説明

マグネシウム複合粉末およびその製造方法ならびにマグネシウム基複合材料およびその製造方法

粒子分散型マグネシウム基複合材料を作るための出発原料となるマグネシウム複合粉末は、マグネシウム合金の素地を構成する主成分となるマグネシウム合金粗粒7と、マグネシウムと反応して化合物を生成する成分からなり、マグネシウム合金粗粒7の表面にバインダ9を介して付着した微粒粉末8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、固相反応合成によって粒子分散型マグネシウム基複合材料を作るための出発原料としてのマグネシウム複合粉末およびその製造方法、ならびにこの複合粉末を用いたマグネシウム基複合材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
マグネシウム合金は最軽量材料として知られており、その利用価値が高い。一方、マグネシウム合金の短所として、低硬度、低剛性、低耐摩耗性、低耐腐食性が指摘される。
そのため、従来から、マグネシウム合金の機械的特性を向上させる方法として、素地中に第2相粒子を分散する、いわゆる粒子分散型マグネシウム基複合材料の検討が行なわれている。特に、軽量かつ高硬度・高剛性を有するマグネシウシリサイド(MgSi)粒子が分散したマグネシウム基複合材料に関する研究および開発が精力的に進められている。
例えば、特開平6−81068号公報には、マグネシウムシリサイド(MgSi)粒子が分散したマグネシウム基複合材料の製造方法が開示されている。具体的には、シリコン(Si)を高濃度に含有するマグネシウム合金を半溶融状態で射出成形する際に、マトリクスのマグネシウム(Mg)とシリコンとの反応によってマグネシウムシリサイド(MgSi)を合成している。
特開平8−41564号公報には、鋳造法によりマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子とシリコンカーバイド(SiC)粒子とが分散したマグネシウム基複合材料が開示されている。また、特開2000−17352号公報には、鋳造法により球状のマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子が分散したマグネシウム基複合材料が開示されている。
上記の各公報に記載された先行技術では、マグネシウム基複合材料中に分散するマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子は、溶解状態または半溶解状態から凝固する過程で粒成長によって100μm〜数百μmにまで粗大化する。その結果、最終的に得られるマグネシウム基複合材料において顕著な強度の増加は得られない。逆に、粗大化したマグネシウムシリサイド粒子は亀裂の発生や伝播を助長するために、材料の靭性を低下させてしまう。
本件出願の発明者は、上記の問題を解決し得る発明に関して平成13年9月25日に特願2001−292117号として「マグネシウム基複合材料、マグネシウム基複合材料前駆体およびそれらの製造方法」を、および平成13年9月25日に特願2001−292118号として「マグネシウム基複合材料、マグネシウム基複合材料前駆体およびそれらの製造方法」を特許出願した。これらの出願は、現時点で未だ出願公開されていない。これらの出願に開示された発明では、粉末またはチップ等の形状を有するマグネシウム合金の出発原料とシリコン粉末との混合物に対して塑性加工を施すことによって、まずシリコン粉末が微細に粉砕された混合固化体を作成する。次に、この混合固化体をマグネシウムの融点(650℃)未満の温度、すなわち固相温度域で加熱することによって、マグネシウム(Mg)とシリコン(Si)とを反応させてマグネシウム合金の素地中に微細なマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子を均一に分散させている。この固相合成プロセスにより、優れた機械的特性や耐摩耗性などを有する新しいマグネシウム基複合材料を得ることができるようになる。
このようなマグネシウム(Mg)とシリコン(Si)との間での固相反応合成法を利用して微細なマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子を均一に分散させたマグネシウム基複合材料では、反応前の混合固化体中のシリコン粒子は固相反応過程で顕著に粒成長して粗大化することはないので、反応前のシリコン(Si)粒子の大きさがほぼマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子の大きさと一致する。したがって、混合固化体中にシリコン粒子を微細に分散させることが、マグネシウム基複合材料におけるマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子の微細化につながり、ひいては、複合材料の高強度化および高機能化につながる。
マグネシウムシリサイド(MgSi)のような硬質粒子を微細かつ均一にマグネシウム合金素地中に分散させることにより、マグネシウム基複合材料の各特性が向上する。マグネシウム合金出発原料とシリコン粉末との混合物に対して適正な塑性加工を繰り返して付与することにより、シリコン粒子の微細化および分散化を実現できる。一方、更なる合金素材の低コスト化を考慮すると、塑性加工を省略したい。
塑性加工に代わるシリコン粒子の微細化の方法として、例えば、出発原料として微細なシリコン粉末を使用することが考えられる。1μm程度の微細なシリコン粒子を出発原料として用いると、固相反応合成によって生成するマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子の大きさもほぼ1μm程度となる。
他方の出発原料であるマグネシウム(Mg)合金素材の大きさに注目してみる。マグネシウム合金粉末またはマグネシウム合金チップの大きさがシリコン(Si)粒子に対して著しく大きくなると、マグネシウム合金出発原料とシリコン粒子との混合物において、2層分離現象を起こし、微細なシリコン粒子のみが一箇所に偏析するといった問題が生じる。この問題を避けるために、出発原料としてのマグネシウム合金素材として微細なものを使用することが考えられる。しかしながら、マグネシウムは金属の中でも酸化し易い活性な特性を有するので、数十μm程度の微細なマグネシウム合金粉末は、大気中での爆発を誘発するおそれがある。かかる危険性の点を考えると、微細なマグネシウム合金粉末を出発原料として用いることは、実用上極めて困難である。
以上に記載したように、出発原料として微細なシリコン粒子を使用することは、次の問題を提起する。
1) マグネシウム基複合材料におけるマグネシウムシリサイド(MgSi)粒子の偏析。
2) 製造過程での粉末の取り扱い。
【発明の開示】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、主成分であるマグネシウムとの固相反応によって生成する化合物粒子がマグネシウム合金素地中に均一に分散するマグネシウム基複合材料を提供することである。
