マウンタ装置の加圧制御ヘッド
【課題】マウンタ装置において、加圧制御ヘッドをシンプルな構成で低コストに提供する。
【解決手段】部品を吸着するノズル131の高さを位置決めするサーボモータ23と、ノズル131が吸着した部品を基板に押し付ける荷重を制御できる加圧制御ヘッド13とを備えるマウンタ装置であって、前記サーボモータ23を、ノズル131が部品を基板に加圧する加圧源としても利用し、前記サーボモータ23の指令レベル論理座標と実際座標の差によって生じる当該サーボモータ23の発生出力トルクにより加圧圧力を可変とする。
【解決手段】部品を吸着するノズル131の高さを位置決めするサーボモータ23と、ノズル131が吸着した部品を基板に押し付ける荷重を制御できる加圧制御ヘッド13とを備えるマウンタ装置であって、前記サーボモータ23を、ノズル131が部品を基板に加圧する加圧源としても利用し、前記サーボモータ23の指令レベル論理座標と実際座標の差によって生じる当該サーボモータ23の発生出力トルクにより加圧圧力を可変とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を基板に搭載するマウンタ装置の加圧制御ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品のマウンタ装置として、例えば特許文献1により、部品を吸着保持して移送するノズルを基板面へ降下させるZ軸モータと、部品を基板面に向けて加圧するVCM(ボイスコイルモータ)と、ノズルを水平方向に回転し部品の搭載角度を調整するθモータとを備える搭載ヘッドが知られる。
特許文献1のように、搭載荷重を制御することのできる搭載ヘッドでは、XY機構上に載置されたマウンタヘッドのノズル先端が、XY動作によって、搭載する基板上の部品や、その他、基板周辺のマウンタ機構部に接触する可能性のない第1のZ軸高さと、ノズルの吸着している部品が基板面に接触を開始する直前の第2のZ軸高さと、部品が基板面に接触し、VCMなどによって加圧する第3のZ軸高さとを持っている。
特許文献1によれば、第1の高さから第2の高さへの移動はZ軸モータによりなされ、第2の高さから第3の高さへの移動はVCMによって実行される。
【0003】
また、このようなVCMの他、加圧手段として、例えば特許文献2のような流体による加圧方式、例えば特許文献3のような圧縮ばねによる加圧方式などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−147640号公報
【特許文献2】特開平10−27996号公報
【特許文献3】特開2007−27408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方式では、ヘッドの昇降手段に加え、特許文献1・2のような加圧手段を必要とするため、コストが高く構造の複雑化が避けられない。
すなわち、特許文献1では、VCMを加圧手段とした場合は、ロードセルなどの荷重検出手段によってノズルへの印加荷重を計測し、目標荷重になるようVCMの出力をフィードバック制御する。
このようなVCM方式は比較的高精度であるが、高荷重を実現する場合にはVCMの大型化が避けられない。
また、特許文献2のように、電空レギュレータなどによって圧力制御された空気圧によって加圧力を得る方式においては、電空レギュレータやエアープランジャーなどのコストが高く、またヘッドサイズも比較的大きくなるため、広い荷重範囲を高精度に制御する場合に適用される。
【0006】
また、特許文献3のばね力を加圧源とする方式では、低コストではあっても、広い荷重範囲をカバーする高精度なばねの実現が困難であった。
すなわち、特許文献3のように、ばねの圧縮力/引張り力によって加圧力を得る方式においては、安価でコンパクトな構成を実現できる反面、1N〜50Nのように広い荷重範囲を持ったばねを用いる場合、高い精度を実現することが困難であるため、比較的に荷重範囲の狭い用途にしか適用できない。
【0007】
本発明の課題は、マウンタ装置において、加圧制御ヘッドをシンプルな構成で低コストに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、部品を吸着するノズルの高さを位置決めするサーボモータと、ノズルが吸着した部品を基板に押し付ける荷重を制御できる加圧制御ヘッドとを備えるマウンタ装置であって、前記サーボモータを、前記ノズルが部品を基板に加圧する加圧源としても利用し、前記サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標の差によって生じる当該サーボモータの発生出力トルクにより加圧圧力を可変とすることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッドであって、前記発生出力トルクを、前記サーボモータの設定荷重に対応して調節することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッドであって、 前記発生出力トルクを、前記サーボモータの位置フィードバックゲインを含む制御パラメータに基づいて可変とするようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッドであって、 前記制御パラメータは、積分補償型ゲインパラメータの有効性を低く設定したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヘッドの高さを位置決めするサーボモータを、ノズルの加圧を行う加圧源としても利用するため、加圧制御ヘッドをシンプルな構成で低コストに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したマウンタ装置の一実施形態の構成を示す概略構成図である。
【図2】マウンタ装置の制御系の構成図である。
【図3】搭載ヘッド部の機構系の構成図である。
【図4】ひずみゲージの出力電圧と荷重値の関係を示すグラフである。
【図5】部品と基板の位置関係に対するZ軸モータ速度、検出荷重、目標荷重、Z軸目標座標を示したグラフである。
【図6】モータ軸変移角度(モータ軸の目標座標と実座標の差)と発生トルクの関係を実測したグラフである。
【図7】ノズル先端に吸着された部品が基板面に当接した後の基板面が受ける荷重の変化を実測したグラフである。
【図8】搭載ヘッド部の機構系の構成図である。
【図9】加圧搭載動作について説明するグラフである。
【図10】実際に荷重制御した際のモータの電流波形を示すもので、送り量が小さい時のグラフである。
【図11】実際に荷重制御した際のモータの電流波形を示すもので、送り量が大きい時のグラフである。
【図12】本発明の一実施例として電子部品搭載装置の構成を示す概略構成図である。
【図13】搭載ヘッド部の機構系の構成図である。
【図14】部品搭載時を示した図である。
【図15】吸着ノズルの構成を示すもので、通常時(接触時)を示した図(a)と、リジット時を示した図(b)である。
【図16】加圧波形を示したグラフである。
【図17】圧力検出部の出力波形を示したグラフである。
【図18】実施において必要な機械的構成を示す概略図である。
【図19】制御に関する構成を示したブロック図である。
【図20】加圧力を制御する準備の手順を示すフローチャートである。
【図21】モータ駆動電流に対する加圧値の関係を示すグラフである。
【図22】搭載の低加圧域制御を示すフローチャートである。
【図23】搭載の高加圧域制御を示すフローチャートである。
【図24】荷重制御用のモータゲインを示すグラフである。
【図25】エラー判定処理シーケンスを示すフローチャートである。
【図26】加圧搭載時と同じ条件でZ軸を一定速度で下降させたときの電流値波形を示すグラフである。
【図27】コギングトルク値の取得シーケンスを示すフローチャートである。
【図28】軸の動作ゲインを変更して同じ電流波形を取得した結果を示すグラフである。
【図29】軸の状態変化による電流値の変化を示すグラフである。
【図30】計算式の取得を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
<発明の概要1>
本発明では、Z軸を昇降駆動するZ軸モータを唯一の駆動源として、Z軸の昇降駆動と加圧制御を実現するものである。
このような目標を実現する構造としては、特許文献3に示されたように、加圧用のばねを設け、ばねの圧縮に応じた圧力をノズルに伝えるようにするのが一般的であるが、加圧用ばねを用いない工夫として、Z軸の目標高さ位置(=サーボモータの指令レベル論理座標)と実際の高さ位置(=サーボモータの実際座標)の差に応じて、サーボモータ(駆動回路に組み込まれた電流増幅回路が位置偏差と位置制御ゲインに応じた電流をモータ巻き線に通じる)の発生出力トルクが発生することを原理とした。
このため、ノズル先端を加圧すると、サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標に差が生じ、モータの発生出力トルクが増加する現象を生じる。ノズルの圧力値が増減すると、前記「サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標の差」が変化し、ばねを用いた加圧構造と同様な効果を生じる。
即ち、位置制御において目標位置と実際位置との偏差を検知した場合に、フィードバックゲインを高くした場合にはその偏差をゼロにするように高トルクで駆動されるが、ゲインが低い場合には低トルクで駆動されるため、この発生出力トルクを適宜の値になるようにゲインを選択することでばねの強さを任意に設定できる。
従って、後述するようにノズルに吸着した電子部品を降下して基板に当接する瞬間を検出するときのゲイン、及び基板面に電子部品を所定の圧力で所定時間押し圧する時のゲインを適宜に選択することで所望の荷重制御を行うことができる。
【0015】
このように、前記ばね効果は設定された位置制御ゲインにも比例する特徴を持つため、前記サーボモータの発生出力トルクを、設定荷重に対応して前記サーボモータの位置制御のフィードバックゲインを適宜に設定することで任意に調節することができるため、低荷重から高荷重まで広範囲に同一構造で対応することが可能である。
【0016】
また、本発明では、特許文献1に示されたように「部品が基板面に当接したことを検知してZ軸駆動モータを位置制御からトルク制御に切り替える」必要がない。
すなわち、XY機構上に載置されたマウンタヘッドのノズル先端が、XY動作によって、搭載する基板上の部品や、その他、基板周辺のマウンタ機構部に接触する可能性のない第1の高さから、ノズルの吸着している部品が基板面に接触を開始する直前の第2のZ軸高さまでは、搭載処理性能改善のためにZ軸を高速で移動させる。
そして、第2の高さから部品の加圧処理を含む部品搭載完了までは、Z軸モータを位置制御状態のまま低速度(4mm/秒程度)で下降(ノズルを基板面に向けて進める)させ、ロードセルの計測結果が設定された荷重に達したときにモータの駆動を停止する。
また、モータの実座標が目標座標に達するまでは、ロードセルの計測値が設定値を超えない限り下降を繰り返すよう制御される。
【0017】
以上述べたように、部品が基板面に当接してからモータをトルク制御に切り替える必要が無く、常に位置制御モードでZ軸モータが運転されることにより、部品を搭載する高さ座標を管理しつつ、ロードセルの計測結果を参照した確実な加圧搭載を実現することができる。
【0018】
(実施形態1)
<マウンタの構造>
図1は電子部品実装装置(マウンタ装置)の概略構成図である。
図示のように、電子部品実装装置1は、中央部から少し後方で左右方向に延在する回路基板搬送路15と、装置1の前部(図示の下側)に配設され、回路基板10に実装される部品を供給する部品供給部11と、当該装置1の前部に配設されたX軸移動機構12とY軸移動機構14を備えている。
【0019】
部品供給部11の側部には、吸着ノズル131に吸着された部品を下方から撮像する部品認識カメラ(撮像手段)16が配置されている。
X軸移動機構12は、部品を吸着する吸着ノズル131を備えた搭載ヘッド部13(加圧制御ヘッド)をX軸方向に移動させる。
搭載ヘッド部13は、X軸移動機構12と接続されている。
Y軸移動機構14は、X軸移動機構12、並びに搭載ヘッド部13をY軸方向に移動させる。
搭載ヘッド部13は、吸着ノズル131を垂直方向(Z軸方向)に昇降可能に移動させるZ軸移動機構を備え、また、吸着ノズル131を、ノズル軸(吸着軸)を中心に回転させるθ軸移動機構を備えている。
また、搭載ヘッド部13には、支持部材に取付けるようにして、回路基板10上に形成された基板マークを撮像する基板認識カメラ17が搭載されている。
【0020】
図2は電子部品実装装置の制御系の構成を示している。図中、20は装置全体を制御するマイクロコンピュータ(CPU)、並びにRAM、ROMなどからなるコントローラ(制御手段)であり、このコントローラ20に、X軸モータ21から表示装置(モニタ)31が接続され、それぞれを制御している。
【0021】
X軸モータ21は、X軸移動機構12の駆動源で、搭載ヘッド部13をX軸方向に移動させる。
また、Y軸モータ22は、Y軸移動機構14の駆動源で、X軸移動機構12をY軸方向に駆動し、それにより搭載ヘッド部13はX軸方向とY軸方向に移動可能となる。
【0022】
Z軸モータ23は、吸着ノズル131を昇降させるZ軸駆動機構(不図示)の駆動源で、吸着ノズル131をZ軸方向(高さ方向)に昇降させる。
また、θ軸モータ24は、吸着ノズル131のθ軸回転機構(不図示)の駆動源で、吸着ノズル131をそのノズル中心軸(吸着軸)を中心にして回転させる。
【0023】
画像認識装置27は、吸着ノズル131に吸着された部品18の画像認識を行なうもので、A/D変換器271、メモリ272及びCPU273から構成される。
そして、吸着された部品18を撮像した部品認識カメラ16から出力されるアナログの画像信号をA/D変換器271によりデジタル信号に変換してメモリ272に格納し、CPU273がその画像データに基づいて吸着された部品の認識を行なう。
すなわち、画像認識装置27は、部品中心と吸着角度を演算し、部品の吸着姿勢を認識する。
また、画像認識装置27は、基板認識カメラ17で撮像された基板マークの画像を処理して基板マーク位置を演算する。
また、画像認識装置27は、部品認識カメラ16で撮像された部品18の画像データと基板認識カメラ17で撮像された基板マークデータを処理して、両方の補正データを制御手段20へ転送する。
【0024】
キーボード28とマウス29は、部品データなどのデータを入力するために用いられる。
記憶装置30は、フラッシュメモリなどで構成され、キーボード28とマウス29により入力された部品データ、及び不図示のホストコンピュータから供給される部品データなどを格納するのに用いられる。
表示装置(モニタ)31は、部品データ、演算データ、及び部品認識カメラ16で撮像した部品18の画像などをその表示面311に表示する。
【0025】
実際に、基板の生産を開始し、部品を回路基板に搭載する段階では、予め基板認識カメラ17で撮像された基板マークによる回路基板10の基板補正データ(Δx、Δy、Δθ)は記憶装置30に格納されている。
そして、部品供給装置11から供給される部品を吸着ノズル131で吸着し、搭載ヘッド部13を部品認識カメラ16上部に移動させて、部品を同カメラで撮像する。
撮像された部品の画像は、画像認識装置27で画像処理され、補正データを制御手段20へ転送する。
制御手段20は、記憶装置30から基板補正データと当該部品の部品データを読み出して、この部品データと前記転送された画像認識装置27で演算された部品中心と部品の傾きをもとに、部品の搭載位置と吸着姿勢を認識する。
