説明

マウス

【課題】どの方向から握っても利用可能なマウスを提供する。
【解決手段】マウス100は、マウス本体1と、マウス本体1を握った手Hの掌Pの、マウス本体1の基準位置に対する相対的な位置を取得可能な光学センサ2(位置取得手段)と、光学センサ2によって得られた相対位置情報に基づいて、マウス本体1を握っている手の方向を特定する握り方向特定部3(握り方向特定手段)と、を備えている。マウス本体1は平面視略円形状に形成されている。光学センサ2は、前記マウス本体1の周囲に設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパーソナルコンピュータ装置の入力装置として利用されるマウスに関し、詳しくは、どの方向から握ってもマウスを利用可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーソナルコンピュータ装置の入力装置として利用されるマウスのシェルは操作者が握り易いように手の形に合わせて成型されている。また、マウスのボタンは、上記シェルの形状に沿ってマウスを握ったときに、握った手の指先で無理なく操作できるような位置に配置されている。例えば、特許文献1の第1図を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−138248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなマウスは、一般に、マウスが握られた方向を識別することができない。従って、マウスのシェルに独特な形状を持たせたり、マウスのボタンを所定の位置に配置するなどして、ユーザーに、マウスの握る方向をある特定の方向に強制させるものであった。従って、マウスを操作するには、握る前に予めマウスの置かれている方向を正す必要があった。このような作業は健常者から見れば極めて容易いことであるが、体の動きに不自由を抱えている方から見れば決して容易い作業などではなく、結果として、そのような方に対してパーソナルコンピュータに対する潜在的な苦手意識を抱かせることとなっていた。
【0005】
本願発明の目的は、上述した課題を解決するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の観点によれば、以下のように構成されるマウスが提供される。即ち、マウスは、マウス本体と、前記マウス本体を握った手の掌の、前記マウス本体の基準位置に対する相対的な位置を取得可能な位置取得手段と、前記位置取得手段によって得られた相対位置情報に基づいて、前記マウス本体を握っている手の方向を特定する握り方向特定手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、どの方向から握っても利用可能なマウスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の第1実施形態に係るマウスの斜視図
【図2】図2(a)は本願発明の第2実施形態に係るマウスの斜視図であり、図2(b)はマウスが手で握られている状態を示す図
【図3】各出力信号の説明図
【図4】上記マウスの機能ブロック図
【図5】マウス制御部の動作説明図
【図6】マウス制御部の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、図1を参照しつつ、本願発明の第1実施形態を説明する。本実施形態に係るマウス100は、マウス本体1と、マウス本体1を握った手Hの掌Pの、マウス本体1の基準位置に対する相対的な位置を取得可能な光学センサ2(位置取得手段)と、光学センサ2によって得られた相対位置情報に基づいて、マウス本体1を握っている手の方向を特定する握り方向特定部3(握り方向特定手段)と、を備えている。
【0010】
上記握り方向特定部3の存在により、ユーザーに、マウス本体1の握る方向をある特定の方向に強制させる設計思想を取り払うことができる。この結果、どの方向から握っても利用可能なマウスが実現される。
【0011】
<第2実施形態>
次に、図2〜図6を参照しつつ、本願発明の第2実施形態を説明する。本実施形態に係るマウス100は、上記第1実施形態に係るマウス100の構成要素をすべて取り込んでいる。上記第1実施形態に係る構成要素と対応する構成要素については原則として同一の符号を付すこととし、重複する説明については適宜、割愛する。
【0012】
図2及び図4に示すように、本実施形態に係るマウス100は、マウス本体1と、マウス制御部4と、を主たる構成として備えている。
【0013】
