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〈マウス装置の構成〉
本発明の実施形態に係るマウス装置の構成を説明する。図1は本実施形態のマウス装置を上から見た外観平面図であり、図2はマウス装置の底面を示す外観平面図である。
【0016】
図1及び図2において、符号1は、本実施形態のマウス装置を示し、図示しないコンピュータ本体へ情報伝送を行う機能を備えている。
【0017】
マウス装置1はマウス筐体2を備え、このマウス筐体2の上面には、左クリック用の押ボタンスイッチ(以下、「左クリックスイッチ」と呼ぶ)3と、右クリック用の押ボタンスイッチ(以下、「右クリックスイッチ」と呼ぶ)4とが設けられており、左右のクリックスイッチ3、4の間には、ホイール5が設けられている。マウス筐体2の底面のやや前部には、後述する移動情報検出部12(イメージセンサー)(図3参照)用の開口6が設けられている。マウス筐体2の底面の中央部には、プッシュスイッチ7(押しボタン式スイッチ)が、また、底面の縁部の4箇所には、作業用平面と直に接する脚部8a、8b、8c、8dが設けられている。プッシュスイッチ7をマウス筐体2の底面の中央部に設けたのは、マウス筐体2が作業用平面に対しどの方向に傾いたとしても、わずかな傾き角度によってプッシュスイッチ7が押されていない状態となるようにするためである。
【0018】
本実施形態のマウス装置1は光学式マウス装置であるため、底面にイメージセンサー用の開口6が設けられるが、これに限られるものではなく、マウス装置1は、底面に作業用平面に接触するボールを備え、当該ボールの移動量を移動情報検出部12が検出するようにした機械式のマウス装置であってもよい。また、左クリックスイッチ3、右クリックスイッチ4、ホイール5は必須ではなく、異なる構成で同様の操作ができるものであってもよい。
【0019】
また、本実施形態のマウス装置1は脚部付きであるが、これに限られるものではなく、脚部8a、8b、8c、8dがなく、底面が直接作業用平面に接触するマウス装置であってもよい。
【0020】
図3は、マウス装置1の内部構造を示すブロック図である。図3において、符号14はマウス装置1の各種操作に対応する制御信号を生成する制御信号生成部である。この制御信号生成部14には、図1及び図2で説明した左右のクリックスイッチ3、4、マウス装置の位置信号を検出する移動情報検出部12、ホイールエンコーダ13、姿勢検出部15、加速度検出部16、記憶部17、送信部18が接続されている。
【0021】
ホイールエンコーダ13は、図1に示したホイール5の回転量を電気信号に変換する。姿勢検出部15は、図1に示したプッシュスイッチ7で構成されており、マウス装置1の姿勢を検出する。すなわち、マウス筐体2の底面が作業用平面(テーブルなど)と平行且つ接するか否かを検出する。加速度検出部16は加速度センサーで構成されており、マウス筐体2に加わる加速度を検出する。記憶部17は後述のテーブル(図5)を記憶する。送信部18は、図示しないコンピュータにUSBケーブル等の伝送ケーブルを介して接続し、制御信号生成部14によって生成された制御信号をコンピュータに送信する。
【0022】
なお、本実施形態のマウス装置1は、USBケーブルなどの伝送ケーブルでコンピュータに接続するものであるが、これに限られるものではなく、赤外線や電波でコンピュータと接続するマウス装置であってもよい。
【0023】
〈マウス装置の動作〉
次に、図4(マウス装置1の処理順序を示すフローチャート)を参照して、マウス装置1の動作を説明する。まず、姿勢検出部15によってマウス装置1の姿勢が検出され(S1)、マウス筐体2の底面が作業用平面と平行且つ接する状態であるか否かが判定される(S2)。判定結果がNOの場合、制御信号生成部14によってスクロール制御信号が生成され(S3)、判定結果がYESの場合は、ステップS1に戻る。ステップS3で生成されたスクロール制御信号は、送信部18を介してコンピュータに送信される(S4)。
【0024】
マウス姿勢の検出(S1)においては、姿勢検出部15が、プッシュスイッチ7が作業用平面に押された状態であるか否かを判別する。すなわち、プッシュスイッチ7が押された状態は、マウス筐体2の底面が作業用平面と平行且つ接する状態(以下、第1状態)であることを意味する。逆に、プッシュスイッチ7が押されていない状態は、マウス筐体2の底面が作業用平面と平行ではない又は接していない状態、(以下、第2状態)であることを意味する。姿勢検出部15によってマウス装置1が第1状態であることが検出された場合には、制御信号生成部14によってポインティング制御信号が生成され、送信部18を介してコンピュータに送信される。すなわち、ユーザーが、第1状態を維持したままマウス筐体2を移動させてカーソルを操作した場合は、スクロール制御信号は生成されないため、ポインティング操作中にスクロール操作が誤って行われることを防止することができる。