本発明の他の目的は、上記のようなマグネシウム基複合材料を作るための出発原料としてのマグネシウム複合粉末を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、上記のようなマグネシウム基複合材料を経済性よく製造することのできる方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、上記のようなマグネシウム基複合材料のための出発原料としてのマグネシウム複合粉末を効率よく製造することのできる方法を提供することである。
マグネシウム合金素材を粉末あるいはチップなどの出発原料として使用する場合、大気中での爆発回避の観点から、その大きさは500μm〜5mm程度が好ましい。一方、マグネシウムと反応して化合物を生成する成分からなる微粒粉末の大きさは、0.5μm〜50μm程度である。
本発明では、主成分となるマグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を付着させる。微粒粉末の粒径は、マグネシウム合金粗粒の約1/10〜1/1000とマグネシウム合金粗粒に比べて極めて細かい粉末である。マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を付着したマグネシウム複合粉末を圧粉固化した後、この固化体を加熱する過程で固相反応合成によって化合物粒子を生成する。この化合物粒子を素地中に分散させることにより、優れた特性を有するマグネシウム基複合材料を経済性よく製造しようとするのが、本発明の狙いとするところである。
本発明者は、種々の実験および検討を行なった結果、高強度、高硬度、高剛性などの優れた機械的特性と、優れた耐摩耗性と、摩擦摺動時における低い摩擦係数とを発現できるマグネシウム基複合材料を得るに至った。
本発明に従ったマグネシウム複合粉末は、固相反応合成によって粒子分散型マグネシウム基複合材料を作るための出発原料となるものである。マグネシウム複合粉末は、マグネシウム合金の素地を構成する主成分となるマグネシウム合金粗粒と、マグネシウムと反応して化合物を生成する成分からなり、上記マグネシウム合金粗粒の表面に付着した微粒粉末とを備える。
マグネシウム合金粗粒の表面に付着する微粒粉末は、好ましくは、シリコン(Si)、シリカ(SiO)、γアルミナ(Al)およびアルミニウム(Al)からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の粉末粒子を含む。
好ましくは、マグネシウム合金粗粒の粒径は100μm〜5mmであり、微粒粉末の粒径は100μm以下である。より好ましくは、マグネシウム合金粗粒の粒径は500μm〜2mmであり、微粒粉末の粒径は0.5μm〜50μmである。
一つの実施形態では、微粒粉末はバインダを介してマグネシウム合金粗粒の表面に付着している。他の実施形態では、微粒粉末とマグネシウム合金粗粒とは機械的に結合している。さらに他の実施形態では、微粒粉末は、油を介してマグネシウム合金粗粒の表面に付着している。
本発明に従ったマグネシウム基複合材料は、上述のようなマグネシウム複合粉末を用いて作製したものであり、マグネシウム合金粗粒と微粒粉末との反応生成物がマグネシウム合金素地中に分散している。反応生成物は、好ましくは、MgSi、MgO、AlMg、Mg17Al12およびMgAlからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む。
摩擦係数を低下させたい場合、マグネシウム基複合材料は、好ましくは、固形潤滑剤として黒鉛粉末を含む。この黒鉛粉末の含有量は、当該マグネシウム基複合材料に対して重量基準で0.5%〜3%であるのが望ましい。
また、好ましくは、マグネシウム合金素地中における反応生成物の合計含有量は、重量基準で20%以下である。より好ましくは、反応生成物の合計含有量は、重量基準で5%〜10%である。
本発明に従ったマグネシウム複合粉末の製造方法は、次の工程を備える。
a) マグネシウム合金粗粒を用意する工程。
b) マグネシウムと反応して化合物を作る成分からなる微粒粉末をバインダ溶液中に混合する工程。
c) 上記微粒粉末を含むバインダ溶液をマグネシウム合金粗粒上に噴霧して乾燥させる工程。
本発明に従ったマグネシウム合金の製造方法は、次の工程を備える。
a) マグネシウム合金粗粒の表面に、マグネシウムと反応して化合物を作る成分からなる微粒粉末を付着する工程。
b) マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を付着しているマグネシウム複合粉末を圧粉固化する工程。
c) 圧粉固化によって得られた固化体を不活性ガス雰囲気中または非酸化性ガス雰囲気中で加熱し、マグネシウム合金粗粒と微粒粉末とを固相反応合成して化合物粒子を生成する工程。
d) 化合物粒子を生成した固化体を温間塑性加工し該固化体を緻密化する工程。
好ましくは、温間塑性加工は、押出比20以上の押出法である。より好ましくは、押出法の押出比は、35以上である。
化合物粒子は、好ましくは、MgSi、MgO、AlMg、Mg17AlおよびMgAlからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む。
一つの実施形態では、微粒粉末は、バインダを用いてマグネシウム合金粗粒表面に付着する。この場合、好ましくは、微粒粉末を付着する工程は、微粒粉末をバインダ溶液中に混合することと、微粒粉末を含むバインダ溶液をマグネシウム合金粗粒上に噴霧して乾燥させることとを含む。
他の実施形態では、微粒粉末は、油を介してマグネシウム合金粗粒の表面に付着される。使用する油の特性に関しては、例えば、不活性ガス雰囲気または非酸化性雰囲気での油の気化温度が、400℃以下である。
油の付着は、例えば、次のようにして行なう。まず、容器の中にマグネシウム合金粗粒粉末を充填する。続いて、容器内に油を入れてこの容器を回転、振動、陽動させることによりマグネシウム合金粗粒粉末表面に油を均一に付着させる。続いて、容器内に微粒粉末を投入し、容器を再度、回転、振動、陽動させることによりマグネシウム合金粗粒粉末表面に油を介して微粒粉末を付着させる。
油の添加量は、好ましくは、マグネシウム合金粗粒粉末に対して重量基準で0.2〜1%であり、より好ましくは0.3〜0.6%である。
油の付着を次のように行なってもよい。まず、容器の中にマグネシウム合金粗粒粉末を充填する。続いて、容器内に油およびボールを入れてこの容器を回転、振動、陽動させることによりマグネシウム合金粗粒粉末表面に油を均一に付着させる。続いて、容器内に微粒粉末を投入し、容器を再度、回転、振動、陽動させることによりマグネシウム合金粗粒粉末表面に油を介して微粒粉末を付着させる。
さらに他の実施形態では、微粒粉末は、マグネシウム合金粗粒の表面に機械的に結合される。
【図面の簡単な説明】
図1は、マグネシウム合金粗粒の表面にバインダを用いて微粒粉末を付着させる方法の一例を示す図解図である。
図2は、マグネシウム合金粗粒の表面にバインダを用いて微粒粉末を付着させる方法の他の例を示す図解図である。
図3は、マグネシウム合金粗粒の表面にバインダを用いて微粒粉末を付着させる方法のさらに他の例を示す図解図である。