マウス本体1は、図2(a)に示すように平面視略円形状の背の低い円柱形状となっており、少なくとも平面視では方向性を持たない形状が採用されている。マウス本体1は、周面1aと、上面1b、下面1cを有している。マウス本体1には、光学センサ2と、圧力センサ5(クリック動作位置検出手段)と、タッチパッド6(水平動作方向検出手段)と、移動検知センサ7(移動動作方向検出手段)と、が設けられている。光学センサ2は、マウス本体1の周面1aの上端部に環状に設けられている。圧力センサ5は、マウス本体1の周面1aの下端部に環状に設けられている。タッチパッド6は、マウス本体1の上面1bに設けられている。移動検知センサ7は、マウス本体1の下面1cに設けられている。このマウス100は、図2(b)に示すように、マウス本体1の上面1bに手Hを被せ、マウス本体1を軽く握るようにして使用するようになっている。
【0014】
上記光学センサ2は、マウス本体1を握った手Hの掌Pの、マウス本体1の基準位置に対する相対的な位置を取得可能なものである。光学センサ2は、例えば限定反射型ビームセンサを含んで構成されている。本実施形態において、マウス本体1の基準位置は、図3に示すように、マウス本体1の底面視中心点1dから周面1aに向かって引いた基準線1eである。そして、光学センサ2は、図3に示すように、掌Pを符号19で示すように検出し、この検出領域19の円弧方向中心点19aを定める。光学センサ2は、マウス本体1の底面視中心点1dと上記円弧方向中心点19aを結んだ線19bが上記の基準線1eと成す底面視時計回りの角度θ1(相対的な位置、相対位置情報)を求める。光学センサ2は、この角度θ1を相対位置信号としてマウス制御部4に送信する。
【0015】
上記圧力センサ5は、マウス本体1上でクリック動作が行われたとき、そのクリック動作の位置を検出可能なものである。圧力センサ5は、例えば圧力分布を測定可能な面圧センサ(シートセンサ)を含んで構成されている。上記の「クリック動作」とは、例えば指Fで圧力センサ5を軽く叩くような動作を意味する(図2(b)参照)。そして、圧力センサ5は、図3に示すように、クリック動作の位置を符号20で示すように検出し、マウス本体1の底面視中心点1dと検出領域20の中心を結んだ線20aが上記基準線1eと成す底面視時計回りの角度θ2を求める。圧力センサ5は、この角度θ2をクリック位置信号としてマウス制御部4に送信する。
【0016】
上記タッチパッド6は、マウス本体1上で指Fの水平動作が行われたとき、その水平動作の方向を検出可能なものである。タッチパッド6は、図3に示すように、水平動作の方向Dsを検出し、この方向Dsが上記基準線1eと成す底面視時計回りの角度θ3を求める。タッチパッド6は、この角度θ3を水平移動方向信号としてマウス制御部4に送信する。
【0017】
上記移動検知センサ7は、マウス本体1の移動動作が行われたとき、その移動動作の方向を検出可能なものである。移動検知センサ7は、図3に示すように、マウス本体1の移動動作の方向Dmを検出し、この方向Dmが上記基準線1eと成す底面視時計回りの角度θ4を求める。移動検知センサ7は、この角度θ4を移動方向信号としてマウス制御部4に送信する。
【0018】
次に、図4に基づいて、マウス100の電気的構成について説明する。図4に示すように、マウス100は、上記マウス本体1に加えて、光学センサ2と、圧力センサ5、タッチパッド6、移動検知センサ7、マウス制御部4、を備えている。マウス100は、PC本体200と通信するための無線モジュール8を更に備えている。
【0019】
マウス制御部4は、中央演算処理器としてのCPU9(Central Processing Unit)と、読み書き自在の記憶手段としてのRAM10(Random Access Memory)と、読み出し専用の記憶手段としてのROM11(Read Only Memory)と、を備えている。そして、CPU9がROM11に記憶されている制御プログラムを読み込んで実行することで、制御プログラムは、CPU9などのハードウェアを、握り方向特定部3やクリック領域設定部12、クリック動作判定部13、スクロール動作方向判定部14、移動動作方向判定部15、無線通信部16、として機能させるようになっている。また、マウス制御部4は、バス17とI/Oポート18を更に備えている。この構成で、光学センサ2や圧力センサ5、タッチパッド6、移動検知センサ7が出力した各種の信号はI/Oポート18とバス17を介してRAM10に記憶されるようになっている。
【0020】
上記握り方向特定部3は、図5に示すように、RAM10から読み出した相対位置信号(角度θ1)に基づいて、マウス本体1を握っている手Hの方向Dhを特定し、マウス本体1を握っている手Hの方向Dhと基準線1eとの成す角度θhをRAM10に記憶させる。本実施形態において握り方向特定部3は、相対位置信号から読み取った角度θ1から180を引いて得た角度θhを用いて上記方向Dhを特定する。概略的に言えば、光学センサ2と握り方向特定部3は、手Hの掌Pによって遮蔽される遮蔽領域を常時監視し、大きく遮蔽された部分に掌Pが存在すると認識し、掌Pの位置を認識することにより、遮蔽領域の中心とマウス本体1の中心から、マウス本体1の握られている向きを特定する、と言うことができる。
【0021】