続いて、部品搭載位置と部品中心と吸着中心間に位置ずれがあり、また、角度ずれが検出されると、これらの総合位置ずれと角度ずれがX軸モータ21、Y軸モータ22、θ軸モータ24を駆動することにより補正され、部品が所定の回路基板位置に正しい姿勢(基準角度)で搭載される。
【0026】
次に、搭載ヘッド部13について図3を使用して説明を行う。
【0027】
図示のように、搭載ヘッド部13のベースフレーム100にリニアガイド101が設置され、垂直Z駆動部102が垂直Z軸方向に移動可能な構造となっている。
搭載ヘッド部13上部には、垂直Z駆動部102を垂直上下動させるためのZ軸モータ23がベースフレーム100に固定され、このZ軸モータ23にカップリング110を介してボールねじのねじ部111が接続されている。
【0028】
また、部品を回転動作させるためのθ軸モータ24は、スプライン軸受107と回転ベアリング106で構成されて外周部にベルトプーリが取付けられた垂直回転駆動部軸受105と、θモータプーリ108とタイミングベルト109を介して接続されている。
垂直回転駆動部軸受105は、内部にスプライン軸受107があり、スプライン軸であるノズルシャフト104と接続されている。
垂直回転駆動部軸受105の外周部には、回転ベアリング106が取付けられている。この回転ベアリング106の外周がベースフレーム100に固定されていて、ノズルシャフト104は、垂直回転駆動部軸受105によって回転動作と上下動作ができるように固定されている。
【0029】
垂直Z駆動部102の一端には、ボールねじのねじ部111に噛み合うナット部118が固定されている。
従って、Z軸モータ23を回転動作させることにより、ボールねじのナット部118によって垂直Z駆動部102が上下に駆動される構造となっていて、ノズルシャフト104及び吸着ノズル131を上下駆動動作できる。
【0030】
また、垂直Z駆動部102には、ノズルシャフト104を回転支持するために、下側回転ベアリング141、上側回転ベアリング142が設置されている。
垂直Z駆動部102のノズルシャフト104とボールねじのナット部109の間に円形の穴形状である変形部112が設けられている。この変形部112に、ひずみゲージ113が取付けられている。
ひずみゲージ113は、ひずみゲージ113の出力電圧と荷重値の関係は、予め校正をとって図4のような関係をとり、コントローラ20に保存してある。
なお、ひずみゲージ113は、適切な構造変更を伴ってロードセルに置き換えることができる。
【0031】
また、ベースフレーム100には、垂直Z駆動部102のリニアガイド101側の固定部付近を検出するように原点センサ114が固定されている。
【0032】
次に、電子部品の加圧搭載動作の流れを説明する。
【0033】
図1の搭載ヘッド13をX軸移動機構12、Y軸移動機構14を動作させて電子部品供給装置11の上方に搭載ヘッド部13を移動し、電子部品18を吸着する。
電子部品18を吸着した搭載ヘッド部13を部品認識カメラ16の上方へ移動し、電子部品18を認識する。
認識を完了した後に搭載ヘッド部13を移動し、回路基板10上の電子部品18の搭載予定部に搭載ヘッド部13にて電子部品18を吸着して部品認識カメラ16上に移動し、電子部品18を部品認識カメラ16上で認識し、回路基板10上の搭載位置へ移動して搭載を行う。
【0034】
次に、荷重制御による部品搭載動作について説明する。
【0035】
搭載ヘッド部13を回路基板10上の部品搭載位置でZ軸モータ23を駆動させて、垂直Z駆動部102及び吸着ノズル131を下降させる。
吸着ノズル131に吸着された部品18を、搭載する回路基板10への搭載高さ直前位置(Z1)まで高速で降下させる。
その後、Z軸モータ23を駆動して、吸着ノズル131に吸着された部品18を4mm/秒程度の低速度で下降させて衝撃荷重を押さえつつ、目標搭載高さまで下降させる。
電子部品18の下面が回路基板10に接触(0)すると検出部112が変形し、ひずみゲージ113の出力に変化(L0→L1)が生じる。
さらに、ひずみゲージ113の出力が目標の加圧量になるようにZ軸モータ23を駆動させる。
ひずみゲージ113の出力が目標荷重値に対応する出力(L2)となった時にZ軸モータ23を停止させる。
電子部品18を加圧搭載した後にバキュームエアをOFFし、Z軸モータ23を動作させて垂直Z軸駆動部102及び吸着ノズル131を上昇させる。
その後、次の電子部品の吸着位置へ移動が行なわれる。
【0036】
次に原点復帰動作について説明する。
【0037】
Z軸駆動部102を原点センサ114の検出範囲から離れる位置(例えば2mm)下降移動させる。
その後、原点復帰速度10mm/秒にて、上昇をさせる。
原点センサ114の検出ONの高さ(A0)をZ軸モータのエンコーダ値から読取り、CPU27Cに記憶しておく。
Z軸駆動部102が原点センサ114を検出した直後に検出されるZ軸モータ23のエンコーダ原点の位置を、Z軸駆動部102の原点とすることで、電源オフ/オンを繰り返してもZ軸原点の高精度な再現性が得られる。
【0038】
<動作の説明>
図5において、「1」はXY機構上に載置されたマウンタヘッドのノズル先端が、XY動作によって、搭載する基板上の部品や、その他基板周辺のマウンタ機構部に接触する可能性のない第1の高さであり、「2」はノズルの吸着している部品が基板面に接触を開始する直前の第2のZ軸高さである。
【0039】
第1の高さ「1」から第2の高さ「2」までは、搭載性能の低下を最小化するため高速に降下する(900mm/秒程度)。このとき、ノズルの下降位置制御を高精度で実現するため通常の位置制御を行うためゲインを高く設定している。
【0040】
第2の高さ「2」では、モータ軸を一端停止させ、ゲインを低く設定した後、軸降下を再開する。
ここで、モータ速度を低速(4mm/秒)として、モータ位置制御モードにおいて発生トルクを生成するゲインを、必要とする設定荷重に応じて設定する。前記発生出力トルクを、前記サーボモータの位置フィードバックゲインを含む制御パラメータに基づいて可変する。
その他、ゲインの制御パラメータとしての設定特性を、積分補償型ゲインパラメータを少なく設定したゲインに変更する。
サーボモータの発生トルクは位置フィードバックゲインと位置偏差に応じて決まるが、位置偏差量とその状態の継続時間に応じても発生トルクのフィードバック調整が機能するため、積分補償型ゲインなどの時間軸を要素とするフィードバック機能を小さく設定し、安定な加圧力を得ようとするものである。
【0041】
図5において、「3」は部品下面と基板面の当接点である。
【0042】
ロードセルの計測結果が指定荷重値に達しない限り、継続してZ軸を降下させるため、ノズル先端に吸着された部品が基板面に当接して、降下を妨げられると、モータ軸の目標座標と実座標の乖離が進むため、前記のゲイン設定の結果サーボモータの発生トルクが増加し、ロードセルの計測結果も、モータ軸の目標座標が進むにつれて暫増する。
【0043】
図6はモータ軸変移角度(モータ軸の目標座標と実座標の差)と発生トルクの関係を実測したグラフである。横軸は、前記座標の差をモータ軸の回転角度(10度〜60度)で示している。
発生トルクは、設定ゲイン10〜設定ゲイン100を数値10ごとに評価している。
このように、モータ軸変移角度とゲインとモータ出力トルクはおおむね比例関係にある。従って、前記のように設定荷重 (部品の種別により異なる部品の基板面への押圧力) 対応して、発生出力トルクを前記サーボモータのフィードバックゲインを選択することにより調節することができる。
【0044】
図7はノズル先端に吸着された部品が基板面に当接した後の、基板面が受ける荷重の変化を実測したものである(Z軸速度=10mm/秒、ヘッド部質量=250g)。
前記部品が基板面に当接した直後に縦軸に示す荷重は急峻に立ち上がり、以降時間の推移に比例して荷重が増加する。
この急峻に立ち上がる荷重部分は、主にヘッド可動部の持つ質量による衝撃荷重が計測されたものである。
【0045】
図5において、「4−1」に示すとおり、ロードセルの計測結果が設定荷重を上回ると、Z軸モータの駆動が停止される。
実装機の操作設定により、最低加圧継続時間が設定されている場合は、「5」まで指定圧力を維持するために、ロードセルの計測結果に応じてZ軸モータの降下/上昇を繰り返すことが可能となっている。
ロードセルの計測結果が設定荷重を上回ったことにより、Z軸モータの降下を瞬時に停止することが望ましい。
この反応に遅延が有ると、その分モータの目標座標が進みモータ軸の発生トルクが過大となってしまう。
【0046】
本発明では、モータ軸変移角度とゲイン値とモータ出力トルクの関係を利用して、ゲインを低めに設定することによって、モータの目標座標と実座標の差が生じても極端に大きな荷重変化が生じないようにしているため、モータの目標座標が進み過ぎても目標荷重に沿った圧力制御が実現できるようになっている。
【0047】
ここで、設定荷重において、ノズル先端の目標座標に対する最大遅れ量が0.75mmとなるように適切にゲインが設定されている場合、目標荷重に対する制御誤差を3%、Z軸モータの速度を5mm/秒とすると、反応遅れ許容時間=(最大遅れ量×制御精度)÷モータ軸速度より=0.0045秒となる。
このため、本発明の荷重方式では、通常のサーボアンプを直接マウンタ制御部からコントロールして荷重制御を実現させることができる。
従って、荷重制御のためにロードセルの計測結果を参照して、モータ軸やVCMまたは電空レギュレータを高速にフィードバック制御するような特別な制御系を設ける必要がない。
【0048】
以上のとおり、実施形態のマウンタ装置の加圧制御ヘッドによれば、以下に列挙する効果を発揮できる。
【0049】
1)ヘッドを第1の高さ位置から第2の高さ位置に移動する手段として設けたZ軸モータにより第2の高さ位置から第3の高さ位置へ移動し、ノズルの加圧を行う加圧源としても同じZ軸モータが用いられるため、加圧制御ヘッドをシンプルな構成で低コストに提供することができる。
【0050】
2)加圧を行なうために必要となる広い荷重範囲を持ったばねに代わって、モータ軸の発生トルクで加圧することができるため、構造がシンプルであることに加え、より広範囲な荷重範囲に精度良く対応することができる。
【0051】
3)Z軸モータを常に位置制御モードで利用するため、モータの軸座標管理に誤差が生じない。
【0052】
4)Z軸モータの発生トルクを用いた加圧であるため、モータの目標座標と実座標の最大ずれ量を制限することができる。
すなわち、ばね加圧式の構造では、コネクタ挿入処理のように負荷荷重のピーク(抜け防止の返し部の通過が最大負荷となるため)を通過した直後、急激に負荷が小さくなってしまうような特性を持った負荷であると、ばねのたわみ量に相当する軸のオーバーシュートが発生し、衝撃荷重によって部品にダメージを与える恐れがある。
これに対し、本方式では、前記最大ずれ量が制限されているため、負荷変動に対する位置のオーバーシュートが小さく、衝撃荷重を小さく抑えることができる。
【0053】
5)荷重制御機能を持った専用のサーボアンプを必要としない。
【0054】
<発明の概要2>
本発明は、部品供給部から部品を取出して基板上に荷重制御しながら装着する搭載ヘッドにおいて、目標の加圧量を維持する動作維持の際に、軸の移動量を軸が動作する最小変位量を移動単位として、微小に動作させながら荷重制御するものである。
【0055】
特開平06−177179号公報において、基体のマウント部にチップ部品をマウントするチップ部品マウント装置であって、前記チップ部品を保持するチャック手段と、このチャック手段を上下動させるリニアモータと、前記チャック手段に保持されたチップ部品を前記基体のマウント部に載置して加圧する際、前記リニアモータのトルクを徐々に増加し、チップ部品に対する荷重を徐々に増加する制御手段とを具備するチップ部品マウント装置が提案される。
このチップ部品マウント装置は、チャック手段に保持されたチップ部品を基体のマウント部に載置して加圧する際、前記チャック手段を駆動するリニアモータのトルクを徐々に増加し、チップ部品に対する荷重を徐々に増加する。
【0056】
しかし、前記特開平06−177179号公報のものは、モータトルクが微小の場合、ほとんど軸が動作せず、押圧の変化が見られない問題がある。
すなわち、荷重制御時に荷重の変動が小さく、出力するモータトルクが微小だった場合、機械的な摺動抵抗やバックラッシなどの影響もあり、軸がほとんど動作せず、加圧部先端にまで動作の変化が見られずに、荷重の変化が見られないということになり、そのため、荷重値のズレやばらつきの増加などにつながる問題があった。
【0057】
(実施形態2)
図8において、前述した実施形態1と同様、13は搭載ヘッド部、23はZ軸モータ、24はθ軸モータ、100はベースフレーム、101はリニアガイド、102は垂直Z駆動部、104はノズルシャフト、109はタイミングベルト、110はカップリング、111はボールねじのねじ部、118はボールねじのナット部、131は吸着ノズルである。
【0058】
次に、加圧搭載動作について図9を用いて説明を行う。
【0059】
<加圧開始高さへの移動>
「1」1段階目下降:目標位置まで指定速度(デフォルト:最高速)で下降する。
【0060】
<加圧+押込み>
「2」ゲイン切替え:荷重制御切替え高さに到達したら(この場合接触時)、軸のゲインを荷重制御用ゲインに切替え、軸速度を第一速度に切替える。
【0061】
「3」送り量切替え:所定荷重に達したら、軸の動作を間欠動作に切替えて下降を開始(ロードセル値読込み1[msec]間隔)し、 軸の送り量を20[μm]の微小送りに切替える。
ここで言う間欠動作とは、20[μm]移動→停止し、ロードセル値読込み→20[μm]移動の繰返し動作のことを言う。
【0062】
「4」停止:ロードセル値が指定荷重に到達したら、間欠動作を停止する。
【0063】
<加圧+時間>
「5」維持:指定加圧時間中モータ電流値監視&指定荷重維持する。
【0064】
<搭載完了>
「6」完了:ゲインを通常動作用のゲインに切替え、上昇動作する。
【0065】
図10及び図11は、実際に荷重制御した際のモータの電流波形である。
送り量が小さい時は、図10のような波形となり、同荷重を繰返し荷重した時のばらつき(3σ)=±1.34[N]であった。
図16のように、送り量を大きくすることで、同荷重を繰返し荷重した時のばらつき(3σ)=±0.15[N]と約1/10にすることが可能である。
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、荷重値のズレやばらつきを抑えることができる。
すなわち、モータ軸が必ず動作する最小の送り量としているので、モータの目標座標のみが変化し、ノズル先端が動かないということが起きないので、確実に荷重制御をすることができる。
【0067】
(他の実施例)
実施形態3では、1[msec]間隔で20[μm]送りをしたが、時間間隔をもっと小さくし、高周波で送ることにより、実際のノズル先端の荷重の変化を更に小さくすることができる。
なお、送り量と時間間隔は、装置の構成によって決まり、実施形態の値に決まるものではない。
【0068】
また、実施形態3では、ロードセルの検出に基づく荷重制御と電流制御が混在する制御としたが、荷重検出装置より下流に摺動要素の多い機構で荷重制御を有効なものとして、高荷重では電流制御でのみ有効なものとしてもよい。
【0069】
<発明の概要3>