図4は、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を付着したマグネシウム複合粉末の一例を示す図解図である。
図5は、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を機械的に結合させる方法の一例を示す図解図である。
図6は、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を機械的に結合させる方法の他の例を示す図解図である。
図7は、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を機械的に結合させる方法のさらに他の例を示す図解図である。
図8は、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を付着したマグネシウム複合粉末の他の例を示す図解図である。
図9は、マグネシウム基複合材料の製造方法の一例を示す図である。
図10は、マグネシウム基複合材料の製造方法の他の例を示す図である。
図11は、固相反応前の圧粉固化体の組織を図解的に示す図である。
図12は、固相反応後のマグネシウム合金の組織を図解的に示す図である。
図13は、AZ91表面にシリカ粉末が機械的に結合して付着したマグネシウム複合粉末の組織を示す顕微鏡写真である。
図14は、シリコン粉末の付着状況を簡易に評価する方法を示す図である。
図15は、シリコン粉末付着状況の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
次に本発明の特徴および作用効果について以下に記載する。
(1)マグネシウム複合粉末
マグネシウム複合粉末は、粒子分散型マグネシウム基複合材料を作るための出発原料となるものであり、マグネシウム合金粗粒と、このマグネシウム合金粗粒の表面に付着した微粒粉末とを備えている。
(A)マグネシウム合金粗粒
本明細書中に用いる「粗粒」という用語は、粉粒体のほかにチップ状形態および塊状形態の粒も含む意味である。チップ状のマグネシウム合金粗粒は、マグネシウム合金ビレット(インゴット)を切削加工することによって得られる。塊状のマグネシウム合金粗粒は、粉砕加工機などによってインゴットから大きな塊を採取し、それをボールミルなどによって混合・粉砕処理することによって得られる。
マグネシウムは活性であるので、微細なマグネシウム合金粉末は大気中で酸化反応によって爆発する危険性がある。そのような危険を回避する観点から、マグネシウム合金粗粒の粒径は、100μm〜5mm程度が好ましい。より好ましくは、500μm〜2mmである。マグネシウム合金粗粒の粒径が100μmを下回ると、取り扱う過程で粉塵爆発を引き起こす可能性が高くなる。一方、マグネシウム合金粗粒の粒径が5mmを超えると、得られるマグネシウム複合粉末を圧粉固化する際に、固化体の表面や角部分に亀裂や割れが発生して良好な固化体が得られなくなるおそれがある。上記の製造方法によって得られたマグネシウム合金粗粒のうち、篩粉方法によって5mmのメッシュを通過して、しかも100μmのメッシュを通過しないものを原料として用いた。
前述したように、マグネシウム合金粗粒は、粉粒体、チップ状形態および塊状形態を含むものである。そのような種々の形態に対して、「粒径」とは、各形態における最大長さを意味する。粒径の測定は、実体顕微鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡などによる直接観察や、拡大投影機などによる測定、あるいは粉末粒子径の測定に使用する粒度分布測定器などを用いて行なう。
マグネシウム合金粗粒はマグネシウム基複合材料の素地を形成するものであり、その合金成分としては既存のマグネシウム合金、例えば、AZ31(Mg−3%Al−1%Zn/重量基準)やAZ91(Mg−9%Al−1%Zn/重量基準)などが適用できる。合金成分に関しては、特に制約がない。
(B)微粒粉末
マグネシウム合金粗粒の表面に付着する微粒粉末は、マグネシウムとの固相反応合成によって化合物粒子を生成するものである。このような微粒粉末として、シリコン(Si)、シリカ(SiO)、γアルミナ(Al)およびアルミニウム(Al)からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の粉末を用いる。
上記の微粒粉末を用いることによって、固相反応合成によって次の化合物粒子が生成する。シリコン粉末を用いた場合には、MgSiが得られる。シリカ粉末を用いた場合には、MgSiとMgOが得られる。γアルミナを用いた場合には、MgOに加えてAlMgおよび/またはMg17Al12および/またはMgAlが得られる。アルミニウムを用いた場合には、AlMgおよび/またはMg17Al12が得られる。
なお、アルミナには、γとαの2種類の結晶構造が存在するが、本発明者は、マグネシウムとの反応によって上記の化合物粒子を生成できるのはγアルミナであることを見出した。αアルミナはγアルミナに比べてより安定であることから、650℃程度以下の固相温度域ではマグネシウム合金と反応しないことを確認した。したがって、マグネシウム合金粗粒表面に付着するアルミナ微粒粉末としては、γ結晶構造を有するものであることが必要である。
それぞれの微粒粉末の好ましい粒径は、0.5μm〜100μmである。微粒粉末は固相温度域においてマグネシウムと反応することから、生成する化合物粒子の粒径は、ほぼ反応前の微粒粉末の粒径と一致する。マグネシウム基複合材料の強度、硬度、耐摩耗性などの特性を向上させるためには、素地中に分散する化合物粒子は、分散強化の観点からその粒径が小さいほど好ましい。したがって、原料として用いるシリコン(Si)、シリカ(SiO)、γアルミナ(Al)およびアルミニウム(Al)から選ばれる微粒粉末の粒径は小さいほうが望ましい。微粒粉末の粒径が100μmを超えると、マグネシウム基複合材料の特性が低下する。一方、微粒粉末の粒径が0.5μmを下回ると、微粒粉末間での静電引力または表面吸着水などの影響によって微粒粉末同士が強固に凝集して粒径が100μmを超えるような粗大な粉末を形成する。その結果、マグネシウム基複合材料の素地中に分散する化合物粒子が100μmを超える粗大粒子となるために特性低下を誘発するといった問題が生じてくる。
特に、マグネシウム合金の優れた特徴の一つである高靭性を保ちながら高強度を有するようにするためには、分散する化合物粒子の粒径が50μm以下であることが望ましい。マグネシウム基複合材料の強度、硬度と同時に、伸びといった靭性を向上させるためには、微粒粉末の粒径を0.5μm〜10μmとするのが好ましい。微粒粉末の粒径測定には、粉末をグリコールあるいは水溶液中に攪拌・分散した状態で光を透過させて光の透過度合いから粒度分布を測定する方法を利用することができる。
(C)マグネシウム合金粗粒と微粒粉末との複合化
マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を均一に分散して付着させてマグネシウム複合粉末を得る。この複合粉末を出発原料とし、この複合粉末に対して圧粉固化・加熱・温間塑性加工を施すことにより、微細な化合物粒子が素地中に均一に分散するマグネシウム基複合材料を得ることができる。
マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を均一に分散・付着固定させる方法として、バインダを介して両者を付着させる方法、油を介して両者を付着させる方法、外力を付与して両者を機械的に結合させる方法がある。
バインダを介した付着方法の場合、バインダとしては、水溶性または有機溶媒溶解性を有し、かつ、水溶性デキストラン、糖類、セルロース類、合成高分子から選ばれた結合剤であることが望ましい。例えば、水溶性バインダとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリアクリルアミド、メチルセルロース(MC)、でんぷんなどを使用できる。有機溶媒溶解性バインダとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース(EC)、アセチルセルロースなどを使用できる。
図1〜図3は、湿式造粒機やスプレードライヤーを用いたバインダによる付着方法の例を示している。
図1に示す方法では、容器1内にマグネシウム合金粗粒と微粒粉末との混合物2を投入し、温風3を容器1の下部から供給してこの混合物2を浮遊させる。その状態で、バインダ溶液4を上部から混合物2に噴霧して各粒子の表面にバインダを塗布しながら、同時に高温乾燥させる。その結果、図4に示すように、マグネシウム合金粗粒7の表面にバインダ9を介して微粒粉末8が付着・結合する。
図2に示す方法では、容器1内に比較的低風量でマグネシウム合金粗粒と微粒粉末との混合物2を浮遊させた状態で、バインダ溶液4を風流方向に対して垂直に下部から噴霧している。
図3に示す方法では、容器1内にマグネシウム合金粗粒5のみを投入し、温風3を容器1の下部から供給してこの粗粒5を浮遊させる。マグネシウム合金粗粒5に対して噴霧するバインダ溶液6は、微粒粉末を含んでいる。バインダ溶液6内での微粒粉末の沈殿を抑制するためにバインダ溶液6を十分に攪拌しながら、このバインダ溶液6をスプレーにより容器1の上部からマグネシウム合金粗粒5に噴霧する。なお、バインダ溶液6を図2に示したように下部から噴霧するようにしても良い。この方法により、微粒粉末を均一にマグネシウム合金粗粒表面に付着させることができる。これは、微粒粉末がマグネシウム合金粗粒に比べて著しく小さいため、両者の混合物を強風によって浮遊させると、造粒機(容器)内では微粒粉末が粗粒よりも上部に上昇する傾向がある。その理由は、微粒粉末の比表面積が粗粒よりも大きいからであると考えられる。そのため、造粒機内での空間で微粒粉末とマグネシウム粗粒との分離現象が生じるおそれがあり、その場合には、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を均一に付着させるのに長時間を要してしまう。このような問題を回避するために、あらかじめバインダ溶液中に微粒粉末を混合させておくことが有効である。
微粒粉末をマグネシウム合金粗粒表面に付着させるための媒体として、バインダの代わりにオレイン酸油などの油を用いてもよい。具体的には、オレイン酸油などの油をマグネシウム合金粗粒に付着した後、微粒粉末を加えてボールミルなどで混合することにより、所定のマグネシウム複合粉末が得られる。
使用する油の特性に関しては、例えば、不活性ガス雰囲気または非酸化性雰囲気での油の気化温度が、400℃以下である。
油の付着は、具体的には、例えば次のようにして行なう。まず、容器の中にマグネシウム合金粗粒粉末を充填する。続いて、容器内に油を入れてこの容器を回転、振動、陽動させることによりマグネシウム合金粗粒粉末表面に油を均一に付着させる。続いて、容器内に微粒粉末を投入し、容器を再度、回転、振動、陽動させることによりマグネシウム合金粗粒粉末表面に油を介して微粒粉末を付着させる。
油の添加量は、好ましくは、マグネシウム合金粗粒粉末に対して重量基準で0.2〜1%であり、より好ましくは0.3〜0.6%である。油の添加量が0.2%未満であれば、微粒粉末の大半がマグネシウム合金粗粒表面に付着することなく分離する。一方、油を1%を超えて添加しても付着効果は向上せず、後工程の加熱処理を施してもマグネシウム基複合材料の内部に油が残存し、強度や破断伸びを低下させるといった問題が生じる。より好ましい油の添加量は0.3〜0.6重量%である。添加量が0.3%以上であれば微粒粉末の分離は一切生じず、微粒粉末は完全に粗粒粉末表面に付着することができる。添加量が0.6%以下であれば、マグネシウム基複合材料の内部に油が残存することがなく、しかも油を分解・除去するために必要な加熱処理時の時間を短くすることができ、経済性の点で好ましい。
上記のようにして得られるマグネシウム複合粉末の構造は、図4に示したものと実質的に同じである。バインダ9の代わりに、油が残ることになる。
図5〜図7は、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を機械的に結合させる方法を示している。
図5に示す方法では、マグネシウム合金粗粒と微粒粉末との混合物2をローラコンパクタ10と呼ばれる機械に投入する。混合物2を1対の歯車11,12の噛み合わせ部分で加圧することによって、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末が機械的に結合・付着した造粒物14を得る。この造粒物14を粉砕・篩粉機13に通すことによって所定の寸法および形状を有するマグネシウム複合粉末15を得ることができる。図8に示すマグネシウム複合粉末15に示すように、マグネシウム合金粗粒7の表面に微粒粉末8が機械的に結合して付着している。
図6に示す縦型ローラコンパクタ20を使用した方法では、1対の歯車の代わりに1対の円柱形ローラ16,17を用いている。また、図7に示す横型ローラコンパクタ30を使用した方法では、マグネシウム合金粗粒と微粒粉末との混合物2をベルトコンベア18で1対の円柱形ローラ16,17にまで搬送している。なお、ベルトコンベアを用いる代わりにスクリューフィーダで混合物を横から供給するようにしてもよい。
マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を機械的に結合・付着させるのに使用する機械は、ローラコンパクタに限られない。例えば、ボールミルや圧延機などによっても粗粒表面に微粒粉末を機械的に結合したマグネシウム複合粉末を得ることができる。
(2)固形潤滑剤用黒鉛粉末の添加
マグネシウム基複合材料において、摩擦摺動時の摩擦係数を低減させることが望まれる場合には、固形潤滑剤である黒鉛粉末を上記のマグネシウム複合粉末と混合してマグネシウム基複合材料中に添加・分散することが好ましい。黒鉛粉末の種類としては、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれでも適用できる。形状に関しても特に制約がなく、球状、りん片状などいずれの形状の黒鉛粉末でも使用することができる。
黒鉛粉末の添加量は、マグネシウム基複合材料全体に対して外部添加量で0.5〜3重量基準%が好ましい。0.5%を下回ると摩擦係数の低減効果が得られず、一方、3%を超えるとマグネシウム基複合材料の強度が著しく低下するといった問題が生じる。