上記クリック領域設定部12は、図6に示すように、RAM10から読み出した角度θhに基づいて、マウス本体1上にクリック領域30を設定する。本実施形態においてクリック領域設定部12は、図6に示すように、クリック領域30として、左クリック領域31と右クリック領域32を設定する。そして、クリック領域設定部12は、設定したクリック領域30(左クリック領域31と右クリック領域32)をRAM10に記憶させる。具体的には、クリック領域設定部12は、例えば右クリック領域32について言えば、基準線1eに対する右クリック領域32の相対的な角度範囲の開始角度θxと終了角度θyをRAM10に記憶させる。クリック領域設定部12は、角度θhから5を引くことで開始角度θxを求め、角度θhに5を加えることで終了角度θyを求める。一方で、左クリック領域31について言えば、クリック領域設定部12は、角度θhに20を加えた角度と、角度θhに30を加えた角度と、に基づいて左クリック領域31を設定する。
【0022】
上記クリック動作判定部13は、RAM10からクリック位置信号(角度θ2)を読み込んで取得し、クリック動作の位置が上記の左クリック領域31内であったとき、左クリック動作が行われたと判定する。同様に、クリック動作判定部13は、クリック動作の位置が上記の右クリック領域32内であったとき、右クリック動作が行われたと判定する。クリック動作判定部13は、上記の判定結果であるクリック信号を無線通信部16に送信する。
【0023】
上記スクロール動作方向判定部14は、RAM10から読み出した角度θhと上記の水平移動方向信号(角度θ3)に基づいて、スクロール動作の方向を判定する。具体的には、スクロール動作方向判定部14は、図3に示す角度θ3から図5に示す角度θhを引くことで、スクロール動作の方向を判定する。スクロール動作方向判定部14は、上記の判定結果であるスクロール信号を無線通信部16に送信する。
【0024】
上記移動動作方向判定部15は、RAM10から読み出した角度θhと上記の移動方向信号(角度θ4)に基づいて、マウス100を握る手Hの方向Dhに対するマウス本体1の移動動作の方向を判定する。具体的には、移動動作方向判定部15は、図3に示す角度θ4から図5に示す角度θhを引くことで、マウス100を握る手Hの方向Dhに対するマウス本体1の移動動作の方向を判定する。移動動作方向判定部15は、上記の判定結果であるマウス移動信号を無線通信部16に送信する。
【0025】
無線通信部16は、クリック動作判定部13から受信したクリック信号や、スクロール動作方向判定部14から受信したスクロール信号、移動動作方向判定部15から受信したマウス移動信号を無線モジュール8に転送する。無線モジュール8は、無線通信部16から受信した各種の信号を所定の周波数帯の電波を利用してPC本体200に送信する。
【0026】
<まとめ>
(1、4)以上説明したように本実施形態に係るマウス100は、マウス本体1と、前記マウス本体1を握った手Hの掌Pの、前記マウス本体1の基準線1e(基準位置)に対する相対的な位置(角度θ1)を取得可能な光学センサ2と、光学センサ2によって得られた相対位置情報(角度θ1)に基づいて、前記マウス本体1を握っている手Hの方向Dhを特定する握り方向特定部3と、を備えている。上記握り方向特定部3の存在により、ユーザーに、前記マウス本体1の握る方向Dhをある特定の方向に強制させる設計思想を取り払うことができる。この結果、どの方向から握っても利用可能なマウス100が実現される。
【0027】
(2)また、マウス本体1は平面視略円形状に形成されている。以上の形状によれば、前記マウス本体1を握るに際し、握る方向を一瞬迷うことになるユーザーの心理的負担を取り除くことができる。
【0028】
(3)また、光学センサ2は、前記マウス本体1の周囲に設けられていることが好ましい。
【0029】
(5)また、マウス100は、前記マウス本体1上でクリック動作が行われたとき、そのクリック動作の位置を検出可能な圧力センサ5と、握り方向特定部3によって特定された手Hの方向Dhに基づいて、前記マウス本体1上にクリック領域30を設定するクリック領域設定部12と、前記圧力センサ5によって検出されたクリック動作の位置が前記クリック領域設定部12によって設定されたクリック領域30内であったとき、クリック動作が行われたと判定するクリック動作判定部13と、を更に備えている。以上の構成によれば、前記マウス本体1をどの方向から握っても、左クリックや右クリックといったクリック動作を精確に検出することができる。
【0030】
(6)また、マウス100は、前記マウス本体1上で指Fの水平動作が行われたとき、その水平動作の方向を検出可能なタッチパッド6と、握り方向特定部3によって特定された手Hの方向Dhと、タッチパッド6によって検出された水平動作の方向Dsと、に基づいて、スクロール動作の方向を判定するスクロール動作方向判定部14と、を更に備えている。以上の構成によれば、前記マウス本体1をどの方向から握っても、スクロール動作を精確に検出することができる。
【0031】