本発明は、部品吸着ノズル内で上下移動するノズルスライダー部の動きを規制するストッパー部を有し、ノズルとノズルスライダーの間に弾性体を有し、前記弾性体は、部品吸着ノズルの押込み量に応じて荷重が変化するように構成された、電子部品を基板上に搭載する電子部品搭載装置において、低い加圧量のときは、弾性体により加圧を行い、高い加圧量のときは、ノズルは、ストッパーに当接し剛体の状態で加圧するものである。
【0070】
特開2009−277850号公報において、電子部品の実装装置および実装方法が提案される。
この装置では、駆動源の回転力をボールねじに伝えることで、スライダー部の上下方向の微小な動作を行う。電子部品を加圧搭載するときは、スライダー部上部に配置された加圧用駆動源(サーボモータ)の回転力を加圧ツールへリニアガイドを通じて伝達し、スライダー部を基板方向へ押し出すことで加圧を行う。スライダー部は圧縮ばねにより上方向へ常時引き上げられており、またスライダー部は上下方向の駆動源と加圧用駆動源と切り離されているので、上下方向の微小動作と加圧動作を切り離して動作することができる。
【0071】
しかしながら、前記特開2009−277850号公報のものでは、以下3点の問題があった。
1)衝撃荷重が大きくなる
加圧するためのユニットが完全にリジット(剛体)の場合、加圧を行う際に基板との接触時の衝撃緩和のために、ユニットの下降速度を極力抑える必要があり、搭載時間が長くなる。
2)目標荷重までの到達時間が長くなる
前記衝撃荷重を抑えるために下降速度を抑えるため、目標荷重までの到達時間が長くなる。
3)微小荷重の制御が難しい
加圧するためのユニットが完全にリジット(剛体)の場合、押込み量(変位量)に対する加圧量が大きいため、微小な荷重制御が難しく、目標荷重値とのズレが発生したり、バラツキが大きくなる。
【0072】
(実施形態3)
図12は本発明の一実施例として電子部品搭載装置の構成を示すもので、部品搭載ヘッド201、ボールネジやベルトと組み合わせたモータ、もしくはリニアモータ等で駆動されるX軸フレーム202、Yフレーム軸203、基板搬送部204、部品供給部205からなる電子部品搭載装置を示したものである。
【0073】
X軸フレーム202は左右のY軸、YL,YR軸に装着されたモータで駆動される。
また、X軸フレーム202上に設置された部品搭載ヘッド201は、X軸フレーム202に沿って移動し、X軸フレーム202は直交したY軸フレーム3に沿って移動するXYユニットである。
部品搭載ヘッド201には上下方向に移動可能な搭載部品を吸着するノズルが装着されており、基板搬送部204によって搬送され固定された基板に対して、部品供給部205で供給された部品をノズルで真空吸着してからその部品を基板に搭載することができる。
【0074】
次に、加圧ヘッドの構成を図13及び図14に示す。
【0075】
電子部品15の吸着・搭載かつ加圧動作は以下のように行う。
【0076】
固定ブラケット207に取り付けられた、Zモータ216が回転することで、カップリング217によって直結されているボールねじ221が回転し、ボールねじ221によって支持しているスライダー部223が上下動を行う。
スライダー部223にはガイドナット210aがあり、固定ブラケット207に取り付けられたリニアガイドレール210bと連結することでスムーズに上下動を行うことができる。
また、スライダー部223の中空ロードセル222内の軸受によってスプラインシャフト206、カップリング209、ノズルシャフト212、ノズル214の上下方向を保持しており、スライダー部223と一緒に上下動することで電子部品215を吸着・搭載する。
なお、213はボールブッシュ、219はスラスト軸受である。
【0077】
次に、電子部品215の回転動作は以下のように行う。
【0078】
固定ブラケット207に取り付けられた、回転動を行うためのθモータ220が回転することで、タイミングベルト218によって連結されたスプラインナット208が回転し、スプラインシャフト206を回転させる。
スプラインシャフト206とノズルシャフト212はカップリング209によって直結されているので、スプラインシャフト206が回転するとノズルシャフト212が回転し、電子部品15を回転させる。
【0079】
次に、部品吸着ノズル214を図15に示す。
【0080】
図15(a)は電子部品215と基板224が接触した瞬間のノズル214を示し、図15(b)はノズル214が下方向に押込むことで、ノズルばね228が圧縮され、ノズルアウター226下端とノズルスライダーストッパー225bが接触し、リジットになったときのノズル214を示す。
ノズルが通常状態からリジット状態になるまでのストローク229を極力小さくすることで、ノズルばね228圧以上の目標荷重までの到達時間を早くすることができる。
【0081】
以上の構成において、電子部品215搭載時の荷重検出動作について、図13から図15を用いて説明する。
【0082】
電子部品215を保持したノズル214が基板224に接触することで受けた力は、ノズルシャフト212を通り、ノズルシャフト212の段部を介して中空ロードセル222へ伝達され、加圧量を検出する。
【0083】
図15(a)において、この図の状態の時に基板に加わる加圧量は、ノズルばね228の初期圧F0である(図16参照)。その状態からノズル214が下方向へ押込むことで加圧量はノズルばね228のばね定数に比例して増加する。
つまり、ノズルばね228を用いた加圧量は最大でF1であり、これは図15(b)に示すノズルストローク229がゼロになり、ノズル214がリジットになる加圧量である。図16における加圧量F2は、ノズルばね228の圧縮途中が目標荷重値であることを示す。
【0084】
図15(b)の状態はノズル214先端からノズルシャフト212、中空ロードセル222、ボールねじ221、Zモータ216まで直結となり、Zモータ216のトルクが1:1で基板に伝達される。
図16の加圧量F3はノズル214がリジットになる加圧量F1より大きい加圧量であり、加圧量F3へ達するまでは加圧波形の傾きが二つ存在することとなる。
【0085】
ノズルばね228の圧縮時の加圧量の波形の傾きは図16のθ1で表され、ノズル214がリジット時の加圧量の傾きはθ2で表され、θ1<θ2が成立し、これはノズル214がリジット状態での押込みは、ノズルばね228のような緩衝材がないために、前記の通り、Zモータ216のトルクを1:1の力で基板に伝達するためである。
【0086】
以上説明したように、本発明によれば以下の効果が得られる。
1)衝撃を緩和することができる
ノズルばねの初期荷重を低くすることで、基板に接触した時の衝撃荷重を小さくすることができ、下降速度を抑える必要が無く、早い時間で目標荷重に到達することができる。
2)高速に目標荷重まで加圧できる
低い加圧量の時は、ノズルばねが圧縮されストッパーに当たる前に目標加圧量になるので、目標加圧への到達時間が短い。
また、ノズルばねのストロークを極力小さくすることで、ノズルがリジットになり、高荷重領域までの到達時間を早めることができる。
3)低い加圧量の時に高精度に制御ができる
加圧量が低い時は、ノズルばねにより、変位量に対する加圧量の変化が小さいので、精度良く、制御することができる。
【0087】
また、実施形態のように、高荷重ノズルは、加圧用に広い台座を設けるとともに、ノズルばねの効果により高速な(荷重制御を用いない)吸着ができる。
【0088】
(他の実施例)
実施形態3では、Zスライダー部に荷重検出用のロードセルを組み込んだ方式を用いたが、荷重検出をZモータの負荷トルクで検出するトルク制御においても同様の効果が認められる。
【0089】
また、実施形態3では、ロードセルによる検出に基づく制御としたが、電流制御でも可能である。
【0090】
<発明の概要4>
本発明は、電子部品を吸着ノズルにより、部品供給部より基板上へ移動搭載するマウンタ装置であり、吸着ノズルが部品を基板面に押し付ける圧力を検出するセンサを有すると共に、ノズルの押し付け力が、専用の加圧モータ、または、ノズルの昇降手段の推力より得られる構造であって、加圧力の設定範囲の50%未満の範囲で、前記圧力センサの出力を参照して、加圧制御し、前記加圧範囲を超える部分はモータの電流値を参照して加圧制御する方式である。
さらに、その加圧力の設定範囲の50%未満の範囲で得た圧力センサの出力値と、モータの電流値とが比例関係にあることを利用し、前記加圧範囲を超える部分はモータの電流値から加圧力を推測して加圧制御する。
【0091】
特許第2877120号公報において、電子部品を搭載する際の圧力を、圧力検出部で検出した加圧値によって制御するような電子部品搭載装置の圧力検出部に、低加圧用と高加圧用を用意し、設定した加圧値を超えると、低加圧用の圧力検出部から、高加圧用の圧力検出部へ切り替える技術が開示される。
そのメリットは、高加圧用の圧力検出部は、低加圧の時、ノイズなどの影響で上手く読み取れないという問題を解決できることである。
【0092】
次に、そのメリットを補足する。
図17に圧力検出部の電気的に良い環境における無負荷時の出力の一例を示した。
【0093】
この加圧検出部は、加圧力の定格が100Nで、その時10Vを出力するように設定した。この時のノイズ成分は、±10mVであった。
【0094】
このように、加圧検出部の出力にはノイズが乗ってしまう事が一般的であるため、もし、±10mVのノイズが乗ってしまうと、例えば10Nの時、加圧検出部の出力が10N/100N×10V=1Vであるため、±1%の誤差が検出されることになる。1Nの時は±10%の誤差が検出されることになる。
【0095】
しかし、加圧力の定格が10Nで10Vを出力する低加圧用の加圧検出部と、加圧力の定格が100Nで10Vを出力する高加圧用の加圧検出部を使った、前記特許第2877120号公報の方法を用いれば、1Nの低加圧時でもノイズによる誤差は±10%となり、問題を緩和できるのである。
しかし、加圧検出部は一般的に高価であり、前記特許第2877120号公報の方法では、これを二個以上使わなくてはならないというデメリットがあった。
【0096】
(実施形態4)
図18に実施において必要な機械的構成を示す。図中、前述した実施形態1と同様、13は搭載ヘッド部、18は電子部品、23はZ軸モータ、24はθ軸モータ、100はベースフレーム、101はリニアガイド、102は垂直Z駆動部、104はノズルシャフト、105は垂直回転駆動部軸受、106は回転ベアリング、107はスプライン軸受、108はθモータプーリ、109はタイミングベルト、110はカップリング、111はボールねじのねじ部、118はボールねじのナット部、131は吸着ノズルであって、143はロータリブッシュベアリング、144は加圧検出部、150は加圧用の台である。
【0097】
本実施例では、電子部品にかける加圧力の制御域が0〜100Nであるような場合について述べる。
【0098】
図18は、摺動などによる加圧力の検出誤差を減らすため、電子部品へかかる加圧力ができるだけ損失なく圧力検出部へ伝わる構成となっていることを示している。
この構成では、吸着ノズル131が鉛直上方へ押される力を、ノズル軸104に設けられた圧力検出部144で検出する。
また、本実施例で使用するZ軸モータ23はサーボモータである。
【0099】
次に、図19に本発明で必要な制御に関するブロック構成を示した。図中、123はモータエンコーダ、124はサーボドライバ、125はCPUである。
【0100】
図示のように、CPU125は、圧力検出部144からの加圧情報(加圧値)と、サーボドライバ124からのモータ電流情報(モータ電流値)に基づいて、サーボドライバ124に位置指令と加圧指令(指令値)を出す。
その指令に基づいて、サーボドライバ124はモータ駆動電流をZ軸モータ(サーボモータ)23に出す。なお、モータエンコーダ123からモータ位置情報がサーボドライバ124に取り入れられる。
【0101】
さらに、本実施例では、前記特許第2877120号公報でいうところの低加圧域が0N〜10N、高加圧域が10N〜100Nと仮定しておく。
【0102】
次に、図19の制御ブロックを用いて加圧力を制御する準備の手順を図20に示す。
【0103】
図20のフローにおいて、まず、圧力検出部のキャリブレーションによって、ノズル131が加圧されていない状態の加圧値を0Nとし、この時のモータ駆動電流I0を記憶しておく(ステップS21)。
次に、図18の加圧用の台150へ、ノズル131を押し当て、モータ23を駆動してZ軸を徐々に下降させ(ステップS22)、圧力検出部144が10Nを検出(ステップS23)した時のモータ駆動電流I10を記憶しておく(ステップS24)。
一般的に、サーボモータの電流と加圧力は、モータの回転数が変わらなければ比例することから、10Nから100Nまでの加圧力は、0N時と10N時の電流値から推測が可能なので、これをCPU125にて演算し、記憶しておく。
この関係を図21に示した。
【0104】
また、電子部品18を搭載する際、加圧指令が0Nから10Nの低加圧領域の場合は、圧力検出部144からの加圧値を使用する。
そして、加圧指令が10Nを超える高加圧領域では、圧力検出部144を使用せず、図21の特性とモータ駆動電流から推測した加圧値を使用する。
この時の手順を図22に示す。
【0105】
図示のように、搭載開始により、指令値を設定し、その値を記憶する(ステップS31)。
続いて、記憶した指令値は低加圧領域か?を判別し(ステップS32)、低加圧領域であれば次のステップS33に進み、低加圧領域でなければ図23のステップS36に進む。
ステップS33では、電子部品をノズルへ吸着し、搭載位置までヘッドをXY方向へ移動させる。
続いて、電子部品を搭載する基板へ向けて低速で下降させる(ステップS34)。
次に、加圧値が指令値を超えたか?を判別し(ステップS35)、指令値を超えていれば処理を終了し、指令値を超えていなければステップS34に戻って以降の処理を繰り返す。
【0106】
また、図23に示すように、ステップS36では、図21の特性を用いて指令値の単位を圧力から電流へ変換し、記憶する。
続いて、電子部品をノズルへ吸着し、搭載位置までヘッドをXY方向へ移動させる(ステップS37)。
続いて、電子部品を搭載する基板へ向けて低速で下降させる(ステップS38)。
次に、モータ電流値が指令値を超えたか?を判別し(ステップS39)、指令値を超えていれば処理を終了し、指令値を超えていなければステップS38に戻って以降の処理を繰り返す。
【0107】
以上説明したように、本発明によれば、前記特許第2877120号公報の効果を圧力検出部一個で達成できる。
【0108】
<発明の概要5>
本発明は、前述した発明の概要1の加圧制御システムにおいて、加圧制御時の異常状態判定結果に加えて、ノズルの先端座標、ロードセルでの計測荷重値、部品種に基づき異常検知時の対応動作を切り分けるものである。
さらに、部品が基板から受ける衝撃荷重を許容範囲内に抑制する手段として、部品種ごとに規定された衝撃時間、部品搭載時のZ軸方向移動速度に基づいて算出された衝撃荷重計算結果が部品の許容衝撃荷重を超過しない範囲で、最大のZ方向移動速度を算出する。
【0109】
(実施形態5)
本実施例では、前述した実施形態1の図7において、加圧時間経過後、バキュームエアをOFFし、荷重制御用に変更されたモータゲインを元に戻すため、目標座標と実座標の乖離が無くなる座標にZ軸を移動させた後、ゲインを元に戻し高速で上昇動作を行い、次部品の吸着動作に移行する。
【0110】
<荷重制御用のモータゲインについて>
前述の様に、荷重動作時は、ノズル先端の目標座標に対する最大遅れ量が0.75mmとなるようなゲインが設定されている。これは、図24で示すとおり、指定荷重ごとの最大遅れ量が一定となるゲインを設定することにより、荷重制御時のノズル先端座標を高精度に制御するためのものである。