【0025】
姿勢検出部15によってマウス装置1が第2状態であることが検出されると(S2)、制御信号生成部14は、加速度検出部16の加速度出力値に応じてスクロール制御信号を生成する(S3)。スクロール制御信号とは、スクロールのスピード及び方向を制御する信号であり、マウス筐体2の底面と作業用平面とが形成する角度(以下、傾き角度)及びマウス筐体2の傾き方向により決定される。しかし、加速度センサー16はマウス筐体2に加わる加速度しか検出できないため、マウス筐体2の実際の傾き角度を直接得ることはできない。そこで、後述する計算方法に基づき、加速度検出部16が出力する加速度出力値に対応する傾き角度をあらかじめ算出しておき、さらに傾き角度に対して単位時間当たりのスクロール量(スクロールスピード)を予め決定しておく。記憶部17には、加速度出力値、加速度出力値から算出されるマウス筐体2の傾き角度、及び、傾き角度に対応するスクロールスピードとスクロール方向がテーブルとして保存される。制御信号生成部14は、加速度検出部16によって検出された加速度出力値に対応づけられたスクロールスピード及びスクロール方向を前記テーブルから取得し、スクロール制御信号を生成する。このスクロール制御信号は、送信部18からコンピュータに送信される(S4)。
【0026】
上記テーブルの構成について、図5、図6、図7を参照して説明する。図5は、加速度出力値と、加速度出力値から算出される傾き角度に対応するスクロールスピード及びスクロール方向とを示すテーブルである。該テーブルには、加速度センサーの出力値、加速度GR(マウス筐体2の傾きで生じる加速度)、マウス筐体2の傾き角度、スクロール方向、スクロール制御信号の送信回数(スクロールスピード)が含まれている。加速度センサーからは16進数でその検出値から出力されるが、検出値に対する加速度は図5に示すように予め対応づけられている。
【0027】
まず、加速度からマウス筐体2の傾き角度を算出する原理を、図6(a)、(b)を参照して説明する。図6(a)はマウス装置1を傾けたときの正面図である。一般的に加速度センサーは加速度を検出する軸を有し、本実施形態のマウス装置1においては、加速度検出部16は、図6(a)中の矢印方向の軸に対してかかる加速度を検出するように構成されている。図6(b)は、加速度からマウス筐体2の傾き角度(すなわち、加速度検出軸と、重力方向に対して垂直の軸とで形成される角度)を算出する方法を示す図である。
【0028】
マウス装置1が、図6(a)で示されるように傾き角度X(°)で傾いている場合、図6(b)で示されるように、加速度センサーの加速度検出軸には重力加速度Gの分解成分(すなわち加速度GR=重力加速度G・SinX)がかかることになる。したがって、SinXは、加速度GR/重力加速度Gで求められ、静止状態における重力加速度Gは、1Gと不変値であるから、SinXは加速度GRと等しくなる。これよりマウス筐体2の傾き角度Xが算出される。例えば、検出された加速度GRが0G、0.5G、1Gであるとき、マウス筐体2の傾き角度Xはそれぞれ0°、30°、90°と導き出される。
【0029】
次に、スクロール方向について説明する。2つのスクロール方向(“送り”と“戻り”)をそれぞれ、マウス筐体2の右又は左への傾きに対応づける。前述のとおり、加速度センサーは加速度検出軸を有するため、前記方法を用いて、加速度からマウス筐体2の傾き角度(加速度検出軸と重力方向に対して垂直の軸とで形成される角度)を求めることができる。そこで、図5に示すように、マウス筐体2の傾き角度が5°〜55°であると算出されたときは、マウス筐体2が右へ傾いていると判断してスクロール方向を“送り”とし、マウス筐体2の傾き角度が305°〜355°(-55°〜-5°)であると算出されたときは、マウス筐体2が左へ傾いていると判断して、スクロール方向を“戻り”とする。
【0030】
次に、スクロールスピードについて説明する。スクロールスピードは、筐体2の傾き角度に応じて、コンピュータへのスクロール制御信号の送信回数を変化させることで制御される。図7にスクロール制御信号の具体例を示す。図7(a)は加速度センサー値が05〜09(傾き角度は5°〜10°)の場合のスクロール制御信号であり、図7(b)は加速度センサー値が0A〜0E(傾き角度は10°〜15°)の場合のスクロール制御信号である。単位時間t(本実施例では50ms)内に送信されるスクロール制御信号が、前者は1回、後者は3回となっており、単位時間当たりの送信回数が多いほどスクロールスピードは速くなり、送信回数が少ないほどスクロールスピードは遅くなる。なお、本実施形態では、コンピュータへのスクロール制御信号の送信回数を変化させることでスクロールスピードを制御しているが、これに限られるものではなく、マウス筐体2の傾き角度に対応するスクロールスピード情報自身をスクロール制御信号としてコンピュータへ送信する構成であってもよい。