なお、黒鉛粉末についても、上述の微粒粉末と同様に、マグネシウム合金粗粒の表面に付着・結合させて混合・添加することも可能である。
(3)マグネシウム基複合材料
マグネシウム基複合材料は、上述のマグネシウム複合粉末を圧粉固化した後、この固化体を所定の温度域で加熱・保持することによって得られる。所定の温度域での加熱・保持により、マグネシウム複合粉末を構成するマグネシウム合金粗粒のマグネシウム成分と、粗粒表面に付着・結合した微粒粉末との間で、酸化還元反応も含めた固相反応合成が進行し、これによって得られる化合物粒子が素地中に均一に分散する。
固相反応によって生成する化合物粒子は、好ましくは、MgSi、MgO、AlMg、Mg17Al12およびMgAlからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む。このうち、MgSi、AlMg、Mg17Al12は主として、マグネシウム合金の強度、硬度、耐摩耗性を向上させる効果を有する。特に、MgSiは他の化合物粒子に比べて高い剛性を有することから、マグネシウム基複合材料の素地中に分散することで複合材料の剛性も向上させる役割がある。MgO、MgAlといった酸化物は、他の化合物粒子に比べて硬さが低いため、相手攻撃性を緩和させる効果があり、そのために複合材料の素地中に分散して摩擦摺動時における摩擦係数を低減させる役割を担う。
マグネシウム基複合材料におけるこれらの化合物粒子の合計含有量は、重量基準で20%以下であることが望ましい。合計含有量が20%を超えると、マグネシウム基複合材料の靭性が著しく低下する。より好ましい合計含有量の範囲は、5%〜10%である。このような範囲を満足するのであれば、より優れた強度および靭性を有するマグネシウム基複合材料を得ることができる。
(4)マグネシウム基複合材料の製造方法
図9および図10は、マグネシウム基複合材料の製造方法の各工程を示している。両図の製法の相違は、マグネシウム基複合粉末を製造する工程にある。図9に示す方法では、マグネシウム合金粗粒と微粒粉末とを秤量・配合した後に両者を付着・結合させるものである。一方、図10に示す方法では、微粒粉末をあらかじめバインダ溶液中に混合しておき、微粒粉末を含むこの混合溶液をマグネシウム合金粗粒上に噴霧した後に両者を付着・結合させるものである。
(A)マグネシウム複合粉末の作製
前述したように、マグネシウム合金粗粒表面に微粒粉末を付着・結合させる方法として、バインダを介する方法、油を介する方法、外力を付与して機械的に結合させる方法等がある。これらの方法によって、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末が分散して付着・結合したマグネシウム複合粉末が得られる。
(B)マグネシウム複合粉末の圧粉固化
マグネシウム複合粉末を圧粉固化させる手法として、通常の粉末冶金法で用いられるプレス成形固化法や冷間静水圧固化(CIP)法などを適用できる。特に直径が100mmを超えるような大型圧粉成形素材を作製する場合には、冷間静水圧固化法などを適用するのが好ましい。圧粉固化体の相対密度は、80%以上が好ましい。80%を下回る相対密度であれば、圧粉固化体の強度が低下して、搬送過程で損傷、欠損、割れ等が発生するおそれがある。
図11は、固相反応前の圧粉固化体の組織を図解的に示している。図示するように、マグネシウム合金素地40中に微粒粉末41が均一に分散している。
(C)圧粉固化体の加熱による化合物粒子の生成
圧粉固化体を加熱・保持する過程で、マグネシウム合金粗粒と微粒粉末との間で、酸化還元反応を含めた固相反応合成が進行し、MgSi、MgO、AlMg、Mg17Al12およびMgAlなどの化合物粒子が生成する。図12は、固相反応合成後のマグネシウム合金の組織を図解的に示している。図示するように、マグネシウム合金素地40中に、反応生成物42および反応生成物43などが分散している。
加熱過程でマグネシウム合金粗粒表面が雰囲気中の酸素と反応(酸化)すると、表面にマグネシウム酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜は、マグネシウム合金粗粒と微粒粉末との反応を阻害する。したがって、酸化抑制の観点から、圧粉固化体の加熱雰囲気は不活性ガス雰囲気にするか、非酸化性ガス雰囲気にするのが好ましい。
加熱温度に関しては、配合する微粒粉末の種類によって異なる。いずれの微粒粉末を用いた場合でも、マグネシウム合金粗粒との固相反応において発熱挙動を伴うことから、示差熱量分析装置を用いて反応開始温度および反応終了温度を正確に知ることができる。したがって、このような示差熱量分析装置によって求めた反応終了温度を圧粉固化体の加熱・保持温度とすることで微細な化合物粒子を生成することができる。なお、本発明の方法は、マグネシウムの融点未満での固相反応を利用して生成する化合物粒子の粗大化・粒成長を抑制することを特徴とするものであるので、最大加熱温度は、650℃未満である。
油を介して作製したマグネシウム複合粉末を用いて圧粉固化体を不活性ガス雰囲気あるいは非酸化性雰囲気で加熱する際、用いた油を分解・気化して圧粉固化体内部から除去する。その際、油の気化温度が400℃を超える場合、圧粉固化体内部に油が残存して強度や破断伸びを低下させるといった問題が生じる。よって、微粒粉末の付着に用いる油については、不活性ガス雰囲気あるいは非酸化性雰囲気での気化温度が400℃以下であることが望ましい。
(D)温間塑性加工
マグネシウム基複合材料において十分な機械的特性を得るためには、相対密度を98%以上にすることが望ましい。通常、圧粉固化体の相対密度は80%〜90%程度であることから、本発明では、上記の加熱工程の後に温間塑性加工を施して緻密化する。温間塑性加工方法としては、押出法、鍛造法、圧延法などを適用できる。なかでも温間押出法は、棒状あるいはパイプ状のマグネシウム合金素材を作製するのに適した方法である。圧粉固化体の緻密化を行なうためには、押出比を20以上にするのが望ましい。特に押出比を35以上にすると、固相反応合成によって生成した化合物粒子が、より微細に粉砕されて、マグネシウム基複合材料の素地中に均一に分散するといった効果が得られる。
以上のように、本発明によれば、高強度、高硬度、高剛性といった機械的特性、および優れた摩擦摺動特性を発揮するマグネシウム基複合材料を得ることができる。特に小さい摩擦係数を発現できるマグネシウム基複合材料も得ることができる。このようなマグネシウム基複合材料は、上記の特性に加えて、軽量化効果も併せ持つので、自動車、二輪車、自転車用の部品や機械部品、構造用部品、産業用ロボットアーム、医療機器、介護補助具、乳母車用品等に適用できる。
(1)実施例1
マグネシウム合金を作製するための素地を構成する出発原料として、最大粒子径1.5mm、最小粒子径550μm、平均粒子径870μmのAZ31マグネシウム合金粗粒粉末を準備した。一方、添加粒子として、シリコン(Si)、シリカ(SiO)、γアルミナ(Al)およびアルミニウム(Al)の微粒粉末を準備した。これらの粉末において、レーザ回折・散乱法によって測定した粒子径(最大・平均・最小)を表1に示す。
【表1】