荷重制御用ゲインは、指定された荷重を元に、比例要素・微分要素・積分要素等のパラメータ値を計算により求める方法と、予め規定されたテーブルから取得する方法がある。
【0111】
<荷重動作速度について>
上記実施例では、荷重制御動作時の軸動作速度は低速(4mm/s程度)としているが、軸の動作速度を遅くする事は搭載タクトに影響を与えるため、性能改善の点からなるべく高速の動作が望ましい。
荷重制御時の動作決定条件としては以下の二点が挙げられる。
1)衝突(基板接触)荷重が指定荷重以下であること。
2)反応遅れ許容時間の荷重変化量が制御精度を上回らないこと。
そこで、荷重制御の予備動作として、実際に搭載する部品を吸着し、基板上で荷重動作を行い、接触荷重を測定することで上記二点を満足する最適な下降速度を求める。
【0112】
また、接触荷重は力積の計算から
【0113】
【0114】
で求める事ができるため、予備動作を行わなくても計算により下降速度は算出可能となる。
この場合、接触後の下降速度は接触荷重を最大値で計算するため0mm/s(一瞬停止)に近似し、衝突時間は予め部品種や部品形状、基板厚等のデータに対する時間を内部テーブルで持ち、生産プログラムの情報から最適な衝突時間を採用し、接触荷重を計算する。
下降速度を計算により算出した場合は、実際との部品の誤差を修正するため、生産動作時の接触荷重をフィードバックし、下降速度を微調整する。
【0115】
<荷重動作時のエラー判定について>
搭載荷重を制御する目的は搭載部品によって様々であり、そのため広い加圧範囲と加圧精度が要求されている。
【0116】
搭載荷重の制御目的としては以下のような場合がある。
1)ウェハダイなど薄弱な部品であり、過大な負荷を掛けると部品が破損してしまうため、部品に掛かる荷重値を一定値以下で制御したい。
2)バンプ部品にて、バンプの大きさ(高さ)が均一でなく、搭載時に全てのバンプが正確に接地しない可能性があるため、一定の力で加圧してバンプの高さを均一にしたい。
3)コネクタ部品の圧入を行いたい。
このような目的が異なる動作では、異常動作の判定条件や、異常動作時の対応を切替えることが望ましい。
【0117】
そこで、搭載部品の部品種や部品外形等からエラー判定条件を切替える制御を実施する。
【0118】
エラー判定処理シーケンスを図25に示す。
【0119】
1)第2高さまでZ軸下降開始
実施形態1の図5の「2」基板面に接触を開始する直前の第2Z高さまで下降する(ステップS41)。
2)荷重値取得
第2Z高さでモータ速度やゲインを切替える前にロードセルの荷重値を取得する(ステップS42)。
3)荷重値判定
第2Z高さでロードセルに荷重が掛かっている場合は正しい部品が既に接触しているか、正しい荷重値が取得できていないためエラーとする(ステップS43)。
4)荷重動作開始
モータ速度やゲインの変更を行い、下降動作を開始する(ステップS44)。
リアルタイムでロードセルの荷重値を監視する荷重監視タスクを起動し、荷重値の監視を開始する(ステップS51)。
5)イベント受信
荷重監視タスクから、ロードセルの荷重値が0から変化した時(ステップS52)や、指定荷重を大幅にオーバした荷重を検知した時(ステップS53)など、エラー判定を行う時にイベント通知を受信する(ステップS45)。
6)Z軸高さ取得
エラー判定を行うため、イベント受信時のZ軸高さを取得する(ステップS46)。
7)エラー判定
部品種や部品外形寸法等を使用し、エラー判定を行う(ステップS47)。
エラー判定条件の詳細は表1に示す。
8)加圧時間経過
指定荷重時間の加圧動作が完了するまで上記1)〜8)の処理を繰り返す(ステップS48)。
9)荷重監視終了イベント発行
指定荷重時間の加圧動作が完了したら荷重監視タスクに終了イベントを発行し、荷重動作を終了する(ステップS49)。
10)エラー処理
荷重エラー時のエラー処理を実行する(ステップS50)。
【0120】
【表1】
【0121】
本発明によれば、実施形態1により得られる効果に加えて、モータの軸座標管理に誤差が生じないことにより、部品種や外形寸法などから用途にあったエラー判定が可能になるという効果を発揮できる。
【0122】
<発明の概要6>
本発明は、Z軸モータの電流値から印加荷重を検出し、Z軸モータを制御することにより部品を基板に押し付けることで印加荷重を制御する加圧制御ヘッドにおいて、予め記憶していたZ軸座標に対するコギングトルクを加圧動作時に補正値として使用することにより、加圧搭載時の加圧精度を向上させることを可能としたものである。
さらに、コギングトルクの大きさをZ軸座標に応じて記憶する。
また、Z軸モータの電流値をZ軸座標またはZ軸モータの回転角度に応じて補正し、コギングトルクの影響を低減することで、加圧搭載時の加圧精度を向上させることを可能とする。
また、加圧動作時にコギングトルクの補正値として使用する補正値を、軸ゲインや動作速度を加圧搭載時と同じ状態にして取得することにより、補正値の精度を向上させ加圧搭載時の加圧精度を向上させることを可能とする。
また、加圧搭載時の動作ゲインや動作方法の違いによるコギングトルクの変化を、記憶領域に保存されたコギングトルクデータを使用し、補正式による変換を行うことで、動作状態の変化によるコギングトルクの変化を吸収し、高精度での加圧搭載を維持することを可能とする。
【0123】
(課題)
前述した実施形態1の荷重検出手段を用いずに加圧搭載を行うヘッド構成例において、Z軸可動部とZ軸モータをボールねじを介して直結にすることで、電子部品への印加荷重がモータにダイレクトに伝わるようにしている。
これにより、部品とモータ間の印加荷重の誤差発生部はボールねじとクロスローラガイドに限定され、これらの摺動抵抗を低減することにより、部品とモータ間の誤差が小さくなり、低荷重領域での加圧搭載が実現可能となる。
また、サーボモータはモータ動作時の内部抵抗となるコギングトルクを持っており、一般的には定格トルクの5%〜10%程度とされている。
Z軸可動部は高速で動作することを前提とした設計がされているため、通常の高速動作時の動作トルクが100%になるようなモータ選定がされている。
上記構造の加圧ヘッドでは、低荷重の加圧を行う場合に、モータの動作トルクを10%以下に低下させることがある。このように低出力領域で使用するとコギングトルクの影響を受け、正しい加圧動作が行えない問題が発生する。
【0124】
本発明では、モータのトルク値を参照し、加圧搭載を行う制御においてモータのコギングトルクの影響を排除し、低荷重領域での加圧搭載動作の実現と、全ての荷重領域においてコギングトルクを加圧精度を向上するための手段を提案する。
【0125】
(実施形態6)
前述したヘッド構成において、加圧搭載時と同じ条件でZ軸を一定速度で下降させたときの電流値波形を図26に示す。
Z軸を一定速度で下降させているため、電流値は一定値となるはずのものがコギングトルクによる影響で周期的に電流値に変動が起きている事がわかる。図26の波形は2回分の測定結果を示すものであるが、1回目と2回目の測定結果には差異が無く安定している。
なお、コギングトルクが経時変化しない特性である事は周知である。
図26で使用したモータの場合、電流値の変動幅は定格トルクの−2%〜+1%となっており、この変動幅を荷重値に換算するとおおよそ3N程度の幅で電流値が振動していることになる。
これは、加圧搭載時には3N程度の誤差を伴うことになることを示している。
【0126】
本発明では、これらのコギングトルク値を予め取得し、加圧搭載時のZ軸高さに応じてコギングトルクの影響を補正することで、高精度な加圧搭載を実現する。
【0127】
<対象モータのコギングトルク取得処理>
ヘッド部の組付け調整段階で、モータのコギングトルク値の取得を行う。コギングトルク値の取得は、加圧動作時により近いゲイン設定、動作状態で行う。
【0128】
コギングトルク値の取得シーケンスは図27のようになる。
【0129】
1)荷重ノズルを装着する(ステップS61、ステップS62)。
2)加圧搭載範囲の上限高さへ移動し、軸ゲインを加圧搭載用ゲインに変更する(ステップS63、ステップS64)。
加圧搭載範囲内のデータを取得するため、加圧搭載範囲の上限高さを測定開始高さとする(ステップS65)。
3)Z軸を任意の移動量(10μm)下降させ、軸移動完了後、電流値の整定を待って現在座標値とその時の電流値を取得する(ステップS66)。
軸座標は、摺動抵抗を考慮し指令座標ではなく実座標とする。
4)取得した現在座標と電流値を内部テーブルに保存する(ステップS67)。
5)前述した3)、4)を加圧搭載範囲の下限高さまで繰り返す(ステップS68)。
6)前述した2)〜5)を複数回(5回)行う(ステップS69)。
7)内部テーブルの平均値を、各Z軸座標に対するコギングトルク値として採用し、記憶領域に保存する(ステップS70)。
【0130】
以後、記憶領域に保存された、上限高さから下限高さまでのZ軸座標とコギングトルク値のデータ郡をコギングトルクテーブルと呼ぶ。
【0131】
<加圧搭載動作時処理>
加圧搭載動作時は、加圧搭載範囲上限高さまで高速でZ軸を下降させ、ゲインの切り替えを行う。その後、加圧搭載用の動作プロファイルで下降を行い、基板への当接検知や目標荷重での加圧動作を行う。
一定周期でモータ電流値とZ軸座標をサンプリングし、サンプリングしたZ軸座標に応じたコギングトルク値を記憶領域に保存されているコギングトルクテーブルより選択し、取得した電流値からコギングトルクの影響分を除外した物を実印加荷重とする。
補正するコギングトルク値はコギングトルクテーブルのZ軸座標と加圧搭載時の実座標から近似座標の直線補完により算出する。
このことにより、全ての加圧領域においてコギングトルクの影響が除外できるため、加圧精度が向上できる。
【0132】
<軸状態による補正処理>
加圧搭載動作は、低荷重領域から高荷重領域までの加圧搭載を対象としている。
そのため、低荷重領域時と、高荷重領域時では、ゲイン設定や動作プロファイル、動作シーケンスが異なってくる。
【0133】
図28に軸の動作ゲインを変更して同じ電流波形を取得した結果を示す。
波形の周期は変化していないが、荷重ゲイン時と比較すると、通常ゲイン時の波形は振幅が大きくなっている。
【0134】
同様に、図29は軸の状態変化による電流値の変化を示している。
【0135】
「1」部は軸ゲインを高速動作時の設定から加圧搭載時のゲインに切り替えた際の電流値変化である。
ゲイン切り替えは軸を停止状態(サーボロック状態)で行っている。
「2」部は加圧搭載時のゲインで軸動作を開始した時の電流値変化である。
停止時の電流値から駆動電流分変化があり、定速状態になるとコギングの影響が出ていることを示している。
【0136】
このように、動作時のゲインや、電流時の取得タイミングによって取得されるコギングトルク値は変化する。
これらの変化の影響を排除するために、軸状態別のコギングトルク算出パラメータを使用する。
【0137】
算出パラメータの例を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
算出パラメータは、コギングトルク波形の伸縮係数(A)と、シフト量(B)からなり、調整工程で取得したコギングトルクテーブル値に対して一次式Y=AX+Bの形で算出する。
この算出パラメータを使用することにより、コギングトルクテーブルの取得方法を変更したり、コギングテーブルを状態別に複数記憶することなく、動作ゲインや動作シーケンスの変更に対応することが可能となる。
【0140】
<計算式によるコギングトルク補正処理>
上記実施例では、全ての加圧搭載範囲に対してコギングトルク値を取得し、コギングトルクテーブルから近似値を取得する方法で行ってきたが、計算による取得方法も可能である。
【0141】
前述の通り、コギングトルクは摺動抵抗が少ない場合、モータの内部構造がそのままコギングトルクの周期として出てくるため、モータ1回転分のデータと、Z軸高さに対するモータの位置情報(回転角度情報)を保持するだけで適切なコギングトルク値の算出が可能となり、保持するデータ数を減らしコギングトルク値の検索時間の短縮が図れる。
【0142】
図26のモータが1回転したときにコギングトルクが4周期となるモータの場合の計算による取得方法は、各周期のコギングトルク値をテーブル[4][データ数]、基点となる周期の頂点が取得されたZ軸座標をZ1、コギング周期をT、コギングトルクを取得したZ座標をZ0とすると、
オフセット値A =(Z1÷(T×4)の余り値)−(T×4)
適用周期番号(テーブル番号)=(Z0−A)÷Tの解
データ番号 = (Z0−A)÷Tの余り値をテーブルデータの刻み幅で割った値
となり、テーブル[テーブル番号][データ番号]のデータが補正するコギングトルク値となる。
【0143】
上記計算式の取得フローを図30に示す。
【0144】
すなわち、テーブルを用意してから(ステップS81)、コギングトルクテーブルを周期ごとに分割し(ステップS82)、その分割したデータを順番にテーブルに保存する(ステップS83)。
そして、周期(テーブル)ごとに平均値を算出して(ステップS84)、適用テーブル検索式を算出する(ステップS85)。
【0145】
例)
コギングトルク周期を1.5mm、データの刻みが10μm、Z1の値が33mmの時、2mm時のコギングトルク値は
A=33mm÷(1.5mm×4)= 5…3−(1.5mm×4)
よってA=−3mm
テーブル番号=((2mm−(−3mm)) ÷ 1.5 = 3…1
よってテーブル番号=3
データ番号=1mm÷10μm =100
よってテーブル[3][100]に保存されているトルク値を補正値として使用する。
また、データの刻み幅が大きい場合は前後のデータで直線補完することも可能である。
さらに、精度的には劣るがコギングトルク値をY値、Z軸座標をX値とした多次元式に変換して記憶することも可能である。
【0146】
以上述べたように、本発明によれば、以下に列挙する効果が得られる。
1)コギングトルクの大きさに関わらず、低荷重領域での加圧搭載動作が実現可能となる。
2)コギングトルクの影響を排除し、高精度な加圧搭載動作が実現可能となる。
3)動作ゲインや動作状態の切り替えによって、発生するコギングトルク値に変化があっても動的にコギングトルク値を計算することが可能となる。
【符号の説明】
【0147】
1 マウンタ装置
10 基板
13 搭載ヘッド部(加圧制御ヘッド)
131 吸着ノズル
132 衝撃緩衝ばね
18 電子部品
23 サーボモータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を基板に搭載するマウンタ装置の加圧制御ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品のマウンタ装置として、例えば特許文献1により、部品を吸着保持して移送するノズルを基板面へ降下させるZ軸モータと、部品を基板面に向けて加圧するVCM(ボイスコイルモータ)と、ノズルを水平方向に回転し部品の搭載角度を調整するθモータとを備える搭載ヘッドが知られる。
特許文献1のように、搭載荷重を制御することのできる搭載ヘッドでは、XY機構上に載置されたマウンタヘッドのノズル先端が、XY動作によって、搭載する基板上の部品や、その他、基板周辺のマウンタ機構部に接触する可能性のない第1のZ軸高さと、ノズルの吸着している部品が基板面に接触を開始する直前の第2のZ軸高さと、部品が基板面に接触し、VCMなどによって加圧する第3のZ軸高さとを持っている。
特許文献1によれば、第1の高さから第2の高さへの移動はZ軸モータによりなされ、第2の高さから第3の高さへの移動はVCMによって実行される。