【0031】
各傾き角度に割り当てられるスクロール制御信号の送信回数の例を図5に示す。マウス筐体2の傾き角度が0°〜5°及び355°〜360°(-5°〜-0°)のときに送信回数が割り当てられていないのは、ユーザーが不意にマウス装置1を浮かす度に不用意にスクロールが開始するのを防止するためである。また、マウス筐体2の傾き角度が55°〜305°(55°〜-55°)のときに送信回数が割り当てられていないのは、この範囲でマウス装置1を傾かせることはユーザーにとって逆に手の負担となるためであり、スクロール動作が可能なマウス筐体2の傾き角度を5°〜55°及び305°〜355°(-55°〜-5°)の範囲に制限している。傾き角度の制限は5°〜55°及び305°〜355°(-55°〜-5°)の範囲に限られず、ユーザーが任意に範囲を変更できるようにしてもよい。これにより、ユーザーが自らの操作感にあわせ、傾き角度の範囲やスクロールスピードを自由に増減させることが可能となる。
【0032】
なお、図5のテーブルでは、加速度センサー出力値、加速度GR、マウス筐体2の傾き角度、スクロール方向、及びスクロール制御信号の送信回数(スクロールスピード)の各々が対応づけられて記載されているが、記憶部17には、加速度センサー出力値とスクロール方向及びスクロール制御信号の送信回数のみを対応づけたテーブルを保存してもよい。
【0033】
次に、制御信号生成部14によるスクロール制御信号の生成(前記ステップS3)について、図8を参照して詳細に説明する。まず、制御信号生成部14は、加速度検出部16からの加速度センサー出力値を読み取り(S11)、加速度センサー出力値が“送り”のスクロール方向のものであるか否かを判定し(S12)、この判定がYESの場合、その“送り”判定が連続して10回目のものか否かを判定する(S13)。一方、ステップS12での判定がNOの場合は、加速度センサー出力値が“戻り”のスクロール方向のものであるか否かを判定し(S14)、この判定がYESの場合、その“戻り”判定が連続して10回目のものか否かを判定する(S15)。ステップS13あるいはステップS15における判定がYESである場合、筐体2の傾き角度に応じたスクロールスピードを取得し(S16)、取得したスクロールスピードに応じてスクロール制御信号の送信回数をセットする(S17)。その後、セットされた送信回数から1を減算し(S19)、スクロール方向が“送り”か否かを判定する(S20)。ステップS20にてYESと判定された場合、制御信号生成部14は送信部18に対して、コンピュータへ「1」のスクロール制御信号を送信するよう要求し(S21)、NOと判定された場合は、送信部18に対して、コンピュータへ「−1」のスクロール制御信号を送信するよう要求する(S22)。コンピュータは、送信部18から「1」のスクロール制御信号を受信するたびに“送り”方向へ操作画面をスクロールし、「−1」のスクロール制御信号を受信するたびに“戻り”方向へ操作画面をスクロールする。ここまでの一連の処理が終了すると、ステップS11に戻り、以降のステップが繰り返される。
【0034】
ステップS13あるいはステップS15における判定がNOである場合、つまり、“送り”あるいは“戻り”の判定が連続して10回続かなかった場合、前回の一連の処理終了後にスクロール制御信号の送信回数があと何回残っているかを判定する(S18)。送信回数が残っている場合は、ステップS19へ進み、送信部18からコンピュータへ前回と同じスクロール制御信号が送信される。一方、送信回数が残っていない場合は、ステップS19〜S22はスキップされ、その結果、送信部18からコンピュータへスクロール制御信号は送信されない。
【0035】
ステップS14における判定がNOである場合、つまり、マウス筐体2が“送り”あるいは“戻り”のいずれの方向にも傾いていないことが判定された場合は、ステップS18へ進む。そして、前述のとおり、前回の一連の処理終了後にスクロール制御信号の送信回数がまだ残っている場合はステップS19へ進み、送信部18からコンピュータへ前回と同じスクロール制御信号が送信される。一方、送信回数が残っていない場合は、ステップS19〜S22はスキップされ、送信部18からコンピュータへスクロール制御信号は送信されない。
【0036】
前述のように、“送り”あるいは“戻り”のスクロール方向を10回連続で検出してはじめてスクロール制御信号の送信回数をセットするのは、マウス筐体2の傾きが10回連続で検出されないような瞬時の傾きは、ユーザーの積極的な操作ではないことは明らかであり、このような不意の傾きのたびにスクロール操作が行われると、ユーザーに不快感を与えることになるためである。すなわち、図8に示すフローにおいては、マウス筐体2の傾き判定に遊びをもたせ、不意の傾きによるスクロールを防止している。本実施例では、後述のとおり、ステップS11からS22までを5msの周期で繰り返すので、50ms未満の傾き判定の遊びをもたせている。