(7)また、マウス100は、前記マウス本体1の移動動作が行われたとき、その移動動作の方向Dmを検出可能な移動検知センサ7と、握り方向特定部3によって特定された手Hの方向Dhと、移動検知センサ7によって検出された移動動作の方向Dmと、に基づいて、前記手Hの方向Dhに対する前記マウス本体1の移動動作の方向を判定する移動動作方向判定部15と、を更に備えている。以上の構成によれば、前記マウス本体1をどの方向から握っても、例えばマウスカーソルなどの移動対象物を所望の方向へ動かすことができる。
【0032】
以上に説明したマウス100は、更に、以下の技術的意義を有している。即ち、体の不自由な方がマウスを操作する場合、もし握る方向を気にせずに利用できるマウスが存在すれば、マウスの向きを正しくするという無駄な労力を使わずにマウスの操作を開始することができる。この点、コンピュータのバリアフリー化という観点から有用である。
【0033】
また、利き手でメモをとりながら電話の受話器を肩に挟みつつ、空いた手でマウス操作を行う場合などは、非常に不自然な体勢でマウスの操作を行うこととなる。このような場合、マウスの形状が利き手専用になっていることや、体の動作に制限があることもあり、マウスの利用が非常に行い辛いということを度々経験した。そこで、上述したマウス100を用いれば、握る方向に囚われることがない。
【0034】
上記のマウス100の利用可能な分野としては、手の身体動作に不自由を抱えている人や寝たきりの方が利用するパーソナルコンピュータのマウスが挙げられる。
【0035】
以上の本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0036】
即ち、移動検知センサ7としては、公知のボール式であっても光学式であってもどちらでもよい。
【0037】
マウス100とPC本体200との接続は、例示の無線接続に限らず、有線接続であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 マウス本体
2 光学センサ(位置取得手段)
3 握り方向特定部(握り方向特定手段)
4 マウス制御部
100 マウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウス本体と、
前記マウス本体を握った手の掌の、前記マウス本体の基準位置に対する相対的な位置を取得可能な位置取得手段と、
前記位置取得手段によって得られた相対位置情報に基づいて、前記マウス本体を握っている手の方向を特定する握り方向特定手段と、
を備えたマウス。
【請求項2】
請求項1に記載のマウスであって、
前記マウス本体は平面視略円形状に形成されている、
マウス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマウスであって、
前記位置取得手段は、前記マウス本体の周囲に設けられている、
マウス。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のマウスであって、
前記位置取得手段は、光学センサである、
マウス。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のマウスであって、
前記マウス本体上でクリック動作が行われたとき、そのクリック動作の位置を検出可能なクリック動作位置検出手段と、
前記握り方向特定手段によって特定された手の方向に基づいて、前記マウス本体上にクリック領域を設定するクリック領域設定手段と、
前記クリック動作位置検出手段によって検出されたクリック動作の位置が前記クリック領域設定手段によって設定されたクリック領域内であったとき、クリック動作が行われたと判定するクリック動作判定手段と、
を更に備えた、
マウス。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のマウスであって、
前記マウス本体上で指の水平動作が行われたとき、その水平動作の方向を検出可能な水平動作方向検出手段と、
前記握り方向特定手段によって特定された手の方向と、前記水平動作方向検出手段によって検出された水平動作の方向と、に基づいて、スクロール動作の方向を判定するスクロール動作方向判定手段と、
を更に備えた、
マウス。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のマウスであって、
前記マウス本体の移動動作が行われたとき、その移動動作の方向を検出可能な移動動作方向検出手段と、
前記握り方向特定手段によって特定された手の方向と、前記移動動作方向検出手段によって検出された移動動作の方向と、に基づいて、前記手の方向に対する前記マウス本体の移動動作の方向を判定する移動動作方向判定手段と、
を更に備えた、
マウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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