【0003】
また、このようなVCMの他、加圧手段として、例えば特許文献2のような流体による加圧方式、例えば特許文献3のような圧縮ばねによる加圧方式などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−147640号公報
【特許文献2】特開平10−27996号公報
【特許文献3】特開2007−27408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方式では、ヘッドの昇降手段に加え、特許文献1・2のような加圧手段を必要とするため、コストが高く構造の複雑化が避けられない。
すなわち、特許文献1では、VCMを加圧手段とした場合は、ロードセルなどの荷重検出手段によってノズルへの印加荷重を計測し、目標荷重になるようVCMの出力をフィードバック制御する。
このようなVCM方式は比較的高精度であるが、高荷重を実現する場合にはVCMの大型化が避けられない。
また、特許文献2のように、電空レギュレータなどによって圧力制御された空気圧によって加圧力を得る方式においては、電空レギュレータやエアープランジャーなどのコストが高く、またヘッドサイズも比較的大きくなるため、広い荷重範囲を高精度に制御する場合に適用される。
【0006】
また、特許文献3のばね力を加圧源とする方式では、低コストではあっても、広い荷重範囲をカバーする高精度なばねの実現が困難であった。
すなわち、特許文献3のように、ばねの圧縮力/引張り力によって加圧力を得る方式においては、安価でコンパクトな構成を実現できる反面、1N〜50Nのように広い荷重範囲を持ったばねを用いる場合、高い精度を実現することが困難であるため、比較的に荷重範囲の狭い用途にしか適用できない。
【0007】
本発明の課題は、マウンタ装置において、加圧制御ヘッドをシンプルな構成で低コストに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、部品を吸着するノズルの高さを位置決めするサーボモータと、ノズルが吸着した部品を基板に押し付ける荷重を制御できる加圧制御ヘッドとを備えるマウンタ装置であって、前記サーボモータを、前記ノズルが部品を基板に加圧する加圧源としても利用し、前記サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標の差によって生じる当該サーボモータの発生出力トルクにより加圧圧力を可変とすることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッドであって、前記発生出力トルクを、前記サーボモータの設定荷重に対応して調節することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッドであって、 前記発生出力トルクを、前記サーボモータの位置フィードバックゲインを含む制御パラメータに基づいて可変とするようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッドであって、 前記制御パラメータは、積分補償型ゲインパラメータの有効性を低く設定したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヘッドの高さを位置決めするサーボモータを、ノズルの加圧を行う加圧源としても利用するため、加圧制御ヘッドをシンプルな構成で低コストに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したマウンタ装置の一実施形態の構成を示す概略構成図である。
【図2】マウンタ装置の制御系の構成図である。
【図3】搭載ヘッド部の機構系の構成図である。
【図4】ひずみゲージの出力電圧と荷重値の関係を示すグラフである。
【図5】部品と基板の位置関係に対するZ軸モータ速度、検出荷重、目標荷重、Z軸目標座標を示したグラフである。
【図6】モータ軸変移角度(モータ軸の目標座標と実座標の差)と発生トルクの関係を実測したグラフである。
【図7】ノズル先端に吸着された部品が基板面に当接した後の基板面が受ける荷重の変化を実測したグラフである。
【図8】搭載ヘッド部の機構系の構成図である。
【図9】加圧搭載動作について説明するグラフである。
【図10】実際に荷重制御した際のモータの電流波形を示すもので、送り量が小さい時のグラフである。
【図11】実際に荷重制御した際のモータの電流波形を示すもので、送り量が大きい時のグラフである。
【図12】本発明の一実施例として電子部品搭載装置の構成を示す概略構成図である。
【図13】搭載ヘッド部の機構系の構成図である。
【図14】部品搭載時を示した図である。
【図15】吸着ノズルの構成を示すもので、通常時(接触時)を示した図(a)と、リジット時を示した図(b)である。
【図16】加圧波形を示したグラフである。
【図17】圧力検出部の出力波形を示したグラフである。
【図18】実施において必要な機械的構成を示す概略図である。
【図19】制御に関する構成を示したブロック図である。
【図20】加圧力を制御する準備の手順を示すフローチャートである。
【図21】モータ駆動電流に対する加圧値の関係を示すグラフである。
【図22】搭載の低加圧域制御を示すフローチャートである。
【図23】搭載の高加圧域制御を示すフローチャートである。
【図24】荷重制御用のモータゲインを示すグラフである。
【図25】エラー判定処理シーケンスを示すフローチャートである。
【図26】加圧搭載時と同じ条件でZ軸を一定速度で下降させたときの電流値波形を示すグラフである。
【図27】コギングトルク値の取得シーケンスを示すフローチャートである。
【図28】軸の動作ゲインを変更して同じ電流波形を取得した結果を示すグラフである。
【図29】軸の状態変化による電流値の変化を示すグラフである。
【図30】計算式の取得を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
<発明の概要1>
本発明では、Z軸を昇降駆動するZ軸モータを唯一の駆動源として、Z軸の昇降駆動と加圧制御を実現するものである。
このような目標を実現する構造としては、特許文献3に示されたように、加圧用のばねを設け、ばねの圧縮に応じた圧力をノズルに伝えるようにするのが一般的であるが、加圧用ばねを用いない工夫として、Z軸の目標高さ位置(=サーボモータの指令レベル論理座標)と実際の高さ位置(=サーボモータの実際座標)の差に応じて、サーボモータ(駆動回路に組み込まれた電流増幅回路が位置偏差と位置制御ゲインに応じた電流をモータ巻き線に通じる)の発生出力トルクが発生することを原理とした。
このため、ノズル先端を加圧すると、サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標に差が生じ、モータの発生出力トルクが増加する現象を生じる。ノズルの圧力値が増減すると、前記「サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標の差」が変化し、ばねを用いた加圧構造と同様な効果を生じる。
即ち、位置制御において目標位置と実際位置との偏差を検知した場合に、フィードバックゲインを高くした場合にはその偏差をゼロにするように高トルクで駆動されるが、ゲインが低い場合には低トルクで駆動されるため、この発生出力トルクを適宜の値になるようにゲインを選択することでばねの強さを任意に設定できる。
従って、後述するようにノズルに吸着した電子部品を降下して基板に当接する瞬間を検出するときのゲイン、及び基板面に電子部品を所定の圧力で所定時間押し圧する時のゲインを適宜に選択することで所望の荷重制御を行うことができる。
【0015】
このように、前記ばね効果は設定された位置制御ゲインにも比例する特徴を持つため、前記サーボモータの発生出力トルクを、設定荷重に対応して前記サーボモータの位置制御のフィードバックゲインを適宜に設定することで任意に調節することができるため、低荷重から高荷重まで広範囲に同一構造で対応することが可能である。
【0016】
また、本発明では、特許文献1に示されたように「部品が基板面に当接したことを検知してZ軸駆動モータを位置制御からトルク制御に切り替える」必要がない。
すなわち、XY機構上に載置されたマウンタヘッドのノズル先端が、XY動作によって、搭載する基板上の部品や、その他、基板周辺のマウンタ機構部に接触する可能性のない第1の高さから、ノズルの吸着している部品が基板面に接触を開始する直前の第2のZ軸高さまでは、搭載処理性能改善のためにZ軸を高速で移動させる。
そして、第2の高さから部品の加圧処理を含む部品搭載完了までは、Z軸モータを位置制御状態のまま低速度(4mm/秒程度)で下降(ノズルを基板面に向けて進める)させ、ロードセルの計測結果が設定された荷重に達したときにモータの駆動を停止する。
また、モータの実座標が目標座標に達するまでは、ロードセルの計測値が設定値を超えない限り下降を繰り返すよう制御される。
【0017】
以上述べたように、部品が基板面に当接してからモータをトルク制御に切り替える必要が無く、常に位置制御モードでZ軸モータが運転されることにより、部品を搭載する高さ座標を管理しつつ、ロードセルの計測結果を参照した確実な加圧搭載を実現することができる。
【0018】
(実施形態1)
<マウンタの構造>
図1は電子部品実装装置(マウンタ装置)の概略構成図である。
図示のように、電子部品実装装置1は、中央部から少し後方で左右方向に延在する回路基板搬送路15と、装置1の前部(図示の下側)に配設され、回路基板10に実装される部品を供給する部品供給部11と、当該装置1の前部に配設されたX軸移動機構12とY軸移動機構14を備えている。
【0019】
部品供給部11の側部には、吸着ノズル131に吸着された部品を下方から撮像する部品認識カメラ(撮像手段)16が配置されている。
X軸移動機構12は、部品を吸着する吸着ノズル131を備えた搭載ヘッド部13(加圧制御ヘッド)をX軸方向に移動させる。
搭載ヘッド部13は、X軸移動機構12と接続されている。
Y軸移動機構14は、X軸移動機構12、並びに搭載ヘッド部13をY軸方向に移動させる。
搭載ヘッド部13は、吸着ノズル131を垂直方向(Z軸方向)に昇降可能に移動させるZ軸移動機構を備え、また、吸着ノズル131を、ノズル軸(吸着軸)を中心に回転させるθ軸移動機構を備えている。
また、搭載ヘッド部13には、支持部材に取付けるようにして、回路基板10上に形成された基板マークを撮像する基板認識カメラ17が搭載されている。
【0020】
図2は電子部品実装装置の制御系の構成を示している。図中、20は装置全体を制御するマイクロコンピュータ(CPU)、並びにRAM、ROMなどからなるコントローラ(制御手段)であり、このコントローラ20に、X軸モータ21から表示装置(モニタ)31が接続され、それぞれを制御している。
【0021】
X軸モータ21は、X軸移動機構12の駆動源で、搭載ヘッド部13をX軸方向に移動させる。
また、Y軸モータ22は、Y軸移動機構14の駆動源で、X軸移動機構12をY軸方向に駆動し、それにより搭載ヘッド部13はX軸方向とY軸方向に移動可能となる。
【0022】
Z軸モータ23は、吸着ノズル131を昇降させるZ軸駆動機構(不図示)の駆動源で、吸着ノズル131をZ軸方向(高さ方向)に昇降させる。
また、θ軸モータ24は、吸着ノズル131のθ軸回転機構(不図示)の駆動源で、吸着ノズル131をそのノズル中心軸(吸着軸)を中心にして回転させる。
【0023】
画像認識装置27は、吸着ノズル131に吸着された部品18の画像認識を行なうもので、A/D変換器271、メモリ272及びCPU273から構成される。
そして、吸着された部品18を撮像した部品認識カメラ16から出力されるアナログの画像信号をA/D変換器271によりデジタル信号に変換してメモリ272に格納し、CPU273がその画像データに基づいて吸着された部品の認識を行なう。
すなわち、画像認識装置27は、部品中心と吸着角度を演算し、部品の吸着姿勢を認識する。
また、画像認識装置27は、基板認識カメラ17で撮像された基板マークの画像を処理して基板マーク位置を演算する。
また、画像認識装置27は、部品認識カメラ16で撮像された部品18の画像データと基板認識カメラ17で撮像された基板マークデータを処理して、両方の補正データを制御手段20へ転送する。
【0024】
キーボード28とマウス29は、部品データなどのデータを入力するために用いられる。
記憶装置30は、フラッシュメモリなどで構成され、キーボード28とマウス29により入力された部品データ、及び不図示のホストコンピュータから供給される部品データなどを格納するのに用いられる。
表示装置(モニタ)31は、部品データ、演算データ、及び部品認識カメラ16で撮像した部品18の画像などをその表示面311に表示する。
【0025】
実際に、基板の生産を開始し、部品を回路基板に搭載する段階では、予め基板認識カメラ17で撮像された基板マークによる回路基板10の基板補正データ(Δx、Δy、Δθ)は記憶装置30に格納されている。
そして、部品供給装置11から供給される部品を吸着ノズル131で吸着し、搭載ヘッド部13を部品認識カメラ16上部に移動させて、部品を同カメラで撮像する。
撮像された部品の画像は、画像認識装置27で画像処理され、補正データを制御手段20へ転送する。
制御手段20は、記憶装置30から基板補正データと当該部品の部品データを読み出して、この部品データと前記転送された画像認識装置27で演算された部品中心と部品の傾きをもとに、部品の搭載位置と吸着姿勢を認識する。
続いて、部品搭載位置と部品中心と吸着中心間に位置ずれがあり、また、角度ずれが検出されると、これらの総合位置ずれと角度ずれがX軸モータ21、Y軸モータ22、θ軸モータ24を駆動することにより補正され、部品が所定の回路基板位置に正しい姿勢(基準角度)で搭載される。
【0026】
次に、搭載ヘッド部13について図3を使用して説明を行う。
【0027】
図示のように、搭載ヘッド部13のベースフレーム100にリニアガイド101が設置され、垂直Z駆動部102が垂直Z軸方向に移動可能な構造となっている。
搭載ヘッド部13上部には、垂直Z駆動部102を垂直上下動させるためのZ軸モータ23がベースフレーム100に固定され、このZ軸モータ23にカップリング110を介してボールねじのねじ部111が接続されている。
【0028】
また、部品を回転動作させるためのθ軸モータ24は、スプライン軸受107と回転ベアリング106で構成されて外周部にベルトプーリが取付けられた垂直回転駆動部軸受105と、θモータプーリ108とタイミングベルト109を介して接続されている。
垂直回転駆動部軸受105は、内部にスプライン軸受107があり、スプライン軸であるノズルシャフト104と接続されている。
垂直回転駆動部軸受105の外周部には、回転ベアリング106が取付けられている。この回転ベアリング106の外周がベースフレーム100に固定されていて、ノズルシャフト104は、垂直回転駆動部軸受105によって回転動作と上下動作ができるように固定されている。
【0029】
垂直Z駆動部102の一端には、ボールねじのねじ部111に噛み合うナット部118が固定されている。
従って、Z軸モータ23を回転動作させることにより、ボールねじのナット部118によって垂直Z駆動部102が上下に駆動される構造となっていて、ノズルシャフト104及び吸着ノズル131を上下駆動動作できる。
【0030】
また、垂直Z駆動部102には、ノズルシャフト104を回転支持するために、下側回転ベアリング141、上側回転ベアリング142が設置されている。