【0037】
前記ステップS11からS22までの処理は、単位時間t(50ms)の中で、5msの周期で10回繰り返される。ステップS11からS18まではスクロール制御信号の送信回数をセットするための処理ブロックであり、前述のとおり、不意の傾きによるスクロールを防止するために、10サイクルをかけてスクロール制御回数の送信回数をセットする。ステップS19からS22までは、スクロール制御信号を送信するための処理ブロックであり、ステップS13あるいはS15でマウス筐体2の同一方向への傾きの連続回数がカウントされている間であっても、セットされたスクロール制御信号の送信回数に応じて、1サイクルにつき1回、スクロール制御信号の送信を行う。すなわち、単位時間t(50ms)内に、マウス筐体2の傾きの検出処理を行うと同時に、スクロール制御信号をコンピュータへ送信するので、制御信号の送信回数セットのためのタイムラグ、あるいは送信のためのタイムラグは生じない。この結果、マウス装置1を傾かせると瞬間的にスクロールスピードが変わるため、ユーザーは違和感を覚えずに直感的なスクロール操作を行うことができる。
【0038】
本発明は上記実施形態に限られることはなく、下記のような変形実施も可能である。
【0039】
例えば、本実施形態では姿勢検出部15をプッシュスイッチ7で構成したが、これに限らず、超音波、可視光、非可視光などを使って物体の近接や位置を無接触で検出する近接センサーを用いてもよい。あるいは、抵抗膜や静電膜などを使い、これに加わる圧力から物体の接触を検出する接触センサーを用いてもよい。また、光学式マウス装置では、マウス装置の2次元的な移動方向と距離を検出するためのイメージセンサーを筐体底面に設けているが、これを作業用平面との近接も検知できる構成とすることで、姿勢検出手段として流用することも可能である。あるいは、機械式マウス装置では、マウス装置の2次元的な移動方向と距離を検知するためのボールが内蔵されているが、このボールの上下移動を検知できる構成とすることで、姿勢検出手段として流用することも可能である。
【0040】
さらに、本実施形態のマウス装置1は、スクロール方向(“送り”と“戻り”)をそれぞれ、マウス筐体2の右又は左への傾きに対応づけるものであるが、これに限られるものではなく、マウス筐体2の右又は左への傾きを、”ページ送り”と”ページ戻り”に対応づけてもよく、あるいは、インターネットブラウザの”進む”と”戻る”に対応づけてもよい。加えて、マウス筐体2の右又は左への傾きをユーザーが任意の機能やキー操作に割り当て可能に構成してもよい。さらには、マウス筐体2の右又は左への傾きに代えて、マウス筐体2の前方又は後方の傾きについて同様の構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 マウス装置
2 マウス筐体
3 左クリックスイッチ
4 右クリックスイッチ
5 ホイール
6 開口
7 プッシュスイッチ
8 脚部(8a,8b,8c,8d)
12 移動情報検出部
13 ホイールエンコーダ
14 制御信号生成部
15 姿勢検出部
16 加速度検出部
17 記憶部
18 送信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底面に設けられて筐体の移動距離及び移動方向を検出する移動情報検出部と、
前記筐体の底面が作業用平面と平行且つ接するか否かを検出する姿勢検出部と、
前記筐体に加わる加速度を検出する加速度検出部と、
外部機器を制御するための信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号生成部によって生成された制御信号を外部機器に送信する送信部と、
を備え、さらに
前記制御信号生成部は、前記姿勢検出部によって前記筐体の底面が作業用平面と平行且つ接すると検出された場合に、前記移動情報検出部で検出された前記移動距離及び移動方向に基づき、外部機器のポインティング位置を制御するための第一の制御信号を生成し、前記姿勢検出部によって前記筐体の底面が作業用平面と平行ではない又は接していないと検出された場合のみに、前記加速度検出部によって検出された加速度に基づき、外部機器を操作するための第二の制御信号を生成する
ことを特徴とするマウス装置。
【請求項2】
前記制御信号生成部は、前記加速度検出部によって検出された加速度から求められる筐体の傾き及び傾き方向に基づき外部機器を操作するための第二の制御信号を生成することを特徴とする、請求項1に記載のマウス装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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