上記のAZ31粗粒粉末と各微粒粉末との混合粉末において、微粒粉末の含有率が重量基準で5%となるように秤量・配合した。バインダ溶液として、2%濃度のPVA(ポリビニルアルコール)水溶液を準備した。
各混合粉末を湿式造粒装置に投入し、装置下部からの温風(75℃に保持)と底部の回転羽根とによって混合粉末を浮遊・攪拌させた状態で、造粒装置の上部あるいは下部に設置したスプレーガンからPVA水溶液を噴霧した。これにより、PVAバインダが糊の役目をしてAZ31粗粒粉末の表面に各微粒粉末を付着させたマグネシウム複合造粒粉末を得た。
混合粉末全体に対するPVA水溶液の噴霧塗布量を変えた場合におけるAZ31粗粒粉末表面への微粒粉末の付着状況の外観結果を表2に示す。
【表2】

PVA水溶液をバインダとして用いた湿式造粒法により、マグネシウム合金粗粒表面に微粒粉末が付着したマグネシウム複合粉末を得ることができた。ただし、試料No.7、8、11に示すように、バインダとして粉末表面に残存するPVA固形分量が少なくなると、微粒粉末は完全にAZ31粗粒粉末の表面に付着せず、一部あるいは大半が分離した状態となり、所定のマグネシウム複合粉末を得ることが困難となった。
(2)実施例2
マグネシウム合金を作製するための素地を構成する出発原料として、切削加工によって作製した最大粒子径4.6mm、最小粒子径680μm、平均粒子径3.8mmのAZ91マグネシウム合金粗粒チップを準備した。一方、添加粒子として、実施例1に示したシリコン(Si)の微粒粉末を準備した。
重量基準でAZ91粗粒チップが95%、Si微粒粉末が5%となるようにそれぞれを秤量した。バインダ溶液として、表3に示す濃度を有するPVP(ポリビニルピロリドン)水溶液を準備し、これに秤量したSi微粒粉末を混合した。なお、PVP水溶液は混合粉末全体に対して重量基準で20%とした。
【表3】

AZ91合金チップを湿式造粒装置に投入し、装置下部からの温風(75℃に保持)と底部の回転羽根とによってAZ91合金チップを攪拌した状態で、造粒装置の下部に設置したスプレーガンから上記のSi微粒粉末を含むPVP水溶液を噴霧した。このとき、Si粉末がPVP水溶液中に沈殿することを抑制するため、噴霧時にはスクリューによってPVP水溶液を十分に攪拌した。
Siを含むPVP水溶液をAZ91合金チップに噴霧しながら乾燥することにより、PVPバインダが糊の役目をしてAZ91合金チップ表面にSi微粒粉末が付着したマグネシウム複合粉末が得られた。各噴霧条件におけるAZ91合金チップ表面へのSi微粒粉末の付着状況の外観結果を表3に示した。
PVP水溶液中に事前にSi微粒粉末を混合し、これをバインダとして用いた湿式造粒法により、マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末が付着したマグネシウム複合粉末を得ることができた。ただし、表3の試料4および5に示すように、バインダとして粉末表面に残存するPVA固形分量が少なくなると、微粒粉末は完全にAZ91合金チップの表面に付着せず、一部あるいは大半が分離した状態となり、所定のマグネシウム複合粉末を得ることが困難であった。さらに、PVPを含まない純水を用いた場合では、Si微粒粉末をチップ表面に付着できないことを確認した。
(3)実施例3
実施例2で用いたAZ91マグネシウム合金粗粒チップと実施例1に示したシリカ(SiO)の微粒粉末を準備した。重量基準でAZ91粗粒チップが70%、シリカ微粒粉末が30%となるようにそれぞれを秤量・混合した。この混合物において縦型ローラコンパクタを用いて機械的造粒処理を行なった。なお、ここでは、歯車形状を有するローラを用いた。外周部でのローラの速度を10mm/秒と一定にし、歯車間の荷重を約10Kgfとした。得られた造粒物の外観を走査型電子顕微鏡で観察した結果を図13に示す。
図13に示すように、ローラコンパクタにより得られた造粒物は、AZ91チップ表面に均一にシリカ微粒粉末が機械的に付着したマグネシウム複合粉末となっていた。
(4)実施例4
実施例2で用いたAZ91合金チップと実施例1に示したγアルミナ(Al)の微粒粉末とを準備した。重量基準でAZ91合金チップが96%、アルミナ微粒粉末が4%となるようにそれぞれを秤量した。
オレイン酸油を添加したAZ91チップを直径10mmの鋼球(SUJ2)とともにボールミルに投入し、約5分間混合した。この過程でオレイン酸油をチップ表面に均一に付着させた。
この後、続いて上記の秤量したアルミナ微粒粉末をボールミルに投入し、再度約15分間の混合処理を行なった。これにより、アルミナ微粒粉末をAZ91チップ表面に付着させたマグネシウム複合粉末を得た。
AZ91チップ重量に対するオレイン酸油の添加量を表4に記載する条件で変更した。各条件におけるAZ91合金チップ表面へのアルミナ微粒粉末の付着状況の外観結果を表4に示した。
【表4】

(5)実施例5
最大粒子径1.8mm、最小粒子径600μm、平均粒子径920μmの純マグネシウム粗粒粉末と実施例1で用いたシリコン(Si)、シリカ(SiO)、γアルミナ(Al)およびアルミニウム(Al)の微粒粉末を準備した。
表5に示す化学組成(重量基準)となるように各粉末を配合し、実施例3で用いた縦型ローラコンパクタによってマグネシウム複合粉末を作製した。
【表5】

各マグネシウム複合粉末を用いて冷間成形によって直径36mmの円柱状圧粉固化体を作製した。窒素ガスを流入した管状炉内で各固化体を550℃の温度で5分間加熱保持した後、直ちに押出比36で温間押出加工を行ない、直径6mmの押出棒材を得た。
なお、各圧粉固化体を示差熱量分析装置によって700℃まで加熱した際、化合物の生成に伴う発熱反応はいずれも550℃では完全に終了していることを確認した。得られた押出材についてX線回折(XRD)を行ない、生成した化合物の同定を行なった。その結果を表5に示す。
参考として、示差熱量分析で発熱反応温度よりも100〜150℃低温側の380℃で5分間加熱保持した後に温間押出を施したマグネシウム合金のXRD結果を試料No.8および9に示した。
試料No.1〜7のマグネシウム合金では、加熱保持温度が低いために固相反応が進行せず、その結果、化合物の生成が認められなかった。
(6)実施例6
実施例5で用いた純マグネシウム粗粒粉末と実施例1で用いたγアルミナ(Al)およびαアルミナ(Al)の微粒粉末とを準備した。表6に示す化学組成(重量基準)となるように各粉末を配合し、実施例3で用いた縦型ローラコンパクタによってマグネシウム複合粉末を作製した。
【表6】

次に、各マグネシウム複合粉末を用いて冷間成形によって直径36mmの円柱状圧粉固化体を作製した。窒素ガスを流入した管状炉内で各固化体を表6に示す温度で5分間加熱保持した後、直ちに押出比36で温間押出加工を行なって直径6mmの押出棒材を得た。得られた押出材についてX線回折(XRD)を行ない、生成した化合物相の同定を行なった。その結果を表6に示す。
試料No.1および2のマグネシウム合金では、520℃および580℃の加熱保持過程において、添加したγ−Al微粒粉末は純マグネシウム粗粒粉末との固相反応によって化合物粒子(MgO、MgAl)を生成した。
一方、試料No.3および4のマグネシウム合金では、たとえ645℃といったマグネシウムの融点付近の温度で加熱保持した場合であっても、α−Al粉末は純マグネシウム粗粒粉末と反応せず、化合物の生成が認められなかった。