垂直Z駆動部102のノズルシャフト104とボールねじのナット部109の間に円形の穴形状である変形部112が設けられている。この変形部112に、ひずみゲージ113が取付けられている。
ひずみゲージ113は、ひずみゲージ113の出力電圧と荷重値の関係は、予め校正をとって図4のような関係をとり、コントローラ20に保存してある。
なお、ひずみゲージ113は、適切な構造変更を伴ってロードセルに置き換えることができる。
【0031】
また、ベースフレーム100には、垂直Z駆動部102のリニアガイド101側の固定部付近を検出するように原点センサ114が固定されている。
【0032】
次に、電子部品の加圧搭載動作の流れを説明する。
【0033】
図1の搭載ヘッド13をX軸移動機構12、Y軸移動機構14を動作させて電子部品供給装置11の上方に搭載ヘッド部13を移動し、電子部品18を吸着する。
電子部品18を吸着した搭載ヘッド部13を部品認識カメラ16の上方へ移動し、電子部品18を認識する。
認識を完了した後に搭載ヘッド部13を移動し、回路基板10上の電子部品18の搭載予定部に搭載ヘッド部13にて電子部品18を吸着して部品認識カメラ16上に移動し、電子部品18を部品認識カメラ16上で認識し、回路基板10上の搭載位置へ移動して搭載を行う。
【0034】
次に、荷重制御による部品搭載動作について説明する。
【0035】
搭載ヘッド部13を回路基板10上の部品搭載位置でZ軸モータ23を駆動させて、垂直Z駆動部102及び吸着ノズル131を下降させる。
吸着ノズル131に吸着された部品18を、搭載する回路基板10への搭載高さ直前位置(Z1)まで高速で降下させる。
その後、Z軸モータ23を駆動して、吸着ノズル131に吸着された部品18を4mm/秒程度の低速度で下降させて衝撃荷重を押さえつつ、目標搭載高さまで下降させる。
電子部品18の下面が回路基板10に接触(0)すると検出部112が変形し、ひずみゲージ113の出力に変化(L0→L1)が生じる。
さらに、ひずみゲージ113の出力が目標の加圧量になるようにZ軸モータ23を駆動させる。
ひずみゲージ113の出力が目標荷重値に対応する出力(L2)となった時にZ軸モータ23を停止させる。
電子部品18を加圧搭載した後にバキュームエアをOFFし、Z軸モータ23を動作させて垂直Z軸駆動部102及び吸着ノズル131を上昇させる。
その後、次の電子部品の吸着位置へ移動が行なわれる。
【0036】
次に原点復帰動作について説明する。
【0037】
Z軸駆動部102を原点センサ114の検出範囲から離れる位置(例えば2mm)下降移動させる。
その後、原点復帰速度10mm/秒にて、上昇をさせる。
原点センサ114の検出ONの高さ(A0)をZ軸モータのエンコーダ値から読取り、CPU27Cに記憶しておく。
Z軸駆動部102が原点センサ114を検出した直後に検出されるZ軸モータ23のエンコーダ原点の位置を、Z軸駆動部102の原点とすることで、電源オフ/オンを繰り返してもZ軸原点の高精度な再現性が得られる。
【0038】
<動作の説明>
図5において、「1」はXY機構上に載置されたマウンタヘッドのノズル先端が、XY動作によって、搭載する基板上の部品や、その他基板周辺のマウンタ機構部に接触する可能性のない第1の高さであり、「2」はノズルの吸着している部品が基板面に接触を開始する直前の第2のZ軸高さである。
【0039】
第1の高さ「1」から第2の高さ「2」までは、搭載性能の低下を最小化するため高速に降下する(900mm/秒程度)。このとき、ノズルの下降位置制御を高精度で実現するため通常の位置制御を行うためゲインを高く設定している。
【0040】
第2の高さ「2」では、モータ軸を一端停止させ、ゲインを低く設定した後、軸降下を再開する。
ここで、モータ速度を低速(4mm/秒)として、モータ位置制御モードにおいて発生トルクを生成するゲインを、必要とする設定荷重に応じて設定する。前記発生出力トルクを、前記サーボモータの位置フィードバックゲインを含む制御パラメータに基づいて可変する。
その他、ゲインの制御パラメータとしての設定特性を、積分補償型ゲインパラメータを少なく設定したゲインに変更する。
サーボモータの発生トルクは位置フィードバックゲインと位置偏差に応じて決まるが、位置偏差量とその状態の継続時間に応じても発生トルクのフィードバック調整が機能するため、積分補償型ゲインなどの時間軸を要素とするフィードバック機能を小さく設定し、安定な加圧力を得ようとするものである。
【0041】
図5において、「3」は部品下面と基板面の当接点である。
【0042】
ロードセルの計測結果が指定荷重値に達しない限り、継続してZ軸を降下させるため、ノズル先端に吸着された部品が基板面に当接して、降下を妨げられると、モータ軸の目標座標と実座標の乖離が進むため、前記のゲイン設定の結果サーボモータの発生トルクが増加し、ロードセルの計測結果も、モータ軸の目標座標が進むにつれて暫増する。
【0043】
図6はモータ軸変移角度(モータ軸の目標座標と実座標の差)と発生トルクの関係を実測したグラフである。横軸は、前記座標の差をモータ軸の回転角度(10度〜60度)で示している。
発生トルクは、設定ゲイン10〜設定ゲイン100を数値10ごとに評価している。
このように、モータ軸変移角度とゲインとモータ出力トルクはおおむね比例関係にある。従って、前記のように設定荷重 (部品の種別により異なる部品の基板面への押圧力) 対応して、発生出力トルクを前記サーボモータのフィードバックゲインを選択することにより調節することができる。
【0044】
図7はノズル先端に吸着された部品が基板面に当接した後の、基板面が受ける荷重の変化を実測したものである(Z軸速度=10mm/秒、ヘッド部質量=250g)。
前記部品が基板面に当接した直後に縦軸に示す荷重は急峻に立ち上がり、以降時間の推移に比例して荷重が増加する。
この急峻に立ち上がる荷重部分は、主にヘッド可動部の持つ質量による衝撃荷重が計測されたものである。
【0045】
図5において、「4−1」に示すとおり、ロードセルの計測結果が設定荷重を上回ると、Z軸モータの駆動が停止される。
実装機の操作設定により、最低加圧継続時間が設定されている場合は、「5」まで指定圧力を維持するために、ロードセルの計測結果に応じてZ軸モータの降下/上昇を繰り返すことが可能となっている。
ロードセルの計測結果が設定荷重を上回ったことにより、Z軸モータの降下を瞬時に停止することが望ましい。
この反応に遅延が有ると、その分モータの目標座標が進みモータ軸の発生トルクが過大となってしまう。
【0046】
本発明では、モータ軸変移角度とゲイン値とモータ出力トルクの関係を利用して、ゲインを低めに設定することによって、モータの目標座標と実座標の差が生じても極端に大きな荷重変化が生じないようにしているため、モータの目標座標が進み過ぎても目標荷重に沿った圧力制御が実現できるようになっている。
【0047】
ここで、設定荷重において、ノズル先端の目標座標に対する最大遅れ量が0.75mmとなるように適切にゲインが設定されている場合、目標荷重に対する制御誤差を3%、Z軸モータの速度を5mm/秒とすると、反応遅れ許容時間=(最大遅れ量×制御精度)÷モータ軸速度より=0.0045秒となる。
このため、本発明の荷重方式では、通常のサーボアンプを直接マウンタ制御部からコントロールして荷重制御を実現させることができる。
従って、荷重制御のためにロードセルの計測結果を参照して、モータ軸やVCMまたは電空レギュレータを高速にフィードバック制御するような特別な制御系を設ける必要がない。
【0048】
以上のとおり、実施形態のマウンタ装置の加圧制御ヘッドによれば、以下に列挙する効果を発揮できる。
【0049】
1)ヘッドを第1の高さ位置から第2の高さ位置に移動する手段として設けたZ軸モータにより第2の高さ位置から第3の高さ位置へ移動し、ノズルの加圧を行う加圧源としても同じZ軸モータが用いられるため、加圧制御ヘッドをシンプルな構成で低コストに提供することができる。
【0050】
2)加圧を行なうために必要となる広い荷重範囲を持ったばねに代わって、モータ軸の発生トルクで加圧することができるため、構造がシンプルであることに加え、より広範囲な荷重範囲に精度良く対応することができる。
【0051】
3)Z軸モータを常に位置制御モードで利用するため、モータの軸座標管理に誤差が生じない。
【0052】
4)Z軸モータの発生トルクを用いた加圧であるため、モータの目標座標と実座標の最大ずれ量を制限することができる。
すなわち、ばね加圧式の構造では、コネクタ挿入処理のように負荷荷重のピーク(抜け防止の返し部の通過が最大負荷となるため)を通過した直後、急激に負荷が小さくなってしまうような特性を持った負荷であると、ばねのたわみ量に相当する軸のオーバーシュートが発生し、衝撃荷重によって部品にダメージを与える恐れがある。
これに対し、本方式では、前記最大ずれ量が制限されているため、負荷変動に対する位置のオーバーシュートが小さく、衝撃荷重を小さく抑えることができる。
【0053】
5)荷重制御機能を持った専用のサーボアンプを必要としない。
【0054】
<発明の概要2>
本発明は、部品供給部から部品を取出して基板上に荷重制御しながら装着する搭載ヘッドにおいて、目標の加圧量を維持する動作維持の際に、軸の移動量を軸が動作する最小変位量を移動単位として、微小に動作させながら荷重制御するものである。
【0055】
特開平06−177179号公報において、基体のマウント部にチップ部品をマウントするチップ部品マウント装置であって、前記チップ部品を保持するチャック手段と、このチャック手段を上下動させるリニアモータと、前記チャック手段に保持されたチップ部品を前記基体のマウント部に載置して加圧する際、前記リニアモータのトルクを徐々に増加し、チップ部品に対する荷重を徐々に増加する制御手段とを具備するチップ部品マウント装置が提案される。
このチップ部品マウント装置は、チャック手段に保持されたチップ部品を基体のマウント部に載置して加圧する際、前記チャック手段を駆動するリニアモータのトルクを徐々に増加し、チップ部品に対する荷重を徐々に増加する。
【0056】
しかし、前記特開平06−177179号公報のものは、モータトルクが微小の場合、ほとんど軸が動作せず、押圧の変化が見られない問題がある。
すなわち、荷重制御時に荷重の変動が小さく、出力するモータトルクが微小だった場合、機械的な摺動抵抗やバックラッシなどの影響もあり、軸がほとんど動作せず、加圧部先端にまで動作の変化が見られずに、荷重の変化が見られないということになり、そのため、荷重値のズレやばらつきの増加などにつながる問題があった。
【0057】
(実施形態2)
図8において、前述した実施形態1と同様、13は搭載ヘッド部、23はZ軸モータ、24はθ軸モータ、100はベースフレーム、101はリニアガイド、102は垂直Z駆動部、104はノズルシャフト、109はタイミングベルト、110はカップリング、111はボールねじのねじ部、118はボールねじのナット部、131は吸着ノズルである。
【0058】
次に、加圧搭載動作について図9を用いて説明を行う。
【0059】
<加圧開始高さへの移動>
「1」1段階目下降:目標位置まで指定速度(デフォルト:最高速)で下降する。
【0060】
<加圧+押込み>
「2」ゲイン切替え:荷重制御切替え高さに到達したら(この場合接触時)、軸のゲインを荷重制御用ゲインに切替え、軸速度を第一速度に切替える。
【0061】
「3」送り量切替え:所定荷重に達したら、軸の動作を間欠動作に切替えて下降を開始(ロードセル値読込み1[msec]間隔)し、 軸の送り量を20[μm]の微小送りに切替える。
ここで言う間欠動作とは、20[μm]移動→停止し、ロードセル値読込み→20[μm]移動の繰返し動作のことを言う。
【0062】
「4」停止:ロードセル値が指定荷重に到達したら、間欠動作を停止する。
【0063】
<加圧+時間>
「5」維持:指定加圧時間中モータ電流値監視&指定荷重維持する。
【0064】
<搭載完了>
「6」完了:ゲインを通常動作用のゲインに切替え、上昇動作する。
【0065】
図10及び図11は、実際に荷重制御した際のモータの電流波形である。
送り量が小さい時は、図10のような波形となり、同荷重を繰返し荷重した時のばらつき(3σ)=±1.34[N]であった。
図16のように、送り量を大きくすることで、同荷重を繰返し荷重した時のばらつき(3σ)=±0.15[N]と約1/10にすることが可能である。
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、荷重値のズレやばらつきを抑えることができる。
すなわち、モータ軸が必ず動作する最小の送り量としているので、モータの目標座標のみが変化し、ノズル先端が動かないということが起きないので、確実に荷重制御をすることができる。
【0067】
(他の実施例)
実施形態3では、1[msec]間隔で20[μm]送りをしたが、時間間隔をもっと小さくし、高周波で送ることにより、実際のノズル先端の荷重の変化を更に小さくすることができる。
なお、送り量と時間間隔は、装置の構成によって決まり、実施形態の値に決まるものではない。
【0068】
また、実施形態3では、ロードセルの検出に基づく荷重制御と電流制御が混在する制御としたが、荷重検出装置より下流に摺動要素の多い機構で荷重制御を有効なものとして、高荷重では電流制御でのみ有効なものとしてもよい。
【0069】
<発明の概要3>
本発明は、部品吸着ノズル内で上下移動するノズルスライダー部の動きを規制するストッパー部を有し、ノズルとノズルスライダーの間に弾性体を有し、前記弾性体は、部品吸着ノズルの押込み量に応じて荷重が変化するように構成された、電子部品を基板上に搭載する電子部品搭載装置において、低い加圧量のときは、弾性体により加圧を行い、高い加圧量のときは、ノズルは、ストッパーに当接し剛体の状態で加圧するものである。
【0070】
特開2009−277850号公報において、電子部品の実装装置および実装方法が提案される。
この装置では、駆動源の回転力をボールねじに伝えることで、スライダー部の上下方向の微小な動作を行う。電子部品を加圧搭載するときは、スライダー部上部に配置された加圧用駆動源(サーボモータ)の回転力を加圧ツールへリニアガイドを通じて伝達し、スライダー部を基板方向へ押し出すことで加圧を行う。スライダー部は圧縮ばねにより上方向へ常時引き上げられており、またスライダー部は上下方向の駆動源と加圧用駆動源と切り離されているので、上下方向の微小動作と加圧動作を切り離して動作することができる。
【0071】
しかしながら、前記特開2009−277850号公報のものでは、以下3点の問題があった。
1)衝撃荷重が大きくなる
加圧するためのユニットが完全にリジット(剛体)の場合、加圧を行う際に基板との接触時の衝撃緩和のために、ユニットの下降速度を極力抑える必要があり、搭載時間が長くなる。
2)目標荷重までの到達時間が長くなる
前記衝撃荷重を抑えるために下降速度を抑えるため、目標荷重までの到達時間が長くなる。
3)微小荷重の制御が難しい
加圧するためのユニットが完全にリジット(剛体)の場合、押込み量(変位量)に対する加圧量が大きいため、微小な荷重制御が難しく、目標荷重値とのズレが発生したり、バラツキが大きくなる。
【0072】
(実施形態3)
図12は本発明の一実施例として電子部品搭載装置の構成を示すもので、部品搭載ヘッド201、ボールネジやベルトと組み合わせたモータ、もしくはリニアモータ等で駆動されるX軸フレーム202、Yフレーム軸203、基板搬送部204、部品供給部205からなる電子部品搭載装置を示したものである。
【0073】
X軸フレーム202は左右のY軸、YL,YR軸に装着されたモータで駆動される。
また、X軸フレーム202上に設置された部品搭載ヘッド201は、X軸フレーム202に沿って移動し、X軸フレーム202は直交したY軸フレーム3に沿って移動するXYユニットである。
部品搭載ヘッド201には上下方向に移動可能な搭載部品を吸着するノズルが装着されており、基板搬送部204によって搬送され固定された基板に対して、部品供給部205で供給された部品をノズルで真空吸着してからその部品を基板に搭載することができる。
【0074】
次に、加圧ヘッドの構成を図13及び図14に示す。
【0075】
電子部品15の吸着・搭載かつ加圧動作は以下のように行う。
【0076】
固定ブラケット207に取り付けられた、Zモータ216が回転することで、カップリング217によって直結されているボールねじ221が回転し、ボールねじ221によって支持しているスライダー部223が上下動を行う。
スライダー部223にはガイドナット210aがあり、固定ブラケット207に取り付けられたリニアガイドレール210bと連結することでスムーズに上下動を行うことができる。
また、スライダー部223の中空ロードセル222内の軸受によってスプラインシャフト206、カップリング209、ノズルシャフト212、ノズル214の上下方向を保持しており、スライダー部223と一緒に上下動することで電子部品215を吸着・搭載する。
なお、213はボールブッシュ、219はスラスト軸受である。
【0077】
次に、電子部品215の回転動作は以下のように行う。
【0078】
固定ブラケット207に取り付けられた、回転動を行うためのθモータ220が回転することで、タイミングベルト218によって連結されたスプラインナット208が回転し、スプラインシャフト206を回転させる。
スプラインシャフト206とノズルシャフト212はカップリング209によって直結されているので、スプラインシャフト206が回転するとノズルシャフト212が回転し、電子部品15を回転させる。
【0079】
次に、部品吸着ノズル214を図15に示す。
【0080】
図15(a)は電子部品215と基板224が接触した瞬間のノズル214を示し、図15(b)はノズル214が下方向に押込むことで、ノズルばね228が圧縮され、ノズルアウター226下端とノズルスライダーストッパー225bが接触し、リジットになったときのノズル214を示す。
ノズルが通常状態からリジット状態になるまでのストローク229を極力小さくすることで、ノズルばね228圧以上の目標荷重までの到達時間を早くすることができる。
【0081】
以上の構成において、電子部品215搭載時の荷重検出動作について、図13から図15を用いて説明する。
【0082】
電子部品215を保持したノズル214が基板224に接触することで受けた力は、ノズルシャフト212を通り、ノズルシャフト212の段部を介して中空ロードセル222へ伝達され、加圧量を検出する。
【0083】
図15(a)において、この図の状態の時に基板に加わる加圧量は、ノズルばね228の初期圧F0である(図16参照)。その状態からノズル214が下方向へ押込むことで加圧量はノズルばね228のばね定数に比例して増加する。
つまり、ノズルばね228を用いた加圧量は最大でF1であり、これは図15(b)に示すノズルストローク229がゼロになり、ノズル214がリジットになる加圧量である。図16における加圧量F2は、ノズルばね228の圧縮途中が目標荷重値であることを示す。
【0084】
図15(b)の状態はノズル214先端からノズルシャフト212、中空ロードセル222、ボールねじ221、Zモータ216まで直結となり、Zモータ216のトルクが1:1で基板に伝達される。
図16の加圧量F3はノズル214がリジットになる加圧量F1より大きい加圧量であり、加圧量F3へ達するまでは加圧波形の傾きが二つ存在することとなる。
【0085】
ノズルばね228の圧縮時の加圧量の波形の傾きは図16のθ1で表され、ノズル214がリジット時の加圧量の傾きはθ2で表され、θ1<θ2が成立し、これはノズル214がリジット状態での押込みは、ノズルばね228のような緩衝材がないために、前記の通り、Zモータ216のトルクを1:1の力で基板に伝達するためである。
【0086】
以上説明したように、本発明によれば以下の効果が得られる。
1)衝撃を緩和することができる
ノズルばねの初期荷重を低くすることで、基板に接触した時の衝撃荷重を小さくすることができ、下降速度を抑える必要が無く、早い時間で目標荷重に到達することができる。
2)高速に目標荷重まで加圧できる
低い加圧量の時は、ノズルばねが圧縮されストッパーに当たる前に目標加圧量になるので、目標加圧への到達時間が短い。
また、ノズルばねのストロークを極力小さくすることで、ノズルがリジットになり、高荷重領域までの到達時間を早めることができる。
3)低い加圧量の時に高精度に制御ができる
加圧量が低い時は、ノズルばねにより、変位量に対する加圧量の変化が小さいので、精度良く、制御することができる。
【0087】
また、実施形態のように、高荷重ノズルは、加圧用に広い台座を設けるとともに、ノズルばねの効果により高速な(荷重制御を用いない)吸着ができる。
【0088】
(他の実施例)
実施形態3では、Zスライダー部に荷重検出用のロードセルを組み込んだ方式を用いたが、荷重検出をZモータの負荷トルクで検出するトルク制御においても同様の効果が認められる。
【0089】
また、実施形態3では、ロードセルによる検出に基づく制御としたが、電流制御でも可能である。
【0090】
<発明の概要4>
本発明は、電子部品を吸着ノズルにより、部品供給部より基板上へ移動搭載するマウンタ装置であり、吸着ノズルが部品を基板面に押し付ける圧力を検出するセンサを有すると共に、ノズルの押し付け力が、専用の加圧モータ、または、ノズルの昇降手段の推力より得られる構造であって、加圧力の設定範囲の50%未満の範囲で、前記圧力センサの出力を参照して、加圧制御し、前記加圧範囲を超える部分はモータの電流値を参照して加圧制御する方式である。
さらに、その加圧力の設定範囲の50%未満の範囲で得た圧力センサの出力値と、モータの電流値とが比例関係にあることを利用し、前記加圧範囲を超える部分はモータの電流値から加圧力を推測して加圧制御する。
【0091】
特許第2877120号公報において、電子部品を搭載する際の圧力を、圧力検出部で検出した加圧値によって制御するような電子部品搭載装置の圧力検出部に、低加圧用と高加圧用を用意し、設定した加圧値を超えると、低加圧用の圧力検出部から、高加圧用の圧力検出部へ切り替える技術が開示される。
そのメリットは、高加圧用の圧力検出部は、低加圧の時、ノイズなどの影響で上手く読み取れないという問題を解決できることである。
【0092】
次に、そのメリットを補足する。
図17に圧力検出部の電気的に良い環境における無負荷時の出力の一例を示した。
【0093】
この加圧検出部は、加圧力の定格が100Nで、その時10Vを出力するように設定した。この時のノイズ成分は、±10mVであった。
【0094】
このように、加圧検出部の出力にはノイズが乗ってしまう事が一般的であるため、もし、±10mVのノイズが乗ってしまうと、例えば10Nの時、加圧検出部の出力が10N/100N×10V=1Vであるため、±1%の誤差が検出されることになる。1Nの時は±10%の誤差が検出されることになる。
【0095】
しかし、加圧力の定格が10Nで10Vを出力する低加圧用の加圧検出部と、加圧力の定格が100Nで10Vを出力する高加圧用の加圧検出部を使った、前記特許第2877120号公報の方法を用いれば、1Nの低加圧時でもノイズによる誤差は±10%となり、問題を緩和できるのである。
しかし、加圧検出部は一般的に高価であり、前記特許第2877120号公報の方法では、これを二個以上使わなくてはならないというデメリットがあった。
【0096】
(実施形態4)
図18に実施において必要な機械的構成を示す。図中、前述した実施形態1と同様、13は搭載ヘッド部、18は電子部品、23はZ軸モータ、24はθ軸モータ、100はベースフレーム、101はリニアガイド、102は垂直Z駆動部、104はノズルシャフト、105は垂直回転駆動部軸受、106は回転ベアリング、107はスプライン軸受、108はθモータプーリ、109はタイミングベルト、110はカップリング、111はボールねじのねじ部、118はボールねじのナット部、131は吸着ノズルであって、143はロータリブッシュベアリング、144は加圧検出部、150は加圧用の台である。
【0097】
本実施例では、電子部品にかける加圧力の制御域が0〜100Nであるような場合について述べる。
【0098】
図18は、摺動などによる加圧力の検出誤差を減らすため、電子部品へかかる加圧力ができるだけ損失なく圧力検出部へ伝わる構成となっていることを示している。
この構成では、吸着ノズル131が鉛直上方へ押される力を、ノズル軸104に設けられた圧力検出部144で検出する。
また、本実施例で使用するZ軸モータ23はサーボモータである。
【0099】
次に、図19に本発明で必要な制御に関するブロック構成を示した。図中、123はモータエンコーダ、124はサーボドライバ、125はCPUである。
【0100】
図示のように、CPU125は、圧力検出部144からの加圧情報(加圧値)と、サーボドライバ124からのモータ電流情報(モータ電流値)に基づいて、サーボドライバ124に位置指令と加圧指令(指令値)を出す。
その指令に基づいて、サーボドライバ124はモータ駆動電流をZ軸モータ(サーボモータ)23に出す。なお、モータエンコーダ123からモータ位置情報がサーボドライバ124に取り入れられる。
【0101】
さらに、本実施例では、前記特許第2877120号公報でいうところの低加圧域が0N〜10N、高加圧域が10N〜100Nと仮定しておく。
【0102】
次に、図19の制御ブロックを用いて加圧力を制御する準備の手順を図20に示す。
【0103】
図20のフローにおいて、まず、圧力検出部のキャリブレーションによって、ノズル131が加圧されていない状態の加圧値を0Nとし、この時のモータ駆動電流I0を記憶しておく(ステップS21)。
次に、図18の加圧用の台150へ、ノズル131を押し当て、モータ23を駆動してZ軸を徐々に下降させ(ステップS22)、圧力検出部144が10Nを検出(ステップS23)した時のモータ駆動電流I10を記憶しておく(ステップS24)。
一般的に、サーボモータの電流と加圧力は、モータの回転数が変わらなければ比例することから、10Nから100Nまでの加圧力は、0N時と10N時の電流値から推測が可能なので、これをCPU125にて演算し、記憶しておく。
この関係を図21に示した。
【0104】
また、電子部品18を搭載する際、加圧指令が0Nから10Nの低加圧領域の場合は、圧力検出部144からの加圧値を使用する。
そして、加圧指令が10Nを超える高加圧領域では、圧力検出部144を使用せず、図21の特性とモータ駆動電流から推測した加圧値を使用する。
この時の手順を図22に示す。
【0105】
図示のように、搭載開始により、指令値を設定し、その値を記憶する(ステップS31)。
続いて、記憶した指令値は低加圧領域か?を判別し(ステップS32)、低加圧領域であれば次のステップS33に進み、低加圧領域でなければ図23のステップS36に進む。
ステップS33では、電子部品をノズルへ吸着し、搭載位置までヘッドをXY方向へ移動させる。
続いて、電子部品を搭載する基板へ向けて低速で下降させる(ステップS34)。
次に、加圧値が指令値を超えたか?を判別し(ステップS35)、指令値を超えていれば処理を終了し、指令値を超えていなければステップS34に戻って以降の処理を繰り返す。
【0106】
また、図23に示すように、ステップS36では、図21の特性を用いて指令値の単位を圧力から電流へ変換し、記憶する。
続いて、電子部品をノズルへ吸着し、搭載位置までヘッドをXY方向へ移動させる(ステップS37)。
続いて、電子部品を搭載する基板へ向けて低速で下降させる(ステップS38)。
次に、モータ電流値が指令値を超えたか?を判別し(ステップS39)、指令値を超えていれば処理を終了し、指令値を超えていなければステップS38に戻って以降の処理を繰り返す。
【0107】
以上説明したように、本発明によれば、前記特許第2877120号公報の効果を圧力検出部一個で達成できる。
【0108】
<発明の概要5>
本発明は、前述した発明の概要1の加圧制御システムにおいて、加圧制御時の異常状態判定結果に加えて、ノズルの先端座標、ロードセルでの計測荷重値、部品種に基づき異常検知時の対応動作を切り分けるものである。
さらに、部品が基板から受ける衝撃荷重を許容範囲内に抑制する手段として、部品種ごとに規定された衝撃時間、部品搭載時のZ軸方向移動速度に基づいて算出された衝撃荷重計算結果が部品の許容衝撃荷重を超過しない範囲で、最大のZ方向移動速度を算出する。
【0109】
(実施形態5)
本実施例では、前述した実施形態1の図7において、加圧時間経過後、バキュームエアをOFFし、荷重制御用に変更されたモータゲインを元に戻すため、目標座標と実座標の乖離が無くなる座標にZ軸を移動させた後、ゲインを元に戻し高速で上昇動作を行い、次部品の吸着動作に移行する。
【0110】
<荷重制御用のモータゲインについて>
前述の様に、荷重動作時は、ノズル先端の目標座標に対する最大遅れ量が0.75mmとなるようなゲインが設定されている。これは、図24で示すとおり、指定荷重ごとの最大遅れ量が一定となるゲインを設定することにより、荷重制御時のノズル先端座標を高精度に制御するためのものである。
荷重制御用ゲインは、指定された荷重を元に、比例要素・微分要素・積分要素等のパラメータ値を計算により求める方法と、予め規定されたテーブルから取得する方法がある。
【0111】
<荷重動作速度について>
上記実施例では、荷重制御動作時の軸動作速度は低速(4mm/s程度)としているが、軸の動作速度を遅くする事は搭載タクトに影響を与えるため、性能改善の点からなるべく高速の動作が望ましい。
荷重制御時の動作決定条件としては以下の二点が挙げられる。
1)衝突(基板接触)荷重が指定荷重以下であること。
2)反応遅れ許容時間の荷重変化量が制御精度を上回らないこと。
そこで、荷重制御の予備動作として、実際に搭載する部品を吸着し、基板上で荷重動作を行い、接触荷重を測定することで上記二点を満足する最適な下降速度を求める。
【0112】
また、接触荷重は力積の計算から
【0113】
【0114】
で求める事ができるため、予備動作を行わなくても計算により下降速度は算出可能となる。
この場合、接触後の下降速度は接触荷重を最大値で計算するため0mm/s(一瞬停止)に近似し、衝突時間は予め部品種や部品形状、基板厚等のデータに対する時間を内部テーブルで持ち、生産プログラムの情報から最適な衝突時間を採用し、接触荷重を計算する。
下降速度を計算により算出した場合は、実際との部品の誤差を修正するため、生産動作時の接触荷重をフィードバックし、下降速度を微調整する。
【0115】
<荷重動作時のエラー判定について>
搭載荷重を制御する目的は搭載部品によって様々であり、そのため広い加圧範囲と加圧精度が要求されている。
【0116】
搭載荷重の制御目的としては以下のような場合がある。
1)ウェハダイなど薄弱な部品であり、過大な負荷を掛けると部品が破損してしまうため、部品に掛かる荷重値を一定値以下で制御したい。
2)バンプ部品にて、バンプの大きさ(高さ)が均一でなく、搭載時に全てのバンプが正確に接地しない可能性があるため、一定の力で加圧してバンプの高さを均一にしたい。
3)コネクタ部品の圧入を行いたい。
このような目的が異なる動作では、異常動作の判定条件や、異常動作時の対応を切替えることが望ましい。
【0117】