(7)実施例7
実施例1で用いたAZ31合金粗粒粉末をマグネシウム合金素地用粉末として準備し、一方、添加粒子として、表7に示す粒子径を有するシリコン(Si)の微粒粉末を準備した。Si含有量が重量基準で全体の4%となるようにAZ31合金粗粒とSi微粒粉末とからなるマグネシウム複合粉末を作製した。
【表7】

なお、複合粉末の作製においては、実施例4で示したような方法により、事前にオレイン酸油をAZ31粗粒に塗布した後、ボールミルによってSi粉末をAZ31粗粒粉末の表面に付着させた。
各混合粉末から直径36mmの円柱状圧粉固化体を作製し、窒素ガスを流入した管状炉内で各固化体を550℃で5分間加熱保持した後、直ちに押出比36で温間押出加工を行なって直径6mmの押出棒材を得た。なお、押出加工後の各マグネシウム合金についてX線回折を行なった結果、いずれにおいても固相反応によるMgSi粒子の生成が確認された。
各押出素材から機械加工により引張試験片を採取し、常温にて引張試験を行なった。その結果を表7に示す。
試料No.1〜5のマグネシウム合金において、添加するSi粉末の粒子径は、前述した適正範囲を満足しており、またその粒子径が小さくなるに連れて押出加工によって得られるマグネシウム合金の引張強さは向上した。さらに、Si粒子径が50μm以下となる場合、強度に加えて伸びの増加が認められ、特に10μm以下のSi微粒粉末を用いた場合、マグネシウム合金の破断伸びは著しく向上した。
一方、試料No.6では、100μmを超える粗大なSi粉末を用いたので、マグネシウム合金の引張強さおよび破断伸びは低下した。
試料No.7では、0.5μmを下回る微細なSi粉末を含むので、それら微粒子の凝集現象によって粗大なMgSiがマグネシウム合金の素地中に分散する組織を形成し、その結果、マグネシウム合金の引張強さおよび破断伸びは低下した。
(8)実施例8
実施例1で用いたAZ31粗粒粉末とシリカ(SiO)微粒粉末とを準備した。さらに、固形潤滑成分として平均粒子径3μmの黒鉛粉末も出発原料に用いた。各粉末の配合比率を表8に示す。
【表8】

AZ31粗粒表面にシリカ粉末および黒鉛粉末を付着させる方法として、実施例2に示した湿式造粒法と同様に、2%PVA水溶液にシリカ粉末および黒鉛粉末を事前に添加し、造粒装置の下部からスプレーガンによりPVA水溶液をAZ31粗粒表面に塗布してマグネシウム複合粉末を作製した。
各混合粉末から直径40mmの円柱状圧粉固化体を作製し、窒素ガスを流入した管状炉内で各固化体を550℃で5分間加熱保持した後、直ちに押出比25で温間押出加工を行い直径8mmの押出棒材を得た。なお、押出加工後の各マグネシウム合金についてX線回折を行なった結果、いずれにおいても固相反応によるMgSi粒子の生成が確認された。
摩擦試験によって摩擦係数を測定すべく、押出素材からピン状摩耗試験片(直径7.8mm)を採取した。相手側のディスク材にはS35C鋼材を用い、押し付け荷重を500N、すべり速度を1m/s、試験時間を連続30分とした。なお、ピン状試験片の上部からエンジン潤滑油(10W30)を滴下し、ピン状試験片とディスク試験片との摺動界面に、常に潤滑油が存在するような湿式潤滑条件下で試験を行なった。測定した摩擦トルクから摩擦係数を算出した結果を表8に示す。
試料No.1〜5において、潤滑成分である黒鉛粉末の含有量が増加するに連れて、マグネシウム合金の引張強さは僅かに低下するものの、摩擦係数は大きく低減できる。
一方、試料No.6では、黒鉛添加量が適正範囲を超えるため、押出材の引張強さが著しく低下し、その結果、摩擦試験の過程でピン状試験片の摩耗損傷により相手材との凝着現象も誘発するので、摩擦係数がかえって増大した。
(9)実施例9
実施例1で用いたAZ31合金粗粒粉末をマグネシウム合金素地用粉末として準備した。一方、添加粒子として、シリコン(Si)の微粒粉末(最大粒子径が24μm、平均粒子径が8μm、最小粒子径が1μm)を準備し、重量基準で配合組成がAZ31−4%SiとなるようにAZ31合金粗粒とSi微粒粉末とからなるマグネシウム複合粉末を作製した。
なお、複合粉末の作製においては、実施例4で示したような方法により、事前にオレイン酸油をAZ31粗粒に塗布した後、ボールミルによってSi粉末をAZ31粗粒粉末の表面に付着させた。オレイン酸油の添加量は、AZ31合金粉末に対して重量基準で0.3%とした。このとき、得られた複合粉末においては、Si粉末はAZ31粗粒表面に均一に付着しており、分離したSi粉末は観察されることなく、良好な付着状態であった。混合粉末から直径36mmの円柱状圧粉固化体(相対密度91%)を作製し、窒素ガスを流入した管状炉内で各固化体を550℃で5分間加熱保持した後、直ちに温間押出加工を行なって押出棒材を得た。
押出比R=(成形固化体の直径/押出材の直径)の2乗とし、ここで用いた押出比を表9に示す。押出加工後の各マグネシウム合金についてX線回折を行なった結果、いずれにおいても固相反応によるMgSi粒子の生成が確認された。
各押出素材から機械加工により引張試験片を採取し、常温にて引張試験を行なった。その結果を表9に示す。
【表9】

押出比が20以上では、押出比の値が増加すると押出材の引張強さと破断伸びはともに増大し、特に35を超えるとこれらの機械的特性は著しく増大する。一方、試料No.5のように押出比が20を下回ると、押出材の引張強さと破断伸びは低下する。
(10)実施例10
実施例9で用いたAZ31合金粗粒粉末とシリコン粉末とを準備し、重量基準で両者の配合組成がAZ31−4%Siとなるように両粉末を秤量した。複合粉末の作製に際して、まず、円柱状ビニール製容器内にAZ31粗粒粉末を充填し、これに重量基準で0.1、0.25、0.4%のオレイン酸油をそれぞれ添加して15分間、回転、振動を与えた。その後、容器にSi粉末を充填して再度、15分間の回転・振動による混合処理を行ない、3種類の所定のマグネシウム複合粉末を作製した。
図14は、シリコン粉末の付着状況を簡易に評価する方法を示している。付着状況の評価は、次のようにして行なう。
1)白紙の上に複合粉末を載せて広げる。
2)紙を傾けて粉末を下部方向に滑らせる。
3)紙を垂直に立てて、完全に複合粉末を落とし切る。この際に、紙を叩いたりしてはいけない。というのは、紙に残存したSi粉末も落ちてしまうからである。
4)紙の上に残存したSi粉末の付着状況を観察する。
図15は、シリコン粉末付着状況の評価結果を示している。本発明例である(a)の0.25重量%および(b)の0.4重量%のオレイン酸油を用いた場合、Si粉末は白紙上にほぼ残存していないという状況から、Si粉末はAZ31合金粗粒表面に強固に付着していることが認められる。他方、比較例である(c)の0.1重量%のオレイン酸油を用いた場合、大半のSi粉末が白紙表面に残存しており、AZ31粗粒粉末の表面に付着することなく、分離していることが認められる。
【産業上の利用可能性】
この発明は、自動車、二輪車、自転車用の部品や機械部品、構造用部品、産業用ロボットアーム、医療機器、介護補助具、乳母車用品等に利用可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相反応合成によって粒子分散型マグネシウム基複合材料を作るための出発原料としてのマグネシウム複合粉末であって、