そこで、搭載部品の部品種や部品外形等からエラー判定条件を切替える制御を実施する。
【0118】
エラー判定処理シーケンスを図25に示す。
【0119】
1)第2高さまでZ軸下降開始
実施形態1の図5の「2」基板面に接触を開始する直前の第2Z高さまで下降する(ステップS41)。
2)荷重値取得
第2Z高さでモータ速度やゲインを切替える前にロードセルの荷重値を取得する(ステップS42)。
3)荷重値判定
第2Z高さでロードセルに荷重が掛かっている場合は正しい部品が既に接触しているか、正しい荷重値が取得できていないためエラーとする(ステップS43)。
4)荷重動作開始
モータ速度やゲインの変更を行い、下降動作を開始する(ステップS44)。
リアルタイムでロードセルの荷重値を監視する荷重監視タスクを起動し、荷重値の監視を開始する(ステップS51)。
5)イベント受信
荷重監視タスクから、ロードセルの荷重値が0から変化した時(ステップS52)や、指定荷重を大幅にオーバした荷重を検知した時(ステップS53)など、エラー判定を行う時にイベント通知を受信する(ステップS45)。
6)Z軸高さ取得
エラー判定を行うため、イベント受信時のZ軸高さを取得する(ステップS46)。
7)エラー判定
部品種や部品外形寸法等を使用し、エラー判定を行う(ステップS47)。
エラー判定条件の詳細は表1に示す。
8)加圧時間経過
指定荷重時間の加圧動作が完了するまで上記1)〜8)の処理を繰り返す(ステップS48)。
9)荷重監視終了イベント発行
指定荷重時間の加圧動作が完了したら荷重監視タスクに終了イベントを発行し、荷重動作を終了する(ステップS49)。
10)エラー処理
荷重エラー時のエラー処理を実行する(ステップS50)。
【0120】
【表1】
【0121】
本発明によれば、実施形態1により得られる効果に加えて、モータの軸座標管理に誤差が生じないことにより、部品種や外形寸法などから用途にあったエラー判定が可能になるという効果を発揮できる。
【0122】
<発明の概要6>
本発明は、Z軸モータの電流値から印加荷重を検出し、Z軸モータを制御することにより部品を基板に押し付けることで印加荷重を制御する加圧制御ヘッドにおいて、予め記憶していたZ軸座標に対するコギングトルクを加圧動作時に補正値として使用することにより、加圧搭載時の加圧精度を向上させることを可能としたものである。
さらに、コギングトルクの大きさをZ軸座標に応じて記憶する。
また、Z軸モータの電流値をZ軸座標またはZ軸モータの回転角度に応じて補正し、コギングトルクの影響を低減することで、加圧搭載時の加圧精度を向上させることを可能とする。
また、加圧動作時にコギングトルクの補正値として使用する補正値を、軸ゲインや動作速度を加圧搭載時と同じ状態にして取得することにより、補正値の精度を向上させ加圧搭載時の加圧精度を向上させることを可能とする。
また、加圧搭載時の動作ゲインや動作方法の違いによるコギングトルクの変化を、記憶領域に保存されたコギングトルクデータを使用し、補正式による変換を行うことで、動作状態の変化によるコギングトルクの変化を吸収し、高精度での加圧搭載を維持することを可能とする。
【0123】
(課題)
前述した実施形態1の荷重検出手段を用いずに加圧搭載を行うヘッド構成例において、Z軸可動部とZ軸モータをボールねじを介して直結にすることで、電子部品への印加荷重がモータにダイレクトに伝わるようにしている。
これにより、部品とモータ間の印加荷重の誤差発生部はボールねじとクロスローラガイドに限定され、これらの摺動抵抗を低減することにより、部品とモータ間の誤差が小さくなり、低荷重領域での加圧搭載が実現可能となる。
また、サーボモータはモータ動作時の内部抵抗となるコギングトルクを持っており、一般的には定格トルクの5%〜10%程度とされている。
Z軸可動部は高速で動作することを前提とした設計がされているため、通常の高速動作時の動作トルクが100%になるようなモータ選定がされている。
上記構造の加圧ヘッドでは、低荷重の加圧を行う場合に、モータの動作トルクを10%以下に低下させることがある。このように低出力領域で使用するとコギングトルクの影響を受け、正しい加圧動作が行えない問題が発生する。
【0124】
本発明では、モータのトルク値を参照し、加圧搭載を行う制御においてモータのコギングトルクの影響を排除し、低荷重領域での加圧搭載動作の実現と、全ての荷重領域においてコギングトルクを加圧精度を向上するための手段を提案する。
【0125】
(実施形態6)
前述したヘッド構成において、加圧搭載時と同じ条件でZ軸を一定速度で下降させたときの電流値波形を図26に示す。
Z軸を一定速度で下降させているため、電流値は一定値となるはずのものがコギングトルクによる影響で周期的に電流値に変動が起きている事がわかる。図26の波形は2回分の測定結果を示すものであるが、1回目と2回目の測定結果には差異が無く安定している。
なお、コギングトルクが経時変化しない特性である事は周知である。
図26で使用したモータの場合、電流値の変動幅は定格トルクの−2%〜+1%となっており、この変動幅を荷重値に換算するとおおよそ3N程度の幅で電流値が振動していることになる。
これは、加圧搭載時には3N程度の誤差を伴うことになることを示している。
【0126】
本発明では、これらのコギングトルク値を予め取得し、加圧搭載時のZ軸高さに応じてコギングトルクの影響を補正することで、高精度な加圧搭載を実現する。
【0127】
<対象モータのコギングトルク取得処理>
ヘッド部の組付け調整段階で、モータのコギングトルク値の取得を行う。コギングトルク値の取得は、加圧動作時により近いゲイン設定、動作状態で行う。
【0128】
コギングトルク値の取得シーケンスは図27のようになる。
【0129】
1)荷重ノズルを装着する(ステップS61、ステップS62)。
2)加圧搭載範囲の上限高さへ移動し、軸ゲインを加圧搭載用ゲインに変更する(ステップS63、ステップS64)。
加圧搭載範囲内のデータを取得するため、加圧搭載範囲の上限高さを測定開始高さとする(ステップS65)。
3)Z軸を任意の移動量(10μm)下降させ、軸移動完了後、電流値の整定を待って現在座標値とその時の電流値を取得する(ステップS66)。
軸座標は、摺動抵抗を考慮し指令座標ではなく実座標とする。
4)取得した現在座標と電流値を内部テーブルに保存する(ステップS67)。
5)前述した3)、4)を加圧搭載範囲の下限高さまで繰り返す(ステップS68)。
6)前述した2)〜5)を複数回(5回)行う(ステップS69)。
7)内部テーブルの平均値を、各Z軸座標に対するコギングトルク値として採用し、記憶領域に保存する(ステップS70)。
【0130】
以後、記憶領域に保存された、上限高さから下限高さまでのZ軸座標とコギングトルク値のデータ郡をコギングトルクテーブルと呼ぶ。
【0131】
<加圧搭載動作時処理>
加圧搭載動作時は、加圧搭載範囲上限高さまで高速でZ軸を下降させ、ゲインの切り替えを行う。その後、加圧搭載用の動作プロファイルで下降を行い、基板への当接検知や目標荷重での加圧動作を行う。
一定周期でモータ電流値とZ軸座標をサンプリングし、サンプリングしたZ軸座標に応じたコギングトルク値を記憶領域に保存されているコギングトルクテーブルより選択し、取得した電流値からコギングトルクの影響分を除外した物を実印加荷重とする。
補正するコギングトルク値はコギングトルクテーブルのZ軸座標と加圧搭載時の実座標から近似座標の直線補完により算出する。
このことにより、全ての加圧領域においてコギングトルクの影響が除外できるため、加圧精度が向上できる。
【0132】
<軸状態による補正処理>
加圧搭載動作は、低荷重領域から高荷重領域までの加圧搭載を対象としている。
そのため、低荷重領域時と、高荷重領域時では、ゲイン設定や動作プロファイル、動作シーケンスが異なってくる。
【0133】
図28に軸の動作ゲインを変更して同じ電流波形を取得した結果を示す。
波形の周期は変化していないが、荷重ゲイン時と比較すると、通常ゲイン時の波形は振幅が大きくなっている。
【0134】
同様に、図29は軸の状態変化による電流値の変化を示している。
【0135】
「1」部は軸ゲインを高速動作時の設定から加圧搭載時のゲインに切り替えた際の電流値変化である。
ゲイン切り替えは軸を停止状態(サーボロック状態)で行っている。
「2」部は加圧搭載時のゲインで軸動作を開始した時の電流値変化である。
停止時の電流値から駆動電流分変化があり、定速状態になるとコギングの影響が出ていることを示している。
【0136】
このように、動作時のゲインや、電流時の取得タイミングによって取得されるコギングトルク値は変化する。
これらの変化の影響を排除するために、軸状態別のコギングトルク算出パラメータを使用する。
【0137】
算出パラメータの例を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
算出パラメータは、コギングトルク波形の伸縮係数(A)と、シフト量(B)からなり、調整工程で取得したコギングトルクテーブル値に対して一次式Y=AX+Bの形で算出する。
この算出パラメータを使用することにより、コギングトルクテーブルの取得方法を変更したり、コギングテーブルを状態別に複数記憶することなく、動作ゲインや動作シーケンスの変更に対応することが可能となる。
【0140】
<計算式によるコギングトルク補正処理>
上記実施例では、全ての加圧搭載範囲に対してコギングトルク値を取得し、コギングトルクテーブルから近似値を取得する方法で行ってきたが、計算による取得方法も可能である。
【0141】
前述の通り、コギングトルクは摺動抵抗が少ない場合、モータの内部構造がそのままコギングトルクの周期として出てくるため、モータ1回転分のデータと、Z軸高さに対するモータの位置情報(回転角度情報)を保持するだけで適切なコギングトルク値の算出が可能となり、保持するデータ数を減らしコギングトルク値の検索時間の短縮が図れる。
【0142】
図26のモータが1回転したときにコギングトルクが4周期となるモータの場合の計算による取得方法は、各周期のコギングトルク値をテーブル[4][データ数]、基点となる周期の頂点が取得されたZ軸座標をZ1、コギング周期をT、コギングトルクを取得したZ座標をZ0とすると、
オフセット値A =(Z1÷(T×4)の余り値)−(T×4)
適用周期番号(テーブル番号)=(Z0−A)÷Tの解
データ番号 = (Z0−A)÷Tの余り値をテーブルデータの刻み幅で割った値
となり、テーブル[テーブル番号][データ番号]のデータが補正するコギングトルク値となる。
【0143】
上記計算式の取得フローを図30に示す。
【0144】
すなわち、テーブルを用意してから(ステップS81)、コギングトルクテーブルを周期ごとに分割し(ステップS82)、その分割したデータを順番にテーブルに保存する(ステップS83)。
そして、周期(テーブル)ごとに平均値を算出して(ステップS84)、適用テーブル検索式を算出する(ステップS85)。
【0145】
例)
コギングトルク周期を1.5mm、データの刻みが10μm、Z1の値が33mmの時、2mm時のコギングトルク値は
A=33mm÷(1.5mm×4)= 5…3−(1.5mm×4)
よってA=−3mm
テーブル番号=((2mm−(−3mm)) ÷ 1.5 = 3…1
よってテーブル番号=3
データ番号=1mm÷10μm =100
よってテーブル[3][100]に保存されているトルク値を補正値として使用する。
また、データの刻み幅が大きい場合は前後のデータで直線補完することも可能である。
さらに、精度的には劣るがコギングトルク値をY値、Z軸座標をX値とした多次元式に変換して記憶することも可能である。
【0146】
以上述べたように、本発明によれば、以下に列挙する効果が得られる。
1)コギングトルクの大きさに関わらず、低荷重領域での加圧搭載動作が実現可能となる。
2)コギングトルクの影響を排除し、高精度な加圧搭載動作が実現可能となる。
3)動作ゲインや動作状態の切り替えによって、発生するコギングトルク値に変化があっても動的にコギングトルク値を計算することが可能となる。
【符号の説明】
【0147】
1 マウンタ装置
10 基板
13 搭載ヘッド部(加圧制御ヘッド)
131 吸着ノズル
132 衝撃緩衝ばね
18 電子部品
23 サーボモータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を吸着するノズルの高さを位置決めするサーボモータと、ノズルが吸着した部品を基板に押し付ける荷重を制御できる加圧制御ヘッドとを備えるマウンタ装置であって、
前記サーボモータを、前記ノズルが部品を基板に加圧する加圧源としても利用し、
前記サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標の差によって生じる当該サーボモータの発生出力トルクにより加圧圧力を可変とすることを特徴とするマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【請求項2】
前記発生出力トルクを、前記サーボモータの設定荷重に対応したゲインを設定することで調節することを特徴とする請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【請求項3】
前記発生出力トルクを、前記サーボモータの位置フィードバックゲインを含む制御パラメータに基づいて可変とするようにしたことを特徴とする請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【請求項4】
前記制御パラメータは、積分補償型ゲインパラメータの有効性を低く設定したものであることを特徴とする請求項3に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【請求項1】
部品を吸着するノズルの高さを位置決めするサーボモータと、ノズルが吸着した部品を基板に押し付ける荷重を制御できる加圧制御ヘッドとを備えるマウンタ装置であって、
前記サーボモータを、前記ノズルが部品を基板に加圧する加圧源としても利用し、
前記サーボモータの指令レベル論理座標と実際座標の差によって生じる当該サーボモータの発生出力トルクにより加圧圧力を可変とすることを特徴とするマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【請求項2】
前記発生出力トルクを、前記サーボモータの設定荷重に対応したゲインを設定することで調節することを特徴とする請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【請求項3】
前記発生出力トルクを、前記サーボモータの位置フィードバックゲインを含む制御パラメータに基づいて可変とするようにしたことを特徴とする請求項1に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【請求項4】
前記制御パラメータは、積分補償型ゲインパラメータの有効性を低く設定したものであることを特徴とする請求項3に記載のマウンタ装置の加圧制御ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−174751(P2012−174751A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32810(P2011−32810)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】
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