マグネシウム合金の素地を構成する主成分となるマグネシウム合金粗粒と、
マグネシウムと反応して化合物を生成する成分からなり、前記マグネシウム合金粗粒の表面に付着した微粒粉末とを備える、マグネシウム複合粉末。
【請求項2】
前記微粒粉末は、シリコン(Si)、シリカ(SiO)、γアルミナ(Al)およびアルミニウム(Al)からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の粉末粒子を含む、請求項1に記載のマグネシウム複合粉末。
【請求項3】
前記マグネシウム合金粗粒の粒径は100μm〜5mmであり、
前記微粒粉末の粒径は100μm以下である、請求項1に記載のマグネシウム複合粉末。
【請求項4】
前記マグネシウム合金粗粒の粒径は500μm〜2mmであり、
前記微粒粉末の粒径は0.5μm〜50μmである、請求項3に記載のマグネシウム複合粉末。
【請求項5】
前記微粒粉末はバインダを介して前記マグネシウム合金粗粒の表面に付着している、請求項1に記載のマグネシウム複合粉末。
【請求項6】
前記微粒粉末は油を介して前記マグネシウム合金粗粒の表面に付着している、請求項1に記載のマグネシウム複合粉末。
【請求項7】
前記微粒粉末と前記マグネシウム合金粗粒とは機械的に結合している、請求項1に記載のマグネシウム複合粉末。
【請求項8】
請求項1に記載のマグネシウム複合粉末を用いて作製したマグネシウム基複合材料であって、
前記マグネシウム合金粗粒と前記微粒粉末との反応生成物がマグネシウム合金素地中に分散しており、
前記反応生成物は、MgSi、MgO、AlMg、Mg17Al12およびMgAlからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む、マグネシウム基複合材料。
【請求項9】
固形潤滑剤として黒鉛粉末を含み、その含有量が当該マグネシウム基複合材料に対して重量基準で0.5%〜3%である、請求項8に記載のマグネシウム基複合材料。
【請求項10】
前記マグネシウム合金素地中における前記反応生成物の合計含有量は、重量基準で20%以下である、請求項8に記載のマグネシウム基複合材料。
【請求項11】
前記反応生成物の合計含有量は、重量基準で5%〜10%である、請求項10に記載のマグネシウム基複合材料。
【請求項12】
マグネシウム合金粗粒を用意する工程と、
マグネシウムと反応して化合物を作る成分からなる微粒粉末をバインダ溶液中に混合する工程と、
前記微粒粉末を含む前記バインダ溶液を前記マグネシウム合金粗粒上に噴霧して乾燥させる工程とを備える、マグネシウム複合粉末の製造方法。
【請求項13】
マグネシウム合金粗粒の表面に、マグネシウムと反応して化合物を作る成分からなる微粒粉末を付着する工程と、
前記マグネシウム合金粗粒の表面に微粒粉末を付着しているマグネシウム複合粉末を圧粉固化する工程と、
前記圧粉固化によって得られた固化体を不活性ガス雰囲気中または非酸化性ガス雰囲気中で加熱し、前記マグネシウム合金粗粒と前記微粒粉末とを固相反応合成して化合物粒子を生成する工程と、
前記化合物粒子を生成した固化体を温間塑性加工し該固化体を緻密化する工程とを備える、マグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記温間塑性加工は、押出比20以上の押出法である、請求項13に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記押出法の押出比は、35以上である、請求項14に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記化合物粒子は、MgSi、MgO、AlMg、Mg17Al12およびMgAlからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を含む、請求項13に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項17】
バインダを用いて前記微粒粉末を前記マグネシウム合金粗粒表面に付着する、請求項13に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項18】
前記微粒粉末を付着する工程は、
前記微粒粉末をバインダ溶液中に混合することと、
前記微粒粉末を含む前記バインダ溶液を前記マグネシウム合金粗粒上に噴霧して乾燥させることとを含む、請求項13に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項19】
油を用いて前記微粒粉末を前記マグネシウム合金粗粒表面に付着する、請求項13に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項20】
容器の中に前記マグネシウム合金粗粒粉末を充填する工程と、
前記容器内に油を入れてこの容器を回転、振動、陽動させることにより前記マグネシウム合金粗粒粉末表面に油を均一に付着させる工程と、
前記容器内に前記微粒粉末を投入し、前記容器を再度、回転、振動、陽動させることにより前記マグネシウム合金粗粒粉末表面に油を介して前記微粒粉末を付着させる工程とを備える、請求項19に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項21】
前記油の添加量は、前記マグネシウム合金粗粒粉末に対して重量基準で0.2〜1%である、請求項20に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項22】
容器の中に前記マグネシウム合金粗粒粉末を充填する工程と、
前記容器内に油およびボールを入れてこの容器を回転、振動、陽動させることにより前記マグネシウム合金粗粒粉末表面に油を均一に付着させる工程と、
前記容器内に前記微粒粉末を投入し、前記容器を再度、回転、振動、陽動させることにより前記マグネシウム合金粗粒粉末表面に油を介して前記微粒粉末を付着させる工程とを備える、請求項19に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項23】
不活性ガス雰囲気または非酸化性雰囲気での前記油の気化温度は、400℃以下である、請求項19に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
【請求項24】
前記微粒粉末を前記マグネシウム合金粗粒表面に機械的に結合させる、請求項13に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/062837
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566307(P2004−566307)
【国際出願番号】PCT/JP2003/017083
【国際出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(899000024)株式会社東京大学TLO (50)
【Fターム(参考)】